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報告書 (PDFファイル 652.5KB)
平成 26 年度県民協働型評価業務報告書 テーマ 『岩手県における若者支援策の可能性について』 平成 26 年9月 特定非営利活動法人 政策 21 目次 1 はじめに 評価の趣旨・手法 (1) 評価の趣旨 (2) 評価の手法 1 2 2 2 2 3 7 評価結果 (1) アンケート調査 (2) ヒアリング調査 4 評価・分析 17 5 提言 35 資料編 本報告書は、岩手県が実施する「県民協働型評価推進事業」において、受託者に選定 された特定非営利活動法人政策 21 が実施した県の施策の評価結果と政策提言をとりまと めたものである。 1 はじめに 岩手県は、平成 25 年度に若者が活躍する地域づくりに関する取組を政策パッケー ジ化したアクションプラン「若者支援プロジェクト」の取組方針を発表した。また、 平成 26 年2月 16 日に開催された「いわて若者会議」では、達増知事が「いわて若者 活躍支援宣言」を行ったところであり、これらの具体的な支援として、平成 26 年度 には、「いわて若者活躍支援事業」や「若者文化支援事業」などの新規事業が予算化 されたところである。 同プロジェクトの取組方針では、「若者が主役になって躍動し、自己実現を果たす ことが、若者や文化を中心とする地域振興、すなわち『クリエイティブいわて』の実 現」につながるとされている。 これまで、社会的な自立という観点からは特段の阻害要因を持たないいわゆる元気 な若者は、公的な支援の対象としてはあまり重要視されてこなかったところであり、 今般の岩手県の取組は、新たな政策分野への挑戦とも言えるものである。 よって、政策評価の対象分野としても新しい分野ということが言えるが、施策の成 果の発現については、事後評価はもちろんのこと、プロジェクト実施の事前・事中に も積極的に評価を行い、プロジェクトの改善・成果向上を図る必要があるものと考え る。 本調査は、以上の問題意識のもとに、岩手県における若者支援策について、SROI (社会投資収益率法)評価やロジックモデル分析の手法を用いながら、今後展開され る若者支援策のうち、とりわけ、「クリエイティブいわて」に直結する新規事業等の 成果について、事後的に評価するために必要な情報を整理するとともに、今後の評価 方法や事業展開等について提言を行うものである。 SROI 評価は、事業によって生じたアウトカムを金額換算し、投資対効果の比率を 算出する手法として市民セクターや企業のCSR部門などにおいて関心が高まって いるものである。いくつかの先行的事例が散見されるまだ開発途上の手法と言えるも のであるが、これに実験的に取り組むことで岩手県の政策評価への導入の可能性につ いても検討を行いたいと考えるものである。 「若者支援施策」の評価と併せて、岩手県の今後の施策推進に有益な知的貢献が果 たせられれば望外の喜びである。 なお、最後になりますが、評価の実施にあたってご協力いただいた岩手県環境生活 部若者女性協働推進室をはじめとする関係者のみなさま、アンケート調査にご協力い ただいた県内市町村のみなさま、視察・ヒアリングに丁寧にご対応いただいた他自治 体、専門家等の関係者のみなさまに厚くお礼を申し上げます。 1 2 評価の趣旨・手法 (1) 評価の趣旨 クリエイティブいわてを中心とした若者支援策における公益の発現の整理、評価 方法や事業展開等について検討するため、関係者・関係団体等から聞き取り調査を 中心に情報収集した上で、専門家の助言のもとに SROI 評価の手法を用いた評価活 動を行うものである。 (2) 評価の手法 ① 若者が中心となって活動する団体等を対象とした聞き取り調査 若者構想実現事業補助金(以下、通称名である「いわて若者アイディア実現補 助」という。)で、採択された団体に所属する者に対し、ヒアリング(評価シー トによるものを含む。 )調査を実施した。 ※調査内容については、SROI 評価を用いた手法による分析と直結しているため、 その内容については、 「4 ② 評価・分析」の項目に掲載した。 市町村の若者活躍支援策についての調査 県内の市町村の若者活躍支援の取組に係る現状と課題について、アンケート調 査を実施した。 ア 調査の名称:若者活躍支援の取組に関する市町村アンケート イ 実施時期:平成 26 年9月 ウ 調査対象:県内市町村(客体数 33) エ 調査項目:若者活躍支援の政策的な位置づけ、期待する効果等 ③ 先進地を対象としたヒアリング調査 下記自治体に対してヒアリング調査を実施した。 ア 福井県(総務部男女参画・県民活動課若者チャレンジ支援グループ) 県として若者活躍支援を主たる目的とした事業に取り組んでいる事例 イ 高知県(文化生活部まんが・コンテンツ課) マンガを活用した産業振興、文化振興に取り組んでいる事例 ④ 専門家からの助言 SROI 評価の手法を用いるに当たって、2人の専門家からの助言を受けた。 ・NPO法人SROIネットワークジャパン 理事長 伊藤健 様 理 事 佐々木亮 様 2 ⑤ 分析 ア SROI 評価の手法を用いた分析 いわて若者アイディア実現補助で、採択された 10 件のうち、事業の実施 が進んでいた2件について、SROI の手法を用いた分析を行った。 イ ロジックモデルによる分析 岩手県が政策パッケージ化した若者支援策の目的と手段の因果関係を、事 業の実施から成果が発現されるまでの道筋を段階的・体系的に図示化する手 法(ロジックモデル)により分析した。 3 【参考】SROIについて ◆SROIとは SROI は, 「Social Return on Investment」の略記・通称であり,「社会的投資 収益率」と一般的に訳される。事業によって生じたアウトカムを金額換算し、 投資との比率を算出する手法である。 米国において、非営利組織や社会的企業の支援を行う中間支援組織によって 開発されたことに現れているように、投資や資金提供をした者が、その投資・ 資金提供に見合ったアウトカムが得られているかを把握し、次なる投資・資金 提供の是非を判断すること、あるいは、投資・資金提供を継続するための事業 手法等の改善に役立てることが本来の目的である。 近年、我が国の NPO・NGO などでも関心が高まってきているところであるが、 特に、東日本大震災をきっかけに多くの外部資金が注がれ支援活動・非営利活 動が展開されてきた岩手県においては、今後、外部資金の撤退・縮小が見込ま れる中にあって、資金提供者及び非営利団体双方にとって、SROI 評価は協議・ 折衝の有益な情報となりうるものとして、大きな関心が寄せられている。 ◆SROIの計算式 SROI(社会的投資収益率) =「貨幣価値換算された社会的価値」/「投入された社会的費用」 <貨幣価値換算された社会的価値の例> 当該事業によって就労を実現した対象者が獲得した賃金、 対象者の健康状態の改善による社会保障費や医療費の削減、税収の増加など <投入された社会的費用の例> 人件費等の事業経費、補助金・助成金など 計算によって得られた結果が、1を超えれば、投資したコスト以上のアウト カムがあったものと判断される。 4 ◆SROIの手順 SROI の一般的な手順は次のとおりである。 ① 評価対象となるプロジェクトのステークホルダーの確定 資金提供者やプロジェクト実施者、受益者などがこれにあたる。 ② インパクト・マッピングの実施 プロジェクトの「インプット」「アウトプット」「アウトカム」及び「測定 指標」を整理する。 この作業は、プロジェクトのロジックモデルを作成する作業であるが、こ のとき、①によって確定されたステークホルダーがワークショップ形式など により、議論を尽くすことが望ましい。 アウトカムの定量化が難しく、科学的に精度の高い測定結果を得ることが 難しいソフト事業においては、ステークホルダー間で合意が形成されている ことが、評価結果を次なる投資・資金提供の判断をして活用する観点からは 非常に重要なものとなる。 また、ステークホルダーによる議論においては、専門性と中立性を備えた 第三者(評価実施者)が、コーディネーターとして参画することが望ましい。 ③ インパクト・アウトプット・アウトカム換算のためのデータ収集 帳票確認、アンケート・ヒアリング調査など ④ SROI 値の仮算出 ③において、収集したデータをもとに社会的投資収益率を算出。 ⑤ SROI 値の算出 SROI 値の算出においては、当該プロジェクト以外の要因による影響(寄与 率及び死荷重)を除外する必要がある。 寄与率とは、対象プロジェクトがアウトカムに対して寄与する割合のこと であり、他に類似の事業が同じ期間等に実施されていれば、その割合を減じ る必要がある。 死荷重とは、対象プロジェクトがなくてもアウトカムが発現されていたと 認められる割合のことである。たとえば、失業者に対する職業訓練において、 当該プロジェクトがなくても同等の条件で就職できたものと認められる割合 を考慮するということである。 寄与率及び死荷重の割合の算定にあたっては、当該地域の各種統計情報を 参考にするほか、プロジェクトによっては、ステークホルダーへのアンケー ト調査などを実施する必要がある。 5 たとえば、先述の職業訓練の例では、プロジェクト実施前の当該地域の一 般的な失業者の就職率を考慮する必要がある。また、たとえば、ごみ排出量 削減に向けて住民の行動変容を促そうとする意識啓発のプロジェクトにおい ては、当該地域住民を対象としたアンケート調査などを実施し、当該プロジ ェクトの効果としての行動変容であったかを確認する必要がある。 ◆SROIの特徴・留意点 SROI は、先述のとおりアウトカムの捕捉について、客観的な評価指標の設定 や測定の点で難しい場合があり、 「確からしさ」の担保に課題がある。 もとより SROI は、科学的に精度の高い普遍的な分析結果を得ることを目的と しているものではなく、貨幣価値として捉えにくかった社会的価値を、 「代理指 標」を用いながら貨幣価値化(可視化)し、次なる意思決定や事業手法の改善 に役立てようとするものであり、ゆえに、複数の異なるステークホルダーが評 価プロセスに関与させ、分析の結果を「社会的に共有された価値」 (=納得感を 高める)とする必要がある。 ※本項目において参考としたHP 『特定非営利活動法人 SROI ネットワークジャパン』ホームページ http://www.sroi-japan.org/ 6 3 調査結果 (1) アンケート調査 若者活躍支援に関する実施状況等について、県内市町村を対象としたアンケート 調査を次のとおり実施した。 ア 対象 県内 33 市町村 イ 回答数:20 市町村(60.6%) ウ 設問 ・若者活躍支援に関する課題について ・若者活躍支援について、政策全般に関する計画への位置づけがあるか ・若者活躍支援を主たる目的とした行政計画があるか ・若者活躍支援を実施する場合、どのような成果を期待するか ・実施している若者活躍支援に関する事業の概要について ・若者活躍支援などについて、岩手県に期待する役割や意見などについて 県内市町村における、若者活躍支援に関する課題についてまとめたものが表1で ある。回答した市町村数が多い順に、 「ニーズが分からない」 (75.0%)、 「若者活躍 支援のノウハウがない」 (50.0%)となっており、この両方を選択した団体も8団 体(40.0%)に上っている。また、 「その他」に回答した1団体は、 「強制ではなく 自発的な活動が必要であり、そのような活動を吸い上げ促進させる支援が必要」と のコメントをしている。 表1 若者活躍支援に関する課題について(2つまで選択) 実施内容 回 答 数 回答率(%) 1 ニーズが分からない 15 75.0 2 若者活躍支援のノウハウがない 10 50.0 3 事業実施の予算確保が難しい 5 25.0 4 事業を実施しても若者が参加しない 3 15.0 5 若者活躍支援の必要性はない 0 0.0 6 その他 1 5.0 次に、若者活躍支援について、政策全般に関する計画への位置づけがあるかにつ いてまとめたものが、表2である。 位置づけが「ある」と回答した団体は6団体(30.0%)、 「ない」と回答した団体 は 14 団体(70.0%)であるが、 「ある」と回答した6団体すべてが具体的な計画名 として総合計画を挙げている。 7 表2 若者活躍支援について、政策全般に関する計画への位置づけがあるか 実施内容 回 答 数 回答率(%) 1 ある 6 30.0 2 ない 14 70.0 0 0.0 3 その他 次に、若者活躍支援を主たる目的とした行政計画があるかについてまとめたもの が表3である。 全 20 団体が「ない」と回答している。 1団体「その他」を選択し、 「考えてはみたい」とコメントした団体があったが、 これは「ない」の回答と判断した。 表3 若者活躍支援を主たる目的とした行政計画があるか 実施内容 回 答 数 回答率(%) 1 ある 0 0.0% 2 ない 20 100.0% 0 0.0% 3 その他 次に、若者活躍支援を実施する場合、どのような成果を期待するかについてまと めたものが表4である。 回答した市町村数が多い順に、 「地域コミュニティの活性化」 (65.0%)、 「若者の 社会参加の促進」 (50.0%) 、 「若者間の交流の促進」(45.0%)となっている。 また、 「その他」を選択した1団体は、「定住促進」を具体的に挙げている。 表4 若者活躍支援を実施する場合、どのような成果を期待するか(2つまで選択) 実施内容 回 答 数 回答率(%) 1 地域コミュニティの活性化 13 65.0 2 若者の社会参加の促進 10 50.0 3 若者間の交流の促進 9 45.0 4 地域課題の解決 4 20.0 5 地域の伝統・文化の普及 3 15.0 6 若者団体等の把握 0 0.0 7 その他 1 5.0 次に、若者活躍支援に関する既存事業についてまとめたのが表5である。 8 なお、本調査では、各市町村に照会するにあたって、「若者活躍支援」の定義付 けを明確にせず県が現在実施している事業を例示するにとどめ、事業抽出の判断は、 各市町村に委ねている。 また、事業名及び事業概要に市町村が特定されるような記述があったものについ ては、当法人の判断で、適宜表現を修正している。 表5 若者活躍支援に関する事業 事業名 1 事業概要 成人式記念行事実行委 員会支援 第1部式典の部に引き続き、当該年度の新成人 及び次年度の成人式対象者で構成する成人式記 念行事実行委員会による「第2部記念行事の部」 を設け、記念行事を実行委員会で企画立案・実施 しており、その支援を行っている。 2 成人式記念行事実行委 員会OB・OG会支援 「成人式の支援」「まちを盛り上げる活動の実 施」を目的とした活動を実施している団体への支 援 3 全国青年大会選手派遣 出場補助金 体育及び文化部門の、全国大会や岩手県大会に 出場する際の補助 4 青少年団体育成補助金 青少年団体が行う事業への補助 5 出会い創出事業補助金 出会いを創出するイベント開催事業への補助 6 市政提言・自主事業の企 市内事業所・団体等から推薦された若手の職員 画等に関する懇談会 17 名で構成し、まちづくりをテーマに語り合い、 市への提言や自主事業の企画・立案・運営を行う。 7 まちの魅力向上に関す る会議 若者を中心に、地域・立場・世代を越えて様々 な人が集まり、まちや自身の将来について楽しく 話し合い、新たな仲間との出会いや繋がりを創出 し、まちをより魅力ある街にするきっかけとしよ うとするもの 8 農業振興青年クラブ活 動支援事業 農業を支える農業青年の確保及び育成のため、 町として助言・指導を行いながら、クラブ活動に 対し補助を行う。 9 伝統行事に関する支援 事業 伝統行事に係る実行委員会へ補助金を交付し、 青年の仲間づくりと伝統行事を軸とした地域に 根ざす青年たちの活動を支援する。 9 10 協働のまちづくり補助 金 地域の特性を生かした個性的な事業を行い、潤 いある地域づくりを推進する場合に要する経費 に対し補助 11 学生演劇合宿事業 演劇活動を行っている全国の大学生・卒業生が 一定期間町内に滞在し、公共ホールを専用して演 劇製作に取り組む「学生演劇合宿」と、演劇以外 の美術・芸術系の学生・卒業生が滞在して作品制 作・展示などを行う。 12 定住対策事業 住宅を取得する際の住宅ローンに対する利子 補給 13 出会い創出事業 婚活イベントを開催する団体等への補助 14 人材育成事業 企業経営リーダー等を養成するための人材育 成事業(座学・OJT等) 15 街コン実行委員会補助 金 16 街コンを開催し、若者の “出会いの場”を創 出 (固有名詞)を歩こう会 歩こう会の開催への助成 開催事業 17 むらづくり運動推進協 議会補助事業 18 村土クリーン作戦、小正月行事などの実施への 助成 中心街活性化イベント 中心街活性化イベントへの助成 開催事業 まちなか LIVE 開催など 最後に、岩手県に期待する役割などについて自由記載欄を設けており、回答は、 表6のとおりである。 表6 岩手県に期待する役割など(自由記載) 1 ・若者を結ぶ、つなげることのできる若者コーディネーターの育成 2 ・若者活躍支援に力を入れるNPOや団体の表彰 3 ・若者を支援する中でうまくいかないこと(失敗事例)等の情報提供 4 ・市町村、団体、事業所等の連携のコーディネート 5 ・若者が活躍している姿をPR・情報発信し、活動の輪を広げられるよう なサポートが必要 10 6 ・ 「若者構想実現助成事業」などの活用に向けて、周知を図っていきたい。 ・計画自体が高齢者や乳幼児が主体となった計画がほとんどで、若者に目を向 7 けている内容となっていないため、今後、若者にも目を向けていく必要があ る。 ・若者という視点でどういった政策展開しているのか、していくのかご教示願 8 いたい。 ・若手職員による若者施策研究会「若手ゼミ」に期待している。県のモデルケ 9 ースから市町村職員にも波及して県全体の若手職員が活躍できる土壌がで きることを特に期待している。 ○アンケート調査まとめ ・ 調査結果からは、若者活躍支援は新しい政策分野であり、市町村においては、 ニーズが分からないとともにノウハウもなく、体系的な取組が行われていない と認められる。 ・ 一方、若者活躍支援策にどのような成果を期待するかという設問に対しては、 「地域コミュニティの活性化」と「若者の社会参加の促進」が上位2位を占め ており、若者に地域課題解決や地域活性化の担い手として期待を寄せているこ とが見てとれる。 ・ 各市町村が若者活躍支援に関する事業として挙げている事業は、総じて従前 から当該市町村において実施されているものと推察され、県の「若者支援プロ ジェクト取組方針」で述べられているような東日本大震災以降の地元志向や、 いわゆる「あまちゃん効果」による本県への関心の高まり及び交流人口の増加 を好機と捉えた新機軸の事業とは言い難い。 ・ 自由記載においては、岩手県に求める機能として、総じて、先述のノウハウ 不足やニーズの把握に関することが多く挙げられている。 (2) ヒアリング調査 ① 先進事例調査 【福井県総務部男女参画・県民活動課若者チャレンジ支援グループ】 ア ふくい若者チャレンジクラブについて ・ ふくい若者チャレンジクラブは、若者が地域の抱える課題等に「気付き」 、 その課題解決に向けた活動や行動を起こす「きっかけ」をつくり、仲間や 地域との「絆(仲間)づくり」を目的に平成 23 年 12 月に設立されたもの。 ・ 事業費は 8,669 千円(平成 25 年度当初予算ベース)で、財源は一般財源 となっている。 11 ・ 設立の経緯としては、農業や商工の各分野で活躍している若者がいること は分かっていたが、それぞれがつながっていないという現状に対して、「交 流の場」を設けようとしたもの。 ・ 参加資格は、県内に在住、本県出身または本県にゆかりのある 18 歳から 35 歳までの若者で、発足当時 97 名だった参加者は、平成 26 年 8 月 31 日現 在で、656 名まで増加している。 ・ 参加資格の年齢を超えた場合、役員になれないが、サポーターという形で 活動に参加することを可能としている。 ・ ゆかりのある若者も対象にしているが、現在の参加者はほとんど県内在住 者であり、地域に目を向けてほしいという観点から、クラブとして、東京の 県人会などの交流は行っていない。 ・ クラブの主な活動内容は、①若者の活動の基盤づくりの支援、②メンバー が共同して実施する活動の支援、③メンバー同士の情報共有・交流、である。 ・ ①若者の活動の基盤づくりについては、勉強会の開催(年6回程度)、講 演会・交流会の開催(年1回)、ワークショップの開催(年4回)、県外の若 者との交流である。 ・ 勉強会の開催は、20~30 名規模のもので、メンバーが地域活動に役立つ テーマを設定しながら開催している。 ・ 講演会については、一流の講師による講演会や活動の仲間を勧誘する交流 会を併せて開催している。 ・ ワークショップの開催は、地域で活躍できるリーダーの育成を目指し、ま ちをよくしたい若者で、20 名程度の規模で開催している。 ・ 講演会や県外の若者との交流については、イベント規模も大きく、事務的 な負担が大きいため、所管課でもあり、事務局である県民活動課が実動を担 っている。 ・ 「②メンバーが共同して実施する活動の支援」では、これまで、里地里山 の支援をテーマに地区の伝統的な祭りや農作業(伝統野菜)等を応援する活 動を展開してきた。 ・ 平成 26 年度は、若狭さとうみハイウェーの開通を契機に、人口の8割が 集中している県北地区と過疎化が進んでいる県南地区の若者との交流を通 じて、県南地区を盛り上げる活動を重点的に行っている。 ・ メンバー同士の情報共有・交流は、フェイスブック、県ホームページ、メ ルマガで情報発信を行っている。 ・ SNS としては、20 歳代に利用が多いのは LINE である。LINE の利用につい ては慎重を求める声もあるが、学生を含めた若い層をメンバーとして取り込 むため、利用を検討していきたい。 12 ・ クラブ自体の知名度が上がってきており、外部から協働のオファーも出て きている。 ・ 基本的には、地域活動に限定しているが、将来的にはコミュニティビジネ ス的な展開があってもいいと感じている。 ・ クラブの成果としては、若者の活動が顕在化し、交流→活動→新しい若者 の参加→交流という良いサイクルが生まれたことである。 ・ 若者への期待が大きいが、目立つ若者はそれなりの活動をしているため、 なかなか他の活動ができないのが現状であり、そこを県としてサポートでき ていると感じている。 ・ 一方で、若者の次なるリーダーの育成が課題であり、クラブの活動の自立 と支援について、いかにバランスをとるかがポイントだと感じる。 ・ クラブメンバーの中で企画までできるメンバーと主体的に行動できるメン バーが 20%弱であるため、残りのメンバーが主体的に行動したくなるような 取組を、また、無関心層がメンバーに加入したくなるような取組を考えてい きたいと思っている。 イ ふくい夢チャレンジプラン支援事業について ・ 平成 26 年度のふくい夢チャレンジプラン支援事業は、①福井県内で、福 井の地域活性化を図る活動をしようとする若者グループを応援する「地域活 性化型」と、②若者が海外で、専門技能や知識を習得しようとする若者の活 動を応援する「海外武者修行型」で構成されている。 ・ 「地域活性化型」は、支援金の上限が 100 千円で、1次審査を通過した 12 グループから7件が採択されている。 ・ 活動の立ち上げ支援という位置づけであるが、過去に採択を受けたことが ある団体からの応募も認めており、初めて応募する団体が見劣りしてしまう という課題がある。 ・ 事業採択により活動がマスコミなどに取り上げられ、若者の活動が評価に つながることは、若者の活動の更なる活性化に寄与している。 ・ 平成 26 年度は県南部の枠を設けることで、県南部の若者の活動の掘り起 こしを図っている。 ・ 「海外武者修行型」は、支援金の上限が 1,000 千円で、平成 25 年度は2 件、採択をしている。 ・ これについては、福井に戻ってくることを前提としていないことが特徴で あり、支援を受けた若者が、福井の若者の目標となってもらうことに、成果 を期待するものである。 ・ 支援対象を、すでに文化、ものづくりなどの分野で国内トップクラスとし 13 て活躍している者などに限定しているため、応募件数が少ないのが現状であ る。 ・ いずれの支援金も、補助というより賞金的な扱いとしており、その使途に ついて厳しく制限していないことも特徴のひとつである。 ウ その他 ・ 市町村と直接連携している事例はほとんどないが、最近では若者団体に関 する情報提供の依頼が少し出てきている。 ・ また、鯖江市では独自に、県内外の学生を対象として、地域活性化プラン コンテストを開催している。提案されたものが市政に反映されるため、自費 にも関わらず、毎年多くの学生が集まっている。 【高知県文化生活部まんが・コンテンツ課】 ア まんが・コンテンツ課について ・ 20 年近く続けてきた「まんが甲子園」は、従前は文化生活部の文化推進 課で担当していた。 ・ コンテンツ産業の振興は、尾崎知事が就任した際に高知県の経済活性化の トータルプランとして「高知県産業振興計画」を策定して、新たな分野への 挑戦としてコンテンツ産業の振興を掲げ、商工労働部の新産業推進課が担当 していた。 ・ コンテンツ産業の振興は課題も多く、高知県の一番のコンテンツの強みで ある「まんが」で培ってきた豊富なコネクションやストーリー性などの共通 の企画のノウハウを活用し、まんが文化の推進とアニメやゲームなどのコン テンツ産業の振興を一体的に取り組むべく、「まんが・コンテンツ課」が平 成 22 年 4 月に新設された。 イ まんが王国・土佐推進協議会について ・ 会長は高知県知事の尾﨑正直氏。 ・ ①高知県におけるまんが文化の推進と「まんが王国・土佐」のブランドの 確立、②まんがを活かしたコンテンツ産業の振興による経済の活性化と雇用 の創出を目指している。 ・ 役割は①高知県におけるまんが文化の醸成と全国及び世界に向けた「まん が王国・土佐」の情報発信、②新たなコンテンツビジネスの創出と人材育成 である。 ・ 委員構成は①県内関係団体(産業、観光、教育、漫画関係団体等の代表)、 ②有識者等(コンテンツ産業界、漫画界等)、③産業振興計画包括協定締結企 14 業、まんが甲子園協賛企業等、④国、地方公共団体等である。 ウ まんが関連事業について ・ 昭和 63 年から「まんが王国・土佐」を全国に PR する高知県主催の「あっ たか高知まんがフェスティバル」を開催しており、高校生も参加していた。 ・ 平成4年の夏に県のイベントが重なったことから「あったか高知まんがフ ェスティバル」を秋に変更しようとしたところ、高校生から「秋には文化祭 や中間テストなどがあり参加できない」との反対の中で、夏に開催するよう 署名運動までに発展した。 ・ 高校生の熱い想いを受けてこれまでどおり夏に開催することになったが、 それまでのやり方を見直し、「日本一のエンターテイメントをやろう」とい うコンセプトのもと、現在の「まんが甲子園」を平成4年から開催すること になった。 ・ 作品審査には高知県出身の漫画家や全国的に著名な漫画家が関わっており、 権威あるイベントとして毎年 300 前後の高校から応募がある。 ・ 今年は 22 回目の開催で過去最多の 342 校が出場している。 ・ 本選には予選審査を勝ち抜いた 30 校が出場し、県外の高校生には一人当 たり2万円、県内の高校生には一人当たり1万円の参加費を求めているが、 それ以外の旅費は、主催の「まんが王国・土佐推進協議会」が負担している。 ・ 各チームの合計 180 名程度が3泊4日の日程で滞在しており、今では「ま んが甲子園」は「よさこい祭り」と並んで高知県の夏の風物詩になっている。 ・ 今年の開催には 250 名の高校生ボランティアスタッフが関わった。 ・ 全国大会で優勝するとその高校の募集 PR にもなるため、力を入れている 高校も多くなっている。 ・ 全国の都道府県に周知活動を行っているが、中にはまんがを文化として認 めておらず、甲子園への出場に否定的であるところもあった。 ・ 他県からの出場高校の所属は、美術部が多いが、高知県の場合はまんが研 究会やまんが同好会である。(高知県内の高校 40 数校中約 30 校にまんが研 究会やまんが同好会がある。) ・ また、まんが王国高知というフレーズは、遡ると昭和 50 年ごろに地元の 新聞から発信されていたり、人口 10 万人当たりの漫画家数が日本一である などから、高知県には独自の文化・土壌を育んできた。 ・ 平成 19 年の第 16 回大会からは、 「未来の漫画家発掘プロジェクト」とし て大手出版社から編集者によるスカウト制が導入されており、現在までに 33 名がスカウトされ、3名がデビューをしているが、まんがを産業として 育成するのは難しいと考えている。 ・ 平成 25 年3月、鳥取県と「まんが王国友好通商条約」を結んだ。鳥取県 15 は高知県と同様に数多くの漫画家を輩出しており、平成 24 年には東アジア 5地域(日本、韓国、中国、香港、台湾)で開催されている国際的まんがシン ポジウム「国際マンガサミット」が開催された。その際に鳥取県が「まんが 王国とっとり」を宣言したこともあり、両県が一緒に「まんが王国」をアピ ールして情報発信力を高めようと、高知県から同条約の締結を持ちかけた。 ・ 平成 25 年3月に東京都の秋葉原で両県知事が同条約の締結式を含めたイ ベントを開催したり、平成 25 年9月に両県の高校生が「まんが」を通じた 交流として「まんが甲子園交流試合」をおこなっており、今年も連携を深め て「まんが」による両県の魅力を PR することを計画している。 ・ 今年度のまんが王国・土佐ブランド化事業を通じた地域活性化事業の予算 としては8月のまんが甲子園に 30,000 千円(県からは 22,000〜23,000 千円、 他は助成金や寄付、協賛金、参加料など)、10 月のまんが王国会議に 8,500 千円、2 月の新イベントに 30,000 千円。 ・ まんが王国会議は東京・秋葉原での PR イベントであり、昨年度は5千人 の来場およびニコニコ生放送で7万人が視聴した。 ・ 小・中学生対象のまんが教室はプロ・セミプロの先生が講師となり 12〜16 校で開催されている。 ・ これは、学童やクラブ活動の中で、企画力(起承転結)の向上を目的とし て実施されているもので、とても好評である。 ・ ネットユーザー向けの誘客および情報発信力強化の対策としてはポータル サイトでの情報発信、twitter、facebook、LINE 等 SNS を活用。特に LINE は7月から導入したところ、訪問数は始める前の約5倍に増加した。 ・ まるごと支援による新たなコンテンツビジネスとクリエイターの活躍の場 の創出としては、カードデザイン関係の企業誘致により 11 名の雇用が創出 された。 ・ 11 月に開催される「まんさい」は高知市が主催しており、今年で 12 回目。 民間組織が実行委員会で、プロからアマチュアまで幅広い参加が得られてい る。 16 4 評価・分析 (1) SROI の手法を用いた分析 ① 評価対象事業の概要 本評価分析においては、SROI の手法による評価対象として「いわて若者アイ ディア実現補助」で実施された2つのプログラムを取り上げる。 「いわて若者アイディア実現補助」は、震災復興や地域づくりなどに関して、 若者グループ自らが地域課題の解決や地域の元気創出に資する事業を実施する ことによって岩手県の地域活性化を促進することを目的とするものである。 補助を受けることができる団体は、岩手県内に住民票を有する、又は岩手県出 身の 18 歳以上 40 歳未満の者(若者)2名以上で構成されていることや団体の構 成員の過半数が若者であることなどの要件が付されており、また、若者ならでは の独創性、先進性のある自発的な企画であることなどの条件の下で企画提案(公 募)が行われ、公開プレゼンテーション審査により採否が決定されている。 補助金額は、300 千円が上限とされており、平成 26 年度の採択件数は、10 件 となっている。 この中から、本評価分析では、任意団体「西和賀まるごと食ってみでけろ隊」 による「食も自然も西和賀代表 オール西和賀で未来を拓く 西和賀まるごと魅 力発信プロジェクト」 (以下、 「西和賀町プロジェクト」という)と任意団体「LIGHT UP NIPPON 野田村実行委員会」による「煙が円(輪)になり縁になる!野田村と 未来をつなぐプロジェクト」 (以下、 「野田村プロジェクト」という)を評価対象 とする。 なお、本調査分析では、西和賀町・野田村の両プロジェクトにおいて、一部の 取組が完了されていない事業は算定から除外している。また、両プロジェクトに おいて、一部の取組の成果の把握が技術的に困難であることなどの理由から算出 される測定値は、以下に詳細に述べるように暫定値又は仮想値であることに留意 されたい。 また、本補助金においては、各団体が同一事業で受けられる補助回数は一回限 りであり複数回の補助は予定されていないことから、本調査分析では、中間又は 最終アウトカムの考え方はとらず、初期アウトカムのみを算定することとする。 ② 西和賀町プロジェクト ア 実施団体の概要 本プロジェクトの実施団体は、任意団体の「西和賀まるごと食ってみでけろ 隊」である。平成 25 年1月に結成されており、メンバー同士、実行したいこ とを相互に応援し助け合い、西和賀町の活性化に寄与することを目的としてい 17 る。 結成以後、被災地・被災企業の視察や岩手朝日テレビ主催「ふるさと CM 大 賞」への参加、他の町の青年リーダーとの交流会などを実施している。 メンバーは総勢 18 名で、20 代9名、30 代6名、40 代3名となっており、 このうち8名が、本プロジェクトから新規に参加したメンバーである。 イ 活動内容 本プロジェクトでは、「夏だ!大自然だ!にしわがだ!アツい夏合宿」と称 して県外の若者との交流事業が実施された。 仕事や通勤で疲れた都会の成人者等をメインターゲットに西和賀町の大自 然・食・風土、そして人に触れ合うことで参加者の精神的開放を促し、西和賀 町の魅力を感じてもらうとともに、都市と農村・山里を結びつけることで両者 の関係性を深めることをねらいとして、西和賀町内の古民家で2泊3日の合宿 を行いながら、登山やゴムボート川下り、地元食材を活用した料理の飲食など を行うという内容であった。 本プロジェクトには、東京・大阪など県外から 10 名、岩手県内から5名の 参加者があった。 ウ 測定範囲及び前提条件 ・SROI の測定期間は、若者が主体的に活動するという本補助事業の趣旨に鑑 み、プロジェクトの準備段階からプロジェクトの実施を経て、本調査実施時 (平成 26 年 9 月末)までとする。 ・SROI を測定する活動範囲は、先述の合宿事業に直接関係する活動までとす る。 ・本プロジェクトの全体計画としては、西和賀町の食材を活かした料理を町外 の人に味わってもらう「プレミアムディナー」の取組も盛り込まれているが、 本調査時点において未実施であるため、測定範囲からは除くものとする。 ・本プロジェクトは、未完了(未精算)であることから、インプット及び初期 アウトカムのうち参加者の食材等の自己負担額等の算定にあたっては、事業 計画書上の金額を用いることとする。 エ SROI における投資対効果分析 (ア) ステークホルダーの特定 本プロジェクトのステークホルダーは、次のとおりである。 ・補助金交付者・・・・岩手県 ・事業を実施する若者団体・・・・西和賀まるごと食ってみでけろ隊構成員 ・外来者の来訪により恩恵を受ける者・・・・西和賀町民 なお、本プロジェクトの参加者(15 名)は、夏合宿のいわば「顧客」であ り、参加・来訪を地域住民にとってのアウトカムの一つとして捉えるため、 18 本調査分析においてはステークホルダーからは除外するものとする。 (イ) インプット 本プロジェクトのインプットは、岩手県からの補助金(夏合宿分)である。 (ウ) インパクトのマッピング 本プロジェクトのアウトカム及び測定指標等は、表7のとおりである。 表7 ステーク ホルダー インプ ット 測定 指標 岩手県 補助金 の投入 予算額 若者 インパクトマッピング アウトプット 初期アウトカム 測定 指標 補助事業の実 施 社会的活動への参画 延べ活動時間数×人件 費単価 参加者の西和賀町内での 消費 参加者の食材等の自己 負担額 参加者の西和賀町への好 感 好感を持った参加者数 ×観光客単価 町民 (エ) 指標設定とデータ収集 本補助事業のアウトカムは、金銭補助が呼び水となり、若者の社会参加が どの程度促進されたかという視点及び補助を受けた団体の活動が初期の目 的を達成しているかという視点の2つの視点から捕捉する必要がある。 以下に、表7に掲げる項目ごとに、詳細に考え方を述べる。 前者の初期アウトカムについては、本プロジェクトに取り組むにあたって の構成員の延べ活動時間数を人件費換算することとしている。 人件費の単価としては、NPO 法人の常勤スタッフの年間平均給与 166 万円 (平成 18 年度「NPO 法人の活動に関する調査研究報告書」独立行政法人経済 産業研究所、株式会社 サーベイリサーチセンター)を日本人の年間総労働 時間数 1854 時間( 「日本人の労働時間・休暇」独立行政法人労働政策研究・ 研修機構)で除した金額 895 円とした。 次に、後者、すなわち本プロジェクトを実施することにより地域活性化の 観点で得られた初期アウトカムについては、まず1つ目に、地域住民にとっ てのアウトカムとして、参加者が夏合宿に参加するにあたって、自己負担し た食材費・農家収穫体験指導謝金などの金額とする。すなわち地元経済へ貢 献があったものとして成果と捉えるものである。このとき、本来は、食材等 19 の地元調達率等を考慮する必要があるが、事業計画書から確認される本プロ ジェクトの参加者自己負担項目は、地元で調達された蓋然性が極めて高いも のと認められることから、事業計画書に盛り込まれた金額をアウトカムとし て採用している。ただし、参加者自己負担項目のうち「イベント保険料」に ついては、町外事業者へ支払われていると思われることから、除外している。 地域活性化の観点で得られた初期アウトカムの2つ目は、15 名の参加者 から西和賀町に対する好感が得られたかどうかという点である。 この点については、参加者へのアンケート等追跡の調査が必要となるが、 団体に対するヒアリングにおいて、得られた「参加者の満足度はおおむね高 かったと思われる」という回答に基づき、仮想値として、全参加者が好感を 持ったものとする。 また、測定指標については、西和賀町が県外から観光客を呼び込むために 要する費用を掛けた金額としている。この観光客一人あたり費用は、公表さ れている西和賀町の統計情報及び予算書等から、「西和賀町の観光客入込数 /H26 年度観光事業予算額」で算出している。 なお、団体・個人の活動時間数や構成員数等については、団体の事務局へ のヒアリング及び構成員へのアンケートにより把握しているものである。 (オ) SROI の算出 a.インプットの算出 表8 ステークホルダー インプット 岩手県 補助金の投 入 合 インプットの貨幣価値換算 指標 算出額(円) 予算額 248,960 計 248,960 20 算出根拠 事業計画書より b.アウトカムの算出 表9 アウトカムの貨幣価値換算 ステークホルダー 成果 指標 若者 社会的活動へ の参画 延べ活動時間 数×人件費単 価 805,500 (1 回当り平均活動人数)×(活 動回数)×(1回当り平均活動 時間数)×人件費単価 =9×50×2×895 参加者の西和 賀町内での消 費 参加者の食材 等の自己負担 額 171,040 事業計画書より 参加者の西和 賀町への好感 参加人数×観 光客単価 40,230 町民 合 金銭価値(円) 計 算出根拠 (参加人数)×(観光客単価) =15×2,682 1,016,770 c.インパクトの除外 SROI の算出においては、当該プロジェクト以外の要因による影響(寄与率 及び死荷重)を除外する必要がある。 寄与率とは、対象事業が成果に対して寄与する割合のことであり、他に類 似の事業が同じ期間等に実施されていれば、その割合を減じる必要がある。 本プロジェクトに関しては、他に類似の事業はなく、県からの補助金がな ければ、本プロジェクトは実施されなかったと団体関係者は述べており、寄 与率は 100%とした。 次に、死荷重とは、対象事業がなくても成果が発現されていたと認められ る割合のことである。たとえば、失業者に対する職業訓練プログラムにおい て、当該プログラムがなくても同等の条件で就職できたものと認められる割 合を考慮するということである。 本プロジェクトに関しては、まず、「社会的な活動への参画」について、 若者団体「西和賀まるごと食ってみでけろ隊」は、従前より地域おこしに資 する活動を実施している団体であり、県の補助事業がなくともなんらかの社 会的な活動を行っていた可能性は高いと認められる。ここで、SROI 算出の精 度を高めるためには、構成員一人ひとりに詳細な聞き取り調査などを実施す る必要があるが、本調査分析においては、技術的な制約から、次の考え方に 基づき仮想値を置いて算出することとする。 すなわち、構成メンバー18 名のうち8名が本プロジェクトにおける新規参 加メンバーであることがヒアリングにおいて確認されていることから、既存 メンバーの割合(10/18=55.6%)を死荷重とする。 最後に、「参加者の西和賀町内での消費」、「西和賀町への好感」について 21 は、本プロジェクトが実施されなければ、参加者 15 名が西和賀町を旅行等 の目的で自発的に訪れたり、または、夏合宿と同様の活動を自発的に行う可 能性は短期的には極めて低かったことが、ヒアリングにおいて確認されてい ることから、死荷重は0%とする。 表 10 インパクトの除外後のアウトカム 金銭価値 (円) 成果 若者 町民 合 死荷重(デッ ドウェイト) 修正後の 金銭価値 (円) 社会的活動へ の参画 805,500 55.6% 357,642 参加者の西和 賀町内での消 費 171,040 0% 171,040 参加者の西和 賀町への好感 40,230 0% 40,230 計 1,016,770 算出根拠 568,912 d.SROI の算出 これらのことから、SROI を算出すると、表 11 のとおりとなる。 表 11 SROI の算出結果 項目 貨幣換算価値 総現在価値 568,912 円 投資 248,960 円 2.28 倍 社会投資収益率(仮想値) ③ 単位 野田村プロジェクト ア 実施団体の概要 本プロジェクトの実施団体は、任意団体の「LIGHT UP NIPPON 野田村実行委 員会」である。平成 24 年4月に結成されており、東日本大震災からの復興と 鎮魂の願い込め東北太平洋沿岸の各地で一斉に開催される花火大会(LIGHT UP NIPPON)を野田村で開催し、それに伴う人的交流や地域活性化に寄与する取組 を行うことを目的としている。 当該団体は、これまで LIGHT UP NIPPON のイベントに平成 24 年、25 年と2 22 か年連続で参画している。 イ 活動内容 本プロジェクトでは、「煙が円(輪)になり縁になる!野田村と未来をつな ぐプロジェクト」と題し、LIGHT UP NIPPON と連動した下記の交流事業が実施 された。 【取組①】三陸鉄道×LIGHT UP NIPPON 三陸鉄道㈱からイベント用車輌を借り受け、久慈~野田間において、LIGHT UP NIPPON のPRや他地域からの誘客のためのイベント列車を運行するもの。 【取組②】復興教育×LIGHT UP NIPPON LIGHT UP NIPPON を立ち上げた関係者を講師として招き、LIGHT UP NIPPON のドキュメンタリー映画上映会と野田村の復興と未来を考える特別授業を 開催するもの。 【取組③】イベント限定通貨×LIGHT UP NIPPON LIGHT UP NIPPON の開催当日の会場内及び村内協力店における物販につい ては、イベント限定通貨で行うこととするもの。残った通貨は、次回の LIGHT UP NIPPON イベントでも使用できることとすることで、来年の集客につなげ ることをねらう。 ウ 測定範囲及び前提条件 ・SROI の測定期間は、若者が主体的に活動するという本補助事業の趣旨に鑑 み、プロジェクトの準備段階からプロジェクトの実施を経て、本調査実施時 (平成 26 年 9 月末)までとする。 ・SROI を測定する活動範囲は、先述の取組①~③に直接関係する活動までと する。 ・本プロジェクトの全体計画としては、LIGHT UP NIPPON イベントにおいてブ ース出店を行い地域のPRや復興支援への感謝の発信を行う「人×LIGHT UP NIPPON」が予定されていたが、諸般の事情から実施が見送られていることか ら、本調査分析からは除外することとする。 ・本プロジェクトは、未完了(未精算)であることから、インプット並びに初 期アウトカムのうちイベント限定通貨販売額の算定にあたっては、事業計画 書上の金額を用いることとする。 エ SROI における投資対効果分析 (ア) ステークホルダーの特定 本プロジェクトのステークホルダーは、次のとおりである。 ・補助金交付者・・・・岩手県 23 ・事業を実施する若者団体・・・・LIGHT UP NIPPON 野田村実行委員会構成員 ・イベントへの外来者の来訪等により恩恵を受ける者・・・・野田村民 (イ) インプット 本プロジェクトのインプットは、岩手県からの補助金である。 (ウ) インパクトのマッピング 本プロジェクトのアウトカム及び測定指標等は、表 12 のとおりである。 表 12 インパクトマッピング ステーク ホルダー インプ ット 測定 指標 岩手県 補助金 の投入 予算額 若者 アウトプット 初期アウトカム 測定 指標 補助事業の実 施 社会的活動への参画 延べ活動時間数×人件 費単価 イベント列車参加者の村 内での消費 参加者数×観光消費単 価 復興教育特別授業受講者 の意識向上 受講者数×家計統計に よる月謝額 イベント限定通貨使用に よる地元商店の売上げ増 イベント限定通貨販売 額 村民 (エ) 指標設定とデータ収集 本補助事業のアウトカムは、西和賀町プロジェクトと同様に金銭補助が呼 び水となり、若者の社会参加がどの程度促進されたかという視点及び補助を 受けた団体の活動が初期の目的を達成しているかという視点の2つの視点 から捕捉する必要がある。 以下に、表 12 に掲げる項目ごとに、詳細に考え方を述べる。 前者の初期アウトカムについては、1つ目に本プロジェクトに取り組むに あたっての構成員の延べ活動時間数を人件費換算することとしている。 人件費の単価は、西和賀町プロジェクトと同様に 895 円とした。 次に、後者、すなわち本プロジェクトを実施することにより地域活性化の 観点で得られた初期アウトカムについては、前述の3つの取組、すなわち、 「三陸鉄道×LIGHT UP NIPPON」、「復興教育×LIGHT UP NIPPON」及び「イベ ント限定通貨×LIGHT UP NIPPON」 、それぞれに検討する必要がある。 24 まず1つ目に「三陸鉄道×LIGHT UP NIPPON」については、LUNのPR と他地域からの誘客を目的としている取組であることから、イベント列車参 加者の村内での消費額がアウトカムとなる。ただし、これについては、調査 が困難であることから、仮想値として、平成 25 年度版観光統計概要から観 光目的による旅行者の消費額単価(県内)4,439 円にイベント列車参加者数 を乗じた金額をアウトカムとする。 2つ目に、 「復興教育×LIGHT UP NIPPON」については、若い世代に対して 復興について考えるきっかけを与えることを目的としていることから、本特 別授業を受講した生徒の復興への意識向上がアウトカムとなる。アウトカム 捕捉の精度を高めるためには、受講生徒一人ひとりへのアンケート調査等を 実施する必要があるが、本調査分析では、技術的制約から仮想値として、平 成 25 年家計調査における 1 世帯1か月当たりの「月謝類」の支出金額 2,432 円に参加した生徒数 104 名を乗じた金額としている。 3つ目に「イベント限定通貨×LIGHT UP NIPPON」については、地元商店 の活性化を図る取組であることから、イベント限定通貨が使用されたことに よる地元商店の売上げ増加額がアウトカムとなる。これについては、仮想値 として事業計画書におけるイベント限定通貨販売額 500 千円をアウトカムと する。 また、本体イベントともいえる花火大会「LIGHT UP NIPPON」においては、 約 1,000 の来場者があったが、これについては、本体イベントの告知やブラ ンド力の効果であり、関連イベントとしての本プロジェクトの影響は極めて 限定的であったと認められることから考慮していない。 なお、団体・個人の活動時間数や構成員数等については、団体の事務局へ のヒアリング及び構成員へのアンケートにより把握しているものである。 (オ) SROI の算出 a.インプットの算出 表 13 ステークホルダー インプット 岩手県 補助金の投 入 合 インプットの貨幣価値換算 指標 算出額(円) 予算額 300,000 計 300,000 25 算出根拠 b.アウトカムの算出 表 14 ステークホルダー 若者 村民 アウトカムの貨幣価値換算 成果 指標 金銭価値(円) 社会的活動へ の参画 延べ活動時間 数×人件費単 価 156,625 (1回当り活動人数)×(活動 回数)×(1回当り平均活動時 間数)×人件費単価 =7×10×2.5×895 イベント列車参 加者の村内での 消費 参加者数×観光 消費単価 177,560 40 人×4,439 円 復興教育特別授 業受講者の意識 向上 受講者数×家計 統計による月謝 額 252,928 104 人×2,432 円 イベント限定通 貨使用による地 元商店の売上げ 増 イベント限定通 貨販売額 500,000 事業計画書による 合計 算出根拠 1,087,113 c.インパクトの除外 まず、県からの補助金が本プロジェクトの実施の有無に与えた影響、 すなわち寄与率についてであるが、県からの補助金がなければ、本プロ ジェクトは実施されなかったと団体関係者は述べており、寄与率は 100% とした。 次に、死荷重(デッドウェイト)について、「社会的な活動への参画」 では、若者団体「LIGHT UP NIPPON 野田村実行委員会」は、過去2カ年に 渡って、LUNへ参画しており、県の補助事業がなくともなんらかの形で LUN関連の活動を行っていた可能性は高いと認められる。ここで、SROI 算出の精度を高めるためには、構成員一人ひとりに詳細な聞き取り調査な どを実施する必要があるが、本調査分析においては、技術的な制約から、 次の考え方に基づき仮想値を置いて算出することとする。 すなわち、構成メンバー20 名のうち5名が本プロジェクトにおける新規 参加メンバーであることがヒアリングにおいて確認されていることから、 既存メンバーの割合(15/20=75.0%)を死荷重とする。 次に、「イベント列車参加者の村内での消費」では、このイベントがな い場合であっても、野田村を訪れ金銭を消費する可能性を考慮するべきと ころであるが、技術的に難しいことから、仮想値として0とする。 26 次に、「復興教育特別授業受講者の意識向上」では、この特別授業がな い場合であっても、生徒が復興について考える機会や頻度について考慮す るべきところであるが、技術的に難しいことから、仮想値として 50%とす る。この数値は、岩手県の津波被災地に居住・就学する生徒であれば、震 災・復興に関する情報等に触れる機会が相対的に多いと思われることに基 づいたものであり、特段の科学的根拠はない。評価者が、調査分析作業で 得た各種情報から総合的に判断した数値であることに留意されたい。 次に、「イベント限定通貨使用による地元商店の売上げ増」では、本イ ベントにおいて、限定通貨が販売されなかった場合であっても、来場者が 消費した金額を考慮するべきところであるが、技術的に難しいことから、 仮想値として 80%とする。この数値は、イベント限定通貨が販売されなく とも来場者は、一般的にイベント会場・周辺商店等において一定程度の消 費をするものと思われることに基づいたものであり、特段の科学的根拠は ない。評価者が、調査分析作業で得た各種情報から総合的に判断した数値 であることに留意されたい。 表 15 インパクトの除外後のアウトカム 成果 若者 村民 死荷重(デッ ドウェイト) 修正後の 金銭価値 (円) 算出根拠 社会的活動への 参画 156,625 75.0% 39,156 イベント列車参加 者の村内での消費 177,560 0% 177,560 40 人×4,439 円 復興教育特別授業 受講者の意識向上 252,928 50% 126,464 104 人×2,432 円 80% 100,000 事業計画書による イベント限定通貨 使用による地元商 店の売上げ増 合計 金銭価値 (円) 500,000 1,087,113 443,180 27 d.SROI の算出 これらのことから、SROI を算出すると、表 16 のとおりとなる。 表 16 SROI の算出結果 項目 貨幣換算価値 単位 総現在価値 443,180 円 投資 300,000 円 1.47 倍 社会投資収益率(仮想値) (2) SROI 評価の考察 ① 事業に係る考察について 上記のとおり、西和賀町プロジェクトにおいて 2.28 倍、野田村プロジェクト において 1.47 倍の社会投資収益率が算出された。 仮想値であることを念頭に置く必要があるが、短期的かつ少額の補助事業とし ては、相対的に高い収益率が算出されたものと認められる。 その理由として、本調査分析においては、アウトカムを広く設定したことが挙 げられる。 もとより補助事業に限らず、また、SROI 分析の手法によらずとも、事業評価 におけるアウトカムは、事業実施地の地域特性、ステークホルダーの関係性など に応じて同種の事業であっても異なった設定がありうるものである。たとえば、 毎年開催しているあるイベントの事業評価において、対象イベントが住民(納税 者)に十分に知られていないという問題意識が所管部署にあれば「認知度」がア ウトカムになりうるし、認知はされているが来場に繋がっていないとすれば「来 場者数」、一定程度の来場が得られているとすれば「満足度」や「来場者の意識 向上」などとアウトカムが設定されうる。 本調査分析で取り上げた「いわて若者アイディア実現補助」には、「若者の主 体的な活動」と「地域課題の解決・地域活性化」という大きな2つのねらいがあ るが、後者により重きを置いて検討すれば、アウトカムとして「自主財源」を「費 用」に算定する考え方もありうる。また同様に、若者の社会的活動についても、 対象団体の代表者や事務局の活動に係る費用(人件費換算値)、すなわち管理コ ストを「費用」として算定することも場合によってはありうる。 このように、アウトカムの設定は、専門的知見や客観的事実のみに基づいて導 き出すのではなく、ステークホルダーが参集して、グループワーク形式などによ り十分に議論を尽くすことが理想的である。本調査分析においては、予算・時間 等の制約からこうした議論の場を設けることは省略せざるをえず、関係者への個 28 別のヒアリング等から得た情報をもとに評価者においてアウトカムを設定した ものであることに留意されたい。 上記のような一定の留保を踏まえつつ、評価対象とした西和賀町及び野田村の 2つの事業をアウトカムの発現状況に注目して比較考察するとすれば、西和賀町 プロジェクトにおいては、若者が活発に活動を行ったことがアウトカムに結びつ いており、一方、野田村プロジェクトにおいては、限られた財源の中で多様な活 動を展開したことがアウトカムに結びついているものと認められる。 両団体の成り立ちやこれまでの活動実績を参照すれば、妥当な結果が得られた ものと思料される。 ② SROI 評価手法に係る考察について 本調査では、SROI 評価の手法を用いて、事業評価を行ったところであり、こ こでは、評価手法に係る考察をする。 まずは、対象とした事業であるが、本調査では、若者活躍施策のうち、補助事 業を評価対象として取り上げたところである。SROI 評価における海外での発祥 や、国内における実際の活用事例が、就労支援や企業の社会貢献活動における投 資へのリターン計測に見られることを考えると、事業対象としての補助事業につ いては、その妥当性があると考えられる。また、分野でみると、表 17 にあるよ うに、福祉的な配慮が必要な方に対する就労に関連する支援を対象とした事例が 多い。受益(効果)が社会全体の一部の者に発生すると一般的には解されるよう なプロジェクトにおける社会性・公益性の可視化が SROI 評価の特徴のひとつで あり、社会福祉分野で事例が先行しているのは、それを反映してのものと思われ る。この観点から言えば、今回評価対象とした「若者活躍支援施策」についても、 評価対象としての適性が一定程度認められる。 また、SROI 評価を実施することの意義のひとつとして、ステークホルダーが 議論を交わしながらインパクトマッピングなどを行うことを通じて、プロジェク トのアウトカムやその貨幣換算について、ステークホルダー間の納得が得られる とともに、事業手法などの改善点が見出されていくことが挙げられる。この意味 において、定量的な評価はなじまないと一般的に思われがちなソフト事業におい て SROI 評価はその効果を発揮するものであり、 「若者活躍支援施策」にも評価対 象として十分な適性があるものと言える。 次に、事業規模であるが、国内の SROI 評価の活用事例の一部について、事業 内容や総費用、評価対象期間をまとめたものが、表 17 であるが、投資(総費用) でみると、500 千円/年間から 26,000 千円/年間と事業規模の範囲も広い。SROI 評価は前述したように、分析の過程に事業の直接の対象者を中心としたステーク 29 ホルダーを参画させることで分析結果の正当性を確保する必要がある。そのため、 利害関係者が多くなると、それに伴い、費用も増加する傾向にある。評価にかけ る費用の妥当性が、評価手法の導入のポイントになるが、そもそも、行政活動や 投資などにおいて、その活動の評価を行うにあたり、評価に係る費用の妥当性に ついて、明確な基準が設けられているわけではない。SROI が適する事業規模に ついては明確な判断基準を設定しうるものではないが、先行事例及び今回の調査 分析活動の経験による限り、事業の開廃等の判断が当該事業の実施主体の財政等 に与えるインパクトが大きいものを優先して実施すること望ましいと考えられ る。 表 17 SROI 評価の事例における評価対象 事業目的 投資(総費用) 評価対象期間 事例A 障害者支援施設の整備等 88,644 千円 8年間 事例B 障害者支援施設の整備等 120,425 千円 5年間 事例C 若者就労支援 80,293 千円 3年間 事例D 休耕地活用 21,511 千円 5年間 事例E 若者就業支援 22,044 千円 5年間 (推計) 事例F 生活困窮者の自立支援 564 千円 1年間 ※株式会社国際開発センター・NPO 法人 SROI ネットワークジャパン(2013) 『 「障 害者支援施設(就労継続B)の整備等」事業評価』、和田裕平〔研究代表者〕 (2013)『地域づくり活動の事業効果に測定方法及び政策への導入可能性に関 する研究』 、社会福祉研究(2014)から作成 最後に、今回の調査分析作業を踏まえて、SROI 評価の導入・実施について、若 干の考察を述べる。 SROI 評価には、一定程度の専門性が必要であるが、複雑な高等数学や統計学の 知識などが求められるものではない。必要とされるのは、インパクトマッピングを 行うにあたってのプロジェクトに関する各種情報の整理技術や、成果測定を行うに あたっての測定指標の設定及び測定、寄与率・死荷重に関する知見であり、いわば 「コツ」・ 「考え方」により一定程度の担保が可能となるものである。 このことから、相応の専門性を有している者(団体)に評価活動を委ねることで もっとも精度の高い結果を得ることが期待できることにはなるが、短期的な研修の 実施やガイドラインの作成なども、次善策として十分な有効性を有するものと考え る。 30 (3) ロジックモデルによる分析 次に、岩手県が実施している若者支援の施策体系において、目指す成果とそれを 実現する手段としての事業との因果関係について、ロジックモデルを作成し分析す る。なお、本調査分析において作成しているロジックモデルは、若者支援施策の評 価におけるロジックモデルの活用可能性について示すために、岩手県が作成してい る既存の資料等から得られた情報によりながら、当法人が第3者の視点から作成し たものであることを予め断っておく。 岩手県が作成した資料「平成 26 年度若者支援プロジェクト取組方針(概要)に よると、岩手県の若者支援施策の目標は「未来を担う若者のネットワークが広がり、 多様な交流の場が形成されること」及び「若者が地域や社会において自主的に活動 し、すべての世代が活性化されること」とされている。また、同じく岩手県が作成 した資料「平成 26 年度若者支援プロジェクト取組方針(施策体系・主要事業)」で は、この目標を実現するための手段となる事業のうち主要なものとして、共通、地 域、学び・暮らし(学校・家庭)、仕事(職場)の4分野に青少年育成支援やキャ リア教育等支援、雇用対策、産業振興など 18 の事業が位置付けられている。 そこで、これらの資料をもとに、若者支援における目指す成果(目標)と手段と の因果関係を検討する。なお、上述の目標について、若者世代の活躍を通じた各世 代の活性化を目指すとする後者の目標は若者世代に対する直接の支援のみならず、 その支援の波及効果までを射程とするやや高次の目標であると考えられたことか ら、本項では若者支援施策の直接の成果を「未来を担う若者のネットワークが広が り、多様な交流の場が形成されること」と設定し、この目標と事業との因果関係を 分析することとした。 また、先にあげた 18 事業の中には若者支援を目的に新規に実施されているもの と、もともと産業振興、芸術文化など他の施策体系に属する既存の事業として実施 されているものの中から若者支援としての側面を持つ事業を抽出したものが混在 しており、所管部署も複数に渡っている。既存の事業については、それぞれの事業 が属しているもともとの施策体系における因果関係が別途存在するが、これらの事 業を若者支援という効果に着目して集約しているのが若者支援施策であることか ら、本項でもこれらの事業を若者支援の手段として分析の対象としている。 以上の前提のもとに、岩手県が実施している若者支援施策における目的と手段の 因果関係についてロジックモデルにより整理したものが図1である。 以下に、本ロジックモデルについての若干の解説を箇条書きする。 ・ 本ロジックモデルでは、 「活動」から「最終成果」までの道筋を6段階に区分 している。上位の成果とそこに直結する下位の成果・活動は、それぞれ「目的」 と「手段」の関係にある。 ・ 最下段の「活動」には、県が実施している主要事業を記載している。 31 若者ネットワークが広がり,多様な交流の場が形成される。 お互いの考えに対する理解や共感が生まれる 地域活動への関わりが生まれる 同じコンテンツに興味を持つ者が出会う 定住の基盤が形成される 家族生活に必要 な支援が得られ る 次 世 代 も の づ く り 若者の活動に関 連する情報が発 信される なりたい人物像,身につけたいスキ ルを知る。 て 戦 略 推 進 ソ フ ト パ ワ い わ 援い わ て 若 者 活 躍 支 若 者 文 化 支 援 図1 若者支援策に係るロジックモデル プ い ラ わ ン て 推青 進 少 年 育 成 育 ネ い 成 ッ わ ト て ワ グ ロ ク 人バ 材ル サい ポわ て ト 未 来 創 造 人 ダ 日 本 養 の 成 塾次 世 代 リ ー 起 さ 業ん り く 未 来 産 業 各目的に沿った人 材が育成される ー フ ァ 興 N 支 P 援 O 等 に よ る 復 中期 成果 ー マ い わ 支 て 援ニ ュ 自分の能力を活用できる機会を見出す。 ー 推地 進域 再 生 営 漁 計 画 中期 成果 同年代の若者の活 動を知る 若者が活 動する場 ができる 新しい事業領域が 生まれる(充実する) 能力を活かせる場に出向く ー 被 災 地 域 就 業 支 援 ー て ジ ョ ブ カ フ ェ い わ 事業者が増え る ー 子 育 て 応 援 推 進 就業に関する情 報が提供される ー 援家 庭 教 育 子 育 て 支 若者の興味を引くコンテン ツが生まれる ー 若 者 出 会 応 援 推 進 コミットしたいコンテンツ・人が見つかる 就業の機会が増 え,就業できる 家庭生活の基 盤が充実する 最終 成果 中期 成果 育 に学 推 よ校 進る ・ キ地 ャ域 リ の ア協 教働 短期 成果 以下にロジックモデルに基づく考察を述べる。 ① 岩手県の若者支援施策について まず、目指す成果(最終成果)を実現するための手段は、最終成果の1つ前段の 中期成果3の段階で3つの成果を得るかたちに集約される。この3つは、地域活動、 人材育成、若者が興味を引くコンテンツ開発という一見すると無関係の成果のよう に思われるが、それぞれが若者の集う場をつくるきっかけをつくっているという点 で共通している。このことから、岩手県の若者支援が目指す交流の場づくりは、地 域活動、人材育成、若者が興味を引くコンテンツ開発という異なる3つのアプロー チからその実現が図られており、もともと他の施策に位置づけられている事業も、 若者支援の側面からは前述の3つのアプローチのいずれかを形成するための手段と 位置づけられていることがわかる。 現在、主要事業は共通、地域、学び・暮らし(学校・家庭)、仕事(職場)の4分 野に分類され、それぞれの分野ごとに青少年育成支援やキャリア教育等支援などの 細分野のもとに位置づけられているが、この分類はそれぞれの事業がもともと属し ている従来の施策体系を念頭においた分類であると考えられる。今後は、これらの 事業が若者支援という視点からは上述の3つのアプローチを形成することを通じて 目指す成果の実現に貢献する手段であることをより明確に示し、各事業の所管部署 とその認識を共有することで、事業の効果をより高めていくことが可能となると考 えられる。 ② ソフトパワーいわて戦略推進事業について また、本調査分析におけるヒアリング調査で取り上げたマンガと関連の深い「ソ フトパワーいわて戦略推進事業」は、マンガ等によるいわての文化・暮らしの発信、 マンガ家の発掘、観光振興と複数の目的を持つ事業であるが、若者支援という側面 から図1での位置づけを確認すると、 「若者の活動の場づくり」という短期成果、 「若 者の興味を引くコンテンツが生まれる」及び「就業の機会が増え就業できるという」 2つの中期成果と結びついており、若者支援の事業として捉えた場合にも目指す成 果との因果関係が比較的深い事業であると考えることができる。また、この事業と 同じ短期成果に結びつく事業として、若者支援そのものを目的に新規に実施される いわて若者活躍支援事業も位置づけられていることから、これらの事業との連携に より若者の活動の場づくりという短期成果を一層高めることも可能となると考えら れる。 本事業は、もともとはいわて県民計画における「岩手の未来を切り拓く6つの構 想」の中で、岩手のソフトパワーの掘り起こしや更なる新たな価値の創造、発信を 目的とする「ソフトパワーいわて構想」を実現する手段として位置付けられている ものであるが、上述のとおり若者支援施策が目指す成果とも因果関係を持つ側面が 33 ある。このことから、今後はソフトパワーいわて構想実現のための手段としての側 面に加えて、若者支援の手段としての側面からも定量的、あるいは定性的成果を把 握することが有効であると思われる。また、把握された2つの側面からの成果を相 互の施策の所管部署で共有することなどを通じて、相互の成果をより高めるという 視点から事業を実施していくことが望ましいと考えられる。 ③ 若者支援策におけるロジックモデルの作成 従来、一般的に若者は支援する側という認識が強く、ニート、ひきこもりなど、 支援が必要な若者であればまだしも、元気な若者の活躍の機会を創出することに対 する行政の介入の余地は低いと考えられていたところである。 しかしながら、地域経済の停滞や少子高齢化の進行などに加え、若者の世代の県 外流出が、今後の人口構造に大きな影響を与えることを鑑みると、今まで行政の関 与が低いと考えられていた元気な若者を政策の対象とすることは積極的に評価でき る。 岩手県において、若者支援に関する新規事業のみならず、既存の事業を含めた若 者の活躍の支援について、政策パッケージ化したことは、マスコミからの注目度な どから、元気な若者を支援していくことに対する力強いメッセージとなっているこ とが分かる。 その一方で、政策パッケージ化された若者支援の取組は農業、文化、環境、教育 など多岐にわたり、それぞれの部署が当該事務事業などを、若者支援の要素がある ことを常に認識し続けることは難しいと考える。 こうした中において、目的と手段の因果関係を、事業の実施から成果が発現され るまでの道筋を段階的・体系的に図示化するロジックモデルの作成は、その作成過 程も含めて、関係者間で共通理解を深める有効な手段であると認識している。 他の施策の位置づけの多い若者支援策において、より精度の高いロジックモデル を作成することは、関係者間で共通理解を得る一助になるほか、市町村への情報提 供としても、有用であると考えられる。 なお、本調査で提示したロジックモデルは、あくまでも、既存の資料等から得ら れた情報によりながら、当法人が第3者の視点で作成したものであることを留意さ れたい。 34 5 提言 評価結果から得られた知見に基づき、現行の岩手県の取組を向上させる観点から、 以下に提言を述べる。 なお、本提言は、本調査で得られた種々の情報から本評価事業の受託者である当法 人が総合的に判断して、当法人の責任において行うものであり、ヒアリングにご協力 いただいた多くの方々の意見や考えを代表しているものではないことを申し添えて おく。 当然のことながら、提言内容に対する反論や批判は、当法人が引き受けるべきもの である。 (1) 市町村における取組との連動 ・ 市町村を対象としたアンケート調査から読み取れるように、市町村においては、 ニーズが分からないとともにノウハウもなく、体系的な取組が行われていないの が現状である。 ・ また、市町村を対象としたアンケートからは、若者活躍支援策の成果に対する 期待として、「地域コミュニティの活性化」と「若者の社会参加の促進」が挙げ られる。 ・ 岩手県の提示する若者支援プロジェクト取組方針によれば、目指すべき姿が「未 来を担う若者のネットワークが広がり、多様な交流の場が形成されること」だけ でなく、「若者が地域や社会において自主的に活動し、すべての世代が活性化さ れること」となっていることを踏まえると、中長期的な視点で、若者の活躍を既 存のコミュニティの活性化に波及させる仕組みを併せて考えていく必要がある。 ・ コミュニティの活性化については、市町村における取組のウェイトが大きく、 岩手県の政策と市町村の政策を丁寧に接合させていく必要がある。 ・ 以上のことを踏まえて、市町村においてノウハウがない現時点においては、先 行的に事業を実施している岩手県が、実施する事業への市町村からの参加や、市 町村との意見交換等について検討されたい。 (2) いわて若者アイディア実現補助の事業手法の見直し ・ 本調査において評価対象とした2つのプロジェクトともに「いわて若者アイデ ィア実現補助」がなければ実施できなかったと関係者は述べており、また、いず れのプロジェクトにおいても、一定の前提条件のもとに算定した仮想値であるこ とに留意する必要があるものの、1を超える社会投資収益率は得られており、調 査分析の範囲内では「いわて若者アイディア実現補助」の効果は認められる。 ・ もとより、単発の事業で人の価値観や行動様式に変化を与える効果を得ること 35 は極めて難しいものであり、その観点から、初期アウトカムのみで測定した仮想 値ではあっても SROI が1を超えたことは積極的に捉えたい。 ・ 「平成 26 年度いわて若者アイディア実現補助募集要項」では、募集する事業の 要件の一つとして「将来に向けた事業展開が期待できること」が掲げられてい るが、今年度得られたアウトカムを中長期的なものにしていくことが今後の課 題であると認められる。 ・ 福井県庁のヒアリング調査においては、若者団体が活動を継続することで事業 計画能力が向上していることが指摘されており、たとえば、同一事業の複数年度 の補助の実施など、岩手県として、継続的に若者団体を支援していくことを検討 されたい。 ・ 「いわて若者アイディア実現補助」を同一団体が同一事業で複数年に渡って受 けられるようにすることは、一つの選択肢ではあるが、初年度と同額を2か年目 にも補助すれば通算の投資は2倍になり、アウトカムを発現させる難しさも増す こととなる。そこで、たとえば、2か年目は補助上限額を半額に抑えて若者団体 に自主財源調達の努力を促したり、一度補助を受けた団体を対象とした財源調達 やプロモーションに関する研修を実施することなどを併せて検討されたい。 ・ なお、本提言は、今年度の補助団体 10 団体のうち2団体のみを抽出した限定的 な情報・結果をもとに導き出しているものであることから、上記の検討にあた っては、他の補助対象団体の事業実績及びアウトカムを十分に考慮しながら、 総合的な判断をされたい。 (3) マンガ文化の醸成と人材育成等 ・ マンガを政策に取り入れたことについては、岩手の文化の発信としてのコミッ クいわての発刊などで一定の評価を得ているものの、マンガを文化として根付か せる観点から、漫画家の発掘や人材育成としてのマンガ大賞の成果を拡充するこ とが効果的であると考えられる。 ・ 高知県では、高校にマンガ同好会などが多く存在することや、20 年以上まん が甲子園が開催されていること、やなせたかし氏ら数多くの漫画家を輩出してい ることから、マンガという文化が地域に根付いていることが伺える。 ・ 岩手県においても、数多くの漫画家が輩出されていることから、マンガが一定 の文化として根付いていると考えることができる。しかしながら、専門的な知識 を習得できる場があるものの、地元での活躍の場が少ないため、培った技術を活 かせない若者が少なからず存在すると思われる。岩手県における文化振興として、 マンガを政策的に位置付けるのであれば、現在も行っている「いわてデジタルコ ンテンツ育成プロジェクト」との連携や、京都市で取り組まれているようなトキ ワ荘プロジェクトなどを参考に、漫画家などを目指す若者の支援策充実を検討さ 36 れたい。 ・また、コミックいわて等による情報発信に加え、マンガを取り入れた政策を展開 している高知県のほか、鳥取県との連携についても、マンガを活用した岩手県の 発信力が高まることが期待されるため、引き続き取り組まれたい。 (4) 政策評価としての SROI の活用の検討 ・ 本調査では SROI の手法を用いて、 「いわて若者アイディア実現補助」の2つの 採択事業を対象に評価を行った。 ・ 定量的評価については、その数値の大小だけが注目される傾向にあり、SROI の 手法を用いた評価についても同様の指摘がなされているところである。 ・ SROI のメリットは、社会的な便益の定量化もさることながら、定量化の過程 で検討される成果の発現までの流れ(インパクトマッピング)が可視化され、関 係者間で共有されることであり、これによりプロジェクトデザインの見直しが図 られることが期待できることにある。 ・ ロジックモデルの作成と比較して、SROI 評価は、時間もコストもかかるため、 導入には慎重な姿勢が必要となる。今回は、ヒアリング調査などについて、予算 的・時間的制約もあり、仮想値に基づく分析結果を得るにとどまったが、社会的 な課題が複雑化し、また、限られた社会資源の有効活用することが求められてい る中において、その活動の生産性を定量的に把握しながら、アウトカムについて 利害関係者間で共通の理解を得ることは、ロジックモデル分析と同様に、有効な 評価手法である。先行的に取り組まれている若者や障がい者などに対する就労支 援事業のほか、各種補助事業などへの SROI を用いた評価を参考に、政策評価手 法の1つとしての活用を検討されたい。 ・導入の具体的検討に向けて、以下に参考意見を付す。 ・SROI 評価は、評価活動の費用対効果も考慮し、①事業規模の大きいもの、② 複数年度に渡って継続して実施しているもの、③政策上の重点課題から、毎年 度1~数事業を選定して実施されたい。すなわち、毎年度経常的に実施してい る事務事業評価とは別体系の取組として実施されたい。 ・SROI 評価を実施するにあたり、ステークホルダーの参画によるインパクトマ ッピング等に中立的な視点かつ専門的な知見が必要になることから、業務委託 等によりファシリテーター・評価者を置くこととされたい。 ・条例に基づく政策等の評価とは別に、岩手県の各部局等におけるNPO・民間 団体等への補助事業にあっては、当該補助対象の事前・事後評価を、SROI 評 価の手法又はその趣旨に基づいた簡便な手法により、実施することとされたい。 この場合において、担当部局には SROI に関する一定程度の知識・技術が必要 とされることから、 担当部局を対象とした研修等を事前に実施することや SROI 37 評価の実施に係るガイドライン等を作成することが望ましい。 38 テーマ 平成 26 年度民協働型評価業務報告書 『岩手県における若者支援策の可能性について』 平成 26 年9月 発行・編集 特定非営利活動法人 政策 21 岩手県盛岡市下ノ橋町 7 番 36 号 邑計画事務所内 電話 019-653-1058 URL http://www.policy21.jp