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詳細報告書
マッチング・ファンド方式による産学連携研究開発事業
多人数が同時に見ることができる新しい光線再生型メガネ無し
3Dカラーディスプレイの開発
研究開発プロジェクト総括研究成果報告書
平成13年5月
総 括 代 表 者
小
林
哲
郎
(大阪大学大学院基礎工学研究科・教授)
企業分担代表者
岸
本
俊
一
(三洋電機株式会社ハイパーメディア研究所・部長)
○研究開発プロジェクトの背景
情報化社会において高品位な視覚情報の記録,伝送,表示が重要な役割を果たすことは言をま
たない.昨今の光記録、光ファイバ通信技術の飛躍的な進歩により,視覚情報の記録・伝送にお
ける制限要因は取り払われつつある.一方,表示技術では、近年高精細・大画面デバイスの研究
開発に目覚ましいものがあるが,次に進むべき方向である3D(3次元)化,立体化の研究はか
なり立ち後れている.3D画像の有用性は,映画やテレビの黎明期より認識され,これまでに多
くの研究がなされてきた.多くの方法が提案され,一部は特定の用途に用いられているものの,
多くの問題点を抱えており、いまだに実際的な3Dディスプレイは得られていない。
本統括代表者小林は,平成9年にホログラフィの波面記録・再生とは原理的に全く異なる、「光
線記録・再生」という概念を提唱して、これを応用した新しい「光線再生法」という3D再生方式
を考案した(科学技術振興事業団の有用特許,「立体像記録再生装置」特願平 09-43542 号。また、
「背景付き立体像再生装置」特願平 2000 年(平成12年)特願 2000-43742 号)も考案して
いる。
また、一方で、平成10年度には、近畿技術開発整備調査委員会(委員長 中原恒雄、近畿通産
局,大阪科学技術センターがサポート)の光量子分科会(主査 田中道七,副主査 小林哲郎、中
核支援機関:レーザー総研,イオン工学センター,立命館SRセンター,大阪科学技術センター)
が作成したロードマップのターゲットテーマに小林の提案した IVSC インテリジェント・ヴィジ
ュアルスペース・クリエーション&キャプチュア(知的視覚空間創成&捕捉)が採用され、3Dデ
ィスプレイがその中核技術として位置づけられた。そしてこれに基づき、平成11年度には近畿地
域戦略的電子情報技術開発指針策定委員会 (委員長 中原恒雄)の下に、空間情報処理技術調査
研究会(委員長 小林哲郎)を設立され、空間情報の捕捉WG、同伝送WG、同再生WG3つのワ
ーキンググループを構成して調査活動を行った。このうち空間情報再生のワーキンググループのメ
ンバーが大阪大学の小林,伊東と三洋電機の岸本であり、調査活動に留まらず、今回の研究プロジ
ェクトの母胎となって自ら視覚空間の創生を目指す研究も計画、実施を進めた次第である。
小林は前述のように本研究の中心となる3D画像再生法を考案しており、三洋電機の岸本らの
グループは多重像方式の従来型立体ディスプレイの研究で世界的にも最も実績を持つ企業の研究
者であり、伊東は空間光情報処理システムの第一人者であることから、本プロジェクトの推進体
制はかなり強力と言えよう。
○共同研究組織
総括代表者
研究分担者
〃
〃
企業分担代表者
研究分担者
〃
〃
〃
〃
〃
合計
○研究期間
小林 哲郎(大阪大学・大学院基礎工学研究科・教授)
村田 博司(大阪大学・大学院基礎工学研究科・講師)
高原 淳一(大阪大学・大学院基礎工学研究科・助手)
伊東 一良(大阪大学・大学院工学研究科・教授)
岸本 俊一 (三洋電機株式会社、ハイパーメディア研究所・部長)
濱岸 五郎(同・主管研究員)
坂田 政弘(同・主任研究員)
山下 敦弘(同・主任研究員)
増谷
健(同・主任研究員)
安東 孝久(同・主任研究員)
井上 益孝(同・主任研究員)
11名
*三洋電機(株)の分担者は当初計画より変更
平成12年3月17日∼平成13年3月31日
○研究開発の実施状況等
(1)研究開発の実施状況
光線再生法の原理検証はすでに終えており、研究の中心は実用化を目指してのものとなった。
大阪大学小林らは、大型化、高解像化、実写などを念頭に置いて、動画にのみとらわれずに光線
再生法の改良開発を行った。一方、伊東は実写画像の3D表示を念頭に実写による3D情報のとり
いれのハードおよび、信号処理についての研究を担当し、最後に三洋電機は、すでに立体TVの商
品化を試みた実績もあることから、3DTVを目指す実用開発的研究を中心に行ってきた。もちろ
ん両者は協力し、かつときには競争して、研究を進めともに動画化に成功している。
また2つのグループはマッチング研究会を通して技術、情報の交換を行い密な研究協力を行って
きている。まず、プロジェクト開始に先立ち、平成12年3月まで 4∼5回をおこない、プロジ
ェクトが始まってからは
平成12年4月28日 大阪大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー
同6月9日
大阪大学大学院基礎工学研究科
同12月4日
三洋電機ハイパーメディア研究所
平成13年3月21日 三洋電機ハイパーメディア研究所
において、マッチング研究会を行っている。その他これ以外にも数度の研究打ち合わせを行ってい
る。
(2)機関別の研究開発目標、実施方法、成果
(2−1)大阪大学
a) 再生像の再生域の拡大(ロングレンジ3Dディスプレイ)
光線再生法は装置近傍での像の再生は光線数が不足するため困難であった。そこで、装置から離
れた後方、及び前方での像再生には光線再生を用い、また装置近傍では眼のフォーカス位置に問題
を生じるとされる従来型の多眼パララックス法を併用する方法を開発した。パララックス法では、
眼は画像情報が描かれたカラーフィルタにフォーカスしようとするのであるが、これによる再生像
も装置近傍、つまりカラーフィルタ近傍となるため、眼には無理強いのない自然な3D像が装置の
奥から手前までずっと連続的に再生できるようになった。
この考えそのものはプロジェクト以前からのもであったので、科学技術事業団の有用特許として
出願している:特願 2000-261222 (8/30)。また、研究成果は平成12年度秋季応物学会 4p-D-7
(9月4日)で発表している。
b) 観測可能範囲の拡大
多視角像を用いる3D像再生では斜め方向から観測すると本来の再生像とは別の偽の再生像が
観測されることがしばしば起こる。これが、3D像の観測範囲を狭めている要因の一つである。光
線再生法は他の方法に比べこの偽像が現れにくいもののやはり観測範囲制限要因になっている。こ
こでは、高屈折率透明体の挿入により全反射効果を用い、偽像を抑制する方式を考案し実証した。
この考えもプロジェクト以前からのものであったので、科学技術事業団の有用特許として出願し
た特願 2000-26122 3 (8/30)、。また、成果は平成12年度秋秋季応物学会 4p-D-8(9月4日)
で発表している。
c) フィルタ作成プログラム
VRML によるポリゴンを要素とする3D画像情報の表現とポリゴンに対するフィルタ画像生成
を連結するフィルタ画像の構成法を開発した(平成13年度春季応用物理関連学会、(3月29日)
発表。
d) 簡易動画 簡単な動きなら液晶を使うことなく3D像を動かすことが可能な方法を考案し
た。現在、国有特許として出願準備中,
e)
f)
動画化 17インチ液晶液晶ディスプレイを用い、動画再生に成功
実写、撮影法(工学研究科 伊東教授)の開発
(図1参照)
実写画像データに基づく3D像再生は情報量が膨大で困難であるが、撮影カメラ数を減らした
光線再生方式のための実写システムのプロットタイプの構成を行っている。
この他、実写像を用いた3D像生成に成功したほか、光源を明るくする種々の方策(白色LEDア
レイを用いる方法など)をいくつか試みている。成果の一部は三次元コンファレンスで発表の予定で
ある。
(2−2)三洋電機株式会社
一方、三洋電機のグループは,阪大の指導の下で,種々のバックライトの開発と高画素液晶ディス
プレイによる独自の動画3Dカラーディスプレイの開発に成功した。明るさ、解像度などいくつかの
点でまだ課題は残されているが、これらは絶対的なものではなく、近い将来の実用化に明るい見通し
を得ている。具体的な研究開発内容は
a) 光線再生光学系の最適設計
b) 3枚の液晶パネルによる高精細3Dディスプレイシステムの構築
ハーフミラーあるいはダイクロックミラーを用い3枚3色の(RGB)対応液晶パネルを合成し、
フルカラー化と高画素化を同時に達成した。用いたパネルは20インチ QXGA のもので、等価的
には945万画素に対応する。3D画像であるので、これでやっと10万画素画像が 100 ビューポ
イントあるものに対応する。
c) 高輝度バックライトシステムの開発
直管式蛍光管、ファイバー導光型方式など明るい点光源アレイバックライトの開発を行った
d) 3Dディスプレイの試作と動画再生実験
192万画素液晶パネル使用タイプから、315万画素液晶パネル3枚使用(下の写真参照)、
さらに 922 万画素液晶パネル1枚使用のタイプまで3つのタイプの3Dディスプレイシステムを
試作した。バックライトアレイのドット数はそれぞれ 160×120、227×512、616×450 で、最高
SVHS クラスまでの精細度である。画角が多くなく数十から 100 と言ったところである。これを
用いて動画再生に成功しており、再生画像の質は良好であったが、観測範囲が十分広くない点、動
作速度などにまだ課題が残されているようであった。
○ まとめ
(1)当該研究開発プロジェクト全体の進捗状況及び成果のまとめ
プロジェクト名「多人数が同時に見ることができる新しい光線再生型メガネ無し3Dカラーディ
スプレイの開発」がそのまま本プロジェクトの目的であり、静止画に関しては3D看板のように多
人数が同時観測可能なものが開発できほぼ目標を達成している。動画に関しても、大阪大学、三洋
電機とも試作器の作製と動作試験に成功している。とは言え、現存の液晶パネルの画素数が2D画
像としては十分過ぎるものの3D画像生成にはまだ少し不足(SVHS並にするには少なくとも1
600万画素必要)なことから、高品位映像では立体感や観測範囲に問題を残している。また、液
晶の光利用率が低いことから画像の暗さも解決すべき課題である。しかしながら、観測範囲を狭め
たものでは三洋電機の試作ディスプレイは通常のTV以上の精細な3D動画再生に成功している。
実画像の取り込みや、3D画像情報の光線再生用信号への高速、高効率変換プログラムはまだ端
緒に着いたばかりである。
(2)今後の展開
静止画については立体看板として実用寸前の状況にあり、試用期間を経て、大学発ベンチャーな
どで普及させようと計画中である。動画ディスプレイ、立体TVなどは(1)で述べたようにまだ
いくつかの課題が残されているが、微小白色LED光源アレイの開発と液晶パネルの高精細化が進
みかつそれらの低価格なものとなれば、これらはすべて解決し、実用可能状態になろう。すでに、
多くのゲームメーカなどが関心を寄せているが、大衆商品や児童商品とするには人体への影響を注
意深く検討する必要があると思われる(3Dで現実感がより高いだけに、ゲームなどへの応用には
慎重さが必要である。ポケモン騒動のようなものは是非とも避けなければならない)。教育や医学
への応用はより早く実現しそうである。また、非常に薄い構成も可能なことから、立体本、出版物
への展開も期待できる。このように、娯楽、教育、出版、広告と広いマーケットが期待される大型
商品への発展の可能性を秘めて、いくつかの未解決課題を抱えつつも、今その開発研究が順調な航
路に乗り出しており、近い将来の大きい収穫を得るためにも、今回のプロジェクト支援で終わるこ
となく、研究支援が何らかの形でもう少し持続されるよう関係各位のご理解をお願いしたい。
○ キーワード
(1)3次元画像 (2)カラーディスプレイ (3)光線再生法、(4) 広視角
(6) 動画像 (7)立体看板 (8)立体テレビ (9) 立体画像
(5) メガネ不要
○
研究成果発表
この期間に発表した論文は非常に多いが、この研究の成果で雑誌論文に発表したものはまだな
い。なぜなら、技術内容を十分に権利化(特許出願)するまでは、詳細な記述が必要な雑誌論文へ
の投稿を控えているからである。本研究の趣旨から考えてこれは当然のことで、この点を理解され
たい。国際特許も含め、十分な抑えが修了次第、雑誌論文を発表する予定でいることは勿論である。
なお、学会誌(例えば日本光学会)から招待論文依頼までこの旨を伝え、断っている。
口頭発表 (発表者名,題,学会等名,年月日)、最後の2つは、査読審査のあるものである
1) 武田勉,酒徳耕平,田中寿文,小林哲郎:背景を含む非ホログラフィ形三次元画像再生,
2000 春季応用物理学関係連合講演会,29p-S-12(March 29, 2000).
2) 小林哲郎,山本浩史,武田勉:光線再生方式3Dカラーディスプレイ Ⅰ― 奥から手前ま
で連続表示 ― 2000 秋季応用物理学会学術講演会,4p-D-7(Sep. 4, 2000)
3)小林哲郎:光線再生方式3Dカラーディスプレイ Ⅱ― 超広視野 3D ディスプレイ,実演
あり ー,2000 秋季応用物理学会学術講演会,4p-D-8(Sep. 4, 2000)
4)小林哲郎,武田 勉:「多人数が同時に楽しめる」メガネなし3Dディスプレイ
日本学術振興会光エレクトロニクス第 130 委員会,第 220 回研究会, (Nov. 13, 2000)
5) 尾西朋洋,武田勉,小林哲郎:光線再生方式3Dカラーディスプレイの動画化,2001 春季応
用物理学関係連合講演会,30p-ZV-8(March 30, 2001)
6)尾西朋洋,武田 勉,谷口英之,小林哲郎:光線再生法による三次元動画ディスプレイ、三
次元画像コンファレンス 2001、発表予定(2001)。
7)谷口英之,武田 勉,尾西朋洋,小林哲郎:光線再生法を用いた高輝度三次元画像再生、三
次元画像コンファレンス 2001、発表予定(2001)
特許等取得状況(取得特許等名、年月日)(いずれも、現在出願中)
大阪大学
1)小林哲郎,立体像記録再生装置 (出願 科学技術振興事業団) ,特願平 9-43542 (Feb.27,1997)
2)小林哲郎,光フィルタを用いた立体像再生装置 (出 願 科学技術振興事業団) 特願平
11-232178 (Aug 19, 1999)
3) 小林哲郎,背景付き立体像再生装置 (出願 科学技術振興事業団) 特願 2000-43742 (Feb. 22,
2000)
4) 小林哲郎,光線再生と影絵型多眼パララックスを兼用した3次元画像表示システム (出願 科
学技術振興事業団) 特願 2000-261222 (Aug. 30, 2000),
5) 小林哲郎,偽像を抑制した広視角3次元画像表示システム (出願 科学技術振興事業団) 特願
2000-261223 (Aug. 30, 2000)
6)小林哲郎、簡易3D動画像表示装置、国有特許として、出願予定
三洋電機(出願人:三洋電機、発明者:岸本俊一他)
1)三次元映像表示装置 特願 2001-088882(March, 26, 2001)
2)三次元映像表示装置 特願 2001-088883(March, 26, 2001)
3)三次元映像表示装置への供給映像生成方法 特願 2001-088879(March, 26, 2001)
4)三次元映像表示装置への供給映像生成方法 特願 2001-093141(March, 28, 2001)
三洋電機、大阪大学共同出願特許
1)小林哲郎、岸本俊一他、三次元映像表示装置及び点状光出射部材及び点状光透過部材
2001-093140(March, 28, 2001)
新聞などによる研究紹介
日刊工業新聞 2000/6/7
産経新聞
2000/10/6
毎日新聞
2001/1/5
日刊工業新聞 2001/1/8
学生ベンチャーベンチャーファクトリのテーマ希望
日本工業新聞 2001/2/14
次ページより、抜粋、添付
特願
産経新聞
2000/10/6
毎日新聞
平成 13 年(2001 年)1月5日朝刊1面
日刊工業新聞
2001/1/8
日本工業新聞
2001/2/14
三洋電機の記事中
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