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低炭素社会づくりに関する コンパクトシティの研究

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低炭素社会づくりに関する コンパクトシティの研究
低炭素社会づくりに関する
コンパクトシティの研究
岡田 泰祐1・牛来 司2・松嶋 健太3
1技術士(建設部門)
株式会社建設技術研究所 国土文化研究所
(〒103-8430 東京都中央区日本橋人形町2-15-1)
E-mail: ta-okada@ctie.co.jp
2技術士(総合技術監理・建設部門)
株式会社建設技術研究所 東京本社都市システム部
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)
E-mail: gorai@ctie.co.jp
3技術士(総合技術監理・建設部門)
株式会社建設技術研究所 東京本社地球環境センター
(〒103-8430 東京都中央区日本橋浜町3-21-1)
E-mail: [email protected]
地球温暖化は,人間の産業活動等に伴って排出された人為的な温室効果ガスが主因とされ,環境問題の
中で最も解決が難しい問題のひとつである.また,わが国は国際的にも突出した高齢化社会を迎え,環境
問題への対応とともに,持続可能な地域社会のあり方の検討が大きな課題となっている.こうした問題を
解決するひとつの解としてコンパクトシティの議論が進んできているところであるが,時間を掛け形成さ
れてきた都市構造を改変する取り組みは非常に難易度が高く,その具体化が課題となっている.
こうした状況を鑑み,本論文では事例や政策研究等を通じ,低炭素社会づくりに資するコンパクトシテ
ィの実現に向けた課題を明確にし,今後,さらに研究を深めるべき重点ポイントについて報告を行う.
Key Words : global warming countermeasures, Sustainable Development, compact city, Low-carbon society
1. はじめに
にとりまとめるとともに,具体的な施策メニューをパッ
ケージ化し,計画立案から事業実施までのトータルコー
ディネートの商品化・事業化を最終目標とした3 ヵ年の
地球温暖化対策の一環として高水準のCO2削減目標を
計画の1 ヵ年目の取り組みである.
掲げる我が国において,今後の低炭素社会づくりに向け
本論においては,研究の前提なる先進事例や動向調
た社会資本整備のあり方を確立することは,当社にとっ
査等を2 章から4 章の前半部において整理し,それらを
て極めて重要なミッションであるとともに,多くのビジ
踏まえた望ましい社会資本整備のあり方や 今後,実現
ネスチャンスを広げていく可能性を有している.
性を高めていくために期待されるコンパクトシティ像を
国内の動きとしては,「低炭素社会づくり行動計
考察するものである.
画」が2008(平成20)年7 月に策定されるとともに,
まず,2 章において,温暖化対策に関する最新動向を
「低炭素都市づくりガイドライン」が2010(平成22)年
8 月に公表されており,コンパクトシティを軸とした都
実際の数値的目標やガイドラインにおける位置づけを整
理し,3 章には,先進事例等をまとめた.4 章には,
市・地域づくりの推進が期待されているが,具体的な社
様々なところで万能なキーワードとして使われてしまっ
会資本整備で如何に実現するのか,その手法は様々なア
プローチから模索中であり,確立されるに至っていない. ているコンパクトシティについて,その経緯を整理する
ことで,本質のぶれを生じないよう留意するものとした.
本研究は,低炭素社会の具現化の姿として「コンパ
5 章 6 章にはこれらを踏まえ,あり方や望ましい像など
クトシティ」に焦点を絞り,コンパクトシティを実現す
について考察するとともに,今後の研究課題を明らかに
るために必要な手法・制度等を地域性(都市部と中山間
するものである.
地域 等),実現時期,コスト等を勘案しながら体系的
92
の気候変動首脳級会合において 2020 年までの中期目標
として「90 年比 25%削減」を国際公約として表明し,
2010(平成 22)年 10 月の地球温暖化対策基本法案の閣
議決定によって,2050 年までに 1990 年比で 80%を削
減する長期的な目標が位置づけられ,現在に至っている.
なお,本研究は以下に示す研究フローにて進める計
画であり,中間年度の各段階においては,適宜,課題や
研究方法等を見直し,必要に応じてフローの修正を図る
ものとした.
平成 23 年
b) 温室効果ガス排出量の削減状況
現在,2010(平成 22)年度の温室効果ガス排出量
(速報値)が,最新のデータとして公開されている.
これによると,2010(平成 22)年度における我が国
の排出量は,基準年比-0.4 %,前年比+3.9 %であり,
2008(平成 20)年に発生したリーマンショック後の景
気後退からの回復の中で,製造業等の活動量の増加に伴
い産業部門からの排出量が増えたこと,猛暑厳冬により
電力消費が増加したことなどが増加原因として考えられ
ている.
排出量に森林吸収量の目標及び京都メカニズムクレ
ジット(政府に移転された民間クレジットを含む)を考
慮した場合の基準年比 2008 ~2010(平成 20 ~22)年
度の 3 カ年平均で-10.9 %減となっており,議定書の
目標については十分に達成される見込みである.
(1) 研究テーマ設定・研究計画立案
(2) 研究関連情報の収集
(3) 望ましいコンパクトシティ像の考察
(4) 課題と今後の研究方針の整理
(5) 研究論文とりまとめ(研究論文 1 作成)
平成 24 年(計画)
(6) 社内研究体制の再構築
(7) 研究会の開催
(8) (3),(4)の再検証とスタディ地区の設定
(9) ケーススタディ検討
(10) 研究論文とりまとめ(研究論文 2 作成)
平成 25 年(計画)
(11) 新分野展開へ向けた研究会の開催
(12) 実現化方策等の検討
図-2 我が国の温室効果ガス排出量
(出典)2011(平成 23)年 12 月 環境省報道発表
(13) 社外連携等の検討
c) COP17における協議状況等
2012(平成 23)年 12 月に南アフリカ共和国ダーバン
で開催された地球温暖化対策を協議する国連気候変動枠
組み条約第 17 回締約国会議(COP 17)では,京都議定
書の約束期間である 2012(平成 23)年が終わる前にそ
の後の枠組みを決める必要があり開催された.
協議は難航したが,先進国の温室効果ガス削減義務
を定めた京都議定書を 2013 年以降も継続し,2020 年に
は米国や中国を含むすべての国が参加する新たな枠組み
を始める「ダーバン・プラットフォーム」を採択し閉幕
している.
現在,世界最大の排出国は,中国(世界の温室効果
ガスの 4 分の 1 が中国から排出)とアメリカであり,こ
の 2 国の参加していない京都議定書の延長に対して日
(14) 研究分野における商品開発
(15) 研究論文とりまとめ(最終)
図-1 本研究の検討計画フロー(案)
2. 温暖化対策に関する最新動向
(1) 温室効果ガス排出量
a) わが国における目標値
1997(平成 9)年 12 月に京都市で開催された第 3 回気
候変動枠組条約締約国会議(COP3)で議決された京都議
定書では,1990 年比 6%削減の義務を負うこととなり,
その後,2009(平成 21)年に鳩山首相(当時)が国連
93
算定手法についても地域を細かく区分した複雑な過程が
本は合意に応じておらず,2013 年以降は新たな削減義
必要となっている.
務を負わない.今後は,2020 年の新たな枠組みの発行
まで省エネや再生可能エネルギーの推進で自主的な排出
削減に努めていくこととなる.
わが国では,二酸化炭素の排出削減とエネルギー安
定供給を両立させた低炭素社会の実現において原子力発
電所の稼動率向上を目指していたが,震災の影響から
2012(平成 23)年 12 月時点で国内 54 基のうち稼働中
の原発は 7 基,今後,全原発が停止する可能性もあり,
国際公約である 2020 年までの中期目標「90 年比 25%削
減」の実現は極めて厳しい状況に転じている.
(2) 低炭素都市づくりガイドラインの概説
a) ガイドラインの目的
都市では多様な活動が複合的に展開されており,実
施すべき温暖化対策は多岐に渡り,「地球温暖化対策の
推進に関する法律」において,都道府県,政令市,中核
市及び特例市で策定が義務付けされている「新実行計画
(区域施策)」でも,都市施策を十分に検討・反映され
ていない状況にあった.
そのため,低炭素都市づくりの推進にあたり考える
べき事項や取り組みの基本的考え方,対策方針の立案と
その方策,低炭素都市づくりの施策効果の把握方法等を
示すことにより,地方公共団体の取り組みを支援するこ
とを目的にガイドラインが作成された.
ガイドラインは以下に示す通り3編で構成されている.
<第Ⅰ編 低炭素都市づくりの考え方>
低炭素都市づくりの総論としての基本的考え方を整理
<第Ⅱ編 低炭素都市づくりの方法>
交通・都市構造,エネルギー(民生家庭・民生業務),
みどりの3つの切り口から低炭素都市づくりに関する対
策の進め方を詳述
<第Ⅲ編 低炭素都市づくり方策の効果分析方法>
3つの切り口毎に,施策効果把握のための具体的な方法
論(算定手法)を整理
b) 低炭素都市づくりの考え方
ガイドラインでは,低炭素都市づくりの考え方とし
て,「集約型都市構造への転換」と,それにあわせた
「交通・都市構造」「エネルギー」「みどり」の3分野
の取り組みについて,以下の9つの方針を示している.
c) 低炭素都市づくりガイドラインの課題
ガイドラインでは,低炭素都市づくりの必要性や目
的等の概念から,具体的な排出量算出方法,都市構造の
集約効果を評価するための算定手法まで幅広く解説され
ている.そのため,都市行政関係者のみならず環境行政
関係者など多くの実務担当者に役立つものとなっている
が,その一方で,どうしても情報量が多く複雑となり,
94
図-3 低炭素都市づくりの考え方
(出典)低炭素都市づくりガイドラインを元に整理
また,低炭素都市づくりは,都市の集約化とそれに
合わせた関連施策の実施による排出量削減効果を目指し
ている.そのため,事業化された独立した計画ではなく,
関連計画(地球温暖化対策実行計画や都市計画マスター
プラン,緑の基本計画,交通関連計画等)へ反映してい
くことを前提としたものであるが,自治体においてこれ
らの各種計画策定を実施する際,取り組みの必要性に対
する認識や検討機会にもばらつきがあることが想定され
る.
都市系の関連業務の発注状況は,栃木県において集
約型都市構造の実現に向けた検討を含む都市計画基礎調
査が出始めている以外に自治体から同様の動きを把握で
きていない.動きの少ない原因としては,ガイドライン
が策定されて間もないこともあるが,CO2 の排出状況の
分析など多岐に渡る検討を都市計画の部局のみで十分に
検討できない体制,人材不足の問題,都市構造の転換等
に係わる調査・検討の労力に対して低炭素の効果があま
り期待されておらず,容易に認識できる評価手法が開発
されていない課題などが考えられる.
(3) 温暖化防止に向けた関連法の体系
現行の地球温暖化対策の全体像を整理すると,表-1
の通りとなる.同表には、技術革新のスピードが速いわ
が国のお家芸である省エネ技術と実現に非常に長い時間
を必要とする都市構造の集約と時間軸に大きな乖離のあ
る取組みが一様に整理されている。
大都市部では,都市再生の延長で機能更新や集約化
が低炭素都市につながり大きな問題はないが,地方の中
心都市等においては集約型のビジョンを早い段階で明確
にし,実行に移さなければならないエネルギー効率の向
上や個別分散型のエネルギー運用が展開した結果,低炭
素ではあるが相変わらず低密度で拡散した都市が維持さ
れ,持続可能な社会という面での課題を向かえる可能性
が高い.(例えば,近年,自家用車の燃費が著しく向上
しているが,例えそれがCO2排出量がゼロであっても単
純にその向上分,薄く広く都市が形成され続けて良いと
はいかない.)
表-1 現行の地球温暖化対策の全体像
や低
社炭
会素
経型
済の
シ都
ス市
テ ・
ム地
の域
形構
成造
(
部
門
別
)
産
業
・
民
生
・
運
輸
等
の
対
策
・
施
策
低炭素型の都市・地域デザイン
◆集約型・低炭素型都市構造の実現
◆街区・地区レベルにおける対策
◆エネルギーの面的な利用の推進
◆各主体の個々の垣根を越えた取組
◆緑化等ヒートアイランド対策による熱環境改善を通じた都市の低炭素化
◆住宅の長寿命化の取組
低炭素型交通・物流体系のデザイン
◆低炭素型交通システムの構築
◆低炭素型物流体系の形成
関係する主な法律
○地球温暖化対策推進法
・地域全体の計画
○都市計画法
○都市公園法
○長期優良住宅促進法
○地球温暖化対策推進法
・地域全体の計画
○地域公共交通活性化再生法
○物流総合効率化法
産業部門(製造事業者等)の取組
◆産業界における自主行動計画の推進・強化
◆省エネルギー性能の高い設備・機器の導入促進
○製造分野における省エネ型機器の普及
○建設施工分野における低燃費型建設機械の普及
◆エネルギー管理の徹底等
○工場・事業場におけるエネルギー管理の徹底 ○中小企業の排出削減対策の推進
○農林水産業における取組
○産業界の民生・運輸部門における取組
業務その他部門の取組
◆産業界における自主行動計画の推進・強化
◆公的機関の率先的取組
○国の率先的取組
○地方公共団体の率先的取組
○国・地方公共団体以外の公共機関の率先実行の促進
◆建築物・設備・機器等の省CO2化
○建築物の省エネルギー性能の向上
○緑化等ヒートアイランド対策による熱環境改善を通じた都市の低炭素
○エネルギー管理システムの普及
○トップランナー基準に基づく機器の効率向上
○高効率な省エネルギー機器の開発・普及支援
◆エネルギー管理の徹底等
○工場・事業場におけるエネルギー管理の徹底
○中小企業の排出削減対策の推進
○上下水道・廃棄物処理における取組
◆国民運動の展開
家庭部門の取組
◆国民運動の展開
◆住宅・設備・機器等の省CO2化
○住宅の省エネルギー性能の向上
○エネルギー管理システムの普及
○トップランナー基準に基づく機器の効率向上
○高効率な省エネルギー機器の開発・普及支援
○地球温暖化対策推進法
・算定報告公表制度
・排出抑制等指針
○省エネ法
・工場等、機械器具の省エネ
○地球温暖化対策推進法
・政府・地方公共団体の事務・
事業に関する計画
・算定報告公表制度
・排出抑制等指針
○省エネ法
・工場等、建築物、機械器具の省エネ
○地球温暖化対策推進法
・推進センター、推進員
・排出抑制等指針
○省エネ法
・建築物、機械器具の省エネ
運輸部門の取組
◆自動車・道路交通対策
○地球温暖化対策推進法
○自動車単体対策の推進
○交通流対策の推進
・算定報告公表制度
○環境に配慮した自動車使用の促進
○国民運動の展開
・排出抑制等指針
◆公共交通機関の利用促進等
○省エネ法
○公共交通機関の利用促進
○エネルギー効率の良い鉄道・船舶・航空機の開発・導入促進・輸送、自動車単体の省エネ
◆テレワーク等情報通信技術を活用した交通代替の推進
○物流総合効率化法
◆産業界における自主行動計画の推進・強化
◆物流の効率化等
○荷主と物流事業者の協働による省CO2化の推進 ○モーダルシフト、トラック輸送の効率化等の推進
○グリーン経営認証制度の普及促進
エネルギー転換部門の取組
◆産業界における自主行動計画の推進・強化
○地球温暖化対策推進法
○電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減
・算定報告公表制度
◆エネルギーごとの対策
・排出抑制等指針
○原子力発電の着実な推進
○天然ガスの導入及び利用拡大
○石油の効率的利用の促進
・地域全体の計画
○LPガスの効率的利用の促進
○水素社会の実現
○エネルギー政策基本法
◆新エネルギー対策
○省エネ法(工場等の省エネ)
○新エネルギー等の導入促進
○バイオマス利用の推進
○上下水道・廃棄物処理における取組○非化石エネ法
○エネルギー供給構造高度化法
エネルギー起源二酸化炭素以外の温室効果ガス対策・施策
◆非エネルギー起源二酸化炭素
○地球温暖化対策推進法
◆メタン
・算定報告公表制度
◆一酸化二窒素
・排出抑制等指針
◆代替フロン等3ガス
○フロン回収・破壊法
吸収源対策・施策
◆森林吸収源対策
◆都市緑化等の推進
○地球温暖化対策推進法
○森林・林業基本法
○間伐促進法
95
3. 先進事例等の動向調査
スペイン/カルヴィア
イタリア/モデナ
(1) 環境モデル都市
「環境モデル都市」は,低炭素社会への転換を進める
ための取り組み具体化の一環として,2008(平成 20)
年 4 月から 5 月にかけて,内閣官房地域活性化統合事務
局が募集したものである.
低炭素社会実現をめざし,高い目標を掲げて先駆的
な取り組みにチャレンジするモデル都市の先導的な取り
組みを全国,世界へと発信することにより,低炭素化社
会形成の波及効果を期待している.この募集に対して全
国から 82 件の提案があり,2008(平成 20) 年 7 月に 6
都市が選定され,2009(平成 20) 年 1 月には 7 都市の
合計 13 都市が選定されている.
モデル都市は,広く今後の低炭素都市づくりの参考
となるよう,大都市から地方まで多様な特徴ある地区が
選定されている.
ドイツ/フィルンハイ
ム
ドイツ/ハノーバー
アメリカ合衆国/シア
トル
アメリカ合衆国/ポー
トランド
アメリカ合衆国/ポー
トランド
オーストラリア/ダー
ビン
オーストラリア/メル
ボルン
オーストラリア/ポー
トフィリップ
オーストラリア/ポー
トフィリップ
オーストラリア/ニュ
ーキャッスル
スペイン/バルセロナ
表-2 環境モデル都市の一覧
区 分
都市名
大都市
横浜市,北九州市,京都市,堺市
地方中心都市
小規模市町村
帯広市,富山市,飯田市,豊田市
下川町(北海道),水俣市,檮原町
(高知県),宮古島市
東京特別区
ドイツ/アーヘン
千代田区
ドイツ/フライブルグ
(2) 海外事例の特徴
文献調査で整理した結果の概要を表-3 に整理した.
ここに整理した以外にも,近年では中国のエコシティや
ドバイのマスダールシティ計画など今後の動きを注視し
ていきたい.
また,日本とインドネシアの両政府が共同で推進す
る「首都圏投資促進特別地域(MPA)」は,ジャカルタ
首都圏でインフラ整備と制度面の改善を進めるプロジェ
クトであり,大都市型の低炭素都市づくりともいえる.
MPA は,1)港湾や道路,空港インフラ,2)工業団地の
改善,3)大規模都市交通,4)上下水道・廃棄物処理,5)
洪水制御などを進めるため,マスタープラン策定に向け
た調査が始まっている.
パリ,オスロ,バル
セロナ
スウェーデン/マルメ
ドイツ/シュツットガ
ルト
4. コンパクトシティの系譜
様々なところで万能な方法のように使われているコ
ンパクトシティであるが,その実現は容易ではない.こ
こでは,コンパクトシティが目指す本質のぶれを生じな
いよう留意するため,経緯等を整理するものとした.
表-3 環低炭素社会に向けた世界の取り組み事例
出典:チャレンジ 25 キャンペーン HP
都市名
英国/ニューカッス
ル・アポン・タイン
英国/カークリーズ
ディストリクト
ポルトガル/アルマダ
持続可能な観光都市(夏の地中海リ
ゾート カルヴィア )
学校アジェンダ 21 (学校教育に対
するモデナ市の取り組み )
ブルントラントモデル都市 (住宅
対策から始める CO2 排出削減 )
持続可能な国際都市づくり (市が
果たす重要な役割 )
ネイバーフッド・パワー・プロジ
ェクト (地域ごとの資源の節約と
効果的利用 )
グリーンビルディングの建設促進
(グリーンビルディング基準「ポ
ートランド LEED」 )
フィックス・イット・シェア
(市民による住みやすい環境づく
りと省エネ生活 )
トラベルスマート事業 (個人マー
ケティングの活用 )
ウォーキングスクールバス (ウォ
ーキングスクールバスの仕組 )
家庭から実践する持続可能な生活
スタイル (SLAH イベント )
エコ建築基準の明確化 (持続可能
なデザインの採点表 )
温室効果ガス排出量の公開 (S クラ
イメットカム事業 )
再生可能エネルギーの普及 (欧州
初のソーラーオブリゲーション )
法定外目的税の活用 (自然エネル
ギー普及の仕組み )
カーフリー・低炭素団地の形成
(再開発をきっかけに低炭素な都
市計画 )
自転車を活用した公共交通の利用
促進 (自家用車から自転車への転
換)
再開発時の取り組み (環境に配慮
した集合住宅モデル )
風の道 (盆地における大気汚染問
題の解消 )
低炭素社会に向けた取り組み項目
(1) コンパクトシティの理念
a) コンパクトシティの誕生から現在
コンパクトシティは,1972(昭和 47)年にローマク
ラブがまとめた「成長の限界」に始まり,さらに EU 諸
国の地球環境問題への対応としての持続可能な都市政策
への流れで生まれてきた理念である.「コンパクトシテ
カーボンオフセットの仕組みづく
り(「世界初の CO2 排出ゼロ都市」
を目指して )
省エネ実行プロジェクト(住宅にお
ける省エネ対策の問題点 )
車に依存しないまちづくり(アルマ
ダ市の交通事情 )
96
表-4 コンパクトシティの定義
ィ」というキーワードとしての誕生は,ダンツィクとサ
アティという建築都市計画の専門家により 1973~74 年
文 献
定義など
清水(2004)
市街地の無秩序な拡大を抑制しながら、市街地郊外の周囲を取り巻く緑地
に著書「コンパクトシティ」で初めて用いられる.2 人
などを保全し、あわせて中心部の既存ストックを有効に利用し活性化を図る
はオペレーションリサーチ( 数学的・統計的モデル等
さまざまな施策を進めていくための計画理念。
の利用によって,多種の計画に効率性の最大化を決定す
都市マスタープラン策定時の基本的コンセプトとして理解されるような形態的
な概念で議論されることが多く、その具体像は明確ではない。
る科学的技法 )の専門家であり,最も効率を良くする
加藤(2002)
日常生活において必要な機能が住居から徒歩圏内にある空間配置で、自動
都市の姿を「コンパクトシティ」として考えたものが始
車を利用しなければならないような長距離トリップが不要となる都市構造。人
まりである.
口密度の高い都市ではない。
海道(2006)
住宅や都市施設の低密で無秩序な郊外への拡散を抑制して、活気のある
その後,欧米では特に荒廃する市街地の再生を目指
中心市街地を維持形成し、都市地域の経済・社会・環境の持続可能性を高
し検討されてきた概念で,英国の例を挙げると,スラム
める都市モデル。
の形成・拡大,犯罪の多発化など都市問題の深刻化に対
北原(2002)
地方都市の中心市街地で成立するライフスタイルが存在し得る可能性を再
度見出そうというものであって、郊外に広がったライフスタイルの単純な否定
して議論されてきたものである.
ではない。
わが国においては,中心市街地の活性化や空洞化へ
中道、谷口、松中 都市マスタープランによって定められている都心重点地区に人口増加分を
(2004)
誘導する都市構造シナリオ。
の対応等の課題と英国等の課題とはスタート時点での違
魚路(2004)
都市中心部で都市機能・都市活動の集積量が大きく、集積の範囲が空間的
いはあるが,人口減少や超高齢化社会への対応のために
に限定されて近接性が高い都市モデル。
も拡散する都市構造から拠点のある集約型の都市構造へ
転換していく必要性とともに 約 10 年前くらいから本
格的に議論が始まり,近年では,エネルギー効率の向上
「低炭素都市づくりガイドライン(平成22 年 国土交
等を図る低炭素化への対応としてまとまりのある暮らし
通省 都市・地域整備局)」は,地方自治法第245 条の
への展開として更に議論が活発化してきたところである. 4の規定に基づき行う「技術的な助言」の性格を有し,
法的拘束力は弱いものの,今後の都市計画マスタープラ
b) 既往研究等における定義
ンの改定時や都市・地域総合交通戦略等の計画の策定,
わが国におけるコンパクトシティの定義を国内の研
都市交通施設整備,再開発事業,都市計画施設の整備等
究者たちは,表のとおり示している.形成の歴史的な経
を行う際に低炭素化への配慮を期待したものである.
緯が異なる様々な都市を一様にひとつにコンパクトシテ
このガイドラインは,策定から間もないことや地方
ィに言い当てることは難しいが,これらの定義などから
公共団体の地球温暖化対策は,「地球温暖化対策の推進
大まかに整理できることは,
に関する法律」に基づく「地球温暖化対策地方公共団体
・日常生活圏が歩いて暮らせるヒューマンスケールの街
実行計画(区域施策編)」から着手されていることから,
・もともとコンパクトであった都市(中心市街地等)の
これらの計画中においてコンパクトシティの実現がうた
空間資源・ストックを活かした,環境負荷の小さい
われている程度のものが多く,今後,低炭素の切り口か
持続可能な街と言える.
ら都市構造に対しても言及する都市計画マスタープラン
また,はじめに提起された「最も効率を良くする都
等が増えることが期待される.
市の姿」と照らして考えると,これまでの都市政策につ
前述の環境モデル都市と共通する事例には,富山市
いては後手に回った批判的なものが多い反面,政策的に
がある.
表-5 コンパクトシティの国内事例の代表例
何も対応を図ってこなかった訳ではなく,都市は,その
時々の時代の要請に合わせて変化してきており,都市の
都市名
類
型
代謝によって生じた密集市街地の形成やスプロール化等
青森市
一極集中型
都市機能集約型
の問題はあるものの一概に非効率であったとは言えない.
仙台市
軌道系交通機関を中
心とした集約型
この点からは,今後,人口減少が明らかな時代に高
クラスター型
富山市
宇都宮市
〃 (将来)
齢化への対応や低炭素社会の実現に配慮しつつ,如何に
持続可能な社会としてのコンパクトシティを形成するか
(2) 集約型都市構造の実現に向けた動向
という点に集約されそうである.
a) 集約型都市構造の必要性(問題背景)
国土交通省では,低炭素型の都市構造の具現化の姿
c) 国内におけるコンパクトシティの事例
として集約型都市構造2)を1つの方向性として示してい
コンパクトシティを明確に打ち出している自治体の
る.これは,拡散型都市構造を放置した場合には,1)
事例はさほど多くない.(青森市,仙台市,富山市,宇
高齢者の生活移動の不安,2) 中心市街地の一層の衰退,
都宮市 等).
3) 環境への負荷の高まり,4) 都市財政の圧迫などの問
97
低炭素の切り口からは,集積による交通や居住,生
産等に係わるエネルギーの効率化が主の議論であるため,
効果面からは都市部に限定されることに問題はないが,
集約化された残りの範囲をどうしていくかの議論はまだ
あまり進んでいない.
限界集落とも呼ばれる中山間地域などは,放ってお
けば近い将来に消滅し,物理的には結果として大都市及
び地方中心都市が生き残り集約化が図られた状態になる
とも考えられる.しかしながら,経済状況の成り行きに
任せ,人口の都市部集中と外延部へ拡散した反省を踏ま
えると,今後の人口減少の時代に成り行きに任せた集約
化は人口集積のピークが現在よりも低い効率の悪い都市
構造となることが想像される.これらの対応に対しては,
地区単位での集積目標の設定が課題であり,都市計画基
礎調査等のGIS データを活用した研究や将来の都市構造
の視覚化等から将来の都市の姿を予測し,都市の経営的
な計画が可能となる研究開発を進めていく必要がある.
また,限界集落等の中山間地域は低炭素の切り口か
らは,森林等の重要なCO2 吸収源,木質ペレット等のバ
イオマスエネルギーの生産地としてその価値を十分に量
る研究が必要で,管理者不明の林野を含めた国土保全の
あり方の研究を深めていく必要性が高まっている.
題が深刻化するとしており,これらの問題を解決するた
めに目指すべき都市像として集約型都市構造を掲げてい
る.
<集約型都市構造の実現の3つの柱>
・大規模集客施設等の都市機能の適正な立地の確保
・中心市街地の整備・活性化による都市機能の集積促進
・公共交通を中心とした都市・地域総合交通戦略の推進
b) 集約化のあり方と課題
都市の集約化は,さらに施設間のエネルギー融通が
可能となるメリットがあり,これらを具体化していくこ
とで,一層の低炭素化を目指している.
具体的には,太陽光などの自然エネルギーに関して
は,一戸建て住宅への太陽光パネル設置などは広がって
いる一方,近隣の地区内にある複数の施設間での活用は
あまり進んでいない.例えば,日中の電力消費が多い商
業,オフィスビル等と,夜間も操業する工場や深夜電力
を使用する住宅等で電力を融通し合えば,施設ごとに発
電して利用するよりも効率の良いエネルギー利用が期待
できるとされているものである.
国土交通省は,次年度(平成24年度)に予算化し,こ
うした地区単位でのエネルギー利用を積極的に支援する
方向で低炭素都市の実現を図ろうとしている.
ここで目指しているものは,集約型の都市構造の実
現とパラレルで実施されることが望ましい施策であり,
時間を掛けても大規模な予算を必要とせず,また将来的
に行政コスト縮小の方向で働く本来の都市計画や交通計
画が果たすべき役割をあわせて考える必要がある.
私案としての一例では,集約することで得られる個
別分散型のエネルギー融通のメリットを的確にエンドユ
ーザー(外延部から中心部への移転者等)に明確にでき
る地区計画制度の立案や特区制度活用(条例化等の規制
面での事例は千代田区等で現れ始めているが,これは開
発ポテンシャルの大きい大都市部において成り立つもの
と考えられ,より誘導型の施策が求められていると考え
る),電力割引地域の明確化(地区別に異なる電力料金
設定)などの実現が望ましいと考える.
ただし,これの施策については,現在,様々な場所
で検討が進められているスマートグリッドやスマートコ
ミュニティの実現とセットでの検討が必要とも考える.
そのためには,この分野における都市政策が,都市計画
と施設計画がセットに進む必要があり,業界の垣根を超
えた取り組みが重要である.
ここで,ひとつの問題が浮かび上がってくる.これ
らの取り組みが可能な対象地域は,大都市及び地方にお
ける中心都市に限定される点である.
c) 都市構造の可視化
可視化に係わる最新の動向としては,関東地方の 1 都
8 県及び有識者等により構成される「関東地方における
都市構造のあり方に関する検討会(座長:日本大学 岸
井隆幸教授)」3)が,都市構造の可視化を推進している.
社会資本整備審議会都市計画部会答申「集約型都市
構造の実現に向けて」において,望ましい都市構造は地
域の選択ということを前提としたうえで,以下の都市政
策の方向性が示され,これに基づきツール開発されたも
のである.
【実現に向けた方向性】
・ 公共交通沿いの集約拠点に諸機能が集約して歩いて
暮らせる環境づくり
・ 都市交通施策と市街地整備施策の連携
・ 郊外市街地等における密度低下への対応(「スマー
トシュリンク」の視点)
・ 目指すべき都市像のイメージの共有化
開発に合わせ,都市構造可視化行政連絡会が組織さ
れており,都市構造を定量的に表現するためのデータの
収集・解析,表現方法の検討等を通じて,各都市圏にお
いて都市構造の理解の深化と今後の都市のあり方を検討
する際の「都市構造可視化モデル」の提案とモデルの活
用について支援することを目指している.
集約型都市構造(低炭素社会づくり)の実現は,官
98
民協働で実施しなければ果たされない取り組みであるが,
行政の強力なリーダーシップとこれらのツール開発の延
長にある十分な将来分析に基づく住民との目標共有(説
明責任)が必要である.
そのためには,現在,可視化の課題として挙げられ
図-4 低炭素社会実現化に向けた手法
ている以下の点が今後,研究を深める視点として重要な
(出典:富山市資料 第3回コンパクトシティ推進研究会)
ポイントとなる.
1) 都市構造の数値化(指標化)
(3) 社会資本関連の賦存エネルギーの発掘・技術開発
2) 簡便な図化システムの構築
低炭素社会の実現に向けて,近年,俄かに小水力発
3) データ精度の向上
電や地熱発電への関心が高まり,利用に関する法的な規
4) 計画づくりのケーススタディ
制の枠組みを緩和する措置などについても検討が進めら
れているところである.
5. 低炭素社会に向けた望ましい社会資本整備のあり方
これまでにも電力を供給してきたダムなどの社会資
本の他,社会資本に内在する未利用エネルギーの発掘と
(1) 過疎地域における新たな動き(徳島県)
利用のための技術開発を行っていくべきである.
徳島県は,限界集落が全集落の35.5 %を占め,全国平
空想的な発展例を挙げると,慶應大学ベンチャーが
均15.5 %の2 倍強と深刻な状況にある.
開発し,東京駅で実験を披露した発電床という技術があ
従来,関西方面から発信されていたアナログ電波が
る.圧力がかかる社会資本は,道路(車道,歩道,その
デジタルへ切り替わるタイミングで,新たな配信設備と
他通路等),橋脚など多様にあり,将来的には通過交通
しては光ケーブルが配置された中山間地がある.
があるときのみ,その通過する車両や人自身が照明の電
過疎地域では,ブロードバンドの利用者が少ないこ
力を発電するような時代がやってくるかもしれない.
ともあり,その回線速度は東京よりも速く,この利点を
スプロール化の象徴的であるニュータウン等の郊外
活かそうとする動きがある.ITC 分野の会社が古民家を
開発が始まった1970 年代に現在のITC 技術等が浸透した
活用したいわゆるテレワークを実験的に実践し始めたの
社会は到底想像されていなかったように,これから40
である.
年後の技術や都市の姿は想像しがたいが,社会資本も目
ITC 技術の活用は,過疎地と都市との関係において物
的外利用はできないなどと発展性を欠くことなく研究を
理的な距離が問題となる医療,行政サービス,就業,教
進めていくべき対象として見ることが必要である.
育などに新しいかたちをもたらす可能性が非常に高い.
そのため,必ずしも全ての都市が人口集積を目的とした
6. 望ましいコンパクトシティ像 検討のあり方
コンパクト化を目指すのではなく,持続可能な地域のあ
り方として望ましい姿を検討する必要がある.
本年度,様々な事例等を収集するなかで,今後,わ
が国において目指すべき望ましいコンパクトシティ像の
(2) 公共交通指向型社会の実現
検討のあり方についてのポイントを次の通り整理した.
最も有名な事例は,富山市のLRT を中心とした団子と
当初は,都市の規模別程度に望ましいコンパクトシ
串のコンパクトシティの事例4)であろう.この事例の特
ティ像のゆるぎない姿を整理しようと考えたが,事例研
筆すべき施策は,都市マスタープランにおいて,公共交
究等からそれでは大雑把すぎ,よりきめ細か配慮が必要
通沿線居住推進地区の人口フレームを位置付けていると
だと考える中で検討のあり方として整理したものである.
ころにある.
1) 望ましい都市構造の多様性への対応
また,この目標人口の達成に向けて,まちなか・公
社会資本整備審議会都市計画部会答申「集約型都市
共交通沿線居住推進事業として事業者及び個人に対して
構造の実現に向けて」において,望ましい都市構造は地
助成を行っていることが先駆的である.
域の選択ということを前提としているとおり,都市の形
バスと違い軌道であるため地区の需要に応じたフレ
成の歴史(土地利用等)や景観,防災などにも配慮した
キシブルな路線変更ができない為,このような施策をと
目指すべき姿を検討することが重要である.
っているとする見方もできるが,公共交通とセットで街
ケーススタディを行うタイプ分類がどの程度必要か
づくりを考える視点は非常に重要である.
については次年度の研究としたいと考えている.
2) 目標の理解を深め,選択される集約拠点づくり
集約型の将来イメージ図は,主に集約拠点や公共交
99
通沿道における人口集積の密度(色の濃さ等)で表現さ
れていることが多い.
しかしながら,住民が主体的に集約拠点に集積する
ことを目指すのであれば,助成等のインセンティブの他,
防災,防犯等への対応などの安全安心の情報や将来の拠
点の姿をより具体的に示し,住民が選択したくなる地域
づくりの姿を層状的に見られる可視化が重要である.
3) 縮退エリアの社会資本整備のあり方の明確化
集約型の将来イメージ図では,集積後の外延部は野
に還るイメージを簡単に示していることが多いが,この
エリアが荒廃した市街地とならないよう十分な政策誘導
の検討が必要である.
既往文献 5)では,この範囲を換地手法や集約拠点と郊
外市街地との一体的市街地整備事業手法の活用とともに,
みどり・農地などへの土地利用転換に対するインセンテ
ィブを付与するという作業試案が示されているが,今後,
さらに具体的なプロセス検討が必要である.
規模の維持を明確に打ち出している)
多くの総合計画や都市マスタープランは,人口フレ
ームをコーホート要因法に基づき自治体計として推計し
ているが,今後は,バックキャスティング手法なども活
用しながら集約拠点や公共交通沿道ごとに計画的に配置
する目標人口をきめ細やかに設定していく方法等の確立
が今後の研究に求められると考える.
フォーキャスティング
目 標
バックキャスティング
持続可能な社会
目 標
Backcasting
Forecasting
現在の社会
現在の社会
図-6 低炭素社会実現化に向けた手法
7. 結論
低炭素社会づくりに向け参考となる事例や取り組み
方法を整理したことで,概ね課題が明らかになった.
しかしながら低炭素社会づくりの推進にあたっては,
トレードオフの関係にあるまだ把握しきれていない課題
があると考えられる.これらについては,次年度にスタ
ディ検討を交えながら具体的にしていきたい.
参考文献
1) 低炭素都市づくりガイドライン(平成22 年 国土交通
省 都市・地域整備局)
2) 関東地方における都市構造のあり方に関する検討会
図-5 コンパクトシティ像の一例(社内研究会における試案)
(国土交通省 関東地方整備局)
3) 「都市構造の可視化に向けて」国土交通省 関東地方
4) きめ細かい計画人口の設定
整備局 建政部 都市整備課 記者発表(平成21 年11
低炭素や高齢化社会への対応もさることながら,人
月25 日)
口減少に歯止めを掛ける都市政策を強化しなければ集約
4) 富山市資料 第3回コンパクトシティ推進研究会
につぐ集約が必要でとうてい持続可能な社会の姿にはな
りえない.限界集落の村納めどころか都市納め(大都市, 5) 今後の市街地整備の目指すべき方向- 市街地整備手
法・制度の充実に向けて-今後の市街地整備制度の
中都市集約)で社会資本の維持管理範囲を切り捨ててい
あり方に関する検討会(平成20 年6 月)
かなくてはならない時代がくるやもしれない.その点,
将来の計画人口を如何に設定するかが難しいところであ
る.(環境モデル都市のひとつである梼原町では,人口
歩いて暮せる健康長寿命都市
100
RESEARCH ON COMPACT CITY FOR LOW-CARBON SOCIETY
Taisuke OKADA, Tsukasa GORAI and Kenta MATSUSHIMA
Global warming is caused by mainly Greenhouse Gas discharged from industrial activities of human.
It is one of the most difficult problems to solve in environmental problems. Fatheremore, Japan has
become the aging society and needs to cope with it in addition to global warming, that is we need to think
sustainable communities. Then compact city has been discussed that can be a solution of these prblems,
but it is so difficult to change urban structure.
In this paper, some problems of low carbon society for compact city are made clear through examples
and researches, and important things we have to study hard are informulated.
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