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平成24年度(2012年度)事業報告書 (摘要) 一般社団法人CRD協会
平成24年度(2012年度)事業報告書 (摘要) 自 至 平成24年(2012年) 平成25年(2013年) 4月 1日 3月31日 一般社団法人CRD協会 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2丁目26番5号 TEL (03)6667-1750 FAX (03)6667-1755 Ⅰ.事業概要 当協会は,平成24年度(2012年度)においても,会員との緊密なコミュニケーションの 下に,① CRDデータベースの内容・品質の維持・改善,② CRDモデルの品質の確保 及び ③ 会員ニーズに対応したサービスの提供 という 3つの実践的課題に取り組むこ ととし,以下のように,事業を展開している。 1.CRDデータベースの内容・品質の維持・改善 会員とのコミュニケーションを深めながら,会員が適切なデータ提供を行うことが出来るよ う,会員の取組みを支援することをはじめとして,蓄積データの内容・品質の維持・改善を 図るための次のような取組みに,引き続き,注力している。 ① 蓄積データの内容・品質の維持・改善のため,次のような取組みを行っている。 (ア) 会員毎に,財務データの提供が行われる毎に,システム上で,提供されたデータ の内容を分析した詳細報告書を作成し,会員専用ホームページを通じて,その会 員に還元する取組みを,平成24年度(2012年度)から,新たに,開始した。 (イ)新たにデータ提供を行った会員や,システム更改等を行った会員に対しては,提 供データの内容・品質が保たれるよう,会員毎に,新たな提供データや蓄積データ の総点検(モニタリング)を実施し,改善を要する事項があれば,レポート(提供デ ータに関するご連絡)を還元して,改善方策等について,会員とのコミュニケーショ ンをとることに努めている。 (ウ) これらの状況を踏まえて,必要な場合には,データ提供を行う会員に対する改善 支援を行っている。 ② 会員ニーズに対応した新たなサービス展開のための収集対象データの多様化等につ いては,後述する新たな個人事業主モデルの構築に向けたプロジェクトや住宅ローン 債権共同データベースの構築に向けた研究会の中で,検討を進めた。 ③ このほか,電子記録債権の導入,「資本性借入金」の積極的活用等,蓄積データの内 容・品質に影響を与える可能性のある会計制度・運用等の動向についても,適宜,把 握し,対応を検討している。 2.CRDモデルの品質の確保 会員が,CRDモデルを,信頼して利用出来るよう,CRDモデルの品質に係る情報を, 適時,適切に,会員に提供することが,当協会に課せられた役割であるとの認識の下に, モデルの品質管理に取り組んでいる。 具体的には,提供モデルの品質に係る定期点検を,平成24年度(2012年度)におい 1/7 ても実施することとし,平成24年(2012年)10月19日開催の第30回CRDモデル第三者 評価委員会(委員長=吉野直行慶應義塾大学教授)において,これに対する評価を,代 表理事会長から要請した。 また,新たな個人事業主モデルの開発については,CRDモデル第三者評価委員会に よる平成23年(2011年)3月28日付けの『CRDモデル3・モデル3-a・モデル4の品質に 係る定期検証に関する評価報告書』における指摘を踏まえ,次の二つのプロジェクトの下 で,協力頂ける会員の意見を反映するとともに,CRDモデル第三者評価委員会における 客観的な評価を頂きながら,検討を進めた。 ① 現行のモデル4に対する会員からの改善要望を採り入れるとともに,モデル精度の更な る向上を目指すプロジェクト Ⓐ ② 金融機関会員の取引先個人事業主の多くを占める不動産賃貸業(アパートローン)に 特化し,アパートローンの特徴を捉えたモデル構築を目指すプロジェクト Ⓑ 3.会員ニーズに対応したサービスの提供 会員がCRDサービスを使いこなすことが出来るように支援することは勿論,会員との緊 密なコミュニケーションを確保するようにして,会員が必要とするサービスを,環境の変化を 踏まえてCRDが提供出来るように努めている。 その際,当協会事務局職員のコミュニケーション能力やコンサルティング能力の向上を 図ることに留意しながら,会員にとって,より使い勝手のよいサービスの提供を心掛けてい る。 具体的には,先に記したことに加え,平成24年度(2012年度)においては,特に,次の ことに注力している。 ① CRDサービスをご利用の際に入力して頂いているCRD業種コードについては,会員 が日常業務にお使いになる業種コードとの互換性を確保するために,日本標準産業 分類を踏まえて構築するとともに,日本標準産業分類の改訂がなされるたびに,(CRD 業種コードについても)改訂版をリリースしている。最も新しい日本標準産業分類である 第12回日本標準産業分類に対応する第3版CRD業種コードについては,これを用い て利用出来るCRDサービスの拡充等を図るために,平成21年度(2009年度)以降, 順次,システム面の整備を進めてきたところであるが,平成24年(2012年)11月からは, 信用保証協会における保証実務において第12回日本標準産業分類の利用が開始さ れることを踏まえ,第3版CRD業種コードを用いて利用頂けるCRDサービスの拡充を 急いだ。 ② その一環として,会員と取引先中小企業経営者との対話を円滑にし,取引先中小企業 の経営を支援するツールである「中小企業経営診断システム」についても,第3版CRD 業種コードを用いて利用することが出来るように,改訂を行い,保証協会システムセンタ ーの運用する共同システムに参加している信用保証協会会員(平成24年(2012年)1 2/7 2月現在で26会員)を対象としてカスタマイズを施したCOMMON版MSSについて, 平成24年(2012年)10月に改訂版をリリースしたのに引き続き,オリジナル版MSSに ついても,平成25年(2013年)2月に改訂版をリリースした。 ③ また,昨今の企業向け貸出の低迷や中小企業金融円滑化法の出口戦略への対応等 の必要から,新規融資先開拓のためのツールや正常先低格付先や要注意先とのコミ ュニケーション・ツールとして,「中小企業経営診断システムサービス」を活用しようとす る会員も増えており,こうした利用方法の多様化等を背景に,営業現場でも広く用いる ことの出来る,より「コンパクト」で,「分かり易い」「中小企業経営診断システムサービス」 のリリースを求める声も強まっている。当協会では,このような会員からの要望も踏まえ, 中小企業経営者はもとより,財務知識が浅い若手の職員でも,容易に理解出来るよう な,「McSS Simple」の開発に着手した。「McSS Simple」は,2013年度(平成25 年度)の早い時期にリリースすることを予定している。(「中小企業経営診断システムサ ービス」の略称については,「CRD」商標や「C.R.I.S.P」商標と同様に,商標登録 することを予定しており,今後,改訂版をリリースする際には,順次,MSSからMcSS (Management consulting Support System)に変更する。) ④ 金融機関会員の信用リスク管理において急速に重要性を増している住宅ローン債権 に係る信用リスク評価及び収益管理のための体制整備については,事業性融資に係 るデータベースに基づく信用リスク管理の分野でCRDが蓄えてきた知見との相乗効果 も期待出来ることから,定款第3条第4号に定める『金融におけるリスク管理に関するコ ンサルティングサービス事業』の附帯事業としての位置付けの下,ご協力頂ける会員と の間で必要となるデータを収集して,共同データベースを構築し,標準モデルや統計 情報等を提供するプロジェクトに取り組んでいる。 ⑤ 当協会では,CRDサービスを利用する会員の皆様に対し,これまで,CRDサービスに 係る「利用者インタフェース(第9.3版)」を提供してきたが,平成21年(2009年)4月 以降の,次のような改正内容を盛り込んだ「利用者インタフェース」(第9.4版)を作成し, 平成25年(2013年)3月4日の事務所移転に合わせ,会員の皆様に提供した。 イ.当協会事務所移転に伴う,各種届の送付先・書式の最新化 ロ.モデル3-aに関する記述の追加 ハ.電子記録債権に関する勘定科目のCRDサービスにおける取扱いに関する記述の 追加 ニ.ファイナンス・リース取引に関する勘定項目のCRDサービスにおける取扱いに関す る記述の追加 また,次のことにも,引き続き,取り組んでいる。 ① 会員から寄せられる,格付マッピング分析や格付検証,格付に係るAR値の算出,信 用リスク量の簡易分析,CRDデータと自機関ポートフォリオ・データとを用いた債務者 構成や実績デフォルト率の比較分析,業種相関係数の見直し,ストレスシナリオへの アドバイス等,種々のサポート要請に対して,会員の期待に応えることが出来るよう,デ 3/7 ータベースを活用した分析に努めている。 ② 信用リスク量を的確に把握し,これを内部で活用したいという,会員からの要請に応え るために,LGD推計やストレステスト等に向けた取組みを含む,金融業界における信 用リスク管理動向を,随時,把握している。 ③ 一連の取組みの中で,内部格付制度に関する基礎的な検証サービス,「CRD信用リ スク計量化システム(C.R.I.S.P)」を用いた信用リスク量の計測・簡易分析サービス 等の,定型化したコンサルティング・サービスについては,会費内サービスとして,会員 に活用を勧めている。 ④ 財務評価に係る自機関モデルの再構築や,外部データによる拡充ポートフォリオを利 用した信用リスク量算定の精緻化等に取り組む会員に対しては,これらのプロジェクト を遂行するに当たり,CRDの豊富なデータを活用出来るよう,サンプルデータ提供ニ ーズへの対応を行っている。 ⑤ 自機関モデル構築に際して,データ分析から,構築後の検証,信用リスク量の分析に 至るまでの一連の支援を求める会員に対しても,それぞれの会員のニーズに応えられ るよう,サービス内容に企画・検討を加えている。 ⑥ 当協会では,従来から,会員の共有財産であるCRDモデルの内容について,外部に 対しては情報セキュリティ管理の徹底を図る一方,会員に対してはブラックボックス化し ないよう,積極的に説明・情報提供を行ってきている。 ⑦ そのような観点から,分析の結果や信用リスク管理の枠組み,CRDモデルの構造や使 い方等について,会員の許に赴いて説明する個別セミナーや個別研修会についても, 要請を頂ければ,お応えするようにしており,その際は,出来るだけ分かり易く説明す ることに努めている。平成24年度(2012年度)においては,前年度に引き続き,特に 日常業務の中でCRDモデルやMSSを活用頂いている信用保証協会会員に対する モデル等の研修会に注力している。 4.その他 4.1. 特定機関に対するCRDサービスの提供 当協会では,『わが国の中小企業に対する資金供給の円滑化を図る』という当協会 運営の基本方針に合致すると認められる場合には,理事会で定めるところにより,情 報セキュリティ等に係る義務を課した上で,中小企業庁をはじめとする政府機関等に おいてCRDサービスを利用することを認めている。 平成24年度(2012年度)の特定機関におけるCRDサービスの利用状況は,次のと おりである。 4/7 ① 中小企業庁において,CRDオプション統計情報提供サービスの利用が行われた。 ② 日本銀行において,CRDデータに基づく同行における分析結果が累次の金融シ ステムレポート等に掲載された。 ③ 国際通貨基金(IMF)において,わが国に対する金融セクター評価プログラム(FS AP=Financial Sector Assessment Program)に際して,CRDオプション統計 情報提供サービスの利用が行われ,その結果は,Japan FSAP に係る Country Report に掲載された。 4.2. アジア諸国における中小企業金融の円滑化に対する協力 近年,アジア諸国においても,各国の中小企業金融の円滑化を図るために,わが国 におけるCRDの経験を活かすことが出来ないか,という関心が高まっており,APEC等 の枠組みを通じた国際協力の観点から,そのような各国の関心に応えようとする,財務 省,中小企業庁等の取組みに対して,前原康宏 代表理事(一橋大学 経済学研究 科及び国際・公共政策大学院 教授)や吉野直行 CRDモデル第三者評価委員会 委員長(慶應義塾大学 経済学部 教授)を中心に,当協会も,可能な範囲で協力し ている。 4.3. 中小企業基盤整備機構への経営自己診断システム搭載用更新データの提供 独立行政法人中小企業基盤整備機構に対して,同機構の運営するインターネット サイト「J-Net21」で公開する「中小企業経営自己診断システム」での企業診断に用 いる個別財務指標に関する点数基準値,業界平均値及びデフォルト企業平均値等の 加工データを,平成16年(2004年)から提供している。 当加工データについては,平成16年(2004年)以降10年間に渡り,1年毎に更新 データを提供することとなっているが,平成25年(2013年)3月は,第10回目(最終 回)の提供となることから,将来に備えて,同機構との間で当加工データの管理及び利 用期限を定めた覚書を締結した上で,更新データを提供した。 Ⅱ. CRD業務運営体制の整備 1. CRD業務運営体制の整備 当協会では,会員ニーズの多様化,高度化,深化に対応するために,信用リスク管理 や統計的データ分析に係る,スタッフの専門能力の醸成を図るとともに,業務ノウハウの 蓄積・充実を進め,より付加価値の高いサービスを会員に提供出来るよう,努力してい る。 平成25年(2013年)4月1日時点の当協会事務局は,常勤役員2名,職員22名(う 5/7 ち派遣社員2名,日本銀行等からの出向職員2名)の体制となっている。 当協会スタッフに対しては,「行動規範」や「就業規則」に定められたことを基本動作と して身につけることや,会社法における「業務の適正を確保するための体制の整備」に 準拠した「内部統制に関する基本方針(平成19年(2007年)7月策定)」等の当協会に おける基本文書や,「CRDサービス提供契約」等の会員との間で締結した契約を遵守 すべきことを,徹底してきたところである。 当協会は,平成20年(2008年)12月1日の一般社団法人及び一般財団法人に関 する法律(平成18年(2006年)法律第48号)の施行に伴い,一般社団法人となったが, 同法には,業務の適正を確保するための体制の整備に関する規定が盛り込まれている ことに鑑み,平成24年(2012年)10月29日に開催された第46回理事会において,当 協会の「内部統制に係る基本方針」についても,一般社団法人及び一般財団法人に関 する法律及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(2007年(平成 19年)法務省令第28号)に定めるところを踏まえて,全面改訂するとともに,これと併せ て,当協会の「役職員行動規範」についても,コンプライアンスに関する最近の社会的要 請等を踏まえて,全面改訂した。 「CRD情報資産」については,会員共有の価値ある資産であり,適切に保護する必 要があることに鑑み,従来の「機密情報等管理規則」を全面的に改訂し,平成22年(20 10年)4月以降は,「CRD情報セキュリティ関係規程類」に基づき,組織的・体系的な情 報セキュリティ管理に遺漏なきを期することとしている。その一環として,当協会において は,情報セキュリティ管理に関して,日常的に,インシデントの監視等を行うとともに,毎 月,社内において連絡会を開き,さらに,毎年度,第4四半期には,自己点検を行った 上で,外部監査人による監査を受け,これらの結果を理事会に報告する体制を構築す ることによって,いわゆる「PDCAサイクル」を回しながら,その実効を上げることとしてい る。 また,住宅ローン債権管理に取り組む金融機関会員を支援する機会が増えたことに 伴い,従来は「匿名情報」を取り扱ってきた当協会においても,「個人情報」に該当する 情報の取扱いが増えてくる可能性があることに鑑み,個人情報保護法に対応して,個人 情報保護体制を整備することとした。このため,助言型外部監査における指導を踏まえ て,「CRD個人情報保護のための取扱方針」を制定し,平成23年(2011年)4月より運 用に当たっている。 また,当協会業務の効率的な遂行に必要な情報基盤については,データ分析等に 用いているサーバの保守期限が迫ってきたことから,これを更新することとし, その際, 当協会事務局におけるシステム運用負荷及びシステム運用コストの削減,情報セキュリ ティの一層の強化等の要請にも応えられるよう,システム及びネットワークの構成を見直 すこととし,平成25年(2013年)3月,後述する事務所移転に合わせて,事務局サーバ の更新を行った。 なお,会費収入が減尐傾向を辿ることが想定される中で,当協会事業を今後とも安定 的に運営していくためには,会員の信用リスク管理に貢献出来る,競争力のあるサービ 6/7 スを創造し,会費収入以外の有償サービスによる収入を確保することにも注力しなけれ ばならないと考えており,平成24年(2012年)4月には,「一般社団法人CRD協会発明 創作取扱規程」を「知的財産の創出・管理・活用に関する基本理念」及び「知的財産行 動規範」とともに整備し,会員共有の貴重な資産であるCRDデータベースやこれまでに 当協会事務局に蓄えられた知見を活かして,新たな付加価値を生む知的財産の創出 に一層注力することとしている。 さらに,今後の収支見通しが厳しい中で,消費税の引上げ等の支出増加要因に対応 するためには,支出の中で大きな比重を占める事務所賃借料の節減を図ることが不可 欠であることに鑑み,当協会の事務所を移転することとし,平成25年(2013年)3月4日, 従来の所在地であった日本橋室町4丁目から日本橋人形町2丁目に,事務所を移転し た。 2.会員数の状況 2013年(平成25年)4月1日時点での年会費受入れ会員数は,182先(前年同期比 ▲3)となっている。 7/7