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議 案 書
2011年9月25日~26日
熱海・ニューフジヤホテル
全労協第23回定期全国大会
議
案
書
全国労働組合連絡協議会
全労協第 23 回定期全国大会・次第
1,
開会挨拶(司会)
2,
議長団選出
3,
大会役員任命
(資格審査委員、大会運営委員、大会選挙監理委員、大会書記長・書記)
4,
議長挨拶
5,
来賓挨拶、祝電・メッセージ披露
6,
資格審査委員会報告
7,
大会運営委員会報告
8,
2010年度経過報告
9,
2011年度活動方針(案)提案
10, 2010年度会計報告
11,
会計監査報告
12,
2011年度予算(案)提案
13, 報告事項に対する質疑、討論
14, 活動方針など提案事項に対する質疑、討論、採択
15, 役員選出について(大会選挙管理委員会報告)
16, 新旧役員代表挨拶
17, 大会決議、大会宣言の採択
18, 大会スローガンの確認
19, 議長団退任、大会役員解任
20, 閉会挨拶
21, 団結ガンバロー
目
次
大会スローガン ·································································································· 2
はじめに················································································································5
闘いの経過と総括 ······························································································5
2011 年度活動方針(案)··············································································· 27
1.情勢の特徴 ································································································· 27
2.闘いの基調 ································································································· 30
3.具体的な闘い ···························································································· 32
(1)12 春闘・・春闘の再構築 ······································································ 32
(2)国鉄闘争・JAL 解雇撤回闘争・・全ての争議の勝利に向けて ········· 33
(3)反リストラ、中小非正規労働者の組織化に全力を! ························ 34
(4)反行革・公務員制度改革との闘い························································ 37
(5)労働法制の改正運動 ··············································································· 39
(6)反原発闘争の推進・・「脱原発社会」の実現に向けて ···················· 41
(7)反戦平和・政治闘争、福祉切り捨てに反対する闘い ························ 42
(8)女性の闘い ······························································································· 43
(9)移住労働者・外国人労働者の権利確立の闘い···································· 43
(10)国際連帯 ··································································································· 45
(11)第 83 回メーデー ····················································································· 45
(12)組織・財政の強化、教宣活動の強化···················································· 45
<資料編>
2010 年度行動報告 ··························································································· 47
地方全労協の闘い ···························································································· 51
各単産単組の報告 ···························································································· 63
-1-
全労協第 23 回定期全国大会スローガン(案)
<メインスローガン>
◎
◎
◎
◎
拡げよう全国へ 自立と創造、
労働者の生活と権利、人権、反戦・平和を闘う全労協運動を!
東日本大震災被災地の復興と「脱原発社会」の実現に全力をあげよう!
貧困・格差社会に反対し、非正規労働者の権利確立、均等待遇の実現しよう!
憲法改悪反対! 普天間基地の即時撤去・辺野古新基地建設反対!
日米安保の見直しを! 教育の国家統制反対!
<サブスローガン>
○全ての原発を直ちに停止し廃炉にせよ!
○原子力依存から再生可能な自然エネルギーへの転換を!
○原発・震災被災者の生活再建を政府の責任で行なえ!
○原発労働者の被曝管理を政府、東電は厳格に行なえ!
○東京電力は原発事故の賠償を行なえ!
○子どもを放射能から守るため、被曝線量の情報開示と厳格な管理を行なえ!
○政府・東電は原発事故について情報開示を正確/確実/迅速に行なえ!
○震災被災地の復興、生活再建に全力で支援・連帯しよう!
○原発の新設並びに輸出計画を中止し、停止中の原子炉の再稼働を行うな!
○「仕事と食と住まい」を全ての労働者に保障するセーフティーネットを確立せよ!
・生活保護の申請・認定を容易にし、国の責任で最低生活の保障を!
○パート・派遣・臨時・契約・外国人など非正規労働者の安定雇用と均等待遇の実現!
○ディーセントワーク(働きがいがある人間らしい仕事)を実現しよう!
○JAL 不当解雇撤回闘争に連帯しよう! 全ての争議に支援を強め勝利しよう!
○JR をはじめとする安全・安心・安定した公共交通政策の確立を!
○12 けんり春闘勝利!「生きる権利」の侵害を許さず、生活を守る大幅賃上げを!
・不況、震災を口実とする雇い止め・解雇・内定取り消し・リストラを許すな!
・誰でも何処でも最低賃金 1,200 円を目標に大幅引き上げを実現しよう!
・生活できる賃金を保障する公契約条例の制定を!
○反失業・雇用確保の闘いを推し進めよう!
・雇用保険の拡充を!
・ハローワークの民営化、労災保険の民営化反対!
○介護、医療制度の改悪反対!後期高齢者医療制度の廃止を!
○年金制度の抜本改革で、安心できる老後を! 社会保障番号制-総背番号制反対!
○公務員労働者の争議権を含む労働基本権の確立を!
人員削減・給与引き下げをもくろむ、公務員制度改革‐自律的労使関係制度反対!
○公共サービスの切り捨て、地方自治と国民生活を破壊する行政改革反対!
・公共サービスの民営化、業務委託化、「指定管理者制度」導入、PFI(民間資金活用)
反対!
・市場原理主義による競争入札制反対!
--21-
・地域・利用者のための郵政改革を!
・労働者・市民とともに真の自治権拡充を勝ち取ろう!。
○労働者保護の労働法制の確立を勝ち取ろう!
・労働者派遣法の抜本改正を!
・偽装請負・違法派遣の根絶を!
・労基法、職安法等を厳格に遵守させる監督行政を強化し、違反企業には厳罰を!
・臨時的季節的業務など合理的理由のない有期労働を禁止する有期労働法の制定を!
・解雇規制、均等待遇を軸とする労働契約法の改正を!
・解雇の金銭解決制導入反対!
・過労死、健康被害を生み出す「長時間・サービス残業」をなくし、時間外労働の上限
規制を月 20 時間、年 150 時間に法制化せよ!
・「名ばかり管理職」根絶! 事業上外「見なし労働」を撤廃せよ!
・日本版ホワイトカラー・エグゼンプション導入反対!
○安全作業遵守、アスベスト被害者の救済と根絶など、「命と健康」を守る労働安全衛生
闘争を強化しよう!
○働く仲間である移住労働者の権利を確立し、多民族、多文化共生社会を実現しよう!
・外国人労働者の管理強化・排斥を強める入管行政、労働行政反対!
・外国人研修生・技能実習生の人権を守り、労働権を保障せよ!
○ILO100 号条約(同一価値労働同一賃金)111 号条約(雇用・差別)、94 号条約(公契約)、
175 号条約(パート条約)及び 183 号条約(母性保護条約)の早期批准実現!
○震災を口実とする増税反対!
・消費税引き上げ反対! ・法人税引き下げ反対!
・累進制課税の強化! ・国民生活を活性化させる減税を!
○個人情報保護法、住基ネット強行実施をはじめとする総監視社会反対!
・新治安維持法=共謀罪新設反対!
○動的防衛力への転換を図る「新防衛大綱」反対! 自衛隊の先島配備、海外派兵恒久化
反対!
・ソマリア沖から直ちに撤兵せよ!
・ジブチ基地建設糾弾! 憲法違反の海外基地(拠点)建設反対!
・南スーダン PKO 派遣反対!
○非核三原則・武器輸出禁止三原則の緩和・破壊を許さない!
○米軍再編-日米軍事同盟強化反対! アジア・日本から全ての米軍基地を撤去しよう!
・沖縄普天間基地の無条件即時撤去! 辺野古沿岸新基地建設反対!
・高江ヘリパッド建設反対! 普天間基地へのオスプレイ配備反対!
・原子力空母横須賀母港化反対! 岩国基地の拡張反対!日米合同軍事演習反対!
・米軍移転費に国民の血税 3 兆円負担を許すな! 思いやり予算反対!
○元「日本軍慰安婦」、元「徴用工」、旧日本軍の化学兵器による被曝被害者等に対する
謝罪と国家責任にもとづく賠償・補償を実現しよう!
○全ての国の核実験・核保有に反対し、核のない地球を実現しよう!
・非核法の制定、北東アジアの非核地帯化を実現しよう!
○環境破壊を許さず、日本の農業・水と緑を守る闘いを強めよう!
○教育の国家統制反対!
・大阪府橋下知事による「日の丸・君が代」起立条例の強行成立糾弾!
・思想統制と首切り攻撃を図る、大阪府「職員基本条例」「教育基本条例」の議会上程
を許すな!
--32-
・「日の丸・君が代」強制反対! 処分乱発を許すな!
・教員免許の 10 年更新制反対! 学校の管理強化反対!
・地方教育委員会への統制反対!
・侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書を作る会」の歴史教科書の採択反対!
・沖縄戦に関する教科書検定意見を撤回せよ! 歴史の改ざん糾弾!
○部落差別、女性差別、障がい者差別、外国人差別等あらゆる差別をなくする闘いを強め
よう!
・石原都知事の外国人差別、女性蔑視、障がい者差別発言糾弾!
・真の障がい者自立支援を!
○労働者の雇用と権利を破壊し、貧困・格差を拡大する新自由主義・グローバリゼーショ
ンに国際連帯で立ち向かおう!
・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加反対!
○中小労働運動の発展、未組織労働者・非正規労働者の組合結成を支援し、地域労働運動
の強化・発展を勝ち取ろう!
○全国に全労協組織を作り、全労協運動の強化発展を勝ち取ろう!
以上
--43-
闘いの経過と総括
1 はじめに
3 月 11 日、宮城県沖で発生した大地震は岩手県から千葉県までの太平洋沿岸を巨大津波
となって襲い、死者・行方不明者は 2 万人を超すという未曾有の被害をもたらした。そし
て、この巨大地震と津波は東京電力の福島第一原子力発電所を襲い、原子炉は破壊され爆
発し、メルトダウンを起して放射能をまき散らかした。事故の大きさはチェルノブイリ原
発の事故と同じく「レベル 7」とされ、飛散した放射能は、ウラン換算で広島に落とされ
た原子爆弾の 20 個分と指摘されている。そして福島原発は未だ制御不能のまま、不安定な
状態が続き、福島県を中心に放射能汚染地域は拡大し、また高濃度の放射能汚染水によっ
て海洋も汚染され続けている。
いま、東北地方はこの東日本大震災から復興すべく必死の闘いが続けられている。この
復興に向けた膨大な作業に「少しでも手助けができれば」と全国から労働者・市民・学生
がボランティアとして駆けつけ被災地の人々と共に汗を流して頑張っている。東北全労協
が対策本部を設置し、全国各地からは救援・復興に向けた支援連帯の活動が取り組まれて
きた。そして多くの義援金が寄せられ、被災地への激励に取り組んできた。
ところで、日本を襲った困難な状況に素早く対応しなければならない政府・国会は政争
によって空転したままとなっている。新自由主義を掲げ、企業のグローバル化と利潤確保
のために労働者・市民に「痛み」を押しつけてきた自民公明党政権に対して、09 年総選挙
に於いて労働者市民は「NO」を突きつけ、民主党を中心とした政権交代を実現させた。し
かし、期待された民主・社民・国民新党による鳩山連立政権は「金と政治」やアメリカ政
府や国内の保守勢力・大手マスコミによる反撃にあい、沖縄普天間基地問題を解決できな
いまま瓦解した。昨年 6 月、鳩山首相に代わって登場した菅首相は官僚主導と新自由主義
の手法に回帰し、また東日本大震災の救援・復旧について全くリーダーシップを示すこと
が出来ず、特に原発震災に対する対応は動揺を重ね、退陣を表明したまま居座り続け、政
治の空転と放射能汚染を拡大させている。
いま、日本は大きな転換を迎えていると言える。東日本大震災と原子力発電所の大事故
のなかで日本をどのように再建するのかという根本的な理念が求められているとともに、
遅滞なく復興作業を実現するために全ての労働者市民が総力をあげて取り組むことが出来
るのか問われている。その要である「原発のない社会・核のない社会」と「全ての人が仕
事に就き、人間らしい労働を実現できる社会」を実現するために、労働組合の役割が改め
て問われている。労働戦線再編以降、連合、全労連、全労協と鼎立して 20 年が経過し、こ
の歴史的大転換にそれぞれがどう向き合い、闘いをつくり出すのか、日本労働運動の再生
へ向けた闘いはまったなしとなっている。
全労協はこうした歴史の大転換の中でその任務をどう全うするのか、今大会で議論を尽
くし、全労協を闘う強固な組織として建設するために全力をあげていこう。
--54-
2,この一年間の闘いについて
(1)東日本大震災救援と生活を守る闘い、11 春闘の闘い
09 年 8 月 30 日の衆議院総選挙による政権交代が実現し、民主党が第一党となって鳩山
内閣が誕生し「国民生活第一」「コンクリートから人へ」「普天間基地の県外・国外移設」
という政治目標に多くの人々から大きな期待が寄せられた。しかし、その期待は新たに登
場した菅内閣が国民と約束した「マニュフェスト」を次々とゴミ箱に捨て、自民党政治・
新自由主義路線へ回帰し、米国追随、財界にすり寄るという方向転換によって失望へと変
わっていった。7 月の参議院選挙では菅民主党は大敗北し、国会は衆・参で多数派が異な
る「ねじれ国会」となった。菅政権は「何もしない・何も出来ない」内閣となり、労働者
の生活は少しも好転せず、「貧困と格差社会」、ワーキングプアに呻吟する状態が続いた
ままとなっている。政府は労働者派遣法の改正案を多くの問題点を抱えたままではあれ、
曲がりなりにも政府案として国会に上程されたが、審議もされないまま店晒しとなった。
全労協は 11 春闘の大きな目標を以下に定め、10 年 12 月 18 日には全労協春闘討論集会、
2 月 26 日~27 日には徳島に於いて西日本春闘討論集会を開催して闘いに向けた意思統一を
行なった。そして全港湾や全造船関東地協、全日建連帯、中小労組政策ネットなどの友誼
組合とともに、2 月 1 日には「11 けんり春闘全国実行委員会」(略称・11 けんり春闘)を
結成して闘ってきた。
●賃金の大幅引き上げで人間らしい生活を! 最低賃金の大幅な引き上げ!
●すべての労働者に仕事を!
●貧困・格差社会に反対し、非正規労働者の権利確立・均等待遇の実現
●労働者派遣法の抜本改正の早期実現、有期労働契約の規制強化を!
●地域共闘で公契約条例の制定を!
●命と健康が守れる職場を!…長時間労働禁止、未払い残業の撲滅、イジメの一掃
●反戦平和・沖縄闘争への連帯・参加
●希望者の雇用を実現して、JR 不採用問題の最終解決を!
●未組織労働者の組織化
11 けんり春闘は 2 月 1 日、交通ビル地下大会議室に 150 名以上の参加者を得て発足した。
11 春闘の第一波は 2 月 24 日、東京総行動に併せて日本経団連への要請行動に取り組んだ。
日本経団連前には 200 名を超す仲間が結集して「利益第一」「企業第一」という労働者使
い捨ての姿勢を厳しく糾弾し、要請に応えるよう訴えた。しかし、日本経団連は要請書さ
え受取らないという傲慢な態度に終始した。参加者は激しい憤りをシュプレヒコールで日
本経団連に叩き付けた。
第二波は 3 月の外国人労働者の権利のための総行動を中心に設定し、国会に上程されて
いる労働者派遣法改正案の早期成立をめざして国会前行動などを計画し準備を進めてき
た。しかし、3 月 11 日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故は春闘の進
め方を大きく変えるものであった。
死者・不明者は 24,000 人を超え、被災地は岩手・宮城・福島並びに青森から千葉県まで
の東日本太平洋側一帯の広範囲に及び、阪神淡路大震災の被害を遙かに凌ぐものとなった。
また福島第一原発の爆発事故による放射能汚染の拡散など、被災者救援が真っ先に求めら
れたのである。
--65-
11 春闘は東日本大震災によって大きく影響を受けた。春闘を闘う労働者に向けられたの
は「権利」主張は自粛されるべきことであり、被災地救援を最優先とすることだとする世
論の高まりが大きな圧力となり、職場でも「国難」を盾として経営側の姿勢は賃上げを頑
なに拒み、「欲しがりません勝つまでは!」という、まるで戦争中の標語が思い起こされ
るような状況ができ、11 春闘は困難なものになった。
「がんばれ日本!」「日本は一つ」「日本は強い」というキャンペーンが連日、マスコ
ミを通じて繰り返され、「トモダチ」作戦を展開した米軍には迎合記事が氾濫した。そし
て、直ちに必要とされた被災地の子どもを放射能から守る対策はなされないままに、原発
の状況は大本営発表のごとく政府・東電の発表として垂れ流される事態が続いた。
大震災による被害は東北地方を中心にした企業、農業、漁業に深刻で壊滅的なダメージ
を与え、また原発事故による放射能汚染被害は 20 キロ圏を中心に地域社会を破壊した。汚
染地域はゴーストタウン化し、地元住民の生活とコミュニティーは根こそぎ破壊された。
今後の生活基盤回復は予測不能の状況のままとなっている。そればかりか放射能被害は日
々拡大し、多くの住民が避難生活を余儀なくされている。
また、原発事故の被害拡大を防ぎ、放射能を封じ込める作業に従事する労働者は被曝量
が多くなっている。東電社員と下請け業者など、作業員の劣悪な作業環境は放置されたま
まとなっている。原発震災は電力不足を起すとして、計画停電が実施された。この停電を
口実にして経営者は合理化を強行し、首切り、内定取り消し、賃下げが噴出している。震
災に絡む労働相談は被災地ばかりでなく首都圏や中部圏など全国にも拡大した。
ところがこうした状況にあっても、大手企業は大きく業績を回復しベースアップは拒否
したものの、定昇を維持し、一時金に上乗せを回答し、昨年を上回る回答を行った。特に
自動車・電気などの大企業正社員への回答は例年を上回り、トヨタなどは満額回答で早々
に決着をみた。しかし、震災の影響が大きい中小などは回答も出せず、企業間格差は一層
拡大した。例年 3 月の JC 回答に併せて報道されてきた春闘回答は、会見も行なわれないま
ま、春闘に関する報道は姿を消すことになった。
こうした困難な情勢の中でも、11 けんり春闘は震災被災者支援、激励と連帯を掲げ、ま
た原発の即時廃炉と、エネルギー政策の転換を要求して中央総行動・デモを予定通り貫徹
し、政府、経団連、東京電力への抗議行動を行なった。そして原発の即時停止・廃炉を求
める労働組合は私たちの他になく、連合や全労連との違いを際立たせるものとなった。
大きく高揚した原発反対の運動にも積極的に参加して「脱原発・エネルギー政策の転換」
を求めて闘いを続けることができた。
大震災の被害はけんり春闘に参加する労組にも大きな被害をもたらした。国労や全港湾
では現役の組合員が死亡し、また家族を失ったり、家屋を流出させた労働者が多く出た。
各労組は組合員の安否確認に追われ、また被災者救援には労組間で相互に連携をとって全
力で取組んできた。また復旧へボランティア派遣に取り組んできた。
被災地救援ボランティアに多くエネルギーが費やされる中で、私たちの生活を守り向上
させるという春闘は被災地救援・復興、原発即時停止を求める闘いと重なり、当初予定して
いた多くの取組みが中止や延期を余儀なくされることになった。各個別の闘いではNTT
や郵政職場でのストライキは中止となり、また中小職場では春闘要求を巡る交渉は非常に
厳しいものとなった。統一宣伝行動も一度は中止・延期となり、再度設定したものの一部に
限定された。
しかし、困難な状況にあっても 3 月 25 日には東京労組の一日行動、そして 4 月 6 日には
11 けんり春闘中央総行動として全国からも代表が派遣され、例年通りの大きな取組みとし
--76-
て貫徹した。決して春闘は終わっていないことをアピールするとともに、中小・零細労働
者、非正規労働者の窮状を訴えることができた。そして、中小職場では地道な交渉が積み
重なって、一定の成果を獲得した労組もある。
また、国会開会に併せて継続審議のまま店晒しになっている労働者派遣法改正案の早期
成立を求めて国会前座り込み行動などを闘ってきた。しかし残念ながら、震災による政府・
国会の混乱は派遣法の審議を進めることができず、延長国会でも同様の結果となり、三度
継続審議となった。
公務員制度改革を巡る政府の攻勢が強まっている。連合系の国家公務員労組連絡会と賃
金引き下げ交渉が妥結した。震災を口実にした賃金引き下げの強行と人勧制度を破壊し、
本来議論されるべき公務員のスト権を含む労働基本権を確立する闘いを阻害する動きが顕
著になっている。国家公務員制度改革は地方公務員制度改革と連動し、東京都など地方自
治体にも波及し、来期以降の人勧制度は混乱を究めている。いずれにしても今後は労使間
の交渉中心の闘いによって労働条件が決定することになる。議会との関係が不明となるが、
否応なく公務員の賃金・労働条件の決定は民間と同様に春闘交渉となる。公務労働の場で
も労働組合の真価が問われることになる。また、文字通り官民連帯・共同の春闘が求めら
れていく。
大震災の復興は労働者が安心して働き、人間らしい生活を築く為の闘いとともに実現さ
れなければならない。農業、漁業の再建は労働者の雇用と生活できる賃金の獲得とともに
実現されるものであろう。また、全ての労働者が仕事に就くことができ、また、雇用形態
による差別がなく、均等待遇が実現される社会こそ求められている。
全労協は 12 春闘を文字通り、生活再建を掲げる労働者・農漁民共通の要求とし、また、
反原発、原子力依存のエネルギー政策を再生可能な自然エネルギーへと転換させる「震災
復興連帯春闘」として闘うことになる。
(2)被災地ボランティア活動と脱原発の闘い
東日本大震災の発生後直ちに東北全労協や国労は組合員と家族の安否確認を開始した。
残念ながら、国労では組合員 2 名の犠牲のほか親族などには多数の方が犠牲となり、また
家屋流失など多くの被災者がでた。国労は対策本部をいち早く立ち上げ、全国に救援の要
請を行い、数十トンの物資を被災地地本へと搬入した。数次に亘る物資輸送と、闘争団を
含むボランティア派遣が行なわれた。
東北全労協では傘下の鉄産労、全国一般、電通労組、郵政労働者など幸いにも組合員の
犠牲者はなかったものの、家族、親族の犠牲、家屋の倒壊・流失など国労と同様の被害が
もたらされていた。こうした状況の中で岩手、宮城、福島の東北一帯をカバーする東日本
大震災対策本部が東北全労協に設置され、全労協本部や各地方全労協を結んだ救援センタ
ーとして活動を開始した。そして、宮城を中心にしたボランティアの受け入れとともに、
岩手では全国一般・共生ユニオンいわての仲間によって、遠野市の社会福祉協議会と連携
した「遠野まごころネット」を発足させ、広範な復旧活動へのボランティア活動を展開し
た。
こうした被災地での活動に呼応して全労協本部に東日本大震災災害対策本部を設置し、
被災地には金澤議長他、仲間が激励と物資・義援金を届けに駆けつけた。またカンパの呼
びかけ、ボランティア派遣が取り組まれた。ボランティアには首都圏はもとより、徳島や
大阪、京都などからも数次に亘って派遣の取組みが行なわれ現在も続いている。
--87-
また、全統一労組や郵政ユニオン、移住連(移住労働者と連帯する全国ネットワーク)
は研修生問題で関係が築かれていた南三陸町へ救援物資の搬入、避難所の炊き出しを数次
に亘って続けている。
全国から寄せられた義援金は全労協本部に直接入ったものだけでも 9 百万円を超え、救
援物資購入やボランティア活動、東北現地で義援金、救援・活動資金として大いに役立つ
ものとなった。
東京電力福島第一原発の事故は未だ収束の見通しがつかないまま、放射能汚染の深刻な
被害が広がっている。原子力という核爆弾‐核兵器から派生し、人によって制御できない
放射性物資が人や地球環境を長期に亘って破壊し尽くす、危険なものに頼るエネルギー政
策の過ちが改めて白日の下にさらされた。チェルノブイリ事故から再び大きな犠牲を人類
にもたらすことになった。
全労協は 4 月には「脱原発プロジェクト」を金澤議長を座長として立ち上げ、原発のな
い社会の実現に向けた闘いを展開してきた。全労協は結成以来、反原発の立場から原子力
発電所の新設反対、被曝労働者の救援を行なってきた。また、静岡・浜岡原発の停止を求
める裁判には原告団の一員として関わってきた。しかし、今回の原発事故を防ぎきること
はできなかった。
全労協は全国の仲間に反原発運動への参加を呼びかけ、大きく高揚した全ての原発の即
時停止・廃炉を求める集会・デモを闘ってきた。福島現地のデモ、日比野音や 6 月 11 日に
取り組まれた「脱原発 1000 万人アクション」に全国で取り組んできた。そしてメーデーに
は脱原発のスローガンを掲げ、東京電力への抗議行動を行なってきた。反原発の闘いに労
働組合の姿が見えないと言われている。電力総連や電機連合など原発容認の大企業労組は
多く、民衆の労組に対する不信感が拡がっている。全労協の脱原発の闘いは際だった存在
感を示し続けてきた。大江健三郎さん、内橋克人さん、鎌田慧さん、澤地久枝さんなど 9
名の著名人が「さようなら原発 1000 万人アクション!」を呼びかけている。この闘いの
一翼を積極的に担い、1000 万人署名や街頭闘争に取り組んでいる。
(3)反合・争議の闘い
①国鉄闘争の総括
23 年余にわたって闘い続けてきた JR 不採用問題は、昨年 4 月 9 日、民主党・社民党・国民新党・
公明党による 4 党申し入れにおける「解決にあたって、JR 北海道、九州等の各社を中心に 200 名位の
採用を要請し、その他の雇用について政府としても努力する。」に基づき、希望者全員の雇用を実現
するため政治窓口との連携を密に様々な対策を講じながら、最終解決に向けた取り組みを進め、この
闘いは、すでに四半世紀にわたり、何としても解決をしなければならない課題であり、闘争団・家族
は様々な苦難・苦闘を乗り越え、昨年の 6 月 28 日、ついに一括和解へと結びついてきたものである。
この到達点を迎えた背景には、いくつもの力があり、闘争団自身と家族の自活体制を含む粘り強い
取り組み、それを支えようとする国労組合員・学者・文化人や地方議員、そして私たち全労協など共
闘の輪の力、さらに政治の力と共に、4 者・4 団体における団結の力をはじめ様々な力の結集があっ
たからこそ迎えた到達点でもあった。
この掴み取った到達点に対する報告やお礼として、昨年 8 月以降、中央と各地方の支援共闘組織や
友誼単産・単組・団体をはじめ、学者・弁護士・有識者、各地方労働委員会関係者や地方自治体首長
・地方議会、議員団、退職者の会などの皆さんに対して各級機関ごとに「御礼と報告」の取り組みを
実施するとともに、各都府県を基本に 136 箇所に及ぶ報告集会が開催され、国際的支援も受ける中で、
昨年 8 月には ITF 世界大会、昨年 11 月には 9 度の勧告を示した ILO に報告もされてきた。
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そして残された雇用問題について、雇用の問題も政治の約束であり政治の決断によって解決をはか
るため、今日まで取り組みを進めてきた。
昨年 10 月 13 日、4 党に対して、あらためて人道的見地から JR 各社及び JR グループ関連ならびに
鉄道・運輸機構への採用や自治体等への公的部門の受け入れを政府・関係方面に働きかけるよう要請
し、「雇用希望者」についての最終報告書を提出した。
しかし、周知のように昨年の暮れから今年にかけて、尖閣諸島におけるビデオ流出事件や仙石官房
長官の「暴力装置」発言などをめぐる問責決議の中で仙石官房長官や馬渕国土交通大臣の交代もあり
得る情勢や、事実、年明けには菅第二次改造内閣が発足をし、その後も「政治とカネ」の問題、小沢
代表に対する処分問題、予算案をめぐる動向も含め、政局の混乱の中で、4 党が政府に対して要請を
出せる状況にはない事を踏まえ、4 者 4 団体も「このまま 3 月末を迎えるとするならば約束はあって
も事実上、何もなくなってしまう」事から、2 月 23 日~24 日、雇用問題の「年度内解決」への集中
として、36 闘争団代表・家族の上京行動などの取り組み、関係政党や衆参両院の国土交通委員への要
請行動を展開し、この取り組みにあわせ衆議院第二議員会館内において「国鉄改革 1047 名問題懇談
会」を開催した。懇談会には、民主党、社民党、公明党、共産党の各代表が出席し、それぞれ激励と
決意が述べられるとともに、当事者・家族代表から JR への雇用の実現にご尽力いただくよう各党に
対する訴えが行われた。
これは政府に対して「この問題はまだ残っている」「あくまでも政府の責任である」ということを
訴えたものであり、その後、衆議院予算委員会で、社民党・服部良一議員が不採用問題について大畠
国土交通大臣に質問もされた。その質問に答えた大畠大臣は経過を詳しく述べられた上で、この問題
への認識とともに 4 党からの要請を含めた今後の取り組みについて答弁された。
このさ中である 3 月 11 日、国内観測史上最大級の M9 の「東日本大地震」が発生し、東北沿岸部を
中心に甚大な被害を及ぼし、その被害の大きさに 2011 春闘の中断をはじめ、全勢力を救援・復興へ
と注ぐ結果となった。
3 月 15 日に開催した「4 者・4 団体」会議では「①3 月 11 日に発生した東日本大震災による被災者
に心からお見舞い申し上げ、できる限りのご支援を行うこと。②政府・政党は総力を挙げて震災対策
に当たっており、平時の国会ではないこと。③『雇用問題』の解決期日を 3 月末日までとしてきたが、
かかる事態を考慮し、政府・政党への要請なども 4 月末まで中断し、改めて政治判断を求めること。」
を旨とする「JR 不採用問題―雇用問題への対応」を確認し、当面は年度内の 3 月末を超えて事態の推
移を見守り、対応することが確認される中、4 月 25 日には参議院決算委員会における社民党の又市征
治副党首の質問に対して菅内閣総理大臣は「JR での雇用については、具体的な要請が関係する政党側
からあれば国土交通大臣を中心に政府として適切に対処してまいりたいと考えており、その場合にも
先ほどのように、JR による採用を強制まではできないが、政府として適切な対処に努力した
したいと思っている。」と答弁された。
6 月 13 日、政府・国交省は、JR 各社に対し、民主党・社民党・国民新党の 3 党による「国鉄改革」1047
名問題の政治解決(雇用問題)の要請書を手交した。さらに、これに呼応した政府・与党と JR 各車
との折衝も進められたが、JR 各社は政府からの要請に「受け入れられない」との態度を表明した。
6 月 22 日、国交省は政治窓口を通じて「これ以上の要請、説得は困難」と判断した旨を通告して
いる。
この事態を受け、闘争団全国連絡会議は、ただちに現状の分析を行うとともに、国労闘争団で構成
する 3 者は断腸の思いで、この厳しい現実を受け入れる苦渋の決断を選択した。
国労は当事者である闘争団の判断、闘争団全国連絡会議の意思決定を踏まえた上で、昨年 4 月 9 日
の民主党・社民党・国民新党・公明党の 4 党と政府との「政治的合意」に基づく雇用問題の解決につ
いて、その終結をはかることとした。
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24 年にわたる闘いの中で、時には解決の道筋や戦術をめぐって、意見の違いや激しい対立も生じ
たものの、「政治解決」という一点で取り戻した当事者の団結を中心に『当事者の判断』を最優先さ
せた対応を基本としながら取り組みを進める中で4 者4 団体の統一と団結の力によって今日の到達点
を迎える事が出来た。
不採用問題については、政府・与党の「雇用確保」に向けた努力の限界と「JR 各社の基本的考え方」
について万感の思いが積もるものの、私達を取り巻く厳しい政治環境の下で熟慮に熟慮を重ねた結果
として示された当事者の判断を尊重し、24 年の時を経て JR 不採用問題は、ここに集結に至った。
私たち全労協は、闘いの大きな柱として、この国鉄闘争に関わり国労と共に 22 年の間(発足から)、
共に奮闘してきた。各地方における支援共闘組織等での惜しみない努力や協力によって、今日、1047
名不採用問題の和解が成立するなど「政治解決の扉」が開かれた事も事実である。いずれにしても 23
年余に及ぶ国鉄闘争の大きな教訓を今後の運動に生かし続けること、そして、依然として闘いが続い
ている他の全ての争議を勝利解決させるために全力を尽くすことが、これからの課題にもなってい
る。
一方昨年末、日本航空の乗員・客室乗務員 160 名が整理解雇された。経営破綻した日本
航空の再建のためという理由である。国鉄と同様に国策事業の経営破綻を理由に協力を拒
む労働組合労働者を排除しようとするものである。現に、解雇された労働者の大部分が日
本航空乗員組合と日本航空客室乗務員組合(CUU)に所属する労働者であり、稲盛会長すら
「整理解雇は必要なかった。」と記者会見の場で述べているのである。そして JAL の管財
人であり、再建に資金面から支援する企業再生支援機構による「スト権を立てれば支援し
ない」という組合への恫喝は東京都労働委員会から不当労働行為として厳しく指弾された。
解雇された労働者は解雇撤回を求め裁判闘争を闘っている。その支援のために JAL 不当
解雇撤回国民共闘会議や支える会が結成され、闘いが続いている。
全労協は JAL 解雇撤回闘争を国鉄闘争に引き続く闘いと位置付けその中心を担い、勝利
に向けて全力をあげている。
②中小民間の闘い、争議組合の闘い
この 1 年間の中小民間労働者の闘いは、派遣法の抜本改正を衆参ねじれ国会のなかで成立
させ闘い取るために、厚労省前の宣伝活動や院内集会など粘り強く大衆行動を行ってきた。
しかし、第 177 国会でも十分な審議が行われることなく、暗礁に乗り上げている。この闘いは、
全国ユニオンら連合の一部や全労連とも連携した「派遣法の抜本改正を求める共同行動」と
して闘われており、今後の中小民間の闘いとその方向性を切り開くものとしても重要な意義
を持っている。
派遣労働者など非正規労働者は、昨年は 1755 万人となり 34 万人増え増大している。同時
に年収 200 万円以下の労働者も 1700 万人を超えている。労働者派遣法という悪法のもとで、
賃金・労働条件さらには人権侵害が横行している。どう猛な経営者が我が物顔に振る舞える
状況を許さず、全労協を始めとした闘う労働組合と労働者の力で、労働者派遣法の抜本改正、
正規雇用、均等待遇の実現を何としても勝ち取る必要がある。まさに中小零細民間非正規労
働者、さらには民営化のもとで地方公共団体に働き「官製ワーキングプア」とすら呼ばれる
労働者にとっても、労働者派遣法の労働者保護法としての抜本改正は、待ったなしの課題で
ある。
こうした中で、闘う労働者にとって二つの朗報がもたらされている。
一つは、全労協結成以来の中心労組であり石油労組連絡会の牽引役としての昭和シェル労
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組の闘いが、40 年を超える長期にわたりながら、争議解決・勝利和解を勝ち取ったことであ
る。労働委員会闘争はじめ、女性差別賃金撤廃の裁判闘争、組合差別裁判では多くの勝利判
決、勝利命令を引出し、最高裁の確定判決による賃金支払いをも実現させてきた。東京総行
動の争議団とも団結し励まし続け、東部権利春闘・総行動での取り組みも、最先頭で担って
きたなかでの勝利和解となった。年末の押し迫った時期での、労働者総体にとっても大きな
クリスマスプレゼントであった。40 年の闘いの成果を喜びたい。全労協には多額のカンパを
いただいた。
二つには、超独裁社長の専制労働者支配と解雇・不当労働行為の嵐を跳ね除け、さらには
石上書記長への悪辣なテロをもはねのけ闘い続けた全統一労組光輪モータース分会の闘争
が、15 年目にして解決したことである。闘う若者の労働組合として全労協を引っ張り、労基
法改悪反対の闘い、中国人実習生を奴隷まがいの労働から救出し、シェルターの役割も確保
するなど、地域共闘の要としての役割を立派に果たしてきた。二つの争議組合の勝利和解は、
全労協と、東京総行動、権利春闘・総行動に結集する仲間を大いに励ました。
一方、こうした中で発生した 3 月 11 日の東日本大震災と福島第一原発の人災は、急激に労
働者の生活とその権利をも破壊しようとした。全労協本部を始めとし、多くの仲間が、1995
年の阪神大震災の経験を踏まえ、直ちに被災現地に入り、被災者救援活動に取り組んだ。
NPO 法人労働相談センターおよび協力団体である全国一般東京東部労組には震災以降毎日
労働相談が寄せられ、半月足らずで 120 件の震災がらみの相談が寄せられた。内訳は、男女
が半々で、正規・非正規の割合も半々であり、正社員についても震災による雇用不安の真只
中となった。相談内容は、賃金(休業保障含む)と解雇で全体の 8 割となっている。職種とし
ては「ホテル」からの相談が 1 割あることも特徴的で、観光業被害のすさまじさを物語って
いる。震災による影響に対し、経営者としてなすべきことをせず、労働者に詰め腹を切らせ
る理不尽な経営者が横行している。この時期、全体の相談件数は 3 月=659 件、4 月=756 件、
6 月=657 件というように昨年を大幅に超えて跳ね上がり、記録更新となっている。
4 月 25 日からは、東北全労協、全国一般全国協の東北 4 労組が「労働・雇用相談ホットラ
イン」を展開した。全労協フリーダイヤルの活用も全体で 246 件あり、そのうち東北 3 県で
195 件の 0120-501-581 の回線が鳴り響いた。労働相談件数も 30 件を超えてあり、被災現地
での取り組みに奮闘した。
また、3 月 11 日の大震災は交通マヒを引き起こし、回復が遅れる中、3 月 13 日の外国人の
ための総行動「マーチ・イン・マーチ」は中止となった。しかし、多くの集会が中止せざる
を得ない状況の中で、3 月 25 日の全国一般東京労組春闘ストは、300 名を超える仲間が結集
し、“自粛ムード”を跳ね除け、少年写真新聞社分会支援集会、東伸社の社前集会やたんぽ
ぽ舎による学習講演会を行うなか 11 春闘決起集会を勝ち取り、中小労組春闘の職場からの反
撃を強めることを再確認し牽引した。
中小民間職場の闘いの詳細は、全国一般全国協や全統一労組の闘いの報告として、巻末の
資料編に収録されているので参照されたい。
③公共サービスを守る闘い
新自由主義グローバリゼーションによって、格差社会は貧困を拡大し、都市と地方の格
差が拡大し、国民の生活と安心、地域社会・コミュニティーの基盤を支える公共サービス
が破壊されてきた。
国鉄、通信、郵政、医療、教育など次々と民営化が行なわれ、誰でも・どこでも・等し
く享受できなければならない公共サービスは「富める者と貧しい者」、「都会と田舎」に
よって享受できるサービスの質と量に大きな格差がもたらされてきた。社会的公正と国民
の安心・安全・安定を確保する公共サービスが崩壊しているのである。
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2009 年 5 月公共サービス基本法が成立した。この法律では、「国民の日常生活及び社会
生活を円滑に営むために必要な基本的な需要」である公共サービスに関して、国民の権利
と、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、官民を問わず公共サービスに従事する者の
適正な労働条件の確保を求め、労働者・市民が安心して暮らすことのできる社会を実現す
ることを明らかにしている。
しかし、実際に進行したのは前述した公共サービスの合理化であり、民営化、指定管理
者制度、PFI などによる公務員の人員削減、賃金引き下げ、サービスの質の低下である。
そして臨時・非常勤公務員の増加と「官製ワーキングプア」の出現である。
今、日本は東日本大震災を契機として復興に向けた公共サービスの再建が焦眉の課題と
なっている。誰でもどこでの公平公正な公共サービスを享受できる、地域社会の再建が核
となる復興が望まれているのである。地域社会のライフラインとして電気・水道、鉄道、
郵政・金融、通信、医療、教育を文字通り地域住民の手に取り戻すことが問われている。
そして、公共サービスを担う、正規‐非正規に関わらず労働者の労働環境の整備が求めら
れている。大震災では多くの公務員労働者の自己犠牲的奮闘によって多くの命が救われた。
そして公務員労働者が犠牲になった。公共サービス・公務労働に利益第一主義を持ち込む
ことは決してできないのである。
千葉県野田市の公契約条例が制定され、各地自治体で条例制定への動きも強まっている。
全労協は公契約条例制定にむけた取り組みを進めてきた。今後とも各地で地域共闘を形成
しながら実現に向けて努力していかなければならない。
公共サービス基本法を生かし、公平公正な公共サービスの再建と労働者の雇用を守り、
地域社会を支え、安全・安心社会の実現に向けて闘っていく。
④郵政民営・分社化の抜本的見直しと郵政公共サービス再生の闘い
1)郵政改革法案をめぐる状況について
郵政改革法案は、昨年の通常国会において衆議院で可決し、参議院では国会の閉会に伴
い廃案となり、参議院選挙を経て開催された臨時国会に再度提出された。しかし、「ねじ
れ国会」のもとで一度も審議されることなく、今通常国会に継続審議、先送りとなった。1
月招集された第 177 通常国会では郵政改革法案が最重要課題と位置づけられ、「郵政改革
に関する特別委員会」の設置が決定したが、自民党は委員名簿の提出すら拒否をし、審議
入りをストップさせ、6 月 1 日になってようやく 11 名の名簿を提出した。
民主党内の内紛の激化と内閣不信任決議の提案、菅首相の退任発言とその後の混乱の末
ようやく 70 日間の会期の延長が決まったが、郵政改革法案の行方も不透明である。特別委
員会で審議を早期に開始させ、郵政改革法案の今国会での成立が求められている。
2)郵政公共サービスの再生に向けて
◎ユニバーサル・サービス破壊としての郵政民営化路線
ユニバーサル・サービスとは、一般に「すべての国民が社会生活の基本に関わるサービ
スを均質に、しかも適切な料金で利用可能であること」を意味する。郵政事業においては、
①全国どこに住んでいてもサービスを受けられる、②誰でも経済的にサービスを受けられ
る、③均質なサービスを受けられる、④料金の差別的な取扱いがない、という 4 つの概念
で整理される。小泉「郵政民営化」によって、4 分社化が行われることで郵便ユニバーサ
ル・サービスは大きく後退し、金融ユニバーサル・サービスが排除される制度設計がなさ
れてきた。さらに、郵政民営・分社化路線によって、現在、郵政事業はかってない経営上
の危機に直面している。1つは、民営化路線の象徴でもある JPEX 統合とその破綻による大
損失であり、2つには、分社化による郵便収益構造の劣化である。当初、郵政民営化を強
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行する際、政府が作成した「骨格経営試算」では昨年度、郵便局会社と事業会社とで 1000
億円以上の純利益が予想されていたが、実際は両会社合計で 48 億円の純損失となってい
る。しかも、これは正社員の一時金の削減を受けての数字である。郵政民営・分社化路線
が完全な誤りであり大きな失敗あったことはこの点から見ても明白である。
◎人権としてのユニバーサル・サービス
郵政サービスの本質は、国民の「通信権」の確保であり、金融・保険サービスを通じて
の社会福祉と「生活権」の確立にある。ユニバーサル・サービスは、憲法 13 条(幸福追求
権)、憲法 21 条(表現の自由、通信の秘密)、さらに憲法 25 条(国民の生存権、国の社
会保障的義務)にかかわる基本的人権にほかならない。ユニバーサル・サービスをたんな
るお題目として掲げるならば「無害」な概念におわり、これを人権としてとらえることで
その実現は闘争の課題となる。
3)大震災とユニバーサル・サービス
3 月 11 日の大震災は未曾有の被害をもたらした。郵政関係でも死亡・行方不明者は 59
人にも及び、建物、ATM、車両等の被害も膨大なものとなった。そのような状況の中でも多
くの仲間たちが自らが被災者であるにもかかわらず郵便サービスの提供のために奮闘して
きた。
しかし、その一方で民営・分社化による弊害も明らかになった。5 月 25 日、毎日新聞は
「被災地 郵政分社化が壁」と題して、被災地において実際に起きた具体的な事例を次の
ように紹介している。
「郵便の配達状況や受け取り方法を問い合わせる電話が郵便局会社に殺到したが郵便局
会社では郵便事業会社(日本郵便)が担当する集配体制についての情報を持っておらず、
回答ができなかった。震災により東北地方の拠点で配達用の車とバイク計 450 台以上を失
った日本郵便は、郵便局会社でバイクや自転車が無事でも、許可を得ないと使えない。石
巻郵便局ではバイク数台が被害を免れ、日本郵便支店長が貸し出しを要請し『緊急事態』
と判断されたことでようやく 1 台が貸し出された。郵便局会社が貯金払い戻しのため避難
所に設けた臨時窓口で郵便が預かれなかった。日本郵便社員が配達先で『通帳を預かって
貯金を下ろしてほしい』と頼まれても断らざるを得なかった。」
「全国どこに住んでいてもサービスを受けられる」というユニバーサル・サービスの意
味は、最も身近な公共機関であることを意味するだけでなく、自然災害などの非常時も含
め休止することなく国民はいつでも利用可能であることを必要としている。自然災害時に
もサービスを早期に復旧し、被災者の生活支援をおこなうことが求められている。4 会社
分社化を早急にあらためさせ、三事業一体のサービスを復活させなければならない。
今回の震災を通じ、あらためて郵政事業が社会・地域・住民の生活を支える重要なライ
フラインであるということが明らかになった。これから被災地の復旧・復興に向けても郵
政事業が三事業一体で公共事業としての役割を発揮することが求められている。
(3)公務職場における反行革の闘い(経過及び総括)
1)総人件費削減攻撃との闘い
公務員人件費削減攻撃は、給与構造改革として給与や諸手当等の引下げを進めるとと
もに、定員の純減計画を強行することによって推し進められてきた。
行革推進法等により 2006(平成 18)年度から 2010(平成 22)年度の 5 年間で、国に
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ついては定員の純減目標が△5%以上とされ、その結果、2005(平成 17)年度末にあっ
た 332,034 人の定員が、2010(平成 22)年度末において 302,281 人(社会保険庁の年金
機構移行分△12,280 人を含む)、この間の純減数は△17,473 人、純減率は△5.3%であ
り、目標を超過達成していることが明らかにされている。
一方地方に関しては、これと並行して 2005(平成 17)年度から 2009(平成 21)年度
までの 5 年間について、総務省が「集中改革プラン」を地方自治体に強要してきた。そ
の主な内容は、職員の純減目標△6.4%、給与の適正化として技能労務職員の給与見直し
・特殊勤務手当の適正化・退職手当等の見直し、さらに民間委託の推進や市町村への権
限移譲・事務事業の再編整理・公営企業の経営改革等であったが、その結果、この間職
員定数については△7.5%、約 23 万人の純減が強行されている。
2)10 人事院勧告の概要
2010 年 8 月 10 日に行われた人事院勧告は、官民較差を月例給△0.19%、△757 円、一
時金△0.20 月とする 2 年連続のマイナス勧告となった。しかしその俸給改定にあたって、
50 歳台後半層の一定職級以上の職員について、一律△1.5%の給与減額措置を実施する
こともあわせて勧告された。人事院が、特定の年齢層と特定の職級を対象に一律に給与
減額を行ったことは、人事院自ら公務員給与制度のあり方を否定する暴挙であった。
3)国家公務員の確定闘争
この人事院勧告に対して、公務員の共闘組織である公務員連絡会は、2 年連続の月例
給・一時金の引下げは極めて不満であり、50 歳台後半層の職員給与の一律 1.5%引下げ
措置は到底受け入れられないとする声明を発した。しかし、このマイナス勧告について
さえ、政府・与野党そしてマスコミなど国会内外で、政権与党の掲げた「国家公務員人
件費 2 割削減」が到底達成できないとして、政局と絡めた「深堀り」論議が高まり、勧
告実施は予断を許さない状況となった。
最終的に「深堀り」は許さず、勧告どおりの給与法改正案は 11 月 1 日に閣議決定され
たが、そこに「国家公務員の給与改定については、次期通常国会に、自律的労使関係制
度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図る。なお、その実
現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次
期通常国会から、順次、提出する。」と明記され、国家公務員人件費問題が引き続く課
題となった。
4)地方公務員の確定闘争
地方については、9 月から 10 月にかけて各政令市、都道府県の人事委員会勧告が出さ
れたが、そのほとんどが例月給・一時金ともに引下げとなるマイナス勧告であり、また
一部人事委員会においては国同様の 50 歳台後半層の一律給与減額措置を勧告した。その
結果、各県・政令市ともに、賃金確定闘争の到達点は厳しいものとなった。
地方に対する公務員人件費削減の攻撃は、三位一体改革以来厳しい地方財政削減が加
わり、これに対する闘いは困難をきわめている。そのことは財政再建等を理由とする独
自の給与削減措置の実施に現れており、人事委員会勧告に関わりなく何らかの賃金カッ
トを実施しているのは、10 年 4 月現在で 1797 団体中 1059 団体(58.9%)と高い割合に
あり、このうち都道府県段階では 42 団体(89.4%)に上っている。
5)都労連の確定闘争
都労連の 10 賃金確定闘争は、3 月段階から都側に対し基本要求を提出し、あわせて都
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人事委員会に対する要請を展開して、労働基本権制約の代償措置としての中立・公正な
第三者機関の役割・責務を果たすことを求めて開始された。都労連の都人事委員会に対
する要請は、人事院勧告までに 3 回、そして人事院が「50 歳台後半層一律給与減額措置」
を勧告した以降、これを都に波及させることを阻止すべく、勧告までにさらに 4 回に及
んだ。
10 月 7 日都人事委員会は、例月給について△1,235 円(△0.29%)、一時金の年間支
給月数を 0.20 月分引き下げるマイナス勧告を行った。これは年収にして△10.5 万円の
減収となるもので、例月給・一時金ともに引下げは 2 年連続、例月給のマイナス勧告は
2005 年以来 6 年連続となるものであった。この勧告は「50 歳台後半層一律給与減額措置」
についてこそ、都労連と加盟各単組の厳しい追及により阻止し勧告されなかったものの、
公務員人件費削減攻撃に屈しその役割と責任を放棄する政治的な勧告であり、都労連は
直ちに、不当勧告を許さず、都労連要求に基づく労使協議によって賃金・労働条件を自
主解決することを表明し、確定闘争の山場に突入した。
都労連は、11 月 12 日に 1 時間ストライキを構え、勧告以降 4 波に及ぶ総決起集会と
現業決起集会、都庁包囲デモ等の諸行動を背景に、要求実現に向けて交渉を強化して闘
いを展開した。その結果については最終的に非常に厳しい内容であったが、現業系に関
する技能主任選考の改善や認定技能職員制度(仮称)の新設、定年延長を見据えた人事
制度検討会(仮称)の設置等、闘いの到達点として確認し、労使協議での自主解決をは
かった。
6)教育関連労働者の闘い
1989 年版学習指導要領の「特別活動」が「入学式や卒業式などにおいては、その意義
を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と改
訂されたことをうけて、文科省・各教育委員会は、学校現場に「日の丸・君が代」実施
を強行した。しかし、「日の丸・君が代」が戦前・戦中に果たした役割などから、現場
では抵抗感が強く、特に戦争被害が大きかった沖縄、広島などの地域や、反差別・平和
教育が取り組まれてきた地域では、「国旗・国歌」条項は浸透していかなかった。そこ
で、各教育委員会は教職員に対して「起立・斉唱」の職務命令を出して、強制を行うこ
ととなった。政府は「国旗国歌法」を制定し、東京都教委は「10.23 通達」を出して、
強制の根拠をつくった。
職務命令に反して「起立斉唱」を拒否した教職員たちは処分をうけ、再雇用の道を閉
ざされた者もいた。このたたかいは訴訟となり、2011 年 5 月から相次いで最高裁判決が
出された。判決はおしなべて、「起立斉唱」職務命令は思想・良心の自由を間接的に制
約するが憲法に違反しない、として処分を正当化した。ただし、そのほとんどの判決に
反対意見や補足意見を出す裁判官がおり、この問題が訴訟においても決着するものでは
ないことを物語っている。
こうした中、6 月には、橋下大阪府知事が「君が代起立条例」を制定した。「法律」
で起立斉唱を強制するとともに、起立しない教職員を懲戒免職にするという「処分条例」
も準備している。選挙で議会多数派になったことから一気に、思想・良心の自由を侵害
し、人の内心に踏み込んでくるやり方は、ファシズムの到来を感じさせるところがある。
橋下知事自身も「独裁が必要」と公言しており、この危険な政治的傾向を一地方の出来
事と過小評価してはならない。そのためにも、「君が代起立条例」「処分条例」反対の
運動を全国的に展開すべきである。
公立学校現場は、「日の丸・君が代」強制以降、教職員の萎縮が始まり、闊達な教育
活動はなりを潜めている。これに加えて今日の経済状況・社会状況が教育現場に反映し
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て教育活動は困難を極めている。貧富の格差が教育格差に連動するとともに、非正規雇
用・不安定雇用労働者は自分の子どもたちへの関わりが十分にできないため、子どもた
ちが放置される傾向にある。その一方で、モンスター・ペアレンツ現象は続いており、
教育労働者の疲弊はとどまるところがない。
2011 年は中学校教科書の採択年である。自由社及び育鵬社の社会科教科書は、神話を
史実のように記載し、ファシズムと共産主義を全体主義と同列に記述し、「近隣諸国条
項」を無視した領土記述、労働組合の取扱軽視、ナショナリズム扇動などの問題点を含
んでいる。かつてであれば、どのような教科書であっても、教員が幅を持った教育活動
で間違いを訂正することができたが、管理強化と保護者等の介入のために教科書通りに
教えることが要請され、従って自由社及び育鵬社教科書の採択は、今後の子どもたちの
成長に大きな影響を与える。市民団体や韓国「歴史連帯」などは危機感をもって、両社
の教科書採択反対運動を繰り広げているが、労働組合としての取り組みは弱い。大阪全
労協やユニオンネットのように、労働組合として教育委員会への働きかけをする運動が
必要である。全労協としても、今回の採択を総括して、次回には目に見える運動を行う。
東日本大震災は教育現場にも大きな被害をもたらした。とりわけ福島原発事故は学校
現場と子どもたちに放射線被曝をもたらし続けている。文科省は原発事故直後に子ども
の被曝線量限度を 1 ミリシーベルト/年から 20 ミリシーベルト/年に引き上げる発表を行
った。これには、福島現地の保護者たちが抗議に立ち上がり、文科省も引き上げを撤回
して、被曝線量を最小化すると訂正せざるを得なかった。しかし、原発推進教育の見直
しはなく、教科書記述もあいまいなままである。脱原発プロジェクトを立ち上げて、す
べての原発の廃炉を求める運動を開始した全労協としても、原発推進教育に反対してい
かなければならない。
小学校から大学まで学校現場にも非正規雇用労働者が増え続けている。小学校英語教
育が必須科目になったことから、ますます非常勤職員が増えることになる。また、ALT
(外国語指導助手)など違法派遣・偽装請負が蔓延しているが、文科省も厚労省(労働
局)も取り締まりを行わず、地方公共団体の違法行為を放置している。こうした中、総
務省は地方公務員の自律的労使関係制度なる考え方を打ち出し、地公法等を改正して、
労働組合(職員団体)の組織対象を制限しようとしている。新制度は ILO87 号条約の労
働組合自由設立主義に反するものであり、とりわけ非正規雇用が多い学校現場での労働
組合(混合組合)の労働基本権を制限するものである。この新制度は、やがては民間労
働者に波及して、排他的代表制度(従業員の過半数組織組合だけに団交権を保障する)
につながる危険性があり、公務員だけへの攻撃ではないことを見抜いておく必要がある。
全労協は、2011 年も上記の課題について文科省交渉を行った。今後とも、教育関連労
働組合の全労協への結集を呼びかける必要がある。
(4)労働者のための労働法制確立の闘い
1)派遣法抜本改正の闘い
派遣切りされた当事者の不屈の闘いと派遣法抜本改正を目指す共同行動に結集した力で
2010 年 3 月に民主、社民、国民新 3 党連立政権に改正法案を提出させるところまで行った。
そして、4 月に審議入りした。しかし、普天間基地移設問題を巡り鳩山政権が辞任し、社
民党が連立政権から離脱するなどの事態の中で、派遣法審議はわずか十数時間審議された
だけで店晒しにされてしまった。菅政権になってからは 1 時間の審議も行われないまま通
常国会は閉幕、継続審議となった。その後行われた参議院選挙で与野党逆転が起こり、衆
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参ねじれ国会となった。
ねじれ国会下で困難は増したが、秋の臨時国会でなんとしても成立をと、10 月 25 日、
「共同行動」は 160 名の結集で国会前宣伝要請行動に取り組み、引き続き、労働弁護団主
催の院内集会を 250 名で成功させた。民主党、社民党、共産党の議員挨拶を受け、「今国
会で規制強化の第一歩を踏み出させよう」と確認した。しかし、臨時国家でも審議されず、
再び継続審議となった。
2011 年通常国会開会日に、国会前行動を共同行動で取り組んだ。引き続き 3 月 25 日に
院内集会を企画したが東日本大震災が起こり、中止せざるを得なかった。
派遣法が閣議決定され国会に提出されて以来一年数ヶ月、国会での審議は数時間行われ
ただけで店晒しにされたままだ。そんな中東日本大震災が起こった。そこでは再び派遣労
働者を先頭に有期雇用労働者が切り捨てられた。間接雇用であるが故に、「物」の調達を
ストップするように雇用を破壊していく、リーマンショック時の惨劇が何の変化もなく繰
り返されてしまった。4 月、5 月の非正規労働者の雇い止めによる解雇はハローワークが掌
握した分で 3,200 人、6,800 人と発表された。集計できなかった岩手をのぞき、宮城が 540
人、福島が 1200 人 5 月に雇い止めされている。実際の数はこの数倍になっていると推測で
きる。岩手、宮城、福島 3 県で、震災で職を失った労働者 4 万 5000 人、失業手当受給のた
めの離職票交付件数 13 万件と報告されている。これではいけないと、通常国会が 80 日延
長される中、7 月 13 日に「なんでやらない派遣法抜本改正 震災でも繰り返される派遣切
り」緊急院内集会を再び共同行動主催で開催した。基調報告で棗弁護士は「震災で雇用破
壊が進む中、派遣法規制強化はすべきではない、と経済界は主張している。運動で作って
きた規制強化の流れを逆行させてはいけない。これを跳ね返す運動を、派遣法抜本改正を
突破口に強力に取り組もう」と提起。その後、自動車関連の派遣切り、ソニー仙台工場・
非正規労働者大量雇い止めの現場からの訴え、社民、民主、共産各党国会議員からの挨拶、
全国協東京東部労組、全国ユニオンからの被災労働相談などの報告が行われた。しかし、
我々の闘いは国会を動かすところまで行けず、三度、継続審議になってしまった。
2)有期労働契約規制に向けた動き
2010 年 9 月に有期雇用研究会報告が出され、これを受け、労働政策審議会労働条件分科
会で、昨年の 10 月より審議が開始された。震災による一時中断があったが、中間報告を 9
月に出し、年内には建議をまとめる予定で進行している。
昨年 10 月 14 日、有期労働契約学習会を開催、宮里日本労働弁護団会長の講演を受けた。
講演は、有期研報告批判のみならず、有期労働契約の構造的問題点、日本の有期労働契約
法制の不十分さを諸判例を引いて指摘し、諸外国の規制との比較までと非常に内容豊かな
ものであった。けんり春闘全国実行委員会をはじめいくつかの組合で協力し、「今こそ有
期雇用労働者の権利確立を」と題する学習パンフを作成、職場学習会を連続して取り組み
運動を下からつくろうと準備した。震災で数ヶ月空白期間が出来てしまったが、労政審の
審議は急ピッチに進んでいる。
労政審は、有期労働契約の締結事由、更新回数、利用可能期間、有期労働契約の雇い止
め法理(解雇権乱用法理の類推適用の法理)、雇い止め等に関する課題、均等・均衡待遇
について、正社員への転換の推進について、1 回の契約期間の上限についてなど論点を絞
り検討を進めている。
関西経済連合会(旧関西経営者協会)は、3 月に「非正規雇用問題に関する労働政策の
方向性についての提言=有期労働契約を中心に=」を発表した。90 年代に、組合員名簿の
提出義務や少数組合の否認など労使関係法(労働組合法)改悪提案をした経営者側の要望
を露骨に主張する旧関経協の流れを引き継ぐものだ。「一律規制は雇用の低下を招く、契
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約の自由・その根幹の採用の自由を最大限尊重せよ、有期雇用労働者のセーフティネット
は国が責任を持つべき」として、「締結事由の制限を行なうな、更新回数、利用可能年数
の制限は行うな、雇い止め法理の立法化反対、同一労働同一賃金の考えは誤り」などと有
期契約労働の規制の歴史的流れを真っ向から否定している。
これら財界の動きを警戒しつつ、労政審の審議に働きかけ、必要な法規制をしっかりと
建議するよう取り組んでいく。
3)労使関係法研究会の動き
派遣労働、有期契約労働について、一応、規制の方向が検討される中、請負だから、業
務委託だから労働者でない、として労働法制上の保護も権利も認めないという究極の「労
働法無視」の働かせ方を広げようとしている。トラックの持ち込み運転手は労働者か、電
気、水道の検針、NHK 視聴料集金人は労働者か、機械保守・メンテナンス業務に従事する
者は、と問題は広がっている。
そんな中、そこで働く者が労働者であるかどうかをめぐる争いが増えてきている。労働
委員会では「労働者」と認められながら、地裁段階でひっくり返される事態も生まれてき
ていた。そこで、労使関係法研究会が設置され検討されてきた。検討を重ねている最中に、
新国立劇場運営財団事件、INAX メンテナンス事件の最高裁判決が出され、いずれも原判決
を破棄し、労働者性を認める判決が出された。
研究会報告が 7 月にまとめられ、「労働者性」の「判断要素」を次のように規定してい
る。
<基本的判断要素>
①事業組織への組み入れ 労務提供者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働
力として組織内に確保されているか。
②契約内容の一方的・定型的決定 契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の
内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。
③報酬の労務対価性 労務供給者の報酬が労務供給に対する対価またはそれに類するも
のとしての性格を有するか。
<補充的判断要素>
④業務の依頼に応ずべき関係 労務供給者が相手方から個々の業務の依頼に対して、
基本的に応ずべき関係にあるか。
⑤ 広い意味で指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束。
<阻害的判断要素>
⑥事業者性 労務提供者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引
き受けて事業を行う者と見られるか。
これから、労働政策審議会にかけられ、どのような立法措置になっていくのかは、まだ
はっきりしないが、労働者性を広く認めさせ、労働者の権利と保護を確立する方向で対処
していく。
4)最低賃金引き上げの闘い
中央最低賃金審議会が 7 月 1 日から開催され、目安をめぐり激しい攻防が繰り広げられ
ている。各都道府県の最低賃金審議会も始まった。
できるだけ早い時期に時給 1000 円に引き上げを目指すことと、生活保護を下回る都府県
の早期解消は引き続き課題だ。この逆転現象を逆手に取り生活保護基準を引き下げる方向
で厚生労働省が動き始めたと伝えられている。逆転現象は、最低賃金の大幅な引き上げに
より解消すべきである。東日本大震災を口実に、また、毎回のことだが、中小企業への影
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響を理由に、目安を最低に押さえ込もうと経営者側委員が動いている。大企業の中小いじ
めを自ら改めることが先だ。
にもかかわらず、中央最低賃金審議会は 26 日、全国平均 6 円の引き上げの目安を決定し
た。A ランク 4 円、B、C、D ランクは 1 円という最低の引き上げだ。北海道 13 円、東京 16 円、
神奈川 18 円と、生活保護費との整合性で引き上げられたため平均 6 円になった。
最賃が地場の賃金を実質的に規制する地域(C、D ランク)が 1 円では、最低生活の保障に
ならない。まして、東日本大震災を理由に目安を最低に押さえたことは、そこでの労働者
の生活を底上げしてこそ復興につながるとの切実な要求を無視したものであり許されな
い。
こうした状況の中、日弁連は、7 月 28 日「大震災後のナショナルミニマムを考える~最
低賃金・生活保護基準とは~」と言う院内集会を開催し、厚生労働省に対し、抗議の行動
を起こすと同時に、中央最低賃金審議会の最低の目安引き上げに怒りを表明した。
全国各地では、地域最賃審議会への傍聴、意見書提出、意見陳述要求、最賃引き上げ要
求署名などを、工夫をして取り組んでいる。京都では長年の取り組みを積み重ねてきた結
果 8 年目にして京都総評やユニオンネットワーク京都が京都府最低賃金審議会で意見陳述
をすることになった。中小、非正規労働者の声を地域最賃審議会へ直接届ける取り組みの
強化を図っていこう。
5)震災と雇用問題
①被災労働相談の特徴
多くの労働組合が被災労働相談に取り組んだ。相次ぐ震災リストラが横行し、大手企業
ソニー仙台でも大量解雇が行われた。便乗解雇は、被災現地にとどまらず、全国で行わ
れた。自宅待機を命じられ、呼び出しがこないまま、解雇通知が来た、休業と言われた
が、その間の賃金はどうなるのか、会社が雇用保険を掛けておらず、失業手当がもらえ
ない、など切実な相談が相次いだ。職場が失われ、仕事起こしと雇用保障を同時に追求
しなければならない状況が続いた。生活保障と職業訓練をセットにした対策が必要にな
った。
②厚生労働省特例措置と問題点
阪神淡路大震災の教訓を生かし、厚生労働省は震災直後から多くの通達、指示を出し、
この事態に対処しようとした。雇用調整助成金の要件緩和と手続き簡素化、失業手当給
付条件の緩和などの特例措置がその典型だ。
しかし、計画停電下の休業補償について、戦後直後の通達をもちだし、天災地変で経営
の責によるものでないとし、保障を行わなくても良いと指示した。また、労基法 20 条後
段にある天災地変の際の解雇予告手当支払い除外に関し、除外認定を乱発する事態が生
まれた。6 月 17 日まで、岩手 113 件、宮城 293 件、福島 57 件の数に上る。
現場での取り組みを通じ、行政に対するチェックをしないと、おかしな動きになってし
まう。より一層の努力で、相談活動に取り組もう。
(5)反戦平和…政治課題について
自民党政権が進めた新自由主義政策は、貧富の差の拡大、国内産業の空洞化、一向に実
感できない「景気回復」といった矛盾を拡大させ、こうした政策に疲れた国民世論は自民
党政権の退陣を選択し、2009 年夏の民主党への政権交代をもたらした。普天間基地移設問
題において「最低でも県外」を約束した鳩山政権がアメリカの圧力に屈し退陣した後、同
党小沢グループの金権体質との対決姿勢を打ち出して登場した菅政権だが、基地問題につ
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いては、沖縄県民との約束とアメリカの間で「苦悩」した鳩山政権とは異なり、当初から
対米従属路線を鮮明にした政権運営となっていった。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
についても、国内産業の破壊を招くことから慎重な対応を求める声が多く寄せられたが、
にもかかわらず菅政権は、昨年 11 月のアジア太平洋経済協力(APEC)で農業分野の更なる
開放を打ち出した。
自民党政権下で進められてきた軍備拡張を巡る動きは、政権交代後も基本的には継続さ
れている。イラク特措法に基づく陸上自衛隊のイラク派遣はすでに打ち切られているが、
ソマリア沖海賊対策の海上自衛隊派遣は継続されており、7 月には、さらに 1 年間の延長
が閣議決定されている。ソマリア沖の海賊問題を受け、紅海沿岸のジブチ共和国では、日
本の海上自衛隊基地建設が近日中に始まる。これは、日本国外に建設される初の自衛隊基
地となる。PKO 派遣は、現在ハイチ等で行われているが、新たに南スーダンに対する派遣
も検討されている。沖縄県では、辺野古基地建設とは別に、米軍による高江ヘリパッド建
設問題が焦点化している。
全労協は、菅政権の対米従属路線に反対する立場を掲げ、11 月 13 日の「いらない!APEC
横浜民衆フォーラム」の闘い(横浜市内)に参加、また、11 月末の沖縄知事選についても、
辺野古基地建設に反対する立場で関わった。この他、9 月には原子力空母配備撤回を求め
る神奈川県集会、ワールドピースナウ等に従来と同様参加した。
東日本大震災と震災による福島第一原発事故以降は、脱原発の諸行動が連続で取り組ま
れている。沖縄平和行進は、震災の影響もあって取り組みの規模は縮小されたが、従来ど
おりの取り組みとなった。
また、全労協は「全労協脱原発プロジェクト」を立ち上げ、脱原発 1000 万人アクション
実行委員会に参加、取り組みの強化をめざしている。この中で、全労協独自ののぼり旗を
作成し、市民運動とも交流しながら労働者・労働組合の視点でのアピールを展開している。
また、震災復興の混乱の続く 5 月 18 日、憲法改正原案を審議する参院憲法審査会の運営
手続きを定めた規程が、民主、自民、公明、みんな、国民新、たちあがれ日本、新党改革
の各党の賛成多数で可決された。大阪府など各自治体で、君が代斉唱を巡る教職員への処
分の条例化など、弾圧が強められている。教科書採択を巡っては、「つくる会」系の歴史
修正主義に基づく中学・高校向け歴史教科書、公民教科書が 2 社(育鵬社・自由社)から
出版され、採択の拡大が図られている。これらの教科書は、歴史的事実をゆがめながら、
昭和の侵略戦争を美化して描き、日本という国家への忠誠心をあおる一方で、アジアの歴
史と文化を蔑視するという性格で貫かれている。教科書問題は、教育の反動化の最悪の表
れとみなければならない。こんにち私たちが目指すべき社会は、いうまでもなく多文化共
生社会であり、近隣諸国諸民族との友好を基軸とした関係の構築にある。
全労協の護憲の取り組みは、11 月 3 日の護憲集会、5 月 3 日の憲法集会が中心となって
いる。憲法集会は、全体参加者が若干減少する傾向にあり、全労協の取り組みもややマン
ネリ化している。しかし、改憲に向けた動きが震災に便乗して強められようとしている状
況への危機感を強めて、取り組みの見直しをしなければならない。
(6)女性労働者の闘い
1)女性の状況
平成 22 年版働く女性の実情(厚生労働省)によると女性の労働力人口は 2,768 万人で昨
年比 3 万人減少し、2 年ぶりの減少となったが、女性の占める割合は 42.0%となった(男
性は 3,822 万人で 25 万人減少、3 年連続減少)。労働力率も 48.5%と前年と同じであった。
女性の雇用者数は 2,329 万人で前年比 18 万人増、過去最多となった。雇用者総数に占める
女性の割合は前年比 0.3%増加で 42.6%と過去最高になった(男性は 3,133 万人で 16 万人
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減少)。
非正規の割合は全体 34.3%、男性の非正規率は 18.9%:女性 53.8%と共に拡大した(21
年は全体で 33.7%、男性 18.4%、女性 53.3%と男女ともに人数、割合とも平成 15 年以降
初めての減少)。昭和 60 年の女性 33.1、男性 7.4 と比較すると非正規の増加が、とりわ
け女性に多く出ていることが分かる。また女性は 35 歳以上では 50%を超え、男性は非正
規が多いのは 15-24 歳と 55-64 歳の層であるが、50%以下である。
一般労働者の所定内給与額の男女間賃金格差は 19 年 66.9、20 年 67.8、21 年 69.8 とわ
ずかだが 3 年連続縮小していたが、22 年度 69.3 と 0.5 ポイントも格差が拡大した。うち
正社員・正職員では 72.6 から 72.1 と 0.5 の格差拡大であったが、正社員・正職員以外で
は 77.5 から 74.7 と 2.8 ポイントも格差が拡大した(「賃金構造基本統計調査」厚労省平
成 22 年)。男性は決まって支給する現金給与額、所定内給与額ともに前年を上回ったが、
女性は所定内給与額が前年を下回った。
国連からも男女の賃金格差の是正を勧告されている時期に格差拡大は大きな問題だ。
OECD の平均は男性 100 に対し女性は 80 という水準であり、日本の男女賃金格差の是正は
急務である。
女性の短時間労働者の1時間あたり所定内給与は 979 円と前年比 6 円増加した(男性は
1081 円前年比 5 円減少)。女性の一般労働者を 100 とする時給換算では 65.8 と広がって
いる。性別、雇用形態の違いによる賃金格差の縮小が必要だ。
2)均等処遇が実現するパート法の改定を、派遣法の抜本的改正は急務
改定育児・介護休業法が 2010 年 4 月より施行となったが、依然として出産の前に6割が
職場をやめている。女性が仕事をやめることなく、育児も仕事も両立できる仕組みが重要
だ。有期契約労働者についても利用できるよう求める付帯決議の具体化は進んでいない。
派遣法の抜本改正も全く進展していない。7 月 13 日には院内集会が持たれたが、派遣法
の抜本的改定を求める労働側の闘いも足踏みをしている。
現在厚労省において「今後のパートタイム労働政策に関する研究会」が開催されている。
パート法の3年の見直し時期にあたるためだが、昨年策定された新成長戦略の「同一価値
労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進」、第3次男女共同参画基本計画の「同一価
値労働同一報酬条約(ILO 第 100 号条約)の実効性確保のため、職務評価手法等の研究開
発」を実現するものが求められる。改定されたパート法に基づいて差別が禁止されるパー
ト労働者は厳しい3要件(パート労働法第 8 条で差別が禁止される労働者は正規労働者と
①職務の内容、②人材活用の仕組みや運用など<転勤や配置転換の有無及び範囲>、③契
約期間、の 3 要件が通常労働者と同じであることが必要)の結果 0.1%に過ぎないことが
「短時間労働者実態調査(2010 年)(労働政策研究・研修機構)」で明らかとなった。3
要件のうち②と③は差別を固定化するものであり、直ちに削除されるべきである。
3)第3次男女共同参画基本計画の具体的実現を
昨年 12 月 17 日第3次男女共同参画基本計画が閣議決定された。「2020 年までに意思決
定の場に女性を 30%に」を実現するための 5 カ年計画だ。政権交代後、内閣府特命担当大
臣(男女共同参画担当)に社民党の福島みずほさんが就任し、計画内容の充実、2009 年 8
月に国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)から出された勧告の実現に向けて努力され、3 次計
画は 2 次と比べて充実したものとなった。しかしその後の政権の迷走の中で男女共同参画
担当大臣は 3 人変わり、現在は与謝野馨氏となり、条約の実現に向けた積極的な意思は見
えない。これまでに明らかになっている 8 月 7 日提出のフォローアップ項目(総括所見 18
「民法改正」、28「雇用及び政治的・公的活動など女性の意思決定への参加に向けた暫定
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的特別措置」)の報告骨子もその内容には見るべきものがほとんどない。
3 次計画では「基本的な考え方」目指すべき社会として①固定的性別役割分担意識をな
くした男女平等な社会、②男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのでき
る社会、③男女が個性と能力を発揮することによる、多様性に富んだ活力ある社会、④男
女共同参画に関して国際的な評価を得られる社会を掲げている。さらに喫緊の課題として
①あらゆる分野に 2020 年までに指導的地位に女性が 30%を占めるためにクオータ制も含
めた実効性のあるポジティブ・アクションの推進、国連女性差別撤廃委員会からのフォロ
ーアップ項目の実施、個人単位の制度・慣行への見直し、女性が当たり前に働き続けるこ
とができ、暮らしていける賃金の確保、男女観の賃金格差是正、均等待遇の確保、非正規
雇用の課題への取組、選択議定書の早期締結について真剣に検討を進める、ILO175(パー
ト)、183(母性保護)、111 号(差別待遇)条約の締結などを挙げている。
労働関連では施策の基本的方向として ILO100 号条約(同一価値労働同一報酬)の趣旨を
踏まえ、男女間の賃金格差の解消をはかること明記され、具体的取り組みには「職務評価
手法等の研究開発を進める」が入り、また非正規雇用関連では、「同一価値労働同一賃金
の実現に向けて、法整備も含めて具体的なほり組み方法を検討する」、ポジティブ・アク
ションの推進では「公共調達において労働関係等各種法令の遵守のみならず、賃金も含め
た適正な労働条件の確保、男女共同参画への積極的な取組等を受託企業の条件とすること
について法整備を検討する」、多様な生き方への支援では「配偶者控除の縮小・廃止を含
めた是正の見直しの検討を進める」ことなどが提起されている。これらの方針を職場に生
かしていくことが必要だ。
女性委員会では昨年 8 月に募集された具体的な取組についてのパブリックコメントに意
見を提出した。
4)国連女性差別撤廃員会(CEDAW)へのフォローアップ報告の取組
女性委員会は均等待遇アクション 21 に参加し積極的に活動している。均等 21 として柚
木幹事が JNNC に参加し、現在世話人を務めている。JNNC は本年 8 月 7 日が報告期限のフ
ォローアップ項目に対する NGO レポート作成の取組と政府報告に具体的成果を盛り込みた
いと民主党ほか政党や、内閣府、法務省、外務省などへも働きかけを行い、7 月 4 日には
法務大臣にも直接要請を行なった。
6 月 17 日には内閣府の「聞く会」がもたれたが、配布された政府報告の骨子は、第3次男
女共同参画基本計画に盛り込まれた成果目標の記載はあるが、実現に向けた具体性に欠け
るものであった。
とりわけ条約違反である民法の改正は、1996 年の法制審議会で法案要綱が確認されて以
降、野党として国会に提案・継続審議となってきた法案が政権交代後には与党内で調整が
つかないと今日まで提出されなという状況にあり、8 月 3 日には「人権政策を政治の柱に!
民法改正を求める8.3緊急院内集会」が開催された。
政権交代を機に夫婦別姓の実現を期待してきた多くの女性たちを裏切る状況となってお
り、民法の夫婦同姓規定が、憲法や女性差別撤廃条約に違反するとして、今年 2 月 14 日、
男女 5 人が東京地裁に提訴し、5 月 25 日に最初の弁論が開かれた。人権侵害の法制度を早
急に変えることが必要であり、裁判を注目していこう。
JNNC は 7 月 28 日に CEDAW 事務局あてに JNNC のフォローアップレポートの送付し、8 月
10 日には議員会館で記者会見も行った。日本政府の報告書が 8 月 8 日に公表された。残念
ながらこの2年間の民主党政権の混迷で差別撤廃に向けた政治意思が示されず、報告書は
資料も入れて 11 頁で、民法改正や女性が意思決定の場に 30%という政府目標達成にむけ
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た具体性すら見えないものであった。批准された条約には拘束されるという基本的認識の
欠如、人権侵害の状況を長年放置して平然としている政府・国会・司法の姿勢がまた世界
に明らかになった。
5)男女間・正規非正規間の賃金格差の是正にむけて職務評価をしてみよう
厚生労働者は昨年 3 月に「職務分析 職務評価 実施マニュアル パート社員の能力を
より有効に発揮してもらうために」とう冊子を発行したが、仕事や責任が少しでも違えば
待遇が違っていいという結論を導くようなつくりになっている問題点の多いものである。
同一価値労働同一賃金の実現には職務分析・職務評価がかかせない。国際的に実施され
ている職務評価の手法は、①知識・技能、②精神的・肉体的負担、③責任、④労働環境の
4つのファクターによってかつ性に中立的に評価し、数値化されるが、それを具体的にや
ってみようと均等待遇アクション 21 とペイ・エクイティ・コンサルティング・オフイス
(PECO)がわかりやい DVD「ジェンダー平等社会をめざして やってみよう! 職務評価」
を作成した。
均等処遇を実現するには労働組合の積極的な取組が必要だ。是非職場で DVD を活用して
職務評価に取組もう。
6)ILO100 号条約違反の申立てに注目を
女性差別裁判判決では、2009 年 1 月昭和シェル野崎事件、12 月に兼松事件で最高裁の決
定がなされ(ともに双方の上告棄却)高裁判決が確定した。2009 年 6 月 29 日には昭和シ
ェル現役女性差別事件では東京地裁は労基法4条違反を認めながら資格是正と賃金是正は
認めなかった。
これらの判決は①裁判所に女性の仕事に対するジェンダーバイヤスがある、②均等法成
立以前の明らかな男女差別を「公序に反するとまでは言えない」としたこと、③労基法 4 条
違反を認めながら資格・賃金是正を認めないことは ILO100 号条約に違反するとして、全石
油昭和シェル労組、商社ウイメンズユニオン、ユニオンペイエクイティの 3 組合が、共同
で ILO に対し 100 号条約違反の申立を行っている。すでに 2 年が経過しているが、6 月の
ILO 総会では結論は出なかった。
今回総会では日本政府あてに ILO 条約勧告適用専門家委員会報告が出され、そこには政
労使の三者構成委員会での審議が言及され、日本の男女賃金格差の是正にむけ資料の提出、
客観的な職務評価方法を促進するために賃金制度調査の結果の詳細な報告、労働監督の実
施にむけ、労働基準監督官に提供された具体的方法や指導に関する情報提供を求めている。
3 組合と均等待遇アクション 21 の共催で一昨年 11 月 5 日の院内集会、昨年 5 月 15 日続
き、10 月 9 日には「ペイエクイティ(職務評価)で丸ごと解決! パートⅡ」の集会を開
催、現場から政策へと題して、政党からの参加を得て討論をおこなった。2011 年 7 月 2 日
には 3 回目の集会をもち、職務評価 DVD 上映、前 ILO 労働側理事の中島氏より、条約がで
きる仕組みやジェンダー平等を基本にしたディーセント・ワークに向けた ILO の活動を伺
った。日本は 40 時間労働制を始め労働時間に関する ILO 条約 17 本のいずれも批准してい
ないという。政労使が 4 年にわたって審議し、総会で成立した条約の批准を労働組合とし
て強く求めて行く必要がある。
集会には中国電力に対し一人で男女差別裁判を闘っている長迫さんも出雲から参加し、8
月の控訴審に向けた支援を呼びかけた。女性委員会も参加した。
女性への賃金差別は人権侵害であり、貧困を生みだす元凶でもある。ILO の動きに注目を
していこう。
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7)女性差別を助長する公人の性差別発言を許さない取組み
石原都知事の「閉経した女性が生きているのは無駄で罪」という「ババァ発言」以降政
治家の女性差別発言は続いている。憲法 99 条には公務員の憲法遵守義務が定められている
のに。
「石原都知事の女性差別発言を許さず、公人の性差別をなくす会」は公人による言葉の
暴力を法的に規制するよう求めてロビーイングや「人権委員会設置法」(概要案)を提案
している。
男女平等な社会の実現にむけ、4 選された石原都政へ警戒とそして公人の性差別発言へ
の監視が必要だ。女性委員会は引き続き参加し、通信で状況を報告していく。
8)この 1 年の取組
女性委員会通信は、ほぼ毎月定期的発行を継続し時々の課題を紹介してきた。また投稿
も幅広く集まり、いろいろな話題が載るようになった。2010 年 11 月 26 日に 20 回総会を
「フォローアップ項目の実現で男女差別をなくそう!」をテーマに開催した(交通ビル会
議室)。
4 月 22 日には春の学習会として、スーパーのレジで働く非正規の女性たちの解雇撤回の闘
いを描いた韓国ドキュメント映画「外泊」の上映会を行い、意見交換と交流会を行った。
3 月 11 日の大震災と原発震災は未だ収束の目途もたたないが、女性委員会も脱原発社会
に向けて集会やデモへの参加を呼びかけ、7 月 16~17 日には静岡で開催された「廃炉は浜
岡から全国集会」のアクションにも参加した。
(7)国際連帯
昨年は横浜で APEC が開催され、世界から多くの労働者・農民・市民が来日した。突然
TPP(環太平洋戦力経済連携協定)の参加問題が議題となり、アジアの農民も多数抗議行動
に駆けつけてきた。全労協は神奈川県共闘を中心に、反 APEC を掲げる市民団体とともに国
際シンポジュームや抗議デモに参加した。新自由主義による世界支配と農漁民切り捨て、
労働者の貧困化を進める政策に国際連帯で反対していく。
昨年は準備不足もあり、韓国民主労総の労働者大会に参加することができまかった。韓
国からは民主労働党のイ・ジョンヒ代表が来日し、講演会の開催に協力を行ってきた。今
後とも韓国をはじめとしたアジアの労働組合・労働者との連携・交流を強めていく。
国際連帯活動の大きな柱に世界から戦争を無くし、核兵器を廃絶させる闘いがある。イ
ラク戦争からアメリカ軍の撤退が進んでいるが、同時にタリバンとの戦争や自爆テロは未
だ頻発し、アフガニスタンやパキスタンへ拡大すると傾向にある。イラク・アフガニスタ
ン戦争の停止を求める国際反戦行動は続いている。ワールド・ピース・ナウなど国内の反
戦団体とも連携し、国際共同行動に取り組んできた。
(8)第 82 回メーデー
第 82 回メーデーは 5 月 1 日、東京の日比谷野音の他、大阪、京都など各地で取り組まれ
た。残念ながら、今年も統一したメーデーとならず、全労連は 5 月 1 日に代々木公園を中
心に取り組んだ。連合はメーデーを自粛し、4 月 29 日に東日本大震災支援集会とし、露天
も縮小、デモは取り止めた。
第 82 回メーデーは東日本大震災の影響によって、華やかなことは自粛すべきとする社会
ムードが拡がっていたが、私たちは被災地の人々を励ますためにも被災地との連帯を掲げ
て取り組み開催した。会場カンパも 65 万円を超える募金が集まった。
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(9)組織強化…拡大の闘い
1)東日本大震災で活躍した労働相談フリーダイヤル
大震災によって多くの労働者が職を失い、直ちに当座の生活を維持するために政府の援
助が求められた。政府は阪神淡路大震災の教訓から、労働保険、雇用保険、社会保険等の
特例処置を決め、いち早く対応することになった。しかし、現地の行政機関の崩壊もあり、
実際に諸手当等の支給にあたっては混乱することになった。全労協労働相談窓口には 3~4
月にかけて電話相談が殺到した。全労協本部ホームページによって知ることができた東北
地方の相談窓口のみならず、東京でも相談が多く寄せられた。昨年から開設されたフリー
ダイヤル(0120-501-581)が大いに役立つこととなった。ホームページによる私たちの活
動をしっかり知ってもらうことの大事さを改めて確認することができた。
2)機関誌活動の強化
機関誌「全労協」の毎月 1 日発行体制がようやく定着した。編集委員会体制を整備し、
また各地からの報告を広範囲に広い、全国の活動が刻一刻と知ることができるようにして
きた。また、写真を多く使い、視覚による表現に工夫してきた。今後も定期発行体制を厳
格に維持し、また、配布先も拡げていきたい。
3)「公務員制度改革」をテーマに組織化合宿
昨年度、「官製ワーキングプアと公契約条例」をテーマに組織化のための交流合宿から、
今年度は公務員制度改革の中で取り上げられてきた「自律的労使関係制度」に焦点を当て、
問題点を検証する作業を行った。全労協は公務労働の中で拡がる非正規労働者の組織化を
合同労組として進めてもきた。大阪教育合同労組や中小の合同労組においても非常勤公務
員が多数参加する時代ともなってきた。
こうした中で、公務員労働者にかけられた攻撃に反撃し、正規公務員の雇用と労働条件
を守るためには正規‐非正規共同の取組みの必要性を訴えてきた。そうした観点からも「自
律的労使関係制度」の問題点をしっかり把握し、対決することが求められたのである。そ
こには労働組合法を根底的に覆す、交渉単位制や従業員代表制へ道を開く危険性が潜んで
いることも明らかになった。今後の政府の動きを注視し、まずは公務員のスト権を含む労
働基本権獲得の闘いを強化することが確認できた。
4)組織拡大について
今年度は新規加入組織は一労組であった。組織拡大を闘う、民間中小労組の奮闘が報告
されているが、全労協全体としては組織人員の減少傾向が続いている。公務員労働者への
激しい人員削減攻撃や、民間におけるリストラによるものである。労働組合組織率が 18%
を前後する状態が続いている。改めて未組織労働者を仲間に迎える活動に全力をあげる必
要がある。
また青年労働者・女性労働者の活動を発展させる活動が十分できていない。この反省を
しっかりふまえ、全労協発展のエネルギーとして青年運動・女性運動を位置付け、支援し
ていく必要がある。
また、全労協の闘いの大きな柱であった国鉄闘争が終結した。そこにこめられた全労協
運動の骨格である「総評労働運動の良き面の継承」を今日本の労働者が置かれている状況
にマッチさせた政策と組織へ転換を図ることが求められている。この一年、全労協の新た
なあり方や政策・組織方針を追求してきたができていない。次年度に於いてしっかり議論
を進めていく。
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2011 年度活動方針
1 情勢の特徴
(国際)
①世界経済の混迷が続いている。EU・ヨーロッパではアイルランド、ギリシャの財政破綻
に続いて、今年 4 月にはポルトガルも EU に財政支援を申請した。リーマンショックによる
経済破綻に直面したアメリカはオバマの金融緩和・国家財政投入によって自動車産業の回
復を果たしてきたが、依然 9%前後の高い失業率に見られるように雇用回復のない景気回
復となり、一方投入された資金は再びバブル化し、金融資本の肥大化や、原油高騰の資金
に消費される状態が続いている。
アメリカ財政は赤字を大きく膨らませ、債務不履行が現実化するという緊張した事態に
世界が注目するまでとなった。どうにか債務上限法の成立と限度額の引き上げによって事
態を回避したものの、ドル安は続き、株価は大幅に下落した。そしてアメリカ国債の格付
け引き下げを端緒に、世界で株価は激しく変動を繰り返し、世界同時株安と円高の状態が
続いている。いまアメリカが世界経済の不安定要素となり、EU 経済の低迷とともに資本主
義の行き詰まりは明らかなものとなっている。
昨年の中間選挙はオバマ民主党の敗北によって上院・下院の与野党逆転…ねじれ議会と
なっている。来年の大統領選挙はオバマ大統領にとって大変厳しい状況となっている。ア
メリカでも不安定な政権運営が続くことになる。
②こうした赤字財政が続く米国経済の状況の中で、アフガン、イラク戦争による出費を押
させるために、オバマ政権は米軍をアフガニスタンから撤退させることを急いできた。
そして、「対テロ戦争」の象徴としていたアルカイダのビンラディン容疑者を潜伏先で
あったパキスタン国内に米軍を直接投入して殺害した。しかし、9・11 テロとの関わりも十
分証明されないままに、直接殺害するという、イラク戦争を強行したブッシュ前大統領同
様のアメリカンスタンダードであり、許されるものではない。
また、オバマ大統領は就任にあたり、核兵器のない世界をめざすと宣言してきた。しか
し、アメリカでは依然として臨界前核実験が繰り返されてきたことが判明している。核兵
器のない世界の実現こそ急がれなければならない。
③中近東・アフリカ諸国では民主化・ジャスミン革命の波が広がった。チュニジアから始ま
った、強権政治に民衆による異議の申し立て、無血によって政権の移譲を実現した民主化
運動はエジプトでもムバラク長期政権の打倒に成功した。この市民による直接民主化の動
きはジャスミン革命とも呼ばれ、全世界に大きな影響をもたらしている。
リビアではカダフィ政権との激しい戦闘が国内全域に拡がり、内戦状態となっている。
NATO 軍の介入が行なわれ、戦車による攻撃、空爆などもあり多くの市民が犠牲となってい
る。
④中国経済はいくらか成長率が低下したとはいえ、急成長を続けている。GDP は世界第 2
位となり、経済大国への道が続いている。そして世界経済再建の牽引力としてインド、ブ
ラジル等とともに大きな発言権を持とうとしている。更に、海洋権益の確保をめざした動
きは南沙諸島(ベトナム、フィリピン)を巡る緊張を呼び起こし、南アジア諸国との摩擦
を引き起こしている。急成長のひずみは高速鉄道脱線事故に見られるように技術的な弱点
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も抱えている状況も露呈している。
国内ではモンゴル、チベットなどの少数民族問題とともに、成長から取り残された農民
や労働者のストライキ、デモが頻発し、政府の成長一辺倒の政策から貧富拡大による社会
のひずみを是正することが求められている。
⑤中南米の動向
6 月、ペルー大統領選はウラマ新大統領がフジモリ氏を破り勝利した。これはエクアド
ルやボリビア、ブラジル、ベネズエラなどアメリカの包囲下から自立的な経済建設・政治
的独立を求める動きが中南米で続いていることを示した。
⑥日本の福島第一原子力発電所の事故は世界中に大きな衝撃をもたらしている。原子力に
頼るエネルギー政策の抜本的見直しを求める運動が世界規模で拡大している。世界各地で
大規模なデモが頻発している。ドイツ 20 万人、原発大国と言われるフランスでも数十万人
規模のデモが「フクシマを繰り返すな」というスローガンを掲げて行なわれている。ドイ
ツでは政府が原発エネルギーの放棄を宣言し、イタリアでは国民投票によって「原発よさ
ようなら」を圧倒的多数で決定した。原子力から太陽や風力など再生可能エネルギー政策
への転換が進み始めている。
(国内)
①昨秋以降、円高が続く中にあっても、大企業は業績回復を果たしている。3 月期の決算
報告では多くの企業でリーマンショック以前の数字まで回復していることが報告されてい
る。失業率も少し好転し 5%を下回る状態となっている。有効求人倍率も 0.6 倍台に回復
してきた。しかし、その内実は就労人口の減少と、正規社員の減少である。新卒就職率は
今期も大変厳しい状況が続き、就職氷河期の再来となっている。日本の相対的貧困率は 16
%と最悪の数字を示し、年収 300 万円以下の世帯は 32%となっている。生活保護世帯も 140
万世帯を超え、増え続けている。非正規労働者は全労働者の 34.3%(労働力調査 2011 年 4~
6 月期平均)に達している。
日本経済の回復傾向は一握りの大企業に集中し、全体的にはデフレ経済は続き、貧困と
格差社会が拡大し続けている。
②3 月 11 日、東日本一帯を襲った大震災の発生と福島第一原発の事故は未曾有の被害をも
たらしたばかりでなく、原発事故による放射能の汚染は深刻で新たな被害を拡大している。
原発から 30 キロ圏を中心として避難地域とされ、放射能に汚染された大量の水は海洋に放
棄された。また広範囲に汚染された野菜、茶、肉牛など食品の汚染は深刻さをまし、子ど
も達は屋外で遊ぶことも出来ない状況が続いている。
また震災と計画停電・節電を口実にした首切りや、賃金引き下げが被災地ばかりか首都
圏でも行われ、非正規労働者がそのターゲットとされた。そして東北地方の企業活動は大
きな痛手を受け、農業・漁業にも壊滅的な打撃を与えた。
③放射能汚染は福島以外でも深刻な状況が判明している。下水道汚泥や焼却灰に高濃度の
放射線が測定され、処理もできないままに放置された状況が続いている。日常の職場で、
「見えない・消えない」放射能をどう処理していくのか、職場の労働安全に新たな課題を
突きつけている。
また、福島原発では原子炉の制御のために必死の作業が続けられている。その作業に当
たる労働者は過酷な条件の下で被爆による健康被害にさらされながら作業が行われてい
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る。そしてその多くが協力会社といわれる下請け・孫請け労働者である。
④静岡・浜岡原発は菅首相の要請によって停止された。しかし、いまだ全国で稼働してい
る原発は 15 基もある。経産省や財界が目論んだ九州電力・玄海原発の再稼働に当たっては
市民の意見を聞くと装って「やらせ」も発覚している。しかし、福島原発事故以降初めて
北海道電力の泊原発が 8 月 18 日から営業運転を開始した。
菅首相は脱原発を宣言し、「再生エネルギー特別処置法案」を提案し、原子力依存から
再生可能エネルギーへ転換を図ろうとしているが、退陣を表明している首相にその他閣僚
は政府方針とは認めていない。また、経団連、電力業界、官僚と自民党や民主党内の一部
は激しい抵抗を行っている。経団連・米倉会長は福島第一原発の事故について「よく地震
・津波に耐えている。」と放言し、「原発は必要。再稼働を」と繰り返し発言している。
また、東京電力の事故に対する責任には一切言及せず、「賠償は政府で行なえ」とし、
経済発展のためには人々の健康被害は取るに足らないと言ってはばからないのである。
⑤原発事故を受けて「連合」は原発推進、輸出を奨励するという政策を転換し、当面推進
政策は凍結し、見直し議論を行うことを決定した。また、全労連は「原発ゼロ」の社会を
目指すとして、脱原発の方針を明らかにした。放射能被害の深刻さは地域社会を破壊し、
子どもを傷つけている。また日常化した被曝労働の深刻さを見れば明らかである。
⑥東日本大震災は未曾有の被害によって日本の国民に新たなナショナリズムをも植え付け
ようとしている。被災者救援は全労働者・民衆の緊急の課題でもあった。外国からの支援
も要請された。しかし、そこで行われたのは米軍による「トモダチ」作戦や「がんばれ日
本」「日本は強い」「日本は一つ」とする宣伝の氾濫であった。
アメリカ軍による大規模な空母や揚陸艇なども動員した「トモダチ」作戦はマスコミに
よって大々的に報じられた。その実、救援活動の実際は福島原発から 80 キロ圏外にあり、
放射能に汚染された際の訓練であったことも指摘されている。
⑦大震災は政府・国会を機能麻痺にし、普天間基地問題や労働者派遣法改正議論など重要
な政策は放置された。与野党は菅首相の退陣を求める政争に明け暮れている。民主党の内
部も混迷を深め、まとまりのない状況に陥っている。岡田幹事長は菅首相退陣と引き替え
に政権交代のためのマニフェストの放棄を次々に自公に約束する事態となっている。
菅首相は退陣を示唆したものの、居直りを続けた。ようやく 8 月末をメドに退陣を表明
した。民主党代表選は候補者が乱立し、誰が選ばれようとも現状が好転する見通しはない。
⑧ 最高裁は「日の丸・君が代」の強制に反対して抗議した教職員の処分に関する判決を
連続して出した。「思想・信条の自由を間接的に制約する」としながらの処分を合憲とす
るものである。一連の判決には多くの反対や補足意見がついた。
大阪府橋下知事は「日の丸君が代」起立条例を「維新の会」を使って強行成立させ、ま
た、府職員基本条例や府教育基本条例を制定し、「愛国心」の強制や業務指示への絶対服
従・従わないものには懲戒処分にしようとしている。「維新の会」を使い、議席数の力で
何でも押し通すファッショ的な運営を行っている。
⑨日本の労働者は依然として貧困と格差社会に閉じこめられている。失業率は少し改善し
たというものの、依然として高い水準にあり、特に若者の深刻な就職難は続いている。新
卒は超氷河期となっている。震災の追打ちをうけて解雇と賃下げに労働者は直面している。
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また、食品を扱う職場などでは放射能汚染によって仕事は激減し、価格は暴落して経営
危機に陥るところもでている。雇用が脅かされはじめている。
また、一向に減らない自殺者数は震災によってさらに増加している。昨年を大きく上回
るペースであり、生活苦・経済苦を原因とする者から、新たに「原発がなかったら!」と
放射能汚染によって家と土地と家畜など全てを失って自ら命を絶つ人が増えている。また、
避難所での孤独死は阪神淡路大震災から再び繰り返されている。
⑩福島第一原発の事故は世界に衝撃をもたらした。原子力(核)に頼るエネルギーの危険
性を目覚めさせた。世界各地で反原発の闘いが繰り広げられている。ヒロシマ・ナガサキ
に続いてフクシマは「核・原子力」を根絶しようとする運動の象徴となった。
日本でも大きな取り組みが行われている。脱原発は小さな子どもを抱えた母親の必死の
願いとなっている。6 月 11 日には全国 114 カ所で「脱原発 100 万人アクション」が行われ、
母親達は文部科学省にも直談判に赴き、福島市内でデモが行われた。そして大江健三郎さ
んなど著名人の呼びかけによって「さようなら原発 1000 万人アクション」がスタートして
いる。1000 万人の署名と 9 月 19 日には 5 万人集会(明治公園)が準備されている。
⑪震災からの復興に向けた基本計画を確定する復興構想会議が提言を発表した。その骨格
は「地域主体の復興が基本」とし、「東北の潜在力を生かし、技術革新を伴う復旧・復興
を目指す」としている。しかし、その具体策では既存の農漁業者の権益を排除し、新たな
民間企業の参入と規制緩和を提言するなど、復興の名の下に新自由主義による業界再編が
見え隠れするものとなっている。また復興の財源に所得税、消費税や法人税などの大幅な
増税を取り入れ、地元住民が主体となった復興とは逆行するものとなっている。そして大
増税によって労働者民衆に新たな苦痛を強制しようとしている。
2 闘いの基調
新自由主義による「貧困と格差社会」のなかで、日本の労働者はワーキングプアといわ
れる状況となり、また過密労働と競争にかりたてられてきた。そして、東日本大震災と福
島第一原発による放射能汚染という未曾有の被災にも直面し、いま、労働者民衆は生活再
建を何から、どのように始めるのかという大きくて重たい課題を突きつけられている。そ
の答えを真正面から受け止めることができるのか、日本の労働者・労働組合はその真価が
問われている。
労働者・民衆の貧困化が進む中で、私たちは反貧困運動などの社会運動との連携を求め
られてきた。いま、震災からの復興に直面して、農業・漁業に携わってきて被災した人々
と共に地域社会の再建・復興を実現する闘いが加わることになる。
全労協はこの大きな課題に全力で立ち向かい、日本労働運動の再生・再建に繋げていく。
以下、今年度の諸課題を中心として、闘いの基調を提起する。
①震災復興を全力で支援し、農・漁民と連携した労働者の生活再建を実現する闘い
・被災労働者の生活再建と雇用の創出、
グリーン・ニューディール政策の追求・・・農・漁民との連帯
・原子力依存のエネルギーから再生可能な自然エネルギーへ政策転換を進める闘い、
全ての原発を停止・廃炉へ・・・脱原発闘争の強化
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・福島第一原発事故、放射能汚染の収束へ
放射能汚染からの避難、こどもの健康を政府の責任によって実現させる
原発作業員の健康と労働条件の確保
・・被曝労働の防止と労働安全衛生法の整備
食品の安全性の確保、放射能除洗の徹底
・増税路線との対決
・地域社会の再建を求めて闘う
地域運動への積極的関与・・社会運動としての労働運動へ
②競争社会から共助社会の再建、「ディーセントワーク」の実現へ
・新自由主義を拒否し、総ての労働者が「人間らしい労働と生活」を享受できる社会
の実現を求めて闘う。
成果主義/能力主義反対、労働者保護のため規制を強める。
非正規労働の規制・・・派遣労働、有期雇用契約の規制
長時間労働の規制・・・過労死、精神疾患、「家族」崩壊を止める闘い
生活できる最低賃金の保障、公契約条例を全国で!
雇用形態、性別、国籍による差別を許さず、均等待遇の実現をめざす。
労働法制改正運動の強化
・・派遣法、労基法、パート法、有期労働契約‐労働契約法の見直し
③セーフティーネットを全ての労働者へ
・震災被災者の救済へ法の拡張適用
社会保険・雇用保険、生活保護の充実、事業再建への経済的支援
反貧困・社会運動との連携、強化
④公務員制度改革との闘い、公共サービスの再確立、
・行政改革に反対し、公務員労働者の労働基本権確立
公務労働の位置付けを再確立(社会生活の要は公務労働によって担われている。)
ILO 条約に基づく労働基本権の確立
・公共サービスの再確立
誰でも何処でも公平・公正なサービスを!
教育/通信/郵政/金融~安全・安心・安定した公共交通の確保
医療・・医療僻地の解消・・安価な国民皆保険と医療格差の拒否
⑤護憲・平和
・反原発と反核運動を結びつけて闘う
原子力発電所の閉鎖と核兵器の一掃、
使用済み核燃料の使用国の責任において処理・解決を求めていく
(後進国を核の墓場にしてはならない。)
・平和憲法擁護‐9 条改憲阻止
・沖縄反基地闘争の強化、全ての米軍基地撤去を求める闘いの強化
・「動的防衛力」への転換を許さず、自衛隊の海兵隊化、先島への配備反対!
海外派兵の恒常化反対、憲法違反の海外基地建設反対!
⑥組織化へ全力を!
全労協の組織強化・拡大
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・未組織労働者の組織化へ活動費の投入
ホームページ、機関誌、0120 相談ネットの充実
・全労協運動の強化と NC を超えた連携の強化
3 具体的な闘い
(1)12 春闘・・春闘の再構築
①「震災復興連帯春闘」・・・労・農・漁民連帯
11 春闘は大震災によって「自粛」を余儀なくされた側面がある。自粛春闘に負けない闘
う春闘へ、今こそ、生活できる賃上げの実現を求めて要求をしっかり掲げ、ねばり強い闘
いが求められる。スト権を背景に労使対等な立場でねばり強い交渉を重ね、必要であれば
断固としてストライキを貫徹する闘い、闘う春闘を復活させていく。
また、東北地方の仲間の復興にむけた闘いに全力で連帯していかなければならない。引
き続くボランティア活動、相談活動を強め、復興事業に労組が関与し、自治体/地域社会を
主体に民主的で自立的復興を「震災復興連帯春闘」を実現させていく。働く場所を失った
労働者への手厚いセーフティネットの保障と、生活できる最低賃金の確保に向けて闘いを
進めていく。今こそ、公契約条例・法が必要であり、また制定のチャンスである。公契約
条例の制定を求める闘いを強化しよう。そして、生活できる賃金として最低賃金制度の本
来の目的である憲法に保障された生活を保障できるものとして大幅に引き上げること、生
活実態に即して引き上げる闘いを強めていく。
②「官民‐連帯春闘」元年へ
政府は行政改革の中心課題として、国家公務員の人員削減、賃金引き下げを進めてきた。
いま、形ばかりの労働基本権(協約締結権のみ?)を付与して、人勧制度を破壊し、労働
条件切り下げを強行しようとしている。新しく導入されようとしている公務員労働者の自
律的労使関係制度では公務員労働者が直面する問題や、公共サービスの再建に解決を与え
るものとはならない。公務員制度改革・自律的労使関係制度を拒否し、スト権を含む労働
基本権の付与を求め、スト権を背景に直接交渉による解決を求める闘い、民間春闘との連
帯・連携の強化が求められていく。
③「均等待遇の実現」・・・職場闘争、非正規労働者を闘いの中心に!
新自由主義・市場原理主義、「利益第一」「株主第一」という経営理念の下で、資本は
その利益の源泉をもっぱら人件費のリストラに依存してきた。景気の変動や経営の改廃に
経営努力を行うことなく、安易に労働者の首切り、賃金引き下げなどを強行し、使用者と
しての社会的責任を放棄することに何の痛痒も覚えない状態となってきた。非正規労働者
の拡大は雇用形態や性別、国籍の違いによる差別を当然のこととしてきた。均等待遇を求
める闘いは労働者にとって根底的な闘いとなる。
④「就職超氷河期から雇用獲得」、「雇用の質」のアップを求めて闘う
非正規から正規雇用への転換を求める闘い
雇用は①安定雇用②直接雇用③均等待遇の原則が守られなければならない。新自由主義
の下で、労働法制は次々に規制緩和され、経営者は労働者を使用するに当たって野放しの
状態となってきた。「新たな日本的経営」と称して非正規雇用は拡大し、経営モラルは大
企業まで崩壊し、「ブラック企業」という呼称が社会に定着した。非正規労働者となれば
生涯正社員ともなれず、ともすれば会社経営者の都合だけで「職と食と住居」を一度に失
--3231 -
うことがリーマンショックによる不況で明らかになった。雇用の維持・確保を求めていく
と共に雇用の「質」を重視して闘いを進めていく。
正社員といえどもイジメ、ハラスメント、過密労働に追いかけられ、過労死とメンタル
疾患にさいなまれている。劣悪な労働環境から人間らしい労働(ディーセントワーク)の
実現こそ闘いの大きな目標である。
全労協は「幅広い共闘と地域共闘」を基礎に闘いを作っていく。12 けんり春闘を友誼組
合と共に形成し全力で闘っていく。
(2)国鉄闘争・JAL 解雇撤回闘争…全ての争議勝利に向けて
国鉄闘争と全ての争議の勝利
第 22 回参議院議員選挙を前に菅首相による「消費税引き上げ」発言、「政治とカネ」問題、基地
問題などにより民主党は大敗、与野党勢力のねじれ現象を生む中で、尖閣諸島問題やビデオ流出問題、
暴力装置発言に伴う仙石官房長官・馬渕国土交通大臣に対する問責決議案も可決する中、今年1月 14
日に菅第二次改造内閣が発足した。
加えて、3 月 11 日に発生した「東日本大震災」は 2 万人を越える死者・行方不明者を生み出し、広
範囲にわたり甚大な被害を及ぼした。それとともに東京電力福島第一原子力発電所では、地震と津波
により全電源喪失という事態を引き起こし、炉心溶融・水素爆発・放射性物質の拡散などあってはな
らない深刻な事態を生み出し未だ収束の目途はたっていない。
震災や原発への一連の対応・情報公開をめぐり、東京電力はもとより政府・与党への不信感は増大
し、その結果として、今年 4 月に行われた統一地方自治体選挙結果にも表れている。
4 者 4 団体は、3 月 15 日に「4 者・4 団体会議」を開催し「①3 月 11 日に発生した東日本大震災に
よる被災者に心からお見舞い申し上げ、できる限りのご支援を行うこと。②政府・政党は総力を挙げ
て震災対策に当たっており、平時の国会ではないこと。③『雇用問題』の解決期日を 3 月末日までと
してきたが、かかる事態を考慮し、政府・政党への要請なども 4 月末まで中断し、改めて政治判断を
求めること。」を旨とする「JR 不採用問題―雇用問題への対応」を確認し、当面は年度内の 3 月末を
超えて事態の推移を見守り、対応することを確認している。
国鉄闘争で 4 月 25 日には参議院決算委員会では社民党・又市征治副党首の質問に対し、菅内閣総
理大臣から「JR での雇用については、具体的な要請が関係する政党側からあれば国土交通大臣を中心
に政府として適切に対処してまいりたいと考えており、その場合にも先ほどのように、JR による採用
を強制まではできないが、政府として適切な対処に努力したいと思っている。」と答弁された。
この到達点は、これを支える国労組合員・そして共闘団体など真摯な議論と運動の積み重ねの中で、
その団結は完全に回復し、相互の信頼関係がより深まる中で、「4 者・4 団体」が当事者としての責
任を果たす体制が作り上げられ、その事によって最高裁における一括和解成立として「解決の出口」
を見出す結果につながったものと言える。
そして、6 月 13 日、政府・国交省は、JR 各社に対し、民主党・社民党・国民新党の 3 党による「国
鉄改革」1047 名問題の政治解決(雇用問題)の要請書を手交した。さらに、これに呼応した政府・与
党とJR各車との折衝も進められたが、JR 各社は政府からの要請に「受け入れられない」との態度を
表明した。
6 月 22 日、国交省は政治窓口を通じて「これ以上の要請、説得は困難」と判断した旨を通告して
いる。
この事態を受け、国労闘争団全国連絡会議は、ただちに現状の分析を行うとともに、国労闘争団で
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構成する 3 者は断腸の思いで、この厳しい現実を受け入れる苦渋の決断を選択した。
国労は当事者である闘争団の判断、国労闘争団全国連絡会議の意思決定を踏まえた上で、昨年 4 月
9 日の民主党・社民党・国民新党・公明党の 4 党と政府との「政治的合意」に基づく雇用問題の解決
について、その終結をはかることとした。
24 年にわたる闘いの中で、時には解決の道筋や戦術をめぐって、意見の違いや激しい対立が生じ
たものの、「政治解決」という一点で取り戻した当事者の団結を中心に『当事者の判断』を最優先さ
せた対応を基本としながら取り組みを進める中で4 者4 団体の統一と団結の力によって今日の到達点
を迎える事が出来た。
不採用問題については、政府・与党の「雇用確保」に向けた努力の限界と「JR 各社の基本的考え方」
について万感の思いが積もるものの、私達を取り巻く厳しい政治環境の下で熟慮に熟慮を重ねた結果
として示された当事者の判断を尊重し、24 年の時を経て JR 不採用問題は、ここに終結に至った。
いずれにしても、この間、当事者・家族や、これを支える国労組合員・そして共闘団体など真摯な
議論と運動の積み重ねの中で、その団結は完全に回復した。そして相互の信頼関係が深まる中で「4
者・4 団体」が当事者としての責任を果たす体制が作り上げられ、 最高裁における一括和解成立、雇
用問題の解決には不十分さは残しながらも、一定程度の解決へと結び付けてきた。この到達点を確認
しながら、今後の課題に活かしていくことである。
私たち全労協は、JR 不採用問題をはじめとした国鉄闘争に、発足以来 22 年間にわたって共に連帯
し共に闘い続けてきた。そこで得てきた様々な教訓や成果も同時に見出すことにつながっている。
今後、この国鉄闘争の総括を行いながら、全労協運動のさらなる強化・発展に向け取り組みを強め、
1047 名不採用問題が終結をしても、反失業闘争に終わりはないことを確認し合うとともに、国鉄闘争
から学んだ成果や反省点を、全国各地、各労組が取り組んでいる全ての争議の勝利に活かすことが重
要になっている。争議団の連携を強化し、支援体制の強化を図っていく。
JAL 解雇撤回闘争を全力で闘おう
日本航空が経営再建の為として昨年末 165 名のパイロット、客室乗務員を整理解雇にし
た。しかし、この解雇は当初の人員削減目標 1500 名を大幅に上回った 1733 名の希望退職
があったにもかかわらず強行されたものである。そして経営状況も大幅に目標を上回る利
益があげられてもいたのである。これは政官財による JAL 経営の破綻に対する責任をほお
かぶりし、労働者に転嫁するとともに、闘う労働組合である乗員組合と客室乗務員組合
(CUU)を日本航空から排除する目的に他ならない。
いま、当該は裁判闘争や、労働委員会闘争を闘っている。また、支援のための共闘会議/
支える会が結成され、闘いは大きく発展しようとしている。裁判は 9 月に稲盛会長の証人
尋問を決定している。
全労協は JAL 解雇撤回国民共闘、支える会に参加し、全力で解雇撤回を実現するまで全
力で闘かっていく。
(3)反リストラ、中小非正規労働者の組織化に全力を!
反リストラ権利闘争
政権交代して 2 年過ぎるが、労働者の生活と社会に置かれている状況は、一向に改善の兆
しが見えない。とりわけそのシワ寄せが、若年労働者、女性労働者、非正規労働者へと集中
している。全労協として、更にいっそう努力し、現状を打破していく必要がある。
2010 年の平均失業率は 5.1%となっており(総務省1月発表)、02 年(5.4%)、03 年(5.3%)
に次ぐ高い水準となっている。とりわけ 15~24 歳の完全失業率が 10.4%となっており、働く
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意欲のある若者の 10 人に 1 人が仕事に就けないという異常な事態となっている。ところが、
日本の場合、完全失業者の定義が厳しく、①調査期間の月末1週間で1時間以上の仕事をせ
ず②職が見つかったらすぐ出勤できる状態で③月末1週間に就職活動をしていた人のみが完
全失業者とよばれ、実際は 2 倍以上の就業希望者(失業者)があり、職に就いていないとい
う(総務省労働力調査詳細集計)。こうした中で、5 月の有効求人倍率は横ばいの 0.61 倍に
なっている。今春卒業した大卒の就職内定率(2/1 時点)は、前年から 2.6 ポイント減少し、
77.4%となった。00 年以降で、80%を割りこんだのは初めてであり、震災の影響が鮮明とな
っている。「今年 1 年間に失業する不安を感じる」という人の割合が、20 代で 32.9%になり、
過去最高になっている(連合総研調査・10 月)。就職が厳しく、非正規で働かざるを得ない
若者に、雇用不安が広がっている。
諸悪の根源である労働者派遣法の抜本改正、労働組合への若者の組織化が今ほど問われて
いる時はなく、全労協傘下の労働組合の肩にその大きな責任と任務が懸っている。そして、
労働の原則は正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は、合理的理由が無い限り
認められない!という、労働法制の規制と政策を断固として闘い取る必要がある。全労協は
その最先頭に立ち闘っていこう。
こうした中でさらに、企業倒産が労働者の生活を直撃している。東日本大震災による倒産
が、5 月には 1071 件(負債額 1000 万円以上、任意整理含む:商工リサーチ)となり 4.8%の
増となっている。原材料・部品供給の寸断などを通じて全国に及んでおり、全国 9 地区で 6
地区の倒産が増加している。九州では前年同月を 5 割超上回った。
また、帝国データの調査では、東北3県の沿岸部に本社を置く企業や事業所 5004 社のうち、
2 千社以上が事業を再開できていないという(7/7)。これらすべてのしわ寄せが労働者に重
く覆いかぶさっている。まさに、労働者救出を急がねばならない。
自殺者も 13 年連続で 3 万人を超え、3 万 1690 人となっている。今後さらに増えることが予
想される。まさに、待ったなしの状況だ。
以上、労働者に対するセーフティネットの充実が求められる中で、昨年は「事業仕分け」
なるものが幅を効かせ、特別会計に組み込まれている「労災保険」が財源の「社会復帰等促
進事業」の“原則廃止”などというトンデモナイ方向性を民主党政権がうち出した。特別会
計というだけで、雇用保険が財源の「未払い賃金の立て替え払い制度」にも手をつけようと
した。みんなの党が急先鋒だったことも忘れてはならない。結局、存続は決まったが、厚労
省幹部に言わせると、「全体をスリム化しての存続」だという。倒産被害を受けた労働者に
とって、数少ないセーフティーネットである未払い賃金の立て替え払い制度を、充実させた
上で存続させることが急務となっている。
実際、4 兆円ある雇用保険の積立財源(事業主の積み立て分と国庫負担)は、まだまだ枯渇
していない。それどころか、10 年度の 1 月までの雇用保険の受給者は月平均 67 万人、給付総
額は 8192 億円で、09 年度と比べ減少している。特定受給制度はあるが、失業手当受給までの
3 か月待機期間が失業手当受給のオモシとなっている。また、失業期間が 1 年以上の長期失業
者が 121 万人と前年より 36 万人も増加しているなど、なんと完全失業者の 36.2%が長期失業
者だ。さらには、被災した東北 3 県の労災給付請求も、厚労省の当初の見込みの 25%にとど
まっている現実があるという。
果たしてこのような状態で良いのであろうか!断じて否である。現行の失業手当に対する
国庫負担の割合 13.75%を 25%に戻す闘いも含め、雇用保険を財源とした制度の更なる柔軟
な運営と政策の中身の充実を求めていこう。
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全労協は、今後も反リストラ・権利闘争を強め、失業へのセーフティネットを充実させ、
「命と安全と健康」を守る闘いを結びつけ、以下の闘いと課題に取り組んでいく。
①震災を口実とした便乗解雇、その他不当な退職勧奨・強要、いじめ・パワハラを許さず、理
不尽な解雇と全力で闘う。
②職場からの長時間労働、サービス残業を無くし、過労死を無くす闘いと「過労死防止基本
法」の制定を目指す。
③改正労働基準法の、中小労働者への残業代割り増し規定の除外・差別的な法体系を許さ
ず、派遣法の抜本改正、労働法制での労働者保護・規制強化に向けて闘う。
④メンタルヘルスに対する取り組みを強め、労災・職業病闘争を強める。女性の深夜労働に
対する安全配慮を徹底させる。
⑤労働安全衛生センター、移住労働者と連帯する全国ネットワーク、過労死弁護団との連帯
・連携を強める。
⑥原発労働者の被曝を防ぎ、万全の体制を作る。
中小非正規労働運動の強化
日産自動車のカルロス・ゴーン社長の 2010 年度の役員報酬が、9 億 8200 万円だった。労働者に
震災を口実に解雇・リストラを押し付けているソニーのストリンガー会長が二位で 8 億 6300 万円。上場
企業の経営者の年俸は、168 社 294 人と、1 億円以上のオンパレードだ。
一方、厚労省が、全国の従業員 30 人未満の中小企業約 4000 事業所の計 3 万 1000 人を対象に
6 月分の給料を調べた賃金改定状況調査によると、今年の中小企業の賃金上昇率は 0.0%だとい
う。昨年は 0.1%のマイナスで、結局 2 年連続、賃金が上がっていない。上場企業経営者の年俸と比
べると何という格差であろうか。決して許せるものではない。
また、 厚労省の 2010 年国民生活基礎調査よると、一世帯あたりの平均所得が、ピークだった 94 年
の 664 万 2 千円から、その後は低落傾向が続き、15 年間で 114 万 6000 円も減っているという。軒並
み、日本国民が所得低下の渦に巻き込まれているのだ。
こうした中で中小企業に働く労働者・非正規労働者は、大企業労働者に比べると、賃金労働条件
のいずれの面でも劣悪であり、労働法制の面に於いても差別され、格差の谷間に落とし込められて
いる。大企業の賃金を 100%とした場合、100 人未満の中小企業労働者の賃金は 6 割、30 人未満で
は半分の賃金となっている。あまりにも激しい格差だ。 まずもって中小企業に働く労働者、とりわけ
非正規労働者の賃金の大幅アップを勝ち取る必要がある。
さらには、最低賃金の大幅アップも勝ちとっていくことが問われている。本年度は、最低賃金が「時
給換算」した生活保護水準(09 年度)を下回る地域が、9 都道府県というように、昨年度の 5 都道府県
より増えており、待ったなしの状態だ。最低でも「早期に全国最低 800 円を確保し、全国平均 1000 円
目指す」ことが実現されなければならない!
これらを実現するためには、労働組合としての力を強化し、一にも二にも未組織労働者・非正規労
働者の組織化を追求し、全労協がその先頭を担う覚悟がいる。
すでに、全国の低所得者の割合や経済格差を示す「相対的貧困率」が、前回調査(06 年)では
15.7%だったが、2009 年は 16.0%となり、1985 年以降で最悪になったことが報じられている。
生活保護の受給者(本年 1 月)も 199 万 8975 人と 200 万人に迫っており、戦後混乱期以来の数
字となっている。生活保護世帯も 144 万 1767 世帯と過去最高を更新し続けている状況だ。
2010 年の国民年金の納付率が 59/3%となり前年度(60.0%)をさらに下回り、過去最低を更新して
いる。納付率が前年度を下回るのは 5 年連続で、背景には、非正規労働者が増大しており、月額保
険料(10 年度は 1 万 5100 円)が払えない人が増えていると厚労省は分析している。
追い打ちをかけるように、児童虐待の件数が 5 万 5125 件と、初めて 5 万件を突破したという速報値
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を厚労省が発表した。前年度より 1 万件以上増え、歯止めがかからない。職場のイジメや生活苦など
に追い詰められた両親への社会矛盾が、幼気ない子供にまで、犠牲を強いている。
これらを解決するためにも、全労協に結集する闘う労働組合の力で、まずは生活できる賃金の獲
得と、最低限職場で憲法・労働法を守らせることが必用となっている。
さらには、全労働者の 34.3%(総務省 1 月)を占める非正規労働者は、一時「派遣切り」により前年
度は大幅に減少したが、34 万人増の 1755 万人となり 2 年ぶりに増加している。また、正規労働者は
25 万人の減少となり(2011.2 月)、3355 万人で過去最少となっている。いずれも、圧倒的に無権利状
態で労働組合に組織されていない。
非正規労働者の増大と正規労働者の異常な働き方とは、まさに裏腹の関係にある。正規労働者は
能力主義が蔓延し、過労死や精神疾患が増えている。現状は、もはやこれ以上の労働条件を切り下
げようがないところまで行き着きかねている。まさに、現状打破が急務となっているのだ。
こうした中で、官民合わせての闘う労働組合の団結組織である、全労協が果たすべき社会的な役
割は、ますます大きくなっている。現在労働組合の無い職場で働く中小・非正規の未組織労働者は、
低賃金・無権利状態の中に放り込まれ、職場で分断され、解雇、退職勧奨・強要、イジメ、パワハラな
ど、様々な資本・経営の攻撃にさらされている。労組組織率の 18.5%に甘んじてはならない。
全労協は、労働相談窓口の全国ネットの形成を目指し、すでに昨年5月、労働相談フリーダイヤル
(0120-501-581)を開設し、全国一斉労働相談も実施している。これを形だけのものにしては断じてな
らない。
全労協は、今後も中小零細企業に働く仲間、非正規労働者のための闘いを全面的に支援し、当
面、以下の取り組みに総力を上げて取り組んでいく。
①全労協傘下の加盟組合と共に、非正規労働者・未組織労働者の組織化に全力で取り組む。
全労協フリーダイヤル(0120-501-581)を活用し、全国各地の労働相談窓口活動を強化し、「労
働相談ネットワーク」を充実させる。具体的には、回線接続の相談団体を増やす。
②「組織化のための交流合宿」を東西で開催し、組織化の経験、争議組合の交流、反貧困の運動と
の連携、相互支援を強化する。「新組合・争議組合激励・交流集会」を開催する。
③厚生労働省、労働局への申し入れ行動を行う。労働委員会闘争・裁判闘争等、労働者の闘い・
告発を支援し、必要な支援・対策を強化する。
④雇用保険、社会保険、さらには改正労基法での時間外割り増し率での差別など、中小企業で働く
労働者・非正規労働者が排除されている諸課題について、職場闘争を強めるとともに、政府・関係
行 政機関に、すべての労働者が完全に適用されるよう求めていく。
⑤最低賃金闘争、公契約条例制定の取り組みを強め、中小労働者の賃金引上げの闘いに全力を
尽くしていく。また、中小企業の健全な育成のための施策を政府・行政側に求めていく。
⑥被災現地の労働者支援を継続して行う。
(4)反行革・公務員制度改革との闘い
1) 反行革の闘い
3 月 11 日に発生した東日本大震災と原発事故は、政治・経済・社会のあらゆる面で現在
の日本が抱える矛盾と問題を表面化させた。行政機能、特に地方行政機能の脆弱化とその
深刻さが露呈されたことも、その重大な一つであった。このことは新自由主義に基づく行
革・規制緩和攻撃によってもたらされたものであり、民間委託、業務委託、独法化、PFI
や指定管理者制度の導入、市場化テストなどあらゆる手法を用いて事務事業の廃止・縮小、
施設の民間移譲等を強行し、職員定数を大幅に削減する一方で、低賃金で雇用の不安定な
非常勤職員・公務関連委託労働者を増大させ、公務公共サービスの果たすべき責任と役割
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を後退させてきた結果である。
地震と津波によって庁舎や学校などの公的施設も多く壊滅状態となったばかりか、住民
と同様公務員・教職員も多くの犠牲を出し、そのため行政や公教育の機能の喪失や空白、
停滞状況が現出した。これに対して直ちに救援・救護活動に向かったのは消防・警察職員、
また医療・保健関係職員だけではない。インフラの復旧と維持に欠かせない上下水道・交
通労働者や、被災地域の生活を支えるため市町村・都道府県それぞれの行政職員が直接現
地に派遣され、さらに小・中・高の教職員の支援も加え、膨大な公務員労働者の支援が今
なお継続されている。国・地方を通じて全国の公務員労働者があらゆる行政領域で支援を
展開し、復旧・復興に向け長期化する支援に備えている。
あらためて公務の重要性・必要性が着目され、その役割・責務を果たすことが住民から
強く求められる状況が生まれている。
「公共サービス基本法」が 2009 年 7 月に施行されてから 2 年を経過しているが、現状は
その理念が生かされているとはいえない。雇用・産業・農業・医療・保健・衛生・福祉・
社会保険・教育・交通・上下水道・住宅・道路・河川・山林・市場等々、あらゆる領域に
おいて、公共サービスが労働者・市民の生活と権利を支え守るものでなければならない。
行革・規制緩和攻撃との闘いは、この公務公共サービス・公教育の拡充を求める闘いであ
り、震災後の情勢は一層その闘いの重要性を明らかにしている。
全労協は、公共サービスを担う公務員労働者の主体的な運動と全面的に連帯し、社会的
セーフティネットの充実を求める労働者・市民との運動・政策面での連携を深めて闘いを
進める。
2)公務員制度改革の動向と国家公務員給与削減
震災を受けた情勢で国家公務員給与削減問題も急展開した。連合系の公務員連絡会と総
務大臣との間で進められた交渉は、協約締結権の付与をはじめとする国家公務員法等改正
関連法案とセットで閣議決定・国会提出を行うことと、同時成立を前提に合意に至り、6
月 3 日関連法案が国会に提出された。給与削減は、国家公務員の課長級について△10%、
係長級以上について△8%、一般職員については△5%、一時金については職員一律△10%
等とする内容で、法施行後 2013 年 3 月末までの臨時特例措置とされている。勧告なしに公
務員給与を削減することはきわめて異例であり、また財政再建や復興財源の確保が理由と
されているが、財政危機の責任は歴代内閣にあり公務員労働者にないことは明らかなこと
など、まったく道理なき給与削減といわざるを得ない。
全労協は、5 月 29 日~30 日第 6 回組織化合宿を開催して、専修大学教授の晴山一穂氏を
講師に招き、「公務員制度改革における自律的労使関係制度の諸問題」と題する講演を受
けて、現在進められている労働基本権回復を含めた公務員制度改革の問題点について共通
認識を深めてきた。
国会に提出された公務員制度改革関連法案によって、1948 年の「政令 201 号」以来剥奪
されてきた公務員の労働基本権回復の課題が、「自律的労使関係制度」の確立に向けて大
きく踏み出したことは確実であるが、しかし、その内容については、労働基本権に関して
は協約締結権の回復に留まり、争議権について見送られたことや、構成員の過半数が職員
であることとした交渉団体の認証要件の問題をはじめとして、団体交渉の対象から管理運
営事項を除外したこと、さらに勤務条件法定主義の枠組みを残したことにより団体協約の
効力についても大きく制約を受けることなど、多くの重大な問題を含み、ILO 勧告を満た
すものとは到底いえない。また、地方公務員の労働基本権については、「地方公務員制度
としての特性等を踏まえ」「国家公務員の労使関係制度に係る措置との整合性をもって、
速やかに検討を進める」とされているが、国公における問題点がそのまま持ち込まれると
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ともに、業務や職種の多様性、非常勤職員が増大している実情等を踏まえれば、地公にお
いてその矛盾が拡大することは必至である。
勧告制度に代えて容易に公務員人件費削減が可能となる体制づくりとして公務員制度改
革を推し進めようとする策動に対しては、断固反対しなければならない。さらに、国家公
務員だけではなく、地方公務員給与に対する政治的な削減攻撃が惹起されかねない情勢に
対しても、警戒を強め、直ちに立ち向かって闘う態勢の構築が求められる。
全労協は、あらためて公務員労働者の労働基本権の全面的な回復をめざし、生活できる
賃金・労働条件を確保する闘いを進めるすべての公務員労働組合と固く連帯して闘う。
3)自治体合理化反対の闘い
10 年 4 月 1 日現在の地方公務員の職員数について総務省が明らかにしたところでは、教
員・警察・消防を含めて約 281 万人であり、この 16 年連続して純減約 47 万人となってい
る。総務省による人口千人あたりの公的部門の職員数は、フランス 88.8 人、アメリカ 78.2
人、イギリス 77.8 人、ドイツ 54.9 人であり、日本は 32.0 人とされ、また OECD 調査によ
る、GDP に占める公務員人件費割合の国際比較では、23 か国中、日本は最下位の 6.2%と
され、23 カ国平均 10.4%の 6 割程度であり、国際的な比較で日本は相当に「小さな政府」
であることは明らかである。
新自由主義に基づく構造改革は、「公務員バッシング」を煽りたてながら、「官から民
へ」「小さな政府」「安上がりな政府」と喧伝してきた。この間「三位一体改革」により
地方への税源移譲を上回って地方交付税や補助金が縮減し、地方財政の逼迫は、職員給与
の独自カットや、あわせて「集中改革プラン」により職員定数の大幅削減と、非正規の臨
時・非常勤職員の増大をもたらすとともに、特に福祉、医療、生活保護等を中心に、地域
生活を支える公共サービスが切り詰められた。
そのことに対する批判は一昨年の政権交代として大きく結実したかに見えたが、その後
の鳩山・菅政権の迷走と政局に絡んだ政治的なイニシアチブの奪い合いによって、構造改
革路線による政策を大きく転換させる推進力が雲散霧消している。
2010 年 12 月政府は、「アクションプラン~出先機関の原則廃止に向けて~」を閣議決
定し、国出先機関の地方への移管の行程を明らかにした。2012 年通常国会に関連する法案
の提出、2014 年から事務・事業を移管するものであるが、これまで国が責任を持って担っ
てきた道路・河川等の維持・改修や、ハローワーク業務などについて地方に丸投げする内
容である。「国家公務員人件費 2 割削減」の一環として、大規模に国家公務員を地方公務
員に身分移管する「地域主権改革」の目玉であるが、予定される広域的実施体制は道州制
への道を開きかねないことや、地方への財源移譲についての検討は不十分なままであるこ
となど、国・地方のあり方・役割分担自体をなし崩しに改変する危険性を有する重要な課
題にほかならない。
こうした行革攻撃に対して、断固として立ち向かう闘いが求められている。国・地方を
通じて今ある行政のあり方を問い直すとともに、誰もが公平に受けられる公共サービスの
拡充・発展をめざさなければならない。全労協は、引き続き関係する労働組合と連帯を強
めて闘いを進める。
(5)労働法制の改正運動
1.労働分野の規制強化の流れを逆行させず、経済界の「労働ビッグバン巻き返し攻撃」
を許さない闘いを!
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われわれは「安定雇用原則」「直接雇用原則」「均等待遇原則」の実現を求めてきた。
これは「働き方の国際基準」を日本でも確立しようとするものだ。ILO のディーセントワ
ークをキーワードとする「人間らしい労働」の実現、国際労働基準の実現のために闘って
いく。
経済界は、請負への行政指導強化、製造業派遣への切り替え、派遣法改正案上程、有期
契約労働法制の見直しと進んだ規制強化の流れ全体を批判し、87 年の労働ビッグバン攻撃
=規制の全面撤廃の流れに逆転させようとしている。派遣法改正案の廃案、労政審での有
期契約労働法規制に反対し雇用流動化を一層進めること、ホワイトカラーエグゼンプショ
ンをはじめとする労働時間管理の空洞化を図ること、解雇自由の確立の 3 本柱がそれだ。
しかし、政府は、厚生労働省発表の 23 年版労働経済白書で、「1997 年以降経済の落ち
込みは大きく、正規雇用の削減規模は拡大、若年層では非正規雇用へと追いつめられる者
が増えた。企業のねらいは、人件費コストの削減と雇用調整に役立つということだった。
派遣法の規制緩和が非正規雇用の増加を進めた。」と分析、勤労者生活の課題で「1990 年
代にそれまでの雇用慣行を改革することを志向したが、今日からその歴史を振り返れば、
反省すべき点も多く、長期雇用、年功賃金と言った日本の雇用慣行を正しく理解し、今後
の雇用システムを展望する必要がある」と提起しており、新自由主義的労働分野の規制緩
和・撤廃路線を明確に批判している。
派遣法改正案の押し上げまで続いた運動側からする圧力も、よほど意識的に持続させな
いと後退してしまう。何よりも、犠牲になっている当事者の闘いを掘り起こし、資本や行
政に解決を迫る運動を作り上げていく。
2.派遣法改正案は震災関連重要法案だ、として、早期成立を計ろう!
東日本大震災の被害を直接受けた、岩手、宮城、福島で乱発された派遣切りは当然とし
て、全国でも便乗解雇が頻発しており、これにストップをかけなければ、雇用破壊にスト
ップがかからない。その意味で、派遣法改正案は震災関連重要法案として扱い、早期成立
を図るべきだ。8 月末までの延長国会では、民主党がいくつかの継続議案と一緒に派遣法
改定案の成立をあきらめたと伝えられている。これに強く抗議すると同時に、秋の臨時国
会では是が非でも成立を追求する。
その際、改定案の、登録型派遣の原則禁止について 26 業務を例外としていること、製造
業派遣の原則禁止について常用雇用を例外としていること、違法派遣の場合における見な
し雇用についての雇用期間を前の労働契約の期間と限定していること、団交応諾義務など
をはじめとする派遣先責任が定められていないこと、施行期日について 3 年の猶予期間を
設けようとしていることなど、多くの不十分さがある。これを国会審議の中で追求しなが
らも、衆参ねじれ国会の中で成立させる努力をしていく。
3、有期契約労働に関する法規制強化を実現しよう!
7 月 21 日、労政審労働条件分科会に、事務局から「中間整理案」が出された。8 月中に
これを基に中間とりまとめが出され、秋に審議を積み上げ、年末には建議が出される予定
だ。
政府・厚生労働省は、「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」を 6 月に設置、佐藤博
樹東大教授(派遣業界を通じた派遣労働者意識調査で、派遣法改正を過半数が望んでいな
いとの報告を東大社研で出した責任者)清家篤慶應義塾塾長(自民党政権時代に自分が責
任者で出した派遣法改悪案を政権交代後も基本にせよと主張した旧労政審労働場条件分科
会座長)などをメンバーにし、「典型的な正規労働者」と「非正規労働者」との中間に位
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置するような雇用形態をどのように位置づけるべきか、とか、「非正規労働者」などの呼
称が適当か、などを検討するという。意図は明確だ。有期契約労働者=非正規労働者の雇
用不安、低く抑えられている労働条件という不公正を改め、安定雇用原則、直接雇用原則、
均等待遇原則再確立の動きを中間的に押しとどめようとするものだ。
このような動きを許さず、有期労働契約の法規制・学習パンフと中間報告を職場で学習
し、秋の労政審労働条件分科会のたびに、厚生労働省前で、我々の要求を突きつけよう。
その際、派遣法抜本改正早期実現を合わせて要求していこう。
我々の要求する有期規制として
①臨時的・季節的業務など客観的合理性のある場合に限定すること。合理的理由を欠く有
期労働契約は無効とし、期間の定めのない労働契約と見なすこと。(入り口規制)
②有期労働契約を 1 回または 2 回以上更新した場悪補合は、期間の定めのない契約と見な
すこと。(反復更新規制)
③有期労働契約の更新拒否(雇い止め)について正当事由を必要とすること。
④有期労働契約を理由とする不合理な差別的処遇を禁止すること。
⑤有期雇用労働者と期間の定めのない労働者の均等待遇を中心に要求していく。
4.最低賃金、生活保護、非正規労働者の生活給付付き職業訓練制度など、セーフテイネ
ットの確立を目指そう!
人間らしい生活の保証を求め社会保障の充実を目指そう!
5.労働時間規制労働の確立を闘い取ろう
①時間外労働上限規制を大臣告示を改め基準法改定で罰則付きに
一日 2 時間、月 20 時間、年間 150 時間に時間外割増率引き上げを中小労働者にも適用せ
よ!
②事業場外みなし労働制の撤廃を
③管理監督者の名による時間管理放棄を許すな、残業代を正確に支払え!
④自律的労働時間制度(ホワイトカラーエグゼンプション)を許すな!
6.希望者全員の 65 才までの雇用を保証する高齢者雇用安定法の改正を勝ち取ろう
7.雇用保険制度の充実を
8.パート労働法の改訂を目指そう
来年度がパート労働法見直しの時期となっている。真に均等待遇を実現させるために根
本的改訂を求めていく。
(6)反原発闘争の推進・・「脱原発社会」の実現に向けて
3 月 11 日の東日本大地震とそれに付随して発生した東京電力・福島第一原発の事故は、
日本はもとより世界中に衝撃を与えた。
被害はますます拡大し、福島第一原発付近はおろか、全国各地に影響を及ぼしている。
いまだ、収束が見えないこの事故を境に、原発に関し国民的な関心が高まっている。
一昨年誕生した、民主党連立政権は原子力発電の海外輸出を展開してきたが、その目論
見は崩れ大幅な修正どころか、エネルギー政策の根本的な転換をも視野に入れざるを得な
い状況を迎えている。
全労協は、結成以来原発と人類は共存できないことを訴え活動してきたが、残念ながら
今回の事故により、そのことが証明されてしまったのである。
菅首相は、国民の不安が高まる中、5 月 6 日世界で最も危険な原発であるといわれる浜
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岡原発の運転停止を中部電力に要請し、浜岡原発は全号機停止中である。このことの評価
はさまざまに分かれるところであるが、全労協としては一定の評価をしたいと考える。
浜岡は停止したが、世界有数の地震列島である日本には、まだ 14 基(8/31)の原発が稼
動している。危険なのは浜岡だけでなく、全国の原発も日本国民を絶望に導くだけの危険
性をもっている。そして、その危険は国境を越えて世界中に拡散する。国外の原発も地震
以外の要因をも考えると、同様に危険なのである。
ドイツでの原発を放棄する政策への転換、イタリアでの国民投票での反原発派の勝利な
ど、世界的には脱原発の方向へと向いつつあるように見える。日本でも、今まで反対運動
に関わってこない人たちも行動を起こし、国民的に脱・原発の機運が高まっている。しか
し、原子力村に巣食う組織による巻き返しも尋常ではなく、より一層世論の喚起と運動の
高揚が重要となってきている。
全労協は震災後、脱原発プロジェクトチームを立ち上げ、原発に反対するさまざまな行
動に参加・提起してきた。
日本が脱・原発を選択するか否か、正念場を迎えている。全労協は全国全ての原発の停
止、そして全てを廃炉とし、原子力発電に頼らない自然エネルギーへの転換を目指し運動
を展開する。
(7)反戦・政治闘争、福祉切り捨てに反対する闘い
報告の部でも述べたとおり、沖縄米軍基地の縮小撤去を求める闘いは、鳩山政権の変節
以降も粘り強く続けられているが、日米安保体制を維持強化する動きは民主党政権下でも
続いており、沖縄米軍基地問題はいっそう困難な状況となっている。また、「尖閣諸島」、
「竹島」、「北方領土」を巡る領土問題や朝鮮半島の緊張を利用して、排外主義を煽り、
防衛力の増強を求める動きとなっている。教育の反動化を巡る動き、憲法改悪に向けた動
きもいよいよ本格化しつつある。教科書問題では、横浜市で新たにつくる会系(育鵬社)
の中学生向け歴史・公民教科書が採択されるなど、拡大の動きを見せている。
5 月 1 日、アメリカがオサマ・ビンラディン殺害を強行したことにより、いわゆるテロ
との闘いはいっそうの混迷に陥ろうとしている。中東では「民主化ドミノ」が広がりつつ
あるが、リビアでは内戦状態の長期化に伴い NATO 軍が空爆を行うといった事態になってい
る。スーダン内戦や、政府が瓦解し混乱が続くソマリア情勢等、こうした国際情勢の動向
は、自衛隊海外進出の口実を与えようとしている。
全労協は、政府の対米従属・米軍基地容認強化路線を許さず、テロや領土問題にかこつ
けた自衛隊軍備拡張や政治反動を許さない取り組みを強化する。具体的には、これまでも
取り組んできた原子力空母配備撤回神奈川県集会、ワールドピースナウ、沖縄平和行進、
護憲集会、憲法集会を中心に、取り組み態勢の強化を図っていくこととする。また、教育
の反動化に抗する教育労働者の闘いにも積極的に参加していく。
福祉の切り捨てを許さない取り組みについて。民主党政権が「国民の生活が第一」をス
ローガンに政権奪取に成功し、2 年が経過した。その政策の目玉が、子ども手当の創設と
高校無償化である。これらの政策は、例えばこども手当の額が値切られる、高校無償化か
ら朝鮮学校が除外されるなどの不十分性を持ちながらも、格差社会の是正に一定の影響力
を持ったと考えられる。しかし、昨年の参院選での与党の後退以降、これらの政策が財源
の裏付けのないばらまきという批判が強まる中で、介護保険制度の改善は実現が遠のき、
こども手当の廃止について与野党が合意するなど、介護・福祉予算を標的とする攻撃が強
まっている。また、民主党が廃止を公約としていた後期高齢者医療制度は、対案が見つか
らないとして当面存続されることとなった。
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日本の社会保障制度は、過去の自民党政権の中で解体に追い込まれ、社会保険制度は国
民的信頼を失う事態となっている。全労協は、福祉切り捨てを許さず、「後期高齢者医療
制度」即時廃止、労働者セーフティーネットの充実、高齢者福祉・障がい者福祉拡大等に
向けて、引き続き対政府行動を進めていく。
報告の部でも述べたとおり、沖縄米軍基地の縮小撤去を求める闘いは、鳩山政権の変節
以降、いっそう困難な状況となっている。アメリカがオサマ・ビンラディン殺害を強行し
たことにより、いわゆるテロとの闘いはいっそうの混迷に陥ろうとしている。また「尖閣
諸島」「竹島」「北方領土」を巡る領土問題や朝鮮半島の緊張を利用して、排外主義を煽
り、防衛力の増強を求める力が強まっている。教育の反動化を巡る動き、憲法改悪に向け
た動きもいよいよ本格化しつつある。
全労協は、政府の対米従属・米軍基地容認強化路線を許さず、テロや領土問題にかこつ
けた政治反動を許さない取り組みを強化する。具体的には、これまでも取り組んできた原
子力空母配備撤回神奈川県集会、ワールド・ピース・ナウ、沖縄平和行進、護憲集会、憲
法集会を中心に、取り組み態勢の強化を図っていくこととする。また、教育の反動化に抗
する教育労働者の闘いにも積極的に参加していく。
(8)女性労働者の闘い
女性の労働権の確立、間接差別禁止・同一価値労働同一賃金による均等待遇の実現にむ
けた取組、男女共通の時間外労働規制 150 時間の実現、労基法改悪を職場で許さない取組、
職場に人権を回復するため、以下の通り取組む。
1.“どんな働き方でも均等待遇”の実現にむけ、アクション 21 の行動に積極的に参加
2.同一価値労働同一賃金に向けた職務評価の具体化に向け、さまざまな取組に積極的に
参加
3.仕事と家庭の両立ができる職場に向け、150 時間時間外規制と男女平等な職場の実
現
4.女性委員会通信の定期的発行
5.女性差別の撤廃を求めて活動する女性グループとの共同の取組、闘う女性たちへの積
極的支援、公人の差別発言をなくす会等、交流と行動に参加する
6.各地の女性グループやアジアの女性労働者との交流を企画する
(9)移住労働者・外国人労働者の権利確立
「多民族・多文化共生社会」は、日本においてすでに始まっている。
移住労働者は様々な労働現場に深く根ざしており、もはや彼ら彼女ら抜きには日本社会
はクルマ一台走らすことができない。日本の産業社会が移住労働者の下支えを前提に成り
立っている以上、「受け入れ是か非か」を論じるのはもはや空虚と言わざるを得ない。
東北大震災の被災地では、多くの移住労働者や外国籍住民が救援に駆けつけ、「被災者
と共にある」という想いを鮮明に伝え、広めた。80 年代後半、1,000 ドル片手にバングラ
デシュから日本に出稼ぎに来てその後ビジネスに成功した「元組合員」が「恩返しがした
い」と言って 30 人の仲間を募り、宮城県南三陸町でタンドリーチキンとカレーの炊き出し
を行う。そういう連帯と友愛が芽吹く時代に、私たちは生きている。
全労協は、移住労働者を「働く仲間」と明確に位置づけ、「移住労働者の権利確立=す
べての労働者の権利確立」であることを確認しながら、闘いの輪を拡充してきた。
資本が国境を越えて活動するなかにあって、労働者もまた越境し、働き、暮らし、様々な
営みをしていくことは必然である。好むと好まざるとに関わらず、この流れは不可避と言
--4342 -
える。移住労働者をめぐる問題もまた、その他の労働問題同様、私たち自身がどのような
社会の中で生きたいと願うのか、が問われる重要な命題となる。全労協は「労使対等原則
が担保された多民族・多文化共生社会」の実現に全力を挙げる。
規制緩和、社会的弱者切り捨て、超格差社会に対して、有権者が「NO!」の声を上げ、
政権交代が実現した。しかし、新自由主義路線からの転換は、いまだ明確な道筋を示され
ることなく、働く者の将来への展望は不透明なままとなっている。
2009 年 7 月の入管法改定により、外国人登録制度に変わる新たな在留管理制度が打ち出
された。これまでは、在留資格の有無にかかわらず、市区町村が「外国人登録証」を交付
して各種の住民サービスを担保してきたが、来年には「外国人登録証」を廃止して、新た
に導入される「IC 在留カード」を通して法務省が一元管理するというものだ。この法改定
により、在留資格無き外国籍住民は、「地域住民」としての存在性を剥奪され、あたかも
「そこに存在しないはずの者」へと周縁化されてしまう。
新制度により、市区町村は法務省に対して、住基法記載事項の通知義務を負い、語学学
校などの教育機関は氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留カード番号、在籍・除籍や所
在不明事実などの届け出義務を負う。このような個人情報管理は、外国人を対象とした実
施を突破口として、やがては全国民を含む全住民への拡大を目論んでいることは明らかで
ある。
全労協は、来年 7 月とも言われる施行に照準をあわせ、このような差別的かつ人権侵害
政策に抗して広範な反対運動を、国内外の人権 NGO などとも連携しながら展開していく。
入管法改定に伴い、「外国人研修・技能実習制度」も改定され、昨年7月から施行され
た。これまで「労働者性」が認められなかった1年目から労働関係諸法令を適用させるな
ど一定の前進はあるものの、小手先の弥縫策に留まっている。「外国人研修生権利ネット
ワーク」などの NGO との連携など、取り組みを今後も強化していく。
「移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」などの活動に多くの若者たちが
参加している一方で、ゼノフォビア(外国人への差別排外主義)をあからさまにした「草
の根右翼」も残念ながら拡大している。こうした差別意識に陥ってしまう若者の少なから
ぬ部分をフリーター、非正規労働者などの不安定労働者が占め、将来に対する閉塞感やア
イデンティティーをめぐる不安感のはけ口となってしまっていることも多い。社会矛盾を
押しつけられている階層への働きかけを、労働運動や労働組合側が取り組み切れずに、反
動的意識の拡大を許してしまっていることを直視せざるを得ない。
全労協は移住労働者を含むすべての労働者が、互いの違いを尊重しながら労働者として
の連帯が貫かれ、何人も排除されない社会づくりに向けて奮闘する。
具体的に、以下の活動に取り組む。
1.生活と権利のための外国人労働者一日行動や集団健康診断の取り組み。
2.移住労働者と連帯する全国ネットワークや外国人研修生ネットワークなどの NGO と
のコラボレーションを通じた取り組み。
3.働く仲間である移住労働者に対する外国人犯罪キャンペーンや法務省入管の密告メー
ル中止を求め、ゼノフォビア(外国人への差別排外主義)に反対する取り組み。
4.雇用対策法改正に伴う「外国人雇用状況報告義務」によるゼノフォビア拡大、就業差
別に対する監視強化と制度撤廃とともに、「指針」を活用した移住労働者の働く環境
の改善を求めていく取り組み。
5.国連人権委員会や ILO などとの連携した取り組みや各国労働組合との連携づくり。
6.在留資格「労働」の新設と、現在滞日している移住労働者への在留資格の付与(アム ネ
スティー)を求める取り組み。
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7.外国人研修制度の厳格な運営と技能実習制度廃止を求める取り組み。
8.新たな在留監理制度を実施させない取り組み。
(10)国際連帯
戦争反対や核兵器廃絶を求める国際的連携行動が様々に取り組まれている。反原発運動
も世界に拡がっている。こうした国際的規模での共同行動に積極的にかかわっていく。ア
フガニスタン、イラク戦争の即時停止を求め、中東の平和を求める闘いに連帯していく。
日本政府はいまだ旧日本軍の戦争責任を取ろうとしていない。国や企業に戦争責任と賠償
を求める運動がアジア各地から起こされている。慰安婦問題などの闘いに連携していく。
韓国民主労総との交流を継続させ、また、アジアの労働者との交流に若い組合員を積極
的に参加させていく。
また、労働者が直面する状態は先進資本主義国共通のものとなっている。アメリカや、
EU 諸国の労働者、労働組合と交流を強め、情報交換など強めていく。
(11)第 83 回メーデー
「働くものの団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろう」のスローガンを基本に来年
度もメーデー発祥の日である 5 月 1 日に開催を追求していく。メーデーの闘う伝統を継承
し、日本で働く総ての労働者が統一して開催する「闘うメーデー」を追求していく。また、
日比谷メーデーに相応しい諸企画を検討していく。
(12)組織・財政の強化、地域運動の再構築
1)組織・財政の強化
東日本大震災は「3・11 以降」と例えられるように日本の社会を根本的にとらえ返す契機
を提出した。労働運動に於いては最も鋭く問われることになった。
大震災の発生とともに、多くの労働組合・労働者が被災地に駆けつけ救援活動に参加し
た。全労協も多くの仲間が東北全労協の仲間の手を借り、ボランティア活動に参加した。
福島第一原発の事故を巡って、労働組合は「脱原発」の立場を取るのか「原発推進・容
認」の立場を取るのか大きな違いを見せつけられた。そして原発で事故の収束にあたる労
働者が劣悪な作業環境で被曝していること、またその多くが協力会社といわれる下請け、
孫請け会社の労働者であることも明らかになった。また、この原発事故が首都圏の人々の
生活を潤すために福島の人々の生活を根底から破壊した事実である。
労働運動・労働組合は組合員の生活向上と権利確立のために団結して闘う。経営者と対
等の原則を踏み外すことを拒否し、経営もチェックしていくことを追求してきた。
しかし、これだけでは社会的存在として、労働組合は果たさなければならない役割が決
定的に不足していることも明らかになった。原発を止めるために私たちの力はあまりにも
非力である。そして労働者が差別されず、安心して働くことができる社会の実現には個別
企業・個別経営とのやりとりだけではなく、社会的勢力として政府・財界と立ち向かうこ
とが必要なのである。日本の労働者の組織率は 18%に過ぎない。政府に声を届け、国を変
えるには労働者の声をまとめる大きな流れが必要である。そして、農業・漁業に従事する
人、個人商店や零細企業を営む人がともに社会を作り、「人間らしい生活」と「貧困と格
差のない社会」を求める共同の作業がいる。
全労協は「脱原発」の立場にたち、全ての人々と共同の作業を通じて社会を変えていく
闘いに邁進する。全労協の強化にむけ以下の諸課題を闘っていく。
①加盟労組の取り組む組織拡大運動(未組織労働者の組織化)を支援していく。その
為にフリーダイヤル労働相談窓口を更に拡大していく。
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②争議組合間の交流を密にし、経験の教訓化を図るため、争議交流会を再開する。
③組織化交流会を更に充実させるとともに、西日本に於いても開催する。
④青年・女性運動を発展させるため青年労働者交流合宿を開催する。また、国際交流
に積極的に参加を促していく。
⑤全労協運動の発展に向けた、路線・組織建設のための開かれた議論の場を追求する。
2)教宣活動の強化
①機関誌「全労協」の定期発行を維持し、より読みやすいものにしていく。
②重要な闘いにはリーフレットなど発行や全国共通ビラ、のぼり旗を作成する。
③全労協のホームページを一層充実させ、各地方や労組の活動も素早く紹介できるもの
にしていく。
以上
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資料編
◎2010年度行動報告
2010年9月行動報告
9/20 (月) 第22回全労協 定期大会
9/21 (火) 第22回全労協 定期大会
9/25 (土) 国労東京地本大会
9/26 (日) 東京清掃労組大会
(熱海・フジヤホテル)
(熱海・フジヤホテル)
(発明会館)
(全電通ホール)
2010年10月行動報告
10/ 2 (土) 全国一般東京なんぶ定期大会(~3日)
広島県共闘会議定期総会
10/ 9 (土) 沖縄・自衛隊基地の強化を許さない10.9集会
10/13 (水) 22-1 全労協・企画会議
10/14 (木) 秋の共同行動・学習会
全労協・女性委員会
10/16 (土) 東京労組大会(~17日)
労働情報800号記念レセプション
10/17 (日) ワールドピースナウ
日中労働者交流協会セミナー
10/18 (月) 全石油昭和シェル労組連続座り込み闘争(~22日)
10/22 (金) 沖縄・県内移設大集会
10/23 (土) 大田区職労大会
10/24 (日) 第24回 団結まつり
10/25 (月) 10.25派遣法国会前行動、院内集会
10/27 (水) 郵政ユニオン・国会前行動、院内集会
10/29 (金) NTT木下共闘会議総会・デモ行進
10/30 (土) 東水労定期大会
(箱根湯本)
(福山市)
(文京シビック)
(全国協)
(秋葉原・中小企業公社)
(交通ビル3F)
(神奈川・足柄)
(文京区民センター)
(芝公園23号地)
(日教組会館)
(昭和シェル社前)
(文京区民センター)
(大田産業プラザ)
(亀戸中央公園)
(衆議院第2会館前)
(衆議院会館前)
(新宿農協会館)
(社会文化会館)
2010年11月行動報告
11/ 3 (水) 11.3憲法集会
11/ 4 (木) 22-1 全労協・常任幹事会
11/ 7 (日) 東部労組定期大会
11/10 (水) 派遣法共同行動・座り込み
11/11 (木) 光輪・石上襲撃事件集会
全労協・女性委員会
11.11都労連確定闘争・激励
11/12 (金) 日本労働弁護団総会(~13日)
11/13 (土) APECはいらない(~14日)
11/17 (水) 東部総行動
11/24 (水) 派遣法共同行動・赤門前宣伝行動
11/26 (金) 全労協・女性委員会総会
11/27 (土) 東京全労協・定期大会
(韓国YMCA)
(交通ビル3F)
(すみだ産業会館)
(衆議院第2前)
(バイクハンズ前)
(交通ビル3F)
(都庁中央モール)
(広島)
(横浜)
(東部各地)
(東大赤門前)
(交通ビル3F)
(交通ビル・B1ホール)
2010年12月行動報告
12/ 4 (土) 神奈川県共闘会議定期大会
12/ 8 (水) 東京総行動
(神奈川婦人会館)
(みずほ銀行)
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12/ 9 (木) 全労協・女性委員会
12/10 (金) 中小企業政策ネットワーク総会
12/18 (土) 全労協・春闘討論集会
22-2 全労協・企画会議
12/21 (火) 日航本社前抗議行動
12/24 (金) 日航解雇撤回集会
12/27 (月) 日航支援共闘会議・結成総会
(交通ビル3F)
(中小企業公社)
(交通ビル・ホール)
(交通ビル・ホール)
(日航本社前)
(蒲田PIO)
(日教組会館7F)
2011年1月行動報告
1/ 5 (水) 都労連旗開き
1/ 6 (木) 日弁連新年会
1/ 8 (土) 福山市現業労組旗開き
1/ 9 (日) 郵政ユニオン旗開き
全統一旗開き
1/11 (火) 東水労旗開き
1/13 (木) 全労協・女性委員会
1/14 (金) 東京労組旗開き
1/19 (水) 東京清掃労組旗開き
JAL地裁前宣伝行動
JAL共闘会議・励ますつどい
1/21 (金) 全労協・東京全労協旗開き
22-2 全労協・常任幹事会
1/23 (日) 宮城全労協・春闘集会
東部労組・旗開き
1/24 (月) 派遣法国会前行動
1/25 (火) 日航本社前抗議行動
1/29 (土) 国労中央委員会
(都庁第2、4F)
(弁護士会館)
(福山市)
(小岩アーバンプラザ)
(バイクハンズ)
(都庁・食堂)
(交通ビル3F)
(東京労組事務所)
(エドモンドホテル)
(地裁前)
(科学技術館「サイエンスホール」)
(交通ビルB1)
(交通ビル3F)
(宮城)
曳舟文化センター
(国会前)
(JAL本社前)
(交通ビル ホール)
2011年2月行動報告
2/ 1 (火) 11けんり春闘発足集会
2/ 2 (水) メーデー相談会
2/10 (木) 全労協・女性委員会
2/22 (火) 日航本社前抗議行動
2/23 (水) 22-3 全労協・企画会議
メーデー準備会
2/24 (木) 東部けんり春闘結成集会デモ
東京総行動・けんり総行動経団連要請行動
2/26 (土) 西日本春闘討論集会
2.26朝鮮学校無償化を求める集会
(交通ビル ホール)
(新橋亭)
(交通ビル3F)
(JAL本社前)
(全国協)
(都労連)
(亀戸・カメリア)
(経団連前)
(徳島)
(代々木公園)
2011年3月行動報告
3/ 3 (木) 郵政ユニオン本社前集会
3/ 4 (金) 労働弁護団シンポジウム
3/ 5 (土) 全労協・労働相談(~6日)
3/ 7 (月) 外国人労働者の権利のための省庁交渉
3/ 8 (火) 3.8国際女性デー・院内集会
3/ 9 (水) 22-3 全労協・常任幹事会
3/10 (木) 全労協・女性委員会
メーデー実行委員会
(郵政本社前)
(総評会館2F大会議室)
(全国各地)
(衆・2会館第2会議室)
(参議院会館・B17)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
(都労連)
-48-
3/11 (金)
3/13 (日)
3/17 (木)
3/23 (水)
3/25 (金)
3/30 (水)
JAL院内集会
JAL裁判所前行動
JAL客乗裁判
大阪教育合同勝利パーティー
臨時企画会議
メーデー実行委員会
東京労組春闘統一行動
春闘統一宣伝行動~東部、北部、中部
(衆・2会館・多目的)
(地裁前)
(地裁103号)
(エル大阪)
(全国協)
(交通ビル3F)
(都内3か所)
(池袋駅東口)
2011年4月行動報告
4/ 6 (水) 11けんり春闘総行動~デモ行進
4/ 9 (土) 東日本大震災激励行動(~10日)
4/13 (水) メーデー実行委員会
4/14 (木) 全労協・女性委員会
4/16 (土) 4.16沖縄・辺野古集会
4/20 (水) 日航本社前抗議行動
4/22 (金) 全労協・女性委員会 学習会
4/23 (土) メーデー前夜祭
4/24 (日) くり返すな!原発震災つくろう!脱原発社会集会・デモ
4/26 (火) いまこそ脱原発の道を歩もう
22-4 全労協・企画会議
4/27 (水) メーデー実行委員会(実務者会議)
(経団連前)
(岩手、宮城、福島各地)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
(星陵会館)
(JAL本社前)
(交通ビル3F)
(水上音楽堂)
(芝公園23号地)
(星陵会館)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
2011年5月行動報告
5/ 1 (日) 第82回日比谷メーデー
5/ 3 (火) 5.3憲法集会
5/12 (木) 東京全労協・沖縄平和行進~16日まで
全労協・女性委員会
5/17 (火) 22-4 全労協常任幹事会
郵政非正規要請行動
5/18 (水) 日航本社前抗議行動
5.18国民投票法撤廃集会
5/27 (金) 原発も再処理もいらない5.27集会
5/29 (日) 鉄産労大会
全労協・組織化合宿(~30日)
(日比谷野音)
(日比谷公会堂)
(沖縄)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
(国会前)
(JAL本社前)
(豊島公会堂)
(日比谷野音)
(レインボー仙台)
(箱根路・開雲)
2011年6月行動報告
6/ 4 (土) 大阪教育合同定期大会
6/ 8 (水) メーデー実行委員会(総括)
6/ 9 (木) 全労協・女性委員会
6/11 (土) 6.11脱原発100万人アクション
6/16 (木) 脱原発プロジェクト・発足
6/21 (火) 都労連定期大会
6/22 (水) 東京総行動
6/23 (木) 高江ヘリパッド集会
6/24 (金) 6.24くり返すな!原発震災、つくろう脱原発社会
6/26 (日) 福島1万人ハンカチ集会
6/29 (水) 日航本社前抗議行動
22-5 全労協・企画会議
(エルおおさか)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
(芝公園23号地)
(交通ビル3F)
(田町・交通ビル)
(経産省前)
(明治大学)
(日比谷野音)
(福島)
(JAL本社前)
(交通ビル3F)
-49-
6/30 (木) 厚労省交渉
(厚労省・会議室)
2011年7月行動報告
7/ 2 (土) 男女賃金差別解消には、やっぱりペイ・エクイティ
7/ 6 (水) 放射能対策を考える労働者の集い
7/ 7 (木) JAL支援共闘会議総会
7/ 8 (金) 郵政労働者ユニオン定期大会
7/11 (月) 文科省交渉
7/12 (火) 練馬全労協・総会
7/13 (水) 派遣法院内集会
脱原発プロジェクト
7/14 (木) 全労協 女性委員会
7/16 (土) 脱原発1000万人署名宣伝行動(40名)
大阪全労協定期大会
7/17 (日) 廃炉は浜岡から反原発全国集会(約80名)
電通労組定期大会
7/21 (木) 韓国民主労働党イ・ジョンヒ代表講演会
7/23 (土) 全石油昭和シェル労組解決報告集会・祝う会
7/24 (日) 全労協常任幹事会(~25日)
7/27 (水) JAL本社前行動
7/28 (木) 国労大会(~29日)
7/30 (土) N関労大会
7/31 (日) 原水禁福島大会
(文京シビックセンター)
(全港湾東京支部)
(四谷区民センター9階)
(広島)
(文科省・会議室)
(練馬区役所)
(参議院B17)
(交通ビル3F)
(交通ビル3F)
(新宿駅西口)
(エルおおさか)
(静岡市常盤公園)
(仙台市)
(文京区民センター)
(霞が関ビル35F)
(箱根路・開雲)
(JAL本社前)
(伊東)
(神田公園区民館)
(福島)
2011年8月行動報告
8/ 4 (木) 全労協・組織財政検討委員会
8/ 6 (土) 原水禁広島大会
8/ 7 (日) ユニオンネット埼玉大会
龍基金授賞式
8/10 (水) 脱原発プロジェクト会議
8/12 (金) JAL新宿駅西口宣伝行動
8/17 (水) 全労協・役員選考委員会
8/23 (火) 22-6 全労協・企画会議
8/26 (金) 国鉄闘争中央支援共闘会議解散総会
国労闘争団全国連絡会議解散懇親会
8/27 (土) 脱原発宣伝行動
8/31 (水) JAL本社前宣伝行動
(交通ビル3F)
(広島)
(さいたま市)
(かつしかシンフォニー)
(交通ビル3F)
(新宿駅西口)
(都労連)
(交通ビル3F)
(東京グランドホテル)
(東京グランドホテル)
(新宿駅西口)
(JAL本社前)
-50-
◎地方全労協からの報告
<宮城全労協からの御礼と報告>
被災民衆と団結して闘います!
大震災から間もなく半年が経過します。「絆」とか「東北、日本は一つ」などの言葉が
マスコミから流されてきました。現実はそうではありません。
たとえば、最近、京都・五山の送り火で岩手・陸前高田市の薪を燃やす計画をめぐり、
二転三転した結果、使用を中止したことが話題になりました。まさに「分裂」状況です。
県境を越える「放射能汚染」が「肉牛」問題となり、次は米と海産物かと産地では厳しい
日々が続いています。全国の消費者も不安をつのらせています。送り火の問題は、そのよ
うな中で起きたことでした。何が問われているのか、全国の皆さんと議論を交換しなけれ
ばなりません。
中央も地方も「復興会議」が林立し、規制緩和と復興特区の大合唱です。この「特区」
には民衆生活の現実感がともなっていません。
たとえば阪神・淡路大震災の教訓から、「自殺・孤立死」を防ぐために「地域コミュニテ
ィ」を大切にする施策が必要だと、指摘されてきました。にもかかわらず「震災関連死」
が連日、相次いでいます。被災民衆は心身ともに疲れはて、とくに「災害弱者」といわれ
る人々、そして介護などでともに暮らす家族たちの危機が深まっています。
雇用について同様に、一定の時間が経過してからの影響が深刻だという指摘がなされて
きました。職を失った労働者や漁業・農業従事者たちの多くはがれき撤去などの臨時雇用
で生活をつないでいますが、その先の展望は立っていません。しかし、経済界も政府も、
被災地の最低賃金を上げようとすらしていません。「目安」は1円であり、それすら可能
か疑問とされています。
容易ならざる事態ですが、宮城全労協は東北全労協対策本部と連携し、明日への希望を
抱いて闘いを進めています。
全国の皆さんのご支援、励ましにあらためて感謝します。
なお、具体的な報告は<宮城全労協ホームページ>をご覧いただくようお願いします。
(2011 年 8 月 14 日/宮城全労協事務局)
<東京全労協報告>
東京全労協は、2010 年 11 月 27 日に第 21 回定期大会を開催し、向こう 1 年間の闘う方
針を確立した。今大会は、7 月の参議院選挙で民主党が惨敗して、政権交代の勢いがなく
なった政治状況の中での開催となった。こうした状況で、東京全労協がめざす「誰もが安
心して働き、生きて行けるための労働政策の実現、公務・公共サービスの向上」「労働者
・民衆への自己責任の押し付けを許さず、社会保障制度の拡充をめざす」「憲法改悪、米
軍再編、日米軍事同盟の強化に反対し、平和と民主主義を守る」という、基本路線の実現
を改めて確認した。
春闘では、「11 けんり春闘全国実行委員会」に結集し、11 春闘を闘い抜いた。
今年は東日本大震災の発生により様々な取り組みが自粛される中、震災や節電を理由と
して雇用問題も深刻な状況となり、我々が今春闘で闘うことが被災者を元気付け復興支援
--5146 -
に繋がるとして、各職場・地域から取り組んだ。
具体的には、2 月 24 日の東京総行動を皮切りに、4 月 6 日の中央総行動、ストライキ闘
争や支援・激励行動、労組集中行動、地域総行動、そして JAL 不当解雇撤回闘争を全力で
取り組んだ。
日比谷メーデーでは「春闘に自粛はない」とし、従来通りのスタイルで震災復興支援、
脱原発を全面に出して闘った。
反戦・平和闘争では、今年も沖縄平和行進に参加した。今年は、震災の関係で 5 月 15
日だけの行動となったが、前段に高江ヘリパッド・辺野古新基地建設阻止支援行動を行っ
た。
脱原発闘争では、全労協脱原発プロジェクトに参加し積極的に取り組んでいる。7 月 31
日には原水禁福島大会に参加した。
また、大会前の合宿は震災支援行動として宮城全労協との交流を予定している。その他、
各争議支援・連帯の取り組みを、各ブロックが中心となって取り組んでいる。
<神奈川県労働組合共闘会議>
神奈川県労働組合共闘会議には、全造船浦賀分会、ゼネラル石油労組川崎支部、日本板
硝子共闘労組川崎支部、全国一般全国協神奈川、電通労組横浜分会、郵政労働者ユニオン
神奈川、横浜市従労組総務財政支部、同緑支部、同戸塚支部、学校事務職員労組神奈川、
寿日雇労働組合が参加している。
県共闘の活動は労働相談と争議支援を両輪に、月毎に加盟単組持ち回りで、集会・学習会
・レクなどを行っている。春闘行動やメーデーなどでは県共闘の枠を超えた共闘を組み、
神奈川での運動の一翼を担ってきた。
春闘は 1 月に学習会、2 月に総決起集会を行い、県共闘・神奈川交流・ユニオン協議会
の 3 者を軸に実行委員会を形成し、共同行動を確認した。しかし、3 月 11 日の東日本大震
災により、実際の行動は変更を余儀なくされた。それでも、労働局交渉は 5 月と 7 月に行
い、県共闘単独ではあるものの、港南台幼稚園解雇撤回闘争、座間ゆうメイト解雇撤回闘
争などの支援行動を 4 月 27 日に取り組んだ。
メーデーは、前出の 3 者共闘で 5 月 1 日に実施、「反原発」をメインスローガンに震災
自粛ムードを跳ね返す勢いで、集会・デモを成功させた。
震災・原発関係の取組みは、被災地支援として、4 月後半~7 月にかけて 5 回、延べ 12
人が現地に張って活動をした。東北全労協・宮城全労協の協力に感謝したい。6 月 29 日に
は電力総連申し入れ行動に参加した。その他、県内や東京での集会・デモにも積極的に参
加した。また、学習会として被災現地報告、原発の危険性・労働災害なども学んだ。 労
働相談活動は、ネット・電話を中心に日常的に取り組んでいる。県共闘の相談員 11 名を全
国一般の特別執行委員相談・組織化・団交の流れが定着、より機能的となった。また、寿
町での面接労働相談も年末年始に加え、月1回の実施が定着している。3 月 5・6 日の全国
一斉労働相談では電話だけではなく、面接も実施する中で全国一般への組合加入もあった。
反戦・平和・反基地の取組みは、の定例デモ、ピースサイクル、ピース・フェスティバ
ルへの参加・協力を通して行ってきた。また、昨年 11 月 6 日には東京全労協の合宿にあわ
せて「厚木基地めぐり」を企画、現地見学と学習会を実施し、その後の交流会も含め組合
員の交流を深めた。
--5247 -
労働者・労働組合との共闘のみならず、日の丸・君が代強制反対、ワールド・ピース・
ナウ、いらない APEC 民衆フォーラムなど市民運動・社会運動などとの連携も取り組んでき
た。分け、昨年 11 月に、地元横浜で APEC 首脳会議が開催されることから、県共闘は準備段
階から実行委員会に参加し、労働分科会を担当し、海外ゲストの報告とあわせ、全造船い
すず分会と全統一の仲間からの報告を受け内容を豊かなものとした。このフォーラムには
2 日間で延べ 1000 人の参加があり、成功したと言える。また、神奈川での労働組合の存在
感を示せた。全労協本部には、海外ゲストの受け入れ、呼びかけなどいろいろ協力をいただ
き感謝したい。
<静岡県共闘(静岡県労働組合共闘会議)>
静岡県共闘は、昨年 8 月 28 日第 21 回総会を開催し、1 年間の活動方針を決定し取りん
できた。特徴的な取組について報告する。
1. 公契約条例制定を求める取組
昨年の全労協第 22 回大会で提起された「公契約条例制定」について、静岡県共闘は常任
幹事会で 2010 年の課題として取組むことを決定、本年初頭、「静岡ワーキングプアをなく
す会」を立ち上げ、
その会の活動として静岡県下全ての自治体に対し、「公契約条例」の陳情・請願を行うこ
ととした。 内容は、下記の通り。
(1)市(または町)が発注する公共事業、委託等にかかわる入札においては、以下の項目を
必要条件とする公契約条例を速やかに制定すること。
適正な賃金・労働条件の確保を明記すること(時間単価 1,200 円を下回らないこと)。
受託企業に労働法規を遵守させること。
労働法規ならびに条例に違反する企業は入札から除外すること。
この必要条件は下請け、2 次下請けおよび関連する派遣会社にも適用すること。
(2)市(または町)が直接雇用する臨時職員の賃金ならびに労働条件は、正規職員との均等
待遇をはかること。
請願・陳情行動は本年、1 月末より取組み、静岡市議会においては「静岡ワーキングプ
アをなくす会」会長による趣旨説明も行われた。
公契約条例に関し、静岡県においてはまだまだその下地がなく、残念ながら採択された
議会は一つとしてなかった。しかし、川崎市をはじめとする動きに関しては、各議会とも
非常に関心を深めてきていること、将来的には公契約条例も含め、何らかの規制が必要で
あるとの認識では一致していることが確認できた。
来年 3 月には、札幌市で条例制定の動きがあると聞いている、静岡県共闘として今後も
公契約条例制定を求める運動を展開していく。
2. 浜岡原発を廃炉とする取組
3 月 11 日の、東日本大震災、そして福島第 1 原発事故発生以降、静岡県にある中部電力
・浜岡原発は世界的な原発となった。もちろんそれは、浜岡の危険性によるものである。
静岡県共闘は、「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」に加盟し、裁判闘争を含め浜岡を
停止させるべくその運動の一翼を担い、浜岡の危険性を発信してきた。
「日本の原発はチェルノブイリとは違い安全である」、最早そんな言葉を真に受ける国民
は皆無である。私たちが主張してきたことが、福島で証明されてしまったのだ。
--5348 -
菅首相の要請で浜岡は現在全号機停止しているが、防潮堤建設後の稼動を目指している。
静岡県共闘は、原発に頼らない日本のエネルギー政策の大転換を求めるとともに、全国の
原発全てを停止、そして廃炉とすること、そしてそれは浜岡を廃炉とすることから始まる
ことをスローガンに反原発に取組む。
3. 静岡県ユニオンネットの発展強化
静岡県共闘は県下 5 つの地域ユニオン(三島ふれあいユニオン、富士ふれあいユニオン、
静岡ふれあいユニオン、静岡ゼネラルユニオン、遠州労働者連帯ユニオン)と連携し活動
している。各ユニオンとも、労働相談も含め、相当な頑張りで県共闘の重要な核となって
きている。県共闘として、各ユニオンの相互連帯、情報の共有化を図り、多様化する労働
現場に対応してきた。また月例で、労働相談に関わる相談員の要請を目的とした学習会、
年間を通しての電話による労働相談、静岡市メインストリートでの屋外での労働相談も取
組んできた。また、震災後の労働環境に対処するため、全国ユニオンネットの申入れ行動
に呼応し、静岡県共闘、ユニオンネットの連名で厚労相、県労働局長あての申し入れ書を
提出するとともに、県労働局との交渉も開催してきたところである。
地域合同労組の発展が県共闘活性化の道であることを認識し活動を強化して行きたい。
4. 静岡ふれあいユニオン「県民厚生会」の闘い
2008 年 9 月、特別養護老人ホーム「きらら藤枝」施設長宮田悦子さんは、静岡県厚生部
の要請に応え、施設内で行われている不正を「公益通報」した。それを受け。県厚生部は
「きらら藤枝」に対し、業務指導監査を実施。
この直後から、「きらら藤枝」を運営する県民厚生会理事長、常務理事らによる内部通
報者探しが始まり、結果的に宮田悦子さんに対する、報復的人事、パワハラ、嫌がらせが
激化。そして、2009 年 9 月、宮田さんは施設長から主任へと大幅な降格。と同時に、宮田
さん自信は連日の嫌がらせの影響により適応障害(うつ)と診断され休職となった。本年
1 月宮田さんは、休職期間満了となり、会社から解雇となった。現在、この事件は県民厚
生会を相手取り慰謝料、損害賠償請求事件として静岡地裁で争われている。また、それと
同時に公益通報者を保護せず、結果的に宮田さんが解雇となってしまった責任は、静岡県
にも当然責任があり、追求しているところである。この、闘いの過程の中で
静岡ふれあいユニオンにしずおか介護ユニオン分会が誕生したことも報告したい。
静岡県共闘は組織も少数、微力ではあるが、静岡での重要な課題を、結成以来常に担っ
てきたという自負を持ち、全労協運動の発展に寄与して行きたいと考える。
<愛知全労協>
愛知全労協は、2011 年 5 月 14 日に第 21 回定期大会を開催し、労働者のいのちと権利を
守る・平和と民主主義を守る活動を取り組んできました。とりわけ派遣労働者・非正規労
働者の解雇問題、反戦・平和の取組みなど不十分ではありましたが、以下の行動を取り組
んできました。
1)3・31 労働者決起集会への参加をしてきました。この集会の趣旨は、一昨年 12 月 18 日
に取り組んだ労働者決起集会を更に発展させ、格差と貧困を無くし、働く者の雇用と生
--5449 -
活・権利を守るために、正規・非正規、官・民を超えた労働者が連帯し雇用破壊の現状
を打開するために取り組まれた集会です。3 月 11 日に起きた東日本大震災の被害が拡大
している中、延期することも考えられましたが、3 月 25 日「政府に対する被災者の救援
と被災地の復旧に全力をあげよ!」などをスローガンに掲げ、デモ行進をしながら訴え
てきました。実行委員会には、東海労働弁護団団長の高木弁護士、参加団体には愛労連、
ふれあいユニオン、愛知全労協などが参加し、デモ行進や宣伝行動を取組み成功裏に終
わりました。今後もこの取組みに積極的に参加していきます。
2)6 月 22 日韓国における原発の実態報告と闘いについて AWC の主催する学習会に参加し
てきました。
3)5 月 28 日、フィリピントヨタ労組支援愛知総会に参加してきました。フィリピントヨ
タ労組支援宣伝行動が今年は 10 月 9 日、JR 名古屋駅周辺で取り組まれます。トヨタの
横暴を許さず、フィリピン労働者と連帯するためにこの行動に参加していきます。
4) 6 月 18 日、19 日に移住連・移住労働者と連帯する全国ネットワークが愛知県で開催さ
れ、愛知全労協も賛同団体としてこの集会の成功に向け、行動してきました。全国から
600 名を超える参加者があり、他文化・他民族が共生する社会をつくるため、移住労働
者・外国籍の人たちの権利を守り、自立を応援するために多くの団体・個人が参加し行
動してきている報告を受け、集会が成功裏に終了してきた。
5)7 月 27 日、28 日ピースサイクル愛知行動に参加してきました。3 月 11 日起きた大震
災における各行政の取組みと要請、自衛隊に対する申し入れを取り組んできました。ま
た今年は、中部電力に対し浜岡原発を停止したことは評価しつつ、今日の放射能被害の
現状を見たとき安全神話が崩壊し、取り返しのつかないことになる。浜岡原発の廃炉を
要請してきました。
6)5 月 14 に愛知全労協に新組合 ANU(オールナショナルユニオン)が加入して頂きまし
た。この間愛知全労協も組織人員が減少している中、大変うれしいことです。今後も組
織拡大に向け奮闘していきたいと思います。
愛知全労協は労働者の置かれている状況は無権利状態に置かれ、いのちをも奪われ、ま
た平和も脅かされている中、労働者のいのちと権利・平和を守るために微力ながら奮闘
していきたいと思います。
<大阪全労協の取り組み>
東北大震災の救援活動
本年 3 月 11 日起きた東日本大震災は未曾有の被害をもたらしています。全労協としても
東北全労協を軸に、全国的な支援活動を展開していますが、大阪全労協としても以下の 2
箇所を軸として支援活動を行ってきたところです。
○東松島・東名の老人介護施設「すみちゃんの家」の雇用継続へ向けた支援活動
○岩手・遠野を軸とした支援活動
労働審判相談センター
労働審判制度がスタートしてすでに 5 年が経過しました。私たち大阪全労協からも審判
員を出し、労働者の救済にあたってきました。多くの連合系の何もしない、出来ない審判
員の中で重要な役割を果たしていると考えます。そのような中で労働審判をサポートする
相談センター極めて必要な存在であるし、今後とも一層労働審判相談センターの役割が重
要になろうかと思われます。連日のごとく寄せられてくる相談に対し大阪全労協としてい
--5550 -
かに対応するかが問われています。
その相談内容によって、労働審判に託す事案、組合加入=団体交渉で解決を図る事案、
などに整理し解決を図ってきたところです。
ユニオンぜんろうきょうの取り組み
大阪全労協の一人でも入れる労働組合として取り組んできました。現在労働相談や各企
業との団体交渉など多忙を極めている状況にあります。今期だけでも数十件の労働相談、
約 2~30 人の新規組合加入があり、それぞれ団体交渉などを取り組んできているところで
す。
今日の構造的な不況の中、また今回の震災の便乗など、経営者は簡単に労働者の解雇を
強行してきています。このような状況の中で、これからも多くの労働相談が来ることは十
分予測されますし、その解決が求められています。
東横イン労働組合
結成後 1 年を経過し、数多くの成果を得ることができました。
全国一般全国協・東京東部労組と共同でがんばっている首都圏支部では、数多くの未払い
残業代の支払いを実現し、全国一般全国協眉山口支部では主にメイク係の労働条件改善を
実現すべく取り組んでいます。その他この 1 年間、北海道、北陸、山陰の各店舗にて紛争
を解決してきました。
このように着々と労働環境が改善されるなか、東横インはUIゼンセン同盟が上部団体
の「東横イングループユニオン」なる第二組合が結成されました。そして強引にユニオン
ショップ協定を結ぼうとしています。これは明らかに私たち東横イン労組に対する、妨害
行為であり、これからも気を引き締めて活動していかねばなりません。
今後も引き続き、全国一般全国協、大阪全労協、東横イン労組3者が協力し、東横イン
の労働環境改善を目指し奮闘していきたいと思います。
ユニオンネットをはじめとする共闘の取り組み
すでに結成から 20 年を経過して、ユニオンネットは大阪の労働運動の中で重要な位置を
占めています。「当たり前の労働運動」強化発展に向け、大阪全労協としても、その一翼
を今後とも担っていきます。
またこの間大阪全労協として以下の共闘組織に加入し取り組みを行ってきました。
労働者派遣法の抜本改正を目指す共同行動・大阪
「派遣法」に対する全国的な闘いの中で、大阪においてもナショナルセンターの枠を越
え「派遣法の抜本改正を目指す共同行動・大阪」が結成され、大阪全労協としても参加を
してきました。
現在、国会が機能停止状況の中で「派遣法」の審議自体も全くされていない状況で、共
同行動自体も具体的な活動が取り組まれていません。しかしこの間の状況を見るとき現行
派遣法下に置かれている労働者は一方的な派遣切りの攻撃にさらされています。大震災以
降さらに拡大も予想されます。さらに派遣法の抜本改正を目指し継続して取り組んでいく
こととします。
日本航空の不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議
昨年末 12 月 31 日日本航空は 165 名もの労働者を会社再建を理由に解雇しました。しか
しこの解雇は「整理解雇の四条件」を無視し、組合潰しを意図した極めて不当なものです。
このことに対し当該の労働者は原告団を結成し、本年 1 月 19 日に解雇無効の裁判を起こし
闘いに立ち上がりました。大阪において、この原告団を支援するべく、中央支援共闘に引
き続き本年 1 月 31 日にナショナルセンターの枠を超えて大阪支援共闘を結成してきまし
た。この日航解雇問題は、単に日航だけで済ますような問題ではありません。一方的な解
--5651 -
雇をこれ以上させないためにもこの闘いを支援し、勝利する人用があります。今後も街宣
活動、稲盛会長(京セラ)申し入れ、集会、署名活動、原告団を支える物販などの活動を
行っていきます。
メーデーの取り組み
全日建、全港湾大阪支部、大阪全労協の 3 者で事務局を形成し取り組んできたところで
す。今年は 5 月 1 日が日曜日ということもあり多くの結集があり(1800 名)成功裡に開催
しました。
来年も 3 者の事務局を軸に、共闘の原則を踏まえながら、取り組んでいくこととします。
全労協(全国)の取り組み
大阪全労協として、山下副議長を常任幹事として派遣し、全労協運動の一翼を担ってき
たところです。今後も全労協中央と連携を取りながら全労協運動の一翼を担っていきます。
組織化合宿が 6 月に開催されましたが大阪全労協としても 2 名派遣してきたところです。
また、全労協労働相談フリーダイヤルも開設され、労働相談活動、組織化の取り組みの強
化が確認されています。今後も大阪全労協として一翼を担っていくこととします。
本年徳島で開催された西日本春闘討論集会にも参加してきました。今期は関西での開催
となりますが大阪全労協が主体となって取り組むことになります。ぜひ皆さんの協力をお
願いします。
反戦平和の取り組み
しないさせない戦争協力関西ネットワークの取り組みを軸に、大阪全労協として取り組
んできたところです。12 月に開催された岩国関西反基地交流集会、青年部として 5 月沖縄
平和行進などに参加してきました。また橋下知事の「日の丸・君が代起立条例」に対する
抗議行動、ユニオンネットを軸に「危ない教科書」不採択の要請行動などの取り組んでき
たところです。今、震災復興支援「トモダチ」作戦に名を借りた日米軍事同盟の一層の強
化、また沖縄における米軍基地強化などの動き、そして一方で橋下知事による「日の丸・
君が代起立条例」に見られるナショナリズムの強制、など極めてキナ臭い状況にあります。
このような動きに対し一層の反戦の取り組みが必要とされています。
今年も 10 月 30 日に反戦集会が取り組まれます。実行委員会への参加も含め積極的に参
加していきます。
反原発の取り組み
福島原発事故は、放射能を撒き散らし、今も深刻な状況にあります。一刻も早い事態の
収拾を迫るとともに、今も事態を隠蔽しようとする政府、東電に対し事実を明らかにさせ
る必要があります。多くの問題がありますが、いずれにしても人類と原発が共存できない、
このことが何よりも明らかです。一刻も早くすべての原発の廃炉をさせなければなりませ
ん。
大阪全労協として、4 月 13 日「福島原発の現状は?すべての原発を廃炉へ緊急集会」を
開催してきました。またこの集会を受け 4 月 15 日に関西電力に対し、ユニオンネットとと
もに申し入れ行動を取り組んできたところです。この申し入れは今後も継続して取り組ん
で行きたいと考えています。また、市民グループ呼びかけの 4 月 16 日(3000 人参加)、6
月 11 日(4500 人参加)に開催された反原発集会にも参加してきたところです。また、こ
の 7 月 22 日~24 日には「原発いらん能登ピースサイクル」も取り組まれます。今後も、
全ての原発の廃炉を、原発政策からの撤退を政府、電力会社に迫って行きます。
青年部 活動報告と方針
青年部は、労働問題に関する DVD の鑑賞や労働と人権サポートセンター主催の学習会に
参加するなど学習に励みました。そして、2010 年 9 月には第 1 回大会を行いました。大会
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後は「流しそうめんパーティー」をしました。
情宣として、ブログ「どん底」を開設しました。ブログの随時更新を心がけ、有効な宣伝手段とし
て活用したいと思います。
2011 年 5 月には、沖縄平和行進に青年部より 3 名で参加しました。これまで報道などで「沖縄
に米軍基地が集中している」ことは知っていましたが、沖縄を訪れ基地の存在を体験することは大
きな違いがありました。私たちは普天間基地を半周する行進に参加したのですが、「街の中に基地
があること」、そして、「その基地があまりにも巨大なこと」に大きな衝撃を受けました。「真実は現地
にある」との言葉を、身をもって理解しました。
学習だけでなく、現地に足を運ぶことは大事です。これからも、「基地のない美ら島」を実現する
まで、私たち青年部は沖縄で行進し続けたいと思っています。
青年部のオルグについては、残念ながら顕著な成果は出ていません。しかし、運動は継続する
ことが大切ですので、地道にオルグを続けていきます。
組織の強化拡大に向けて
大阪全労協は協議体であり、各組合の連合体であっても、全労協の大阪でのナショナル
センター的な位置を求められています。連合参加の組合の多くが既に労働組合の機能を失
い、多くの労働者が孤立を余儀なくされている中で、今ほど「当たり前の労働組合」が求
められているときはありません。より積極的に労働者の中に大阪全労協は登場するべきで
す。そのためには、より一層の各組合の大阪全労協への集中が必要です。各種取り組みに
対する全体確認と、積極的な関わりを通じ大阪全労協の強化を図りたいと考えています。
また組織拡大に向けても、一人でも入れるユニオンぜんろうきょうへの加入、中立などの
組合への大阪全労協加入の呼びかけを積極的に行っていきます。
<京都総評>
公契約シンポジウムを開催
2010 年 11 月 23 日、公契約シンポジウムが京都商工会議所ホールで開かれ、約 200 人が
参加した。主催は、シンポジウム実行委員会で、主催者を代表して京都商工団体連合会の
伊藤会長があいさつ。まず、千葉土建一般野田支部赤羽根書記長が「公契約条例で野田市
はどうなったか」と題して報告。清掃などでは時給が 100 円アップするなど、官製ワーキ
ングプア対策として効果があったなど、野田市の公契約条例について紹介をした。続いて
シンポジウムが行われ、コーディネーターに中村和雄弁護士、パネリストに岡田知弘京大
教授、岩島伸二京都エレベーター(株)代表取締役、河村泰三京都電工(株)代表取締役、
赤羽根伸一千葉土建野田支部書記長が登壇した。中村氏は最近の京都市での具体的な事例
を紹介し、労働者の賃金が派遣労働者を使うことによってピンはねされており、ここに規
制をする必要があると提起。岩島氏はここ数年間で落札価格が 4 分の 1 ほどになったこと
やそのため、安くすることにも限界があり、だんだんと仕事がとれなくなったことなどの
問題を指摘した。河村氏は学校の電子黒板や薄型テレビの大規模な納入で、東京の大手が
落札していった事例を詳しく説明。また、自らが落札し地元の同業者と一緒に納品したこ
とが地域経済の活性化につながったことを紹介し、地域経済との関連で、公契約について
の問題提起をした。岡田氏は、安ければいいという流れがあるが、これでは持続可能では
ないことを、地方自治体の財源が地域経済から生み出されることを明らかにしながら、公
契約条例の意義と可能性について説明をした。シンポジウムでは、公共サービスの安全性
確保や労働者の賃金、地域経済などの視点でのディスカッションが行われた。
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争議支援総行動で抗議・要請
京セラ本社に JAL 不当解雇撤回を
京都総評は 2011 年 2 月 22 日、“2011 春・争議支援京都総行動”を取り組み、京都市伏
見区の京セラ本社に抗議・要請行動を行った。昨年大晦日に強行された JAL 大量不当解雇
の撤回を求めて、丸山伸弥事務局次長を始め 4 人の仲間が航空労組連絡会からかけつけ、
京都の 90 人の闘う労働者と不当労行為をやめない亀岡市の JA 京都本店、宇治市の大久保
自動車教習所への抗議行動にも連帯参加した。稲盛和夫 JAL 会長が創業者である京セラの
本社百メートルビルでは、会社側は全く予測していなかったようだ。代表団の申し入れに
長時間待たせて総務部長が応対し、要請書を受け取るかどうかの押し問答をこれまた長時
間やって、かろうじて正式文書を受理した。「うちは関係ない」と京セラ本社は言うが、
稲盛会長を始め 3 人の役員が JAL に派遣され、週一回は京セラに帰ってきているとのこと。
「どんな文書か不明では稲盛さんに怒られるだろう」の京都総評代表の発言であわてて文
書受理をして、第一回の要請行動を実施した。
東日本大震災被災地に救援物資搬送、全労協本部と被災ユニオンと交流・視察
合同繊維労組・福岡修書記次長と中矢貞夫執行委員に京都総評・稲村守事務局次長が同
行し、東日本大震災被災地に救援物資搬送と被災労組との交流を行い、激しい被災現場の
案内も受けた。4 月 8 日(金)夜、京都を出発し、ワゴン車でパジャマ 250 着を満載して
仙台の特別養護老人ホームに届け、岩手・宮城・福島三県の東北の被災労組から被害実態
と対策方針を聞き取り、今後の救援活動についての交流を行ってきた。4.8 の不眠での仙
台まで 800 キロ・12 時間の運転を含め、4 月 11 日夕方京都着の四日間の強行スケジュール
をこなした。今回、一番遠い釜石までは約千キロであった。
不眠不休で 4 月 9 日(土)午前 10 時に仙台駅前の東北全労協事務所に到着した。宮城全
労協大内忠雄議長と酒井実事務局長に迎えられ、大震災とその後の状況と労組の取組み、
問題点についての概要をお聞きし、市内若林区の特別養護老人ホーム・白東苑に案内して
いただいた。同ホーム高橋治理事長は 1983 年まで宮城県労評(かつての総評県組織)議長
を務められ、79 年の社公合意と 80 年代の労戦右翼再編に反対された時代を思い起こされ
ながら、私たち三人に心からねぎらいの言葉をかけていただき、合同繊維労組から数日前
に 3000 本のタオルが贈られたことも感謝された。その後、東北自動車道を北上し、2 時間
かけて北上市の「共生ユニオンいわて」の書記局に到着し、午後 5 時から東京から駆けつ
けた全労協金澤議長を始めとする 5 人の東京のメンバーと交流会を行った。いわてのユニ
オンの皆さんは、北上から車で 30 分ほどの遠野市に前線基地を設けて三陸海岸の市町村の
救援活動を行うとのこと。翌日に釜石まで激しい被災現場への案内を受けたが、遠野から
20~30 分で他の沿岸部にも出動できるこの市に、警察や自衛隊や様々なところが前線基地
を置いている。新聞によると東大も基地をつくるとのこと。ここに、すでに大阪全労協か
らは整体師の派遣や様々な専門領域のボランティア含めて申し出を受けている全国の仲間
の受け皿にして行こうという、中期的な救援計画もうかがうことが出来た。
翌日、予定を 2 時間過ぎて仙台に到着し、前日の宮城全労協議長・事務局長から東京の
メンバー含めて改めて話を伺い、仙台空港とその周辺の名取市の津波被害現場を案内いた
だく。「見たことはないけど戦場みたいだなあ」と合繊の 2 人。加盟単組の委員長宅も丸
ごと流されたという名取市の広々とした住宅街は、焼け野が原のようだった。すぐ近くの
仙台空港に行く途中のビニールハウスの骨だけが伸びて反り返っていた一面の元畑の砂原
に飼い主を失った子豚が走っていた。再建の展望不明の仙台空港の手前には死体も眠って
いるかもしれないという状態で家財が散乱していた。一軒だけ半壊で、家族総出で荷物を
まとめていた。宮城全労協議長・事務局長の見送りを受けて高速道路にのり、予定より 1
時間半遅れて 17 時半郡山市到着で、「ふくしま連帯ユニオン」の皆さんの出迎えを受けた。
原発難民の書記長、反原発運動の市民団体でも活躍する女性部担当の方も憤懣やるかたな
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い東電と政府の対応に怒り、「事故の原発の廃炉と稼動している原発を止めさすのは当然
だが、沖縄県民大会のように、反原発の大運動を福島で全世界集会としてこの秋に成功さ
そう」と、近くの避難所の救援活動方々自治体や県知事への申し入れも行いながら、構想
は遠大であった。
6.21 JAL 不当解雇撤回京都支援共闘結成、稲盛会長要請一日行動も実施
2011 年 6 月 21 日、おりしもの豪雨予報をはねかえし、晴れ上がった京都盆地でひとき
わ人目を引く 30 人を越すキャビンアテンダントとパイロットの一団、そして赤いのぼりや
旗を持つ多数の支援労働者・市民が、都大路を北に南に駆け巡った。早朝 7 時 45 分、京都
市伏見区京セラ本社前出勤社員への宣伝行動を皮切りに、「日本航空の不当解雇撤回をめ
ざす JAL 稲盛会長要請一日行動」を京都で展開した。晩には京都の労働界の本拠地である
京都市中京区・ラボール京都ホールにおいてこの JAL 大量解雇争議を支援する京都支援共
闘結成集会ももたれた。地方の支援共闘組織としては、ローカル三番目であった。主催し
たのは、京都総評に事務局を置く「日本航空の不当解雇撤回をめざす京都支援共闘会議準
備会」。午後 3 時より京セラ本社前にまた移動して、大宣伝行動と稲盛会長への要請行動。
東京から駆けつけられた全労連・大黒作治議長と全労協・金澤壽議長始め、東京・大阪か
らご参加のたくさんの支援の皆さんも一緒だ。雨上がり、かなり蒸し暑く日照りも厳しく
なる。
18 時半、京都市中京区のラボール京都ホールに満席の 200 人を越す労働者・市民が参加
し、「日本航空の不当解雇撤回をめざす京都支援共闘会議結成集会」が開かれた。司会は
二人。JAL 客乗原告団・鈴木圭子事務局次長は一日の早朝からの京都総評の取組みに謝意
を表された。もう一人の司会、京都総評・稲村守事務局次長は 26 年前から工場閉鎖全員解
雇攻撃と闘った神奈川県川崎市の仲間を支援する闘いで京都総評は 4 年間京セラ・稲盛と
闘い、22 年ぶりの稲盛との闘いであることを紹介した。そして主催者挨拶を京都総評・岩
橋祐治議長が行い、政府を引き出して解決させた国鉄闘争の意義を述べながら、国鉄闘争
の果たしえなかった“日本労働運動再生”を全労連・全労協議長がそろった JAL 争議支援
闘争で果たそう、稲盛氏を今日を契機に追い込もうと訴えた。連帯挨拶は 5 人。全労連・
大黒作治議長は、「整理解雇四要件を大企業・政府が一体となって蹂躙するという攻撃だ。
国民支援共闘が昨年末に結成され、7 月 10 日に総会を持つ。全労協議長と全労連議長が連
名して闘うのは、結成以来 22 年にして初めてで、共闘が広がっている。空の安全を共同の
闘いで国民的なものにしていこう。裁判を勝ち抜き、彼ら、彼女らを職場に戻そう」と。
全労協・金澤壽議長は、「3.11 にちょうど JAL の裁判が終わった瞬間に大地震が起き、
まさに将来を予測させるような出来事だった。JAL の闘いは人権回復の闘いだ。労戦は不
幸にして分かれ、戦線は縮小してきた。国鉄闘争は敗戦処理の中から何とか光明を見出そ
うとしてきた闘いだ。日航の闘いは、国鉄闘争やかつての三池の闘いに匹敵する闘いだ。
全労連・全労協力を合わせ活路を開こう。日本労働運動再生の闘いが JAL 争議。京都にお
ける支援共闘の組織作りに学んで全国に広げる」と。
また、京都の闘う仲間の紹介と発言では、地域での労働相談・争議に奮闘するきょうと
ユニオン・玉井均委員長(文書メッセージ代読)、全厚生闘争団京都の 15 人を代表して谷
口務団長が挨拶した。続いて京都総評・梶川憲事務局長から、役員は脇田滋・龍谷大学教
授を代表世話人として今後広く呼びかけ世話人をつのり、事務局長に梶川とこの日の司会
の鈴木・稲村を事務局次長とし、佐々木眞成京都総評副議長を責任者とする京都総評権利
・争議のメンバーと JAL 原告団で事務局を担い、事務局は京都総評に置くことを提案し、
採択された。京都支援共闘結成を受けて、カンパ・檄布が山口・内田両 JAL 原告団長に京
都総評・岩橋議長と佐々木副議長から手渡された後、34 人の JAL 原告団・当該労組員がい
よいよ登壇。JAL 客乗原告・内田団長/JAL 原告・山口団長は「会議で『どうしてこんなに
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たくさんの労働組合・団体の皆さんが支援してくれるのか、教えてください』と言われた。
整理解雇四要件の問題と空の安全の問題に直結しているからだ。裏切ることなく、勝つま
で闘います。よろしく」と挨拶。そして京都総評・佐々木副議長が「整理解雇四要件への
攻撃である以上、すべての労働者の闘いであり、京都はその責任者の稲盛がいるので、再
び大空で国民の安全が守ることが出来るよう闘いぬく」と閉会挨拶した。
<広島県労協>
広島県労協は、これまでの広島県内における反戦平和の闘い、国鉄闘争支援など、総評
労働運動の継承・発展をめざす組織として結成された。だが、労働者階級の階級構成に大
きな変化が生まれ、非正規雇用労働者が1700万人を超えていることを始め、国鉄闘争の終
結といった新たな変化が生まれている。そのような情勢の変化を踏まえて、県労協のスロ
ーガンをより明確なものとする必要性に迫られた。
そのため、この間「私たちの運動の原則は、広島県労働組合共闘会議が蓄積してきた、
良き積極面を継承し発展させ、企業の枠を超えた労働組合、労働者の連帯をつくり出し、
独占資本と対決し、労働者の生活と権利の向上のために闘う」という内容をより豊富化し
ていくこととなった。その柱となるものは、階級的な労働運動の再構築である。階級的と
は何か?それは、正規、非正規を問わず、また日本人か外国人かを問わず、まさに資本に
抑圧され搾取されている労働者が、団結し、力を合わせて闘うことである。思想的にも、
実践的にも、組織的にもそのような実体的力を表していかねばならない。
昨年来、このような問題意識から、地域労働運動の発展と非正規雇用労働者の組織化、
さらには外国人研修生・実習生の闘いを組織することに力を注いできた。県労協を構成する
各単組の闘いの前進は当然のこととして、それぞれ協力しながら広島全県に働く者の相談
室を形成することに注力してきた。その結果、昨年末には県北の地に相談室が起ち上げら
れ、広島、呉、福山、県北という形で、基本的な労働相談の受け皿ができあがった。
さらに、今年6月には、広島では「外国人実習生を支援する会」が結成され、奴隷的労働
を強いられている実習生たちの救済活動にも取り組み始めている。こうした相談室活動や
支援する会と連動しながら、地域ユニオン運動の発展を支え、福山現業労組や郵政ユニオ
ンの職場内の非正規雇用労働者組織化に力を入れている。
次の機会には、これらの運動の前進した姿を報告できるよう奮闘する決意である。
<徳島全労協>
NTT の職場では2002年の構造改革から、分社化・子会社化を進め、NTT 本体の業務を委託
し、毎年50歳の労働者に対し雇用選択「退職再雇用」を強要してきました。地元に残れる
換わりに約30%の賃金ダウンを伴うものです。3年前は分社化した地域会社を逆に統一し、
さらに業務委託と退職強要を進めています。退職を拒否した労働者に対しては報復人事と
して「広域配転」「職種変更」を強行してきました。拒否した四国電通合同労働組合の組
合員が徳島から松山に「見せしめ配転」が強行され、松山地裁に配転無効の提訴を行いま
した。2007年松山地裁,2008年高松高裁,2009年8月最高裁で不当な判決が続きました。敗
訴が確定しましたが、労働契約法3条3項の規定する「仕事と生活の調和」を武器に再度
闘う方法を模索しています。
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更にもう一人の拒否者(徳島から松山へ見せしめ配転)は全く異なる業務に従事させら
れ、うつ病状態に陥り、長期の治療を余儀なくされました。2007年松山労働基準監督署は
「精神障害にり患してはいるが、『強』とは認められず」として労災を認めませんでした。
2008年労働保険審査会の再審査請求も棄却されました。そこで2009年5月高松地裁に提訴し
て闘いましたが、2011年2月16日、不当判決が出され、現在高松高裁に控訴中です。8月2
日,組合側の証人申請を全て却下され結審しました。11月には判決の予定です。
ユニオン徳島(徳島地域合同労組)では、出版会社の下請けに勤務する組合員が、事前
に説明のないまま勤務変更がなされました。これに抗議した組合員に対し、減給処分と始
末書提出の処分が出され、現在交渉中です。
NTT 関連労働組合は組合員が徳島から兵庫支店に配転されていましたが,2004年より関
西に配転され、徳島と関西における二重生活が続き、生活や活動に支障がきたしています。
現在,兵庫と大阪の仲間と連帯し、活動を続けています。NTT リストラ構造改革の強制配
転に対し、生活破壊の評価制度廃止に向けて粘り強く闘いを展開しています。
大鵬薬品では、大塚グループが持株会社を筆頭にホールディングス化し、その傘下に入
りました。グループ間の労働条件の統一化が懸念されます。グループ主要25社の内、唯一
労働組合が存在するのは大鵬薬品だけです。30年間の闘いの中で、グループの中では一番
良いと言われる労働条件を勝ち取ってきました。団体交渉で常にこの議題を出し、牽制し
ています。社員の高齢化により、組合員も定年退職や再雇用(エルダー社員)問題が発生
してきています。工場でのエルダー社員には一時金がなく、フルタイム就業です。勤務時
間の短時間化や就業日数の削減、一時金の獲得等を要求しています。若い社員の賃上げが
低いことなどまだまだやらねばならないことが山積みです。組合員の定年退職が増えてき
ています。しかし、本年度は2名の組合員が加盟してきました。減少と増加の結果、微増で
すが組織拡大できました。入ってきた組合員はパワハラの改善を要求し、謝罪と希望する
新職場への配置転換を勝ち取りました。
酒卸労働組合は構造不況,量販店の安売りなどで職場の存続が危機にさらされています。
正規職も NTT 方式を取り入れ53歳で退職・嘱託再雇用にされ、賃金のダウン・一時金の削
減が強行されています。経営側は中途退職者の退職金の大幅ダウンを提案してきました。
企業の存続が危ぶまれる中、厳しい闘いが強いられています。
東横イン労働組合徳島支部が結成され,7月に徳島全労協に正式加盟しました。役員の選
出,規約や組合活動援助規定を行っています。メイク職場の時間外労働の改善やフロント
職場の改善を議論しているところです。
徳島では全港湾・全日建・全国一般全国協議会の3単産を軸として、運動を展開し、労働
相談活動・メーデー前夜祭などを通じ、未組織の組織化を闘っています。本年度は「海」
と「陸」の交通行政のあり方をテーマに全港湾の三島川之江港の指定港化の闘い、徳島市
バス労組の公共交通存続の闘いを討論しました。
全港湾の外郭団体として港湾(労働相談)ユニオンセンターを2010年2月に開設し1年半
が経過しました。四国を中心とした相談窓口として活動を開始し、問題解決に当たってい
ます。労働組合加盟を勝ち取る実績もあがっています。
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◎単産、単組報告
<東京都労働組合連合会>
全水道東水労
東京都水道局、下水道局労働者で組織する東水労は、反合理化の取り組みとして、監理
団体委託拡大反対の闘いを進めている。
水道・下水道両局は、事業の丸ごとの民営化という方策は採らないものの、「経営形態
の見直し」方針の下、「一体的事業運営」のパートナーと称して株式会社の監理団体(全
3 社)を立ち上げ、事業の委託化を進めている。この方針が貫徹されれば、両局の官房機
能(企画、許認可、委託管理業務)だけが都の直轄組織として残り、事業執行の中核とな
る事業所業務はすべて委託化されることとなる。このことは、直接都民サービスに責任を
持つ事業局としての機能が失われ、組合員・職員が将来にわたって働く場所が次々と失わ
れることを意味する。
監理団体は、両局が蓄積してきた水道・下水道事業の技術・ノウハウ継承の受け皿とさ
れており、特命随意契約という独占的委託契約を保証されている。しかし実際には、現場
労働の多くが協力会社からの派遣や再委託に依存しており、監理団体には技術継承の受け
皿としての実態はない。技術を維持するためには職員の協力が欠かせないということであ
り、委託管理に従事する組合員・職員(本工)は、技術力のギャップを埋めるために恒常
的な労働強化を強いられている。下請け、孫請けで働かされる労働者は、低賃金と不安定
雇用を強いられる実態にある。経営上は地域独占、公営という形態を取りながら、差別的
雇用形態を導入することによって安定的に高利潤を保証されるということであり、このこ
とは、公契約条例制定を求める立場からも、許すことはできない。
東水労は、具体的獲得目標として、監理団体委託計画の見直し(水道)と、退職派遣職
員の目的の限定(下水道局)を掲げて 2010 年末闘争の取り組みを進め、2010 年 12 月 10
日には労使関係を軽んじる両局に対して早朝1時間ストライキを打ち抜き、組合員の総意
を突きつけた。闘いは、1月闘争、2011 春闘へと引き継がれ、震災による中断を経て7月
28 日のストライキを背景とした夏季闘争へと続いていった。文字どおり通年の闘いとな
り、計画見直しの実現を迫りきる闘いとして継続していく。
東水労は、監理団体問題と連動して直営技術の継承という立場から、長期間採用が停止
されている現業職員の新規採用実現を掲げている。先の東日本大震災では、都内の水道・
下水道施設が多く被災したと同時に、東北、関東の被災地への応急給水・復旧支援に多く
の職員が赴くこととなった。こうした体験を通じて改めて直営技術の重要性が確認された
ことから、東水労は7月闘争の中で両局に対して政策の変更を迫り、現業採用の判断を求
める闘いを展開した。
この他、水道今日では事実上青天井となっている超過勤務実態の見直しを求めての三六
協約改定の取り組みを進めた。この取り組みは、震災という事態の中で組合員・職員を過
労から守る課題として引き継がれ、労基法 33 条適用を巡る攻防となった。
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<東京清掃労組>
東京23区の清掃事業、増える非正規労働者
東京23区の清掃事業の収集車両は、民間事業者から車両を雇い上げる『雇上(ようじょう)
契約』という形態があり、全体の収集車両の約8割をこの雇上契約が占める。その雇上契約
のひとつに『車付雇上(しゃつきようじょう)』という契約形態がある。本来、雇上契約は
車両と運転手の契約であるが、車付雇上は、車両と運転手の他に収集作業員も契約対象と
なる。23区の清掃現場では、この車付雇上という契約形態が拡大の一途である。
車付雇上は本来、火災ごみや引越しに伴うごみなど、臨時ごみが出る場合に限る臨時的
な扱いだったが、正規職員の退職不補充の穴埋めとして、年間の作業計画の中で恒常的に
活用する例が増え始めた。全国的に見ても特異な例と言えるだろう。
現行の特別区の雇上契約は、東京二十三区清掃協議会と雇上会社との間で結んでいる契
約書で「廃棄物運搬請負契約」となっている。車付雇上の労働者の雇用関係は、雇上会社
と派遣会社などとの間に存在する。業務の指揮命令関係も雇上会社との間で生じる。しか
し、毎日の作業の打ち合わせ時に正規職員が具体的な指示を出さざるを得ない場合もあり、
労働者派遣法に違反する偽装請負となる可能性がある。
車付雇上の労働者の雇用形態は、民間の労働組合が行う労働者供給事業との供給契約と
人材派遣会社との派遣契約が合わせて9割以上になる。昇給などの経費もかからず、年収200
万円台の「使い捨ての労働力として、調整弁にされている」と窮状を訴える声も多い。
地方自治体の固有事務とされている清掃事業で、行政が雇用責任を負わない間接雇用の
非正規労働者が増えているのである。安易な民間委託や車付雇上という使い勝手の良い労
働者の活用の結果として、東京23区の清掃事業は危機に瀕している。特殊な車である清掃
収集車の架装の操作を知らずに配車され、「操作方法を教えください」と現場で頼まれた
という事例も報告されている。
近年、清掃工場への不適正搬入が増えているが、非正規で弱い立場にある車付雇上の労
働者が、現場にあるごみなら何でも積んでしまっている実態が懸念される。
清掃事業は一日たりとも滞らせることの出来ない、区民生活に密着した事業である。我
われ東京清掃労働組合は、特別区の廃棄物行政の第一線で働く清掃労働者で組織された労
働組合として、責任ある廃棄物行政のために、正規・非正規、公務・民間を超えた社会的
労働運動を作り出す必要がある。
<郵政労働者ユニオン>
(1)郵政改革法案の成立への取り組み
私たちは昨年大会を経て当面、郵政改革法案の成立を軸に郵政民営化見直しを進める方
針を決定し、臨時国会召集前の 9 月 29 日には衆・参の各会派の重点議員に対する要請行動
と「郵政改革関連法案の臨時国会での成立をめざす中央本部声明」の配布に取り組んでき
ました。10 月 27 日には民営化見直しの大衆行動として国会前行動(約 100 人)と院内集
会(約 50 人)を開催しました。この行動には国会議員の参加、全労協と全労連からの連帯
のあいさつと決意表明が行われるなど大きな成果を上げました。また、この取り組みを通
じて郵政ユニオンと郵産労の両組合委員長連名によって郵政改革法案の成立をめざす「共
同声明」を発表することができました。
両労組の地方本部間でも共同して郵政民営化見直しの街頭情宣活動を取り組んできまし
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た。
改革法案成立の“正念場”ともいえる今国会においては、5 月 17 日に衆院全議員へのポ
スティングと衆院特別委員会全委員に対する要請行動を取り組んできました。また、国会
前で郵産労と共同で集会を開催し、全労協金澤議長、全労連小田川事務局長から連帯の挨
拶をうけました。
(2)郵政リストラ計画との闘い
郵政グループ会社全体でも純利益を減少させている状況ですが、日本郵便事業会社は、
ペリカン便との統合会社の失敗、送達遅延とその対処、郵便物の減少により 3 月期決算で
営業損失 1,034 億円、経常損失 890 億円、当期純損失 354 億円としています。会社は交渉
でも「債務超過もありうる」とさかんに強調し対策として「高度な経営管理の構築」「郵
便再生本部の設置」などをうたうものの、正規・非正規社員への犠牲の転嫁が当面の手段
となっています。
(3)期間雇用社員への犠牲の転嫁
今年 2 月には「要員配置の適正化」という大幅なリストラ施策を社員周知してきました。
本社は郵便事業会社全期間雇用社員 153,598 人のうち昨年 5 月以降に採用した 32,411 人を
3 月末や 5 月末で雇止め可能の対象としました。私たちは、「郵政非正規社員雇い止めホ
ットライン」を 2 月 27 日から 3 月 1 日の 3 日間取り組みました。ペリカン便統合会社の失
敗の中での雇止めということで、報道関係者の関心も高く全国紙・地方紙に案内が掲載さ
れました。相談件数は、45 件で「雇い止め予告」21 件、「雇用不安」13 件、「労働条件
変更」4 件、「いじめ」4 件、「その他」3 件です。相談者はほとんどが郵便事業会社です。
この労働相談の中で、東京では3支店の仲間が、関東でも 3 支店の仲間がユニオンに加
入し分会を立ち上げ闘っています。そのひとつとして 3 月 23 日に千葉県佐倉支店で 8 名の
仲間がユニオン加入、千葉支部佐倉分会として会社に通告し、労働条件の不利益変更を撤
回させました。しかし、会社は、5 月末「雇い止め」を撤回せず、千葉スクラムユニオン
にも加盟して闘っています。
四国香川支部では、長年「おはようニュース」朝ビラを続け、昨年 10 春闘では拠点支部
としてストライキも敢行しました。その中心で活動していた支部長が退職を迎え心配され
ていましたが、再雇用の仲間や期間雇用社員が新たにユニオン加入となり、職場の労働者
からも「『おはようニュース』を続けてほしい。」との声が多く寄せられるなど大きな成
果となっています。
採用一年以内を的にした雇止め以外でも、一方的な勤務時間の変更やスキル評価ダウン
など攻撃は相次いでいますが、闘いを堅持します。組織拡大を前進させます。ちなみにこ
の一年の闘いの中で 40 名超の仲間があらたに加入しました。
(4)正社員への大幅賃下げ攻撃
大震災で中断していた春闘交渉を再開し 4 月 13 日出された回答はベアゼロ・定期昇給実
施は検討中、年間一時金の大幅削減(2・8 月)というかつてない厳しい回答でした。その
後、定期昇給は実施、年間一時金は 3.0 月、年度末において目標を大きく上回る等の業績
が見込まれる場合には「特別報奨金(仮称)」支給を検討、月給制契約社員の基本賃金 1,000
円引き上げ等を回答してきました。
東日本大震災の発生、JPEX 統合の失敗というかつてない事業会社の経営危機という状況
の中での春闘交渉であり、要求提出から大綱整理まで 3 か月を超える長期の交渉となりま
した。
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この間われわれは、経営危機についての、事業会社とともに西川前日本郵政社長が強引
に事業の切り売りを進めた持株会社日本郵政の経営責任を強く主張してきました。日本郵
政グループの支援策、内部留保の活用、肥大化する販売管理費の抑制、更に期間雇用社員
の均等待遇等を中心に追及をして、組合作成の交渉資料の提示、窓口メモの提出(4 回)
と粘り強く交渉を展開してきました。
年間一時金の 1.3 月削減(昨年は 4.3 月)というかつてない厳しい回答に対し、『総括
的に「対立整理」』となりましたが、残された課題については再要求、交渉を行い要求獲
得を目指していきます。
(5)高齢者への攻撃
本年 9 月 30 日時点で満 65 歳以上の期間雇用社員 14,110 人に対し会社は基本的として雇
用継続しないという方針を明らかにしています。われわれは要求書を提出していますが、
原則として今年 9 月末までに雇用を打ち切り、契約更新はしないという姿勢を崩していま
せん。私たちはこの間「郵政労働運動の発展をめざす全国共同会議」としてのアンケート
の取組み、NPO 法人非正規センター「ゆい」と共同でのパンフ発行、職場での学習、相談
活動などこの問題を職場で大きくとりあげ、第 8 回中央委員会を経て 11 春闘の賃金引き上
げとともに、65 歳雇用打ち切りに対するスト権確立を行ってきました。
われわれは、これが強行されるならば業務混乱は必至であるし、高齢労働者の労働権・
生活権への攻撃ととらえ要求交渉を立て直しつつ、社会的な宣伝活動を強めていきます。
(6)東日本大震災救援運動
かつてない大災害が発生し現地組合員・関係者の安否確認を始め手探りで救援活動を開
始しました。「10 トン車での物資搬入に便乗を!」いち早く全統一労組が発した呼びかけ
に応え物資救援が始まり「名無しの震災救援団」という運動として炊き出しなど継続した
取り組みを重ねています。多くの組合員にとってまったく未知の動きが続いてきました。
同時に、小学生の寄せ書きの避難所への寄贈を含む一週間にわたる救援が実現するなど、
近畿地本の仲間の阪神淡路大震災のボランティア(名谷ボランティア)からの経験が生き
ています。
震災間もなく関東地域では救援に関わる物資が商店の棚から消え、それは徐々に西日本に
も広がっていきました。物を追いかけて救援物資の調達は西へ西へ。郵政ユニオン各地方
組織・組合員が如何なく力を発揮しました。組織された労働者であることが救援への思い
を現実のものとすることができました。それぞれがそれぞれの場所でできることをできる
限り行う。少しずつの取り組みが総和として最大限効果的な救援となるように今後も展開
していきたいと考えています。郵政内大労組は「自組合員救援」の域を出ません。それは
当然のことであり非難するものではありません。しかし、われわれは被災者への救援を活
力を持って継続していきたいと思います。
2 月末に雇用調整を通告され、ユニオン加入、3 月に分会を結成した佐倉分会の仲間が 4
月には炊き出しに参加しました。その他東京・関東からも非正規組合員が参加しました。
郵政ボランティア休暇は正社員のみです。どこまでもついてまわる非正規差別です。会社
の姿勢がどうあろうと、郵政ユニオン組合員は人として大切なものを絶対に失いません。
(7)争議勝利
1 月 14 日には広島の淀谷組合員強制配転県労委で勝利命令が出ました。同月 27 日には
兵庫の松田組合員の一円の扱いでの停職処分に対する裁判が勝利和解しました。そして 2
月 17 日、岡山の萩原組合員の雇止め裁判が広島高裁で逆転完全勝利判決を得ました。3 月
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30 日にはいじめ、パワハラ、暴力事件の山田さん裁判が公務災害認定に続き、損害賠償で
も勝利和解を獲得しました。
配転問題、懲戒処分、非正規労働者の雇止めと、不可能と言われた課題でわずかな穴を
こじ開けて勝利を重ねています。国家公務員時代以降もありえないと言われていた会社当
局の「謝罪」も実現しています。
<電通労組全国協議会>
3月11日東日本を襲った大地震と大津波、そして人災でもある福島第一原発事故。
宮城、福島に居住する電通労組組合員は、人的被害はなかったものの家屋の損半壊、流失、
原発事故による避難を余儀なくされた。多くの組合員が被害を受けたが東北全労協災害対
策本部に結集して、第一に被災地とりわけ沿岸部の組合員の安否の確認、第二に被災した
組合員や家族、友人、知人への水、ガソリン、灯油をはじめとした支援物資を届ける活動、
第三のステップとして地域の復旧支援活動を余震と地盤沈下による冠水と闘いながら全力
で取り組んできた。
また、大阪電通合同労組を中心とした大阪・徳島全労協の支援部隊が第6次にわたる復旧
支援活動を行い阪神・淡路の経験と教訓が今回の東日本大震災の復旧支援活動の大きな力
になった。電気、水道、ガス、情報通信などの「公共サービス」は全て停止し今なお提供
されない地域も存在している。
通信設備も地震・津波地域は大きな損害を受けた。NTT は、毎日1万人の労働者と通信設
備等を全国から被災地に送り、4月までに流出、損壊した41ビルの内5ビル(島嶼部と原発
警戒区域)を除き簡易の「交換ボックス」を応急的に設置し、回復させたとしている。だ
が、宮城県は、津波で浸水した地域の建築許可を認めていないため、通信インフラをはじ
め、水道、電気も未だ手付かず状態のところがたくさんある。
瓦礫撤去も徐々にではあるが進められているが、沿岸部や半島部は手付かずであり、遅
々として進まない政府の「財政出動」の遅れが被災地の復旧の足かせとなっている。消費
税や所得税の増税を通した復興資金や原発損害賠償金の「国民負担」に対して、私たちは、
NTT をはじめとした大企業に内部留保を解除して企業の社会的責任として「社会的還元」
を要求してきた。今こそ「復興特需」を叫ぶ大資本・大企業の蓄えた利益を吐き出させる
取り組みが重要だ。
また、復興作業に関して、NTT リストラでの会社分割、子会社化、業務委託等が復興活
動の妨げになっている。NTT 東日本は仙台に「東北復興推進室」を発足させて復興業務を
するとしているが、そこで働かせる労働者は、子会社からの「出向」で賄い、労働条件は
出向元(東日本の賃金の30%減)を適用するという「偽装請負」的な施策を実施しようと
している。長年保守・維持業務を行い地元に精通している「NTT リストラ」に反対し退職
・再雇用拒否した恣意的な広域職配転攻撃を受けた労働者を地元に戻し、復旧・復興に従
事させるよう要求して闘っている。また、NTT で働く非正規雇用労働者は震災による局舎
損傷の中での職場ロケーション変更によって福利厚生面が切り刻まれるという状況があ
る。また、契約更新時に契約期間が短縮(3か月更新から2か月更新に)されるなか「雇用
不安」が拡がっている。こうした問題について職場点検による要求化をはかりさらには組
合への組織化を進めている。
地域における中小民間未組織労働者の「労働相談」や「団体交渉」への交渉委員として
の参加など電通労組全国協議会の各組合は積極的に取り組み、東北では震災を口実にした
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事業所閉鎖・移転による解雇・雇止めが起きているなかで労働相談、組織化をと共に取り
組んでいる。
また、福島第一原発事故によって30キロ圏外に住む電通労組組合員の地域も放射能汚染
が広がっている。政府・東電の情報隠しと、ちぐはぐな原発事故対応は原発事故被災・避
難住民の不安を増幅させている。そのような中、フランスでの「G8」開催に対し「G8対抗
アクション」に代表を派遣し、福島原発事故の実態と日本における脱原発運動の状況を欧
州の労働者市民に訴えた。対抗アクションにはチェルノブイリの労働者やフランスの原発
下請け労働者を含めた4人のパネラーが報告討論を行い、全世界的な脱原発・反原発運動の
国際的な運動の必要性が討論された。フランスの労働組合、市民運動、社会運動団体など
の交流・討論でも福島原発事故は大きな関心を持って論議された。原発事故の責任は東電
と原発を推進してきた歴代政権にある。脱原発に方針転換させる大衆的な取り組みを強化
するとともに、原発事故被害者と連帯し交流する取り組みを進めていきたい。
最後に、今回の大震災に対し全労協傘下各組合からの力強い激励と、心温まる救援物資、
及び義援金等々をお寄せいただき本当に有難うございました。地震、津波そして福島第一
原発事故と「天災」と「人災」の中で電通労組全国協議会は今後とも全力を尽くして闘い
ます。
<全統一労働組合>
年間にわたる光輪モータース闘争がついに終結を迎えた。ワンマン社長の横暴と闘う為
に立ち上がって以降、前半は数々の不当労働行為との闘い、後半は経営問題をめぐる責任
追及と社長の逃亡を許さない闘いと、闘いの焦点は変わってきたが、支援共闘会議に結集
した仲間の支えで、最後までくじけることなく闘争が持続した。一昨年の倒産と昨年の社
長の死去という事態を迎えて、この闘争をどのように継続し、どのように終結させるのか
が問われ続けたが、「団交待機場所」として占拠し続けたバイクハンズという建物を守り
続けたことが、最終的な解決への道を切り開いた。この建物の処分で得られた資金から解
決金が支払われ、当該組合員の最低限の権利が確保された。この光輪モータース闘争を通
じて得られた多くの仲間とのつながり、連帯を今後も大切にしていきたい。
光輪モータースの倒産後組合員の手で設立されたビッグビートは地域の同業者との連
携を深めながら「バイク離れ」という時勢と戦っている。そのほかに、ハイム化粧品、城
北食品など、労働組合の手による「自主生産」も全統一の事業の一つとして確立しつつあ
る。
分会長に対する嫌がらせや不誠実団交などの組合つぶし攻撃と闘うケーメックス闘争
は、一時金不支給が続き、裁判闘争が続いている。都市開発分会では、「偽装請負」で労
働者をモノ扱いし、労働委員会命令すら無視する UR リンケージの責任を追及する闘いが続
いている。
3.11 震災に伴い、南三陸を中心とする救援活動に全統一の組合員が大勢参加した。これ
を通じて得られた支援・連帯関係も今後の運動にとっての貴重な財産となろう。
外国人研修生・技能実習生をはじめとする外国人労働者(移住労働者)の権利問題への
取り組みは、これまで通り続いている。最近はアフリカ系で配偶者ビザを持っている労働
者の相談も多く、その人たちの手による分会もできるようになっている。3.11 震災の影響
で例年の「外国人春闘」の企画はできなかったが、この震災の救援活動に、外国人労働者
の仲間が積極的に参加したことは、「多民族・多文化共生」を目指す上で、大きく評価さ
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れていいであろう。
<全国一般全国一般全国協>
●全国の闘い
1.全国で争議を展開
①解雇撤回、雇い止めを許さないの闘い
全国協の仲間は労働者の権利を守るために各地で多くの争議を闘っている。解雇争議で
は長野一般の信州大・小山解雇撤回闘争やふくしま連帯・特養老人センター「エルピス」
の関根さんに対する雇い止めを許さない闘いが続いている。小山教授へのパワハラを口実
にした懲戒解雇攻撃は実は、カーボンナノチューブに含まれる発ガン性の研究を闇に葬ろ
うとする大学当局の意図は明らかである。小山さんは厚生労働省にも訴えを重ね、松本駅
前での宣伝行動を重ねてきた。しかし大学はいまだ不誠実な対応を繰り返している。残念
ながら、地位確認を求めた仮処分請求に対し、長野地裁松本支部は大学の主張のみ取り上
げて請求を棄却した。しかし、闘いは本訴と不誠実団交の救済を求める労働委員会闘争が
続けられています。
また、関根さんの闘いでは整理解雇要件を認めながらも雇い止めを認めるという不当な
判決が出されています。雇い止めをめぐっては郵政非常勤職員の解雇をめぐる闘いにも全
国協の仲間によって進められています。
非正規労働者の雇い止め解雇に対して、裁判所は契約を形式的に判断し、現実的な雇用
実態をみない態度は闘いを非常に困難なものとしています。裁判闘争の強化も必要である。
②ゼンセン同盟の妨害と闘う東横イン労組の闘い
昨年多くの仲間の支援によって結成された東横イン労組は今、ゼンセン同盟によって第
二組合が結成され、新たな問題にも直面しているが、大阪、徳島、東京を中心に組合員は
各地に拡がりを見せ、ねばり強く労働条件の改善を進めている。退職した労働者の未払い
賃金と「内観」研修による人格攻撃に対する賠償請求裁判は会社が解決金を支払うことで
和解となり、また、労基署の勧告によって残業未払いを東横インも認めざるを得ない状況
へ追いつめている。
③経営困難職場の闘い
リーマンショック以降の不況や、震災は中小企業を直撃している。東京労組アニマルケ
ア支部、フジビ支部など経営を困難なものにさせ、雇用が脅かされる事態ともなっている。
④中小零細運輸労働者の闘い
中小零細の運輸会社は不況をまともに受け、利益率の低下を総て労働者に転嫁している。
労働組合敵視による配車差別、事業者閉鎖、事故の損害を労働者に弁償させるなどの攻撃
が行われ、また過労による死亡など大変過酷な状況によって争議が多発している。ユニオ
ン北九州の興伸運運輸では有給を認めないばかりか労災で大けがをした労働者に事故の損
害賠償を請求するなど無法状態が続いている。洛南ユニオン・丸三運輸では長距離運転に
従事していた組合員が過労死するなど争議も深刻で厳しい闘いが続いている。
⑤損害賠償攻撃との闘い
ベネッセの子会社で英会話学校ベルリッツから東京南部と同ベルリッツ労組に 1 億 3000
万円の損害賠償が提訴され裁判が続いている。これは組合員のストライキを損害賠償攻撃
によって封じ込めようとするものであり、あえて巨額な金額を請求し、闘いを萎縮させよ
うとするものである。また今春、大阪ゼネラルユニオンに対し英会話学校 GABA がホームペ
ージの記述が名誉毀損であるとして 5500 万円の損害賠償を提訴した。この GABA の損害賠
償裁判提訴は組合員講師の労働者性を認めた大阪府労委の命令、並びに再審査申立を却下
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した中労委命令に対する腹いせにすぎない。GABA は中労委を相手に行政訴訟でも敗訴して
いる。損害賠償請求によって労働組合の活動を封じ込めようとする弁護士を含む攻撃にし
っかり反撃しておかなければならない。
2.職種別闘争の展開
①ハイタク労働者、トラック労働者
ハイタク労働者は自公政権下の規制緩和による増車、不況、歩合制賃金によって、運賃
収入は下がり続け、最低賃金も大きく割り込む飢餓賃金に直面している。新たに福島や広
島のタクシー労働者の参加・交流が始まっているが生活できる賃金、労働条件確保の闘い
を強化のため、ハイタク業界全体の情報収集を強化し、またトラック労働者など業種別交
流を深めている。単産を超えて交流を深め業種運動を強化している。
②介護労働者
高齢化社会が急激に進んでいる。介護労働は今後の重要な位置を占めることになる。し
かしその労働条件はあまりにも劣悪なものとなっている。また、非正規労働を雇用の中心
にしており、利益の源泉を労働者に求めるものとなっている。いまだ政府は介護労働に対
して報酬額を低く抑え、低い評価のままとなっている。デイサービス、老人ホーム、特養
などで働く労働者の労働条件底上げは喫緊の課題となっている。政府交渉を積み上げるた
めにも業種共闘の強化が早急に求められている。
●全国一般東京東部労組
1.ひっきりなしの電話、労働相談件数の記録的増大、日曜労働相談でも来所相談が増。
東京東部労組と協力関係にある NPO 労働相談センターに寄せられた 2010 年の労働相談件
数は、昨年 4 月から 7 月にかけての 4 か月連続と 9 月にも、500 件/月を超えるという状況
の中でのべ 5943 件となり、1988 年のセンター開設以来、過去最高の件数となった。
2009 年の労働相談件数が 5029 件であり、件数で 2 割アップの状況となっている。相談
の内容については、「解雇・会社都合の退職」が第 1 位の状況が続いていた。昨年はこれ
に加え「いじめ・いやがらせ」や、「辞めさせてくれない」「セクハラ」などを合わせて
の「パワハラ関連」が、昨年 10 月には相談内容の第 1 位となった。相談件数全体に占める
割合も「解雇・会社都合の退職」と同じく、「パワハラ関連」が 25%に及んでいる。
相談件数増の勢いは今年になってさらに高まり、2 月に相談件数が 500 件を突破すると、
4 月には過去最高の 756 件/月となり、東日本大震災の影響の中、3・5・6 月も 600 件/月を
超えているという状況となっている。「震災切り」ほか、予断の許せない状況だ。
2.労働相談からの組織化
今期に組織化された支部は、東陽ガス支部、東横イン首都圏支部、サンプレス支部、個
人タクシー協同組合職員支部、三愛工業支部の 4 支部となっている。
中でも、ニチガスの協力会社・東陽ガスでは、「雇用契約」と「業務委託契約」の二本立
ての契約のもと、労働者に経費負担をさせ給料から天引くという、経営者にとって“いい
とこ取り”のとんでもない働かせ方がまかり通っている。東陽ガス支部の仲間は、“借金
漬け労働”を無くすため、7月に断固として裁判闘争に立ち上がっている。
3.37 回定期大会での「非常事態宣言」
デイベンロイ労組支部に対する大森工場閉鎖と本社解体の攻撃を頂点とし、タケエイ支
部への組合員狙い撃ち懲戒処分の乱発、布亀支部書記長への組合脱退強要と差別的取扱い
(裁判・都労委で係争中)、ACT ユニオン支部組合員の自宅待機命令と賃金カットの攻撃、
HTS 支部の偽装みなし労働裁判での相次ぐ不当判決と塩田委員長への解雇攻撃、その他各
支部の至る所で不当な会社側からの組織破壊攻撃が強められている。いずれの経営者も組
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合つぶし、不当労働行為にやっきとなっている。東部労組は、こうした攻撃のすべてを跳
ね返し、各支部が職場闘争を強め、東部労組総力をあげ一丸となって非常事態を突破する
ことを確認した。
4.アイビイケイ支部の争議解決と経営側を追い詰める各支部の闘い
アイビイケイ石毛工場で 05 年に、製麺機に挟まれ左手の指 3 本を切断するという重大労
災を被災した安田組合員の損害賠償請求訴訟が、昨年 12 月 27 日に、組合側の勝利和解で
解決した。安全配慮義務違反を認めない不誠実な会社に対し、数回の東部権利総行動やメ
ーデー独自行動などの本社前大衆行動で、東部労組組合員と地域の仲間が寄ってたかって
支援した成果である。
デイベンロイ労組支部セブンズクリーナー分会の、工場閉鎖反対の闘いも、退職者の退
職金の上積みと再就職のあっせん、石毛工場へ異動する組合員には希望する労働条件を確
保するなど、分会員の雇用と生活をまもる形で会社側と合意し解決した。
東京都労働委員会は 2 月 4 日、HTS 支部の塩田委員長に対する「取材に応じたらアサイ
ン停止」(事実上の解雇)が、会社側による明確な不当労働行為であると認定した。HTS
支部は、会社側の「言論の自由の侵害」にも及ぶ攻撃に対し、社会的な包囲と支援を強め、
「塩田さんを業務に復帰させること、業務に復帰するまでの間の賃金保障をすること」な
どの組合側全面勝利命令を勝ち取った。
また、日本通信支部 4 名の解雇事件は、東京地裁での労働審判で第 1 審(2 月 8 日)か
ら 2 週間足らずで、「4 名の解雇は無効」とのバックペイを含む全面勝利審判を勝ち取っ
た。
東横イン首都圏支部では、退職支配人および元フロント組合員が、会社側に未払い残業
代の請求を求めていた事件で、3 月、5 月とそれぞれ金銭和解している。蒲田東口店の残業
代の未払い、労基法 37 条違反の申告に対し、蒲田労基署は会社側に是正勧告を出した。
5.東日本大震災被災者支援の行動と脱原発の闘い
3 月 11 日の東日本大震災を受け、多くの労働者が苦境に立たされた。東部労組は、震災
に便乗した経営者の横暴が目に余る中で、「経営者諸君、これ以上災いを起こすな」との
声明を発し、被災者救援活動と 3/27 震災切りを許すな!集中労働相談」を行った。街頭で
の被災者救援募金は、錦糸町・京成立石・新小岩・浅草・上野での各駅頭で行い、フォー
ラムエンジニアリング支部を先頭に、多くの組合員が参加した。
脱原発への取り組みは、メーデーでの首都圏 3 労組約 400 名での東電本社前抗議行動を
始め、京成労組元書記長の宮川さんをお招きした東部労組 6 月合宿でも「原発関連学習会」
を行い、たんぽぽ舎の山崎副代表をお招きした学習講座も開いた。
全労協の一員として、6//11 集会、9/19 明治公園での 5 万人集会へと繋がる大きな脱原
発のうねりを作ることが問われている。
●全国一般労働組合東京南部
1.労働組合の権利を守る闘い
(1)ベルリッツによるストライキ損害賠償訴訟
全国一般なんぶの支部であるベグント組合員の 2008 年の春闘ストライキに対し、ベルリ
ッツ経営がスト目的を違法であるとして、全国一般なんぶ、ベグント、平賀委員長ほかベ
グント執行委員ら 9 者に1億1千万円の損害賠償を求めた裁判は、現在、大詰めを迎えて
いる。2008 年暮れに始まったこの訴訟は、労働組合の権利にかけられた攻撃として注目さ
れている。同じ時期から、このような使用者による労働組合の権利否認の事件が多発する
ようになった。とりわけ闘う合同労組に対する弾圧が激しくなっている。労働組合の権利
を守るために、私たちはより強い団結と闘いの陣形を鍛えたい。
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(2)組合つぶし委員長解雇 ウェザーニューズ争議始まる
過労自殺を繰り返してはならない、健康で安全に働きたいと労働組合を結成したウェ
ザーニューズ労働組合は、まず長時間労働をなくすこと、過労自殺の労災調査の過程で「労
基署に提出する形だけのものだから」と偽造した労働時間記録や雇用契約に署名させられ
たことの無効を訴えた。団体交渉では組合員が期間の定めのない雇用であることの確認を
求めた。しかし、組合をきらったウェザーニューズは、この形だけのはずの労働契約が「有
期」であるとして、ディヴィドソン委員長の解雇を狙った。ウェザーニューズは多国籍の
労働者が働いている日本企業だ。組合員の国籍も数ヶ国にわたっている。デヴィッドソン
委員長を職場に戻し、多国籍の労働者が過重なストレスにさらされて働く職場を快適な職
場に変えるため、奮闘している。
2.労働者の権利を守るために-非正規雇用労働者の闘い
(1)三国商事川口さん高齢者再雇用解雇裁判
2010 年 10 月、評価査定マイナスの理由で契約更新を拒否、会社の定年後再雇用制度を
恣意的な評価で悪利用した組合員解雇が行われた。当該の川口さんは職場組合員の桑山さ
んとともに、組合員排除を許さない争議を闘っている。
(2)キャセイホリデー新津谷さん社員登用反故解雇裁判
会社は、採用面接時の原則 3 年で契約社員から正社員への登用があるという約束を反故
にし、5 年目の契約に不更新条項を盛り込んだ。雇用継続の期待を持って正社員と同じ仕
事をしてきた新津谷さんは不更新条約に合意できるはずがない。昨年 11 月に解雇され、裁
判に訴え闘っている。
(3)外語ビジネス専門学校解雇裁判
外語ビジネス専門学校(川崎)の英語教師であるスティーブン・ボルジャーさん、マー
ク・ディビッドさんは、社会・労働保険の未加入を疑問に思い、関係当局に自らの権利に
ついて質問した。ところがこれを知った学校が、二人を 2011 年 3 月 31 日解雇した。こう
した質問を関係当局にすることが、信頼関係を破壊する行為だというのだ。ボルジャーさ
んは有期契約満了の雇い止め、ディビッドさんにはでっち上げ理由によって 2 年契約の中
途解約だった。二人は地位確認訴訟を横浜裁判所川崎支部に提訴し闘いを開始した。
雇用形態はさまざまあるが、働く人の権利は平等で、会社との労使関係は対等である。
しかし、これらの争議は有期契約労働がいかに不安定・不平等であるかを物語る。私たち
は争議に勝利するだけでなく、合理的理由のない有期雇用の禁止や均等待遇の義務付けな
ど労働者を保護する法整備に向けても闘いたい。
●全労協全国一般東京労働組合
東京労組は、昨年 10 月第 22 回定期大会において①労働者の生活と権利向上の実現②首
切り、賃下げ等の合理化反対、サービス残業の廃絶=雇用と生活を守る闘いの強化③非正
規労働者の待遇改善、安定雇用の実現④東京労組の組織強化・拡大⑤全労協、全国協との
連携強化、中小労働運動の前進⑥争議団闘争への支援強化⑦反戦・平和闘争への取り組み
強化等々の基本的な方針と、貧困格差社会を打破し労働者が安心して働ける社会を実現し
ていくためには、労働組合が社会的な存在として春闘を始めあらゆる場面での活動の強化
が求められていることを確認した。
1.11 春闘
11 春闘は 3 月 9 日の第 1 波統一行動からスタートし、フジビグループ分会(印刷・製版)
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→アズシーン分会(イベント備品リース)→新聞輸送分会(運輸)の 3 つの職場において
抗議、激励集会を開催した。しかし、その 2 日後に起きた 3・11 東日本大震災と東電福島
原発事故は状況を一変させた。東京労組は 3 月 25 日を統一ストライキ行動=最大集中日と
して設定していたが、交通機関の麻痺もあり、予定していた行動について変更せざるを得
なかった。社前集会を予定していた職場の組合員からは、取り組みの是非を巡って様々な
意見が出された。日本を「ひとつ」にしようとするマスコミキャンペーンと「自粛」世論
の蔓延により心理的に圧迫されたことは否めない。-この点は春闘総括の中で時間を割い
て議論し、組合員から様々な意見が出され改めて組合運動を見直すことになった。
3・25 は、被災地や被災者救援に労働組合として最大限取組んで行く事をまず確認し、
労働者が置かれた困難な状況下「自粛」世論に流されることなく声を上げていこうとなっ
た。30 年に渡って闘われている NTT 木下職業病闘争の解決を求める NTT 持株会社への申し
入れ→少年写真新聞社分会(学校壁新聞発行)→東伸社ユニオン(専門紙・業界紙配達)
→屋内総決起集会を約 300 名の仲間の結集をもって貫徹した。この日取り組んだ少年写真
新聞分会と東伸社ユニオンは数年ぶりの集会であった。東伸社ユニオンは統一ストライキ
のパワーが春闘交渉で具体的成果として現れ、非正規労働者の時給 50 円アップ、一時金ア
ップを勝取っている。
参加した職場組合員からは「最初不安はあったが参加してよかった」との声が多く聞か
れた。一部取り組み変更はあったものの、統一ストライキの貫徹を通して運動に対する確
信を深めることが出来たと感じている。
2 月 24 日経団連前、4 月 6 日中央総決起集会・デモと「11 けんり春闘」の行動にも積極
参加し、5・1 日比谷メーデーにおいては、デモ終了後全国協の仲間で東電本社前集会と申
し入れを行なった。
2.困難職場・争議
企業危機を迎えている職場がますます増えている。
社長(株主)による放漫経営、社会保険料の 1 年に及ぶ未納が発覚したアニマルケア(実
験動物の飼育・管理会社)では、従来の顧問弁護士とは別に、合同労組を真向から否定し
徹底した団交引延し(拒否)を行う河本毅弁護士を雇い入れ、団交すら応じようとしてい
ない。組合員は全国の事業所に散らばるが団結を固め、7 月 25 日組合否認に対する抗議と
団交の早期開催を求めストライキに決起した。
一方的賃金引下げを契機として結成されたアズシーン分会は、3・9 社前集会後、組合員
全員で未払い賃金請求訴訟を提訴した。
フジビ G 分会では、春闘交渉の中で「希望退職」提案が出され、3・9、4・26 と 2 回の
社前集会で反撃し、提案を撤回させたが依然企業危機は続いている。事実上の親会社であ
る富士美術印刷の支援がカギとなっている。富士美術印刷へも団交を申し入れ、雇用保障
を求める闘いを強化している。
組合否認、別組合との差別攻撃と闘う西武バス分会は、今年初めて西部ホールディング
の株主総会に対する情宣行動に取組んだ。闘う組合嫌いで有名な「西武」グループの歴史
でおそらく初めてのことではないだろうか。労働委員会も命令を待つばかりとなり山場を
迎えている。
毎日新聞社の経営からの撤退と相次ぐ輸送運賃切り下げ、競争入札の導入、親会社=新
聞社からの社長派遣の打ち切り等々で企業存続の危機を迎えている新聞輸送分会は 3・9
社前集会に取り組んだ。団交には必ず他職場の組合員も駆けつけ、新聞輸送経営のみなら
ず親会社=新聞社を意識した闘いを進めている。福島原発事故の深刻な放射能汚染地域へ
の新聞配送問題では、社長に新聞社と交渉をさせるなど、仲間の命と健康を守る運動にも
力を注ぎ、被災地救援も分会として取り組んでいる。
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上司の暴行をきっかけに、岐阜朝日大学で歯科麻酔医師 2 名が分会を結成し闘いに立ち
上がった。大学当局は加害者をかばい事件の隠蔽と、組合潰しのための団交拒否と分会長
に対する不当な雇い止めを行ってきている。大学本部のある東京代々木での月 3~4 回の情
宣と姉妹校であり理事長兼任の千葉県浦安の明海大学前情宣に取り組む一方、6 月 17 日、
理事長一族が住まいを構える世田谷区成城の高級住宅街で、争議解決を求めるデモ行進を
行い全権を持つ理事長を追い詰めてきた。分会長の藤原先生は解雇状態に置かれているが、
被災地で歯科検診のボランティアに定期的に取り組み、積極的に活動している。
昨年、お盆休暇前に突然企業解散を告げられ、争いに突入した小堀印刷分会が 1 年の闘
いを経て解決を勝ち取った。金銭和解であったが、自らの責任を放棄し逃亡を図ろうとし
た経営者に責任を取らせ解決を勝ち取り、7 月 30 日解決報告集会を開催した。
その他東京労組では、30 年に及ぶ NTT 木下職業病闘争を始め多種多様な争議が闘われてい
る。こうした多種多様な課題、闘いへの取り組みが東京労組の活動力の源泉である。
3.職場活動の強化
東京労組の課題として世代交代があげられる。前身である総評全国一般から数えると 42
年の歴史を持つ。現在職場では合同労組の意義や役割をもう一度見直そうとの議論が起こ
っている。7 月 23 日に元総評全国一般中央本部秋山書記次長を講師に招き全国一般の歴史
を学ぶ学習会を開催した。私たちの存在基盤である職場での活動をどのように取り組み、
強化していくのか、ざっくばらんな論議が出来る場として、東京労組では今期職場交流会
を発足させた。7 月 16 日の第 1 回交流会には 20 職場約 40 名が参加し職場活動の悩みや経
験交流が行われた。次回 9 月開催にむけて準備を進めている。
4.東日本大震災・福島原発事故
被災地・被災者への救援には組織的取り組みを確認し、募金口座の開設と現地へのボラ
ンティア派遣を進めてきた。今後も継続的な支援を追求していきたい。
福島原発事故は私たちに改めて原発の恐ろしさを知らしめた。学習会は 3・25 統一スト
ライキにおける講演を始め、春闘総括一泊会議、非正規センター第 3 回総会での講演と連
続して開催してきている。全労協の脱・原発プロジェクトや諸行動に積極的に参加し、脱
・原発に向け取り組みを強化していきたい。
5.反戦・平和
今年も「沖縄へ行こう実行委員会」を結成し沖縄平和行進に参加した。大震災の影響で、
沖縄現地が全国呼び掛けはしない中ではあったが、東京労組内部では積極的に参加しよう
との意見でまとまった。今年は東京全労協と共同での取り組みとなり総勢 30 名で参加し
た。また、毎月の防衛省前集会にもできる限りの参加を行ってきた。復帰 40 周年となる来
年の平和行進にも積極的に取り組んでいく予定である。
<石油労組連絡会>
●全石油昭和シェル労組
議案にも報告されたとおり、2010年12月24日、40年に及ぶ労使紛争は女性差別事件も含
めて一括解決した。この間の東京総行動やけんり総行動、台場の地に本社が移って以降は
東部総行動と全労協、石油をはじめ多くの仲間の支援に支えられ闘ってきた結果だ。震災
で3月19日に報告集会は延期となったが、改めて7月23日に以前本社のあった霞ヶ関ビルで
全国から仲間の参加をえて、40年の闘いを振り返り、解決を喜びあうことができた。ご支
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援ありがとうございました。
今後は社内での経営チェック、非正規雇用問題の解決、脱原発社会の実現等に向け引き
続き全労協の一員として闘っていきたい。
●スタンダード・ヴァキューム労組
一時金差別裁判、控訴審が結審
04年に提訴した一時金差別裁判(学歴で区分した従業員の高卒の事務技能職従業員への
格差月率支給は不当、過去一貫して組合員全員同月率支給[慣行無視]、また切り下げ根拠
にも合理的理由がなく、学歴差別だ、と争っている)への不当判決(09年)まで約4年間。
東京高裁に控訴して今年5月に結審するまで約2年半、闘いは7年目にはいりました。
高裁では、一時金差別切り下げの根拠(会社は12他社の労働条件と比較して、エクソン
モービル日本の一時金支給月率を決め、事務技能職だけ月率を切り下げた、と説明してき
た)が会社都合の調査で、切り下げのための理由作りであったことを明治大学教授の鑑定
意見書等で立証、合せて学歴差別であることを職場の労働実態を示しながら立証しました。
結審後に裁判所の職権和解の話が出て、8月現在はその斡旋過程にあります。
原告22名の大半が定年退職となっていますが、OGB 組合員となり裁判闘争を継続中です。
この裁判は一時金支給年度によって一次(03、04年)、二次(05から08年)と2つの裁判
となっていて、二次裁判も東京地裁扱い(一次とは異なる裁判長)で現在は証人調べの段
階に差し掛かっているところです。
再雇用裁判、証人調べ始まる
「雇用延長制度」(高齢法)は、06年の導入直後から企業に都合の良い再雇用基準によ
る再雇用拒否が全国で続出し、各地で裁判が起きました。その判決は大半が敗訴で、あま
りにも企業寄りの法律というのが浮き彫りになっています。エクソンモービルの再雇用制
度(就業規則)にも業績評価が再雇用基準に有り、これにより定年退職者の半数が基準外
という酷さです。組合は、導入時に「希望者は基本的に再雇用」との交渉を行ったため、
労使合意が成立していない。
組合書記長が定年時にこの業績評価基準(過去3年間の成績が平均評価以上)を満たさな
いとして再雇用を拒否されたことから、08年末に東京地裁に提訴。2年間の書証のやり取り
を経て、今年7月に会社側証人(2名)の尋問が始まった。10月には上級上司と原告の尋問
が予定されている。裁判所の関心点が『原告の評価が妥当なものだったか否か』にあるた
め、原告への評価が不当であったことを立証しながら、会社の再雇用制度そのものの違法
性をどこまで追及できるかが焦点となる。会社は裁判開始後に再雇用基準の若干の修正(緩
和)をするなど、裁判対策まがいの動きを見せたが、組合要求の「再雇用基準から評価を
除外せよ」には程遠い。
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