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「水泳指導の手引き」(平成24年8月改訂)

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「水泳指導の手引き」(平成24年8月改訂)
水泳指導の手引き
大 阪 市 教 育 委 員 会
ま
え
が
き
近年、生涯にわたって体育・スポーツに親しむことの大切さが各
所で論じられている。
水泳はあらゆるスポーツの中でも、生涯にわたって楽しむ機会の
多 い ス ポ ー ツ で あ り 、「 泳 げ る 」 こ と は 、 そ の よ う な 機 会 を 積 極 的 に
生かす要素の一つである。
また、水泳は、児童・生徒の体力つくりをすすめるうえで、きわ
めて効果的であり、水泳技能は、安全生活の上でも重要な技能であ
る。
この手引き書は、学習指導要領の趣旨を生かし、水泳の指導と関
連のあり方について述べたものである。一人一人の児童・生徒の指
導にあたっては、この手引き書の内容を基本に、より一層児童・生
徒や学校の実態にあった指導と評価の在り方について研究し、ふれ
あいとぬくもりのある指導を工夫されたい。
どうか水泳の指導と管理に万全を期していただき、学校のプール
を十分活用され、水泳指導の実をあげられるよう念願している。
平成24年8月(2012年8月)
大 阪 市 教 育 委 員 会
目
次
Ⅰ
水泳の特性
1
Ⅱ
水泳の学習指導
2
1 学習内容
2
(1)小学校の学習内容
2
(2)中学校の学習内容
4
(3)高等学校の学習内容
4
2 学習指導の展開
5
(1)学習指導の展開にあたって
5
(2)学習過程の工夫
6
3 水泳指導の要点
8
4 泳
法
16
18
6 救助法
21
7 救急救命法
21
Ⅲ
5 その他の泳ぎ
児童・生徒の健康・安全管理
27
27
2 水泳指導に配慮のいる児童・生徒
27
3 健康維持・安全のための留意事項
28
4 スタートの指導の留意点
29
5 排水口への吸い込まれ防止
29
6 ノーパニック症候群について
30
Ⅳ
1 健康診断
プールの管理
31
1 管理に必要な施設と用具
31
2 プールの開設期間
31
3 プールの使用規則
32
4 プールの衛生管理
33
5 プールに必要な器具・用具
36
6 水泳指導に必要な指導計画・名簿等
36
≪参 考
資
料≫
38
○ 海での水泳指導(臨海水泳)
38
○ 着衣泳について
44
○ 光化学スモッグ
48
○ 学校プール期間外使用願(様式)
50
学 習
資
料(巻末)
52
Ⅰ 水 泳 の 特 性
水泳は、水を媒体にした運動であり、
「水の中で運動する」というところが、陸上における各種
の運動と本質的に異なる点である。したがって、水泳の学習をすすめるにあたっては、指導者が、
水泳に関する水の特性を十分に把握しておくことが必要である。
水泳に関する水の特性は下図のように、物理的、生理的、心理的なものがある。
物理的特性
↓
浮 力
抵 抗
推 力
生理的特性
↓
冷感
心理的特性
↓
緊張
呼吸高進
冷
感……不快感
水の接触……嫌悪感
脈拍高進
呼
吸……恐怖心
無支持点……不安感
中でも、初心者指導では、特に心理的な特性について考慮しなければならない。心理的特性とは
次に述べる要因である。
・ 水の冷たい感じによる緊張感からの不快感
・ 目・鼻・耳などに水がふれることによる嫌悪感
・ 水の中で呼吸ができないことの恐怖心
・ 水の中で体を伏した場合、体の支持点がないことによる不安
したがって、水に対する不安感、嫌悪感、恐怖心をいかに除去するのかが、初心者への指導のポ
イントとなる。
水泳の指導にあたっては、これらの水の特性を把握し、まず十分に水に親しませるようにし、水
の中で自由に運動ができるよう、浮いたり、進んだり、あるいは潜ったりするために必要な技能や
態度を身につけさせることが大切である。
そして、児童・生徒一人一人が持っている今の力を確かめながら、その力で水泳の楽しさや喜
びを味わい、生涯にわたって水泳を楽しもうとする態度を育成することができるよう学習指導を
進めていく必要がある。
水泳の楽しさや喜びは、次のようにとらえることができる。
水 遊 び
浮く・泳ぐ運動
水
泳
水中でのいろいろな 水の中で浮いたり、潜ったりする クロールや平泳ぎなど各
動きに挑戦したり、競 ことに挑戦して楽しむ運動。
種の泳法を身につけ、続
争したりして楽しむ 初歩的な泳ぎ方(補助具利用可)で けて長く泳いだり、より
運動
距離に挑戦したり、競争したりし 速く泳いだりすることを
て楽しむ運動
楽しむ運動
水泳は、水の危険から自己の命を守るとともに、他人の命をも助けることができるなど、安全の
確保に貢献することが期待できる。そこで指導者は、児童・生徒の健康・安全管理や施設・用具の
管理にも十分注意を払う必要がある。
-1-
Ⅱ 水 泳 の 学 習 指 導
1 学習内容
(1)小学校の学習内容
ア 内容の考え方
小学校における学習内容については、学習指導要領において、水遊び(第1・2学年)か
ら浮く・泳ぐ運動(第3・4学年)を経て、水泳(第5・6学年)を取り扱うように示され
ている。これらは水に接して行う運動を児童の心身の発達に応じて段階的に取り扱いながら、
水に対する恐怖心を取り除き、水泳の特性に触れる楽しさや喜びを理解させ味わわせようと
いう趣旨である。この考え方を基本にして考える必要があるが、その場合、泳ぎにつながる
技能や安全に関する態度をはじめ、水遊びや水泳の楽しみ方・学習の仕方を学ばせ、自ら水
泳の楽しさを求める能力・態度を育てることなどを重視するとともに、児童に応じた学習内
容を考えることが必要である。次に示す学習内容は、小学校で取り扱うことが適当と考えら
れる内容を例示したものである。
イ 内 容
区 分
水
遊
び
学年
1
・
2
内
容
○膝上からお腹ぐらいの深さの水中を歩いたり、走ったりする。
○水に顔をつけ、水中で目を開けたり、口や鼻から息をはいたり、
水に浮いたりもぐったりする。
○補助具や人の補助によりいろいろな浮き方ができる。
○水中で息を吐き、顔を上げたときに一気に息を吸う連続したボビ
ングができる。
技
浮
く
・
泳
ぐ
運
動
3
・
4
○体の力を抜いていろいろな浮き方ができ、浮いた状態から安定し
て立ち上がることができる。
○け伸びからふし浮きができる。
○補助具を使って泳ぎができる。
(・ばた足泳ぎ ・かえる足泳ぎ ・ちょうちょ泳ぎなど)
○初歩のいろいろな泳ぎができる
(・ばた足泳ぎ ・かえる足泳ぎ ・ちょうちょ泳ぎ
能
・面かぶりクロール ・面かぶりクロールなど)
○クロールや平泳ぎで呼吸をしながら25m~50m泳ぐことがで
水
5
・
6
きる。
○各泳ぎにつながる水の中からのスタートができる。
○学校の実情に応じて背泳ぎを指導することができる。
泳
-2-
区分
学年
1
・
2
態
内
容
○水遊びのルールや行い方などを工夫し、友だちと仲良く運動ができる。
○プールのきまりや水遊びの約束を守って安全に水遊びができる。
○合図によって素早く集合・整列などの集団行動ができる。
(バディを含む。
)
○自分の力にあっためあてを決めたり、運動の仕方の決まりをつくり、そ
3
・
4
度
5
・
6
れを守ったりして運動ができる。
○互いに励ましあって仲良く運動ができるようにする。
○運動する場所の安全を確かめるなど健康・安全に留意して運動ができる。
○プールのきまりや浮く・泳ぐ運動の約束を守って安全に運動ができる。
○グループや学級全体での集合、整列などの集団行動ができる。
○自分の力にあっためあてを持ち、見通しを立てて計画的に練習ができる。
○バディやグループで協力しながら運動できる。
○プールのきまりや水泳の約束を理解し、自らすすんで守ることができる。
ウ 内容の取扱い
水遊び
水中を歩いたり、走ったり、浮いたり、潜ったりする動きを取り入れた遊びであるが、
できるだけ水圧、浮力等の水の特性を利用した動きを取り入れる。水中で目をあけたり、
水中で口や鼻から息を吐く練習を行う。楽しみながら、水に対する恐怖心を取り除き、水
に親しませるよう配慮する。
浮く・泳ぐ運動
浮く・泳ぐ運動は、泳ぎの基本となる「浮くこと」を中心に取り扱い、いろいろな浮き
方や進み方に楽しんで挑戦できるようにし、水の中で体を自由にコントロールできるよう
にする。ふし浮きの学習では、立ち方についても十分に取り扱う。背浮きの学習において
も、背浮きからの立ち方を必ず取り扱う。
水 泳
水泳には各種の泳ぎがある。クロールと平泳ぎを中心に取り扱うが、学校の実情に応じ
て背泳ぎを指導してもよい。併せて、各泳ぎにつながる水の中からのスタートも取り扱う
ようにする。
-3-
(2)中学校の学習内容
ア 内容の考え方
中学校における学習内容は、続けて長く泳いだり、速く泳いだり、競い合ったりする楽
しさや喜びを味わうというねらいに基づき、泳法を身に付け効率的に泳ぐことができるよ
うにする必要がある。また、生徒の技能の程度によっては、小学校の内容を考慮して選定
し、学習させるようにする。
ここに示す内容は、小学校で学習したクロールと平泳ぎに加えて、背泳ぎとバタフライの
各泳法の技能を向上させるという考え方である。
イ 内 容
区 分
内
容
○クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ
技
泳法及び
○各泳法に応じたスタートとターン
スタート
○水中からのスタートとターンを使って続けて長く泳いだり、一定
能 ・ターン
の距離を泳いだりする。
○得意な泳法で速く泳いだり、効率的に泳いだりできる。
○自己の能力を知り、目標を持って互いに協力し合い、計画的に練
習する。
○勝敗などを認め、安全に対してのルールやマナーを厳守する。
態
度
○事故防止の心得など、健康・安全に気を配ることができるように
する。
○記録会への参加、見学の態度
・グループやクラスなど学習集団の一員としての自覚をもつ。
・進歩の度合いを確認し、仲間の泳ぎを観察して工夫しながら練
習に役立てる。
・規則を守って競技する。
ウ 内容の取扱い
泳 法
クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの泳法を中心に取扱い、正しく泳ぐことや、続
けて長い距離を泳ぐ、速く泳ぐことを学習のねらいとする。
生徒の実態に即して、ふし浮き、け伸び、背浮きを取り扱うなど、発展的に取り扱うよ
うにする。
これまで学習した4泳法から2~4種目を選択し、続けて泳いだり、チームで競い合っ
たりする。
スタートとターン
泳法との関連において水中からのスタート及びターンを取り上げることとする。スター
トについては、安全確保が重要となることから「水中からのスタート」を取り上げること
とする。ターンは進行方向を転換することであり、壁をけって素早く折り返すことに重点
をおく。技能向上の程度に応じて、クイックターンの取り扱いも考えられる。
-4-
(3)高等学校の学習内容
ア 内容の考え方
高等学校における学習内容は、小学校及び中学校での履修状況、クラブ活動や運動部活動、
その他これまでの経験の有無などにより生徒一人一人に相当の泳力の差があることを考慮
する必要がある。そして、技能の程度によっては中学校までの内容を参考にして選定し、学
習させるようにする。
イ 内 容
区 分
泳法及び
技 スタート
・ターン
能
審判法
救助法
内
容
クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、横泳ぎ各泳法と個人メド
レー、リレー、メドレーリレー
各泳法に応じたスタートとターン
出発合図、時計、着順の判定、泳法監察
泳がないで行う救助、心肺蘇生法などの救助法
○自己の能力に応じた課題を設定し、仲間と協力して計画的に練習
する。
態
度
○事故防止に関する心得など、健康・安全に対してのきまりや約束
を厳守する。
○記録会への参加と企画・運営、公正な態度、練習の場、補助用具、
体調などを確認し、安全に水泳を行う。
ウ 内容の取扱い
泳法及びスタートとターン
クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ及び横泳ぎの中から、生徒が能力・適正等に応
じて選択し、一定の距離を速く泳いだり、長く泳いだりするための技能やその練習方法に
重点をおいて取り扱うが、競技種目も取り扱うようにする。
スタートとターンは競泳に関する一連の技能として取り扱うようにする。特にスタート
では個人の能力に応じて、安全に十分留意して行うことができるようにする。
審 判 法
公正な出発合図、正確な計時、着順判定及び泳法、ターン、ゴールタッチなどの監察、
競技規則に基づく違反行為などを取り上げ、各泳法の技能や記録の計測、評価などと関連
づけて取り扱うようにする。また競技会の企画や運営についてもとりあげるようにする。
救 助 法
泳いで助ける方法は、泳力が相当すぐれているものでも危険を伴うので、泳がないで助
ける方法を取り扱うようにする。心肺蘇生法の実習については、科目・保健の「応急処置」
との関連を考慮するとともに、特に安全に留意して取り扱うものとする。
2 学習指導の展開
(1)学習指導の展開にあたって
単元全体の学習活動の段階は、一般的に導入(はじめ)
、展開(なか)
、整理(まとめ)の3
段階に分けられる。
-5-
はじめ(導入)の段階では指導者の指導計画を理解させ、児童・生徒に学習の見通しをもた
せるようにする。具体的には、学習グループの編成、グループ内の役割の決定、体育施設、用
具の準備をするなどして、なか(展開)の段階における学習活動の進め方を理解させることが
必要である。また、適切な学習資料の提供や助言を行い、児童・生徒が主体的に学習計画が立
てられるよう指導の工夫をすることが大切である。
なか(展開)の段階では、児童・生徒が学習活動の主体となり、技能の要点や練習の仕方な
どを理解し、内容を習得できるようにする。この段階では特に、学習内容を身に付けるための
練習の進め方や、協力の仕方についての学習活動が具体的に押さえられている必要がある。
まとめ(整理)の段階では、学習してきた成果を確かめ、学習のまとめをする。水遊びや泳
ぎなどの技能的な内容の学習成果を確かめるとともに、練習の仕方や進め方、行動の仕方につ
いて学習のまとめをし、次の学習に役立てるようにする。
指導者ははじめ(導入)の段階では、学習活動についての基本的な要点を理解させ、なか(展
開)の段階では、学習の課題を見つけたり、解決するための助言や手がかりを与えたりする。
そのほか、各段階での学習評価を行うための資料を収集する活動についても、あらかじめ指導
案に盛り込んでおく必要がある。
また、評価については、「単元の評価規準」だけでなく、
「それぞれの学習過程における具
体の評価規準」を作成し、指導したことに対する客観的な評価ができるようにすることが大
切である。
(2)学習過程の工夫
学習指導を効果的に行うためには、特に単元全体のなか(展開)の段階においての学習過
程の工夫が重要となる。これからの体育の学習指導では、児童・生徒一人一人を伸ばすこと
が極めて重視されている。児童・生徒の多様な活動を学習過程の中に適切に位置づけるため
には、その時点での「今持っている力」に応じて運動を楽しみ深めていけるような学習指導
を進めていかなければならない。つまり、単元を通じて毎時間その運動の特性に十分触れる
ことができるような学習過程を工夫していくことが大切である。
児童生徒と運動のかかわりを一つのまとまりとしてとらえ、このまとまりをできるだけゆ
とりをもった大きな時間で達成していくことが必要となる。
(例)
今持っている力で運動を楽しむ ⇒ 新しい工夫を加えて運動を楽しむ
この学習過程のはじめのまとまりは、今の力を十分生かしてその運動の特性を求めていく
学習の段階であり、次のまとまりは、創意・工夫や努力を加えてその運動の特性をさらに深
く求めていく学習の段階である。そして、それぞれの段階に十分時間をかけて学習を進め、
はじめのまとまりにおける豊富な経験が次のまとまりにおける活動の土台となり、それが一
つの単元を通じて連続的に持続されていく学習活動の流れである。
なお学習過程を具体化するにあたっては、水遊び、浮く・泳ぐ運動、水泳とそれぞれの運
動の特性によって内容の取扱いや時間数の配当などが異なってくる。
また、これらの特性の求め方には、達成的な泳法等の習得、記録への挑戦及び競争的な個
人やグループでの競技会などがあり、これらが水泳の学習過程を導く視点となる。
-6-
〈水遊び(小学校第1・2学年)における学習過程の例〉
1時間の流れ
はじめ
○めあてをたてる。
単元の流れ
はじめの段階
○準備運動をする。
な
○めあて1
か
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
進んだ段階
1時
0分
X時
めあて1
できる水遊びで楽しむ
今できる水遊びで楽しむ
○めあて2
もうすこしでできる水
めあて2
遊びに挑戦する
もうすこしでできる水遊びに挑戦して、楽しむ。
まとめ
○反省
○後片付け
45 分
〈浮く・泳ぐ運動(小学校第3・4学年)における学習過程の例〉
1時間の流れ
はじめ
単元の流れ
はじめの段階
○めあてをたてる。
○準備運動をする。
な
○めあて1
か
⇒
⇒
⇒
⇒
進んだ段階
1時
0分
X時
めあて1
できる浮き方・泳ぎ方
で楽しむ
○めあて2
できる浮き方・泳ぎ方で楽しむ
もうすこしでできる泳
ぎ方に挑戦する
めあて2
もうすこしでできる泳ぎ方に挑戦して、楽しむ。
まとめ
○反省
○後片付け
⇒
45 分
-7-
〈水泳(小学校第5・6学年)における学習過程の例〉
1時間の流れ
はじめ
○めあてをたてる。
○準備運動をする。
な か
単元の流れ
はじめの段階
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
進んだ段階
1時
0分
○めあて1
できる泳ぎ方で楽しむ
○めあて2
新しい泳ぎ方に挑戦す
X時
めあて1
めあて1
今できる泳ぎ方で楽しむ
今できる泳ぎ方で楽しん
だり、新しい泳ぎ方に挑
戦したりして楽しむ
めあて2
めあて2
る
新しい泳ぎ方に挑戦して 記録を測ったり、競争し
楽しむ
たりして楽しむ。
まとめ
○反省
○後片付け
3
45 分
水泳指導の要点
(1)水遊び
水遊びに熱中する中で、知らず知らずのうちに水に親しませ、水の中を自由に歩く、
走る、目をあける、潜る、息を吐く、水に浮く等の運動ができるようにしていくこと
が大切である。
したがって、指導者は水に対する恐怖心を取り除くため「水遊び」と水に慣れた段
階で行う「水遊び」をしっかり整理してとらえておくことが必要である。
例えば顔に水がかかることを極端にきらう児童に「みずかけごっこ」をさせても、
水から遠ざけるだけである。
「ボール遊び」をプールの中で行い、注意をボールに集中
させ、そのうち水が顔にかかっても気にならないようにすることも一つの工夫である。
このように、指導者は水に対する嫌悪感、恐怖心の原因を把握し、あせらず、無理
強いをさせることなく、児童が自ら水遊びに挑戦していけることができるように配慮
することが大切である。
-8-
ア いろいろな水遊びの例
(2)浮く・泳ぐ運動
初心者は特に水に浮くことに怖さを覚えやすい。そこで、この段階では特に指導の
ステップを細かくすることが大切である。同時に浮いた姿勢からの立ち方の指導も行
う。また、潜ることに挑戦させると体が浮く感覚も身につけさせやすい。また、児童
にいろいろな進み方を工夫させ、水の中で自由に自分の体をコントロールする力を身
につけるようにさせていく。
ア いろいろな浮く遊び
・浮く(プールサイドをもって⇒2人組で⇒ビート板を使って⇒一人で)
・だるま浮き
だるま浮き
・クラゲ浮き
・伏し浮き
-9-
クラゲ浮き
※伏し浮きからの立ち方
伏し浮きの姿勢から静かに両足を曲げる
⇒膝がおへそのあたりに来たら前に伸ばし
た両手で水を下へおさえる
⇒最後に頭をあげて両足で立つ
※背浮きからの立ち方
背浮きの状態から静かに両膝を胸に引き寄せる
⇒手をかきながら頭を起こし
⇒膝を見ながら両足で立つ
イ 伏し浮き
・プールサイドへ向かって
・サイドの壁を蹴って
・二人組で
(手の平と手の甲を重ねて水面に沿って引く)
ウ け伸び(いろいろな泳ぎの基本姿勢)
・サイドの壁またはプールの底を蹴る。あごが胸につくまで頭を下げ、両腕で後頭
部をはさみながら体をまっすぐに伸ばして進む。
※け伸びの練習の仕方
・一回のけ伸びでどれだけ進めるか
・25mを何回のけ伸びで行けるか
壁をけって
底をけって
エ ばた足泳ぎ
け伸びの姿勢から、
足首の力を抜き、
太腿のつけ根から交互に脚を動かして進む。
呼吸は、前に伸ばした腕で軽く下に水をおさえながら顔を前に上げて行う。
※ばた足の練習の仕方
・腰掛キック
① プールサイドの端に腰かける。両手をお尻の後方へつき、膝・腰・肩が
一直線になるようにする。
② 足首の力を抜き、親指がふれるくらいの内股で太もものつけ根から交互
に脚を動かして水を蹴りあげる。
- 10 -
・壁キック
頭をつけない場合
① プールサイドの端を片方の手で持つ。
② もう片方は逆手にし、プールサイドの壁を押して自分の腰を浮かせる。
③ 足首の力を抜き、太腿のつけ根から交互に脚を動かす。
※個に応じてヘルパーをつけて行う。
顔をつけて行う場合
① 両手をそろえて軽くプールサイドの端に添える。
② け伸びの姿勢から足首の力を抜き、太腿のつけ根から交互に脚を動かす。
(プールサイドの端を押していることで進む感覚を意識させる)
・板キック
頭をつけない場合
① 脱力して両腕全体をビート板の上において伸ばす。
(あごをビート板の上に乗せる。
)
② 足首の力を抜き、太腿のつけ根から交互に脚を動かして進む。
顔をつけて行う場合
① ビート板の中央に両掌を乗せ、肘を伸ばす。
② け伸びの姿勢から、足首の力を抜き、太腿のつけ根から交互に脚を動か
して進む。
オ かえる足泳ぎ
両脚をそろえて伸ばし、ももを左右に開きながら膝を曲げ
かかとをおしりへ近づける。足首を曲げて足先を外側に向け
ける。曲げ終わった足裏で水を後方へ押しやる気持ちで強く
斜め後ろに蹴るとともに、内ももの力で水を挟み込むような
気持ちで両脚をそろえる。蹴った後はしばらく伸びをとる。
※かえる足の練習の仕方
・ばた足と同じように①腰掛キック②壁キック③板キックがある。
・プールサイドをかかとでペンギン歩き
・プールサイドで腹這いになりキックの練習
☞蹴る回数を具体的に指示すると目標がはっきりして練習に取り組みやすい。
(
「10mを 6 回以内で。
」
「25mを何回蹴って行けるか」など)
カ 背面キック・ドルフィンキックなどいろいろな進み方に挑戦
☞顔を水につけるのが苦手な児童・生徒はクロール平泳ぎに固執せず、背浮き
⇒ 背面キック⇒背泳ぎの指導も考えられる。
- 11 -
キ 面かぶりクロール
け伸びの姿勢からばた足で進み、腕を大きく交互に回しながら進む。呼吸はせず
に鼻から息をゆっくり吐きながら行う。
※腕の動かし方
① 指を閉じスプーンのようなかたちで水をつかむように体の中心を親指が太
ももにあたるまでかく。
② 肘を曲げずに、体のできるだけ遠いところを手のひらを上に向けながらま
わす。
③ 頭の前方で必ず手をそろえ、け伸びの姿勢に戻ってからつぎの手をかく。
(3)水 泳
水泳には各種の泳ぎがある。小学校ではクロールと平泳ぎを中心に取り扱うが、顔
を水につけるのが苦手な児童は背泳ぎを行うなど個に応じた指導を工夫していくよ
うにする。
スタートについては、水の中から各泳法につながるスタートを取り扱い、壁を蹴っ
てのスタートの仕方、プールの底を蹴ってのスタートの仕方を指導する。
ア クロール
〈腕の動作・呼吸〉
・陸上での練習(腕を伸ばし、大きな動作で最後までしっかりかくようにする。)
・水の中での練習(その場で⇒歩きながら⇒呼吸と合わせて⇒ヘルパーを使って)
※かき終わった腕は親指が太ももに触れてから抜くようにする。
※ 呼吸は水面から耳がはなれないように、
伸ばした腕を中心軸に頭、肩、胸を回
転させるようにしながら行う。
「顔を上
げる」という助言はNG。
〈脚の動作〉
(ばた足泳ぎの項参照)
補助の仕方
〈コンビネーション〉
・片手クロール(かいていない方の腕は、まっすぐ前に伸ばす。
)
ビート板を使って⇒小さなビート板を使って⇒ビート板なしで
・ヘルパーを使って
・ヘルパーなしで、大きく伸びをとって泳ぐ
- 12 -
イ 平泳ぎ
〈腕の動作・呼吸〉
・陸上での練習
・水の中での練習(その場で⇒歩きながら⇒呼吸と合わせて⇒ヘルパーを使って)
※ 1,2,3は伸びて浮く。4で腕を
かきながら顔を正面にあげ呼吸する。
〈脚の動作〉
(かえる足泳ぎの項参照)
(コンビネーション)
1,2,3,4のリズムを常に意識して泳ぐ。
※1で脚を素早く曲げて後方へける。同時に両手を前方へ伸ばす。
2,3は伸びて浮く。4で腕をかきながら顔を正面にあげ呼吸する。
ウ 背泳ぎ
〈腕の動作・呼吸〉
・陸上での練習
・水の中での練習(その場で⇒ヘルパーを使って⇒ヘルパーを使わずに)
※1,2、1,2のリズムで素
早く頭の前方遠くへ入れるよ
うにする。
・呼吸は「んーー、ぱっ。んーー、ぱっ。」のリズムで行う。特に鼻からしっかり
呼吸を吐くことを意識させる。
〈脚の動作〉
〈コンビネーション〉
- 13 -
エ バタフライ
〈腕の動作・呼吸〉
・陸上での練習
・水の中での練習(その場で⇒歩きながら⇒呼吸と合わせて⇒ヘルパーを使って)
※1,2、1,2のリズムでゆっくり
両腕を同時に動かす。
※初めは太ももまでかききるとキック
とのリズムが合わなくなることもある
ので、胸のあたりから横へ腕を回すよ
うにする。
〈脚の動作〉
・壁キック
①プールサイドの端を片方の手で持つ。
②もう片方は逆手にしプールサイドの壁を押して自分の腰を浮かせる。
③足首の力を抜き、太腿のつけ根から両脚同時にしなやかにキックをする。
(膝をほんの尐し曲げた状態からまず下へキックするように意識すると自然
とお尻が水面に出る。
)
※個に応じてヘルパーをつけておこなう。
・板キック
・潜水キック
・イルカとび
〈コンビネーション〉
① ドン、ドン、ドン、ドンと 4 回キックし、4 回目の時にクロールの要領で片
方の腕を回しながら呼吸する。
② キック 3 回に腕 1 回⇒キック 2 回に腕 1 回
③ 反対の腕で①から。
④ 両腕で①⇒②
- 14 -
オ スタート
各種の泳法につながる水の中からのスタートを指導する。
〈クロール・平泳ぎ・バタフライ等〉
壁を背にして50cmほど離れて立つ。
① 潜る
②壁に両足裏をつけ上体を倒す ③蹴る ④浮かび上がる
両腕は頭の後ろで伸ばす。
鼻から息を吐く
(背泳ぎ)
プールを背にしてプールサイドの端を持って両足裏を壁に着ける。
足は上下にずらす。
(利き足が上)
①腕を曲げる
②蹴る
③浮かび上がる
鼻から息を吐く
腕を大きく振り頭の後ろで伸ばす
カ ターン
- 15 -
4 泳法
(1)クロール
(2)平泳ぎ
全身をまっすぐ伸ばして水面に伏
全身をまっすぐ伸ばして水面に伏
し浮く。
し浮く。
脚は左右交互に上下させる。
脚は足の裏で水をとらえ、左右同
腕は左右交互に水中をかいて水面
時に後方へ水を押しやり、脚の内
上を前方に戻す。
側で水をはさむように動かす。
顔を横にあげて呼吸をする。
腕は左右同時に円を描くように水
をかき、胸の前からそろえて前方
に戻す。
顔を前にあげながら呼吸をする。
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(3)背泳ぎ
(4)バタフライ
全身をまっすぐ伸ばして水面に仰
全身をまっすぐ伸ばして水面に伏
向けに浮く。
し浮く。
脚は左右交互に上下させる。
脚は両脚同時に上下させ、全身を
腕は左右交互に水中をかいて水面
うねらせる。
上を進行方向へ戻す。
腕は左右同時に水中をかいて水面
上を前方に戻す。
顔を前にあげながら呼吸をする。
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5 その他の泳ぎ
(1)立ち泳ぎ
体を水面と垂直にさせて浮く。
脚はあおり脚、巻き脚、踏み脚等を使う。
腕は体側から胸の前で軽く曲げ、左右対称に水
面と平行に動かす。
頭は常に水面上に出し呼吸する。移動しない。
ア あおり脚
両足を前後に開き脚全体
イ ふみ脚
ウ まき脚
脚を左右に開き膝を左右
脚を左右に開き膝を中
で水を挟むように動かす。 交互に上下させ、足の裏で 心に左右交互に内側に回
水を押す。
正しい立ち泳ぎの姿勢
し足の裏で水を押す。
陥りやすい立ち泳ぎの姿勢
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(2)横泳ぎ
体を横にして水面に浮く。
脚は上側を前方に下側を後方に開いた後、元に戻して水を押し挟む。
上側の腕は肩のあたりから後方へ水を押しやるように動かす。後方に動かした
下側の腕は前方へ伸ばし、肩のあたりまで水をかき、水中を前方へ戻す。
頭は斜めに立てて常に呼吸できるようにする。
※脚は小さく縮めてから左右前後に開きだす。
※上側の脚は足の裏で、下側に脚は足の項で水を押し挟む。最後は両足を合わせる。
その際、交差しないようにする。
※視線は斜め後方。
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(3)潜行
潜っての行動を意味する。水中を泳ぐことにより、
泳ぎの領域が立体的に広がり、泳ぎの楽しさを増し、
水に対する自信を強め、安全や各種の作業に役立つ。
潜ることは大別して次の3つが考えられる。
①深く潜る ②遠くへ潜る ③潜ってとどまり各種の作業をする。
潜ることは遊びの中にも見られるが、基本的には水
面からもぐる潜入と、潜入してから一定の距離を潜っ
て進むことを目的とした潜行とがある。
常に体全身に水圧を受けていることや呼吸ができな
いこと、浮力により体が浮いてしまうことなどが制約
となる。
○潜行する方向に危険性がないことを確かめ目標を
よく見定める。
○数回深呼吸してから 8 分目に息をすい潜入する。
○平泳ぎまたはドルフィンキック、横泳ぎで惰力を
利用して進む。
○常に頭を足より下に保ちながら進む。
〈図1〉
○平泳ぎで進む場合手のかきは腰まで行い、最後は
上にかき上げると体が浮くのを防げる。
〈図2〉
○素潜りの場合は水深2mを限度とする。特に海で
行う場合は水圧が強いので注意を要する。必要に
応じて「耳抜き」のやり方を指導する。
※「耳抜き」
水圧により鼓膜が圧迫された時に感じる違和
感や痛みを無くす、あるいは和らげること。
耳抜きの方法には、いくつかあり、基本的な
方法は、鼻をつまんで鼻をかむように鼻息を
出そうとする方法や、鼻をつまんで唾をのみ
こむ方法がある。
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6 救助法
(1)一般的留意事項
ア 自己の能力と救助の方法を考え合せて、救助にあたること。
自己の能力を考えずに不用意に水に飛び込んで、ともに溺れて犠牲を大きくする
場合が多い。
イ できるだけ多くの人の協力を得ること。
小舟を出すにも、手をつないで水に入るにも、協力者が多いほどよい。子ども
でも人を集めて協力者を増やすことができる。
ウ 冷静に判断し、機敏に行動すること。
溺れている人の位置確認や救助に利用できるものや身支度、協力者の人数など冷
静に判断して機敏な行動をとることが大切である。
エ 溺れている人から目を離さないこと。
溺れている人を見失ったら水底を広範囲に探さなければならない。そのため捜索
に時間がかかり、救助の失敗につながることになる。
(2)安全な救助法
ア 物を使う。
浮力のあるものを投げたり、ロープや棒などで引っぱったりする。その際、救助
者は木や柵など陸上のものにつかまりながら行う。
・ベルト・シャツ・ズボン・マフラー・タオル・木の枝・ペットボトル・ボール等
イ ボートや小舟を使う。
川や海を水泳場にする場合は、ボートや小舟を予め用意しておく必要がある。ボ
ートに乗って救助する際も溺れている人を直接つかむのではなく、オールや乗せて
ある救助具などを利用する。
(3)接近法
溺れている人に泳いで接近し、直接救助にあたることは大変危険であるので、軽々
しく行うべきではない。専門的な知識や技能を完全に習得した者が行える救助法であ
る。
7 救急救命法(心肺蘇生法)
(1)心肺蘇生法の概略
心肺蘇生法(Cardio Pulmonary Resuscitation=CPR)とは、呼吸停止、心停止を
起こした者に対して器具や薬品を使用しないで行う救命処置である。
ここでは、(財)大阪市消防振興協会が平成18年9月に発行した「家庭の救急ノ
ート」ならびに大阪市消防局ホームページの資料にもとづいて説明する。
(2)心肺蘇生法の必要性
けがや病気の中には、心筋梗塞や不整脈のように心臓が突然止まってしまうもの、
呼吸ができなくなり心臓が止まってしまうもの、大出血でショックになり心臓が止ま
ってしまうものなど重篤なものがある。このようなとき、救急車が来るまでに何らか
の応急手当をしないと命は助からない。
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次の図は、心臓や呼吸が止まってから、多量に出血してから、何分くらい経つと命
が助からないかを示している。
大阪市の場合、救急車が現場に到着するまでに平均で約5分かかっている。救急車
が到着するまで手をこまねいてみていたら、助かる可能性のある命を救うことができ
ないことがよくわかる。
元気だった人が心疾患、特に心筋梗塞などが原因で突然倒れた場合には、その心臓
のリズムは、心室細動と呼ばれる種類のものが多いことも知られている。心室細動と
は、心臓の筋肉が不規則にブルブルと震え、全身に血液を送り出すポンプの役割を心
臓が果たせない状態であり、そのまま放置すると死に至る。
平成 16 年 7 月から一般の市民にも
AED を用いて電気ショックを行うこと
が認められた。AEDとは、Automated
External Defibrillator:自動体外式除細
動器の略で、簡単に安全で電気ショック
を行えるようにつくられた医療機器で
ある。電気ショックにより、助かる人は
さらに増えると考えられている。もちろ
ん AED が近くにない場合や AED を用い
た電気ショックの適応とならない場合
もあり、人工呼吸や胸骨圧迫などの心肺
蘇生を行うことは、とても大切なことで
ある。
AED の取り扱いを含めた心肺蘇生や
止血などの応急手当を、いつでも勇気を
持って行えるように日頃から応急手当の
方法を学ぶ必要がある。
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(3)心肺蘇生法の手順
ア 反応をみる
① 周りの安全を確認しながら傷病者に近づく。
② 呼びかける。
③ 軽く肩をたたいてみる。
※呼びかけても、軽く肩をたたいても動きや
返事がないときには、反応がないとする。
イ 119番通報とAEDの手配
① 助けを呼び、人を集める。
② 集まった人に119番通報やAEDを
持ってくるように依頼する。
ウ 呼吸をみる
① 傷病者を仰向けにする。
② 傷病者の胸や腹部の動きを見る。
※呼吸の確認は、10 秒以内に行ってください。
普段どおりの息をしていなければ「呼吸なし」
と判断します。しゃくりあげるような不規則な
呼吸(死戦期呼吸)も「呼吸なし」と判断しま
す。
③ 反応はないが普段どおりの息をしている場合には、吐物等による窒息を防ぐた
め、傷病者を回復体位にする。
④ 回復体位は下あごを前に出し、
上側の肘を曲げ上側の膝を約 90 度曲げて、
傷病者が後ろに倒れないようにする。
エ 胸骨圧迫
普段どおりの息をしていない場合は、
ただちに胸骨圧迫を行う。
【成人の場合】
① 押さえる位置
・胸骨の下半分。この場所を探すには、胸の真ん
中(胸の左右の真ん中で、かつ上下の真ん中)
を目安にします。
② 手の組み方
・両腕で圧迫するために両手を重ねて、両肘を伸ばす。
③ 押さえ方
・指先を傷病者の胸から離し、掌の付け根で
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押さえる。
・傷病者の胸を尐なくとも5cm 押し下げ、胸が元の高さに戻るように十分に
圧迫を解除する。
④ リズム
・1分間に尐なくとも100回のテンポで圧迫する。
・胸骨圧迫を30回行ったら、その後気道確保をして、人工呼吸を2回行う。
※胸骨圧迫を中断する基準
・傷病者が動き出した場合。
・傷病者が普段どおりの息をしはじめた場合。
・AED より胸骨圧迫中断の指示があった場合。
・救急隊などに傷病者を引き継いだ場合。
【小児・乳児の場合】
心肺蘇生法は基本的に成人と同じであるが、
異なる点は、
下の表のとおりである。
胸 骨 圧 迫
対象者
押 さ え る 押さえる
押さえる
押さえる 吹き込む
吹き込む
テンポ
手の形
深さ
量
位置
成 人
も 毎 分 約 中(胸骨の
100 回
下半分)
乳 児
時間
比率
尐なくと
両手
尐なくと 胸の真ん
小 児
人工呼吸
も5㎝
両手また 尐なくと
は片手
も胸の厚
軽く胸が
約1秒
さ の 約
指2本
上 が る 程 30:2
度
1/3
(小児:1歳~8歳未満、乳児:1歳未満)
参考:押さえる手の形
オ 気道の確保
人工呼吸ができる場合は、気道の確保と人工呼吸を行う
① 手を額におく。
② 反対の手の指先を、あご先に当てる。
③ あご先を持ち引き上げながら、頭を後ろに
そらす。
※反応がない傷病者は舌が落ち込み、
空気の通り道を塞ぐ場合がある。
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カ 人工呼吸
気道を確保したら、人工呼吸を開始する。
【成人の場合】気道を確保したまま
① 鼻をつまむ。
※鼻をつまむのは、人工呼吸のため吹
き込んだ空気が鼻からもれるのを防
ぐため。
② 息を吹き込む。
※息を吹き込むときは、空気がもれないように、自分の口を大きく開けて、傷
病者の 口を覆い、1 回あたり約 1 秒かけて、傷病者の胸が軽く膨らむ程度を
吹き込む。
◇これを2回繰り返す◇
※人工呼吸が困難な場合、または、感染防止用具がない場合や準備に時間が
かかる場合は、人工呼吸を省略して胸骨圧迫を行う。
※口対口の人工呼吸で病気が感染する可能性はほとんどない。しかし、一方
弁付呼気吹込み用具などの感染防止用具があれば使用する。
キ 胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返す
胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比率で繰り返す。
① 人工呼吸が困難な場合、又は、感染防止
用具がない場合や準備に時間がかかる
場合は、人工呼吸を省力して胸骨圧迫
を行ってください。
ク AEDの使用方法
① AED到着
・AEDの電源を入れる。
・その後は、AEDの音声に従い行動する。
※「反応」や「普段どおり息」のある傷病者
にAEDを使用することはできない。
※使用の適応は1歳以上
② 電極パッドを貼る
・電極パッドに描かれているイラストの
ように胸部に直接しっかりと密着する
ように貼り付ける。
③ 心電図の解析
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・AEDから「離れて」というような音声
メッセージが流れた場合、心肺蘇生を実施
している人を含めて、傷病者には次の音声
があるまで、誰も触れないようにする。
④ 心電図解析の結果、電気ショックが必要な場合
・
「電気ショックが必要です」とメッセージが
あった場合、自動的に充電が始まる。
・数秒後に充電が完了し、
「ショックボタンを押し
てください」などの音声メッセージや充電完了
の連続音が流れ、ショックボタンが点滅する。
・「離れて」と注意を促し、自分自身と周りの誰も
が傷病者に触れていないことを確認し、ショック
ボタンを押す。
・電気ショックを行ったあとや「ショックは不要
です」などの音声メッセージがあった場合は、
胸骨圧迫と人工呼吸を続ける。
・傷病者が動き出すか救急隊に引き継ぐまで、
AEDを使った心肺蘇生を続ける。
ク 回復体位
反応はないが普段どおりの息をしている場合には、吐物等による窒息を防ぐため、
傷病者を回復体位にする。
※回復体位は下あごを前に出し、
両肘を曲げ上側の膝を約 90 度曲げて、
傷病者が後ろに倒れないようにする。
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Ⅲ 児童・生徒の健康・安全管理
1 健康診断
水泳は、水圧や水温と気温との温度差などの影響を受けながら行う全身運動なので、児童・
生徒の健康状態によっては事故につながりやすい運動であることを留意しなければならない。
児童・生徒の健康状態を以下の健康診断や健康観察によって事前に確認しておくことが重
要である。
(1)定期健康診断
年度初めに実施される定期健康診断は教育活動の実施に役立たせるものである。したが
って、水泳をすることの適・不適の決定に当たっては学校医との連携をもとに、定期健康診
断の結果を十分に活用することが重要である。定期健康診断で発見された疾病の中で、水泳
学習が不適と判断されるものについては、事前に治療を受けるように指導することが大切で
ある。
(2) 臨時の健康診断
定期健康診断を実施してから、水泳実施の時期まで期間のある場合は、臨時の健康診断
を実施することも考えられる。なお不適と診断された児童・生徒には、個々の立場を考慮
して十分指導を行わなければならない。
(3) 保護者による健康観察
食欲、睡眠、身体状態を水泳学習日の朝、入念に観察する。水泳学習が不適と判断され
るときはその旨を学校(担任)に連絡する。
(4) 指導者による健康観察
ア 毎朝の観察
日常の観察に加え、水泳学習がある日は特に入念に行う。
イ 指導初めの観察
準備運動~シャワー~水慣れ時に顔色・動作などを具体的に観察
する。
ウ 指導中の観察
休憩時、プールサイド歩行時、スタート前など常に顔色・動作・
発言・つぶやきなどに注意をはらう。児童・生徒同士の観察を活
用する。
(バディ)
2 水泳指導に配慮のいる児童・生徒
水泳指導実施にあたり配慮を要する児童・生徒や水泳を禁止させる児童・生徒の決定は、
学校医等の指導を最優先とするが、教育的な配慮も加え決定するために、校内で関係教職員の
総合的な判断で行う。
水泳は可能であるが、内容に制限や配慮を要する児童・生徒については、指導者ならびに、
他の児童・生徒も認識できる工夫が大切である。また指導にあたっては学校医等との連携を図
るとともに、保護者や本人と十分に話し合い、本人の立場を十分に理解してその方向を考える
必要がある。
※水泳指導に配慮を要する児童・生徒の疾病例
○心臓病・腎臓病の者(専門医の診察判断が必要となる。
)
○呼吸器疾患の者(気管支炎、肋膜炎、肺結核性、喘息は学校医の指示に従う。
)
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○急性中耳炎、急性外耳炎、伝染性結膜炎等、発作を伴う疾病を持つ者。
○病気直後、手術直後の者。
○高濃度塩素に過敏な者
見学者の指導については、一人一人の児童・生徒に学習の機会を確保するという立場から、
学校として統一した見解を持って対応しなければならない重要な事項である。
見学の理由はいろいろであり、その状態も様々であるが児童・生徒一人一人の心身の状態
に応じて学習に参加させることが必要である。具体的な参加内容としては、次のようなことが
考えられる。
① グループと行動をともにし、プールサイドで、計時、監視、学習カードの記録などのほ
か、学習資料を利用してグループでの学習に参加させる。
②見学ノートと実技に関する資料を持たせ、学習内容をメモするとともに、副読本により学
習内容の理解を深めさせる。
なお、熱中症に対する対策を講じることはもちろん、日焼けに対しての配慮やその他安
全面に対する配慮が必要である。
3 健康維持・安全のための留意事項
(1)準備運動
準備運動は事故を防ぐためにも不可欠のものである。
準備運動の量は、気温が高く発汗が著しいときは尐なくしたり、気温の低いときには身体
が温まる程度の運動量にするなどの配慮が必要である。
運動の内容は、身体すべての部分の屈伸、回旋、捻転等を取り入れた運動を行うことが
大切である。また各関節の可動性を増すような運動、筋肉を十分伸ばすような運動、筋肉
をリラックスさせるような運動を行うようにする。
(2)バディシステム
バディシステムとは二人一組の組を作り、互いに相手の安全を確認しなら活動する方法の
ことで、事故を未然に防ぐだけでなく、学習効果を高めるための手段として有効である。
具体的には指導者の「バディ」という号令で手をつないで挙げる、あるいは腰を下ろすな
どの行動をとり、お互いの安全を確認する。その際相互に相手の表情や行動の様子を観察し、
異常があれば指導者に直ちに連絡することを指導する必要がある。さらに、互いのめあてを
確認し、相手の泳ぎを見あいながら学習を進めることができるので、上達したことや達成し
たことを互いに確認しあい、励ましあいながら楽しく学習を進めることができる。
(3)水泳の学習時間
学習時間は学年、泳力、気象条件(気温、水温、日照、風力等)を考慮しながら決定しな
ければならない。したがってここで適切な時間を具体的に示すことはできない。
初心者や低学年を対象とするときは十分な配慮が必要であり、条件が整ったからといって
安易に時間を延長することや、落雷が予測される場合は無理に実施することがないようにす
る。
また、屋外プールでの水泳学習は夏の時期に限られる。したがって、水泳の楽しさを十分
に味わわせるためには限られた学習時間を効率的に使用するよう工夫する必要がある。
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そのためにもプール使用上のきまりや水泳学習の約束を守ることの事前指導を徹底する
ことや、更衣室からプールへ短時間で移動できる安全な動線確保に努めるなどの環境整備も
大切なこととしてあげられる。
(4)休 憩
休憩時は疲労の回復に努めさせることが原則であるが、事故防止の心得や安全な救助法、
あるいは学習上の問題点についての指導の場面とすることができる。
熱中症になりやすい気象条件や紫外線の影響が強いと考えられる場合は、日陰の涼しいと
ころで待機させるなどの配慮が必要である。反対に気温や水温が低い場合は衣服の着用や体
温を上げるための運動や各泳法につながる陸上での練習を取り入れたりする工夫が望まれ
る。
(5)監 視
指導者と学習者相互による安全対策のほか、特に夏休み中の水泳指導等では、専任の監視
係を設けることも考慮する必要がある。監視の担当者は監視の場所、要点などについて事前
に検討をし、その内容について十分把握しておかなければならない。
監視する位置は、プール全体が見渡せ、死角となる所がない位置で行わなければならない。
監視台など高い位置からの監視が望ましい。
監視者は水面上はもちろんのこと、水底にも視線をむけることや水深が深い部分、水面が
光の反射でひかっている部分などに特に注意を払うことが大切である。
使用する児童・生徒の人数に応じて監視の人数を増減する必要があるが、最低2名以上の
監視者(指導者も含む)が必要である。
(6)指導終了後の措置
整理運動をした後、身体や目、口を水道水で洗う習慣を身につけることが必要である。
4 スタートの指導の留意点
プール水泳の事故には、これまで飛び込み時に水面に対して垂直に入水し、水底に頭部を
打ちつけて起こるものが尐なくない。したがって、小・中学校におけるスタートとの指導は「水
中からのスタート」のみを取り扱うこととし、飛び込みの指導は行わないこと。高等学校にお
けるスタートの指導については、個々の能力に応じた「段階的な指導を行うとともに安全を十
分に確保すること」を十分に踏まえ、生徒の技能の程度や水泳の実施時間によっては、水中か
らのスタートを継続するなど、一層段階的に指導することが大切である。また、
「保健分野」
における応急処置の内容との関連を図ること。
いずれも、各泳法につながる水中からの正しいスタートを十分に指導する必要がある。
※
「水中からのスタート」
:水中で両足あるいは左右どちらかの足をプールの壁に付けた姿勢から、
スタートの合図と同時に顔を水中に沈めながら力強く壁を蹴った後、水中で抵抗の尐ない姿勢
になり浮きあがりのためのキックを用いて、より速い速度で泳ぎだすこと。
( 学習指導要領による )
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5 排水口への吸い込まれ防止
プール水泳の事故には、排水口へ脚などが吸い込まれるという事故が尐なくない。したがっ
て排水口の吸引力は非常に強く、危険であることを事前に周知徹底しておかなければならない。
また事故防止のため、堅固な金網や鉄格子等の蓋で排水口を完全に覆うようにしっかりと固
定しなければならない。さらに劣化やねじの緩みがないかなど定期的な点検を怠らないように
する。排水しながら指導する場合は、指導者が蓋の上に立ち、児童・生徒が近づかないように
誘導する。
6 ノーパニック症候群について
ノーパニック症候群とは何らかの前兆、パニック、吸気へのもがきもなく急に意識を失っ
てしまい溺水することをいう。
潜水前に必要以上に深呼吸をすることにより血液中の二酸化炭素濃度が低下する。そのま
ま潜水を行うと、血液中の酸素が使用され低酸素状態になるが、もともと血液中の二酸化炭素
能動が低いので、二酸化炭素が増加しても息苦しさを感じることがなく、低酸素状態が増すこ
とになり意識を失ってしまう。
したがって、以下のような点に注意することが大切である。
・潜水が教材として必要であるのか十分検討する。
・潜水を行う場合はその危険性を児童・生徒に周知徹底する。
・潜水の前に必要以上に深い呼吸をしない。
・無理に息をこらえず、おかしいと思ったらすぐに潜水を中止するように指導する。
・潜水するものと監視するもののマンツーマン体制を確保する。
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Ⅳ プールの管理
水泳指導にあたってはその諸設備や用具の管理に留意するとともに、これらを十分活用し効果
を高めるよう努めなければならない。
1 管理に必要な施設と用具
学習するすべての児童・生徒が衛生的で安全に使用できることを前提として、すべての施
設、用具の数を整えるよう努める。
(1)足洗い場・シャワー
プールへ入る前の足洗い場・シャワーの適切な使用はプールの水を汚さない基本である。
ていねいにそして一定時間使用する習慣を身につけさせることが大切である。シャワーは頭
上だけでなく側方からも勢いよく噴射する必要がある。
なお、腰洗い槽を使用する場合、高濃度の塩素に過敏等の傾向がある児童・生徒に対して
は、医師、保護者等とよく相談した上で、シャワー等による洗浄に代替えすること。
(2)洗顔・洗眼施設
水栓が上向きで利用者に応じた適当な数があり、立ったまま使用できるのが望ましい。
(3)プールサイド
プールサイドは、準備運動、教えあい、フォームの練習などにも使用するので、安全で清
潔であるように努める。またビート板などの補助具や救命用具の保管場所を決め、使いやす
いよう整理整頓に心がける。
(4)便 所
できればプール構内に設置することが望ましい。
(5)更衣室
清潔に努める。指導後忘れ物の点検を行う。
(6)排水口
蓋の留め具に緩みがないか点検する。
2 プールの開設期間
プールの開設期間は、大阪では 6 月から9月をあてられているが、学校の特別な事情や、
施設の状況、気候などにより適宜伸縮すること。
開設期間中でも天候・気温の変化などに絶えず留意して、毎日、実施するか否かを決める
ことが肝要である。特に光化学スモッグ発生時の措置等については、対策に遺漏のないよう十
分配慮すること。
(巻末資料参照)
水温について文部科学省では「低学年では23℃以上であることが望ましく、高学年や上
級者は22℃以上が適当といえる。
」としているが、実施の可否について決定しにくい場合は、
指導者が実際にプールに入り状況判断することが望ましい。
一方、より安全で効果的な水泳指導を行うため、水温や気温に合わせて指導を工夫するこ
とも大切である。
(例1) 水温より気温が著しく高いとき(水温26℃気温33℃など)
換水直後、気温が急に上がった日などに起こる場合がある。特にシャワーの水
- 31 -
が非常に冷たく感じるので、前もって水が非常に冷たく感じることを伝えておく。
水浴びや水慣れをゆっくり丹念に行わせる。
(例2) 気温より水温が高いとき(水温26℃、気温25℃)
)
換水後、しばらく暑い日が続いたあとの雤天、あるいは曇りの日におこる場合
がある。プールサイドで待機する時間をできるだけ短くするようにする。プール
を横方向に泳いだり、プールの中で待機させるなどの工夫をする。また風が強い
ときも陸上では体感温度が下がるので注意する。
3 プールの使用規則
児童・生徒の安全と伝染病を予防するためには使用者に一定の制限を加えるようにし、ま
た指導者がいないときの使用は禁止するなどの措置を取らなければならない。そのためにはプ
ールの使用規則を定めておくのがよい。この規則はその学校の児童・生徒だけでなく、他校職
員や保護者などすべての使用者に守らせるようにしなければならない。
≪使用規則≫(例)
(1) このプールは本校の児童・生徒・職員及び本校の学校長が使用を認めた者以外の使
用はできません。
(2) 先生がいないときは水に入ってはいけません。
(3) 体の調子が悪いときや激しい運動の直後は泳いではいけません。
(4) プールに入る前には必ず用便を済ませ、鼻をかんでおきましょう。
(5) プールのコンクリートの上では履物を脱ぎましょう。
(6) 水に入る前に必ず準備運動をしましょう。
(7) 水に入る前には足洗い場、シャワー等で体をよく洗いましょう。
(8) 水に入るときは足先からゆっくり入りましょう。
(9) 飛び込みは先生の指示・指導で行うようにし、勝手に飛び込んではいけません。
(10) 溺れるまねをしたり、ふざけたりしてはいけません。
(11) 使った用具は元通りにきちんと片付けましょう。
(12) 理運動をしましょう。
(13) 使用後はシャワーでよく体を洗い、洗眼しましょう。また耳に入った水の処理もし
ましょう。
※洗眼については、水圧のかかる蛇口付近ではなく、水圧の弱い先端部分で洗うように
しましょう。
(14) プール内に無断で物を投げ入れてはいけません。
(15) 決められた時間以外は入ることはできません。
以上のきまりを守れない人はプールの使用はできません。
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4 プールの衛生管理
学校薬剤師、学校医等の指導・助言を受けて実施すること。
(1)一般的留意点
ア 更衣室、トイレ、足洗い場、シャワー等の清掃は1日一回以上は実施すること。
イ くずかごは適当数を更衣室及びプール周辺に備え付けること。
ウ 使用前に排水口、循環ろ過機取水口のねじやボルト等の緩みがなく、安全に固定
されているか確認すること。
エ プールの水質は飲料水の基準に適合にするものであることが望ましい。
① 遊離残留塩素濃度は0.4 ㎎/ℓ以上であること。
また 1.0㎎/ℓ以下であることが望まし
い。
② 水素イオン濃度は、pH 値 5.8 以上 8.6 以下であること。
③ 過マンガン酸カリウム消費量は、12 ㎎/ℓ以下であること。
④ 濁度は 2 度以下であること。
(壁面から3m離れて壁面がはっきり見える程度)
⑤ 大腸菌群は検出されてはならない。
⑥ 一般細菌数は1㎖中 200 コロニー以下であること。
⑦ 総トリハロメタン濃度は 0.2 ㎎/ℓ以下であることが望ましい。
日常の検査
・遊離残留塩素濃度の測定:その日の使用前とその後1時間ごとに1回実施
・水素イオン濃度:朝1回測定する。
・濁度=透明度: 1日1回
定期検査
毎年1回プールの使用期間中に行う。ただし水質①②③④⑤⑥については、使用
日数の積算が 30 日を超えない範囲で尐なくとも1回行う。また⑦については使用期
間中に1回以上適切な時期に行う。
オ 使用前にシャワーをかかることには、水温に体を慣らす目的と体に付着した汚れ
を落とす目的があるので、十分に行うよう指導が必要である。
カ 使用後にシャワーをかかることには、使用中に体に付着した細菌や薬品等を洗い
流す目的があるので、十分に行うよう指導する必要がある。
※浄化装置のついていないプールの場合は腰洗い槽を使用することが望ましい。腰洗い
槽の遊離残留塩素濃度は 50~100 ㎎/ℓとする。高濃度塩素剤に過敏な体質の児童・生
徒は腰洗い槽を使用せず、シャワー等の水道水で体を入念に洗浄することで代替する
こと。
(2)浄化方法
ア 換水
換水には全換水と一部換水がある。一部換水は水の使用量に比して汚染除去率が低い。
(全換水の63%ほどになる、
)水使用量に対する汚染除去率を高めるためにも全換水が望
ましい。
※プールの水を換水する際には所轄の消防署へ連絡を取らなければならない。
(防火用
水としているため)
- 33 -
イ 浄化装置
循環ろ過装置は正しく操作し、水の浄化に努める必要がある。特に、循環ろ過装置内
の圧力が上がってきた場合は、逆洗を行うなど、浄化の効果を保つようにする必要がある。
また、使用後も可能な限り装置を稼働させ、浄化に努めるようことが望ましい。
浄化装置には次の3種類がある。
(大阪市立校はほとんどがけい藻土を利用したものを
使用している。
)
ろ材
特
圧力式は設置位置がプールの水面上でも可能で、重力式よりも簡単
砂
であるがろ過速度が均一にならない。
アンスラサイト
けい藻土
性
砂式よりもろ過性能はよく、逆洗時の使用水量は尐ない。
フィルターの寸法は小さいがろ材のコストが高い。
ろ過性能が最も高く、良好な水質を保てる。寸法も上記に比して小
さい、逆洗時の使用水量は尐ない。けい藻土の補給が必要。
(3)消毒方法
ア 消毒剤の種類と効果
プールの水の消毒には主に塩素剤が用いられ、最も効果があると考えられている。
通常、使用されている塩素剤の種類は次亜塩素酸ソーダ(有効塩素役10%)
、次亜塩
素酸カルシウム錠剤(有効塩素約70%)
、次亜塩素酸カルシウム顆粒剤(有効塩素約7
0%)などが主なものである。
これらの塩素剤は、その効果が優れている反面、効力が早く失われてしまうのが欠点
である。特に高温、日光直射、使用人数、汚れなどで急速に効力を失う。そこで塩素剤を
消毒に使用するときは連続して注入することが望ましく、循環ろ過装置の配管系に塩素剤
注入装置を直接連結して連続的に注入するか、下表を参考にして人手による投入を行い、
消毒効果を維持しなければならない。消毒効果を維持する目安の残留塩素濃度は 0,4mg/ℓ
~1.0 mg/ℓであるので、常に 0,6mg/ℓを確保するように管理する。
《塩素剤の使用基準表》1 回の投入量(残留塩素濃度を 0,4mg/ℓ~1.0 mg/ℓに保つ場合の量)
塩素剤
次亜塩素酸ソーダ
次亜塩素酸カルシウム錠剤
次亜塩素酸カルシウム顆粒
100㎥
400 ㎖~1.0ℓ
20錠
100g~150g
150㎥
600 ㎖~1.5ℓ
30錠
150g~225g
200㎥
800 ㎖~2.0ℓ
40錠
200g~300g
250㎥
1000 ㎖~2.5ℓ
50錠
250g~375g
300㎥
1200 ㎖~3.0ℓ
60錠
300g~450g
プール容量
※塩素剤すべてが溶解したとき
- 34 -
イ 使用方法
① 次亜塩素酸ソーダ
そのまま、あるいは適当に水で薄めて使用でき、循環ろ過装置がなくても連続注入
ができて便利である。
② 次亜塩素酸カルシウム錠剤
水に徐々に溶解して長時間にわたって一様に塩素を放出し、連続的に長時間(3~4
時間)プールを使用することができる。※金属性のプールでは使用不可
③ 次亜塩素酸カルシウム顆粒
溶解性が非常によく、投入後直ちに所定の効果を発揮する。ただし児童・生徒がいな
いときに投入したり、水に溶いてから投入したりすることが必要である。
※塩素剤の使用量、使用方法などは薬品により異なるので、使用上の注意をよく理解
し、それぞれの薬品にあった使用を心がけなければならない。
(4)遊離残留塩素濃度の測定(プール日誌等に測定結果を記入し管理を徹底すること)
ア 方法
試験管2本に採水し、その一本にジエチル-P-フェニレンジアミン法(DPD 法)試薬を
投入し反応色によって測定する方法などがある。いずれにしても各メーカー等によって着
色や使用量などが異なるので、取扱説明を参考にして行うこと。
プール全体の濃度を測定するため、プール中央とプール隅2か所、合計3か所の水面下
30cmあたりを採水し、直ちに測定するのが望ましい。
イ 回数
文部科学省の基準では「1時間に1回塩素濃度を測定する」ことになっているが、前述
したように気候条件等により効力を失う速さが違うので、授業で使用する直前と使用中に
測定する必要がある。
※使用していなくても、晴天時の紫外線が多いときは 10 分間に 0,1mg/ℓ~0,2mg/ℓ消耗
するといわれている。
ウ pH 値と殺菌力
プール水質基準では pH 値 5.8 以上 8.6 以下となっている。
残留塩素の殺菌力は水の pH 値が7(中性)より高い時(アルカリ性)は弱くなり、pH
値が7より低い時(酸性)は強くなるので、できるだけ pH 値7に近づくように管理する
必要がある。
BTB 溶液などを用いて、その日の使用前一日1回測定する。
(5)プールを媒介として起こるうる疾病・感染症
・急性外耳炎、中耳炎・夏風邪症候群・ヘルパンギーナ・急性リンパ結節性咽頭炎
・熱性咽頭炎・アデノウイルス肺炎・咽頭結膜熱(プール熱)
・急性濾胞性結膜炎
・流行性角結膜炎(はやり目)
・急性出血性結膜炎(アポロ熱)
・手足口病
・伝染性軟属腫(みずいぼ)
・ウイルス発疹症・伝染性濃か症(とびひ)
・胃腸炎
・ウイルス性肝炎・乳児下痢症・細菌性赤痢・足白癬(みずむし)
・腸チフス……等
- 35 -
5 プールに必要な器具用具
(1)安全管理上必要な物
・水温計 ・寒暖計 ・残留塩素測定器 ・pH 値測定器 ・医薬品 ・毛布 ・AED
・酸素吸入器 ・飲料水 ・散水用ホース ・バケツ ・清掃用具 ・救助用具など
(2)指導上必要な物
・ビート板 ・ヘルパー ・コースロープ ・フィン ・放送設備 ・ゴーグル
・プールフロアーなど
6 水泳指導に必要な計画、名簿等
・水泳指導計画 ・指導日誌(実施日誌) ・健康観察カード ・各種参考資料
・各種名簿(健康安全上配慮を要する児童・生徒の名簿等)
例 プール学習健康観察カード
○
平成
年度
(
)
年
組
月/日
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
なまえ
保護者印
見学理由
担任印
月/日
保護者印
見学理由
担任印
○プールのある日には、常にこのカードを持たせて
(記入例)
ください。
○プールに入れる場合は保護者印の欄に印を押
保護者印
し、見学の場合は×を記入してください。
○見学理由欄に見学の理由を記入してください。
見学理由
・かぜ ・発熱 ・頭痛 ・腹痛 ・けが等
○カードを忘れた時や保護者印のない場合は、見学
となります。
- 36 -
担任印
例
○
プ ー ル 指 導 日 誌
月
日(
)
pH 値
記録時刻
(5.8-8.6)
朝
大阪市立○○○小学校
学年
1
・
2
3
4
5
・
・
・
・
教頭印
主任印
残留塩素
薬剤投入量
担当者
天候
透明度
気温
水温
mg/
;
校
時
校長印
℃
人数
見学者
合計
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
人
気温
℃
℃
℃
℃
℃
水温
℃
℃
℃
℃
ℓ
残留塩素
錠
薬剤投入量
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
mg/ℓ
錠
錠
mg/
人
人
人
℃
℃
ℓ
錠
mg/
6
・
人
人
人
ℓ
錠
mg/
人
人
人
℃
- 37 -
℃
ℓ
錠
指導者
≪参考資料≫
○海での水泳指導(臨海水泳)
1 臨海水泳のねらい
自然の海での水泳は、プール水泳とは異なり様々な変化があり、普段経験できない楽しさ
を味わうことができるが、たくさんの危険も存在している。
したがって実施に当たっては、綿密な計画を立て、特別の指導と相当の注意が必要となる
が、それらに対する配慮がなされることにより、プール水泳では得られない多くの成果が期待
できる。
例えば、臨海水泳で取り扱う遠泳は、
「長く続けて泳ぐ」
「長い距離を続けて泳ぐ」という
課題を達成するためのよい機会といえる。その他、臨海水泳のねらいとしては、自然とのかか
わりの深い運動の指導の充実、集団生活に関する内容やレクレーションとしての効果等をあげ
ることができる。
2 臨海水泳の特性
プール水泳と比較して次のようないくつかの特性が考えられる。
(1)波や潮流、潮の干満など変化する水での泳ぎを経験できる。
(2)水面が広いので、一度に多くの者が込み合うことなく泳ぐことができる。また長い
距離を折り返しなく泳ぐことができる。
(3)海水は真水と比べて浮力が大きいので、楽に浮くことができる。
3 臨海水泳実施上の留意事項
海浜における水泳指導の実施に当たっては、事前調査を行い、指導計画と指導組織を確立
し、設備や用具の整備に万全を期さなければならない。
練習中の監視や遠泳の隊列や監視については例を上げているが、各校の児童・生徒の実態、
指導者・引率者の実情に合わせた無理のない方法を計画し実施する必要がある。
(1)事前調査(下見の実施、用具の点検など)
ア 次のような事項を綿密に調査検討し、水泳場を決定する。
(a)水泳指導に必要な施設の有無
(b)危険回避の施設の有無。及び位置や数。
(c)海浜の安全性。
(潮流の有無、干満の水位の差、海底の状況、清浄度など)
(d)付近に流れ込む河川の有無。あればその河川の清浄度。
(e)トイレ・脱衣場・シャワーなどの公共設備の有無。
(f)飲料水の水質。
(g)その他危険物の有無。
イ 監視船(ボート)が必要数手配できる施設の有無。
ウ 水泳区域を明示するコースロープやブイなどの点検・整備。
エ 救命用具、医療品などの確認。
オ 緊急時に備えての事前連絡。
- 38 -
(a)所轄の警察署・消防署・保健所など
(b)近辺の病院の所在地。休日診療の体制。
(c)沖への遠泳などを行う場合は必要に応じて海上保安庁や海上警察など
(2)事前準備
ア 学校の実情、児童・生徒の実態、指導内容を考慮して能力別班編成を行う。1班の人数
は20名以内で指導者は必ず1名以上つく。
イ バディシステム(二人組で常に行動をともにし、互いの安全確保に努めるシステム)を
採用する。
ウ 班名簿を作成し、番号の順を明確にする。
エ 命札(海から出たかどうかを確認するための名札)と命綱(指導者や救助者が溺者を救
助するための腰ひも)を用意し、それらを使用する目的や取り扱い方を徹底する。
※命札は、班ごとに色を変えたり、着け外しがしやすいようなゴムをつけたりして、
工夫したものを作成する必要がある。
※命綱は、幅のある帯のような布製が望ましい。
オ 水泳帽は臨海水泳用に、遠くからでもはっきり確認できるような色の物を用意し、番号
を記入したり、班ごとに色を変えたりするなどの工夫をすることが望ましい。
(3)水泳学習直前の留意点
ア 指導者は学習前にあらかじめ必ず海に入り、水温・潮流・海底などの様子を確認し、活
動区域(注1)を決定する。
また、児童・生徒に海の様子を前もって伝える。その際、特に活動区域の水深が一定で
はなく、どこがどれぐらい深いか、海底はどのような傾斜になっているのか、大きなくぼ
みがどこにあるかなど、海底の様子については細かく知らせておくことが望ましい。
(午
前午後それぞれ1回目の指導前)
(注 1) 学習内容や波の高さ、海底の傾斜状況、さらには他の利用客の状況などいろい
ろな条件を考慮して活動区域を設定する必要がある。
例えば、
「波が高い時に伏し浮きや背浮きを指導する場合、波が崩れる浜際は
さける。
」
「立ち泳ぎや距離泳(詳細は後述)を指導する場合はある程度の水深が
ある場所を設定する。
「午前中より潮が満ちたときは沖のコースロープを浜側に
」
寄せて設定し直す。
」など
最大水深はいろいろな条件を熟考して設定することが望ましい。各校設置のプ
ールの深さを参考にするのもよい。
イ 基本的には各班2列縦隊で、海を背にして本部前に整列させる。
(浜の幅や方角を考慮
すること。
)
ウ 出欠、見学人員の状況は本部で確実に把握する。
エ 監視船(ボート)上からの監視員と陸上からの監視員を必ず配置し、徹底を図る。
オ 水泳学習開始と終了の合図や緊急時の合図の周知徹底を図る。
(4)水泳学習中の留意点
学習時間(水の中での活動時間)は、1 回あたり 10 分から 15 分程度、休憩時間も 10 分
から 15 分程度が望ましい。
(天候、気温、風、水温、波などの状況により調節する。
)
- 39 -
ア 海へ入るとき(学習開始)
【太鼓をゆっくり連打する】
(a)命札を所定の位置に置き、命綱の結び目を確認させる。
(b)指導者は常に児童・生徒を先導する位置にあること。
(c)2 列縦隊を崩さず、ゆっくり全員を膝のあたりまでまず入らせる。
(d)腕・頭・胸の順で水をかけ、身体全体をゆっくり水温になじませる。
(e)腰の深さぐらいまで進み、頭まで潜ったり、だるま浮きや伏し浮きなどを何度も行わ
せたりして、海水に十分体を慣らせる。
イ 活動しているとき(学習中)
(a)指導者は常に沖に位置し、全体を見渡せるようにする。
(b)常にバディを意識させ、離れて行動するようなことは絶対にないようにする。
(c)浜に平行、または浜に向かって泳ぐようにさせる。
(d)活動区域の水深が一定ではないことを常に意識させるような指示、助言を与える。
(e)陸上と海上からの監視員をおく。全体を見渡すとともに、各班の指導者の注意が行き
届きにくい場所に位置する児童・生徒(泳ぐ順番を待っている者や距離泳をしている時
の後方に位置する者)への監視を特におこなう。
ウ 海からあがるとき【太鼓を速く連打する】※緊急時は笛を強く続けて吹く。
(a)指導者はバディがそろって速やかに浜に上がるよう指示を出す。
(b)浜に上がったら、すぐに命札をとり整列するようにさせる。
(c)全員海から出たことを確認し、本部へ報告し、健康観察を行う。
エ 休憩中
(a)水に触れたり、入ったりするようなことはせず、腰を下ろして休憩させる。
(b)常に、適度な水分補給や日焼け防止など、児童・生徒の健康管理に配慮する。
オ 指導者・監視員等の配置例
例1
本
例2
部
浜
本
浜
☆
☆
☆
:コースロープなど
☆:陸上監視員
○:指導者
:監視船
◎:浮き具(タイヤチューブなど)
○
○
○
部
●:浮き具を持った監視員
●
○
○
- 40 -
●
○
○
○
(5)距離泳(ミニ遠泳)
海での水泳学習の大きな目標として、長い距離を泳ぐ「ミニ遠泳」を設定及び実施するこ
とによって、次のような教育効果が期待される。
○ 互いに協力し励まし合うことによって、信頼関係や思いやりの心が育つ。
・自分自身に打ち克ち、一人一人が達成感を味わうことができる。
・目標を持ち、それに向かって努力することの大切さを学ぶ。
・海水の浮力を利用し、ゆっくり長く泳ぐことによって、生涯スポーツにつながるより
安全な泳ぎ方の基礎基本を身につけることができる。
実施に際しては、当日の児童・生徒の泳力、体調、精神面及び天候や水泳場の状況などを
検討し、実施の可否及びその内容(時間・補助具・場設定等)を決定する。
ア 周回コースを泳ぐ実施方法
浮き役
●
○
浮輪
○
コースロープ
○
○
○
浮輪
コースロープの端を基点に、コース
ロープの内側からスタート。
1周 約 100m
10 分泳で 250m計算
●
浮き役
泳ぐ
歩く
(海)
・ 浮き役は浮き具を持つ。
陸上監視
(浜)
◆
隊列・隊形例
○ 児童
● 指導者
監視船
●
最後尾
○
○
○
○
○
○
7
○
6
○
5
○
4
○
3
○
2
○
○
●→
○ 児童
浮き具
浮き具
● 指導者
←●
監視船
浮き具
先頭
先頭
●→
←●
●
●
1
○
浮き具
○
○
○
○
○
○
○
1
○
2
○
3
○
4
○
5
○
6
○
7
○
- 41 -
●
最後尾
・ 泳力に余裕があるバディは後方にして隊列を組む。
・ 蛍光色のキャップを使用し、さらに先頭から交互に色を変えるなど、泳者の位置確認を
やりやすいように工夫する。
)
・ バディ同士で常に沖側に泳力があるもの(○)が冲側を泳ぐようにターン時に入れ替わ
る。
・ 間隔 左右約2m
前後約2.5m 程度
・ 泳力に応じて補助具を使用してもよい。
イ 目標を決め直線的に泳ぐ(遠泳)
(a)実施までの準備
① 地元関係機関に照会して、遠泳を行いうるかどうかを十分検討するとともに、実
施に際しての援助を予め依頼しておくこと。
② 参加者の能力に応じて無理のないようにすること。
③ 名簿を作成し順番表をつけること。
(大きく番号<名前>を書き、目立つものを使
用するとよい。
)
④ 非常の場合、全員を収容でき得るだけの船、ボートを用意し、船頭は熟練者が行
うようにする。
⑤ それぞれの監視船に、ライフジャケットなどの救命具、毛布、救急薬品、メガホ
ン、トランシーバーなどの器具用具を搭載すること。
(b)実施中
① 準備運動を十分に行い、健康観察を慎重に行う。
② 陸上で整列した隊列のまま、波打ち際まで進み、前後の間隔を詰めたまま一度体
全身を水につけたり、浮いたりして十分に水に体をなじませる。
③ もう一度整列し直し、開始の合図後、名前と番号を順に読み上げ、返答させて出
発させる。
④ 人数によって2~4列、前後左右の間隔は2m程度。
◆
隊列・隊形例
監視船
ボート
●
本
部
動力船
①
③
⑤
⑪
⑬
⑮
ボート
⑰
⑲
後方ほど泳力に余裕のある者を配置
先頭助手
●
⓻ ⑨
動力船
②
④
⑥
ボート
⑧
⑩
⑫
監視船
- 42 -
⑭
⑯
動力船
⑱
⑳
ボート
●
先頭助手
●
後
尾
動力船
⑤ 泳法は主に平泳ぎ。水しぶきが上がるような泳ぎや動きは禁止。
⑥ 指導者は適時順番表によって人員を点呼し、時々頭を濡らすように指示すること。
⑦ 指導者は常に天候に注意し、逆波にならないように目標を指示し、効率よく進む
ことができるようにする。
⑧ 手こぎのボートは隊列の風下に位置する方がよい。
⑨ 目立って遅れたものについては、ボートにつかまらせ、状況をよく観察し、中止
させるかどうかの判断を素早く行う。
⑩ 救護員は乗船し同行する。
⑪ 上陸地点に近づいたら、他の遊泳者に隊列の接近を知らせ、進路を空けてもらう
などの協力を求める。
⑫ 足が水底についても立たないで、手が水底につくところまで泳ぎ、はって上陸さ
せる。
⑬ 立ち上がるときも急に立ちあがらずに、ゆっくり立ち上がるように指示する。波
が穏やかな時は一度水際で座らせ休憩させてもよい。
⑭ 人員の点呼を行い、整理運動を実施する。
(c)実施後
① 実施に際しての援助、協力を要請した地元関係機関に終了の報告を行う。
(d)船上監視の留意点
①一人の離脱者が出ると、他の泳者も自信を失う場合があるので、騒がず冷静に隊列
から離して、速やかに収容する。
② 一人の離脱者だけに目が向かないように注意する。
③ 離脱者を収容するときは、完全に船にあげきるまで慎重に行う。
④ 一度に何か所からも離脱者が出る状態(パニック状態)になると救助が困難にな
るので、そのような状況に絶対にならないように次のような場合は特に泳者の顔色
や泳ぎぶりに注意するとともに、離脱者が出やすい状況を前もって知らせ、その時
でも落ち着いて泳ぐように指導しておく。
◎ 離脱者がでやすい時
・ 最初の疲労が出るとき。
(個人差があるが出発後30分から1時間ほど)
・ 水温が急に低くなったとき。
・ 水深が急に深くなったりして、水の色が急に変わったとき。
・ 水底に藻や岩礁などが見えたとき。
・ 多くの浮遊物などに取り囲まれたとき。
・ 天候の急変などで気温が下がったり、波や風が強くなったりしたとき。
・ 水の流れを感じたとき。
・ その他、生物の存在など恐怖を感じたとき。
など
- 43 -
○着衣泳について
水から、自分の命を守ることは水泳指導の大きなねらいの一つである。現実に、水の事故は、
海、川、湖などの自然環境において、着衣のまま発生することが多い。
着衣での水泳指導の目的は、水着での泳ぎと比べて、着衣のまま水に入ったときの動きにくさ
や、その体験により、水の事故を未然に防ぎ、また不慮の事故に遭遇したときの落ち着いた対応
の仕方を学ばせることである。
なお、指導の留意点として以下のようなことを挙げることができる。
〇 服装は、いろいろな状況を想定して各種の服装が望ましいが、学校での指導ではトレーニ
ングウェアと運動靴で行うことが考えられる。
〇 プールの水を汚さないようにするため、洗濯した清潔なものを各自で用意させる。できる
だけ長期休業前の換水日に行うことが望ましい。
〇 あらかじめ保護者に着衣泳の目的や実施日を知らせ、服装などの協力を依頼しておくとよ
い。
[指導例1 高学年 90分】
着替える
・ 水着・T シャツ・ジャージ上下・靴下・上靴(帽子、ゴーグルは使用しない。
)
・ 持ち帰り用袋の中にペットボトル、バスタオル、サンダルを入れてプールへ
・ サンダルは入り口の下駄箱へ置く。
・ ペットボトル・バスタオルを入れた袋は、プールサイドの自分の座る位置の後ろへ置く。
・ ビート板を後で使用するので、2人に1枚あるように、プールサイドに並べておく。
1 学習のねらいについて説明する。
(当日までに教室等で学習しておいてもよい)
①1年間で、水難事故による死亡者 1500~2000人
主に海、川、用水路でなくなっている。
釣り、水遊びなど
②自分の命を自分で守るための学習であることの確認。
「服を着て泳ぐ」のではなく「服を着たまま水に落ちるとどうなるか」の学習
③泳げない人より泳げる人が溺れている。
なぜか>>>パニック
④泳げない人でも溺れている人を助けることができる。
・助けを呼ぶ
・浮くものを投げる
2 シャワーをかかる 水なれ
- 44 -
3 Uターンと救助法
・バディを組み、一人がもう一人を水の中に落とす。
(前、横、後ろ)
・落ちた人は、できるだけプールの底に足をつけずに、元の場所へ泳いで戻る。
・プールサイドの人は物を使って助ける。直接腕を伸ばさない。
衣服がぬれた感じはどうか。
4 服が濡れているときに、泳ぎやすい泳ぎ方は?
行き: クロール、帰り: 平泳ぎ
衣服が空気を含んでいることを上から確認。
どちらが泳ぎやすかったか。
5 ラッコ浮きの紹介
ビート板やペットボトルに捕まってラッコ浮きで浮く。
6 3分間楽な浮き方で浮く。
ビート板、ペットボトル、袋などを使ってもよい。
7 ペットボトルなどを使って浮きながら、3分間楽な泳ぎ方で進む。
ビート板、袋などを使ってもよい。
8 水の中で浮きながら靴を脱ぎ、服は来たまま泳いでみる。
すすみ易い感覚をつかむ。
9 脱いだ服、靴などを袋に入れ、水着で泳ぐ。
行き: クロール、帰り: 平泳ぎ
服を脱いだときどう感じたか。
10 浮くメカニズムの紹介、体験
11 まとめ・整理運動
着替える
教室で感想文を書く
- 45 -
[指導例2 低学年 45分】
着替える
・水着・T シャツ・ジャージ上下・靴下・上靴(帽子、ゴーグルは使用しない。
)
・持ち帰り用袋の中にペットボトル、バスタオル、サンダルを入れてプールへ
・サンダルは入り口の下駄箱へ置く。
・ペットボトル・バスタオルを入れた袋は、プールサイドの自分の座る位置の後ろへ置く。
・ビート板を後で使用するので、2人に1枚あるように、プールサイドに並べておく。
(
「学習のねらい」については簡単に教室で指導しておく。
)
1 シャワーをかかる 水なれ
2 Uターンと救助法
・バディを組む。自分でプールに落ちる。
(必ず足から。前向き)
・落ちた人は、歩いて元の場所へ泳いで戻る。
衣服がぬれた感じはどうか。
3 服が濡れているときに、水の中で動いてみる。
①行き: ゆっくり歩く、 帰り: 走る。
②行き: 後ろ向きで歩く、帰り: 後ろ向きで走る
どちらが進みやすかったか。
4 浮いてみる
ビート板を使って浮いてみる。
5 自由遊び
終了後、動きにくさを確認する。
6 脱いだ服、靴などを袋に入れ、水着で泳ぐ。
行き: クロール、帰り: 平泳ぎ
服を脱いだときどう感じたか。
7 まとめ・整理運動
8 着替える
- 46 -
【保護者向けプリント例】
平成〇〇年〇月〇日
保護者の皆様
大阪市立□□□小学校
校長
○〇 ○○
着衣泳実施のお知らせ
▽▽の候、皆様には、益々ご清祥のこととお喜び申しあげます。平素は、
本校教育推進にご理解とご協力をいただきありがとうございます。
さて、安全教育の一環として高学年の児童を対象に着衣泳(水難事故に遭
遇した時に自分の命を守る学習)を行います。
つきましては、下記の事項をお読みいただき、ご協力いただきますようお
願い申しあげます。
記
1.日 時:平成〇〇年7月 〇日(〇)○○時から
2.場 所:□□□小学校屋上プール
3.服 装:水着の上に、Tシャツ、ジャージ上下を着て、靴下・上靴を履
いてプールに入ります。水泳帽はかぶりません。
4.持ち物:水着・バスタオル・Tシャツ・ジャージ上下(長袖・長ズボン)・
着替え用の靴下・上靴・ペットボトル(大きさは問いません。
)・
ぬれた衣服などを持ち帰るビニル袋
※ なお、普段のプール水泳で、ゴーグルを使用している児童でも、着衣泳
では、その趣旨よりゴーグルは使用しません。眼の疾病等の理由により、
ゴーグルが特に必要な場合は、使用させますので必ず担任までお知らせ
ください。
※ 終了後、衣服と上靴などは軽く絞った程度で持ち帰ることになりますの
で、ご了承ください。
※ 保護者の方も一緒に参加していただいても結構です。
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写
事
務
平成22年
し
各 校 園 長 様
連
8月
絡
9日
教 育 委 員 会 事 務 局
(学校保健担当学校保健グループ)
こ ど も 青 尐 年 局
(幼稚園運営企画担当)
平成22年度光化学スモッグ情報発令時の処置について(通知)
標題について「大阪市オキシダント緊急時(光化学スモッグ)対策実施細目」及び
下記事項に留意し、遺漏のないように取り扱われるようお願いします。
記
1.光化学スモッグ情報の取得について
(1)光化学スモッグ情報の期間
平成22年10月16日(土)まで
(2)光化学スモッグ情報の取得
予報等が発令されたときは、教育委員会から別紙光化学スモッグ情報連絡網
の最初に記載されている学校に連絡するので、連絡を受けた校園は、順次速や
かに次校園へ伝達すること。
(3)教職員勤務時間外における情報の取得
教職員勤務時間外で、光化学スモッグ情報を得る必要があるときは、次によ
り情報を取得すること。
①テレビ・ラジオ等の速報に注意する。
②次の関係機関に問い合わせる。
* 大阪市環境局環境保全部環境管理担当 平日(06)6615-7944
休日(06)6615-7986
(4)休日開催の秋季運動会の日程調査を実施し、別途通知する。
2.予報発令の周知
発令があったときは、校内放送を行うとともに、情報旗(もしくはそれに準ずる
もの)により教職員、児童、生徒等に周知すること。
発令の類
予 報
情報旗色
みどり
注 意 報
き
警
だいだい
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報
緊急重大警報
え ん じ
3.予報発令情報の処置
発令があったときは、被害を訴えるものの有無を調べるとともに、次のとおり指
導すること。
(1)予報のとき
①屋外で過激な運動は避けること。
②病弱なもの及び体の調子の悪いものは屋内に入ること。
(2)注意報のとき
①屋外になるべく出ないこと。
②屋外の運動をできるだけ避け、屋内に入ること。
*幼稚園・小学校は特に注意すること。
(3)警報及び重大警報のとき
①屋外の運動をやめて屋内に入り、うがい及び洗眼を行うこと。
4.被害発生時の処置
(1)被害者に対する処置
①速やかに屋内にいれること。
②うがい・洗眼及び休養等の応急処置を行うこと。
(2)被害状況の把握
①被害が発生した時には、別途「大阪市オキシダント緊急時(光化学スモッグ)
対策実施細目」様式2 光化学スモッグ被害調査票(学校用)により、被害
状況の把握に努めること。
②手足のしびれ、けいれん及び失神等の重い症状の被害が発生した場合は、
個々
の被害者について、その状況を詳細に調査すること。
(3)被害状況の報告
被害が生じたときには、直ちに別途「大阪市オキシダント緊急時(光化学ス
モッグ)対策実施細目」様式2 光化学スモッグ被害調査票(学校用)の各項
目の内容を所轄保健福祉センター及び教育委員会(学校保健担当学校保健グル
ープ)に電話連絡し、追って速やかに文章で被害報告を行うこと。
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(様 式 )
学校プールの期間外使用願
平成
大阪市教育委員会教育長
年
月
日
様
学
校
名
校
長
名
印
プ ー ル 期 間 外 使 用 願
標題につき、次のとおりプールを期間外使用しますので、
使用許可をお願いします。
記
1 使用期間
月
日
から
月
日
月
日
から
月
日
2 使用理由
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☆☆☆引用・参考文献☆☆☆
・小学校学習指導要領解説体育編
(文部科学省)
・学校体育実技指導資料集「水泳指導の手引」
(文部科学省)
・小学校体育指導資料「指導計画の作成と学習資料」
(文部科学省)
・水泳指導教本
(日本水泳連盟;大修館書店)
・水泳の段階別指導と安全管理
(木庭修一他:㈱ぎょうせい)
・学習資料
(大阪市小学校教育研究会体育部)
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