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見る人の関心度を利用したデジタルサイネージの試み

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見る人の関心度を利用したデジタルサイネージの試み
情報処理学会第 74 回全国大会
1W-3
見る人の関心度を利用したデジタルサイネージの試み 中山 翔太† 太田 高志† 東京工科大学メディア学部† 1. はじめに 2.
本研究では、デジタルサイネージと人の関わ
り方について考え、従来では利用するのに操作
をする手間のあったクーポン発券を行うデジタ
ルサイネージにおいて、タッチなどの操作を必
要としない、新しいデジタルサイネージの形を
提案する。 クーポンを、それを必要とする人のみならず、
あまり興味のない人にも提供するためには、従
来のようなクーポン発券のみを行うデジタルサ
イネージでは、十分に興味を引きつけられない。
そこで、デジタルサイネージの機能のひとつと
して、写真撮影を行う機能を持たせた。これに
より、サイネージそのものや写真コンテンツに
興味を持った人に対しても、クーポンを提供す
ることができると考えた。 近年、様々な場所でそれまでの紙媒体のポス
ターや看板などに替わり、デジタルサイネージ
が見られるようになってきた。そのため現在で
は、色々な形態のデジタルサイネージが登場し
てきているが、特に高い広告効果が期待されて
いるのが、クーポンを発券する機能を備えたデ
ジタルサイネージだ。 しかし、現在、店舗内やショッピングセンタ
ーで見られるクーポンを発券・配信するデジタ
ルサイネージの多くは、クーポンを欲しがる人
が利用するだけになってしまい、潜在的な利用
者に対して、新規に利用してもらうということ
が難しくなってきている。その一因として、ク
ーポンを手に入れるために、利用者がデジタル
サイネージを操作する必要があることが挙げら
れる。 システム概要 図 1 が、利用者がクーポンを受け取るまでの
基本的な動作の流れになる。利用者がいないと
きには、従来のデジタルサイネージのように動
画や静止画の広告を表示しているが、利用者が
画面の前に来たことを Web カメラの映像から認
識し、一定時間同一の広告を見ている場合、そ
の広告の詳細情報を画面右側に表示する。 また、それと同時にカメラから利用者の顔を
識別して、写真コンテンツを作成する。利用者
は画面に表示された QR コードを読み取ることで、
そのコンテンツとともに、広告情報やクーポン
を受け取ることができる。 これまでに、デジタルサイネージと人との関
わり方について取り組んだ研究に、「歩行者の
顔向き情報と移動軌跡を利用した デジタル広告
の効果測定, 表示支援ツール」 [1] や「薄型ディ
スプレイとの非接触対話手法に関する研究」[2]な
どがあるが、いずれも如何にしてデジタルサイ
ネージを 操作 するのかということに重点が
置かれており、適宣情報を提供していくことは
想定されていなかった。 そこで本研究では、利用者に対して特別な操
作を要求せずに、デジタルサイネージとの間で
インタラクションを実現するためのシステムを
構築していく。 図 1. クーポンを受け取るまでの流れ Trial of the degital signage using the viewer's interest
†Shota Nakayama, Takashi Ohta, School of Media Science,
Tokyo University of Technolory
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情報処理学会第 74 回全国大会
3. システム設計・実装 5.
このシステムを実現するためには、画面の前
に人がいるかいないかを識別する、写真を撮影
するなど、画像周りの要件と、写真コンテンツ、
広告情報、クーポンなどを利用者に提供する手
段の 2 つが必要となる。 本研究では、従来では操作を伴うクーポン発
券を行うデジタルサイネージにおいて、タッチ
などの操作を必要としない、新しい形のデジタ
ルサイネージシステムを目指し、製作してきた。
利用者に特別な操作を要求させずに、手軽に利
用できるという点では、この目標は概ね達成で
きたが、一方で、インタラクションの部分が短
調になってしまいがちで、デジタルサイネージ
の持つ、新規性のメリットを損ねてしまってい
ると感じた。 画 面 の 前 に 人 が 存 在 す る か の 判 断 に は
OpenCV[3] による顔認識を用いた。OpenCV では、
Web カメラからの映像を解析し、その中に含まれ
る人の顔を識別することができる。映像内に人
の顔が検出された場合には、画面の前に人がい
ると判断することとした。写真の撮影には Web
カメラを使い、そこからコンテンツを作成する
ために、先程も使用した OpenCV の得られる顔の
数、位置、大きさなどの情報から、画像内の人
の顔を切り取り活用した。 写真などを利用者に提供する手段は、メール
によって利用者に送信する方法を取ることにし
た。利用者には画面上に表紙される QR コードを
携帯端末から読み取り、立ち上がる画面からメ
ールを送信してもらい、そのアドレス宛に写真、
クーポンを返信する。これらのシステムを、最
終的には Java ベースで、ビジュアル、インタラ
クションデザイン面に特化した Processing[4] に
統合した。 4. 検証・考察 今回用いた顔認識による利用者の識別は、と
ても良い精度で行うことができ、複数人の識別
や顔の抽出もおおよそ問題なく行うことができ
た。また、利用者の滞在時間によって表示を変
化させる部分も問題なく、表示に関するシステ
ムは設計時の予想通りの動きをした。 おわりに また、現段階のシステムでは実際にどのよう
な場所に設置して、どのように利用してもらう
のか、などに関しての考察が不十分と感じた。
実際に現地テストなどを行いながら、より利用
者側からみて魅力的なデジタルサイネージにし
ていく必要があるだろう。 参考文献 [1]南竹 俊介, 高橋 伸, 田中 次郎, 歩行者
の顔向き情報と移動軌跡を利用した デジタル広
告の効果測定, 表示支援ツール , 情報処理学
会 インタラクション, 2010 [2]深澤 哲生, 福地 健太郎, 小池 英樹, 薄
型ディスプレイとの非接触対話手法に関する研
究 , 情報処理学会 研究報告, pp.47-54, 2006 [3]OpenCV.jp, http://opencv.jp/, 2011
[4]Processing.org, http://processing.org/, 2011
今回は人の滞在時間を関心度と結びつけ、そ
の関心度に合わせた表示やコンテンツの提示を
試みた。しかし、関心度を測る要素は多数あり、
今回の検証からはすべての関心度を把握するこ
とは難しかった。そのため、より関心度とデジ
タルサイネージを結びつけるためには、さらに
条件を加える必要がある。 また、メールで写真などを送信する部分では、
携帯電話キャリアやスマートフォンなどによっ
て、メール送信を行える QR コードの仕様が異な
るため、一旦 Web ページを挟むことが必要とな
ってしまった。利用して頂いた人の中にも、メ
ール送信の手順の途中で面倒と感じて、やめて
しまう人もいたため、FeliCa のようにより手軽
に受け取れる手段も必要だと感じた。 3-162
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