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Page 1 Page 2 6章 レールガンプラズマの制御 プラズマを電機子に用

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Page 1 Page 2 6章 レールガンプラズマの制御 プラズマを電機子に用
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
核融合燃料ペレット入射を目的としたレールガンの基礎
研究
Author(s)
勝木, 淳
Citation
Issue date
1998-03-12
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/24863
Right
6章レールガンプラズマの制御
プラズマを電機子に用いたレールガンでは,プラズマの膨張を如何にして制御するかが
大きな課題である.アブレーションによってプラズマ電機子の質量は増大し,加速方向の長
さが増大する.質量および体積の増大は,たとえばレーリー・テーラー不安定’性の発生を
助長し,プラズマ電機子の分裂というシナリオで加速度の低下を招く.
本章では,レールガンのプラズマを制御するための方針を述べ,実際に試みたいくつか
の方法およびその実験結果についてそれぞれ述べる.
6.1プラズマの制御法
プラズマを制御するということは,如何にプラズマをコンパクトに飛翻体の背後に閉じ
込めておくかということに他ならない。プラズマの圧力と磁気圧力を如何にバランスよく
保つかということである。このための方針がいくつかある[41].
)
a
アブレーシヨンの抑制一プラズマに浸入する粒子を低減する.
)
b
プラズマ電機子内粒子排出一プラズマ内の粒子を排出する.
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電磁力制御一磁気圧の低下を抑制する.
それぞれについて以下にもう少し詳しく説明しよう.
(1)加速管におけるアブレーションの低減
加速管壁への熱負荷を低減する、または加速管を耐熱化するなど,アブレーションを抑
制することによってプラズマ内に混入する粒子を低減する.
熱負荷を低減する方法についてもいくつか考えられる。まず、加速初期においては飛翻
体の予備加速が最も効果的である。(3-2)式に示されるように,加速管への熱負荷は速度が
遅いときほど大きいので,加速管内において飛翻体の初期位置からわずか数cmまでが局所
的に損傷し,他はほとんど傷まない.飛翻体に初速を与えることができれば,加速初期に
おけるアブレーションを大幅に軽減でき,加速管の損傷を小さくできる6また,アブレー
ションの低減によってプラズマの加速初期における質量が小さく抑えられると、プラズマ
の粘性抵抗など加速中の抗力が抑制されるので,射出速度の低下を防ぐことができる.
熱負荷を低減する二番目の方法は,3章で述べたバイアス磁場を用いる方法である.プ
ラズマで発生する熱量を低減するために,駆動電流を低減する.電磁力の低下を補うため
にレール電流によって生じる磁場を増強するような向きに外部から磁場を印加する.ただ
し,バイアス磁場がプラズマに作用し抵抗率が僅かに上昇するので,注入電力は減らした
電流ほどは減少しない.
7
0
耐熱化の方法は,加速管を構成する材料として,たとえばレールにタングステン,銅一
タングステン,絶縁壁にセラミック系などの耐熱特性を有する材料を用いようとするもの
である.また,レールを裏側から水あるいは液体窒素で冷却するなどの方法も考えられる.
(2)プラズマ粒子数制御
飛期体の予備加速,低電流駆動および加速管構成材料の耐熱化などの考え方は,プラズ
マの質量が増加する原因となる加速管壁材料のアブレーションを抑制するための,いわば
事前措置である.これらに対して,増大したプラズマを加速中に一部取り除いて,プラズ
マをコンパクトにするという,いわば事後措置がプラズマ粒子数制御の考え方である.
分散電極型レールガン(DiscreteElectrodeRailgun;DERG)[82,83],プラズマ排出孔
(Spouthole)[84,85,86]などがある.DERGは多数の櫛状分岐電極を有し,これら分岐電極
の端面が絶縁体加速管の内面に露出して分散電極面を形成する.この構造利点は,各分岐
電極をフューズ等のスイッチング素子を介してレールと接続することよりプラズマ電流の
空間分布を制御できることである.増大するプラズマの後端への電流を強制的に遮断する
ので,それ以降のプラズマは主部に追いつくことがでぎず,結局プラズマ主部から取り除
かれることになる.
プラズマ排出孔は,加速管上の数箇所に直径数mmの孔を設けるだけの非常に単純な構成
である.プラズマが孔の上を通過する際に一部が穴の中に取り込まれるので通過後のプラ
ズマがコンパクトになる.従来型レールガンで必ず発生するプラズマ電機子の分裂が排出
孔を設けることによって消滅する場合があるという報告がある.プラズマ排出孔に関して
は,6.3で詳しく述べる.
(3)電磁力の制御
我々の実験を含めて幾つかのレールガンの加速実験を見ると,駆動電流が最大値を過ぎ
て減少し始めて間もなく異常に加速度が低下する現象がみられる[24,73,87,88]・アブレー
ションによってプラズマの質量・体積が増大すると,プラズマを閉じ込める磁気圧力も増
加させなければならない.電流が減少し始めると電磁力は減少するが,そこまでに膨らん
できたプラズマの質量は急には減少しないので,プラズマは急激に膨張し始める.プラズ
マが膨張すると加速管との接触面積が増加するので,粘性抵抗等の抗力が大きくなる.場
合によってはプラズマ内における電流分布に局在化が起こり,電機子電流の分裂の引き金
になる可能性もある.
アイスペレット加速のように加速中の最大加速力が限られている場合には,駆動電流を
矩形化するなど,加速後半での電磁力の減少を防ぐことが望まれる.また,電流の最大値
付近を除いた加速初期と後半のみにバイアス磁場をかけるなど,加速中の電磁力が変化し
ないようにすることが重要である.
7
1
6.2プラズマ衝突法
6.2.1プラズマ衝突法の概念
プラズマ衝突法[45,46]とは,通常飛朔体の背後に密着させて設置するプラズマ源(金属
細線など)を飛朔体後方数cmの位置に離して設置する方法である.ただ単純に飛翻体とプ
ラズマ源を離して設置することからPISP(PlasmalnitiatedSeparatedfromProjectile)
と呼ぶこともある.図6−1に概念を示す.飛朔体なしでプラズマのみをレールガンで加速
すると,僅か数cmの加速距離で10数km/sの速度に達する(A).プラズマ源である0.1mg
程度の銅細線がすべて気化して加速されるとすれば,その運動量は19.m/s以上となる.
このプラズマを飛翻‘体に衝突させるとプラズマから飛翻体への運動量の伝達がおこる(B).
飛測体が非常に軽い場合,たとえば10mg程度であれば,非弾性衝突が起こるとして飛測
体は数10m/sの初速度を得ることになる.(3-4)式に示されるように,加速管への熱負荷
は速度が遅いときほど大きいので,初期の僅かな運動量でも加速管壁への熱負荷は大幅に
軽減される.衝突後はレールガンの通常の動‘作と同じである(C).
6.2.2実験装置および方法
レールガンは図3−6に示される単純型を用いた.ただし,プラズマからの発光が観測で
きるように支持物にはFRPの代わりにアクリルを用いた.従来のようにプラズマ源を飛測
体に密着させたものとPISPを用いた場合について,射出速度,加速管壁(レール)のエロー
ジョン,動作の安定性(再現性),およびプラズマ電機子の振舞(電流密度分布など)などに
ついて比較した.また,プラズマの走行状態を観測するために,ストリークカメラ
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図6−1プラズマ衝突法の概念
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(IMACON790,HadlandPhotonics)を用いた.動・作雰囲気は0.1Torrである.
6.2.3実験結果および考察
(1)プラズマ衝突法におけるプラズマの挙動
図6−2に電流およびB−dotプローブの出力波形を示す.図6−3は同一ショットにおいて
プラズマの走行状態を観測したストリーク写真である.写真の像はプラズマからの発光の
軌跡をしめす.時間軸と平行な黒い筋状の線は,観測窓に設けた計測ポートの影である.
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図6−2動作後のレール表面(断面)
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図6−3プラズマが加速されて飛測体に衝突する様子(ストリーク写真)
ペレット質量:30mg
プラズマ源(銅細線)質量:QO8mg
ペレットープラズマ源(銅細線)の間隔:15cm
7
3
プラズマ源である銅細線の設置位置をx=0として,飛翻体を加速方向の前方15cmに置
いてある・銅細線は気化する前に移動しないように加速管に固定されている.図6−2およ
び6-3における時間軸のr=0は電流が流れ始める時刻を示す.
電流が流れ始めてから銅細線が気化した後,銅蒸気の絶縁破壊によって放電チャネルが
形成される.ここまでに約51ルsを要する.放電チャネル形成後電磁力によってプラズマが
加速され,!=241ルsで飛翻体に衝突していることがわかる.衝突時の速度は約10km/sで
ある.プラズマは加速初期から非常に高速で移動するので,この区間における加速管の損
傷はほとんど見られない.衝突後,一時的に速度が0近くに低下するので,加速管のアブ
レーションが激しく起こって発光強度が大きくなる.同時に,発光が前後に膨張し始めて
おりプラズマの体積が増大する様子が認められる.細線設置位置において発光が残ってい
るのは,気化した細線の一部が加速されずに取り残されていることを示す.
(2)飛翻体加速実験
図6−4および6−5はそれぞれ細線を飛翻体に密着させた場合および離しておいた場合
(PISP適用)の典型的な動作である.加速距離は40cmである.B-dotプローブはx=0
を飛翻体の初期位置として,0,10,20,30,35cmの位置に設置されている.“*'’は飛
翻体が銃口から射出される時刻をあらわす.
細線を密着させた場合,プラズマはほとんど加速されず,途中で停滞する場合が多い.
図6−4においてプラズマ電流の通過がx=10,20cmの位置で認められるが,飛朔体は既
に8501ルsで射出されており,飛翻体と電流の動きとが全く異なっている.このショットに
おける飛翻体の射出速度は820m/sであった.
図6−6に図6−4に示すショットにおけるプラズマ発光のフレーミング写真を示す.フレ
ーム間隔は200us,露光時間は201』sである.支持物であるアクリルを通して観測してい
るので,散乱・反射等によって少し広がって見える.発光強度の強い部分はほとんど動か
ずに停滞しており,発光の先端のみが銃口へと伸びている.発光部分はプラズマの供給源
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図6-5細線を離して設置した場合の動作
図6-4細線を密着させた場合の動作
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図6−6細線を密着して設置した場合の動作
プラズマからの発光のフレーミング写真
フレーム間隔200us,露光時間20肌S
として機能しているように見える.飛朔体の射出時刻を考えると,発光の先端に飛邦体が
あると考えられる.この場合の飛朔体の加速は電磁力による通常のレールガンとは異なり,
むしろ高温プラズマの圧力を利用する電熱ガン[55,56,57]の動作に近い.飛朔体が銃口か
ら出ると加速管内の圧力がさがるので,停滞していたプラズマ(発光強度の強い部分)が右
方向へ動き出す.
図6−5ではプラズマ源の銅細線は邦=−5cmの位置にある.この場合,僅かにプラズマ
電流の分裂が見られるものの,主部は電磁力によって加速されていることがわかる.プラ
ズマ電流の銃口への到達時刻と飛測・体の銃口脱出時刻はほぼ一致する.射出速度は1120
m/sであった.
図6−7(a)および(b)はそれぞれ細線を飛翻体に密着させた場合およびPISPを用いた場合
のショット後のx=0付近におけるレール表層の断面写真である.細線を密着させた場合
は,レール内部から噴き出すようにな損・傷を受けており,相当なエネルギーが注入された
と考えられる.加速管表面から噴出する蒸気の量が電磁力によって前方へ押しやられる量
と同程度かそれ以上であれば,その場で放電を維持すると考えることができる.一旦ある
場所へのエネルギー供給量が放電維持条件を満たすような閑値を超えると,放電は停滞す
る.一方,PISPを用いた場合は放電が停滞することはなく,相当に加速初期における壁へ
の熱負荷が低減されていると考えられる.
プラズマ衝突法をもっと効果的に利用するためには,衝突するまでの時間にプラズマの
運動量を増加して飛朔体に与える速度を大きくする必要がある.プラズマ源に電流が流れ
始める時刻をz=0,衝突する時刻を/cとして衝突する直前のプラズマの運動量は,(3-2)
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(a)細線を飛湖体に密着させた場合
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となる.図6−3における衝突時の値を用いてた=241ルs,vp=10km/sとすると,衝突時の
プラズマの質量は0.02mgとなる.この‘値はプラズマ源として設置した銅細線の約25%で
あり,残りは取り残されていることになる.非弾性衝突であるとすると,30mgの飛翻体は
約7m/sの速度を得ることになる.このように,実際には細線溶断によってプラズマを生
成する場合,細線が気化する際に膨張する,あるいは不均一性のためにプラズマの一部だ
けが加速されるといったことが起こるため,さほど運動量を大きくできない.この方法を
用いて加速初期のアブレーションを低減するには限界がある.
63孔による粒子の排出
6.3.1プラズマ排出孔の概念
プラズマ排出孔(SpoutHole)[84,85,86]とは,加速管から外部へ通じるように設けた孔
のことである.この孔の上をプラズマが通過するとき,プラズマ中の粒子が一部この孔か
ら排出されることを期待し,プラズマの質量増加を抑制するのがねらいである.図6−8に
概念を示す.排出孔のアイデアはすでに他の研究グループによって実証されており,排出
7
6
孔によってプラズマの膨張・分裂を遅れさせたという報告がある[84]、この排出孔を適当
な形状で適所に設置することによって,長距離加速でも電機子分裂のない安定した加速を
実現できる可能性がある.このためには,排出孔を通過することによって,プラズマの構
造にどのような変化が起きるのかということを調べておく必要がある.
本節では,排出孔を設置した場合と設置しない場合においてプラズマ電機子中の密度分
、布を調べ,密度分布の‘情報から排出孔がプラズマにどのように作用するのかについて;検討
した.密度分布計測には,一回のショットで加速方向の分布を一度に獲得できることから,
He-Neレーザを用いたMach-Zehnder干渉法[91,92]で行った[90]
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図6-8プラズマ排出孔の概念
(A)通過前,(B)通過中,プラズマの一部が孔から出る
(c)通過後,プラズマはコンパクトになる.
6.3.2実験装置および方法
図6−9に計測部分のレールガン装置の│断面図を示す.測定に使用したレールガンは50cm
の永久磁石を用いた磁場バイアスレールガン(ARGPM50)である.本実験では,プラズマの挙
動の再現性が良い加速初期の5∼10cmの部分の挙動を調べるため,図6−1Oのように銃口
から10cmの部分を使用した.飛朔体は銃口から8cmの‘位置に置かれ,排出孔は飛邦体か
ら4.5cmに設けられている.排出孔の直径および長さは3mm。および40mmである.干渉
計測用の窓は,絶縁壁を一部切り取り5mm×5mmの石英ガラスを取り付けることによって
レーザ光が加速管を貫通するようにした.また,B-dotプローブを干渉計測用の窓と同じ位
置に設け,電流分布の変化を観察した.動作雰囲気は0.1Torr,飛測体の質量は25mgと
した.レーザ干渉計測についての詳細は付録1.1.2に譲る.
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図6−9レールガンの断面および測定系
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図6−10レーザ干渉計測におけるレールガンの詳細設定
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実験結果および考察
(1)レールガンの動特性
図6−11および6-12に排出孔を設置しない場合および設置した場合のレールガンの典型
的な加速動作を示す.通常,排出孔を設けない場合はx=20∼30cm付近でプラズマの分
裂が見られる.#1660ではすでにX=25cmの位置のプローブに電流の分裂が見られる.一
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図6−11排出孔なしの場合の加速動作
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図6−12排出孔を設けた場合の加速動作
排出孔位置:x=10cm
方,x=10cmの位置に排出孔を設けた場合は,25cm以降も分裂が生じていないことがわ
かる.排出孔を通過して数10cmは効果が持続することがわかる.
(2)レーザ干渉法を用いたプラズマの電子密度分布測定
図6−13および6−14に排出孔を設置しない場合および設置した場合の動作を示す.それ
ぞれ上から順に電流,B-dotプローブ信号,PINフォトダイオードによって検出される干渉
信号である.プラズマが観測窓を通過するとき,電流は約16kAである.B-dotプローブ信
号の2901ルsに見られる負の信号は,プラズマが銃口に到達して電流が減少し始めることに
よって生じる.干渉信号の218ILS付近に見られる負のスパイクは飛朔体がレーザ光を遮断
したことを示す.vlとv2で囲まれる範囲は計測システムの機械的な振動で生じる振幅で,
レーザ光の強度に変化がなければ干渉信号はこの範囲内で振動する.しかしながら,プラ
ズマからの発光や,レーザ光がプラズマを通過する際に減衰,偏光等が生じるため,この
範囲を上下に超えることがある.v3は測定光を遮断した場合のPINフォトダイオードの出
力であり,信号の大きさがv3以下になることはない.
図6−11において干渉信号は501ルs付近からゆっくりと上下に振れ始める.飛翻体の通過
直前までに干渉信号はl周期分以上振動しており,直前で電子密度は約9×l0l7cm-3に達す
ることがわかる.しかしながら,B-dotプローブの信号から電流飛翻体前方に洩れたプラズ
マにはほとんど電流が流れていないと思われる.飛翻体の通過直後にみられる大きな膨ら
みは,プラズマからの発光が重畳されたものである.図6-11(b)は干渉信号波形内の斜線部
7
9
の拡大図である.
238ILS付近から密度の変化に起因する細かい振動が見られる.いったん255us付近で
振動は停止するが,再び振動がはじまりその周期は徐々に短くなる.その後284usで再び
振動の周期が長くなる.この振動はプラズマ内における密度変化を暗示している.密度分
布のピーク付近では密度勾配が小さいので干渉信号はゆっくり振動し,その両側では急な
密度勾配によって速く振動するはずである.したがって,255Ms付近が電子密度のピーク
であると考えることができる.しかしながら,プラズマ前部では振動が観測されなかった.
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(a)上から順に電流,B−dOtプローーブ,干渉信号(a)上から順に電流,B−dotプローブ,干渉信号
1
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(b)干渉信号の拡大
(b)干渉信号の拡大
(図(a)におけるハッチング部分)
(図(a)におけるハッチング部分)
図6-14排出孔を設けた場合の動作
図6−13排出孔がない場合の動作
8
0
Z
8
0
これは,プラズマ密度が大きいためレーザ光が透過できなくなったことと,電子密度の急
勾配に起因するレーザ光の偏光によって干渉パターンがおびただしく乱されたことが原因
であると考えられる.
一方,排出孔を設けた場合は,飛朔体が排出孔を通過するまではほとんど排出孔がない
場合とほとんど同様である.この場合にも飛翻体の前方にプラズマが洩れているが,飛翻
体直前における電子密度は5×1017cm-3程度とわずかに小さい.しかし,干渉信号の拡大波
形波は明らかに異なる.この場合,細かい振動は見られず,ゆっくりとした振動が253ILS
から始まっている.#1807ではプラズマ後部において密度減少に伴う細かい振動が見られな
いが,これはレーザ光の偏光によると考えられる.プラズマの後部において相当に大きな
密度勾配があると考えられる.干渉信号を電子密度分布に変換すると図6−15の様になる.
無損失理論速度はr=2201Asにおいて約700m/sであることを利用して,プラズマ主部(飛
翻体から電子密度が急激に立ち上がる部分まで)の長さを求めると,#1804および#1807そ
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︵甲Eopb↑×︶①崖
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図6-15排出孔の有無による電子密度分布の比較
8
1
れぞれの場合で4.3cm,22cmとなる.排出孔を通過したばかりのプラズマは非常にコン
パクトであることがわかる.
このように,排出孔はプラズマの瞥肉を削ぎ落とす役割がある.長距離で加速する場合
は複数個の排出孔を適所に設けることによって,電流分裂のないスムーズな加速を実現で
きる可能性がある.
6.4加速管構成材料の耐熱化
6.4.1セラミック壁を用いた飛翻体加速実験
(1)実験装置および方法
耐熱材料の熱負荷試験では,入力がわかっている熱源に材料を晒して損傷を評価するの
であるが,レールガンにおいては加速管と熱源であるプラズマの相互作用は動的であり,
静的な評価はあまり意味がない.しかもレールガンのプラズマは高エネルギー密度であり
通常では実現しがたい条件である.したがって,実際に加速管に組み込んで飛朔体の加速
実験をするのがよい.
レールガンは永久磁石を用いた磁場バイアスレールガンを用いた.セラミック(SiO2:45%,
MgO:17%,Al203:16%)をポリカーボネートと同型に加工して加速管に組み込んである.
絶縁壁にポリカーボネートを用いた場合とセラミックを用いた場合について,射出速度,
加速管壁(レール)のエロージョン,およびプラズマ電機子の振舞などについて比較した.
レール材は何れの場合も銅を用いた.動作雰囲気は0.1Torrである.飛翻体は25mgのバ
ルサ材である.電源はPFN型の4段で,電流は20±1kA,パルス幅は500usである.加
速管に使用した材料の特性は付録2に示す.
(3)実験結果
図6−16および6−17に加速管の絶縁壁にそれぞれポリカーボネート(PC)およびセラミッ
ク(CR)を使用した場合の典型的なプラズマの振舞を示す.また,図6-18にそれぞれのB-dot
プローブ信号にデコンボリュージョン演算を施して求めた電流分布幅の時間推移を示す.2
本の線はそれぞれプラズマ電機子の先端および後端を表す.2本の線の垂直方向の差はそれ
ぞれの時刻におけるプラズマ電機子の長さとなる.x=5cmまでの加速初期では,電流分
布幅はほとんど両者で差がないが,10cm以降,時間にして3001ルs以降ではセラミックを
用いた場合に幅が狭くなっていることがわかる.300us以降は平均25%の短縮率である.
しかしながら,プラズマ先端の変位には顕著な差が見られなかった.加速管との接触面積
が異なるので粘性抵抗の影響が加速動作に現れると考えられるが,この比較ではその差が
確認できない.
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図6-16カーボネート壁の場合の加速動作図6-17セラミック壁の場合の加速動作
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図6-18プラズマ電流分布の時間推移
(3)SEMによるレール表面の観察一
ポリカーボネートおよびセラミックを用いたそれぞれの場合について熱負荷を評価する
ために,ショット後の加速管表面を電子走査顕微鏡(ScanningElectronMicroscopy:SEM)
を用いて撮影した.物質それぞれに熱的損傷の様子が異なるので,共通に用いたレール材
(銅)の陰極表面を比較した.図6−19に#1778および#1768においてレール上で異なる場所
(x=0,5,10mm)の表面写真を示す.左がポリカーボネート壁の場合,右がセラミック壁
の場合である.x=0において明らかに異なるのは,セラミック壁の場合,直径∼50umの
孔が多く見られることである.このような孔は,粘性の大きな流体が沸騰している場合に
8
3
よく見られる.レール内部まで熱が侵入し,内部から蒸発が起こっていると考えられる.5
mmにおいても同様の孔が見られ,広い範囲にわたって熱負荷が大きいいことがわかる.一
方,ポリカーボネート壁の場合は,損傷しているものの孔は全く見られない.以上述べた
ように〆セラミック等の熱的に優れた特性を持つ材料を絶縁壁に用いた場合,加速管への
熱負荷が大きくなるということが強く示唆される結果となった.熱負荷に関する考察は次
節で行う.
x二0mm
階』
灘謹
露旦軍亜
x=5mm
x=10mm
ポリカーボネート壁の場合セラミック壁の場合
図6−19動作後のレール表面
84
6.4.2熱負荷に関する考察
(1)方法
5章にて述べた熱負荷解析コードを用いて,銅とセラミック組み合わせで加速管を構成
した場合について計算した.同じ電流波形を用いて銅とポリカーボネートを組み合わせた
場合についても計算し,両者を比較した.
絶縁壁にセラミックを用いた場合,アブレーションによる気化粒子数の計算は(5-15)式
に代えて
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に用いたセラミックは複数の成分から成るが,簡単のために気化粒子を全てSiO2のみであ
るとみなしてその後の過程を考える.この計算で用いたセラミックに関する物理定数を付
録2に示す.
(2)シミュレーション結果
絶縁壁材料としてポリカーボネートおよびセラミックを用いた場合のプラズマ電機子の
代表的なパラメータの時間推移を調べた。その結果を図6-20に示す。左列上から順に電流,
圧力,温度,右列上からプラズマ質量,飛翻体(プラズマ先端)速度,及びプラズマの位置
の時間変化を表す。一連のグラフにおいて実線がポリカーボネートを用いた場合,点線が
セラミックを用いた場合の解析結果である。
電流波形は同じである.プラズマ源である細線に電流が流れ始めると,細線は溶融を経
て気化する際に瞬時圧力を発生する。気化したガスが後方に拡散して体積が増加すると圧
力は一旦小さくなり,その後電磁力と釣り合いながら電流の増加に伴って大きくなる。
温度変化はプラズマに混入する粒子数に依存する.ポリカーボネートと銅の組み合わせ
では比較的低温でポリカーボネート表面の気化が始まるので,プラズマ内に混入する粒子
は水素および炭素などの軽い粒子である.一方,セラミックと銅の組み合わせではセラミ
ックよりもむしろ銅レールからの粒子供給が多い.質量変化に注目すると,ポリカーボネ
ートとセラミックでは質量増加がさほど変わらないように見えるが,含有粒子の相対比が
異なるので全粒子数に換算するとその差は大きい.速度は主にプラズマ質量に僅かに依存
するだけなので,速度変化を見ても両者の違いはほとんど見られない.しかしながら,プ
ラズマの長さに注目すると,セラミックを用いることによって長さは1/2以下に抑えられ
ていることがわかる.セラミックを用いた場合,2001ルs以降はプラズマ質量に変化がみら
れない.つまり加速管における気化がゼロになったことを示す.
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図6−20レールガンプラズマの動特性
左列上から順に電流,プラズマ圧力,プラズマ温度,
右列上から順にプラズマ質量,速度,プラズマの位置
実線は絶縁壁にポリカーボネートを用いた場合,点線はセラミックを用いた場合
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図6-22プラズマへの注入電力
図6−21プラズマからの輯射
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ポリカーボネートを用いた場合
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ポリカーボネートを用いた場合セラミックを用いた場合
(b)レール(銅)側
図6−23プラズマ通過直後の加速管壁内温度分布
8
7
図6−21および6-22にそれぞれプラズマ単位面積当たりから放出される頼射エネルギー
およびプラズマへ供給される電力を示す.轄射は温度の4乗に比例するので,セラミック
壁を用いた場合の方が温度が高い分頼射も大きい.レールガンプラズマは電離度が0.5%程
度と非常に小さく導電率に対する中性粒子の影響が大きい.プラズマの抵抗は温度よりも
むしろ断面積の影響を受けるので,セラミック壁を用いた場合が大きくなる.したがって,
セラミック壁を用いた方が注入電力も大きくなる.
絶縁壁にポリカーボネートを用いた場合およびセラミックを用いた場合についての絶縁
壁およびレール内部の温度分布を図6-23に示す.縦軸が加速管上の位置,横軸は加速管表
面からの深さを示す.ポリカーボネート壁の場合は,飛翻体を設置したx=0周辺の熱負
荷が極端に大きいことがわかる.絶縁壁側では,熱の侵入速度が遅く熱が表面に蓄積され
るので,表面の損傷が激しい.ポリカーボネート壁は全区間で沸点に達しており,プラズ
マに粒子を供給する.一方,レール側ではx=0周辺で沸点に達しているが,それ以外で
は融点にも達しておらず,エロージョンが極めて局所的である.
一方,絶縁壁をセラミックにした場合,レール表面上の広範囲にわたって融点を超えて
おり,実験結果と傾向が同じである.
6.5まとめ
本章では,レールガンにおけるプラズマ制御の意義とその方針を述べた.本論文ではプ
ラズマを制御するための方法を幾つか提案または実証しているが,ここではそのうち3つ
の方法について述べた.
まず,プラズマ衝突法なる単純レールガンの加速初期の振舞を改善する方法について述
べた.プラズマの運動量は大きくないので軽量ペレットを加速する際にのみ有効である.
理論的にはプラズマ源の質量を増加することによって衝突時のプラズマの運動量を増加す
ることが可能である.しかしながら,実際には細線溶断によってプラズマを生成する場合,
細線が気化する際に膨張する,あるいは不均一性のためにプラズマの一部だけが加速され
るといったことが起こるため,さほど運動量を大きくできない.この方法を用いて加速初
期のアブレーションを低減するには限界がある.
次に,プラズマ排出孔の効果について述べた.レーザ干渉法によって加速方向の電子密
度分布を測定した結果,排出孔を通過したプラズマは非常にコンパクトであることがわか
った.プラズマの一部の粒子が孔から排出されていることによると考えられる.加速管に孔
を設けるだけの単純なアイデアであるが非常に有効であることが示された.この孔を加速
管に沿って適所に設けることができれば,電流分裂のないスムーズな加速が実現できる可
能性があることを示した.
また,加速管構成材料に関する実験および考察を行った.セラミックを加工して加速管
に絶縁壁として組み込み,飛翻体加速実験を行った.セラミックを用いた場合,ポリカー
8
8
ボネート絶縁壁の場合に比べてプラズマがコンパクトになった.また,耐熱材を用いるこ
とによって損傷が減少すると思われたが,逆にレール面上では損傷が激しくなった.5章で
示した熱解析コードを用いて絶縁壁にポリカーボネートおよびセラミックを用いた場合そ
れぞれについてシミュレーションを行い,材料の特性がプラズマの挙動に与える影響を調
べた.セラミック壁の場合,予想通り加速管から噴出する粒子数が減り,実験結果同様に
プラズマがコンパクトになった.しかしながら,増加粒子数が少ないためにプラズマの温
度が上昇し,加速管全体の熱負荷が増加することがわかった.
加速管材料が熱的に優れた特性を有しても,プラズマの温度が上昇して熱負荷が増加す
るので,加速管の損傷を完全に回避することは不可能であると思われる.ただし,耐熱材
の使用することによって壁から出てくる粒子数が減少するので,プラズマの制御という観
点からは非常に効果がある.
8
9
フ章レールガン動作の駆動電流波形依存性
レールガンの駆動電源についてはコンデンサバンク,単極発電機[21,47],コンパルセー
タ[48]等が利用されており,駆動電流の最大値はレールガンの寸法および飛翻体の質量に
応じて数kA∼数MAと非常に幅広い.電流波形に関しても電源の構成によって様々である.
しかしながら,レールガン動作の電流波形への依存性を系統的に調べた研究はほとんどな
い.電流波形とレールガンプラズマの挙動の関係を明らかにすることができれば,電源回
路によってプラズマの挙動を積極的に制御することも可能である.
本章では,まず駆動電流の立ち上がりにおける電流上昇率を変化して,立ち上がりがレ
ールガンの動作に及ぼす影響を調べた。駆動電流波形の立ち上がり部分を変化するために,
銅細線の溶断を利用した開放スイッチ[50]を用いた。また,5章で示したシミュレーション
コードと,減衰電流の模擬波形を用いて加速後半における電流の減衰率とプラズマの挙動
について考察した.
7.1レールガン動作の電流立ち上がり依存性[94]
7.1.1実験装置および方法
図7−1に実験装置の概略を示す。装置は大きく分けてレールガン本体と駆動電源との2
つの部分からなる。レールガンは永久磁石磁場バイアスレールガン(ARGPM50)を用いた.飛
翻体は質量25mgの木製である。雰囲気圧力は0.lTorr以下とした。
初期プラズマ源となる銅細線はレール間を短絡し,かつ飛朔体に接するように配置した。
細線の直径は0.04mmである。プラズマの一部は銃尾方向に拡散して銃尾領域においてレ
ール間を短絡する可能性があるので,これを防ぐために細線を設置した位置から銃尾側に4
cm離れたところに絶縁物で栓をした。なお,飛翻体の初速度は0である。
電源部は、コンデンサとインダクタの組み合わせによるパルス成形網と,レールガンに
供給する電流の立ち上がりを変化するための開放スイッチ(OS)からなる。開放スイッチで
は,銅細線の液化・気化時の抵抗率の変化を利用して電流を遮断し,設定する銅細線の本
数および開放スイッチとレールガンの間に設けたスパークギャップスイッチ(SG)の間隙に
よって電流の立ち上がりを調節する[50]・図7-2にギャップ間隙を0.5mm一定として,銅
細線の本数を0,7,15とした場合の電流波形を示す。銅細線の直径は0.15mmである。こ
こでは最大値の50%値ム0に達するまでの時間r5oを用いて,ISO/'50を電流の立ち上がりと定
義する。銅細線の本数を0,7,15とした場合の電流の立ち上がりは,それぞれ(2.1±0.1)×108,
(5.7±0.4)×108,(7.5±0.5)×108A/sである。測定器は3章の実験で用いた機器と同じなの
で,記述を省略する.
9
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ピックアップコイル
電源
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図7−2開放スイッチの銅細線本数に対する電流立ち上りの変化
7.
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陽
実験結果
(1)レールガンの動特性
図7−3に開放スイッチを用いない場合のレールガンの典型的な動作を示す(#1521).上段
は電流波形,中段はレールガンに沿って配置した6個のB-dotプローブからの信号である。
下段はプラズマ先端の速度変化である。B-dotプローブは,飛邦体の初期位置をx=0とし
て工=0,5,15,25,35,40cmの位置にそれぞれ配置される。各信号にみられる凸部は
プローブの櫛位置をプラズマが通過したことを示唆する。図中の記号"+"は,各コイルの設置
位置におけるプラズマ電機子の先端の通過時刻を表す。中段図中の点線は(3-13)式を時間
積分することによって得られる,損失を無視した理想的な飛邦体の軌道である。下段図の
9
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図7-4開放スイッチを用いた場合のレール
ガンの典型的な動作
図7−3開放スイッチなしの場合のレールガ
ンの典型的な動作
上から順に,電流,プラズマ位置,プ
上から順に,電流,プラズマ位置,プ
ラズマ移動速度
ラズマ移動速度
実線は,中段の"+"をスプライン処理して結んだ線を時間微分したものであり,点線は無損
失理論速度である.ただしB-dotプローブの設置位置がx=40cmまでなので,速度の計
算もプラズマ先端の位置が40cmとなる時刻で終了した.
B-dotプローブの波形から,プラズマはx=25cmまで分裂なしにスムーズに加速してい
ることがわかる.しかしながらx=35cmに設置したコイルに注目すると,電流の一部が
電機子の後方に漏れており,電流の分裂がx=25cmを通過した時刻以降に発生したこと
が示唆される;このときの電機子主部の電流は全電流の約80%となった.速度変化をみると
プラズマの先端がx=25cmを通過する!=380usで緩かになっており,これらの関係か
ら加速度の減少が主にプラズマ電機子の分裂に起因することが示唆される.
一般的には,プラズマ電機子の質量増加,およびプラズマ電機子と加速管壁との粘性抵
抗がレールガンの動作を制限する主な原因であると考えられている.これらの効果は飛翻
体速度,および間接的にプラズマ電機子に注入される電力に依存するので,5km/s以上の
速度をねらった大電流駆動のレールガンでは動作を制限する重要な要因になる.一方,本
実験で用いたような小規模のレールガンでは,質量増加,および粘性抵抗は小さく,その
影響は速度変化には顕著に現れない.#1521における射出速度及び射出時刻はそれぞれ2.1
9
2
km/s,4801ルsとなった.
図7−4に開放スイッチを‘使用した場合の典型的なレールガンの動作を示す(#1523).電
流の立ち上がりら0"50は7.1×108A/sであり,開放スイッチを使用しない場合の約3.5.倍
である.射出速度及び射出時刻はそれぞれ2.0km/s,4351ルsであった.このショットでは
x=25cmの‘位置で既に電流の分裂が発生している。速度をみると300↓しs付近から急激に
加速度が減少しており,加速度の減少が電流分布の分裂に起因するという考えに矛盾しな
い.一旦プラズマ電機子が分裂し始めると,主部と分離した部分の間隔は拡がる一方で,
逆に狭まるような振舞はみられない.電’機子電流は2つに分流するが,その間には高圧の
中性ガスが挟まった状態で移動していると考えられる。分裂電流も間接的に飛翻体の加速
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(a)動作後のレール表面の様子
上から順に,#1521開放スイッチなし,150/t5。=2.1×108 A/s
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加速方向一一一鰻
(b)ショット#1523におけるx=0付近の顕微鏡写真
図7−5動作後のレール表面の様子
9
3
に寄与するはずであるが,分裂によって加速度が減少することを考えると,その寄与は小
さい。
図7-5(a)はそれぞれ#1521,#1523のショット後のレール表面写真を示す。飛翻体はJc=
0の位置に通かれ,右向きに加速される。エロージョンは飛朔体初期位置前後1.5cm以内
で著しい。全体的に黒いのは,絶縁物の成分の炭素がレール表面に付着したためである。
電流の立ち上がりの違いによってエロージョンの様子が異なり,立ち上がりが大きい場合
にエロージョンが大きいことがわかる。特に,飛翻体の後方(x〈0)におけるエロージョン
の違いが顕著である。図7-5(b)のx=0付近の顕微鏡写真をみると,溶融したものが液状
のまま前方へ流れ出している様子がわかる。
(2)レールガン動作の再現性
次に,加速動作の再現性と電流立ち上がりとの関連を調べた。開放スイッチの銅細線本
数を変えながら47回のショットを行った。図7-6に前節で定義した電流の立ち上がりん0/r50
を横軸として,全ショットの速度をプロットした。ここで,速度は図7-3,7-4で求めたプ
ラズマ先端のx=40cmにおける速度を(3-13)式で与えられる無損失理論速度を用いて正
規化したものである。電流の大きさ及び電流波形の相違によって飛翻体が加速中に受ける
力積が異なるので,速度の正規化が必要である。図中のショットは駆動電流の最大値が20
±1kAの範囲に含まれるもののみを選んだ。白抜き印はx=5cmまでに電流の分裂がみら
れたショット,黒塗り印はx=5cm以降に分裂が起こったショットであることを示す。開
放スイッチを用いた場合及び用いない場合いずれの場合も最大速度は0.95程度である。
ショットの再現性に関しては電流の立ち上がりが速いほど劣化する傾向があることがわ
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図7−6射出速度の電流立ち上りへの依存性
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図7−7加速時間の電流立ち上りの関係
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図7-8電流分裂開始位置と電流立ち上がりの関係
かる・ また, 立ち上がりが速いほどx=5cmまでに電流分布が分裂する割合が大きい。開
放スイッチを用いない場合は,x=5cmまでに分裂が起こらなければ最終速度の分散は10%
用いない場合は,x=5cmまでに分裂が起こらなければ最終速度の分散は10%
・一方,開放スイッチを用いた場合は,加速初期に分裂がない場合でも速度
以内に収まる。一方,開放スイッチを用いた場合は,加速初期に分裂がない場合でも速度
のばらつきが大きい。図7−7に電流の立ち上がりに対する射出所要時間を示す。白抜き,
黒塗り印の意味は図7−6で示したものと同じである。最短の加速所要時間については立ち
上がりが大きいほど短いが,再現性については射出速度と同様の傾向である。
図7−8に電流分布が分裂し始める位置と電流立ち上がりの関係を示す。図7−6のショッ
トの中でx=5cmまでに分裂が起こっていないものだけを選んだ。エラーバーの上端及び
9
5
下端は,それぞれ電流の分裂が最初に確認されるB-dotプローブの位置及びその銃尾側に
隣り合うB-dotプローブの位置に一致する。明らかに,立ち上がりが速いほど電流が分裂
するまでの加速距離が短くなる傾向がある。
以上のことから,射出速度のばらつきはプラズマ電機子電流の分裂とおおいに関係があ
ることがわかる。電流の立ち上がりが速いほど早い時刻に電流が分裂するので,速度のば
らつきが大きくなる。動作の再現性と電流の立ち上がりの関係について次節で理論的に考
察する。
7.1.3考察
(1)レールガンの動特性
5章で示した熱解析コードおよび前節の実験結果に示した立ち上がりが異なる2つの電
流波形を用いて,それぞれの電流に対するプラズマ電機子の代表的なパラメータの時間推
移をシミュレートした。その結果を図7−11に示す。左列上から順に電流,圧力,温度,右
列上からプラズマ質量,飛翻体(プラズマ先端)速度,及びプラズマの位置の時間変化を表
す。一連のグラフにおいて実線が開放スイッチを用いない場合(#1521),点線が開放スイッ
チを用いて電流の立ち上がりを約3倍速くした場合(#1523)の結果を示す。
圧力変化の立ち上り付近に見られるパルスは,プラズマ源である細線が気化する際に発
生する瞬時圧力である。この瞬時圧力によって飛翻体に与えられる速度は#1521,#1523の
場合でそれぞれ5,12m/sである。気化したガスが後方に拡散して体積が増加すると圧力
は一旦小さくなり,その後電磁力と釣り合いながら電流の増加に伴って大きくなる。気化
したガスが絶縁破壊を起こす時刻における電流値及びガスの体積が電流の立ち上がりによ
って異なるので,絶縁破壊の直後にプラズマに注入される電力密度が異なる。#1523では,
#1521の場合に比べて体積で1/2倍,電流値で約3倍となるので,同じ電圧で絶縁破壊が起
きると仮定すると,絶縁破壊直後の電力密度は約6倍大きいことになる。温度の相違はこ
の電力密度の相違に起因する。
レールガンのようにプラズマと壁が強く相互作用する場合,平衡状態におけるプラズマ
温度は壁の材料の種類でほぼ決まり,電流値にはさほど依存しない.しかしながら,エネ
ルギーの注入速度が速い場合には,加熱によるプラズマの温度上昇に対して壁からの粒子
供給が時間的に追従できないので,過度的に温度が上昇する.これは電流の立ち上りが速
い場合に相当し,加速初期における温度変化に顕著にあらわれている.プラズマの移動速
度が大きくなると壁への熱負荷が低下して相互作用が弱くなるので,プラズマの温度は電
流値に依存するようになる.
速度に関しては,電流の立ち上がりによって圧力曲線が異なるので速度の増加傾向も異
なることがわかる。立ち上がりが速い場合,加速初期におけるプラズマ電機子の質量増加
が大きいので,逆に飛翻体の最終到達速度は小さくなるはずであるが,その差は顕著では
9
6
ない。位置曲線をみると,絶縁破壊後のプラズマは加速方向前方に飛翻体があるため後方
へと拡がるが,電流が増加してプラズマ圧力よりローレンツカが大きくなると前方へ押し
戻される。その後,プラズマの圧力とローレンツカが釣り合いを保ちながら系は加速され
る
。
(2)レールのエロージョン
#1521および#1523についての絶縁壁およびレール内部の温度分布を図7−10に示す.縦軸
が加速管上の位置,横軸は加速管表面からの深さを示す.各点においてプラズマ通過後の
熱伝導は計算していないので,図は各点におけるプラズマ通過直後の温度分布ということ
になる.図の温度軸は0から各材料の沸点までをスケーリングしてある.また,レール側
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図7-9射出速度の電流立ち上りへの依存性
左列上から順に,電流(#1521,#1523),プラズマ圧力,プラズマ温度,
右列上から順に,プラズマ質量,速度,プラズマの位置
9
7
と絶縁壁側では深さのスケールが異なることに注意してほしい.絶縁壁側のx=.O付近に
みられる真っ黒い部分は,アブレーションによって蒸発し計算上設定したセルがまるごと
消失したことを示す.レール側では黒い部分が全く見られないが,これは蒸発しなかった
ということではなく,蒸発量がセル−つ分に達していないためである.
図7-5(a)と計算結果を比較するためにはレール側の温度分布を参照しなければならない
が,レール側では計算結果にほとんど差がみられない.図中に示した実線は融点に達した
位置を結んだものである.線の形に若干の相違があるものの融点線の深さはほとんど違い
がない.これはレール内部における熱伝導速度に対してレールの厚さが200皿と薄すぎる
ため,300K一定としたレール背面の影響を受けて(冷却されて)低く抑えられていることに
起因する.プラズマからのエネルギー束が幅射のみであると考えた場合,レールと絶縁壁
へ同じエネルギーが入射されるので加速管の熱負荷は熱特性に劣る絶縁壁に反映される.
したがって,図7-5(a)と絶縁壁における計算結果を比較する.
x〈0の領域では図7-5(a)に示したショット後のレール表面の様子とほぼ同様に立ち上り
が速いショットでアブレーションが激しく,熱負荷が大きいことがわかる.損傷した領域
もそれぞれのショットで計算結果のセルが消失した部分とほぼ一致する.一方,x>0の領
域では立ち上りが速い方が熱負荷が小さくなり,図7-5(a)とは傾向が逆転している.これ
は,図7-5(b)のように溶融した物質が液状のまま前方へ流出するような流体力学的な現象
によって,前方における凹凸が入射された熱量以上に大きくみえると考えられる.
(3)再現性についての考察
前節の結果から,レールガン動作の再現性に関する議論を電機子電流分裂の発生確率に
帰着して考察する。アブレーションによって発生した壁材料の蒸気の一部はプラズマへ取
り込まれて移動するが,残りは加速初期位置に残留するので放電路が形成されやすい状態
になる。電流の立ち上がりが急峻な場合のように加速初期のアブレーションが激しく起こ
ると,初期位置周辺の残留粒子も増加するので,初期から分流する確率が高くなると考え
られる。
また,加速開始位置で図7−7に示されるようにプラズマ電機子分裂の開始位置が電流の立
ち上がりに依存する理由として,次のようなことが考えられる。図7-11は加速初期におけ
るプラズマ電機子質量の時間変化である。横軸は加速方向の位置の対数表示である。立ち
上がりが異なると図7-11のように同じ距離だけ進んだ時点でのプラズマの質量が異なる。
プラズマの質量が大きいほど,例えばレーリー・テーラーなどの不安定性が発生する確率
が高くなるので,ある質量になったとき不安定性が発生するとすれば,立ち上がりが速い
ほど短い加速距離で不安定になり,電機子の分裂に至りやすいといえる。
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図7−11プラズマ電機子の質量と加速距離の関係
絶縁破壊直後の放電領域の大きさによってプラズマへ注入される電力密度が異なるので,
それに伴って加速初期のプラズマの振舞が変わる。本論文ではプラズマ源として銅細線を
利用したが,例えばプラズマ源として飛翻体背後に外からプラズマを入射するなど,初期
プラズマの生成方法を工夫することによって加速初期のアブレーションを低減することが
可能であると考えられる。
7.2電流の減衰とプラズマの振舞
多くのレールガン加速実験例を見ると,駆動電流がピークを過ぎて減少し始めると,電
流値から予測されるものとは違った異常な加速度の低下を共通して見ることができる
[24,73,87,88]、ここでは,電流の減衰とこれに伴うプラズマの挙動との関係を定性的に理
解することを目的とする.
7.2.1方法
ある時刻から一定の割合で変化するような模擬電流を生成し,この模擬電流でレールガ
ンを駆動した場合のプラズマの振舞を熱解析コードによってシミュレートする.設定は永
久磁石磁場バイアスレールガン(ARGPM50)を用いて行った実験(3.2参照)と同じである.
加速管壁材料として,レールおよび絶縁壁にそれぞれ銅およびポリカーボネートの組み合
わせとした.
7.2.2解析結果および考察
模擬電流波形とともに計算結果を図7-12に示す.左列上から順に,電流,圧力,プラズ
マ質量,右列上から,飛翻体(プラズマ先端)速度,プラズマの変位,およびプラズマの長
100
さの時間変化を示す.模擬電流には3種類の波形を準備した.それぞれ20kAまで増加し
た後,2×107A/sの電流変化率でさらに増加(A),一定(B),2×107A/sの電流変化率で減
衰(C)する.プラズマ圧力は,電磁力とほぼ平衡を保つので,電流の2乗と同様の挙動を示
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.
プラズマの質量に注目すると,後半の電流値が異なるにもかかわらずさほど違いが見ら
れない.質量増加のほとんどはプラズマ速度が小さい2001ルs以前に生じる.電流値が最大
になる時刻には,速度はすでに400m/s程度に達しており,アブレーシヨンはあまり深刻
ではない.一方プラズマの長さを見ると,1501ルsで電流の変化率が変化する同時にプラズ
マの長さが増加していることがわかる.電流増加時は,電流の増加に伴ってアブレーショ
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図7−12射出速度の電流立ち上りへの依存性
左列上から順に,電流,プラズマ圧力,プラズマ質量,
右列上から順に,プラズマ移動速度,変位,プラズマの長さ
101
400500
ンが促進されプラズマの質童が増大する.しかし,電磁力も大きいのである程度の拡がり
で収まる.いったん電流が減少し始めると電磁力は減少するが,そこまでに増加してきた
プラズマの質量は急には減少しないので,プラズマ圧力が電磁力に勝ってプラズマは急激
に膨張し始める.
実験では,電流の減衰に伴い異常に加速度が低下する現象が見られた.しかしながら,
図12の速度変化を見る限り,電流の減衰に伴う異常な速度の飽和は顕著に認められない.
プラズマの移動速度を太線で示した無損失理論速度と比較すると,電流が減衰する場合(C)
と無損失速度との差は特別大きくはないようである.加速度の異常減少に関しては,今回
用いた熱解析コードでは予測できない電磁流体的な非線型の作用がはたらいていると考え
られる.プラズマが膨張すると加速管との接触面積が増加するので,粘性抵抗等の抗力が
大きくなるばかりではなく,長さ方向に不均一性が生じる可能性が大きくなるので,場合
によってはプラズマ内における電流分布に局在化が起こり,電機子電流の分裂の引き金に
なることもあり得る.
7.3まとめ
本章ではレールガン動作の駆動電流波形への依存性を調べた.電流波形を大きく分けて
電流の立ち上り部分と,一旦ピークに達した後の立ち下がりとに分けて述べた.
まず,電流の立ち上がりについては,50cm永久磁石磁場印加式レールガンに供給する
電流の立ち上がりを細線溶断開放スイッチを用いて変化し,レールガンの挙動を調べた。
その結果,立ち上がりが急峻なほど,(a)加速管内壁の損傷が局所的に大きくなる,(b)動
作の再現性が非常に悪く,加速初期から二次的な放電が形成される場合が多い,(c)プラズ
マ電機子が分裂するまでの時間が短い,等のことがわかった.熱解析コードを用いたシミ
ュレーションによって(a)∼(c)の実験結果は次のように解釈される。電流の立ち上がりが
急峻なほど加速初期においてプラズマに注入される電力密度が大きく,これに起因するア
ブレーションの増大とプラズマ電機子の質量増加が分裂を助長する。
次に,加速後半における電流の減衰とプラズマの挙動との関係を調べるために,一定の
変化率で減衰するような模擬電流波形を作成し,熱解析コードに取り込んでシミュレーシ
ョンを行った.その結果,実験で見られるように電流の減衰とともにプラズマが急激に膨
張し始めるような挙動が見られた.しかしながら,用いた熱解析コードでは実験にみられる
異常な加速度の低下は確認できなかった.電磁流体的な非線型の作用がはたらいていると
考えられる.アイスペレット加速のように加速中の最大加速力が限られている場合には,
例えば電流の最大値付近を除いた加速初期と後半のみにバイアス磁場をかけて,電流の減
衰による電磁力の低下を補償するなど,加速中の電磁力が変化しないように工夫すること
が重要である.
102
8章総括
本論文では,核融合プラズマへのペレット入射を目的とする超高速ペレット入射装置として
のレールガンの基礎特性について述べた.また,レールガンによる5km/sを超える射出速度
の可能性を検討した.
2章では核融合開発におけるペレット入射の位置づけおよびペレット入射技術の現状を述べ
た.現在の主力である軽ガス銃方式では,加速圧力を時間的に制御することができないことが
ネックとなって5km/sを超える速度が望めないので,新しい加速原理に基づくペレット射出
装置の開発が望まれている.レールガンはその最有力候補である.
レールガンでは,プラズマを加速媒体に用いる.そのプラズマからのエネルギー束によって
加速管の表面が溶融・蒸発する.また,蒸発粒子がプラズマの膨張を助長し,二次電流の発生
を促す.この二次電流の発生がプラズマの加速度を急激に低下させる.電磁力を損なわずにプ
ラズマへの注入エネルギーを低減するための方法として外部から磁場を印加する方法がある.
本論文ではレールガンのバイアス用磁場源として強力な永久磁石を用いることを提案し,50cm
の比較的小規模な装置(ARGPM50)を製作してその諸特性を調べた.比較のために同じサイズの
加速管を持つ従来型の単純レールガン(SRG50)を製作した.条件として,両機で発生する電磁
力が理論上等しくなるように電源を調節した.ARGPM50を用いた場合SRG50の80%の電流で同
じ電磁力を発生する.3章ではARGPM50およびSRG50を用いて飛翻体の加速実験を行った.飛
翻体として固体水素同位体ペレットの質量を模擬するために,25mgのバルサ材を用いた.実
験の結果,永久磁石による磁場バイアスによって加速管の損傷が大幅に低減されることがわか
った.これと同時に,動作の再現性が大幅に向上し,電磁力を等しくしているにもかかわらず
射出速度が増加した.これらは巨視的にみるとプラズマへの注入電力の低減が動作の大幅な向
上をもたらしていると考えてよい
プラズマ内部における状態変化を調べるために電流密度分布および電子密度分布の測定を
行った.電流分布の時間変化を見ると,SRG50,ARGPM50いずれの場合もプラズマ中の電流分布
は加速されながら徐々に膨張して最終的には分裂して二次電流が生じる.しかしながらSRG50
の方が加速初期から分布幅が広く,分裂するまでの時間が短い.この電流の分裂が加速度の低
下をもたらすので,早い時期に電流の分裂が起こると射出速度が小さくなる.また,二次電流
の発生は加速力を不確定にするので再現性が悪くなると考えられる.Hα線のStark拡がりを利
用してプラズマの電子密度を測定した結果,ARGPM50ではプラズマの中心部で1×10'9cm 3程度
であることがわかった.SRG50では電子密度そのものは測定できなかったが,ARGPM50のプラ
ズマとはかなり異なる傾向を示した.
次に,ARGPM50を延長して150cmの砲身を持つARGPM150を製作し,動作試験を行った.若
103
干の電流の漏れがあるもののスムーズな加速動作が行われた.射出速度は理論よりも10%程度
小さく3.1km/sを得た.速度が低下する原因は,加速後半において駆動電流の減衰とともに
加速度が異常に低下することによる.同時に主電流の分布幅が増大する.異なる電流波形を出
力する3種類の電源を用いた一連の飛翻体加速実験から,加速後半におけるプラズマの挙動と
電流の減衰率とに何らかの関係があることを示唆する結果が得られた.
ARGPM50とSRG50では理論上の電磁力は等しいがプラズマ内部における磁場構造は異なる.
4章ではこの磁場構造の相違がプラズマの振舞に及ぼす影響を調べるために,レールガンプラ
ズマの1次元の電磁流体モデルを構築し,数値解析を行った.バイアス磁場がない場合,磁場
構造によってプラズマ前方で加速度が負になる領域が存在する.このため中心部の圧力が高ま
り,プラズマを前後に押し広げようとする.そのためプラズマの長さが伸びる.バイアス磁場
を印加すると,プラズマ前部にも電磁力が作用し,これが圧力分布を均すような役割をする.
このためプラズマ内圧が下がり,プラズマ電機子がコンパクトになることがわかった。バイア
ス磁場の有無によってプラズマ電機子内の圧力分布が変わることは、非常に興味深い現象であ
る
。
5章ではレールガンプラズマを含めたレールガンの熱負荷解析コードについて述べた.提案
したモデルではアブレーション係数を用いる簡易的な方法とは異なり,加速管内部における熱
伝導を考慮した.材料を変更するたびに異なる式を用いるので煩雑ではあるが,材料の熱特性
に応じた解析ができる.また,内部での温度分布を計算するので,蒸発する粒子ばかりではな
く液化する部分の範囲が特定できるので,加速管の損傷の状態を詳細に把握できる.この熱解
析コードを用いてSRG50およびARGPM50を用いた場合の加速管における熱負荷解析を行った.
飛翻体の初期位置周辺における熱負荷については大方実験結果を説明でき,温度分布等を把握
することができた.しかしながら,プラズマからのエネルギー束として,幅射のみを考えてい
るので,陽陰極における損傷の相違,および高速で移動する部分の損傷を模擬できない.
6章では,レールガンにおけるプラズマ制御の意義とその方針を述べた.本研究ではプラズ
マを制御するための方法を幾つか提案または検証しているが,ここではそのうちの3つの方法
について述べる.まず,プラズマ衝突法なる単純レールガンの加速初期の振舞を改善する方法
について述べた.プラズマの運動鼠は大きくないので軽量ペレットを加速する際にのみ有効で
ある.理論的には,プラズマ源の質堂を増加することによって衝突時のプラズマの運動量を増
加することが可能である.しかしながら,実際には細線溶断によってプラズマを生成する場合,
細線が気化する際に膨張する,あるいは不均一性のためにプラズマの一部だけが加速されると
いったことが起こるため,さほど運動堂を大きくできない.この方法を用いて加速初期のアブ
レーションを低減するには限界があると考えられる.
次に,プラズマ排出孔の効果について述べた.レーザ干渉法によって加速方向の電子密度分
104
布を測定した結果,排出孔を通過したプラズマは非常にコンパクトであることがわかった.加
速管に孔を設けるだけの単純なアイデアであるが非常に有効であることが示された.この孔を
加速管に沿って適所に設けることができれば,電流分裂のないスムーズな加速が実現できる可
能性 が あ る こ と を 示 し た .
また,加速管構成材料に関する実験および考察を行った.セラミックを加工して加速管に絶
縁壁として組み込み,飛翻体加速実験を行った.セラミックを用いた場合,ポリカーボネート
絶縁壁の場合に比べてプラズマがコンパクトになった.しかしながら,レール面上では損傷が
激しくなるという結果になった.5章で示した熱解析コードを用いて絶縁壁にポリカーボネー
トおよびセラミックを用いた場合それぞれについてシミュレーションを行い,材料の特性がプ
ラズマの挙動に与える影響を調べた.セラミック壁の場合,予想通り加速管から噴出する粒子
数が減り,実験結果同様にプラズマがコンパクトになった.しかしながら,増加粒子数が少な
いためにプラズマの温度が上昇し,加速管全体の熱負荷が増加することがわかった.加速管材
料が熱的に優れた特性を有しても,プラズマの温度が上昇して熱負荷が増加するので,加速管
の損傷を完全に回避することは不可能であると思われる.ただし,耐熱材の使用することによ
って壁から出てくる粒子数が減少するので,プラズマの制御という観点からは非常に効果があ
ることがわかった.
7章ではレールガン動作の駆動電流波形への依存性を調べた.電流波形を大きく分けて電流
の立ち上り部分と,一旦ピークに達した後の立ち下がりとに分けて述べた.まず,電流の立ち
上がりについて,細線溶断開放スイッチを用いてARGPM50に供給する電流の立ち上がりを変化
し,異なる電流上昇率によって駆動されるレールガンの動作を調べた。その結果,立ち上がり
が急峻なほど,加速管内壁の損傷が局所的に大きくなる,動作の再現性が悪く加速初期から二
次的な放電が形成される場合が多い,プラズマ電機子が分裂するまでの時間が短い,等のこと
がわかった.熱解析コードを用いて解析すると,電流の立ち上がりが急峻なほど加速初期にお
いてプラズマに注入される電力密度が大きく,これに起因するアブレーシヨンの増大とプラズ
マ電機子の質量増加が分裂を助長することがわかった.
次に,電流の減衰とプラズマの挙動との関係を定性的に理解するために,一定の変化率で減
衰するような模擬電流波形を作成し,熱解析コードに取り込んでシミュレーションを行った.
その結果,実験で見られるように電流の減衰とともにプラズマが急激に膨張し始めるような挙
動が見られた.電流上昇時はう電流の増加に伴ってアブレーシヨンが促進されプラズマの質量
が増大するが,電磁力も電流の増加に伴って大きくなるのである程度の拡がりで収まる.いっ
たん電流が減少し始めると電磁力は減少するが,そこまでに増加してきたプラズマの質量は急
には減少しないので,プラズマは急激に膨張し始める.ここで用いた熱解析コードでは実験に
見られる異常な加速度の低下を確認できなかった.電磁流体的な非線型の作用がはたらいてい
105
ると考えられる.プラズマが膨張すると加速管との接触面積が増加するので,粘性抵抗等の抗
力が大きくなるばかりではなく,長さ方向に不均一性が生じる可能性が大きくなるので,場合
によってはプラズマ内における電流分布に局在化が起こり,電機子電流の分裂の引き金になる
こともあり得る.アイスペレット加速のように加速中の最大加速力が限られている場合には,
駆動電流を矩形化するなど,加速後半での電磁力の減少を防ぐことが望まれる.また,電流の
最大値付近を除いた加速初期と後半のみにバイアス磁場をかけるなど,加速中の電磁力が変化
しないように工夫することが重要である.
本研究では,レールガン単体での動作特性について述べ,アブレーションを低減して動作を
改善するための方法を示した.速度に関しては,プラズマと電磁力の制御によって5km/s程度
までは達成できる可能性があることを示した.本論文では,ペレット射出装置としてのもう一
つの要件である「繰り返し動作」の可能性についてはあまり触れなかった。今のところ,レー
ルガン単体で動作した場合,加速管はショット毎に損傷して繰り返して動作できるような状態
ではない.レールガンをペレット射出装置として用いるためには,加速管の損傷を皆無にする
必要があり,そのために加速管材料の慎重な選択に加えて,加速初期の損傷の低減に非常に効
果的な飛翻体予備加速の技術が不可欠である.
106
参考文献
[
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例
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[23]漂岡昭:「超高圧で新物質をつくる」,pp、39-45,1988
[24]矢守章,古川卓,柳沢正久,河島信樹:「科学実験用レールガンの開発」,電気学会論
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[25]薄葉州,他:「大電流溶発アークジェツトを用いた高速溶射の基礎実験」,電気学会論
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[27]薄葉州,他,「レールガン,超高速への挑戦」,電気学会技術報告,vol、563,pp、49-66,1993
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[33]K、Kim,andDJ・Zhang:“Investigationofthebehaviorofaplasma-arcarmatureinsidea
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[34]K、Kim,,.』・Zhang,TKing,R、Haywood,W・Manns,andF・Venneri:"ResultsfiFomrecent
hydrogenpelletaccelerationstudieswitha2-mrailgun,”jEEEI3r〃6ウノ"1pos加加o〃F”o〃
助gj"eer腕9,vol、2,pp、1319-1322,1989
[35]K・Kim,J、Zhang,T,L、King,WCManns,andR、GHaywood:',Developmentofafilseless
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[42]S,Katsuki,H,Akiyama,N・EguchimSueda,M・Soejima,S・Maeda,andK.N、Sato:
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[43]勝木淳,江口倫史,秋山秀典,前田定男:「熊本大学におけるレールガンの開発状況」,
電気学会一般産業研究会資料,GID-94-l2,1994
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Pe“〃ec"o",JAERI,Naka,Japan,no、23,1993
[45]S、Katsuki,H、Akiyama,N・Eguchi,S、Maeda,andKN、Sato:"Newmethodstoreducethe
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[47]R、J・Hayes,R、CZowarka,Jr.:“ExperimentalresultsfiPomCEM-UT'ssingleshot9MJ
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[48]』.D、Herbst,K・GCook,etal.:“9MJrangeguncompulsatorstatordesignandfabrication,,,
vol、29,no、1,pp、986-991,1993
[49]J・Wey3andH・Peter:“MeasurementatthelSL-EMAlrailgunfacilityb,,IEEETrans・Magn.,
vol、27,no、1,pp,172-177,1991
[50]N、Shimomura,H・Akiyama:“Compactpulsedpowergenerator(ASO-I)byaninductive
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no、6,pp・’220-1227,1991
[51]S、K・Combs,S,L・Milora,CR、Foust,GL、Schmidt,T,RMcBride:ⅧOperationofa
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[59]茂山和基,薮忠司:「電磁加速システムの数値シミュレーション」,電気学会一般産業
研究会資料,GID-91-5,1991
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[60],.A・Fiske,J、A・CiesaEH.A,Wehrli,H・Riemersma,E,F、DochertyandC・WPipich,“The
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[64]C、GHoman,CECummings,andC、M・Fower:“Superconductingaugmentedrailgu、
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[66]山本学,村山精一:プラズマの分光計測,日本分光学会測定法シリーズ,学会出版セ
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[68]AvonEngel箸,山本賢三監訳:プラズマエ学の基礎,オーム社,1985
[69]S・Katsuki,H,Akiyama,N、Eguchi,TSueda,M・Soejima,S・Maeda,andK.N・Sato:
“Behaviorsofplasmaarmatureintheaugmentedrailgunusingpermanentmagnet,,,IEEE
Trans・Magn.,vol、31,no、1,pp・'83-188,1995
[70]S,Katsuki,T・Sueda,H・Akiyama,andK.N、Sato:"Opticalmeasurementsofrailgunplasma
armatureinanextemalmagneticfield,"Pmc.q/、IOthjEEEP雄edPowerCoが,Albuquerque,
NM,USA,vol,2,pp、1267-1272,1995
[71]S・Katsuki,T,Sueda,Y:Koga,andH、Akiyama:“Spectroscopicmeasurementofrailgun
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[74]生田一成,勝木淳:「電磁加速技術」,核融合学会誌,voL69,no、3,pp、225-231,1993
[75]勝木淳,副島通邦,末田毅,秋山秀典,前田定男:「レールガンプラズマの’次元電磁
流体シミュレーション,バイアス磁場の効果」,熊本大学工学部研究報告,vol、44,no、1,
1995
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armaturerailgun,,,「高密度エネルギー密度プラズマの物理とその応用」研究会資料,
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[82]薄葉州,角館洋三,吉田正典,青木勝敏,山脇浩,藤原修三,宮本昌弘:「分散電極レー
ルガンにおけるプラズマ電機子の挙動」,電気学会一般産業研究会資料,GID−91−8,
1991
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25,no.’,pp、412−415,1989
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gw7zposi”o"Eノec”mag7z“たLα”cル歴cル"oノo80′,P1519,1992
[85]S,Ikeda,TSC,K・Koide,M,Kanno,K、Moyama:“SmallborerailgunactivitiesatKSL,”
IEEETrans・Magn.,vol、31,no.’,pp、309-313,1995
[
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[87]上松和夫,三橋俊嗣,加藤資博:「レール型電磁加速装置の研究」,電気学会一般産業
研究会資料,GID-91-9,1991
[88]RK、Ray:"Arcrestrikeintherailaccelerato喝',IEEETrans、Magn.,vol、25,no.l,pp、485‐
488,1991
[89]古閑康裕,勝木淳,末田毅,秋山秀典:「レールガンにおけるプラズマの制御,小孔に
よる粒子排出」,電気学会高電圧研究会資料,HVL97-9,1997
[90]S・Katsuki,S、Narikiyo,TSueda,andHAkiyama:“Modificationofrailgunplasma
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MD,USA,1997(inprint)
[91]例えば,大津敏彦,小保方富夫:レーザ計測,裳華房,1994
[92]M、C、BakenB.D・Barrett,andW;CNunnally:“Experimentalobservationsofplasma
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[94]勝木淳,末田毅,秋山秀典:「レールガンの駆動電流立ち上り依存性」,電気学会論文
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[97]田幸敏治:「スペクトル線の形と巾の測定」,分光研究,vol、9,no、2,pp、65-72,1960
[98]南茂夫:科学計測のための波形データ処理,CQ出版社,1986
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Sci.,vol・’7,no,3,pp、487-500.1989
[102]理科年表,国立天文台編,丸善,1995
(
上
)
,
山崎和共訳:無機化学
[103]サンダーソン著,藤原鎮男監訳,野村昭之助,関根達也,山
崎荊
麿川書店,1969
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付録1レールガンにおけるプラズマ計測技術
1.1電子密度測定
1.1.1分光計測(STARK広がりを利用する方法)
(1)原理
プラズマ中の発光原子は,周囲のイオンや電子による微視的電場の影響を受けてスペク
トル線に拡がりを生じる,いわゆるシュタルク(Stark)効果である.シュタルク効果の原
因となるプラズマ中の微視的空間は荷電粒子数密度に依存するので,スペクトル線のシュ
タルク拡がりを測定すれば,イオン密度や電子密度を求めることができる.一般的に,ス
ペクトルの拡がりは、ローレンツ型分布となるシュタルク効果とガウス型分布であるドッ
プラー効果とが重畳された形(フォークト関数)として表れる.レールガンプラズマのよう
な,高密度(10M∼lOl9cm-3)かつ比較的低温(105K以下)の場合はドップラー効果の影響を
無視できる.レールガンプラズマを扱う本論文では,スペクトル拡がりの要因としてシュ
タルク効果が支配的であると考え,その他の効果を無視する.
電子密度とスペクトル線の半値幅には次のような関係式が広く用いられている.
…川惜「
(
a
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l
)
ここで,△入l/2はスペクトルの半値幅、αl/2は電子密度と温度の関数であり,この値はGriem
等によって水素、ヘリウム等の種々の温度・密度のプラズマについて計算されている
[95,96]・計算された水素プラズマの温度・密度範囲は個々のスペクトル線によって少し
異なるが、10,000∼40,000K、lOl4∼1018cm-3である。ヘリウムについてはlOl9cm−3まで
計算されているが、温度の適用範囲が高く、30,000K以上でないと適用できない。
(2)波形の修正
〃・が5×lOl8cm-3を超えるような高密度のプラズマでは、プラズマからの発光が自身に
よって吸収されるために光ケーブルから取り込まれるスペクトル線の形にひずみが生じて
くる[66,67].しかも、強度が大きい中心部において吸収が大きいので、見かけ上スペク
トルがさらに広がったように見える。さらに密度が大きくなると徐々に周辺部が吸収され
るようになり、1021cm 3を超えるようになるとほとんど連続スペクトルとなる[97].
A
、
1
中心部のみが吸収されるようなプラズマに対しては次のローレンツ型関数をスペクトル
にフィッテイングすることによって半値幅を修正する.
A
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ここで,I(入)は光強度,入・はラインの中心波長である.また,4,8およびCは定数で,
特にBはプロファイルの半値幅である.この定数A,BおよびCを調節する.ただし,波
長中心部の情報をあえて捨て,スペクトル周辺部に重みを付けるために次のような誤差関
数を用いた.
伽
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z
(
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入
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)
‘
(
入
Ⅲ
g
(
入
,
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(
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)
ただし,g(入,)は重み関数で,状況によって適当に選ぶ.例えば,レールガンにおいて加速
管の絶縁壁にポリカーボネートを用いるとHα線の短波長側に酸素からの発光線みられる.
この酸素の影響を除去するためにHα線の長波長側のみをデータとして取り扱う.この場合
のg(入i)は
‘い」-{噸剛州
となる.
(3)実波形への適用
図al−lおよびal−2に比較的低電子密度の場合および中心部が歪んでいる場合の分光波形
とフイッテイング曲線を示す.図a2−1ではスペクトルの裾野からピークまでローレンツ
型に一致しており,自己吸収はほとんど見られない.一方,図al−2では裾野に合わせた
ローレンツ型関数にくらべて中心部が低く,自己吸収が認められる.また,いずれの場合
においてもHαの短波長側に酸素の発光が見られ,フイッテイング曲線から外れる.
使用した分光器の測定波長範囲が33,mなので,フイッテイングによって求められる密
度は高々1.5×1019cm-3程度である.
A
2
︵の一一匡.。。﹄、︶︷一一の匡の↑匡一
2000
1800
八‘'…
1600
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1400
1200
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ノ、
.〆浄:jメ’、地
壁
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図
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図al−1低電子密度の場合のHα線プロファイル
半値幅5.5,m,電子密度1.4×10'8cm-3
︵の一一匡.。。﹄、︶二一一のこの一匡
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1500
1400
1300
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1100
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図al−2高電子密度の場合のHa線プロファイル
半値幅24,m,電子密度1.2×1019cnr3
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(
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)
2
レーザ干渉計測[91,92,93]
原理
図
図al−3に干渉法の原理図を示す.レーザ光はビームスプリッタ等によって2本のビー
ムに分岐され,一方はプラズマ中を,一方は何も通らず参照光とする.その後2本のレー
ザビームは再びハーフミラー等の面上で合成され,干渉する.
レーザ光がプラズマを通過するとプラズマ中での屈折現象により、レーザの位相に変化
A-3
プラズマ
霞蕊謹一
測定光
暦万
亀
霧
短波長光
合成・干渉
一 陸
参照光
図al−3干渉法
が生じる.プラズマの屈折率は次式で表される
/
①
"
c
2
,
百
/
〃
e
N
2
ノv,=1
−
−
=
1
−
−
∼
1-L/坐$
2
2
,
k
〃
c
/
0〕0ノI〃c/
{
(
a
l
5
)
ここで,の“は電子プラズマ周波数、〃cは波長入oの入射光に対するカットオフ密度であり,
それぞれ次式で表される.
C
冗
2
の
へ人
(
a
l
6
)
“|恥
〃
心
11MV
〔
D
p
c
(
a
l
7
)
4
冗
2
c
2
m
e
8
0
e
2
入
0
2
(
a
l
8
)
(al-5)式から明らかなように,屈折率はプラズマの電子密度によって決まるので、プラ
ズマ通過後の‘位相差を測定すれば、電子密度を求めることができる.He-Neレーザ(632.8,m)
に対するカットオフ密度は2.8×1021cm−3となるので,これ以下の電子密度であれば原理
的には測定可能である.
レーザ光がプラズマ中を通過するとき屈折によって生じる位相変化量△(しは次式のように
なる.
A-4
帥
詩
(
‘
J
# “)。称 "e〃
(
a
l
9
)
Lはレーザ光の光路に沿ったがプラズマの長さであり,帥は光路に沿った電子密度の積分
値に比例する.レーザ光に沿ったプラズマの長さが既知で,かつ電子密度が均一であるこ
とがわかっている場合は,(al-9)式から電子密度を求めることができる.He-Neレーザを
用い,プラズマの長さが5mm(レールガンの加速管断面幅)であるとすれば,位相変化量帥
を調べることによって電子密度を簡単に次式を用いて求めることができる.
"g=2.24×lOl7帥[cm-3]
(
a
l
1
0
)
干渉パターンを適当に調整した後,レンズによって1点に集光すると密度変化は光の強弱
となってあらわれる.この光強度を線形感度の光検出器を用いて測定することによって帥
を電気信号として観測する.電子密度がlOl8cm 3を超えるプラズマでは△・の時間変化が,
振動波形となって表れるので,振動の個数を数えることによって(a'-10)式は次のように
簡単になる.
"
ご
=
7
.
0
2
×
l
O
l
7
j
V
[
c
m
3
]
(
a
l
l
l
)
ここで,/Vは振動の個数である.
He-NeレーザのようなDCレーザを用いると,レーザ光をプラズマが勝手に横切って移動
するので,結果的に加速方向にスキャンしたことになり,一度のショットで密度分布を得
ることができる.
(2)偏光(Deflection)
レーザ光に対して垂直な方向に屈折率の勾配がある場合について考察する.考察を進め
るに当たって,プラズマの長さに対して偏光角は十分に小さいとする.波長入。のレーザ光
の進行方向をz軸にとり,x方向に屈折率,すなわち電子密度の勾配をもつプラズマに入
射する.プラズマ内を通るレーザ光のある位置xにおける波数A)rは
l
膿
斗
筈
「
一
等
'
1
器
)
A-5
(
.
.
・
の
o
〉
>
①
p
笛
)
(
a
l
l
2
)
となる.△x離れた場所のx+△xにおける波数k脈+“との差AAは
M=ノtx−kx+“
⑩:‘は)−の:‘(…入。e2("e“)-".…)入Oe。
4
冗
c
2
m
g
E
。
2
C
の
o
△
"
e
4
冗
C
2
"
e
e
o
(
a
l
1
3
)
となる.したがって,レーザ光がプラズマ内を距離Zだけ進んだ時,屈折率の勾配によっ
て生じる波面の傾き8は次のようになる.
剛一半一
入
o
e
2
ノ
1A"e
4
冗
c
2
m
e
E
。k
x
+
△
x
/
Z
A
x
−
−
(
a
l
l
4
)
ここで,△ArくAとする.光は波面に垂直に進むので,波面の傾きeは偏光角となる.
それでは,レールガンプラズマの具体的なパラメータを代入してみよう.
c=3.00×108m/s
e=1.60×l0−l9C
e
o
=
8
.
8
5
×
1
0'
2
F
/
m
m
e
=
9
.
1
1
×
l
O
3
l
k
g
入
o
=
6
3
3
×
1
0
−
9
m
ノー5.0×10-3m
〃e−lO25m−3
。。帯-2,川"仙
繊
帳
一
馬
Ⅳ
Ⅷ
。
"
仙
x
恥一c
k
=9.95×106rad/、
これらの計算結果より,
.
.
、
t
a
n
8
=
8
.
8
8
×
1
03
'
坐
A
x
(
a
l
l
5
)
A-6
を得る.例えば,密度勾配が2×10'9cm 3/cmであるとすれば偏光角eは2,radとなる.ビ
ームを合成するハーフミラーがプラズマから250mm離れているとすれば,ミラー面上で0.4
mmだけ像が移動することになるので,干渉状態が変化する可能性が高い.
(3)装置構成
図al−4はマッハ・ツェンダー(Mach-Zehnder)型干渉計測の装置配置である.干渉計測
には他にマイケルソン(Michelson)型がある[89]、この方式はプラズマ中を2回通過する
ので,感度が2倍よいが,プラズマが高密度で,レーザの透過率が悪い場合にはMach-Zehnder
型の方が都合がよい.
He-Neレーザ(15,W,●0.8mm)から出たビームは、ビームスプリッターによって2方向
に分岐され、一方はレールガンの加速管の中を,他方は大気中を通した後,再びハーフミ
ラー面上で合成させる.合成されたビームは波長632.8,mの帯域通過フィルター(半値幅:
10,m,透過/反射=l/3)を通して石英光ファイバーへ集光し,PINフォトダイオード
(HAMAMATSU,S5973)によって干渉信号を検出する。加速管の観測部分には石英ガラスをは
め込んで光を透過させるようにした.
レールガンのような高密度のプラズマ中では入射光の反射,散乱,回折,吸収等により
透過率が減少する.Cwレーザの中でも比較的パワーが大きいものを用いる.また,光学系
でも最初にレーザ光を分岐する際に,測定ビームの強度が大きくなるようにビームスプリ
ツタの透過/反射比を選ぶなど工夫が必要である.
H弓毒---認耐。
PINp
window
fiber
FL
ローーーマノ'2
図al-4Mach-Zehnder干渉法の光学系配置図
A-7
●
︵。。。、︸一毎こつ一⑩のロ◎一ロヱーユ
1
#1792
0.8
0.6
0.4
02
0
101520253035404550
Time(ms)
図al−5機械的振動による干渉信号の揺動
図al−5は典型的な干渉信号である.干渉計測システムは機械的なノイズに非常に敏感
であり,常時図al−5のような揺動を示す.しかし,機械的揺動の時間スケールは、sオー
ダーなのでレールガンの密度計測にはほとんど影響がないと考えてよい.
(4)電子密度分布測定例
図al−6にレールガンプラズマの測定例を示す.使用したレールガンは単純型(SRG)であ
る.上から順にプラズマ電流,銃口に設置したB-dotプローブ信号,干渉信号,干渉信号
から変換した加速方向に関する電子密度の分布である.時間軸は電流が流れ始めてからの
時間を示す.飛朔体の設置位置から銃口までの距離は3cmで銃口から2mm入ったところ
に観測用石英窓を設けてある.レーザ入射位置とB-dotプローブの位置は同じである.
電流は18kA程度流れている.別の計測から,飛翻体はl45ILsに銃口を脱出している
ことがわかっている.干渉信号を見ると,ほぼ同時刻に信号が上昇し始めており,飛翻体
背後のプラズマからの発光によるものと考えられる.干渉信号はプラズマからの発光が重
畳されていることに注意しなければならない.観測位置において飛朔体通過後ゆっくりと
振動し始めl80ILsから細かい振動が見られる.これはプラズマ電機子前部における急激な
密度上昇を示唆する.振動は225us付近まで徐々に緩やかになり,その後再び振動の周期
が短くなるのがわかる.この干渉波形に示される一連の振舞は225ILS付近に電子密度のピ
ークが通過することを示唆する.
また,飛翻体の背後に密着しているであろうと考えられていた電流分布は予想と違って
かなり離れたところにあることがわかる.このことは,B-dotプローブの信号からもわか
A-8
2
.
5
1
0
4
#1792
︵く︶旨g﹄二○
2
1
0
4
1
.
5
1
0
4
1
1
0
4
5000
O
U
・
Z
︷ゴ・面︸一両屋画一②︾◎ロ0m
#1792
0.15
0
.
1
0
.
0
5
-0.05
●
#1792
04
0.3
0.2
0.1
1
1
Oz086420
︷。.。、︶一画匡回一⑩のつ◎一つヱーユ
0
.
5
#1792
一両●E◎西も↑×︸①巨
150
2
0
0
250
T
i
m
e
(
u
s
)
図al−6干渉法によるレールガンプラズマの電子密度測定例
上から順に電流,B-dotプローブ,干渉信号,電子密度の時間変化
A-9
る.飛翻体が通過してからしばらくしてプローブ信号が上昇し始めている.振動の数から
求めた電子密度はピーク付近で約1.1×1019Cm−3である.このように’一回のショットで
加速方向についての電子密度分布をもとめることができた.
1.2B-dotプローブを用いた電流密度分布測定
1.2.1原理
デコンボリュージョン(Deconvolution:逆畳み込み演算)は分光器を通して得られたス
ペクトルの分光器による分解能の劣化を改善するためによく用いられてきた手法である
[98,99]・分光器からでてきたスペクトルは,測定対象物中において物理的な効果によっ
て生じる拡がり以外にスリット,グレーテイングなどの分光器の分解能によっても拡がり
を生じる.分光器による拡がりは,装置特有のものなので装置関数と呼ばれる。分光器を
通してでてきたスペクトル波形yは,対象物からの光のスペクトルxと装置関数hとのコ
ンボリュージョン(Convolution:畳み込み積分)の形となる.
(
a
2
l
6
)
y=h*X
yは測定から,hは分光器の構成から得られる.デコンボリュージョンとは,既知出力波
形yと装置関数hから繰り返し(Iterative)手法を用いて未知関数xを求める作業である.
>
h
−>
入力
伝達関数
y帥
X
八
g原波形
図al−7デコンボリユージョンの概念
レールガンの実験においてプラズマの振舞を観測する手法としてB-dotプローブがよく
用いられる.B-dotプローブからの信号は,上の例の装置関数に相当するB-dotプローブ
の位置関数と,原スペクトルに相当するプラズマ電機子内の電流密度分布とのコンボリュ
ージョンの形となっているので,実験で得られるB-dotプローブの信号からプラズマ電機
子内の電流密度分布を得ることができる[100].
A-10
k回目の計算値
原波形
9
y
k
Xk
ノL*h−, 一
八
一
悪
,
ハ
ノ
修正
▼
ノ
ー
L
k
,
個
星
評
計
算
値
図al−8計算手順
1.2.2アルゴリズム[99]
図al−8に繰り返しによる求解法のアルゴリズムを示す.Ar回目の計算値xkを伝達関数h
で畳み込み積分をして得た波形ykと原波形9kとを比較する.比較から得た情報を基にAr回
目の計算値を修正したものを(A、{・')回目の計算値とし,同様の過程を繰り返す.yⅢとgⅢ
の差の2乗の総和妬F(平均2乗誤差:MeanSquareError)が目標値より小さくなったとこ
ろで計算を終了する.
伽雲津(y剛‘
(
a
l
1
7
)
繰り返し修正法のアルゴリズムで用いる波形修正法は以下に述べるように段階的に改良
●
されてきた.
(1)VanCittert's法
(
a
l
l
8
)
fk.'=鉾十6(g−h*えた)
xk,x齢'はそれぞれAbA、+1回目の入力信号である。6は定数であるが、この値が解の収束
速度を決める。また、初期値xoには原波形gを用いる。
f
o
=
9
この手法の欠点として、原波形に含まれる雑音成分によって非物理的な数値が出力される
ことがある。例えば、結果が負の数になるなど。
A-11
(2)制限付き繰り返し法
(1)の方法において計算途中で非物理的な数値が出力された場合,その値を強制的にゼ
ロにする.
1k+'=pfA+(g-h*成k)
(
a
l
l
9
)
{
:
言
;
制
この方法において一部データを捨てることになることが欠点である.
(3)ReIaxation-BasedIterativeMethod(Jansson,sMethod)
(1)の方法において,収束を決定する要素として定数6の代わりに次式で表される収束
関数r{xk}を用いる.
州
。
‘
(
'
非
‘I
;
-
(
a
l
2
0
)
ただし,6及びcは定数である.
図al−9収束関数
結局x*の漸化式は
(
a
l
2
1
)
f
k
+
'
=
j
t
k
+
r
{
j
k
k
+
'
}
(
g
h
*
j
t
k
)
となる.収束関数r{xk}の6,cを適当に選ぶことによって収束をよくすることができる.
1.2.3B-dotプローブの信号への適用
A-12
胴。器│静-齢
(
a
l
2
3
)
と表されるので,B-dotプローブの信号をデコンボリュージョン演算することによってプ
ラズマ中の加速方向に対する1次元の電流密度分布I(77)を知ることができる.
プラズマ内の全ての電流成分は同じ速度であると仮定したが、プラズマ電機子の長さは
3∼10cmとなっており、電機子の内部で位置によって速度が異なると考えられる.この影
響をできるだけ小さくするために,計算対象とする時間範囲をできる限り小さくした.
1.2.4計算結果および評価
図al−11は収束関数の様々な6値に対するル1【SFの収束を示す.6=5の場合が最も収束
が速いが,収束が不安定である.6=2の場合もわずかに収束に振動がみられる.一方b=0.1,
0.5では収束に時間がかかるので、今後のデコンボリュージョンに関する全ての計算は6=
1で行うことにする.B-dotプローブの原波形に量子化ノイズ等の様々なノイズ成分が含
まれているので,むやみに計算回数を多くしても無意味である.ここではjMSFが0.08以
下になるか,あるいは計算回数が30回を超えると計算を終了するようにした.1回の繰
り返しに要する時間は100MIPSのワークステーション程度で30秒程度である.
計算の対象とした信号は,永久磁石磁場印加型レールガンにおいて飛翻体初期位置から
加速方向に10cm離れた位置に設置したB-dotプローブからのものである.図al-l2(a)に
B-dotプローブの信号波形を示す.図al-l2(b)はB-dotプローブの信号波形をJanssonの
方法を用いてデコンボリュージョンしたものである。この計算に於いて収束関数r{別のb
1
5局や勺やc写
。=0
0.8
0.6
,
'
L
0.4
Q
C
O
e
h
ぅ
U
h
qこむ
0.2
蟻蕊撫濡…燕鍾』
0
繰り返し回数
図al-llデコンボリユージョン演算の収束状況
A-14
名、︶吹哩ぢつ’四
6543210
︵、一一匡.
(
a
)
2186420
名、︶畿填賦購
10
0O
0
0
O0
O0O
︵⑩狸一色.
名⑩︶巾哩ぢっ1画
70
60
50
40
30
20
1
0
a0
。0
■0
■0
●0
●0
●
0
︵の料一匡.
900
(
b
)
C
(
c
)
ヂ
'
実線:原波形
破線:再現波形
2 5 0 3 0 0
時間(us)
図al-12計算回数と計算結果の関係
8
1
0
5
7
1
0
5
6
1
0
5
︵Eへこ︶妾升つ
5
1
0
5
4
1
0
5
3
1
0
5
2
1
0
5
1
1
0
5
0
x(1cm/div.)
図al−13計算回数と計算結果の関係
A-15
350
値は1.0,c値は各回計算波形の最大値の110%とした[97].繰り返し回数は20回である.
図al-12(c)は(b)の波形を逆にコンボリュージョンして得た波形であり,再び(a)を重ねて
ある.両者がほぼ一致していることから,デコンボリュージョンによって求めた波形(b)
がほぼ正当であるといえる.主電流の両側にみられるすそ野の部分は,モデルをたてる際
に用いた仮定に基づく誤差であると考えられる.
電流密度分布は,図al-l2(b)の縦軸を各時刻における移動速度で割り,横軸に各時刻に
おけるプラズマの移動速度を乗じることによって得られる(図al-l3).プラズマは図の左
方向に進み,その前方に飛朔体が存在する.B-dotプローブの信号では,プラズマ電流は
一丸となっているように見えるが,図al-13をみると電流の一部が後方に漏れ出している
様子がわかる.
A-16
付録2本論文で用いた物理定数[102,103,104,105]
表a2-1基礎物理定数
I
A
0
=
1
.
3
8
×
1
0
.
2
3
J
/
K
真空中の透磁率
k=1.38×10−23J/K
ボルツマン定数
カー6.63×10.34JS
ブランク定数
O
S
=
5
.
6
7
×
1
0
.
8
J
/
(
s
m
2
K
4
)
シユテファン・ボルツマン定数
e=1.60xlO・'9C
電子の電荷量
胴
c
=
9
.
1
1
×
1
0
.
3
l
k
g
電子の質壁
表a2−2加速管構成材料に含まれる粒子の定数
〃
H
=
1
.
6
7
×
1
0
.
2
7
k
g
耐
c
=
2
.
0
1
×
l
O
−
2
6
k
g
胴Cu=1.06×10.25kg
m
s
i
o
2
=
3
.
0
6
×
l
O
2
5
k
g
6H=0.53×10.1om
6c=0.77×10・Iom
6cu=1.28×lO-lom
6cHz=2×10.Iom
6o=l×lO-lom
6si=1.17×lO-Iom
6
s
i
o
2
=
2
×
1
0
.
'
0
m
水素原子の質量
炭素原子の質麓
銅原子の質還
SiO2分子の質麓
水素原子の半径
炭素原子の半径
銅原子の半径
CH2分子の半径*
酸素原子の半径*
珪素原子の半径
SiO2分子の半径*
g隆c=3.6eV
C-C間の結合エネルギー
e
リ
ノ
b
H
2
=
4
.
3
e
V
CH2分子の解離エネルギー
e脇=13.8eV
水素原子の電離エネルギー
eリノb=lL3eV
炭素原子の電離エネルギー
eI/bu=7.73eV
銅原子の電離エネルギー
e児io2=5eV
SiO2分子の解離エネルギー*
eリノb=13.62eV
酸素原子の電離エネルギー
e路i=8.15eV
珪素原子の電離エネルギー
*)は推定値
表a2−3加速管構成材料の熱特性
沸点
(
K
)
気化潜熱
(
1
0
‘
J
/
k
g
)
熱伝導率
比熱
(
K
)
融解熱
(
l
O
s
J
/
k
g
)
(W/mK)
(
J
/
k
g
K
)
質量密度
(
1
0
3
k
g
/
m
3
)
1356
2.1
2868
4.9
415
419
8.92
∼500*
0.5
∼lOOO*
0.8
1
.
7
1200
1.23
∼1700*
1
.
5
>4000*
1
.
5
*
1
.
8
756
2
.
5
2
融点
銅
ポリカーボネート
セラミック
*)は推定値
A-17
謝辞
本研究は,熊本大学工学部秋山秀典教授の熱‘延な御指導と多大
な御支援のもと遂行したものであります.同教授に‘趣より感謝い
たします.
本論丈の作成に際して,適切な御助言をいただいた熊本大学工
学部蛙原健治教授,桧山隆教授,巨海玄海教授に深く感謝いた
します.
また,本研究に対して御助言と御討論をいただき,折りに触れ
て御激励下さった熊本エ業大学工学部前田定男教授に深く感謝
いたします.米国テキサステック大学石原修教授,MarionHagler
教授,MagneKristiansen教授,米国ニューメキシコ大学John
Gahl教授,FrankHegeler氏,独国ジーメンス社UlfKatcshinski
氏,熊本大学工学部IgorLisitsyn助教授には研究をまとめるた
びに御教示と御討論を頂きました.また,岩手大学工学部高木
浩一氏,徳島大学エ学部下村直行氏,九州大学大学院福津剛氏,
熊本大学エ学部池上挿顕助教授,山形幸彦助教授には放電,高
電圧,プラズマの専門家としての立場から貴重な御助言を頂きま
した.九州大学大学院佐藤浩之助教授,核融合研究所野田信明
教授,独国ユーリッヒ研究所KarlHFinken教授には本論丈の
背景となる核融合分野の研究に関して多大な御教示を頂きました
こと,諸氏に‘趣より感謝いたします.
実験の遂行に当たっては,熊本大学工学部辻公輝技官に多大な
ご協力をいただきましたこと,‘趣より感謝いたします.熊本大学
大学院博士課程末田毅氏をはじめ,熊本大学工学部電気エネル
ギー応用講座の大学院生,卒業研究生諸君に多くの協力を頂きま
した.
競後に,家族の暖かい支援なくしては本論文の完成を為し得な
かったことを切に感じて感謝の意を表します.
平成10年筆者
布を測定した結果,排出孔を通過したプラズマは非常にコンパクトであることがわかった.加
速管に孔を設けるだけの単純なアイデアであるが非常に有効であることが示された.この孔を
加速管に沿って適所に設けることができれば,電流分裂のないスムーズな加速が実現できる可
能性 が あ る こ と を 示 し た .
また,加速管構成材料に関する実験および考察を行った.セラミックを加工して加速管に絶
縁壁として組み込み,飛翻体加速実験を行った.セラミックを用いた場合,ポリカーボネート
絶縁壁の場合に比べてプラズマがコンパクトになった.しかしながら,レール面上では損傷が
激しくなるという結果になった.5章で示した熱解析コードを用いて絶縁壁にポリカーボネー
トおよびセラミックを用いた場合それぞれについてシミュレーションを行い,材料の特性がプ
ラズマの挙動に与える影響を調べた.セラミック壁の場合,予想通り加速管から噴出する粒子
数が減り,実験結果同様にプラズマがコンパクトになった.しかしながら,増加粒子数が少な
いためにプラズマの温度が上昇し,加速管全体の熱負荷が増加することがわかった.加速管材
料が熱的に優れた特性を有しても,プラズマの温度が上昇して熱負荷が増加するので,加速管
の損傷を完全に回避することは不可能であると思われる.ただし,耐熱材の使用することによ
って壁から出てくる粒子数が減少するので,プラズマの制御という観点からは非常に効果があ
ることがわかった.
7章ではレールガン動作の駆動電流波形への依存性を調べた.電流波形を大きく分けて電流
の立ち上り部分と,一旦ピークに達した後の立ち下がりとに分けて述べた.まず,電流の立ち
上がりについて,細線溶断開放スイッチを用いてARGPM50に供給する電流の立ち上がりを変化
し,異なる電流上昇率によって駆動されるレールガンの動作を調べた。その結果,立ち上がり
が急峻なほど,加速管内壁の損傷が局所的に大きくなる,動作の再現性が悪く加速初期から二
次的な放電が形成される場合が多い,プラズマ電機子が分裂するまでの時間が短い,等のこと
がわかった.熱解析コードを用いて解析すると,電流の立ち上がりが急峻なほど加速初期にお
いてプラズマに注入される電力密度が大きく,これに起因するアブレーシヨンの増大とプラズ
マ電機子の質量増加が分裂を助長することがわかった.
次に,電流の減衰とプラズマの挙動との関係を定性的に理解するために,一定の変化率で減
衰するような模擬電流波形を作成し,熱解析コードに取り込んでシミュレーションを行った.
その結果,実験で見られるように電流の減衰とともにプラズマが急激に膨張し始めるような挙
動が見られた.電流上昇時はう電流の増加に伴ってアブレーシヨンが促進されプラズマの質量
が増大するが,電磁力も電流の増加に伴って大きくなるのである程度の拡がりで収まる.いっ
たん電流が減少し始めると電磁力は減少するが,そこまでに増加してきたプラズマの質量は急
には減少しないので,プラズマは急激に膨張し始める.ここで用いた熱解析コードでは実験に
見られる異常な加速度の低下を確認できなかった.電磁流体的な非線型の作用がはたらいてい
105
ると考えられる.プラズマが膨張すると加速管との接触面積が増加するので,粘性抵抗等の抗
力が大きくなるばかりではなく,長さ方向に不均一性が生じる可能性が大きくなるので,場合
によってはプラズマ内における電流分布に局在化が起こり,電機子電流の分裂の引き金になる
こともあり得る.アイスペレット加速のように加速中の最大加速力が限られている場合には,
駆動電流を矩形化するなど,加速後半での電磁力の減少を防ぐことが望まれる.また,電流の
最大値付近を除いた加速初期と後半のみにバイアス磁場をかけるなど,加速中の電磁力が変化
しないように工夫することが重要である.
本研究では,レールガン単体での動作特性について述べ,アブレーションを低減して動作を
改善するための方法を示した.速度に関しては,プラズマと電磁力の制御によって5km/s程度
までは達成できる可能性があることを示した.本論文では,ペレット射出装置としてのもう一
つの要件である「繰り返し動作」の可能性についてはあまり触れなかった。今のところ,レー
ルガン単体で動作した場合,加速管はショット毎に損傷して繰り返して動作できるような状態
ではない.レールガンをペレット射出装置として用いるためには,加速管の損傷を皆無にする
必要があり,そのために加速管材料の慎重な選択に加えて,加速初期の損傷の低減に非常に効
果的な飛翻体予備加速の技術が不可欠である.
106
参考文献
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例
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[33]K、Kim,andDJ・Zhang:“Investigationofthebehaviorofaplasma-arcarmatureinsidea
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955-958,1989
[34]K、Kim,,.』・Zhang,TKing,R、Haywood,W・Manns,andF・Venneri:"ResultsfiFomrecent
hydrogenpelletaccelerationstudieswitha2-mrailgun,”jEEEI3r〃6ウノ"1pos加加o〃F”o〃
助gj"eer腕9,vol、2,pp、1319-1322,1989
[35]K・Kim,J、Zhang,T,L、King,WCManns,andR、GHaywood:',Developmentofafilseless
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[42]S,Katsuki,H,Akiyama,N・EguchimSueda,M・Soejima,S・Maeda,andK.N、Sato:
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電気学会一般産業研究会資料,GID-94-l2,1994
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Pe“〃ec"o",JAERI,Naka,Japan,no、23,1993
[45]S、Katsuki,H、Akiyama,N・Eguchi,S、Maeda,andKN、Sato:"Newmethodstoreducethe
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[49]J・Wey3andH・Peter:“MeasurementatthelSL-EMAlrailgunfacilityb,,IEEETrans・Magn.,
vol、27,no、1,pp,172-177,1991
[50]N、Shimomura,H・Akiyama:“Compactpulsedpowergenerator(ASO-I)byaninductive
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[59]茂山和基,薮忠司:「電磁加速システムの数値シミュレーション」,電気学会一般産業
研究会資料,GID-91-5,1991
109
[60],.A・Fiske,J、A・CiesaEH.A,Wehrli,H・Riemersma,E,F、DochertyandC・WPipich,“The
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[64]C、GHoman,CECummings,andC、M・Fower:“Superconductingaugmentedrailgu、
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[66]山本学,村山精一:プラズマの分光計測,日本分光学会測定法シリーズ,学会出版セ
ンター,1995
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[68]AvonEngel箸,山本賢三監訳:プラズマエ学の基礎,オーム社,1985
[69]S・Katsuki,H,Akiyama,N、Eguchi,TSueda,M・Soejima,S・Maeda,andK.N・Sato:
“Behaviorsofplasmaarmatureintheaugmentedrailgunusingpermanentmagnet,,,IEEE
Trans・Magn.,vol、31,no、1,pp・'83-188,1995
[70]S,Katsuki,T・Sueda,H・Akiyama,andK.N、Sato:"Opticalmeasurementsofrailgunplasma
armatureinanextemalmagneticfield,"Pmc.q/、IOthjEEEP雄edPowerCoが,Albuquerque,
NM,USA,vol,2,pp、1267-1272,1995
[71]S・Katsuki,T,Sueda,Y:Koga,andH、Akiyama:“Spectroscopicmeasurementofrailgun
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[74]生田一成,勝木淳:「電磁加速技術」,核融合学会誌,voL69,no、3,pp、225-231,1993
[75]勝木淳,副島通邦,末田毅,秋山秀典,前田定男:「レールガンプラズマの’次元電磁
流体シミュレーション,バイアス磁場の効果」,熊本大学工学部研究報告,vol、44,no、1,
1995
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[82]薄葉州,角館洋三,吉田正典,青木勝敏,山脇浩,藤原修三,宮本昌弘:「分散電極レー
ルガンにおけるプラズマ電機子の挙動」,電気学会一般産業研究会資料,GID−91−8,
1991
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25,no.’,pp、412−415,1989
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gw7zposi”o"Eノec”mag7z“たLα”cル歴cル"oノo80′,P1519,1992
[85]S,Ikeda,TSC,K・Koide,M,Kanno,K、Moyama:“SmallborerailgunactivitiesatKSL,”
IEEETrans・Magn.,vol、31,no.’,pp、309-313,1995
[
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.
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9
9
3
[87]上松和夫,三橋俊嗣,加藤資博:「レール型電磁加速装置の研究」,電気学会一般産業
研究会資料,GID-91-9,1991
[88]RK、Ray:"Arcrestrikeintherailaccelerato喝',IEEETrans、Magn.,vol、25,no.l,pp、485‐
488,1991
[89]古閑康裕,勝木淳,末田毅,秋山秀典:「レールガンにおけるプラズマの制御,小孔に
よる粒子排出」,電気学会高電圧研究会資料,HVL97-9,1997
[90]S・Katsuki,S、Narikiyo,TSueda,andHAkiyama:“Modificationofrailgunplasma
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,
MD,USA,1997(inprint)
[91]例えば,大津敏彦,小保方富夫:レーザ計測,裳華房,1994
[92]M、C、BakenB.D・Barrett,andW;CNunnally:“Experimentalobservationsofplasma
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[94]勝木淳,末田毅,秋山秀典:「レールガンの駆動電流立ち上り依存性」,電気学会論文
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4
[97]田幸敏治:「スペクトル線の形と巾の測定」,分光研究,vol、9,no、2,pp、65-72,1960
[98]南茂夫:科学計測のための波形データ処理,CQ出版社,1986
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Sci.,vol・’7,no,3,pp、487-500.1989
[102]理科年表,国立天文台編,丸善,1995
(
上
)
,
山崎和共訳:無機化学
[103]サンダーソン著,藤原鎮男監訳,野村昭之助,関根達也,山
崎荊
麿川書店,1969
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112
付録1レールガンにおけるプラズマ計測技術
1.1電子密度測定
1.1.1分光計測(STARK広がりを利用する方法)
(1)原理
プラズマ中の発光原子は,周囲のイオンや電子による微視的電場の影響を受けてスペク
トル線に拡がりを生じる,いわゆるシュタルク(Stark)効果である.シュタルク効果の原
因となるプラズマ中の微視的空間は荷電粒子数密度に依存するので,スペクトル線のシュ
タルク拡がりを測定すれば,イオン密度や電子密度を求めることができる.一般的に,ス
ペクトルの拡がりは、ローレンツ型分布となるシュタルク効果とガウス型分布であるドッ
プラー効果とが重畳された形(フォークト関数)として表れる.レールガンプラズマのよう
な,高密度(10M∼lOl9cm-3)かつ比較的低温(105K以下)の場合はドップラー効果の影響を
無視できる.レールガンプラズマを扱う本論文では,スペクトル拡がりの要因としてシュ
タルク効果が支配的であると考え,その他の効果を無視する.
電子密度とスペクトル線の半値幅には次のような関係式が広く用いられている.
…川惜「
(
a
l
l
)
ここで,△入l/2はスペクトルの半値幅、αl/2は電子密度と温度の関数であり,この値はGriem
等によって水素、ヘリウム等の種々の温度・密度のプラズマについて計算されている
[95,96]・計算された水素プラズマの温度・密度範囲は個々のスペクトル線によって少し
異なるが、10,000∼40,000K、lOl4∼1018cm-3である。ヘリウムについてはlOl9cm−3まで
計算されているが、温度の適用範囲が高く、30,000K以上でないと適用できない。
(2)波形の修正
〃・が5×lOl8cm-3を超えるような高密度のプラズマでは、プラズマからの発光が自身に
よって吸収されるために光ケーブルから取り込まれるスペクトル線の形にひずみが生じて
くる[66,67].しかも、強度が大きい中心部において吸収が大きいので、見かけ上スペク
トルがさらに広がったように見える。さらに密度が大きくなると徐々に周辺部が吸収され
るようになり、1021cm 3を超えるようになるとほとんど連続スペクトルとなる[97].
A
、
1
中心部のみが吸収されるようなプラズマに対しては次のローレンツ型関数をスペクトル
にフィッテイングすることによって半値幅を修正する.
A
I
い
)
=
0
.
入
)
』
+
(
%
)
f
+C
(
a
l
2
)
ここで,I(入)は光強度,入・はラインの中心波長である.また,4,8およびCは定数で,
特にBはプロファイルの半値幅である.この定数A,BおよびCを調節する.ただし,波
長中心部の情報をあえて捨て,スペクトル周辺部に重みを付けるために次のような誤差関
数を用いた.
伽
=
z
(
y
(
入
,
)
‘
(
入
Ⅲ
g
(
入
,
)
(
a
l
3
)
ただし,g(入,)は重み関数で,状況によって適当に選ぶ.例えば,レールガンにおいて加速
管の絶縁壁にポリカーボネートを用いるとHα線の短波長側に酸素からの発光線みられる.
この酸素の影響を除去するためにHα線の長波長側のみをデータとして取り扱う.この場合
のg(入i)は
‘い」-{噸剛州
となる.
(3)実波形への適用
図al−lおよびal−2に比較的低電子密度の場合および中心部が歪んでいる場合の分光波形
とフイッテイング曲線を示す.図a2−1ではスペクトルの裾野からピークまでローレンツ
型に一致しており,自己吸収はほとんど見られない.一方,図al−2では裾野に合わせた
ローレンツ型関数にくらべて中心部が低く,自己吸収が認められる.また,いずれの場合
においてもHαの短波長側に酸素の発光が見られ,フイッテイング曲線から外れる.
使用した分光器の測定波長範囲が33,mなので,フイッテイングによって求められる密
度は高々1.5×1019cm-3程度である.
A
2
︵の一一匡.。。﹄、︶︷一一の匡の↑匡一
2000
1800
八‘'…
1600
/《
1400
1200
1000
800
ノ、
.〆浄:jメ’、地
壁
浄
曾
A
‘
挙
鐸
宮
′
図
、
←
…
鈍
∼
∼
画
一
600
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W
a
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e
I
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n
g
t
h
(
n
m
)
図al−1低電子密度の場合のHα線プロファイル
半値幅5.5,m,電子密度1.4×10'8cm-3
︵の一一匡.。。﹄、︶二一一のこの一匡
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
640644648652656660664668672
W
a
v
e
l
e
n
g
t
h
(
n
m
)
図al−2高電子密度の場合のHa線プロファイル
半値幅24,m,電子密度1.2×1019cnr3
1
1
(
1
)
2
レーザ干渉計測[91,92,93]
原理
図
図al−3に干渉法の原理図を示す.レーザ光はビームスプリッタ等によって2本のビー
ムに分岐され,一方はプラズマ中を,一方は何も通らず参照光とする.その後2本のレー
ザビームは再びハーフミラー等の面上で合成され,干渉する.
レーザ光がプラズマを通過するとプラズマ中での屈折現象により、レーザの位相に変化
A-3
プラズマ
霞蕊謹一
測定光
暦万
亀
霧
短波長光
合成・干渉
一 陸
参照光
図al−3干渉法
が生じる.プラズマの屈折率は次式で表される
/
①
"
c
2
,
百
/
〃
e
N
2
ノv,=1
−
−
=
1
−
−
∼
1-L/坐$
2
2
,
k
〃
c
/
0〕0ノI〃c/
{
(
a
l
5
)
ここで,の“は電子プラズマ周波数、〃cは波長入oの入射光に対するカットオフ密度であり,
それぞれ次式で表される.
C
冗
2
の
へ人
(
a
l
6
)
“|恥
〃
心
11MV
〔
D
p
c
(
a
l
7
)
4
冗
2
c
2
m
e
8
0
e
2
入
0
2
(
a
l
8
)
(al-5)式から明らかなように,屈折率はプラズマの電子密度によって決まるので、プラ
ズマ通過後の‘位相差を測定すれば、電子密度を求めることができる.He-Neレーザ(632.8,m)
に対するカットオフ密度は2.8×1021cm−3となるので,これ以下の電子密度であれば原理
的には測定可能である.
レーザ光がプラズマ中を通過するとき屈折によって生じる位相変化量△(しは次式のように
なる.
A-4
帥
詩
(
‘
J
# “)。称 "e〃
(
a
l
9
)
Lはレーザ光の光路に沿ったがプラズマの長さであり,帥は光路に沿った電子密度の積分
値に比例する.レーザ光に沿ったプラズマの長さが既知で,かつ電子密度が均一であるこ
とがわかっている場合は,(al-9)式から電子密度を求めることができる.He-Neレーザを
用い,プラズマの長さが5mm(レールガンの加速管断面幅)であるとすれば,位相変化量帥
を調べることによって電子密度を簡単に次式を用いて求めることができる.
"g=2.24×lOl7帥[cm-3]
(
a
l
1
0
)
干渉パターンを適当に調整した後,レンズによって1点に集光すると密度変化は光の強弱
となってあらわれる.この光強度を線形感度の光検出器を用いて測定することによって帥
を電気信号として観測する.電子密度がlOl8cm 3を超えるプラズマでは△・の時間変化が,
振動波形となって表れるので,振動の個数を数えることによって(a'-10)式は次のように
簡単になる.
"
ご
=
7
.
0
2
×
l
O
l
7
j
V
[
c
m
3
]
(
a
l
l
l
)
ここで,/Vは振動の個数である.
He-NeレーザのようなDCレーザを用いると,レーザ光をプラズマが勝手に横切って移動
するので,結果的に加速方向にスキャンしたことになり,一度のショットで密度分布を得
ることができる.
(2)偏光(Deflection)
レーザ光に対して垂直な方向に屈折率の勾配がある場合について考察する.考察を進め
るに当たって,プラズマの長さに対して偏光角は十分に小さいとする.波長入。のレーザ光
の進行方向をz軸にとり,x方向に屈折率,すなわち電子密度の勾配をもつプラズマに入
射する.プラズマ内を通るレーザ光のある位置xにおける波数A)rは
l
膿
斗
筈
「
一
等
'
1
器
)
A-5
(
.
.
・
の
o
〉
>
①
p
笛
)
(
a
l
l
2
)
となる.△x離れた場所のx+△xにおける波数k脈+“との差AAは
M=ノtx−kx+“
⑩:‘は)−の:‘(…入。e2("e“)-".…)入Oe。
4
冗
c
2
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g
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。
2
C
の
o
△
"
e
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冗
C
2
"
e
e
o
(
a
l
1
3
)
となる.したがって,レーザ光がプラズマ内を距離Zだけ進んだ時,屈折率の勾配によっ
て生じる波面の傾き8は次のようになる.
剛一半一
入
o
e
2
ノ
1A"e
4
冗
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e
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。k
x
+
△
x
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Z
A
x
−
−
(
a
l
l
4
)
ここで,△ArくAとする.光は波面に垂直に進むので,波面の傾きeは偏光角となる.
それでは,レールガンプラズマの具体的なパラメータを代入してみよう.
c=3.00×108m/s
e=1.60×l0−l9C
e
o
=
8
.
8
5
×
1
0'
2
F
/
m
m
e
=
9
.
1
1
×
l
O
3
l
k
g
入
o
=
6
3
3
×
1
0
−
9
m
ノー5.0×10-3m
〃e−lO25m−3
。。帯-2,川"仙
繊
帳
一
馬
Ⅳ
Ⅷ
。
"
仙
x
恥一c
k
=9.95×106rad/、
これらの計算結果より,
.
.
、
t
a
n
8
=
8
.
8
8
×
1
03
'
坐
A
x
(
a
l
l
5
)
A-6
を得る.例えば,密度勾配が2×10'9cm 3/cmであるとすれば偏光角eは2,radとなる.ビ
ームを合成するハーフミラーがプラズマから250mm離れているとすれば,ミラー面上で0.4
mmだけ像が移動することになるので,干渉状態が変化する可能性が高い.
(3)装置構成
図al−4はマッハ・ツェンダー(Mach-Zehnder)型干渉計測の装置配置である.干渉計測
には他にマイケルソン(Michelson)型がある[89]、この方式はプラズマ中を2回通過する
ので,感度が2倍よいが,プラズマが高密度で,レーザの透過率が悪い場合にはMach-Zehnder
型の方が都合がよい.
He-Neレーザ(15,W,●0.8mm)から出たビームは、ビームスプリッターによって2方向
に分岐され、一方はレールガンの加速管の中を,他方は大気中を通した後,再びハーフミ
ラー面上で合成させる.合成されたビームは波長632.8,mの帯域通過フィルター(半値幅:
10,m,透過/反射=l/3)を通して石英光ファイバーへ集光し,PINフォトダイオード
(HAMAMATSU,S5973)によって干渉信号を検出する。加速管の観測部分には石英ガラスをは
め込んで光を透過させるようにした.
レールガンのような高密度のプラズマ中では入射光の反射,散乱,回折,吸収等により
透過率が減少する.Cwレーザの中でも比較的パワーが大きいものを用いる.また,光学系
でも最初にレーザ光を分岐する際に,測定ビームの強度が大きくなるようにビームスプリ
ツタの透過/反射比を選ぶなど工夫が必要である.
H弓毒---認耐。
PINp
window
fiber
FL
ローーーマノ'2
図al-4Mach-Zehnder干渉法の光学系配置図
A-7
●
︵。。。、︸一毎こつ一⑩のロ◎一ロヱーユ
1
#1792
0.8
0.6
0.4
02
0
101520253035404550
Time(ms)
図al−5機械的振動による干渉信号の揺動
図al−5は典型的な干渉信号である.干渉計測システムは機械的なノイズに非常に敏感
であり,常時図al−5のような揺動を示す.しかし,機械的揺動の時間スケールは、sオー
ダーなのでレールガンの密度計測にはほとんど影響がないと考えてよい.
(4)電子密度分布測定例
図al−6にレールガンプラズマの測定例を示す.使用したレールガンは単純型(SRG)であ
る.上から順にプラズマ電流,銃口に設置したB-dotプローブ信号,干渉信号,干渉信号
から変換した加速方向に関する電子密度の分布である.時間軸は電流が流れ始めてからの
時間を示す.飛朔体の設置位置から銃口までの距離は3cmで銃口から2mm入ったところ
に観測用石英窓を設けてある.レーザ入射位置とB-dotプローブの位置は同じである.
電流は18kA程度流れている.別の計測から,飛翻体はl45ILsに銃口を脱出している
ことがわかっている.干渉信号を見ると,ほぼ同時刻に信号が上昇し始めており,飛翻体
背後のプラズマからの発光によるものと考えられる.干渉信号はプラズマからの発光が重
畳されていることに注意しなければならない.観測位置において飛朔体通過後ゆっくりと
振動し始めl80ILsから細かい振動が見られる.これはプラズマ電機子前部における急激な
密度上昇を示唆する.振動は225us付近まで徐々に緩やかになり,その後再び振動の周期
が短くなるのがわかる.この干渉波形に示される一連の振舞は225ILS付近に電子密度のピ
ークが通過することを示唆する.
また,飛翻体の背後に密着しているであろうと考えられていた電流分布は予想と違って
かなり離れたところにあることがわかる.このことは,B-dotプローブの信号からもわか
A-8
2
.
5
1
0
4
#1792
︵く︶旨g﹄二○
2
1
0
4
1
.
5
1
0
4
1
1
0
4
5000
O
U
・
Z
︷ゴ・面︸一両屋画一②︾◎ロ0m
#1792
0.15
0
.
1
0
.
0
5
-0.05
●
#1792
04
0.3
0.2
0.1
1
1
Oz086420
︷。.。、︶一画匡回一⑩のつ◎一つヱーユ
0
.
5
#1792
一両●E◎西も↑×︸①巨
150
2
0
0
250
T
i
m
e
(
u
s
)
図al−6干渉法によるレールガンプラズマの電子密度測定例
上から順に電流,B-dotプローブ,干渉信号,電子密度の時間変化
A-9
る.飛翻体が通過してからしばらくしてプローブ信号が上昇し始めている.振動の数から
求めた電子密度はピーク付近で約1.1×1019Cm−3である.このように’一回のショットで
加速方向についての電子密度分布をもとめることができた.
1.2B-dotプローブを用いた電流密度分布測定
1.2.1原理
デコンボリュージョン(Deconvolution:逆畳み込み演算)は分光器を通して得られたス
ペクトルの分光器による分解能の劣化を改善するためによく用いられてきた手法である
[98,99]・分光器からでてきたスペクトルは,測定対象物中において物理的な効果によっ
て生じる拡がり以外にスリット,グレーテイングなどの分光器の分解能によっても拡がり
を生じる.分光器による拡がりは,装置特有のものなので装置関数と呼ばれる。分光器を
通してでてきたスペクトル波形yは,対象物からの光のスペクトルxと装置関数hとのコ
ンボリュージョン(Convolution:畳み込み積分)の形となる.
(
a
2
l
6
)
y=h*X
yは測定から,hは分光器の構成から得られる.デコンボリュージョンとは,既知出力波
形yと装置関数hから繰り返し(Iterative)手法を用いて未知関数xを求める作業である.
>
h
−>
入力
伝達関数
y帥
X
八
g原波形
図al−7デコンボリユージョンの概念
レールガンの実験においてプラズマの振舞を観測する手法としてB-dotプローブがよく
用いられる.B-dotプローブからの信号は,上の例の装置関数に相当するB-dotプローブ
の位置関数と,原スペクトルに相当するプラズマ電機子内の電流密度分布とのコンボリュ
ージョンの形となっているので,実験で得られるB-dotプローブの信号からプラズマ電機
子内の電流密度分布を得ることができる[100].
A-10
k回目の計算値
原波形
9
y
k
Xk
ノL*h−, 一
八
一
悪
,
ハ
ノ
修正
▼
ノ
ー
L
k
,
個
星
評
計
算
値
図al−8計算手順
1.2.2アルゴリズム[99]
図al−8に繰り返しによる求解法のアルゴリズムを示す.Ar回目の計算値xkを伝達関数h
で畳み込み積分をして得た波形ykと原波形9kとを比較する.比較から得た情報を基にAr回
目の計算値を修正したものを(A、{・')回目の計算値とし,同様の過程を繰り返す.yⅢとgⅢ
の差の2乗の総和妬F(平均2乗誤差:MeanSquareError)が目標値より小さくなったとこ
ろで計算を終了する.
伽雲津(y剛‘
(
a
l
1
7
)
繰り返し修正法のアルゴリズムで用いる波形修正法は以下に述べるように段階的に改良
●
されてきた.
(1)VanCittert's法
(
a
l
l
8
)
fk.'=鉾十6(g−h*えた)
xk,x齢'はそれぞれAbA、+1回目の入力信号である。6は定数であるが、この値が解の収束
速度を決める。また、初期値xoには原波形gを用いる。
f
o
=
9
この手法の欠点として、原波形に含まれる雑音成分によって非物理的な数値が出力される
ことがある。例えば、結果が負の数になるなど。
A-11
(2)制限付き繰り返し法
(1)の方法において計算途中で非物理的な数値が出力された場合,その値を強制的にゼ
ロにする.
1k+'=pfA+(g-h*成k)
(
a
l
l
9
)
{
:
言
;
制
この方法において一部データを捨てることになることが欠点である.
(3)ReIaxation-BasedIterativeMethod(Jansson,sMethod)
(1)の方法において,収束を決定する要素として定数6の代わりに次式で表される収束
関数r{xk}を用いる.
州
。
‘
(
'
非
‘I
;
-
(
a
l
2
0
)
ただし,6及びcは定数である.
図al−9収束関数
結局x*の漸化式は
(
a
l
2
1
)
f
k
+
'
=
j
t
k
+
r
{
j
k
k
+
'
}
(
g
h
*
j
t
k
)
となる.収束関数r{xk}の6,cを適当に選ぶことによって収束をよくすることができる.
1.2.3B-dotプローブの信号への適用
A-12
胴。器│静-齢
(
a
l
2
3
)
と表されるので,B-dotプローブの信号をデコンボリュージョン演算することによってプ
ラズマ中の加速方向に対する1次元の電流密度分布I(77)を知ることができる.
プラズマ内の全ての電流成分は同じ速度であると仮定したが、プラズマ電機子の長さは
3∼10cmとなっており、電機子の内部で位置によって速度が異なると考えられる.この影
響をできるだけ小さくするために,計算対象とする時間範囲をできる限り小さくした.
1.2.4計算結果および評価
図al−11は収束関数の様々な6値に対するル1【SFの収束を示す.6=5の場合が最も収束
が速いが,収束が不安定である.6=2の場合もわずかに収束に振動がみられる.一方b=0.1,
0.5では収束に時間がかかるので、今後のデコンボリュージョンに関する全ての計算は6=
1で行うことにする.B-dotプローブの原波形に量子化ノイズ等の様々なノイズ成分が含
まれているので,むやみに計算回数を多くしても無意味である.ここではjMSFが0.08以
下になるか,あるいは計算回数が30回を超えると計算を終了するようにした.1回の繰
り返しに要する時間は100MIPSのワークステーション程度で30秒程度である.
計算の対象とした信号は,永久磁石磁場印加型レールガンにおいて飛翻体初期位置から
加速方向に10cm離れた位置に設置したB-dotプローブからのものである.図al-l2(a)に
B-dotプローブの信号波形を示す.図al-l2(b)はB-dotプローブの信号波形をJanssonの
方法を用いてデコンボリュージョンしたものである。この計算に於いて収束関数r{別のb
1
5局や勺やc写
。=0
0.8
0.6
,
'
L
0.4
Q
C
O
e
h
ぅ
U
h
qこむ
0.2
蟻蕊撫濡…燕鍾』
0
繰り返し回数
図al-llデコンボリユージョン演算の収束状況
A-14
名、︶吹哩ぢつ’四
6543210
︵、一一匡.
(
a
)
2186420
名、︶畿填賦購
10
0O
0
0
O0
O0O
︵⑩狸一色.
名⑩︶巾哩ぢっ1画
70
60
50
40
30
20
1
0
a0
。0
■0
■0
●0
●0
●
0
︵の料一匡.
900
(
b
)
C
(
c
)
ヂ
'
実線:原波形
破線:再現波形
2 5 0 3 0 0
時間(us)
図al-12計算回数と計算結果の関係
8
1
0
5
7
1
0
5
6
1
0
5
︵Eへこ︶妾升つ
5
1
0
5
4
1
0
5
3
1
0
5
2
1
0
5
1
1
0
5
0
x(1cm/div.)
図al−13計算回数と計算結果の関係
A-15
350
値は1.0,c値は各回計算波形の最大値の110%とした[97].繰り返し回数は20回である.
図al-12(c)は(b)の波形を逆にコンボリュージョンして得た波形であり,再び(a)を重ねて
ある.両者がほぼ一致していることから,デコンボリュージョンによって求めた波形(b)
がほぼ正当であるといえる.主電流の両側にみられるすそ野の部分は,モデルをたてる際
に用いた仮定に基づく誤差であると考えられる.
電流密度分布は,図al-l2(b)の縦軸を各時刻における移動速度で割り,横軸に各時刻に
おけるプラズマの移動速度を乗じることによって得られる(図al-l3).プラズマは図の左
方向に進み,その前方に飛朔体が存在する.B-dotプローブの信号では,プラズマ電流は
一丸となっているように見えるが,図al-13をみると電流の一部が後方に漏れ出している
様子がわかる.
A-16
付録2本論文で用いた物理定数[102,103,104,105]
表a2-1基礎物理定数
I
A
0
=
1
.
3
8
×
1
0
.
2
3
J
/
K
真空中の透磁率
k=1.38×10−23J/K
ボルツマン定数
カー6.63×10.34JS
ブランク定数
O
S
=
5
.
6
7
×
1
0
.
8
J
/
(
s
m
2
K
4
)
シユテファン・ボルツマン定数
e=1.60xlO・'9C
電子の電荷量
胴
c
=
9
.
1
1
×
1
0
.
3
l
k
g
電子の質壁
表a2−2加速管構成材料に含まれる粒子の定数
〃
H
=
1
.
6
7
×
1
0
.
2
7
k
g
耐
c
=
2
.
0
1
×
l
O
−
2
6
k
g
胴Cu=1.06×10.25kg
m
s
i
o
2
=
3
.
0
6
×
l
O
2
5
k
g
6H=0.53×10.1om
6c=0.77×10・Iom
6cu=1.28×lO-lom
6cHz=2×10.Iom
6o=l×lO-lom
6si=1.17×lO-Iom
6
s
i
o
2
=
2
×
1
0
.
'
0
m
水素原子の質量
炭素原子の質麓
銅原子の質還
SiO2分子の質麓
水素原子の半径
炭素原子の半径
銅原子の半径
CH2分子の半径*
酸素原子の半径*
珪素原子の半径
SiO2分子の半径*
g隆c=3.6eV
C-C間の結合エネルギー
e
リ
ノ
b
H
2
=
4
.
3
e
V
CH2分子の解離エネルギー
e脇=13.8eV
水素原子の電離エネルギー
eリノb=lL3eV
炭素原子の電離エネルギー
eI/bu=7.73eV
銅原子の電離エネルギー
e児io2=5eV
SiO2分子の解離エネルギー*
eリノb=13.62eV
酸素原子の電離エネルギー
e路i=8.15eV
珪素原子の電離エネルギー
*)は推定値
表a2−3加速管構成材料の熱特性
沸点
(
K
)
気化潜熱
(
1
0
‘
J
/
k
g
)
熱伝導率
比熱
(
K
)
融解熱
(
l
O
s
J
/
k
g
)
(W/mK)
(
J
/
k
g
K
)
質量密度
(
1
0
3
k
g
/
m
3
)
1356
2.1
2868
4.9
415
419
8.92
∼500*
0.5
∼lOOO*
0.8
1
.
7
1200
1.23
∼1700*
1
.
5
>4000*
1
.
5
*
1
.
8
756
2
.
5
2
融点
銅
ポリカーボネート
セラミック
*)は推定値
A-17
謝辞
本研究は,熊本大学工学部秋山秀典教授の熱‘延な御指導と多大
な御支援のもと遂行したものであります.同教授に‘趣より感謝い
たします.
本論丈の作成に際して,適切な御助言をいただいた熊本大学工
学部蛙原健治教授,桧山隆教授,巨海玄海教授に深く感謝いた
します.
また,本研究に対して御助言と御討論をいただき,折りに触れ
て御激励下さった熊本エ業大学工学部前田定男教授に深く感謝
いたします.米国テキサステック大学石原修教授,MarionHagler
教授,MagneKristiansen教授,米国ニューメキシコ大学John
Gahl教授,FrankHegeler氏,独国ジーメンス社UlfKatcshinski
氏,熊本大学工学部IgorLisitsyn助教授には研究をまとめるた
びに御教示と御討論を頂きました.また,岩手大学工学部高木
浩一氏,徳島大学エ学部下村直行氏,九州大学大学院福津剛氏,
熊本大学エ学部池上挿顕助教授,山形幸彦助教授には放電,高
電圧,プラズマの専門家としての立場から貴重な御助言を頂きま
した.九州大学大学院佐藤浩之助教授,核融合研究所野田信明
教授,独国ユーリッヒ研究所KarlHFinken教授には本論丈の
背景となる核融合分野の研究に関して多大な御教示を頂きました
こと,諸氏に‘趣より感謝いたします.
実験の遂行に当たっては,熊本大学工学部辻公輝技官に多大な
ご協力をいただきましたこと,‘趣より感謝いたします.熊本大学
大学院博士課程末田毅氏をはじめ,熊本大学工学部電気エネル
ギー応用講座の大学院生,卒業研究生諸君に多くの協力を頂きま
した.
競後に,家族の暖かい支援なくしては本論文の完成を為し得な
かったことを切に感じて感謝の意を表します.
平成10年筆者
Fly UP