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第 6 回:メロディの作り方

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第 6 回:メロディの作り方
菊島大樹:R&B 的トラック・メイク術
ここ数年、日本のヒット・チャートを眺めてみると、R&B 的な楽曲が目に付きます。ジャニーズなどのアイドル
系にも、そうした傾向の楽曲が多くなってきたようです。自分でも R&B っぽい作品を作ってみようと勢いこん
でみたものの、そうしても普通のポップスになってしまう……そんな悩みを抱えている人も多いのではないでし
ょうか。そもそも R&B とは何なのか?
R&B っぽい作品に仕上げるには何がポイントなのか……。本セミナー
ではそんな疑問にお応えすべく、R&B 的なトラック・メイク術を解説していきます。インストラクターはピアノ
やギターをプレイする新進のクリエイター菊島大樹氏です。
第 6 回:メロディの作り方
( 2010 年 3 月 2 日 )
音楽にとってメロディとは、人間で言うところの「顔」みたいなもんなんだと思います。顔を見れば誰だか分かるように、
メロディを聴けばアレンジが多少違ってたとしても「あ、この曲か」となるはずです。逆に、体の部分だけを見て誰だか
分かる人はあまりいないでしょう。イケメン君が大好きな面食いギャルはきっと聴く音楽もメロディで選んでるに違いな
い……というのは僕の妄想ですが。
R&B はイケメン?
もちろん曲にもよると思いますが、元来ブルースから派生して誕生した R&B は、どちらかというと
整った顔立ちではありませんでした(R&B アーティストに関してはイケメンが多いですが)。まるで魂の叫び、そんなア
ツいメロディです。それは R&B の最大の魅力のひとつとも言えるでしょう。音楽的に言えば、ブルースのようにブルーノ
ート・スケールが頻繁に使われたりもします。
しかし時代が流れるにつれ、より洗練されたクールさが求められてきます。クールでセクシー、かつエモーショナルでも
あるサウンド。近年の R&B において理想的なサウンドを一言で言うとしたらこうでしょう。そしてそれを具体的に表現す
るにはどうしたらいいか?
その問いに対しての答えはまさに十人十色であり、アーティストにより解釈は違っていて、
日々それぞれに研究していることでしょう。そんなイケているアーティストたちのおかげで、R&B は今や全音楽ジャンル
の中でもトップクラスのイケメンなんだと思います。
■メロディ作りのポイント
イケメン話はほどほどにして、そろそろ話を音楽的な方向に持っていきましょう。ボーカリストやギタリスト等に、
「歌を
作るときってどういう手順で作ってますか?」と尋ねると、「歌詞を書いて、それを鼻歌で歌いながらメロディを付ける」
という人もいれば、
「ギター弾いてたら何となくメロディを思いつく」なんて人もいたりします。それで良い物ができれば
良いんですが、プロのクリエイターや作曲が上手い人はやはり音楽理論を応用し、計算して音を組み立てていきます。
慣れてくれば、その計算すらほぼ無意識でできるようになります。そうなればさらに「今何のコードが鳴っていて、何の
スケールを使えば良いのか」を瞬時に判断し、アドリブのフレーズを的確に思いつくことも出来るようになってくるでし
ょう。僕は個人的には、本格的な R&B を作るならそこまでの段階をクリアしておいた方が良いと思います。ロック等なら
「ギター弾いてたら思いついた」とかでもまぁいいかな……とも思いますが、R&B はコードに対して確実に的確なメロデ
ィが付けられないと、クールさに欠けてしまいます。また、音楽理論を理解した上でその瞬間の感情をエモーショナルに
メロディとして生み出せる、アドリブという技術も持ち合わせていると、メロディメーカーとしてはより理想的だと言え
るでしょう。
コードに対するメロディの付け方そのものについては、ここで詳しく触れることはできませんが、このセミナーで参考音
源として使用している曲について、僕のメロディの付け方を紹介しておきましょう。そこまでの技量がまだないという人
は、参考にしてみてください。
■R&B の曲構成
まず、曲の構成についてですが、ポップス等と同じように、R&B も A メロ、B メロ、サビといった具合に作って OK で
す。ただ実際に、特に洋楽では、もっと自由度の高い作り方をすることも多いようです。サビにあたる部分をコーラスと
呼び、それ以外の部分は○メロ、というような分け方をせずにメロディを自由に付けていくというやり方も見受けられま
す。例えば、サビ(コーラス)以外のメロディが、同じ箇所の 1 番と 2 番では全く違っている、ということもあり得る訳
です。
そういう構成もカッコいいのですが、セミナーの題材としては分かりにくいかもしれないので、今回僕が作った曲は、A
メロ、B メロ、サビという構成としました。
ボーカルを入れる前にまず、DAW 上でメロディを入れるインストゥルメント・トラックを 1 つ作ります。楽器は何でも
良いです。僕は何となくやりやすいと感じたのでソフト・サンプラーでフルートの音を読み込んで使いましたが、好きな
音色を使っていいと思います。
ここで行うのは、俗に言う仮メロというものを入れる作業になります。最終的には歌になるので、仮メロを入れるときで
も鼻歌か何かでメロディを追い、歌うのに無理がないフレーズかどうか考えながら作るのが良いと思います。
まずは A メロです。
●Sound1
譜例 1
キーは A♭です。まず最初の部分はコードが D♭M7 となっていますので D♭M7 の構成音である D♭(レ♭)、F(ファ)、
A♭(ラ♭)、C(ド)を中心に使っていくのが良いでしょう。ここでは、D♭以外をすべて使っています。その次のコード
は E♭なので構成音である E♭(ミ♭)、G(ソ)、B♭(シ♭)あたりを中心に使うと良いです。ここでは、B♭を使って
います。同じようにして Cm の構成音は C(ド)、E♭(ミ♭)、G(ソ)となります。このように、基本的にはコードの構
成音を軸にしてメロディを組み立てていきます。
■ブルーノートについて
次は、B メロです。
●Sound2
譜例 2
コード進行はずっと同じままです。R&B などブラック・ミュージックにはコード進行がずっとループしているものが多い
のです。その中でメロディのリズム感が変わっていったりするのがこのジャンルの音楽の面白味でしょう。B メロの 2 小
節目と 6 小節目、2 拍目のウラのウラに、C(ド)のフラットの音が出てきます(ちなみに C のフラットは B=シですが、
A♭のキーの場合は C のフラットという表記をします)。普通のスケールの中にはない音で、これはブルーノートです。ブ
ルーノート・スケールについては別途勉強する必要もあるかと思いますが、よくわからないという人はとりあえず三度(ド
レミで言えばミの音)が一時的にフラットすると、ブルーノートらしくなると思ってしまって OK だと思います。それが
一番初心者向けなブルーノートの使い方かな、と個人的には思いますので、この曲でもそういった使い方をすることにし
ます。
スケールにおける三度の音(A♭の場合は C)を一時的にフラットさせるだけで、妖しかったり、色っぽかったり、緊張感
があったり、状況によって様々な効果が得られます。ここで狙う効果はもちろん色っぽさですね。フラットさせない場合
は、より爽やかな響きになってくると思います。三度の音はどこもかしこもフラットさせれば良いという訳ではなく、使
い分けましょう。また、使う場所にも若干注意が必要です。二度の音(A♭の場合は B♭)に対し装飾音的な使い方をする
のが一番無難だと思います。具体的なイメージとしては、ドレミで言えば「ミレド∼」なんてフレーズを「ミ♭レド∼」
というふうにする使い方が、おそらく一番手軽によく使われていると思います。
「ミソド∼」なんてフレーズを「ミ♭ソド
∼」とするのは変なんですね。
■R&B におけるサビとは?
では最後に、サビです。
●Sound3
譜例 3
サビとは言っても大袈裟に盛り上がるような感じでもない、そんなメロディですね。しかしそれは逆に、何回かループし
ても聴き疲れない、と言うこともできると思います。J-POP なんかで特にサビのフレーズでキャッチーさを狙っているも
のは、「やったー!」「おわったー!」という感じになり、とてもお腹一杯ですが(笑)R&B は意外にしっとりしていて
BGM としても使えそうな、そんなさりげなさがある方がクールで良いかもしれません。
「カッコイイ」と「耳に残る」は、
違う場合もあるということですね。
さて、ここまでで譜面を見て気付いた人もいるかも知れませんが、曲全体を通して白玉(二分音符や全音符などの長い音)
がほとんどありません。そして休符が多く見られます。テンポはゆっくりなのに、メロディはどちらかというとせせこま
しく、16 分音符で動いている部分も多いですよね。すなわちこのメロディは、メロディアスというよりはグルーヴィと言
う方が適切かもしれません。極論に言えば、ボーカルもリズム楽器として考えることもできる訳です。ボーカルが良いリ
ズムを出していれば、相乗効果的にオケのグルーヴも何倍にもなってくるでしょう。逆にあまり白玉が多いフレージング
だと、せっかく良いグルーヴのオケを作っても台無しになってしまうので、ある程度歯切れのいいリズムでフレージング
していきましょう。
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