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庄内海岸 - 山形県ホームページ

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庄内海岸 - 山形県ホームページ
庄内海岸における自然環境現状調査報告書
1.調査趣旨
庄内海岸砂丘地は、極めて長い期間にわたる飛砂との闘いの結果として形づくられたも
のであり、マクロ的には、現在ではその状態が安定しているように見える。かつては膨大
な被害をもたらしていた松くい虫による松枯れも、関係者の努力によって以前に比べて目
立つことが少なくなり、また、近年ではクロマツ林の公益的な意義が広く市民に浸透し、
各地で自主的な管理も行われ、当海岸砂丘地における自然環境の保全が進んでいる。
しかし、実際に当海岸砂丘地に足を踏み入れると、ゴミの漂着や不法投棄による景観の
悪化や環境の汚染、自動車の自由な乗入れによる草地の荒廃、護岸や風力発電用風車等の
建設による自然環境の喪失や、侵食による砂浜の消滅といった人為的要因と自然的要因の
力がもたらす脅威にさらされていることが明らかである。
このような状況を容易に好転させることは困難であるが、そこに生息する生物を含めて
庄内海岸砂丘地における自然環境の保全を図っていくためには、まず当砂丘地に生息する
生物の状態を把握することが必要である。
本調査は、庄内海岸砂丘地のうち、前述した問題の多くにさらされている汀線から後背
地のクロマツ林に至るまでの区域を対象に、そこに生息する動植物のいくつかを指標に定
めて自然環境の評価を行い、今後の保全対策の検討立案を行うための基礎的な資料を得る
ことを目的として実施した。
2.調査地の概要
庄内海岸砂丘地は、遊佐町西浜から鶴岡市湯野浜まで広がり、その海岸線の総延長は直
線距離(1/5万地形図での読取り)で約 33,300mである。その途中には月光川、日向川、
最上川及び赤川の4つの河川が砂丘地を横切って日本海に流入し、また、遊佐町十里塚、
青塚(服部興野を含む)
、白木、酒田市宮野浦、十里塚、浜中及び鶴岡市湯野浜の各集落が
点在している。
海岸砂丘地を汀線と直角の横断方向で見ると、汀線から続く砂浜があり、その内陸側に
前砂丘、さらにその内陸側にはクロマツ林に至るまでの間に草地が広がっている。
調査に当っては、海岸砂丘地を日本海に流入する河川等によって平面的に5つのブロッ
クに区分し、遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川を A ブロック、日向川~酒田市宮海(酒田
共同火力)を B ブロック、酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川を C ブロック、酒田市宮
野浦(最上川)~赤川を D ブロック、赤川~鶴岡市湯野浜を E ブロックとした。
一般的な海岸砂丘地の横断図
海浜植物帯
草 地
クロマツ林
砂地
前砂丘
備考:本調査において、「海浜植物帯」とは、汀線から前砂丘の間の砂浜に、海浜性の植物
が生育している区域とする。
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調 査 地 概 念 図
N
月光川
青塚
西浜
白木
Bブロック
Aブロック
宮海
十里塚
Cブロック
日向川
酒田北港
宮野浦
最上川
Dブロック
青塚
白木
十里塚
Bブロック
宮海
日向川
赤川
浜中
Eブロック
七窪
庄内空港
湯野浜
3.調査日、調査内容及び調査者
1)イソスミレ等植物調査
本調査は、2010 年 5 月 22 日、5 月 23 日、5 月 31 日の延べ3日間行った。
2)ピットホールトラップによる昆虫調査
本調査は、2010 年 8 月 23 日~24 日(晴れ時々曇り)、8 月 26 日~27 日
(晴れ時々曇り)の延べ4日間行った。
3)ヤマトマダラバッタ調査
本調査は、2010 年 9 月 8 日、9 月 9 日、9 月 10 日(いずれも晴れ時々曇り)の
延べ3日間行った。
4)地況及び植生調査
本調査は、2010 年 9 月 18 日、9 月 24 日、9 月 27 日、10 月 1 日、10 月 8 日、10 月 10
日の延べ6日間行った。
5)イソコモリグモ調査
本調査は、2010 年 10 月 16 日(晴れ時々曇り)
、10 月 29 日(曇り時々晴れ)、10 月 31
日(曇り)の延べ3日間行った。
6)調査は沢
和浩、武浪秀子、土門尚三、畠中裕之、水野重紀、伊藤
7名で行った。
4.調査方法
1)調査範囲、調査項目及び指標の選定理由
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聡、福島弘幸の
海岸砂丘地を東西の横断方向で見ると、前述したとおり砂浜と前砂丘~背面のクロマツ
林に至る間の草地に大きく分けることができる。砂浜は、さらに波打ち際とその内陸側で
波の影響を受けない区域に分けることができる。波打ち際には、海藻や塵芥が波によって
打ち上げられており、その陰には海浜性のゴミムシ類やハサミムシ類を始めとする昆虫が
生息している。また、波の影響を受けない区域には海浜性の植物が生育しており、そこに
は昆虫類も生息している。
前砂丘~クロマツ林にかけては海岸治山事業によって造成されたものであり、そのうち
前砂丘の前面から頂部にかけてはアメリカンビーチグラスが植栽されているが、その背面
には自然の草地も見られる。
当初、これらの汀線~クロマツ林に至るまでの区域に関する自然環境評価に当っては、
海浜性昆虫のヒョウタンゴミムシ、海浜植物の生育状況とそこに生息するヤマトマダラバ
ッタやイソコモリグモ、前砂丘の背面の草地の状況とそこに生育するイソスミレやアナマ
スミレ等の絶滅危惧植物の生息状況を指標とすることが考えられた。
しかし、波打ち際に生息すると言われているヒョウタンゴミムシは、事前にその生息状
況を確認したところ、D ブロックで3頭確認できたのみであり、D ブロック及び E ブロック
で実施したピットホールトラップ(2箇所計 42 個を砂浜に設置)では1頭も捕獲すること
ができなかった。このようにヒョウタンゴミムシは、生息密度が低かったことから指標と
して使用することが困難であり、また、この他に指標となる適当な昆虫類を選定すること
ができなかったため、砂浜のうち波浪の影響を受ける範囲については生物の調査を行わな
いこととした。
以上から、今回の調査においては、汀線から前砂丘に至るまでの海浜植物帯と前砂丘か
らクロマツ林に至るまでの草地を調査の対象区域とし、その現状とそこを主な生息場所に
していると考えられる数種の動植物の生息状況を調査し、それらの結果から自然環境の状
態を評価することとした。
具体的な調査項目は次のとおりである。
(1)海岸砂丘地の現状及び植物調査
(2)ヤマトマダラバッタ及びイソコモリグモの生息状況調査(海浜植物帯の指標)
(3)イソスミレ、アナマスミレ、ヒメイズイ等の生育状況調査(草地の指標)
この中で、ヤマトマダラバッタ、イソコモリグモ、イソスミレ、アナマスミレ、ヒメイ
ズイを海岸砂丘地の自然環境の評価を行うために、選定した理由は次のとおりである。
ヤマトマダラバッタ及びイソコモリグモの基本的な生息地は、海浜植物帯である。なお、
ここで言う「海浜植物帯」とは汀線から前砂丘に至るまでの砂浜に、海浜性の植物が生育
している区域をいうものとする(以下同じ)。
近年では、防波堤の建設や自動車の砂浜への乗り入れ等によって、全国各地で海浜植物
帯が破壊・減少し、それらの生物の生息環境が悪化していると言われている。このため、
ヤマトマダラバッタは、神奈川県と大阪府では絶滅、岩手県外 11 府県で絶滅危惧種に選定
されており、また、イソコモリグモは環境省及び青森県、石川県、京都府、鳥取県では絶
滅危惧Ⅱ類(VU)に選定されている。
本県においては、ヤマトマダラバッタは準絶滅危惧に選定され、また、イソコモリグモ
は詳細な調査データが無いことから、絶滅危惧の分類はされていないが、本県の海岸砂丘
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地においても他県と同様に人為的な影響が大きいものと考えられるため、それらの生物の
実態を早急に把握することが必要である。
イソスミレやアナマスミレ、ヒメイズイはいずれも庄内地方においてのみ生育が確認さ
れており、いずれも個体数が少ないことから絶滅の恐れが大きいものと考えられている。
海岸部においては、防波堤の建設や砂浜への自動車乗り入れ、園芸用の採取といった行為
の他に、植生の遷移や植栽されたアメリカンビーチグラスによる影響も懸念されている。
2)調査方法
(1)海岸砂丘地の現状及び植物調査
調査を実施した区域は、遊佐町西浜から鶴岡市湯野浜までの海岸砂丘地であり、汀線方
向に概ね 500m毎に汀線~前砂丘後背地のクロマツ人工林との間を踏査し、人工構造物の有
無、砂浜の侵食状況、海浜植物帯の幅と延長、海浜植物帯を構成する植物種とその植被率
及び前砂丘に生育する主要な植物種を記録した。
(2)ヤマトマダラバッタ及びイソコモリグモの生息状況調査
①ヤマトマダラバッタの生息状況調査
生息状況の調査を実施する前に、既にヤマトマダラバッタが確認されている海岸におい
て、その形態的特徴や植生等から見た生息地の特徴、単位区間当りの生息数を把握するた
めの方法について、事前調査を実施した。
この結果を参考にして、概ね 300~500m程度毎に汀線と前砂丘との間の海浜植物帯を踏
査し、ヤマトマダラバッタの生息の有無を調査するとともに、生息が確認できた箇所のう
ち 12 箇所を選定し、単位区間当りの生息数量を調査した。生息数量の調査に当っては、ヤ
マトマダラバッタが生息している海浜植物帯の中で代表的な場所を選び、そこに海岸線方
向に約 100mのラインを設定した。そのライン上を徒歩でゆっくりと踏査して、進行方向の
左右それぞれ2~3m程度の範囲を目視し、この間にヤマトマダラバッタであると確認で
きたものを生息数量とした。跳ねたバッタがいれば着地した時点で双眼鏡を使用して確認
したが、はっきりと確認できなかった場合は、数量に計上しなかった。
砂丘地には、外見的にヤマトマダラバッタと似ているクルマバッタモドキが、ヤマトマ
ダラバッタの生息地と一部重複して生息していることから、調査に当ってはヤマトマダラ
バッタとクルマバッタモドキとの区別に注意した。
調査は、ヤマトマダラバッタの成虫が活発に活動する9月上旬~10 月上旬に実施した。
また、ヤマトマダラバッタの生息を確認した地点で、周辺に生育する植物の種類とおお
よその植被率を調査した。
②イソコモリグモの生息状況調査
調査を実施した区域は、遊佐町西浜から鶴岡市湯野浜までの海岸砂丘地のうち、事前の
調査において海浜植物帯があると確認された区域とした。この区域を海岸線に沿って徒歩
で踏査し、進行方向の左右それぞれ2~3mの範囲にある巣穴を目視により確認した。
イソコモリグモの巣穴かどうかは、穴径が 1.5~2cm 程度であり、入口が糸で補強してあ
ることで確認できるが、念のため調査開始時に巣穴5個を掘り、穴の中にイソコモリグモ
がいることを確認した。その後の調査においては、巣穴の入り口が糸で補強されているこ
とを確認できた場合に、イソコモリグモの巣穴であるものと判断した。
調査は、日中でも巣穴が開くようになる 10 月に実施した。
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また、イソコモリグモの巣穴が見つかった地点で、周辺に生育する植物の種類とおおよ
その植被率を調査した。
(3)イソスミレ、アナマスミレ、ヒメイズイ等の生育状況調査
イソスミレ及びアナマスミレは、前砂丘~クロマツ林に至るまでの区域のうちで、アメ
リカンビーチグラスが植栽されていない草地(以下「自然草地」という。)に生育している
と言われている。そこで、海岸線と平行に作られた国有林の治山事業用作業路を自動車で
走行し、前砂丘の背面に自然草地が見られた場合に、その都度調査を実施した。
ヒメイズイは、前砂丘~クロマツ林に至るまでの区域及びクロマツ林内に生育している
と言われている。そこで、主な生育地と考えられている地域を限定して調査した。
また、イソスミレ及びアナマスミレが確認された箇所において、1m×1mのプロット
を設定し、生育する植物の種類と植被率を調査した。
(4)動植物の生育状況調査
上記調査と合わせて、調査対象区域等を踏査やトラップ調査し、できるだけ多くの種を
確認できるよう努めた。確認できた動植物により目録を作成した(動植物リスト)。同定は
主に現地で調査者が行ったが、一部不明な種については採取し、後日同定を行った。
5.調査結果
1)海岸砂丘地の現状及び植物調査
(1)人工構造物、海浜植物帯等の状況
①自然海岸の状況
海岸線のうち、汀線から前砂丘の間の砂浜に、防潮堤、護岸ブロック及び駐車場等の人
工的な構造物が設置されていない海岸(以下「自然海岸」という。ただし、テトラポット
や防潮堤等が砂に埋設してしまった場所を含む。)の総延長は 19,500mであり、これは海岸
線総延長 33,300mの約6割に過ぎなかった(表-1)。
この結果をブロック毎に見ると、B~C ブロックは酒田北港があることから、自然海岸の
割合が0~5%と極めて低く、A ブロック及び D ブロックでは、その割合が 70~90%と高
かった。なお、E ブロックについては自然海岸の割合が 61.2%であったが、海岸に人工構
造物が多い湯野浜海水浴場付近を除いて見れば、その割合は 80%程度と高くなった。
②海浜植物帯の有無
海浜植物帯のある海岸線の総延長は 11,600mであり、これは海岸線総延長 33,300mの約
3割であった(表-1)
。自然海岸においては、人工構造物によって生育基盤が損なわれる
ことがないことから、海浜植物帯が成立する可能性が高いと考えられるが、実際には前述
したとおり自然海岸の占める割合が海岸線総延長の約6割であるにもかかわらず、海浜植
物帯のある海岸の占める割合は4割程度とかなり小さくなっている(図-1~2)。
この差は、人工構造物の外にも海浜植物帯の成立を阻害している要因があることを表し
ている。今回の調査においては、波によって前砂丘の脚部が侵食されている箇所を多く見
かけており、そのような場所では海浜植物帯はほとんど見られなかった。このことから、
人工構造物の設置以外に海浜植物帯の成立を困難にしている主な要因は、波浪による侵食
であると考えられた。
この点について、海岸線の総延長に対して自然海岸の占める割合と海浜植物帯のある海
岸の占める割合を、ブロック毎に比較してみると、その差が大きいものは A ブロックと E
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ブロック、その差が小さいものは D ブロックであった。
このうち A ブロックでは、自然海岸の割合が約7割であるのに対し、海浜植物帯のある
海岸の割合は約4割であり、その差は遊佐町十里塚より南において海岸の侵食が見られる
ことによるものと考えられる。E ブロックでは、自然海岸の割合が約6割であるのに対し、
海浜植物帯のある海岸の割合は約2割であり、その差は浜中より南において海岸の侵食が
見られることによるものと考えられる。
一方、D ブロックにおいては、侵食が酒田市十里塚の北で部分的に見られる程度であった
ことから、自然海岸の占める割合と海浜植物帯のある海岸の占める割合の差が小さかった
ものと考えられる。
③海岸砂丘地の横断方向の状況
海岸砂丘地を汀線と直角方向の横断で見ると、汀線から概ね 20~40mの幅で砂浜があり、
その内陸側に概ね 60~100mの幅で前砂丘とその後背地の草地が広がり、さらにその内陸側
にクロマツ林が造成されている形態が一般的であった。
砂浜には場所によって海浜植物帯が形成され、その幅は狭い箇所では5m程度、広い箇
所では 30m程度となっており、調査を実施した区域の中で最も広い箇所は宮野浦海岸の北
部で、その幅は 70m程度であった。
海岸には防潮堤やブロック護岸の外に突堤や離岸堤なども設置されている。防潮堤や護
岸が設置された場所では、自然の砂浜が失われ海浜植物も見られなくなることが多いが、
突堤や離岸堤が設置された場所には、砂浜の拡大や海浜植物帯の増加が見られることが多
い。今回の調査においても、十里塚南 2000m付近の突堤においては南北 300m程度の範囲
において砂浜の侵食が無くなると共に、10m程度の海浜植物帯が見られ、また、宮野浦海
岸では離岸堤のある箇所で 50~60m程度の海浜植物帯が見られた。
(2)海浜植物帯を構成する植物
各調査地点で確認された植物は3~11 種であり(表-1)
、調査地点の平均では 5.9 種で
あった。財団法人日本自然保護協会が 2003~2007 年に行った市民参加による海岸植物群落
調査全国調査では、砂浜の奥行きの増大とともに種数が増加する傾向が見られ、また、浜
と内陸の境界に堤防等の構造物や道路のない奥行き 50m以下の砂浜での平均種数が 5.3 種
であった旨の結果が報告されている。今回の調査においては、種数についてはこの調査結
果と比べてほぼ同じ結果であった。
調査を実施した 21 箇所において、ハマニガナ、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマボウ
フウ及びウンランが多くの箇所で見られた(図-3)。
また、各調査地点で出現した植物数の合計に対して、各植物が占める割合を調査箇所の
全体で見ると、ハマニガナ、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマボウフウ及びウンランの
合計で約8割を占めていた(図-4)。以上から、これらの5種類の植物が、庄内海岸砂丘
地における海浜植物の代表的な種であると考えられる。
なお、この割合は、ブロックの違いによって大きな差は見られなかった。
(3)前砂丘~クロマツ林までの区域に生育する植物
海岸線総延長 33,300mのうち、集落や駐車場によって前砂丘が存在しない区間(11,900
m)を除くと、21,400mとなる(以下、この区間を「前砂丘総延長」という。)。このうち
前砂丘の前面~頂部に至るまでの区域にアメリカンビーチグラスが密に生育している区間
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の延長は 21,200mであり、前砂丘総延長に対する割合は約 100%であった(表-2)
。
次に、前砂丘の頂部~クロマツ林に至るまでの区域では、自然草地のある区間の延長は
11,400mであり、前砂丘総延長 21,400mの約5割、自然草地にアメリカンビーチグラスが
部分的に混在した草地を加えると、その延長は 16,900mとなり、その割合は約8割であっ
た。
ブロック毎にその区間延長における自然草地の占める割合を見ると、E ブロックが最も大
きく、次いで A ブロック、D ブロックの順であった。また、ブロック毎にその区間延長にお
けるアメリカンビーチグラスの占める割合を見ると、D ブロックが最も大きく、次いで E ブ
ロック、A ブロックの順であった(図-5)。
これをもう少し詳しく見ると、自然草地が比較的まとまって見られるのは、A ブロックの
うち遊佐町西浜~遊佐町十里塚の区間、D ブロックのうち酒田市十里塚~赤川の区間及び E
ブロックのうち赤川~鶴岡市七窪の区間であった。また、D ブロックのうち酒田市宮野浦~
十里塚付近までの区間と E ブロックのうち鶴岡市七窪~湯野浜海岸までの区間においては、
アメリカンビーチグラスやアキグミ、クロマツの植栽が行われていることから、自然草地
はほとんど見ることができなかった(表-2)
。
15 箇所の調査地において確認した植物は、調査箇所の全体で 45 種であった(図-6)。
なお、出現した箇所数の多い順で上位 20 種程度の植物については、ブロックの違いによっ
て大きな差は見られなかった。
2)ヤマトマダラバッタ及びイソコモリグモの生息状況調査
(1)ヤマトマダラバッタの生息状況
ヤマトマダラバッタの生息状況の調査を 36 地点で実施した結果、26 地点でヤマトマダラ
バッタの生息を確認し、そのうちの 12 箇所において生息数量を調査した。
ヤマトマダラバッタの生息数量は、極端に少ない区域のデータを除くと、各調査地にお
いて 100m当り 10~31 頭(平均 20 頭)であった。
また、ヤマトマダラバッタの生息を確認した箇所のうち、12 箇所における調査結果では、
そこに生育していた植物は調査箇所の全体で 13 種であり、ハマニガナ、ハマヒルガオ、コ
ウボウムギ、ハマボウフウ及びウンランが多くの箇所で見られた(図-7)。各調査地点で
出現した植物数の合計に対して各植物が占める割合を見ると、それらの植物の合計が占め
る割合は、生息地の合計では約8割であった(図-8)。この結果は、5-1)-(2)の海
浜植物帯を構成する植物の状況と比べて、大きな差が認められないことから、庄内海岸に
おける一般的な海浜植物帯に、ヤマトマダラバッタが生息しているものと考えられた。
つまり、実際に生息を確認した 26 箇所の調査地点だけでなく、その地点のある海浜植物
帯にヤマトマダラバッタが生息しているものと考えた。
なお、生息状況の調査を行った 36 地点のうち 10 地点においては、ヤマトマダラバッタ
の生息が確認できなかった。生息の有無の違いが何によって起こるのかについては不明で
あるが、生息の有無によって海浜植物の種や割合に大きな差は見られなかった(図-8)。
調査地の中には、海浜植物帯の幅が比較的広いにもかかわらず、ヤマトマダラバッタの
生息がほとんど確認できない区域も見られた。その原因としては、その区域が他区域に比
べ砂浜の奥行きが 40~50m程度と広く飛砂が多かったことや、自動車の進入が多いことな
どが影響していることも考えられる。
50
その他、調査において明らかになったことは、次のとおりである。
ヤマトマダラバッタの生息を確認した箇所の植物の植被率は、10~20%の箇所数が最も
多かった。この数値は、後述するイソコモリグモのそれと比べて若干大きく、イソコモリ
グモよりも少し安定した場所に生息していることを示していると考えられる(図-9)。
また、ヤマトマダラバッタの食草と考えられていたメヒシバは、16 箇所の調査地点のう
ち4箇所しか確認できなかった。このため、食草については別途調査が必要と思われた。
ヤマトマダラバッタの中には、人工的に造成された前砂丘が侵食によって破壊され、そ
こに形成された海浜植物帯を生息地としているものが見られた。このような場所は、波の
侵食によって周辺の砂浜に海浜植物が見られないことから、この地域における貴重な生息
地となっている。しかし、前砂丘は海岸治山にとって重要な施設であることから、いずれ
はその保全のための工事が実施され、このような生息地が消滅する恐れが大きい。保全工
事の実施に当っては、このように貴重な生物種が生息する自然環境もあることを認識した
うえで実施されることが望まれる。
(2)イソコモリグモの生息状況
調査区域のうち、イソコモリグモの巣穴を確認できた箇所は、調査区域全体で計 23 箇所
(30 穴)であり、調査を実施した海浜植物帯のうち、多くの箇所で確認することができた。
巣穴を確認した箇所に生育する植物は、調査箇所の全体で9種であり、コウボウムギ、
ハマヒルガオ、ウンラン、ハマボウフウ、ハマニガナといった庄内海岸の海浜植物帯にお
ける一般的な植物で構成されていた(図-10)
。しかし、生育する植物をブロック毎に見る
と、庄内海岸砂丘地で見られる一般的なこれらの植物が必ずしも全て揃っているとは限ら
なかった(図-11)。また、植被率の区分で見ると0~10%の箇所が 18 箇所で、巣穴の見
つかった 23 箇所のうち6割を占めていた(図-12)。
以上のように、生息地の植物の植被率が極めて低いことや、構成する植物の種に偏りが
見られることから、イソコモリグモは、海浜植物帯の中でも、どちらかと言えば風による
砂の移動が起こり易い不安定な場所に生息しているものと考えられた。
巣穴の位置を汀線からの距離で見ると 40~50m程度のものが多く、巣穴は波浪の影響が
ないと考えられる場所にあった。D ブロックでは汀線沿いに設置されたテトラポットの背面
の波による砂浜の侵食がないと思われる箇所に、7箇所(11 穴)がまとまって確認された
ことから、イソコモリグモは、巣穴そのものが崩れることがない場所を好むものと考えら
れる。
なお、幅が 10~15mの海浜植物帯が約 1,400mの範囲にわたって続いているにもかかわ
らず、イソコモリグモの生息数は5箇所と極めて少ない区域や海浜植物帯の幅が広いとこ
ろで 70m程度の区域もあったが、イソコモリグモはまったく確認できない区域もあった。
この2つの区域では、海浜植物帯への自動車の進入跡が多く見られ、場所によっては、自
動車の轍によって砂地が波打つほどの状態であることから、イソコモリグモにとっては巣
穴の維持の面から生息が困難となっているのではないかと考えられた。
その他、調査において明らかになったことは、次のとおりである。
イソコモリグモの巣穴かどうかを確認した際に、5箇所の巣穴の深さを測定したところ
12~25cm であった。一般的に巣穴の深さは 10~20cm 程度と言われており、これとほぼ同じ
結果であった。また、イソコモリグモは夜間に巣穴から出て捕食活動を行うと言われてい
51
るが、調査を行った際に、巣穴の入口から2cm 程度入ったところにイソコモリグモを見か
けることが数回あったことから、日中でも補食活動を行っている可能性がある。
また、前砂丘の脚部が侵食を受け、汀線~前砂丘に至るまでの砂浜には海浜植物帯が無
く、前砂丘にはアメリカンビーチグラスが植栽されている場所では、ピットホールトラッ
プにイソコモリグモ2頭が捕獲された。
このような場所において、海浜植物帯に生息すると言われているイソコモリグモが捕獲
された理由については、今後明らかにする必要がある。
3)イソスミレ、アナマスミレ、ヒメイズイ等の生育状況調査
(1)イソスミレ等の希少な植物の生育状況
イソスミレ、アマナスミレ、ヒメイズイの生育を確認した箇所(数量)は、海岸砂丘地
全体でそれぞれ 19 箇所(452)、6箇所(284)、8箇所(1,195)であった。
それぞれの生育地を地域的に見ると、イソスミレは A ブロック、D ブロック、E ブロック
に生育しており、特に E ブロック北部では 10 箇所で約 260 個体を確認した。アマナスミレ
は E ブロックのみで確認した。ヒメイズイは A ブロック、D ブロックで確認した。
次に前砂丘を横断的に見ると、イソスミレは 20 箇所のうちの 16 箇所、アマナスミレは
6箇所の全て、ヒメイズイは8箇所のうち4箇所が前砂丘に生育しており、イソスミレと
アマナスミレは砂丘地の草地が主な生育地であることが確認できた。また、ヒメイズイは
箇所数、数量ともにマツ林内と前砂丘が約半々であり、前砂丘においてはクロマツ林の際
付近、また、クロマツ林内においては前砂丘の近くに多く生育していた。
イソスミレとアマナスミレがそれぞれ生育する場所の植被率は、イソスミレの生育地で
61~100%(13 箇所の平均で 76%)、アマナスミレの生育地で 30~100%(6箇所の平均で
65%)であった。前砂丘後背地の安定した草地の植被率はほぼ 100%であると考えられるこ
とから、この数値から見ると、両種ともにやや生育基盤が不安定な(砂の移動が起こり易
い)場所に生育していることが分かる。調査に際しても、両種共にやや砂地が目立つ場所
に多く見られ、また、どちらかと言えばアマナスミレの方がイソスミレに比べて、少し不
安定な場所に生育しているように見られた。
以上をまとめると、イソスミレ、アマナスミレ及びヒメイズイを合わせてみれば、それ
らは前砂丘背面の草地の多くに生育しており、イソスミレの生育地は前砂丘の背面からそ
れが最も低くなる付近まで、アマナスミレの生育地は前砂丘の頂部からその背面にかけて、
ヒメイズイの生育地はクロマツ林の縁付近の前砂丘側とマツ林内に分布しているものと言
える。
なお、今回の調査においては、前砂丘背面の自然草地が比較的多い A ブロックのほとん
どと D ブロック南部で、イソスミレの生育を確認できなかった。この理由については、現
在のところ不明であるが、両区間とも前砂丘の海側にある砂浜の幅が 40~50m程度と広い
ことから、その背面の草地がイソスミレの好む以上に安定した環境となっている可能性が
ある。
その他、イソスミレの生育環境に関して、調査において明らかとなった事項は次のとお
りである。
イソスミレが生育する多くの箇所で、カワラヨモギ、カタバミ、ハマナス、ハマヒルガ
オ、コウボウムギといった植物が見られた(図-13)。しかし、それらの植物の平均植被率
52
を見ると、種類によって大きくバラつきがあることが分かる(図-14)。この中で、ハマナ
ス、アメリカンビーチグラス、ハマゴウ、ススキ、ハマニンニク、ブタナは、出現した箇
所数が1~4箇所と少ないにもかかわらず、その平均植被率が 25~35%程度と比較的大き
くなっている。このことは、それらの植物が1箇所の生育地において旺盛に繁茂している
こと示しており、今後その生育地を広げた場合には、イソスミレの生育に対して大きな影
響を及ぼす可能性があるものと考えられる。
実際に、調査箇所の中にはイソスミレがハマナスに覆われている箇所や、ハマゴウに覆
われている箇所、隣接地からのアメリカンビーチグラスに覆われつつある箇所も見られた。
また、これらの6種類の植物のうち、ススキ、ハマナスについては5-1)-(3)の
前砂丘~クロマツ林に至までの草地における植物調査の結果においても、調査箇所のうち
の半数以上の箇所で生育が確認されていることから、その繁茂には注意を要するものと考
えられる。
(2)その他確認された絶滅危惧種
今回の調査において指標植物としたイソスミレ等の外に、調査において生育が確認でき
た絶滅危惧種は、ムラサキニガナ(VU)、オオバナミミナグサ(VU)、アオスズラン(VU)の
3種であった。
ムラサキニガナは庄内を中心に生育する多年草で、山麓部の二次林やスギ植林地を含め
て5箇所において自生が確認されているが、いずれも個体数が少ないことから絶滅が危惧
されている。オオバミミナグサは、海岸にのみに自生する植物であり、自生地が2箇所と
極めて少ないことから、開発等による地形の改変があれば絶滅の恐れが大きい。アオスズ
ランは、庄内の外に内陸においても自生が確認されているが、園芸用の採取や森林伐採な
どによる環境の変化で減少が著しく、絶滅が危惧されている。
6.まとめ(自然環境の評価と保全対策について)
1)庄内海岸砂丘地の自然環境の現状評価
(1)評価方法
調査の結果、ヤマトマダラバッタやイソコモリグモは、主にコウボウムギ、ハマヒルガ
オ、ウンラン、ハマボウフウ及びハマニガナで構成される海浜植物帯に、概ね生息してい
るものと考えられた。
また、前砂丘背面の自然の草地には、イソスミレ、アナマスミレ及びヒメイズイ等が分
布していることが明らかとなった。これらの生息状況をまとめると、概ね次図のとおりと
考えられる。
汀線~前砂丘までの砂浜の海浜植物帯には、イソコモリグモとヤマトマダラバッタが生
息し、前砂丘~クロマツ林までの草地には、アナマスミレ、イソスミレ、ヒメイズイが生
育する。アナマスミレはイソスミレより海側に生育し、また、ヒメイズイはクロマツ林の
林縁及び林内に生息している。
標準的な指標動植物の生息域
ヤマトマダラバッタ
イソスミレ
イソコモリグモ
海浜植物帯
アナマスミレ
アメリカンビーチグラス
53
砂地
前砂丘
ヒメイズイ
草 地
クロマツ林
これらの動植物の生息状況及び海岸砂丘地の現状についての調査結果から、海岸砂丘地
の自然環境の現状について評価を試みた。
まず、各ブロックを海岸砂丘地にある集落を境として小さな区間に分割し、その区間毎
に海岸の現状、植生、野生動植物の生息状況等を評価項目として評価を実施した。評価に
当っては、海岸砂丘地を汀線~前砂丘に至るまでの区域と、前砂丘~クロマツ林に至るま
での区域に区分し、それぞれについて評点行った後に最終的に全体として取りまとめた。
なお、海浜植物と自然草地については前述したとおり、それを構成する植物の種類やそ
の割合に、ブロックの違いによって大きな差が見られなかったことから、これらの項目は
量的な基準のみで評価するものとした。
具体的な項目別評価基準は次のとおりである。
項 目 別 評 価 基 準 表
人工構造物
海浜植物
ヤマトマダラバッタ
イソコモリグモ
自然草地
イソスミレ
アナマスミレ
ヒメイズイ
自動車の進入
侵 食
評 点
○:区間の2割未満、△:区間の2割以上8割未満、×:区間の8割以上にあり
○:区間の8割以上にあり、△:2割以上8割未満、×:2割未満
○:生息あり、×:未確認
○:10個体以上、△:1以上10未満、×:未確認
○:区間の8割以上にあり、△:2割以上8割未満、×:2割未満
※草地と草地の混在を合計した割合である。
○:生息あり、×:未確認
○:生息あり、×:未確認
○:生息あり、×:未確認
○:ほとんど見られない、△:見られる、×:著しい
※海浜植物帯及び前砂丘への進入状況である。
○:区間の2割未満、△:区間の2割以上8割未満、×:区間の8割以上にあり
※主に波による砂浜及び前砂丘の侵食状況である。
○:5点、△3点、×:0点
備考:区間とは、海岸線延長方向の区域をいう。
(2)評価結果
評価の結果を表-3に示した。
汀線~前砂丘に至るまでの区域では、D ブロックの b 地区と c 地区 、E ブロックの a 地
区で評点が高かった。
前砂丘~クロマツ林に至るまでの区域では、A ブロックの d 地区と E ブロックの b 地区の
評点が高かった。
汀線~クロマツ林に至るまでの区域を合計すると、D ブロックの c 地区、A ブロックの d
地区、E ブロックの a 地区の評点が高かった。
これらの地区の評点が高かった理由は、次のとおりと考えられる。
①汀線~前砂丘に至るまでの区域
D ブロックの c 地区と E ブロックの a 地区では、人工構造物は集落近くの駐車場しかなく、
その他の場所では自然の海岸に海浜植物帯が形成されており、そこにヤマトマダラバッタ
やイソコモリグモが生息しているためである。
D ブロックの b 地区については、集落北部に海岸の侵食が見られるが、ヤマトマダラバッ
タやイソコモリグモの生息も見られるために評点が高くなったものである。
②前砂丘~クロマツ林に至るまで区域
54
E ブロックの b 地区については、自然の草地にイソスミレやアナマスミレが多数生育して
いるためである。
A ブロックの d 地区については、区域としては小さいものの、海浜植物や自然草地が見ら
れ、そこにヤマトマダラバッタ、イソスミレ、ヒメイズイが生息しているために評点が高
くなったものである。なお、この区間にはオオバミミナグサ、ムラサキニガナといった希
少な植物の生育も見られることから、保全上は重要な場所である。
反対に、評点が低かった区間について、その理由は次のとおりと考えられる。
①汀線~前砂丘に至るまでの区域
A ブロックの a 地区と E ブロックの b 地区と c 地区では、人工構造物や侵食によって海浜
植物帯が失われたことが原因である。
②前砂丘~クロマツ林に至るまで区域
D ブロックの b 地区と E ブロックの c 地区では、アメリカンビーチグラスやアキグミ、ク
ロマツの植栽によって、自然草地が見られないことが原因である。
以上の評価結果から、海岸砂丘地の自然環境を保全していくためには、ぞれぞれの場所
におけるマイナス要因を取り除くような対策と、プラス要因が減じることのないように対
策を行っていくことが必要である。
特に、A ブロックの c 地区や D ブロックの a 地区のように、海浜植物帯や草地への著しい
自動車の進入が続けば、そこに生息する生物への影響が懸念されることから、早急な対策
が望まれる。
2)海岸砂丘地の自然環境の保全対策
調査の結果から、庄内海岸砂丘地の自然環境に大きく影響を及ぼしていると考えられる
ものは、砂浜の侵食、砂浜やその内陸側に広がる草地への自動車の進入、アメリカハマニ
ンニクの繁茂であり、その他に漂着ゴミも影響が大きいものと考えられる。また、近年で
は海岸地帯での風力発電用の風車の建設が各地で行われており、今後これによる影響も大
きくなる可能性がある。以下に、これらの事項に関する対策について記載する。
(1)海岸保全工事等との調整
消波ブロックによって砂浜が安定し、その背後でイソコモリグモの生息密度が大きかっ
たことからも、現在は波の侵食によって砂浜の安定が損なわれている場所であっても、何
らかの方策によって砂浜の安定が確保できれば、生物の多様性が大きくなることが推測で
きる。
しかし、防潮堤やブロック護岸ではなく、離岸堤等の構造物を設置する場合であっても、
砂浜の環境が大きく変わることが予想されることから、それが生物多様性に与える影響に
ついて、充分に調査研究を実施することが望まれる。
(2)海岸への自動車の進入対策
自動車の進入は、海浜植物帯、前砂丘のアメリカンビーチグラス生育地、その背面の草
地等ほとんどの区間で見られ、特に宮野浦海岸や遊佐町の十里塚海岸で著しく多かった。
このような傾向は、海岸砂丘地を横切って流れる河川の河口や、点在する集落の近くで多
く見られた。
自動車の進入の目的については個別に調査をしていないが、一般的な海岸の利用状況や
実際に目撃した事実から推測すると、海浜植物帯への進入は釣りとその他のレジャー、前
55
砂丘への進入は既設の道路終点から砂浜へ出るための通路としての、オフロード走行が主
なものと考えられる。
海岸砂丘地のうち、前砂丘より陸側の区域を管理している林野庁でもこの弊害について
は十分認識しており、主に治山施設の保全という面から、柵や注意看板を設置する対策を
とっている。しかし、効果は不十分で前砂丘より海側の海浜植物帯のある区域については、
なんの規制も講じられていない。
また一般的に海浜植物帯や海岸の草地は、多様な生物にとって重要な生息域であるとい
う認識が、乏しいことも大きな原因と考えられる。このため自動車の進入対策については、
国有林、海岸砂浜も含めて生物多様性の保全といった面からの注意喚起が必要である。
なおこのことは、行政が行なう海岸保全工事やゴミの処理にも関係するため、早急に対
応すべき事項である。
(3)林野庁の海岸治山事業との調整
海岸砂丘地においては、現在に至るまで林野庁による海岸治山工事が実施された結果、
その背後の集落や農地等が保全されている。しかし、その過程においては、海岸砂丘地の
最前面となる前砂丘の飛砂を防止するために、アメリカンビーチグラスの植栽が行われ、
現在では海岸砂丘地のほぼすべての区間において、前砂丘の前面がその植栽で覆われてい
る。
アメリカンビーチグラスは外来種であり、これが繁茂する場所では、ほとんど他の植物
の生育が見られない。また、隣接する自然草地に向かってその生育地を拡大している箇所
も見られ、イソスミレやアナマスミレといった希少な植物を絶滅の危機にさらす要因の一
つとなっている。
前砂丘を管理している林野庁では、
「今後はアメリカンビーチグラスを新たに植栽するこ
とはない。」としているが、前述のとおり既往の生育地からの拡大によって希少な植物の絶
滅の危機が高まれば、林野庁と調整の上で、駆除や代替種への転換等の措置も必要と考え
られる。
(4)漂着ゴミ及び不法投棄ゴミ対策
近年、海岸砂丘地における環境問題として、漂着ゴミや不法投棄ゴミが注目されている。
今回の調査においても、その実態やゴミ処理の現場を目撃する機会が多くあったが、ゴミ
そのものの影響の外に、その処理のために重機等の車両が海岸砂丘地に乗り入れるという
行為についても、自然環境に何らかの影響を及ぼしていることは容易に想像することがで
きた。
今回は調査を実施できなかったが、海岸におけるゴミが自然環境に及ぼす影響について
は、避けることができない検討課題であると考えられるので、できるだけ早急に調査を実
施する必要がある。
(5)風力発電用風車等の建設の影響
風力発電用の風車は、現在酒田市宮野浦と宮海に建設されている外に、遊佐町十里塚の
南でも建設工事が行われている。風車1基当りの敷地面積は小さいものの、工事に際して
は作業ヤードが必要となり、完成後には管理のための自動車の進入も予想されることから、
それらの影響も懸念される。
また、砂浜に建設する場合には、基礎の安定を図るために護岸が必要となり、酒田市宮
56
海のように広い範囲で自然の海岸が喪失する恐れが大きい。このような施設の計画に当た
っては、施設の構造だけではなく、工事方法や完成後の維持管理についての影響も十分に
検討することが必要である。
3)おわりに
今回の調査は、対象とした指標生物が極めて限定したものであり、海岸砂丘地における
野生生物の実態を明らかにしたものではない。このため、今回の調査対象種以外の生物を
指標とした場合や、違う視点から評価を行った場合には、評価結果が変わる可能性もある。
また、調査を実施した区域は、主に海浜植物帯と前砂丘~クロマツ林に至るまでの区域
であり、汀線付近の砂浜の調査は実施できなかった。この付近は陸と海との接点であり多
くの生物が生息していると言われていることから、今後改めて調査を実施し、これらを含
めて庄内海岸砂丘地における自然環境の保全対策等について、さらに詳細に検討する必要
がある。
【参考文献、引用文献リスト】
(1)桜井俊一(1990)庄内海岸汀線帯の甲虫類.山形昆虫同好会会誌 19:18-24.
(2)森本桂(1993)海辺の甲虫類概説.昆虫と自然 28(11):2-6.
(3)平野幸彦(1993)海浜性甲虫類の採集法.昆虫と自然 28(11):7-11.
(4)市川顕彦・加納康嗣(1993)日本の海浜性直翅類.昆虫と自然 28(11):12-16.
(5)岡部光一(1996)バッタ目 Orthoptera の採種記録.山形昆虫同好会会誌 26:9-10
(6)土門尚三(1999)山形県北庄内の植物誌.190pp,土門尚三,山形.
(7)須田有輔・早川康博訳(2002)砂浜海岸の生態学.427pp,東海大学出版会,東京
( 8 ) 米 倉 浩 司 ・ 梶 田 忠 ( 2003 )「 BG Plants 和 名 - 学 名 イ ン デ ッ ク ス 」( Y-List ),
http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html. (2013 年 3 月1日)
(9)山形県希少野生生物調査検討委員会動物部会(2003)レッドデータブックやまがた
山形県の絶滅のおそれのある野生植物.302pp,山形県文化環境部環境保護課,山形.
(10)大津高(2004)山形県陸産淡水産動物目録 改訂版.358pp,山形県動物環境調査
会,山形
(11)山形県野生植物研究会(2004)レッドデータブックやまがた絶滅危惧野生植物(維
管束植物).294pp,山形県文化環境部環境保護課,山形.
(12)高橋信弥(2008)2008 年山形県フロラの動向.フロラ山形 64:1-13
(13)財団法人日本自然保護協会(2007)市民参加の海岸植物群落調査全国調査結果
2003-2007.財団法人日本自然保護協会,東京.
(14)佐藤史典・柳原敦・中島勇喜(2008)山形県庄内海岸におけるアメリカンビーチ
グラスの分布状況.日本海岸林学会岩手大会要旨集:17-18.
(15)環境省(2012)第4次レッドリストの見直しについて(汽水・淡水魚類を除く).
2012 年 8 月 28 日環境省報道発表資料.
57
庄内海岸植物目録(2010年)
調
No.
科
和 名
白木
西浜
藤崎自
然林
査
菅里十
里塚北
箇
所
RDBカテゴリ-
宮野浦
十里塚
北
●
●
赤川新
川
浜中防
波堤
県
国
備 考
種子植物
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
マツ
ブナ
クロマツ
ニレ
エノキ
ケヤキ
ヒメスイバ
スイバ
オオバナノミミナグサ
オオヤマフスマ
ミミナグサ
ハマハコベ
オランダミミナグサ
シロダモ
タブノキ
センニンソウ
アオツヅラフジ
ムラサキケマン
ハマハタザオ
ショカツサイ
ミチタネツケバナ
ネコノメソウ
シャリンバイ
カスミザクラ
ハマナス
ナワシロイチゴ
コメツブツメクサ
ハマエンドウ
カスマグサ
ハリエンジュ
コメツブウマゴヤシ
ノウルシ
ツタウルシ
ヤマウルシ
エゾイタヤ
モチノキ
ハイイヌツゲ
タデ
ナデシコ
クスノキ
キンポウゲ
ツヅラフジ
ケシ
アブラナ
ユキノシタ
バラ
マメ
トウダイグサ
ウルシ
カエデ
モチノキ
ニシキギ
ブドウ
グミ
スミレ
アカバナ
ミズキ
ウコギ
セリ
イチヤクソウ
●
●
●
●
●
●
カシワ
ミズナラ
クリ
マユミ
ツリバナ
ツルウメモドキ
ノブドウ
エビヅル
アキグミ
ナワシログミ
イソスミレ
アナマスミレ
オオタチツボスミレ
アオイスミレ
コマツヨイグサ
ヒメアオキ
ヤマウコギ
シャク
セントウソウ
ハマボウフウ
オオハナウド
イチヤクソウ
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
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●
EN
NT
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EN
逸出
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NT
NT
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CR
逸出
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●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
58
●
●
●
●
VU
CR
VU
調
No.
科
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
モクセイ
和 名
イボタノキ
ヤマトアオダモ
キョウチクトウ テイカカズラ
ツルニチニチソウ
ガガイモ
ガガイモ
アカネ
カワラマツバ
ヒルガオ
ハマヒルガオ
ムラサキ
スナビキソウ
シソ
ナミキソウ
ナス
ヒヨドリジョウゴ
ゴマノハグサ ウンラン
オオバコ
ヘラオオバコ
スイカズラ
ガマズミ
キンギンボク
オミナエシ
ツルカノコソウ
キク
ムラサキニガナ
オオアキノキリンソウ
カワラヨモギ
ハマニガナ
シロヨモギ
ブタナ
エゾタンポポ
ヨモギ
ヒメジョオン
ブタクサ
ノボロギク
ユリ
ヒメイズイ
オオアマドコロ
ドイツスズラン
ジャノヒゲ
タカサゴユリ
マイヅルソウ
オオウバユリ
アサツキ
サルトリイバラ
イグサ
スズメノヤリ
イネ
テンキグサ
オオハマガヤ
オニシバ
ハルガヤ
コバンソウ
カモガヤ
ヌカススキ
ミゾイチゴツナギ
ススキ
オニシバ
サトイモ
キタマムシグサ
カヤツリグサ コウボウムギ
チャシバスゲ
コウボウシバ
アゼスゲ
ビロードスゲ
オクノカンスゲ
ラン
アオスズラン
サイハイラン
白木
西浜
査
箇
所
RDBカテゴリ-
十里塚 赤川新 浜中防
藤崎自 菅里十
宮野浦
北
川
波堤
然林 里塚北
●
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県
国
EN
NT
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VU
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●
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●
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●
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●
●
●
●
VU
【植物目録の仕様】
◎科の配列は、以下によった。
・シダ植物、裸子植物:裳華房刊、加藤雅啓編「植物の多様性と系統」(1997)
・被子植物:新エングラー(Melchior and Werdermann eds. 1964;和名は清水1994)
・和名は、主に米倉浩司・梶田忠(2003-)「BG Plants和名‐学名インデックス」(Ylist),http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html
(2013年3月1日)によった
◎凡例
●:2010年の現地調査で確認した種(現地調査で確認した場合、過去の文献記録は省略した)
59
備 考
庄内海岸動物目録(2010)
調査場所
No.
昆虫類
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
鳥類
28
29
30
31
32
33
34
35
34
科
バッタ
オオハサミムシ
カメムシ
オサムシ
コツブゲンゴロウ
ガムシ
ハネカクシ
コメツキムシ
ゴミムシダマシ
ハムシ
アリ
セセリチョウ
シジミチョウ
ハヤブサ
カモメ
カッコウ
ヒバリ
ヒヨドリ
ツグミ
ウグイス
シジュウカラ
和 名
ヤマトマダラバッタ
オオハサミムシ
カメムシの一種(幼虫)
ヒョウタンゴミムシ
オサムシモドキ
コホソナガゴミムシ
コガシラナガゴミムシ
クロツヤヒラタゴミムシ
ヒメツヤヒラタゴミムシ
ゴミムシの一種(幼虫)
マルガタゴモクムシ
アカガネアオゴミムシ
コツブゲンゴロウ
ケシガムシ属の一種(小)
ケシガムシ属の一種(大)
ウミベアカバハネカクシ
スナサビキコリ
アカアシコハナコメツキ
マルチビゴミムシダマシ
カクスナゴミムシダマシ
ハマヒョウタンゴミムシダマシ
ホソハマベゴミムシダマシ
ヒメホソハマベゴミムシダマシ
ウリハムシモドキ
アリの一種
ミヤマチャバネセセリ
オオミドリシジミ
ハヤブサ
コアジサシ
カッコウ
ヒバリ
ヒヨドリ
クロツグミ
オオヨシキリ
センダイムシクイ
シジュウカラ
RDBカテゴリー
ため池
十里塚 小波渡
浜中 宮野浦 七窪
西浜 赤川北 藤崎
⑤
南
海岸
●
白木
●
●
県
国
NT
●
●
●
●
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●
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●
●
●
●
●
●
●
●
VU
EN
●
●
●
●
●
●
●
【動物目録の仕様】
◎科の配列、和名は主に以下によった。
・大津高編修(2004)山形県陸産淡水産動物目録(改訂版).358pp,山形県動物環境調査会,山形.
◎凡例
●:2010年の現地調査で確認した種(現地調査で確認した場合、過去の文献記録は省略した)
60
NT
NT
VU
VU
備 考
表-1 汀線~前砂丘までの人工構造物、海浜植物一覧表
区 間
Aブロック
海岸総延長
m
人工構造物 m
あり
なし
海浜植物帯 m
あり
なし
幅 m 種数
備 考
8,800
900
西浜(吹浦漁港)~西浜入口
西浜入口~西浜南800m
西浜南800m~南1600m
西浜南1600m~南1800m
西浜南1800m~十里塚南100m
十里塚南100m~南1500m
400
300
1,100
200
十里塚南1500m~南1900m
十里塚南1900m~南2200m
十里塚南2200m~南3300m
十里塚南3300m~南3500m
1,500
十里塚南3500m~青塚南250m
青塚南250m~日向川
小 計
Bブロック
小 計
Cブロック
小 計
900
800
800
200
700
1,400
8,800
(100.0)
2,100
2,100
(100.0)
5,500
5,500
2,400
(27.3)
2,000
2,000
(95.2)
5,500
5,500
500
6,400
(72.7)
100
100
(4.8)
0
0
(100.0) (100.0)
8,400
Dブロック
1,100
1,400
1,400
300
宮野浦(最上川)~宮野浦海岸
宮野浦海岸~十里塚北2000m
十里塚北2000m~十里塚北600m
十里塚北600m~十里塚北300m
Eブロック
8,400
(100.0)
8,500
赤川~浜中北600m
浜中北600m~浜中入口
浜中入口~庄内空港
庄内空港
庄内空港~湯野浜北800m
湯野浜北800m~宮沢
小 計
計 600
(7.1)
200
― 駐車場等
800
―
6~8
700 ―
― 侵食
6
―
10~15 8
400
―
8
―
7
―
7
1,400
―
10
1,100 ―
200
10
1,500 ―
500
5~6
3,400 5,400
(38.6) (61.4)
100 2,000
4
100 2,000
(4.8) (95.2)
0 5,500 ―
0 5,500
300
5
侵食
突堤
侵食
護岸等
防潮堤、駐車場等
― 防潮堤等
(0) (100.0)
20~70 6~7
3,600
7,800
(92.9)
6~12 5~6
700 5~10 4 侵食、部分的に植物帯有
300 ―
―
600 ―
― 駐車場等
20~30 3~6 汀線の一部にテトラポット
3,600
6,800 1,600
(81.0) (19.0)
1,300
1,300
10~16 4~6
600
600
2,300
400
8,500
(100.0)
33,300
(100.0)
―
10~15 11
1,100
1,400
700
600
十里塚北300m~十里塚海岸南
十里塚海岸南~赤川
小 計
(0)
800
1,600
2,300
3,300 5,200
1,300
(38.8) (61.2)
(15.3)
13,800 19,500 11,600
(42.3) (57.7)
(34.8)
2,300
400
1,600
2,300
7,200
(84.7)
21,700
(65.2)
―
― 駐車場
―
―
―
―
―
―
―
―
侵食
護岸
侵食
防潮堤等
備考1:( )は海岸総延長に対する割合%
備考2:Aブロックは遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川、Bブロックは日向川~酒田市宮海(酒田共
同火力)、Cブロックは酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川、Dブロックは酒田市宮野浦(最上
川)~赤川、Eブロックは赤川~鶴岡市湯野浜の区間である。
備考3:Cブロックのうち、大浜(L=1.0km)の海浜植物帯の状況は1997撮影の航空写真による。
61
表-2 前砂丘~クロマツ林までの植生、指標植物の生育状況
区 間
Aブロック
海岸総延長 前砂丘前面~頂部 m
前砂丘頂部~クロマツ林 m
アメリカンビーチグ
ラス
アメリカンビーチグ
草 地 草地混在 ラス等
m
海浜植物
その他の延長m
8,800
1,000
2,000
西浜(吹浦漁港)~西浜入口
西浜入口~遊佐町十里塚集落
1,000
2,000
十里塚集落
1,000
900
400
400
300
300
十里塚集落~十里塚南1000m
十里塚南1000m~
~十里塚南3000m
十里塚南3000m~3300m
十里塚南3300m~3500m
十里塚南3500m~青塚集落
青塚集落
青塚集落~日向川
小 計
Bブロック
小 計
Cブロック
小 計
Dブロック
宮野浦海岸~十里塚北3000m
十里塚北3000m~北300m
十里塚北300m~十里塚集落
十里塚集落
十里塚集落~南300m
十里塚南300m~赤川
小 計
Eブロック
赤川~浜中北600m
浜中北600m~浜中集落
浜中集落
浜中集落~七窪北1400m
七窪北1400m~七窪北300m
七窪北300m~七窪
七窪~湯野浜海岸北
湯野浜海岸北~宮沢
小 計
計 (集落)
400
400
300
200
1,100
400
2,700
300
宮野浦(最上川)~宮野浦海岸
700
1,000
300
200
500
500
8,800
2,100
2,100
5,500
5,500
8,400
(集落)
900
200
800
7,600
300
800
4,100
3,000
700
1,000
2,100
2,100
5,500
5,500
1,100
2,700
300
300
3,100
7,900
(集落)
300
0
1,300
3,100
3,500
1,400
3,000
1,300
600
1,600
1,100
300
1,400
8,500 5,700
33,300 21,200
(護岸等)
400
500
8,400
8,500
(護岸等)
500
600
500
(駐車場)
(集落)
1,600
1,100
300
1,400
0
200
3,800
11,400
1,100
5,500
1,400
5,100
1,700
2,800
11,900
備考1:Aブロックは遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川、Bブロックは日向川~酒田市宮海(酒田共同
火力)、Cブロックは酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川、Dブロックは酒田市宮野浦(最上川)~
赤川、Eブロックは赤川~鶴岡市湯野浜の区間である。
備考2:草地とはアメリカンビーチグラス以外の植物による草地をいう。草地混在とは、草地とアメリカ
ンビーチグラスが混在しているものをいう。アメリカンビーチグラス等とは、アメリカンビーチグラス、又はクロマツ植
栽地、又はアキグミ植栽地、又はこれらの混合地のことをいう。
62
表-3 動植物の生息状況等から見た海岸砂丘地の自然環境の現状評価
汀線~前砂丘
人工構
造物
侵食
×
○
△
△
×
×
×
△
×
△
△
-
×
△
△
○
×
×
○
○
△
○
△
○
△
△
×
○
×
×
Aブロック
a地区
b地区
c地区
d地区
Bブロック
Cブロック
Dブロック
a地区
b地区
c地区
Eブロック
a地区
b地区
c地区
ヤマトマダ
海浜植物
ラバッタ
前砂丘~クロマツ林
評点
評点
自動車
アナマスミレ ヒメイズイ
の進入
評点計
イソコモリ
グモ
小計
自然草地
イソスミレ
×
×
○
○
×
-
×
×
△
×
×
×
0
11
14
16
3
0
○
○
○
○
×
-
×
△
×
○
×
-
×
×
×
×
×
-
×
○
×
○
×
-
×
×
×
△
×
-
5
13
5
18
0
0
5
24
19
34
3
0
○
△
○
○
○
○
×
△
○
20
19
23
○
×
○
○
×
×
×
×
×
×
×
○
×
×
△
10
0
13
30
19
36
○
×
×
○
×
×
△
×
×
21
3
0
○
○
×
○
○
×
×
○
×
×
×
×
△
△
×
13
18
0
34
21
0
小計
備考1:Aブロックは遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川、Bブロックは日向川~酒田市宮海(酒田共同火力)、Cブ
ロックは酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川、Dブロックは酒田市宮野浦(最上川)~赤川、Eブロックは赤川~
鶴岡市湯野浜の区間である。
備考2:西浜(吹浦漁港~西浜入口)は、海浜植物帯が掘削されて駐車場等になっているため、侵食は×とする。
備考3:現状が十分把握できていない「-」の場合は、0点とした。
備考4:「自動車の進入」は、海浜植物帯と草地の状況を、一括して前砂丘~クロマツ林の区分に集計した。
海岸砂丘地全体
Eブロック
Dブロック
Aブロック
0%
20%
40%
60%
80%
100%
人工構造物あり
図-1 自然海岸の占める割合
人工構造物なし
備考1:海岸総延長に対する割合である。
海岸砂丘地全体
Eブロック
Dブロック
Aブロック
0%
20%
40%
60%
80%
100%
海浜植物帯なし
図-2 海浜植物帯がある海岸の占める割合
備考1:海岸総延長に対する割合である。
海浜植物帯あり
63
箇 所 数
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
ハマニガナ
ハマヒルガオ
コウボウムギ
ハマボウフウ
ウンラン
メヒシバ
オニハマダイコン
ケカモノハシ
オニシバ
コウボウシバ
ハマニンニク
シロヨモギ
スナビキソウ
オカヒジキ
図-3 海浜植物が見られた調査地の箇所数
備考1:調査箇所21箇所のデータである。
ハマニガナ
ハマヒルガオ
コウボウムギ
海岸砂丘地全体
ハマボウフウ
ウンラン
メヒシバ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
オニハマダイコン
コウボウシバ
図-4 庄内海岸砂丘地で見られる海浜植物の種類とその割合
ケカモノハシ
オニシバ
ハマニンニク
備考1:Aブロックは遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川、Bブロックは日向川~酒田市宮
海(酒田共同火力)、Cブロックは酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川、Dブロックは
酒田市宮野浦(最上川)~赤川、Eブロックは赤川~鶴岡市湯野浜の区間である。
備考2:調査箇所21箇所のデータである。
64
シロヨモギ
スナビキソウ
オカヒジキ
海岸砂丘地全体
Eブロック
Dブロック
Aブロック
0%
20%
40%
60%
80%
100%
草 地
草地混在
アメリカンビーチグラス等
図-5 海岸砂丘地の前砂丘背面における草地等の占める割合
備考1:各項目の海岸線延長の合計が、各区間における集落等を除く海岸線総延長に占める割
合である。
備考2:草地とはアメリカンビーチグラス以外の植物による草地をいう。草地混在とは、草地とアメ
リカンビーチグラスが混在しているものをいう。アメリカンビーチグラス等とは、アメリカンビーチグラス、又はクロ
マツ植栽地、又はアキグミ植栽地、又はこれらが混在する場合をいう。
備考3:Aブロックは遊佐町西浜(吹浦漁港)~日向川、Bブロックは日向川~酒田市宮海(酒田共
同火力)、Cブロックは酒田市宮海(酒田共同火力)~最上川、Dブロックは酒田市宮野浦(最上
川)~赤川、Eブロックは赤川~鶴岡市湯野浜の区間である。
箇 所 数
0
2
4
6
8
10
12
アキグミ
アレチマツヨイグサ
ススキ
ヨモギ
カワラヨモギ
ヒメスイバ
ハマヒルガオ
アキノノゲシ
ハマナス
オオアレチノギク
コウボウムギ
スズメノヤリ
オニシバ
ハマハタザオ
チガヤ
ハマニンニク
ヤマアワ
アオツヅラフジ
カタバミ
ウンラン
アキノキリンソウ
コウボウシバ
ハマエンドウ
ケカモノハシ
ブタナ
メヒシバ
アナマスミレ
ハマゴウ
クロマツ
センニンソウ
ハマボウフウ
カワラマツバ
イソスミレ
アメリカセンダングサ
オニハマダイコン
キンエノコロ
カシワ
イタチハギ
ナワシロイチゴ
コウゾリナ
ナミキソウ
オオヤマノフスマ
ミチノクホンモンジスゲ
オオウシノケグサ
ガガイモ
図-6 植物種が見られた調査地の箇所数(前砂丘~クロマツ林の草地)
備考1:調査箇所15箇所のデータである。
65
14
16
箇 所 数
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
ハマニガナ
ハマヒルガオ
コウボウムギ
ハマボウフウ
ウンラン
メヒシバ
コウボウシバ
オニハマダイコン
オニシバ
シロヨモギ
ハマニンニク
オカヒジキ
ケカモノハシ
図-7 海浜植物がヤマトマダラバッタ生息地で見られた箇所数
備考1:調査箇所16箇所のデータである。
ハマニガナ
ハマヒルガオ
生息地合計
コウボウムギ
ハマボウフウ
ウンラン
メヒシバ
非生息地合計
コウボウシバ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
オニハマダイコン
シロヨモギ
図-8 ヤマトマダラバッタ生息地で見られた海浜植物の割合
オニシバ
ハマニンニク
備考:生息地合計は、ヤマトマダラバッタの生息を確認した26箇所のうち16箇所、非生息地は5箇
所のデータである。
オカヒジキ
ケカモノハシ
スナビキソウ
66
7
6
調査地点数
5
4
3
2
1
0
0~10
10~20
20~30
30~40
40~50
50~60
植被率 %
図-9 ヤマトマダラバッタ生息地における海浜植物の植被率分布
備考:調査時の植被率に幅がある時は、その平均値を使用した。
箇 所 数
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
コウボウムギ
ハマボウフウ
ウンラン
ハマヒルガオ
ハマニガナ
メヒシバ
カワラヨモギ
アメリカンビーチグラス
ケカモノハシ
図-10 海浜植物がイソコモリグモ生息地で見られた箇所数
備考1:調査箇所23箇所のデータである。
コウボウムギ
ハマボウフウ
ウンラン
ハマヒルガオ
ハマニガナ
メヒシバ
カワラヨモギ
アメリカンビーチグラス
ケカモノハシ
生息地全体
Eブロック
Dブロック
Aブロック
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図-11 イソコモリグモ生息地で見られた海浜植物の割合
備考1:調査箇所23箇所のデータである。
67
20
18
16
巣穴の数
14
12
10
8
6
4
2
10
0
90
90
~
80
~
80
70
~
60
~
70
60
50
~
40
~
50
40
30
~
20
~
30
20
10
~
0~
10
0
植 被 率 %
図-12 イソコモリグモの巣穴がある地点の海浜植物の植被率分布
平均植被率 %
箇 所 数
0
2
4
6
8
10
12
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
イソスミレ
カワラヨモギ
カタバミ
ハマナス
ハマヒルガオ
コウボウムギ
アメリカンビーチグラス
ヨモギ
ハマゴウ
ケカモノハシ
オニシバ
コウボウシバ
ヒメスイバ
オオウシノケグサ
ススキ
ハマニンニク
ブタナ
エビヅル
ハマボウフウ
スズメノヤリ
アオツヅラフジ
ハマハタザオ
アキノキリンソウ
オオアレチノギク
ノイバラ
ツルウメモドキ
ナミキソウ
チガヤ
ナワシロイチゴ
図-13 植物種がイソスミレ生育地に見られた箇所数
備考1:調査箇所11箇所のデータである。
図-14 イソスミレ生育地に見られた植物の平均植被率
備考1:調査箇所11箇所のデータである。
備考2:平均植被率%=
各調査箇所の植被率合計/調査箇所数
68
西浜の北側(模式図)
アメリカンビーチグラス
草地
クロマツ林
駐車場
前砂丘
西浜の南側(模式図)
草地
海浜植物帯
アメリカンビーチグラス
クロマツ林
砂地
前砂丘
西浜から南1000m地点
草地
アメリカンビーチグラス
クロマツ林
砂地
侵食
前砂丘
西浜から南1800m地点
草地
海浜植物帯
アメリカンビーチグラス
クロマツ林
砂地
前砂丘
遊佐町十里塚から南300m地点
海浜植物帯
アメリカンビーチグラス
草地が混在
クロマツ林
砂地
20m
前砂丘
0
(参考) 海岸砂丘地横断図
69
20m
青塚から北800m地点
20m
海浜植物帯 アメリカンビーチグラス 草地が混在
0
クロマツ林
砂地
20m
前砂丘
白木(模式図)
草地
海浜植物帯
車
道 クロマツ林
アメリカンビーチグラス
砂地
前砂丘
酒田市十里塚から北600m地点
アキグミ
アメリカンビーチグラス
クロマツ植林
車
道 クロマツ林
砂地
部分的
に侵食
前砂丘
酒田市十里塚から南300m地点
アメリカンビーチグラス
草地
クロマツ植林
アキグミ
海浜植物帯
砂地
車
道
クロマツ林
前砂丘
酒田市十里塚から南1400m地点
アメリカンビーチグラス
草地
海浜植物帯
砂地
前砂丘
(参考) 海岸砂丘地横断図
70
クロマツ植林
草地
車
道 クロマツ林
浜中から北700m地点
草地
アメリカンビーチグラス
砂地
車
道
クロマツ林
前砂丘
七窪作業路起点から北600m地点
アメリカンビーチグラス
草地が混在
車
道 クロマツ林
侵食
砂地
前砂丘
七窪作業路起点の北側
アメリカンビーチグラス
草地
車
道
砂地
クロマツ林
侵食
前砂丘
七窪作業路起点の南側
アメリカンビーチグラス
クロマツ林
砂地
侵食
前砂丘
20m
0
(参考) 海岸砂丘地横断図
71
20m
ヒョウタンゴミムシ
ヤマトマダラバッタ
イソコモリグモ
イソスミレ
アナマスミレ
ヒメイズイ
西浜海岸北部(駐車場)
西浜の南
72
西浜南 1,800m
遊佐町十里塚海岸
遊佐町十里塚海岸の南
遊佐町十里塚の南 1,700m
遊佐町十里塚南 2,400m
青塚海岸北部
青塚海岸南部
宮海(風車と護岸)
73
宮野浦海岸
酒田市十里塚北 2,400m
酒田市十里塚北 1,600m
十里塚北 1,100m
酒田市十里塚南 1,300m
浜中北 1,200m
浜中海岸の北 600m(駐車場)
浜中海岸の南部
74
浜中海岸の南
湯野浜海岸の北部
遊佐町西浜入口の北側
遊佐町西浜入口の南側
遊佐町西浜の南 1,000m
遊佐町十里塚南 1,000m
遊佐町十里塚南 2,000m
遊佐町十里塚南 3,300m
75
酒田市宮野浦南
酒田市十里塚北 300m
酒田市十里塚南 1,400m
酒田市浜中北 700m
七窪の北 1,400m
七窪作業路入口から南方
ヤマトマダラバッタ生息地
イソコモグリグモ生息地
76
消波ブロック背面のイソコモグリグモ生息地
アメリカンビーチグラスに埋もれるイソスミレ
自動車の進入防止柵と看板(林野庁設置)
自動車の進入跡(宮野浦)
自動車の進入跡(宮野浦北部)
自動車の進入跡(遊佐町十里塚南部)
漂着ゴミの処理(酒田市十里塚の南)
ゴミ運搬の跡
77
Fly UP