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GE today -In Technology
8ch Neuro Vascular Phased Array Coil および8ch CTL Spine Coil に使用可能な薄型イヤーマフの開発と有用性 北里大学病院放射線部 北里大学医療衛生学部 尾崎正則 先生 秦 博文 先生 佐藤英介 先生 GE 横河メディカルシステム株式会社 画像応用技術センター GE 横河メディカルシステム株式会社 研究開発室 野崎 敦 椛沢宏之 はじめに 特徴です。耳当て部の厚さを薄くすることで、頭部を収納する部 分の幅が狭い、8ch NVPA Coil や 8ch CTL spine Coil でも使用可能 現在、MRI 検査時に生じる騒音に対して、イヤーマフなどを使 となります。従来のイヤーマフと比べると耳当て部の体積が小さ 用して騒音を緩和する方法や装置そのものの騒音を減らす方法が い分防音効果が落ちると予想されますが、既存のイアフォンと比 ありますが、装置そのもの騒音対策には限界があり、イヤーマフ べた場合、耳全体を覆うことができるので、高い防音効果が期待 やイアフォン(図 1)などの使用が必須となります。 できます。また、イヤーマフの最大開口長は約 190mm となってい 当院では現在 3 台の GE 社製 MRI 装置(すべて 1.5T)が稼働して おります。そのうち 1 台が、2006 年 6 月より SIGNA Advantage 1.5T から SIGNA Excite HD 1.5T に変わり稼働し始めました。それ ます。装着時の画像を図 4 に示します。 薄型イヤーマフの有用性の評価方法 に伴い頭部検査は通常、頭頸部専用の 8ch Neuro Vascular Phased 今回開発した薄型イヤーマフの効果を検証するために騒音計に Array Coil(以下 8ch NVPA Coil)にて行っていますが、SNR を重 よる評価、また、本研究の内容に関してインフォームドコンセン 視した設計の為、頭部を収納するスペースが狭く、既存の防音用 トの得られた健常ボランティア 10 名(MRI 検査に従事している放 イヤーマフは使用できません(図 2) 。また 8ch NVPA Coil は頭部 射線技師で男性 8 名、女性 2 名)および患者様 20 名(男性 8 名、 の固定をスポンジ等で隙間をつめて行いますが、耳栓やイアフォ 女性 12 名)を対象とし、アンケート調査を実施いたしました。 ンを使用した場合、スポンジで固定するには隙間が大きく、固定 に時間がかかり、また固定自体が難しい場合が多々あります。こ れは脊椎専用の 8ch CTL spine Coil にも同様の問題点があります。 そこで、今回われわれは、GE 横河メディカルシステムと共同で 騒音計による防音効果の計測 MRI の騒音に関する制限値は厚生労働省実務連絡では、1 日 8 時 間平均 90dB、1 時間平均 105dB、ピーク騒音 140dB としています。 8ch NVPA Coil および 8ch CTL spine Coil に使用可能な薄型のイヤ また IEC60601-2-33 では 120dB を上限としています。今回は計測 ーマフを開発し、その有用性について評価しましたのでご報告い にあたり、キャリブレーションされた騒音計を使用し、ピーク騒 たします。 音(Lp)および等価騒音(LA eq)を FSE 法および fastGRE 法に 試作薄型イヤーマフについて 図 3 に試作薄型イヤーマフの概略を示します。耳当て部の幅: 80mm、長さ: 110mm、厚さ: 20mm 程度と薄くできているのが 図 3 :試作薄型イヤーマフ 図 1 :イアフォン(左)とイヤーマフ(右) 図2 11 GE today October 2006 図 4 :試作薄型イヤーマフの装着時 て計測しました。 続いて、患者様による評価ですが、健常ボランティアによる評 計測結果は Lp、LA eq ともにプロトコル依存性がややあります 価同様、高い評価が得られました(図 6)。その他のご意見、ご感 が、FSE 法では約 15dB 低減されて Lp が約 118dB から約 102dB、 想等を伺ったところ、「とても気持ち良く受けられました」、「音 LA eq が約 105dB から約 90dB になりました。fastGRE 法では約 楽・声のボリュームを上げて欲しい」、「とても快適にしていただ 12dB 低減されて Lp が約 115dB から約 103dB、LA eq が約 105dB きました。ありがとうございました」、「防音という点での評価は から約 93dB になりました。 難しいが、ヘッドホンタイプの方がイアフォンよりも精神的に安 アンケート結果 アンケート内容は装着した際の付け心地、防音効果、固定感覚 心感を覚える」、「音楽の音量が大きすぎる」、「ヘッドホンがあっ たので、前の病院で撮った時よりとても早く感じました」、「騒音 と音楽が共鳴して、かなりうるさく感じます。騒音が消えた時は、 (健常ボランティアのみ)、イヤーマフより流れる音楽の音質、操 とても音楽が良いです」などご意見をいただきました。やはり初 作者の声の音質、聞き取り具合、MRI 検査時の従来のイアフォン めて検査を受けた方は、装置の騒音がやはりうるさく感じるよう の使用歴(患者様のみ)とし、Excellent(3 点)、Good(2 点)、 です。以前にイアフォンタイプなどで検査を受けたことがある患 Fair(1 点) 、Poor(0 点)の 4 段階で評価を行いました。 者様からは総じて良い評価をいただきました。また、音楽や音声 まず健常ボランティアによる評価では、従来のイアフォンと両 者で比較評価しました。今回作成したイヤーマフは従来使用して の音量調整も重要であり、また患者様によって快適な音量が違う ことが再認識できました。 いたイアフォンと比べ全ての項目で高い評価が得られました(図 問題点はそれほどないのですが、患者様の体型によっては使用 5)。その他のご意見、ご感想等を伺ったところ、「ヘッドホンは安 できない場合があり、その場合は耳栓にて対応しております。こ 定感があるが多少きつく感じる」、「イアフォンに比べ防音効果が の問題に関しては形状のさらなる最適化あるいは、いくつかの異 高く、固定もしっかりしている」、「通常のヘッドホンとしても使 なるサイズのイヤーマフを作成する必要があると考えます。また 用できるのではないか?」、「防音効果に違いを感じる」、「耳への 防音効果が高いため、装着後、ポジショニングや検査内容の説明 圧着が強く感じるが、防音効果が高いと思う」、「ポジショニング などで,検査室内で患者様とコミュニケーションを取る際にかな が簡便で、固定も安定しているので良い」などご意見をいただき り大きな声で声かけをするか、あるいはその都度イヤーマフをは ました。アンケート結果より、耳への圧着が強いとの意見が多か ずす作業が必要になります。この問題に関しては、イヤーマフを ったので現在は若干圧着の弱いものに変更していますが、防音効 装着したまま検査室内で会話ができるオーディオシステムの開発 果に不満のないレベルに抑えられています(図 3 の写真は変更後 が望まれます。 のものです)。またアームの圧が弱くなったことが最初の試作イヤ ーマフと比べ、患者様へ装着しやすくなりました。 まとめ 今回、8ch NVPA Coil および 8ch CTL spin Coil に使用可能な薄 型イヤーマフの有用性について述べました。現在当院では、 Excite HD で施行されるすべての MRI 検査についてこのイヤーマフ にて検査を施行しております(図 7)。現在も当院の MRI スタッフ および患者様から非常に高い評価をいただいております。 なお、今回の内容は第 34 回日本磁気共鳴医学会大会(つくば国 際会議場)にて当大学の佐藤が発表いたしました。 GE today 図 5 :アンケート結果(健常ボランティア) 試作薄型イヤーマフ(赤い棒)とイアフォン(青い棒)の比較 図 6 :アンケート結果(患者様〈赤い棒〉および健常ボランティア〈青い棒〉の比較) 図7 12