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TFIIDサブユニット TAF は擬態により転写を抑制する
TFIIDサ ブユニットTAFは 擬態により転写を抑制する 白川昌宏 基本転写 因子TFIIDの サブユ ニ ッ トであ るTAF(TBP-associated factor)は 転写 活性 Database Center for Life Science Online Service 化,転 写 抑制 などの転 写調 節 に主要 な役 割を 果た す分子 群で ある。最 近,核 磁 気 共鳴 法 (NMR)に よ り,TBP(TATA box-binding protein)のDNA結 合 を阻害するTAFⅡ230 のN末 端 ドメインとTBPの 複合体 の立体構 造が決定され,TAFに よる転写抑 制の機 構が原 子レベルで判明 した。興 味深 いことに複合体 中のTAFⅡ230の 構 造と表面 電荷はTBP-DNA 複 合体中の変 形 したDNAと 高 い類似性 を示 し,TAFが 分子擬態 によってTBPに 結合 して いることがわ かった。転 写調節 の構造研 究の流 れと転写 活性化の機構 を概 観する 。 【 遺 伝子 転写 】 【立体 構造 解析 】 【分子擬 態】 【立体構 造変 化 】 【蛋 白質-蛋 白質相 互作 用】 中 一 ジCro蛋 白 質2),大 腸 菌CRP蛋 ョウ ジ ョウ バ エ の 基 本 転 写 って,80年 代 後 半 か ら90年 は じめ に トロ ン ト大 学 の 伊 倉 の グル ー プ とNIHの 谷 の グ ル ー プ に よ っ て,シ 因 子TFIIDの (TATA のZnフ サ ブ ユ ニ ッ トdTAFⅡ23011-77とTBP box-binding protein)の 決 定 さ れ,TAFⅡ230に 複合 体 の立体 構 造 が よる転 写 抑 制 の機 構 が 原 子 レベ ィ ンガ ー構 造4),ホ メ オ ドメ イ ン5),核 内 レセ プ ター のDNA結 合 ドメ イ ン6∼8),bZIP構 造10,11),folk-headド 造9),bHLH構 メ イ ン12)な どが 次 々 と解 析 され て ル で 明 ら か に さ れ た1)。 これ は ア クチ ベ ー タ ー に よ る転 い る 。 そ の 結 果,現 写 活 性 化 の 機 構 に つ い て も多 くの 知 見 を与 え,基 わ ず頻 繁 に見つ か る主 要 なDNA結 本転 白 質3)の 解 析 に始 ま 代 初 め に か け て は真 核 生 物 在 ま で に 原 核 生 物,真 核 生物 を問 合 モ チ ー フ立 体 構 造 写 研 究 の ブ レ イ ク ス ル ー に な り う る。 構 造 生 物 学 の 立 やDNA認 場 か ら もdTAFⅡ23011-77のDNAの 細 は い くつ か の総 説 を 参 照 さ れ た い13∼15)。 分 子 擬 態,TBP 結 合 に 伴 う フ ォ ー ル デ ィ ング な ど,興 味 深 い 点 が 多 い。 本 稿 で は転 写 の構 造 学 的 研 究 の 流 れ を 概 観 し,今 dTAFⅡ23011-77-TBPの 回の 構 造 解 析 を紹 介 した い 。 識 につ い て多 くの 情 報 が蓄 積 され て い る。 詳 基 本 転 写 因 子 に 関 し て もTBP単 TAボ ッ ク スDNAの TBP-TATAボ 複 合 体17,18),TFⅡB単 ッ ク スDNA-TFⅡBの さ ら にTBP-TATAボ Ⅰ .基 本転写因子の立体構造解析 立体 構造 解析 の転写 研究 に対 す る寄 与 は大 きい。転 Shirakawa,奈 230 Regulates TFⅡAが Institute of Science い る 。 ま たRichmondら Transcription by Molecular and Technology,Ikoma,Nara Mimicry of the TATA ッ ク ス にTBP,TFⅡB, 結 合 す る様 子 が 原 子 レベ ル で 明 らか に され て 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 バ イ オ サ イ エ ン ス 研 究 科(〒630-0101生 Sciences,Nara 者複 合 体21,22)と 初 期 転 写 の 立 役 者 と そ れ ら の複 合 体 の立 体 構 写 調節 因子 の立体 構造 については80年 代 初 めの λ ファ of Biological 独19), 三 者 複 合 体20), ツク スDNA-TFⅡA三 造 解 析 が 行 な わ れ,TATAボ Masahiro 独16),TBP-TA- に よ る ヌ ク レ オ ソー ム コ ア の 駒 市 高 山 町8916-5)[GraduateSchool 630-0101,Japan] Box TAF11 123 24 蛋 白 質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.2(1999) 立 体 構 造 決 定 も また 真 核 生 物 の転 写 調 節 研 究 に膨 大 な 知 見 を与 えた23)。その 反 面,転 素 で あ るRNAポ 写 反 応 そ の もの を担 う酵 リメラ ーゼ の 立 体 構 造 解 析 はあ ま り進 ん で お らず,T7フ ァー ジ のRNAポ リメ ラー ゼ24)と, 比 較 的 最 近 にな っ て大 腸 菌 のRNAポ リメ ラ ーゼ の α サ ブユ ニ ッ ト25,26),σ70サブ ユ ニ ッ ト27)が解 析 され て い る の み で,真 核 生 物 のRNAポ リメ ラー ゼ の立 体 構 造 解 析 の報 告 は まだな い。 Ⅱ.転 写の活性化と抑制 で は こ ういった立体 構造 解析 に よって転 写 の活性 化 Database Center for Life Science Online Service や 抑 制 とい っ た 転 写 制 御 の 機 構 が 理 解 で き た で あ ろ う か 。 原 核 生 物 の 転 写 制 御 に つ い て は,た とえ ば λ フ ァ ー ジ の 初 期 遺 伝 子 群 の転 写 ス イ ッチ の よ う に,Croリ レ ッサ ー 分 子 の オ ペ レ ー タ ー 結 合 に よ りRNAポ ー ゼ の プ ロ モ ー タ ー結 合 へ の 阻 害 や のDNA結 合 ドメ イ ンのRNAポ よ る活 性 化 の 機 構 が,立 ,λ リプ レ ッ サ ー 図1 真核 生 物 に お け る転 写 活 性化 と抑 制(文 献38よ り改 変) リメ ラ ーゼ との 接 触 に ン ド結 合 ドメ イ ン の 解 析36)以外 は ほ とん ど報 告 されて い 体構 造 決定 の成 果 を基 に比較 な い 。 これ は 原 核 生 物 で は ア ク チ ベ ー タ ー の 転 写 活 性 的 早 く解 明 され て い る28)。ま たCRP(cAMP protein)29),PhoB30)な プ リメ ラ receptor ど多 くの ア ク チベ ー ター とRNA 化 は安 定 な立 体 構 造 を もつDNA結 る こ とが あ る の に対 し て,真 合 ドメ イ ンに 担 わ れ 核 生物 のア クチベ ー ター ポ リ メ ラ ー ゼ との 相 互 作 用 部 位 の 同 定 も行 な わ れ て お は独 立 した 転 写 活 性 化 ドメ イ ン を も ち,こ り,転 写 活 性 化 の モ デ ル が 提 唱 さ れ て い る。 こ れ ら の ん どの 場 合,単 成果 も多か れ少 なかれ ア クチベ ー ター蛋 白質 の立 体構 で あ る37)。 れ らは ほ と 独 で は安 定 な 立 体 構 造 を もた な い か ら 造 解 析 が 基 に な っ て い る。 ポ リメ ラ ー ゼ 側 に つ い て も 多 くの ア ク チ ベ ー タ ー 分 子 が 結 合 す る α サ ブ ユ ニ ッ Ⅲ .ピ ス トン様TAFの 構造解析 ト25,26),σ70サブ ユ ニ ッ ト27)の立 体 構 造 解 析 が行 な われ て お り,ア クチ ベ ー ター とのDNA鎖 上 で の相 互 作 用 の モ デ ル が 提 唱 さ れ て い る31,32)。RNAポ C末 端 ドメ イ ン はCRP,OmpR,OxyRと リメ ラー ゼ α の 見 か け の 転 写 の 活 性 化 は,真 抑 制 の 解 除 の2つ の 活 性 化 の 部 分 と転 写 に 分 け て 考 え る こ とが で き る(図 いった アク 1)38,39)6もち ろん これ は便 宜 上 の もの で 両 者 は厳 密 に 区 チ ベ ー タ ー との 結 合 活 性 の み な らず 塩 基 配 列 特 異 的 な 別 で き る もの で は な い 。 前 述 の とお り真 核 生 物 に お い DNA結 て は ア ク チ ベ ー タ ー の 立 体 構 造 が わ か っ て い な い の で, 合 活 性 が あ り,そ のDNA結 合 部 位 の立 体 構 造 上 へ の 同 定 も行 なわ れ て い る25,31)。 またCRPな 子 に よるDNA湾 どの 因 曲 によ る転 写 の活 性 化 機 構 の発 見33)も 立 体 構 造 解 析 を踏 ま えて 理 解 され て い る34)。こう して 概 観 す る と,立 体 構 造 解 析 は 原 核 生 物 に お け る転 写 活 性 化,抑 制 機 構 の 解 明 に 大 きな 寄 与 を し た とい え よ う。 で は真核 生物 の転 写活性 化 につ いて は ど うで あ ろう ア クチベ ーター に よる転写 活性 化 の構 造 学的知 見 は ま だ 乏 しい が,転 写 抑 制 と そ の 解 除 に つ い て は い くつ か の 重 要 な知 見 が 得 られ て い る 。 真 核 生 物 で は蛋 白 質 を コ ー ドす る遺 伝 子 の ほ と ん ど は 強 い抑 制 を 受 け,転 写 され な い。 こうい った抑制 の 最 大 の 要 因 の 一 つ が ク ロ マ チ ン構 造 で あ る 。TFⅡDと か 。 古 くか ら酸 性 残 基 に富 む 部 分 が ヘ リ ッ ク ス を形 成 ピス トンは拮 抗 してDNAに し,転 写 の 活 性 化 を行 な う と い う モ デ ル が 提 唱 さ れ て TFHDが い た が35),そ の 後 の10年 ン構 造 が ほ どか れ な けれ ば な らな い 。 最 近 の研 究 か ら, 間 に真 核 生 物 の ア ク チベ ー タ ー の 転 写 活 性 化 ドメ イ ン の 立 体 構 造 はRXR-α 124 の リガ 結 合 す る と考 え られ て お り, 結 合 し転 写 が 開 始 す る に は効 率 よ くク ロ マ チ ク ロ マ チ ン の構 造 変 化 の 少 な く と も一 部 分 は,コ アク TFⅡDの サブユニ ットTAFは 擬態によ り転写抑制を行な う チ ベ ー タ ー の 酵 素 活 性,ま た はコア クチベ ー ター によ 母 で はyTAFⅡ っ て 転 写 装 置 に 導 入 さ れ る ヒス トン ア セ チ ル 化 酵 素 に 145)に よ り ピ ス トン が ア セ チ ル 化 さ れ る こ と に よ っ て 行 な わ がTBPと れ て い る と考 え ら れ て い る40)。 阻 害 を担 っ てい る こ とが 示 され た49)。今 回,伊 倉 ・中谷 TFⅡDの サ ブ ユ ニ ッ トで あ るTAFの い くつ か は ピス よ る こ と46∼48),dTAFⅡ230のN末 ョウ バ エ のdTAFⅡ42(ヒ 端 部 分(以 下,dTAFⅡ23011-77)と ス ト ンH4に 似 た 配 列 を も ち,シ dTAFⅡ30α ス トンH2Bと 似 てい 端 部 分 は,ピ ス トン8量 体 中 で 驚 くほ ど よ く似 た ヘ テ ロ2量 体 を形 成 す る こ とが わ か った41)。 またRoederた ス ト ンH2Bホ ちのグル 酵 母TBPと V.dTAFⅡ123011-77の の複合 構造 ピ ス トンH3とH4に,そ してH3ホ モロ モ ロ グ のhTAFⅡ それ ぞ れH4,H3とH2Bに TBPと の 複 合 体 中 で のdTAFⅡ23011-77はN末 らヘ リ ッ クス1β と,3本 ヘ ア ピ ン-ヘ リ ッ ク ス2-ヘ 端か リッ ク ス3 のヘ リ ックス と1つ の β ヘ ア ピン構 造 を もつ(図 2)1)。 疎 水 性 残 基 を多 くもつN末 モ ロ グ で あ るhTAFⅡ20/ グ のhTAFⅡ31/dTAFⅡ42と,H4ホ 80/dTAFⅡ62は あ た るN末 に よ る構 造 解 析 の 結 果,dTAFⅡ の ピ ス トンH3とH4と dTAFⅡ30は 残 基11-77に 体 で あ る1)。 42とdTAFⅡ62のN末 ー プ は,ピ ッ ク スへ の 結 合 ョウ ジ ョウバ エ の とヒ トhTAFⅡ20はヒ る。 実 際 にBurleyら 対 応)は トで はhTAFⅡ80)はヒ ヒ 基 ら の グ ル ー プ に よ っ て 立 体 構 造 が 解 析 さ れ た の は,シ ョ ウ ジ ョウバ エdTAFⅡ230の トで はhTAFⅡ31に 端156残 の 結 合 とTBPのTATAボ トン蛋 白質 とア ミノ 酸 配 列 の相 同 性 を示 す 。 シ ョウ ジ ス トンH3に,dTAFH62(ヒ Database Center for Life Science Online Service (シ ョ ウ ジ ョ ウバ エ で はdTAFⅡ230,酵 25 央 に 位 置 し,他 の2本 端 のヘ リッ クス1が 中 の ヘ リ ッ ク ス や β ヘ ア ピ ン との 間 に 多 くの 疎 水 性 相 互 作 用 を も ち,dTAFⅡ23011-77の 特 異的 に 疎 水 性 コア を形 成 す る役 割 を 担 う。 ヘ リ ックス1と βヘ 結 合 す る こ とを 示 した42)。す な わ ち,こ れ らのTAFは ア ピ ン 間 の リンカ ー に はp27KIp1な どのCdkイ ン ヒビ タ そ れ ぞ れ の ホ モ ロ グ で あ るヒ ス トン と同 様 な 特 異 性 で ー に 保 存 さ れ て い るLFG(Leu24-Phe25-Gly26)モ チ 他 のヒ ス トン と相 互 作 用 す る。 した が っ て,ヒ ー フ を もつ50)。dTAFⅡ23011-77に 様TAFは ス トン 転 写 が起 こ りや す い よ う に ク ロ マチ ン構 造 を 改 変 した り,オ ー プ ン構 造 を 安 定 化 す る た め に,ヒ トン の 擬 態(mimicry)を し て い る可 能 性 が あ る。 最 近 に な っ て,hTAFⅡ180/dTAFⅡ62ヘ 造 が 報 告 さ れ,や ス テ ロ2量 体 の立 体 構 は りヒ ス トン ・フ ォ ー ル ド を もつ こ とが 示 さ れ た43)。 お いて はLFGモ フ は β ヘ ア ピ ン のIle28,Leu34,ヘ Phe48,Leu52な どの 残 基 と疎 水 性 コア を形 成 す る とと もに,分 子 表 面 にTBPと の 主 要 な相 互 作 用 面 で あ る大 規 模 な疎 水 性 パ ッ チ を 形 成 し て い る(図2)。dTAFⅡ 23011-77は 単 独 で は水 溶 液 中 で 安 定 な立 体 構 造 を もた な い こ とがNMRス ペ ク トル の 解 析 か ら 明 ら か に な っ て い る1)。つ ま りdTAFⅡ23011-77はTBPと Ⅳ ,dTAFⅡ230に よる 転写 阻 害 チー リ ッ ク ス2の し,unfold→foldの の結 合 に際 誘 導 適 合 をす る。 疎 水 性 パ ッ チ の 周 囲 に い くつ か の 酸 性 ア ミノ 酸 が 存 TAFは この よ うに ク ロマ チ ン構 造 に よ る転 写 抑 制 の 解 除 や,PC4な ど 多 くの転 写 活 性 化 因 子 や 転 写 の コ ア 在 す る。 β ヘ ア ピ ン の ル ー プ と そ の 近 傍 のAsp29, Glu31,Asp37,ヘ リ ッ クス2のN末 端 近 傍 のAsp49, ら に ヘ リ ッ ク ス3のC末 端 付 近 のAsp70, ク チベ ー ター との 相 互 作 用37),ヒ ス トンア セ チル 化 酵 素 Glu51,さ の制 御44)な ど転 写 の 正 の 調 節 に か か わ る 多 くの 機 能 を Glu76,Glu76の もっ39)。加 え てTAFは,TFⅡDのTATAボ パ ッ チ を上 下 か ら挟 む よ う に 配 置 さ れ て い る。 DNAへ の 結 合 阻 害,あ ックス ク ス を 含 む プ ロ モ ー タ ーDNAに 含 むTFⅡD複 Ⅵ .dTAFⅡ23011-77-TBP相 互作用 強 く結 合 す るの に 対 し りか な り弱 い とい う比 較 的 初 期 の 実 験 に よって 示 され た45)。そ の後,こ ツ ク スDNAへ ッ 合 体 の あ る種 のプ ロモ ー ター 配 列 へ の 結 合 は,単 独 のTBPよ のTATAボ 示 され る疎 水性 るい は不 安 定 化 とい っ た 負 の 転 写 調 節 機 構 も もつ 。 これ は 単 独 のTBPがTATAボ て,TAFを 側 鎖 の 負 電 荷 が 図2で のTBP の 結 合 阻 害 はhTAFⅡ250 dTAFⅡ23011-77はLFGモ チ ー フ を 中 心 とした広 い疎 水 性 表 面 で 鞍 状 構 造 を したTBPの (図3)。TBPの 凹 面 と接 触 してい る 凹 面 は疎 水 性 の ア ミノ酸 に富 み,酵 母 や 植 物(Arabidopsis thaliana)のTBPとTATAボ ック 125 26 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.2(1999) は 見 られ な い 。TBPはN末 端 側 の モ チ ー フ にLys97, Arg98,Thr112を もち,C末 端 側 の モ チ ー フ は対 応 す る位 置 にGlu,Leu,Va1を そ海 そ れ も つ。 こ う したN末 端側 と C末 端 側 の モ チ ー フ間 の 電 荷 や 疎 水 性 の わ ず か な違 い を認 識 してdTAFⅡ123011-77が 性 を もってTBPに 方向 結 合 して い る と 思 わ れ る。 dTAFⅡ23011-77のTBP結 Database Center for Life Science Online Service 図2 dTAFⅡ23011-77の 立 体 構 造(ス 分 子 表 面 に大 き な疎 水性 パ ッ チ(青 テ レ オ 図)1) で 表 示)が 合 に 伴 な うunfold→foldの 形 成 され て い る 。 誘 導 適 合 と よ く似 た 現 象 は VP16のTAFへ CREBの の 結 合37), コ ア クチ ベ ー タ ー CBPのKIXド メ イ ンへ の 結 合51)に も見 られ る。 また転 写 因 子 のDNAへ の結合 にお い て も 頻 繁 に 見 ら れ52),詳 細 な 熱 力 学 的 解 析 も行 な わ れ て い る53)。 図3 dTAFⅡ2301177-TBP複 鞍 状 のTBPの スDNAと DNAへ 結 合 して い る。 右 の 図 は左 の 図 を下 か ら見 た も の。 の 複 合 体 の 解 析 か ら明 らか に な っ た よ うに, の 結 合 面 と な っ て い る17,18)。TBPは を使 っ てDNA副 作 用 面 の74%は この 凹 面 溝 を押 し広 げて 副 溝 内 の塩 基,糖 い 疎 水 性 相 互 作 用 を す る 。TBP-DNA複 TBP相 Ⅶ .dTAFⅡ23011-77の 合 体 の 構 造1) 凹 面 にTAFⅡ230が と強 合 体 での 相 互 疎 水 的 で あ る17)。dTAFⅡ23011-77- 互 作 用 もお も に疎 水 的 で あ る。1,475?2に ぶ相 互 作 用 面 の 約70%は この 大 き な 疎 水 性 結 合 面 が 解 離 定 数 が10-9Mに dTAFⅡ23011-77-TBP間 も及 疎 水 性 相 互 作 用 となっ ている。 及ぶ の 強 い 結 合 を もた らす ので あ ろ う。 前 述 の とお り結 合 に 伴 いdTAFⅡ23011-77が 誘 導適 分 子 擬態 dTAFⅡ23011-77,,はTBPの 凹 面 に結 合 す る。 お もに疎 水 性 相 互 作 用 に よ る とい っ た 点 で,TBP-TATAボ ク ス 相 互 作 用 と共 通 点 を もつ 。TBPと dTAFⅡ23011-77の 複 合 体 中 のTATAボ 分 子 表 面 は,TBP-TATAボ ック スDNAの ッ の 複合 体 で の ックス 副 溝 を広 げて激 し く湾 曲 し た 構 造 と よ く似 て い る(図4)。 また,dTAFⅡ 23011-77のAsp29,Glu31,Glu51,Glu70,Asp73と い っ た疎 水 面 を 挟 む よ う に位 置 す る 酸 性 残 基 側 鎖 の 負 電 荷 は,複 合 体 中 でTATAボ ッ クスDNAの リン酸 骨 格 中 の リ ン原 子 の 位 置 と似 通 った と ころ に存 在 す る(図 合 に よ り大 き な 構 造 変 化 を示 す の に対 し て,複 合 体 中 2,4)。 複 合 体 中 のTATAボ のTBPの TBPと 同 様 に 対 称 性 が 高 い の に 対 し て,dTAFⅡ 立 体 構 造 は単 独 の 場 合 やDNAと の複合体 中 鞍 状 構 造 は2つ の よ く似 た α/β構 造 のモ チー フ か ら な り,分 子 内 に 疑 似 の2回 対 して,dTAFⅡ23011-77の 126 構造 は 23011-77の 立 体 構 造 は対 称 性 が 低 い とい う差 異 はあるが, の もの と大 き く は変 わ ら な い 。 TBPの ッ ク スDNAの 対 称 軸 を もつ16)の に 複 合 体 中 の 構 造 に は対 称 性 dTAFⅡ23011-77は 非 常 に巧 妙 にTATAボ ッ クスDNA を分 子 擬 態 し て い る 。 これ ま で 構 造 解 析 され た い くつ かのTBP-TATAボ ッ クスDNA複 合 体 で の,TATA TFⅡDの サブユニットTAFは 擬態 により転写抑制を行なう 込 み,ATP-Cdk2に 27 見 られ る の とよ く似 た相 互 作 用 をCdk2 と行 な って い る50)。ATPの 分 子 擬 態 を行 な っ て い る わ け で あ る。 こ う し て み る と蛋 白質 が分 子擬 態 によ って さま ざ ま な種 類 の イ ン ヒビター として 働 くの は,広 く見 られ る 現 象 で あ る こ と が わ か る。 し か し これ ら の 例 で 分 子 全 体 の 形 状 と分 子 間 相 互 作 用 が と も に 高 Database Center for Life Science Online Service い 類 似 性 を示 す の はRNAの 分 子 擬 態 を す るEF-Gと DNAの 分 子 擬態 dTAFⅡ23011-77の を す る みで ある。 Ⅷ転写抑制の解除 そ れ で はdTAFⅡ230に TBPのDNA結 よる 合の抑 制 の 解 除 は ど の よ う に して 起 こ る 図4 dTAFⅡ23011-77の ク ス 複 合 体 。TATAボ 合 体 。dTAFⅡ23011-77は ッ ク スDNAは の 正 の 荷 電 子 を 青,負 の で あ ろ うか 。dTAFⅡ230の 分 子 擬 態1) (A,C).dTAFⅡ23011-77-TBP複 分 子 表 面 を 表 示,,(B,D)TBP-TATAボ 分 子 表 面 を 表 示,、dTAFⅡ230,TATAボ の 荷 電 子 赤 で 示 す.C,DはA,Bを の 分 子 表 面 の 形 状 や 荷 電 分 布 がTATAボ ッ ッ クスの 分 子 表 面 で そ れ ぞ れ 横 か ら 見 た も の で あ る 。TAFⅡ230 C末 端 部 分 がN末 る抑 制 解 除 を行 な って い る こ と が 示 さ れ て い る47)。ま た ッ ク ス と似 て い る 。 TBPは ボ ックスDNAの 列 やTBPの 立 体 構 造 は よ く似 通 って お り,塩 基 配 生 物 種 に 大 き く依 存 しな い 。 した が っ て, 今 回 見 られ たdTAFⅡ23011-77の のDNA結 分 子 擬 態 に よ るTBP 合 抑 制 は一 般 的 な も の で あ ろ う38)。 蛋 白質 の 分 子 擬 態 に はい くつ か の例 が 知 ら れ て い る。 Thermus aquaticusの GTPと 複 製 伸 長 因 子EF-GはEF-Tu- 結 合 す る と きにEF-Tu-GTPと のtRNAと の 複合 体 中で そ っ くりの全 体 構 造 を とる54,55)。 またDNA 修 復 酵 素 の1つ で あ る ウ ラ シ ルDNAグ リコシ ダ ーゼ と その イ ン ヒ ビ タ ー 蛋 白 質 との 複 合 体 で は,イ ン ヒ ビタ 結 合 面 と同 じ,TBPの に結 合 す る こ とが,TBPの 230のTBP結 変 異 体 の 実 験 な どか ら示 さ 合 を 競 争 阻 害 す る こ とに よ って 転 写 活 性 化 を行 なって い るこ とを示 唆 す る(図5)。GAL4,GCN4 な ど多 くの ア ク チ ベ ー タ ー ドメ イ ン は 酸性 残 基 を 多 く も ち,dTAFⅡ23011-77やVP16と 同 様 に 負 電 荷 を分 子 表 面 に もつ と思 わ れ る。 これ ら の 酸 性 ア ク チ ベ ー タ ー の 多 くもTBPの 凹 面 と相 互 作 用 す る こ とに よ りdTAFⅡ 230のTBP結 って い る と考 え られ る。 合 を競 争 阻 害 し,転 写 抑 制 の解 除 を行 な い る56∼58)。 た だ しイ ン ヒ ビ ター は グ リ コ シダ ー ゼの ウ ラ dTAFⅡ2302-81(図5の シル 特 異 的 ポ ケ ッ トに は 入 り込 ん で い な い 。 サ イ ク リ dTAFⅡ230,2-156(図5の ンA-Cdk2-p27KiPE複 い る49,60)。 領 域Ⅱ は基 本 転 写 因 子TFⅡAの 合 体 に お い て もp27Kip1のTyrの 側 鎖 芳 香 環 を含 む 部 分 がCdk2のATP結 合 部位 に入 り 凹 面 に競 争 的 れ て い る49,39)。 これ らの 実 験 の 結 果 は,VP16はdTAFⅡ ゼ のDNA結 擬 態 を して 多 くの 転 写 活 性 化 ドメ イ ン の タ ー ゲ ッ ト と な っ て い る 。VP16はDNAや dTAFⅡ23011-77の ー の ロ イ シ ン な ど を含 む β ス トラ ン ドが グ リコ シ ダ ー 合 部 位 に入 り込 み,DNAの 端部 分 によ もあ るTBP上 領 域1)のTBPへ の結合 は 領 域Ⅱ)に よ って 安 定 化 され て 部(凸 面)の ヘ リ ッ ク スH2付 結 合部 位で 近 に結 合 127 28 蛋 白質 核 酸 酵 素 す る と 考 え ら れ て お Vol.44 NO.2(1999) り, dTAFⅡ230はTFⅡAのTBP へ の 結 合 を 阻 害 す る60)。 こ れ はdTAFⅡ230のN末 端 の2 つ の 領 域,Ⅰ,Ⅱ 下 を 押 でTBPの 上 さ え 込 み,TFⅡA, TATAボ ッ ク スDNAへ の双 方 の 結 合 を阻 害 して い る こ と を 示 し,“hand-off” モ デル と 図5 よ ば れ て い る(図5)38,48,49)。in vivoで は こ のdTAFⅡ230- TBP,あ 端 の領 域1(2∼81)と 領 域Ⅱ(82∼156)はTBPの2力 り転 写 抑 制 を行 な う。 ア クチ ベ ー タ ー やTFⅡAの 所 に 結合 す る こ とに よ 結 合 に よ り転 写抑 制 は解 除 され る。 る い はyTAFⅡ145- TBP間 Database Center for Life Science Online Service “hand-off” モ デ ル に よ る転 写 抑 制 と 活 性 化 の機構48,691 dTAFⅡ230のN末 の2つ の 相 互 作 用 は単 独 で は安 定 で な く,両 方 Ikura,M.:Cell,94,573-583(1998) 揃 っ て 初 め て安 定 で あ る と考 え られ て い る 。 し た が っ て,ア ク チベ ー タ ー や コ ア ク チベ ー ター がTBPの ら か 一 方 のTAFⅡ230結 230のTBP結 TBPか どち Matthews,B.W.:Nature,290,718-723(1981) 3)McKay,D.B.,Steitz,T.A.:Nature,290,744-749 合 部 位 と 結 合 し,dTAFⅡ (1981) 合 を 競 争 祖 害 す れ ば,dTAFⅡ230は ら離 れ,DNAやTFⅡAと 2)Anderson,W.F.,Ohlendorf,D.H.,Takeda,Y., 4)Lee,M.S.,Gippert,P.,Soman,K.V.,Case,D.A., Wright,P.E.:Science,245,635-637(1989) 置 き換 わ って転 写 抑 5)Kissinger,C.R.,Liu,B.S.,Martin-Blanco,E., 制 の 解 除 が 行 な わ れ る とい うモ デ ル が 考 え られ て い る Kornberg,T.B.,Pabo,C.0.:Cell,63,579-590 (1990) (図5)。 6)Luisi,B.F.,Xu,W.X.,Otwinowski,Z.,Freedman, L.P.,Yamamoto,K.R.,Sigler,P.B.:Nature,352, 497-505(1991) お わ り に 今 回 のdTAFⅡ230-TBPの っ てTAFに 複 合体 解析 によ よ る転 写 抑 制 の “hand-off”機 構 が 示 さ れ, 7)Lee,M.S.,Kliewer,S.A.,Provencal,J.,Wright, P.E.,Evans,R.M.:Science,260,1117-1121(1993) 8)Schwabe,J.W.,Chapman,L.,Finch,J.T., Rhodes,D.:Cell,75,567-578(1993) ア ク チ ベ ー タ ー に よ る転 写 活 性 化 の 研 究 に 強 力 な 指 針 9)Ellenberger,T.E.,Brand1,C.J.,Struhl,K.,Har- を与 え た 。 こ の 知 見 は真 核 生 物 の 転 写 の 活 性 化,抑 制 の分 子 機 構 の研 究 に 大 き く寄 与 す る 。 またdTAF11230 のTATAボ ッ ク スDNAの 分 子 擬 態 は,こ れ まで 見 ら れ な か っ た 種 類 の もの で あ りEF-Gの Burley,S.K.:Nature,363,38-45(1993) --)Ferre-D'Amare,A.R.,Pognonec,P.,Roeder,R. 分子 擬態 ととも に 構 造 生 物 学 研 究 に 重 要 な 知 見 を 与 え る。unfold→ fold遷 移 も転 写 因 子 間 の 複 合 体 形 成 に 多 く見 られ る も の で あ る が,原 rison,S.C.:Cell,71,1223-1237(1992) 10)Ferre-D'Amare,A.R.,Prendergast,G.,Ziff,E.B., G.,Burley,S.K.:EMBOJ.,13,180-189(1994) 12)Clark,K.L.,Halay.E.D.,Lai,E.,Burley,S.K.: Nature,364,412-420(1993) 13)BioScience用 梅 園 和 彦 子 レベ ル で 議 論 で き る 最 初 の デ ー タ の 語 ラ イ ブ ラ リ ー 転 写 因 子(田 編),羊土 14)Shirakawa,M.:蛋 1つ で あ る。 今 後 の ア クチベ ー ター に よ るdTAF11230の TBP結 合 阻 害 解 除 の 機 構 の 原 子 レベ ル での 解 明 が待 た 白 質 核 酸 15)白 川 昌 宏 ・ 中 西 義 信:積 図 を提 供 して くだ さ った トロ ン ト大学 伊 倉 光 彦 博 士,図 の提 供 論 を して くだ さ った 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 古 久 立 出 版(1996) Hoffmann,A.,Horikoshi,M.,Chua,N.H., Roeder,R.G.,Burley,S.K.:Nature,360,40-46 (1992) 保 哲 朗 博 士 に感 謝 す る。 l7)Kim,J.L.,Nikolov,D.B.,Burley,S.K.:Nature, 365,520-527(1993) 18)Kim,Y.,Geiger,J.H.,Hahn,S.,Sigler,P.B.: 文 献 )Liu,D.,Ishima,R.,Tong,K.I.,Bagby,S.,Kokubo, 1 T.,Muhandiram,D.R.,Kay,L.E,.Nakatani,Y., 128 酵 素,41,1306-1319 み 木 細 工 の 生 物 学(永 ・ 白川 編),pp,9-38,共 16)Nikolov,D.B.,Hu,S.H.,Lin,J.,Gasch,A., と査 読,議 ・ (1996) 中 西 れ る。 村 隆 明 社(1995) Natrare,365,512-520(1993) 19)Bagby,S.,Kim,S.,Maldonado,E.,Tong,K.I., Reinberg,D.,Ikura,M.:Cell,82,857-867(1995) 田 ・ TFⅡDの サブユニットTAFは 擬態 により転写抑制を行なう Database Center for Life Science Online Service 20)Nikolov,D.B.,Chen,H.,Halay,E.D.,Usheva,A. A.,Hisatake,K.,Lee,K.K.,Roeder,R.G.,Burley, S.K.:Nature,377,119-128(1995) 21)Tan,S.,Hunziker,Y.,Sargent,D.F.,Richmond, T.J.:Natuye,381,127-134(1996) 22) Geiger,J.H.,Hahn,S.,Lee,S.,Sigler,P.B.: Science,272,830-836(1996) 23)Luger,K.,Mader,A.W.,Richmond,R.K.,Sargent,D.F.,Richmond,T.J.:Nature,389,251-260 (1997) 24)Sausa,R.,Chung,Y.J.,Rose,J.P.,Wang,B.C.: Nature,364,593-599(1993) 25)Jeon,Y.H.,Negishi,T.,Shirakawa,M.,Yamazaki,T.,Fujita,N.,Ishihama,A.,Kyogoku,Y.: Science,270,1495(1995) 26)Zhang,G.,Darst,S.A.:Science,281,262-266 (1998) 27)Malhotra,A.,Severinova,E.,Darst,S.A.:Cell, 87.127-136(1996) 28)Ptashne,M.:AGeneticSwitch(2nded.),Cell Press and Blackwell Press,Cambridge(1992) 29)Blatter,E.E.,Ross,W.,Tang,H.,Gourse,R.L., Ebright,R.H.:Cell,78,889-896(1994) 30)Makino,K.,Amemura,M.,Kawamoto,T., Kimura,S.,Shinagawa,H.,Nakata,A.,Suzuki, M.:J.Mol.Biol.,259,15-26(1996) 31)Blatter,E.E.,Ross,W.,Tang,H.,Gourse,RL., Ebright,RH.:Cell,78,889-896(1994) 32)Owens,J.T.,Miyake,R.,Murakami,K.,Chmura, A.J.,Fujita,N.,Ishihama,A.,Meares,C.F.: Proc.Natl.Acad.Sci.USA,26,6021-6026(1998) 33)Gartenberg,M.R.,Crothers,D.M.:Nature,333, 824-829(1988) 34)Schultz,S.C.,Shields,G.C.,Steitz,T.A.:Science,253,1001(1991) 35)Ma,J.,Ptashne,M.:Cell,55,443-446(1988) 36)Bourguet,W.,Ruff,M.,Chambon,P.,Gronemeyer,H.,Moras,D.:Nature,375,377-382(1995) 37)Uesugi,M.,Nyanguile,O.,Lu,H.,Levine,A.J., Verdine,G.L.:Science,277,1310-1313(1997) 38)Burley,S.K.,Roeder,R.G.:Cell,94,551-553 (1998) 39)Roeder,R.G.::TrendsBiochem.Sci.,21,327-335 (1996) 4U)5truhl,K.:Genes Dev.,12.,599-606(1998) 41)Xie,X.,Kokubo,T.,Cohen,S.L.,Mirza,U.A., Hoffmann,A.,Chait,B.T.,Roeder,RG.,Nakatani,Y.,Burley,S.K.:Nature,380,316-322(1996) 42)Hoffmann,A.,Chiang,C.-M.,Oelgeschlaeger,T., Xie,X.,Burley,S.K.,Nakatani,Y.,Roeder,R. 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