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WHITE PAPER
WHITE P APER
Adobe Acrobat によるビジネスコミュニケーションの合理化
Sponsored by: Adobe
Melissa Webster
Global Headquarters:5 Speen Street Framingham, MA 01701 USA
P.508.872.8200
F.508.935.4015
www.idc.com
June 2012
エグゼクティブサマリー
ドキュメントは、相互コミュニケーションを実現する上で非常に重要な役割を果
たす。アイデア、発明、知識を収集し、整理し、共有するといった行為は、ドキ
ュメントを通じて行われる。Web やあらゆる種類の相互接続されたデバイスが爆
発的に増加する今日においては、電子ドキュメントを使用することによって、ク
リック 1 つでアイデアを多くの潜在的な受け手と共有できる。しかし、大半のケ
ースにおいて、ドキュメントはいまだ極めて静的な形態で使用されている。
当然ながら、このような静的な形態である必要はない。IDC が実施した調査が示
す通り、経験豊富なインフォメーションワーカーおよび事業部門のマネージャー
は、すでにドキュメントをより「ダイナミック」な方法で使用し、同僚、顧客、
パートナー、サプライヤーとのコラボレーションや情報共有を劇的に改善するこ
とに役立てている。このダイナミックなコミュニケーションとは、エンタープラ
イズアプリケーションの対象外となっている、アドホックでドキュメント駆動型
のビジネスプロセスに対して自動化のメリットを提供し、最小限のコストでミッ
ションクリティカルなビジネスプロセスの変革を実現するものである。この「ダ
イナミックコミュニケーション」によって、ドキュメントは、インフォメーショ
ンワーカーが IT 部門からのサポートを最小限に抑え、彼ら自身で作成できる軽
量アプリケーションとなり、非常に魅力的な ROI を提供する。
IDC の調査では、今日、ドキュメントベースのコミュニケーションを真にダイナ
ミックなものに変革できるツールは存在するものの、そのようなツールを効果的
に活用し、その能力を完全に引き出すという話になると、依然として初期段階に
留まっているケースが多いことが示されている。IDC がインタビューを実施した
企業の多くは、インフォメーションワーカーが、より効率的かつ効果的にコミュ
ニケーションを行える方法の必要性を認識しているものの、どこから手を付ける
べきか分からないという状況にある。IDC では、ユーザーがダイナミックコミュ
ニケーションの必要性を確認し、ビジネスコミュニケーションの効率性および有
効性を改善していくに当たっては、IT リーダーが重要な役割を果たすであろう
とみている。本ホワイトペーパーでは、ダイナミックコミュニケーションに関す
る利用事例を多く取り上げ、現時点における導入動向について考察する。また、
アドビシステムズの顧客がダイナミックコミュニケーションをどのように導入し、
組織内のビジネスプロセスを改善しているのかについて紹介する。
概況
競争が厳しい今日の市場環境においては、業種に関係なく、すべての企業が、コ
スト削減、市場投入までのリードタイム短縮、顧客ロイヤルティの向上を実現す
るために、ビジネスプロセスを効率化する必要性を認識している。これまでの
20 年間は、コアなトランザクション処理を伴うビジネスプロセス(最近では、こ
れに加えてドキュメント集約的なビジネスプロセス)を効率化するために、さま
ざまなエンタープライズアプリケーションやデータベース管理システム、Web ア
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プリケーションに対する膨大な投資が行われてきた。その一方で、インフォメー
ションワーカーが主導するワークフローについてはどうであろうか。たとえば、
ビジネスユーザーやマーケッター、エンジニアなどが情報共有、コラボレーショ
ンを行い、タスクを完了するために、組織全体を通じて行われる、極めて多様で
アドホックなドキュメントベースのワークフローについてである。このような広
範囲に及ぶドキュメントベースのワークフローは、IT による自動化の対象では
ないのかもしれないが、とはいえ最適化は必要である。以下では、いくつかの事
例について検討する(これらの詳細については、「付録 B」に掲載されている)。
地球の反対側における新規発電所の設計をサポートするコラボレーティブなワー
クフローの事例を考える。建設会社は、場合によっては数百ページにも及ぶ
CAD 図面について、公認を受けた構造エンジニアリング会社からサインオフを
取得する必要がある。そのため、建設会社は複数の図面を構造エンジニアリング
会社に「宅配便」で送付し、手書きのコメントと注釈が付されて戻ってくるのを
待つことになる。このとき、紙の図面の一部が濡れていると、いくつかのコメン
トがぼやけて読めなくなってしまうため、電話や電子メールによる長く複雑なや
りとりが続くことになる。しかも、変更が要求された箇所について、確実に対応
するために、上記のようなやりとりを図面に関連付けていくことも必要であるが、
これは容易ではない。
このようなレビュープロセスのスピードと正確性を改善する、よりよい(そして、
よりダイナミックな)コミュニケーションの方法は、レビューを受ける図面を電
子ファイルで送付し、コメントについては、電子ファイル自体に対するメモやハ
イライトといった電子的なマークアップ(マーク付け)によって受け取ることで
ある。もちろん、こうしたドキュメントは知的財産であるため、不正なコピーや
使用から保護するための手段がなければならず、またサインオフの記録について
は、改竄防止機能が必要になる。
続いて、海外の制作会社とのコラボレーションを通して、広告やパンフレット、
ダイレクトマーケティング資料を作成しなければならないマーケティング部門の
事例を考える。静的なコラボレーションプロセスでは、制作会社に校正紙を送付
し、これと並行して電子メールや電話でのフォローアップを行うことになる。一
方、ダイナミックな方法では、電子ファイルを使用して、ドキュメント自体を通
じたバーチャルなコラボレーションによって制作に関するやり取りの内容を記録
できる。Web がマーケティングの主要な手段となり、販促資料もいっそうインタ
ラクティブ化している今日のオンラインの世界において、ユーザーエクスペリエ
ンスに関する有用なフィードバックを紙の印刷物や電子メールを通して提供する
ことはほとんど不可能といえる。
このほかにも、電子マニュアルやオンライントレーニング資料を提供する大手航
空宇宙メーカーの事例や、電子的な証拠を収集、配信する大規模な警察組織の事
例もある。このような資料については、多種多様なデバイスからの接続が求めら
れる一方で、アクセス制御も要求される。
ここまでに挙げた事例には、いくつかの共通するテーマがある。まず情報は、ま
すますリッチかつインタラクティブになる電子形式のファイルによって、取り扱
う必要がある。また多くの場合、ファイアウォールの外側にいる他者と効率的に
コラボレーションを(相手に対して特殊なソフトウェアのインストールを求める
ことなく)行う必要がある。そして、著作権侵害行為や窃盗からの知的財産の保
護、コンプライアンスの観点からの情報の正当性の確認、情報の正確性と最新性
の保証のためには、情報に対するコントロールも必要である。要するに、ドキュ
メント駆動型のコミュニケーションをよりダイナミックなものにする必要がある。
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ここでいう「ダイナミックコミュニケーション」とは、コラボレーションやアイ
デアの共有を促すインタラクティブなコミュニケーション(ドキュメント自体を
通じたバーチャルなコミュニケーション)を意味している。ダイナミックコミュ
ニケーションのポイントは、物理的な距離に関係なく人と人を近付け、アイデア
の交換や記録のプロセスをはるかに容易にすることで、思考のスピードを加速さ
せる点にある。
IDC では、ダイナミックコミュニケーションの実践に関する現状を把握する目的
で、北米、欧州、日本の企業 36 社に対して、電話でのインタビューを行った。
このうち 6 社は詳細なインタビュー(定性的調査)であり、30 社は短い調査形式
のインタビュー(定量的調査)であった。以下のセクションでは、IDC が調査か
ら得た知見をまとめた上で、ドキュメントベースのコミュニケーションをよりダ
イナミックに(すなわち、より効果的、魅力的、生産的に)する Adobe Acrobat
について取り上げる。
なお、本ホワイトペーパーの「付録 A」には、IT リーダーが組織のダイナミック
コミュニケーション戦略の現状評価を行い、ダイナミックコミュニケーションを
実現するソリューションの導入によって生産性や顧客満足度、その他の事業領域
がどのように改善されるかを分析するために利用可能なツールが掲載されている。
定量的調査結果
IDC が実施した定量的調査の対象となった 30 社の従業員規模、業種は多岐に渡
る。また回答者は、自社内におけるダイナミックコミュニケーションの利用に関
する質問に対して回答できる人物に限定した。
Figure 1 は、調査対象の 30 社に対して、過去 2 年間にダイナミックコミュニケー
ションを 1 つ以上の方法で利用したことがあるかどうかについてたずねた結果で
ある。マークアップを使用したドキュメントベースのコラボレーションによって、
1 つ以上のビジネスプロセスを合理化していると回答した企業は 57%であった。
前述の通り、知識集約型のビジネスプロセスは、ドキュメントそれ自体の文脈の
中で、やり取りの内容を把握できるため、コンテキストおよび「思考の流れ」を
保持するのに非常に有益である。これは、ビジネスプロセスが異なるロケーショ
ンあるいは組織の境界を越えて広がっている場合に特に顕著である。
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FIGURE 1
過去 2 年間におけるダイナミックコミュニケーションの利用事例
質問:貴社では過去 2 年以内に、次のいずれかの方法でダイナミックコミュニケーション
を利用しましたか?
n = 30
Note: 複数回答
Source: IDC, October 2011
リッチメディア、インタラクティブな要素、パーソナライズされたコンテンツの
使用率も高水準である。エンターテインメント、教育、情報提供を目的として、
ドキュメントにオーディオやビデオを埋め込んでいる企業は 57%であった。ま
た、ユーザーが何らかのタスクを完了したり、ワークフローを開始してビジネス
プロセスを加速したりできるよう、顧客との電子的なやり取りにインタラクティ
ブなフォームやボタン、あるいはリンクを組み込んでいる企業は 53%であった。
顧客固有のデータやインタラクティブな図表、あるいは計算式を埋め込むことに
よって、ドキュメントをパーソナライズし、顧客の企画立案や意思決定を支援し
たり、顧客に応じたオファーを提供したりしている企業は 43%であった。これ
らの調査結果は、あらゆる規模の企業が、顧客やパートナー、サプライヤーとの
より効果的なコミュニケーションによって、ビジネスプロセスを合理化し、顧客
ロイヤルティおよび顧客との関係性を強化することに対して、強い期待を抱いて
いることを示している。
またおよそ 4 社に 1 社の割合で、ユーザーがドキュメントの情報に関与し、理解
することを容易にする可視化や図解化、インタラクティブなツール(スライダー
など)といった高度な要素がドキュメントに組み込まれていることが分かる。こ
ういった要素は、BI(Business Intelligence)ツールにおいて一般的な機能であるが、
Web 上の RIA(Rich Internet Applications)や、今回の調査結果に示されているよ
うに、ドキュメントへの取り込みも進んでいる。より先進的なユーザーは、ドキ
ュメントを一種のポータブルな軽量アプリケーションコンテナとして活用できる
機会があるとみている。
これらの調査結果は、少なくとも一部のビジネスプロセスにおいてはダイナミッ
クコミュニケーションの利用が十分に確立されていることを示唆している。これ
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は IDC が実施した詳細なインタビューにおける結果とも一致している。ダイナ
ミックコミュニケーションは通常、トップダウンでの指令ではなく、特定の事業
部門において、特定の課題に対処するために、特定のビジネスプロセスに関連し
て利用されている。ほとんどの組織においてコラボレーションの大半はドキュメ
ン トの 外部で 行わ れてお り、 従業 員は複 数の 個別の ツー ルを 使用し ている
(Figure 2 を参照)。
FIGURE 2
組織における情報の配付と共有の方法
質問:貴社では現在どのような方法で社内における情報の配付と共有を行っていますか?
n = 30
Note: 複数回答
Source: IDC, October 2011
事前に予想された通り、電子的なドキュメント共有の方法は広く普及しているこ
とが分かる。90%の企業が添付ファイル付きの電子メールを使用して社内におけ
る情報の配付と共有を行っており、70%の企業がファイル同期およびバックアッ
プサービスを使用している。添付ファイル付き電子メールの利用率が高いことを
考慮すると、企業がドキュメントの改訂管理について、極めて困難であるとして
いるのは驚くべきことではない(Figure 3 を参照)。63%の企業が複数のロケー
ションに渡って、ドキュメントの改訂管理をすることが社内における課題である
としている。
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FIGURE 3
情報共有の方法に関連する課題
質問:貴社の情報共有の方法に関連した課題にはどのようなものがありますか?
n = 30
Note:複数回答
Source: IDC, October 2011
Figure 2 からは、電子的なプロセスが手作業による紙ベースのプロセスと共存し
ていることが分かる。77%の企業は依然として物理的なドキュメントを印刷、配
付しており、57%の企業は紙のフォームを使用している(手作業でフォームに記
入され、フォームは箱に保存される)。Figure 3 には、紙ベースのプロセスによ
る負の影響が示されている。紙ベースの情報の方がセキュリティの確保が困難で
あり、また紙ベースの長期的アーカイブの維持にはコストと時間がかかる。紙は
検索不可能であり、共有も困難であるため、求める情報に辿り着けない可能性も
高い。さらに、紙ベースのシステムでは、データ入力時のエラー、ファイリング
する際のエラー、あるいはコピーの紛失または破損などがあり、発生するエラー
もはるかに多い。こうした課題は、ダイナミックコミュニケーションの導入範囲
を拡大することで対処可能である。
ダイナミックコミュニケーションの導入
ここでは、企業が今日、ダイナミックコミュニケーションを業務にどのように取
り入れているかをより詳細に掘り下げた上で、導入に影響を与える重要な要因に
ついて検討する。前述の通り、ダイナミックコミュニケーションは、主にビジネ
スプロセスに関連して利用されている。多くの企業は、組織全体に普及させるべ
きベストプラクティスとして、ダイナミックコミュニケーションにアプローチす
るのではなく、特定の用途のために導入する傾向にある。言い換えるならば、大
半の企業はすでにダイナミックコミュニケーションに対して一定の経験を有して
おり、一部で成功も収めている。それでは、導入範囲を拡大するに当たっての促
進要因および阻害要因は何であろうか。
IDC の調査では、ダイナミックコミュニケーションへの投資によって、さまざま
な分野におけるメリットが得られることは明らかである(Figure 4 を参照)。紙
ベースのプロセスの管理に伴う運用コストの削減が、達成した改善率(横軸)の
最上位にランクされており、コラボレーションの改善、品質および市場投入まで
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のリードタイムの改善、カスタマーエクスペリエンスと顧客満足度の向上がこれ
に続いている。
FIGURE 4
ダイナミックコミュニケーションの相対的なメリット:認識された
メリットの価値と達成した改善率(%)
Source: IDC, 2011
当然であるが、これらのメリットの実現には、既存のビジネスプロセスの変更が
必要である。プロセス(特に人的集約度の極めて高いプロセス)の変更には、既
成概念にとらわれない考え方が必要であり、結果がどのようなものになるかを予
見するには、ダイナミックコミュニケーション技術に関する知識が要求される。
IDC が実施したインタビューの中でも、特定のビジネスプロセスをダイナミック
コミュニケーションの使用によって変革するには、IT とビジネスの知識を融合
し、活用できる人材が必要であると繰り返し述べられていた。
これは、組織のビジネスプロセスをダイナミックコミュニケーションによって変
革するには、ビジネスユーザーが深い技術スキルを身に付ける必要があるという
ことを意味するものではない。それとは逆に、Adobe Acrobat などのテクノロジ
ーを利用することによって、インフォメーションワーカーは IT 部門からの大き
な支援の必要なく、ドキュメント駆動型のビジネスプロセスを変革することが可
能であることを意味している。導入への大きな障壁となるのは、組織内における
認識である。IDC の調査結果が示す通り、現在、企業においてダイナミックコミ
ュニケーションを利用している従業員の比率はわずかなものにすぎず、調査対象
企業の多くが 10%未満と回答している(Figure 5 を参照)。
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FIGURE 5
ダイナミックコミュニケーションを利用している従業員の比率
質問:貴社において、現在、何らかの形態でのドキュメントベースのダイナミックコミュ
ニケーションを利用している従業員の比率はどの程度ですか?
Source: IDC, October 2011
本調査の詳細なインタビューで明らかにされている通り、ダイナミックコミュニ
ケーション関連プロジェクトに対する一般的な支出額は、極めて少ない。同様の
結果は、定量的なインタビューによっても確認されている。調査対象企業の
70%では、ダイナミックコミュニケーションのための年間予算は 2 万ドル未満で
ある。
そうであるにもかかわらず(あるいは、そうであるがゆえに)、多くの企業では
正式な投資のためのプロセスが存在していない。ビジネスコミュニケーションの
改善あるいは効率化に向けた投資に対する評価、ビジネスケースの作成、あるい
は予算の確保を実施しているとしたのは、調査対象企業のおよそ 3 分の 1 であっ
た(Figure 6 を参照)。
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FIGURE 6
ダイナミックコミュニケーションの導入
質問:貴社は、ダイナミックコミュニケーションの導入に係るコストとメリットの評価に
ついて、どの段階にありますか?
Source: IDC, October 2011
また、調査対象企業の半数以上(57%)が、今後 12 か月間におけるダイナミッ
クコミュニケーションに対する投資の拡大を予想している。
重要なポイント
本調査によると、ユーザー企業はビジネスコミュニケーションの改善と効率化の
ためにダイナミックなプロセスを利用することの価値を理解しているものの、同
時に組織内における優先順位付けと機会の選択、そしてベストプラクティスの普
及という面でのサポートを必要としていることが示されている。ダイナミックコ
ミュニケーションの活用に関して、自社を平均以上と評価する企業は、全体の 3
分の 1 にすぎない。これは、ベンダーやコンサルタントが、組織内における認識
を高め、実務家コミュニティを支援し、それによって組織の成熟化をサポートで
きる分野であると IDC ではみている。
ダイナミックコミュニケーションにおけるアドビの
ソリューション:Acrobat Professional および
Adobe Reader
アドビシステムズ(以下、アドビ)は、クリエイティブプロフェッショナル向け
のソフトウェア領域におけるリーディングプロバイダーであり、また世界で最も
広く使用されているドキュメント標準である PDF を発明した企業である。同社
は 1982 年に設立され、カリフォルニア州サンノゼを本拠としている。従業員は
9,500 人以上、2010 年度の売上高は 38 億ドルである。
アドビは、Acrobat および Adobe Reader を 1993 年に投入し、PDF はプリプレスお
よびグラフィックスのユーザーの間で急速に普及した。今日では、PDF およびそ
のサブセットである PDF/A、PDF/X、PDF/E は、ISO 規格となっている。世界
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中の企業、政府、そして個人が、セキュアで信頼性の高い電子ドキュメントのや
り取りのために PDF を使用している。
Acrobat によってインフォメーションワーカーは、カスタマイズされたダイナミ
ックな PDF エクスペリエンスを作成でき、PC やモバイル機器上で幅広く普及し
ている無償の Adobe Reader で PDF を閲覧できる。Acrobat には、ドキュメントベ
ースのコラボレーションとドキュメントのセキュリティのための豊富な機能が用
意されている。主要な機能を以下にしめす。
 PDF ファイルの作成および PDF ポートフォリオによる複数ファイルの共
有:PDF ファイルは、印刷機能を持つあらゆるアプリケーションから作成可
能であり、またスキャンや OCR によって紙の文書からも作成できる。ユー
ザーは、複数のドキュメント、そしてオーディオやビデオを含むさまざまな
ファイルタイプを単一のカスタマイズ可能な PDF ポートフォリオとしてま
とめることが可能である。
 PDF の注釈およびコメントツール:ユーザーは、ハイライトやノートなど
の注釈ツールを使用して PDF ファイルをマークアップしたり、通知やアラ
ートを活用したレビューのワークフローを構成したり、ドキュメントの同期
表示とチャットによってリアルタイムなコラボレーションを開始できる。
 PDF 作業の自動化:日常的な反復作業については、アクションウィザード
を使用して自動化できる。
 入力可能なフォームの作成:既存の紙のフォームや電子ファイルから、入力
可能な PDF フォームを作成できる。ユーザーは、無償の Adobe Reader を使
用して、これらのフォームに入力できる。また Acrobat を使用すると、フォ
ームの配布、データの収集、状況の追跡、結果の表示などが可能になる。
 ドキュメントと情報のセキュリティ:Acrobat では、墨消しツール(機密情
報を塗りつぶして表示させない機能)、アクセス保護、暗号化、デジタル署
名を提供している。
 プリフライト:Acrobat には、ハイエンドなプロダクションプリンティング
やデジタルパブリッシングのためのプレビューとプリフライト(ドキュメン
トを出力する前にデータを確認する作業)を提供している。
Adobe Reader は、あらゆる主要なプラットフォーム上で動作し、34 の言語で配布
されている。アドビではインターネットに接続されたコンピューターの 90%以
上に Adobe Reader がインストールされていると推定している。また Adobe Reader
は、多くのスマートフォンやタブレットで利用可能である。Acrobat と Adobe
Reader によって、ユーザーはプラットフォームやオペレーティングシステムに関
係なく、共有レビューへの参加、フォームの入力と保存、PDF ファイルへのデジ
タル署名や承認が可能となる。
アドビのクラウドベースの文書交換サービスは、Acrobat X を補完するサービス
であり、ドキュメントへの電子署名(Adobe EchoSign)、Web ベースのフォーム
の作成、配布および分析(Adobe FormsCentral)、大容量ファイルのセキュアな
送信と管理(Adobe SendNow)といったソリューションを提供する。
IDC の調査で示されている通り、Acrobat は今日のダイナミックコミュニケーシ
ョンにおいて最も広く普及しているソリューションである。調査対象企業の
90%が、ダイナミックコミュニケーションの実現のために Acrobat と PDF を使用
している。
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課題と機会
これまで述べてきた通り、ユーザーはダイナミックコミュニケーションへの投資
によって数え切れないメリットを得ることができる。しかしながら、こういった
投資はトップダウンによる取り組みよりも、草の根的な取り組みになる傾向が強
い。既存のビジネスプロセスの変革に挑む人々が直面する主な課題は、組織の変
化に関するものである。ビジネスプロセスの変革は、人々が仕事を行う方法を変
えることを意味しており、その変化は多くの場合、不快なものである。本ホワイ
トペーパーの付録に記載されている一部のケーススタディでも見られるが、変革
のリーダーは、同僚および経営層の両方にビジョンを伝え、賛同とサポートを取
り付けられなければならない。これには、時間と一定の忍耐を要する場合がある。
ダイナミックコミュニケーションに関する実践コミュニティの形成は、ビジネス
プロセス変革のリーダーにとって、Acrobat などの技術をより広範に適用し、導
入を推進する上で役立つ可能性がある。このようなリーダーは、ビジネススキル
と IT スキルの両方を備えているか、もしくは最低限 Acrobat などの技術に対する
一定の理解を備えていることが理想的である。この点において、アドビなどのベ
ンダーは、重要な役割を果たすことができる。
なお、Acrobat が対応していないダイナミックコミュニケーションの分野も存在
する。高度な自動化に適したビジネスプロセスに関しては、IT 部門が管理する
サーバーベースのソリューションの方が適している可能性がある。
本ホワイトペーパーの前出のセクションでは、大きな指針を示すため、ドキュメ
ントベースのダイナミックコミュニケーションに関する多くの事例を取り上げた。
Acrobat のようなダイナミックコミュニケーションアプローチに適したビジネス
プロセスの特徴の 1 つは、それが魅力的なエクスペリエンスの提供に関するもの
であれ、あるいは半自動化されたデータ収集に関するものであれ、ユーザーが
IT 部門からの最小限のサポートでワークフローを開始できるという点である。
Acrobat のようなツールによって、ユーザーはドキュメントベースのコミュニケ
ーションを自ら再設計する力を獲得できる。一般的に IT 部門では、各部門や個
人のタスクをサポートする時間やリソースが不足しているため、これは重要なメ
リットとなる。
IDC の提言
結論として、IDC では、ダイナミックコミュニケーションは、多額な支出を伴わ
ずに、社内あるいは社外向けのドキュメント志向のビジネスプロセスを改善し、
魅力的な ROI を達成する機会を企業に提供しているとみている。ただし IDC で
は、企業に対して、以下の質問を検討することを勧める。
 現在、支店、顧客、パートナーに対して、紙文書の送付が必要なビジネスプ
ロセスが存在するか。紙文書を保存のための物理的な保管スペースに係るコ
ストが存在するか。あるいは、紙文書でいっぱいのファイルキャビネットに
よって、貴重なオフィススペースが占有されていないか。
 インフォメーションワーカーは、バージョン管理の問題の解決に時間を費や
しているか。コンテンツの制作プロセスを合理化し、新しいアイデアを市場
に投入するまでのリードタイムを短縮できる機会はあるか。
 顧客やパートナーとのコラボレーションは、煩雑で過度に複雑なものではな
いか。ドキュメントベースのコラボレーションとデータ収集によって、これ
らのビジネスプロセスを合理化することはできないか。
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 顧客対応部門は、顧客エンゲージメントや顧客との効果的なコミュニケーシ
ョンを、より簡単な方法で実現することを望んでいないか。
問題があるとされたプロセスについては、改善に当たっての阻害要因を判定しな
ければならない。それはドキュメントベースのダイナミックコミュニケーション
によって、対応可能なプロセスであろうか。変更した場合のユーザーへの影響は
どのようなものであろうか、さらにユーザーの懸念事項については、どのように
対応するのが最善なのであろうか。今回の調査で、ある回答者は、「組織内部か
らの抵抗にあう可能性がありますが、とにかく諦めずに続けていく必要がありま
す。ROI を始め、カスタマー調査とフォーカスグループからの結果を強調し続け
て、上位のマネージメント層にアピールをする必要があります」という。
また別の回答者が指摘する通り、一般に抵抗が見られるのは、既存の紙ベースあ
るいは手作業によるプロセスに対する満足度が高い領域である。ビューローベリ
タス社の電力公益部門のシニア IS サポートアソシエイトである Kyle Froling 氏は、
「当社では、デジタルワークフローへの移行は、巨大な CAD 文書のプリントア
ウトに慣れていたエンジニア(つまり 20~40 年にも渡って紙を使用してきた
人々)に対し、紙の代わりにコンピューターやタブレットを使用するように求め
ることでした。移行に当たっては、超大型スクリーンの購入が役立ちました」と、
述べている。
デジタルプロセスへの移行は、多くの場合、デジタル著作権管理や代替的な情報
保護戦略の採用を意味する。ボンバルディアエアロスペース社の顧客サービスグ
ループで e ラーニングおよび Web マーケティングのスーパーバイザーを務める
Ken Knitter 氏は、「ニッチな市場では、著作権侵害行為によってビジネスが破壊
される恐れがあります。このため、窃盗行為から知的財産を保護することは極め
て重要です。ただし、ドキュメントに対して制限を加える場合には、トラブルや
パスワードの再設定に対応できる十分なサポート体制を整えておく必要がありま
す」と指摘する。
ダイナミックコミュニケーションの実現に向けた取り組みは、アプリケーション
ごとに段階的に進めていくことが可能である。また各段階における ROI を求め
ていくこともできる。このように各段階において価値を実証できるプロジェクト
計画を策定することによって、継続的な予算を獲得するべきである。
Adobe Acrobat などの製品に精通した外部のコンサルタントからサポートを得る
こともできる。ただし、テクノロジーは一定の役割を果たすものの、真の課題は
テクノロジーではない。真の課題は、テクノロジーによって組織を変革し、ビジ
ネスプロセスを改善する方法である。ビジネスプロセスリエンジニアリングの考
え方に基づいて、新たなプロジェクトに取り組む必要があるとみている。前もっ
てビジネスプロセスを検討し、ビジネスルールを定義しなければならない。さら
に、プロセスをどのように改善、合理化できるか再検討するためには柔軟でなけ
ればならない。
IDC では、ダイナミックコミュニケーションは、すべての事業部門にメリットを
与えるものであるとみているが、多くの大企業においては、今後しばらくの間、
依然として特定のアプリケーションやビジネスニーズ主導の導入が中心となるで
あろう。このような状況は、ダイナミックコミュニケーションの価値と導入のベ
ストプラクティスに対する理解の深まりに伴って、今後数年間で変化していくと
IDC では考えている。グローバルな事業展開とインストールベース、そしてダイ
ナミックドキュメントにおいて広く認識されたリーダーシップを持つアドビのよ
うなベンダーは、顧客企業における導入推進を支援する上で理想的なポジション
にあるといえる。
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付録 A:ビジネス準備状況評価ツール
貴社がダイナミックコミュニケーション戦略において現在どの段階にあるのか、
そして Adobe Acrobat などのソリューションの導入によって生産性や顧客満足度、
他の事業分野がどのように改善されるのかを理解するに当たって、下記のクイッ
クアセスメントにご回答ください。
1.
貴社では一般的に、ドキュメントの管理および配付について、現在どのよう
な方法を使用していますか?(I = 社内、E = 社外、NA = 使用していない)
I
E
NA
ドキュメントを印刷し、配付している
フォームやアンケートは紙ベースであり、箱に保存するか
スキャンしてアーカイブしている
添付ファイル付きのメールを送信している
コラボレーティブアプリケーション(Wiki やチームルーム
機能など)を使用している
2.
3.
上記のホワイトペーパーで説明したドキュメントベースのダイナミックコミ
ュニケーションに関して、貴社では過去 2 年以内に下記のいずれかを目的と
したダイナミックコミュニケーションを使用しましたか?

ユーザーに行動を促し、ドキュメント内の情報により深く関わることを
可能にする、リンクやボタン、リッチメディアを埋め込んだインタラク
ティブなフォームの作成

パーソナライズされたエクスペリエンスを提供し、分析や企画立案、意
思決定を支援する図表や計算式を含んだ電子ドキュメントの作成

従業員やパートナー、サプライヤーに対して、ハイライトやノートなど
の注釈ツールを使用して、フィードバックを提供あるいは共有する手段
を与えることで、コラボレーションの改善とターンアラウンドタイムの
短縮を実現する電子ドキュメントの作成

パスワードやデジタル著作権管理、あるいは墨消しといったセキュリテ
ィ機能を組み込むことによって、機密情報の電子的な共有を容易にする
電子ドキュメントの作成

グラフィックスやビデオなど、複数のファイル形式を含んだデジタルポ
ートフォリオの作成
現在、貴社の従業員の何パーセントが、質問 2 で記述したダイナミックコミ
ュニケーションの 1 つないしはそれ以上を使用していますか?
0
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4.
下記事項を実施するに当たって、現時点における貴社の能力はどの程度と評
価しますか?(以下の尺度を使用してください)

1 = 極めて低水準(ツールやベストプラクティスが整備されておらず、
その結果、毎回同じような苦労をしている)

2 = 低水準(必要に応じて、自社開発ツールとリソースを使用し、最低
限の対処を行うことが可能である)

3 = 平均的な水準(顧客やパートナーからの要求に合わせた対処が可能
である)

4 = 高水準の能力(ツールとベストプラクティスが整備されている)

5 = 非常に高水準の能力(自社を模範例と位置付けている)
1
2
3
4
5
ドキュメントに対するユーザーアクセスの制御/ドキ
ュメントセキュリティの維持
ブランドイメージの改善に寄与するインタラクティブ
で魅力的なドキュメントおよびフォームの作成
オーディオ/ビデオによる説明、クイズ、アクティブ
スキマティクスなどを使用したトレーニング資料作成
ドキュメントの管理(事務処理、ファイリング)
コラボレーティブプロセスの推進
ドキュメント成果物の誤りの低減/品質の向上
印刷および文書保管に係るコストの抑制
顧客の期待を上回るドキュメントの提供
14
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5.
下記のメリットは、貴社にとってそれぞれどの程度価値がありますか?(以
下の尺度を使用してください)

1 = 非常に低い価値

2 = 低い価値

3 = 平均的な価値

4 = 高い価値

5 = 非常に高い価値
1
2
3
4
5
離脱率を低下させ、使用率を高めるダイナミックドキュ
メントを使用したユーザーエクスペリエンスの改善
印刷および文書保管に係るコストの抑制
パスワード、アクセス権と権限の設定によるセキュリテ
ィ/プライバシーの向上
共有の簡易化およびドキュメントのマークアップ機能に
よるコラボレーションの改善
よりリッチで魅力的なコンテンツを提供するダイナミッ
クドキュメントの成果物を利用した顧客満足度の向上
最先端技術の使用や「グリーン」/環境への配慮によ
るブランド影響力の改善
文書の取扱い、スキャン、ファイリングといったドキュ
メント管理に要する時間の削減
製品/サービスの品質向上と市場投入までのリードタイ
ムの短縮
6.
このホワイトペーパーや上記の質問の中で取り上げたような、ダイナミック
コミュニケーションに関する潜在的なものも含めたさまざまな用途を考慮し
た上で、このタイプのソリューションを貴社において導入する考えはお持ち
ですか?

はい、今後 12 か月以内

はい、今後 2 年以内

いいえ、このソリューションを導入する予定はありません
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#231453
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結果を計算
貴社にとって、ドキュメントベースのダイナミックコミュニケーションは、まったく新しいも
のであると考えられ、現時点では、このテクノロジーを使用している従業員の比率はわずかで
す。コラボレーションの改善、マルチメディアやインタラクティブなフォームの埋め込みによ
るドキュメント成果物の強化、印刷および文書保管に係るコストの削減など検討すべきポイン
トが多く存在します。
ダイナミックコミュニケーション機能に関する下記のパフォーマンススケールは、上記の回答に基づいた貴社
の現在の位置と、Adobe Acrobat などのドキュメントベースのダイナミックソリューションの導入によってそ
のパフォーマンスがどこまで最適なレベルまでシフトする可能性があるかを示すものです。機能にはドキュメ
ントの管理、誤りの低減、コラボレーションの改善、インタラクティブで魅力的なドキュメントの作成が含ま
れます。
導入以前
低
最適パフォーマンス
高
導入以後
Adobe Acrobat ではカスタマイズされたダイナミックな PDF エクスペリエンスを作成可能であり、それは PC
やモバイル機器上で普及している無償の Adobe Reader で利用できます。Acrobat には、ドキュメントベースの
コラボレーションとセキュリティの豊富な機能が含まれています。タスクの自動化、データ収集、ドキュメン
トワークフローの管理はすべて Adobe Acrobat の機能であり、貴社の現在のドキュメントベースのコミュニケ
ーションに強いプラスの影響を与えます。
貴社がドキュメントベースのダイナミックコミュニケーションソリューションを導入することによって、実現
できると考えられる主なメリット(一部)には以下のものが含まれます。
貴社は、リッチかつインタラクティブな電子形式で情報を扱うことを可能とする
Adobe Acrobat などのソリューションの統合によって、これらのメリット以上の
利点を実現することが可能です。
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付録 B:ケーススタディ
アドビのカスタマーが、ダイナミックコミュニケーションの実践のために、
Acrobat をどのように活用しているのかを把握する目的で、IDC では北米、欧州、
日本のさまざまな業種に属する Acrobat ユーザー企業 6 社に対して、1 時間に及
ぶ詳細なインタビューを実施した。これらの 6 つの組織すべてが、長年に渡って
Acrobat を使用している。なお、インタビュー回答者の大半は、組織の 1 つまた
は複数のビジネスプロセスにおけるダイナミックコミュニケーションを推進する
立場にある。
ボンバルディアエアロスペース:e ラーニングの新たな高み
ボンバルディアエアロスペース(以下、ボンバルディア)は、民間航空機やビジ
ネスジェットから、鉄道輸送機器、システム、サービスに至るまで、革新的で最
先端の輸送ソリューションを提供する世界的な製造業のリーディングカンパニー
である。ボンバルディアはカナダのモントリオールに本社を置いており、世界
23 か国以上で事業を展開している。同社はトロント証券取引所に上場しており、
2011 年度の売上高は 177 億ドルである。
ボンバルディアのパイロットと整備士のトレーニングおよび同社が設計、製造す
る航空機の運航、保守は相当な規模であり、極めて収益性の高い事業である。ボ
ンバルディアの 3~5 週間の基本トレーニングや、比較的期間の短い後続トレー
ニングには、毎年 8,000 人の研修生が参加している。IDC では、ボンバルディア
でトレーニングの監視とデリバリーを担当する顧客サービスグループにおいて、
e ラーニングおよび Web マーケティングのスーパーバイザーを務める Ken Knitter
氏にインタビューを行った。
Knitter 氏によると、ボンバルディアは約 10 年間に渡って Acrobat を使用している。
ボンバルディアでは、フライトマニュアルや修理マニュアルを印刷物から PDF
に移行し、さらに PDF フォームを使用してフィードバックの収集を行っている。
ボンバルディアのマニュアルは、場合によっては、高品質のカラーイラストを含
めて 1,200 ページにも及ぶため、印刷コストは膨大であった。しかも、印刷物に
関連して、CD-ROM への複製、在庫保有、配布、そして期限切れの在庫処分と
いった追加費用があった。管理スタッフは、研修生への資料配布に従来 1 週間当
たり 3 日の時間を費やしていたが、ボンバルディアの LMS(Learning Management
System)によって今では 1 週間当たり 3 時間となっている。PDF による電子マニ
ュアルへの移行によって、ボンバルディアは劇的なコスト削減を達成しただけで
はなく、よりインタラクティブで魅力的な技術資料の提供を可能にした。
たとえば、ボンバルディアでは Acrobat を利用して e ラーニング資料にアクティ
ブスキマティクスによる「マイクロシミュレーション」を組み込み、よりリッチ
で臨場感のある学習体験を提供することを計画している。これらのマイクロシミ
ュレーションによって、整備士は特定のサブシステムがどのように動作するのか
を視覚化することが可能となり、パイロットは助走の練習を行うことができる。
ボンバルディアでは、マイクロシミュレーションは、実際の航空機や 2,000 万ド
ルする 2 階建てのシミュレータへのアクセスを持たないことも多い研修生にとっ
て極めて貴重なものになると期待している。ボンバルディアが組み込みたいと考
えている別のタイプのインタラクティブなコンテンツには自己評価テストやクイ
ズがある。
ボンバルディアがダイナミックコミュニケーションに投資しているもう 1 つの分
野は、トラブルシューティングを担当する顧客対応グループである。このチーム
ではボンバルディアの e ラーニングおよび技術資料(ビデオ、インタラクティブ
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コンポーネント、決定木(ディシジョンツリー)、アドバイスなどを含む)を利
用して、特定の顧客に合わせた Web ベースのダイナミックなドキュメントを作
成している。
ボンバルディアの今後の計画には、タブレットも含まれている。Knitter 氏は、
「すでにフライトバッグで紙ベースの資料を研修生に渡すよりも、デジタル教材
を事前に読み込ませた無償のタブレットを渡した方が安価な状況になっています。
タブレットにまで到達すれば、市場投入までのリードタイムも大幅に削減される
と期待しています」という。
ダイナミックコミュニケーションはボンバルディアのコスト削減だけではなく、
競合に対する製品とサービスの差別化にも寄与している。長期的には、ボンバル
ディアがトレーニングエクスペリエンスの変革に挑戦する中で、顧客との継続的
な対話のいっそうの強化にも寄与する可能性がある。
ビューローベリタス:建設のレビューおよび検査の加速
上場企業であるビューローベリタスは、建設および輸送業界の企業における品質、
安全衛生、環境保護の基準および規制遵守を支援する技術サービスを提供する世
界的なリーディングカンパニーである。同社の中核的なサービスには、検査、テ
スト、認証、法規制のコンプライアンスおよび適合性評価、そしてコンサルティ
ングおよびトレーニングが含まれている。ビューローベリタスは、フランスのヌ
イイ=シュル=セーヌを本拠地としており、2010 年の売上高は 39 億ドルである。
同社は世界 140 か国の 1,000 か所の事業所および研究所で、4 万 7,000 人を上回る
従業員を擁している。
ビューローベリタスでは約 6 年間に渡って Adobe Acrobat Pro を使用して、同社顧
客の発電所建設プロジェクトの計画に関するレビューと検査を合理化している。
ビューローベリタスは、常時約 8 件の発電所建設プロジェクトに関わっており、
同社とその顧客の間では 300 人以上がレビューと検査のプロセスに携わっている
とみられる。同社では、これらのプロセスが Acrobat の使用によって完全に電子
化され、コラボレーティブなものになっている。IDC では、ビューローベリタス
の電力公益部門のシニア IS サポートアソシエイトである Kyle Froling 氏にインタ
ビューを行った。
Acrobat を使用する以前、同社のレビュープロセスは紙ベースのものであった。
クライアントは同社に CAD 図面を大型紙にプリントアウトしたものを送付し、
同社ではこれらをレビューし、インクでマークアップした後、署名捺印した上で
クライアントに返送していた。コメントは、電子メール、ファックス、電話など
で一貫性なく記録されていた。プロセス全体が極めて長い時間を要するものであ
り、かつ高コストであった。Froling 氏は、「ビューローベリタスでは、7 年間保
管する必要のあるプロジェクト計画を保存する箱を置くための収納スペースやク
ローゼット、別室を用意していました。『グリーンであること』に関わる業界に
しては、このビジネスプロセスによるカーボンフットプリントは極めて大きいも
のでした」と述べている。
今日、同社クライアントのエンジニアは、Acrobat を使用して CAD 図面を PDF
に変換し、電子署名をした後、FTP 経由でビューローベリタスのセキュアな Web
サイトにアップロードすることによって、レビュープロセスを開始している。電
子コピーは、コンテキストの中でコメントと追加情報を記録し(これによって課
題と解決策を記録することが可能になる)、ドキュメントベースのコラボレーシ
ョンを実現している。Froling 氏は、「我々は図面自体にコメントし、ドキュメン
トや写真、またはコードを添付することもできます。その後、クライアントに図
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面のレビューが終わったことを通知し、クライアントはそれをダウンロードでき
ます。つまり、ドキュメント上での対話が可能なのです」と述べている。
プロジェクトが検査段階に入ると、検査担当者は現地で PDF を作成し、即座に
同社のサイトにアップロードできる。検査担当者は自分のタブレットや PC で関
連する図面を呼び出し、ビューローベリタスが Acrobat で作成した検査テンプレ
ートを使用して必要なデータを記録し、追加の写真があれば付加する。そして、
作成した PDF をプロジェクトチームが使用できるようにアップロードできる。
Froling 氏は、「電子的なプロセスの価値は、変更に関連する対話の記録、すなわ
ち担当者が実際に言ったことを証明できる点にあります。それは電話での会話で
もなく、会話を記録した紛失の恐れのあるハードコピーでもありません。すべて
はドキュメント上にあり、インテリジェントにアーカイブされるため、後で質問
が生じた場合には、それを検索することが可能です。結果として、ビューローベ
リタスは自社と顧客のために時間とコストを節減しているだけではなく、競争優
位も実現しているのです」と述べている。
ビューローベリタスは、電子プロセスによって、これまで 3 週間を要していたレ
ビューを数時間で完了することを可能にした。これによって、処理できる作業負
荷や検査担当者が現場で費やせる時間も増大している。また同社ではカーボンフ
ットプリントおよび関連する保管コストも大幅に削減されている。さらに重要な
こととして、同社では電子プロセスによって、数十億ドルものコストを要するプ
ロジェクトに係る曖昧さや不確実性が解消されている。
アイルランド政府観光庁:プロダクションワークフローの
合理化
アイルランド政府観光庁は、アイルランドの観光産業を振興し、アイルランドを
行楽客の訪問地として国際的にマーケティングするために、アイルランド共和国
政府と英国政府が共同で設立した有限責任会社である。アイルランド政府観光庁
は、業界のメンバー(アイルランド島内におけるローカル、地域レベルの観光
局)およびホテルの業界団体、連盟、屋外活動を推進する団体やその他の団体と
協力している。同庁では、英国、欧州、北米、そしてアジアや EMEA の新興観
光市場など全世界で 160 人を雇用している。
IDC では、アイルランド政府観光庁における Adobe Acrobat の使用について聞く
ため、プリント/パブリッシングオフィサーである Patrick Lennon 氏にインタビ
ューを行った。Lennon 氏は、マーケティング用パンフレットの校正プロセスを
合理化するために約 7 年前に Acrobat を導入した。Lennon 氏は、ハードコピーの
校正紙による必要性を解消し、同庁をデジタル校正プロセスに移行させることを
望んでいた。従来の校正プロセスでは、同庁の全世界の事務所にハードコピーが
送付され、レビュー済みのコピーが返送されるのを 1 か月待った後、さまざまな
レビュアーの手書き文字を解読する必要があった。Lennon 氏は、「ドキュメン
トは 100 ページにも及ぶことがあるため、コメントも極めて広い範囲に渡る場合
があります。デザイナーにとってさまざまな手書き文字のスタイルを解読し、特
定のドキュメントのどこを変更すべきかを正確に理解することは困難でした。こ
れは特に言語が異なる場合において顕著でした」と述べている。同庁の新しいデ
ジタルワークフローを実現する上でポイントとなったのは、PDF によってクリエ
イティブをレビューし、その上に直接コメントできる能力が得られるであった。
Lennon 氏は、「最初の 5 つの事務所におけるパイロットが大成功であったため、
新たなプロセスは、ほんの数か月で 15 か所の事務所すべてに展開されました。
これはすぐに、当庁のマーケティングや出版プロジェクトのすべてに対する標準
となりました」と述べている。
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Lennon 氏によると、Acrobat によって同庁は世界中の旅行代理店と効果的に協力
することが可能になった。同氏は、「これによって、特定のドキュメントにどの
ような変更を加えるべきか極めて具体的な情報を提供したり、特定のデザインに
対して具体的なフィードバックを提供したりできます。これは非常に強力です。
つまり、物理的に代理店を頻繁に訪問する必要がないということを意味していま
す。こうしたことによって、Acrobat に対する信頼感が本当に高まりました。ア
イルランドは非常に小さい国であるため、当庁は国外の代理店と協力する必要が
あります。PDF によって 4~5 年前には存在しなかった方法で、組織内のさまざ
まなビジネスチームとファイルを共有できるようになりました」という。
節減という面では、同庁は Acrobat によって主要プロジェクトの期間を 1 か月、
場合によっては、それ以上短縮し、デザインのプロダクションコストを半減する
ことに成功した。大規模なプロジェクトの場合、これは数万ドルの節減に相当す
る。
その他にもアイルランド政府観光庁では、組織内部に留める必要のある予算額の
数値などプロジェクトに関する機密情報を、迅速かつ容易に削除するために
Acrobat の墨消しツールを利用している。
今後に関しては、同庁では InDesign ファイルを、タブレット向けに魅力的なエク
スペリエンスを生み出す追加的な要素と組み合わせて利用する iPad アプリケーシ
ョンの開発を行っている。たとえば、同庁では GPS データを利用して Google
Maps に画像を関連付けることによって、タブレットユーザーがアイルランドを
エリア別に探索できるようにしたり、短いビデオクリップを埋め込めるようにす
ることを考えている。
同庁では、過去に PDF ポートフォリオを使用して潜在的な訪問客にアイルラン
ドの宣伝を行ったことがあるが、現在は PDF ポートフォリオを使用してデジタ
ルアセットギャラリーを作成することを検討している。デジタルアセットギャラ
リーとはもともとは、同庁の新しいデジタル資産管理システムから選ばれた一連
の資産であり、マーケティング担当者に利用可能なデジタル資産を知らせると共
に、新たなシステムの利用を促進するために、定期的に電子メールによって配布
される予定のものである。
オンタリオ州警察:証拠開示のデジタル化
オンタリオ州警察(以下、OPP)は、カナダに 3 つある州警察組織の 1 つである。
職員は 5,600 人とオンタリオ州では最大の警察サービスとなっている。OPP は、
同州全域において地元警察が対応できていない地域に対して警察サービスを提供
する責任を負っており、また州全体に渡る犯罪や管轄区域を越える犯罪に対する
捜査、および小規模な地方警察に対する特殊なサポート(捜査やフォレンジック
サービスなど)の提供を行っている。
IDC では、OPP の部長刑事である Mike Scott 氏に、刑事事件の証拠開示における
Adobe Acrobat の利用についてインタビューを行った。Scott 氏は 2008 年以降、オ
ンタリオ州警察大学で、主要な刑事事件の管理について教鞭をとる教授陣の一員
となっている。スティンチコム判決(1991 年にカナダ最高裁が裁判での証拠開示
の規則に関して下した画期的な決定)では、収集されたすべての証拠は、裁判で
提示されるか否かにかかわらず被告側に提供しなければならないとされている。
この判決によって、証拠開示の範囲が大幅に拡大されることになった。Scott 氏
によると、摘要書は殺人事件で 5,000~2 万 5,000 ページ、非常に大規模で複雑な
事件では百万ページにも及ぶこともある。これに加えて、今日、裁判所では 10
~20 年前のような手書きの陳述ではなく、オーディオ、可能であればビデオによ
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る陳述を要求しているため、OPP ではマルチメディア形式で証拠を扱う必要もあ
る。
重要な刑事事件に関連する膨大な証拠の(複数の弁護士および裁判所への)開示
には、数か月にも渡るコピー作成を必要とし、その結果は取捨選択が困難な紙の
山であった。Scott 氏は改善策を考えていた。同氏は電子開示ファイルを作成す
るために Adobe Acrobat を採用した。
OPP では Acrobat を使用して、電子文書やスキャンした資料から、手書きのメモ
に対する注釈、ビデオ証拠の一覧、そしてオーディオやビデオクリップ(PDF に
直接埋め込むか URL でリンクすることが可能)に至るさまざまなタイプの証拠
を組み込んだ PDF 形式での電子摘要書を作成している。Scott 氏は、これが容易
で簡素なプロセスであると指摘し、「印刷ボタンを押して出力先に PDF を選択
すれば、基礎となる資料ができあがります。その後、担当者の手書きのノートの
スキャン、その他必要なものがあれば追加し、それらすべてを 1 つにまとめるこ
とができます」という。
OPP では、検察と弁護の両方が容易に関連する証拠を見つけることができるよう
に、統一的なファイル形式を確立している(OPP のファイル形式はカナダ全体で
採用されており、カナダ国外においても利用が広まっている)。Adobe Reader は
広く普及しており、また無償で入手可能であるため、PDF の摘要書はあらゆるコ
ンピューター上で閲覧および検索が可能である。PDF 標準は、独自仕様のクライ
アントを含む証拠開示アプリケーションパッケージに対して、大きな優位性を提
供する。Scott 氏は、「どの警察サービスに関するものなのか、あるいは記録管
理に何を使用しているかなどは関係ありません。誰もが PDF にアクセス可能で
す」という。電子的な検索機能によって、ステークホルダーのすべてが(さもな
ければ、このような膨大な証拠開示の中から見つけ出すことが不可能に近い)特
定の証拠を引き出すことが可能である。すべてが 1 つの PDF ファイルに存在す
るため、わずか 1 回の検索で済む。Scott 氏は、「Acrobat のインデックス機能を
使用すれば、検索は極めて高速です。これは、ここの警察大学でも教えているベ
ストプラクティスです」と述べている。
Acrobat のダイナミックコミュニケーション機能は、さらにいくつかの重要な方
法で開示プロセスの合理化に寄与している。たとえば、OPP では、情報提供者の
名前など検察官が開示を望まない可能性のある情報に関しては、Acrobat を使用
して当該のセクションを墨消し適用対象としてマークアップしている。検察官は、
これらの墨消しを適用するかどうか、あるいは完全に適用するか一部のみ適用す
るかを決定できる。OPP はまた、敵対的な証人に関して検察官に注意を促したり、
通訳の必要の有無に関するノートを付加したりするために、PDF のマークアップ
ツールを使用している。弁護側にもメリットがある。すべての証拠が 1 つの場所
にあり、容易に検索可能である。Scott 氏は、「文書に目を通し、独自のコメン
トを付け加えている弁護人を知っています。これは本質的には、私たちが提供し
たドキュメントによって弁護能力を強化していることになります。これらのコメ
ントも検索可能であり、マークアップしたファイルを弁護人のチームで共有する
ことも可能です」という。
電子的な証拠開示への移行によって、膨大な時間と労力が節減されている。毎年
数千件の裁判があり、かつては紙の使用によってそれぞれの準備に 1~2 週間を
要していた。Scott 氏は、「2 万ページに及ぶ訴訟があれば、コピー機と製本機の
前に担当者か事務員が何日も続けて立ち詰めということになったでしょう。今日
では、裁判の準備に必要なのはわずか 1 日か 2 日です」という。また、OPP では
保存の面でも大きなメリットを得ている。以前、OPP では紙ベースの開示資料を
巨大な耐候密閉倉庫に保存していた。それでも紙は時間の経過と共に劣化する。
しかも、その保存期間は 25 年である。Scott 氏は、「当警察のモットーは、捜査
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は電子的に始まり、電子的であり続けるというものです。紙を見たいとは思いま
せん。当警察での現在の課題は、ペーパーレスの捜査は可能か、というものです。
実際、その目標に近付きつつあります」と述べている。
ディビディ:インタラクティブでリッチなメディアエクス
ペリエンスの作成
ディビディプロジェクト(以下、ディビディ)は、企業が既存のデジタル資産を
利用して費用対効果の高いインタラクティブなマーケティングコミュニケーショ
ンを作成することを支援する英国のオーサリング専門会社である。ディビディの
クライアントは、新しいアルバムをプロモーションしようとしているロックバン
ドから、消費者との関係を強化し、ブランドの宣伝を行おうとしているグローバ
ル 2000 に入る会社のコーポレートコミュニケーショングループにまで及んでい
る。
IDC では、ディビディの CEO である Harry Hemus 氏にインタビューを行った。
同氏はディビディを創立する以前、印刷およびパッケージング業界において、数
年間のセールス経験とマーケティング経験を有している。Hemus 氏は、世界が一
方向的なメディアからインタラクティブなメディアに、そして DVD からデジタ
ル配信に移行しているという認識に基づいてデジタルメディアに携わるようにな
った。しかし、従来のプレゼンテーションソフトウェアを使用して、クライアン
トのために魅力的なプレゼンテーションを作成することは困難であることが分か
った。ディビディでは、Hemus 氏は Adobe Creative Suite Master Collection を使用し
て、クライアントのデジタル資産を組み合わせ、無償の Adobe Reader によって利
用できるフレッシュでインタラクティブなエクスペリエンスを作成している。
Hemus 氏が作成する PDF ファイルは、真のマルチメディアエクスペリエンスで
ある。電子メールで送付したり、Web サイトからダウンロードしたりできるとい
う点を除けば、「ドキュメント」であるようには見えない。Hemus 氏は、クライ
アントがしばしば、PDF の利用で何ができるかということを目の当たりにして驚
愕している。「PDF ファイル内に MP3 ファイルを加え、Flash ビデオを埋め込み、
その上でインタラクションやナビゲーションを追加することができます。ボタン
の外観や、ハイパーリンクの埋め込み方など、詳細に至るまでブランディングを
コントロールすることができます。当初、人々は PDF を古い技術と考え、PDF
に否定的です。しかし、こうした人々が PDF のインタラクティブ性と、これら
のプロジェクトが極めてダイナミックであることを目の当たりにすると、それま
での認識は一変します」という。
さらに、Hemus 氏は、「このようなエクスペリエンスと従来の PDF が違う点は、
ユーザーエクスペリエンスにあります。ユーザーは、ボタンを 2、3 回クリック
するだけで、迷わずに素早く目標に辿り着くことが可能です。これはまた我々の
クライアントが、彼らのユーザーについて、どのようなことに興味を持っている
のかを無理に推察する必要がないことを意味しています。すべてのコンテンツを、
1 つの大きなドキュメントの中に含めることができるため、ユーザーは興味のあ
ることを見つけるに当たって、すべてに目を通す必要がありません。また DVD
の場合と同様に、メインメニューやシーン、チャプターの選択を追加することも
可能です」という。Hemus 氏とって PDF は、マルチメディアのエクスペリエン
スを提供する理想的な手段である。同氏は、「PDF はユーザーフレンドリーで、
かつ世界中に普及していて、どこでも入手が可能な 1 つのファイル形式に、すべ
てが詰め込まれたメディア販促資料です。これは、Zip フォルダーを機能強化し
たようなものです」と話す。
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日本赤十字社医療センター:ドキュメントベースのワーク
フローの改善
日本赤十字社(JRCS)は 1877 年に設立された。東京を本拠としており、47 都道
府県すべてに広がる、各支部から構成されるネットワークを支えている。日本赤
十字社は、104 の医療機関、看護師やその他のスタッフの研修を目的とした 26 施
設、215 の献血プログラム施設、28 の社会福祉施設を運営している。これらの施
設において、全体で 6 万人のスタッフが雇用されている。日本赤十字社は、2011
年 3 月の地震、津波、原子力災害時の緊急対応と人道支援の提供において重要な
役割を果たした。また赤十字国際委員会(ICRC)および国際赤十字赤新月社連
盟(IFRC)と協力して広範な国際的活動に従事している。
IDC では、日本赤十字社医療センター(JRCMC)の管理局業務部企画課広報課長
の高木 拓氏にインタビューを行った。高木氏は外部向け広報と、同医療センタ
ーの従業員を対象とした内部向け広報の両方を管理している。高木氏からは、同
医療センターで関係者とのコミュニケーションおよび情報共有を改善するための
Adobe Acrobat 活用方法が数多く示された。
同医療センターでは、Web サイトから一括してダウンロードする必要のあるドキ
ュメントを Adobe Acrobat を使用して公開している。このようなドキュメントの
例としては、製薬会社が臨床試験で同医療センターと協力する場合に記入する必
要のある書類一式が挙げられる。書類一式には、一般的に Microsoft Word や
Excel など、多様な形式のドキュメントが含まれている。これらのドキュメント
を単一の PDF ポートフォリオにパッケージ化することによって、書類一式が完
全なものであり、かつ最新版であることが保証され、またダウンロードも容易に
なる。PDF ポートフォリオを使用する以前は、同医療センターでは Zip ファイル
を使用して文書をパッケージ化していたが、ユーザーが Zip アーカイブ内の一部
の文書(特に元のファイル名が長い場合)を開く際にしばしば問題が発生してい
た。この問題は、PDF ポートフォリオの使用によって解決された。
また、高木氏は、同医療センターが後援するコンファレンスの登録プロセスを合
理化するに当たっても Adobe Acrobat を使用している。たとえば、第 26 回日本母
乳哺育学会学術集会には約 400 人の参加者が集まった。以前の登録プロセスは紙
ベースであったが、今では Web サイト上の PDF フォームを使用して登録情報を
収集し、Acrobat.com をデータリポジトリーとして使用している。登録データの
収集が終わると、それを CSV 形式のファイルに抽出して、住所ラベルや各個人
宛の文書を作成することが可能である。電子プロセスによって、同医療センター
でのデータ入力が不要になり、ミスも低減された。また潜在的な講演者と参加者
が簡単に Web から申し込めるようになり、これまでの紙のフォームに記入し、
印刷後、郵送またはファックスによって送付するという手間が解消された。参加
者の多くは高齢の助産師であるが、この新しいプロセスは非常に好評のようであ
る。
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