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哲学コース関係教員推薦書一覧
2011 年 2 月 23 日改訂 哲学コース関係教員推薦書一覧 編集:哲学コース室 以下の参考文献表は哲学コース関係専任教員に対しておこなったアンケートの回答に基づいて作成したものである。ア ンケートにおいては、次のA、Bそれぞれにつき五冊以内を挙げていただくよう、お願いした。 A……哲学史・概説・入門 B……一次文献(翻訳) 鹿島 徹 (2010 年度と 2011 年度は特別研究期間につき、下記は 2007 年のものの再掲である。 ) 現代日本社会の制度化された「哲学」なるものに疑問を感じる者として、推薦本を挙げることなど、なまなか にはできません。代えて、この1年ほどのあいだに(再び)読んで、 「哲学」と現代社会をめぐるさまざまな問題 を考えるために「これは重要だ」「面白い」と思った書物を、10 冊ほど挙げさせていただきましょう。 ベンヤミン「歴史の概念について」(1940 年)浅井健二郎訳『ベンヤミン・コレクション Ⅰ』ちくま文庫 ベンヤミン『パサージュ論』(1827-40 年の草稿)岩波現代文庫 ハイデガー『存在と時間』(1927 年)原佑・渡邊二郎訳(中公クラシックス)細谷貞雄訳(ちくま文庫) ハイデガー『哲学への寄与』(創文社ハイデッガー全集第 65 巻として一昨年刊行されましたが、高いし読みにく い。まず鹿島他『ハイデガー『哲学への寄与』解読』(2006 年、平凡社)をお読み頂ければ幸いです。) マンフレッド・スティーガー『グローバリゼーション』岩波書店、2003 年 イグナシオ・ラモネ他『グローバリゼーション・新自由主義批判事典』2004 年 デヴィッド・グレーバー『アナーキスト人類学のための断章』以文社、2006 年 網野善彦『無縁・公界・楽』(1978 年)平凡社ライブラリー 猪野健治『侠客の条件』ちくま文庫、2006 年 フィリップ・ポンス『裏社会の日本史』筑摩書房、2006 年 小島雅春 A 1. トマス・ネーゲル『哲学ってどんなこと?―とっても短い哲学入門』 昭和堂 この原書である本書もお奨めします。英語ですが、たいへん読みやすいものです。 What Does It All Mean? : A Very Short Introduction to Philosophy, Oxford Univ. Pr. 2. その他、哲学の枠にとらわれずに、古典と呼ばれている多くの書をはじめ、文学部にいて話題にされている本はどれ も、積極的に読まれることをお薦めします。自分のものの見方を、哲学以外の方向からいろいろと支えてもらえる 何かに出会えると思います。 B ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』 法政大学出版局 ( 『論理哲学論考』岩波文庫:も最近出版されましたが、私は目を通していません。 ) 訳者の解説などがついていますが、まずは自分で読まれ自分の印象を持たれるようお勧めします。 酒井紀幸 A 1.佐々木健一『美学への招待』中公新書 2.クラウス・リーゼンフーバー『中世思想史』平凡社ライブラリー 中世哲学のオーソドックスな通史。 3.ウンベルト・エコ『中世哲学史:「バラの名前」の歴史的・思想的背景』而立書房 B 1.アウグスティヌス『告白』中央公論新社(世界の名著 16) 2.トマス・アクィナス『神学大全』中央公論新社(世界の名著 20) 佐藤眞理人 A 1.ヤスパース『哲学』全3巻(「哲学的世界定位」 「実存開明」 「形而上学」 )創文社 実存哲学の金字塔。広汎かつ深遠な西洋哲学の集大成と言うべき書。 2. レヴィナス『全体性と無限』国文社 1 存在論的全体主義に根底から挑戦する苦闘の思索。 3.サルトル『存在と無』人文書院 明快に徹底的に存在を探求する刺激的な存在論の試み。 4. フッサール『デカルト的省察』中央公論社(世界の名著「ブレンターノ・フッサール」 )、岩波文庫 著者が一時は主著にしようと考えていた現象学全体の概説書。 5. モンテーニュ『エセー』河出書房(世界の大思想) 、白水社、岩波文庫 デカルトに先立つ近代哲学の祖が残した人間研究の宝庫。 B 1.ジルソン『存在と本質』行路社 著者は中世哲学の大家であるが、この書は西洋哲学全般を土台の部分から学ぶための最重要文献の一つである。 2.澤瀉久敬編『現代フランス哲学』(正続2冊)雄渾社 最も広範囲なフランス哲学の案内書。 3.樫山欽四郎・松浪信三郎編『世界思想教養辞典 西洋編』東京堂出版 西洋思想全般への手引き。簡潔に要点を押さえた説明は便利。 4.中埜肇『弁証法』中公新書 弁証法の解説書のなかで一番わかりやすい。 5.松浪信三郎『実存主義』岩波新書 現代思想の源流である実存思想の基本を平易に説いてくれる。 田島照久 A 1.V・ロスキィ『キリスト教東方の神秘思想』勁草書房 日本ではほとんど知られることのない東方正教会のキリスト教信仰の核心をとらえた古典的名著。 2.大森正樹『エネルゲイアと光の神学』創文社 東方正教会の神学の核を担うグレゴリオス・パラマスの思想に関する我国はじめての本格的研究書。 3.ヘリベルト・フィッシャー『マイスター・エックハルト』昭和堂 エックハルトを「神学者」としてとらえ、ラテン語著作を中心にその神学的思想とミュスティークとの関係を浮か び上がらせることを試みた専門書。 4.落合仁司『 〈神〉の証明、なぜ宗教は成り立つか』 無限はその全体と部分が同一であるというカントールの集合論とキリスト教の三・一神論とを対比させながら宗 教の成立を考えようとする知的刺激にあふれた書。 5.ジョン・ドミニク・クロッサン『イエス、あるユダヤ人貧農の革命的生涯』新教出版社 史的イエス像研究の最前線の成果を提示する書。 B 1. 『ドイツ神秘主義叢書(全 12 巻)』創文社 ドイツ・ミュスティクのテキスト翻訳と最前線の研究者による解説。 2.コプルストン『中世哲学史』創文社 中世思想の展開とプロセスが明解につかめる。問題となる論争点も近年の研究の諸成果を取りいれ説明されてい る。 3.トーレイフ・ボーマン『ヘブライ人とギリシヤ人の思惟』新教出版、1976 年 ヘブライ的な思惟がヘブライ語という言語の構造に本質的に規定されていることが明確に示されている。 4.カール・ラーナー『キリスト教とは何か』エンデルレ書店 キリスト教信仰とは人間の知的良心に対しても誠実に弁明できるものという確信から出発した現代カトリックの 指導的神学書。 「無名のキリスト者」論も展開されている。 5.西谷啓治『宗教とは何か』 (西谷啓治著作集第十巻)創文社 「空」の立場から宗教を照らし出す宗教哲学の日本的成果の書。 丸野 稔 A 古代ギリシア哲学にかんしては、プラトンやアリストテレスなどの入手しやすい文庫本の翻訳によってまず本文に親し むことから始めてほしい。訳者解説も参考にすれば概観は得られる。 ギリシア哲学は文化の幅広い領域に根付いているので、いろいろな分野の問題に関心をもつことが大切であり、そうし た知識が哲学とは何かを問うとき必要になる。 1.ドッズ『ギリシア人と非理性』(岩田靖夫、水野一訳、みすず書房 1972)は、理性によって処理できない問題がギリ シア文化の一つの特質をなし、もちろん哲学とも関わりが深いことを教えてくれる。原書 E.R.Dodds, The Greeks and the Irrational (University of California Press, 新版 2004) のほうがはるかに廉価、平明。 2.フィンリー『民主主義 古代と現代』(柴田平三郎訳、講談社学術文庫 2007)は今日の民主主義の問題点を古代アテ ネとの比較から論じたもので、哲学者たちのアテネ民主政批判を考えるうえでは有益である。 2 3.アームソン『アリストテレス倫理学入門』(雨宮健訳、岩波現代文庫 2004)。 『ニコマコス倫理学』を読むための手引 きとして書かれたものであるが、今日の倫理学上の基本問題を考えさせてくれる。 4.古東哲明『現代思想としてのギリシア哲学』(ちくま学芸文庫 2005) 。哲学史の型から外へ飛び出て、根源的な問題 へ切り込んでおり、刺激的で興味深く読める。 5. ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』(加来彰俊訳、岩波文庫 上中下 1984-1989-1994) 。哲学者た ちの生涯と著作・教説を紹介した古典で、通常の哲学史本を読むより面白い。 B 1. 廣川洋一『ソクラテス以前の哲学者』(講談社学術文庫 1997) 。巻末にすべての断片が翻訳されている。 2.プラトンとアリストテレスのおもな著作は、新潮文庫、岩波文庫、講談社学術文庫などに翻訳があるので、どれでも よいからまず一冊とって読んでみよう。 3.『初期ストア派断片集1~5』(京大学術出版会)のほか、ローマ帝政期のストア派(セネカ、エピクテトス、マルク ス・アウレリウス)の翻訳は岩波文庫にもある。後世への影響の大きさからして、一度は読んでみたいもの。 4. 『エピクロス 教説と手紙』 (岩波文庫) 。 5.『プロティノス、ポルピュリオス、プロクロス』(世界の名著) 。 御子柴 善之 A 1. 柘植尚則『プレップ倫理学の視座』弘文堂、2010 年 最近出版された倫理学の入門書の中で出色の著作。引用文に頼らない平易な記述が特徴である。 2.石川文康『カント入門』ちくま新書、1995 年 独自の切り口から、カント哲学を親しみやすく解説している好著。同じ著者による入門書、 『カントはこう考えた』 (筑摩書房、1998 年)もある。 3.H・M・バウムガルトナー『カント入門講義』法政大学出版局、1994 年 カントの『純粋理性批判』の全体像をつかむには好適な書物。原語は平易なドイツ語で書かれている。翻訳には いくぶん問題がある。 4.ブライアン・マギー『哲学人』 (上・下)NHK出版 マギーの自伝でもあるが、彼の出会った人物(特にポパーやラッセル)の描き方が興味深い。 「哲学する」ことを 実感させてくれる好著。 5. 中島義道『悪について』岩波新書、2005 年 カント倫理学を、身体をもって生きる人間に即して語り抜いた好著。「悪」の観点から、教科書的なカント入門書 とはまったく異なる展望をひらいている。 B 1.カント『道徳形而上学の基礎づけ』 カント倫理学が最初に提示された書。以文社から刊行されている宇都宮芳明訳がよい。 2.カント『プロレゴーメナ』 カントの理論哲学を分かりやすく伝えてくれる書。実は論争的な書物でもある。理想社版カント全集に入ってい る訳がよい。また、1.と2.を一冊にまとめた中公クラシックス(中央公論新社)も良好な訳書である。 3.フィヒテ『浄福なる生への導き』平凡社ライブラリー、2000 年 これは、フィヒテの宗教哲学の書であり、またドイツ観念論の性格を明瞭に伝える書物でもある。大変平易な改 訂・補訳が平凡社から刊行された。 4.ナッシュ『自然の権利』ちくま学芸文庫、1999 年 自然環境問題に直面する中で、環境思想・環境倫理学がどのような議論を積み重ねてきたかが 歴史的に説明さ れている。 5.エンゲルハートほか『バイオエシックスの基礎 欧米の「生命倫理」論』東海大学出版会、1988 年 生命倫理学研究の基礎文献。重要な論文が収録・翻訳されている。 3