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TS転生だとしても、絶対に諦めない。 ID:18907

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TS転生だとしても、絶対に諦めない。 ID:18907
TS転生だとしても、絶対に諦めない。
聖@ひじりん
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
﹂
神にも手を出したセクハラ男は、セクハラ女になった。
﹁俺は、絶対女になんか揺らがない
※3・評価は出来ればコメント下さい。
ります。
※2・更新は、三ヶ月に一回予定。 気分が乗れば乗るほど早くな
※1・原作設定順守。独自解釈あり。間違いあるかも。
◆ ◆ ◆
立派な女の子になり、ハンター試験に挑んだ。
そう心に誓った主人公は、転生して14年。16歳。
!!
﹄ │││││││││││││││
目 次 プロローグ﹃転生成功
ハンター試験編 1話﹃試験スタート﹄ │││││││││││││││││
2話﹃トレード﹄ │││││││││││││││││││
3話﹃トリックタワー前篇﹄ │││││││││││││
4話﹃トリックタワー後篇﹄ ││││││││││││││
5話﹃そして、天空闘技場へ﹄ │││││││││││││
天空闘技場編
6話﹃到着からの帰宅﹄ ││││││││││││││││
7話﹃新しい出会い﹄ │││││││││││││││││
8話﹃変態と変態﹄ ││││││││││││││││││
9話﹃vsヤヤ﹄ │││││││││││││││││││
10話﹃特訓初日﹄ ││││││││││││││││││
ヨークシン編
11話﹃いざ、新天地﹄ ││││││││││││││││
12話﹃介入開始﹄ ││││││││││││││││││
13話﹃甘くない二人組﹄ │││││││││││││││
14話﹃予言﹄ ││││││││││││││││││││
15話﹃灰色狂想﹄ ││││││││││││││││││
16話﹃小さな変化﹄ │││││││││││││││││
1
14
23
36
51
61
78
126 114 104 90
207 194 182 167 153 139
?
プロローグ﹃転生成功
﹄
目を開けると、白い世界に居た。周りを見渡しても白。上を見ても
白。下を見ても白。
﹁なるほど、これはアレか、アレなんだな﹂
そう自分一人で納得してみるが、一向にここの主が出てくる気配は
ない。
まあそもそも、気配を感じるなんて芸当は俺には無理な話だけど。
﹁さて、仮にここがその空間だったとして、なんで俺はここにいるんだ
ろうか﹂
腕を組んで、思い出そうとする。
﹁⋮⋮あーうん、なるほど。頭が痛い。割れる様に痛い﹂
とりあえず、諦めた。続けても、どうせ思い出せそうに無いし。
﹂
それに、思い出せなくても一つだけ確実な事がある。夢ではない。
﹁ところがギッチョン
﹁なんですか、なんですか
そうだ。
ノリ悪いなー﹂
様だから貞操概念があるかはわからないけど、なんとなく下ネタに弱
それと、これは俺の勝手な予想だけど、きっと純粋に違いない。神
を設定出来るのかは分からないけど眼福なのは間違いない。 果たして肉体がちゃんと実体として存在しているのか、自由に容姿
顔は整っているし、髪は腰まである綺麗な金髪。
や、かなり良いだろう。
神様って言ってもちゃんと五体満足だし、スタイルも中々⋮⋮い
しかし、まあ、あれだ⋮⋮かなり、可愛い生き物だな、うん。
しゃるのか、少し不機嫌な感じだ。
開 口 一 番 の 言 葉 に ノ リ を 合 わ せ な か っ た 事 に 不 満 を 感 じ て ら っ
た。
どうやらここの主らしき、それっぽい恰好をした女の人が出てき
!!
1
?
﹁お、お前はアリ⋮⋮いや、このノリはやめておこう﹂
!!
﹁今、もの凄く貞操の危機を感じたんだけど﹂
﹁ははは、気のせいだ。で、現状を教えてくれ﹂
どうやら、貞操概念はあったらしい。がばっと身体を抱きしめてい
る。
﹁うーん、気になる⋮⋮けどまあ、話を進めようかな﹂
⋮⋮というか、読心術とかないんだな。
﹁君はね、半分死んでいるんだよ﹂
﹂
そんな事を考えていると、衝撃⋮⋮でもない事を言われた。
﹁半分⋮⋮というと、脳死
文字通りの半分
﹁まさか、真っ二つにされて、半分体がないとかじゃ
まあ、そんな事あり得るわけ││
﹂
なるほど、神様にも十人十色が当てはまるのか。
人じゃないんだよね﹂
﹁神様なんていっぱいいるんだよ。それに君は、元々私の担当区域の
らい知ってるだろ
﹁まあ一般よりは、って程度⋮⋮いや、あんた神様なんだから俺の事く
なんか、褒められた。素直に喜んでいいのだろうか。
﹁凄いね、君って賢いんだ﹂
のか﹂
﹁世界は、非現実な世界。つまり、魔法などの存在が確立してしまった
現実的にはならない⋮⋮なるほど、そういう事か。
﹁まあ現実的にはならないよね﹂
ならないはずだ﹂
﹁いやいや、おかしいだろ。現実的に考えてもどうやってその状況に
や生きてるのか。
まじか、恐ろしいな。というか、どうやったらそう死ねるんだ。い
﹁凄いね、正解だよ﹂
﹂
﹁現実的とは少し違うんだよね。文字通り、半分死んでいるんだ﹂
?
意外と言えば意外だが、自分に起こってる現実的にはありな話だ
な。
2
?
?
?
﹁じゃあ、なんであんたが俺の所に
のか。
﹂
﹁なら、なんで俺の記憶がないんだろうか
﹂
?
だ。いや、揉んでいる
﹂
⋮⋮とりあえず、この事は置いといて本題に戻ろう。
﹁俺はどこの世界に行けばいいんだろうか
﹁そこまでなんだね⋮⋮うーん、どうしようかな。思い出したい
?
﹁いや、無理に思い出して頭痛が酷くなるのは遠慮したい﹂
﹂
いるけど⋮⋮記憶が消えて無かったら、間違いなく触っているはず
さっきから、神様の胸に触りたくてしょうがない。なんとか抑えて
いる事だけだ。
覚えているのは、どうやら俺は変人⋮⋮いや、変態の部類に入って
やっぱりな。でも、そうなると困ったな。
﹁うん、かなり酷いね﹂
くれたんだろうけど﹂
﹁ああ⋮⋮勝手な予想だと、死に方があまりにも酷かったから消して
﹁え、本当
﹂
上司が把握する前にこの事態が起こった。つまりは、死人が多すぎた
世界が急に改変。恐らく神様のもっと上がいきなりそうしたから、
﹁なるほど﹂
﹁上司から流れてきたの、多すぎて﹂
?
囁き対、悪魔の囁き的な。
﹂
らしき物が戦っている。天使の
﹁あ、じゃあ、死ぬ瞬間以外を思い出す感じでどう
?
目標を捉えると、目から脳へ。脳から首、肩、腕、手のひらへと伝
行動は迅速だった。
﹁いや、なんとかなりそうだ﹂
その提案を聞いて、ピンと来た。そして、悪魔の囁きが勝利した。
?
本当にさっきから、本能と理性
ただ、自分の事だけは思い出したい。
すのは精神的に持つ気がしないからだが。
正確には、神様が酷いと感じるレベルの思い出を、わざわざ思い出
?
?
3
?
﹂
い、対象をキャッチした。
﹁え
いや、キャッチというよりは、ゲットだろうか。
﹁ふむ、なんか思い出せそうな気がしてきた﹂
神様が唖然としているなか、俺は冷静に集中し手を動かし続ける。
﹁ちょ、ちょっと待って⋮⋮ぅん、ひぁ、ん、ん⋮⋮﹂
﹂
﹂
ふぁ、あっ⋮⋮﹂
感触はマシュマロ⋮⋮いや、別の物に例えるのは失礼だろう。
﹁いやぁ、だめぇ⋮⋮ンっ
まさに、おっぱいだ
﹁⋮⋮﹂
神様にそんなことする
﹂
普通、
しいて言えば、悪魔の囁きが勝ったか
﹁気のせいじゃないよ 私もちょっとノってあげたけど
とりあえず、誤魔化した。
﹁⋮⋮気のせいだ﹂
らだろうな。
なんで⋮⋮なんでだろう
﹁なんで、君は平然と私の胸を揉んでるのかな
﹁なんだ
﹁あ、あ、あ、あ、あのさ﹂
!!
?
彼女が神様じゃなくても絶対に触るからだ。
﹁答えは、あんただから触った。以上だ﹂
というわけで、手の動きを再開する。
!?
のよ馬鹿
﹂
思い出した
!!
﹂
だけど、そのお陰で
﹁このタイミングで
俺
を思い出す事に成功した。 "
﹁ああ、ありがとう。おかげで何が好きだったかも思い出したよ﹂
!?
"
俺の頬に、ビンタが炸裂した。さっきの頭痛より痛かった。
﹁ぐふぅ
﹂
し、声はかっこいいし⋮⋮そ、それに触り方も⋮⋮って、何言わせる
﹁いやいや、かっこよく言えば許されるとでも
まあ、顔は好みだ
手を放す事はせずに、手を止めて考える⋮⋮が、直ぐにやめた。
!!
!!
!? !!
!?
?
!! !!
4
?
いや、私
ちゃんと死に際も思い出したけど⋮⋮思ってたより、酷く無かっ
た。
﹂
﹂
﹁な、なんだか複雑なんだよ。でも、役に立ったな⋮⋮ん
だけ一方的に被害受けてるよ
﹁大丈夫、ナイスおっ││ぐはぁ
﹁それ以上言ったら、次は容赦しないんだからね﹂
﹁い⋮⋮いえっさー﹂
﹁よろしい。で、君はどの世界に行きたいのかな
﹂
魔法弾らしき物が鳩尾に入ってなかったらまた言う所だった。
?
HUNTE
×
それに││ ﹁そんな簡単に決めて問題ない
ブとロードが出来ないとツライ。
﹁それなら、その世界にするね。じゃあ特典は
三つだけど﹂
もちろん、ゲームはするけど⋮⋮ギャルゲー系ばっかだしな。セー
唯一俺が読んで、買ってる漫画だしな。
﹁無問題だ﹂
﹂
I編に出て来た恋愛都市がある事だし。
他にも行きたい世界はあるが、女の子がいっぱいいる所として、G・
R﹄だからその世界で﹂
﹁えーとだな、死ぬ直前に読んでいた本が﹃HUNTER
普通に考えて、神様の攻撃食らってダメージだけで済む訳ないし。
んだけどな。手加減してくれたっぽいし。
にしても、可愛い顔してやる事はえげつないな⋮⋮いや、俺が悪い
?
﹁他の二つは時間が欲しい。能力にかなりかかるだろうし﹂
として⋮⋮時間貰おうか。簡単に決めすぎるのも、あれだし。
得したな⋮⋮けど、そうなるとどうしようか。能力、念に一つ使う
﹁あ、二つだと思ってた⋮⋮﹂
﹁了解。あ、それで一つかな﹂
時に転生させてくれ﹂
﹁とりあえず、体をあの世界に最高水準で適応出来る体にして、二歳の
何が良いだろうか。正直なんでもいいと言えばなんでもいいしな。
?
5
!!
!?
?
﹁わかった、じゃあ決まったら呼んでね。それまで他の子も対応して
るから﹂
﹁ありがとう﹂
そ う 伝 え る と、神 様 は 一 瞬 で 姿 を 消 し た。初 め て、神 様 っ ぽ い と
思った。
⋮⋮さて、神様も居なくなったし、ゆっくり考えよう。
まず、何をしたいかだけど⋮⋮G・I編に行く。これは絶対条件。
後はそうだな⋮⋮旅団のマチに会いに行くのと、ネオンに会いに行
く為にかなり戦闘力がいるか。
つまり、女の子とキャッキャウフフをしようと思うと、使える念
じゃないと絶対にダメな訳だ。
﹁うん、時間がかかりそうだ﹂
◆ ◆ ◆
次は容赦しないって言った
で来るもんだと思っていたので、油断した。
﹁で、決まったんだね﹂
何時間経ったかは分からないけど、本当に時間が掛った。本当に使
える念かは分からないけど⋮⋮かなり優秀なはずだ。きっと。
﹁ああ。残りの二つ、まずは一つ目だけど⋮⋮あの世界にある念、って
いう能力の指定﹂
﹁うん、了解。説明は無くても大丈夫。イメージを持ったままでいて
ね﹂
なるほど、そんなのでいいのか⋮⋮便利だな。いやまあ、当然なの
かも知れないけど。
﹁残りの一つもかなり悩んだけど、才能かな﹂
6
││そこから、俺の念が決まるまでかなりの時間を要した。
﹁ナイスお││﹂
﹂
﹁こらこら、何て呼ぼうとしたのかな
よね
?
まさか顔面に飛んで来るとは思ってなかった。てっきり下に飛ん
﹁じょ、冗談だって﹂
?
﹁才能
﹂
﹁うん。あらゆる物に対しての才能。そつなくこなせるとか、一を聞
いて十を知り、十を体感し百を感じれる⋮⋮的な﹂
﹁なるほど﹂
最後のは完全に造語だけど、イメージ的には合ってるんだよな。
﹁死が直ぐ近くにあるあの世界で、優秀な能力は合っても使いこなせ
ないなら意味がないし⋮⋮と思って、戦闘経験とか戦闘に役立つ物が
いいかなとか考えたけど、それだと曖昧過ぎて想像出来なくてさ。そ
とか何とか
れなら、パソコンに勝る優秀な脳と考えて、結果的に才能に落ち着い
た⋮⋮って感じだ﹂
﹁よ、よく考えてるんだね。他の人たちは、はーれむ
言って、直ぐに決めちゃってたけど﹂
?
あっちの世界でこの容姿が受けなかったらモ
ハーレムか⋮⋮自分で作ればいいしな、うん。
うん
﹁うん。じゃねえよ
﹂
テないじゃないか
﹁
﹂
!!
!!
は少しモテる程度の俺が、女の子にモテる訳がないじゃないか
﹁困った⋮⋮﹂
﹁それは大丈夫。特典とは別に、おまけで修正しとくよ﹂
目の前の神様が、女神に見えた。いや、元々女神か。
対応は早くないといけないのか。
じゃあ、さっきは何であんなに漫才
してたかって言われたら、
なんか、あっさりしているな⋮⋮まあ他にも人がいっぱいいるし、
そう言うと、俺の足元に魔法陣的な物が出てきた。
ら﹂
﹁じゃあ、そのイメージを持ったままでいてね。これから君を送るか
!!
﹁10秒後に送られるよ﹂
んだな。
俺がボケてたしな。真面目に進めると、こんなにもスムーズに終わる
?
7
?
?
何故、気が付かなかった⋮⋮このままだと、容姿だけだと普通より
!?
いいよ﹂
﹁了解⋮⋮あ、ちょっとこっち来てもらっていいか
﹁ん
﹂
?
﹂
神様を更に近くに呼んだ。
﹁で、どうしたの
﹁近くで言おうと思ってさ、改めてありがとうって﹂
﹁あ、うん。どういたしまして﹂
後、5秒くらいだな。
﹁本当に助かった。それじゃ次に会うときは死んだ時かな
﹁君の担当が私になったらだね﹂
﹂
﹂
!!
あった。
﹂
◆ ◆ ◆
﹁リナ
リナがいきなり変な事を
!!
﹁成功したみたいだな、無事に﹂
﹁あ、あなた
﹂
そして主人公の知らぬ所で、死後の未来が確立されてしまったので
たら責任とって貰おうかな、なんせ初めての相手だし﹂
﹁まあ、最後くらい⋮⋮って、最初もそうだけど。でも、まあ次に会っ
◆ ◆ ◆
そして、俺の意識はなくなったが、残ったのは至福な感触だった。
﹁ちょ
﹁ナイスおっぱい
し、神様の胸を揉んだ。
そう言って、俺は最後にもう一度。それが辺り前の様に手を伸ば
?
?
﹁じゃ、担当になってくれよ。それじゃ││﹂
﹂
俺は咄嗟に思い付いた事を実行する為に、元々近くにはいたけど、
?
あれ、驚かれたって事は⋮⋮まだ、あんまり話せない時期なのか。
!!
8
!?
?
﹁なんて言ったんだい
いな。
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹂
すると何故か身構えられた。
あれ、まだこんなに話せないのか
﹁にさい﹂
﹁そ、そうよリナは二歳ね﹂
よし、これならいいんだな。
とわりと動く程度かな
﹂
そう思い、腕を回したり、歩いてみる。
﹁この子、元気が余ってるのかしら
﹁あら、あの子走ってるわ⋮⋮外に連れて行ってきますね﹂
れるな。
次は走ってみる⋮⋮これも余裕だけど、少し息があがるというか疲
てみる。少しぐらつくが可能。
こっちに視線がない事を確認した俺は、とりあえず座ってから立っ
た。
そう言って、恐らく母らしき人が机に座って父らしき人と話始め
?
?
﹁そうかも知れないな、今日はそういう日なんじゃないか
﹂
赤ちゃんは平均的に一年前後で立つ事が出来るらしいから、二歳だ
話す感じは合ってるから、次はどれだけ動けるか試すか。
?
なので、少し馬鹿らしく、片言らしく言ってみる。
﹁おれ、にさい
﹂
なるほど、まだ二歳か。確かに言葉をしっかりと話せる時期じゃな
歳ですもんね﹂
﹁でも、確かにそう言ってた気がしたんだけど⋮⋮そうよね、今日で二
﹁ははは、まさか。まだ二歳だぞ﹂
﹁成功した、なんたらかんたらって﹂
?
?
いくー﹂
9
!!
﹁あ、なら俺も行こう。仕事は一段落ついているしな﹂
﹁おそと
?
ちょうどいい、走れるだけ走ってみよう。
そう思い時間を確認すると14時となっていた。どれぐらいで動
けなくなるか挑戦だ。
﹂
そして近くの公園に連れられ、草の茂る広場に来た。
﹁良い時間になったら帰るわよ。わかった
﹁うん﹂
たのか。
ひらひら
う、嘘だろ。
﹁⋮⋮﹂
⋮⋮ピンク
に色がピンクだし。
なんだ、この服
ひらひらして、動きにくいじゃないか。おまけ
そして走ろうとした時に気が付いた。むしろ、なぜ気が付かなかっ
?
なんで、ないんだ
﹂
﹂
﹁どうしたんだリナ
﹁あの、俺って女
﹁⋮⋮﹂
?
そもそも、名前で気づけよって話だったんだけど⋮⋮本当に馬鹿
﹁生まれた時から﹂
﹁本当に、いつからこうなったのかしら﹂ 誕生日は4月10日にあるので大体一ヶ月経ったぐらいだ。
0日。
と、そんな事があってから二年が経ち、四歳だ。現在、暦は5月1
◆ ◆ ◆
それは、色々な意味で否定できない現実を語っていた。
そして舞い降りた沈黙。
﹁⋮⋮﹂
?
﹁ちょっと行ってくるよ﹂
﹁あの子、いきなり固まってるわね。どうしたのかしら﹂
?
?
?
10
?
だ。
﹁そうよね、それはそうよね﹂
もう、諦めた⋮⋮訳でもなく、とりあえず言葉づかいだけは抵抗し
てみている。
ただ、やはりどこか前の持ち主の女が反応して、時々そちらに揺ら
ぎそうになるのだが。
﹁だけど、負けない﹂
﹁そうね、頑張って言葉づかいは直しましょう﹂
﹁もう無駄だけどな﹂
そう言って、公園に逃げた。もうこの流れは何度もしているので、
母も追いかけて来ない。
﹁さて、今日も特訓だわ⋮⋮⋮⋮特訓だ﹂
くそう、いつか勝ってみせる。
とりあえず、準備体操してから走り込み。それが終わり、次は腕立
11
て伏せなどの筋トレ。数千回で限界を感じる。
いくら最高水準でお願いしても、多分これが限界なのだろう。身体
発達の。
﹁⋮⋮よし、次は念だ﹂
他人の視線が怖かったので、いつも公園の中と言っても人の来ない
森林地区で特訓している。時々動物、リスや熊が来るが今では友達に
なった。
そうして、念の訓練をしている内に日が暮れそうになったので家に
帰った。
◆ ◆ ◆
﹂
そしてそこから更に数年経ったある日、16歳になった誕生日の日
にふと頭にある予感がよぎった。
たしかに16歳だから色々始めれる歳だけど
﹁なるほど、今年が始まりの年﹂
﹁ん
?
﹁だよね⋮⋮私、やりたいことがある。ちょっと待ってて﹂
?
﹂
母の返事を聞くより早く、部屋に戻ってハンター試験応募カードを
取り、母の元に戻る。
﹁これは⋮⋮ハンター試験応募カード
﹁うん。私、ハンターになりたいんだ﹂
﹂
﹁⋮⋮と、驚いてみたけど特に反対はしないわ。好きにしなさい﹂
⋮⋮いや、まあうん。
﹁ありがとう、ママ⋮⋮でも、本当にいいの
間違いなく⋮⋮うん、酷い人間だったわ。
﹁いいわよ。どうせ反対しても行くんでしょ
﹁え、うん﹂
﹁ほらね﹂
﹂
未だに可愛い女の子等を見ると興奮して手は出るけど、昔の私だと
れ流していた情熱はもう薄れている⋮⋮はずよね。
ちなみに、もうすっかり女として馴染んでしまい、男だった頃の垂
?
?
さい﹂
﹂
⋮⋮そしてこの母、中々に現金なのよね。言葉づかいもしっかりと
矯正させられたし。本当はもっとおっかない人なんだと、何となく思
う。
今では、仕草や服装と言った、何もかもを叩き込まれたし⋮⋮。
一応過去として、前の自分の記憶もあるけど、殆ど忘れている。覚
されている記憶は殆どない。い
えているのは、この世界のある程度の設定と自分の前の世界の行動、
神様との会話ぐらい。
何故か、女として矯正⋮⋮調教
や、思い出せないが正解。
?
12
!?
流石は母。こちらの考えは読まれていた。親が強いと言うよりは、
﹂
本当に母は強し。父はかなり鈍いし。
﹁これっていつなの
﹁うん、何
﹁そうなのね。じゃ、条件があるわ﹂
﹁来年直ぐだから、後一年はあるよ﹂
?
﹁連絡とお金。お金はしっかりと送りなさい。お金はしっかり送りな
?
﹁わ、わかった﹂
﹁後は⋮⋮死なないで帰ってきなさい。一年に一回、必ず﹂
﹁⋮⋮ありがとう、ママ﹂
色々と騙して生きて来たけど、やっぱりこの人は私の母ね。人生で
は二人目になるけど、どっちも選べないわね。
﹁いいえ。パパには内緒にしておくから、絶対にハンターになりなさ
い﹂
﹁うん﹂
にハンター試験を受けることが
13
こうして、現金な母の元、無事
決まった。
?
ハンター試験編 1話﹃試験スタート﹄
そして、見送りに来た母から励ましの言葉を受けた私は、船に乗っ
て試験場を目指す。
一年も経っていないけど、本当にこの一年は早かった。
﹁おいおい、女がハンターになるんだってよ。甘く見られたもんだな﹂
﹁黙れ下等種。殺すわよ﹂
口から、咄嗟にそう出た。条件反射の様なもの。
この身体になったのと、母の矯正のお陰か副作用か男に嫌悪感に似
た何かを感じる様になった。
昔の記憶も少なからず影響していると思われるけど、とにかく男が
嫌い。念の制約にもある意味役立っているし、女の子が好きな私とし
14
ては問題はない。
嫌悪感を抱く、嫌だと感じる条件は、ぶっちゃけ勘。それ以外だと
視線かしら。
﹁っは、出来るもんなら││﹂
男が近づいて来ようとしたので、念を飛ばして気絶させた。
力加減を間違えなくて良かったけど、あれで静孔が開いたのでどの
道死ぬ事になりそう。
﹁さてと、しばらく暇になるわね﹂
船の中をざっと見ても、まだレオリオやクラピカが見当たらなかっ
たので恐らく私が一番早い。
三人が来るまで、特にする事もないし⋮⋮精神統一でもしましょう
か。
そんなとこに居たら危ないぞ﹂
そう思いマストに登り、座禅を組める横木で止まる。
﹁お、おい嬢ちゃん
﹁私なら大丈夫﹂
船員の人が注意してくれるけど、流石にこの程度でどうにかなるほ
!!
どやわに訓練してない。
ちらっとだけ船長からの視線を感じ、そちらに向いてサムズアッ
プ。すると船長は不敵な笑みを浮かべた。
◆ ◆ ◆
そこから一度目の嵐が終わるまでそこで待機していた。そろそろ
船長に呼ばれるはず。
例の三人が船に乗っているのはもう知っているけど、挨拶はしな
かった。まだ知らない人だし。
﹃これからさっきの倍近い嵐の中を航行する。命が惜しい奴は今すぐ
救命ボードで近くの島まで引き返すこった﹄ その船長の放送から、ばたばたと慌ただしく乗客が救命ボートで逃
げていく。
てたけど、気にするレベルじゃないわね。嫌な感じはしないし。
けど、無駄にスタイルがいいのも考え物よね⋮⋮自分で触って楽し
むくらいしか出来ないし。
とにかく、後は流れに身を任せるだけなので、先に言っておきま
しょう。
﹁ちなみに、私がハンターになりたい理由は恩返し。お金を稼いで両
親に恩返しをしたいわ﹂
15
人が減った所で、私はマストから飛び降りて船長室に向かう。
﹁結局、客で残ったのは四人か。名を聞こう﹂
﹂
﹁オレはレオリオという者だ﹂
﹁オレはゴン
﹂
?
うーん、レオリオからの視線が強いわね。そういうキャラって知っ
﹁私はリナ﹂
﹁で、嬢ちゃんは
少しは違うかなと思ったけど、まんまその通り。
なるほど、近くでみると漫画と全く同じね。現実的に見る視点だと
﹁私の名はクラピカ﹂
!
﹁なるほどな。ほかの三人はどうだ
﹂
またマストに戻⋮⋮いや、壊れるのよ
﹂
そう思いホテルで一晩を過ごし、翌日。朝ごはんを定食屋のステー
で休憩するのが得策ね。
試験が始まるのは明日だったはず。それならどこか近くのホテル
と、そこでふと思い出した。
﹁さてと、日が暮れる前に定食屋に入りましょうか﹂
なかった。
いていたけど、何かあるかわからないし温存も大切と考えたので使わ
そこから、1時間後にザバン市に到着。能力を使えばもっと早く付
そして、再び走りだした。
﹁私には関係ないけど⋮⋮さ、次々﹂
ど、逃げれない人はハンターになるなって証拠ね。
少し中を覗いてみると、人が死んでいる。当然と言えば当然だけ
ばらくした辺りで、バスが破壊されていた。
その道中、気になるものがあったので足を止めた。山道に入ってし
﹁あーなるほど。バスはこの辺りでこうなってたのね﹂
なんて考えながら走ってザバン市の定食屋を目指す。
恐らく、姿が消えたように見えるのかしら。
た。
レオリオの返事を待つのも面倒だったので、直ぐにその場を離れ
﹁私は別ルートで行くわ。じゃあね﹂
とにした。
ゴン、クラピカが話通りに離れて行ったので、私は別行動を取るこ
﹁っけ、意外に主体性のねー奴だな⋮⋮リナちゃんはどうするんだ
⋮⋮そこからややあって、ドーレ港に到着しバス停まで来た。
◆ ◆ ◆
ね。ならしょうがない、ここで待ちましょうか。
これで、もう大丈夫よね
?
キ定食にすればいいと考えたので、シャワーを浴びてから定食屋に向
16
?
?
かった。
﹁いらっしぇーい
ご注文は
﹂
良ければこの俺が﹂
﹂
そう思い、番号を配ってる人の元へ向かう。
うか、そもそも関わる気はないけど。
まあ、どうせこの人たちは死ぬんだろうし関わらない方がいいとい
改めて思った。
やっぱり、逆ハーレムならすぐに目指せるわね。
﹁いやいや、ここはこの私が﹂
﹁だ、大丈夫かい
嫌な感じがビンビンするわね。
身体のせい。
理由を挙げるとしたら、昔の私みたいな顔をしているからで、この
を除いて視線は外れてくれない。
扉が開き、外に出ると凄い数の人間かこっちを見た。そして、一部
そしてステーキ定食を食べながら待つ事数分。どうやら到着した。
本当にこれでいけるのね。何も変わってなくて良かったわ。
﹁⋮⋮あいよ、奥の部屋にどうぞ﹂
﹁ステーキ定食、弱火でじっくり﹂
?
?
やはり、有象無象はこのレベルの実力。全力の十分の一も出してい
ないにも関わらず反応不可能。当然だけど、大体の戦闘力は確認でき
たかしら。
人が多かったから、ヒソカやイルミには気づかれてないのが幸い
ね。
﹁君は400番だよー﹂
﹁ありがとう﹂
そして番号札を貰い、胸の辺りにつける。
つけ終わると同時に、数ある視線の中から一人だけ、後ろから近づ
いて来る。恐らくトンパかな。
﹁お、珍しいね。ここに女の子が来るなんて。そしてルーキーだね﹂
17
!!
?
今の子はどこに
﹁あ、あれ
?
いやいや、そんなはずは⋮⋮﹂
﹁げ、幻想
?
肩を叩かれる前に振り向いて、一歩下がる。
﹂
﹁新顔なのは間違いないけど、女なんて関係ない。プロのハンターで
もいっぱいいるでしょ
﹁そ、それもそうだね。俺はトンパ、よろしく﹂
﹂
トンパは手を差し出してくるが、悪寒がしたので手を振って断っ
た。
﹁そ、そうか。ならお近づきにジュースでもどう
﹁あ、貰うわ﹂
これがあのジュースね⋮⋮。
骨折なんて安静にしていれば2週間も掛らなかったし。
傷の治りもかなり早いし、それなのに傷は残らない。
本当に神様にお願いしておいてよかった。ちゃんと適応できるし、
しみじみ、そう思う。
﹁訓練の日々は、辛かったわね﹂
昧なので気のせいかしら。
そう言えば、拷問に協力してくれてた様な気がしたけど、記憶が曖
陰で手に入ったし。本当に何者なんだろう。
流石に幼かった時に毒を手に入れるのは苦労したけど⋮⋮母のお
ど、未来に向けて妥協はしたくなかったので頑張った。
自分自身に拷問に近い事をするのには中々に覚悟が必要だったけ
みに耐性を付けている。
ア。というよりゾルディック家と同じでこの身体には毒、電気、熱、痛
この世界では大体の事に対応できた方がいいと考えたから、キル
残念ながら効かないのよね。
ンパは人ごみに消えた。
そして、新顔の女。私にしっかりと下剤入りのジュースを渡したト
﹁それじゃあ俺は他にも挨拶する奴がいるから、また後で﹂
なくても、違う意味での満足感は手に入れた。
迷わず飲んでみると、確かに味がおかしい。ただ、味による満足は
?
﹁っと、そろそろゴンたちが来るわね⋮⋮とりあえず、先頭にいようか
しら﹂
18
?
サトツさんの横が一番人が少ないだろうし⋮⋮サトツさんなら、嫌
悪感レーダー、今命名が鳴らないみたいだし。
なので、壁のでっぱりみたいな所を使い先頭に出る。
⋮⋮そしてまたそこから暫くして。
﹃ジリリリリリリリリリリリリ﹄
サトツさんが隠し壁から出て来て、不気味な鐘の音を鳴り響かせ
た。
﹁では、これよりハンター試験を開始いたします﹂
サトツさんはでっぱりから降りると先頭に出た。
﹁こちらへどうぞ﹂
サトツさんが示したと同時に歩きだしたので、それに合わせてサト
ツさんの横を歩く。
すると、一度だけこちらを見て、視線を前に戻した。
﹁承知しました。第一次試験、404名全員参加ですね﹂
後で質
19
今から始まるのね、ハンター試験が。
まずは持久走だけど⋮⋮先に行くのはありなのかしら
問してみましょうか。
◆ ◆ ◆
﹁私はリナ。よろしく﹂
﹁あ、オレはキルア。よろしく﹂
うのはまずいので飲み込む。
ゴンの隣に居たのはもちろんキルアだけど、初対面なので名前を言
﹁ああ、ゴン。それに⋮⋮﹂
﹁やっとリナさん見つけたよ。先頭に居たんだね﹂
記憶が飛んだ様な感覚があるけど⋮⋮うん、一応あるわ。
どうやら、呼吸をするのと同じくらいどうでも良かったらしい。
﹁あれ、いつの間に⋮⋮﹂
の中間地点まで来ていた。
なんて考えながら隙を伺っていると、いつの間にか、地上への階段
?
そこから、ゴンたちと話していると出口が見え、階段を上り切った。
暗い所から明るい所に出た時の独特の眩しさから、目に入ってきた
のは、原作と変わりない風景。
﹁ヌメーレ湿原。通称、詐欺師の塒。二次試験会場へはここを通って
行かなければなりません﹂
色々と感慨深いけど、じめじめするし早く抜けたいわね。
それが私の一番の感想だった。
確かに、ここまで来たのね。これがあの⋮⋮とかはあるけど、一番
はそれ。
なんて考えていると、いつの間にかサトツさんの割と長々しい説明
が終わりを迎えていた。
﹂
﹁騙されることのないよう注意深く、しっかりと私の後をついて来て
そいつは嘘をついている
下さい﹂
﹁嘘だ
﹂
!!
だ。
﹁そいつは偽物だ
オレが本当の試験官だ
見るからに怪我人で、立ってはいるものの全身傷だらけ⋮⋮例の男
サトツさんの説明が終わると同時に、一人の男が乱入して来た。
!!
そろ出る頃はず。
ここはあくまでも私の世界。原作とはいえ、ずれてしまう事がそろ
世界観を借りたに過ぎないからつい考えてしまった。
まあ、そんな事は作者しか知らないだろうけど⋮⋮正直この世界は
かしら。
⋮⋮そう言えば、なんでコイツはこんな嘘をついてまで出てきたの
し後。
しかし、現実はそう甘くなく、ヒソカが二人に攻撃するのはもう少
たいから。
すれば早く死なないかしらと思うばかり。もちろん、早くここを抜け
そうサトツさんに指をさしながら言うが、真実を知っている者から
!!
どうかしたのリナさん
﹂
?
20
!!
﹁その時は楽しむだけだけど⋮⋮﹂
﹁ん
?
かなり小声で呟いてみたけど、このぐらいならゴンにも聞こえない
のね。
⋮⋮いや、正確にはなんて言ったかわからない程度だから、聞き取
れないだけで聞こえてはいるのね。
﹁ううん。なんでもないわ﹂ 少し確認しておきたかったので試してみたけど、やっぱり耳がいい
のね。
﹁それでは参りましょうか。二次試験会場へ﹂
そう言ってサトツさんがまた走り出す。
あの男については興味が無かったのでスルーしたけど、やっぱり少
しは見るべき⋮⋮まあいいわ。
そして走り出して少ししてから、かなり深い霧のゾーンに入った。
﹁ゴン、リナ。もっと前に行こう﹂
よ、呼び捨て⋮⋮そう言えば、キルアって誰に対してもこんな感じ
21
だったわね。
﹁うん、試験官を見失うといけないもんね﹂
﹁それよりも⋮⋮ね﹂
﹁ああ、ヒソカから離れた方がいい。あいつ、殺しをしたくてウズウズ
してるから﹂
一応はキルアに合わせてみたけども、ヒソカの殺気はそれ以前から
気になっていた。
なんて、凄まじい殺気なのかしらと思ったのと││
﹁霧に乗じてかなり殺るぜ﹂
早く戦ってみたいと思った。
流石にこちらから殺気を向けると、こんな不本意な所で戦闘になる
から向けないけど。それでも、早く戦ってみたいと思うのは、この世
界に対応した結果なんだろうなと思う。
けど、思うだけで絶対に実行はしないし、命の削り合いの意味で本
﹂
気で戦いたい訳じゃない。 ﹁ゴン
レオリオの悲鳴を聞き、ゴンがクラピカたちを助けに向かった。
!!
キルアは少し悩んだようだけど、走る事を決めたらしい。
私は元々知っているとはいえ、裏を知るのは中々に面白いわね。
正直、無謀だと思ったんだけど﹂
﹁大丈夫よ、ゴンなら﹂
﹁なんでわかんの
﹁勘かしら﹂
ちない。
そして、ブハラの腹の虫が鳴り響く中、二次試験が始まる12時を
した。
クラピカも到着したので、まだ大きな変更点はない事を確認して安心
その後、ヒソカがレオリオを背負って到着。それに続く形でゴンと
こうして、私とキルアは無事に二次試験場に到着。
しょう﹂
﹁ゴンが面白いのは同意。さて、このまま向こうでゴンたちを待ちま
﹁俺が知ってる中でもかなり面白いよ。まあゴンには劣るけどさ﹂
﹁そうかしら
﹂
いまさら変更なんて出来ない事は分かっているけど、どこか腑に落
識が無い方がいいかもしれないわね。
知ってると言えないのは中々辛いかもしれない⋮⋮いっそ、予備知
﹁勘ね⋮⋮リナも大概、面白い人だよね﹂
?
迎えたのであった。
22
?
2話﹃トレード﹄
﹁そんなわけで、二次試験は料理よ
﹁こんなものよね⋮⋮﹂
も、遥かに軽い攻撃だ。
﹂
﹂
衝撃を受ける事もなく私は右手で受け止めた。予想していたより
ルだ。
猛スピードでこちらに突進してくるが、私にはお話にならないレベ
その呟きが聞こえたのか、一匹が振り向いて私と目が合った。
﹁結構いるのね⋮⋮﹂
伐に成功しなかったみたいだった。
他の受験者たちがやられているので、どうやらこの場所では誰も討
と言うわけで、森に入ってグレイトスタンプたちを見つけた。
﹁⋮⋮この程度の遅れなら、どうにでもなるわね﹂
ちなみに、私は少し出遅れた。
ブハラのお題は、もちろん豚の丸焼きだ。
いった。
なんて考えていると、二次試験が開始しそれぞれが森の中に消えて
﹁それじゃ、二次試験スタート
なにより、メンチがこちらを睨んでいたし。
⋮⋮うん、気を付けよう。
反応してくれたけど、正直周りにいる出来る人間には気づかれたはず
どうやら無意識の内に危ない物を発していたらしい。ゴンだけが
﹁⋮⋮そ、そうかしら。気のせいよゴン﹂
ど﹂
﹁な、なんかリナさんから、一瞬ヒソカに似たオーラを感じたんだけ
﹁んー、良いわね⋮⋮触りたい﹂
そして、説明が進む中で私は違う所に注目を置いていた。
言になったりとそれぞれ驚いていた。
そのメンチの言葉に、会場にいる私を除く全員が声を上げたり、無
!!
突進してきた豚は、私のその言葉に恐れをなしたか、平然と受け止
23
!!
めた事に恐れをなしたのかはわからなかったが慌てて逃げ出そうと
する。
﹁でこぴん﹂
もちろん、逃がす事なく制裁。逃げるとは何事か。
﹁あ、でもそのまま持ってくのも気が引けるわね⋮⋮ううん、気にして
も無駄かしら﹂
私は枯草等を集め、火種を用意し手荷物からライターを取り出して
着火。火を大きくしていき、豚を放り込む。
﹂
しばらくして良い感じに豚が焼き上がったので、火を消して熱々の
ままブハラの元へ。
﹁これでいいのよね
どうやら一番乗りは私の様だ。
てっきり、最後だと⋮⋮あ、冷ましてないからね。結果オーライ。
﹁うん、美味しそうだよぉ﹂
﹂
﹁⋮⋮これ、全然冷めてないわね。ううん、むしろ焼き上がって直ぐの
状態。熱く無かったの
﹂
?
﹁とりあえず、合格かしら
﹂
なら無問題。ブハラも食べきったみたいだし。
﹁そりゃまあ⋮⋮﹂
﹁その方が、美味しいでしょ
?
味しいと言わせてみせるわ。
メンチは食べた事があるかもしれないけど、それでもいい。必ず美
いとの事。
川に絞って狙っても、一年に一回程度。なので、その分とても美味し
捕れない魚として有名らしい。捕れる頻度は、毎日この公園の一つの
ちなみに、コウカクルイとは甲殻類では無くて、この辺りで滅多に
﹁狙うのはコウカクルイね﹂
そんな訳で川に到着。
もう知っているし。
それなら次の為に魚を捕りに行こう。お題の説明は受けなくても、
﹁えぇ、二次試験第一部合格よ。次のお題まで待っててね﹂
?
24
?
﹁でも本当に便利ね⋮⋮この美食マップ、ビスカ森林公園編﹂
さっきの豚の一番近い出現場所もこれに書いてあったし。コウカ
クルイの事も書いてあった。定価1200円でザバン市のホテルに
て購入した。
恐らくだけど、ハンター試験の伏線として用意してあったヒント。
誰も気づいて無いと思うけど。
絶
を解く。
﹁で、一年に一回の魚ね⋮⋮時間はあまりないから、さっさと探しま
しょうか﹂
私は一度深呼吸をし
いで、腕時計を外す。
﹂
脱ぐと決まれば話は早いので、着ていた白のミニ丈ワンピースを脱
﹁⋮⋮よし、脱ごう﹂
大丈夫。
は流石に間に合わないけど⋮⋮多分、今は説明を受けてるだろうし、
ヒソカとか、イルミとかが走りながら近づいてきたら、着替えるの
誰か近づいてきても気づくし。
そうよ、誰も見てないし脱げば濡れないわ。円で警戒していれば、
ので動きを止めた。
溜息一つ付いて、飛び込もうとする⋮⋮が、いい方法を思いついた
﹁潜るしかないのね⋮⋮服濡れるの嫌だけど﹂
る、とても小さな魚を川の奥底で発見した。大体200mは下。
そして、円を使いながら川を回ること数分。コウカクルイと思われ
﹁っと、見つけた。川の中なんてだるいわね﹂
う。
実際には王様の、あの円が使いたかったんだけど人間じゃ無理そ
ど⋮⋮流石に王様には負ける。
私の円の半径は、全力で約700m。幼い頃からの訓練のお陰だけ
す。
魚の形は本で知っているので、それに似た形の生物を円を使い探
﹁それじゃ、行くわよ⋮⋮円
!! "
機能性がほぼゼロなこんな恰好をしているのは、母の趣味。こう
25
"
いった服しか買ってもらえなかった。確かに、カジュアル、動きやす
い服装もない事もないんだけど、持ってきていない。
それに、機能性はゼロでもハンデにも満たない程度だから問題な
い。
なんて考えながら、下着姿になり、思考停止。
⋮⋮これも、脱ぐのかしら。
自分に質問だった。
確かに、下着⋮⋮ちなみに黒よ。その下着を脱げば濡らさずに済む
し捨てなくていい。ただ、そうなると全裸で外の空間を数秒間を過ご
す事になる。これは私にとって問題じゃないかしら。
見られる事もないだろうし、仮に見られてもそいつを抹消すれば済
む話。下着もトップブランドの下着なので、上下で数十万はしたので
捨てるのも忍びない。
⋮⋮うん、脱ぐか。
26
最終結論も出たので、ぱぱっと脱いで川にダイブ。あっという間に
200mに到達し、コウカクルイを発見。すぐさま捕獲、浮上。
川にしてはかなり綺麗な水だったようで、全然ぬめぬめしなかっ
た。むしろ、つやつやなっていた。
少し得したわね⋮⋮って、それよりもさっさと着替えましょう。こ
のままだと完全に変態よ。
鞄からタオルを取り出して、身体を素早く拭く。拭き終わったら、
タオルはいらないのでその場に捨て、下着を装着しワンピースを着
る。
そういえば、始めて下着を付けた時は苦労したわね⋮⋮精神的な意
味で。あの頃は男の自我の方が強かったし。
なんて考えていたら、その辺に転がしていたコウカクルイが逃げよ
うとしていたので再度捕獲。それを片手に持ったままトランクキャ
リーバックを閉じて試験会場に戻った。
﹁あれ、あんた説明受けてないのに⋮⋮﹂
﹂
﹁ま あ、そ れ ぐ ら い 予 想 で き て 一 流 の ハ ン タ ー に な る 資 格 が あ る ん
じゃない
?
なんて言ってみても、ただの卑怯な手なんだけど。
﹁なるほど。それにその魚は⋮⋮確かコウカクルイね﹂
流石に知っていたよう。ただ、その反応を見る限り食べた事はない
模様。これはラッキーね。
﹁それじゃ、早速作ってあげるわ﹂
ちなみに現在、試験会場に人は誰一人としていない。円を使い、み
んながいなくなるタイミング。要するに、魚を捕りに向かった所を確
認し戻って来たから。
そして私はキッチンに立ち、魚を慣れた手つきで捌く。この分量だ
と、6カンが精一杯かしら。私が食べる分も含めると⋮⋮メンチと半
分ね。
とりあえず、握ってしまおう。今日のこの日の為に、寿司屋に弟子
入りした三日間。やっと役に立つんだから。
⋮⋮そう言えば、大将元気だろうか。跡を継いでくれって言われて
﹂
27
断ったけど、かなりショック受けてたしなぁ。
﹁と、集中ね⋮⋮ふっ
﹁うん。この握り寿司は今まで食べた中で一番だわ。よく捕って来た
葉が出ないのね﹂
﹁本当に美味しい物には、飾った感想なんて不要で美味しい以外の言
い。
私も味が気になったので食べてみる⋮⋮なるほど、これは美味し
しまった。そのまま二カン目を食べてたし。
どうやら、よほど美味しかったらしい。感想を聞く前に合格と出て
﹁どうも﹂
﹁⋮⋮合格ね﹂
ンチが目を開いた。
握った寿司を口に入れ、目を閉じながら味わって食べる事数秒。メ
﹁いきなりまともな寿司が出て来たわね⋮⋮じゃ、早速﹂
﹁はい、どうぞ﹂
何とかなった。完成度は80%は越えているかしら。
私は、素早く正確な手つきで6カンを握りきる。久々だったけど、
!!
わね﹂
﹁まあ、運が良かったのよ﹂
円で探しても、あの一匹しかいなかったし、実際、運が良かったの
は確か。
そこを踏まえると、何故一匹だけしかいなかったのかを考えるのも
面白そうだけど⋮⋮まあ、もう二度と必要にはならないわね。
﹁一年に一回会えればいいって話だから、私も探すに探せなかったの
よね⋮⋮今回の試験も、そこの部分に期待してたし﹂
だから美食マップなんてあったのね。
﹁なるほど、それは良かったわ⋮⋮ああ、後それと私が合格ってのは内
緒で﹂
﹂
﹁どうして⋮⋮いや、特に言う必要もないし試験に集中するから気に
しなくてもいいけど﹂
これで面倒な事が一つ減るわね⋮⋮それじゃ、早速。
﹁一つ、メンチにお願いがあるのだけれど、いいかしら
﹁ん、どうしたの﹂
﹂
﹁もし、この試験で私以外に合格者がいなければ、私も不合格にしてほ
しいの﹂
﹁⋮⋮それはまたどうして
ここは慎重に││
﹁その代わり、メンチの胸を揉ませて欲しいから﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
あ、間違えた。
﹂
思わず口に出てしまい、ブハラを含めこの場に静寂が訪れた。
﹁えと、その⋮⋮本気よ。抵抗するならそのまま揉みしだく
﹁あんたさっきまでそんなキャラじゃなかっ⋮⋮さっきの殺気に似た
あるし。
とりあえず、更に押しておきましょう。言い直しても、手遅れ感が
!!
28
?
ただし、そのまま伝えると警戒度が増してしまう恐れがあるので、
当然なメンチの疑問。その答えは至って単純だ。
?
のはそれね﹂
﹁て、てへぺろ﹂
﹁⋮⋮﹂
そしてまた、静寂になった。どうしよう、どうやってこの場を乗り
越えよう。
⋮⋮でも、後悔はしてないわ、うん。
﹁はあ⋮⋮世の中には色々な変人がいるのは知ってるけど⋮⋮分かっ
﹂
﹂
たわ、もし他に誰も合格者が居なければ好きなだけ胸を触るといい
わ﹂
﹁よっしゃぁぁぁぁぁ
﹂
それを触れるのよ
思わず、軽く飛び上がってしまった。5mは飛んだ。
﹁いや、喜びすぎよ
﹁当然じゃない。可愛い子の胸よ
といいわ﹄
﹁大丈夫。ボイスレコーダーで録音済みだから
﹂
﹃分かったわ、もし他に誰も合格者が居なければ好きなだけ胸を触る
カチッ││と、腕時計のあるボタンを押す。
﹁そ、そう⋮⋮でも、あたしが嘘を言った可能性││﹂
⋮⋮ないと信じるわ。
これで目標の一つを達成出来るわね⋮⋮ふふふ、もし合格者が出
!!
!!
触れる事はほぼ確信したので、とりあえず使った包丁等の片づけを
﹁失礼したわ⋮⋮じゃ、そう言う事で試験終わったらよろしく﹂
トランクから拭くものを取り出して、鼻血拭き取る。
も⋮⋮いや可愛いかも知れないけど、どちらかと言えばアウトね。
薄々、気づいてはいたけど興奮し過ぎね。絵面的に美しくも可愛く
﹁そんな鼻血出して言われても⋮⋮﹂
﹁褒め言葉ね﹂
﹁⋮⋮恐ろしいわね。その執念﹂
ダー付き腕時計を買っておいて正解だったわ。
いつかこういう時が来ると信じて、かなり性能の良いボイスレコー
証拠が無くなってしまうと困るので、ばっちり録音はしておいた。
!!
29
!!
!?
する事にした。もうそろそろ、他の人が帰って来る事だろうし。
あ、どうせならゴンたちが捕ってくる魚貰って、新しいのでも握ろ
うかな⋮⋮なんて考えながらも、片付けを済ませていく。
そして、片付けが終わり大人数の足音が聞こえて来た。どうやら、
ゴンたちもいるようね。
﹁あ、キルアだけ場所が離れてるのね﹂
そっか、番号順よね。
﹁うん。で、リナさんはさっき││﹂
﹁居なかったけど大丈夫。さっき聞いたから⋮⋮それに、魚はみんな
捕ってくると思ったから、少し貰おうかなって﹂
﹁あ、それなら俺のをあげるよ⋮⋮気持ち悪いのしかないんだけど﹂
﹁それでいいわ。ありがとう﹂
と、そこから試行錯誤してる素振りを見せつつ、試験終了までの時
間を適当に潰した。
もちろん、第二次試験の合格者は誰も出なかった。いや、私を除い
てだけど。
私はこれで目標達成したので、とりあえずゴンの傍でしかるべき時
まで待機する。
﹁ど、どうなるんだろう⋮⋮﹂
﹁大丈夫よ、きっと﹂
そこでメンチの電話が終了し、改めて合格者が誰も居ない事を伝え
てきた。
その結果に落胆する者が多いのは当然なので、とりあえずそれに合
わせるが⋮⋮内心では笑いが止まらない。
今すぐにでもメンチの元へと駆けたいが、何とか抑える。楽しみは
ハンター試験終了まで取って置く、もとい焦らす予定だし。
と、そのタイミングで誰か忘れたが、太ってる男がキッチンを壊し
た。そこそこの怪力ね。
﹁納得いかねぇな。とても、はいそうですかと帰る気にはならねぇ﹂
その言葉に、何人かが頷いている。当然よね。
ただ、仮に今回で通ってたとして⋮⋮次の試験をクリアできるとも
30
思わないけど。
﹁また来年がんばればー
よし、このタイミング
﹂
﹁こ⋮⋮ふざけんじゃねぇぇぇ
﹂
この場面は、何となくメンチに格好良い所を見せたかったのよね
⋮⋮って、今は女だった。格好良い所を見せても、メンチにその気が
なきゃ意味ないじゃない。
﹂
しかし、動いてしまったものはしょうがないわね。殴り飛ばそう。
﹁私の獲物に手を出すなぁぁぁ
んだけど。
﹁す、凄いやリナさん
今の早くて全然見えなかった﹂
え、なに。なんでこんなセリフが浮かんだし。恐ろしいほどダサい
﹁女に手を上げる者は、例え神でも私が許さないわ﹂
でも、やってしまったら仕方がないわ。この場を沈めましょう。
に男を殴り飛ばしたのだから。
当然よね⋮⋮部外者がいきなり乱入。意味が分からない言葉と共
それと、今の私に行動に、私以外の全員が驚いていた。
加減はしたので、死んではいないはず。
男はそのまま原作と同じ通りに窓を突き破って外に飛び出た。手
自然と、口は動いてくれた。
面に炸裂させた。
の男が動き始めたと同時に目の前に駆けて、渾身の右ストレートを顔
メンチが構えるよりも、ブハラが動き始めるよりも早く。いや、そ
!!
確かに全力では無かったといえ、かなりの速度出したし見えなくて
もしょうがないわね。でもこれが今のゴンのレベルだとすると、見え
ていたのは数人かしら。
﹁余計な事をしたのは確かだけど、助かったわ⋮⋮あたしが殺らずに
済んだって意味でね﹂
そっちの方が美味しかったかしら
!!
31
!!
!! ?
﹁あ、あらそう。ありがとう﹂
!!
それなら、良かったわ。これでもし嫌われたら、嫌がるメンチを無
理やり⋮⋮はっ
!!
﹁今のがなけりゃ、今頃あいつは死んでいたわよ。美食ハンターだけ
ど、武芸なんて嫌でも身に付くのよ。これでもあんたちよりも先輩
﹄
よ。ハンターについては、あんたたちよりも一日の長があるのよ﹂
﹂
﹃それにしても、合格者ゼロはちと厳しすぎやせんか
﹁
のお出ましね。
◆ ◆ ◆
﹁そりゃぁぁぁぁ
﹂
上を見上げるとそこには、ハンター協会の飛行船。どうやら、会長
そう、館の外。その上空から聞こえてた声に、揃って皆が外に出た。
?
﹁どうしたのよ
﹂
﹁⋮⋮合格者出るじゃない﹂
に気が付いた。
私もゆで卵が欲しいので追いかけようとするが、そこでふとある事
に到着していた様だ。
と、気が付けばゴンたちが谷に消えていた。どうやら、マフタツ山
!!
かけられた。
﹁このままだと、合格者が出るのよ
!!
!!
るしかない。
﹁だから、このままだと⋮⋮メンチの胸が触れないのよ
﹁⋮⋮あ、そう言えばそうね﹂
﹁ほほう。何の話じゃ﹂
その少し不思議な会話に、会長が参加して来た。
羨ま⋮⋮ゴホン。けしか⋮⋮ゴホン﹂
﹁え⋮⋮えーと。実は、かくかくしかじかでして﹂
﹁なんと
﹂
メンチは、この重要さに気づいていないようだった。なら私が伝え
﹁え、いやそりゃそうでしょ⋮⋮﹂
﹂
あと一歩で飛び降りれるが、そこで立ち止まった事でメンチに声を
?
してこの会長。中々に助平だったわね、うん。私と通ずる気配を感
!!
32
!!
じる。
﹁まあ⋮⋮しょうがないし、次の機会を狙う事にするわ⋮⋮卵は取ら
なくても合格になるし⋮⋮ぐす﹂
﹂
上を向いて歩こう。涙がこぼれない様に。
﹁いやいや、泣くほどの事じゃないでしょ
特別に
触らせてあげるわよ﹂
﹁⋮⋮嘘言ってたら、一生拘束して玩具にするけどいい
嘘よ﹂
主に、嘘よの部分がとは付け足さない。
﹁安心して。おおよそ冗談だから﹂
﹁⋮⋮一瞬、本当にされそうでどうしようかと考えたわ﹂
危ない危ない。また思わずポロリと出てしまったわ。
あ、ごめん
﹁⋮⋮はあ、分かったわよ。美味しい寿司も食べさせてくれた事だし、
メンチで例えるとそれぐらい悲しい。
れた感じよ﹂
﹁例えるなら、食べた事のない珍味を目の前にして、別の人間に食べら
!?
﹂
こうして、メンチとのイベントを獲得した私は大いに満足したので
あった。
◆ ◆ ◆
﹂
﹁ねぇ、今年は何人くらい残るかな
﹁合格者って事
?
ツブ揃いだと思うのよね﹂
﹁でも、それはこれからの試験内容次第じゃない
﹂
﹂
﹁そりゃま、そーだけどさー。試験してて気づかなかった
いオーラ出してた奴いたじゃない。サトツさんどぉ
?
?
﹁ふむ、そうですね⋮⋮新人がいいですね、今年は﹂
?
結構良
﹁そ。一度全員落としといてこう言うのもなんだけどさ。なかなかの
いた。
時は進み、夜。飛行船の中では試験管の三人がディナーを楽しんで
?
33
?
!!
﹁あ、やっぱりー
けど﹂
一緒に住めないわ
あたしは294番がいいと思うのよねー、ハゲだ
﹁私は断然99番ですな。彼はいい﹂
﹂
﹁あいつきっと我儘で生意気よ。絶対B型
ブラハは
!!
そりゃあたしだってびび
?
﹂
﹁能力は未知数と言っても、多分体術だけでも恐ろしく強いわね﹂
しょうな﹂
﹁し か し、戦 闘 力 の 面 で 見 れ ば 確 実 に 並 の ハ ン タ ー で は 敵 わ な い で
るわよ⋮⋮従わないと、今頃五体満足じゃ済まない気がしたし﹂
﹁だって、今までにいなかったタイプよ
﹁メンチをここまでびびらせるのも珍しいよね﹂
のだわ﹂
﹁ある意味で、あたしにとっては危険人物⋮⋮っていうか、危険そのも
アレとはもちろん、変態と言う意味合いが籠っていた。
﹁そう思うのはメンチだけだと思うよ⋮⋮まあ、確かにアレだけどさ﹂
よ﹂
﹁う ぐ ⋮⋮ サ ト ツ さ ん。分 か っ て て 触 れ る の は ち ょ っ と ヒ ド イ で す
味、私もですが﹂
﹁で、メンチさんが一番気になっているのは400番ですね。ある意
触れた。
サトツが、ヒソカについて意見したそのまま勢いで、リナの話題に
のだろう。
誰も触れようと思ってない。しかし、触れないでおくのも嫌だった
の特異な存在がリナだった。
ハンゾー、キルア、ヒソカと番号が挙がれども、それでもやはりあ
それはもちろん400番。リナの番号だ。
た。
試験官三人。ここまで言っておいて、あえてスルーした番号があっ
かな﹂
﹁そうだね⋮⋮新人じゃないけど気になったのが、やっぱ44番⋮⋮
!!
!?
﹁あの時のスピードから
?
34
?
﹁うん。いくらあの男から殺気が出てて、こちらに来るって分かって
ても、あの速度は出せない。恐らく44番ぐらいじゃないかしら﹂
﹁躊躇わずに殴った所とか見ると、ある意味では44番より危険だよ
ね﹂
﹁理由が恐ろしくくだらないのもね⋮⋮﹂
﹂
﹁彼女は彼女なりの信念があるという事ですよ。おめでとうございま
す、メンチさん﹂
﹁やめてくださいよ
こうして、試験管たちの夜のディナーは過ぎていった。
35
!?
3話﹃トリックタワー前篇﹄ ﹂
飛行船での夜。時計を見ると4時20分を指していた。
﹁あ、やっぱりゴンはいい顔して寝るのね﹂
﹂
﹁400番のリナちゃんじゃったな。ワシに何か用かの
私は、会長の元へと足を運んでいた。
﹂
﹁ボールを奪ったらハンター資格を貰えるのよね
﹁おや、聞いていたのじゃな﹂
﹁ええ。それで、貰えるのかしら
?
﹁うむ﹂
事にするわ。おやすみなさい﹂
﹁それもそうよね。大丈夫、一応だから。それじゃ、三次試験まで寝る
題ない実力がある。ただ、そのままあげるとそれはそれで問題じゃ﹂
正直このハンター試験をするまでもなく、ハンター資格を貰っても問
﹁何事も形式じゃからの⋮⋮リナちゃんを含め、44番や他の数人は
予想通りだったわね。
﹁あ、やっぱり﹂
﹁うむ、駄目じゃな﹂
だからとりあえず訊いただけで、あんまり意味はないのよね。
くれれば儲けもの。次に暇だったから。
まあ、それでも私が訊きに来たのには二つ理由がある。もし受けて
同条件で、ヒソカ等にも声はかからない。
それが私になると、難しい。暇つぶしのレベルにはならないから。
たはず。
た。いや、あったにはあっただろうけど、負ける事は無いと考えてい
会長には勝てる自信。つまり、はなから合格させるつもりは無かっ
ボール取りゲームは、ゴンとキルアだったから。
﹁うーむ、そうじゃの⋮⋮﹂
ないはず。ゲームを受けてくれるとも思わない。
そう質問はしてみるけど、ここでボールを奪ったとしてもまず貰え
?
私は手をひらひらと振りながら、部屋を後にし、適当なベンチに
36
?
座って寝る事にした。
◆ ◆ ◆ ﹃皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です﹄
時刻は9時30分、丁度。
かなりの音量で機内にそう放送が流れ、私を含め皆が窓の外を見
た。
窓から見えるのは、雲に届く長い塔。あれが、トリックタワー⋮⋮。
﹂
そして、飛行船が頂上に到達しそれぞれが外に降り立つ。
﹁何もねーし、誰もいねーな﹂
﹁一体、ここで何をさせる気だ
﹂
受験者がそれぞれ疑問をぶつけたり、何をするかを思考している様
子だった。
﹁でも、とりあえず何かあるんだよね
ろうし。
﹁えー、それでは只今より説明を行います﹂
そ し て、会 長 の 隣 に 居 た ⋮⋮ 名 前 な ん だ っ た か し ら
ね。その男が説明を始めた。
忘 れ た わ
何が始まるか知らなかったら、私もここまで落ち着いてられないだ
普通だと、クラピカの考えになるわね。
方がいいかも知れない﹂
﹁そうだな。いきなり戦闘になる可能性もあるから、警戒は怠らない
?
ただ、説明はそれだけだった。
その言葉に、受験者たちがまた騒がしくなる。
です⋮⋮生きて、下まで降りて来ること。制限時間は72時間
頑張って下さいね﹄
﹂
験のスタート地点になります。さて、試験内容ですが、試験管の伝言
﹁ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試
?
!!
37
?
男はそのまま飛行船に消え、飛行船は空へと飛び立った。
﹃それではスタート
三次試験が、スタートした。
!!
﹁さて、何か方法を探しましょうか﹂
知ってるとは言っても、流石にどこに扉があるかは知らない。ゴン
﹂
とキルアが見つけるまで待たないといけないし、適当に時間を過ごさ
ないと。
﹁うむ。リナさんはどう考える
﹁そうね⋮⋮﹂
﹂
レオリオって根本的に馬鹿だけど、こういう事は少し賢いのね。
こから通られると簡単になっちまうからか﹂
﹁何で⋮⋮あ、そうか。同じルートにさせないのと、偶然見たとしてそ
同じ隠し扉は使えないはず﹂
﹁このまま観察を続けて、人が消えるのを待ってもいいが⋮⋮恐らく、
作より数が多い。元だと、確か半分くらいって言ってたはずだし。
人数を数えると、38人。少しタイミングを早めて教えたので、原
﹁私も同じ考えよ。それに、人数が減っているわ﹂
﹁きっとどこかに⋮⋮下に通じる扉があるはずだ﹂
﹁外壁をつたうのは無理みてーだな。怪鳥に狙いうち⋮⋮﹂
男がそれに気が付いた時には、もう手遅れだった。
標は当然、外壁を使って下に向かったガタイのいい男のはず。
大きめの何かが、こちらに向かって飛んできていた。数は5体。目
先を見た。
少し大きめなゴンとキルアの会話が聞こえ、ゴンが指で示している
﹁ん
﹁もう、あんなに降りてる⋮⋮あ﹂
﹁うわ、すげー﹂
そして、考えるフリをしながら時間が経つのを待つ。
いる。
現在、ゴンとキルアとは少し離れて、クラピカとレオリオの近くに
?
リナさん
﹂
﹁ああ。だから、きっといくつも隠し扉があるはず⋮⋮そうなると、一
クラピカ
!!
人一人別の││﹂
﹁レオリオ
!!
そのタイミングで名前を呼ばれ、ゴンに近づく。
!!
38
?
何を迷う事なんかあるってんだ
﹂
﹁そこで、隠し扉を見つけたよ。でも、今迷ってるんだ﹂
﹁は
けど⋮⋮行くわよね
﹂
﹁そうなると、この5人でちょうどね。中には罠があるかも知れない
良かった、見つけてくれて。
ゴンがそれぞれの扉の位置を教えてくれる。
こっちにも3つ﹂
﹁ど れ に し よ う か と 思 っ て。扉 が い っ ぱ い で ⋮⋮ こ こ と、こ こ。後
だって考えちゃうんだろうし⋮⋮。
扉が複数あれば、そりゃ迷うわね。近くに密集してるって事は、罠
?
気にさせる。
﹁俺はもちろん
﹁俺も行くよ﹂
﹂
微笑みながら、4人に問いかける。少し挑発の意味を込めて、やる
?
も私って、じゃんけん弱くない
ゴンが裏技を使っていなかったんだ⋮⋮とか思ったけど、それより
勝者は順に、キルア、クラピカ、ゴン、レオリオ、私だった。
ゴンのその言葉で、ジャンケンが始まる。
﹁それじゃ、恨みっこなしのジャンケンにしようよ﹂
いいわ、ここからが私のストーリーよ。
きそうだけど、もう後には引けないし。
トンパの代わりに私が入るから⋮⋮そろそろ何かしらの影響が起
これで、5人で挑戦できるのが決まったわね。
﹁俺も同じだ。運も実力のうちってな﹂
﹁愚問だな。どうせ通らなきゃいけないのなら、行くに決まっている﹂
!!
﹁ああ﹂
﹁地上で、また会おうぜ﹂
キルアの言葉に、私も含めて全員頷く。
﹁1・2の3で全員行こうぜ。ここで一旦お別れだ﹂
そして、それぞれの扉につく。
一戦目から、皆パーで私だけグーで負けたし。
?
39
?
﹁死なないでよ
﹁1﹂
﹄
﹁2の﹂
﹃3
﹂
?
﹂
﹂
?
は右を押して集計を待つ。
普通は左だろ
?
開いたのは、右の檻だった。
﹁なんで右なんだよ
﹂
部屋から出ると、また直ぐにボードがあった。右か左の多数決。私
﹁まっ、当然丸になるわな。サクサク行こうぜ﹂
とどれぐらいスムーズに行くのかしら。
原作だと、ここでトンパが邪魔してグダグダ進むのだけど⋮⋮私だ
﹁もうここから多数決か。こんなもん答えは決まってんのにな﹂
扉には、このドアを開けるかが書いてある。
それぞれがタイマーをはめる。すると、壁から扉が現れた。
﹁なるほど、だから5人。5つの扉が密集していた訳だ﹂
のタイマーが用意されている。
指で示したのは、ボードとその直ぐ下にある台。その上には、5つ
﹁多分、あれじゃない
﹁この部屋⋮⋮出口がない⋮⋮﹂
普通は低い確率のはずだろうし。
レオリオがそう思うのも無理ない。可能性としてはあり得るけど、
てやがったのかよ﹂
﹁くそぉぉぉ。5つの扉の何処を選んでも同じ部屋に降りる様になっ
﹁ま、短い別れだったわね﹂
﹁⋮⋮﹂
そして、レオリオだけが無様に頭で着地していた。
﹁てっ
ガコンと扉が回り、すとっと身体が落ちていく。
!!
でも、ここでうんちくが始まってイライラを増やすのもアレね。
いている様に見える。
トンパでのイライラがないからか、少し抑え気味だけど少しイラつ
!!
40
!!
﹁ごめんなさい。間違って右にしてしまったわ。左を押そうと思った
のだけど⋮⋮﹂
少し落ち込むフリをする。
﹂
﹁あ、いやいいんだ。こんなの、この5人ならどっちだっていいしな
わははははは
!!
﹂
﹁よかろう。こちらの一番手は俺だ
さぁ、そちらも選ばれよ﹂
そこからそのハゲの少し長い説明が入り、無駄な多数決が終わる。
傷だらけのハゲだ。
奥の足場でフードを被った一人の人間が、フードを取った。そう、
﹁見ろよ﹂
クッと勝利ね。
今からくだらない5試合が始まる訳だけど⋮⋮トンパいないしサ
ルド。更に奥に次の試練へと進む足場が見える。
足場が目先で無くなっており、その先に見えるのは正方形のフィー
角を曲がり進んだ先に見えたのは、あの空間。
﹁む
と気のせいじゃない。
レオリオを除く他の3人が、小声でレオリオの事を呟いたのはきっ
いと。じゃないと楽しめないし。
よし、誘導完了ね。めんどくさいグダグダは、出来るだけ撤去しな
!!
現状、普通に理解出来るのは相手が体格が良くて好戦的な目をして
からの予想付けが上手く行くだけで、この初戦は情報が皆無。
2人の考えも最もだ。トンパがある意味いい仕事をしたから、ここ
﹁まあ、それもそうだよな⋮⋮﹂
しいと私は考えるのだが﹂
﹁そうは言っても、勝負の内容が分からなければ確実に勝つことは難
﹁3勝すりゃ勝ちだから、出来るだけ早く終わらせたいよな﹂
被っているあの子、レルートだ。
そこの枠に私がいる訳だけど、残念ながら私の目的はまだフードを
出るのよね。
本当なら、ここでトンパが戦って⋮⋮ん、戦ってないけどトンパが
!!
41
!!
いる事。
キルアは相手が元軍人か傭兵だと気づいているはずだけど⋮⋮今、
この段階だとほぼ確信ぐらいのはず。刑期短縮を餌に動いてると分
かって、そこで確信を得るはず。
私も、ちょっと色々な修羅場を潜って⋮⋮まあ、事前情報が一番大
きいのだけれど一応は軍人系だと気づける。
⋮⋮とりあえず、皆を誘導しましょうか。
﹁うーん、あの人は多分だけど元軍人か傭兵だから、かなり腕に自信が
ありそうね。対決方法もデスマッチとかになるんじゃないかしら﹂
﹁あ、リナも気づいてたんだ。俺もその意見に賛成かな﹂
どれだけ強いか分からな
これで場の空気は誘導成功。ここから誰が行くかを決めるんだけ
ど⋮⋮そこが問題ね。
﹁でもさ、そうなると誰が行けばいいの
いよね﹂
﹁そうね⋮⋮﹂
そう、これが問題。
クラピカ、キルア、私は負ける事はないだろうけど、レオリオとゴ
ンは怪しい所。2人とも今の段階は決して戦闘に長けている訳じゃ
ない。
勝てない、とは言わないけど、勝てるとも言いづらい。
なら、勝てる3人の内誰かから行くべきなんだけど、ここで新たな
問題が出る。
ろうそくの男だけどゴンに任せる。2勝。そして次の相手は詐欺
師の男。間違いなく、誰でもいいから戦えば勝利する。これで3勝。
すると結果として、4戦目が行われなくなる。
4戦目の条件としては、誰かが一度だけ負ける必要がある訳だけど
⋮⋮どうしたものかしら。
やっぱり、少し情けないけど私が行って、わざと負けるのが一番
手っ取り早い。けど、そうなるとレルートと戦う権利が無くなる。
そしたら、必然的にレオリオがレルートと戦って、美味しい思いが
出来る訳だけど⋮⋮許さん。そんな羨ましい事は絶対に許さないわ。
42
?
﹁⋮⋮さん。リナさん﹂
だからと言って初戦にレオリオを行かせて、時間が来るまで拷問と
かになってゲームオーバーになるのも駄目。負けると決まってはな
﹂
いけど⋮⋮って、このままじゃ無限ループよね。
﹂
ど、どうしたの、ゴン
﹁リナさん
﹁ふぇ
﹁で、私でいいのね
﹂
少し急ぎ気味でレルートの元に向かう。
私の考えていた事が全て無駄になったけど、結果オーライね。
﹁ありがとう、理解したわ﹂
そう、それでいいのよクラピカ。物凄く分かりやすいわ。
る。って事になるだろうか﹂
﹁えーと、簡単に説明すると⋮⋮2勝1敗で、リナさんが呼ばれてい
⋮⋮⋮⋮うん、意味は分かったけど長い。
ので、それを直接確かめる為にリナさんが呼ばれている﹂
手の男か女を当てる段階でレオリオが男を選択。相手は女だと言う
で、今が四戦目。対戦相手とレオリオの賭けバトルなのだが、その相
作 戦 自 体 は 良 か っ た が 勢 い 余 っ て 自 滅。三 戦 目 は 私 が 戦 っ て 勝 利。
圧勝。倒れているのは、その男の死体だ。そして、次にゴンが戦って、
いて、こちらの話が聞こえてなかった為に、一戦目はキルアが戦って
﹁私が簡単に説明しよう。リナさんはずっとぶつぶつと何かを呟いて
⋮⋮あれ、つまりどういう事かしら。
よく見ると、フィールドのモニターには80と20の数字。
ており、レオリオとレルートが立っている。
まず、全員がこちらを見ていた。そして、フィールドには男が倒れ
どういう意味か理解出来ず、思わず周りを見渡した。
かめて貰うのが一番だからって﹂
﹁対戦相手の人が、リナさんを呼んでるんだよ。女がいるなら、女に確
まった。
いきなり耳元で大声で名前を呼ばれて、思わず生返事になってし
?
!!
﹁当然よ。その為にわざわざ気が済むまで調べていいなんて伝えたの
?
43
?
よ。思考力を鈍らせて、誘導して最終的に女に確かめて貰えれば、あ
たしの損はなくなるってわけ﹂
ふふふ、本当に損じゃ無ければいいけどね⋮⋮ふふふ、ふふふ。
むしろ良くやったわ
これで、これで思う
﹁ご め ん リ ナ ち ゃ ん ⋮⋮ 俺 が 揺 ら い だ ば か り に、負 け そ う に な っ ち
まってる﹂
﹂
﹁いいのよレオリオ
存分楽しめるわ
﹁お、おう﹂
!!
あ れ、な ん か 引 か れ て る い や い や、こ ん な 美 少 女 に 微 笑 ん で
!!
﹁さてと⋮⋮本当に確かめていいのね
﹂
貰って引く男がどこにいるんだって話よね。
?
﹂
?
◆ ◆ ◆
﹂
女同士なんだし、直ぐ││﹂
そして私は、話の途中のレルートを無言でテントに引きずった。
﹁いや、軽く確かめるだけでいい、のよ
秒で完成させ、中の空間に布団を準備。
バックの中から、防音完備、高性能テント組立セットを取り出し数
邪魔にならない様に、角に向かう。
﹁大丈夫。大丈夫⋮⋮そう、大丈夫よ。私に任せなさい﹂
﹁な、何をする気
り、フィールドに戻る。
私はどうやって堕とそうか考えながら、キャリーバックを取りに戻
を更に高める。
そして、レルートのその何とも言えない不安な顔が私のテンション
﹁そ、そう﹂
即答するのは、上がっているテンションのせいで難しかった。
﹁⋮⋮⋮⋮気のせいよ﹂
が伝わってくるのは、き、気のせいかしら
﹁え、えぇ⋮⋮いいけど。あなたから、とても不気味なオーラ的なもの
?
?
44
!!
?
リナとレルートがテントに消え、この空間に残された男たちは2人
が出て来るのをそっと見守っていた。
﹁中で、一体何が行われているんだろうか﹂
﹂
クラピカが、そっと呟いた。
﹁クラピカ、興味あんの
﹁何と言うかだな、あのリナさんの顔が頭から離れ無くてな⋮⋮﹂
﹂
テントを見ながら、どこか遠い所を見るような目でそう言った。
﹁それは俺も一緒だけど⋮⋮ゴンは興味あるか
﹁リナだからかな⋮⋮レオリオ
ちょっと覗いてみろよ﹂
事が行われているかはみんな理解出来でいた。
正確には、何が行われているかは誰も知らない。ただ、どの系統の
だけだった。
あの中で、何が行われているか理解できていないのは、恐らくゴン
ろうね。リナさん﹂
﹁ううん、ないかな。というか、何であんなに楽しそうな顔してたんだ
?
だな⋮⋮﹂
﹁声とか聞こえねーの
﹂
﹁そう思ったんだけどな。入り口に、覗くな危険って張り紙があって
!!
﹁だってよ﹂
クラピカに向かって、キルアは言った。
﹁いや、別に中での事が気になる訳では⋮⋮完全は否定はしないが、世
の中には知らない方がいい事もあると強く思ったよ﹂
﹁それには、俺も同感だけどさ﹂
そこから、二時間以上経って、リナがテントから出て来た。
◆ ◆ ◆
﹁楽しかった。本当に楽しかった⋮⋮久し振りだったから、年甲斐も
無くはしゃいじゃったし、やっぱり生の女の子はいいわ⋮⋮メンチも
残ってるし、いつ味わおうかしら﹂
45
?
﹁恐ろしい事に、全く。組立テントのくせに、防音機能あるみたいだ﹂
?
どうやら、男だった頃の溢れんばかりのリビドーは無くなってはい
なかった。むしろ、女になった事により露骨じゃなくて、内に秘めて
ある分だけ爆発力が大きい。
なんて、冷静に自分を分析出来る程には成長してるわね。昔の出来
事も、思い返せば容赦はなかったわね。手当たり次第じゃないだけま
しかしら。
﹂
あ、でもメンチは胸を触るだけなのよね⋮⋮まあ、その気にさせれ
ばいいかしら。
﹁お、おかえり。で、でだな⋮⋮女だったのか
試験官﹂
原理は覚えているし、負けるとも思わないけど⋮⋮所詮は運の問
だ、今回は私が代理として戦う。
原作だと、ここでジャンケンで勝負してレルートの心理勝ち。た
さて、変わるとしたらそろそろかしら。
るから逆転なんて夢のまた夢なんでしょうけど。
スコアボードには、90と10の数字。元々レオリオはここで負け
逆転も難しいなあ﹂
﹁ほ、本当にやるのか⋮⋮分かった。けど、点差がこれだとここからの
﹁それじゃ、次はレオリオの番よ。お題を決めて﹂
ましょうか。
私たちはそれで問題ないのだけれど⋮⋮まあ、試験官の立場を考え
るって事になるし。
な る ほ ど、一 理 あ る わ ね。実 力 等 以 外 で、あ る 意 味 ず る を し て 通
君たちが簡単に通ってしまうからね﹄
﹃⋮⋮特別に許可しよう。このままだと対戦を離脱したとみなされ、
カメラがある方向に向かって、そう尋ねる。
無いわね
けの続きをやるわ。指示は全部レルートから聞いて動くから問題は
だった。レルートは色々あってあんまり動けないから、私が代理で賭
﹁もちろん。じゃないと、二時間以上も遊ぶ訳ないわ⋮⋮って、そう
?
題。レオリオがなんかの気まぐれで違う手を出してしまえばそれま
でになってしまう。
46
?
そもそも、ジャンケンじゃなくなる可能性もある。まあ、そうなっ
てしまえば運が絡まない限りほぼ勝てるから逆にありがたい。
﹂
そうなると、ここはどうなるのかしら。
﹁よし、ここはジャンケンでどうだ
⋮⋮あーうん、やっぱりレオリオはレオリオね。
﹁分かったわ、ちょっと待って﹂
一応代理の立場なので、テントに戻りレルートに話を伺う⋮⋮ふり
をする。
﹁⋮⋮⋮⋮いや⋮⋮そんなの、うぅ﹂
五体満足で、尚且つ服も来ているけど疲れ果てて寝ているからだっ
た。
レルートを起こすのは忍びないと思ったので、とりあえず話を進め
る為に代理を行おうと考えた。
作戦は見事上手く行って、代理の権利は頂いたのでここで勝てば問
題無し。
﹁あっ、そっち⋮⋮には⋮⋮もうダメぇ﹂
うーん、これは危険だわ。早く外に出ましょう。
うなされている⋮⋮いえ、寝言を言ってるその姿が可愛すぎてまた
遊ぶも忍びない。
﹁分かったわ、その条件でいいわ。こっちが賭けるのは80ポイント。
﹂
負けても、ペナルティの時間は50時間だから安心して。そうよね、
試験管
ん﹂
﹁当たり前よ。勝負は常にフェア⋮⋮じゃなくてもいいけど、レルー
トの顔を立てないといけないし﹂
顔を立てるというよりは、責任かしら。なんて考えながら、テント
の方を一度見た。
あれを回収しなくちゃいけないんだけど⋮⋮レルート、出て来れる
47
!!
﹁っく、いくら仲間だと言ってもここは本気で来るんだな、リナちゃ
変わっていなくって良かったわ。
﹃その通りだ﹄
?
かしら。いや、出しても大丈夫かしら。
まあ、その辺りは後で考えるべきね。
﹁分かった。掛け声はジャンケンだよな
﹃ジャンケン
ポン
﹄
﹂
チップ切れにより、レオリオの負け
レオリオは、グーだった。
﹃ジャンケン勝負決着
試験官が賭け勝負の終わりを告げた。
﹁これでまあ、レルートの顔は立ったかしら﹂
﹄
静寂の中、突き出したのは拳。レオリオも、拳を前に出した。
﹁それで構わないわ。じゃ、いざ尋常に⋮⋮﹂
?
声を合わせ、お馴染みの掛け声と共に出した手はパー。
!!
!!
﹂
ら出来なかった。
﹁これで、2勝2敗⋮⋮って、次はリナちゃんじゃねえか
!!
うか⋮⋮正直、すまんかった
﹂
﹁いやいや、そりゃそうだが⋮⋮自信と実力は比例しないって奴とい
陣地に戻った途端、レオリオに集中砲火だった。
﹁ごめんレオリオ。庇いきれないや⋮⋮﹂
1時間。どうするんだレオリオ﹂
﹁それに、負けた事により50時間を失った。今は61時間、残りが1
もないだろうけどさ、男ならしっかり決めて来いよ﹂
﹁そーだよ、レオリオの馬鹿野郎。リナなら⋮⋮まあ、戦闘で負ける事
陣地に戻っている途中、レオリオが声をあげた。
﹂
使ったのは、もちろんゴンの裏技。あそこで拳を出して来なかった
思ったのもある。
心理戦を使っても良かったのだけど、ワザと負けるのもどうかと
は絶対にありえなかった。
⋮⋮残念ながら、面倒だったのでズルを行った為、レオリオの勝利
よぉ
﹁ち く ち ょ う ⋮⋮ チ ョ キ を 出 し て い れ ば ジ ャ ン ケ ン に は 勝 て た の に
!!
!!
空気自体は穏やかなので、あくまでみんな本気じゃない。トンパが
レオリオが、すかさず土下座した。
!!
48
!!
いたらもっと邪険になってるんだろうけど⋮⋮。
﹁それじゃあ、私が最後ね﹂
時間を50時間も失っているので、さっさと話を切り上げて先に進
む方がいい。そう考えて一歩前に出る。
相手側も、私に合わせて最後の人が前に出て来た。
﹂
あ、あいつは
﹂
そして、手枷が取れて、フードを取った。
﹁
﹁知ってるの
﹁勝負
﹂
勘違いするな。これから行われるのは惨殺さ。試験も恩赦
﹁で、勝負の方法は
フィールドに向かう途中、そう考えていた。
とがない、むしろ楽勝だ。なんて評価だったら、私が敵側でも驚く。
それもそうよね。殺人鬼が出て来て、相手がその殺人鬼に大したこ
敵側が、こちらの反応を見て驚いている。
⋮⋮散々な扱いだった。
﹁それもそうだな﹂
﹁リナさんならなんの問題もないだろう﹂
﹁あ、そうなんだ﹂
﹁ふーん﹂
ジョネスが壁を掴み、素手で砕いて砂に変えた。
﹁解体屋ジョネス。ザバン市最悪の異常殺人鬼だ⋮⋮﹂
思っていない。純粋なフットワークだけでどうにかなりそうよね。
というかそもそも、近づかなければいいだけだし、足腰が強いとも
レオリオが驚く中、私は特に何も感じてなかった。
!!
?
﹁分かったわ。それじゃあ死んだら負けね⋮⋮武器は使ってもいいか
﹁女だからって、容赦はしないぞ。泣き叫んでいればいいだけだ﹂
捕まってこんな所にいないわよね。
本物なら、ぐだぐだ喋ってないで試合を始めるだろうし、そもそも
ら。私はここで思ったけど。
よ、良く喋るわね。キルアはここでアマチュアだって思ったのかし
も俺には興味がない。肉を掴みたい⋮⋮ただそれだけだ﹂
?
49
?
!!
しら
﹂
﹁せめてもの抵抗か。いいだろう、さっさと準備するといい﹂
あ、いいんだ。意外と腕には自信があるのかしら。
私は、バッグから剣を取り出した様に見せた。
手元がデザイン性のある形状で、長さは60㎝ほど。剣より短刀と
呼ぶ長さになる。
ただし、取り出せる様に見せる限界が60㎝だったにすぎないけ
ど。
﹂
﹁剣か⋮⋮長さが60㎝程しかない剣で、俺の攻撃を捌けるとでも
俺は拳銃を持った警官が相手でも││あ
?
﹃ここの先の部屋で50時間過ごすといい。君たちの勝ちだ﹄
そして、剣を地面の方向に向けて振るって、血を落す。
に、ジョネスの身体を胴と腰で真っ二つに切り裂いた。
長々と喋るジョネスがそろそろウザかったので、通り抜けると同時
﹁うるさいわね⋮⋮男の耳触りの声を長く聞く理由はないわ﹂
?
私たちの勝利が決まり、無事にここの試練をクリアした。
50
?
4話﹃トリックタワー後篇﹄
4話﹃トリックタワー後篇﹄
﹁き、汚い⋮⋮乙女の私にはこの空間は辛いわ﹂
﹁さらっと、嘘付くなよ。リナなら楽勝だろ﹂
﹁⋮⋮うん、まあね﹂
ペナルティの50時間、待機するのに用意されていた部屋はとても
汚かった。例えるなら⋮⋮そう、昔の私の部屋。
知ってはいたけど⋮⋮まさかここまで汚いとは思っていなかった
わね。
﹂
確か、トリックタワーって監獄って訳じゃないはずなんだけど⋮⋮
監獄だったのかしら。
﹁しかし、風呂に入れないのは辛いのでは
﹁そうね⋮⋮辛いと言えば辛いけど、我慢するわ﹂
ぶっちゃけ、今の今まで風呂に入れない事に気が付いて無かった。
だけど、これも試練だと考えれば少しは気も楽になるし問題はな
い。
﹁うーん、それにしても50時間。暇になるなあ﹂
﹁違うよレオリオ。暇なんだよ﹂
﹁⋮⋮それもそうだな﹂
﹁ぷっ﹂
レオリオの呟きにゴンが反応し、その言葉の的確さに思わず吹き出
﹂
してしまった。
﹁ちょ
51
?
クラピカの言葉を合図に、走りながら道を進む。
﹁残りは11時間。急いで進もう﹂
◆ ◆ ◆
うん、これなら退屈せずに済みそうね。
!?
50時間のペナルティは確かに痛かったけど、身体を休めるには丁
度いいタイミングだったみたいで、私を除く4人はかなり休息に時間
を割いていたし。
もちろん、私も休んだけれど、テントの回収や部屋の片づけをして
いたので4人よりは休んでいない。
まあ、暇で動かないって方がしんどかったから動いていたのだけれ
ど。
﹁登るか降りるか⋮⋮﹂
角を曲がった所で出て来たのは階段。登るか降りるかのマルバツ
だ。
﹁裏を考えると、登るのが妥当だろうけど⋮⋮﹂
﹂
﹁降 り ま し ょ う。所 詮 は 半 々 の 確 率 だ し、先 に 降 り て 正 解 な ら 楽 で
しょ
﹂
ここは答えが分かっているので直ぐに誘導に移る。
﹁そうだな⋮⋮よし、降りよう
﹁ここに来てかよ。くそう﹂
か﹂
﹁な る ほ ど ⋮⋮ 間 違 え る と か な り の タ イ ム ロ ス を 喰 ら う 事 に な る 訳
椅子から電流が流れ、小一時間は気絶するものと思ってください﹄
ればクリアです。なお、解答者は誰でも構いませんが、外れた場合は
﹃ここは、電流クイズの間です。今から問題を出します。5つ正解す
ここからは完全に自己判断だし、中々茨の道になりそうね。
恐らく、これが原作未登場の電流クイズね。
は地面から出ている謎のコードが繋がっている椅子が5つある。
部屋の奥に扉らしき物が見え、その上に電子パネル。部屋の中央に
一本道を進んだ先に現れたのは、一つの空間。
﹁これは⋮⋮﹂
しばらくすると階段が終わり道に出たので、更に先へと進む。
皆でバツを選択し、階段を降りる。
!!
﹁文句を言ってる暇はないぜ。さっさと始めよう﹂
﹁うん﹂
52
?
全員が椅子に座ると、電子音と共に問題がパネルに出てきた。
﹂
﹃第一問。興奮すると、目の色が緋色に染まる地方の部族の名前は
﹁クルタ族
クラピカが即答した。
うん、クルタ族だしね。
﹄
?
﹄
﹃第二問。パドキア共和国にある、ククルーマウンテンに住んでいる
﹂
とされている暗殺一家の名前は
﹁ゾルディック家
?
は
﹄
﹂
﹄
?
﹃第五問。これ、何問目
﹄
てかなに
馬鹿なの 問題の選
というか、このメンバーにそんな問題意味ある
!?
?
﹁五問目に決まってるでしょ
択おかしいでしょ
﹂ !!
﹁⋮⋮ええ、そうね。先に進みましょう﹂
ない﹂
﹁大丈夫だ、私もそう思っている⋮⋮ただ、ラッキーだった事には違い
蘇ったわ。
危ない危ない。基本的に突っ込み慣れしてないから、古い記憶が
なってしまった。
流石に、吠えずにはいられなかった。思わず、最後の方は男口調に
と思ってんのか
!!
うん、ゴンに至っては懐かれてるけどね。
ゴンが元気よく即答した。
﹁キツネグマ
らない熊の種類は
﹃第四問。クジラ島に生息する人に懐かず、他の動物も怖がって近寄
うん、レオリオ愛用のブランドだったしね。
これはレオリオが即答した。
﹁季節限定
﹂
﹃第三問。香水で有名なブランド、シャルルサーチの限定商品の特徴
うん、ゾルディック家だもんね。
今度はキルアが即答した。
!!
!!
!?
!!
53
!!
!!
?
そこから次の試練まで、誰一人口を開かず、ただ走った。
そして到着したのは、マルバツ迷路と書かれた場所。どうやら、マ
ルかバツを選択していき、進む道を決める様だった。
その証拠に、左右に道が分かれている。
ただ、思った⋮⋮一体、何の意味があるのかしらと。
いや、タイムロスを狙った構造なのだろうか﹂
﹁何 の 意 味 が あ る の だ ろ う。迷 路 な の に マ ル バ ツ ⋮⋮ 迷 路 の 意 味 は
あったのだろうか
ほら、クラピカが真面目に考えちゃってるし。
それはそうよね⋮⋮迷路にマルバツつけてどうなるのよって話。
きっと作者は、軽い気持ちで考えたのよね。どうせ書かないし。
﹁多分そうだと思うよ。でも、いつかはゴールに着くだろうし、ささっ
と決めて進んじゃおうよ﹂
﹁賛成だ﹂
﹁俺も﹂
⋮⋮⋮⋮よし、アレを使いましょう。
目を閉じて一回深呼吸。絶を解いて、円を発動する。
﹂
そして、この建物および迷路の構造を理解し、再び絶を使っておく。
﹁なんか今、ぬるい空気が流れて来なかったか
﹁うーん、勘違い
﹂
﹁俺もそう思うけど⋮⋮リナは何か感じたか
﹂
﹁私も感じたが⋮⋮風が吹いている感じでもないな﹂
?
﹁で、どっちにするよ
﹂
感じる事が出来るなんて。
やっぱり、才能があるって事ね⋮⋮一瞬の円を理解は出来なくても
私の一言で、それぞれが頷いた。
﹁⋮⋮気にするのもいいけど、時間を先に考えましょう﹂
?
そう思うか分からないんだし。
そりゃそうよね、思わず答えてしまっただけで、なんで分かったか、
今度は、私の一言で皆がこちらを向いて無言になった。
﹃⋮⋮⋮⋮﹄
﹁マルマルバツバツマルバツマルマルバツバツバツよ﹂
?
54
?
?
⋮⋮まあ、こういう時の為に言い訳は用意してあるんだけど。
﹁私の出身はジャポンって島国の近隣島になるんだけど、その島の巫
女でね⋮⋮つまり、予知の特殊能力や勘がかなりいいのよね﹂
ちなみに、条件はしっかりと存在するけど、半分本当だ。
予知って部分は、転生者としての原作知識から来ている嘘っぱちだ
けど、島の巫女って所と勘がかなりいいのは本当の能力。
転生の特典でついた能力かと初めは思ったけど、どうやらそういう
血筋の家に生まれたらしい。
特別、巫女としての訓練等受けてはいない。正確には現代に移行し
ていく中で必要がなくなったらしく、秘伝書等も存在するらしいけ
ど、倉庫に眠っているらしい。
母は巫女としてかなり凄腕の能力者らしく、10択の問題だろうと
必ず正解できると言っていた。恐らく、念能力者でもあるのだろうけ
ど⋮⋮まあ、その辺りは全く聞いていない。
マスに駒を進め無事にクリア。サイコロが怖いくらい思い通りの出
目になったのが理由だけど⋮⋮きっと、偶然に違いない。
その次は岩から全力で逃げる一本道⋮⋮だったのだけど、岩をグー
パンしてみたらあっけなく破壊。安全に進む事が出来た。
6つ目の試練は、床がいきなり抜ける一本道⋮⋮これは私の円で何
55
と、そう言う訳で私には優れた直感が備わっている。
﹂
能力の強さとしては、母と同じレベル。10択でも必ず正解できる
⋮⋮けど、たいして試した事がないので正確には分からない。
ただし、先程あげたように条件があるのであんまり使ってない。
﹁なるほど⋮⋮便利な能力だ﹂
﹄
﹁わりとってレベルだけど、それなりに便利ね。で、信じるかしら
﹃もちろん
?
迷路の次は地雷つき双六、これは私が神の采配の如く完璧に安全な
それから、私たちは幾度となく試練に直面した。
◆ ◆ ◆
!!
事も無くクリア。
と皆で首を傾げたけど気にせず突破。
次は壁から槍が飛び出してくる一本道⋮⋮この辺りで、一本道多く
ない
8つ目は最後の試練の一個前、今度は一本道じゃなく大きな広場。
四方八方から矢が飛んで来る部屋で、恐らく一時間は部屋にいた⋮⋮
けど、5人もいれば狙いも拙くなってしまった様で余裕で回避が出来
た。
確かにそれなりに疲れはしたものの、命の危険までは怪しかった。
そもそも、私は全く疲れて無かったけど。
そして、今の最後の試練。ゴンの機転により、壁を破壊しているん
だけど⋮⋮。
﹁暇だわ⋮⋮﹂
参加させて貰ってない。
﹂との事。
理由は、レオリオの一言なんだけど││﹁ここまで全然活躍出来て
ないんだ。リナちゃんの分まで働かせてくれ
だった。
時間的な余裕はあるので問題ないかな
と思って私も快く受け
よくて、クリアさえすればいいので現状、暇なこの状況の方が問題
確かに活躍はしてないんだけど⋮⋮ぶっちゃけそんな事どうでも
!!
頑張って行こうぜ
﹂
⋮⋮まあ、そろそろ貫通するはずだから、今更どうこう言っても同
向けて来るので、申し訳ない顔で返すしかなかったし。
それに気づいているからか、キルアがちょくちょくこちらに視線を
りだったわ。
正直、私なら一撃で壁を破壊出来るのだけれど⋮⋮全くいらぬ気配
しまっているって訳。
えているので、その分のタイムロスが今まで稼いだ余裕の分を消して
た訳だけど、結局時間ギリギリになっている。トンパの分が純粋に消
?
!!
じなんだけど。
﹂
﹁あとちょっとだ
﹁うん
﹁ああ﹂
!!
56
?
!!
﹁⋮⋮リナが手伝えばもっと早いんだけどな﹂ 本当にごめん、キルア。
⋮⋮⋮⋮あれ、そう言えば、あんまり多数決してなかったわね。
一致団結していたから、絶対に5の数字になっていたとはいえ⋮⋮
あれかしら、試験管が試練を変えていたのかも知れないわね。
原作とちょくちょく物語が変わっている。そう考えるのが一番な
んだけど、果たして私にとって幸運か不幸か⋮⋮。
このハンター試験が終わってからは、完全に私の物語。原作知識な
んて役に立たなくなってくるはず。
それを不幸。不安だと捉えるなら確かに幸運じゃない。
だけど、これが本来の人生。そうなると、幸運なのかしらね。
﹁まあ、いいわ。どっちにしたって、私が楽しい事には変わりないで
しょうし﹂
その呟きと時を同じくして、壁が完全に破壊された様だった。
57
◆ ◆ ◆
﹁ぼけー﹂
幸運だったと思う。残り物には福があった。確かにあった。
それが私の幸運じゃなかっただけで。
﹁あと、5日⋮⋮﹂
壁を破壊し、滑り台にてゴールし、無事に三次試験をクリア。お尻
が痛くなりそうだから、最後に順番を貰い滑らず走って進んだ。
すると、私がゴールしたのは最後になるわけで、次の四次試験に誰
を狩るかを決めるくじ引きで、私が最後に引くことになった。
私が引いたくじには││﹃当たりじゃ ﹄の文字。一瞬、現実を理
解出来ずに試験管に詰め寄った。
た。一応はホテル内移動が許可されてるので、朝食にと食堂にいる。
現在は、ハンター協会の運営するホテルにて待機命令を守ってい
た。
ただ、その行為は無駄に終わり、私は四次試験を運によって突破し
!!
メンチっ
﹁浮かない顔してるわね﹂
﹁ああ、メンチ⋮⋮ん
﹂
!!
﹂
まいそうね。
﹁自己評価しっかりしてるじゃない⋮⋮で、調子はどう
﹁暇﹂
簡潔に即答した。
﹂
が終わる前に、知り合い以上にはならないと今後の繋がりが消えてし
自分で言ってて何だけど、それって駄目じゃないかしら。試験全部
いうなら受験生。
むしろ、メンチからすれば今の所はそれ以上も以下もない、しいて
﹁酷いわ。私を何だと思って⋮⋮変態ね﹂
﹁謝れたのね﹂
ぽこっと頭を殴られたので直ぐに謝った。
﹁ごめんなさい﹂
﹁こら﹂
く。
ちょっと感情が高ぶったので、ついでにお尻も触って⋮⋮揉んでお
﹁ちょっ
んでも悔やみきれない。
力、操作系とかだったら良かったわね。本当にそこの部分だけは悔や
身、どこを見ても魅力的。これならいっそ、私の念能力はそういう能
当出会うのが難しい。そもそも、メンチは胸だけじゃなくてその全
死後の世界でも私の物であって欲しいわね。ここまでの胸なんて相
に私の物にしておきたい。いえ、永遠なんてものじゃなくて、本当は
⋮⋮まあそれは試験が終わるまで取って置くとしても、この胸は永遠
いい。出来れば私の手とテクニックを持ってして、メンチのこの胸を
とりあえず、抱きしめた。胸にあたる胸の感触が柔らかくて気持ち
?
ちゃったけど。少しは話相手になるかなって﹂
﹁そ り ゃ そ っ か ⋮⋮ あ ん た が 浮 か な い 顔 し て た か ら、つ い 声 を 掛 け
ラしてるんだと思う。
この暇で人が殺せそうな気がするくらい暇だ。つまり、割とイライ
?
58
!?
﹁ん、ありがとう﹂
言葉と共にメンチを再び抱きしめ、色々な感触を楽しむ。
﹁あんたも、こりないわね﹂
また、ぽこっと頭を殴られた。
﹁それが生きがいだから﹂
渋々身体から離れ、椅子に座る。
﹁まあ、あんたは暇でしょうけど、試験をスルー出来たって良い方向に
考えなさいよ﹂
﹁そうね⋮⋮メンチのお陰で、前より気が楽だわ。本当にありがとう﹂
感謝の大きさは笑顔で表しておく。
﹁⋮⋮ま、それなら良かったわ。それじゃあね﹂
手を振りながら、そそくさと部屋を出て行った。そのメンチの頬が
少し赤かったのは恐らく気のせいじゃない。
この私の可愛さを持って最高級の笑顔を見せたなら、男は一コロ、
59
女でも意識はしてしまうレベルのはず。
言動や落ち着きからはクールなキャラに見えても、属性的に言うと
私の容姿はキュート属性。そんな見た目キュート、中身クール。
顔の造形は正直言って他を寄せ付けないレベル。童顔で、リアルロ
リっ娘だと思われてもおかしくない。
だけど、実際にはロリ顔だけでなく、超アンバランスなこの胸があ
り。くびれ、足、腕の細さは、細すぎず健康的に少しふっくら。肌質
はもちろん赤ちゃんのそれに匹敵。
それなのに手入れは一切なし⋮⋮とも言えないけど、あんまりして
いない。
両親から貰った物であっても、これほど完璧な美少女は他にいない
と断言出来る。間違いなく、元の私なら出会った瞬間にどこかしらの
暗い部屋に連れ込む自身がある
そんな私が見せる飛び切りのパーフェクトスマイルは
﹁⋮⋮⋮⋮ばーか﹂
もはや必殺技にも匹敵する
そして
!!
なんか、思考が乗っ取られていた気がするので自分を戒めておく。
!!
!!
試験、早く終わらないかないかしら。
なんて、窓から空を見上げてもその答えは返って来ないのであっ
た。 60
5話﹃そして、天空闘技場へ﹄
ドラマとか漫画とかで良くある、大学の授業部屋の様な部屋にて皆
が前に集まり、私を含む8名がハンターとして認定された。
そのすぐ後にゴンがイルミにキルアの居場所を聞き、会長が話の終
わりを悟り解散の合図を出した。
﹂
そして、そのタイミングで私は数時間振りに口を開いた。
﹁あの、一つ言わせて欲しいわ﹂
﹁おお、やっと意識が戻ったか。で、なんじゃ
そもそも意識はあったという言葉を飲み込み、本当に伝えたい一つ
の言葉を声に出した。
﹁私って不幸な美少女よね﹂
﹃⋮⋮﹄
部屋の空気は、穏やかだった。
⋮⋮始まりは、5日前の事だった。
◆ ◆ ◆
私は、会長に面談の呼び出しを受けたので、指定された部屋に向
かった。
﹁ん、来たな⋮⋮ま、座ってくれ﹂
部屋に入ると、机の前に座敷があり、そこに座れと指定された。断
る理由はもちろんないので、素直に座る。
﹂
﹁さて、いくつか質問させて貰おうかの﹂
﹁⋮⋮スリーサイズとかは答えないわよ
てる可能性はあるけど。
﹁是非聞きたい所じゃが⋮⋮真面目に話を進めようかの﹂
﹂
本当に残念な顔してるわね。これは少し悪い事をしたかしら。
﹁で、まず。どうしてハンターになりたいのじゃ
?
61
?
まあ、聞かれても絶対に答える事はないし、そもそも目測で測られ
一応、会長の性格を考えて釘を刺して置く。
?
﹁そうね⋮⋮⋮⋮そうねえー⋮⋮﹂
ヤバイ。理由がない。そう言えば、特に理由がない。ぶっちゃけ、
この先の明確な目的すら決めてない。
﹁えーと⋮⋮﹂
どうしよう、言葉が出て来ないわね。嘘を言おうにも本当の理由が
ないし、そもそも本当の事を言おうとも何も考えてない。
会長の反応を窺うと、私の言葉を待っているのか、この状態に気が
付いているのか分からないけど、何も言って来ない。
﹁その⋮⋮﹂
思わず、さっきから同じ様な言葉で話を繋げてしまうが、残念なが
ら答えは出て来ない。
えーと、ゴンはジンを探す為。レオリオは一応、金の為。クラピカ
は⋮⋮あ、そっか。別に理由はいらないのね。
﹁なりたい理由は特にないわ﹂
がついてるから大体決まっているのね。
﹁⋮⋮いないわね﹂
ただ、少し考えてみたけど、答えが出なさそうだったのでそのまま
口に出した。転生者だし、注目と言われても特に注目する相手はいな
い。
それに、私の目的は未定。しいて言うなら女の子だけど、9人の中
62
てっきり、理由が必要とか思ったけど、キルアも何となくで受けた
んだし別に必要なかった。
あーなんだ、すっきりしたわ。悩んで損ね。
⋮⋮そう言えば、母にお金頼まれていたっけ。ならそれでも良かっ
たかしら。
ぶっちゃけ、私の個人資産は生活に困らない程度あるし、母もある
﹂
はずなのよね。それなのにお金を送れってのは生存確認じゃないか
と思う。
あ、もう合格者が決まったのね。
﹁なるほど。では、おぬし以外の9人の中で一番注目しているのは
9人
?
試験終了にはもう少し時間があるみたいだけど、それぞれに監視員
?
に女の子はいない。⋮⋮落ちた中にポンズがいるはずなんだけど、残
念ながら出会いのチャンスは無かったわね。
それにあの子に近づいて触ろうとしたら蜂が出て来るだろうし、刺
されても問題はなさそうだけど刺される事は決して良い事じゃない。
﹂ もちろん、全て殺してしまえば問題はないけど別にそこまでする理
由はない。非常に残念なのは間違いないのだけど。
﹁ふむ⋮⋮最後の質問じゃ。9人の中で一番戦いたくないのは
﹁⋮⋮うーん﹂
こっちは、かなり難しい。
戦いたくないと言えば、全員戦いたくない。ヒソカかイルミ相手だ
と念での戦いになるので不毛だし、その他だと話にならない。
いやまあ、戦う事は嫌いじゃないし、かなり鍛えてはいるけど生き
る為の力だ。
そう言えば確か、クラピカはこの問いに理由があればなんとやらっ
て答えてたっけ。
⋮⋮うん、面倒だしそんな感じでいいかしら。
﹁私自身の危機を感じない限り誰とも戦いたくないわ﹂
﹁なるほどの⋮⋮うむ、ご苦労じゃ。もう暫く暇を満喫しておくれ﹂
﹁ん、了解﹂
ま、こんなものよね。この面談で最終試験がどうなるか気になりつ
つ、そこから部屋に戻ってまたごろごろと暇を満喫した。
数時間後、ゴンたちと再会して思わず泣きそうになったり。その時
にキルア奪還には参加しないと決めていたので、試験終わりの何とな
く の 予 定 を 伝 え た り。メ ン チ に ち ょ っ か い 出 し て 軽 く 怒 ら れ た り。
その事を会長に報告してメンチの焦る様子を見てみたり。
色々としている内に最終試験当日になっていた。
そしてかなり広い部屋に私を含む全員が集められ、会長の横には布
を被ったトーナメント表らしき物。どこになったか期待と不安を胸
﹂
63
?
に秘めながら、会長が最終試験の内容を発表すると共に、その布が払
われた。
﹁⋮⋮ん
?
﹃
﹄
あれ
⋮⋮私の見間違いよね。うん、きっとそう。
私の番号は400番。その数字がトーナメント表の一番上にある
様に見えるのはきっと幻覚だ。
通常、トーナメントとは勝った者やチームが上に進んで行く。下に
いればいるほど戦う数が多く、上にいればいるほど戦う数が少なくて
済むシード権が存在する。
シード権とは、前回の大会などで優勝した者や2位、3位といった
好成績を収めた者が有利になるシステムで、予選免除の待遇を越え、
いきなり準決勝の位置から始まったりするシステムだ。
会長はこのシステム、トーナメント方式を最終試験に反転させ取り
入れ、負け進んだ者が上に上がるトーナメントを作った。すると、一
番上に行くにつれて合格が遠くなり、戦いのチャンスは少なくなって
いる。
で、この私の目が逝かれておらず、幻覚でもないとしたら私の番号
は一番上にあるのは間違いない。
確かに私は会長に言った││﹃私自身の危機を感じない限り誰とも
戦いたくないわ﹄と。
だけど、三次試験が終わってから暇を満喫しすぎて、ちょっとム
シャクシャしていた私はかるーく相手を捻って遊んで憂さ晴らしを
しようなんて考えていた。
その考えが悪いと言うなら仕方がない。この状況が神の采配によ
るものなら仕方がない。戦うチャンスが一度しかなくても仕方がな
い。
どうかしたのか、リナさん﹂
だけど、だけど⋮⋮結末を知るこの私にとって、つまりこれは⋮⋮。
﹁ん
◆ ◆ ◆
クラピカの声が、遠く聞こえたのは間違いなはず。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
?
64
?
!!
そんな感じで、私のハンター試験が終わった訳だけど、何か一言だ
け言いたくなったので口を開いた。
なんかピリピリしていた空気が穏やかになったけど、きっと憐れみ
の空気のはず。決して││﹃何言ってるんだコイツ﹄なんて空気じゃ
ないわよね。
そうよねー、やっぱりそうよね。私は最初から思ってた
﹁そうじゃの、不幸じゃったかもしれん﹂
﹁でしょ
のよ⋮⋮ジョニーが三回回ってワンと鳴いた時から、ジョニーの前世
は絶対に犬だったのよ。確かに性格は猫っぽいけど、間違いなくその
伏 線 は 最 終 回 に 繋 が っ て い た わ け。最 後 に あ ん な 展 開 に な る と は
思っていなかったけど、いい物語だったわ﹂
﹁何の話じゃ﹂
﹁ごめん、本当にごめん。最近、頭がちょっとおかしいの﹂
本気で謝った。
になる事がある人間らしい。
三次試験の電流クイズの時に薄々気づいた事だけど、どうやら私は
情緒不安定
璧なシナリオだわ。
だ嫌だと言いながら、私のテクニックでメンチが段々と⋮⋮うん、完
抗されると少し厄介だけど、私的には抵抗してくれる方が楽しい。嫌
約束は胸だけ⋮⋮ただし、当初の予定通り堕とせば合理となる。抵
という試練だと考えるならお釣りが出るかしら。
ただ、メインイベントは残っているので、その為の地獄だった。暇
﹁全くよ⋮⋮﹂
﹁それは大変じゃの﹂
ね。
れこそ私の前世の記憶なのかも知れないけど⋮⋮まあ、あり得ないわ
自分で口に出しといて全く何の内容か分からない所を考えると、こ
その場合にちょっと性格が変になる。
人格の影響か、何故か記憶にない幼い頃の影響かは分からないけど、
予想外の事。明らかにおかしい事。イライラする事があると、元の
?
一番困るのは女性経験豊富な事だけど、ノーマルだろうし可能性は
65
!!
極めて低いはず。ただ、メンチほど可愛ければ男性経験はあっても可
笑しくないのよね⋮⋮嘆かわしい。本当に嘆かわしい。決まってな
いけど嘆かわしい。
まあ、男性経験があった場合でも確実に堕とせると思う。今まで堕
とせなかった子はいないし。
今回は一体、何時間耐えてくれるかしら。しぶとそうだけど、素質
はありそうだからそんなに時間は掛らないと思うし⋮⋮ふふふ、楽し
みだわ。
﹁⋮⋮あ、誰もいない﹂
思考にキリが付いたので俯いていた顔を上げると、部屋には誰一人
残っていなかった。別に問題ないけど、声くらいかけて欲しかった。
⋮⋮なんか一瞬、声は掛けたぞって声が聞こえたのは気のせいよ
ね。
﹁とりあえず、メンチを探しましょうか﹂
を使う。どうやら、ゴンたちは名前を思い
かに向かう模様だが、まだゴンたちの近くにいる。
無いとは思うけど、私との約束を破るつもりかしら。
確かに講義中はメンチがいたにも関わらず視線は真正面をぼーっ
と眺めてただけだし、目はきっと虚ろだったと思う。しかも、その後
に前に集合した時も途中から反応が消えていたと思うので、ワンチャ
ンス逃げれるとか思ったのかも知れない。
⋮⋮ ま、な い か し ら。で も、ち ょ っ と の お 茶 目 を 許 し て も ら い ま
しょう。
私は後ろからメンチを襲撃するべく、少し急ぎ遠回りでメンチの背
66
見つけた後は、私の借りている部屋でいいわね。
ふふふ、ふふふふふふ⋮⋮今からぐらいは、このテンションでも問
題ないわね。どうせ誰にも迷惑かけないし。こういう所を考えると
ソロの方がいいのよね。少し寂しい気がするからそこは嫌だけど。
ああ、なんか考えてたら虚しくなって来たわね。早く人肌で暖まり
円
ましょう。待っててねメンチ。
時間が惜しいので
"
出せない三角帽子と会話中。メンチはサトツさん、ブラハと共にどこ
"
後に向かった。
◆ ◆ ◆
﹁色々ありがとうサトツさん﹂
﹁いえ。あ、ゴン君﹂
ゴンがサトツの声に戻ろうとした足を止め、振り向く。
じゃあね﹂
﹁いや⋮⋮体に気を付けて﹂
﹁うん
体調を気遣うサトツに元気よくゴンが返事と手を振り、仲間の元へ
戻っていく。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
サトツは今さっき自分が言おうとしていた内容に、自分で驚きなが
らゴンの背中を見送った。
そして、ゴンたちの背中が遠くなっていく中、メンチたちの視線を
感じたサトツはぽつりと語り始めた。
﹂
﹁不思議な子ですね。どうも肩を持ちたくなってしまいますよ﹂
サトツの正直な気持であった。
﹁んふふ。今サトツさん、やばかったでしょ
少し感謝した。
サトツは、言葉を吐き出せた事でメンチが聞いてくれた事に対して
に近い話と考えて飲み込んだのだ。
だった。今は終わったが試験官としての立場と、一応は一般のタブー
その言葉は、先程サトツがゴンに言ってしまいそうになった言葉
ていない事を﹂
﹁ええ、うっかりしゃべるとこでした⋮⋮ハンター試験がまだ終わっ
その様子に気づいていたメンチが、少し笑いながら聞いた。
?
ただ、何故かそこで会話が続かず、サトツは疑問を抱えながら振り
向いた。
﹂
﹂
⋮⋮あれ
?
?
67
!!
﹁メンチさんは
﹁え
?
その問いかけに、メンチと同じくサトツの後ろにいたブハラもその
事態に気付く。
メンチが忽然と姿を消していた。
この一瞬の間に一体何があったのかと、二人がこの異常事態に敏感
になり直ぐに周りを警戒する。
それと同時に、警戒して初めてやっとメンチのいた場所に手紙らし
き物がある事を二人が気づいた。 凝
を使い危険性がないと判断したサトツがその手紙を拾い、開
﹁⋮⋮罠ではなさそうですね。ただの手紙です﹂ ◆ ◆ ◆
﹂
を⋮⋮二人だけが薄々と勘づいていた。
ブハラがポツリと呟いたこの言葉が、いずれリナの代名詞になる事
﹁⋮⋮ガールズハンター﹂
た為に直ぐに霧散していった。
もっとも、恐怖を生み出したのは自分の心であり、リナでは無かっ
人、リナに恐怖を感じた。
サトツは身震いはしなかったが、思わず生唾を飲み込むほどには犯
らと考えると、想像するだけで死を感じますね﹂
﹁まさに神業と言った所でしょう。あの子があれで殺人鬼だったのな
しらのアクションを起こす暇もない⋮⋮﹂
﹁俺とサトツさんの二人に気づかれず、かなり手練れのメンチが何か
少し低いトーンでサトツが言った。 ﹁あの子の実力は、もしかしなくてもとんでもないものですね﹂
場を動けずにいた。
誰の犯行か直ぐに思いついた二人だったが、それ以上の驚きでその
謎の美少女﹄
﹃お宝は美味しく頂くわ。ちゃんと身体は返すし安心して。ばーい、
けて内容を二人で確認する。
"
﹁い、一瞬何事かと思ったわよ
!!
68
"
﹁ごめんなさい。つい、やりたくなって﹂
無事に作戦が成功し、メンチを驚かせる事に成功した。
誰にも気づかれない様に細心の注意を払い、絶を使ってメンチに接
近。そ し て、大 胆 か つ 慎 重 に 集 中 し な が ら、自 分 が 出 せ る 最 高 速 を
持って捕獲。
この時、メンチが暴れない様に両手を後ろに回して捕獲専用のロー
プで縛り、脚も同様に足首を縛って部屋に連れ込んだ。
メンチがヒソカほど腕が立つなら無抵抗では済まなかったけど、や
はり美食ハンター。腕はいい方だと思うけど、私には敵わない。
﹁普通、つい人を攫うかしら⋮⋮﹂
﹁生憎、普通じゃないし﹂
﹁⋮⋮そうだった﹂
そもそも、普通の人間ならハンター試験なんて受けないと思うけ
ど。人も攫わないし。
﹂
さっきの言葉は本気だったし、その熱意が伝わって良かったわ。そ
のお陰でメンチが涙目だし。
あ⋮⋮このままだとヤバイわね。メンチの可愛さで待っている間
に一回ぐらい余裕かも知れない。
﹁冗談よ﹂
69
﹁で、早速始めていいのかしら
﹂
こっちにだって⋮⋮その⋮⋮⋮⋮
心の準備とか、覚悟とか、心構えとかいるんだからっ
なったけど、危ない危ない。
﹁全部一緒よね﹂
こっちは緊張してんのよ
でも、からかっておく。
﹁⋮⋮ああもう
﹂
!!
ああ、ぞくぞくする。メンチいじめるの楽しいわ。
﹁ごめん﹂
それ以上言うなら触
か、可愛い。とても年上には見えない。今の反応だけで襲いそうに
!!
﹁ちょ、ちょっと待ちなさいよ
!! ?
﹁一生玩具になりたいのなら止めないわ﹂
らせないわよ
!!
!!
﹁ほ、本気だったじゃない
ぐすっ﹂
どれだけ怖かったと思ってんのよ⋮⋮
⋮⋮⋮⋮うん、決まった。今決めた。もう無理、我慢できない、頂
きます。どうせ、このまま待っていても同じ事になるだろうし。早け
れば早いほどいい。
今はもう試験も終わったので、時間はたっぷりある。1日でも1週
間でもそれ以上でも問題ない。
﹁ごめんね、メンチ﹂
謝りつつ、ベッドに座って後ろを向いてしまったメンチをそのまま
抱きしめる。
﹁⋮⋮謝るのはいいんだけど、もう始める気じゃない﹂
﹁うん﹂
指摘された通り、その状態からもうスタートした。
ただ、抵抗する様子ではないのでこのまま初めてもオッケーって事
なんでしょう。
﹂
﹁あ、その前に一応聞いておくんだけど⋮⋮﹂
﹁ん
は間違いなくメンチの可愛さのせいだ。
﹁好きな人や彼氏。それに、男性経験は
﹁⋮⋮⋮⋮いないわよ。後半もない﹂
﹁そっか、良かった﹂
りではあったけど⋮⋮。
﹂
一応生きてる年数は私の方が上だし、転生者として知っているつも
い、言い訳まで可愛いとか本当に反則じゃないかしらこの生娘。
あったし﹂
た事もないけど恋になる以前の問題で、あたしがハンターってのも
として色々やってきて、忙しかったのもあるし、良い出会いは無かっ
﹁なんでそんな事聞いたのよ。そりゃ、経験がないのは美食ハンター
が、また可愛い。
一度、ちょっと強く抱きしめる。ちょっとふて腐れちゃったメンチ
?
70
!!
揉み始めて、思い出した。大事な事を聞いて無かった。忘れてたの
?
まじで舐めてた。鬼可愛い。やっぱり魅力的なキャラクターだっ
た。
ス タ イ ル は も は や 言 う 意 味 の な さ を 感 じ る ほ ど 素 晴 ら し い。胸、
腰、尻。どれを見ても、素晴らしい。軽く触った肌の質感も、しっと
りすべすべ。ハードワークなハンターには思えないし、そこらのモデ
ルや女優など目も当てられない。
実際、生娘である様には思えないほどの美少女、美女。絶対に街中
で声を掛けられた事はあるだろうし、食べに行った店先や店でも声が
掛ったはず。
それなのに断り続け、恋人や好きな人はいないと来た。これはまさ
に運命じゃないかしら。絶対に、私と出会う為に生娘であったに違い
ない。 原作だと知る事のない領域だけど、これは本当に楽しい。
⋮⋮そう言えば、昔の唯一のオタク友達は転生したいってずっと
71
言ってたわね。多分、理由は私と違うはずだけど、今ならわかる気が
する。
﹁そ、そういうアンタは││﹂
﹁リナ﹂
ついでに抱きしめる力を強くして、名前を催促する。
﹁リ、リナはどうしてそうなったのよ﹂
﹁どうしてって言われたら⋮⋮まあ色々あるんだけど﹂
本当に色々ありすぎて困るけど、どれがいいだろう。質問の範囲が
あまりにもブラックな領域だから答えにくい。転生者で、そもそも男
だったはずだから、とでも言うのだろうか。
実際、言っても私の人生には問題ないだろうし、あの女神からも禁
止されてないから問題ないはず。でも、それはそれで他の問題が生ま
れるし。
⋮⋮とりあえず、適当に答えましょうか。
﹁元々は、私は男の子として生まれて来るはずだった。で、生まれてみ
﹂
れば女の子だった訳で⋮⋮恋愛感情の回路が男のままなのよね﹂
﹁なるほど。整形とか、性別転換とかする気なかったの
?
⋮⋮そんなの、あったんだ。
思わず口に出しそうになったけど、何とか出さずにすんだ。
そう言えば、この世界って元の世界より文明進んでたっけ。
﹁無かったわ。両親に悪いから﹂
って、あたしってば何
そんな事も知らないのに、言ってしまったら設定と矛盾⋮⋮はしな
いけど、疑われるわね。
﹁でも、女の子同士だと色々不便じゃない
言ってんだろう﹂
なんで、メンチはこういう反応するのかしら。危うく自我を失う所
だった。 ﹁愛があれば大丈夫﹂
まあ、それでも苦労はした。
なんせ持ってる知識が男の知識⋮⋮チェリーだったので役に立つ
情報なかったし、全然違ったけど。それに、初体験が女でなんて思わ
なかった。
﹂
﹁そういうものなのね。料理と似てるわ﹂
﹁料理
﹁決して美味しくなくても、不器用だったとしても⋮⋮あたしの為だ
けに本気で作ってくれた料理なら、どんな物でも食べられると思うか
ら﹂
⋮⋮⋮⋮ヤバイ、理解出来ない。あんまり似てない。
﹁そ、そうね﹂
とりあえず、合わせてみよう。
話ってこれで終わり
﹁うん、なんかアンタの事。少しだけ理解できた気がする﹂
あれ
いわね。
こ、これはやりにくい。けど、許可が完全に下りたし始めるしかな
﹁よし、ここまで来たなら覚悟できたわ。遠慮なくやっちゃって﹂
⋮⋮まあ、気にしない方向にするしかないわね。
なんかもう少し広げて、似てる所を言うんだと思ってたんだけど
!?
72
?
メンチに劣るだろうけど、料理は私も出来る。ただ、似てるかしら。
?
!?
﹁それじゃ改めて始めるわね⋮⋮まずは服の上から││﹂
◆ ◆ ◆
﹁いい、朝日ね﹂
﹁⋮⋮﹂
カーテンを開けてそう言うと、先程まであった反応が無かった。
振り向いてベッドにいるメンチに視線を向けると、どうやら寝てし
まった様だった。
﹁まあ、しょうがないわね﹂ 時計を見ると朝の7時半。メンチを部屋に連れ込んでから、軽く時
計が一周していた。
どうしようかしら、私は完全に目が冴えてるし全く眠たくない。と
りあえず事情をブラハとサトツさんに伝えるとして、メンチが起きる
73
まで隣で起きてないといけない。
ただ、それだと一つの問題が生まれてしまう⋮⋮。
この状況に、この私が数時間なんて我慢できる訳がない
て汗を洗い流す。
私も一切服を纏って無かったので、そのままシャワールームに入っ
それにしても、本当に楽しかったわ。
﹁よし、シャワー浴びてから報告ね。その後に朝食でいいかしら﹂
ば、いつでもオッケーなのよね。主に私の準備的な意味で。
⋮⋮ ま あ、興 奮 す る 理 由 は い く ら で も あ る の だ け ど。簡 単 に 言 え
えない状態になっているベッド、通称事後跡。
息、通称寝息。ベッド周りに転がるメンチの服、通称お宝。何とも言
満している魅惑の空気、通称二人分の匂い。聞くだけで興奮する吐
生まれたての姿、通称全裸。無防備な状態、通称無抵抗。部屋に充
は思うけど、流石にこの状況は毒だわ。
一応、反応が無くなるまで遊んだ責任感からゆっくり寝て欲しいと
が出そうになったわ。
確かに、小一時間ぐらい⋮⋮も無理そうね。想像しただけでもう手
!!
一番楽しかったのはやっぱりあそこね。胸だけだと思ってた時の
メンチの反応。
邪魔になるだろうから腕時計を外していたのが失敗だった。いつ
もなら何となく流れがきそうならスイッチを押してたんだけど、バッ
クの中に仕舞っていた。
一応、記憶には鮮明に残ってるけど⋮⋮やっぱり残念ではある。
﹁楽しかったわ、メンチ﹂
シャワールームから身体を拭いて出て来て、メンチの寝顔を見てそ
う伝える。なんか、メンチの顔を見た瞬間に伝えたくなった。本人は
まだ寝てるし聞こえてないだろうけど。
私はバッグの中から白いロングワンピースを取り出してそれに着
替える。
さて、向かいましょうか。
本来ならこのままメンチの寝顔や色々を堪能したかったけど、しょ
を使ってホテル内にいるはずの二人を探す。
三階のエレベーター付近の部屋にいたので、エレベーターに乗って
三階へ。確認した時に起きている事は知っているので、部屋の扉を
ノックして待つ。
﹁やっぱり、リナさんでしたか。メンチさんは⋮⋮﹂
﹁部 屋 で 寝 て る わ。一 応 そ れ を 伝 え て お こ う と 思 っ た の。も う 子 供
じゃないし問題はないと思うけど﹂
﹂
部屋から出てきたのはサトツさんだった。部屋の奥からブラハの
視線があったので、手を軽く振っておく。
﹁そうでしたか。この後はどうするつもりで
わ﹂
﹁朝食と適当に運動かしら。メンチが起きるまで時間を潰そうと思う
?
74
うがないわね⋮⋮うん、しょうがないわね。
別に、涙なんて出てないんだから。
﹁それじゃ、行って来るわね。ゆっくり休んで﹂
円
もう一度だけ寝ているメンチに声を掛け部屋を出る。それと同時
に
"
﹁三階⋮⋮ね﹂
"
メンチの携帯電話にメモを残してるし、それで気づくはず。
﹁なるほど、行ってらっしゃいませ﹂
﹁うん﹂
サトツさんにも手を振って食堂に向かう。
朝食を適当に済ませた後は、サトツさんに伝えた通りに外で適当に
運動と念の鍛練。自分一人だと出来る事は限られるけど、実戦経験が
訛ってないか心配だ。
そして、鍛錬を続けて数時間。時刻は16時。携帯が震えたので、
内容を確認するとメンチからだった。
少しホテルから遠い所で鍛錬をしていたので、全速力でホテルに戻
それと、おはよう﹂
り、部屋に戻る。
﹁ただいま
全力でやってないけど、それでもかな
﹁おはよう。寝ちゃったんだ、あたし﹂
﹁むしろ、長く持った方よ
り﹂
凄い鼻血の量よ
﹂
﹁そうは言うけど、これからもリナはいっぱい体験するんでしょ⋮⋮
で練習したら怒る﹂
﹁メンチが望むなら、リベンジの機会もあるわよ。ただし、他の女の子
﹁なんか悔しいわ﹂
ろ、感度で言えばかなり上だったし。
敏感じゃないとかじゃなくて、ただ単純に精神力が高かった。むし
?
なんか、それはそれで嫌だ﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮。
﹁かはっ
﹁ちょ、大丈夫
!!
れは鼻血だけで死ねそう。ドクドクとかなりの量で流れ出てる。
﹁大丈夫よ﹂
全然大丈夫じゃないけど。駄目だ、あの生物は危険すぎる。まとも
に相手してたら萌え死ぬ。
とりあえず、血は止めておこう。興奮のしすぎで血管が切れただけ
75
!!
あまりの可愛さに、死ぬところだった。血は吐けなかったけど、こ
!?
!!
だし。
﹁それならいいけど⋮⋮って、さっきの言葉は忘れて。リナがそうな
のは知ってるし、あたしも料理を止められたら大変だから⋮⋮﹂
って、言いながら少し泣きそうなこの生物は、本当に私を殺しに来
てるんでしょうね、きっと。
今まで、確かに可愛い子はいたけど⋮⋮メンチに匹敵するのは、今
までで一人しかいないわね。
﹂
だと言いたい。止めろ的な意味で。
﹁そうね、厳しいけど⋮⋮メンチが言うなら、かなり減らすわ﹂
﹁本当っ
むしろ、こっちこそ本当
その髪を下した状態で迫りながら、喜んだ最高の顔で言われてし
まったら、こっちも素直に頷くしかなくなる。
﹁もちろん﹂
約束
はしたけど、簡単にその
こっちの世界に目覚めてくれたのはいいけど、これはこれで⋮⋮
うーん、贅沢な悩みね。
﹁でも、注意をしておくと。メンチと
覚悟だけは決めないで﹂
"
けど。
魔法が確立して、幼馴染がどうしよう
って泣いてる時に調子に
まあ、心配してみても、その幼馴染に殺さ⋮⋮半殺しにされたんだ
ろうか。
だったけど、唯一幼馴染が近くにいてくれたし。そう言えば、元気だ
分の時は、男で変態だったから周りからの評価はゴミみたいなもの
でも、確かに思い返してみればどこか男前な所が多いっけ。昔の自
﹁変態で結構﹂
かそんな思考してたとは。別に注意する事でもないけど。 ⋮⋮そうなんだ。私って根が男だし、昔の考えのままだけど、まさ
変態だけど﹂
う男前な律儀な所みると、一瞬男なんじゃないかって思うわ。大体は
﹁十分、分かってるわよ。リナの考えも理解したし⋮⋮なんか、そうい
"
乗ったら体の半分が消し炭だったから、今思い出すと凄い体験した。
?
76
!?
!?
アイツの能力も割かし凄そうね。
﹁で、リナはこれから天空闘技場に向かうのよね
﹁そうなるわ。目標が少し出来ちゃったから﹂
﹂
本来はマチがヒソカの修復と召集をしに来たところを襲撃するつ
もりだったんだけど、原作に触れてみたいって考えに変わったから、
それで是非参加してみたい。
もちろん、マチは襲撃する予定。
﹁それじゃあ、次に会うのは⋮⋮あたしが覚悟決めた時ね﹂
﹁うん。急がなくていいし、ゆっくりね﹂
ただ、一つ言わせて貰うと、そろそろ我慢できそうにない。早く着
替えてくれないかな。
﹁大丈夫。あたしもやりたい事とか、新しい自分を見つけれたし⋮⋮
料理もそういう視点で見て進もうかなって。ここは素直に感謝する
わ。ありがとう、リナ﹂
﹁⋮⋮﹂
どうかし││﹂
うん、もう無理。
﹁ん
進む事にした。
もちろん、私が天空闘技場に向かったのは、翌日の事であった。
77
?
メンチの笑顔のお礼攻撃に、我慢の限界が来たので私は第二回戦に
?
天空闘技場編
6話﹃到着からの帰宅﹄
天 空 闘 技 場。勝 者 の み が 上 の 階 に 行 け る ⋮⋮ と か 何 と か。説 明 は
聞いたけど、知っているので無視した。
ただ、受付の子が可愛かった。メンチとの約束があったので我慢し
たけど⋮⋮いつか、爆発する前にメンチ並の女の子を探しましょう。
そうそういないけど。
現在、ここに降り立って2日目。
初日はメンチと別れた後。ライセンスを貰った2日後の夜に到着
した為に、ホテルでそのまま休む事にした。ハンターライセンスで無
料になったので、なんか得した気分。
何となくで取ったとはいえ、確かに便利と言える。
そして、今日は受付用紙にサインして参加を決めた。貰った番号札
は4444番。なんか不吉だったので交換して貰おうと思ったら、人
が並んでいるの諦めた。
本当に、なんでこんな番号に。
まあ不吉だけど問題はないはず。念能力者と当たったりしたら大
変だけど、200階まで武器もないので問題ない。純粋な体術や念技
術なら負ける事はないだろうし。
なんて考えながら暗いトンネルの様な道を抜け、視界に飛び込んで
きたのは原作で見た光景。
男、男、男、男、一つ飛んでも男⋮⋮⋮⋮なんて地獄絵図。華やか
さなんて一つも存在していない。
階段を降りた先に、アルファベットが振られている正方形のリング
が16個、均等な間隔で並んでいる。そして、それを囲む様に観客と
対戦者が待つ、大きく見て正方形になっている一辺一辺、4つの座席
場所。
私が夕方に来た事もあり人は少ない様に感じるけど、ざっと見でも
78
1000人はいると思う。それにこの内の何百は観客だと思うし、私
の順番は割と早く来そう。
﹃4444番。4480番の方。Hのリングへどうぞ﹄
思っていた通り早く呼ばれた。座ってから10分も経ってない。
た だ、そ の ア ル フ ァ ベ ッ ト は 私 に 対 し て の 当 て つ け な の か し ら。
﹂
きっと他意や私の気にし過ぎだろうけど⋮⋮何か少し運命を感じる。
﹁4444番。ローブを取って貰えるかな
リングに着いたので、早速上がろうとした所で審判にそう止められ
る。
﹁⋮⋮﹂
やっぱり、止められたわね。何となく無理かなと思ってた。
でも、私は取りなくない。
取ったら、かなりというか確実に注目される事になる。別に問題は
ないのだけれど、むざむざ私の美貌を晒すのはどうかと考えたから。
主にハンター試験で。
それまでは視線とか気にして無かったけど、そう言えばこうすれば
隠れると思った。それに、視線を感じててもちょっと前なら学校に
通っていた時期。流石にフード付きローブで姿を隠すなんて発想は
浮かばなかった。
まあ、あんまり人が住んでなかったので視線を感じるも何も、ほぼ
見知った顔。それに、学校なんて一学年60人くらいだった。
﹁だんまりだと、流石に試合を認める訳には行かなくなる﹂
うーん、確かにその通りなのよね。、出来るだけ女だとばれないで上
に行きたいけど⋮⋮。
﹂
﹁いや、俺はいいぜ。そんな舐めた格好してる奴に負ける気しねえか
らな
タイミングでやって来てくれた。そしてナイス援護。絶対に勝てな
いだろうけど。
﹁そうはいいましても⋮⋮胸の辺りの妙な膨らみを見て、武器が無い
とも判断できませんから﹂
79
?
恐らく、私の対戦相手。2mあるゴリラの様な男が、ちょうどいい
!!
⋮⋮あ、忘れてた。いくらローブで隠しても、シルエットは私じゃ
ない。確かにこれは駄目そうね。一回、男装しようと考えた時に邪魔
﹂
になったのを忘れてた。
﹁これでいいかしら
バサッと大げさに取ると、視線と言う視線が突き刺さった。そして
同時に、リングで戦っていて私を見てしまった男たちがノックアウト
していた。物理的な意味で。
今日の恰好は白のロングワンピース。ハンター試験が終わってか
らここに来たので、特に買い物に行ってない。他に着衣はあったけ
ど、試験で着ていた短い丈の白ワンピースが3着。今のを合わせてロ
ングが4着だけ。
これ以外に家から持ってきていないのには理由があって、ハンデに
なるかなと思っていたから。実際にはなんのハンデにもならずに、こ
の考えが無駄に終わったのだけど。
そろそろ違う色か、真面目に動きやすい服装買わないといけないわ
ね⋮⋮。
﹁も、問題ありません﹂
﹂
﹂
﹁ま さ か 女 だ っ た な ん て な ⋮⋮ こ れ は ラ ッ キ ー だ。し か も 上 玉 と 来
た。どうだ、俺の女になるか
﹁⋮⋮﹂
心の中でお断りと言っておく。
﹁ちっ、つれねえな。それじゃ、ぶっ倒してやるよ
題よね。こういう男が女の敵になるんでしょう。
﹁ここ一階のリングでは入場者のレベルを判断します。制限時間3分
以内に実力を発揮して下さい﹂
説明を受けている間にリング内の指定されている位置に着いた。
﹂
⋮⋮あ
﹂
相手は手をボキボキと鳴らして、私を睨んでいる。
﹁それでは、始め
そして審判の合図が響く。
﹁試合中に手籠めにしてやらあ
?
80
?
実際、女に振られたからって、直ぐにその思考になるのはかなり問
!!
?
!!
!!
試験の豚より遅い速度で突っ込んで来た相手をかわして、相手の背
後。リング一辺の端に移動する。
﹂
そう言えば、どうやって倒すか決めて無かったわね。
いや、そんな事ある訳ねえ
腕を組んで考えてみる。
﹁今の一瞬で避けた
また回避。
﹁こ、こいつ⋮⋮ふざけんなよぉぉぉ
﹂
再び突っ込んで来る相手を同じ様に回避して、まだ考える。
!!
﹁もういい、徹底的にやってやる
﹂ キルアは手刀。ゴンは押し出し。ズシは武術。
待って﹂
﹁ちょっと待って。アンタを倒す方法考えてるから時間ギリギリまで
いましょうか。
でも、もう一度来られるのは労力の無駄になるだろうし、素直に言
!!
ただ、答えが一向に出て来ない。
﹁ねえアンタ。どうやって倒されたい
﹂
?
うーん、悩んでても仕方ないし、そろそろ終わらせましょうか⋮⋮
なんて思いながら腕時計を見ると、2分が経過していた。
心が狭いとか⋮⋮本当にゴミね。
どうやら、答えてくれないらしい。クズでせっかちで、それでいて
﹁ちょ、調子に乗るなよクソアマ
﹂
撃をかわし続けながら考える事にする。
面倒で無駄な労力を使うけど、相手が止めないのでそのお粗末な攻
﹁だから、待ってと言ってるでしょ。せっかちよ﹂
!!
!!
剣
があればジョネスの時みたいに触らずに倒せるんだけど、武
ど、それも禁止だと困るし。
﹂
うーん⋮⋮あ、そっか。普通は見えないんだった。それなら、これ
で倒せるわ。
﹁アンタは神を信じてる
?
81
?
と思ったけど、触るの嫌ね。
"
器は禁止。リングを砕いて、その石で相手を倒そうとかも考えたけ
"
﹁信じてる訳ねえだろボケ
﹁じゃ、断罪ね﹂
﹂
リングの端に移り、右手を相手に向ける。 ﹁さようなら﹂
オーラを相手の顔の大きさほど、密度を最少で溜めてそのまま発射
した。それっぽく反動も付けておく。
そして、一瞬で相手の顔面に直撃した念弾は、相手の顔を吹き飛ば
した。遠くに離れていたので、飛び血などは一切ないけど、審判の服
にべったりと色々付着していた。
そこまで強くない威力だったんだけど⋮⋮貫通してどっかにぶつ
からないだけましだったかしら。
ハンター試験前の船では上手く気絶させられたから、あの時の威力
じゃないと駄目なのね。
﹁これが神の裁きよ⋮⋮﹂
とりあえず、殺してしまったのはしょうがない。いつもの様に剣は
ないけど、右手に地面に向けて振る。
自分で言ってて胡散臭いけど、神様はいると思ってる⋮⋮というか
﹂
知ってるし、この場合はあの女神になるのかしら。
﹁え
で、わっ
っと騒ぎ出した。
神の裁きを疑うの
﹂
?
けど。
﹁それとも何
?
残念ながら念という、一般人には見る事の出来ない武器が存在する
﹁見えない武器がどこに存在するのよ﹂
﹁ぶ、武器の不正使用ではないだろうね﹂
もろ。とにかく色々なヤジと、期待や恐怖等の様々な視線を感じた。
騒いでる声の中には、呪術だとか魔法だとか奇跡だとかその他もろ
言っていたら流石に驚く。
やったのが私ときた。なのに道具を使ってなかったり、神の裁きとか
当然ね。対戦していた相手の頭が吹き飛んでいて、恐らくそれを
!!
82
!!
そして、今やっと審判や周りの人たちがこの状況に気付いたみたい
?
﹂
これ以上の追及は面倒だったので、少しだけ睨んで脅しておく。
﹁い、いえ。50階へどうぞ
﹁どうも﹂
﹂
た顔が可愛いから、全然気にならないけど。
!!
心に椅子を磨き始める。
素直に甘えて、お礼を言うとその人たちも離れていった。
﹁ありがとう﹂
どうやら、私の為に椅子を磨いておいてくれたらしい。
﹃ささ、こちらへどうぞ
﹄
部屋に入った瞬間、人が離れていき、椅子に座っていた人たちが熱
少し落ち込んだけど、気持ちを切り替えて控え室に。
けど⋮⋮うん、駄目だった。
一応、最高の笑顔で答える。これで緊張が和らいで欲しいなと思う
﹁うん、ありがとう﹂
﹁きょ、今日はもう一試合あると思いますので、控室にどうぞ﹂
これ以上は可哀想なので、メンチとの約束を思い出して落ち着く。
ンが言ってたオーラになってるのね。
それにしてもビビり過ぎよね。なんか、怖いオーラでも⋮⋮あ、ゴ
一階で貰ったチケットを渡すと、代わりに封筒を貰う。
﹁こ、こ、こちらが、先程のファイトマネーでしゅ
﹂ ⋮⋮あれ、予想以上にビビられてる。伝えたのね、あの審判。怯え
よ、よろしいでしょうか
﹁い、い ら っ し ゃ い ま せ。リ ナ 様 で す ね。チ ケ ッ ト を お 願 い し て も、
50階に到着し、次に受付に向かう。
わね。 しら。ゴンたちは2回だったけど、出来ればもうちょっと多目が良い
これで後は15試合で200階ね⋮⋮今日は後何回組まされるか
に乗り込むと誰一人入って来なかった。
私の事を知ったのか、ただ偶然なのかは知らないけどエレベーター
チケットを受け取り、ローブを拾ってまずエレベーターに向かう。
!!
うーん、これはこれで楽だけど⋮⋮なんか嫌だわ。200階までの
83
?
!!
辛抱なんだけど。
◆ ◆ ◆
﹄
またしても不戦勝で、ついに200階への切符を掴み
なんて、思っていた二日前の自分を恨みたい。
﹃リナ選手
ましたぁぁぁ
あれから一度も戦う事なく、私の200階到達が決定した。
確かに嬉しいけど、なんか、なんか嫌だ。どうも腑に落ちない。
⋮⋮そうね、異変に気付いたのは50階クラスからね。うん、一番
初め。
私のレートがそもそも0倍とかいう、おかしな数字を見た時点で察
した。
相手の倍率が100倍なのに、賭けてる人間が誰一人いない時点で
更に察した。
リングに呼ばれた後、数分待っても相手が現れない時点でもう諦め
た。
恐らくは早く200階にあげる為の、念の分かるお偉いさんによる
もの何だろうけど⋮⋮一戦ぐらいさせて欲しかった。男に触りたく
はないけど。
そう考えながら、200階受付に到着。
﹁200階クラスへようこそ。こちらに登録の署名をお願いします﹂
ビビられてない気がする。
﹁了解だわ﹂
⋮⋮ん
﹂
顔を再度確認すると、ゴンたちの時の黒髪の女性ではなく茶髪の女
性だった。
﹂
﹂
もしかして、念を知ってるんじゃないかしら。
﹁私の顔に何か
﹁ううん、なんでもないわ。これで良いかしら
とりあえず、気にする前に署名を済ませて提出する。
﹁はい、オッケーですよ。早速参戦の申し込みをしますか
?
?
?
84
!!
!!
?
絶
じゃないので、
凝
で見たらすぐに分かった。
うん、知ってるわね、この人。というか、念使いだし。
完璧な
﹁ええ﹂
"
"
い方が好きだし。
﹁住めば都かしら﹂
でもこの言葉って、少し意味違ったかしら
﹁まあいっか﹂
﹄
﹃戦闘日決定
絶対、誰かの嫌がらせじゃないかしら
緒じゃない。
示し合わせたかの様に一
222階闘技場にて、2月2日午後2:00スタート
と、荷物を降ろした所でテレビが映り、対戦日が表示された。
?
ゴンが言ってた通り、かなり広い⋮⋮けど、落ち着かないわね。狭
そして鍵を使い部屋に入る。
意外と広かったので、ここまで少し時間が掛った。
﹁ここね﹂
鍵を受け取り、2222号室に向かう。
そう言えば今までもそうだったような⋮⋮偶然よね。
なんだろう、私ってゾロ目かキリの良い数字に好かれるのかしら。
室をお使い下さい﹂
﹁了承しました。戦闘日は決定次第お知らせしますので、2222号
謎もすっきりしたので、紙をさらさらっと書いて提出する。
"
!!
でも、今から一週間は丸々あるわね。もしかしなくても、これは家
に帰れるかしら。
気になったのでパソコンを付けて飛行船と船を調べる。
どうやら、ここからなら日を跨いだ頃に家に着ける。飛行船から
ジャポンの首都、そこから船にて私の故郷の星運島のコース。
早速携帯を取り出して家に電話⋮⋮しようとして止めた。いきな
り帰って驚かせてやりましょう。
85
"
2時ちょうどな所を考えると、単なる偶然なんでしょうけ
?
ど、ここまで来たら合ってて欲しかった。
まあ
?
!!
こうなったらやる事が限られるので、直ぐにチケットを購入。荷物
は開けてないので、そのままバッグを持って受付に鍵を返却しようと
したら、無しでいいらしいので鍵をバッグに入れて空港へ。
最終便が21時。現在が20時なのでそのまま待つことにした。
﹁待ってなさいよーママ、パパ﹂
そして最終便に乗り込み、着くまでの時間を睡眠に使って有効活
用。到着した所で急いで船乗り場にダッシュし、最終便に間に合っ
た。
﹂
どうやら津波の影響などもない様で無事、普通に運行した。
﹁お嬢ちゃんは里帰りかい
で、最終便には私しか乗客がいないので、運賃は船長と喋ればタダ
でいいとの事。
流石にハンター試験の時の船長じゃなかったけど、このおじさんも
﹂
なかなかダンディーなおじさんだ。昔はかなりモテたんじゃないか
しら。
﹁ええ。1ヶ月ほど旅に出てました﹂
﹁そうかいそうかい。何を見てきたよ
﹂
残っていなくていい。メンチの事と、ゴンたちの事だけでいい。
というか、そんな忌まわしい過去なんて私の脳には1バイトすら
い。
最後の方は暇で死に掛けたより、メンチと遊んだ事の方が印象が強
りだ。
思い返すと、何だかんだ楽しい思い出が多く、自分でも少しびっく
これは、普通の答えで即答出来た。
﹁ええ、それはもちろん﹂
﹁そ、そうだったか。楽しかったかい
﹁つまり、たいした所には行ってませんよ﹂
た。
素直に伝えたらポカンとされた。船長さんの顔にそう書いてあっ
ワー⋮⋮ですね﹂
﹁長 い ト ン ネ ル に 階 段。湿 原 地 帯。森 林 公 園。デ カ い 塔。デ カ い タ
?
?
86
?
﹁⋮⋮嬢ちゃん、男にモテモテだろう
﹂
﹁とても、嬉しくないけど⋮⋮船長さんの言う通りだわ﹂
モテるなら、女の子が良い。残念な事に、私の性別が女だし普通に
考えてモテないのだけど。
﹁だろうな。俺がもう少し若けりゃ、間違いなく声を掛けちまったな﹂
﹁船長さんなら大丈夫だと思うわ。私以外なら﹂
恐らく60はあると思うけど、全然大丈夫な範囲だ。男前とか以前
に嫌悪感レーダーが反応していない。
原作キャラには反応しない様子だけど、モブには視線や話しかけら
れる。気がこちらに向いてるとずっと反応しっぱなしだし。そう考
えると、本当にいい男なんだと思う。
最近は気を無視出来る様になったから別に問題はないけど。
﹁2 0 年 前 も、そ う 言 っ て 俺 を 断 っ た 美 女 が い た も ん だ。と て も 嬢
ちゃんに似てたな﹂
どこか遠くを見て、船長は少し笑いながらそう言う。
﹂
⋮⋮もしかして、突っ込んだ方がいいのかしら。
﹁その女性は私より綺麗
﹁同じくらいだな⋮⋮もっとも、そいつにゃ男がいたからだったけど
な﹂
﹁ふーん。そっか﹂
もしかしなくても、母かな。20年前だと、18歳⋮⋮くらいだか
ら、あり得ない事ないし。 それに、同じ髪色だし。身長は同じくら
いだけど、胸が私より小さいだけだ。
そこからほどなくて、島に到着。
本当に料金はタダで良くて驚いたけど、素直に甘える事にした。
﹁ありがとう﹂
﹁おう﹂
そして、あっさりと別れて船長さんは船を出した。視界から消える
ま で 見 送 り、私 は 家 に 向 か う。船 場 か ら そ ん な に 距 離 は な い の で、
言っている間に着く。
87
?
なんか、言葉が違う気もするけど⋮⋮まあ、いいわ。
?
⋮⋮まあ、懐かしさはないわね。三週間くらいだし、母ともちょく
ちょく連絡を取ってたので久し振りでもない。
それに、三週間以上家にいない事も多くあったので、本当に懐かし
くはない。もちろん、帰って来て嬉しくない事はない。
﹁さてと。どんな反応するのかしら﹂
家に到着したので、鍵を開けて家に入る。
﹁ただいまー﹂
少し大きい声で挨拶し、反応を待ってみる。⋮⋮が、何も返って来
ない。
円
を使って家の中を調べてみる。
もしかして、寝てるのかしら
そう思って、
?
本当は風呂が沸いてからの方がいいのだけど、そこまで浴槽が好き
と脱いで浴室に入る。
荷物などはそのままリビングに置き、脱衣所兼洗面所で服をぱぱっ
﹁とりあえず、お風呂に入ってから順番とか考えましょうか﹂
時間はかなりある事だし、ゆっくり消化してもいい。
他の目的は、荷物の交換。友達と会う。倉庫の資料確認の3つ。
終わらせることにする。
こうなると私の目的の一つが無くなったので、他の目的をさっさと
恐らく、ただの嫌がらせね。
わね。
が帰って来ると思ってなかったから⋮⋮だと、手紙なんて用意しない
わざわざ手紙を残した所を考えると、何の考えも無かったのか、私
具体的に言うと、天空闘技場に着いた日。
﹁⋮⋮なんで、連絡取った時に言わなかったのよ﹂
﹃旅行﹄
確認したので、リビングに行って内容を確認する。
二人がいない理由を考えながら、置き手紙らしき物が机にあるのを
ただ、二人はおろか、虫の一匹すら発見できなかった。 "
でもないので別に問題ない。体を洗うだけならシャワーだけで十分
だ。 88
"
赤い栓を回してお湯を出し、全身をしっかりと濡らす。
私は先に身体を洗う派で、一番最初に洗うのは胸だ。この大きさだ
と良く蒸れてしまうので、しっかりと洗っておく必要がある。
そういえば、男の我が強かった時は一々ビビってたなあ⋮⋮どう
やって洗えばいいのかとか、自分の体みて恥ずかしいとか。実際、女
の子の裸なんてまじまじ見た事はなかったし。
﹁ん⋮⋮ぅん、ふぁ﹂
で、この体、中々敏感で困る。
自分で洗っているにも関わらず、そういう所を洗うと自然と声が出
る。
我慢しようにも、特に我慢する意味がなさすぎてしないけど、いい
加減慣れて欲しい。
それに、軽く昂るので女の子との色々を思い出して、止まらなくな
るし。
基本的に私はSだけど、身体は間違いなくMだ。場を踏んでるから
慣れと余裕等から相手よりは長く持つけど、本気で攻められたら一瞬
で陥落⋮⋮は、したくないけど、上手かったらしそうで怖い。
まあ、満足する事とは別なので、攻める側じゃないと駄目なんだけ
ど。
体を洗い終え、次に頭。髪ゴムを外し、ポニーテールを解く。
ロングになると私の髪は大体腰の辺りまである。邪魔だなと思っ
て一度切っていいか訊ねたら、母に全力で止められたのでそれ以降は
切らずにいい感じで置いとく事にした。
そもそも、その頃は男の方が強かったからだけど。
そして全て洗い終えたので、シャワーをぼーっと浴びながら、私は
今後の予定を考える事にした。
89
7話﹃新しい出会い﹄
故郷での生活は、実に早く終わりを迎えた。
初日に帰って来た時にやりたい事をまとめ、一週間で消化しようと
考えていたのにも関わらず、3日で終了。一応、ギリギリまで滞在し
たけど、もっぱら友達にセクハラしていた。
メンチとの約束と、その子たちとは肉体関係がないので本当に軽い
セクハラまでだったけど、中々楽しかった。
そして、帰郷を終えて天空闘技場に到着。荷物の整理でピンクの
リュックサック変わった鞄を背負いながら、2222号室の自室に
戻って来た。
ちなみに、服装は相変わらず白のミニワンピース。クローゼットを
開けたら、全てこれに変わっていた。間違いなく母の仕業。
で、何となく統一させようと手持ちだったロング丈は家に置いてき
90
て、全てミニになっている。
⋮⋮まあ、この世界にはちょっと特殊なルールが存在する。
それは、人間の服装への意識だ。
これは恐らく、指定した世界が二次元である事から出来たルールだ
けど、全員、あんまり服装が変わらない。
確かに、ファッション雑誌は存在するし、絶対に変わらない訳でも
ない。
ただ、やっぱり同じに感じる。
一度気になって、その理由を母や色々な人に聞き、返って来たのは
ほとんど同じ答えで││﹃同じ服をまとめ買いするのが普通でしょ
﹄ との事。
この事について初めはかなり考えたけど、それがこの世界のルール
あるらしい。
だと思った。それに、変えてもいいと思ってる人は服装を変える事も
元の世界だと考えられないけど、同じ服でいいならそれはそれで楽
意見のみ。
それを聞いて、ネットで色々と情報を調べても、やっぱり同じ様な
?
と考えたら納得がいったのでそれ以上は考えていない。
実際、無意識の内に同じ物をセットで買う事があったし。
﹁さてと、試合まで残り30分ね﹂ リュックを置いて、仰向けでベッドに寝転び、目を閉じる。
対戦者は特に調べてない。念での戦いは少し久し振りになるけど、
ここのレベルで負ける気がしない。
念を覚えたてのゴンやキルアが余裕で倒せるレベルが⋮⋮誰か忘
れたけど独楽とか能面とかだと考えると、天空闘技場の念使いは大し
た事がないはず。
フロアマスターも恐らくその程度のレベルなんじゃないかと推測
している。
もしかしたら本物が混じってるかも知れないけど、そもそも本物は
ここで戦う事はないと思う。
戦闘狂なら来る可能性はあっても、ここのレベルを見ると興が覚め
て帰るだろうし。ヒソカはヒソカで、戦いに来たというより、品定め
の為に来ているんだと思う。 ぶっちゃけ、私が天空闘技場に来た理由はあっても、200階クラ
スで戦う意味はない。
一応250階の人に挑んで、何となく所持権を獲得しようと考えて
いるけど、要らないと言えば要らない。
私の実力がどれだけあるのかは理解しているし、能力の強さも原作
中で最強じゃないかと思う。
自分でハーレムを形成し守る。その為に強さを欲した前の私が必
死になって最強の能力を考え、女神の手によって最高の体とセンスを
貰った。
それをしっかりと鍛え、自分の物にして、数々の修羅場を余裕で回
避して来た私は、普通に王様にも届くはずだ。
だからと言ってそれを悪用する事も理由もないんだけど。
﹁⋮⋮とりあえず、向かいましょうか﹂
考えていたら、時間がそこそこ経過していたので、222階に向か
い控室で待機する。
91
﹁リナ選手、そろそろ時間です。控室を出て左の通路を真っ直ぐ進ん
で下さい﹂
﹁ん、了解﹂
係員に呼ばれて、指示の通り通路を進む。薄暗い通路に入った所
で、奥から光が差し込む。恐らく、ゲートが開き始めた。
なるほど、こんな感じなのね。ちょっとした裏側を知れて嬉しい
わ。
感動をしっかりと味わいながら通路を抜けると、視界に飛び込んで
今日はその力の本
一階で見せた超能力により、残りの試
きたのは大きめのリングと、その奥に見える相手側のゲート。
﹃先に現れたのはリナ選手
﹄
合全て、ここまで不戦勝にて登って来た神の僕
当の姿を見る事が出来るのか
観客の大きな声と胡散臭い解説が響く中、反対側のゲートが開き対
戦相手が現れた。
⋮⋮あれって独楽の人じゃないかしら。
4戦して3勝1敗とまずまず
その相手は、どこか見覚えがあった。
﹄
﹃そんなリナ選手の相手はギド選手
の戦績です
!!
たわね。
リングに上がって、思い出した。
﹁ここまでは、お嬢ちゃんも分かっている通り、一般人の戦い。だがこ
こからは念での戦い⋮⋮女だからと言って手加減はしな││﹂
﹁審判さん、早く始めて下さい。時間が惜しいです﹂
どうでもいいので、話はスルーに限る。
一本勝負
始め
﹂
長々と聞いてもいいけど、勝敗が決まっているなら早く終わる事に
時間無制限
!!
戦闘円舞曲
戦 い の ワ ル ツ
!!
越した事はない。
﹁ポイント&KO戦
審判が開始の合図を切った。
!!
﹁調 子 に 乗 っ て る と 痛 い 目 に 会 う 事 を 教 え て や ろ う
!!
!!
92
!!
!!
!!
そう言えば、コイツを含めてあの三人って初心者狩りがメインだっ
!!
﹂
ギドが杖を横にし、その上に独楽を10個出したかと思うと、その
独楽を地面に設置した。すると、独楽がそこそこの速度で私の周りを
囲みに来る。
そして、ガキィィィン││っと甲高い音を響かせ、私の背後でぶつ
かった独楽の片方が私目掛けて飛んで来る。
﹁⋮⋮ま、こんなものよね﹂
﹂
リナ選手はごく普通にギド選手の独楽を受け止め
私は、平然と受け止めた。
﹁な、何
﹄
﹃なな、なんと
たぁぁぁ
全独楽発射
﹂
!!
度のレベルね。
﹁だ、だがその程度で勝ったと思うなよ
何故当たらない
楽を出してきた。
﹁な、何故だ
﹂
!!
私の余裕に怒ったのか、ギドは開始そうそうだと言うのに全ての独
!!
本来、驚かれる事でもないと思うのだけれど⋮⋮やっぱり、この程
!!
!?
!!
になった方が儲かると思う。
?
は必要ないし、
練
練
ですらノーダメージに終わった威力。特に能力
だけで普通に無傷で全て叩き落とせる。
"
"
落すと、手が触れた時点で砕けてしまうけど。
もっとも、独楽自体の耐久度もそんなに無いみたいで、少し力んで
"
初期ゴンの
飛んで来る独楽全てを、手刀で叩き落とす。
まあ、この事を伝える理由もないし、もう終わりにしましょうか。
けど、残念ながらそれが叶う事は永遠にないでしょうし。
戦って名誉や富を得たいのはここに来た頃からの夢なんでしょう
独楽を簡単に操れるんだし、わりと人気が出るんじゃないかしら。
ジシャンとか曲芸師
りミステリアスね。始めの独楽の出し方もそうだけど、間違いなくマ
ただ、これだけの数をあの服の中に隠し持っていたとなると、かな
個。恐らくこれがギドの最大かつ限界なんでしょうね。
回避しながら念を纏う物体の数を感じ取ると、独楽の個数が55
!!
"
93
!!
﹂
⋮⋮あ、キルアのヨーヨーみたいな特殊合金で作ったら威力が上が
りそうね。
﹁で、まだ続けるかしら
﹂
し、こんな所で諦めはしないはず。
これで戦いを辞めるなんて言い出して、ゴンの成長の妨げ
らないといいけど⋮⋮そうなったら、私が手伝いましょう。
﹁あーあ⋮⋮9勝が遠いわね﹂
主に、私のモチベーション的な意味だ。
にな
まあ、初心者狩りを専門としている彼なら、もう理解してるはずだ
張って現実を認めなければいい。
う一度私に挑むぐらいの気概があればいい。馬鹿で、偶然だと言い
この試合で、ギドの士気が無くなっていないといい。悔しさで、も
今回は私が上だったけど、もし逆の場合でもそう感じる。
て勝利する。これに、何も面白さが無いのは誰にだって理解出来る。
蟻と巨像。天と地⋮⋮もはや、それ以上の実力差がある相手と戦っ
当然と言えば、当然の結果よね。
私の心を満たしていたのは、虚無感だった。
⋮⋮全然、面白く無かった。 い出す。
そして、帰って来た時の様にベッドに寝転んで、さっきの試合を思
観客や解説が盛り上がる中、私はただ無言で自室に戻った。
﹁勝者、リナ選手
﹁⋮⋮俺の負けだ﹂
リング上に残った独楽が一つになったので、一応聞いておく。
?
しょうか。
とりあえず、フロアマスターが強い事を祈りながら戦いを続けま
んでなければ、どうせ瞬殺のレベル。
カス⋮⋮何とかが、いたはずだけど、彼も彼で弱いし。ヒソカが遊
⋮⋮だけにならない事を祈るけど、多分一方的よね。
分かってはいた事だけど、残り9勝するまでこんな一方的な試合
?
94
!!
◆ ◆ ◆
第二戦。2月10日。相手は能面の男だった。
見えない左手とか言われていても、それが見えないのはあくまで一
般人だけで⋮⋮大きくなったり、伸びたりしたけどオーラを纏った私
の拳一発で打ち勝ち、相手の降参により勝利。
第三戦。2月12日。流れ通りで車椅子の男。
相手は私の強さを警戒してか、始めから鞭を持ち、なんたらかんた
らで鞭を振りながら私に迫って来た。
ただ、警戒しながらも電撃を仕込んである鞭を過信してか、顔にど
こか余裕を持っていた。
私は電撃に耐性があり効かないので、キルアと同様の方法で勝とう
か考え、情報が漏れるのもアレだったので、鞭を適当に弾いて相手の
真正面に移動。
95
相手が気づいた頃には、鞭を取り上げ場外に捨て、車椅子をこかし
て相手を転落させた状態に。そしてそのまま車椅子を取り上げて勝
利。
第四戦。2月15日。まさかのカスなんとか。
戦うと思っておらず、一瞬だけ驚いたけど試合開始。
ヒソカのリベンジにだけ燃えているのか、能力を見せようとして来
なかったので少し挑発。
女性だからと笑顔で受け流され少しイラついたので、私の最高速を
持って相手の背後に回って首に強打する。
そしてあっさりと勝利。どうやら、反応出来なかったらしい。
第5戦。2月20日。両刃剣を持ったおっさん。
﹂と返して、剣を奪って粉々に砕いて終了。
試合が始まると││﹁俺の獲物は良く斬れるぜ﹂と言われたので│
│﹁だからどうしたの
強化系の能力者で、地面を砕くなどそこそこのパワーを持ってお
第6戦。2月22日。2m50㎝ぐらいのデカい大男。
うでもよくなったのでスルー。
どんな能力か少しだけ気になったけど、泣き崩れている姿を見てど
?
り、一瞬ウボーと重なったけどそこまでのスピードは持っておらず。
触るのが嫌だったので、オーラを飛ばしたり、相手が砕いた元地面
の石をぶつけて勝利。
第7戦。2月25日。カストロリベンジ。名前覚えた。
今回は能力を使ってくれたが、そもそも私の回避速度に追いつけず
空振りばかり。
確かにお互い近い状態で回避していれば、私でもダブルに当たって
しまう。ただ、距離を取れば怖くない。
カストロも能力がばれた事に気づきつつも、周りの観客などにばれ
てヒソカとの再戦時に情報が知られる事を恐れたのか、終始重なった
まま攻撃をしてくる。
それじゃ流石に余裕過ぎたので、回避と同時に後ろに回り、右でミ
ドルキック。
前回と違って反応出来たのかダブルでガードした様子だけど、元々
ど。
で見る事で不自然なオーラの塊
そして、2月26日。街に繰り出した私は、天空闘技場受付の列に
並んでいるゴンとキルアに遭遇した。
◆ ◆ ◆
﹁あら、2人もここに来たのね﹂
自分で言ってて、なんて白々しい挨拶。そろそろかなと思ってたけ
ど、まさか今日だったなんて。
96
それを込みでオーラを込めて蹴っていたので、本人もろとも巻き込ん
で場外の壁に叩きつけた。
意識が無くなった様で、勝者はもちろん私だ。
凝
"
を使ってカストロの動きを確認してから
"
恐らくヒソカはカストロに対して始めから本気で行くつもりはな
凝
かった。カストロのダブルは
を確認できるから。
本気なら、始めから
"
動いたはず。まあ、使っても使わなくても結果は同じなんでしょうけ
"
﹁リナさん
久し振り
﹂
﹂
?
﹁嘘臭い﹂
は全然気づいてないわね。
?
﹁おしっ
追いついてやるから覚悟しとけよ
﹂
付け加えると、後3勝でクリアなんだけど、そこは黙っておく。
﹁200階﹂
そして不利を悟ったのか、キルアが先に折れた。
﹁はあ⋮⋮分かった。今、どこら辺にいるんだよ
﹂
これで少しはやる気になってくれるといいけど、約一名。ゴンだけ
視線がぶつかり、軽く火花が飛び散る。
でも、考えを改めて貰わなくていいので上から言っておく。
﹁キルアが私に追いついたら考えるわ﹂
やっぱり、そこだった。
﹁リナの本気を見せてくれたら考えを改めるよ﹂
力隠してる事で信用ないのかしら。
自分の行いを考えてみても、キルアには特に何もしてないし⋮⋮実
ある意味で嘘だから間違ってないけど、バッサリは酷い。
﹁酷くない
﹂
かなかった⋮⋮これを素直に伝えるのは問題でしょうし。
本当の理由は、私がいたら未来が変わるかも知れないのが怖くて行
建前だと用事があるって事で行かなかった。
﹁絶対にキルアを取り返すって、ゴンたちを信じてたからよ﹂
なんでゴンたちと一緒にいなかったんだよ
﹁もう一度ぐらいは会う気がしてたけど、このタイミングかよ。てか、
!!
しょうか。
﹂
⋮⋮そう言えば、ヒソカも来てるはずよね。見かけたら声を掛けま
ね。
外に出た目的は息抜きだったけど、これだけでかなり楽になったわ
手をひらひらと振りながら、その場を後にする。
﹁ええ、待ってるわ﹂
!! !!
97
!!
?
﹁なんか良く分からないけど、俺も追いつくよ
!!
いや、私が声を掛けられる方が早いかしら。
試験中は接触なかったけど、それは恐らく私の実力を読んだから。
試験内で戦って本気で命の削り合いになるのを避けたんだと思う。
ヒソカは自分が負けると考えてないでしょうけど、それでも一応は
天秤に掛けたんでしょう。
試験で、もし死んで団長のクロロと対戦やゴン、キルアの成長を見
る前に人生を終えるのか。勝って結果オーライになるのか。
確かに殺人鬼で戦闘狂だけど、そういった計算は誰よりもしてい
る。
まあ、襲ってきたら返り討ちなのは間違いないわね。
﹁うーん⋮⋮今日はどこに行こうかしら﹂
天空闘技場があまりもぬるいので、ほとんど暇だけど暇な日は適当
にご飯を食べ歩いている。何度かまずい物や、流石に食べれない物に
当たったけどそれもいい思い出。
98
それと、この辺りに良く顔を出していたり、知る人は天空闘技場の
有名人という事もあり、かなりこの辺りに詳しくなった。
今では知っている店の方が多く、飲食店に至っては行ってない店の
方が少ない。
もちろん、詳しいのは天空闘技場の周辺だけ。少し遠出するともう
どこか分からないけど。
一応、ウイングの自宅も知ってる。立ち寄る意味は無いので一回も
こんな所に焼鳥屋があったのね﹂
訪ねてすらない。
﹁ん
匂いなので間違いなく美味しいはず。今日のお昼ご飯⋮⋮夕ご飯
はここで決定ね。
﹁いらっしゃい﹂
店に入ると、中々厳つい店長がぶっきらぼうに挨拶してきた。
絵に書いた様な屋台のおっさんだった。キャラの濃さでは、ノブナ
トップとズボン。両方とも黒色で、腰の位置に黒いエプロン。
頭 に 所 々 黒 く 汚 れ た 白 い タ オ ル。ト ッ プ ス と ボ ト ム ス は タ ン ク
?
ぶらぶらしていると、少しややこしい道の先に焼鳥屋を発見。良い
?
ガといい勝負かもしれない。
⋮⋮オーラが見えるので念使いなんだろうけど、気にする事でもな
いわね。
開店して直ぐなのか、ただ普通に人か入ってないのかわからないけ
﹂
ど、どうやら私だけの様だ。
﹁おすすめはあるかしら
﹁ふむ⋮⋮アイツ以外に来たのが久々でな。おすすめなら全部という
事になるが﹂
後者のようね。
確かに、ここってかなり分かりにくいし⋮⋮地元民でも余裕で知ら
ないんじゃないかしら。
むしろ、店長の言ってたアイツって誰だかわからないけど、その人
﹂
しか来てない様だしこれは確定ね。 ﹁メニュー次第ね⋮⋮全部で何種類
いて来たのかも知れない。
ヤ
⋮⋮きっと、無意識でメンチを意識していて、食に対して興味が湧
貰った才能のお陰で何となくで店のレベルが分かる様になっていた。
幾度となく食べ歩き、もはや趣味になりそうなレベル。なおかつ、
これで不味かったらお話しにならないけど、まあ大丈夫そう。
いでいい。
どれだけ食べても別に太りはしないので、カロリーなんて気にしな
﹁ほう⋮⋮分かった﹂
﹁それじゃ、全部頂くわ。順番は任せるわ﹂
出来るし。
ら。ジャポン語なのと、店長さんの顔立ちがジャポン系だから納得は
⋮⋮そういえば、店の名前は八夜だったわね。店長さんの名前かし
ヤ
8って数字に、なんかこだわりでもあるのかしら。
種類だ﹂
﹁焼鳥なら8種類。米系が8種類。おつまみ系が8種類。その他が8
?
そして、ほどなくして一品目が出てきて、次々に腹に納めていく内
に全てのメニューを食べ終わる。
99
?
﹁腹6分目って所かしら﹂
﹁アイツ以外にここまで食べる奴がいるなんてな⋮⋮追加はあるかい
﹂
﹂
﹁焼鳥をもう1セット。聞いちゃ駄目ならごめんなさい。アイツって
誰なのかしら
﹁歳は
﹂
一瞬、聞いちゃいけなかったかと思った。
﹁娘だ﹂
店長の手が止まり、こちらを向いて視線が合う。
?
﹂
?
全てが焼き終わった様で、グレーの長方形皿に乗せて目の前に置か
﹁ん、ありがとう﹂
﹁そうか⋮⋮ほらよ﹂
﹁なら、来るまでは居させてもらうわ﹂
なりなのかしら。
店長の言葉を察するに、100階以上にはいるみたいだから、それ
て仕入れてないし、そもそも知らないわね。
天空闘技場で女の子なんて⋮⋮見た事ないと思ったけど、情報なん
それなら、待っていようかしら。
と思うが﹂
﹁今日は確か⋮⋮天空闘技場に行ってるな。そろそろ飯を食いに来る
﹁機会があれば会ってみたいわ﹂
すっごい渋い顔⋮⋮そんなにうるさいのね。
﹁アイツには少しどころか、黙ってる方が俺は楽だ﹂
使いだし、娘も念使いの可能性もある。これは興味が湧くわね。
それにしても、同い年で活発系⋮⋮少し会ってみたいわ。店長が念
﹁逆に苦労するわよ
﹁嬢ちゃん、それで16か。家の娘にもその落ち着きが欲しい所だ﹂
﹁へえ⋮⋮同い年ね﹂
そう言いながら、手際良く焼鳥8本を焼き始める。
﹁16だ。今年の12月で17になる﹂
?
れた。もも、皮、ささみ、つくね、ねぎま、ハツ、レバー、セセリの
100
?
順だ。
どれから食べようか考え、腕時計で一度時間を確認する。
まだまだ、時間はあるわね。
ゆっくり食べる事を決め、とりあえずレバーから食べる。
味の方は追加を余裕で頼むほどのレベル。美食ハンターからすれ
ばどのぐらいのレベルかは分からないけど、私は胸を張って紹介でき
る。
﹂
機会があればメンチとか誘ってみたいけど⋮⋮メンチならこれ以
上の物をいっぱい食べてるでしょうね。
﹁あ、聞きたかったんだけど⋮⋮娘さんの実力ってどのくらい
﹁俺より強いな﹂
﹂
即答って事は、店長が師匠なのかしら。
﹁念使いとして
﹁ああ﹂
纏
なるほど⋮⋮店長自体の実力が分からないから推測は難しいけど、
?
オーラから考えると独楽よりは絶対に強いわね。ただ纏ってる
﹂
﹂
から、かなりの力強さを感じる。 ﹁200階クラスなの
﹁ご飯食べに来ましたよ
﹁いや、今は確か││﹂
?
く開いた引き戸が端まで行ってぶつかった音だ。
そして、その音の次に少しうるさいけど元気な声。
どうやら、娘らしい。
お父さんの店にお客様
﹂
﹁お前は何でいつもそうなんだ⋮⋮他に客がいる﹂
﹁えっ
!?
"
そんな彼女の顔立ちは、かなりというか私にも匹敵するレベルで、
普通のゴムで色は黒だけど、髪のボリュームであまり見えない。
解くと恐らく腰は越える長さのピンクのサイドポニー。髪留めは
察していた。
親子の仲良い会話が聞こえて来る中、私はただ冷静に娘の身体を観
!?
101
?
店長の言葉を遮ったのは、何かが爆発した様な大きさの音。勢い良
!!
"
先程の元気な声が出しているとは思えない。可愛いより、綺麗の部
類。
薄 い ピ ン ク の ふ ん わ り ブ イ カ ッ ト ブ ラ ウ ス に 黒 い ホ ッ ト パ ン ツ。
それに黒のオーバーニーハイソックス。ブラウスの丈でホットパン
ツがチラチラとしか見えず、オーバーニーハイにより絶対領域が大変
な事になっている。
どちらかと言えば、前の世界の女性の恰好に近い。
⋮⋮そして、私は気づいてしまった。恰好や容姿は問題ないけど、
彼女の障害になってる物体に。
なんか、あのお客さんから凄いオーラが⋮⋮﹂
あれは、許せないわ。即刻排除ね。
﹁⋮⋮ひっ
椅子から立ち上がり、目標に接近。
メンチを助けた時よりも早く。カストロを倒した時よりも早く。
怒りにより肉体の限界を超えて出た最高速度は、ぶっちゃけ自分が
後ろ
﹂
一番驚いているけど、とりあえずは障害の排除からね。
﹁え
!?
使って切断する。
だった。
ボンッ││という音と共に、彼女のボトムスがちぎれんばかりに膨
らみ、正面からはガッツリと谷間が姿を見せていた。
﹁うん。良い仕事したわ﹂
﹂
サラシ
"
﹁きゃあぁぁ
私が切断したのは、彼女の胸を押さえていた
く事に成功した。
﹁な、な、ななななな何ですか
凄く動揺してらっしゃる。
いきなり
﹂
!?
﹁悪を成敗したのよ﹂
小さいのに、胸は同じくらい。凶器ね。
⋮⋮あれ、もしかしなくても私より大きいわね。メンチより身長が
ただ、その問いかけを無視して改めて彼女の胸を見る。
!?
何処か不自然な姿勢かつ、重心が少しずれていたのでそこから気づ
"
!!
102
!?
そして、障害に向けて手を伸ばし、力加減を間違えない様に爪を
?
﹁悪
すか
このサラシが悪だったんですか⋮⋮って、何でそうなるんで
﹂
彼女、声自体は大きいけどこの位は普通ね。観客の方がうるさい
わ。
店長的にはこれがうるさいんでしょうけど。
﹂
﹁気にしないでいいわ﹂
﹁気にしますよ
!!
これが彼女、ヤヤとのファーストコンタクトだった。
103
!? !?
8話﹃変態と変態﹄
﹁それじゃ、改めてまして。リナ・ノザト。200階の闘士よ﹂
何が改めましてかは、全く分からないけど。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
なんか、怯えられてる。
その表情がかなりぐっと来るのだけど、今は耐えましょう。
﹁こら。自己紹介ぐらいしねえか﹂
﹁⋮⋮ヤヤ・サクラヅキです。今日で200階に上がりました﹂
﹂
渋々といった様子で名前とクラスと教えてくれる。
﹁それはおめでとう。ヤヤは念使いよね
﹁まあ⋮⋮﹂
を解そうと優しく声を掛けてるのに全く効果がない。
﹁お、お父さんは少し黙ってて
﹂
﹁すまねえな。いつもは黙れと言ってもうるさいんだがな﹂
情的にも。 むしろ、ちょっとずつ距離が開いている気がする。物理的にも、心
緊張
?
いつもの様に
セクハラで切り込んでもいいのだけれど、今は間
とはいえ、現状を打破するアイデアはない。
な、なんか恐ろしく気まずいわね。原因はもちろん私だけど。
!!
﹂
いと思ったオーラに気づかれた。私のオーラが思ってたより出てた
どうやら、ヤヤは感性が強いらしい。自分でも僅かにしか出してな
そして、距離がまた開く。
﹁ひっ
る機会はあるわよね⋮⋮。
まあ、セクハラをする事は確定だから、いずれこっちの道に引きず
でもない。
状況。さらに、初対面で無理やりという事になるのであんまり乗り気
メンチの様に別の場所に連れ込むのも手だけど、セクハラが駄目な
る。
違いなく逆効果。店長さんも見ている、いる状況なのも悪評価に繋が
?
104
?
!?
可能性の方が大きいけど。
って、それよりも解決策⋮⋮は、浮かびそうにないわね。今は何を
やっても言っても逆効果⋮⋮無限ループね。
ここは一度出直して、時間が解決してくれるのを待ちましょうか。
店長さんからの援護も期待して。
﹁ま、同じ階の闘士なら会う機会があると思うわ。少し先輩だし、聞き
たい事があったら2222号室を訪ねて頂戴﹂
﹁⋮⋮ありがとうございます﹂
会計を済ませて、店長に一回アイコンタクト。
﹁⋮⋮ん﹂
無事に伝わったと思いたい。
そして、二人の視線を感じながら店を出た。
◆ ◆ ◆
その笑顔とぶつけられる禍々しいオーラに、不思議と悪寒等が感じ
なかった。
105
﹁⋮⋮やあ﹂
200階に帰ってきたら、語尾にトランプのマークが付いてそうな
マジシャンと遭遇した。
私と目が合い、手を軽く挙げて気軽に挨拶してくる。 ﹁⋮⋮ん﹂
相手がいくら狂人でも、無視するのはアレなので同じ様に挨拶を返
す。
﹂
﹁まさか君がここにいたなんてね⋮⋮あ、そうだ。さっき人から聞い
たよ。カス⋮⋮何とかを倒したんだって
﹂
﹁対して強くなかっただけよ。ヒソカはリベンジマッチがあるのよね
に思えて来る。
ヒソカも名前を覚えて無かったのね。ここまで来ると、なんか不憫
?
﹁ああ。でも、今はそれよりも君に興味があるかな﹂
?
普通の念使いなら、この時点で逃げ腰になってそうだけど、私が無
関心なだけかしら。
﹁冗談は顔のペイントだけにしなさい﹂
﹁意味が分からないよ﹂
苦笑いのヒソカだった。
﹁それが狙いよ﹂
うん、軽口を言い合う位なら楽しいわね。原作キャラの中でも一位
二位を争うキャラの濃さだし⋮⋮以外と話してみれば普通よね。
ただ、一部のネジが存在しないのは間違いない。
⋮⋮私も無いわね。ゴンもないし。誰かしらネジは飛んでるわね。
﹁君ってそんなに変な人だったのか﹂
苦笑いから、今度は真顔でそう言われる。
﹁ヒソカには負けてると思ってるわよ﹂
なので私も真顔で返しておく。
106
﹁⋮⋮なんか、気が削がれたよ。君とここで戦う事はなさそうだ﹂
言葉の通り、オーラ当たりが弱くなった。
﹁それは残念ね。無様に負ける姿を見たかったのだけれど﹂
﹁せめて、もっと挑発の気を込めてくれないか⋮⋮本気じゃないのは
分かるけどさ﹂
やっぱり、意外と普通ね。
よく考えてみれば、好きで人を殺している訳じゃなくて、戦いが好
﹂
きで結果的に人が死んでるだけなのかしら。
﹁話は変わるけど、人殺しが好きなの
気になったので聞いてみる。
予想は出来ていた答えでも、本当にヒソカの言う通り。
全くもってその通りだった。
﹁それもそうね﹂
所を選ばずに殺るよ﹂
﹁もちろん、嫌いじゃないよ。ただ、人殺しが好きならそもそも時と場
ヒソカからそう聞かされるとそれはそれで違和感があるわね。
﹁ん⋮⋮難しい質問だけど、答えはノーかな﹂
?
私も女の子が好きだからって誰でも良い訳じゃないし、時と場所を
選ぶ。つまりはそれと同じ事。
﹂
ヒソカが好きなのは、命の削り合いなんでしょう。
﹁で、質問の意図はなんだい
﹁好奇心ね﹂
転生者として、という言葉は飲み込んでそう返す。
もっとも、世界を借りた私の世界であって、本来のヒソカとは違う
生き物のはず。
﹂
まあ、特に関わってはいないから、私が影響させた部分は少ないし、
ほぼ一緒なんでしょうけど。
﹁それは僕に興味が湧いたって事かい
﹁ああ
﹂
伝わるんだ、この言い訳。
﹁仕様か⋮⋮それはしょうがない﹂
﹁仕様ね﹂
考えてなかったわ。
言われてみればそうね。適当に口から出した言葉だったから、特に
﹁それ、実は関係ないよね﹂
﹁生憎、女にしか興味ないから﹂
本音というより、そもそも本気で戦意を私を向けてない。
も本音じゃない。
もっとも、戦意なんてほとんど感じ無かったし、ヒソカの今の言葉
﹁⋮⋮はあ。君は本当にツレナイねえ﹂
なので、ヒソカの戦意を無に返す。
﹁寝言は寝ている時に言うから寝言なのよ﹂
オーラをズズッ││っと私に向けて来る。
?
﹁っ
﹂
事な事に気が付かなかったのよ。旅団って事はマチ、シズク、パクノ
ダがいるじゃない。
107
?
何故かこのタイミングで大切な事を断片的に思い出した。
!?
⋮⋮そう言えばヒソカって旅団よね。なんで今の今までそんな大
!?
流石に僕でも驚いたよ﹂
この私が
というか、ヨークシン編に入るんだしノエルにも用事があったのを
忘れて⋮⋮忘れて
い。
というか、誰を忘れている
ただ、これは何か違う⋮⋮。
?
とすれば、私の消えた記憶
について関わっている人間は一人。
好きな者を忘れる方がおかしいのよね。
﹁そうよね⋮⋮﹂
即答だった。
﹁ん、ないね﹂
トランプタワーを作って遊んでるヒソカに尋ねる。
﹁ねえ。自分のオモチャ対象を忘れた事ある
﹂
純粋に時間が経っていて思い出せない。忘れているなら仕方がな
になるけど、完全には思い出せない。
キャラクターを繋いで頑張って思い出してみれば、それが少しまし
けど、ストーリー内容が少し靄が掛っている様な感じ。
ヨークシンについてはキャラクター等は問題なくすっと出て来る
い出せない。
自分の記憶に問いただしてみる。が、天空闘技場から先の内容を思
一体、いつから
﹁ちょっと待って、大事な事を思い出したの﹂
﹁いきなりどうしたんだい
?
聞かされた内容は、かなり衝撃的だった。
﹁ん、最初から話しましょう││﹂
﹁それじゃ、早速聞くわ。私の記憶について教えて﹂
﹁そろそろ、掛って来る頃だと思っていたわ﹂
そして、待つ事3コール。
携帯を手にし、電話帳から母へと連絡。
に行く。
ヒソカの言葉を聞くより早く、その場を後にして携帯を部屋に取り
﹁それは僕にここにいろって││﹂
﹁用事を思い出したから、ちょっと電話﹂
?
108
?
?
?
?
◆ ◆ ◆
﹁だから、旅団を紹介してくれないかしら
﹂
﹁僕を待たせた挙句、話の脈絡も無しに何の話だい﹂
母から聞かされた内容は簡単で衝撃。
どうやら、パクノダと同じ系の念能力で、私の記憶を読んだ。その
後、転生者の私を女の子として調教中についでに記憶を操作していた
とか。
完全に忘れていなかったのは、そこで母が上手く調整していたらし
い。
だから試験になればメンチの事を思い出したり、試験が終われば天
空闘技場を思い出した。自然と身体がその方向に進んでいたのはこ
れが理由だった。
自分でも、今思い返せば流れに違和感を感じる。会長との面談で答
えが出て来なかったし。
﹁4番﹂
﹁⋮⋮ふむ﹂
そして、電話の結果。私の忘れていた記憶が戻って来たので、フラ
グを建築する為に動く事に決めた。
﹂
﹁君にはそれを伝えていないし、彼も喋る性格じゃないと思うんだけ
どね。知っているという事は、それが君の能力かい
﹁ある意味ね﹂
利害は一致している。
﹁なら、共闘しましょう﹂
い。
ゆらりと立ち上がり、トランプを構える。先程よりもオーラが強
﹁ただ、紹介は難しいかな。あれは僕のオモチャだ﹂
関わっている時点で、そもそも未来は変わるというのに。
今まで必要以上に未来の変化を怖がっていた自分が面白い。私が
記憶を基にした未来予知。ある意味で能力と言っても差支えない。
?
109
?
ヒソカは強い相手を求め、私は女の子を求める。
﹂
なら、女の子を貰う代わりに、私は強い相手を提供する。
﹁⋮⋮女の子かい
﹁ええ。良い女の子がいたら紹介して欲しい。その代わり、ヒソカが
戦いたい相手がいるならそれに協力するわ﹂
もっとも、旅団の三人以外にヒソカに手伝って貰う相手はいないの
だけれど。
それに、手伝いと言っても最初の切っ掛けを楽に作る為。協力が必
要ないと言えば必要ない。
﹁オモチャを譲るのはもったいないけど⋮⋮君が殺す訳でもないし、
残るね﹂
﹁狙うなら全力で死守するわよ﹂
﹁なるほど、これで君と戦える可能性も生まれる訳だ﹂
﹂
ヒソカはにやっと笑い、トランプを仕舞った。
﹁交渉成立かしら
﹁ああ﹂
これで、三人はクリアね。
﹁それじゃ、する事がいっぱいあるからまた今度ね。これが私の連絡
先よ﹂
携帯を出して赤外線を準備する。
﹁了解﹂
そして、ヒソカと連絡先を交換して部屋に戻った。
早速パソコンを付けて、メモ帳を起動する。
﹁今日が26日だから⋮⋮﹂
カレンダーを見ながら、予定の日にちを大体で入力していく。
これから、忙しくも楽しくなるわね。
110
?
?
未来に期待をしながら、日を跨いでもパソコンと向き合った。
﹂
◆ ◆ ◆
﹁ん
?
円
あ、好きな所座って﹂
で来客者を確認すると、ヤヤだった。
予定を書き終え、時計が昼を示した頃にチャイムが鳴る。
﹂
?
?
んだけど⋮⋮。
﹁私と、戦ってくれませんか
﹂
この子、本気で忘れてたわね。それほど美味しかったなら別にいい
﹁ああっ、そうでした﹂
﹁それは何より。で、本題は何かしら
ヤヤが深く気にしていないなら私も気にしないけど。
ずよね
いや、別に媚薬とか睡眠薬とか入ってないけど⋮⋮昨日の今日のは
そして、ヤヤは素直にクッキーを食べた。
﹁あ、美味しい﹂
のかも知れない。
昔の自分も、ギャルゲー知識を試していたら彼女ぐらい出来ていた
何かあったら試してみましょうか。
な、と思ったけど。
と、ギャルゲーで学んだのだけれど、本当に効くのね。そんな馬鹿
﹁⋮⋮はい﹂
こういうタイプにはこの攻め方が一番効く。
﹁ヤヤが良くても、私の気が済まないのよ。素直に頂きなさい﹂
まあ、言うと思ったけど。
﹁あっ、お構いなく﹂
に用意したんだけど。
何となくでクッキーを作って正解だった。本来は自分で食べる為
﹁備え付けの紅茶で悪いけど、茶菓子は手作りよ﹂
ら。
昨日よりは怯えも減って⋮⋮というか、怯えと言うより緊張かし
まさか、本当に来るなんて思っていなかったわ。昨日の今日だし。
扉を開けて部屋に入れ、お茶の用意に移る。
﹁お、お邪魔します﹂
﹁私に用事かしら
"
?
111
?
"
よ り に も よ っ て そ ん な 本 題 な の ね。薄 々 気 づ い て い た と は い え、
困ったわ。
どれだけ実力があるか分からないし、能力も不明。
私が負ける事は恐らくないけど、女の子が相手だと少し面倒なのよ
ね。
もっとも、能力を使わなかったら問題ないのだけど。
﹁いいわよ﹂
なので、普通に受ける。
﹂
本気で命の削り合いをする訳じゃないし、万が一でも死ぬ事はな
い。
⋮⋮はずよね。
﹁良かった⋮⋮それじゃ、いつにしましょうか
念での戦いだし、万が一が起こる可能性があるのが困る。全てはヤ
ヤの能力次第だけど。
﹁早い内がいいわね﹂
ヨークシンやグリードアイランドまで時間はかなりあるけど、それ
でも時間があった方が良い。
﹂
予定への準備や、お金を溜めてもいいし。
﹁それなら、明日とかどうでしょう
﹁ん、ならそれでいいわ﹂
私には何の得も無いのよね。
﹁それじゃ、それで申請しておきますね﹂
まあ、いっか。
い
今の笑顔だけでお釣りが出るし、揺れる胸を間近で見れる権利を貰
えると考えれば問題なんて些細な事。
というか、よく今まで真面目だったわね。
普通ならこのままベッドに押し倒すレベルなんだけど⋮⋮。
﹁や っ ぱ り 美 味 し い ⋮⋮ 後 で レ シ ピ と か 聞 い て も い い の か な
や、駄目かな﹂
なるほど、そっちが素なのね。独り言がかなり可愛い。
?
112
?
かなり話がスムーズに進んだけど、本当に戦っていいのかしら。
?
から現れた存在なら、恐らくこの子は私
そう言えば、この子はオリジナルキャラなのよね。
私がこの世に生まれた
にとっての重要キャラ。
いや、キャラって言うよりかは人ね。私はもうこの世界の人物だ
し。
﹁戦いが終わったらスカウトしてみましょうか﹂
﹁うーん、何故か女の子としての敗北感がするのは気のせいかな⋮⋮
ううん、私も負けてないはず﹂
やっぱり、聞こえてないのね。
ヤヤは、独り言のゾーンに入ると周りの音が聞こえなくなるっぽ
い。とりわけ、今の興味は私のクッキーの様ね。 それじゃ、ゾーンから抜けるまでゆっくり待ちましょうか。
ふむ、下着はピンクと白の縞々⋮⋮これはこれでいいわね。私は一
枚も持ってないけど。
そこから、ヤヤが気づくまでに数分を要した。
113
?
9話﹃vsヤヤ﹄
9話﹃vsヤヤ﹄
﹃さあ、本日のメインイベント、リナvsヤヤ選手
﹄
容姿は恐ろしく整っており、スタイルも抜群
﹂
ふんわりと笑顔。
だけ緊張してるだけですから﹂
圧倒的な強さで
さらに、その
﹁な、なんとか大丈夫です⋮⋮ここまで注目されるのが初めてで、少し
て考えていないはず。
ヤヤも決して、私との実力差が読めないはずは無いし、勝てるなん
だからこそ、私はヤヤを鍛えてあげる程度の考えしかない。
のは分かりきっている。
考えているかは完全に捉える事は出来なくても、命までは掛けてない
対戦相手といえど、今回はただの練習試合の様なもの。ヤヤがどう
﹁⋮⋮大丈夫
いるのは誰にでも理解出来た。
私と同じ様に身体を動かしており、その表情は少し硬い。緊張して
観察をほどほどに終えて、視線をヤヤに向ける。
もっとも、能力を使う気はないし見られてもリスクは無い。
ずかしい。
見られる事は私にとって何の問題もないけど、これはこれで少し恥
ヒソカを発見した。
!!
ぶっちゃけ、女とし
﹃二人とも、200階の闘士では数少ない女性の闘士
柔軟体操で身体を柔らかくしながら、観客を観察していた。
今日は一段と観客が多いわね。
戦ヤヤ選手
敵を瞬殺してきたリナ選手に対抗するのは、200階に上がって初対
!!
て勝てる要素が一ミリたりとも感じられません⋮⋮﹄
!!
ただ、その笑顔に言葉以上の緊張が籠っているのに気づいていない
のはヤヤ本人だけ。
114
!!
?
﹁そ、そう﹂
思わず、言葉がつまり苦笑いになってしまったけど、恐らく気づか
れていないわね。
緊張する事は何もないのだけれど⋮⋮ヤヤの性格ならしょうがな
いわね。流石に、戦闘が始まってみても同じ様子なんて事はないで
しょうけど。
仮にも念使い。ヤヤはあわよくば勝とうと思っているでしょうし、
私が舐めた真似をすれば問答無用で命を取りに来るはず。
﹂
主に、ヒソカの様な戦い方だけど、あれはいくらなんでも舐めすぎ
よね。
﹁両者、もう問題ないか
お互いストレッチが終わったタイミングで審判がそう聞いて来る。
﹁いいわよ﹂
﹁は、はいっ﹂
時間無制限
一本勝負
﹂
そもそも、準備すらいらないという言葉は飲み込んだ。
﹁では、ポイント&KO制
!!
!!
﹁開始
﹂
﹁先手は頂きます
﹂
ちろん、裂く事も余裕のはず。
一言で言うならイカツイ。殺傷能力はかなりありそうで、突きはも
かけ離れた形状、デザインになっている。
柄の長さは2m程で、先端の槍頭は三又になっていてシンプルとは
た。
る指輪に息を吹きかけると、一瞬の内に槍がヤヤの右手に掴まれてい
審判が試合のルールを発表している中、ヤヤが右手薬指にはめてい
へえ⋮⋮あの指輪って槍になるのね。凄いわ。
!!
を構えたヤヤが良いスピードで突っ込んで来る。 その表情に緊張の色は一切なく、しっかりと戦う者の顔だった。
﹂
﹁えい﹂
﹁えぇ
115
?
審判がその場から離れるよりも早く、矛先を地面すれすれに向け槍
!!
!!
!?
﹂
そして、その突進を足を掛ける事で失敗に終わらす。
﹁きゃぁぁぁ
自身の速度、反射神経を越える私の速度、突然失うバランス、不恰
好な体勢。
全てがヤヤにとっての許容範囲外だった様で、そのままゴロゴロと
1ポイント、リナ
﹂
地面を転がってリングアウトした。そこそこ、大きな音が耳に届い
た。
﹁ダ、ダウン
がこかされた様です
﹄
ぱっと見だと自爆した様に見えたのかしら。
﹁な、なんて戦法⋮⋮でも、まだまだやれます
﹂
﹃な、何が起こったのか一瞬分かりませんでしたが、どうやらヤヤ選手
審判のその言葉に、観客がワァァァ││っと盛り上がる。
!!
﹁っ
﹂
﹁今度は、本気で行きますから⋮⋮油断しないで下さいね﹂
ヤヤがリングに上がって来て、先程と同じように槍を構える。 !!
!!
た瞬間にその場から離れた。
﹁今のをかわせるんですね﹂
距離を取り、私が真っ先に捉えたのは先ほどまでヤヤが居た場所。
これがヤヤ選手の全力なのかぁぁぁ
﹄
石版が、ヤヤが初動で踏み込んだ個所からヒビ割れていた。
﹃は、早すぎます
﹁なんとかね﹂
!!
凝
が出来なかったのが少し痛い。
いといけないわね。
考えを改めないといけないのと⋮⋮アレがどんな能力かを見極めな
油断していたから仕方がないと言っても、完全に私の落ち度。少し
に反応がほんの少しだけ遅れた。
ヤヤの最高速度が最初に見た速度の少し上ぐらい、と考えていた為
ギリギリまで言わないものの、かなり危なかった。
!!
ただ、あの速度で来ると分かっているなら対処は余裕。まだまだ、
"
116
!!
!!
少し冷ややかなトーンで言われた言葉を聞いた後、私はヤヤが動い
!?
"
私が有利ね。
﹁このまま、突き進みます
私は、片目だけの
凝
﹂
でヤヤを見ながら、その全ての突きの回避、
続けて、槍のリーチになった所で連続突き。
ヤヤが、同じ速度で突っ込んで来る。
!!
"
凝
で詳しく見る限り、迫って来た時と槍の速度にオーラが付い
考える。
付いているので、迫って来た速度、槍を繰り出す速度に影響してると
そして、気になるのがこの速度。どうやら槍の方にも速度の強化が
で作られた物なら十分にあり得るので、恐らくこれが有力。
けど指輪になっていた原理は今の所不明。ただし、あれが他者の能力
槍は単体でオーラを纏ってない事から、あれは実物の物と判断する
考えたけど、どうやら間違っているわね。
⋮⋮多分、ヤヤは強化系。初めは槍を取り出した所から具現化系と
時に弾きながら、能力について考察を始める。
"
柄で叩けるリーチ。
﹁もう気づかれましたか⋮⋮﹂
迎撃にと振られた槍を、右手で受け止める。
私の予想通り、軽々と受け止める事に成功した。 ﹂
位置的には先程まで回避を続けていた槍の矛先のリーチではなく、
回避する。
私は、ある一つの考えから、ヤヤが槍を突き出した瞬間に右斜めに
⋮⋮うーん、中々に難しいけど、とりあえず試しましょうか。
ているし、この選択肢はなくなる。
度にオーラが付いてこれないはず。これはさっきも自分で結論付け
まだまだ未熟なヤヤのオーラ技術で、この攻撃速度とダッシュの速
違うわね。
妥当な所は全体的な自己強化⋮⋮と考えるのが普通だけど、どうにも
上記を踏まえて強化系だと判断すると、次は何を強化しているか。
てこれているので、絶対にヤヤ純粋の速度じゃない。
"
﹁まだ正解かは分からないけど、とりあえずは倒れてね
?
117
"
﹁え
って、またですか
﹂
!?
!!
を崩してこかす。
リナ、ポイント2
!!
﹄
顔して対処し、現在2対0。このまま同じ調子でやられてしまうのか
﹃ヤヤ選手の怒涛の攻撃が続いていたと思いきや、リナ選手は涼しい
刺したけど。まだそこに気が付いている分、見込みはあるわね。
もっとも、手を離したらそのまま力づくで槍を奪って壁にでも突き
瞬時に槍から片手でも離せばダウンにはならなかったはず。
る事が出来ず倒れる。
そして、ヤヤは槍の柄を私が力を入れて掴んでいる為、体制を整え
﹁ダウン
﹂
少し苦い顔をしているヤヤに右足で足払いをして、今度は左に体勢
?
実況により場が温まる中、槍から手を離して距離を取る。
本当なら追撃するのがセオリーだけど、今はこれでいい。
﹁で、私の予想だと⋮⋮ヤヤの能力は強化系。強化しているのは、突進
力といった所かしら﹂
﹁⋮⋮正解です﹂
突進は、本来の意味じゃなくて、呼んで字の如くの突進。突き進む
の意味。
だから槍の突く速度と、ヤヤの踏み込みの速度が速くなった。
この予想を正確にしたのは、先程のヤヤの動き。
全体的な速度を強化していたなら、柄で叩く時の速度も速くなって
いる事が当然なはず。
それを確かめる為にわざと柄のリーチに踏み込んで、能力の実態を
確かめた。
確かに、槍は突く方が圧倒的に強く、そのリーチを活かしやすい。
ただ、それだけで勝つことは難しい。時に薙ぎ払い等の動作を入れる
事により、自身のリーチをキープして優位に立つ事が可能になるか
ら。
それなのに、突き一点で攻撃して来る当たり、その辺りに能力の制
約があると予想した。
118
!?
﹁ですが、能力を読まれた所で私が不利になるとは限りません﹂
﹁その通りね﹂
これが、強化系の強み。
今回はただ純粋に私の体術が勝っていた為に、一発も当たらなかっ
凝
で確認し、その他は常に
堅
で戦うべ
をしながら攻撃をかわすのも、余裕があったからこそ出来
たけど、並の念使いならもう蜂の巣になっていたはず。
凝
"
た。
普通なら、隙を見て
"
難しくなる。
﹁では、行きますよ
﹂
﹂
なら、許可も貰ったし使いましょうか。
ラッとしますけど⋮⋮それでお願いします﹂
﹁涼 し い 顔 し て 攻 撃 を 避 け て る リ ナ さ ん に 言 わ れ る と、少 し だ け イ
いかしら
﹁私も攻撃に移りたいんだけど⋮⋮全力を出せないのよ。それでもい
ぶっちゃけ、槍を掴んだのは冷や汗ものだったし。
私なら間違いなく付けている。
らくそこがヤヤの優しい性格が表れている部分でもある。
柄が鮫肌の様になっていなかったのが、幸いと言えば幸いで⋮⋮恐
ず。
槍頭に柄の方にも刃がある事から、本来の動きはもっとエグイは
戦闘というなら、その半分も実力を確認できていない。
見ていない。
今は私があえて防戦一方の動きをしている為に、ヤヤの回避行動は
!!
これからの動きは何となく予想は付くものの、余裕で対処する事は
さらに付け加えると⋮⋮あれが能力の全てではない所。
た連続突きのコースになる。
うにも槍の使い方は一流。普通に戦っても体術で勝ってなければ、ま
能力を読めたからと言って、突進以外のモーションを取らせて動こ
がる猛攻なのは見て分かる。
き。いくら自分の防御力に自信があっても、一撃でも喰らえば死に繋
"
"
?
119
"
"
ヒソカが見ているし、メディアに残るのは嫌だけど、見られて困る
能力でもないのよね。
だからと言って、ここまで隠してきた手の内を公にするのは⋮⋮う
﹂
ん、素直に使いましょうか。
﹁っ
能力を発動し、ヤヤの槍を右手で掴んで地面に叩きつける。
ぶつかった衝撃で石版が砕け、小さいクレーターの様に変化し、辺
加減はしてるけど﹂
りには煙幕が生まれる。
﹁大丈夫
﹁ダウン&クリティカル
3ポイント、リナ
﹂
﹄
いきなり煙が生まれた事しか理
これがリナ選手の本気なのかぁぁぁ
﹃こ、今度は本当に何が起こった
解できませんでした
!!
いるだけなのに。
ホットパンツからチラッと見える下着を、能力の観察と半々で戦って
こっちは少しだけ真面目に戦ってるフリをして物凄く揺れる胸と、
あー⋮⋮しっかりと戦士ね。なんか申し訳なくなるわ。
ですから﹂
﹁それで全力でないリナさんの動きには驚きですけど、諦めるのは嫌
初の頃よりも強い。 ヤヤの目には、まだまだ戦意が籠っていた。どちらかといえば、最
わよね﹂
﹁で、このまま棄権してくれるとありがたいのだけど⋮⋮まあ、しない
がるこの流れ。かなりやりにくい。
毎回毎回、一度シーン││っとなってから、その反動の様に盛り上
!!
!?
!!
煙が晴れた所で、少しふらつきながら立ち上がり、再度槍を構えた。
﹁ギリギリでしたが⋮⋮一応﹂
傷、普通で軽傷レベル。
しっかりガードしたはず。ヤヤの念での防御力なら、本当に悪くて重
叩きつけた感触はあっても、ヤヤの悲鳴等は聞こえなかったから、
煙の中のヤヤに声を掛けて、反応を待つ。
?
実況と観客がさらにうるさくなる。
!!
120
!?
もっとも、観客には早すぎて残像レベルでしか見えていないはずだ
から、この姿を一人⋮⋮いや、ヒソカは見えてるわね。後でお金とか
請求してみましょう。
はあ⋮⋮その純粋無垢で真っ直ぐな視線が痛いわ。
とはいえ、真面目に戦う事は難しいし、棄権してくれるのが一番で
も棄権はない。
攻撃をかわしながら考える事じゃないけど、何かいい方法はないか
しら。
こういう事を考えると、本当に人間操作とかヒソカのバンジーガム
の様な拘束系の能力が⋮⋮⋮⋮拘束
あ、その手があったわ。これなら素直に棄権してくれるわね。問題
を挙げるとしたら前以上に警戒される恐れがある事だけど⋮⋮そこ
を上手くやれば無問題。
ヤヤの猛攻を回避しながら、プランを組み立てて行く。
今からなら、酷い目に合わなく
数秒で悪魔のプランが完成した。
﹂
﹁本当に棄権はしてくれないのね
て済むわよ﹂
早速、一つ目の手順を踏む。
﹁自分に負けたくないですから
を手に入れた。
何の問題も無く動けるので、直ぐに実行に移る。
﹂
まず、ヤヤの方向に突っ込み、抱きしめる。
﹁えぇ
る。 ﹂
もちろん、観客に見られない様に私の下着と肌の間。通称下着ポ
ちょ、ちょっと待って下さい
ケットに挟んでおく。
﹁え、え
!!
ヤヤの背後に回る。
ヤヤがあたふたして、槍を落とした所で場外の壁まで蹴り飛ばし、
?
121
?
無事に、一つ目をクリア。これで大義名分
?
﹁それなら、しょうがないわね⋮⋮嫌でも棄権して貰うわ﹂
?
!!
次に背中に手を入れて、ブラの背中ホックを外してブラを抜き取
!?
やっと現状を理解したヤヤに対して拘束用ロープを2つ、胸の谷間
﹂
から取り出して腕と足に取り付ける。
﹁な、何ですかこれ
﹁ど、どうなって
﹂
て手ごろな岩でワイヤー部分を抑える。
膝かっくんから、正面に回って地面に寝転ばせ、腕を上に移動させ
!?
る。
暴れられると困るので、7㎝にした剣を取り出して、
隠
を使い
"
﹄
!!
はぁ
やぁ
って、なんで力が
﹂
恐らく、10秒にも満たなかったわね。上出来、上出来。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
解説できません
及びません。実況として申し訳ありませんが、この試合は謎すぎます
﹃⋮⋮一体、何が起こったのでしょうか。今回の試合、何もかも理解が
これで力が入らなくなるはずなので、ヤヤの地面拘束が完成した。
見えなくし、ヤヤを傷つけない様に肌にぺちっ、と当てる。
"
ヤヤのお腹と足を地面に拘束。力一杯、杭の部分を殴って深く固定す
最後の拘束用ロープ。地面や壁に打ち付ける用を2つ取り出して、
!?
!!
!?
ヤヤのお腹に座って、一息付く。
﹁ふっ
!!
﹂
!!
てない様ね。
だから諦めて貰うのが一番なんだけど⋮⋮どうにも、まだ心が折れ
になる。
仮に抜け出せても、さっきの状態が続くだけで結果的にまた同じ事
戦うもなにも、抜け出す事が不可能な時点で勝敗は決まっている。
﹁いや、この状態からは絶対に無理よ﹂
﹁で、でも⋮⋮まだ私は戦えます
したから、これ以上戦うのが無駄だった。
残酷かも知れないけど、これが今は一番。戦いのセンスなどは理解
﹁だから棄権してって言ったのよ﹂
けど、ここは我慢。
頑張ってもがいている姿が可愛くて、本来の目的を忘れそうになる
!!
122
!!
﹁た、確かに微動だにしかしかませんけど⋮⋮何とか、方法を思いつけ
ば﹂
﹂
心が折れないのは戦闘での強みでもあるから問題ないけど、現状把
握はしっかり出来るべきなのよね。
﹁まあ、諦めないのは結構よ。でも⋮⋮審判さん、カウントよね
﹁はっ、そうでした﹂
そして、カウント0の声が響き、勝負が決まった。
◆ ◆ ◆
﹁ん、お疲れ様﹂
﹁⋮⋮お疲れ様でした﹂
ヤヤを拘束から解除し、別々のゲートから出て改めてヤヤに会いに
向かった。
ボロ負けだったのが悔しいのか、椅子に座って肩を落としているの
は落ち込んでいる様に見える。
﹁結局、一度も攻撃が当たらない⋮⋮どころか、何もできませんでし
た﹂
実際は、ヤヤがもう少し本気なら一矢報いる事ぐらいは出来たはず
なのよね。
恐らくは、念での対人経験の少なさと、自分の能力の把握。上手な
使い方を理解していないだけで、今回はそもそも負けしか結果が無い
試合だった。
それでも、私に能力を一つ使わせた事は凄いのだけど。
﹂
まあ、ヤヤからすれば使わせたというより、使ってくれたが正解か
しら。
﹁でも、これで自分の実力に気づけたでしょ
フォローを始める。
そういえば、どうしてヤヤは対戦を申し込んできたのかしら。
自 分 の 実 力 を 知 り た か っ た っ て い う の が 一 番 で し ょ う け ど ⋮⋮
123
?
とりあえず、落ち込んでいる姿を見るのはちょっとだけ辛いので、
?
うーん、聞きましょうか。
﹁そうですね⋮⋮けど、まさかここまで歯が立たないなんて思ってま
せんでした﹂
﹂ ﹁その理由は追々説明してあげるわ。それよりも、ヤヤは何で私と勝
負をしたの
﹂
﹁ま、負けたくなかったんです
同い年の女の子に
﹂
!!
⋮⋮。
私より、上だと証明したかった
﹁え
﹂
﹂
恥ずかしさと悔しさ⋮⋮ね。
身体をビクッと動かし、また肩が震える。
﹁っ⋮⋮﹂
﹁可愛いわね﹂
ぷるぷる震えてるヤヤの両肩に手を置き、思った事を口に出す。
﹁なるほど﹂
ここでの沈黙は、もう答えよね。
﹁⋮⋮﹂
﹁負けず嫌い
やっとここで、一つの言葉が頭に浮かんだ。
?
同 い 年 の 女 の 子 に 負 け た く な か っ た。ヤ ヤ の 言 葉 は こ う だ か ら
だから、勝負を挑んで⋮⋮何か違うわね。
えーと、つまりは⋮⋮私に勝ちたかった。いや、負けたくなかった。
しんだ。
顔を真っ赤にして、私の目を見て返って来た言葉は、少し理解に苦
!!
ぼそぼそっとで、聞こえなかったのでもう一度聞く。
﹁ん
﹁そ、その⋮⋮たくなくて﹂ 内心驚きながら、答えを待つ。
そ、そこまで聞いちゃいけない理由があったのかしら。
てしまった。
質問すると、ヤヤの顔が段々と赤くなり、それに気づいたのか俯い
?
?
124
?
?
座っている状態のヤヤを抱きしめて、私の胸に顔を埋める。
全く、なんて可愛い生き物なのよ。これはもう決定ね。
この娘は、絶対に手元に欲しい。
元から仲間にスカウトするつもりだったけど、スカウトどころがど
んな手を使ってでも仲間にしましょう。
ヤ
ヤ
メンチは仕事上一緒にいるのが難しいから、定期的に会おうって事
私
になってるけど、ヤヤなら大丈夫。
それに間違いなく、イレギュラーが生み出したイレギュラー。自然
な流れなんでしょう。
﹁誇りなさい。ヤヤはいずれ私に追いつくわ﹂
だから、今はただ泣き止んで貰いましょう。
﹁今回はヤヤが弱かったからじゃなくて、私が強すぎたから。ヤヤの
才能は決して並じゃないし、実力もかなりある。能力は優秀だし、こ
﹂
の先もっともっと強くなるわ﹂
﹁本当⋮⋮ですか
﹁ええ。ヤヤが強くなりたいのなら、私が特訓してあげる。ヤヤがレ
シピを知りたいのなら、私は教えてあげる。ヤヤが望むなら、私はそ
れに応えてあげるわ﹂
目的の為とはいえ、これが私の本心。
さらに優しく、少し強く抱きしめる。
﹁⋮⋮お願いします﹂
﹁ん、任された﹂
なんか最近、私って男前じゃないかしら。
この落ち着きと優しさ、それで男でイケメンなら今頃はハーレムを
築いていたわね。
今でも目指してるとは言っても、私はほぼ完全に女だし、男に戻り
たいとも思わない。それに、誰でも良い訳じゃない。
もっとも、目標のハーレムは皆で仲良くだから⋮⋮遠い未来になり
そうね。
そしてそのまま、ヤヤが泣き止むまで抱きしめ続けた。
125
?
10話﹃特訓初日﹄
﹂
﹁それじゃ、第一回目の特訓を始めたいと思うわ﹂
﹁よろしくお願いします
した。
練とか見せなくていいの
﹁まずは能力を教えて貰うわ﹂
﹁能力
?
終了なのだけれど。
もっとも、カストロの様にメモリ不足になってしまったら、そこで
と使い方がないか詮索する事によって戦術が広がる。
自分で作っているのだから知っていて当たり前ではあるけど、もっ
だからこそ重要なのは自身の能力を、真から理解する事。
い。
能力があるから相手を倒せる訳で、念の総量が勝負を決める訳じゃな
それでも、いくら念総量が上だろうと能力次第じゃ倒せる。むしろ
るのはわかる。
念の移動速度が戦闘での奥義で、その念を増やす事が強さにつなが
基礎が大切なのは分かるけど、私は重要だとは思っていない。
﹁そんなもの見なくても問題ないわ。大事なのは必殺技、能力よ﹂
ただ、私の方針だと基礎はとりあえず置いておく。
当然の疑問ではあるわね。
﹂
ここまで来る間にウォームアップは済ませたので、早速始める事に
ており、一瞬自分が小さくなったのかと錯覚してしまう。
て来た。名前は不明。人よりも遥かに太い木や植物で森が形成され
試合が終わった翌日、ヤヤと二人で近所の樹海の少し深くまでやっ
!!
周
を使いながらしっかり戦えていたので、ヤヤの
﹁分かった。一から説明するね﹂
それに、槍を
"
﹁用途は試合で見せた通り。分かってると思うけど、どの方向にも使
⋮⋮いえ、突っ込まないわ。名前なんて飾りだもの。
﹁能力名は超突猛進。試合中に読まれたけど、突進力の強化だよ﹂
スーパーチャージ
基礎能力はかなり高い。見るまでもなく優秀な部類。
"
126
?
えるよ﹂
﹁試しに一人で動いて貰っていいかしら
﹁うん、了解﹂
﹂
ヤヤから少し離れて、動きを観察する。
私の思った通り、本来はかなり優秀な能力だった。相手が私じゃな
ければ、瞬殺できたはず。
全方位にショートダッシュ。空中に跳ぶ事はもちろん、降りる事も
可能。動作には緩急があり突進という性質上、進む方向は丸分かりで
も急転回は出来るのでリスクにならない。
槍を掴んでも、槍だけを後ろに動かす事により返し刃にやられる
か、そのままヤヤの直打のコンボ。
ちなみに、あの槍は親父さんの念能力によって作られた物らしい。
職人気質っぽいと思っていたけど、まさか鍛冶が念能力だと思わな
かった。
親父さんの名前は正宗。作った武器などはすべて小さく収納でき
る、ちょっとしたミステリーアイテムになるらしい。
一瞬、念の範疇を越えていると思ったけど、特質系らしく本来は鍛
冶職人と聞いてなんか納得した。
私が試合中に弱点を教えたからか、横払いを動きから除外してい
る。
﹁うん、大体わかったわ﹂
﹂
手を二回叩いて、終了の合図を出す。
﹁どう
克服出来ている様ね﹂
﹁良かった﹂
ヤヤはほっと胸を撫で下ろした。
まあ、良い事なのは間違いないけど、実際にはまだまだ。私からす
れば動きに無駄があるし、全体的に甘い。
﹁それじゃ、次の能力を見せて貰うわ﹂
﹁あー、えーっと﹂ 127
?
﹁その能力自体には問題ないし、動きも悪くない。私が教えた欠点も
?
次の能力を見せてと言っただけなのに、何故か歯切れが悪かった。
﹂
視線も空に向いているし、そんなに使えない能力なのかしら。
﹁どうしたの
﹁まだ、考えてないんです﹂
苦笑いでそう言ってくる。
﹁なるほどね﹂
もちろん、自身のフィーリ
それならそれを考える必要が出て来るけど⋮⋮強化系のヤヤなら
一個だけ直ぐに浮かぶわね。
﹁それじゃ、一つ提案してもいいかしら
﹁矛先⋮⋮
﹂
周
で槍を強化してるでしょ
あ、これじゃ伝わらないわね。
﹁つまりは、
﹁ああ、なるほど
る。
﹂
﹂
もちろん念の力強さや能力発動の速さ、ヤヤ本人が強い必要があ
界なら、勝利を掴むのが簡単になる。
攻撃を読んでかわしても命中し、一発の致命傷が勝負となるこの世
ても方向を変えて刺せばいい。
この能力があれば、まず近づく事が難しくなり、懐に入られたとし
ると思うわ﹂
﹁実用にするのは難しいけど、戦闘で使えればかなり厄介な能力にな
どうやら理解してくれたらしい。
?
そして、刺す時の槍頭
だけど⋮⋮槍の矛先を変化させるってのはどうかしら
﹁分かったわ。これはあくまで参考だから鵜呑みにしないで欲しいん
⋮⋮と思ったけど、私もかなり迷ったし誰だって普通ね。
ゴンみたいな感じね。強化系はこういう所が難しいのかしら。
﹁それが、スーパーチャージは直ぐ決まったけど、他は全然ダメなの﹂
デアがあるなら聞くわ﹂
ングは大切だから、聞いてしまうと影響されるかも知れないし、アイ
?
それを踏まえても、完成した時にはまさに一撃必殺の能力。
128
?
"
のオーラの方向を変化させるのよ﹂
"
!!
?
?
王様を倒すとかになると別問題になるけど⋮⋮大概の相手は楽々
と倒せるはず。
﹁うん、なんかしっくりきたかな﹂
﹁それは何より﹂
ヤヤの笑顔に、思わず抱き締めそうになったけど自重した。
これから特訓を始めるのに、こんな序盤で私が暴走して流れを断つ
のも悪い。
﹂
⋮⋮本当は今すぐにでもベッドにレッツゴーしたいのだけれど。
﹁えーと、変化系の特訓でいいのかな
﹂
となれば、出来る事は口での説明になる。
?
﹁ごめんごめん。私は変化系使えないのよ﹂
﹂
それも伝えて⋮⋮なかったわね。
﹁それはちょっと困ったね。リナは何系統なの
あれ
強化系じゃなかったの
﹁特質系よ﹂
﹁特質
またヤヤに驚かれる。
﹂
の他。一瞬、ヒソカに頼もうと思ったけどそれは嫌だし。
今日一日で変化系を鍛えようにも難しいし、教えるとなれば持って
ただ、無理なものは無理なのよね。
ヤに驚かれてしまった。
意外だったのか、教えるのが無理だと捉えたのか分からないけどヤ
﹁えぇ
私は、変化系を使った事がない。
ビスケの様に、オーラを数字に変えようとして思い出した。
﹁そうね。まずはオーラの形状を変える所から⋮⋮あ、無理だわ﹂
?
﹁それじゃ、順番に説明しましょうか﹂
は良い方ね。
実際は特質系だけど、あながち間違いじゃないから、ヤヤの観察眼
能力の向上と見たんでしょう。
を強化した速度に、私が何の能力も見せずに追いついていたし、身体
強化系だと思われたのは、恐らく試合中の動きから。ヤヤの突進力
?
129
!?
?
!?
他人にばれるとリスクが増すんだけど⋮⋮まあ、いいわ。明確な弱
どうしたの
﹂
点がある訳じゃないし、ヤヤの敵は私の敵でもあるしね。
﹁ん
ちなみに、この指摘で本日15回目。
。
"
これだけ我慢している私を褒めて欲しい。
200%
もちろん、そんな事は私に関係ないので、その時は残念と伝えた。
い訳じゃないはず。
だからといって、ヤヤ自身はノーマルだと言っていたし襲って欲し
る。そして、その上で特訓をして欲しいとの事。
もうヤヤには私の性癖については試合が終わった後に説明してあ
ヤヤに指摘されたので思考を元に戻す。
﹁これは失敬したわ﹂
﹁ま、またいつものオーラ出てるよ﹂
まあ、最終どこでもデキるけど⋮⋮やっぱりベッドが一番ね。
が惜しい。
我慢は身体に毒だから、本当に惜しい。今すぐベッドに行けないの
ら。
どうして美少女の表情というものは、私を動かそうとするのかし
すると困った顔をされ、また抱き締めそうになる。
﹁ごめん、全然わかんない﹂
発動はしたので、ヤヤをからかう為に説明を端折ってみた。
﹁以上よ﹂
試合ぶりに能力を発動する。
﹁何でもないわ。それじゃまず、特質の能力からね﹂
理解してもらいましょう。
一応はオーラが増幅するから分かるだろうけど⋮⋮うん、何となく
ただ、能力の半数が目に見えない。
ない。
確かに、能力を教える事に問題はない。その説明に見せるのも問題
そして、見せようとした所で戸惑った。
?
﹁で、説明に戻ると⋮⋮今の状態の私は、具現化・操作を
"
130
?
強化を
﹂
140%
﹁えぇぇぇ
で使えるわ﹂
そ、ヤヤが驚愕したのは何もおかしくない。
?
少し長い説明が必要ね。
﹁⋮⋮でも、どういう能力なの
﹂
﹁私はそれを使って、念能力全体を強化しているわ﹂
しっかり教えたのね、親父さん。
るって奴だよね﹂
﹁う、うん。自分が決めたルールに従う事によって、念能力が強くな
﹁ミステリーポイント。制約と誓約は知っているかしら
﹂
これは念能力の基本中の基本で、誰もが知っている事。だからこ
化・放出が60%。反対側の強化が40%。
例えば、特質系の私は特質が100%。操作・具現化が80%。変
質を除いて、1つ離れて行く毎に20%下がる。
そして、適性系統を最後まで極めれる数値は100%。そこから特
計周りになっており、その中の一つが本人の適性になる。
元にするのは六性図。強化・放出・操作・特質・具現化・変化と時
違う。
本来、念とは六系統に分かれ、自身の適性によって使えるレベルが
今度は驚かれてもしょうがない。
"
れ
が
私
の
現
実
?
原作知識がなかったらこの発想は浮かばなかったわね。
なんでそんな質問したの﹂
﹁で、ここからが本命なのだけれど⋮⋮説明いるかしら
﹁いるよ
﹂
理解はしてくれた様で良かったけど、そこまで驚く能力⋮⋮うん、
驚きを通り越して唖然。ヤヤの表情からそれが伝わった。
﹁⋮⋮ほえー﹂
キャパシティであって、それに伴って能力レベルも上昇しているわ﹂
0%を強化に100%。操作・具現化に120%づつね。上がるのは
60%と放出系の25%を三つに振り分けているわ⋮⋮つまり、34
来る。能力名は、私が定めた変価交換。これを使って、私の変化系の
こ
﹁適性系統を削って、その値を四倍にして他の系統に割り振る事が出
?
131
!?
"
!?
﹁ぶっちゃけ、面倒﹂
﹁うわぁ⋮⋮ぶっちゃけだね﹂
本当に面倒なのよね。
大前提の能力は説明したけど、ここからまだまだ説明が必要。
これからヤヤとチームを組んで戦う事になるとはいえ、私は一人の
方が楽。目的の為なら人を殺したりもするし、やりたい事が多いから
自然と振り回す事になるはず。
その時にヤヤが足手まといになると思わないけど、役に立つとも思
わない。自分の性格を理解し、強さを自負しているからこそ、そう思
う。
こんな私は本来、仲間を持つべきじゃない人間だわ。
﹂
それなのに今回、ヤヤを加えるのはとんだ笑い話にしかならないわ
ね。
﹁一部だけでいいかしら
結論、強化系の能力だけ説明しましょう。
﹁うん、それでいいよ﹂
あっさりと了承された。
その対応に、逆に全部話そうか悩み、意見を曲げずに進める事にす
る。
帝 ﹄。身体能力、念総
セイクリッド・エンペラー
﹁ヤヤを倒した強化系の能力。名前は﹃ 星
量、顕在オーラ量が全て向上。140%もあるから、どのぐらい強く
なるかは⋮⋮ちょっと見せましょうか﹂
まずは適当な近い巨木に能力なしで、攻防力50でパンチ。木を砕
いた音が辺りにこだまし、動物たちの鳴き声が聞こえる。
殴った衝撃で細かい木片が私に飛んできて、決して当たってもダ
メージにならないけど、木が倒れて来そうだったので、ついでにひょ
いっと身体を横に移動して回避した。
気になって殴ってみたけど、多少砕け
木は結局、他の木に引っ掛かって倒れて来なかった。
﹁まあ、これが能力なしね﹂
﹂
!?
132
?
﹁いやいや、どんな威力なの
ただけだったよ
!?
なるほど、同じ様な音が聞こえたのは、やっぱりヤヤが木を殴った
音だったのね。
ヤヤが殴った木を見ると、五分の一は砕けていた。木の直径が10
m位なので、かなりの威力だと思う。
私は五分の三を砕いたので、ヤヤの三倍くらい威力がある事が分
かった。
﹁気にしないで良いわ。次は能力ありだけど⋮⋮﹂
攻防力25って所かしら。これで同じだけ砕いたら能力での強化
は大体二倍って分かるし。
威力を決めたので早速パンチ。そして、先程と同じように移動し
た。
﹁このように、能力ありとなしだと二倍の差があるわ﹂
﹁凄いのは伝わったけど、まだ能力あるって事が怖いくらいだよ﹂
むしろそうでないと困るのよね。一般人守りながらでも、戦って相
ピッ○ロは嫌よ、ピ○コロは。確かに腕は再生してたけど。
﹂
というか、この世界にあるのね。ジャ○プ繋がりかしら。
﹁ご、ごめんね。けど、それが本来の能力だよね
に勝って││﹃お前がいてくれたから﹄とかほざいて、俺格好良いを
確かこの能力を考えたのも、女の子の前で戦って、腕無くなった後
﹁多分そうだけど、再生させる場面なんて一生に一度あるかないか﹂
?
133
手を倒せるぐらいじゃないといけないし。
まあ、大抵の相手は星帝と体術だけで倒せるはずだから、使用する
のはいつになるやら。
﹂
﹁そんなものよ。強化系の能力は以上⋮⋮あ、完全に忘れていたわ﹂
﹁ん
﹂
?
﹁やめなさい、その例え﹂
﹁緑の宇宙人
だし、発動した時の身体の情報通りにしか再生しないけど﹂
ら身体の部分が無くなれば、大体再生するわ。もちろん即死なら無理
﹁見せる事は難しいから言葉だけになるけど、この能力を発動してか
そう言えば、この能力にちょっとしたおまけが付いていたわね。
?
したかったとかだったわね。
ああ、今考えると阿保だわ。本当に阿保。
普通に圧勝する方が間違いなく格好良い。
﹁なんかもう、規格外だね。リナに勝てる人いるのかな⋮⋮﹂
﹁きっといないわよ。むしろいたら困るわ﹂
一応、能力相性として操作系に倒される可能性はあるけど、操作系
な ら 倒 さ れ る 前 に 倒 す の は 余 裕。王 様 の 肉 体 レ ベ ル で 操 作 系 な ら
やっといい勝負。
前提条件として、私が星帝だけを使っている場合のみだけど。
﹁あっさり言っちゃうんだね﹂
﹁ええ。で、そろそろ特訓始めましょうか﹂
﹂
ずっと脱線していたので、通常軌道に戻す。危うく本来の目的を忘
れる所だった。
﹁あ、そうだね。まず⋮⋮変化系の特訓かな
﹁そう思ったけど、ちょっと待って欲しいわ。別の能力でヤヤを見る
わ﹂
間違いなく、実戦感が無くなっているわね。
しっかりと戦闘能力以外の能力を作っていたのに、なんで使ってな
円
も覚えている回数しか使ってなかったし。
"
かったのかしら。
も
"
から。
﹂
の持続が一時間ほど。
円
﹁え、私の情報
﹂
円
セイクリッド・ワールド
を使用した。
円
で
も簡単には出来るのね⋮⋮前方
"
﹁別
堅
ヤヤの疑問に答えずに、操作系の能力を発動し
﹁
"
向のみってなんか面白いわね。能力と性格の影響かしら﹂
"
﹁これがもう一つの能力。 能力名は﹃星 帝 の 世 界﹄。私が
"
?
触れた万物の性質等を、欲しい情報だけ選択して把握出来るわ﹂ "
"
"
?
134
?
確かに使う意味すらない場面と相手だったのはある。今日まで
凝
"
⋮⋮まあ、面倒だったのが一番かしら。もちろん二番目は意味ない
"
"
ビ⋮⋮ビー
なんとかの能力を参考にして作った能力で、人を選
択するとその本人が知らない事はもちろん、才能も把握可能。簡単に
言えば、ゲームのステータス画面の様な物を頭の中で見る事が出来
る。
ただし、ステータス画面といっても体力や念の総量を正確な数値と
して見る事は出来ない。それに加えて過去、性格、所持金等。本人と
は現状関係なく性質でない部分、事柄も無理。
つまり、理解しているけど説明は出来ない事がある。
本来は戦闘の前準備で使う能力で、相手の能力、必殺技、顕在オー
ラ、念の総量、癖、好む戦闘スタイル、テンプレになっている動きを
大雑把に確認し、戦闘に挑む。
結果として、相手は私に弱点と能力を知られている上で戦闘をしな
くてはならない。念使いとして、最も隠匿すべき個所がばれている状
態で戦うのは、軽く死を意味する。
今回はヤヤを対象にしているけど、私自身に使う事も可能。適当に
コンディションを測ったりして、病気になってないか判別できる。
円
の性質を操作してい
もっとも、そんなヤワな身体じゃないので病気にはならないけど。
ちなみに、この能力は特質との複合で、
"
ぶん女神のお陰。
﹁あのさ⋮⋮人間なの
﹂
る⋮⋮解釈なんだけど、本来この解釈が出来るとは思っていない。た
"
口かしら
﹂
﹂
﹁セ○でもないわよ⋮⋮って、そんなつまらない冗談を言うのはこの
﹁それじゃ完全体の方
﹁人間じゃなくても、ピッコ○大魔王じゃないわよ﹂
?
?
張る。
﹁いはははは、いあいほ
﹂
る。強くしたり、弱くしたり。
ちょっと感じた怒りはどこかに消え去ったけど、ぐいぐいと引っ張
あ、なんかエロイ⋮⋮これは続行ね。
!!
135
?
ヤヤの正面に移動し、両指三本を口内に突っ込んでから左右に引っ
?
﹁ひなぁ、いはいって⋮⋮ほんなにふうひはれはら、ふるひいほぉ﹂
﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮涙目で口から涎を垂らされたら、続行せざるを得ないわね
﹁ほひはひへ、はのひんえる
﹁ばれちゃったわね⋮⋮でもやめない
﹂
ヤヤががしっと私の手を掴んで来るが、能力を発動して抵抗。これ
でビクともしない。
﹁ちょっほ、なんへほんなほきだけぇ
﹁へったいひがうよ
﹂
﹁こんな時に使う能力なのよ、きっと﹂
!?
﹁はひっ
﹂
ト部分が翻るのを無視して私の口元に持ってくる。
足を使ってリュックサックから魚肉ソーセージを取り出し、スカー
あ、そう言えば⋮⋮。
!?
﹂
ままヤヤの口に突っ込んだ。
﹁んぐぅ
!!
﹂
!!
﹂
!?
﹂
!!
◆ ◆ ◆
なんて、呑気な事を私は思った。
樹海の深い所に来ていて正解だったわね。
﹁ひはぁぁぁ
﹁もっといくわよ
溶けるかどうか分からないけど⋮⋮。
余裕ね。
間違いないわ、このまま何時間でも遊べる。舐めて溶けてなるまで
﹁んぷっ、んむぅ
いている両親指を使ってソーセージを前後に動かす。
食べられると困るので指を四本づつに変えて、中から顎を固定。空
﹁あぁぁぁ、いいわ。ヤヤのその表情、本当に最高よ
﹂
そして、外のビニール部分を噛み切って開封。出てきた中身をその
日頃から柔軟を欠かさない努力の賜物だ。
!?
!?
136
!!
!?
!!
リナがヤヤを玩具にして遊んでいる頃、遥か上空の部屋にてその遊
このオーラは彼女かな⋮⋮物凄く邪悪だけど、どんな獲物
戯に気づいた者がいた。
﹁んん
を捕まえたのかな﹂
似非マジシャン、ヒソカである。
﹁あ、この前の娘かな。彼女も中々に美味しそうだったけど⋮⋮﹂
ヒソカはトランプタワーを作っていた手を止め、ヤヤを狙った場合
のリスクとリターンを考え始めた。
だが、いくら考えても自身の天秤が釣り合わなかったので、考える
のを止めタワー制作に戻る。
﹁自分の命は大事にしないとね⋮⋮死ぬのは最悪の結果だ﹂
自身が最強だと思っていたヒソカは、リナに出会って価値観を変え
た。いや、正確には最強になるにはどうしたらいいかを考えるように
なった。
今、トランプタワーを作っていたのも、思考だけでは手持無沙汰に
なるからである。
ヒソカは自分より明確に強い人間。勝てる見込みすらない相手を
見つけて、少なからず喜んでいた。それと同時に無謀だと感じてい
た。
弱気になっているじゃなく、ただの事実。現状、リナに勝つ手段は
全く浮かんでいない。
能力も不明、本気の体術も不明。知っているのは、女性に対して変
態で試合中は手加減している事だけ。
﹁悩むねえ⋮⋮﹂ ヒソカはトン││と、一番下の段を指で叩き、未完成なタワーを崩
す。
やっぱり、勝利の方程式を見つけられないのだ。
底知れぬ怪物。ヒソカはリナをそう捉えている。
ただ、そんなリナにヒソカが付けた点数は0点。根本的に、ジャン
ルが違うと考えているからこその点数だった。
137
?
﹁彼女、どうやったらあんな化け物に育ったんだろうか﹂
今度会った時にでも聞こうと思い、ヒソカは別の事を考え始めるの
であった。
◆ ◆ ◆
﹁あ、顎が疲れた⋮⋮﹂
﹁いい筋トレだったわね﹂
ヤヤの口に魚肉ソーセージを突っ込んでから数時間が経過して、そ
の行為が終了。無理やり突っ込んでいたので、歯に当たってちょっと
﹂
ずつ削れて最終的にヤヤの腹に納まった。
﹂
﹁けど、一体何の意味があったの
﹁ん
﹁⋮⋮拷問の訓練
﹂
﹁ソーセージを口に突っ込んで、そこまで意味あったかなぁって﹂
もしかして、知らないのかしら。
?
れは便利ね。
これは、本当に知らなかった様ね。深くは突っ込まないけど⋮⋮こ
﹁あ、なるほど。そういう意味があったんだね。確かに苦しかった﹂
?
﹂
これからは時々メニューに加えるわ。それじゃ、特訓の
今度から何かあったら、これを利用させて貰いましょう。
﹁でしょ
﹂
続きやるわよ
﹁うん
!!
?
これから、どんな事をしようかしら。
恐らく数か月続く特訓が、今日一日で楽しみの要素に全変わり。特
訓メニューと称して、ヤヤに色んな事を強要できるなんて、私にはご
褒美でしかないわね。
特訓を続けるヤヤを横目に、私は別メニューを考え始めた。
138
?
どうやら私の仲間兼玩具は、最高レベルで扱いやすい様だった。
!!
ヨークシン編
250階のフロアマスター、バーバリア⋮⋮
11話﹃いざ、新天地﹄
﹄
﹃さあ、始まりました
は
﹁ふぅ﹂
凝
能力
もちろん大事よ。
今回で、戦闘において大事なのは、改めて初動だと理解した。
﹁大丈夫。ヤヤでも楽勝だったわよ﹂
﹁いやいや、リナが強すぎただけだって。私ならもっと苦労したよ﹂
だったわね。
むしろ、拷問の特訓と称して色々ヤれた事が、私にとってご褒美
かなり速かった。おかげで私の苦労は少なくて済んだ。
私の見込み通り、ヤヤには恐ろしいほどの才能があり、飲み込みも
ション当日になる日に、ここでの最後の特訓を行っていた。
ヤヤの特訓を始めてから数か月。一週間後にヨークシンのオーク
﹁結局、あの程度のレベルだったのよ﹂
◆ ◆ ◆
場から立ち去った。
そして、リングに赤い花を咲かせた男の死体に背を向けて、私は会
誰かが聞いてる訳じゃなかったけど、顔が熱くなる。
あ、蹴りに蹴りが掛っちゃったわね。恥ずかしい。
を殺し、試合に蹴りを付けた。
試合のゴングが鳴り、何よりも早く。私は蹴りの一撃で対戦者の男
!!
怠ってはいけないわ。
になる。
だけど、相手が能力を発動する前に倒してしまえば、どちらも不要
"? ?
139
?
"
凝
は不要だったわね。
いや、私は能力を使った身体能力で戦ったから、結局は能力に頼っ
ている事になるけど⋮⋮まあ、
﹁これだからチート人間は⋮⋮﹂
を言うのが増えたし、出
?
﹂
﹂
?
﹁⋮⋮え
ごめん、もう一度言って﹂
ヤヤの言葉にすかさずツッコミを入れ、自分の意見を伝える。
﹁本当にって何よ。いつも私は普通でしょ
﹁だ、だよね。良かった⋮⋮本当にイカレタのかと思った﹂
﹁うん、忘れて。ほとんど冗談よ﹂
ヤヤの表情がとても愉快な事になっていた。
﹁あ、あ、そう﹂
それに、最後の言葉。自分で言ってて気持ち悪い。
シストじゃなかったわ。
いや、待て、私。反射的にポーズまで取って伝えたけど、別にナル
﹁否定はしないわ⋮⋮だって、女の子だもん﹂
﹁リナってナルシストだよね﹂
反論した。
とりあえず、チート人間とか言う不名誉な種類分けは嫌だったので
﹁チート人間じゃないわ⋮⋮美少女よ
会った当初より間違いなくメンタルは強固になったはず。
今の様に溜息を付きながら、私に文句
で、ヤヤは特訓と拷問の成果か、色々と強くなった。
"
!!
﹂
ヤヤの次の反応は、何となく予想出来るけど、もう一度伝える。
﹁⋮⋮私は普通でしょ
﹂
空を見て、これから会える原作キャラクターたちに思いを馳せた。
あと、一週間ね⋮⋮。
私は、ヤヤの口に魚肉ソーセージ二本を突っ込んで黙らせる。
﹁んぶっ
﹁ていっ﹂
﹁いやいやいや。どこをどう見ても││﹂
?
140
"
すると、ヤヤは口を大きく開けてから、言葉を催促してきた。
?
!?
◆ ◆ ◆
そ し て、9 月 1 日 の 早 朝。私 と ヤ ヤ は、全 身 が 隠 れ る ロ ー ブ を 羽
織ってヨークシンの地に降り立っていた。
﹂
﹁話した通り、仲間と合流するんだけど⋮⋮とりあえず携帯ショップ
ね﹂
﹁え、なんで
﹁ヤヤ、携帯持ってないでしょ﹂
﹁あ、そうだった﹂
というのは一つの理由で、本当は三人と合流するのが楽だから。
私はハンターじゃな
時間が不明なので、とりあえず早めに来たけど⋮⋮大丈夫よね。
﹁でも、現金は持ってないし、カードも無いよ
いし﹂
?
﹂
﹁⋮⋮そこそこ一緒に生活してたのに、私が買ってあげる選択肢は浮
﹂
かんでこないの
﹁いいの
?
ヤヤとは本当に長い付き合いになりそうなので、しっかりと手順を
踏んで好感度を上げているつもりだけど⋮⋮遅いペースなのかしら。
﹂
﹁また、いつものオーラ出てるよ﹂
﹁出してるのよ
ね。
としても、何かないと携帯ショップには入らないから人がいないの
なるほど。いくらヨークシンに活気があり、早朝から人が大勢いる
ゴンたちの姿はなく、店内には店主が一人いるだけだった。
﹁いいわよ、別に。で、携帯ショップに着いたわけだけど⋮⋮﹂
﹁な、なんかごめんね﹂
まあ、そこか可愛いのは間違いけど。
が、ヤヤのせいでツッコミにされるのよね。
このヤヤの天然、どうにかなって欲しいわ。普通はボケ担当の私
少し怒気を混ぜて返す。
!!
141
?
一発ぐらい、ヤッた方がいいのかもしれないわね。
?
﹁いらっしゃい
オススメは││﹂
﹁それよりも、黒髪と銀髪の、二人組の少年たちは来たかしら
﹂
店主がカードサイズの携帯を手に近寄ってきたのを言葉で遮り、ゴ
ンとキルアが来たか確かめる。
﹁いや、来てないね﹂
﹁そう﹂
どうやら、ここで待っていれば合流できるらしいわね。
﹁それじゃ⋮⋮この店にユートピアシリーズの4番以降があれば買う
わ﹂
品揃えは決して良くないけど、ちらほら高性能な携帯が見えるの
で、もしあればと思って訊ねてみる。
﹂
もっとも、ユートピアシリーズがあるなら、店の奥から出てくるで
しょうけど。
﹁⋮⋮お客さん、冷やかしじゃないでしょうね
﹁ええ、もちろん﹂
?
携帯に詳しいわけじゃないけ
そう伝えると、店主が店の奥に消えた。
どうやら、あるらしい。
﹂
﹁ねえ、ユートピアシリーズって何
ど、テレビで宣伝してる奴
?
うが何倍も反応が楽しみだから。
?
国のお偉いさんが使う回線を使えるとか、大体の所はその携帯を見
説明が長くなりそうだったので、とりあえず辞めておいた。
りは凄いのよ﹂
可能。もちろんネットも可能で、回線速度はほぼ一瞬⋮⋮まあ、つま
ぼ誤差なしで行われるわ。画面は小さくてもテレビを見れて録画も
﹁全世界あらゆる所で繋がって、発見されている種族の言語翻訳がほ
﹁へえ∼、凄そうだね。どんな感じなの
﹂
どうせ、値段を伝えたら断ってくるだろうし、買った後に伝えるほ
値段も、その性能差の分だけ高いことは黙っておく。
わ﹂
﹁簡単に言えば、ここに並んでいる携帯と、性能が天と地の差がある
?
142
?
!!
せれば顔パスになるとか、ハンターライセンスとは別の領域をカバー
﹂
してくれるとか、まだまだ色々あるけどヤヤにはこの程度で丁度いい
でしょうね。
﹁なるほどね。リナが持ってる黒いのも一緒の奴
﹁私は7番で、最新は8番よ。特に性能の違いはないわ﹂
ヤヤにそう伝えた所で、店主がアタッシュケースを一つ持って出て
くる。
﹁8番です﹂
そして、私の目の前でケースを開けて型番を教えてくれた。
﹁買った。支払いはカードで﹂
値段など野暮な物は聞かずにレジに向かってカードを渡し、それを
店主がスキャンして何事もなく会計が終わる。
﹁最初の名義は支払った本人だから、今のうちにちゃちゃっと変更し
ておくわ﹂
﹁あ、うん。お願い﹂
︾
携帯会社に電話をコールし、ワンコール。
︽リナ様、何かございましたか
い﹂
︾
︽かしこまりました。少々お待ちください⋮⋮⋮⋮はい、確認が完了
致しました。ご本人様はお近くにいらっしゃいますか
無料にしてあげて。恐らくビートルの7型よ﹂
﹁じゃあ、もう少ししたら少年二人組が携帯を買いに来ると思うから、
⋮⋮でも、これなら上手く話が通りそうね。
そういえば抽選していたわ。
売れて万々歳です﹂
﹁抽選で当たりましてね、借金をしてでも購入したんですよ。お陰で
﹁良くあったわね﹂
携帯をヤヤに渡して、私は店主の元に向かう。
﹁わ、わかった﹂
﹁ええ、代わるわ。ヤヤ、適当に確認があるから答えて﹂
?
143
?
﹁ジャポン出身のサクラヅキヤヤを、この携帯の所持者に変更をお願
?
﹁了解です﹂
これがユートピアシリーズが持つ影響力だけど、ヤヤには必要なさ
そうな、この無駄さがたまらないわ。
﹁終わったよ﹂
電話が終わったようで、ヤヤが携帯を突き出してくる。
﹁ん、もうそれはヤヤの携帯よ。大事に使いなさい﹂
﹂
手で押し返しながら言葉を伝えて、ヤヤに携帯を返す。
﹁うん⋮⋮でもこれ、いくらするの
﹁10万
﹂
私は右手の人差し指を一本だけ立てて、ヤヤに見せた。
ついに、来たわね。値段を教えるこの時が。
?
﹂
声は出さず、首を横に振って答える。
﹁え、100万
﹂
?
﹁1億⋮⋮
﹂ また、首を振った。
﹁⋮⋮1000万
もう一度、首を振る。
?
﹁100億ね﹂
﹁タッカ﹂
ユートピアシリーズは別名、宝石携帯。希少鉱石を数種類、余すこ
となく使い作られた携帯で、電導率が最高に良い。
開発コンセプトは││﹃とことん豪華に性能良く﹄。開発コストを
無視して作られた為に、値段が面白い事になった。
一年毎に番号が進み、今年で8番目。1番目の値段が20億だった
ので、年に10億づつ上がっている計算になっている。
しかし、いくら希少鉱石を使っているとはいえ、10億づつ上がる
ほど価値の高い鉱石が見つかっているわけじゃない。
そこで会社は││﹃ガンガン行こうぜ﹄の命令を発動。
携帯は様々なパーツから出来上がり、一つ一つが希少鉱石によって
できるので、加工の作業が当然必要になる。会社はここに目を付け
144
?
段々とヤヤの表情が曇り始め、私はここで声を発する。
?
た。
パーツは決して素人が作れる物じゃない。だけど、作れない事もな
い。
そう、一つ一つのパーツが、何らかの有名人によって手作りされて
いる。しかも、最高のクオリティでないと、もれなくダメ出し。
つまりこの携帯の製作者は、なんだか凄い数の有名人で、その集合
体の合作。だから必然とプレミア価値が付き、とことん豪華⋮⋮とい
うわけ。
今回、どうせヤヤに持たせるならユートピアシリーズと決めていた
ので、現金一括即決買い。100億という数字は、あくまでも一般人
にとって大きな数字であって、金持ちにはなんら少ない数字になる。
それに、少しばかり割引が効いているはずだし。
﹁大丈夫よ、貯金の一角にすぎないから﹂
闘技場でも8億くらいしか稼げないんだよ
﹂ ﹁いやいやいや。ハンターになったのは今年だよね。なんでお金ある
の
手を上げた。
うおっ、マジだ﹂
﹁あ、リナさん
﹂
ヤヤの後ろを指で示してから、私はローブの顔部分を取って、軽く
⋮⋮仲間が来たわ﹂
﹁答えは至って簡単。暇な時に携帯で、スターラッキーと調べなさい
!?
﹁え
目、腐ってる
﹂
﹁どこにいんだよ、美少女なんて﹂
目を細めて、軽くキルアを睨む。
おっ、は失礼じゃない﹂
﹁ちょっと久しぶりね。あと、キルア⋮⋮こんな美少女に向かって、う
私は、ヤヤのフードを深く被して、二人に近づいた。
﹁う、うん﹂
﹁人目に付かない場所に移動するまで、絶対にフードは取らないで﹂
くけどスルーに限る。
二人の少しばかり大きい声に周りにいた人、主に男がこちらに気づ
﹁え
!!
?
145
!?
?
?
﹂
﹂
今度は、苦虫を噛み潰した表情でキルアを見る。
﹁なんでそうなるんだよっ
すると、キルアが吠えてしまった。
﹁キルアがつまらない冗談を言うからよ﹂
﹂
﹁そうだよキルア。リナさん、物凄く美人だよ
﹁ゴン、てめぇもか
る。 ﹂
﹁あ、そうだった﹂
?
るはず。現状、私だけでも大変なのに。
﹁じゃあ次。なんで俺達がここに来るって
﹂
こんな所でヤヤの姿が露わになったら、間違いなくパニックが起こ
﹁ええ。どこか落ち着ける場所になったら紹介するわ﹂
﹁⋮⋮だな。で、その隣の人は仲間か
﹂
言い合いになっている二人の横で、手を二回叩いて目的に誘導す
しょう
﹁は い は い。と り あ え ず、レ オ リ オ と の 集 合 ま で に 携 帯 を 買 う ん で
まあ、キルアも分かっているでしょうけど。きっと、ムッツリだわ。
アより経験豊富なのよね。
確か、くじら島に来た女の人とデートした事もあるらしいし、キル
?
!?
ゴンはしっかり分かっているじゃない。
!?
﹁わわっ﹂
ヤヤを抱きしめてキルアに言葉を返す。
﹁オッケー。天空闘技場、どこまで行ったんだ
?
よ
﹂
﹁しれっと言いやがって⋮⋮結局、リナの実力ってどのぐらいなんだ
﹁250階のフロアマスターになったわ﹂
﹂
﹁この子の携帯を買いに来たのよ。だから偶然ね﹂
?
実力は多分王様を倒せるレベルだけど、王様の存在をキルアは知ら
ない。この時点で迂闊な言葉を選んでしまえば、未来への影響が少な
からずあるはず。
146
?
答えようとして、言葉の選択を考える。
?
ぱっと出てしまって言葉を濁しても、キルアの観察眼と思考力を
持ってすれば、必ずそこを突かれる。
﹁そうね⋮⋮﹂
ただ、未来の情報を伝えた所で、私への影響は特にないのが結論。
仮に││﹁ゲーム内でビスケと出会うわ﹂と伝えても、だからどう
﹂
なるって話なのよね。選択はその情報を得た人間の自由だし。
﹁ヒソカといい勝負じゃない
﹁ダウト﹂
まさかの即答だった。
だし﹂
﹁﹁レオリオ
﹂﹂
そろそろ来ると思って、
﹂
を使っていて正解だったわ。説明は
﹁あれ、俺の予測はあってたのに⋮⋮読まれてたか
一切合切、皆がいる時の方が楽だし。
円
﹁分かったわ。これも、落ち着いたらね。丁度、レオリオも来たみたい
アは得意だったわね。
⋮⋮なるほど。実力を推測するのが根に染み付いているほど、キル
﹁何回か、リナの戦闘ビデオを見たからな﹂
﹁いやいや、そのぐらいよ
﹂
かなり遠い存在⋮⋮と自覚しているはずだわ。
とりあえず、適当に定めた。今の二人からすれば、ヒソカレベルは
?
﹁さてと、まずはヤヤの紹介からね﹂
ンチからの情報が入ったので、有無を言わさずここに決定した。
││﹁個室を取れて、料理も美味い。サービスもいいわよ∼﹂と、メ
のファミレスに移動。
それから、二人が携帯を買った後、私たちはヨークシン内で最高級
﹃いただきます / いただきまーす﹄
◆ ◆ ◆
全員が入り口を見る中、レオリオが店に顔を出した。
?
"
147
?
"
?
﹂
テーブルに並んでいる沢山の料理に手を付けながら、話を切り出
す。
﹁待ってました
﹁手を出したら殺すわよ﹂
﹁お、おう。すまん﹂
ちょっとでもチャンスがあると思わせるのは悪いので、レオリオを
メインに威嚇しておいた。
﹁冗談よ。続けて﹂
﹁今の殺気、紛れも無く本物だったな﹂
﹁うん。思わず身構えそうになった﹂
面倒なので、二人のヒソヒソ声は聞かなかった事にする。
﹁えーと、ヤヤ・サクラヅキです。リナと同い年で、ゴン君とキルア君
は知ってると思うけど、200階の闘士やってます。今はリナの元で
修行中で、実力はまだまだかな﹂
﹁とか言って、貴方たちが一斉に掛かったとしても瞬殺されるレベル
﹂
だから気を付けなさい﹂
﹁ちょっ、リナ
﹁はいはい、どうどう﹂
﹁んぷっ﹂
ちょっとお茶目を発揮してみたらヤヤが騒ぎそうだったので、頭を
掴んで私の胸に顔を沈めておく。
﹁ま、ヤヤの紹介はこんな物でいいでしょう。次に、今後の目標ね﹂
﹂
﹁ヤヤちゃんに質問タイム⋮⋮今後の目標決めるぞ、お前ら﹂ あれが怖くねえのか
﹁﹁レオリオよっわ﹂﹂ ﹁当たり前だろっ
!?
ちょろい、ちょろいわよ、レオリオ。軽く殺気を当てただけで意見
で男を辞めるか﹂
﹁うぐっ⋮⋮だけどな、ここは男として⋮⋮今日からリナちゃんの前
﹁完全に自業自得だろ﹂
ないのに。
ちょっと睨んだだけでこの扱いは失礼ね。別に、そこまで本気じゃ
!?
148
!!
!?
を変えるなんて。
﹁そんな事より、今度の目標とか予定を決めようよ﹂
﹁そうね。いい加減、話を進めましょうか。レオリオがボケにボケま
くるから遅れちゃったし﹂
﹁いやいや、それは││ぐほっ﹂
秘技、魚肉アタック。原作キャラとは言えど男なので、容赦なく八
本突っ込んだ。
﹁さて、どこから話しましょうか﹂
﹁うーん、まずは││﹂
それから、ゆっくりと昼食を終える頃には、今後の目標が決定した。
とはいえ、相談する意味は殆どなく、決まっていた様なものだった
けど。
◆ ◆ ◆
ら。 ﹁野暮用よ﹂
﹁ふーん、そっか。帰りは遅いの
﹁了解。行ってらっしゃい﹂ ﹁多分遅いわ﹂
ちょっと寂しいわね。
﹂
ど う や ら、あ ん ま り 興 味 は な い ら し い。こ れ は 好 都 合 だ け ど、
?
﹂
うん、なんか寂しいから、一回抱きついておこう。
﹁ん、どうしたの
﹁なるほど﹂
﹁エネルギー補給﹂
?
149
﹁さてと⋮⋮それじゃ、出かけてくるわ﹂
﹂
最高級ホテルにチェックインし、部屋でくつろいでいた私は、時間
今からどこに行くの
を確認して立ち上がる。
﹁え
?
時刻は21時だし、何の予定も伝えてないのは不自然だったかし
?
あー、柔らかい。
具体的にどこがどうとかじゃなくて、触れている箇所全てが柔らか
い。
幸せだわ。ぶっちゃけ、外に出たくないわね。
﹁よし、行ってくるわ﹂
ただ、そうも言ってられないので身体を離した。
﹁うん、気をつけてー﹂
﹁ええ﹂
そしてヤヤに見送って貰い、条件競売をしているはずのゴンたちの
元に足を運ぶ。
知ってたけど、物凄い人の数ね。まだ来てないと⋮⋮ビンゴ。
人混みの中で並んでいるシズクと、遠巻きに見ているフェイタンと
フランクリンを発見した。
﹁⋮⋮なんだ﹂
フランクリンが口を開いた。
の
武
器
﹂
道に迷っちゃって﹂
身構えられなかった所を見ると、どうやら一般人と思われたらし
い。
﹁セメタリービルってどこにあるか分かる
もちろん、嘘ぱっちだけど。
﹁⋮⋮ああ﹂
女
﹁できればそこまで案内して欲しいけど⋮⋮無理、かしら
?
?
﹂
色仕掛けが効くか分からないけど、涙目上目遣い谷間チラ見せで訊
いてみる。
﹁お嬢ちゃんの目的は地下競売か
?
150
ちょうど良い時間だったようね。私の勘は相変わらず優秀だわ。
にして、立ち姿に
"
それにしても、何も変わっていなくて良かった⋮⋮って所かしら。
﹂
私がいる世界でも、蜘蛛は蜘蛛か。
﹁ちょっと、いいかしら
絶
"
これで、オーラの質が一般人と同じになるはず。
隙を増やしてから声を掛ける。
私は二人を警戒をさせない為に、不完全な
?
﹁⋮⋮⋮⋮あ、はい﹂
一瞬、お嬢ちゃんが誰の事か分からず、返答が遅れてしまった。
そういえば私って、まだ17歳だったわね。身長は160cmしか
ないし、歳相応の顔立ちだし⋮⋮フランクリンが何歳か分からないけ
ど、確かにお嬢ちゃんで正解ね。
﹁今日は、中止になったはずだ。家に帰ると良い﹂
どうやら、色仕掛けは違う方向で作用したみたいだった。
フランクリンは、私を殺したくないらしい。
﹁ん、そんな連絡来て無かったわよ﹂
﹁俺とこいつは警備員だからな。さっき帰れって言われたし、間違い
ない﹂
フランクリンがフェイタンを指さし、フェイタンはそれを受けて無
言で頷いた。
﹁それは困ったわね﹂
幻影旅団さん⋮⋮て、危ないわ
本気でないにしろ、今の攻撃速度は中々ね。実力はそこそこかし
ら。
﹁お前、何者だ﹂
﹁そうねえ⋮⋮﹂
名乗ろうとして、メンチの言葉を思い出した。
決して、名誉な称号じゃないのだけれど⋮⋮私にぴったりなのが面
白いのよね。発案者はブハラらしいし、何かお礼をしましょうか。
151
本当に困った。まさかこっちの方向に話が進むなんて。
旅団と言えど、無益な殺人はしたくないって事なのかしら⋮⋮あ
あ、盗賊だから、本当に欲しいならこの後でさらいに来るのね。
もっとも、色仕掛けが効いた訳じゃなさそうだけど。
﹁でも、どうしようもないだろう。大人しく帰ったらどうだ﹂
うーん。面倒臭いし、そろそろ暴露しましょうか。
二人の仲間でしょ
﹁じゃあ、あそこで腕相撲してる、黒髪でメガネ掛けた女の子を紹介し
てくれない
?
フェイタンの攻撃をかわし、二人の背後に回る。
よ。焦りは禁物﹂
?
﹁通りすがりの、
ガールズハンター
最高の笑顔で、私は言い放った。
よ﹂
152
"
"
12話﹃介入開始﹄
﹁いい眺めね﹂
私は旅団の気球に乗り、夜空を旅していた。
﹁ちょっとアンタ。気安く身体に触れようとしてんじゃないよっ﹂
マチとじゃれ合いながら。
﹁しょうがないわね。やめてあげるわ﹂
残念ながら、まだ一方通行の気持ちでしかないので、私は大人しく
手を引く。
一応、マチの手さばきを確認する意味もあったけど、本気の私には
及ばない事がわかった。これならいざって時に力技で抑えられる。
﹁団長が連れて来い、って言ったから手荒な真似はしないけど⋮⋮こ
の状況で良く動じないね﹂
153
﹁ガールズハンターですから﹂
マチに笑顔で伝えて、今度はシズクの横に移る。
本を読んでいる所を邪魔するのはちょっと嫌だったけど、本能に
従って胸に手を伸ばす。
﹁ん﹂
どうやら、本を読むのに集中しているらしく、シズクは無抵抗で触
らせてくれる。ただ、反応が薄いのはあんまり面白くない。
頑張って、声だけでも引き出しましょうか。 ﹁んん﹂
服と下着の上からでも、しっかりと分かる柔らかさ。着痩せするタ
イプではないらしく、大きさは見た目より小さいけど、もちろん文句
はなし。微乳でも、女の子のおっぱいには変わりない
﹁アンタ、いい加減にやめな﹂
﹁マチが触らせてくれるなら﹂
﹁⋮⋮はあ﹂
﹁はっはっはっ、いい女じゃねえか。今度、手合わせしようぜ﹂ マチの呆れ顔、頂いたわ。お金を払ってもいいレベルね。
!!
﹁いいけど、死なないでよ⋮⋮って、どうかした
﹂
ウボォーの言葉に笑顔で返すと、何故かきょとんとされた。
﹁んーや。どれくれぇの実力があるか、本気で知りたくなっただけだ。
俺達が蜘蛛だって知っていて、いつでも嬢ちゃんを殺せそうな状況で
ありながら、殺されないという確固たる自信。その上で挑発にも取れ
る言動なんて、並大抵の実力者じゃそうはいかねえからな﹂
なるほど、そういう考えをしていたのね。
ウボォーって、どちらかと言えば馬鹿なのかなと思っていたけど、
中々に賢いわ。戦闘狂であると同時に、戦闘に関わる事に対して、物
凄く真面目な観点も持てる。
これこそ、並大抵の実力者じゃない証拠ね。
﹁お褒め頂き光栄よ﹂
男なのが非常に残念だけど、クラピカに殺させるのは勿体ないかも
どれくらい強
知れないわ。場合によっては、助ける選択肢もありになる。
﹂
﹁フェイタンは、リナとちょっとだけ戦ったんだろ
い
?
フェイタンに向かう。
ただし、私はそんな事を無視して、またシズクの胸を揉む。一応、
ちょっとだけ意識は向かわせるけど。
﹁⋮⋮実力は能力次第ね。体術なら、蜘蛛の誰よりも強いと思たよ﹂
どうやら、私の実力を読めるくらいには、実力があるようね。お陰
で、体術なら基本的に負けないと理解できる。
﹂
﹁フェイタンがそこまで言うなら、嬢ちゃんはかなり強いって事だな。
おーい、嬢ちゃん。能力は何系だよ
﹁特質系よ﹂
手合わせが決定事項になっている事を無視して、私は微笑んだ。
﹁手加減はしてあげるから安心していいわよ﹂
な﹂
﹁団長やパクノダと一緒か。こりゃ、手合わせが楽しみになってきた
私は手を止めないで、顔だけをウボォーに向けて答えた。
?
154
?
シャルナークがフェイタンにそう訊ねて、シズクを除き皆の視線が
?
◆ ◆ ◆
それから、気球が撃ち抜かれ、一時間くらい続いた空の旅が終わり
を迎えた。
不時着した場所は、原作と同じ通りの荒野。目下の地面には、黒服
のおじさんがうようよしている。
空に向かって適当に発泡される銃が、なんかリズミカルで音楽に聞
こるのが面白い。
﹂
ウボォーって一人で戦うのを好むんじゃな
﹁オレがやって来らぁ。嬢ちゃん、一緒に行くか
⋮⋮あれ、誘われた
かったかしら。
に銃を構えた。
﹁客をさらったの、テメェらか
﹁ああ﹂
﹁この場面でええ││﹂
﹂
一人の黒服が手で仲間を静止しウボォーに近づいて、ウボォーの顔
﹁待て﹂
私は素直に従って、ウボォーの後ろに付いていく。
多分、実力を見極める一端なんでしょう。
﹁そうね⋮⋮手伝うわ﹂
?
﹁いいって事よ。んじゃ、逃げたい奴は逃げな。一人も逃さねえけど
﹁ありがとう、ウボォー﹂
﹁それもそうか。なら、さくっと終わらせちまおう﹂
ど、ばれない方が面倒じゃない。
できれば、クラピカが来る前に帰りたい。ばれても問題はないけ
﹁だって、面倒だし⋮⋮﹂
﹁おいおい嬢ちゃん。俺の獲物を取らないでくれよ﹂
わね。
一般人相手なら、素手に念を込めるだけで余裕なのが非常に助かる
面倒だったので、フライング気味に黒服の首を刎ねる。
?
155
?
な
﹂
ちなみに、こう呑気に会話している間も、しっかりと弾丸が命中し
ていたのだけど⋮⋮まあ、それは置いておきましょう。
どうせ、取るに足らない出来事だわ。
﹁さてと⋮⋮﹂
視界の端で捉えた狙撃手二名の為に、手頃な大きさの石を二つ用意
した。
そして、視線を向ける事なく石を二つ投擲して、狙撃手の殺害に成
功する。
これで服が傷つく可能性を一つ排除できたので、黒服を適当に殺し
﹂
ていく。もちろん、剣は使わずに身体のみで。
﹁そこまでだ、バケモンが
﹂
そ の 相 方 は、場 違 い な 美 少 女。白 い ワ ン ピ ー ス に、茶 髪 の ポ ニ ー
︵なぜ、リナさんが⋮⋮︶
体格がかなり良く、素手で人を紙屑の如く千切る男。
クラピカは、双眼鏡を使って見た光景、人物に息を飲んだ。
﹁っ
﹂
◆ ◆ ◆
逃げまどう黒服たちの悲鳴を無視して、ウボォーと会話を続けた。
﹁賛成﹂
﹁オレは肉が食いたいぜ。この後、皆で飯でも行くか﹂
﹁焼き鳥、食べたいわね﹂
き具合は、こんがりっぽい。
爆煙が晴れると、黒服たちとハゲの肉片らしき物が落ちている。焼
気づいた頃に、時すでに遅し。案の定、爆発した。
﹁あ
口に投げ入れる。
恰幅のある、ハゲのおっさんがバズーカーを構えた所で、小石を銃
!!
テール。どこか気怠そうに黒服を殺す様子は、ある意味、クラピカが
156
!!
?
!?
﹂
知る普段のリナと相違が無かった。
﹁どうしたの、クラピカ
﹁いや⋮⋮見てみるといい。相手たちは、桁外れに強い念能力者だ﹂
クラピカは、動揺を隠せない相手に、動揺を隠そうと試みながら双
眼鏡を渡す。
︵理由は、後で訊けばいい。今はただ、任務に集中する︶
そう自分に言い聞かせて、クラピカは一度、リナに対する思考を止
める事にした。
◆ ◆ ◆
﹁まず、一人目よ。絶は中々のものだったけど、私に遠く及ばないわ﹂
ウボォーと陰獣の犬が会話している途中で、地中から出てきそう
だった陰獣を、地面を砕くついでに叩き潰した。
確かな感触があったから、運が良くても瀕死状態ね。
﹁まじか、全然気づかなかったぜ﹂
﹁私は円が使えるからよ﹂
実際には、事前情報を持っていたのと、使うまでもなく気配が分
かったからだけど。
﹂
﹁あの面倒なやつか⋮⋮細けえ作業は嫌いだ﹂
﹁ウボォーはそうでしょうね﹂
﹁なめやがって⋮⋮死んで貰う
!!
死ぬのは貴方たちよ﹂
私たちの会話に痺れを切らしたのか、犬の言葉をきっかけに、三人
で突っ込んでくる。
﹂
?
157
?
﹁美少女にそれは酷いと思わない
﹁は
﹂
﹂
虫は手足。
﹁あ
毛玉は胴体。
﹁え
犬は首。
?
?
?
﹂
﹁全く。自分の実力をわきまえなさい﹂
﹁うぉぉぉ。何したんだ、嬢ちゃん
ウボォーが驚くのも無理はない。
右手を数回振っただけ。
隠
"
を使って隠していた
三人との距離はおよそ10m。飛び道具を使った様子もなく、私は
!?
考えられる可能性は、具現化系の何かを
つまりは、
凝
で私を見ていないと分からない。想像だけだと、
"
わね。
凝
による視線は感じなかったから、恐らくだけど。
"
﹂
無事に帰ってくれて助かるわ。こんな所で戦闘なんて、誰の得にも
ダーにしまう。
ほどなくしてメールが返ってきたので、内容を確認してからホル
り出し、クラピカ宛にメールを作成して送信する。 つまらなさそうに見せて、足に付けておいたホルダーから携帯を取
﹁残る陰獣が、馬鹿じゃなければいいなと思ったのよ﹂
﹁どうしたよ、ため息なんかついて﹂
やっぱり⋮⋮いたわね。フォローが必要かしら。
クラピカと、ばっちり目が合った。
トラード組を視界に捉える。
私は少しだけ移動し、ウボォーの背中で間接的に隠れている、ノス
一つ、問題があるとすれば⋮⋮。
﹁期待してるわ﹂
﹁んや、問題なしだ。次は少し全力で行くぜ﹂
負けた方がご飯奢りで⋮⋮何か問題あるかしら
﹁乗ったわ。今のこれはノーカンにして、先に四人倒したら勝ちね。
﹁そうか、こりゃ本当に楽しみだ。残る陰獣は六人⋮⋮競うか
﹂
もしかしたら、後ろにいる旅団員には勘付かれているかも知れない
わざわざ曲線軌道にしておいたし。
実際に使ったのは剣⋮⋮まあ、気づかないでしょう。手の動きを、
﹁ま、これが私の念能力なのよ﹂
ちょっと判断するのが難しい事になる。
"
場合。そして、斬撃性の何かで、距離があっても攻撃が届く物。
"
?
158
?
"
ならないし。
円
の範囲内に入っているなんて思ってもいな
﹁あ、陰獣がそろそろ来るわよ﹂
相手からすれば、
いでしょうね。
"
ないわ。
﹁それでもっ
﹂
マチが大好きなのよ
﹂
私の想いを、素直に伝えてみる。
﹁性的な意味で
﹂
!!
的確なシズクの合いの手に、思わず本音が出てしまった。
⋮⋮完全に、忘れていた。間違いなく、私のせいだ。
◆ ◆ ◆
た。
﹂
シズクの言葉が胸にクリティカルヒットし、私はその場で項垂れ
﹁リナって、残念な人だね﹂
わ。
どうやら、外したようね。今度は、別の方向を検討しないと駄目だ
そう言って、マチは私から遠ざかる。
﹁⋮⋮アンタ、一回病院に行ったほうがいいよ。割りと真面目に﹂
!!
凄く的を射ているので、反論できないのが痛い。だけど、私はめげ
﹁さっきも言ったけど、アンタはどこか胡散臭い﹂
﹁酷いわ。少しくらい触らせなさい﹂
すると、全力で回避されてしまった。
﹁来るんじゃないよっ﹂
とりあえず、私はマチに飛びつく。
﹁マチィィィ
ウボォーの言葉に、残りの旅団員が近くに集合する。
﹁おお、まじか。お前ら、陰獣が来るってよ﹂
"
﹁よし、ウボォーの居場所がわかった。地図を用意したから、今直ぐ向
159
!!
!!
﹁うん。あ、いや違⋮⋮わないわ。そうよ、全部好きなのよ
?
かうよ﹂
シャルナークの言葉で、数人が慌ただしく部屋から出て行った。
クロロの隣でその様子を眺めていた私は、ため息をついて奴を睨
む。
﹁熱い視線を感じる﹂
﹂
語尾にトランプマークが付いてた、似非マジシャンの事を。
﹁知り合いだったのか
﹁一応。しゃべった事はないわ﹂
クロロに質問され、ヒソカに対して嫌味を込めた言葉で返す。
﹁そんなナチュラルに嘘を付かないで欲しいな。僕と君の仲じゃない
か﹂
﹁⋮⋮はあ﹂
本当に、余計な事をしてくれたわ。
結論から言うと、クラピカの手によって、ウボォーが攫われた。
その原因は、トランプを使って遊んでいる変態。原作の通りなら、
この辺りの時間帯でクラピカと会って話をしている所のはず。
なら、何故。アジトにまだいるかと言えば、恐らくはメールで済ま
せたから。
とりあえず私が手を回して、クラピカとウボォーの戦闘を避けよう
と試みたのに、陰獣との戦闘中にウボォーが攫われた。
手段は原作と一緒。キッカケは、両方に確認を取った訳じゃないけ
ど、多分ヒソカの密告。大方、私が旅団と一緒にいると聞いて││﹁面
白そうだ﹂の理由でやったんでしょう。
もっとも、私が旅団と一緒にいると伝えて起こったはず。ウボォー
が攫われたのは偶然じゃなくて必然で、その理由は強化系が良かった
から、に違いない。
﹂
﹁どうやら、ヒソカに気に入られているようだな。で、リナと言った
か。お前の目的はなんだ
という明確な殺意だわ。
特に強く感じるのは、交わした瞳から。返答次第じゃ、容赦しない
ただ、ただ冷静に。それでいて強い意志を全身から感じる。
?
160
?
﹁そうね⋮⋮﹂
﹂
目標は色々ある。その中でも最優先は⋮⋮やっぱり、アレになるわ
ね。
﹁救済よ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮その言葉に、偽りは
﹁ない﹂
私は、一段と鋭くなったクロロの視線を受けながら、そう断言した。
ヨークシンでの最優先事項は、パクノダの死亡回避。彼女は蜘蛛の
為に望んで死んだのかも知れないけど、私が存在していて原作女子を
死なせる訳にはいかない。
だから、遠回しにウボォーを守ったのだけど⋮⋮ヒソカのせいで無
駄になった。
正直、今からでも余裕で間に合う。けれど、クラピカの事を考える
と転がる方向に転がれ、としか思わない。
私が介入するのは、一度だけ。ウボォーの救済に一回手を回したか
ら、この後でウボォーに手を回す気は、恐らく起きないはず。
自分の事なのに予定が未定なのは、私の気まぐれな性格から。それ
に加えて、対象が男という点。ぶっちゃけ、目標に関係ない点。
この三つの理由から、私は動かない事になりそう⋮⋮と、自己判断
している。
もちろん、マチ、シズク、パクノダから、誰かの身体を対価として
出してくれれば、問答無用でクラピカを殺すのだけど⋮⋮まあ、それ
は私から提示する事もないし、よっぽどの状況だわ。
﹁⋮⋮⋮⋮なるほど。蜘蛛の未来を知っているのか。すると、タレコ
ミはお前が⋮⋮いや、その可能性は皆無か。お前が何らかの能力を
使って知っていても、競売品を守る意味がないしな。なら、お前の目
﹂
的は他にもあるはずだ。しかも、今の救済という言葉と、ほぼ同レベ
ルの目的だろう
で、この男、賢すぎない
ロあってこその旅団って訳ね。カリスマ性が半端じゃないわ。
161
?
確かに言葉の選択が危ういとは思っていたけど⋮⋮やっぱり、クロ
?
?
﹁ええ。クロロの推測通りよ。お望みなら、それも教えるけど
﹂
﹁いや、フェイタンの言葉で理解した。ガールズハンター⋮⋮つまり、
女だな。ここからは俺の推測になるが、お前が知っている未来だと、
三人の内の誰かが死ぬんだろう。だからお前はここに来た。救済と
は⋮⋮ある対象にとって、好ましくない状態を改善し、望ましい状態
へと変えることを意味した言葉。自分の目的が救済なら、その蜘蛛の
未来を変える事によって、お前に利益が出る。つまり、三人が無事な
のだろう。ガールズハンターが女を手に入れると直訳して、手段や合
意を問わず身体を手に入れる事であるなら、お前にはその実力がある
訳だ。そして、その実力は蜘蛛の未来を容易く変えるほどの力。それ
と同時に、蜘蛛の事情はお構いなしと見た。お前の、女に対する執着
は分からないが、節操なしでもないはずだ。蜘蛛の三人を狙いに来た
のが良い例だな。これらから考えられるお前の性格は⋮⋮欲望に実
直でいて気まぐれ。目的の為なら手段を問わず、親しい者でも男なら
手に掛ける冷酷さを持っている。逆に、女の為なら自身の命を差し出
すほどに狂っている。もっとも、そうならない為の力なのだろう
んでくれたらオマケも付ける。三人のオマケに、蜘蛛が無傷で済む可
救済の成功率も、軽く100%と見た。言い換えると、私の要求を飲
?
﹂
﹁ある意味、危険を感じているのは俺の方だ。これだけ的確に突いた
﹂ のに、オーラに微塵の揺らぎも感じられなかったからな。お前⋮⋮い
や、リナ。取引をしないか
は逆に驚かせてあげましょうか。
?
﹂
蜘蛛が私個人の傘下に入り、その代わりに蜘蛛への協力⋮⋮ま、美
うだ
﹁⋮⋮⋮⋮そこまで分かっているなら、言葉にする意味もないか。ど
﹁蜘蛛全員が私の為に無償協力と、未来の情報及び、適度な協力ね
﹂
この言葉が、このタイミングで来るって事は⋮⋮なるほど。こんど
?
162
?
能性も選ばせてあげる⋮⋮って所か。どうだ かなり的確だと思
うが
?
原作じゃ分からなかったけど、ここまで賢いなんてね。
﹁驚きを通り越して、久々に危険を感じたわ﹂
?
?
味しい条件ね。取引に見えて、一方的な協力関係だし。
クロロは、それを見越してでさえ、取引と言った。
﹂
私の性格を読んだ上での持ち掛けだから、取引で間違ってはないけ
ど。
﹁もちろん、オッケーよ。契約書は、蜘蛛全員の命で良いかしら
本当に一方的。もう、脅迫といっても差し当たりない。
﹁愚問になるが、リナにその力があるならな﹂
﹁愚問ね﹂
﹁取引、成立だ﹂
クロロが右手を伸ばしてきて、私は笑顔でそれに答えた。
◆ ◆ ◆
﹁集まって貰って早速⋮⋮お前たちには勝手で悪いが、蜘蛛はリナに
無償協力する事になった﹂
あれから数時間経って日付は変わり、九月二日。ウボォーを除く全
員が、アジトのメインルームに集められ、クロロからの説明が始まっ
た。
ただ、あれだけじゃ意味が分からなかったのか、何人かが首を傾げ
ている。
当然よね⋮⋮あ、レアアイテムゲット。
私はそんな中、モンスターをハントするゲームで遊んでいるけど、
これが中々面白い。
﹁もちろん、俺の独断だ。だからこれから、簡単な説明を行う﹂
クロロが一拍置いて口を開く。
﹂
﹁まず、リナがガールズハンターで、実力のある念使いだと知っている
な
殺せるそうだ。そして、リナは⋮⋮今日、ウボォーが攫われる事と、俺
たちが競売品を奪う事を知っていた﹂
163
?
﹁その実力は、確かめた訳じゃないが、ここにいる俺たち位なら余裕で
旅団員が全員頷き、クロロはそれを見て言葉を続ける。
?
クロロの言葉で十人から、それぞれ濃度の異なる殺気を向けられ
た。
も ち ろ ん、ス ル ー。私 は 任 務 報 酬 を 受 け 取 り、鍛 冶 屋 に キ ャ ラ ク
ターを走らせる。
﹁それがリナ自身の能力かは不明だ。しかし、その情報を悪用された
訳 じ ゃ な い。そ こ で 俺 は、リ ナ の 持 つ 未 来 の 情 報 と、ガ ー ル ズ ハ ン
ターのリナに無償協力を交換した。ここで最初の言葉に戻るが、俺の
勝手だ。協力的になるかどうかは自分で決めてくれ。ただし、契約書
は蜘蛛の命。こちらからの契約破棄は、蜘蛛の壊滅だと思って貰って
いい﹂
団長
バキッ││と、木が砕ける様な音が響き、そちらに視線を向けた。
﹁ならここで契約破棄して⋮⋮その女を殺せばいいだけだろ
よ﹂
ノブナガ右横には砕けた木箱があり、強く握られた右拳で壊した物
だと気づく。
今度は視線をゲーム機に戻す事で、スルーに決め込む。
﹁そうだな、それもありだ。リナは女を殺さないと決めているようだ
さっきも言ったが、リナに協力すれ
し、パク、マチ、シズクは最低でも殺されない。蜘蛛の復帰も可能だ
ろう。ただ、それでどうなる
バーが半数以下になるそうだ。これを回避するにはリナの情報が不
可欠で、場合によってはリナの協力を仰ぐ事になる。つまり、リナが
俺たちに譲歩してくれただけに過ぎない。リナにとってこの取引は、
﹂
ノーリスク・ハイリターン。俺たちにとって、ローリスク・ハイリター
ンだ。分かるか
念頭に置いて、安全に進めば││いてっ
﹁分からないのかい
何しやがる、マチ
﹂ !!
アイツはガールズハンター。そもそも、私を
このくらいの敵、一撃で倒してほしいわ。
!?
﹁分かってるよ。だから、あの女を殺して終いだろ﹂
含めた三人にしか興味が無い。そして、それが目的って﹂
?
164
?
ば未来が手に入る。これは本人からの情報だが、このまま進めばメン
?
﹁分かるが、ならその情報だけで良いんじゃねえか。半数を失う事を
?
﹁ノブナガ。ならなんで、俺からこの条件を出した
﹁そりゃ⋮⋮未来の情報が欲しいからだろ
何にどう協力すんだ
﹂
﹂
﹂
﹂
クロロがノブナガに近づいて、質問を投げかける。
?
気 ま ぐ れ だ と。情 報 が
?
女の子の幸せが一
これで露骨に警戒されるのは嫌だけど⋮⋮とりあえず、フェイタン
﹁了解﹂
﹁⋮⋮なら、少しだけ見せてくれよ﹂
いわ﹂
わないし、実力も本物。疑っているなら、少しだけ能力を見せてもい
﹁ま、つまりは⋮⋮信じるも信じないも自由よ。私は本当の事しか言
とショックを感じた。
もっとも、マチから離れていたのに、マチに離れられたのはちょっ
入れる。
あのオーラが出ていたので、想像の途中で思考を切ってフォローを
番だわ﹂
エーションだけど⋮⋮あ、本気でやらないわよ
を壊滅して、反抗的なマチを快楽で堕とすとかは中々にそそるシチュ
ら三人を奪う事は可能だし、別に我慢する意味もない。そりゃ、蜘蛛
ロロは未来の情報が手に入る可能性があればいい。そもそも、最初か
﹁ただのギブアンドテイクよ。私は三人の身体で遊べればいいし、ク
ろ口を挟みましょうか。
あー、やっと倒したわ。話も終結に向かっている様子だし、そろそ
と未定。これは、取引と称した、友好関係だと思ってくれ﹂
滅ぼす可能性は未定。あるかも知れないし、ないかも知れない。未定
もない。当然の権利だ。それに、前提条件として⋮⋮リナが、蜘蛛を
ちらからの破棄と言っても、リナの情報が間違っていれば契約破棄で
くても、明確な協力という対価を差し出せばリナは答えてくれる。こ
正しいかは不明だ。だけど、正しいかも知れない。そして、情報がな
ナ が 情 報 を 出 す 条 件 も な い。言 っ た だ ろ
﹁つまり、そう言うことだ。別に、内容は決まっていない。そして、リ
﹁無償協力⋮⋮ん
﹁ああ、そうだ。そして、リナ側の条件はなんだ
?
?
?
?
165
?
の能力でも見ましょうか。一応、原作知識として知っているから確認
の意味を込めてだけど。
原作キャラで、知らない人の能力を見るのは流石に怖い。身体に影
響は出なさそうだけど、心に影響が出ると困る。もしかしたら、見え
ない可能性もある。
じゃあなんで、こんな能力にしたかって言われたら、原作キャラ以
外を見る為なのよね。戦闘補助としての能力だし、原作キャラとは余
程の事がない限り、戦闘もしないと思っていたから。
﹁ペインパッカー﹂
あ、ライジング・サン以外に、数種類もあるのね。知りたくなかっ
たわ。
フェイタンの能力を知る全員が息を飲む中、私はそんな事を考えて
いた。
166
13話﹃甘くない二人組﹄
ウボォーが殺されたらしい。
旅団が出した答えは、原作と寸分違わない物だった。
当然と言えば、当然だ。
この世界が、あの世界を模していて、起こるべき事象を消化してい
くとして。おおよそ、これから起こりうる展開は全て一緒になる。
この世界で、現状大きく変化している部分は、旅団に私がいること。
条件競売の賞金首に、私が乗っていること。
そして、ヤヤを除く仲間に、私が旅団と行動していると知られてい
ること。
﹁まあ、だからって、どうなる訳でもないのだけれど﹂
私はゴンたちの元に向かいながら、一人呟いた。
167
現在、九月三日十三時。
マチにちょっかいを出し続けていると、早くも数日が経っていた。
危うく、本来の目的⋮⋮は、女の子だけど。そんな私にも、それ以
外の目的があるため、泣く泣くマチの元を離れている。
﹁えーと、ここね﹂
キルアからの連絡で指定された飲食店に入ると、三人がどこにいる
か直ぐに判明した。
﹁いらっしゃいませ﹂
﹁あそこ三人の連れです﹂
姿は見えずとも、ひっきりなしに料理が運び運ばれるテーブルを指
さし、足を進める。
﹂
﹁ちょっとは、店の人の苦労も考えなさい﹂
﹁あ、リナさん
皿の上に残っていた肉の骨を、高速でキルアの額に投げつけた。
﹁あでっ﹂
﹁うるさい﹂
﹁遅かったじゃねえか﹂
!!
﹁なんだなんだ、この綺麗な嬢ちゃんは
知り合いか
﹂
には、そこまで嫌悪感は感じないわね。
?
﹁誰が保護者なんだよ
﹂
タオルで額を拭いているキルアを指差して、にっこり笑っておく。
﹁ええ、そこの生意気なクソガキの保護者です﹂
ゼ、ゼットル
?
﹁ひっ﹂
﹁⋮⋮ゴン
﹂
﹁うん、そうだよ﹂
な﹂
﹁とりあえず分かったのは⋮⋮嬢ちゃんが、一番クレイジーって事だ
大きく開いた口に、今度はパンを投げつけた。
﹁よーし、今すぐやろ││うごっ﹂
なので、もっとやってみる。
犬だったわね﹂
﹁女の子に手を出すとか、最低ね。人間として⋮⋮あ、ごめんなさい。
むしろ、私がいつもやられている側なのだけれど。
﹁て、てめぇ⋮⋮後で覚えとけよ。絶対に仕返ししてやる﹂
﹁主に、こうやって直ぐ吠える犬の﹂
!?
そもそも私は、性欲を持て余していた、ただの青少年だったし。
神の悪戯さえ回避できたら、今頃はもっと普通な性格だったはず
⋮⋮よね。
﹁ちょっとだけ、Sっ気が強いだけよ﹂
だから私は、少し弁解しておいた。
◆ ◆ ◆ ﹂﹂
﹁全部で三億はするんじゃねーかな﹂
﹁﹁おお
いってわけね。
168
?
﹁私だって、好き好んでこんな性格になった訳じゃないわ﹂
?
中身は、原作と変わりなし⋮⋮やっぱり、大筋はそうそう変化しな
!!
﹁ただし、業者市だと││﹂
さて、これからどうしましょうか。
二人と合流したのは、中身を確認する為がメインで、旅団に協力し
ている事の誤解を解くのがサブ。
サブに至っては、まだ話すタイミングじゃないし⋮⋮そもそも、こ
の様子だと気にしてもいないわね。
クラピカから、何か聞いたのかしら。
もっとも、クラピカに伝えた言葉は一言だけれど。
﹃貴方が仲間だと信じるなら、私は貴方の仲間よ﹄
自分で言っといて今更だけど、薄情な言葉よね。
言い換えると、いつでも敵になるわよって意味だし。
まあ、そんな馬鹿な選択肢を取るクラピカじゃないし、何も問題は
無かったけど。
﹁⋮⋮って、どこに行ったのかしら。あの、三人﹂
169
携帯を確認すると、ゴンからのメールが来ていたので、内容を確認
する。
﹁無視するほど、思考していたのね、私﹂
﹂
確かに、声を掛けられた記憶があった。
﹁ま、気にしても無駄⋮⋮ん
日は既に落ち、夜。
いそうなのも事実なのよね。
でも、そうも言ってられない物が目の前にあると、我を忘れてしま
おっと、いけないわね。危ない声が出てしまったわ。
﹁ふひっ﹂
◆ ◆ ◆
クロロからの、メールだった。
﹁そう言えば、今日だったわね。いいわ、協力しましょう﹂
確認する。
ホルダーに仕舞ったタイミングで携帯が振動し、取り出して要件を
?
私は、ベッドで熟睡しているネオンに跨っていた。
残された時間は三十分あるか、ないか。
素早く、丁寧かつ、的確に。
そして、大いに楽しむ。
そう、例えるなら⋮⋮いや、時間がないわね。さっさと堪能
﹁とても、難しいわ。これは、レルートの時やメンチの時とはレベルが
違う
しましょう﹂
胸
何の話よ。
やっぱりまずは⋮⋮肌質からね。
え
え
早くないかって
次は、服の上から胸を触る。
しい物を持っていて普通なのだから﹂
﹁まあ、こんな所はどうでもいいのよ。私が選ぶ女の子は、大抵素晴ら
うん。
恐らく、私が触れてきた中で⋮⋮⋮⋮三十本位の指には入るわね、
やはり、超ワガママお嬢様だけあってか、肌質のレベルが違う。
﹁こ、これは﹂
?
﹁という訳で、キャストオフ
﹂
もちろん、手を止めるなんて選択は存在しないのだけれど。
ね﹂
﹁うーん⋮⋮薄々は気づいていたけど、もっと純粋な女の子がいいわ
間違いなく、手馴れているわ。もう、甘い水の臭いがするし。
﹁んっ﹂
ね。
興味あるか不明だったけど⋮⋮ある意味、こっちにも興味あったの
ネオンって、ぶっちゃけ頭逝ってるタイプの女の子だから、性とか
感度、良好。質感、良好。総合、良好。
﹁ん、んん﹂
﹁ふむ⋮⋮﹂
ちゃえばいいわ。
気のせいよ。形や大きさは、ぶっちゃけ服の上から分かるし、触っ
?
!!
170
!!
?
?
そこそこの数の武術に精通する私が編み出した、お得意の脱衣殺法
にて一瞬で全裸にさせてもらう。
これが純粋な女の子とか、恥ずかしがり屋なら、当然一枚ずつ剥ぎ
取る。
誰も触れないとは言ってないわよ。
そもそも寝ている時には、反応が面白くないのであまり触れない
し。
え
﹁ネオンは起きていると面倒な感じがするのよね﹂
そう、適当に理由を呟いて、優しく触っていく。
﹁ぅん﹂
﹁感度は本当にいいわね﹂
寝ていても声が出るのは、感度が相当いい証拠。
身体が触れられていると、寝ている脳で感じている。つまりは、身
体が反応している状態だから。
﹁こ れ だ け 馴 染 ん で い る の に、処 女 っ て 所 を 考 え る と ⋮⋮ 恋 愛 感 は
持っているのかしら。クロロにときめいているシーンが無かったか
ら、価値観はずれていそうだけど﹂ クロロって、やっぱり恐ろしいほどイケメンなのよね。
ぶっちゃけ、私が女じゃなかったら抱かれても良いレベル。
﹁まあ、この身体は、男ノーセンキューだからあくまでも想像だけれ
ど﹂
﹁んんっ﹂
﹁先っぽを刺激しすぎると、流石に起きるかしら﹂
ずっと、先端に触れないように揉んでいたから、身体が焦れちゃっ
たみたいね。
それに加えて、どうやらいつもこの感じで触っていると見た。
﹁全く、焦らし上手なんだから﹂
﹁⋮⋮ん﹂
ただ、ふと気がつく。
﹁寝ている相手にするの⋮⋮こんなに面白くなかったかしら﹂ 合意の上でやっていない、その背徳感はある。
171
?
その代わり、合意の上でやる相手の反応がない。
﹁んー﹂
そう言えば、最近はヤヤの最高レベルしか触ってないから、その差
を考えてしまっているのね。
ヤヤの前も、一番強いのでメンチだし。
﹁中々、贅沢な性活してるわね﹂
二人とも、本番まで行ってないけど。
﹁それでも、手を止める事はないのだけれど﹂
まあ、色々と考えたけど、これはこれでアリね。
時間制限がなければ、もっと楽しめたはずなのが、少し残念だわ。
﹁さてさて、そろそろ下を責め⋮⋮⋮⋮あ、タイムアウトね﹂
素早くネオンの衣服を元に戻し、ベッドの乱れも修正する。
時間にして、十分弱しかなかった。
﹁もっと遅く来なさいよ⋮⋮あの優等生﹂
172
欲を出せば、まだ数分だけ触る時間はある。
だけど、ここで下手なリスクを取るぐらいなら、後日に手を出して
も問題はない。
﹁そうと決まれば、さっさとおさらばね﹂
窓を開けて外に出て、クロロがいる最上階の部屋まで、壁を駆けて
登っていく。
そして、クロロを目視したので、窓ガラスを叩き割り部屋に入った。
﹁お前は一体、どこから入って来るんだ﹂
﹁窓ね﹂
﹁いや⋮⋮まあ、その通りだな。お陰で、順序が狂ったよ﹂
クロロは本を閉じながら、右親指で背後を指さした。
﹂
そこには、椅子に縛られて死んでいる男と、元人間だったらしい肉
の破片がある。
きっと、なんたらフィッシュの能力だろう。
﹁細かい事は気にしないでいいわ﹂
﹁むしろ、気にしてくれ⋮⋮と、そうだ。リナは、歌は得意か
歌⋮⋮なるほど、私に歌えと言うのね。
?
﹁いいえ、全然﹂
なので、そのまま拒否しておく。
実際には、下手でもないのだけれど⋮⋮その道のプロからすれば、
当然、下手くそ扱いされるだろうし。 歌は全然よ﹂
﹁そうか⋮⋮なら、頼むよ﹂
﹁聞いてなかったの
﹁だからお願いしたんだ。彼には、それが丁度いい﹂
私は肩を竦め、眼下の街並みを眺めているクロロの横に立つ。
﹁指揮は、適当に合わせなさいよ﹂
﹁もとより、曲はない﹂
﹁そう⋮⋮なら、いくわよ﹂
私は旅団員ではないけれど、今だけは貴方の為に歌いましょう。
◆ ◆ ◆ ﹁さてと、彼らから逃げますか﹂
﹂
一曲が終わり、クロロがそう宣言した。
﹁とか言って、地下で待ち構えるのよね
りの援護しかしてくれないのだろう
当たらずとも⋮⋮遠からずね。
﹁ふむ。当たらずとも遠からずか﹂
﹂
これ以上は互いに無駄、無意味と悟ったからだ。
私とクロロは、無言で地下へと足を進めた。
﹁そんなお前も、同じタイプの人間じゃないか﹂
﹁⋮⋮時々、キモいって言われるでしょ
﹂
﹁ただ、それはリナがしっかりと戦ってくれた場合だ。どうせ、それな
﹁もしじゃなくても、可能よ﹂
為にも、少し力を見せるべきかしら。
もしかせずとも、相手の無力化は余裕なのだけれど⋮⋮信用を買う
ろう﹂
﹁まあ、出来れば能力を盗みたい。リナもいるし、もしかしたら可能だ
?
?
?
173
?
﹂
地下で一番広いホールに到着し、舞台に上がって待機する。
﹁で、実際の所⋮⋮あの化け物二匹に勝てるのか
﹁そうねえ⋮⋮﹂
ぶっちゃけ、楽勝だ。
あの二人は念能力者としてトップレベルだけど、それでもトップで
はない。
明確な能力は分かっていない。けど、それでもネテロの能力には勝
らないと思う。こと近接戦闘に置いて、あの能力に負けはないはず
だ。
だからこそ、私の強さの証明になる。
私は逆に、あの能力にさえ勝っている能力だから。
戦いには様々な要素が絡み、その中で能力相性は高い割合を占めて
いる。
例えば、ネテロの能力。
あれは近接においては最強だとしても、遠距離からの狙撃や、真正
面から打ち破ってくる相手には不利だ。
だからこそ、王様に負ける事になった。
もっともその対処として、零の能力や、狙撃に対しての感覚を伸ば
しているはずだけど。
それに、念能力での狙撃等はあんまり強くない能力だ。
おおよそ、人体が念を放出してある程度の威力を保てるのは、せい
ぜい数キロだけ。
それならぶっちゃけ、狙撃銃を使えばいい。
まあ、それも並の念能力者しか殺せないけど。
﹁手こずるわ﹂
﹁ダウト﹂
﹁即答はやめなさいよ﹂
﹁リナも、嘘はやめるといい﹂
本当にこいつ、食えないわね。
﹁なら、どうして訊いたのよ﹂
﹁反応を見たかっただけだ。それに、今ので理解した﹂
174
?
⋮⋮こいつ、すり潰しても食えないわ。
﹁って、私の反応が、よくあるクーデレ系のヒロインのようじゃない﹂
﹁なるほど。三人目くらいのポジションだな﹂
﹁⋮⋮﹂
な、なんでわかってるのかしら。
﹁そんな目で見るな。知的好奇心だったんだ﹂
知的好奇心でギャルゲを嗜む、犯罪者グループのリーダー。あり
か、なしかで言えば。
﹁なしね﹂
﹁お前はそもそも、男がなしなだけだろう﹂
﹁そうとも言うわ⋮⋮それと﹂
この部屋に入る三つの扉のうち、一つを残してシルバとゼノが入っ
て来た。
なので、私はスカート部分を掴み。
を良
175
﹁いらっしゃい﹂
二人に挨拶をする。
﹁こりゃ、たまげたわ。えらいべっぴんさんじゃの﹂
﹁お褒め頂き光栄よ。それじゃ、早速で悪いけれど⋮⋮その一、入って
﹂
来た扉から帰る。その二、世間話で時間を潰す。その三、無駄死にす
る。どれがいいかしら
り出す。
何か
"
ぴたりと、二人の足が止まった。懸命な判断だ。
﹁流石、ゾルディック家の二人ね。この剣に込められた
く感じ取ったわ﹂
"
私はバックステップでクロロの正面に立ち、能力を発動して剣を取
それが、戦闘の合図になった。
﹁四番の、やれるだけやってみる⋮⋮かの﹂
もちろん、意味はない。
クロロを残して舞台から降りて、三つの選択肢を伝えた。
?
﹁得体が知れない物に恐怖を感じるのは、人間としての本能じゃろう
﹂
?
﹁その通りね﹂
本来ならこの能力を使わずしても、二人を相手に出来る。
ただし、これは防衛戦。クロロからの報酬を貰うためには、クロロ
に戦ってもらうなんて持っての他であり、無防備なクロロというハン
デを背負う。
そうなると、万が一を起こさないように戦う事が必須条件。そうな
ると、必然的に余裕が欲しくなる。
﹁ふむ⋮⋮それなりに長く生きてきたつもりだか、ここまでの明確な
死の気配は初めてじゃ。どうみる、シルバよ﹂
﹁具現化系としては稀な選択だ。ただ、彼女ほどの念能力者がシンプ
ルな剣を選択したのなら、それなりの能力がある。または、切れ味が
相当高いのだろう﹂
﹁つまり、未知じゃの。とんだお嬢ちゃんじゃ﹂
会話していても、一瞬足りとも私への警戒が薄まらない。いや、む
が空振った。
﹁やるわね﹂
176
しろ濃くなっていく。 想像の評価は訂正ね。
この二人、本物だわ。 ﹁褒められると照れるわね﹂
﹁心にも思ってない言葉を口に出しても、意味はないな﹂
﹂
?
クロロの発言は聞かなかった事にした。
﹂
﹂
﹁なら、そのついでに能力をぽろっと呟いてくれんか
﹁そうね⋮⋮使ったら、相手は死ぬわ
要望に答えて、簡潔に叫んでみる。
二人とも、なんとも言えない顔だ。
﹁それは困った。使わずして戦ってくれはせぬか
﹂
返答は、ノー。
﹁ふっ
?
!!
私の初動にアンテナを向けていたらしく、それなりの速度で振った
短く気合を発して、二人を切る。
!!
﹁そりゃこちらのセリフじゃ。避けるので精一杯とはな﹂
当たると思っていたのだけれど、やっぱり舐めすぎかしら。
﹂
まあ、当たっても腹筋が更に割れる程度の怪我だけど。
﹁それじゃ、これはどうかしら
描く軌道は二本。それぞれを狙った斬撃。
もちろん、躱される。
なら、次は二倍の線を引く。また、躱された。
﹁なるほど。今ので、限界ね﹂
﹁⋮⋮お嬢ちゃん。それだけの腕を、どこで手に入れた﹂
﹁どこと言われても、分からないわ。幾つもの修羅場を乗り越えただ
けだし﹂
肩をすくめて、適当に答える。
私がこれだけの力を持っているのは、ぶっちゃけると神様のお陰
だ。
確かに、修羅場は何度もあったけど、果たして本当の修羅場かと言
われれば怪しい所。
せいぜい、必殺技を出すレベルが数回あった程度だ。
しかも、私がただ経験不足だっただけ。今思うと、この状況の半分
にも満たない難易度だった。
﹁⋮⋮ふむ。シルバよ、全力で行くぞ。後ろの目標は一旦無視じゃ﹂
﹁了解した﹂
シルバの短い言葉の後、二人のオーラ量、質が跳ね上がる。
﹁へぇ﹂
その様子に、私は驚いた。
﹂
初めて見たからだ。これほどの念能力者を。 ﹁どうじゃ
だけれど﹂
﹂
二人に向かって踏み込み、足を払う様に回転斬り。
﹁っ
177
?
﹁慢心していたと、言わざるを得ないわ⋮⋮⋮⋮まあ、撤回はしないの
?
そして、飛び上がって回避したシルバを剣で叩きつけ、直ぐゼノに
!?
突撃する。
﹁はぁぁぁ
﹂
読まれていたらしく、龍が牙を向いて迫っていた。
ただ、それはこちらも想定済みだったので、龍を巻き込む様に剣を
叩きつける。
﹂
ゼノが勢い良く壁に跳んだ事を目端で捉えて、振り返りと共に、シ
ルバを叩く。
﹁私相手に能力を使わないのは、愚かな選択よ
せいぜい、私も能力を使って対抗するぐらいだ。
﹁そうは言うがの⋮⋮どうして、儂らを斬らんのじゃ
一回づつは殺されておる﹂
ま、そりゃそう考えるわよね。
?
﹁ふぅ⋮⋮⋮⋮ふっ
﹂
もっとも、それで何かが変わる事もない。
た所だ。素直に凄いと思う。
この短い間でも、一切の警戒を怠っていなかったのは、流石といっ
私はクロロを相手にしないと決め、改めて二人と対峙する。
は、やっぱり頭がどこかイカれている。間違いない。
誰に向けたかも分かっているくせに、そこに踏み込んで来るコイツ
﹁⋮⋮お前、今までで一番強い殺気になってるぞ﹂
﹁いっそ、切り落とそうかしら﹂
ムカつく。
相変わらず、後ろの野郎がうるさい。見当違いじゃないから、更に
﹁アンタは黙ってなさい﹂
﹁嘘だな﹂
暗殺の成功を伝える頃だろうし。
ただ、私が殺したくないってだけ。それに、もうそろそろイルミが
﹁気まぐれとでも言っておこうかしら﹂
少なくとも、
もっとも、使った所で何かが変わる訳でもないけど。
?
ただ、飛び出しが読まれていた様で、ゼノの竜がタイミングよく
大きく息を吐いてから、二人に踏み込んだ。
!!
178
!!
迫ってくる。その左後ろにはシルバが控えており、二段攻撃が目的ら
しい。
何か
を感じたのか、二人が体制を崩しなが
私は剣を突き出し、能力を発動した。
その瞬間、見えない
ら左右に散る。
剣でオーラを放出。
威力が少ない事は読まれていたらしく、腕を交差した上で
ガードされる。
凝
で
"
﹁何っ
﹂
たシルバに、左肩から振り向いた状態で剣を投擲する。
オーラの直撃を受けたゼノを視界から外し、またクロロに迫ってい
を飛ばしながら。
に剣を引き、そのまま三段突きを繰り出す。全ての攻撃動作でオーラ
右下から逆袈裟斬り、短く弧を描いて右上に切り払い。右腰の辺り
シルバが壁に大きく激突した音を背で受け、ゼノに駆ける。
て左拳を追加した。
ただし、それはこちらも予想済みなので、着地と同時に地面を蹴っ
"
プで迫り回転斬り。後ろに飛んで回避した所に、もう一度回転して、
そして、その隙にクロロに迫っていたシルバに対し、バックステッ
す。
払い。同時に、両手から右手に切り替え、空いた左手でオーラを飛ば
目標をゼノに定めて踏み込み、右から袈裟斬り。左に剣を引いて横
﹁答え合わせは、無しで行くわよ。全力で、逃げなさい﹂
"
セイクリッド・インパクト
ゼノを左拳にて壁に埋める。そして、シルバに迫って手刀を繰り出
す。
﹁我、星帝なり。塵と化せ、愚者よ⋮⋮⋮⋮﹃星 帝 の 鉄 槌﹄﹂
隙が出来た瞬間、ウボォーからインスピレーションを受けて生み出
した能力を、シルバにぶつけた。
効果は、ただのストレート強化。前口上のみで発動する、ちょっと
お手頃の能力だ。
179
"
シルバが驚き体制を崩しただろうタイミングで、体制を戻しながら
!?
﹁ふぅ⋮⋮こんなものかしら。もちろん、傷はないわね、クロロ
﹁いや、大きな傷が出来た﹂
﹁⋮⋮心の傷とか言ったら、ぶつわよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮報酬は、弾もう﹂
﹂
﹁それじゃ、さっさと計画を進めなさい。色々と頃合いでしょう﹂
だけど。
段々、コイツの反応が読める様になってきた気がする。物凄く、癪
?
﹂
﹁何も伝えてないはずだが⋮⋮なるほど、本当に未来を知っているら
しいな﹂
今やっと、本当の意味で理解したらしい。
笑顔で頷きながら、クロロは電話を取り出した。
﹁それは何より⋮⋮で、いつまで寝たフリをしているの
世界
の能力を使わずとも、打ちどころが悪ければ気絶程度の攻
少し声を張り、二人に呼びかける。
?
﹂
?
﹁うん、殺す﹂
﹁キモい﹂
﹁何かしら﹂
﹁⋮⋮一つ、いいか
﹂
何となく、笑顔で言ってみた。
﹁選択肢は、一番だったらしいわ﹂
二人を見送り、電話を終えたクロロに視線を向け││
﹁ああ⋮⋮﹂
ルバ﹂
﹁⋮⋮嬢ちゃんには敵わんの。今日の仕事は辞めじゃな。帰るぞ、シ
﹁それは失礼したわ。それと、そろそろ連絡が来る頃よね
服を叩いて土埃などを落としながら、二人が立ち上がる。
﹁全くだ﹂
﹁寝たフリじゃなく、休憩と言ってくれんかの﹂
撃で、二人がへばってない事は分かっていた。
"
た。 クロロの返事を聞く前に、私は無防備なその腹に拳をめり込ませ
?
180
"
181
14話﹃予言﹄
﹁私だ﹂
﹁ん、そろそろ掛かってくる頃だと思ったわ﹂
クロロ護衛任務が無事に終わり、数時間後。クラピカからの電話を
受けた。
﹁こ の 前 の 返 答 を し よ う と 思 っ て、こ ち ら か ら 連 絡 さ せ て も ら っ た
﹂
⋮⋮と、回りくどいのはよそう。私は、リナさんを仲間だと思ってい
る﹂
﹁そう⋮⋮それで
﹁今回の事件⋮⋮旅団の頭が死んだのは、フェイクと見ていいだろう
か﹂
クラピカが訊きたい本題はこれでは無さそうね。さっさと本題に
入ってもらいましょうか。
﹂
﹁そ ん な 分 か り き っ た 事 を 訊 く た め に、連 絡 し て き た の で は な い で
しょう
ま、そうなるわね。
﹁これは、電話で続ける話ではないわね。一旦、どこかで落ち会いま
しょう⋮⋮手土産も持って行くわ﹂
﹁では、エル病院の屋上に来て欲しい。場所はメールで送っておく﹂
﹂
電話を一度切って、メールを確認。競売には参加するなとメールを
返信し、旅団の輪に加わる。
﹁ねえ、ヒソカ。緋の眼はどこにあるのかしら
﹁普通に名前を呼ばないでよ⋮⋮そこの箱﹂
﹁それじゃ、出かけてくるわ。クロロによろしく﹂
だ。
素直にお礼を伝え、しっかり中身を確認すると、ちゃんと本物の様
﹁ありがとう﹂
苦笑いした後、ヒソカは一つの段ボールを指差して教えてくれた。
?
182
?
﹁⋮⋮頼む。私に、仲間の仇を討たせて欲しい﹂
?
﹁勝手に持って行って、彼は怒るんじゃないかい
◆ ◆ ◆
﹁っ
﹂
薄々は気がついていたが、本当に持ってくるなんて⋮⋮あり
﹁あ、とりあえずお土産から。喜びなさい﹂
も乱れてないし、平常心って訳ね。
電話で声を聞いた時に思ってたけど、落ち着いているわね。オーラ
組の会話から抜けれたのは、ついさっきさ﹂
﹁時間は特に定めてなかったし、気にする程でもないだろう。それに、
﹁ん、待たせちゃったかしら
﹂
リナの言葉で、ヒソカの中にしっかりと選択肢が増えていた。
﹁ああ、ごめんごめん。手伝うよ﹂
﹁おい、ヒソカ。さぼってねぇーで、ちゃんと仕事しろ﹂
口元を手で隠し、ヒソカは大きく口を歪める。
﹁そっか、それでも彼と戦える可能があるのか⋮⋮これは盲点だった﹂
◆ ◆ ◆
段ボールを抱え、背中越しに手を振って会場を後にした。
﹁そしたら、貴方が私を守る騎士になればいいわ⋮⋮﹂
?
そもそも、ここで偽物を持ってくる意味はない。それに、ここで本
物を持ってくる事で、仲間だという証明にもなる。
もっとも、あんまり褒められる行動ではないけど。
﹂
﹁それで、感傷に浸っていないで、本題に入りましょう﹂
﹁あ、あぁ。そうだな⋮⋮﹂
本当に、クラピカは優しい奴ね。
﹁仲間の仇と言ったけど、旅団を殺すつもりなのかしら
﹁もちろん、その通りだ。もっとも、旅団が壊滅すればそれでいいのだ
?
183
?
﹁どういたしまして。もちろん、本物だから、それ﹂
がとう、リナさん﹂
!?
が﹂
復讐の炎は、未だ強い揺らめき⋮⋮ね。
﹁なら、止めるつもりはないわ。ただ、協力もできない﹂
﹂
﹁やはり、そうなるか⋮⋮では、一つだけ聞かせて欲しい。リナさんの
目的は、一体何だ
﹁そんなの、女の子に決まってるじゃない﹂
私は即答した。
﹁ふっ。リナさんは変わらずだな﹂
﹁当然よ。あるがままに、女の子を求める⋮⋮ガールズハンターだし﹂
微妙に癪な二つ名だけど、これ以上に私を表す言葉がないのが悔し
い。
﹁リナさんにピッタリの名前だ﹂ そう呟きながら、クラピカは何回も首を縦に振っていた。
﹁ま、旅団の中にいる女の子を狙うなら、例えクラピカ相手でも容赦し
ないから⋮⋮それだけは気を付けなさい﹂
﹁了解した⋮⋮と、言いたい所だが、実際には分からない。目の前にし
てみると、激情してしまわないとも限らないからな﹂
クラピカかは素直でありがたい。
﹁お互い、殺気も込めずに言う台詞でもないわね﹂
﹁違いない﹂
二人で笑い合い、その後クラピカがこの場を離れた。 そして、一人になった屋上で寝転び、夜空と星を眺める。
﹁さて⋮⋮と。ここから、面倒な役回りをしなくちゃ駄目ね﹂
クロロ、ヒソカ、クラピカの思惑が絡まる中に、私を入れて目的を
達成しなくてはならない。
現在の相違点が、ネオンが緋の眼、偽物を所持していない事。クラ
ピカが少なくとも女の子⋮⋮マチ、シズク、パクノダを狙わない事。
この二点。
日付が変わってから、昼までにクラピカがゴンたちと集合するとし
て、その時にパクノダの能力を知るはず。
ここで、私が出向いて説得するより、それより面倒な予言イベント
184
?
がアジトで起こるから、そっちに向かう必要があるわね。
詳しい予言の内容はあんまり覚えてないけど、私がいる影響を見て
おかないと、どこで目的が狂うかも分からない。
﹁その都度修正したとして、上手く行くとも思わないし⋮⋮⋮⋮私が
二人いれば早いのだけれど、瞬間移動が出来るでも可ね﹂
念能力として、かなりリスクがあったから選択しなかったけど、欲
しい時は欲しいものね。人生、何があるか分からない。
もっとも、全力で色々すれば似た様な事は可能だけど、タイムラグ
が出るし。
﹁いや、そう考えると、瞬間移動もタイムラグあるわね。って、それは
いいとして、どうにか楽な方法ないかしら﹂ ヤヤを頼るのは微妙だし、あの子達を頼るのも微妙だし⋮⋮全部微
妙ね。
﹁よし、行き当たりばったりで進もう﹂
﹂
﹂
私が欲しかった訳じゃないわ﹂
全く、ヒソカは余計な事をしてくれるわ。
﹁んー、特に
﹁⋮⋮嘘は言ってない。が、誰に渡したんだ
﹁貴方たちが言う、言わば鎖野郎よ﹂
言葉が届いたであろう瞬間、大剣を正面の地面に突き刺す形で呼び
交渉決裂なら、今すぐこの剣を抜くけ
出して、数人の攻撃を受け止める。
﹁あのね、残念な事に無駄よ
?
185
私は全ての考えを投げ捨てて、旅団のアジトに向かった。
◆ ◆ ◆
﹁ただいま⋮⋮ん、ピリピリ
﹂
?
問いかけの中に、多少の怒りあり⋮⋮ね。
カから聞いたが、欲しかったのか
﹁ノブナガ、悪が先に、リナに話だ。で、緋の目を持って行ったとヒソ
アジトに戻ると、空気が痛い。理由は明白だけど、素直に面倒だ。
?
曰く付きの品を持ち出したのは、やっぱり、疑われるわね。
?
?
ど﹂
﹁全員、引け﹂
クロロの一声で全員の殺気が、少し収まった。
﹁すまない、リナ。交渉は継続してくれ﹂
﹁もちろん﹂
大剣を消して、肩をすくめながらそう答える。
﹁おい団長。目の前に元凶がいて、剣を抜いちゃいけねえってのか﹂
﹂
﹁くどいぞ、ノブナガ。交渉は継続だ。それに、少し前にだが、俺はリ
﹂
ナと鎖野郎につながりがあると知った﹂
﹁何
70年の9月8日だよ﹂
﹂
﹂
﹁ある娘の能力だ。ノブナガ、生年月日は
﹁は
﹁血液型は
﹁Bだ﹂
﹂
知ってんだろ
﹁良く分からねえが⋮⋮分かったよ﹂
突然、クロロの質問責めが始まり、この空間がかなり穏やかな雰囲
気に変貌していた。
私にとっては良い事だけど、まさかこのタイミングで占いの流れに
なるなんて思わなかったわ。
﹁ほらよ﹂
﹁ん、ちょっとだけ待ってくれ﹂
そういえば、クロロの占いをまだ見てないけど⋮⋮私がいる影響が
吉と出るか、狂と出るか。
◆ ◆ ◆
大切な暦が不意に一つ欠ける。残された月達は盛大に葬うだろう。
加わり損ねた睦月は、祝福を望まず、一人で霜月の影を追い続ける。
186
﹁名前は
﹁ノブナガ=ハザマだ
!!
?
﹁ありがとう。それをこの紙に書いてくれ﹂
!!
?
?
?
?
女神の加護で女月は決して欠けない。血塗られた緋の眼への祝福
が喪われるから。
止め、待て。獲物が掛る。しかし、希も絶もない。
手足を差し出せ。寵愛が、蜘蛛の望みに繋がる。
さすれば、過半数動くから。
頭が絶たれ、されど手足は動く。東へ、東へ。
三本で、死神を望め。頭が双丘に蘇るから。
ただ、忘却するな。かつての女神は死神だ。対価でなく、売却だ。
死神の吐息が、還る地を虚無に戻すかも知れないから。
◆ ◆ ◆
﹁絶対に嫌だよ﹂
﹁蜘蛛の為なら、別に﹂
﹁そんな趣味はないから、私は遠慮するわ﹂
賛成少数。結論、遊べない。
﹁いっそ、殺してしまいましょうか。貴方を殺して私も⋮⋮死にたい
けど、遊べないからやっぱり殺すだけね﹂
剣を手に呼び出して、マチの方に向けてみる。 ﹁せめて、殺気を込めてからいいな﹂
﹁⋮⋮それもそうね﹂
剣を引っ込めて、近くの段ボールに腰かけた。
﹁ふむ、本題に入ろう﹂
クロロの一言で場の空気が、改めて静かになる。
﹁この予知能力は確実に当たる。詩の形を借り、四つから五つの四行
詩で成り、それが今月の週ごとに起こる予言だ﹂
本当に性質が悪い能力よね。先天性の能力はこれだから嫌になる
わ。
まあ、それならクロロの計画を阻止すれば良かったんだけど⋮⋮気
187
にもなったし。
﹁自動書記で、残念ながら俺には内容が分からない。そして、これが俺
の占い結果だ。読み回してくれ﹂
クロロは、かなり綺麗に折られた一枚の紙をポケットから取り出
し、ノブナガに手渡した。
さりげなく後ろに回り込み、内容を確認してみる。
﹁ふーん﹂
重要な文章は特に無かった。
結局、私に頼れば平穏無事。頼らなければ、屍山血河。何とも分か
りやすい。
問題があるとすれば、この予言で危険があると分かるから、避ける
様に動けば無事になってしまう所。
話を続けると、リナに三人を差し出せ
もちろん、妨害は行う。そこまで私は甘くするつもりはないし。
﹁そろそろ読み終わったか
ば、蜘蛛は無傷で済む。差し出さないなら、三人以外の誰かがそれな
りに死ぬ。一番の問題点は、誰が死ぬか分からない事。これは恐らく
になるが、リナの気質に依るからだろう。だから一応、精度を上げる
為に、他の皆も同じ様に占わせてくれ﹂
猫扱いされているわ、私。
﹁ワタシ、自分の生年月日知らないね﹂
﹁オレなんて血液型も知らねーよ﹂
﹁げっ﹂
﹁ざまー﹂
狼狽えているクロロの顔は、中々に、実に愉快だ。
それから少し時間が進み、二人を除く占い結果が出た。
皆が結果を共有する中、もちろん、ヒソカだけまだ紙を手にしてい
る。
また、さり気なく後ろに回ると、これまた重要でもない。
﹁頑張って誤魔化しなさい﹂
もっとも、旅団にとっては一大事なので、ヒソカだけに届くであろ
188
?
う程の小声で、文章の改善を応援する。
﹁僕の能力まで知ってるんだね⋮⋮了解。頑張るよ﹂
返答は前向きだったけど、横顔が中々に強張っていた。
それもそう。予言の内容が、大筋こそ見覚えがあるけど、かなり難
しく変更されている。
主に私の存在が、内容に入り交じり追加されているから。
﹁ふむ、改めて頑張りなさい、少年﹂
﹁君、僕より年下じゃないか⋮⋮うん、こんな感じでイケそうかな﹂
実際には、三十超えているのだけれど⋮⋮ある意味。
改善文を眺めながら、三十路は嫌だなとか思ってしまった。
﹁ヒソカの占いも見せて﹂
﹂
そして、近くにいたパクノダから、案の定催促が来る。
﹁やめた方がいい。驚くよ
﹁後ろのリナはそんな素振り、一切してないわよ﹂
多少、そんなフリしておけば良かったわね。
いや、未来を知ってる私の行動としては、こっちの方が正しい。結
果オーライ。
﹁彼女は未来を知ってるらしいからね⋮⋮﹂
﹂
渋々のフリで、ヒソカが紙を手渡した。
﹁っ
簡単にやってのけたっぽいけど、技術のいる投げ方だ。凄いわね、
パクノダ。
◆ ◆ ◆
赤目の客が貴方の店を訪れて、貴方に物々交換を持ちかける。
客は、剣の掟を差し出して、月達の秘密を攫って行くだろう。
189
?
パクノダが紙をふわっと投げ、それをシャルナークが受け取る。
﹁ちょっと、皆も見て﹂
﹁ほらね﹂
!!
11本足の蜘蛛が懐郷病に罹り、さらに7本の足と頭を失うだろ
う。
仮宿から出てはいけない。貴方もその足の1本なのだから。
気まぐれの女神から、有償の祝福を望め。
唯一、貴方の生に繋がるから。
◆ ◆ ◆
﹁赤目の客が月達の秘密を。気まぐれの女神には、有償の祝福を望め
﹂
⋮⋮⋮⋮か﹂
﹁見せろ
ノブナガが、シャルナークから強引に紙を奪う。
そして、読み終えた直ぐに殺気立て刀を抜き、こちらを向いた。
﹁ヒソカ⋮⋮てめぇもか﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁私はそもそも何もしてないわよ﹂
﹂
弁解だけは忘れないでおく。実際、何もしていないし。
﹁イエスと取るぜ
﹁まあ、待てよ﹂
﹂
!!
﹁ん
﹂
あるだろう⋮⋮なあ、リナ﹂
﹁ノブナガ、少し黙れ。ヒソカを問いただすより、遥かに簡単な方法が
私はそっと、戦線から離脱し、元の位置に戻った。
殺気の方向が私にない所を考えると、やはり眼中にないらしい。
﹁話も何も、アイツが裏切ったのは確かだろ
﹁そうだよノブナガ。まずは話を聞いてみよう﹂
!!
﹁何が、俺たちにとっての最善だ
﹁間違いないわね﹂
す事だろう﹂
予言の内容は皆も共通して理解
した。その上で、予言を読み取っての最善は、現段階で三人を差し出
?
190
!!
携帯ゲーム機から、視線をクロロに移す。
?
﹁現状、二人がリナに協力は出来ない。つまり、この予言は、シズクだ
﹂
けをリナに貸し出した場合の結果のはずだ﹂
﹁うん、それで
は、
差し出す
と
懐郷病
だ﹂
"
なり笑いが止まらない。
物々交換
もちろん、ポーカーフェイスは忘れずに、心の中でだけど。
﹁差し出すの本来の意味は、刺し出す。そうでないと、
"
と
で、前後の文意が食い違うからだ。これは想像に依るが、剣
"
そんな頭が良いクロロでさえ、ヒソカの手の平の中と考えると、か
"
らえた能力も持っているはずだが⋮⋮今は重要じゃない。大事なの
間違いなく、言動や行動を縛る能力だ。それに加えて、ウボォーを捕
う。ヒソカの予言にあった、剣の掟。これは、ヒソカの様子からして
﹁選択肢はリナが絡むといくらでも増えるが、主に鎖野郎が原因だろ
相変わらず頭良いわね、コイツ。
か﹂
分かる⋮⋮ただ、ここで気になるのは、どうして俺がその状況になる
上が死亡。その後に、俺が旅団と接触できなくなり、東へ向かう事が
﹁予言の忠告を無視して進んだ場合、鎖野郎が死に、三人を除く半数以
?
"
の実力者を相手に、簡単に成功させれた鎖野郎の実力は注意に値す
蜘蛛が半数になる予定
る。いや、注意しないと予言の通り、蜘蛛はほぼ壊滅だ﹂
そう言えば、元々はクラピカが暴れて
全員が死ぬ事になっていた﹂
だし、希も望もない⋮⋮共倒れだ﹂
﹁それは違う。理由は不明だが、待っていれば勝手に仮宿に来る。た
﹁なら、結局俺の提案が良かったって話か
﹂
に話していたホームに帰るかどうかだが、帰っていれば三人を除いた
だけ予言をしておいて良かった、という所か。つまり、リナが来る前
﹁次に懐郷病だが、これは文字通りホームシックの事だろう。分かる
ロの忠告は正しいかしら。
だったのよね。現状で中々に恐ろしい戦闘力が有ると考えると、クロ
?
?
191
"
攫う
"
の掟とは、相手の体内に仕掛けを埋め込んで発動する能力。ヒソカ程
"
﹁そういや、そんな文章だったか﹂
ノブナガって、やっぱり頭悪いのね。時々賢い様に感じるだけで。
﹁さて、ここから話を順番に戻すが⋮⋮まず、ホームに帰ると鎖野郎に
会わないのに、何故壊滅するか。理由と心情は不明だが、原因はリナ
だ。恐らく、何かで殺しに来るのだろう﹂
私もそう思う。ホームの位置を知らないから、逃がすまいと四人以
外を瞬殺してしまいそうだわ。
もっとも、未来を知っているのにホームの位置を知らないなんて、
クロロは思ってないから、そういう結論に至ったのでしょうけど。
全能じゃないと時々困るわね。
﹁次に、俺が生き残りながら鎖野郎が死んでいるが、俺が頭で無くなる
事。これは剣の掟の能力が原因だろう。鎖野郎がこのアジトに来て、
戦闘を開始。するとリナは三人を守る為に動く為、鎖野郎の狙いが三
人以外になる。そして、守られて大人しくしない三人が前に出ると、
必然的に戦闘の余波等で傷つく確率が上がる。すると、その事故を起
こさない様に、一太刀で原因をことごとく消していく。その結果、三
つ巴が起こり、女の次に守る優先度の高い鎖野郎の為に動き、誰かが
死亡。その隙で俺に剣の掟が刺さり、三人の誰かが鎖野郎に攻撃。迎
撃され傷つき、傷つけた鎖野郎をリナが殺すのだろう﹂
クロロの語りに、旅団員がそれぞれ頷いている。それも当然ね。
決して、思考力が足りていない訳じゃなく、クロロとヒソカが異常
なだけで⋮⋮一部メンバーを除いて、水準はかなり高い。
﹁さて、結果的に俺が孤立するのは、鎖野郎の能力によってだ。その頃
には三人しか残っておらず、三人でリナを頼った所で、蜘蛛は完全消
滅するだろう⋮⋮ただ、不思議というかこれは異常と言おうか。何故
予言が、全員で共通してない結論になるか⋮⋮まあ、恐らくリナのせ
いだろう。そこがある意味で脅威だが、予言を持ってしても、リナの
気まぐれ次第で結末が変わるんだ。誰がどう望もうと、予言を持って
行動しても、だ﹂
﹁てーことは、結局何が正解なんだよ、クロロ﹂
ノブナガの質問に、全員の視線がクロロに集中する。
192
﹁まずは、謝ろう。俺が予言の能力を奪ったせいで、リナの気まぐれが
加速する事について⋮⋮だが﹂
クロロが軽く頭を下げたが、上げた顔にもう謝罪の念は籠っていな
い。
﹁お陰で、対策は浮かんだ。簡単な話だ、リナ⋮⋮護衛という名目で三
人を連れて、ヨークシンを発ってくれ﹂
熱い視線が、私を捉えていた。
193
15話﹃灰色狂想﹄
空が茜色に染まり始めた頃、私は三人の女子と共に、殺風景で荒れ
ている一室に入った。
クロロのお願いは一旦保留にしている。その理由と目的はただ一
つ⋮⋮。
﹂
﹁さぁ、恋バナを始めるわ﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮正気なの
なんで、疑われているのかしら。私、何も変なことを言っていない
のに。
﹁そんな驚いた顔されても、今までのアンタの行動からしたら、十分お
かしいんだけど﹂
﹁マチの言う通り﹂
三人から否定されてしまった。
﹁確かに、今までの動きを見る限り、とても恋バナをするタイプには見
えないかも知れない。だけど、私はこれでも純粋、純潔、純情なのよ﹂
﹁﹁﹁ダウト﹂﹂﹂
でしょうね、うん。
﹁まあ、信用されてない。されないのは分かったけど、とにかく話には
付き合って貰うわよ﹂
そうじゃないと、一向に前へ進めないし。
﹂
﹁アンタを信用出来ないのはあるけど、それ以前にこのメンバーです
るわけ
を血で洗い流した経験のある女子四人が恋バナなんて、おとぎ話でも
ありはしないでしょう。
﹁んー、実際にはしなくてもいいわ。でも、しないと多少⋮⋮いえ、か
なりの問題が生じるのよね﹂
194
?
マチ、シズク、パクノダ、私。そう思うのは当然なメンバーね。血
?
主に私の弱点に繋がる問題なので、これ以上疑われない内に話を進
めたい。
最も、弱点と言っても、それが伝わって何かが起こる程の弱点では
ないけど。
﹁ふーん⋮⋮あたしゃ付き合ってもいいけど、何か隠してるね﹂
﹁どうしてそう思うのよ﹂
﹁勘だ﹂
出た、マチの直感。
本当、どうにもならない未知なる領域系のシックスセンスはやめて
欲しい。
今だけは、あのノブナガに同情できるわ。
﹁残念ながら⋮⋮⋮⋮正解。隠している事が一つあるわ。それは恋バ
ナをしようと言った、真意に繋がる事でもある。だから、それを踏ま
えてもう一度提案するけど⋮⋮さぁ、恋バナをしましょう﹂
195
﹁断る﹂
﹁マチに同じく﹂
﹁私も﹂
﹁でしょうね﹂
私は項垂れた。
やっぱり、話を進める為には、理由から離さないといけないかしら。
いや、それとも実力行使で進むべき
三人に目配せてから、軽く頭を下げる。
言っても、知りたいのは一つだけなのよ。お願いするわ﹂
﹁なら、一つだけ答えてくれると助かるわ。ぶっちゃけ、恋バナとか
い。切実に。
多少の未練とか置いといて、一旦あの頃に戻って百回ぐらい殺した
鹿を責めたい。
女の子の心情ぐらい、察してやれる男だと信じきっていた、昔の馬
﹃星 帝 の 世 界﹄を使って読み取れない情報だ。
セイクリッド・ワールド
私 が 望 む の は、相 手 の 情 報 ⋮⋮ 主 に 心 情 な の だ け れ ど、こ れ は
自問自答を繰り返すが、一番の答えは出て来ない。
?
﹂
﹁はぁ、ならその一つだけだ。もちろん、内容によっちゃ、応えない﹂
﹂
マチの鋭い眼光に、身体が絶妙に震えた。
﹁取り消すよ
﹁ごめなさい、条件反射よ﹂
話が進まなくなる方が嫌なので、素直に謝っておく。
今は本当に、話が円滑に進んで欲しいし。
﹁それなら⋮⋮良くはないけど、いい。で、アンタの訊きたい事は
﹂
﹂
﹂
?
だった。
?
﹁その心は
﹂
﹁手を出せない
⋮⋮あ、うん、そういう事﹂
きな男性がいるなら、その可否だけでもいいわよ﹂
らないなら、直ぐに止めるわ。あ、もちろん、クロロじゃなくても好
﹁男性として好きって意味だけど、そこは大丈夫よね
それも分か
そ の 分 野 が、こ の 恋 バ ナ ⋮⋮ 正 気 を 疑 わ れ た 時 点 で、や め る べ き
必要がある。
理解力に乏しいメンバーだとは思わないけど、分野次第じゃ諦める
﹁えーと⋮⋮やっぱり無理ね、このメンツだと﹂
すぎて、何も分かんないじゃない。
うっわ、なんてグレー。白黒どころか、やっぱり意図が伝わらなさ
﹁はい
﹁んー﹂
﹁はぁ
﹁三人とも、クロロとかに恋してる
そうなると⋮⋮やっぱり、名前を出すのが良いかしら。 葉でないと駄目。
簡潔で分かりやすく、相手の心に刺さり、なおかつ動揺を誘える言
ないと、感情が読めない。
なんて言葉がベストか⋮⋮多少なりとも、表情やオーラを微動させ
?
?
﹁また、意味不明な理由だね﹂
生する理由なので、そのまま肯定する。
シズクの返しに思わず答えてしまったけど、ギリギリ結果として発
!!
?
196
?
?
マチの視線が、少し優しくなった気がした。
﹁意味不明なのは承知の上で、訊ねないといけないのよ。最悪、私の命
に関わるし﹂
﹁そ れ は 良 い 事 を 聞 い た。最 悪 っ て ケ ー ス が ど れ か 分 か ら な い け ど
⋮⋮やり方によっちゃ、アンタを殺せる訳だ﹂
やっぱり、マチは根本的には優しいのね。
﹁殺気を込めずに発する言葉ではないわよ。それに、私がソレを伝え
た時点で、殺されないって言ってるも同然だし﹂
あくまでも、最悪のケースの場合。その最悪は、私が気を付けてな
お、起きるかも知れないという条件だ。
今まで生きて、ヘマはしてないし⋮⋮無知であれば、罪でも罪を回
避できる。
﹁相変わらずやり辛い⋮⋮分かった。アンタの質問には答える﹂
﹁やった﹂
ガッツポーズと共に、思わず声も弾んだ。
﹁アンタには残念だろうけど、クロロの事は気にいっている。これが
恋心と言われればノーだけど、そもそも気にいらない相手の盗賊団な
んかに、所属する意味ないよ﹂
⋮⋮ごもっともで。
私の基準からしても、かなりグレーね。無自覚っていうラインは。
﹁マチと同じく。リナには悪いけど、女の子に興味ないし﹂
シズクもグレー。
﹁私は個人を愛するより、旅団を愛しているわ。これがリナの基準か
らして、セーフかアウトか分からないけど⋮⋮﹂
パクノダもグレー⋮⋮というか、ほぼアウトね。
﹁全滅じゃない﹂
見事に全滅した。精々、セクハラして楽しむ位だけど、その基準は
ツータッチまで。
元々、確かな基準がない為に私の匙加減になり、経験上そうしてい
る。
主に、自身の不利に働きやすい、優れた直感力のお陰で分かったん
197
だけど。
﹁うーん⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
四方八方に手を尽くせば、手を出せる。
その褒賞が絶対、割に合わない。
多分、精神的に死に掛けるはず。
そこまでして、手を出したいかと言われれば⋮⋮ぎりぎりノー。
でも、何もせずにこの地を去るのも悔しい。
﹁なるほど、悔しいのね⋮⋮あの色男、殺すか﹂
﹄
確かな殺気を込めて、言葉を吐く。
﹃っ
三人に距離を空けられ、その手にはしっかりと念の武器が握られて
いる。
﹂
私も、それに答える様に無言で剣を出し、右手に力を籠めた。
﹁私の物にならないなら、壊してしまうのが道理よね
﹁私は、ここよ
﹂
かかと方向からの足払い、倒れる前に身体を抱き、後ろに跳ぶ。
踏み込んで、まずシズクの武器を斬りつけ、消滅させる。
﹁なら、残念だけど⋮⋮私の為に、死んで﹂
そうなるよう、本気の殺気を出している訳だし。
恐らく、本格的な死を感じているのでしょう。
答えたマチの顔から、汗が落ちている。
﹁⋮⋮悪いけど、共感できやしない。もちろん、抵抗はさせて貰う﹂
?
られる。
?
ああ、本当、良い。 ﹁⋮⋮シズクは、うちの要。条件はなんだい﹂
狙ったのはシズクだし、高確率で条件が通るはず。
﹁さて、人質を作った意味は、良く分かるわよね
﹂
マチが振り向いて、そう答えた。その言葉には、確かな恐怖を感じ
﹁本当に化け物だね、アンタ﹂
い、床に寝かす。
抵抗されるのが面倒なので、言葉と同時にシズクには気絶して貰
?
198
!?
﹁マチ、貴方が欲しいわ﹂ 歪めた顔に、混ざっている恐怖心。滲む怒り。得体の知れない、私
への興味。
望んだのは、その反応だけど、これは予想以上ね。
﹁分かった﹂
まだまだ、絶望が足りない。もう一段階、引き出さないと。
﹂
﹁じゃあ、まず⋮⋮服を脱いで、下着になって。元々何も持たないマチ
なら、造作もない事でしょう
﹁くっ﹂
もちろん脱がしたいだけ。
いいえ、脱いでいる姿が見たい。
わ﹂
﹁へぇ、元々上は付けてないのね。下はスパッツだし、うん、かなり
ソソル
身体を震わせながら、マチが顔を上げる。
﹁顔を上げて﹂
を上げない。
時間はそれほど掛らず、私の足元に近づいたマチは、俯いたまま顔
いて来る。 反応を見せるのが嫌だったのか、顔を伏せながら、要求通りに近づ
﹁⋮⋮ふん﹂
来て﹂
﹁可愛いわね、マチ。次は、四つん這いになって犬の様に、私の足元に
多少の羞恥はあったのか、顔がほんのり赤い。
れている。
頑なに触らせてくれなかった、その胸が、わずか10m先で披露さ
形が良く、それなりに育った胸。ツンと上向きで、まさに想像通り。
"
武器を隠し持っているのが面倒くさいのはあるけど、主な目的は、
流石に、この状況で抵抗心は少ないのか、素直にマチが脱ぎ始める。
?
やっぱり、先ほどより顔が赤い。
﹁うん、可愛いわ。本当に﹂
﹁次は、どうするんだ﹂
199
"
﹁立ち上がって、私にキスして。もちろん、言わずとも分かる場所に。
そして、情熱的に﹂
﹁変態め﹂
﹁褒め言葉よ﹂ 初めから、こうしておけば良かったなと思うけど⋮⋮ここまで来
て、少し後悔してる。
まさか、こんな上手く成功するなんて。
いや本当に、軽い冗談のつもりだったけど、良くあるテンプレをな
ぞるだけで、普通成功するかしら。
﹁口、開けな﹂
﹁いーや。無理やりこじ開けて﹂
うん、怖い。自分の才能が怖い。
こうすれば、何とか最悪のケースになりにくと判明したし。
﹁っく⋮⋮んく﹂
﹁かかったね、パクノダ
﹁えっ
﹂
ち返す。
﹂
丸を三発、ふわっと全身から出した念で包み込んで、軌道を変更、撃
やっぱり、そんな上手く行かなかったなと反省。パクノダからの弾
ビックリするほど痛いけど、耐えられない痛みではない。
!!
差で当てて窓枠から外に飛ばす。
200
とりあえず、キスさせる事に成功した。
言葉を発すると、口が開いてしまうので、黙ってマチの顔を眺める。
﹁ん、ちゅぱ⋮⋮はっ、んぷ﹂
で、この娘⋮⋮もしかしなくても、初めて
﹁下手糞ね。こうするのよ﹂
ける。
﹁んんんっ
﹂
頭の後ろに左手を、右手を顎に添え、顔を上に向かせて口をこじ開
?
口内に舌が触れた瞬間、私の舌が切断されてしまう。
!?
狙った箇所はもちろん拳銃。もっとも、特に意味はないけど、時間
!?
私がそっちに割いた行動の間で、マチがシズクを奪還して、パクノ
ダの傍に戻ってしまった。
﹁いはい。はれれない﹂
仕方がない。まさか使うと思ってなかったけど、治療しましょう。
星帝の慈愛︽セイクリッド・アフェクション︾。星帝に備わる、修復
能力だ。
ヤヤにあれだけ説明しておいて、この結果だと、笑い話にしかなら
ないわね。
﹁心配してくれるなら御の字かしら⋮⋮さて、振り出しね﹂
﹁それが、アンタの能力かい﹂
﹁一部だけど。元々ある私という質量に変化があった場合に、それを
リセット出来る能力よ。簡単に言うと、超再生ね。治癒力を限界を超
えて強化すると、こんな感じになっちゃうだけで﹂
失われた血すら補うので、念が続く限り、永遠に輸血も出来る。な
﹂
﹂
?
201
んて世界に貢献できる能力なのかしら。
もっとも、この能力も初期に思い描いていた物と、かなり変質して
しまっている。
これは、外からの想像と、現実での相違がかなりあった為。それを
もっと場を繋ぎなさい。そうしない
独自解釈と考察を繰り返す事で、念能力がある程度変化した。
﹁で、聞きたいのはそれだけ
と、終わりが来るわよ﹂
﹁⋮⋮いえ﹂
う仕組みで扱っているのか⋮⋮考えた事ある
ぞや。どういう仕組みで生み出され、どういう仕組みで動き、どうい
うと負荷が強いのよ。で、問題は念の抵抗力ね。そもそも、念とは何
中の約19倍、抵抗を受ける。つまり、物にもよるけど、ざっくり言
﹁それだけ知っていれば上出来ね。で、解説すると⋮⋮水中では空気
﹁空気抵抗よりも、更に大きい程度しか﹂
抗力って知っているかしら
﹁ああ、あれね。あれは能力じゃなくて、ただの念操作よ。水の中の抵
﹁⋮⋮さっき、私の弾丸を返した原理は﹂
?
?
まあ、普通はそうよね。
そもそもこの世界の人間に、念について考えるという概念がない。
服装と一緒で、世界のルールだ。
世界は広く、念について専門で考える人間もいるけど、それはそれ。
元々意味不明な原理で動く念を、理解して使おうとも、その全てを扱
える人間ではない。
理論を追い求める人間は、残念ながらその下地がないからだ。
その中で、もし真理に辿りついた人間がいるとすれば⋮⋮決して、
世に公表などしないだろう。
この世界には、個人で戦うには無謀とも言える科学技術。つまり
は、兵器が存在している。
端的に言えば、消される訳で。そんなリスクを背負ってまで、ほぼ
理解されない理論を説明して回る馬鹿はいない。
力とはあくまで個人の物であり、世界基準に示した場合、必然と世
界と対峙する結果になる。
念とは、何ぞや。
私が得た結論も、恐らく足りていない。
人類が、人類の創造を出来ないのと一緒で。
脳が、脳の原理を理解していないのと一緒だ。
精孔を無くすと、確かに念は生まれなくなる。しかし、その精孔に
も個人差があり、鍛える限度が存在する。
私が最高の資質を持って生まれ、その私に限界がある。つまり、世
界の見えないシステムにあくまでも従っているという事。
もちろん、世界に抑止力があるだけで、世界を破壊できないわけ
じゃない。
世界=破壊できない。ではなく、抑止力﹀人の破壊﹀世界と、抑止
力を破壊できないだけ。
もっとも、世界を破壊した所で、何も残らないので意味はない。
まあ、新世界にはそれを叶えるマジックアイテムが多く存在するの
だけれど⋮⋮実物を見た事がないから、まだ想像になってしまう。
人である以上、不老不死になろうと、孤独には勝てない。つまりは、
202
抑止力ね。
ある程度、出来る事柄が自由にあるっていうのが、世界の抑止力に
対抗できる唯一の部分。それが、私が違う世界から来た、最大の特典
だ。
念とは、なんぞや。
有限的・無限から壱を。
壱から有限的・無限を。
ほぼほぼ、魔法の様な力。
それが念だと、私は思う。
堅
が出来る。それを瞬時に使えば、空気中に浮い
﹁まあ、原理は簡単なのよ。発する念の密度を上げれば、抵抗力。すな
わち、防御力、
もっとも、やっているのは
念の操作
。元より水の性質に似てい
実際、ヤヤには理論を説明し、理解してもらった。
﹁特訓すれば出来るわよ﹂
﹁簡単に言うけど、私にはできないわ﹂
出させただけ﹂
が生まれる訳。それで止めた弾丸を、念の流れを作り方向を変え、放
ている物体を、四方から包み込むように⋮⋮まさに、水中と似た効果
"
"
技だ。 絶
に切り替え、
中途半端に、念での戦いに慣れている人に対して、かなり友好的な
"
念が、身体から切り離された状態だ。
そして、足に力を込めて地面を蹴ったと同時に、
それを二回。この間、約一秒。
﹂
﹁瞬間移動的な﹂
﹂
﹁うひゃぁぁぁ
﹁シッ
"
その場で強く念を発し留めて、念場という物を作る。自身を模った
﹁だから、例えば⋮⋮﹂
すると、いろんな幅が広がるし、簡単に応用が利くようになる。
る念を、動かす力を身につける為だ。
"
203
"
!?
パクノダの胸を、思いっきり後ろから揉みしだいた。
!!
硬
、
纏
"
、
"
絶
"
﹁戦闘に置いて、念の切り替えが重要なのは分かって頂けたかしら
マチの攻撃を回避し、同じ様に元の位置に戻る。
円
を最初から使っていれば、反応が増えたと
﹁本当に、化け物だね、アンタ﹂
﹁そうでもないわ。
"
円
をしながら、戦闘が出来るなら、かなり強い念能力者
"
よね
情報処理の要である、シズクとパクノダから考えれば﹂
る。生贄と言ってもいいわ⋮⋮けど、一番旅団に必要ないのは、マチ
﹁で、改めて選択を。誰か一人、私の物になれば、色々と見逃してあげ
だし。
だって実際には、攻撃と共に反応が、物凄い速度で近づいてきた訳
応して終わりだわ。
ノブナガなら、もしかしたら出来るかも知れないけど⋮⋮まあ、反
の証拠だ。もちろん、私以外で知らないし。
ずっと
⋮⋮でしょうね。
﹁前提で無茶言ってんじゃないよ﹂
分かるし。そしたら、初動で相手の動きに気づけるわ﹂
"
﹂
をスムーズに行い、錯覚させるだけ。特に
"
名付けてないけど⋮⋮念応用の一種にしてもいいはず。
"
て気絶させておく。
﹁はあ、言ったでしょ⋮⋮
円
を使っていれば、相手の初動を読め
"
がっているか。
も ち ろ ん、脳 の 構 造 に 詳 し い わ け じ ゃ な い。精 々、何 が ど れ に 繋
るって。舌を噛もうとした脳の動きだって、読めちゃうわ﹂
"
それに加えて、暴れられると抜けられるので、後頭部に塊をぶつけ
その場で封じた。
近づいた時に隠して設置した、念の塊を拘束に使い、マチの動きを
秘技、魚肉ソーセージから編み出した、口封じの効果的な方法。
﹁はっ、出来るものなら、やって││﹂
結構、物理的にだけど。
﹁短絡的ね。何も、命を奪う訳じゃないわよ。心を頂くだけで﹂
﹁アンタの物になるくらいなら、死んだ方がまし﹂
?
204
"
?
"
つまり、神経に伝わる前の微細な動きを感じ取り、念を遠隔操作し
てマチを止めた。
これも、特に操作系や放出系である必要はない。
私はもう一度だけ念を動かし、マチの身体をこちらに誘導する。
﹂
﹁手品でも能力でもないわよ。仕掛けは置いてあった訳だし⋮⋮参考
になるか分からないけど、説明欲しい
﹁一応﹂
﹁具現化した能力を、
隠
で隠せるなら、そもそも普通の念も隠せ
驚きすぎて、結構、緊張感が薄れてしまっているみたいね。
?
必要だと思う
﹂
を吹き飛ばす念を放出できる。これを操作するには、どれ位の数値が
ね。今の私が使える放出系能力は、45%だけど、これだけあれば人
になる。必要なのは念を操作する技術と、放出した念を留める技術
り分の念の塊を用意すれば、流れを作ってある程度だけど誘導が可能
﹁さっき水の様にと説明したけど⋮⋮流れを操作できるなら、人ひと
マチの服を念で拾って手元に持ってきて、服を掛ける。
んな話だけど、少しだけ詳しく話すなら、念系統についてかしら﹂
た念が弱まっていようと、元が違えば確かな質量を持つ⋮⋮大体はこ
る。離れた能力を操作できるなら、そもそも念を操作できる。放出し
"
﹁正解は、僅か5%。流れを与えるだけだから、ほぼ誰にでも出来る。
念系統はあくまでも何が得意かってだけで、実際に一流の念能力者
は、鍛えれる数値を鍛え上げるでしょ。ただ、何故鍛えるかは分かっ
ていない。鍛えれるから、鍛えているだけ。それで、何が出来るか考
えないから⋮⋮そこで停滞する﹂
まあ、活用すればこんな事も出来るのだと、パクノダが理解しても
特に意味はないんだけど。
﹁よく思うのが、放出系の人って念を飛ばしがちだけど⋮⋮それって
正確には、念を身体から離しても、力強さを保つのが得意なんだと思
うの。つまり念を放つって能力にしなくても、元々からできるはず。
むしろ、飛ばすのは操作系よねって﹂
205
"
﹁⋮⋮同じ位じゃないかしら﹂
?
六性図が近いのも、それが主な理由のはず。
対極に具現化があるのは、具現化した念が、どの性質なのか関係す
るから。
元々、身体から離しても大丈夫な様に作れる物は、基本的に何の能
力も付与できない。コルトピが良い例だと思う。
恐らく、手元で発動する強力な能力も持っているはず。
﹂
﹁創造するのは難しいけど、創造できてしまえば、唯一無二になる﹂
﹁え
﹁具現化系の能力の真理ね﹂
先にキャパシティの概念を埋め込まれると、その時点で制限が大き
くなってしまう。私が色々と規格外に見えるのも、あくまでそれの差
なだけ。
﹁つまり、リナは⋮⋮念という本質を、見いだせていない人が多いと言
いたいのかしら﹂
﹁ザッツライト。まあ、そういう訳で⋮⋮私は帰るわ。貴方たちで言
うお宝も手に入れたし、恨まないで頂戴ね。返して欲しかったら、い
つでも挑戦を受けるし﹂
﹂
もちろん、見つけられるならだけど。
﹁あ、ちょっと待ちなさい
私はお姫様抱っこでマチを抱えたまま、ホテルへと足を向けた。
待つと言われて、待つ馬鹿はいない。
!!
206
?
おかえり﹂
16話﹃小さな変化﹄
﹁ん
﹁ええ、ただいま﹂
マチを抱えたま帰って来たというのに、ヤヤの反応が薄い。
ただ、テレビを見ながらポテトチップスを食べるヤヤの姿を見て、
何となく⋮⋮。
﹂
﹁夫婦って、こんな感じなのかしら﹂
﹁夫婦
とか。
を使える危険性
エッ
女の子の秘密を無理やり知るなんて、滅茶
るけど⋮⋮それはその時に対処しましょう。
え、ワールドで確認
﹁本業ですから⋮⋮って、感想はそれだけなのかしら﹂
?
もっとこう、リナは本当にソッチの人間なんだ、とか。変態
チ
﹁うん、別に﹂
﹂
ふっ。
﹁天誅
!!
苦茶に失礼じゃない。
"
最後に、身体検査にて武器を押収しておく。
もし、手元になくても針を操作でき、尚且つ
"
を使える可能性はあ
発
"
を排除する為に。そもそも、針がなくても
"
﹁手慣れてるね﹂
発
身を縛る。これは、念を込めると一切合切、伸縮しなくなる代物だ。
次に、関節を外して抜けられると困るので、特注の念縄を使って全
まず、舌を噛み切らない様に、特製・ギャグボール。
を準備する。
とりあえず、マチをベッドに寝かして、絶対に動けない様に拘束具
も、所詮は妥協になってしまいそうね。
一仕事終えて帰宅し、それが当たり前だと構えている嫁。百年の恋
﹁いえ、いいわ﹂
?
!!
207
?
!!
﹁いやぁぁぁ
﹂
腕だけ簡単に縛って、後ろから胸を揉み始める。
そ、そこは⋮⋮あっ﹂
﹁ふふふ、本当に嫌ではないでしょう﹂
﹁う、ふぁ⋮⋮っっ
﹁ああ、堪らないっ﹂
﹁いやいやいや、だめ、だめだって││ふゃんっ
!?
ない証明ね。
うぅん、ひっ
﹂
乳首を重点に責めてもいいし、揉む方を重視しても良い。
﹁ん、はぅ、きゃう
揉む、揉む、摘まむ、揉む、捻る。
﹁ヤヤ、可愛い﹂
﹁あ、あぁっ。だめ、ほんとっ、んんっ
イイイッ⋮⋮っは、イっちゃうからぁ
﹁あぁぁぁ、だ、だめぇっ
﹂
ん、あ、あぁあっ
﹂
両手の揉む速度を上げて、人差し指だけで乳首を弾く。
﹁だから、イきなさい﹂
!?
!! !?
しら﹂
﹁ぐすっ﹂
ヤヤは、泣いていた。
﹁可愛い﹂
﹂
い、
﹁ふぅ、これがメインディッシュの前の、メインディッシュという奴か
◆ ◆ ◆
そして最後に、回り込んで服の上から、右胸の乳首に噛みついた。
!!
!!
胸の責め方は無限大にある。それが楽しいし、それが欲に終わりが
で、焦らしてから乳首をキュッとつまむ。
﹂
どこを触っても感じてしまう様だから、乳首を避けて揉み続ける。
名器だわ。
柔らかさは極上。感度も最高。下は知らないけど、胸はとりあえず
!?
!?
﹁いや、もう、ほんとにだめ
!!
208
!?
腕を拘束されたまま、私の胸で泣いていたヤヤはが、一瞬で部屋の
端まで移動する。
﹂
﹁へぇ⋮⋮鍛錬は怠ってないのね。良かったわ、ゾーンポテチが日課
に感じる姿だったし﹂
﹁⋮⋮ポテチは日課だよ
ええい、このホテルが何でも用意してくれるからって、自由を満喫
しているわね。庶民的に。
まあ、カロリーの消費も多いし、大体が胸に行くはずだから気にし
ないでおきましょう。
ヤヤって、私より神秘的な性能を誇ってるのよね。
スタイルキープは置き忘れ、肌のケアはゴミ箱に、食生活はメタボ
もびっくりだ。
私もかなりおざなりとはいえ⋮⋮流石に程度がある。
母に躾られた結果でもあるけど、無視し続けるとコンディションが
落ちていたことがあった。
それからは、最低でも三日に一度は手入れはするのだけど。
﹂
﹁本来なら追加のギルティだけど、いいわ、許す﹂
﹁え、うん。ありがとう⋮⋮で、その子は
?
純粋なのか、天然なのか。
いや、私のせいで純粋ではないはず。
もっとも、確かに意図は難しいかも知れないわね。
ただ単純欲望を満たして遊ぶだけなら、わざわざ連れて来る意味は
ないし。
それこそ、メンチやレルートの時みたいに、どっかで監禁すればい
い。
﹂
﹁仲間に⋮⋮なるとは思わないけど、とりあえず交渉かしら﹂
﹁仲間探してたの
の字でしょ
可愛い女の子が増える訳だし﹂
﹁いいえ、玩具が欲しいだけね。その過程で仲間になってくれれば御
?
209
?
盗賊団のマチよ。盗んできた﹂
﹁幻影旅団って第一級
?
﹂
﹁ふーん。どうするの
?
?
とはいえ、中々どうして面倒なのよね。
ツンデレならどうにでもなるけど、全力で嫌われているので対処が
難しい。下手すると死んでしまうのも、原因の一つ。
最終手段は⋮⋮いえ、色々な手段は用意できるから、困ったらアレ
を頼ろうとも思っている。
アレを使うのは交渉が失敗した時だから、そう出て来る事はない。
むしろ、決して頼りたくない。
でも、あの娘⋮⋮便利だし。その為に、骨も折ったし。
﹁確かに、可愛いと思う。でも、リナが玩具を欲しがるのは納得してる
とりあえず、抱きしめよう。
けど、仲間は私以外作らないで欲しいなぁ⋮⋮なんて、少し思っちゃ
うかも﹂
おや、ヤヤがデレた
﹁ありがとう、ヤヤ。その気持ちは、素直に嬉しいわ⋮⋮なら、貴方の
気持ちを尊重しましょう﹂
うん、仲間はやっぱりいらないわ。
玩具として、手先として⋮⋮あっちに流しましょう。
いや、その⋮⋮嬉しいけど、いいの
﹂
彼女たちなら、きっちり管理を出来るだろうし。
﹁え
?
ま、手癖だけは勘弁して貰うけど﹂
﹁あー、うん。ほ、ほどほどでお願い⋮⋮します﹂
﹁改めて、ありがとう。じゃ、早速﹂
時間がもったいないし、色々始めましょうか。
私は、頼れる彼女に電話を掛けた。
◆ ◆ ◆
﹁また、ですか﹂
﹁ええ、また、ね﹂
﹁お遊びが過ぎますよ、リナ様﹂
﹁ごめなさいね。何かお詫びは考えておくから、お願いするわ﹂
210
?
﹁いいも何も、貴方がオンリーワンでいてくれるなら、それでいいわ。
?
﹂
﹁⋮⋮全く。デート一回でどうでしょう﹂
﹁あら、その先はいいのかしら
﹁高望みすると、非戦闘型の私なんて殺されますから。どっかの誰か
⋮⋮特に、アレには﹂
﹁アレは最高の成功作であり、失敗作だけど⋮⋮見た目は可愛いわよ。
まあ、シャーロットとは相性が悪いから、しょうがないけど﹂
﹂
﹁性質が未だに受け入れられなくて⋮⋮最大の失敗でした。では、と
りあえず準備を進めます。どれが必要ですか
﹁二番と四番。保険として││﹂
を。その後、ミーナに転送させます﹂
﹁別に、急ぎではないし、ミーナにお願いしなくてもいいわよ
?
﹁ん
私の右腕ね﹂
電話を終えると、中々に低いトーンでヤヤからの質問が来た。
﹁⋮⋮誰、今の﹂
◆ ◆ ◆
慕いしております﹂
﹁さり気なくハードルあげないで下さい⋮⋮でも、そんなリナ様をお
﹁楽しみに待ってるから、シャーロットのもしもしコール﹂
﹁畏まりました。では、また後で﹂
て﹂
﹁なら、連絡は電話で。シャーロットとの会話は好きだし、声を聞かせ
﹁⋮⋮察して下さい﹂
﹂
﹁ええ、アレには連絡しておきます。準備が整い次第、メールで連絡
?
﹁リナの馬鹿﹂
どうやら、今日のヤヤは⋮⋮あ、そういえば久し振りだったのよね。
なるほど。
マチの事が解決したら、色々と説明しましょう。
﹁ふふっ、今はヤヤが一番よ。でも、もう少し時間を貰うわ。具体的に
211
?
少し意地悪して、回答を簡素にしてみる。
?
は、マチへの対処が済んだらね﹂
﹂
﹁⋮⋮分かったけど、なんか、変かも﹂
﹁変
﹁その、リナと久し振りにあったからか⋮⋮動悸がします、はい﹂
やっぱり、良い傾向みたいね。
ヤヤにとっては、そうでもないみたいだけど。
﹁それも、気にしなくていいわ。じゃ、少し出かけて来るわね。個室が
必要だから﹂
﹂
﹁あ、うん。いってらっしゃい⋮⋮早く帰って来て下さい。じゃない
と、ゾーンポテチ繰り返すから
ええ⋮⋮って、まさか﹂
ご武運⋮⋮
﹁リナ様の為ですから。と、今から送りますが⋮⋮ご武運を﹂
﹁ベストね﹂
て、名前を見ずに電話に出る。
そう思った丁度のタイミングで携帯が震え、ホルダーから引き抜い
さて、準備は整ったのだけれど⋮⋮シャーロットなら、きっと。
◆ ◆ ◆
避けたいので、岩盤地帯へと足を進めた。
向かう先は、ぶっちゃけどこでもいいのだけれど、人目をある程度
拘束されたマチを抱えて、私は部屋を出る。
﹁ええ、分かったわ﹂
地味だけど、それは不衛生すぎるので、早く済ましてしまおう。
!!
﹂
!!
強化系能力
星帝
を最大数値まで上げて、隣の岩山に跳び移った。
感度の良い耳が上空からの微かな声を拾い、すかさず能力を発動。
﹁リ∼ナ∼さ∼まぁぁぁぁぁ
早い、早すぎる。いくらなんでも、アレの到着にはっ││
﹁ん
?
"
私の立っていた岩山は、飛来したアレによって、根元まで全てが爆
響く爆発音、吹き飛ぶ岩山。
"
212
?
?
散していた。
﹁ちっ、受け止めてくれませんでした﹂
﹁見つけた早々に、私を殺そうとするのは辞めなさい﹂
次第に砂塵が晴れていき、そこに立っていたのは、純白のロリータ
ドレスを着た一人の少女。
でも、リナ様なら死なないですよ
金 髪 で ア ッ プ ツ イ ン テ ー ル。童 顔 で あ り、身 長 は 1 4 0 ㎝。た だ
し、体重は8tもある。
そう、8t。
﹂
﹁殺すなんてとんでもないです
ね
﹂
﹂
!!
どうやら、知力が上がっているらしい。
﹂
何かの間違いで貴方にのしかかられ
!!
﹁その星帝状態ですと、実は受け止められるはずですよね
たら、間違いなく死ぬわ
﹁物理法則って物があるわよ
うん、つまりはそういう事。
!!
盛り上がれないでしょ﹂
﹁あ、そうですね。なら、また何か考えますです﹂
どうやら、落ち着いてくれたみたい。この場合、思い直し
﹂
とりあえず、命の危機が一つ去ったと喜ぶべきね。
﹁で、用件だけは理解しているの
﹁もちろんです。記憶消去です﹂
駄目だった。流石はポンコツね。
?
﹁誰から仕入れた情報か分からないけども⋮⋮ずっとこの状態だと、
は不明なのだけど。
もっとも、シャーロットの設計が間違った訳じゃなかったし、原因
てしまった。
想定したはずだったけど⋮⋮能力の代償か、思考力がポンコツになっ
見た目はどう考えても、知性溢れるお嬢様。クールに笑う美少女と
?
ないですか
﹁なら、一回くらい相手して下さいです。まだ処女なのは、私だけじゃ
﹁限度があるわ。貴方が相手なら、死ぬ可能性もある﹂
!!
?
213
?
﹁シャーロットと会話してないでしょう﹂
﹁マスターはいずれ殺します﹂
本当に不安だ、コイツ。
﹂
﹁まあ、貴方は最終手段だし、そのまま待機していなさい。二番と四番
を呼んであるから﹂
﹁ああ、型落ちじゃないですか﹂
﹁貴方の姉たちよ、しっかり尊敬しなさい﹂ ﹁ふっ尊敬なんて出来るわけないじゃ││くはっ
8tもあるはずのポンコツが唐突に吹き飛び、岩山にめり込んだ。
﹁姉を侮辱するなっ﹂
﹁相変わらず、能力だけですわね﹂ ポンコツが元いた場所には、二人の美少女。
青髪ポニーテルでブルーのミニドレスを着ていて、下にはスパッツ
を履いている二番。少しツリ目で、シャーロット五重機士の中で一番
活発な少女だ。
身長は160㎝あり、体重は70㎏。すらっとしているが、戦闘タ
イプの彼女は少し重く設定している。
ちなみに、微乳だ。
もう一人の四番は、赤髪で腰まであるストレート。真紅のロングド
レスを纏って、赤の手袋をしていおり、腕を組んでポンコツを睨んで
いた。
150㎝の40㎏。二番目に軽い代わりに、能力と戦闘のバランス
が一番取れている。
ちなみに、巨乳だ。
吹き飛んだポンコツと違い、二人ともまともではあるのだけれど
⋮⋮ポンコツに対しては相変わらず雑だ。
﹁汚れるじゃないですか﹂
まあ、流石に無傷よね。めり込んで服が汚れただけで、傷もなさそ
う。服にも、本体にも。
むしろ、あったらびっくりだけど⋮⋮不意打ちじゃなかったら、二
人の全力でもまず吹き飛ばないし。
214
!?
﹁さて、そろそろいいかしら
﹂
﹂
﹂
マチを抱えたままだったけど、そのまま岩山を飛び降りて三人の間
に降りる。
﹁リナさまぁ、とりあえず抱きしめてくれっ
﹁まずはキスをお願いします。ええ、それはもう濃く情熱的に
うん、まともでも、ポンコツと比べて⋮⋮で、あるわ。
し。
﹁﹁分かりました︵わ︶
﹂﹂
目的が決まっている分、大丈夫だと思うけど⋮⋮ヤヤとも約束した
ぶっちゃけ、私にもそれほど時間はない。
﹁悪いけど、このままだと報酬はないわ。だから、さっさとお願いね﹂
で。
⋮⋮いや、言う事はシトリンも聞くけど。湾曲する可能性高いだけ
リンとは大違いね。
戒めるには、手っ取り早い。言う事も聞いてくれるし、本当にシト
﹁﹁はっ﹂﹂
軽々しく吹き飛ばさない。自然破壊はシトリンと同義よ﹂
﹁アクア、ルー、落ち着きなさい。シトリンが面倒なのは分かるけど、
!!
!!
なければ。
でも、失敗のリスクも考えないといけないし、その為のシトリンだ。
代償が大きすぎる気もするけど、背に腹は代えられない。
﹂
﹂
﹁シトリンも、真面目に頼むわよ。頑張れば、望みを叶えてあげてもい
いわ﹂
﹂
姉二人
﹁本当ですか
﹁ええ﹂
﹁やるです
﹁いや、お前が仕切るなよ﹂
﹂
﹁全くですわ。メインは私たちと分かっていて
﹁さぁ、やるです
215
?
まあ、この二人なら早く仕事をしてくれるわね。シトリンが邪魔し
!!
!!
?
人選を間違えたかも知れないわね。
!!
?
!!
けど、一番と三番は⋮⋮もっと性質が悪いし。そもそも、能力も違
うから今回のケースならこれしかない。
﹁それじゃ、洗脳を始めましょう﹂
意味もない死を招くより、意味のある生が大事だ。
それがたとえ、ある程度の真実から遠ざかっても⋮⋮母が私にして
くれた様に。
護る事に繋がるから。
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