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デジタルスパッタ法によるTa
ULVAC TECHNICAL JOURNAL No.66 2007 デジタルスパッタ法によるTa-SiO2 薄膜抵抗体成膜 中牟田 雄*,三村寿文*,井堀敦仁*, 鈴木寿弘*,松本昌弘*,谷 典明* とし,すでに光学膜など金属酸化膜の高速スパッタ技術 1.はじめに として実績のあるデジタルスパッタ法を検討し,Ta の メタルスパッタと SiO 2 の反応性スパッタとの同時成膜 感熱記録方式は,抵抗体にパルス電流を通電し発生す るジュール熱により,感熱紙を介して文字や画像を記録 について評価した。 するものである。 2.実験方法 従来,感熱記録素子のサーマルヘッドや,実装部品の 抵抗膜として使用されている薄膜抵抗体には,NiCr, Ta などの高抵抗金属,TaN などの窒化物,そして Ta- 今回実験に使用したデジタルスパッタロードロック装 SiO 2 などのサーメット材料が使用されている。とくに, 置: ULDiS-903CHL の概略図を図1に示す。装置構成は サーメット材料は体積抵抗率が高いため,高精細形状で 基板を設置した回転ドラム,およびその周囲に配置した の高抵抗素子や,発熱体の形成が可能である。 第1の Ta スパッタ,第2の Si スパッタ,第3の酸素プ 薄膜抵抗体に使用されるサーメット材料としては, ラズマを使用した酸化源からなる。 Ta-SiO 2 のほか,Cr-SiO 2 ,Nb-SiO 2 などがあり,これら スパッタカソードは,AC ダブルカソードを採用し, は一般的に,金属と SiO 2 との焼結体からなるターゲッ ターゲットは 145 × 640 ×8 mmt サイズの Ta,Si(B ド トを使用した RF スパッタにより成膜されている。スパ ープ)を使用した。成膜圧力は 0.15Pa 程度とし,スパ ッタは,一般的に高速かつ安定な成膜が可能で,大型基 ッタ室からの Ar 流量を 150sccm,酸化源から O 2 流量を 板での膜厚,膜質分布の確保に有利であるが,現状,一 50 ∼ 200sccm,Si スパッタ Power6.0 ∼ 12.0kW,Ta ス 般的な Ta-SiO 2 をはじめとするインライン装置のスパッ パッタ Power 10.0kW ∼ 12.0kW とし,ドラムの回転数 タにおいては,基板搬送に伴うプラズマ密度変動により, は 200rpm とした。基板には熱酸化膜付き Si Wafer,お 膜組成,比抵抗の面内分布が発生し,高速かつ安定な成 よびアルミナ基板を用いた。成膜は,単原子層の Ta, 膜を行うことは困難であった。とくに,搬送方向のシー Si メタルを成膜し,その後酸素プラズマにてSi を酸化さ ト抵抗分布を改善する従来技術として,搬送キャリアが せ基板上にTa-SiOx 膜を形成した。 通過する過程のなかで,基板の前部および後部の成膜中 評価方法は,膜厚:触針式段差計,シート抵抗:四端 子法,組成分析: AES(オージェ分光法)を用いた。 において,搬送速度やスパッタパワーコントロールでの 膜厚補正し,見かけ上のシート抵抗の均一性を確保して いた。 TMP このような方法は,複雑なプログラミングが必要であ O2 O2 酸化源 TMP り,さらに膜組成や比抵抗は,このほかにも Ar 圧力や Ar 残留不純物ガスレベルの変動により顕著に変化するた Ar め,再現性よく常に均一な面抵抗,および面抵抗分布を Si 確保することは困難であった。 Ta 今回我々は成膜速度の向上(成膜速度7Å/sec 以 上),抵抗値分布の均一性(抵抗値分布± 3.0 %以下)に 加え,同一ターゲットによる組成比,抵抗値制御(比抵 抗値の目標値としては 10000 μΩ・cm とした。)を目的 図1 デジタルスパッタ装置: ULDiS-903 * (株)アルバック 千葉超材料研究所 5 が下がり(膜中への O 2 の取り込み量減少)O 2 による膜 3.実験結果 膨れが少なくなったためだと考えられる。また図3に Ta スパッタPower10.0kW 条件でのAES 深さ方向のプロ (1)Ta スパッタPower と比抵抗の関係 図2に Si スパッタ Power 8.0kW,酸化源より導入す ファイルを示す。各元素は深さ方向に対してほぼ均一で る O 2 流量を 200sccm 固定して,Ta スパッタ Power を あることがわかった。 10.0kW ∼ 12.0kW まで変化させた場合の比抵抗値,なら びに Rate の関係を示す。Ta スパッタ Power を増加させ (2)酸化源導入酸素流量と比抵抗値の関係 た場合,比抵抗値は 14000 μΩ・cm ∼ 4970 μΩ・cm まで 図4に Si スパッタPower 8.0kW,Ta スパッタPower 変化した。これは Ta スパッタ Power を増加させること 10.0kW 固定にて,酸化源より導入する O2 流量を で,膜中の Ta メタル成分が増加し比抵抗値が下がった 150sccm ∼ 200sccm まで変化させた場合の比抵抗値を示 と考えられる。 す。比抵抗値は 3000 μΩ・cm ∼ 14000 μΩ・cm まで増加 また Rate に関しては9Å/sec にてほぼ一定であった。 した。これは酸化源の O 2 流量を増加したことによって これは Ta メタル成分が増加する一方で,SiOx の酸化度 SiOx の酸化度があがり抵抗値が上昇したと考えられる。 (3)シート抵抗値分布 比抵抗 Rate 図5にドラム長手方向,膜厚 1000 Åでのシート抵抗 12 1.0E+06 9 1.0E+05 6 1.0E+04 3 値の分布を示す。Ta メタルの膜厚分布をトリムタブに よって修正することによって幅 300mm の基板面内にお Rate(Å/sec) 比抵抗(μΩ・cm) 1.0E+07 いて± 1.5 %の均一なシート抵抗値分布を得ることがで きた。 4.まとめ 今回,従来法のインライン装置による RF スパッタと 1.0E+03 7 8 9 10 11 0 13 12 比較して,デジタルスパッタ法にて成膜速度の向上(7 Å/sec 以上),抵抗値の均一性(± 3.0 %以下),同一タ Ta CA Power(kW) ーゲットによる組成比,抵抗値制御を目的としてデジタ 図2 Ta CA Power と比抵抗,Rate の関係 ルスパッタ法を検討し,Ta のメタルスパッタと SiO 2 の 反応性スパッタとの同時成膜について評価した。 Ta スパッタ Power や酸化源の酸素流量調整により, Ta Power 10.0kW 比抵抗:14000μΩ・cm 100 抵抗値を任意の値に制御することが確認された。また, 90 300mm 幅基板内のシート抵抗値分布は,±2%以内の 1.0E+06 70 60 Ta:56at% 比抵抗(μΩ・cm) Atomic Concentration(%) 80 1.0E+05 50 O2:36at% 40 1.0E+04 30 1.0E+03 20 Si:8at% 10 0 −1 0 1 2 3 4 5 6 7 Sputter Time(min) 8 9 1.0E+02 0 10 50 100 150 200 導入酸素流量(sccm) 図3 AES 深さ方向プロファイル 図4 酸化源導入酸素流量と比抵抗値の関係 6 250 シート抵抗値(Ω/□) 1250 1000 ±1.5% 750 500 200 0 −200 −150 −100 −50 0 50 100 150 200 Position(mm) 図5 シート抵抗値分布 均一な値が得られた。Ta,Si のメタルスパッタ,およ 参考文献 び酸素プラズマによる酸化力分布が,ドラム面内の基板 1)池田,他:第 55 回応用物理学会学術講演会 P404 エリアにおいてほぼ均一であり,安定な成膜が可能であ 20PN-16. ることが確認された。 2)鈴木,他:月刊ディスプレイ ’ 05 3月号 P56-62. 3)中牟田,他:第 53 回応用物理学関係連合講演会 P678 22a-R-10. 7