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NGO×企業 連携シンポジウム ~マルチ・ステークホルダーで実現する持続可能な社会~ 2016 年 2 月 24 日(水) 14 時 00 分~17 時 10 分 (17 時 30 分~19 時 00 分 懇親会・名刺交換会) 会場:スコットホール(公財)早稲田奉仕園内 対象:NGO 関係者、企業関係者、一般の方 参加者:144 名(関係者含む) 参加費:2,000 円(連携ネット/GCNJ 会員 1,000 円) 懇親会費:2,000 円 <共催> 一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ) NGO と企業の連携推進ネットワーク(連携ネット) /特定非営利活動法人国際協力 NGO センター(JANIC) <後援(順不同)> 1 独立行政法人国際協力機構(JICA)、1%(ワンパーセント)クラブ 【プログラム】司会:藤森 みな美(連携ネット 事務局/(特活)国際協力 NGO センター(JANIC)広報・渉外グループ) 2 Ⅰ はじめに 【開会あいさつ】 兵頭 康二氏 連携ネット コアメンバーリーダー/ (公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 事務局次長 兼 法人連携部長 今回のシンポジウムはお申込みいただいた時点で企業の参加者が NGO の 2 倍となった。これは企業 の方々の SDGs に対する関心が高い表れだと感じている。 SDGs は 2030 年までの 15 年間に国家、行政、国際機関、民間、NGO、個人といったあらゆる関係者 が地球規模の課題に対して連携して取り組まなければ達成は難しい。そこで今回のシンポジウムでは企 業と NGO だけでなく様々なセクターの方々にお集まりいただき、SDGs に関してお話いただくこととし た。 SDGs はまだ始まったばかりで、企業はこれを本業にどう反映させるか、NGO は課題解決の質、規模 をどう高められるか、また企業との連携に向けてどう柔軟になれるか等、実施に向けた様々な課題があ る。通常、シンポジウムでは成功事例をご紹介させていただく場合が多いが、今回はどのように取り組 もうとしているのかというその過程や、苦労を多く聞けるのではないかと思う。 NGO と企業の連携推進ネットワーク(以下:連携ネット)では、今回のシンポジウムだけでなく今後 も SDGs に積極的に取り組んでいきたいと思っている。本シンポジウムは連携ネットメンバー以外の方々 にもご参加いただける会となっており、ぜひこれからマルチステークホルダーで SDGs に取り組み、持 続可能な社会を実現していくにあたって、多くの方々に連携ネットへご参加いただけると嬉しい。本シ ンポジウムが、多様なセクターの方々が集い、つながり、連携することによって科学的変化が起こるよ うな機会にして頂ければと思っている。 【グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン活動紹介】 八尋 英昭氏 (一社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン 事務局長 国連グローバル・コンパクト(UNGC)とは? 1990 年代に経済が急速にグローバル化した弊害として、グローバル企業がアフリカなどに進出した際 に様々な課題が噴出した。当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が、1999 年のダボス会議にて経済人 のトップに対して「グローバリゼーションを進めることは非常に結構なことだが、その際に人の顔をし た、健全なグローバリゼーションを進めてほしい」と呼び掛けた。それまで国家や政府への呼びかけを 行うことはあったが、直接経済界へ呼びかけたのは国連史上初めてであり、非常にユニークなことであ った。その翌年の国連総会で国連グローバル・コンパクト(以下:UNGC)は発足した。この「人の顔 をしたグローバリゼーション」は UNGC の象徴になっている。 2016 年 1 月末現在で、世界 13,000 を超える企業・団体が UNGC に署名をしており、そのうち 2/3 が 企業、1/3 が NGO や自治体が署名している。NGO もぜひこの機会に署名を検討して頂きたい。 UNGC には 10 の原則がある。人権、労働、環境、腐敗防止の 4 分野で構成されており、署名した企 業・団体はこれを尊重しながらそれぞれの取り組みを行ってもらう。この 10 原則は UNGC が作り出し たものではなく、人権に関しては 1948 年の世界人権宣言、労働に関しては 1998 年に ILO 宣言、環境に 3 関しては 1992 年のリオ宣言、腐敗防止に関しては 2003 年の国連腐敗防止条約があり、それらの根幹を 平易かつシンプルにしたものとなっている。例えば人権に関しては人権を尊重し、自ら人権侵害に加担 しないなど、ごく当たり前な内容である。 UNGC 署名組織には、ひとつだけ義務がある。それは COP(Communication on Progress)と称する 3 つの要件にのっとった年次報告書を毎年 1 回提出して頂くことだ。企業に関しては下記の 3 要件とな る。 (1) UNGC10 原則に対する最高責任者による支持の表明。 (2) 企業が実施した、または実施しようとする 4 分野に関する GC 原則の実践的行為の記述。 (3) 成果の測定。 (可能なものは、質量的な結果測定を実施)。 NGO などの非営利団体には COE(Communication on Engagement)を提出してもらうが、COP と ①と③は同じだが、②についてはその NGO が目標にしている分野のみ報告してもらう。また COP は年 に 1 回の報告だが、COE は 2 年に 1 回の報告となっている。 また UNGC が推奨していることが 3 点ある。 (1) GC10 原則と SDGs の実現を目指した活動を進めること。 (2) UNGC に参加していることや GC 原則を積極的に PR すること。 (3) UNGC に寄付をしていること(一部ロゴ使用は寄付前提) UNGC は国連の一機関でありながら一切国連の予算を使っておらず、すべて寄付で賄われている。 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(UNGC)とは 日本では 2001 年 3 月にキッコーマンが UNGC 署名第一号となった。その後、2003 年 3 月に国連広 報センターの一部としてグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(現在はグローバル・コン パクト・ネットワーク・ジャパン)が創設され、2016 年 2 月 24 日現在までに 211 の企業・団体が会員 となっている。 GCNJ の活動の中心は分科会活動であり、現在 14 の分科会があり、それぞれ 20~40 社が参加してい る。1~2 か月に 1 回程度、有識者に講演頂いたり、各社の事例を共有したり、議論をしたり、共同で成 果物を作成したりしている。 また若手経営者の育成の場ということで、 「明日の経営を考える会」 (AKK)を開催し、年間 12 回のセ ミナーを実施している。このセミナーは誰でも参加できるわけではなく、企業の社長の推薦が必要とな る。また毎年 1 回のシンポジウムや宮城県仙台市亘理町でボランティア活動などを行っている。 2015 年度と 2016 年度の GCNJ の取り組み 2015 年度は SDGs の認知度向上に取り組んできた。昨年 9 月 25 日に SDGs が採択された翌日に JANIC、 動く→動かすと「2030 アジェンダ」採択に際しての市民社会・ビジネスセクター共同声明を発表した。 また「ポスト 2015 分科会」と「SDGs タスクフォース」を軸として、SDGs 勉強会やシンポジウムなど を行ってきた。2016 年 3 月 4 日には IGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)と共催で SDGs の企 業行動指針となるガイドライン「SDG コンパス」の日本語版作成お披露目会を行った。 2016 年、 いよいよ SDGs を実践していく年となった。今年もいろいろなイベントがあり、3 月には SDGs インディケーターが公表され、5 月には G7 伊勢志摩サミット、世界人道サミット、6 月にはリーダーズ・ 4 サミットが開催される。これに合わせて勉強会やシンポジウムなどをいろいろな方々と協働で行ってい きたい。そして 2020 年は東京でオリンピックが開催され、様々な意味で日本が注目される。それまでに 日本の企業、NGO、アカデミア、官公庁などすべての力や信頼を結集して、日本の取り組みを進めてい きたい。 【NGO と企業の連携推進ネットワークの活動紹介】 山本 匡浩氏 連携ネット コアメンバー サブリーダー/ (特活)ADRA Japan ファンドレイジング担当 NGO と企業の連携推進ネットワークとは NGO と企業の連携推進ネットワーク(以下、連携ネット)は、社会にある様々な課題を単独ではなく マルチステークホルダー、特に NGO と企業がそれぞれ持っている力を活かし合い、対等な立場で地球規 模の課題を解決することを目的として作られた。連携ネットは 1998 年の発足当初、NGO のみが加盟し ていたが、2 年目から企業も 8 社ほど参加するようになり、現在 NGO33 団体、企業 27 社が参加してお り、社会課題に対する企業の関心の高まりを感じる。 連携ネットは 3 カ年計画を立てて動いており、現(第 3 期)3 カ年計画は「持続可能な社会の実現に 向けた地球規模の課題解決を目指し、NGO と企業の『違いを力に』質の高い連携を進める」ことを基本 方針としている。重点項目としては①地球規模の課題を知る、② NGO と企業の違い・特性を理解する、 ③質の高い連携事例を共有し、創造する、④ポスト 2015 の実現に向けて関連機関との連携を強化する、 ⑤地方の NGO や中小企業との連携を強化する、である。 活動形態としては、NGO、企業それぞれからコアメンバーを選び、事務局、アドバイザーとともにコ アメンバー会合を年 6〜7 回実施している。そこで連携ネットの活動方針・計画を立て、3 ヶ月に1度メ ンバーのみを対象とした定例会、そして年に 2 回のオープンなシンポジウム(東京、地方)を実施して いる。定例会では、前半は様々な社会課題を解説、事例の紹介を行い、後半は NGO と企業が混ざり合う 形でワークショップなどを行い、連携の方法を模索している。 参加のメリット 本ネットワークへの参加のメリットとして、「出会い」、「学び」、そして「創造」という三つのメリッ トがあると考えている。NGO と企業が出会い、学ぶ場を通して、企業と NGO の信頼関係と横のつなが りを持つことができる。また、最新の連携事例や専門家のデータなど、国際社会の潮流に合わせた最新 の情報を得ることができる。そして、出会いと学びだけでなく、持続可能な社会実現のためのパートナ ーシップへとつなげることができる。本シンポジウムにお越しのみなさまで、まだ連携ネットにご参加 いただいていない組織の方は、ぜひご参加いただきたい。 Ⅱ 基調講演 【持続可能な開発目標(SDGs) -地球的課題の解決と 5 多様なステークホルダーの役割-】 武内 和彦氏 東京大学 国際高等研究所(UTIAS) サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S) 機構長・教授 「持続可能な開発」の経緯 まず初めに、 「持続可能な開発」という言葉が生まれた経緯について話したい。1972 年にスウェーデ ンのストックホルムで国連人間環境会議が開催された。当時は日本も含め先進国で大気汚染、水質汚濁 や健康被害が深刻となっていた。先進国の多くの人たちはもう開発の時代ではなく環境保全の時代であ ると主張し始めた。そうした大きな考え方に対して真っ向から批判したのは開発途上国であった。 「先進 国は自分たちが地球環境を悪化させておきながらそういう発言をするのは自分勝手である。」「途上国は これから発展していかなければならない。だから開発をする権利がある。 」と主張し、大きな対立を生む こととなった。 この対立を鎮めるために、ノルウェーの元首相であるブルントランド氏が中心となって国連に「ブル ントランド委員会」が発足し、様々な議論がされた。その報告書『我ら共有の未来』の中で、 「持続可能 な開発」という言葉が定義され、次世代の利益を損なわないような開発を全世界の人々が行うべきであ るとした。開発そのこと自体が悪いのではなく、持続可能でない開発が悪いのであるという考え方であ る。 このような考えを踏まえ、1992 年に地球サミットがブラジル・リオで開催された。注目すべき点は、 この会議の正式名称が「環境と開発に関する国連会議」であることだ。環境と開発の課題が同じ場で議 論されるようになったのである。 ミレニアム開発目標(MDGs)―2015 年までの国際開発目標― 西暦 2000 年はミレニアムということで、いろいろな取り組みが提唱された年であった。例えば「ミレ ニアム生態系評価」が提唱され、その 5 年後に報告された結果によると、地球環境は生物の側から見る とこの 50 年間で最も激しく劣化したことが明らかになった。そうしたなかで、開発途上国を主対象とし た開発目標としてつくられたのが「ミレニアム開発目標(MDGs)」である。MDGs は、貧困の削減や初 等教育の普及、HIV/エイズ対策、環境の保全、パートナーシップの推進といった 8 つの項目で評価し、 どの程度目標が達成されたかをみて、その後の対策を考える、といった取り組みを行ってきた。例えば 「1 日 1.25 ドル未満で生活する人口の割合を半減させる」、「妊産婦の死亡率を 4 分の 1 に削減する」な ど、非常に分かり易い数値目標で達成度が評価された。 2014 年度の達成度を見ると、特に西アフリカの達成率が低いという結果が出ている。今まで途上国で の貧困削減や環境保全がどこまで進んでいるのかよくわからなかったが、目に見えるかたちで評価でき るようになった点は、MDGs のひとつの成果といえる。また MDGs があることによって、国連開発計画 (UNDP)をはじめとした国連組織、NGO など市民組織、また各国の特に開発援助を担当する組織(日 本でいう外務省や JICA)が集中的に達成すべき目標分野に集中投資して、問題解決につなげることがで きたことは意義深い。 一方、目標が非常に単純な数字であるため、それぞれの地域や国の違いが考慮されておらず、画一的 に各地域や国に押し付けられてしまったという面もある。またいくつかの目標が非常に抽象的であるた め、達成度が十分評価できないことや、課題間の関係性について十分に議論がなされていないことも課 6 題とされている。このような改善点はあるにせよ、MDGs のような共通のゴールができたことは高く評 価するべきだと思う。 一方で、途上国の状況や、途上国に対する見方も 2000 年当時から大きく変わってきている。例えばア フリカに関係している企業や政府関係の間では、アフリカは新しいビジネスの機会を提供している地域 であり、これまでの開発援助というスキームを超えた対等なパートナーとして連携を強化すべきという 見方も広まっている。 持続可能な開発目標(SDGs)とは SDGs は、2012 年の地球サミット(リオ+20)により策定が合意された国際目標であり、2013~2014 年に国連でのオープン・ワーキング・グループ(OWG)による国際交渉の末、2015 年 9 月の国連総会 で採択された。 SDGs の大きな特徴として、オープンなプロセスで作られた点が挙げられる。国連に OWG が設けら れ、多様なステークホルダーが参加し、議論をとりまとめた。SDGs は目標、ターゲット、そして指標と いう 3 つの構造を持ち、モニタリングや評価をしながら、2030 年の達成を目指すものである。また、 MDGs は開発途上国を主対象にした目標であったが、SDGs は先進国も含めたすべての地域、国に普遍 的に適用されるものであることも、特徴の一つと言える。 SDGs を作り上げたプロセス オープンなプロセスをとる契機となったのは、2012 年のリオ+20 である。従来の国連の会議は、主役 である加盟国がそれぞれの国益を考え意見を出し合いながら合意形成を図っていた。しかしリオ+20 は これとは全く違い、加盟国以外の様々なステークホルダーが参加し、それぞれが自らの役割を考えなが ら、これからの持続可能な社会のあり方について検討していった。その流れが SDGs の OWG につなが っている。SDGs は国や政府だけではなく様々なステークホルダーが一緒になってつくりあげたものなの である。 多様なステークホルダーが関わったことにより、MDGs と比べかなり客観的の高い目標となった。専 門分野では「科学と政策のインターフェイス」と呼んでいるが、SDGs プロセスへ研究者も多く参加した ことから、実質ベースの議論が可能となり、研究成果を政策形成に効果的に活用するというインターフ ェイスの強化が図られた。 他方で、SDGs は 17 の目標と 169 のターゲットという、非常に数の多いものとなってしまった。これ は、多くのステークホルダーで議論したことのデメリットと言える。しかし、それはパートナーシップ による取り決めの結果として捉え、それをいかに有効に活用していくかを考えるというポジティブな立 場に立つべきであると思う。 SDGs による豊かさの再定義 国連のバン・ギムン事務総長が中心となって、SDGs の内容をより統合的に捉える考え方を公表してい る。SDGs を支える大きな要素として、人間、地球、人々の尊厳、人々の繁栄、正義、そしてパートナー シップを提唱している。国連大学を訪問したバン・ギムン氏に「あなたはこれらのうちどれが一番大切 だと思いますか?」と聞いたことがある。彼は即座に「dignity(尊厳)と justice(正義)」と回答した。 7 SDGs では、つい環境や貧困といった目標に目が行きがちだが、彼の基本的な考え方は、人間社会の尊厳 を守ること、そして公正な社会を作ることが、それらの根底にあるものとして、より重きを置いている のである。 持続可能な開発は、環境、経済、社会の 3 つの側面に支えられ、それぞれの目標の達成バランスによ って成立するという考え方がある。この考え方をさらに発展させたのが、「プラネタリーバウンダリー」 という概念である。スウェーデンのヨハン・ロックストロームらが中心となって提唱した概念であるが、 地球規模の転換点をもつ 9 つの要素を調べ、気候変動などその多くは限界に近づいており、リンや窒素 などはすでに限界を超えているという結果を示したのである。農薬や化学肥料を大量に使用することで、 地球環境が吸収できる量を超えてしまったのだ。 ロックストロームらは、こうした地球の限界の中で人間がいかに生きのびていくかを考えていかなけ ればならないと主張する。かつて、アメリカのデニス・メドウズらは「成長の限界」を提唱し地球資源 を食い尽くした結果、もはや成長には限界があると警鐘を鳴らしたが、プラネタリーバウンダリーでは 「限界の中の成長」 、すなわち地球の限界を知り、その限界の範囲内でいかに成長し、豊かな暮らしを実 現するかを考えるのである。 もうひとつの重要な概念として、ケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタらが提唱している「Inclusive Wealth(包括的な富) 」がある。これは国の富を人工資本の蓄積だけで測るのは問題があるという観点か ら、自然資本や人的資本(例えば教育や人々の健康)も含めて、その国が富んでいるかどうかを評価す べきとの考え方である。ダスギュプタ教授と直接話をした際に、国ごとに加えて地域ごとに評価するこ とも大事ではないかという議論になった。例えば、日本で東京は人工資本には富んでいるが、地方に行 けばむしろ自然資本が重要であり、その自然資本を活かしていないから地方の活性化が進まないのでは ないかと考えられる。私たちは、日本語では「包括的な福利」と呼んでいるが、こうした考え方も重要 であると思う。 環境・社会・経済のバランス これまでの持続可能な開発は、 「『環境・社会・経済』の 3 つがバランスよく保たれることで持続可能 な開発が行われる」という考え方だったが、ロックストロームらが提唱するような「地球システムの制 約の中で社会や経済を成長させる」という考え方に変わってきた。これは MDGs 型から SDGs 型という 新しいパラダイムへの転換と捉えることができる。MDGs の残された課題を踏まえながらも、地球シス テムの限界がもたらす課題を踏まえ、衡平性、公平性等の観点から作られたのが SDGs であるというこ とができる。 SDGs の目標の間には、様々な関係性がある。例えば気候変動(ゴール 13:気候変動)は、生態系(ゴ ール 15:生物多様性)へ大きな影響を及ぼすといったことである。各企業や NGO によって主とする目 標は違うと思うが、各目標がお互いに関係しあっているということをよく理解して、SDGs に取り組む必 要がある。 SDGs の特徴 まず、MDGs は「貧困の半減」などの数値目標から構成されていたが、SDGs では「誰ひとり置き去 8 りにしない」、「あらゆる貧困を終わらせる」、「すべての女性のエンパワーメントを発揮させる」、「すべ ての人に水を確保する」など、MDGs に比べて格段に高い目標を掲げている。評価されている点として は、下記の 5 点が挙げられる。 (1) 包括性(包摂性 inclusiveness) :誰一人取り残さない (2) 普遍性:先進国・途上国ともに適用される (3) 多様性:目標値は(世界全体の達成目標を視野に入れた上で)国レベルで設定可。指標は地域・ 国レベルで補完される (4) 統合性:経済、社会及び環境の 3 つの次元が統合へ (5) 行動性:具体的行動の実施へ とはいえ、いくつか批判もあることも事実である。目標が多すぎて理解が容易ではないことや、先進 国における関心が低いこと、法的拘束力がないことである。本日のシンポジウムのように、企業や NGO は SDGs に大変注目しているが、日本政府の中で SDGs をどう進めていくのか、どの省庁が担当するの かも決まっていないのが現状である。SDGs は国連レベルのみならず、地域や国レベルの設定・実施・フ ォローアップとレビューが必要になる。日本の中の司令塔が決まっていないことは非常に問題であると 感じている。 2030 年へ向けた SDGs のチャレンジ 多様なステークホルダーが国家を超えた 21 世紀型の問題解決にチャレンジするためには、地球の福利 と人間の福利とを融合させることが必要であり、それを支える学術的研究も重要である。例えば SDGs のモニタリング・評価プロセスにおいて、目標/ターゲット/指標とその進捗状況を評価する必要があ る。地球と人間の双方の福利向上を評価するには、科学の役割が非常に大きい。最近、「Future Earth」 という「未来の地球」を考える取り組みに関わっているが、そこでのキーワードに「Co-design, Co-production, Co-delivery」がある。これは科学と社会が一緒になって科学の在り方を検討し、そして 科学的知識を現実の世界に広めていくべきという捉え方だが、科学の側も実践的取り組みを重視し始め ていると言える。 企業にとっての SDGs の重要性 SDG コンパス(ビジネスセクターによる SDGs ガイドライン)には、なぜ SDGs はビジネスにとって 重要なのかという問いに対して以下のように答えている。 将来のビジネスチャンスの提示 企業の持続性の向上 ステークホルダーとの関係強化、新たな政策展開への同調 社会と市場の安定化 共通の言語及び目的の共有 SDGs と経営上の優先課題を統合させる企業は、顧客、従業員、その他ステークホルダーとの協働を強 化することができるとある。言うまでもなく、SDGs の達成には企業と NGO の連携が不可欠である。こ れまでは「企業が NGO に寄付し、NGO がその資金を使って活動する」といった一方通行の関係が主流 であったが、これからは持続可能な社会づくりにおける対等なパートナーとなるだろう。企業の社会的 9 責任の影響力が増しているなかで、NGO とパートナーシップを組むことによるブランド価値の向上や商 品の差別化、ロイヤリティ・アカウンタビリティの向上、サプライチェーンにおけるリスク管理などの 連携効果が見込まれる。NGO・NPO にとっても、社会課題の解決はもちろん、資金的基盤の強化、認知 度・信頼度の向上、参加機会の獲得など、互いに Win-Win の関係を築くことが期待される。ステークホ ルダーとの連携そのものを企業の活動の根源に組み込んでいくことが、これからの企業活動に必要であ ると考えられる。 国連事務総長の特別顧問であるジェフリー・サックスが中心になって「持続可能な開発ソリューショ ン・ネットワーク(SDSN) 」が組織されている。その日本支部である SDSN Japan を最近結成したので ぜひ関心を寄せていただきたい。 今後の課題(特に日本) まず国内実施に向けた「司令塔」を設立する必要がある。既存の枠組みで対応できない横断的課題(災 害対応、食料廃棄物、雇用や地方創生等)への対応には、政治的イニシアチブが必要になる。また、国 内政策と国際政策の課題の統合も不可欠だろう。次に、ベストプラクティス(政策・産業)を国際的に 発信していくことが重要である。そのことによる日本の成長と国際的評価向上による日本の地位向上を 目指したい。また、SDGs が企業にとって、NGO にとって、また社会にとって絶好のチャンスであり、 経済成長戦略となるという認識を醸成したい。この経済成長とはあくまで地球システムの制約があるな かでの持続的な経済成長であるが、そうした考え方は、地方創生のような既存政策の強化にも有用であ ろう。最後に、SDGs 達成のためには、政府、企業、NGO 等がパートナーシップを強化し、多様な政策 の包括的実施が重要となる。 SDGs への取組み Ⅲ 【SDGs に向けたキリングループの CSV 取組みについて】 森田 裕之氏 キリンホールディングス(株) グループ経営戦略担当 CSV 推進室 主幹 キリングループの概要 キリンホールディングス株式会社は 1907 年、ほぼ 100 年前にキリンビールとして設立された。本社は 東京の中野にあり、従業員数は約 40,000 人、グループ会社数は連結子会社数が 216 社、持分法適用関連 会社が 16 社である。日本はもちろんだが、アジア、オーストラリア、ブラジルなどで事業を展開してい る。アジアでは 2015 年夏にミャンマー・ブルワリー社の株式を取得、子会社化し、新たな展開エリアと して新興国を開拓しているところである。 2 月 15 日に 2016 年から 2018 年に向けての中期経営計画を発表した。2015 年に子会社であるブラジ ルキリンの減損により、上場以来初の赤字を出したこともあり、役員、社員一同、気を引き締めてこの 中期経営計画に臨んでいる。重要課題のひとつ目が、ビール事業の収益基盤強化である。キリンビール 社(日本)、ライオン社酒類事業(オーストラリア)、ミャンマー・ブルワリー社(ミャンマー)の基盤 強化を図っていく。ライオン社、ミャンマー・ブルワリー社ともに各国内に高いシェアを占めており、 日本は競争が厳しいところもあるが、それでもビールビジネスが中心となることは間違いない。ふたつ 目は、低収益事業の再生・再編である。赤字を出したブラジルキリンはもちろん、清涼飲料を扱うキリ 10 ンビバレッジ(日本) 、ライオン社の清涼飲料と乳製品事業も厳しい状況にある。ここを立て直す、もし くは再編するくらいの勢いでここ数年取り組んできている。最後は、医薬・バイオケミカル事業の飛躍 的成長である。協和発酵キリン社という、がん、腎、免疫疾患等の領域で事業を展開する製薬会社があ る。今後は北米やヨーロッパへ市場を拡大していこうとしている。 キリングループがめざす CSV 中期経営計画には、 「グループの強みである技術をグループ横断で活かしながら、社会課題の解決とお 客様への価値提供を両立し、経済的価値の創造と社会的価値の創造を実現していく、キリングループな らではの CSV を展開し、社会とともに持続可能な成長を目指します。 」とある。われわれは CSR ではな く CSV という言葉を使っているが、基本的にはサステナビリティを目的としており、CSR の概念も含ん だ形で CSV と呼んでいる。 キリングループがめざす CSV には 6 つのテーマがある。「キリングループのチャレンジ」として位置 付けているのは、「人や社会のつながりの強化」と「健康」である。「キリングループの約束」としては 「食の安全・安心」、「環境」 、「公正な事業慣行」、「人権・労働」をテーマとしている。これらは震災の 翌年である 2012 年に、主としてビール会社として東日本大震災にどう対応していくのかを考えていると きに作ったテーマであるため、現在見直しを行っている。GRI などの国際的なガイドラインに則った形 で、キリングループとしてのマテリアリティマトリックスを分析し作成中である。今年の 5 月には、統 合報告書の中でキリングループとして取り組んでいくべき社会課題と事業課題をマッピングしたものを みなさんにお見せすることができるだろう。 SDGs とキリンの関連 SDGs は発表されたばかりであり、これからご紹介する事例は戦略的に SDGs を捉えて実施してきた わけではなく、今までの活動を SDGs に当てはめてみた結果である。しかし今後、戦略的に SDGs とも 関連付けた社会課題に取り組んでいこうと、上半期にはキリングループ全体の合意を取り付けるべく動 いている。 SDGs17 の目標のうち、目標 2、3、6 について事例を紹介する。 目標 2:飢餓を終わらせ、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を 推進する 調達を通じた農業の応援を実施してきた。事例をふたつ紹介するが、ひとつ目は 2013 年秋、福島県の 農業応援のために福島県産の果実を使用した「キリン 氷結 和梨」と「キリン 氷結 福島産桃」を発売 した。福島は原発の問題があり一番復興が遅れているため、農業的にも非常に厳しい問題があるが、我々 が福島県産の梨や桃を買い取り、福島の農業応援と事業をつなげている。お客様からも非常に好評をい ただいた。もうひとつは、長野県上田市の遊休農地をぶどう畑にし、 「椀子(マリコ)ヴィンヤード」を 開園した。ここではぶどうの収穫業者も満足にいない状況の為、収穫作業体験イベントを開催し、そこ でお客様ご自身でぶどうを収穫してもらい、そのぶどうでワインを作り、あなたが収穫したぶどうで作 ったワインですよと買ってもらう。また、長野県塩尻市でも遊休農地を活用し、その農家とキリンが調 達の契約を交わすことによって継続的に農業を行うことが出来る仕組みを作った。 目標 3「あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」 11 アルコール関連問題や生活習慣病のリスク低減への対応を行っている。まず、飲酒運転の根絶という 社会課題に貢献すべく、 キリンフリーという世界初のアルコール度 0.00%のビールテイスト飲料を開発、 発売した。生活習慣病については、独自技術を活用した健康ニーズ商品を開発した。カフェインや糖質 をオフにした商品、キリン プラス-アイというアミノ酸の一種であるオルニチンやプラズマ乳酸菌の入 った商品を発売し、人々の健康を意識した商品を開発、販売している。 オーストラリアでは、子どもの肥満の問題が社会問題化している。そのため、子ども向け飲料に人工 甘味料を一切使用せず、砂糖や脂質等もオフにした、肥満問題に対して優れた商品を作っていこうとい う取り組みを開始している。最終的には、オーストラリアの食習慣の改善をゴールとしている。 目標 6「すべての人々に水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」 キリングループの 2050 年に向けた長期環境ビジョンの中で、水資源、生物資源、容器包装、地球温暖 化の 4 つを掲げている。その中の水資源に関する取り組みを紹介する。地域ごとに大きく異なる水資源 の課題に対して、それぞれの地域の課題に適した取り組みを進めていこうとしている。例えばビール 1 リットルを作るために日本だと 4.9 リットル、オーストラリアは 2.56 リットル、ブラジルでは 3.54 リッ トルの水を使用する。水の環境が厳しいオーストラリアでは日本の約半分の量で作ることが出来ている。 また、ボルヴィック 1L for 10L プログラムがある。ボルヴィック製品のお客様購入 1L につき 10L の清 潔で安全な水を生み出すための資金をユニセフに寄付し、アフリカ・マリ共和国の井戸づくりや壊れた 井戸の修復、メンテナンスに使われている。 キリングループにおける NPO・NGO との取組み事例 2010 年にキリングループ生物多様性保全宣言を発表し、2013 年には持続可能な生物資源調達ガイド ラインを WWF ジャパンと協働して策定した。例えばパーム油や紙、紅茶葉などは、熱帯雨林を違法に 切り開いて作ったプランテーションで作ったものは調達しないようにしている。 日本に輸入される紅茶葉の約 60%がスリランカ産であり、キリンはそのうち 25%を「キリン 午後の 紅茶」に使用しているため、スリランカに対して様々なプログラムを持っている。例えばスリランカの 農園がレインフォレスト・アライアンス認証を取得するためのトレーニング費用を支援している。しか し全ての費用を支援しているわけではなく、紅茶園側に監査費用を負担してもらうことにより、意欲を 持って紅茶園の経営を行ってもらい、キリンも良質な原料を得ることができる。我々自身も直接現地の 農園へ足を運び、きちんと活動できているかを直接確認している。 また、キリングループは東日本大震災復興支援に継続的に取り組むべく「復興応援 キリン絆プロジェ クト」を立ち上げ、「絆を育む」をテーマに「地域食文化・職産業の復興支援」「子どもの笑顔づくり支 援」 「心と体の元気サポート」の 3 つの幹で取り組んでいる。「子どもの笑顔づくり支援」では、(公社) セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと協力し、被災 3 県の農業関連高校生を対象に、返還義務のない奨 学金(月額 3 万円)を支給し、2014 年 3 月までに延べ 21 校、1,770 名の就学を支援した。 「地域食文化・ 職産業の復興支援」では、宮城県南三陸農業協同組合の「気仙沼茶豆」や福島県麓山高原豚生産振興協 議会の「麓山高原豚」等の生産と販売促進、地域ブランド育成に対して、短期的に資金を提供するだけ でなく、事業化、ブランド化、次世代を担う担当者の育成といった長期的な支援を行っている。 最後にオーストラリアの「The Goodness Project」は、前述のライオン社による乳製品・果汁飲料事 業を通じた生活習慣病のリスク低減への取り組みだが、これはまさに様々な NPO/NGO と政府も含め 12 てマルチステークホルダーで取り組んでいる。 【SDGs でソーシャルイノベーション:NGO はどう取組む?】 堀江 由美子氏 (公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー・マネージャー セーブ・ザ・チルドレンとは 「子どもの権利の実現」を目指して、1919 年に英国で創設された。創始者は「子どもの権利条約(1989 年) 」のルーツとなる「子どもの権利憲章(1923 年)」を起草した人物である。日本は 1986 年に設立さ れ、 現在は独立した 30 カ国の加盟国により、世界 120 カ国以上で様々な子ども支援活動を展開している。 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」 2015 年 9 月 25 日、国連総会特別サミットで「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」が採択された。持続可能な開発目標(SDGs)とはこのアジェンダの中の一部であり、前文・ 宣言・実施手段・パートナーシップ・フォローアップ&レビューからなる包括的な文章となっている。 我々の世界を“改革”ではなく“変革”と書かれているところに、強い覚悟が表れているといえる。 この期間のニューヨークは各国の首脳、企業、NGO、研究者、一般の市民など様々な人が集結し、サ ミットの傍らで様々なイベントやセミナーが行われた。日本からも様々なセクターの方々が多数参加し た。SDGs の採択を受けて、GCNJ、JANIC、動く→動かすが共同声明を発表した。SDGs 採択の翌日に は、日本政府(外務省) 、市民社会、企業(GCNJ) 、研究者の 4 者で共同記者会見を実施した。おそら くこの 4 者で共同記者会見を行うことは史上初めてである。これからのマルチステークホルダーの時代 を象徴するような機会となった。 SDGs の背景 SDGs の背景には、社会・環境・経済が行きつくところまで行きつき、バランスを崩し、このままでは 立ちゆかないという、強い危機感があった。例えば、世界中の人が先進国と同じ暮らし方をすると、地 球が 2.3 個必要になる。世界の富裕層の 1%は、世界の富の 50%以上を所有。地球全体の海面は 20 世紀 中に 17 センチ上昇。この 10 年間はその 2 倍の速さで上昇している。自然災害は 1970 年代と比較して この 10 年間は発生件数、被災者数が約 3 倍となり、2014 年の紛争・戦争の死者数は前年と比較し 28% 増加した。 MDGs は貧困や感染症、債務危機の問題への緊急的な対応であったのに対し、SDGs では先進国の経 済危機、ODA に対するコミットメントの低下、途上国・新興国の台頭による世界経済の多極化、気候変 動、テロなど、新たな課題が健在化してきたことにより、構造的な変革が求められる時代となった。 MDGs と SDGs の違い、特徴、原則 NGO として重視しているのは、持続可能な環境・社会への「変革」をめざし、社会、環境、経済に統 合的に取り組むことである。途上国、先進国、新興国、全ての国が普遍的に、構造的・根本的要因への 取り組みを目指す。Leave No One Behind(誰一人取り残さない)や、ガバナンスを重視していること、 また民間セクターの役割や責任にも言及していることなども重要なポイントである。 13 セーブ・ザ・チルドレンの SDGs プロセスへの関与 2012 年、SDGs 策定プロセスの当初よりセーブ・ザ・チルドレン(以下:SC)は提言のレポートや指 標を発表するなど様々な活動をしてきた。日本でも動く→動かすのネットワークを中心に日本政府に対 してアドボカシーを行なってきた。SC が SDGs 策定において特に重視してきたのは、MDGs がやり残 した貧困・栄養・保健・教育問題に引き続き取り組むこと、不平等・格差の是正、平和で公正な社会と 有効な制度、子どもに対するあらゆる形態の暴力撤廃(SDGs ターゲット 16.5)、目標達成のためのパー トナーシップなどである。 また、 「誰一人取り残さない」を実現するためのキャンペーンを実施した。これは、すべての社会・経 済層で目標・ターゲットが達成されない限り、それは達成されたとはみなされないという原則を提案し たものである。市民社会に賛同を呼びかけ、世界 3,200 団体以上が声明に賛同した。一部では内政干渉 であると強硬に反対する政府もいたが、日本政府は前向きな姿勢を示し、最終的に成果文書へ「社会の 全てのセクターにおける達成」という文言が入ることになった。 策定プロセスについて、子どもたちにあまり関わってもらうことが出来なかった事が反省点である。 今後は未来を担う子どもたちに対して、SDGs をわかりやすく紹介し、子どもたち自らが SDGs や身の 回りの課題に関われるように後押しをしたいと考えている。 セーブ・ザ・チルドレンの新規グローバル・キャンペーン SDGs の「誰一人取り残さない」をメインテーマに、最も阻害され、脆弱な立場に置かれた子どもたち の支援にフォーカスするグローバル・キャンペーンを実施する(2016 年 4 月下旬にローンチ予定) 。新 しい事業を展開するのではなく、全ての事業に「最も阻害され、脆弱な立場に置かれた子どもたちへの フォーカス」を入れ込んでいく予定である。資金効率は低くなり、容易には取り組めない根本的なイシ ューに切り込む必要があり、非常にチャレンジングではあるが、組織としてコミットしていく。 SDGs における企業の位置づけ 公的資金(ODA)が低下している中で、先進国から途上国への資金フローを見ると、民間セクターか らの資金は相対的に向上している。SDGs の議論の中でも、民間セクターの持つ資金力・技術力に大きな 期待が寄せられている。 SDGs の中における企業への言及は、例えば目標 12「持続可能な生産と消費」の中のターゲット 12.6 「特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報 を定期報告に盛り込むように奨励する」がある。 「実施手段とグローバルパートナーシップ」のパラグラ フ 67 には、 「民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生 み出していくための重要な鍵である。…我々は、こうした民間セクターに対し、持続可能な開発におけ る課題解決のための創造性とイノベーションを発揮することを求める。 「ビジネスと人権に関する指導原 則と国際労働機関の労働基準」、「児童の権利条約」および主要な多国間環境関連協定等の締約国におい て、これらの取り決めに従い労働者の権利や環境、保健基準を遵守しつつ、ダイナミックかつ十分に機 能する民間セクターの活動を促進する」といった言及がされている。 14 SDGs とビジネスに関するセーブ・ザ・チルドレンの提言 SC としては、SDGs とビジネスに関わる提言として以下の 3 つの点を挙げている。 1. 企業の本体事業の開発目標に対する貢献 2. 全ての企業が人権・社会・環境へのインパクトに対して、Do No Harm アプローチ(法令・人権の 遵守)をとるための枠組みの策定 3. 社会・環境インパクトに関する報告書の法制化 世界統一基準による非財務情報の公開 企業の脱税、租税回避行為に対する規制強化 企業による国内・国際レベルのアドボカシーへの関与 SDGs=大きなビジネスチャンスの到来に、NGO はどう対応する? 現在多くの企業がビジネスチャンスとして SDGs を捉え、自社の事業と SDGs がどう関わっているの かをマッピングしようとしている中で、NGO としてどう対応していけばいいのか。まず、企業が開発・ 経済成長等にもたらす正のインパクトに対しては期待できる面もあるが、社会や環境にもたらす負のイ ンパクトにも着目する必要がある。自分達の活動が SDGs のどのゴールに結びつくのかを明確にし、そ こに向けて企業と連携していくことはもちろんだが、自分たちの活動領域だけではなく、より広い視野 を持つことが大事と考えている。企業が人権・社会・環境へ与えるインパクトを捉える感度を高めてい くこと、そして企業による人権・社会・環境の尊重・推進のモニタリングとサポートが出来るように知 見を高めていく必要がある。 イノベーティブな連携とは? ソーシャルイノベーションをどう捉えるかと考えた時に、 「社会を変革する力」ではないかと思い至っ た。NGO と企業が連携し共に社会課題を解決していくには、プロジェクトの枠を超えてより「深化」し た対等なパートナーシップにより、原則を守る取り組みを強化していきながら、Business as usual(い つも通り)から脱却し、新しい価値創造や価値を転換していくことだと考えている。 (ご参考) 「その場限りのプロジェクトを超えて・・・変革を起こす影響力のあるパートナーシップを」 UN Global Compact: Building the Post-2015 Business Engagement Architecture 「NGO は、企業・政府との連携による社会課題の解決に不可欠な存在であるが、プロジェクト中 心のマインドセットは多くのパイロット・プロジェクトを生むだけ。そこから離れたマインドセ ットが必要」 Head of Strategy, Accenture at WEF, Davos 2016 SCJ の企業との連携事例 決してプロジェクトベースの連携を否定しているわけではなくむしろ推奨しているが、あえて議論喚 起のためにここではプロジェクトベースではない連携事例を紹介したい。 事例 1:アドボカシー・啓発活動での連携 ユニリーバ・ジャパンと SDGs を広く発信しようというコンセプトで実施。SDGs 採択の直後 9 月 25 15 日~10 月 11 日の 17 日間、SCJ の公式 Facebook ページに SDGs17 目標を紹介する記事を毎日1つずつ 投稿し、1シェアごとに 100 円をユニリーバが寄付。目標は期間内に 10,000 シェアの獲得、70 万人に SDGs を知ってもらうことだったが、成果としては 10 月 11 日に 11,2686 シェア達成、746,432 人にリ ーチ出来た。引き続き子ども達に対して SDGs を広めていくことと、G7 伊勢志摩サミットでの SDGs に関するアドボカシー活動強化についてもサポートいただける予定。 事例 2:社会課題解決に向けたネットワーク型連携 CCR CSR(セーブ・ザ・チルドレン・スウェーデンが中国に作った社会企業)が、中国の広東省で事 業をしている多国籍企業 5 社と組み、現地の NPO や自治体、労働団体等に対してサプライチェーン管理 のキャパシティ・ビルディングを行い、この研修を受けたサービス・プロバイダーが広東省の工場管理 者や労働者に対して、児童労働の予防や移民・若年労働者の課題に対応する研修を実施することで、地 域全体で社会問題を解決しようという取り組みを行っている。 事例 3:新たな価値・基準の創出に共に取り組む連携 SC はユニセフ、グローバル・コンパクトと共に 2012 年に「子どもの権利とビジネス原則」を作成、 2014 年には日本で発表した。以来、セミナーや勉強会を実施し、広く普及する活動を実施している。ま た、子どもの健やかな成長と発達に配慮したマーケティング・広告のあり方を検討し、ガイドラインを 策定する委員会を設置した。SCJ が事務局となり、メンバーは企業、消費者団体、広告関連機関、有識 者、NGO より 18 名が参加している。こうしたガイドラインづくりを通じて、子どもにやさしいマーケ ティングや広告を打ち出す企業が評価される社会を目指している。 変革に向けた、アクター間の連携 SDGs が目指す変革の為には、異なるアクター間の連携と対話が不可欠である。そこには NGO、企業 だけでなく政府の役割が非常に重要となってくる。 政府:法律・条約・政策枠組みづくり、SDGs の実施計画、企業へのインセンティブと規格作り、 人権・環境の保護や公的セクターの強化、包摂的な市場の創造など 企業:SDGs の本業への位置づけと投資、人権・環境の規格・ガイドラインの尊重、透明性と説明 責任の向上、良質な成長の実現など NGO:貧困当事者の立場や声の代弁、政府・政治への野心的な取り組みへの働きかけ、一般市民・ メディアへの発信、実行・改善のサポート、モニタリング、説明責任の追求 など 持続可能な社会・環境・経済に向けた共通目標の達成を共に目指すためには、各アクターが自ら「変革」 を起こしていかなければならない。 SDGs の実施は、これから SDG の実施については、まだこれからである。SDGs は法的拘束力をもたないため、SDGs の実施と 連携にはあらゆるアクターが参加できるための枠組みや透明なプロセスが必要となる。NGO 側から中央 省庁に対して、国内における省庁・セクター横断的な枠組みを設けてほしいと対話を続けている。また 既存の施策や制度をどう活用するか、説明責任の仕組みはどうするか、そして、グッド・プラクティス 16 や知見を共有する仕組みも考えていかなければならない。 この壮大な 17 の目標と 169 のターゲット、山積する課題、不足する資金…その中で、各アクターの主 体的な取り組みと、異なるセクター間のイノベーティブな連携を促すダイナミックな枠組みや仕組みが 求められる。 Ⅳ パネルディスカッション 【SDGs でソーシャルイノベーションを】 ファシリテーター: ・黒田 かをり氏 連携ネットアドバイザー/ (一財)CSO ネットワーク事務局長・理事 パネリスト: ・森田 裕之氏 キリンホールディングス(株) ・堀江 由美子氏 (公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン ・古谷 由紀子氏 サステナビリティ消費者会議代表 /(公社)日本消費生活アドバイザー・ コンサルタント・ 相談員協会 常任顧問 黒:持続可能な開発のための 2030 アジェンダは我々の世界を変革し、誰一人取り残さないという目標を 掲げているが、それを行っていくのは容易ではない。これまでご登壇いただいた皆様の話を踏まえた上 で、SDGs の達成に向けて私たちは何ができるのかを議論していきたい。まずこのパネルからご登壇いた だいたサステナビリティ消費者会議の古谷氏に、これまでのお話を聞いた上で消費者という立場からコ メントと、消費者グループとして取り組んでいることをお話いただきたい。 古:本日のご登壇組織の取り組みを聞いていて、素晴らしいと思う一方、消費者を置いていっていない か、取り残していないか、というのが率直な意見としてある。まず企業に対しては、企業が SDGs に関 わる取り組みを行い、その取り組みに対して消費者から評価を得ようとする中で、消費者が今どのよう な状態にあるかをどれだけ考えているだろうか。消費者は普段どれくらい社会課題について考えて生活 をしているだろうか。最終的に社会を変革していくためには消費者が変わらなければならないが、消費 者が変われないことを問題にするのではなく、企業側もどうアプローチすれば消費者の心に響き、変え ていけるかを考えなければならない。SDGs に取り組む企業を評価できる消費者に育てることも必要。実 際、社会を良くしたいという社会志考を持つ消費者は増えている。消費者が社会課題を解決したいとい う気持ちに企業が応えることができれば、企業の取り組みと同時に消費者を変えることが出来る。それ が、SDGs の普及や社会の変革につながる。 また、企業は消費者に対して正のインパクトだけではなく負のインパクトも考慮しなければならない。 例えば健康食品。本当にその商品は健康に役立っているのだろうか。本来であればバランスのとれた食 事をするべきであるところを、そうではなく健康食品を食べれば大丈夫だと消費者に誤解を与えてしま っていないか。そこで新たな課題を引き起こしていないか。ノンアルコール飲料についても様々な議論 があるが、消費者が示す懸念に対する対応も考えた形で取り組んでいるかどうか、という点も考えてほ しい。 NGO に対しては、セーブ・ザ・チルドレンの取り組みは毎回素晴らしいと感じている。しかし、NGO 17 やそれに関心のある一部の人たちの取り組みで終わってしまっていないか。消費者を変えていかなれば 社会は変わらない。NGO はそこをどのように考えているのか。 黒:マルチステークホルダープロセスという言葉を使うとき、 “セクター”という概念でとらえる場合が 多い。実は一人ひとりの個人という立場では議論されないのではないか、という懸念がある。話を聞い ていて、SDGs というのは一人ひとりがライフスタイル、消費行動を変えていく取り組みも大事だと感じ る。森田氏、堀江氏からそれぞれ古谷氏のコメントをお聞きした上でお返事があれば。 森:アルコール事業が欧米では“罪のある産業”と言われている産業であるという認識は持っている。 WHO(世界保健機構)からアルコールの総量を減らすようにというアウトプットが出てくる可能性があ る。それがストレートに我々の業界の目標にされてしまうと産業そのものが収縮してしまうため、 「責任 ある飲酒国際連盟(IARD:International Alliance for Responsible Drinking)」に加盟し、アルコール 問題について業界としてどのように取り組んでいくかを真剣に議論している。WHO から規制される前に、 我々自身がアルコールについて適正なガイドラインを作り、消費者に適正飲酒を推奨するプログラム(細 く長くアルコールを飲んでいただく)を実施している。 黒:持続可能な消費について、消費者に適切な情報を提供していくという点では、レインフォレスト・ アライアンス認証(サステナビリティのあらゆる側面(社会・環境)に配慮した農園に与えられる認証 制度)などをつけたラベルを張るという方法もとられているのでは。 森:実際に「キリン ファイア 挽きたて微糖」という缶コーヒーには、レインフォレスト・アライアン ス認証を受けた豆を使用し、ラベルも張っている。しかしその広報はまだ十分ではなく、レインフォレ スト・アライアンス認証を受けた商品を優先的に買いましょう!というお客様の動きにはなっていない。 どうしても商品の味や価格で選んでしまう方が多い。 堀:NGO は消費者のことを市民という呼び方をすることが多いが、市民を SDGs プロセスへ巻き込むこ とは世界中で実施されてきた。しかし、日本国内ではあまり巻き込めてこなかったという反省がある。 動く→動かすというネットワークでは、NGO や企業だけでなく、障がい者の団体や国内の貧困に取り組 んでいる団体、生協、宗教団体などに対して SDGs についてヒアリングをしたが、SDGs の浸透はまだ まだ進んでいない。目標 12 の「持続可能な生産と消費」はまさに消費者と深く関わる目標でもあり、 NGO はもっと一般の消費者に向けてアウトリーチしていく必要がある。 黒:社会変革、ソーシャルイノベーションを起こすには、マルチステークホルダー連携が必要であると いう仮説を立てて、本シンポジウムを企画したわけだが、社会を変革していくためには 一人ひとりが 変わっていかなければならないと感じた。 黒:森田氏へお聞きしたい。目標 2、3、6 を掲げて取り組みをしているとのことだが、多くの企業は CSR 部など直接担当している社員は理解しているが、社内に浸透させることに苦労していると聞いている。 18 御社ではどのように取り組んでいるのか。 森:トップを含めて、SDGs への認識は残念ながら低い状況である。この手の取り組みはトップダウンで なければ動いていかない。トップを動かすために、ステークホルダーである投資家に着目している。ESG 投資(環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資)が日本でも少しずつ広が り始めている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は PRI(国連責任投資原則)に署名した。ヨ ーロッパは ESG 投資がより進んでいる。この ESG 投資家の勢いを借りて、トップに働きかけていきた いと考えている。 黒:海外の NGO では、機関投資家と一緒になって企業へ働きかけをするという取り組みがある。消費者 や投資家といかにつながっていくか、というのも大事なことかと感じた。セーブ・ザ・チルドレンでは、 投資家への働きかけや企業との関わりの変化といったようなことはあるか。 堀:投資家とのつながりに関しては、知る限りではセーブ・ザ・チルドレンの中では話を聞いたことが ない。企業との関わりについては、 「子どもの権利とビジネス原則」をユニセフ、グローバル・コンパク トと一緒に作ったことが、ビジネスとの関係を見直すきっかけになった。それまでは企業は資金提供者 であるとの見方だったが、人権やサステナビリティの側面で NGO は企業に働きかけていく役割があるこ と、パートナーシップを組んで推進できることが見えてきた。同時に、セーブ・ザ・チルドレンとして のブランドを維持していく必要性もあり、企業と組む際のリスクアセスメントやデューデリジェンスの プロセスなどを設けている。 黒:会場の皆様からご質問をいただきたい。 (質問 1)政府の主幹となる窓口がはっきりしていないことについて、どういうアプローチが必要なのか。 また、経団連ではどのような動きがあるのかを知りたい。 堀:今後 SDGs を実施していくにあたって、共通のプラットフォームが必要だと考えている。それは政 府側も同じ認識でいると感じている。SDGs 採択までは外務省が主導権を握ってきたが、17 という多岐 に渡る、国内外に及ぶ目標である SDGs を進めていく上では、内閣官房が主体となって省庁横断的な体 制で進めていく必要があると考え、現在働きかけを行っている。政府が実施体制を作ると同時に、マル チなステークホルダーが実施のプロセスに入っていく、政府をウォッチすることが出来る枠組みも必要 となる。マルチステークホルダーが集い、政府と一緒になって進めていくのがいいと提案をしている。 また、国会議員に対する働きかけも行っている。関心を持つ党もあるため、そこも今後はプッシュして いきたい。 八尋:正式なコメントというわけではないが、経団連が SDGs に対して大きな動きをするという話は聞 いていない。世の中で動きがあれば、経団連としても対応していくだろう。企業の従業員というのは、 消費者であり市民である。 19 経団連より:経団連は、SDGs に関心がないということは決してない。従来から、地球温暖化問題への対 応をはじめ、企業、社会の持続的な発展のために必要な課題に取り組んできた。それは、結果として SDGs が掲げる取り組み目標と多くの部分で共通している。今後も、さまざまな課題について、関係するステ ークホルダーと連携して取り組んでいきたい。 黒:5 月の G7 伊勢志摩サミットでは、SDGs が主要課題のひとつとして取り上げられるだろう。SDGs には日本国内の課題解決への取り組みも関わってくる。政府が動くことで、自治体を動かすことが出来 る。政府が SDGs にどう取り組んでいくのかが重要であろう。メディアと協力して世論を盛り上げ、SDGs の社会的な認知度が上がっていけば、政府も動かざるを得ない。政府と世論への働きかけの両方をやっ ていく必要がある。 (質問 2)SDGs は日本国内の課題も含まれているとあるが、地方は SDGs にどう取り組んでいけばいい のか。 八尋:一部の自治体ではとても熱心に取り組んでいる。それぞれの自治体が住民たちと一緒にやってい くことが大事かと思う。事業の中で SDGs に貢献していくのと、従業員として、一市民として、家庭や 地域の中でこれからの社会について話をしていくことも大事なのではないか。今日帰ったら、まずは家 族にこの話をしてほしい。そうして広めていくことが大切。 黒:北海道では北海道版 SDGs を作ろうという動きがあるなど、地域を中心とした取り組みも出てきて いる。SDGs を進めていく上では、ボトムアップとトップダウンの両方が必要であると考えている。 (会場からコメント)日本国内で SDGs を実施していく上で、政府の体制が整っていないという課題に 対して、企業と NGO が一緒に働きかけを行っていくことができるのではないかと思っている。政府は、 とかくやってしまったことにする、という立場をとることが多い。企業からすれば、日本の中ではどう であれ、世界に出ていったときに SDGs への貢献は見られるため、必然的に向き合うことになる。そう いう意味では、企業が政府へ働きかける意味合いは大きいと感じている。 黒:最後に SDGs にこめる思いについて一言ずつお願いしたい。 堀:実は去年の 4 月から愛媛県内子町という人口二万人以下の小さな町に住んでいる。内子町は持続可 能な地域づくりに熱心に取り組んでいるが、SDGs は地域から見ると遠く感じる。そこで去年の 11 月に SDGs と地域の課題をつなげようとセミナーを行った。SDGs はこれまであまり接点のなかった分野、人、 セクターをつなげ、共通言語で持続可能な社会の実現に向けて語ることができるツールであると感じて いる。様々な人たちがつながりながら、変革に向けて進んでいければと思っている。 森:最終的に目指すものとしては、企業がいかにサスティナブルであるか、である。その羅針盤となる 20 のが、SDGs への対応だと感じている。キリンはコーポレートガバナンスコードの中でも、ガバナンスが 弱いと指摘されてきた。今後はこの部分の改善に責任を持って取り組んでいく。キリンが SDGs へ取り 組むにあたって必要な体制・組織づくりを早急に立ち上げたい。統合報告書等で近いうちにみなさんに お知らせできるといい。 古:SDGs はみんなが目指すものだと考えている。SDGs に掲げられている 17 の目標は、決して特別な ものではない。しかし目標があるだけでは具体的にどう行動すればいいのかが見えない。行動につなげ るためには、自分達の活動の視野を広げてみるのがいいのではないかと思っている。消費者が課題とし ていることと、企業や NGO が課題としていることが実は同じかもしれない。SDGs という共通の視点を 持つことで、共に課題解決に向けて取り組む事ができるだろう。 以上 21