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第255回:中国経済がニュー・ノーマル?

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第255回:中国経済がニュー・ノーマル?
ひと息コラム『巨龍のあくび』
ttp://www.toyo-sec.co.jp/china/column/yawn/index.html
第255回:中国経済がニュー・ノーマル?
来年の中国経済の運営方針を、党と政府が協議する「中央経済工作会議」が11日に閉幕した。ここで、
つまらぬ解説を長々と並べるより報道各社の「見出し」をざっと俯瞰する方が分かり易いだろう。中国経済を
分析するレベルの高低はメディアによって様々だが、見出しの打ち方だけは、流石はプロだけあって見事な
ものだ。どこかの証券会社の投資レポートの見出しと比べると月とスッポンである。
読売新聞:
中国経済成長「中高速に変化」―中央経済工作会議
日経新聞:
中国、安定成長へ軟着陸めざす 「高速から中高速へ」
毎日新聞:
中国:「投資依存転換」改革方針…中央経済工作会議が閉幕
産経新聞:
中国、成長目標引き下げ 7%台前半設定か 中央経済工作会議
朝日新聞:
中国、来年の金融政策は過度に引き締め・緩和的にせず
共同通信:
中国経済、安定路線へ 中央経済工作会議が閉幕
時事通信:
中国、質重視の発展追求=成長目標7%に下げか―中央経済会議
TBS:
中国「中央経済工作会議」閉幕、安定成長重視へ
ブルームバーグ: 中国、来年も穏健な金融政策を採用―中央経済工作会議が閉幕
見出しを見るだけで、来年の中国経済の大まかな舵取り方針が何となく理解できるだろう。蛇足だが要は
こういうことだ。

中央経済工作会議が12月9日から11日まで北京で開催された。

習近平が会議を主催、チャイナ・セブンの全員の他、党・政府・地方・軍等の関係者が参加した。

「量より質」、「高速から安定成長」への方向転換が確認された。

来年度の成長目標は公表されなかった。(今年の目標は7.5%)

発表文書(全5196文字)の中に安定成長を示す「新常態」と云う新語が9回も使われている。
過去30年、中国経済は平均10%近い高速成長を実現し、世界第二位の経済大国にまで成長した。これ
からは6、7%程度の巡航速度にペースダウンすることが予想されるが、発表文書では成長減速に歯止め
を掛けると云う課題はあるものの、成長は底堅く潜在性があり、経済運営の余地は十分あると判断している。
そこで登場するのが「新常態=ニュー・ノーマル」と云う新語であり、中国経済は緩やかな成長を意味する
「新常態」に適応しつつあると強調して内外を安心させ、従来投資と輸出が牽引してきた経済を消費牽引型
に移行させたい考えだ。習近平国家主席が最近多用する新常態と云う表現は、インフラ投資や輸出への依
存低下を目指す指導部の方針を反映している。
中国経済はこのままだと天安門事件直後の1990年以来の低成長が予想されており、中央銀行はこれ
まで対象を絞った金融緩和と、市場への流動性注入により成長支援を続けてきたが状況は好転せず、先月
最終ページに重要なお知らせ「注意事項」がありますので必ずお読みください。
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東洋証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 121 号
日本証券業協会 加入
本社所在地 〒104-8678 東京都中央区八丁堀 4-7-1 ℡03-5117-1040
ひと息コラム『巨龍のあくび』
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遂に2年ぶりの金利引き下げに踏み切った。これによって1年物の預金金利は 2.75%(▲0.25pp)、貸出基準
金利は 5.6%(▲0.4pp)となった。誤解しないで欲しいが、これ決して朗報ではない。金融緩和で GDP は少し
持ち直すだろうが、課題の先送りにすぎず、せっかくの経済再生がぶち壊しとなる懸念が生じてしまった。
発表によると、中国はマクロ経済政策の一貫性と安定を維持し、積極的な財政スタンスを続ける方針だ。
一方、金融面では「引き締めと緩和の中間の適切な均衡」に留意する方針だという。この玉虫色の金融政策
の真意を人一倍気にするのが市場を遊弋する証券関係者である。今回の玉虫色は限りなく「緩和方針」に
近いシグナルの発信だと弊社エコノミスト(ぼくのことです)は見るが、どうだろう。
経済工作会議のコミュニケは、会議が閉幕した11日に発表されたが、概要は事前にある程度分かってい
た。今月の5日、共産党の最高意思決定機関で、政治局委員(25名)が参加する政治局会議が開催され、
そこで来年の経済方針が簡単に発表されている。その4日後に開かれた中央経済工作会議で、公式にオー
ソライズされたことになる。因みに政治局会議は原則月に一回開かれているが、報道でいつも気になるの
が、最後がいつも「会議還研究了其他事項(会議では更にその他事項についても検討を行った)」で締めくく
られていることだ。「その他」とは何を意味するのか、消息筋によると、主として人事異動に関する討議のよ
うで、今回の会議が正にそうだった。中国国営テレビは政治局会議が終わった当日の深夜、「周永康逮捕」
を突如報じた。周永康事件は習近平が最終決断を下したようだが、最後にオーソライズの儀式として政治局
会議を開き、そこで意思統一を最終確認し、報道を解禁したのである。
これまでの報道によると、胡錦涛時代の最高指導層として、公安・司法分野で絶大な権力をふるってきた
周永康(前政治局常務委員)は、昨年12月から党規律検査委員会による事情聴取を受けており、今年7月
に捜査開始が正式に発表された。今回発表されたのは党内処分であり、これで周永康は党籍を剥奪され、
検察官送致が決まった。容疑は収賄、職権乱用、国家機密漏洩、姦通等だ。判決は死刑が予想される。
その政治局会議が開催される前の今月3日、北京にある国家博物館で、中国近現代史の展示室に掲げ
られた胡錦濤時代の首脳の集合写真から、周永康の姿が抹消されていることが分かったという。毛沢東の
追悼会の集合写真から四人組が抹消され、天安門広場で粛然とこうべを垂れる指導者たちの隊列が乱れ、
何とも不自然な並び方になっている写真を思い出す。ソ連もむかし演説中のレーニンの傍らに立つトロツキ
ー(後に亡命)とカーメネフ(後に処刑)の画像を抹消して世界の笑いものになったことがある。日本に対して
偉そうに歴史を直視せよと説教を垂れる国が、歴史写真のトリックを弄するとは。(了)
文中の見解は全て筆者の個人的意見である。
平成26年12月12日
筆者プロフィール
杉野光男
東洋証券株式会社 主席エコノミスト
一橋大学商学部卒、 三菱信託銀行(現三菱 UFJ 信託銀行)入社、上海華東師範大学へ留学
同行北京駐在員、上海駐在員事務所長、理事中国担当部長を経て、2007年より現職
著書
日本の常識は中国の非常識(時事通信社)、中国ビジネス笑劇場(光文社)等
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