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企業統括(コーポレートガバナンス) - 東京大学大学院薬学系研究科

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企業統括(コーポレートガバナンス) - 東京大学大学院薬学系研究科
ファーマコビジネス・イノベーション特論(12)
コーポレート・ガバナンスと
リーダーシップ
2003年7月3日
東京大学大学院薬学系研究科
各務 茂夫
ハイドリック・アンド・ストラグルズ社
世界主要企業のトップ人材の発掘・登用を主な
業務とする
„
IBM、ルイス・ガースナー会長兼CEO(1993年3月就任)
„
AT&T、マイケル・アームストロング会長兼CEO(1997年10月)
„
3M、ジェームズ・マクナーニー社長兼CEO(2000年12月)
„
Home Depot、ロバート・ナーデリー社長兼CEO(2000年12月)
„
Burger King、ジョン・ダスバーグ会長兼社長兼CEO(2001年4月)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 2
シュンペーター:「経済発展の理論」
„
既存の事業の枠組みから脱却し、新しいも
の(イノベーション)を創造する(「創造的破
壊」)ことこそが経済発展の源泉
„
イノベーションの担い手は先見性と独創性
に富み、リーダーシップに溢れた「企業者
(起業家)」
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 3
資本主義の本質と企業経営
„
„
„
「ヒト」「モノ・知恵」「カネ」の結集
„ 創意工夫(「戦略」)によるイノベーションの実現
企業者(起業家)によるイノベーションと創造的破壊
„ リスクをとって果敢にチャレンジするリーダーシップ
「企業は戦略なり」「企業は人なり」
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 4
CEOとは
„
„
„
„
「Officer(執行役)」と「Director(取締役)」
Chief Executive Officer(CEO)
最前線に立ち、命懸けで、目の前の戦(いくさ)に勝
利するというミッション(使命)を与えられた最高前線
指揮官
「執行」と「監督・監視」
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 5
IBMはなぜCEOを外部から
ヘッドハントしたのか(1993年)
„
„
„
„
„
メインフレームからPCへの大転換期(90年代前半)
創業以来の大改革の必要性
過去の成功は未来の成功を約束しない
過去の“シガラミ”に囚われない経営の追求が不可欠
最高経営責任者(CEO)のリーダーシップがもたらす
変革の果実に対する信頼
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 6
戦略と適材適所のグローバリゼーション
„
„
なぜサッカー日本チームはトルシエ監督を招聘
したのか。なぜ今度はジーコ監督なのか
なぜヤンキースは松井が欲しかったのか
„
„
„
„
野茂、イチロー、佐々木、新庄、石井…
中田、稲本、中村、鈴木、戸田…
なぜウィーン国立歌劇場は小澤征爾を音楽監
督に招聘したのか
「ゲームのルール」のグローバリゼーション
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 7
ジャック・ウェルチはなぜ偉いのか
„
徹底した「戦略の論理」の追求
-
„
シェア1位か2位以外の事業は再建か閉鎖か
売却
「ナンバーワン・ナンバーツー戦略」
「企業は戦略なり」
幹部人材の登用、とりわけCEO後継者選
びに費やした莫大なエネルギー
-
「企業は人なり」
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 8
「失われた10年」の実態
„
„
„
„
„
„
企業収益率の日米間での圧倒的較差
「人本主義」「雇用重視」をお題目に、無策のまま改
革を拒み続ける経営者
戦略なきリストラ
相次ぐ倒産
相次ぐ不祥事
ますます国際競争力を失う日本企業
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 9
では「失われた10年」の前は
どうだったのか
„
„
„
„
„
「あれかこれか」の戦略ではなく、「あれもこれも」で何
とかやれた時代
マネージすべき戦略変数が少なくシンプルだった時代
グローバリゼーションがまだ大きなウネリになってい
なかった時代
「改革」ではなく「改善」で何とかやれた時代
後継経営者が前任者のやり方を「踏襲して」やってい
けば何とかなった時代
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 10
我国にとってグローバル競争は
何を意味するのか
„欧米亜有力企業
„日本企業
„ 「戦略の論理」「事業の論理」の経営
„ 「内なる組織の論理」を優先
„ 「資本効率優先の経営」
„ 「雇用優先の経営」
„ 「改革」が経営にとって最優先
„ 「改善」が経営テーマの中心?
„ 経営者リーダーシップを前提とした経営
„ 波風を立てない形での経営者選び
„ “War for Talent”を前提とした経営
„ 経営者市場がない?
日本企業はこれで本当に勝てるのか?
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 11
コーポレート・ガバナンスとは
「企業の継続的な成長・発展を目指して、よ
り効率的で優れた経営が行われるよう、経
営方針について意思決定するとともに、経
営者の業務執行を適切に監督・評価し、動
機付けを行っていく仕組み」
経済同友会「企業経営委員会」提言(2002年7月)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 12
コーポレート・ガバナンスの本質
「資本効率」「市場・事業の論理」最優
先の経営ができないCEOを解任し、でき
るCEOを選び・支持していけるメカニズ
ムがあること
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 13
「仕組みとしてのコーポレート・
ガバナンス」への転換(1)
„
„
„
トップの“人となり”とは独立して機能するガバナ
ンスの仕組みづくりが重要
株主の視点からトップの暴走を防ぐシステムがな
いことが問題の原因
改革を実現するためには社外取締役の積極登
用が必要
NEC西垣社長(日経ビジネス2001年3月12日号)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 14
「仕組みとしてのコーポレート・
ガバナンス」への転換(2)
„
この社長に任せておいてはいかん、いい経営者
を探さなければいかん、という時に社外取締役
のチェック機能が働くことが重要
オリックス宮内会長(週刊東洋経済2001年7月28日号)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 15
会社は誰のものか
100
90
80
70
60
株主
50
40
すべてのステー
クホルダー
30
20
10
0
米国
英国
フランス
ドイツ
日本
出所 : 吉森 賢 「日本の経営・欧米の経営 (1990年・1992年調査) 」
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 16
配当(株主)優先か、
雇用(従業員)優先か?
100
90
80
70
60
50
配当優先
40
30
雇用優先
20
10
0
米国
英国
フランス
ドイツ
日本
出所 :日本の経営・欧米の経営 (1990年・1992年調査)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 17
戦前の日本企業(1)
„
„
19世紀末に新制会社法が設立、日本における株
式会社のモデルが創られた
1893年、日本郵船(モデル企業)の株主総会が開
催
-取締役11名の内、社外取締役は渋沢
栄一はじめ5名
-監査役は2名とも社外監査役
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 18
戦前の日本企業(2)
経済学の教科書に描かれる古典的な企業像
„
„
„
„
„
株式による資金調達が産業資金の大半
企業支配は株主中心
配当性向は極めて高く、利益の大部分を直ちに株
主に分配
労働者の勤続年数は短く、労働の流動性が高いた
めに、雇用調整が容易
労働者の組合組織率は、ピーク時でも3%
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 19
主要鉱業・製造業における
資金調達状況の変遷 (1935/43/50)
内部留保
(事業利益)
株式
社債
直接金融合計
(株式+社債)
借入金
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
1935
19.3
43.9
0.6
44.5
36.2
1943
14.1
24.7
6.4
31.1
54.8
1950
18.0
8.6
4.7
13.3
68.7
1935
22.2
37.2
6.8
43.9
33.9
1943
25.3
30.4
7.3
37.7
37.0
1950
32.0
8.7
3.6
12.3
55.7
財閥
非財閥
出所:大蔵省(1978)−岡崎哲二(1994)より
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 20
我国の主要企業における
利益処分状況の変遷(1931-1970)
配当金
役員報酬
内部留保
時期
(%)
(%)
(%)
1931-35
68.7
5.9
25.4
1936-40
64.0
5.1
33.6
1941-43
61.3
4.9
35.1
1956-60
52.7
3.2
44.1
1966-70
43.2
2.1
54.7
出所:三菱総研「本邦事業成績分析、企業成績分析」−岡崎哲二(1994)より
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 21
戦前・戦中の10年間に何が起きたのか
„
„
„
„
1937年日中戦争勃発
同年、労使関係調整機関として「産業報国会」が設立、
従業員を企業の“正規メンバー”として位置づける
1938年「国家総動員法」制定、1940年「会社経理統
制法」制定、並びに「新経済体制」により、“企業は利
潤動機に従って行動すべきでない”ことが明確に打ち
出され、株主の権利を制限し、配当・役員賞与を統制
1944年「軍需会社指定金融制度」制定、軍需会社に
“指定金融機関”が円滑な資金供給を保証し、政府・
日銀がこれに協力
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 22
取締役総数に占める内部昇格者の割合 (%)
(1935-1951)
100
90
80
70
60
財 閥 企 業 ト ッ プ 10社
非 財 閥 企 業 ト ッ プ 10社
50
40
30
20
10
0
1935
1942
1947
1951
出所:現代日本経済システムの源流(1993)
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 23
米国における新興企業・
ドットコム企業の失敗からの教訓
„
経営者(CEO)のコミットメント(“Equity”) の欠如
„
„
経営の客観性(“Objectivity”)の欠如
„
„
経営者Ownership・インセンティブの問題
社外からの中立的なインプットの欠落
鍵となる役職・機能における人材不足
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 24
新興企業・高成長企業のアキレス腱
„
„
„
„
戦略の妥当性に対する検証?
事業リスクを察知する視野の広さ?
失敗経験の蓄積?
CEO・創業経営者への過度な依存?
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 25
ベンチャー企業にとっての
社外人材の積極活用
社外取締役、アドバイザリー・ボードの積極登用
„
„
„
„
利害に囚われない社外の視点、社外の知恵、広い見識
社内からは得られないCEOにとっての社会・市場の鏡
CEOにとっては耳に痛いが傾聴すべき忠告をしてくれる有り難い
ご意見番
常に取締役会に緊張をもたらす、脇を堅めた経営の源泉
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 26
まとめ
„
„
„
„
コーポレート・ガバナンスは競争力・成長力の源泉
良きコーポレート・ガバナンスはCEOが強いリーダー
シップを発揮するための基盤
良きコーポレート・ガバナンスは株式市場、投資家
を味方につける
コーポレート・ガバナンスは単なる欧米の真似では
ない
2003年7月3日 PBI特論 各務茂夫 27
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