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【494】低電解質血症を呈した直腸絨毛腫瘍の1例 群馬県 横尾 美穂,小澤
494 低電解質血症を呈した直腸絨毛腫瘍の 1 例 ◎横尾 美穂 1)、小澤 晃 1)、渡邊 佳央里 1)、小保方 亜光 1)、北爪 洋介 1)、竹内 麻 1)、武谷 洋子 1)、深澤 恵治 1) 独立行政法人 地域医療機能推進機構 群馬中央病院 1) 【はじめに】成人症例において、Na,K,Cl 何れの電解質も減 反応の上昇と腎機能の悪化を認め、第 9 病日に永眠された。 少した低電解質血症の患者に遭遇することは稀である。今 死因解明のため病理解剖となった。 回、右膝痛を契機に発症し食欲不振と脱水にて入院後、 【剖検所見】i) 高度の粘液産生を示す直腸全周性の絨毛腺 9 日後に死亡となり、病理解剖の結果 McKittrick 腫内癌 ii) 結腸全長性の偽膜性腸炎 iii) 急性膵炎+膵管 Wheelock 症候群(以下 MWS)と診断された症例を経験し 内乳頭粘液性腺腫 たので報告する。 【考察】MWS は大腸絨毛腫瘍の患者において重篤な脱水 【症例】症例:83 歳、男性。主訴:食欲不振、脱水。 症状や電解質異常、急性腎不全を合併する稀な病態である。 現病歴:入院 16 日前より食欲不振と飲水困難にて近医を受 本例の直腸腫瘍は以前より存在していたと考えられるが、 診。脱水、低電解質がみられたため紹介入院となった。 臨床症状はなかった。しかし、今回急性膵炎による食欲不 【入院時検査所見】 振と飲水困難により急速に増悪した可能性が考えられる。 血液生化学:WBC 22900/μL, BUN 193.8mg/dL, Cre 補液により脱水は改善傾向にあったが、経口摂取不良と腫 3.53mg/dL, Na 114mEq/L, K 3.2mEq/L, Cl 67mEq/L, 血清 瘍粘液からの水分・電解質喪失、さらには抗生剤投与後に AMY 135U/L 腹部 CT 検査:直腸拡張と腫瘤、膵体部嚢胞 発症した偽膜性腸炎による水分の吸収障害・喪失が補液量 性病変 直腸腫瘍生検:管状絨毛腺腫 を上回り、入院後も腎前性腎不全が持続していたと推測さ 【経過】脱水と低電解質の原因は不明であったが、入院後 れた。入院時血液検査において Na,K,Cl 何れも減少してい 補液療法により電解質は徐々に改善した。感染巣不明な敗 たこと、また大腸液の K 含有量が多いことより、消化管か 血症の診断で抗生剤投与後、第 4 病日から水様便や黒色便 らの多量の水分と電解質喪失を推測すべき症例であった。 が確認され CD toxin 陽性であった。第 7 病日に急激な炎症 連絡先:027-221-8165 (内線 2251)