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一丸となって被災地工事の課題を克服 若いチームが挑戦する「震災復興

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一丸となって被災地工事の課題を克服 若いチームが挑戦する「震災復興
現場を訪ねて
郡山市立中央公民館改築主体工事(東日本支店)
一丸となって被災地工事の課題を克服
若いチームが挑戦する「震災復興の街のシンボル」
■工事場所 福島県郡山市麗山1- 8- 4
■工 期 2013年9月18日~ 2015年2月27日 〔工事概要〕
■発 注 者 郡山市(福島県) 敷地面積:9,609.31㎡
■所 長 下谷 徳明
建設面積:3,149.86㎡
延床面積:6,048.51㎡
高 さ:軒高22.41m 最高高さ26.06m
2011年3月11日に、東北地方を中心に壊滅的な被
構造規模:地下1階 RC造/地上3階・塔屋2階
害をもたらした東日本大震災。今回訪れた福島県の郡
RC造(一部S造)
山市も、やや内陸に位置することから津波による被害
こそなかったものの、震度6弱の地震により、建物の
全壊2758件、半壊22,426件を数え、ライフラインに
されるという。
も深刻なダメージを被った。市の中心部に位置する中
また、
「東北のウィーン」と称されるほど音楽に熱
央公民館も、この震災で大規模半壊し、震災後は危険
心な同市を象徴した、約500名収容の多目的ホール、
なため長く立ち入り禁止となっていたが、現在、それ
将来の震災に備え避難所としての機能も果たすよう、
らを取り壊して再建する工事が進んでいる。
雨水貯留層や食糧備蓄庫、非常用電源の発電機、太陽
地上3階、地下1階建て、延床面積6,048㎡のこの
光パネルなども新たに設置されるなど、非常にグレー
工事は、基本的には従来施設の原状復帰を目的とする
ドの高い工事内容となっている。
ものだが、
再建される中央公民館は新たにこの街の
「復
この現場を束ねるのは、現在40歳という下谷徳明
興のシンボル」として位置付けられることから、その
所長以下、事務局、職長会会長とも非常に若いメンバ
デザインや使用する材料などは、非常に意匠性の高い
ーだ。
「この工事は仕上げの品質も非常にグレードが
ものになっている。隣には、ちょうど耐震補強が間に
高く、この地域では今後あるかないかというもの。メ
合ったために震災の難を逃れた、有形文化財の「郡山
ンバーにとっては非常にいい経験となる。復興のシン
公会堂」
(大正14年建造)が建っており、この歴史的
ボルを任されるプレッシャーはあるが、全員がしっか
建造物を過去の象徴と見たて、
「過去から現在、そし
りと各作業に関わり、自分達の現場だという自覚を持
て未来へとつながる」一連の様子がデザイン上で表現
ち進めていきたい」と下谷所長は語る。
完成予想図。隣接する歴史的建造物の郡山公会堂とは、デザインなどを一部共
有し、よりつながりを深めていく。
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山下 勇次 職長会会長
下谷 徳明 所長
初期段階から工程全体を意識し、
作業の最適化で安全・品質を確保
も予定されているが、今はまだ比較的シンプルな躯体
工事が中心だ。とはいえ、躯体作業の段階から工程全
体を見通して、仕上げ時に邪魔にならないよう足場の
取材にうかがった10月末は、まもなく躯体が完成を
割付や盛り替えの発生防止に配慮してきたので、この
間近に控えていた。現場入り当初は、前段階で他社が
段階からすでに難しい作業への準備は始まっていると
担当した解体工事において、ホコリや騒音に関するク
もいえる。躯体の良し悪しはその後の作業にも大きく
レームが数件発生していたことから、おのずとその延
影響するので、職員だけの確認では不十分と割り切り、
長線上で厳しい目を向けられ、苦労したそうだ。首都
早い段階から職長会による自主的なチェック、および
圏ほどの過密さはないが、街中での工事ということも
設計事務所や市役所にも参加してもらっての確認など、
あり、職長会と協力して防音シートの設置、騒音防止
二重・三重の品質確保を行ってきたという。
のチェック等には特に気を配るなど、できる限り誠意
ある対応を心掛けてきた。
また地下階までを含むこうした工事は、福島ではあ
人材確保が難しい被災地工事の
現状と課題
まり例がなく、新設される音楽ホールも高さ10mほど
こうして品質面、安全面ともに入念に作業を進める
の大空間だ。そのため墜落・転落が懸念される場面は
この現場だが、頭の痛い問題もある。もっとも、これ
多く、高所での架設作業には特に注意を払ってきた。
はこの現場だけに限らないことなのだが、いま福島近
中でも入口ロビーに設置されるらせん状の階段は、意
辺の工事現場で大きな問題になっているのは、人員確
匠的にも凝ったつくりになっているため、架設作業に
保の問題だ。
は困難が伴う。そこで、安全性を考慮して、今回は仮
福島・宮城・岩手では、住宅の復旧や復興住宅の新
設スラブ型枠を設置して、転落防止措置をしてからの
築等の案件が集中しており、その上福島では原発事故
作業や、外部足場は先行手摺枠を採用し地組みを行い
の影響により、非常に多くの人材が除染作業に駆り出
せり上げを行う等の危険作業低減に取り組んだ。
されている。この現場も現在、躯体工事で約70名、加
今後は意匠性の高いデザインを再現する複雑な作業
えて電気工事などを行う設備JVが約30名の人員で作
意匠性の高いデザインの内部(左)と、
約500名収容の多目的ホールの完成予想図。
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業に当たっているが、日頃関係の深い協力会社と一体
法を取り入れ、かなり混乱は回避できるようになった。
になって人員確保に努めても、絶対的な人員の不足は
こうした両輪に加え、日ごろ顔を合わせる職員と職長
否めないという。東日本支店の協力会社などからの応
たちが、お互いに何でも話し合える環境を率先してつ
援によって、なんとか関東圏からも人員を集めること
くっていったことで、今では言いにくいことや危険作
ができ、
「これまでの工程では、ほとんど人集めに奔
業に対する注意なども、意識せず気軽に言える雰囲気
走していた印象ばかりがありますが、応援という形で、
ができあがってきたそうだ。
他の地域から新しく人が駆けつけてくれたのには大変
加えて、どんな小さなことでも、誰かが熱心に取り
助けられました」
(下谷所長)
。ただ、
「やはり最初の
組んでくれていた場合には、毎月特に人数を決めずに、
うちはどうしても、仕事を預ける方にしても預かる方
手作りの賞状で表彰するようにしたという。ある月は、
にしても、
慣れないメンバーだとお互いに気を遣います」
なかなか浸透せず困っていた「車輪の輪留め」を、い
と所長も当時を振り返る。
つも必ずしている人がおり表彰した。
「ここをしっか
現場の雰囲気を大きく変えた
「コミュニケーション」への取り組み
りやって欲しい」というアピールにもなるし、さまざ
まな地域から駆けつけてくれた職人さんには、自分へ
の励みや家族へのちょっとした土産話にもなる。何よ
不慣れなメンバーでの作業に加え、作業の進め方や
り、現場からの感謝の思いも伝わる。小さな取り組み
ペースなども、それぞれの土地柄によって思った以上
ではあるが、お互いに意欲を高め、意思の疎通を図っ
に異なっていた。お互いのことを理解する上で、大き
ていく上では、有効な取り組みだといえるだろう。
な役割を果たしたのは、職員、職長会が協力し合って
もっとも、今も代理人を通じての情報伝達にとどま
取り組んだ「コミュニケーション」であったという。
る設備JVとの関係作りなど、今後継続して取り組む
現場では職長を中心に、とにかくまず挨拶をする、
べき課題もあるが、厳しい状況下に皆が協力して取り
事あるごとに話しかけ、施工方法をこまめに相談する、
組み、作業がスムーズに進むよう改善が図られたこと
言いにくい場面でも言うべきことは言う、ということ
は、
大きな成果といえる。
「やはり一緒に食事をすると、
を徹底していった。一方、所長も、朝のミーティング
普段とは違う話も聞けるので、だんだんと距離が縮ま
などでは一緒に輪の中に入って活動内容を相談したり、
る気はしてくる」
(下谷所長)との実感も得られたよ
皆で一緒に昼食をとる場を定期的に設けるなどして、
うになった。
世間話のような話題からまず関係を作っていくように
今後も人手不足をカバーしつつ、複雑な仕上げ工程
した。また不慣れな大所帯でもなるべくスムーズに情
に向け多くの要員を迎えねばならない中で、早期にこ
報伝達が行えるよう、早め早めの情報伝達を常に心が
うした雰囲気作りが達成されたことの意味は大きい。
けるとともに、工程表以外に色分けした資料を別途用
意したり、写真を使って注意箇所を指摘するなどの手
小さなことでも良い活動があれば、現場で安全
表彰が行われる
平均年齢 歳。とても若い作業所のメンバー
たち。
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