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「法と経済」からみた中央銀行
―東京大学法学部「特別講義・金融法」資料―
日本銀行総裁
白川 方明
2009年10月21日
1
構成
1.はじめに
2.グローバルな金融危機の経験
3.日本銀行の行った措置
4.中央銀行の役割
5.法律の果たす役割
6.中央銀行で仕事をするということ
7.おわりに
2
1.はじめに
3
(図表1)
様々なお金の概念
─ 2009年9月時点
日本銀行券・貨幣
(72兆円)
中央銀行通貨、
ベースマネー
日本銀行当座預金
(12兆円)
預金全体
(985兆円)
マネーストック※(M3)
普通預金
当座預金など
(407兆円)
定期性預金など
(577兆円)
(参考) 日本の名目GDP 498兆円 (2008年度)
※マネーストックとは、個人や企業などが保有する現金や預金の残高のこと。
4
(出所) 日本銀行
2.グローバルな金融危機の経験
5
(図表2)
主要国の実質GDPの推移
104
リーマン・ブラザーズ破綻(08/9月)
(08/7-9月=100)
102
100
98
96
日本
米国
94
ユーロ圏
92
90
0
4
年
0
5
0
6
0
7
0
8
0 9
6
(出所) 内閣府、米国商務省、EUROSTAT
(図表3)
証券化商品の構造
―住宅ローンを裏付資産とした証券化商品を例に―
(住宅ローン)
優先劣後
構造
個人
高
(証券化商品)
証券A
投資家
証券B
投資家
証券C
投資家
証券D
投資家
個人
証券化
個人
・
・
・
個人
金融機関
債務弁済の
優先順位
低
7
(図表4)
短期金融市場
ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)と短期国債金利(3か月物)の差
(「短期金融市場で金融機関間で資金を融通する際の金利」と「リスクのない金利」の差)
BNPパリバ傘下ファンドを凍結
(パリバ・ショック)
(%)
リーマン・ブラザーズ破綻
5.0
4.5
日本
4.0
米国
ユーロ圏
3.5
短期金融市場における
緊張感が強い
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
1
2007年
4
7
10
1
2008年
4
7
10
1
2009年
4
7
10
8
(出所) Bloomberg
(図表5)
コマーシャル・ペーパー(CP)市場の動向
CPレートの対短期国債スプレッド(a-1格)
4
パリバ・ショック
(%)
3
リーマン・ブラザーズ破綻
日本
米国
2
1
0
1 月
2007年
4
7
10
1
4
2008年
7
10
1
4
7
2009年
9
(出所) Bloomberg、日本銀行
(図表6)
証券化市場の動向
米国における民間証券化商品の残高
米国の主要証券化商品の価格(A格)
パリバ・ショック
リーマン・ブラザーズ破綻
(当初価格=100)
120
パリバ・ショック
5
リーマン・ブラザーズ破綻
(兆ドル)
サブプライム住宅ローン関連商品
商業用不動産担保ローン関連商品
100
4
80
3
60
2
40
その他の証券化商品
不動産担保ローンを裏付け資産とした
証券化商品(MBS)
1
20
0
1月 4
2007年
7
10
1
4
2008年
7
10
1
4
2009年
7
0
0
6
年
0
7
0
8
0 9
10
(出所) JPモルガン、FRB
3.日本銀行の行った措置
 政策金利の引き下げ
 潤沢な資金の供給
 機能の低下した資本市場への支援
 決済システム上のリスク削減策
11
(図表7)
政策金利の引き下げ
6
リーマン・ブラザーズ破綻
パリバ・ショック
(%)
5
(%)
6
5
日本
米国
4
4
ユーロ圏
3
3
2
2
1
1
0
0
1月
2007年
4
7
10
1
2008年
4
7
10
1
4
7
10
2009年
12
(出所) 各中央銀行
(図表8)
潤沢な資金の供給(外貨資金の供給)
< 日本銀行によるドル資金供給オペレーションの概念図 >
円
ニューヨーク
連邦準備銀行
ドル *
日本銀行
邦銀、外銀、証券会社等
邦銀、外銀、証券等
ドル
*金融機関が日本銀行に差し入れた担保
(日本国債等)の範囲内でドル資金を供給
< 主要国中央銀行によるドル資金供給額の推移>
700
(10億ドル)
リーマン・ブラザーズ破綻
日本銀行がドル資金供給オペを導入
600
500
日本銀行以外の中央銀行実施分
400
日本銀行実施分
300
200
100
0
1月 2
2008年
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
2009年
3
4
5
6
7
8
9
10
13
(出所) 日本銀行、FRB
(図表9)
日本銀行が受け入れている担保
(1)円建て
(兆円)
08/9月末
国債
09/9月末
変化幅
53.0
67.9
+ 15.0
地方債・政府保証債・財投機関債等
5.3
5.8
+ 0.6
社債
0.7
1.5
+ 0.9
コマーシャルペーパー
2.7
3.0
+ 0.3
資産担保証券等
0.0
0.3
+ 0.3
一般手形
0.1
0.7
+ 0.6
企業向け証書貸付債権
0.4
5.4
+ 5.0
政府向け証書貸付債権
19.5
20.6
+ 1.1
合計
81.7
105.3
+ 23.7
(2)外貨建て
外国国債(米・英・ドイツ・フランス国債)を適格担保化(09/5月)し、
7月に受け入れ開始。
14
(出所) 日本銀行
(図表10)
CP買入れのスキーム
(1) 資金供給時点
(2) CP発行会社が破綻した場合
日 本 銀 行
日 本 銀 行
通常の
CP買現先オペ
資金供給
CP
売戻条件付
買入れ
取引先銀行
CP買入れ
CP
取引先銀行
CP
⇒取引先銀行が
CPの信用リスク
を負担
(2) CP発行会社が破綻した場合
日 本 銀 行
日 本 銀 行
資金供給
債務不履行
売戻し
取引先銀行
(1) 資金供給時点
今回導入した
代わりの担
保を差入れ
CP
債務不履行
CP
⇒日本銀行が
CPの信用リスク
を負担
買入れ
取引先銀行
15
(出所) 日本銀行
(図表11)
外国為替の「スワップ取引」
外国為替の「スワップ取引」: (例えば)ドルと円を一定期間交換する取引
¥はあるが$がない
取引開始時点
取引終了時点
銀行X
銀行X
銀行X
$
¥
銀行Y
銀行Y
円を渡し、ドルを受け取る
¥
$
銀行Y
あらかじめ約定した為替レートで
ドルを返却し、円を受け取る
Xにとっては、一定期間、円を担保にドルを調達していることと同じ効果
Yにとっては、一定期間、ドルを担保に円を調達していることと同じ効果
16
(図表12)
CLSシステムの概要(円・ドル2通貨の場合)
A銀行がB銀行に対して円を売却し、ドルを買うケース
CLS銀行
円
A行口座
ドル
(入金)
B行口座
A行口座
Credit
Credit
Dabit
B行口座
(入金)
Debit
同時決済(PVP)
ニューヨーク連邦準備銀行(ドル)
日本銀行(円)
Bank of Japan (JPY)
A行口座
CLS銀行口座
ペイイン
Federal Reserve Bank of New York (USD)
B行口座
ペイアウト
B行からのドル資金の支払い(ペイイン)が確認された後、B行
への円資金の支払い(ペイアウト)を実行
(注)CLS(Continuous Linked Settlement)
A行口座
CLS銀行口座
ペイアウト
B行口座
ペイイン
A行からの円資金の支払い(ペイイン)が確認された後、A行
へのドル資金の支払い(ペイアウト)を実行
17
(出所) 日本銀行
4.中央銀行の役割
18
(図表13)
日本銀行法 (日本銀行券関連)
(日本銀行券の発行)
第46条第1項 日本銀行は、銀行券を発行する。
第2項 前項の規定により日本銀行が発行する銀行
券は、法貨として無制限に通用する。
(参考):刑法第一六章 通貨偽造の罪
第148条第1項 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は
銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又
は三年以上の懲役に処する。
第2項 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を
行使し、又は行使の目的で人に交付し、若し
くは輸入した者も、前項と同様とする。 19
5.法律の果たす役割
 民主主義と中央銀行の独立性:公法上の論点
 中央銀行業務の工夫:私法上の論点
 金融システムの安定と国際的な法律問題
20
(図表14)
日本銀行法 (金融政策の理念・独立性、政府との関係)
(通貨及び金融の調節の理念)
第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図る
ことを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第3条第1項 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければ
ならない。
第2項 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を
国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第4条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすもので
あることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなる
よう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。 21
(図表15-1)
CP買入れの概要
1. 買入対象
• 担保適格かつa-1格相当、残存3か月以内
2. 買入額
• 買入総額の残高上限は3兆円
• 発行体別の買入残高の上限は1000億円
(ただし、買入残高が昨年7月から12月の各月末発行残高のうち最大の残高の25%
を超えた発行体は、買入対象から除外)
3. 買入方式
• 入札に際して下限利回りを設定
――
下限利回りは、残存1ヶ月以内のCPは政策金利(現在0.1%)+0.2%、1ヶ月
超3ヶ月以内のCPは政策金利+0.3%で設定。
――
これは、市場機能の回復に応じて日本銀行への売却のインセンティブが低下し
ていくようにするため。
22
(図表15-2)
CP発行金利と日本銀行によるCP買入金額
日本銀行のCP買入オペの応札状況
(億円)
8,000
CP発行金利(a-1格、3ヶ月物)
1.6
7,000
1.4
6,000
1.2
5,000
1.0
(%)
リーマン・ブラザーズ
破綻(08/9/15)
CP買入オペ開始
0.8
4,000
日本銀行による毎回の買入予定額(3,000億円)
3,000
0.6
0.4
0.4%
(CP買入の
下限利回り)
2,000
0.2
1,000
0.0
0
09/ 1月 2月
3月
(オファー日)
1
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月
3
2008年
5
7
9
11
1
3
2009年
5
7
9
11
月
23
(出所) 日本銀行
(図表16)
リーマン・ブラザーズ破綻の経験
(日本時間)
海外における対応
国内における対応
9/15 日<祝日> ・米国持株会社、英国子会社が倒産(米
海外当局・中央銀行
昼頃
Chapter11 、 英 Administration の
と密接に連携
適用申請)
午後 3 時頃
・金融庁、リーマン・ブラザーズ証券(日本法人)
に対し、資産の国内保有等を命令
新たな取引が発生して債権
債務関係が複雑化するのを
午後 9 時頃
・金融庁、同証券に対し、業務停止命令
回避
─ 顧客預り資産の返還や未決済の証券売買等の決済の
履行を除く。
9/16 日早朝
・同証券、民事再生手続の開始・保全処分を申立て
「日中破綻」を回避
既存取引の一部が保全処分
の例外として決済可能に。
9/19 日
・東京地裁、保全処分を決定
─ 顧客預り資産の返還や未決済の証券売買等の決済の
履行を除く。
→ 日本銀行、同証券との当座預金取引等を継続
・同地裁、民事再生手続の開始決定
24
6.中央銀行で仕事をするということ
 パブリックな仕事の意義
 幅広い知識の重要性
 実務の重要性
 組織で仕事をすることの意義
 変化への柔軟な対応の重要性
25
(図表17)
レポ取引と「市場型取り付け」
レポ取引
債券 (担保)
債券 購入
市場
Y
X
資金
債券の価格が下落
資金を調達
XがYに差し入れた
担保価値が下落
「市場型
取り付け」
Xが手持ちの国債を
売却して資金調達
Xは担保価値変化分の
資金を手当てする必要
26
7.おわりに
27
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