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奈良教育大学生の水泳に関する経験と意見に ついての調査*
奈良教育大学生の水泳に関する経験と意見に ついての調査* 岡 本 重 夫** (体育学教室) は じ め に 本学においては、毎年1回生を対象に必修体育の一環として臨海水泳実習を実施している。 この実習はr水泳技能をたかめ、学校における水泳の指導、特に海浜における実地指導、安全及 ぴ健康管理の実際を修得するとともに、合宿による集団生活を通じ、学生相互の交流によって人 問形成に資する。」を目的としている。本学水泳実習の歴史をふり返ると、r水泳訓練」という 名称で、1955年から1961年までのプール実習(前半3ケ年は県営春日野プール、後半4ケ年 は本学プール)が行なわれ、1962年から三重県二見ケ浦でのr臨海水泳実習」となり、まもな く20年に達しようとしている現状にある。 水泳実習は、一般に泳力などの技術的側面における効果を期待して実施されているが、単に技 術的側面だけではなく、水泳を正しく理解し、積極的に参加しようとする水泳に対する態度をた かめ、また、人間形成などの側面からも大きな効果が期待されている。 ところで、臨海水泳実習に参加する学生の実態は、泳力はもとより、水泳についての経験の程 度など極めて多様である。そのため、教育的効果を得るように、数年前から、実習参加者の実態 を把握するために、受講登録に際しては、r水泳実習受講登録票・・水泳に関する調査」用紙を作 製し、個々の学生に記入せしめることにより、参加者の実態を知り、あわせて実習の班別など指 導上の資料として活用している。しかし、今後も本学の水泳実習が継続して行なわれることから、 現状よりも充実・発展するためには充分とはいえない。さらに、近年全国各地での「教員採用試 験」に際して、将来、教員となるべき者に対する要求の中に水泳能力も大きく位置づけられてい る実状であり、本学の学生が卒業後教員を志望する者が大多数であることからも、本学の水泳実 習か今後、効果的に実施され、質的な充実が実現するための資料を得ようとするものである。 本研究の目的は、本学の水泳実習に参加する学生について、現在の泳力・過去の経験・水泳に 対する考え・実習参加の目標などを知るとともに、実習一後には、この実習によって得たことから ・実習中の友人との関係・将来教員としての水泳指導の自信の程度などの実態を知り、今後の実 習プログラムの作成にあたっての参考となる資料を得ようとするものである。 * Survey on the Experiences and Opinions about Swimming of Students in Nara University of Education **Shigeo Okamoto(Department of Physical Education,Nara University of Education, Nara) 一73一 水泳実習受講登録票 水泳に関する調査 課程 学科 氏名 番号 姓別 出身高校 1.泳力について 0∼10m未満 平 10∼25m未満 25∼100m未満 100m以上 泳 ク ロール 背 泳 バタフライ 横 潜 泳 水 2.泳げない人(25m未満)のみ答えて下さい 泳げない理由 呼吸ができない 平. 動作がうまくいかない 恐怖を感じる 泳・ クロ ル 3.尿げるようになった時期(25m以上泳げる人) 1、小学校に入る以前 2、小学校時代 3、中学校時代 4、高校時代 4.だれに教えてもらって泳げるようになりましたか 1、一人で自然に 2、友人 3、学校の先生 5、親 6、兄弟 7、その他( 4、水泳教室の先生 ) 5.主としてどのような場所で練習しましたか 1、川 2、海 3、池 4、湖 5、プール 6.あなたが在学した学校にプールはありましたか 小学校 中学校 高 校 有 無 7.遠泳の経験がありますか 有 無 有の人のみ答えて下さい 距離 時間 経験した時期 1、小学校 2、中学校 一何一 3、高校 その地 調査用紙 その1 水泳、柵る調主戦瞳慧・)舳τ帆約頂仏坊沸 そ^畝が,てそ包\い下之・ 徽、獅船鶏τ享.脇 捌蛙 嚢繊蔓1 1引寄㌻ 2漁猟穣鴬燃㌣、(筆触狐甲) ))水詠セ城ぐ帆秘t朴ラセ舳 徽3{け八省1.Σ.3.4.∫.峰キ三、.2.3芽級1.ユ、3房 ⑰)い弓以.4城℃あト伽4派ノ\ !、榊む ユブ伽位クー商殴3Wだ㌻ 4無。に 3.鰍爪41証拠父乳兄.姉)Iアψ促(’ ) ¢〉(う)ω人ト独きて4亨フセ納 八マシレ ∼.外 3.地 ・4湖 と刈 6、伽似’ ) ユ11簿撚撚繍準臓纐 ( 沸・{( )宰寿ダ( )クg’1八 脇( フ弗紅( )’{)ア列 4今粋水和棚物喩1乍勅1之フY伽佃榊ヤ・伽鴻で狐) 、燦窯顯誰驚妓卜蟻ξ㌫駕沁狐づ鶯も苓犯 1、鮒耐傘 ヨ.刻与3.伽が}朴・4..水〉、玲河・ 8、芥叉手 44素陽応(づん広小・)( 6・あ何セパ水泳一:浦れわτ・1る所ふ応(ど∼■’、引・◎’印) 1.そ、・寸き )、令ミ 3.わ凶か・ 4.篶、、 .ざ、だ;・書い・ 仏郷以’帆い)( ) 7納長泌倣1・ヲ2v州柚()1・◎、柳M’れヤ“,4苅赦で 篤締て仰ご言塙ボ六州3瓢キ箏弐工 ㍗紬榊納洲嚇卿(側1 ⊃ 3 ¢ 叶 一 一一一一舳■一^ ’’一一一一}一一 一一} 一 一75一 一㎞一一. 調査用紙 その2 炊捌碗瞳 (伽 エ帆笈謹彗診鰍伽狐鴇.す 乙あκ衣が蔓電に歩帥寸磁1二穆振工して・、ト弐鰍棚、くつ・・て (〕)鮒同・て舳州宣氏峨柵項目減柳閥如挑 い九ウんで( )閑k伽銘キ記xして千仏、 富苗彩(仰ψ)( ) 1大へん添癌疋 蓋菱溝試;l1 言番添緩 綴(州1;蝋撒上む、 G) ウ驚芦鐘誰妻帯繁燃舳蛾伽> さ禦塁簿温恵う ‡鍛驚鴬鰯護器 (3)肋納 桐ハ水 .稚焔紐榊う綱嚇耐3鵜・’ 心伽“あラ社かビ㍉ヂ手《蜘いキ〃)あπk 伽㌣堆鰍瓢駅◎私一戦へ 之 あ刻劣紅水泳思・わ有ぴ 3 如灼小・ ・つれ人Y狐に諸恰之朴うへ人バ’ (4) 鶏ば驚者で吋φ’. / 多く(人\吸入Yして知ツ於巾サつト (!oスは上) ⊇.何人少(人七夜人しして知州いト城イ= (_人位) 3、教に奔、、あフて祐、合うい何人ホ館つを沽紗つ示、 6)あ肋が柳文、1耽雀派キ柿多して、跳哀地相船,桶の遠泳倣’蝋) 《計画入管岐池π削彩琢・滋乃倖須ユ{鰍脈{恒、・{ように号桐・・妨勾・ 千(3承頂から、ラキえラんで壱弓、し◎印セウけτ下支“ 久わから河い 2.いくらが泳つ畑凶忌ラ J.穴∼い牝州忍う 一τ6一 対 象 1979年度、本学水泳実習に参加した全学生290名であり、その内訳は第I表に示す通りであ る。 手 続 筆者らによって作成されたr水泳に関する調査」を用い、1979年7月の水泳実習参加前と参 加後(現地で実習一最終日)の二回に行なわれ、調査の趣旨や、調査内容を説明した後に記名式で 記人させ回収した。 なお泳カによる実習班別は参加者の水泳能力が極めて多様であるため、班別にあたっては、登 録時に提出したr水泳に関する調査.」用紙の中の水泳能力を基準として、男子10班、女子12班の ほぼ等質グループに編成された。その内訳は第2表の通りである。班は、水泳能力の高いものか ら、男子は1班から、女子は』1班から編成した。人数が各班一様でないのは、水泳能力の低い班 では指導が細部にまで行き届くように、若干人数を少く配分したためである。 第1表 課 程 第2表 男子 小学校 56 女子 合計 71 127 中 学校 43 26 69 幼 稚 園 0 29 29 王6 21 養護学校 5 特別(理科) 26 2 特別(書道) 4 12 16 156 290 計 134 班男子数班女子数 28 1 2 3 14 11 16 12 14 13 4 14 5 6 7 8 9 10 16 15 17 16 13 I7 13 i8 9 19 8 20 エ4 21 計 15 16 16 22 134 玉3 15 14 14 13 10 11 9 ユ0 156 結 果 と 考 察 第一回調査 参加者の泳力の現状 第3表は、実習参加の前に各自の泳力について調査したものである。参加者が、男子134名、 女子156名であるので、男女別に百分率で算出したものである。各種の泳法とも女子よりも男子 の方がよく泳ぐものが多く、なかでも、平泳・潜水は差が大きい。第3表を、男女別・泳法別に 比較するために図示したのが図1∼6である。平泳・クロール・背泳は、男女問に泳力の差はあ 一7τ一 りながらもよく似た分布を示している。 男子の平泳・クロール・背泳・横泳 あなたの現在の泳力の程度(%) 第3表 の4種類の泳力は、その分布が双峰型 11 31 を示しており、学生の泳力は、上位・ l0 30 60 1K 男 5,2 16,4 23,1 6,0 30,0 11.2 O.7 5.2 女 24,4 35,9 17.9 0,612.8 0,6 4.5 0.6 男 7,5 36,6 30−0 1,517.2 2,2 0.9 女 19,2 49,4 23,1 0.6 5,8 0.6 0.6 男 21,0 32,8 18,7 2,211.9 3−0 女 36,5 39,7 16.7 0−6 1.9 下位に偏っており中間で下降する曲線 を示してい孔このことから過去の水 泳に対する感心や、練習の頻度などが 一様でなく、水泳が好きなものと,好 まないものの2つのグループの存在が 認められる。しかしながら、蝶泳・潜 水の2つの泳法については、中央が高 まりを示しながらも全体としては、前 述の4種類の泳法に比べて不陽意な泳 法であるということができる。女子は、 平泳・クロール・背泳の3種目で男子 よりもや\泳力は低いものの男子とよ く似た分布を示しているが、蝶泳・横 501 1K 61 100 201 ∼ ∼ ∼ 99 200 500 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ 平 泳 クロール 背 泳 男 3,7 66,4 27,6 2.2 一 蝶 泳 女 90.4 男 26,9 26,9 17,2 3.O18−7 女 60,3 16,7 11.0 0.6 4.5 男 2,2 54,5 32,8 1.3 − 1.5 横 泳 潜 水 女 80,1 14.7 5.2一 一 泳・潜水は不得意な学生が多い。この 3つの泳法は特殊な泳ぎ方と受取られ ていて、過去の水泳の練習の時に前の 舞4表 実習で泳ぎたい距離 3つの泳法の指導をうけたり、練習し 11 31 ∼ 61 100 201 501 1K ∼ ∼ 10 30 60 99 200 500 1K 男 ■ 4.5 9.0 2,2 42,5 13,4 15.7 くらいまで泳力を高めたい要求をもっ 女 1−9 25,6 25−0 ているかの調査であ乱図7∼12のよ 男 − 女 たために練習経験の少ないことが原因 ∼ ∼ ∼ ∼ ∼ となっているようである。 第4表は、この実習によって、どれ うに、具体的な距離の目標は、現在の 泳力を上まわっているが、男女別にみ ると、男子は長い距離のマスターを求 めるものが多く、それに比べて女子は 比較的短い距離をマスターすることで 満足する傾向がみられる。この相異は、 現在の泳力の差が、求める距離に示さ れたものであろう。 9−0 平 泳 3,228.2 3.2 3.2 4.9 2,244.0 9.O 0.7 2.2 0,6 26,9 38.5 4,923.7 Z6 0.6 0.6 男 3.0 1&7 33.6 1,531.3 3.7 3.0 1.5 女 5,8 35,3 27,6 1,921.2 12,7 24.6 クロール 背 泳 男 23,1 44,8 15−7 − 7.5 女 42,3 42.9 − 0.6 0.6 蝶 泳 1.9 男 4,5 17,2 22,4 女 13,5 44,9 19.2 男 5,2 72,4 16,4 横 泳 繕 水 女 一78一 31,4 57.1 1.9 0,727.6 9.O P2.8 Z6 一・ − 1.5 5.2 4.5 一男r 一一一一一 翌 帥 50 50 ’ ハ ‘〔 ^ 、 ’ ’ 、 25 ’、 25 25 、 ’ 、 、 、 ’ へ 、 ’、 、 。 、 〉 \一、ンく 片 ∼lO 図1平泳 川、 一10 川} 図2 与[]一ル ∼10 図3背泳 1K、 州 1 } 75 1 5n ・ 75 75 50 50 25 妬 1 25 ㌧ ∼1n 図4業泳 川、 一1n 陳15構泳 川、 一10 図6着水 1H㌔ 一リけ 翌 一一一一・ 50 50 50 。、 へ 25 。一一 A 一 ’、 2『 ’ 、 ’、 ’ 、 ’ 、 ’ 、’ ’、 、 、 ’ ’ 、 日。一 25 ・ 、 、へ 、 ’ ’ 、 、 ’ 、 、 、 ’ lK一 ハ ’ 、 、 、、 。・・ ㌔]O 図7 平泳 ’ 、 ’ ’ 、 } ’ ’ 、 、 、 ’ 、 、 、 }lO 1判8 ク□一ル lH} ∼lo 1旺一 図,背泳 ^ 、。 Fn 、 ’ 、 ’ ^ ’ 、 ハ ’ 、 ’ 、 一 、 ’ ’ 、 ’ 1 25 1 2号 , 25 、 ‘ 、 I 一 ’、 、 、10 1買11n蝶泳 1k、 ∼lO 図1一償泳 lR∼ ∼lo 図12清水 lK一 水泳に関する経験 全対象の93.1%は、過去に水泳の指導をうけたことがあり、そうではないものは20名(男12名 ・女8名)と少い。しかし、この20名は、全然泳げないのではなく自分で何らかの機会に泳ぐこ とができるようになったものと考えら 70 れる。水泳を教えてもらった経験をも ・ I1 つものが大多数であるが、これを時期 ‘、 . 1 別についてみると、小学校在学中の1 刷 h 11 ∼5年が最も多く255名88%(男118 I , 1 、 名88.1%、女137名87.8%)である。 。o ’ 一舳 ..一一.女戸 1 、’、 学年別では、男子は、1・3・4・5 1 、 ・2年、女子は、1・3・2・4・5 ’1 、 年という順で、1・3年の時期に指導 ・ 1 ’ レ ’ ’ \ 』一 をうけたものが非常に多い。また指導 / 一才 ヨ E+1。 ヨ 』 。 。山12 3高1。 者についてみると、学校の先生(男 ■舳納蝪え=えら」一f=時期 67.3%・女59−6%)が最も多く、ついで家族(父・母が大多数で男21.6影、女28.2%)であり、 その他はごく少数である。家族と共に水泳場へ出かけるのは女子に多く、男子は友人などと出か けることが女子よりも多いことを示している。さらに、指導を受けた場所についてみると、プー ルが最も多く80%以上がプールで泳ぐことをはじめていることを示している。初心者の指導にも っともよくプールが利用されており、これとともに小学校の低・中学年の担当の教員が、初期の 水泳指導について充分な知識と指導能力をもつことが必要であることが指摘できる。したがって、 近年、教員採用試験に際して水泳の実技テストが実施されているのは当然の施策というべきであ る。 3」6 図15 水泳を習った場所 図14 水泳を教えてくれた人 図16は、10m以上泳げるようになった時期の調査である。多い順にみると、男4年、女3年、 女4年、男3年という結果がみられる。はじめて水泳を教えられた時期から2∼3年を経過して 10m程度の泳ぎをマスターしていることになる。もちろん、小学校で1シーズンにプールを利用 してどのような指導がなされたか、どれくらいの時間がかけられたのかは不明であるが、小学校 一81一 3・4年生の時期が泳ぎを覚える適期 であるように考えられる。同様の調査 仙 報告は、宮畑(体育の科学1976・6 ・396∼7頁)によっても明らかにさ れている。それによれば、昭和24・5 ・男子 .一一. 年頃、金沢大学周辺の子供について、 カ子 2n 数回にわたって、r泳ぎをおぼえた年 令」の調査がなされており、どの場合 も「9歳のとき」おぼえた者が最も多 く、以下10歳・8歳の順という結果を 報告している。さらに、水泳教室での 指導の経験から、1∼2年生では、「 し ク 一才 5 后 小1 2 ヨ 一 5 高 1111 2 3 2 図16 1nm以I二泳げるようになりた時期 手がかかるばかりでなかなか泳げるよ うにならない子が多い」とも指摘しており、ベテランの水泳指導者が「1∼2年の子どもは、泳 げるようになっても、いつ溺れだすかわからないので、ちっとも目がはなせない。」と嘆いている、 との報告もある。この報告のr泳げるようになった」ということと、今回の調査の場合のr10m 以上泳げた」ということは同一の問いかけとはいえないがほ∵同じようなことと考えられよう。 水泳に利用した施設 利用施設については、プールを利用したものが圧倒的に多く、86.6%の高率を示している。そ の内訳は、学校のプール76.9%、公営プール7.6%、私営プール3.1%となっている。男女別で は、学校のプール利用は男子に多く、公・私営のプール利用は女子に多いというちがいがみられ その他 川 3.O 59 海 泓宮プール 1,5 3.7 公営 プール 6,7 男子 1134名〕 100窟 ブール 87.3 学校のプール 79.1 図1τ 利用した場所 図18利用したり斬 る。夏休みを中心とした夏期の水泳シーズンに、学校のプール開放などは男子がよく利用し、女 子は家族とともに学校以外のプールを利用することが男子よりも多いことが認められ、さきにの べた「水泳の指導者」の場合に、女子が男子よりも多く「家族」と答えていることと一致した結 果である。 一82一 第5表 泳ぎをおぼえた順 各種の泳法について、 泳ぎをおぼえた順(%) 全 泳法ごとに覚えた順を示 最初に 1位 したのが第5表である。 の順に覚えた者が多く2 るが泳法は共通している。 女 子 41,0 犬かき 32,3 クロール 76,3 2位 犬かき 32,8 平 泳 32,1 犬かき 60−9 3位 平 泳 21,7 クロール 31,3 平 泳 40−4 2番目に1位 平 泳 38,6 平 泳 32,8 平 泳 43−6 2位 クロール 26,2 クロール 30−6 クロ→レ 22,4 3位 犬かき 13,8 犬かき 1614 犬かき 11.5 3番目に1位 平 泳 24,5 平 泳 291 平 泳 2α5 2位 背 泳 22,4 背 泳 28−4 背 泳 17,3 3位 犬かき 14.5 犬かき 19.2 横 泳 15.4 番目、3番目に出てくる 泳法も順位はかわってい 子 クロ→レ 表から明らかなように、 クロール・犬がき・平泳 男 員 これは、小学校在学時代 に、体育の目標・内容に ついてのよりどころとなっていた小学校学習指導要領(昭和43年・1968改訂版)には、水泳に ついて、「クロール・平泳ぎの2つの泳法と道とびこみ・潜水」が内容としてあげられていたこ とからも当然のことである。この2つの泳法が一応できたあとに背泳がでてきていることからも、 初めに練習する泳法としてクロール・平泳が位置づけられていたものであろう。男女別に覚えた 順序は順位はちがうが泳法は共通していることが認められる。学生の意識としては、自己流のク ロールを「犬がき」と感じているのではないだろうか。このように考えて「犬がき」を、原始的 あるいは、不完全なクロールとみなすと、はじめに覚えた泳法は、クD一ル・平泳のいづれかで あるということができる。 教師にとって水泳の能力は 将来、大半の学生が教員を志望している本学の実状から、かなりの学生が「水泳能力は必要で ある」という考えを持っていることは予想できたが、実際には、教師として水泳の能力は「絶対 人すき い い い 図19将来教師〔とって い 図20 水泳に対する好悪 水泳能力は必要か 一83一 必要」というものが全体で44.8%(男39.8%、女子49.0%)、「必要」というもの42.3%(男 43.6%、女41.2%)という結果で、この2項目以外の「わからない」「大して必要ない」「不必 要」に比べて非常に多い。近年の教員採用試験の実状から、学生時代から水泳能力を身につける ことに強い要望があることを反映しているものと認められる。 水泳に対する好き嫌い 水泳に対する好き嫌いについては、男子の方が女子よりも「好き」なものが多いが、半分をや 、上まわる程度である。一方rきらい」が全体で22.2男(男21.6%、女22.7%) r大きらい」 は全体で4.9%(男3.7%、女6.0%)で予想よりも多かった。過去の水泳の経験の中に、きらい になった原因(溺れかけた・苦しかった・下手だった・おそかったなど)があったのではないだ ろうか。 第二回調査 練習に対する評価 水泳実習期間中に実施された実技練習においては、全部の班に統一した内容ではなく、とくに、 学生個人の水泳能力のすぐれている弧とそうでない弧とではかなり練習内容がちがったのは当然 である。上級班では、数多くの泳法の上達、距離の伸長をめざした内容であり、一方、初級班で は、数少い泳法だけでも体得させようというねらいが中心となった。このように、学習した内容 は一致していなかったわけであるが、一応、5種類の泳法についての個人の意見を求めて集計し たものが第6表である。 男子では、クロール・平 泳・横泳の3つの泳法に ついては満足したり、上 達した感じをもっている 者が大半であるが、蝶泳 に対しては満足できずに いるものが多く、背泳は 中間的な位置を示してい る。一方、女子では、全 体として男子よりも満足 の程度が低い傾向を示し ており、とくに、蝶泳に ついては「大へん不南足」 第6泰 男子 各泳法の練習に対する評価 大へん 不満足 や、不満 一応満足 かなり 上達した 予期以上 上達した クロール 3.0 13,5 51,1 24,8 7,5 平 泳 3,8 12,8 48.l 22.6 12,0 蝶 泳 39.8 17,3 11,3 3,0 5,3 19−5 51,1 15,8 5.3 14.3 46.6 24.1 9.8 背 泳 横 泳 a8 30 女子 クロール 14,1 23,1 48,7 13,5 0.6 平 泳 20.5 28.8 32.1 13.5 4.5 蝶 泳 449 7,7 5,1 0,6 0.6 背 泳 224 24−4 39,7 10,3 横 泳 29.5 20.5 31,4 10.9 6.4 というものが半数近くを 占めている。以上の点から、他の泳法の指導に加えて、蝶泳についての導入、指導法などの研究 を深める必要が求められていると受取るべきであろう。 一君4一 指導についての自信の程度 第7表にみられるように、女子の63%、男子の27%が子供に対する水泳の指導に対して「自信 が持てない」という結果を示している。男女のちがいは、水泳の能力の差と同様の傾向を示して いるわけであるが、見逃がせないのは、水泳実習の内容がr各自の泳力を高める」ことに重点が 第7泰 子供に指導する自信の程度 十分がなり一応あまり全然 自信あり・ 自信がある 指導できる 自信がない 男 子 2,4 12,7 57,9 20.6 6.3 女 子 0.6 3,2 33,1 46,8 16.2 自信がない おかれているために、初心者に対する指導法・指導段階などの把握が不十分であることを指摘で きよう。したがって、今後の実習の計画に当っては、指導力を高めるためのプログラムも重点的 にとりいれていく必要がある。しかしながら、第8表のごとく水泳実習は将来子供を指導しなけ ればならない立場からr役立つと思う」r非常に役立つと思う」と考えているとは、男女とも90 %以上におよび、指導そのものについての自信はもてなくても、実習の有益なことは認められて 第8泰 この実習が将来子供の指導をすることに有益であったかどうか 役立つとは あまり役立つ 非常に役立 わからない 役立つと思う 思わない とは思わない つと思う 男 子 0.8 2.3 6,3 55,5 35.1 女 一戸 0.4 2.1 6,0 59,6 31.8 いる。これは、集合にはじまり、準備運動、水温測定、人員の確認など、実習にともなう各種の 安全管理の実際を見聞して感じられているものであろう。したがって、今後子供の指導に有益と 認められている実習■の内容に、指導に関して自信を持ちうるような細部についての計画をとりい れることが必要である。そのため、実習で泳力を高めることと並行して、指導の重点、段階、欠 点の矯正はどを内容とした講義なども今後実習内容として考えねばならない。また、この実習が 日常生活とは異なり大勢で宿泊をともなう行事であることがよい人間関係の成立をめざしている ことから、実習期間中において新しい友人が出来たかどうか、という点については第9表にみら れるように、「友人はできなかった」 というものは極めて少く、(男2.4%、 女3.3%)大多数の学生は、多くの友 人ができ、合宿生活による人間関係 の範囲の拡大という目標は充分達成 第9表 水泳実習中に友人はできたか 多くの友人 何人かの を 得 た 友人を得た 友 人 は できなかった 男 子 66,9 30,7 2.4 女 子 54.0 42.7 3.3 されているということがいえる。 実習の中の行事r遠泳」については、講義があり、実施されたr模範遠泳」 「一般遠泳」にほ とんどのものが参加していることもあり、今後教師になった時には、この経験がr役立っ」とう 一85一 けとられていて51.2%(男52.3%、 第10表 遠泳の経験は今後いかされるか 女50−3%)は、「大いに役立つ」と いくらかは わからない 大いに役立つ 役 立 つ 感じていることが明らかになった。 全 員 7,5 41,3 51.2 男 子 9,4 38,3 52.3 女 子 5,9 43,8 50.3 約 水泳実習に先立って行なわれた第一回調査で明らかにされたのは次の諸点であった。 1.水泳実習によって泳力を向上させたいと考えている学生は多く、男子が女子よりも長い距 離のマスターをめざしている。 2.過去の経験では、小学校在学中に水泳の手ほどきをうけているが実際に泳げたのは2∼3 年後のことである。最初から集中的に効果的指導があれば泳げた時期は早められたであろう。 3.泳ぐための利用施設はプールが多くなかでも学校のプールが多い。また、最初に覚えた泳 ぎは、犬がきを含んだクロール・平泳が多く、背泳・横泳がつづいて覚えられているが、ご く少い人数にすぎない。 4.水泳の能力の必要性は強く感じられており、将来の進路が教員であることから1回生の時 期からつよく意識されている。 5.水泳に対する「好ききらい」については男子が女子よりもr好き」という者が多い。反面 「きらい」「大きらい」というものも多く(男25.3%、女28.7%)認められるか、初期にう けた指導のあり方に問題があったのではないだろうか。 第二回調査で明らかにされた点は次のようである。 1.実習は将来の教員という職業につくものにとって極めて有益なプログラムとうけとられて いるが、一方、指導することについての自信の程度は極めて低い。 2.泳法の練習については、蝶泳に関しては不満が多く、今後指導法の研究によって容易にマ スターさせ得るよう工夫する必要がある。 3.実習の期間中に従来知らなかった人と友人になった経験をもったものが多く、人間関係を 広げることに役立っていることが認められた。 4.遠泳の経験は将来のために役立つと多くのものにうけとられている。講義をうけ、遠泳に 参加をしだということが理解を深めたものであろう。 お わ り に 水泳実習の前後に、二回にわたって全参加者を対象として調査を実施し、検討した結果、今後 の実習計画の立案に際して留意すべき点のいくつかが明らかにされた。従来、前年度の反省の上 に立って各種の改善を重ねてきたが、参加者の意向の反映は充分ではなかった点もあり、今後は 本研究で陽られた資料をもとに、よりいっそう充実した内容の水泳実習を計画せねばならない。 一86一