...

エジプト・アラブ共和国 上エジプト地域 イブラヒミア幹線用水路灌漑地区

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

エジプト・アラブ共和国 上エジプト地域 イブラヒミア幹線用水路灌漑地区
エジプト・アラブ共和国
上エジプト地域
イブラヒミア幹線用水路灌漑地区
農業・農村地域総合開発計画
プロジェクトファインディング調査報告書
平成 23 年 12 月
社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会
まえがき
社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会 (ADCA)は、平成 23 年 11 月 11 日から 11
月 26 日までの 16 日間にわたって、エジプト国の上エジプト地域における、最大の灌漑
システムであるイブラヒミア灌漑用水路地区を対象とする、農業・農村地域総合開発計
画(仮称)の案件形成を目的とする、プロジェクトファインディング調査を実施した。
エジプト国は、本年(2011 年)1 月 25 日に始まった首都タハリール広場でのデモに端を発
して、1981 年 10 月から大統領職に就くムバラク氏が、29 年間にわたる統治の舞台から
降りた。この政変劇の背景には、①貧困の増大、②地域間格差の拡大、③若者を中心と
する雇用不安、が大きな社会問題として存在することが指摘されている。
上エジプト地域は、国の第6次5ヶ年計画(2007/08 – 2011/12)でその冒頭に政府方針と
して、公共投資額の 42%を集中的に投じることが明言されているように、カイロおよび
下エジプト(デルタ地域)との地域間格差が、看過できない状況下にある。
この状況を打開するには、上エジプト地域人口(2,640 万人)の 68% (1,790 万人)が居住す
る農村部において、基幹産業である農業を柱にして、若者の雇用機会創出につながる農
業活性化を通じて、貧困農民の生計向上を実現できる事業の具体化を構想する必要があ
ることを痛感させられる。
今回の現地調査対象地域である、上エジプト中流域アシュート県、ミニア県は、国連開
発計画(UNDP)の「エジプト人間開発報告書(2008)」で、最貧5県にあげられている国内で
最も過酷な経済状況にある農業依存地域である。日本政府は、これまで上エジプト地域
の農業・灌漑事業に係る無償資金協力事業を通じて、地域農業振興に多大の支援を行っ
てきたが、今次政変劇の根底にある「貧困問題」、「雇用不安」、「地域間格差」を減少、解
消するために、さらなる技術協力、経済協力を行うに際して、本報告書が構想の一助に
なれば幸いである。
平成 23 年 12 月
ADCA 調査団長
森 博信
位置図
報告書目次
まえがき
位置図
1.調査地域概要---------------------------------------------------------------------------------------- 1
2.ダイリュート堰群改修事業(円借款)----------------------------------------------------- 3
3.イブラヒミア幹線用水路灌漑地区農業・農村地域総合開発計画(仮称) ----- 8
4.総合所見---------------------------------------------------------------------------------------------- 13
添付資料
(a) 調査団員構成----------------------------------------------------------------------------------------- 14
(b) 調査日程 ----------------------------------------------------------------------------------------------- 14
(c) 面会者一覧 -------------------------------------------------------------------------------------------- 15
(d) 資料 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 17
1.調査地域概要
(1)上エジプト地域の社会状況
「エ」国人口は、毎年約 2%の増加率であり、このまま推移すると西暦 2050 年代前半
には人口 1 億 5,000 万人に達するとの
エジプト国の県別人口と面積 (2010年)
予測がある。
国土面積がわが国の 2.7 倍に相当す
る 100 万 km2 を擁しているとは言えど
も、そのわずか 5%に相当する居住可能
地、耕作可能地に密度高く人口集中し
ているのが実態である。
Cairo
Alexandria
Port-Said
都市部 Suez
Helwan
6 October G.
Sub Total
Damietta
Dakahlia
Sharkia
上エジプト地域はデルタ地域に次い
Kalyobia
で人口が多く、全人口の 33%に相当す 下エジプト Kafr-El-Sheikh
Gharbia
る 2,560 万人が居住しており、その内
Menoufia
Behera
の 68%に相当する 1,740 万人が農村地
Ismailia
Sub Total
域に居住している。
Giza
Beni-Suef
Fayoum
国連開発計画 (UNDP)発行の「エジ
Minya
プト人間開発報告書(2008)」によると、 上エジプト Assiut
Suhag
上エジプト地域9県の内、5県が全国
Quena
Aswan
最貧県ランクの上位に登場しており、
Luxor
Sub Total
中でもアシュート県の貧困人口率が
Red Sea
ElWadi-ElGidid
61%で飛びぬけて高い率を示している。
開拓地 Matrouh
North Sinai
(下表参照)
South Sinai
Sub Total
全国 Total
人口
人口
7,126,643
4,360,295
603,787
549,337
1,827,147
2,779,225
17,246,434
1,180,931
5,336,650
5,731,138
4,542,030
2,800,274
4,259,378
3,492,819
5,066,577
1,027,822
33,437,619
3,321,805
2,466,935
2,717,681
4,471,406
3,697,729
4,005,544
3,208,868
1,256,255
484,095
25,630,318
306,679
199,601
352,231
373,752
154,927
1,387,190
77,701,561
率
9.2
5.6
0.8
0.7
2.4
3.6
22.2
1.5
6.9
7.4
5.8
3.6
5.5
4.5
6.5
1.3
43.0
4.3
3.2
3.5
5.8
4.8
5.2
4.1
1.6
0.6
33.0
0.4
0.3
0.5
0.5
0.2
1.8
100.0
面積
面積
366
2,300
1,351
9,002
7,082
8,741
28,842
910
3,716
4,911
1,124
3,748
1,948
2,499
9,826
5,067
33,749
80
10,954
6,068
32,279
25,926
11,022
10,798
62,726
2,410
162,263
119,099
440,098
166,563
27,564
31,272
784,596
1,009,450
率
0.0
0.2
0.1
0.9
0.7
0.9
2.9
0.1
0.4
0.5
0.1
0.4
0.2
0.2
1.0
0.5
3.3
0.0
1.1
0.6
3.2
2.6
1.1
1.1
6.2
0.2
16.1
11.8
43.6
16.5
2.7
3.1
77.7
100.0
カイロから約 250km 北に位置するミニア県、同様に約
400km 北に位置するアシュート県の主産業は農業であり、上エジプト県の貧困人口率
県名
貧困率(%)
農業就業人口は各々60.5%と 35.3%である。このことから
23.0
も、上エジプト地域の生計向上を図るには、同地域の農 Giza
Beni Suef
41.5
村部において、農産業を通じて貧困を軽減し、雇用を創
Fayum
28.7
出可能な、市場競争力を持った農業へ、改善を図る必要 Minya
30.9
があることが明白である。
Assuit
61.0
Suhag
47.5
農村部の生活環境に目を転じれば、電気、水道などの
Quena
39.0
社会基盤整備は進んでいるが、農村部における下水道へ
Luxor
40.9
のアクセスが可能な世帯割合は両県ともに 5%未満であ Aawan
18.4
り、排水不良、下水溝未整備に起因する農村地域の保健・
医療問題を考えると、JICA が進める人間の安全保障の理念からは、未だに対極的な位
置に止まっているといえる。
1
(2)上エジプト地域農業の基盤整備
(a) 土地資源
「エ」国第6次5ヶ年計画(2007/08-2011/12)によると、農業分野の GDP 構成比率
は、18.8%(1981/82)から 13.4%(2006/07)に後退したものの、生産量と生産性は向上した。
過去 25 ヶ年間(1981/82-2006/07)で、240 万 feddan(約 100 万 ha)の農地が開拓されたが、
これは年平均 96,000feddan(42,320ha)に相当する新規農地開拓である。一方で作付面積の
増加は、全土で 370 万 feddan に達し、年平均 148,000fedan に相当する拡大を実現して
いる。「エ」国の総耕地面積は、2004/05 年で 8,384,768feddan(約 352 万 ha)であり、
わが国の総耕地面積 467 万 ha(2006 年)の約 75%に相当している。これを人口比率から
見てみると、わが国の総人口 1 億 2,780 万人(2006 年)に対して「エ」国総人口 7,200 万
人(2006 年)との比率 56%を上回る耕作面積を擁していることになり、食料安全保障の観
点からは、食料生産基盤として、可能性を確保していることがうかがえる。
(b) 水資源
1959 年にエジプト国とスーダン国の間で締結された「ナイル協定」によると、両国に
かかわるナイル川水資源の内、アスワン地点での年間水量を 840 億 m3 とみなし、ナセ
ル湖からの蒸発・浸透量を 100 億 m3 として、残りの 740 億 m3 を、エジプト 75%、スー
ダン 25%で分配するとして、今日のエジプト国利用可能年間総水資源量 555 億 m3 が定
まった経緯がある。
年々増大を続ける人口圧力に起因する「エ」国の食料安全保障を考えると、食料増産
は、主食である小麦はもとより、メイズ、牧草(ベルシューム)
、園芸作物など、あらゆる農
作物品種において急務である。この意味から、農業生産活動の根幹である、土地資源と
水資源の確保は国家の最大の課題である。
上エジプト地域の 5 県(ギザ、ベニスエフ、ファヨーム、ミニア、アシュート)約
150 万 feddan(約 66 万 ha)の受益地へ、年間 96 億 m3 の灌漑用水をアシュート堰で取水し、
イブラヒミア幹線用水路とその配下の調整堰を通じて末端圃場に分水、配水するイブラ
ヒミア幹線用水路システムが、上エジプト地域農業を支える根幹である。わが国政府は、
平成 3 年(1991 年)に「バハルヨセフ地区灌漑整備計画調査」を開始し、以来、2010 年
までに同幹線用水路沿い4堰の改修事業に対して、無償資金協力を実施してきた。
地区の灌漑効率向上を実現することによって、農業生産性を高め、農業生産高を増大
させることが、上述の人口増大圧力に起因する食料増産需要に応えることになる。
(3)調査目的
上エジプト地域農業振興を通じて、同地域に居住しながらも、今なお貧困に窮する多
くの農家と農民の生計向上に寄与できる開発計画策定を目的として、貧困の実態とその
緩和策を策定するヒントを得るために、海外農業開発コンサルタンツ協会の補助金を受
けて、現地調査を行うものである。
2
2.ダイリュート堰群改修事業(円借款)
(1)ダイリュート堰群の歴史的背景と現状
エジプト国の灌漑農業はナイル川に依存している。19 世紀後半までは、ナイル川の
洪水期を利用した水盤灌漑(年 1 度の作付)が行われていたが、1902 年のアスワンダム完
成後に周年灌漑が可能となった。アスワンダムに引き続き、ナイル川本川にはジフタ堰
(1902 年)、アシュート堰(1902 年)、エスナ堰(1906 年)、ナガハマディ堰(1930 年)、が建
設された。
ダイリュート堰群は 1872 年、上記の灌漑開発の一環として建設されたイブラヒミア
水路を 7 つの幹線水路に分水するための施設として建設された。本堰群はナイル川利用
可能量の 20%に相当する 96 億 m3 の灌漑用水を約 60 万 ha の受益地に配水している。
ダイリュート堰群で分水される主要幹線水路であるバハルユセフ幹線水路では、4 つの
調整堰(ラフーン堰、サコーラ堰、マゾーラ堰およびダハブ堰)により受益地への配水が
行われている。
上述の堰群は老朽化が進み、順次改修がなされている。これらのうち、4 つの調整堰
については我が国の資金協力により改修された。しかし、現在においても、ダイリュー
ト堰群、ジフタ堰およびアシュート堰の改修は着手されていない。ダイリュート堰群で
は老朽化による機能低下が著しく、人力によるゲート開閉のため、その運営は非効率で
あり、受益地に対し、安定的に水を供給できていない状況である。このため、本堰群の
改修は待ったなしの状態となっている。現時点で、各堰とも F/S 調査が終了し、改修の
事業実施が計画されている。ダイリュート堰群については、エジプト政府が改修にかか
る有償資金協力を日本政府に非公式に要請し、JICA が改修事業の協力準備調査を 2009
年から 2010 年にかけて実施した。
ダイリュート堰群全景(上流側 Saheryia 堰から望む)
3
(2)ダイリュート堰群付近の地質状況
ダイリュート堰群付近の地質状況は以下の通りである。
・ダイリュート堰群付近には層厚 10m 以下でシルト層が分布している。水路付近での
層厚は薄くなるものの、連続して分布していると想定される。
・シルト層の下位には細粒砂層が層厚 30m 以上分布している。
・シルト層の N 値は 5∼30 で、深部にしたがって大きくなる傾向が認められる。既往
調査では透水試験は実施されていないが、透水性は小さいと考えられる。
・細粒砂層の N 値は 10∼50 以上で、シルト層との境界から 5m 以深では N>30 となる。
既存調査では透水試験は実施されていないが、透水性は大きいと考えられる。
・既往のボーリング調査時には地下水状況の記載がないが、砂層には被圧地下水が胚胎
している可能性が考えられる。
BH 6
Ex. Abo Gabal Reg.
BH 5
CLAY Layer
FINE SAND Layer
ELEVATION
50.00
48.00
EL 48.29 Dep.(m) Class. N Val.
1.00
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
15.00
16.00
17.00
18.00
19.00
20.00
21.00
22.00
23.00
24.00
25.00
26.00
27.00
28.00
29.00
30.00
46.00
44.00
42.00
EL 42.00
Existing Gate set Lv.
40.00
38.00
36.00
34.00
32.00
30.00
28.00
EL31.30 N value >30
(Every point)
EL28.30 N value >50
(Every point)
26.00
24.00
22.00
20.00
22
6
16
15
15
21
16
20
15
17
16
18
19
15
26
30
32
49
> 50
31
39
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
qu
kg/cm2
1.3
2.8
1.5
Foundation Lv. of the Ex. Sahelyia,
Abo Gabal Reg.
(N value appr. 20)
CLAY Layar
Silty clay, very stiff, brown
More than 30 of N val.
below line
Silty medium to fine sand, brown
FINE SAND Layer
Dep.(m) Class.
1.00
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
15.00
16.00
17.00
18.00
19.00
20.00
21.00
22.00
23.00
24.00
25.00
26.00
27.00
28.00
29.00
30.00
Bahr Yusef canal
BH 1
Dairotiah canal
EL 48.01 Dep.(m) Class. N Val. qu
44.00
42.00
EL 39.50
40.00
38.00
EL 36.50
36.00
34.00
32.00
30.00
EL32.30
N value >30
(Every point)
28.00
26.00
24.00
22.00
20.00
EL25.55
N value >50
(Every point)
1.00
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
15.00
16.00
17.00
18.00
19.00
20.00
21.00
22.00
23.00
24.00
25.00
26.00
27.00
28.00
29.00
30.00
BH3
BH4
BH1
3.4
Add. BH1
Add. BH2
BH5
BH6
Section of the
Soil profile
Location of the soil profile
CLAY Layer
FINE SAND Layer
Ibrahimia canal
BH 4
50.00
46.00
Section of the
Soil profile
BH8
BH2
3.2
3.1
3.5
Badraman canal
ELEVATION
48.00
EL 48.02
BH7
7
21
15
24
17
22
30
12
24
17
28
31
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
31
39
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
BH 3
BH 2
Ex. Bahr Yusef Reg.
N Val. qu
12
kg/cm2
10
10
10
8
14
12
16
14
14
18
18
20
19
21
28
30
45
34
35
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
kg/cm 2
3.2
2.8
2.3
3.2
>4
>4
>4
>4
Foundation Lv. of the Ex.
Bahr Yusef Reg.
(N value 19~27)
Dep.(m) Class. N Val. qu
12 kg/cm 2
1.00
6
2.00
6
3.00
10
3.2
4.00
15
2.8
5.00
16
2.3
6.00
14
3.2
7.00
19
>4
8.00
10
>4
9.00
33
>4
10.00
34
>4
11.00
27
12.00
>4
39
13.00
26
14.00
27
15.00
34
16.00
35
17.00
30
18.00
42
19.00
42
20.00
45
21.00
39
22.00
> 50
23.00
> 50
24.00
> 50
25.00
> 50
26.00
> 50
27.00
> 50
28.00
> 50
29.00
> 50
30.00
EL 49.97
Silty clay, very stiff, brown
CLAY Layar
qu
Dep.(m) Class. N Val.
7 kg/cm2
1.00
7
2.00
8
3.00
16
4.00
1.7
19
5.00
3.1
27
6.00
2.7
12
7.00
2.1
10
8.00
20
9.00
19
10.00
3.8
14
11.00
2.1
8
12.00
27
13.00
47
14.00
30
15.00
30
16.00
40
17.00
42
18.00
40
19.00
48
20.00
EL 50.37
EL 47.55 Dep.(m) Class. N Val.
Foundation Lv. of the Ex. Badraman,
Ibrahimia Reg.
(N value 30~40)
More than 30 of N val.
below line
Silty medium to fine sand, brown
FINE SAND Layer
ダイリュート堰付近の地質断面図
4
1.00
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
15.00
16.00
17.00
18.00
19.00
20.00
21.00
22.00
23.00
24.00
25.00
26.00
27.00
28.00
29.00
30.00
5
6
6
16
31
6
25
4
31
40
26
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
31
39
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
> 50
qu
kg/cm 2
1.3
2.9
1.5
(3)ダイリュート堰群周辺の状況
ダイリュート堰周辺には堰を中心として数万人規模の街が形成され、堰上が道路とな
り、主要な交通路であるとともに、道路脇には露店が並び、市民の生活に密着している。
現計画では新堰を 140m 下流側に建設する計画とされており、現堰は歴史的重要構造物
であるとも考慮し、撤去せず、残置する計画である。
ダイリュート堰の状況(交通量は多く、露店も並んでいる)
ダイリュート堰下流のバハヨゼフ水路(左)とイブラヒミア水路(右)の状況
堰の脇に積み上げられた浚渫土
(毎年冬季に水位を下げ、堰内の浚渫を行っている)
5
(4)ダイリュート堰群等の水利施設改修の必要性
ダイリュート堰群改修に際しては、詳細設計開始に当たって追加調査を実施し、わが
国の優れた基幹水利施設設計技術による、円借款事業として遂行されることを期待する
ものである。また、今後はダイリュート堰群等の幹線水利施設のみならず、幹線水路・
支線水路から末端に至る小規模水利施設を含めた包括的な灌漑システムの改修が、灌漑
改善の効果を最大限発揮するためには必要であると思われる。
各戸毎による水路からのポンプかんがいが多く認められる
水路よりやや標高が高い箇所においては、戸別で井戸(深度
30m)によるかんがいが行われている
6
(5)アシュート堰流域の聞き取り調査
アシュート堰はダイリュート堰群より先行して、改修が計画されている。当堰はダイ
リュート堰と同様に現堰を残置し、下流側に新堰を建設する計画であり、建設後の周辺
の地下水に与える影響が懸念されている。そこで、アシュート堰の地下水調査の状況に
ついて、現地の管理事務所の技術者に聞き取りを行った。この結果、以下の事項が判明
した。
・ アシュート堰の堰上げにより現在においても堰上流に存在する排水路が排水不良を
起こしており、被害が生じている。影響は上流 50km まで及び、これらの範囲に 120
箇所の地下水観測孔を配置し、手測りによる地下水観測を行っている。下流側につ
いては 15km 付近まで観測を行っている。
・ 地質状況はダイリュート堰群付近と類似しており、上位に層厚 10m 以下のシルト層
が分布し、その下位に細粒∼中粒砂層が分布している。
・ 新堰建設による地下水の影響は有限要素法による三次元浸透流解析を実施して、評
価している。
アシュート堰(現堰)の全景(上流側から望む)
7
3.イブラヒミア幹線用水路灌漑地区農業・農村地域総合開発計画
(1)基本認識
本年(2011 年)1 月 25 日に発生したデモに端を発し、29 年間政権の座にあったムバラ
ク大統領を統治の舞台から降ろさせた政変劇の、その背景にあると認識されている諸課
題が下記の事項であり、
「エ」国政府が取り組むべき解決課題である。
−貧困層の増大
−地域間格差の拡大
−食料安保の危機(主食である小麦の輸入依存、パン価格の高騰)
−雇用不安(若者の就職難)
−歯止めがかからない人口増大圧力
これらは JICA が掲げる「人間の安全保障」への取り組みそのものである。
−貧困は上エジプト地域の農村部に偏在している
−食料安保の問題は国家の危機管理の基本である
−農村地域における農業を基幹産業とした農業・農村地域総合開発を通しての
経済的基盤整備
そのためには、
−作付面積の拡大(水平拡大:耕地面積増大、作付転換奨励)
−生産性向上(垂直拡大:灌漑効率向上、品種改良、営農技術改善・普及)
−老朽化した灌漑システムの改修と新設
−統合水管理技術の導入(個別水管理から流域水管理)
−収穫後処理技術の改善
−官主導型農業政策から農民(受益者)参加型農業への転換
−農民と農村地域住民との協働社会形成へのアプローチ
(2)事業の背景
エジプト国において農業はその生産額のみならず、就業人口の面から、長く同国経済
の基幹産業として重要な役割を果たしている。また、近年高水準で推移する人口増加
(2.1%-2002/03 年)により増大する国内食料需要に応えるため、又、農村部での雇用創出・
所得向上による都市と農村の地域間経済格差是正のためにも、農業生産性の向上が重要
課題となっている。とりわけ上エジプト地域の農村部は貧困率が高く、エジプト政府が
第6次5ヶ年計画の政策対象地域として、公共事業投資の 42%を集中的に投下する方針
を明言している。
農業を上エジプト地域の基幹産業として位置づけて、①貧困軽減、②雇用機会増大、
③食料増産、を掲げて、農業の振興を通して地域経済基盤確立を目的とする、新たな農
業基盤整備事業の展開と農村経済振興事業の展開が必須な状況にある。
農業が基幹産業として成立するためには、農業が安定かつ高生産性を実現でき、将来性
と持続性のある産業として担い手を迎え入れる事ができる環境整備が必要である。この
ためには、農業基盤整備を計画的に進め、ハード面における着実な整備を実現する一方
で、貴重な水資源を効率的に利用するソフト面での水資源利用・営農・農産加工・流通
8
に係る技術導入を進めて、旧来の低生産性農業から、農村地域全体として、高生産性・
高収益性農業への脱皮を実現する事業展開を模索する案件形成を必要としている。
具体的には、ハイアスワン下流3番目の堰として、ナイル川中流に建設されているア
シュート堰地点で、
「エ」
国が年間で利用可能な総水資源量 555 億 m3 の 17%に相当する、
年間 96 億 m3 を取水して灌漑するイブラヒミア幹線用水路配下 66 万 ha の受益地を対象
として、農業・農村総合開発計画を構想するものである。計画を構成するサブプロジェ
クトは下記の通り。
(1)イブラヒミア幹線用水路他全7幹線用水路網の改修
(2)7幹線用水路配下の支線水路、3次水路他、水路網の改修
(3)4,000 箇所を超える小規模水利施設の統合・廃合・改修及び新設
(4)統合水管理システムの導入による効率的統合水資源管理システムの開発・運用
(5)国際市場競争力を持つ作物導入と営農技術普及指導
(6)品質管理手法に基づく収穫後処理技術の導入普及
(7)産地優位性を発揮可能な農産加工産業の育成
(8)農業生産者組合組織創設と育成
(9)生産者と消費者による流通事業展開(BOP ビジネス)
(10)農村婦人の社会進出支援事業
(11)保健・医療、教育基盤整備事業
(3)事業の課題
(a) 貧困農民の実態
2011 年 2010 年 8 月、バハルヨセフ灌漑用水路沿いで4番目となるダハブ堰が、わが
国政府による無償資金協力事業として改修され、供用開始されている。この堰配下の受
益地で、農民の聞き取りを行い、堰改修による灌漑効率改善の有無と、その改善効果が
農家・農民の生計向上に寄与しているのかを聞き取る調査を行った。
Minya Governorate の貧農の例
農地を所有しておらず、小作農と
して 1/4 feddan (0.1ha)の狭小な農
地を耕作している。
親子、子供5名が粗末な自宅に居
住しており、長女(写真中央)は
小学校卒業後は、上級学校に進学
させられず、家事手伝いをしてい
る。父親は出稼ぎで不在とのこと
であった。
月額給与 400LE(約 5,200 円)の定
職に就ければとの希望を母子とも
に口にした。
9
水道本管は直近道路まで来ているが、
牛糞を乾燥させて燃料として利用。
自宅へ引き込む権利金と費用負担が
できず。井戸水に依存する。
釜戸は降雨がないので戸外。
(b) 貧困のスパイラル
ナイル川に沿って幅狭く分布する既耕地(Old Land)は、その成り立ちから既に耕作面
積拡大は限界に達している。
一方で人口増大に伴い、農村部においても世代間、家族間で、今でも零細な農地を、
さらに小割して累代相続し続けており、結果として極めて小規模な小農を生み続ける現
象が止まらない。まさに「貧困の再生産」と言える。
土地を持たない小作農には、重い小作料が地主から課せられ、さらなる貧困を繰り返
すことになる。また、借地もできず季節的な農業労働にしか従事できない土地なし労働
者も農村に相当数居住している。
この付近の小作料は、3 年ほど前の土地税制改正の動きに影響されて上昇し、現在は
6,000 LE/feddan/year に達する農地も出てきている。この上にさらに、末端水路から圃
場への灌漑用水くみ上げに不可欠なポンプ賃料と燃料代が直接経費として、農民に負荷
をかけることになる。
ポンプ賃料は最近高騰を続け 120 LE/feddan/day+燃料代となっている。
(c) 小作人、貧農に土地と水を
今回の調査では、無作為に選定した小規模農家を概観しただけであるが、そこから見
えるものは、「エ」国農業の根源的かつ構造的な問題への取り組みの必要性である。
上述のごとく、既に既耕地での新たな土地所有が望めない以上、多くの土地ナシ農民
を貧困から救済するための基盤を築くためには、砂漠開拓地(New Land)に土地を求
めることができる制度を設けることが急務と考える。
10
土地ナシ農民は一般に貧農であり、土地購入資金を持たず、資産形成もできていない。
それ故に、現行の社会制度のもとで、土地購入資金として、銀行融資を受けることは不
可能である。Micro finance 制度が確立して、貧農が努力をすれば、5 年間、10 年間の間
を経て自作農に転じることが可能な社会制度、仕組みを確立することが、地方在住の、
職のない若者を、農産業の次代の担い手として迎え入れる道であると考える。
(d) 貧困農民支援の展望
今後わが国政府が、上エジプト地域の貧困農民が、生計向上を目指して農業で自立し
た生活を営むことができる道を開く活動を支援するために、何をなすべきかと模索する
道筋の一考として下図を提案する。
上エジプトの貧困農民
非常に限られた農地
非常に限られた雇用機会
農地開発(New Land)
ハードの整備と入植者への
営農支援
土地収益性の向上と地方で
の雇用機会創出
(農村開発)
地産地消の推進
基礎情報収集調査
カイロ・ 輸出市場の展望
零細農への園芸作
促進
特産地の基盤強化
IMAPの成果
をInput
(現行M/P調査)
IMAP
村での生計向上活動
・既存入植事業・計画のレビュー(トシュカ、北東シナイ等):遠隔
地ではなく、旧耕地に近いところでの農地開発の必要性
・他ドナー支援動向の確認
・裨益目標人口の設定と開発面積の設定
・New Landに振り向ける水の創出(既存灌漑システムの灌漑効
率の向上、排水再利用)
・New Landでの営農支援計画
・C/P機関の設定
地方産業団地の整
備と企業誘致
IMAPの展開
プロジェクト形成調査
・要請されている技プロのTOR形成
・その他のIMAP M/Pの実施推進調査(産業団地(農産加工業
誘致、マイクロファイナンス)
・畜産調査(IMAPではTOR外だった)
・農外産業・農外生計向上推進による雇用創出支援の調査
(IMAPでカバーされていない部分)
・農村保健・教育など農村生活改善支援調査(IMAPでカバーされ
ていない分野)
・C/P機関の設定
現在、上エジプト地域のミニア県、アシュート県を対象とする JICA の開発調査型技
術協力「農産物流通改善を通じた上エジプト農村振興プロジェクト(通称名 IMAP)」
が実施中である。同調査では、農産物流通改善を通じ、小農を対象とした農村振興策を
マスタープラン(M/P)として策定することを目的とするが、その過程でパイロット事
業を 2011 年 3 月から 2012 年 4 月の予定で実施中である。最終報告書(M/P)は 2012
年 8 月に策定される予定である。本 M/P では、市場の情報・ニーズに基づく農産品・品
11
種の導入・出荷、収穫後の品質管理、加工による付加価値の向上を通じてプロジェクト対
象地域における農村振興を図ることを目指しており、パイロットプロジェクトでは、生産、
収穫後処理、販売の各段階での付加価値向上策(品質改善、農産加工)や行政支援策(市
場情報提供など)を実施中である。
上記 IMAP の今後の展開を踏まえた農村振興のためのプロジェクト形成、および逼迫
する土地需要に応えるための New Land の農地開発・入植推進が展望される。
人口増加が著しい農村地域では、職のない若者達が大勢所在ない状態で日々を過ごし
ている。大学卒業をした高学歴者も、そうでない若者も定職に就ける道が展望できない。
上エジプト地域の農村部では、農業以外の収入(農外収入)に大きな期待をかけられな
い現状から、農産業を振興する過程で、若者を農産業に吸収する方策を模索することが、
行政に期待されるものであると考える。
12
4.総合所見
エジプト経済を概観すると、国民総生産額(GDP)は 1,884 億ドル(世銀統計 2009)、一人
当たり国民所得(GNI)は 2,070 ドル(世銀統計 2009)をあげて、JICA が示す円借款供与条件
表では、中所得国に位置づけられる国力を擁している。
国 内 経 済 は 、 実 質 GDP 成 長 率 5.2%(2009/10) を 上 げ る 一 方 で 、 物 価 上 昇 率 は
11.6%(2009/10 エジプト財務省)と高く、国民生活において食料をはじめ生活必需品の高
騰が日常生活を圧迫し、これに大学、高校卒業後も定職に就けない青年層の就業機会へ
の不安が重なり、カイロなど大都市と地方との地域間格差が加わって、本年 2 月の政変
劇に至ったと分析されている。
産業構造を見ると、GDP 構成比率では、製造業が 16.9%を占めてトップ、第2位が石
油・天然ガスの 14.4%で、農業が 14%で第3位であるが(2009/10 財務省統計)、人口分布
状況(2006 年センサス)によると、都市部が 43%であるのに対して、農村部は 57%が居住
していることからも、農村部における農業による経済的自立の道を確立することが、生
計向上はもとより、民生安定上からも急務であることは明白である。
中でも、上エジプト地域は「1.調査地域概要」で既述のように、人口の 68%に相当
する 1,740 万人が農村地域に居住している事実から、農村地域において、農業を基幹産
業とした経済振興策を講じることが、貧困軽減、雇用機会創出、地域間格差是正を実現
する確実な道であると言える。
上述の基本認識に立てば、上エジプト地域経済活性化のために、農産業振興を主題と
した農業・農村地域開発計画を立案して、これまで同国の経済的発展のもとで、日陰の
立場に置かれてきた農村部の貧困層に、経済発展の恩恵がもたらされる社会・経済構造
を構築するための調査、分析、提言を早急に取りまとめる必要性を痛感する。
このような意味で、今回の ADCA プロジェクトファインディング現地調査で得た基
本情報をもとに、具体的な調査業務が早期に企画されることを切望するものである。
13
添付資料
(a) 調査団員構成
団長
森
博信
株式会社 三祐コンサルタンツ
海外事業本部 執行役員
団員
畑
明彦
カイロ事務所長 (現地参加)
団員
中嶋貴紀
国内事業本部 主幹
団員
下地富治
海外事業本部 顧問
(b) 調査日程
11 月 11 日(金)
関西空港発
12 日(土)
カイロ空港着
13 日(日)
日本国大使館、JICA エジプト事務所、
水資源灌漑省 訪問、打ち合わせ
14 日(月)
カイロからミニア県へ移動
15 日(火)
現地調査(アシュート県)
16 日(水)
現地調査(ミニア県)
17 日(木)
現地調査(アシュート県)
18 日(金)
現地調査(ミニア県)
19 日(土)
現地調査(アシュート県、ミニア県)
20 日(日)
現地調査(アシュート県、ミニア県)
21 日(月)
ミニア県からカイロへ移動
22 日(火)
水資源灌漑省、農業土地開拓省 訪問、協議
23 日(水)
国際協力省、社会開発基金(SFD)訪問、協議
24 日(木)
水資源灌漑省 訪問、協議
JICA エジプト事務所、日本国大使館へ帰国報告
25 日(金)
カイロ発
26 日(土)
関西空港着
14
(c) 面会者一覧
水資源灌漑省
Dr. Mohamed Abd El-Motaleb
Head of Planning Sector
Eng. Magdy Boshra Fouad
Head of Reservoir and Grand Barrage Sector
Eng. Nabila Bahaa El-Din
General Director of Monitoring & Evaluation
Unit of Irrigation Department
Eng. Ibrahim Abd El Naga
Head of Central Department for Studies,
Specification and Design (CDSSD), RGBS
Eng. Mahmoud Rafee Mohamed
CDSSD
Eng. Ahmed Farouk
CDSSD
Eng. Nafla Mostafa
CDSSD
Eng. Maha Ahmed Kamal
CDSSD
農業土地開拓省
Dr. Magdi Anwar Hassanein
Head of Central Administration for Foreign
Agricultural Relations, Ministry of Agriculture
and Land Reclamation
Eng. Mostafa Abdel Alim
General Director, Central Administration for
Foreign Agricultural Relations
Ministry of Agriculture and Land Reclamation
Eng. Essam El-Din Ahmed
Head of Department of Agricultural Affair
Assiut Agriculture Directorate
Eng. Gamal Samuel Habib
Head of Horticulture Sector
Assiut Agriculture Directorate
Eng. Mohamed Ashour
Head of the Minia New City Development
Ministry of Housing in Minia
住宅省
国際協力省
Ms. Samiha Barakat Farag
General Director of Japanese Department
15
社会開発基金 (Social Fund for Development, SFD)
Mr. Hatim Kamal Mahmoud
Agri-business Manager, Agricultural enterprises
development department
ミニア県
General Serag El-Deen
Governor of Minia
在エジプト日本国大使館
村上顕樹
参事官
増田和哉
一等書記官
JICA エジプト事務所
大竹
茂
事務所次長
飯島
大輔
所員(農業・水資源分野担当)
16
(d) 資料
①
農業土地開拓省 アシュート県事務所の将来計画(案)
調査団質問に対して、具体的な事業計画案はないが、責任者レベルにおける
将来計画を記して提出するとの返答があり、後日受領したもの。
Assiut governorate
Agricultural directorate
General Manager Office
Future plan to solve some issues related to agriculture
In agricultural directorate in Assiut
1- Adding new strains of goat and sheep for the sake of small scale farmers as
now there are no good strains for multiple uses (milk, meet and wool).
2- Recycling of agriculture waste products to control environmental pollution and
also to make good use of it in making organic fertilizer (compost and silage to
feed animals) and this is because of high price of animal feed and chemical
fertilizers.
3- Re encouraging the project of (petelo) meet by fixing the amount of fodder for
every animal; that to solve the problem of the severe shortage in red meat and
its high price.
4- Building stores to store grains (wheat, maize) to minimize the loss and keep it
from environmental pollution.
5- As there is high percentage of loss in water during irrigation of fields through
ordinary irrigation channels, so replacement of those channels by cement
channels will keep water from loss also part of the ordinary channels will be
used in cultivation.
17
6- Development of the dairy laboratory related to the agriculture extension to
produce dairy milk products and small nutritional industry as (jam, tamea
dough, pickles) in the directorate and some districts to be training center for
graduates of agriculture schools and rural women.
7- Processing unit to extract oil from medical and aromatic plants specially basil
and marjoram.
8- Establishment of processing and packaging unit for different kinds of fruits and
vegetables to be ready for export.
9- Cardboard factory: work basically on leaves of banana and maize which can be
used in cardboard or paper.
10- Units to squeeze and extract oil from olive, soya beans and sunflower to increase
oil crops area in the governorate.
18
② アシュート堰周辺地下水観測孔位置図
19
③
(1)
政府間家機関組織図
農業土地開拓省(Ministry of Agriculture and Land Reclamation)
20
(2)
農業土地開拓省ミニア県農業事務所(Minia Agriculture Directorate)
Head of Agriculture Directorate
Dep. of Public Relation
Dep. of Technical Office
Dep. of Training
Dep. of Planning and Follow-up
Dep. of Land Protection
Dep. of Legal Affairs
Dep. of Food Security
Dep. of Field Follow-up
Dep. of Citizen Services
Dep. of Information and
Docum entation
Agr. Production Intensification Project (APIP) IFAD (ended)
GD of Financial &
Administrative Affairs
GD for Agricultural
Cooperation
GD for Agricultural
Affairs
Financial Affairs
Cooperative
Marketing
Orientation and
Cooeprative
Organization
Engineering Affairs
Pest Control
Administrative
Affairs
Financial &
Accounts Follow-up
The Projects
Animal Production
Agricultural
Services
Horticulture &
Vegetables
Agricultural
Extension Services
Horticultural
Control
Rodent Control
Personal Affairs
(3)
Cooperative Dep. in Districts
Agricultural Dep. in Districts
Agricultural Cooperatives in Villages
Agricultural Units in Villages
農業土地開拓省アシュート県農業事務所(Assiut Agricultural Directorate)
Head of Agriculture Directorate
Dep. of Public Relation (1)
Dep. of Technical Office (14)
Dep. of Training (8)
Dep. of Planning and Follow-up (21)
Dep. of Land Protection (20)
Dep. of Legal Affairs (20)
Dep. of Food Security (6)
Dep. of Field Follow-up (12)
Dep. of Citizen Services (1)
Dep. of Inform ation and
Docum entation (NA)
GD for Cooperative in
District (8)
GD for Agricultural
Cooperation (31)
Financial Affairs
Agricultural
Cooperative
Cooperative
Marketing
Engineering Affair
Agricultural
Services
Horticultural
Control
Pesticide
Administration
Collaborative
Follow-up
Follow-up&
Cooperative
Accounts
Animal Production
Agricultural
Extension Services
Field Control
Agricultural
Aviation
Agricultural
Cooperative
Horticulture &
Vegetables
Organic Agriculture
Personal Affairs
GD for Agricultural
Affairs (200)
GD for Pest Protection
(41)
GD of Financial &
Administrative Affairs (60)
Agricultural Dep. in Districts
GD=General Department
( ) = the number of staff
21
Agricultural Units in Villages
(4)
水資源灌漑省(Ministry of Water Resources and Irrigation)
22
Fly UP