Comments
Transcript
家 難 精 子 の 体 外 生 存 期 間 並 び に保 存 液 に 就 い で
595 家 難 精 子 の 体 外 生 存 期 間 並 び に保 存 液 に就 い で 武 On the duration in vitro, 田 of life and their Akira 晃 of the cock preservative spermatozoa fluids Takeda 1.緒 言 精 子 は 雌 畜 体 内 に 於 け る よ り も体 外 に 於 て 遙 か に そ の 生 存 期 間 並 び に 受 精 能 力 が 長 く保 持 され る.之 は 体 外 保 存 に於 て は 温 度 を低 下 させ 精 子 の ヱ ネル ギ ー の消 耗 を 減 少出 来 る事 が 最 大 の 原 因 と 考 え ら れ る. 家 難 に 於 て は 精 子 の 雌 男霞 体 内 に 於 け る 生 存 期 間 は 極 め て 長 く,雄鷄 と隔 離 後,或 は処 女 叉 は 雄鷄 と隔 離 し て若干 時 日 を お い て も は や 前 の 雄鷄 に よ る 受 精 が 起 ら な くな つ た 雌鷄 鷄 に 唯1回 の 交 配 叉 は1回 の 人工 授 精 を 行 え ば,相 当 長 期 に 亘 り 有 精 卵 を 産 出 す る.此 の に 関 し て はCrew(1926),Dunn(1927),CurtisandLambert(1929),Warren 事 andKilpatrick(1929),Komatuzaki(1932),WaltonandWhetham(1933),Nico1aides(1934)等 多 くの 研 究 が あ り,最 長は ・ヶ月に も 及 ぶ.然 子 の 生 存 期 間 は非常 に 短 縮 さ れ る と言 わ れ て 思 り,叉 保 存 液 使 用 よ り も有 利 と さ れ て い る が 判 然 と し な い.筆 る に体 外 保 存 に於 て は精 そ の 際 原 精 液(無 稀 釈 精 液)保 存 が 者 は 家鷄 精 子 の 雌鷄 体 内 に 於 け る 受 精 能 力 の 長 期 保 持 の 機 構 を 解 明 す る に あ た り 先 ず 原 精 液 の 精 子 生 存 期 問 を 知 り,更 種 溶 液 の 精 子保存 に各 力 を 知 ら ん と し て 本 実 験 を 行 つ た. 本 研 究 は 丹 下教授 の 指 導 の 下 に 行 わ れ,西 山 教 官 の 助言 に 拠 る 所 が 多 か つ た.此 処 に深 く 感 謝 の 意 を 表 す. II.材 料 及 び実 験 方 法 精 液 採 取 に 供 した 雄鷄 は 当 研 究 室 に 於 て 飼 育 せ る 成鷄11羽(白 名 古 屋 種2羽 ・ 日本 難1羽)で 色 レ ゲ ホ ー ン 種8羽 ・ あ る・ 精 液 採 取 はBurrowsandQuin11(1937)の 下 腹 部マツ サ ー ジ 法 に 拠 り連 続4回 採取 の 全 精 液 を 以 て 原 精 液 と し た. 原 精 液 保 存 は 上 述 原 精 液(無 *本 実 験 の 一部 は 昭 和26年 稀 釈 精 液)をO℃,7∼10℃,40℃ に 於 て,稀 日本 畜 産 学 会 秋 季 大 会 に於 て講 演 発 表 した も の で あ る. 釈 保存は 596 各 種(後 述)溶 液 に て10倍 に 稀 釈 し7∼10℃ に 保 存 し た.後 者 の場合 精 液 の一 部 を 対 照 と し て 原 精 液 保 存 し 溶 液 の 保 存 力 を 検 討 し た. 使 用 し た 溶 液 は 次 の8種 1.生 理食塩 水 2.リンゲル 液 3.リンゲル 4.プ ・ ロッ ク液 ドー 親ξ 液(5%水 5.糖拘 享 容液) 曹 液3%SodiumCitrateSo1.10c.c.十5%GlucoseSo1.10c.c. 6,卵 7.糖 で あ る. 黄 拘 曹 液3%SodlumCitrateSo1.10c.c.十Yolk10c.c. 卵 黄 拘 曹 液4.76%SodiumCitrateSo1.10c.c.十YolklOc.c.・ …A液 A液10c.c.十696GlucoseSoL10c.c. 8.蛋白糖燐 曹液 撫P・11・ 一+器N・ ・H17・ ・c…+HL)・ ・2.8c.c.・…B液 B液9.6c.c.十20%GlucoseSo1.2.4c.c.十Albumen8c.c. 糟 子 検 査 は 常 法 に 従 い 活 力 の 表 示 は 次 の 記 号 に よ り生 存 精 子 の 過 半 数 の 示 す 活 力 を 以 て 示 した. ・ 且!激 十 烈 な運 動 を 行 え る もの 活発 な運 動 を行 え る もの 十稍 々活発 な 運 動 を 行 え る もの 士 緩 慢 な運 動 を行 え る も の並 び に 生 存 率 僅 少 の もの 一 全 精 子死 滅せ る も の III.結 A。 原 精 液 保 存 に 於 け る生 存 期 間 O℃ 保存 実 験 例 数16で95%の 最 長 生 存 期 間 は12日(288時 7∼10"C保 日(144時 存 間),最 間),最 例 数48,95%の 果 信 頼 限 界 に 於 け る平 均 生 存 期 間 は6.50士1.07日, 短 生 存 期 間 は4日(96時 短1日(24時間)で,生 第1表.原 間)で あ つ た. 信 頼 限 界 で 平 均 生 存 期間 は4.02±O.34日,最 精 液7∼10。C保 存 期 間4日 の も の が 最 も 多 く33.3%(16 存 に 於 け る活 力 並び に 生 存 率, 長6 597 例),次 い で5日 が31.3%,3日20.8%,2日 採 取 直 後 よ り24時 40℃ 間,最 B.稀 前 記8種 以.E6.3%で 間 毎 の 活 力 並 び に 生 存 率 の 平 均 値 は 第1表 保 存9例,95%の 短9時 以 下8.3%,6日 あ つ た. の 如 くで あ る. 信 頼 限 界で 平 均生存 期 間 は10.22士1.13時 間,最 長13時 間 で あ つ た. 釈 保 存 に 於 け る生 存 期 間 の 溶 液 に よ る稀 釈 保 存 並 び に 対 照 の 原 精 液 保 存 に 於 け る精 子 生 存 期 間 及 び 之 等 の 平 均 値 を 少 数 例 統 計 処 蝿 し た 結 果 は 第2表 第2表.各 の 如 く で あ る. 種溶 液 に よ る稀 釈 保存 に 於け る生 存 期 間. 備 考 各溶液 の下段は対照の原精液 保存, IV.考 A.原 察 精 液 保 存 に 於 け る生 存 期 間 家 難 精 子 を 原 精 液 の ま ま 体 外 に 保 存 す る 場 合 の 適 温 はMotohashiandMoritomo (1927)に よれ ば10℃ 間,Nikitina(1932)に 前 後 と 言 わ れ,同 よれ ば56時 間,Shibata(1938)に く運 動 が 緩 慢 と な る と報 告 さ れ て い る.叉 andKilpatrick(1929)は10時 温 度 に 於 け る 生 存 期 間 は 同 氏 等 に よれ ば10時 よ れ ば18時 家 難 の 体 温 に 近 い40℃ 間 後 に 運 動 能 力 を 失 い 約20時 間 後には著 し に 於 て はWarren 間 後 に は 分 解 さ れ る と報 皆 し て い る. 本 実 験 に 於 て は0℃ に 於 て 平 均6.50日,7∼10℃ に 保 存 し た 時 の 方 が,10℃,40℃ に 於 て 平 均4.02日,40℃ 保 存 よ り生 存 期 間 が 長 く,0。C に 於 て は 平 均10.22時 間であ 598 つ た.前 述 諸 研 究 者 の 報 告 と の 相 違 は 精 液 の 採 取 方 法,季 節 等 の 異 る事 に よ る も の と解 さ れ る. B.稀 釈 保 存 に 於 け る生 存 期 間 生 理 食 塩 水 に よ る家 難 精 子 の 保 存 はFukui(1924),Ishikawa(1930)に 食 塩 水,リ ン ゲ ル 液,ブ よ り,0・75% ドー 糖 液 に よ る 保 存 はMotohashiandMoritomo(1927)に よ り報 告 され て い る. 本 実 験 の 結 果 は 原 精 液 保 存 の 方 が 生 現 食 塩 水,リ ー 糖 液 稀 釈 保 存 よ り良 好 で あ つ た(第2表 参 照). ン ゲ ル 液,リ ン ゲ ル ・ ・ ッ ク液 ・ ブ ド 従 来 牛 ・羊 等 濃 厚 精 液 を 射 出 す る 家 畜 に 於 て は 各 種 溶 液 に て 稀 釈 保 存 す る よ り原 精 液 の ま ま 保 存 した 方 が 精 子 の 生 存 期 間 が 長 い と さ れ て い た が,Phi1ipsandLardy(1940) が 卵 黄 緩 衛 液 を 考 案 し,次 使 用 し て 以 来,搬 様 に な つ た.叉 い でSalisbury,FullerandWillet(1941)が枸櫞酸 に 牛 精 液 の 保 存 に は 籾1卵 黄枸櫞酸 ソ ーダ を ソ ー ダ 液 によ る稀 釈 保 存 が 行 わ れ る 羊 ・山 羊 に 於 て も 該 液 が 良 好 で あ る と 報 告 さ れ て い る. 家 難 の 精 液 も極 め て 濃 厚 で あ る の で 該 液 の 使 用 を 試 み た.そ の 結 果 は 糖 卵 黄 概 縁酸 ソ ー ダ 液 は 対 照 の 原 精 液 保 存 よ り精 子 の 生 存期間 を 延 長 した.叉 糖枸 構 酸 ソー ダ 液 保存孔は 原 精 液 保 存 に 較 べ 精 子 生 存 期 間 が 短 か か つ た.卵 液 は1巧(精液 と比 較 し て 良 否 不 明 と の 結 論 に 達 し た(第2表 黄枸櫞酸ソーダ 参 照). 糖 燐 酸 ソ ー ダ 液 に よ る稀 釈蛋白 保 存 は,家 よ り実 験 され,生 存 期 間 の 最 長 は23日 難輸 精 管 内 精液 に つ い てHayashi(1938)に に 及 ぶ と 報 告 さ れ て い る が,木 実 験 に 於 て も原 精 液 保 存 よ り良 好 な 結 果 を 得 た. 以 上 の 如 くマッ サ ー ジ法 に よ り採 取 し た 家 難 精 子 に 於 て も 糖 卵 黄枸櫞酸 蛋 白 糖 燐 酸 ソ ー ダ 液 に よ る 稀 釈 保 存 に 於 て,今 ソー ダ液 並 び に 迄 最 良 と思 わ れ て い た 原 精 液 保 存 よ り良 好 な 結 果 を得 る 事 が 出 来 た. V.概 1.マツ O℃ サ ー ジ 法 に よ り採 取 し た 家 難 精 子 の 原 精 液(無 に て6.50日,7∼10℃ 2.糖 に て4.02H,40℃ 卵 黄枸櫞酸ソーダ 理 食 塩 水,リ 稀 釈)保 に て10.22時 伯 こ於 け る 生 存 期 間は 間 で あ つ た. 液 及 び 蛋 白 糖 燐 酸 ソ ー ダ 液 稀 釈 はマツ サ ー ジ法 に よ り採 取 した 家 難 精 子 の 生 存 期 間 を 原 精 液(無 3.生 括 稀 釈)に ン ゲ ル 液,リ 於 け る よ り延 長 し た. ン ゲ ル ・ ロ ヅ ク液,ブ ドー 糖 液 に よ る 稀 釈 は 家 難 精 子 の 体 外 保 存 に 不 適 当 で あ る. VI.参 考 (1) Burrows, W. H. & J. P. Quinn (1937) ; The ky. Poultry Sci., 19 : 16. (2) Crew, F. A. E. (1926) ; On fertility 文 献 collection in the domestic of the domestic fowl. fowl and tur- Proc. R. Soc. Edinburgh, 599 46(2):230. (3)Curtis,V.&W.V.Lambert(1929);Astudyoffertilityillpoultry.PoultrySci・,8: 142. (4)Dunn,L.C.(1927);Selectionfertilizationinfowls.PoultrySci・,6:201・ L5)Fukui,S.(1924);体 外 精 子 運 動 性 と持 続 時 間 と 温 度 と の 関 係 に 就 い て.東 京 医 事 新 誌 ・ 第 2356号. (6)Hayashi,B.(1938);家 難 精子 ・ の 体 外 に 於 け る 生 存 期 間 に 就 い て.札 幌 農 林 学 会 報,第29年 ・ 第142号. (7)Ishikawa,H.(1930);Thelifedurationofcockspermatozoaoutsidethebody・Biol・ Abst.,6:13108. (8)Komatuzaki,M.(1932);鶏 に 於 け る'授 精 の 研 究.日 本 蛮 産 学 会 報,5:157・ (9)Motohashi,H.&M.Moritomo(1927);Onthevitalityofthespermatozoaofthe domesticfowlintheeggwhitesolution.Rept,Proc.3rd.World'sPoult・Congr・ (10)Nicolaides,C.(1934);Fertilitystudiesinpoultry.PoultrySci.,13:178・ (11)Nikitina,M.V.(1932);Artificialinseminationinthefow1.AnimalBreedingAbst・ ・ 1:116. (12)Nishikawa,Y.(1932);家 畜 人 工 授 精法. (13)Phillips,P.H,&H.Lardy(1940);Ayolkbuffersolutionforthepreservationon bullsemen.Jour.DairySci.,23:399. (14)Salisbury,C.H.,Fuller,H.K.&E.L.Willett(1941);Preservationofbovinespermato・ zoainyolkcitratediluentandfieldresultsfromitsuse.Jour.DairyScL,24:905・ (15)Sibata,S.(1938);鶏 に.於 け る 人工 授 精 の 研 究.畜 産 試 験 場 報 告,第35号. (16)Walton,A,&E.0.Whetham(1933);Thesurvivalofthespermatozoainthe domesticatedfowLJour.Exp,BioL,10:204. (17)Warre11,D.C.&L.Kilpatrik(1929);Fertilizationinthedomesticfow1.POultry Sci.,8:237. 九 州 大 学 農 学 部 畜 巌 学'教室 Resume Cock semens were collected by means of abdominal massage (Burrows and Quinn, 1937) and their life-durations were studied in vitro. In the undiluted semen, the spermatozoa survived for 156 hours at 0°C. and 96 hours at 7-10°C. The duration of life of the spermatozoa was shortened exceedingly when the semen was preserved at 40°C., and it was about 10 hours. The longest duration at 0°C. was 288 hours. The spermatozoa in the semen diluted 10 times in volume with gluco-yolkcitrate or albumen-gluco-phosphate solution survived longer than those in the undilute semen. The difference of duration of life of spermatozoa between undilute semen and both diluted semens were highly significant. On the other hand the semens diluted with physiological salt solution, Ringer's, Ringer-Lockes' or glucose solutions suffered injury; highly significant differences were found in the life duration. Laboratory of Zootechny, Faculty of Agriculture, Kyushu University