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奄 美 群 島 を 世 界 自 然 遺 産 へ
2006 年 発行 発行者 鹿児島県環境生活部環境保護課 このパンフレットは再生紙(古紙含有率 100%)を使用しています。 鹿児島県鹿児島市鴨池新町 10 番 1 号 TEL:099-286-2613 FAX:099-286-5546 http : //www.pref.kagoshima.jp/home/kanhogoka/kira/e5010507.htm 奄美群島広域事務組合 鹿児島県奄美市名瀬永田町永田町 17 番地 1 号 奄美自治会館 2 階 TEL:0997-52-6032 FAX:0997-52-9618 http://www.amami.or.jp/kouiki 企画・制作(財) 自然環境研究センター 制作協力 (株) アートポスト、(有)エアポート T V ネットワークジャパン 写真提供 石井信夫、岩井紀子、高橋弘、土屋公幸、浜田太、前田芳之、牧野浩典、米沢俊彦、 (財)自然環境研究センター Amami Islands 世奄 界美 自群 然島 遺を 産 へ 世界遺産 と は? 利尻・礼文・サロベツ原野 阿寒・屈斜路・摩周 大雪山 日高山脈 早池峰山 世界遺産とは、1972 年に採択された「世界遺産条約」 に基づいて、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「世界 世界自然遺産の登録基準 白神山地 (1993 年登録) 世界自然遺産は、下記の 4 つの登録基準の 1 つ以上に えて人類が共有し、次世代に受け継いでいくべき価値をも 当てはまる世界的に重要な価値をもっていることが必要で つ遺産を対象としています。 す。 世界遺産には、自然遺産、文化遺産、複合遺産、の 3 種 さらに、評価された自然の価値について、①十分な規模 阿蘇山 類があります。2006 年 7 月現在、世界自然遺産 162 件、 と必要な要素をもっていること、②法律や制度によって長 霧島山 世界文化遺産 644 件、複合遺産 24 件が登録されています。 期的で適切な保護が十分に保証されていること、③すでに 環境省と林野庁は、今後新たに世界自然遺産へ推薦可能 奥利根・奥只見・奥日光 南アルプス 富士山 北アルプス 山陰海岸 伊豆七島 しかし、「奄美・琉球諸島」は、絶滅危惧種の生息地など、 重要地域の一部は未だ十分に保護されていないことが指摘 されています。 奄美・琉球諸島* 保存・鑑賞・学術上、重要な世界的価値 をもつ地形、生態系、自然環境などを有 する地域 世界自然遺産の4つの登録基準 知床の場合 ●自然景観 世界で最も深い渓谷、最大の滝など、ひときわ優れた自然 文化遺産 現象や自然美をもつ地域 歴史・芸術・学術上、重要な世界的価値 をもつ記念物、建築物群、遺跡など ●地形・地質 地球の歴史や過去の生命の証拠となる、重要な地形・地質、 化石などがよく現れている地域 国立公園などによる保護措置 ●生態系 複合遺産 現在も進行中の生物の進化や動植物群集の見本となるよう 自然遺産と文化遺産の両方の要件を満た しているもの な、極めて特徴のある生態系を有する地域 ●生物多様性 世界的に絶滅のおそれのある野生生物の生息地や、生物多 様性の保全上で最も重要な生物が生息・生育する地域 世界の代表的な自然遺産地域 世界遺産の価値の保全対策 現在登録されている 162 件の自然遺産地域には、次のようなものがあります。 国立公園などの地域指定が必要 検討会では候補地の名称は「琉球諸島」とされています。 「琉球諸島」は多くの場合、南西諸島の沖縄県部分を示す名称として用いられている ことから、鹿児島県では、 「奄美・琉球諸島」といった名称とするよう要望しています。 * 世界遺産登録の前提として、数年以内に推薦す 世界遺産登録までの流れ る物件の「暫定リスト」を、政府が UNESCO の 世界遺産委員会に提出する必要があります。 知床国立公園・遠音別岳原生自然環 境保全地域・知床森林生態系保護地 域など保護地域は既に指定済み 前提となる世界遺産候補地で の保全措置 検討会では、全国の国立公園など自然の価値が高い地域 録基準を満たす可能性が高い地域として選定されました。 小笠原諸島 自然遺産 関する検討会」を、平成 15 年に開催しました。 笠原諸島」 、 「奄美・琉球諸島」の 3 地域が、世界遺産の登 祖母山・傾山・大崩山 九州中央山地と周辺山地 独自性が明らかであること、が必要です。 な地域の有無を学術的に検討する「世界自然遺産候補地に の中から、19 箇所を絞り込み、その中から「知床」、 「小 屋久島(1993 年登録) 登録されている類似の自然遺産地域と比較して、優位性・ 世界自然遺産候補地検討会の概要 三陸海岸 飯豊・朝日連峰 遺産リスト」に登録された遺産のことで、国家や民族を超 世 界 遺 産 知床(2005年登録) 2004.1 へ世 の界 推遺 薦産 書委 の員 提会 出 遺暫 産定 委リ 員ス 会ト への の世 提界 出 推薦の 1 年前まで 2004.7 現I 地U 調C 査N に よ る 推薦年の 1 月 推薦の年内 世界遺産の推薦にあたっては、推薦地域の価値 2005.7 審世 査界 遺 産 委 員 会 の や保護管理体制を記述した「推薦書」を、政府か の世 登界 録遺 産 リ ス ト へ 翌年の 7 月 ら世界遺産委員会へ提出します。推薦書が受理さ れると、国際自然保護連合(IUCN)が、推薦地 域の価値や保護管理状況などを現地調査します。 これらを元に、翌年 7 月に開催される世界遺産 委員会で審査されます。なお、世界自然遺産への 推薦地域は、国の制度に基づく保護地域とされる ことが必要です。先に登録された知床は、国立公 園などが既に指定されており、推薦候補地に選ば れた直後から推薦手続きが始まりました。保護地 域が少ない奄美群島では、新たな保護地域の指定 奄美群島の場合 など推薦の条件を整えることが必要です。 国内の自然遺産地域 日本国内では、3 つの世界自然遺産地域が登録されています。 屋 久 島 ユングフラウ・アレッチ・ビェッチホルン スイス キリマンジャロ国立公園 タンザニア サガルマータ国立公園 ネパール ンゴロンゴロ保全地域 タンザニア ハー・ロン湾 ベトナム ウルル - カタ・ジュタ国立公園 オーストラリア ウジュン・クロン国立公園 インドネシア 白 神 山 地 屋久島は、世界的に特異な樹 白神山地では、純度の高いす 齢数千年のヤクスギをはじ ぐれた原生状態のブナ林が保 め、多くの固有種や絶滅のお 存されています。動植物相の それのある動植物などを含む 多様性で世界的に特異な森林 生物相を有するとともに、海 であり、氷河期以降の新しい 岸部から亜高山帯に及ぶ植生 ブナ林の東アジアにおける代 の典型的な垂直分布がみられ 表的なものです。また、さま るなど、特異な生態系とすぐ ざまな群落型や更新段階が見 れた自然景観を有している地 られ、進行中の生態学的過程 域です。 の顕著な見本となっています。 グレート・バリア・リーフ オーストラリア 知 床 火山活動で形成された知床半島には、海岸部から高 山帯に至るまで原生的な自然植生が連続して残され、 高密度に生息するヒグマやシマフクロウなどの国際 的な希少種を含む多様な生態系を形成しています。 タスマニア原生地域 オーストラリア グランド・キャニオン国立公園 アメリカ ガラパゴス諸島 エクアドル イグアス国立公園 ブラジル/アルゼンチン また、冬期の流氷は、知床半島の海洋・陸域生態系 の両面に大きな影響をおよぼすことも特徴です。 奄 美・琉 球 諸 島 の 自 然 の 世 界 的 な価値 奄 美群島 の 自 然 世 界 遺 産 地 域になったら 地形・地質 奄美・琉球諸島は、かつては、揚子江の河口であったり、台湾からの半島の一部で 奄美・琉球諸島は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレート あったり、大陸や日本本土とつながったり離れたりしてきました。そのため、他の地 が潜り込むところにできた琉球海溝に沿って、奄美群島のような非火 山性の島々、トカラ列島のような火山性の島々から成る 2 列の島弧と、 域では既に絶滅した種が残っています。また、島のでき方の違いにより、山が多く河 奄美大島 既に世界自然遺産に登録されている、屋久島や白神山地、知床では、遺産地域の価値を保全管理・ Amami Oshima (Is.) 奄美大島と沖縄島のみに分布する固 有亜種で、住用湾と焼内湾に注ぐ河 川を中心に生息しています。本土に 生息するアユとは遺伝的に大きく異 なっており、学術的に貴重です。 川が流れる島・起伏が少なく地下水系が発達した島・これらが混在する島と地形・植 大陸との間に沖縄トラフと呼ばれる背弧海盆が形成された、「島弧−海 生・そこに見られる生き物も多様です。気候では、温帯と亜熱帯が接する位置にある トカラ列島 溝系地形」の典型的な例で、その地形形成活動は現在も続いています。 ため、両方の生き物が見られ、特に熱帯性の生き物は奄美群島から北では見ることが 生物多様性 出来ません。この、多様で独特な奄美群島の自然の一部を、ご紹介しましょう。 奄美・琉球諸島は、「IUCN レッドリスト」に挙げられた、世界的に IUCN レッドリスト掲載種 環境省レッドデータブック掲載種 国指定天然記念物 国内希少野生動植物種 もに、次のような変化が起こっています。 ●遺産地域の自然を体験するため、観光産業を中心とした地域の活性化が進んでいます。 ● U ターン、I ターンによる人口の流入がみられます。 ●世界自然遺産に関する研修や視察などの地域間交流の活性化が進んでいます。 ●学校や地域で、環境学習や環境保全に関連する行事が増えています。 ●廃棄物処理など、身近な生活環境の保全についても取り組みが進んでいます。 絶滅のおそれのある種が多数生息し、多くの固有種や種の多様性に富 むサンゴ礁など、東南アジア・東アジア地域の生物多様性を保全する ユーラシアプレート 普及啓発するために、人員や施設の充実が図られています。また、登録による知名度の上昇とと リュウキュウアユ 一方、外部からの注目が高まり、観光客が増加することは、自然環境の過剰な利用や、地域社 喜界島 上で重要性が高い地域です。さらに、シベリア−オーストラリアを往 復する渡り鳥や回遊するクジラ類などの移動の中継地、北西太平洋に Kikaijima (Is.) 奄美群島 おける海鳥の重要な繁殖地やウミガメ類の産卵地として、地球上を広 く移動する生き物の重要な生活圏となっています。 生態系 会の急激な変化をもたらします。 このような変化に対して、すでに世界遺産に登録されている地域では、 関係者間で協議を重ねながら、保全管理に取り組んでいます。 世界自然遺産への推薦・登録によって、奄美群島が今 奄美・琉球諸島は、大陸との分離・結合を繰り返した地史に よって隔離された島々にとり残された生き物の、種分化の過程 沖縄諸島 を明白に示しています。世界的にも稀な亜熱帯性降雨林があり、 フィリピン海プレート 山地林からマングローブ林、海岸植生などが相互に関連する生 大東諸島 態系を良く示しています。海域のサンゴ礁は分布域の北限に位 置し、造礁サンゴはおよそ 415 種と多様性に富んでいます。 自然景観 先島諸島 奄美・琉球諸島は、温帯林の特徴を残す山地林から河口域のマ ングローブ林、熱帯性植物からなる海岸植生、砂浜からサンゴ礁 後どのような地域を目指していくべきか、群島内で活 オビトカゲモドキ トクノシマトゲネズミ 徳之島固有の哺乳類で、2006 年に新種 として記載されました。奄美大島の固 有種アマミトゲネズミと似ていますが、 体がやや大きく頭骨の形態が異なりま す。 徳之島の固有亜種で、湿潤な常緑広葉 樹林にすんでいます。数年前までは乱 獲されていましたが、現在は県の指定 希少野生動植物及び天然記念物として 保護されています。 加計呂麻島 Kakeroma Is. ルリカケス 奄美大島の固有種で、小さな群れで生活します。ヒマラヤ に分布するインドカケスに近縁とされます。森林回復に伴 い、生息範囲が広がっているとの見方もあります。 与路島 Yorojima (Is.) 百之台 喜界島は世界有数の速さで土地が隆起しており、サン ゴ礁が持ち上げられてできた島です。百之台は十数万 年前には海面にあったと見なされています。 登 録 に 向 けた 取 り 組 み 請島 Ukejima (Is.) オットンガエル 奄美大島と加計呂麻島に分布し、 夜間、山地の沢近くで見られま す。普通、カエルの前肢の指は 4 本ですが、オットンガエルには 5 本あります。人の咳払いのよう な声で鳴きます。 まで変化のある多様な景観美を示し、海岸から海中への変化のコ ントラストが優れています。また、サンゴ礁が生成した琉球石灰 岩が独特な風景を形成しています。 アマミマルバネクワガタ 鍾乳洞 奄 美 群 島 の 保 護 地 域 琉球石灰岩が水に溶かされてできた 洞窟で、地下の河川に沿って見られ ます。沖永良部島に多く、徳之島、 与論島にも見られます。希少なコウ モリが生息しています。 現在、奄美群島には、奄美群島国定公園(陸域 7,861ha、海域 17,106ha)が指定されています。 現行の保護地域は海域中心のもので、アマミノクロウサギの生息地など内陸部では保護地 域がほとんど設定されていません。 奄美大島、徳之島に生息しています。 請島に生息するのは近縁のウケジママ ルバネクワガタです。最近は、乱獲など により、数が減ってきています。 発な議論が求められています。 徳之島 奄美大島では、島の生態系に大きな影響を与える外来種のマングースの 根絶を目指して、環境省奄美野生生物保護センターが防除事業に取り組ん でいます。平成 17 年度からは専従スタッフ「奄美マングースバスターズ」 を結成し、捕獲作業や島民への普及啓発活動、新しい捕獲技術の調査研究 奄美マングース バスターズの トレードマーク などを行なっています。 また、平成 18 年 7 月に、関係行政機関で「奄美希少野生生物保護対策 Tokunoshima (Is.) 協議会」を設置し、希少野生生物の保護に必要な対策の調整・協議を始め ウケユリ アマミノクロウサギ 交通事故対策道路標識 ました。アマミノクロウサギの交通事故防止対策などを協議しています。 請島と奄美大島のごく一部にのみ分 布する固有種のユリです。欧米で園 芸品種として改良された多くのユリ の親として用いられたことでも知ら れています。古い時代に隔離された 島の環境下で遺存的に生き残ってき たものと考えられています。 奄美大島 1. 希少野生生物をまもる 2. 奄美の自然を学ぶ 子どもたちが奄美の自然を学ぶ教材として、「奄美群島の自然 生命あ ふれる島」 (中学生用、小学生用)を作成しました。この教材は、群島内 の小・中学校に配布され、総合学習の時間などで活用されています。 また、学校、保護者、地域の NPO などが連携しながら、子供たちへの環 沖永良部島 国定公園・地種区分 喜界島 沖永良部島 与論島 0 5 10km 特別保護地区 第 1 種特別地域 第 2 種特別地域 第 3 種特別地域 普通地域 海中公園地区 主要道路 河川 アマミヤマシギ 与論島 Yoron Is. らに、奄美群島の自然の価値や、世界自然遺産に登録された地域の取り組 奄美大島にのみ分布する固有亜種で す。谷あいの壮齢林で見られますが、 詳しい生態については不明な点も多 く、奄美野鳥の会が 94 年から継続 した調査を行っています。 Okinoerabu Is. 徳之島 境教育を進めていくため、シンポジウム開催などに取り組んでいます。さ オオトラツグミ サンゴ礁 温暖な奄美群島の浅い海域では、そこにすむイシサンゴ類 の骨格が徐々に積み重なり、サンゴ礁が発達します。与論 島や沖永良部島、喜界島ではよく発達しています。 奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、 徳之島で繁殖する日本固有種です。 夜行性で地上で採食し、地上に営巣 します。現在の生息個体数は不明で すが、奄美大島においては 1980 年代 までに個体数が急激に減少したとい われています。 み事例などを島民はじめ広く県民にも知っていただくため、各地で「公開 教材「奄美群島の自然∼生命あふれる島」 講座」を開催しています。 3. 奄美の自然を伝える アマミノクロウサギ 奄美群島だけに分布する原始的なウサギで、沢沿い の山地自然林などに生息しています。個体数は奄美 大島で 2,600 ∼ 6,200 頭、徳之島で 120 ∼ 290 頭と いわれています。 奄美群島広域事務組合では、「奄美群島全体が博物館」という考えのもと 「奄美ミュージアム構想」を策定し、貴重な奄美の自然を持続的に保全・活 用し、さらに、奄美の自然や文化を国内外に情報発信する人材を養成する ため、「人材育成講座」を各島で開催しています。 人材育成講座 奄 美・琉 球 諸 島 の 自 然 の 世 界 的 な価値 地形・地質 既に世界自然遺産に登録されている、屋久島や白神山地、知床では、遺産地域の価値を保全管理・ 奄美・琉球諸島は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレート 普及啓発するために、人員や施設の充実が図られています。また、登録による知名度の上昇とと が潜り込むところにできた琉球海溝に沿って、奄美群島のような非火 山性の島々、トカラ列島のような火山性の島々から成る 2 列の島弧と、 もに、次のような変化が起こっています。 ●遺産地域の自然を体験するため、観光産業を中心とした地域の活性化が進んでいます。 大陸との間に沖縄トラフと呼ばれる背弧海盆が形成された、「島弧−海 ● U ターン、I ターンによる人口の流入がみられます。 トカラ列島 溝系地形」の典型的な例で、その地形形成活動は現在も続いています。 ●世界自然遺産に関する研修や視察などの地域間交流の活性化が進んでいます。 生物多様性 ユーラシアプレート 世界遺産地域になったら ●学校や地域で、環境学習や環境保全に関連する行事が増えています。 奄美・琉球諸島は、「IUCN レッドリスト」に挙げられた、世界的に ●廃棄物処理など、身近な生活環境の保全についても取り組みが進んでいます。 絶滅のおそれのある種が多数生息し、多くの固有種や種の多様性に富 むサンゴ礁など、東南アジア・東アジア地域の生物多様性を保全する 一方、外部からの注目が高まり、観光客が増加することは、自然環境の過剰な利用や、地域社 会の急激な変化をもたらします。 上で重要性が高い地域です。さらに、シベリア−オーストラリアを往 復する渡り鳥や回遊するクジラ類などの移動の中継地、北西太平洋に このような変化に対して、すでに世界遺産に登録されている地域では、 奄美群島 おける海鳥の重要な繁殖地やウミガメ類の産卵地として、地球上を広 く移動する生き物の重要な生活圏となっています。 関係者間で協議を重ねながら、保全管理に取り組んでいます。 生態系 世界自然遺産への推薦・登録によって、奄美群島が今 奄美・琉球諸島は、大陸との分離・結合を繰り返した地史に よって隔離された島々にとり残された生き物の、種分化の過程 後どのような地域を目指していくべきか、群島内で活 沖縄諸島 を明白に示しています。世界的にも稀な亜熱帯性降雨林があり、 フィリピン海プレート 山地林からマングローブ林、海岸植生などが相互に関連する生 大東諸島 態系を良く示しています。海域のサンゴ礁は分布域の北限に位 置し、造礁サンゴはおよそ 415 種と多様性に富んでいます。 登 録 に 向 けた 取 り 組 み 自然景観 先島諸島 発な議論が求められています。 奄美・琉球諸島は、温帯林の特徴を残す山地林から河口域のマ ングローブ林、熱帯性植物からなる海岸植生、砂浜からサンゴ礁 まで変化のある多様な景観美を示し、海岸から海中への変化のコ ントラストが優れています。また、サンゴ礁が生成した琉球石灰 岩が独特な風景を形成しています。 1. 希少野生生物をまもる 奄美大島では、島の生態系に大きな影響を与える外来種のマングースの 根絶を目指して、環境省奄美野生生物保護センターが防除事業に取り組ん でいます。平成 17 年度からは専従スタッフ「奄美マングースバスターズ」 を結成し、捕獲作業や島民への普及啓発活動、新しい捕獲技術の調査研究 奄美マングース バスターズの トレードマーク などを行なっています。 また、平成 18 年 7 月に、関係行政機関で「奄美希少野生生物保護対策 奄 美 群 島 の 保 護 地 域 協議会」を設置し、希少野生生物の保護に必要な対策の調整・協議を始め 現在、奄美群島には、奄美群島国定公園(陸域 7,861ha、海域 17,106ha)が指定されています。 アマミノクロウサギ 交通事故対策道路標識 ました。アマミノクロウサギの交通事故防止対策などを協議しています。 現行の保護地域は海域中心のもので、アマミノクロウサギの生息地など内陸部では保護地 域がほとんど設定されていません。 2. 奄美の自然を学ぶ 子どもたちが奄美の自然を学ぶ教材として、 「奄美群島の自然 奄美大島 生命あ ふれる島」 (中学生用、小学生用)を作成しました。この教材は、群島内 の小・中学校に配布され、総合学習の時間などで活用されています。 また、学校、保護者、地域の NPO などが連携しながら、子供たちへの環 境教育を進めていくため、シンポジウム開催などに取り組んでいます。さ らに、奄美群島の自然の価値や、世界自然遺産に登録された地域の取り組 み事例などを島民はじめ広く県民にも知っていただくため、各地で「公開 教材「奄美群島の自然∼生命あふれる島」 講座」を開催しています。 徳之島 国定公園・地種区分 喜界島 沖永良部島 与論島 0 5 10km 特別保護地区 第 1 種特別地域 第 2 種特別地域 第 3 種特別地域 普通地域 海中公園地区 主要道路 河川 3. 奄美の自然を伝える 奄美群島広域事務組合では、 「奄美群島全体が博物館」という考えのもと 「奄美ミュージアム構想」を策定し、貴重な奄美の自然を持続的に保全・活 用し、さらに、奄美の自然や文化を国内外に情報発信する人材を養成する ため、 「人材育成講座」を各島で開催しています。 人材育成講座