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グローバル社会における現代日本の建築家の設計姿勢 Design Attitude

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グローバル社会における現代日本の建築家の設計姿勢 Design Attitude
グローバル社会における現代日本の建築家の設計姿勢
−海外建築作品の設計論を題材として− Design Attitude of Contemporary Japanese Architects in Global Society
- A Study on Design Theories of Overseas Architecture by Japanese Architects 奥山研究室
09M30345
丸子
勇人
(MARUKO, Yuto)
Keywords:グローバリゼーション、現代日本の建築家、設計姿勢、地域性
globalization, contemporary japanese architects, design attitude, locality
1. 序
まず、現代日本の建築家による海外建築作品 1) の設計論にお
経済や情報のグローバル化が進む現代社会において、日本の
いて(図 1)、設計の根拠を現地国の特有の内容とするもの([現
建築家が海外で設計を行う事例が近年増えている。その際、建
地国 2)])と、国や地域に関わらず、一般的な敷地周辺の内容
築家は自国と異なる環境において、現地の伝統や風土などの
とするもの([敷地周辺のみ])の大きく2つに整理し、これら
様々な社会的コンテクストについて日本と比較することで自身
を参照エリアとして位置づけた(図 2)。ここで、参照エリア
の設計コンセプトを構築していると考えられる。このような場
別に作品数の通時的推移を検討したところ(図 3)、1985 年を
所のコンテクストと連関した建築家の思考には、国内において
境に作品数の急激な増加がみられた。また、現地国の内訳につ
地域性をもとに建築を構想する際の思考を敷衍しながらも、日
いて欧米とアジアを比較すると、総じてアジアでは参照エリア
本のナショナリティへの意識が介在することで、グローバルと
が[現地国]のものが多くみられた。本研究では、参照エリア
ローカルの双方の射程を併せ持つ設計姿勢が読み取れる。そこ
が[現地国]である 112 作品を資料対象とする。
で本研究では、現代日本の建築家による海外建築作品の設計論
2. 海外建築作品における現地国に関する設計根拠
を題材とし、現地国に関する設計根拠、現地国に対する評価、
2-1. 現地国に関する設計根拠 資料より、建築家が設計に
日本参照の立場、反映手法について検討することで、グローバ
際し、現地国のどのような事柄に着目したかについて明確に著
ル社会における建築家の設計姿勢の一端を明らかにすることを
された箇所を設計根拠として抽出し 3)、それらを KJ 法 4) を用
目的とする。
いて比較検討した。その結果、それらは【空間・形態的根拠】
【技
際立てばいいというわけではないと思う。
…ここに住む人たちの生活をできるだけ具
体的にイメージできるようにすること。…
SOHO のような住み方である。…住宅を開
くといっても、日本では制度的にかなり難
しいことがわかってきた。日本で SOHO が
できないのだったら、むしろ北京でそれを
徹底してできないかと思ったのである。…
できるだけ外に対して開いた、オフィスに
も住宅にもなるような自由なユニットをつ
くろうと思った。 図 1 分析例
2-2. 現地国に対する評価:現地批評
日本参照の立場:参照なし
現地 単純批評型
3-1. 反映手法 : 記述なし
設計根拠 72-2
2-1. 住宅を開くことが難しい日本 の制度に対し北京で挑戦
⇒
〈慣習的根拠〉
2-2. 現地国に対する評価:現地尊重
日本参照の立場:日本批評
現地尊重 / 日本批評 型
3-1. 反映手法 :《内部》
〈日本参照なし〉43
・外部仕上げや工法もすべてオー
ストラリアの伝統的農場をつくっ
_no.38
てきたものばかりだ。
・高温多湿気候の東南アジアで、
居住空間モデルの単位を組み立て
_no.44
られるか。
8
14
8
13
14
8
6
4
5
2
4
9
3
3
7
6
6
6
5
4
2
2
年 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
7
(アメリカ 39 / 欧州 52)
58
33
15
9
10
欧米 91
一般的な敷地周辺の読み取り 資
料
と変わらないもの
図 2 参照エリア
18
20
代 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004 2009 2012
[敷地周辺のみ] 98
・ツォルフェラインには、炭坑の
ためにつくられた巨大な建物が
並んでおり、それらは非常に印
象的な風景を生みだしている。
14
11
37
∼
ジェクトで…単にその建築だけが周辺から
8
24
33
∼
つの地域そのものを設計するようなプロ
23
∼
2-1. 中国では新しい建築が周辺環 境とは無関係に実現する
⇒
〈環境的根拠〉
資料対象
∼
無関係に実現するのである。…でも、ひと
資
料
対
象
34
∼
設計根拠 72-1
現地国のみ
∼
次々に新しい建築が周辺環境とはまったく
・スイスのような国では、建築と
社会の関係が当たり前に市民や
建築家から強く信じられている
のに対し…日本ではで建築と社
会の信頼関係を十分に培えてい
ない… _no.94
現地国+日本
=
〈日本参照あり〉69
参
照
エ
リ
ア
∼
現地国の特有の問題を
根拠としているもの
所在地:中国/アジア
参照エリア:現地国 + 日本
52
敷地周辺のみ
∼
(新建築 2004 年 7 月号)
凡例
112
∼
[現地国]
no.72 建外 SOHO / 山本理顕
対
象
外
現
地
国
の
内
訳
2
4
5
4
3
4
0
5
5
6
3
12
22
5
5
4
9
14
アジアなど 119
(アジア104 /オーストラリア5/ 南米6 /アフリカ4)
10
7
3
9
10
12
5
7
16
6
79
40
16
22
17
10
6
7
13
12
17
20
8
30
図 3 参照エリア/現地国の内訳別 作品数の推移
術的根拠】【環境的根拠】【慣習的根拠】(以下、【空間・形態】
日本を参照するものについては、参照の立場から日本尊重、日
【技術】【環境】【慣習】)の4つの枠組みから捉えることができ
本批評を位置づけた(図 6)。ここで設計根拠の内容と参照の
た(図4)。【空間・形態】は、伝統的な建築にみられる屋根形
立場の関係を検討したところ、【空間・形態】【技術】では日本
状や室の配列などの形態・構成的特徴に着目した〔建築的形態〕
尊重が多く、【慣習】では日本批評が多くみられた。
や、現地の建築にみられる重量感や力強さなどの建築の性質に
2-3. 海外における建築家の参照態度と根拠 前節で捉えた
着目した〔空間的性質〕といった、現地国の建築に関する形態
現地国に対する評価と日本参照の立場の対応から、海外での建
の特徴や空間の性質を根拠としているものである。【技術】は、
築設計における建築家の参照態度を位置づけ、それぞれの設計
よく使われるレンガ材などの建築材料や構法の特性に着目した
姿勢の内訳に設計根拠の内容の分布について示したものが図 7
〔材料・構法〕や、職人の技量などに基づく建築の施工に関わ
である。まず、大きく設計姿勢を比較すると、日本尊重では現
る技術や精度に着目した〔施工技術〕といった、現地国におい
地批評が多く、日本批評では現地尊重が多くみられた。このこ
て建築を構築する上での技術的な内容を根拠としているもので
とは、建築家は海外で設計する際に、現地国と自国との相違点
ある。【環境】は、都市景観やそれが現象する様に着目した〔都
を認識することで自身の創作の立脚点を見出す傾向にあること
市環境〕や、雨や風、気温などの気候風土に着目した〔自然環
を示すものと考えられる。
境〕といった、建築周縁を取り巻く環境に関わる内容を根拠と
次に、それぞれの参照立場ごとに設計根拠の内容を検討する。
しているものである。【慣習】は、ライフスタイルや国民性な
まず日本参照なしについて比較すると、現地単純尊重型 (E) で
ど現地国の人々の行動や性格に着目した〔慣行・気質〕や、建
は 4 つすべて設計根拠の内容が同程度みられた。それに対し、
築家の社会的地位などの建築と社会の関係性に着目した〔建築
現地単純批評型(F)では【環境】【慣習】が多くみられた。こ
の社会的価値〕や、法律や経済状態などの現地国の社会的基盤
のことは、建築家は現地における環境や慣習的な事柄の問題点
に着目した〔社会的制度〕といった、現地社会に通底する慣習
を根拠とする傾向にあることを示している。つぎに日本参照あ
的な内容を根拠としているものである。
りについて、現地批評 / 日本尊重型(B)や現地尊重 / 日本批
2-2. 現地国に対する評価と日本参照の立場 資料とした設
評型(C)のように現地国と日本を対立的に捉える姿勢に着目
計論からは現地国に関する設計根拠に加え、その内容が現地国
すると、前者では【技術】が多く、後者では【慣習】が多くみ
に対して肯定的に語られるか、批判的に語られるかといった評
られた。このような姿勢において建築家は、海外で建築を構想
価を読み取ることができる。また資料の中には、現地国を評価
する際に、自国のアイデンティティを強く意識していると考え
する際に、日本を参照することで現地国を相対的に位置づけよ
られ、これを踏まえると、建築家は日本の社会的性質を強く帯
うとするものがみられた。そこでまず、このような現地国に対
びている自国の事柄を非難する一方で、技術的側面に日本独自
する評価を現地尊重、現地批評として整理し(図 5)、その際
の価値を見出す傾向にあると考えられる。また、現地国と日本
【空間・形態的根拠】
建築的形態 36
現地国の建築に関する
空間的な特徴や性質
空間的性質 10
【技術的根拠】
49
材料・構法 27
現地国において建築を構築
する上での技術的な内容
施工技術 22
46
都市環境 20
現地国において建築周縁を
取り巻く環境的な内容
自然環境 27
現地の社会に通底した
慣習的な内容
アラビアの伝統であるパティオを取り囲んで壁面線まで広げ_no17-1
_no.34-1
フィリピンでは…圧倒的な量塊と重量感を強調する建物が多い。
【環境的根拠】
47
【慣習的根拠】
66
CP、SAT の構造はマレーシアの伝統的な住宅の様式である、カンポン・
スタイルの屋根が抽象的に引用されており…_no48-4
イスラムを、内側に小さなパティオが多数ある都市空間の部分のような多
中心的な建築として解釈し…_no.70-1
現地で多く見られる色斑、寸法のバラツキ具合をそのまま残すように生産
_no.111-2
した瓦を、敢えて使用することにしました。
中国独自の材料を使いたいと考え…_no.59-2
ベトナムの流儀にならい、最小限の柱・梁・床を RC 駆体として壁は現地
産のレンガ積みとする工法を選択した_no.41-1
ここでの技術は、ほぼ3つしかない…「積む」
「塗る」
「結ぶ」である。_no.91-2
ひとつの高層街区が一瞬のうちにキノコの如く立ち上がるさまは、たとえ
_no.64
ば中国では今やありふれた都市の現象となっている。
最高気温 45℃となり、いつもパウダーダストのまうこの国…_no.17-2
慣行・気質 23
派手で目立つ建築を好む一方で、洗練された詳細や高品質な仕上げといっ
_no.57-2
たことにはあまり関心を示さない国民性がある。
建築の社会的価値 13
シンガポールは人口 250 万人の小さな国ですから、相対的に建築家の数
_no.20-2
は多くありませんが、建築家の地位は社会的に定着しています。
社会的制度 30
アメリカの建築界では、マニュファクチャーの不在と極端な訴訟社会に
_no.107
なったため、新しい物の開発…ができなくなっている。
図 4 現地国に関する設計根拠
134
【空間・形態】37
30
【技術】
【環境】
25
【慣習】 42
設計根拠に対し
否定的・批評
9
74
19
22
24
ex.) イタリアで も 最 も 厳 し
いと言われるベネチアの歴
史建造物保存に関わる
厳しい法律をいかにクリア
するか…_no.92-1
ex.) 建 物 のスケールは ど こ
までもこの国の住宅のス
ケールを繰り返し積み上げ
て構成してある…
_no.25-2
⇒ 現地批評
⇒ 現地尊重
図 5 現地国に対する評価
日本参照あり
_no.73
アジアの街を歩いていると、広告物がもつ圧倒的な存在感に驚かされる。
強烈な日射、高温多湿のシンガポールの風土より完全に保護された空間で
なく、自然な風土を感じ楽しめる空間を生みだす…_no.44-2
現地批評
現地尊重
設計根拠に対し
肯定的・尊重
日本尊重 49
【空間・形態】
【技術】
【環境】
【慣習】
16
17
11
5
ex.) 日本建築がかつ
て有していた 縁側
の考え方を現地の
伝統的家屋構造に
見出した…_no.19-1
⇒ 日本尊重
87
日本批評 38
4
4
8
22
日
本
参
照
な
し
ex.) 住 宅 を 開 く と 【空・形】26
いっても、日本では 【技術】28
制度的にかなり難し 【環境】34
いことがわかってき 【慣習】33
た…_no.72
⇒ 日本批評
図 6 日本参照の立場
121
の双方を尊重する双方尊重型(A)では、【空間・形態】が多
4. グローバル社会における建築家の設計姿勢の通時的傾向
くみられ、このことは、異なる文化的背景の中での設計におい
ここでは、これまでに位置づけた設計根拠の内容、参照態
て、建築そのものについては共通性を見いだす傾向にあること
度、反映手法を通時的 5) に比較することで、グローバル社会に
を示すものと考えられる。
おける現代日本の建築家の設計姿勢を検討する(図 10)。まず、
3. 現地国に関する設計根拠の反映手法
70 年代から 80 年代前半にかけて、設計根拠では【環境】が多く、
つぎに、前章までに整理した設計根拠をどのように実際の設
参照態度では、日本と現地国を対立的に認識しているものが約
計に反映しようとしたかについて明確に著された箇所を反映
半数みられた。このことは、海外での建築設計が一般的ではな
手法として抽出し、その内容を分類・整理したところ、反映
かったことから、都市景観や気候風土といった日本と現地国の
手法は建物の外部を操作する《外部》と、建物の内部空間を操
差異を認識しやすい物的な環境に対し創作の根拠を見出す傾向
作する《内部》、建物全体の架構やディテールを操作する《架
にあったことを示すものと考えられる(ⅰ)。バブル景気やベ
構》から捉えることができた(図 8)。特に《外部》について
ルリンの壁の崩壊などグローバル化を推進させる社会変革がみ
は、広場や外構といった外部空間に関する{配置}、屋根やヴォ
られた 80 年代後半から 90 年代前半にかけては、設計根拠で
リュームといった建物の外形輪郭に関する{かたち}、外装や開
は【空間・形態】が多く、参照態度では現地尊重が増加傾向に
口といった建物の表層に関する{表層}に分類することができ
ある。特に 90 年代前半においては現地尊重が大半を占め、日
た。ここで反映手法と前章で位置づけた日本参照の有無の関
本を尊重するものも比較的多くみられた。このことは、例えば
係を比較したところ(図 9)、その結果、日本参照がある場合、
磯崎新が現地にみられる建築の形式に対し日本の建築的要素を
《外部{配置}》と《架構》が比較的多くみられ、さらに日本参
投影しているように、グローバル化が進む社会を引き受け、現
照の立場に着目したところ、偏りはみられなかった。このこと
地国の状況を尊重しながら新しい建築を構想するといった建築
は、建築家が日本と相対化する思考から建築の表現を試みる際
家の社会状況に対する意識の高さを示しているものと考えらる
には、参照の立場に関わらず、外部空間のつくり方や建物全体
(ⅲ)。特に現地国の建築の形や空間の性質に価値を見出してい
における架構やディテールに日本のアイデンティティを意識化
るといえる。2000 年以降から近年にかけては、設計根拠では
する傾向にあることを示すものと考えられる。
134
日
本
尊
重
現地尊重
19-1
28-2
31
44-3
45
47-2
テラス越しに戸外を眺め
る一画には、中国の伝統
的な暖房高床である「カ
ン」を日本の縁側のよう
に長くアレンジしてい
_no.60-1 スイガンの家
る。
日
本
参
照
な
し
121
アジア 97
欧米 24
30-1
84-2
E
A
【技術】4
【空間・形態】23
常夏のスリランカの気候
に合うように、半屋外の
空間を多く設け、現地の
住宅の多くがそうである
ように風通しのよい建築
に成るように心掛けた。
03-2
11-1
13-3
17-1
21-1
24-2
25-2
27
28-1
29-2
34-1
38
39-3
46-1
48-4
49-2
59-1
69-2
89
106-3
109-1 A
01-2
13-1
15-3
18
19-3
29-1
34-2
39-1
41-2
44-4
48-3
54
57-1
59-2
60-2
70
85-2
91-2
43
92-2 E
97
【技術】24
16-2
98-1 E
A
96
100-4
103-1
図 7 海外における建築家の参照態度と根拠
E
05
09-4
37-2
82-2
99-3
韓国における建設会社
の建築施行技術が日本
ほどには期待できない
という観点から、構造
部材をユニット化し…
06-1 E
37-3 A
65-2 10-2
98-2 88
_no.55 国 立ソウル大 学スポーツ
コンプレックス/吉川博行
【慣習】6
28
【空間・形態】2【環境】2
02
26-2
48-1
112-2
D. 双方批評 型
08
A 90
103-2
104 A
日本と同様に、中国のデ
ベロッパーにより供給さ
れる住宅の構成でなく…
A
109-2
65-1
06-2 75-1
09-3 77
37-4 94
58 98-3
62 110
A
07-1 68-2
07-2 72-2
20-1 81-2
20-2 87-2
48-2 103-3
【慣習】21
E. 現地
単純尊重 型
03-1
11-2
A 64
【技術】15
【環境】6
E
A
24-1
E
61
111-2 52
A
03-3 78-3
14-4 83-2
26-4 86
55 95-2
67-2 106-1
【慣習】5
【空間・形態】2
33
80
63
E 80
A
E 51
22-3 67-1
108-1 102-1
【技術】2
ヴィトシャ・ニューオータニ/黒川紀章
建築都市設計事務所
_no.106-2 スリランカの住宅
/安藤忠雄
37-1
09-2
30-2
E
36
84-3
70-1
101 A
15-1 22-2
17-3 42-2
A E
【慣習】1
凡例
具体例 資料番号
資料番号
【環境】17
01-3 04
A 14-2
16-1
25-1
09-1 40
16-1 44-2
49-1
E
A
E
32
33
75-2
108-2
26-1
26-3
35
57-2
66-2
66-1
73
87-1
93-1
100-3
105
106-2
12-1
15-2
【慣習】16
現地国の内訳
A:アジア
E:欧米
【環境】17
78-1
111-1
111-3
A
10-1
13-2
15-2
17-2
19-2
A 44-1
E
72-3
74
79-1
85-1
102-2
112-1
_no.103-2 マイナスKハウス
/佐伯聡子
【空間・形態】3 23-2 01-1 47-1
42-1
50
E
A
12 41-1
25-3 95-1
【技術】4
82-1
84-1
22-1 92-1
53-1 99-1
56 99-2
76 107
74
B. 現地批評 /
日本尊重 型
【空間・形態】4 【環境】3
【環境】2
60-1 A
E
53-2
91-1
機構である。_no.9-3 ホテル
87 38
現地批評
【空間・形態】12
A. 双方尊重 型
日 49 /古谷誠章
本 A 27
参 E 22 21
照
C. 現地尊重 /
あ
日本批評 型
り 日
タウン・アーキテクトと
本 いうのは、ブルガリアの
批 主要都市に各々おり…日
評 本の都市にも是非欲しい
A 51 A 24
E 36 E 14
【慣習】が多く、参照態度では日本批評が多くみられ、例えば
69-1
71
72-1
79-2
81-1
83-1
A 14-1
21-2
46-2
68-1
78-2
100-1
100-2
【慣習】17
5
図 7 註)
図の正方
形の大きさは根
拠数の比率を示
している。
F. 現地
単純批評 型
19
41
35
建物の配置 建物の輪郭
16
21
外構
3
屋根形状
14
47
61
33
外装
42
室の配置 架構 / 構造
40
19
開口
5
内部仕上げ ディテール
21
14
図 8 反映手法の内容
20
8
4
4
11
イタリアの主要都市では
…街区を一歩踏み出した
途端、煩雑で殺伐とした
およそ歴史地区の香りも
しない街並みが突如、出
現するのだ。
_no.50 BMW ITALIA 本社
新社屋/丹下憲孝
《外部》
《内部》《架構》
かたち 表層
配置
配置
18
11
9
9
7
2
2
10
8
11
9
13
24
かたち
38
表層
《外部》
43
《内部》 《架構》
図 9 反映手法と日本参照の立場の関係
日
本
尊 日
重 本
参
照
日 あ
本 り
批
評
日
本
参
照
な
し
坂茂はフランスにおける建築家の社会的地位の高さを羨望し、
拠とその評価、日本参照の立場、反映手法について検討した。
日本を非難している(ⅵ)。このような近年に特徴的な設計姿
その結果、設計根拠は 4 つの大枠で整理できた。さらに現地
勢は、社会のグローバル化による従来の価値体系の崩壊、また
国の評価と日本参照の立場の関係から、現地国と日本を対立的
日本社会の成熟に起因していると考えられ、グローバル社会に
に認識することで創作の立脚点を見出す傾向にあること、特に
反して、自国のアイデンティティを見つめ直す日本の建築家の
日本の技術的側面に価値をおき、日本の社会的性質の事柄を批
姿勢を示していると考えられる。
判するといった、グローバル社会の中におけるローカリティへ
次に現地国の内訳別に設計根拠を通時的に比較検討した。そ
の志向性を見出した。また、通時的傾向から、近年の動向とし
の結果、設計根拠に関しては、欧米では基本的に【慣習】が多
て、社会のグローバル化と日本社会の成熟により、自国のアイ
くみられたのに対し、アジアにおいては設計根拠の内容に通時
デンティティへの意識が高まる傾向にあることを見出した。
的な変化がみられた。このことは、欧米において日本人が「あ
註 1) ここでは建築専門誌のなかで最も代表的と思われる「新建築」に掲載された作品を資料
る種の文化的劣等感」6) を抱いていることから、建築家もまた
バリゼーションという言葉が登場した 1970 年代から 2012 年までを資料対象期間として
対象とし、
「GA JAPAN」に掲載された作品も少数だが補足的に扱っている。また、グロー
いる。ただし、実現した建築に比べ社会性が劣ると思われる計画案、万博博覧会におけ
常に社会的性格をもつ事柄に対し意識的になることを示してい
る建築のように国家を前提とした祝祭性をもつ建築作品は資料対象外としている。
ると考えられ、その一方でアジアにおいては、建築家が様々な
2) ここでは現地国よりも広域なエリア(cf. アジア、西欧)を参照する場合においても、分
事柄を柔軟に創作の根拠として捉えており、グローバル化した
3) 現地国に関する設計根拠は 112 資料より 208 根拠抽出することができた。
析対象として扱っている。
4) 川喜多二郎:発想法、中央公論社、1967
社会に対するこれからの建築の在り方を捉え得る可能性がアジ
5) 通時的傾向の時代区分は、資料とした海外建築作品が 1985 年以降に急激に増加したこと
を踏まえ、その数的バランスから、1970 ∼ 1984 年をひとつの時代区分とし、それ以降
アにおける設計行為に見出すことができる。
を 5 年ごとに設定した。
5. 結
6) 梅棹忠夫:文明の生態史観、中公文庫、1974
以上、海外建築作品の設計論において現地国に関する設計根
21 33
28
41
日本 参照 日本 日本
参照 なし 尊重 批評
4
7
11
15
70
7
84
9
7
7
89
7
3
2
5
5
3 4
4
内
部
架
構
4
3
8
8
5
9 10 8
参照
なし
1
7
7
日本 日本
尊重 批評
2
1
3
2
2
2
3
1 1
4
9
4
1
2
1
5
2
2
2
4
2001 NY 同時多発テロ
4
10
7
14
2008 世界金融危機
3
8
8
8
9
14
4
16
∼
10
99
04
6
4
8
4
1
11
4
9
2 1
6
1
10
3
5
15
5
9
ⅴ
3
3
8
9
1 2 1
7
11
15
13
2
7
3 4
8
ⅵ
図 10 グローバル社会における建築家の設計姿勢の通時的傾向
3
4
9
11
7
12
1 2
9
00
05
09
7
22
95
10
12
39
35
日本 日本
尊重 批評
5
10
4
カフェトリウムがキャンパスの中心的な位置
に配置され、
周囲の広いテラスにつながるオー
プンな…空間として設計されている。タイ国
の高温多湿な気象条件から生まれたオープン
スペースは、タイ人の生活の中に密着した空
間として生かされている…
ⅱ no.29 スリランカ植物遺伝資源センター/久米建築事務所 @スリランカ
この屋根のシルエットはスリランカ最後の
キャンディ王朝のスタイルからきており、ス
リランカ人のアイデンティティとして強く求
められたものであり、現存する古い建物のさ
まざまな屋根勾配を私なりに解釈したもので
ある。
ⅲ no.30 サンジョルディ・パレス/磯崎新 @スペイン
28
11
90 8
04
8
18
85
3
7
4
5
2
5
1 1
19
6
99
3
1
6
6
70
94
5
5
3
10
13
10
12
2 1
10
ⅳ
05
09
4
25
00
∼
3
∼
8
7
39
22
89
5
2
16
∼
5
6
37
参照
なし
84
9
2
7
7
10
1
ⅲ
95
体
31
3
9
ⅱ
90 15
94
8
11
16
∼
1987 バブル景気
1989 ベルリンの壁崩壊
1992 EU 成立
1
23
∼
7
1 5
ⅰ
85
13
14
∼
1970 日本万国博覧会
1973 第一次オイルショック
【環境】
外 【空間・形態】 【慣習】 【空間・形態】
部
【技術】 【慣習】
【技術】
【環境】
全
∼
80
表
層
∼
66
か
た
ち
74
5
∼
47
現地批評
134
アジアなど
∼
49
全
体
欧米
∼
46
【慣習】
配
置
ⅰ no.1 タイ国文部省職業教育施設計画/坂倉建築研究所 @タイ
現地国の内訳別 通時的傾向
∼
現地尊重
【空間・形態】【環境】
【技術】
反映
手法
参照態度の通時的傾向
∼
設計根拠の通時的傾向
4
6
3
ドームというすぐれて西欧的な歴史に包含さ
れているものを採用していながら、実はその
布置は日本的な寺院などの建築的様式にもつ
ながっている…日本の寺院の平面構成とその
屋根の架構とが相互に空間的に規制し合いな
がら形成している建築的形式である。
ⅳ no.65 フォートワース現代美術館/安藤忠雄 @アメリカ
アメリカでは、…それぞれの部品については、
実にしっかりした責任体制が出来上がってい
ます。…コンクリートの打放しなどは、まっ
たくアメリカのシステムに合致していないわ
けです。日本では、
簡単に使えるディテールが、
責任体制を考えると容易に決定できない。
ⅴ no.90 三里屯 VILLAGE /隈研吾 @中国
26
4
8
6
8
巨大資本が、日本以上のスケールとスピード
で都市を破壊し均質化しつつある北京の中に
あって…バーストリートの皮膚のあやしさを
再開発ビルの中に保存しようと…さまざまな
ディテールとマテリアルに挑んだ。
ⅵ no.98 ポンピドー・センター・メス/坂茂 @フランス
22
2
6
7
7
25
7
7
4
7
日本でも政治家が…公共工事を自身の地元へ
の利益誘導とし、その建築の質は関係なく、
…地元での権力の保持に使われてきた。…し
かしフランスでは…何より建築の質を最重要
に考え、…歴史に残るモニュメントをつくら
せる。
図 10 註)表のバーの内訳は各年代における根拠や評価
の割合を示す。各バーの高さは年代同士の根拠数の比率
を示している。表の数字は根拠数を示している。
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