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日本の海でも使えるようになった! PLB(個人用イーパーブ)の基本と現状 2015年10月24日 JSAF外洋三崎安全講習会 作成/外洋三崎総務委員 安藤 健 死と紙一重の落水事故── 外洋ヨットで活動するセーラーにとって、落水事故は、最も避けなければいけない事故 だといえます。しかし残念ながら、近年、国内のセーラーが落水し、死に至る事故が、 毎年数件は発生しています。 外洋特別規定にもさまざまな項目があるように、自分の命を守るために、万全の準備を しておくことは、外洋セーラーとして最低限の義務であるといえるでしょう。 【落水しないための準備】 ・ハーネスやテザーの装備 ・艇の安全装備の点検と整備 ・乗員の安全意識の啓蒙とトレーニング 【落水してからの対策と準備】 ・ライフジャケットの着用 ・落水救助のトレーニングとシミュレーション ・落水者の位置情報把握のための装備 ・遭難信号等の非常時の通信手段の確保 落水者を見失ったら最後! セーリングしているヨットから人が落ちた時、落水者を見失ってしまったら、二度と 発見することは難しいと考えてよいでしょう。 救助にあたって最も重要なことは、「落水者の位置情報」を常に把握することです。 船上からの目視による落水者の位置把握はもちろんですが、それをサポートする機器が 欧米のマリンシーンでは広く普及しています。 落水者の位置を把握するためのいろいろな機器 ●PLB(Personal Locator Beacon:個人用イーパーブ) ●AIS-MOB(パーソナルAIS) ●Ray marine社のライフタグ 2014年3月のクリッパーレース(世界一周レース)では、極 寒の北太平洋で落水事故が発生。いったんは落水者を 完全に見失ってしまったが、AIS-MOBを装備していたため、 船上で落水者の位置を把握することができ、約1時間半後 に救出することができた!(別紙参照:Kazi2015年3月号) ⇒⇒しかし日本では法整備(電波法)が整っておらず、AIS -MOBやPLBを利用することができなかった(違法行為) 日本でもPLBが使えるようになった! 今年8月13日に総務省から発表された官報で、「国内での携帯用位置無線標識について 制度の整備が終了したこと」が通達されました。 これによって、日本国内においても「PLBの利用が可能」(法的な基準を満たした製品 に限る)になりました。 PLBの利用は、JSAF(日本セーリング連盟)が、2013年に総務省に対して、制度改 正の陳情を行ったことが、すべてのきっかけとなっています。 PLBとは、どんな機器なのか? PLB:Personal Locator Beacon(個人用イーパーブ) 個人がヨットなど船舶などから転落、漂流した際に、人工衛星を通じ て、捜索救助機関(日本の場合は海上保安庁)に、遭難信号が発射 されるシステム。世界では、欧米を中心に50万台以上が広く普及し ており、製品価格も1台250~300ドルと(アメリカの場合)、ユーザー にとっても利用しやすい環境が整っている。 (1)落水者 機器のボタンを押すと、 406MHzの電波でID(登 録番号)を送信。 (2)衛星 PLBからの電波を受信。 おおよその位置を特定。 地上受信局へ送信。 遭難信号を24時間以上連続で発信 (3)地上受信局 情報を得た後、捜索救 助機関に伝達。 捜索&救助 PLBから406MHzの電 波とともに発射されて いる121.5MHzの電波 をたどって捜索 PLBを日本で使用するための条件 PLBを利用する際には、決められた法律を遵守する必要があり、違反した場合には、ほかの無線 機器と同様に処罰の対象となります。日本でPLBを使用するための条件を、以下に記載します。 (1)無線局の免許が必要 機器を購入後、すぐには使用できません。電波法に定められた手続きを行い、総務省の遭難自動通報局と しての登録が必要です。申請は非常に簡易なもの(届出のみ)となっています。なお、免許の有効期限は5年 ですが、無線局の定期検査は不要です。船舶用イーパーブと異なり、船ではなく「人」が登録する。 (2)従事者免許は不要 使用は、無線局に登録した本人に限ります。ただし、VHFなど無線機器とは異なり、海上特殊無線技士免許 などの資格は、一切不要です。 (3)技適マークの付いたPLB以外は使用不可 日本国内で利用できるPLBは、日本の技術適合証明等を経た製品以外は 使えません(捜索等に支障をきたし、電波法にも違反するため処罰される)。 日本国内で利用できる。PLBは、技適マークの付いた製品に限ります(海外 で購入した製品は基本的に使用不可)。製品は、今冬~来春にかけて発売 される見込み。 (4)利用は海上での遭難時に限定 (5)本人以外に2人の連絡先を登録 PLBとAIS-MOBの比較と理解 PLBとAIS-MOBは、無線を利用した遭難時の位置情報確認システムであるため、混同されがち ですが、全く性質の異なる機器です。以下に、二つの機器の特徴を比較してみます。 PLB 【メリット】 ●通信衛星を利用したシステムである ●全世界をカバーしている(欧米では登山にも利用されている) ●日本でも法整備が整い、利用することが可能になった ●シングルハンドセーラーにはぴったり 【デメリット】 ●衛星⇒陸上の受信局⇒捜索機関の出動という流れになるため、 陸から離れた外洋などでは、捜索機関の到着までに時間がかかる AIS-MOB 【メリット】 ●国際VHFのAISを利用し、VHFの到達範囲をカバー ●落水者の発生したヨットや、近隣のAIS搭載船が、迅速に捜索にあたれる 【デメリット】 ●現在、AIS-MOBそのものは、国内では法整備が整っておらず利用できない。 ⇒⇒⇒ ただし、AIS-SART(基本的には船に設置するもの)の小型機種が、今夏、日本でも「みなし検定機種」 として認可を受けた。法解釈によるが、これ非常時にAIS-MOB的に利用することは、事実上可能。(別紙)