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金融・サービスの中心地
October 29, 2014 Vol. 6 グローバル・マーケット・ストラテジー・チーム シニアストラテジスト 岸義明 シンガポール ~世界一のビジネス環境、金融・サービスの中心地 輸 出主導で安定的な経済成長が継続 実質GDP(前年比)と寄与度 シンガポールは、人口547万人(2014年6月時点)、面積約 20 710k㎡(東京23区とほぼ同じ)と小さい国です。しかし、東 洋と西洋を結ぶマレー半島の南端に位置するなど、地理的 16 な優位性を有していることから、港湾を中心に発展してきた 経緯があります。 このため、ASEAN(東南アジア諸国連合)各国を始め物流 のハブ(中継地点)としての役割を担っており、輸出(再輸出 含む)が名目GDP(国内総生産)の200%前後を占めるな ど、貿易の拡大が同国経済をけん引しています。 また、1人当たり名目GDPが5万米ドルを超え、ASEAN随 一の富裕国であることから、個人消費も堅調に推移してお り、近年、実質GDP成長率は2~5%台と安定しています。 経 (%) その他 純輸出 投資 消費 実質GDP 12 8 4 0 -4 -8 -12 06/6 常収支・財政収支ともに盤石 貿易立国であるため世界経済の影響を受けやすい構造の なか、経常収支は財貨輸出が中心となって黒字を維持して います。 財貨輸出の主力品目は、物流のハブという優位性を活か すため、インフラ整備に注力し、産業集積が進展した石油・ 化学品となっています。また、IC(集積回路)や電子部品な ど高付加価値分野を強化してきたハイテク関連も、主要品 08/6 10/6 12/6 (出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 14/6 (年/四半期) 経常収支と財政収支(対名目GDP) (10億米ドル) 20 (%) 3.2 15 2.4 10 1.6 5 0.8 0 0 目となっています。 なお、財政については、リーマンショック後に雇用対策などで 一時的に財政赤字に転じたものの、小国ということもあり保 守的な運営を行っており、健全な財政基盤を有していま す。 -5 -10 06/6 経常移転 サービス 経常収支 08/6 所得 財貨 財政収支(右軸) 10/6 12/6 (出所)CEIC、Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 -0.8 -1.6 14/6 (年/四半期) 世 界一のビジネス環境で、海外投資が拡大 シンガポールは法人税率が17%と、アジア主要国のなかで 香港(16.5%)に次ぐ低い水準、さらに外資系企業の誘致 や産業振興を図る目的などから、様々な優遇措置が設けら れています。このため、ビジネス環境は世界トップ(2014年 の世界銀行調査)の位置付けで、海外直接投資が拡大し 用途別海外直接投資と名目GDP構成比 (10億シンガポールドル) 800 その他 卸売・小売 製造業 600 金融・保険 名目GDP構成比(右軸) (%) 240 200 400 160 また、近年、政府は金融・保険などサービス業以外に、製 200 120 造業強化の観点から航空やバイオなど付加価値の高い新 産業の育成に注力しており、これらの分野への進出を企図 0 ており、これら外資が経済成長の原動力となっています。 した投資も拡大しています。 ア ジアの金融センターに発展 80 1998 2005 2012 (年) (出所)CEIC、Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 外国為替平均取扱高(1日当り)と資産運用残高 関は619社(2014年3月末)、その他に統括本部を置く金融 機関も増加傾向で、アジアの金融センターとなっています。 300 (10億シンガポールドル) 2,000 外国為替平均取扱高(左軸) 資産運用残高(右軸) 1,500 特に、外国為替取引高では、世界第3位(2013年4月時 点)で、日本や香港を抜いてアジア最大の外為取引市場と 200 1,000 なっています。また、資産運用残高も15年間で約12倍に拡 大するなど、優れた立地やビジネス環境などから、富裕層 100 500 シンガポールに拠点を置く銀行や保険会社などの金融機 (10億米ドル) 400 向けなどの資産管理業務拠点としても注目されています。 このような状況下、金融業は実質GDP(2013年)の11.3% を占める主要産業にまで発展しています。 少 子高齢化や外国人問題など課題が散見 1965年にマレーシアから独立したシンガポールは、目覚ま 0 0 1998 2001 2004 2007 2010 2013 (出所)国際決済銀行、シンガポール金融管理局のデータを基に三菱UFJ投信作成 (年) 人口(属性別)と生産年齢人口比率(対老齢人口) 600 (万人) (倍) 外国人 永住者 自国民 生産年齢人口比率(右軸) 24 しい経済成長を遂げてきたその一方で、経済発展による所 得水準の向上などから少子高齢化(≒生産年齢人口の減 500 少)が進展しています。 400 16 また、経済発展に伴い人手不足が顕在化するなか、インド 300 12 やフィリピンなど近隣諸国から労働者が多数流入し、外国 人が人口の約3割(2014年6月時点)を占めるまでに増加し 200 8 100 4 ています。 このように、経済成長を遂げた同国においては、少子高齢 化や外国人問題などの社会的な課題を有しています。 20 0 0 1970 1980 1990 2000 (注)生産年齢人口は15~64歳、老齢人口は65歳以上が対象 (出所)シンガポール統計局のデータを基に三菱UFJ投信作成 2010 2014 (年) カ (出張トピックス①) ジノやホテルなど湾岸エリアの開発が進展 マリーナベイ・サンズ(カジノやホテルが中核の総合リゾート施設)やユニバーサル・スタジオの開業(2010年)、及 び中心部でのF1(自動車レース)開催など、国を挙げて観光客や国際的なイベント誘致に注力しています。 これらの取り組みが奏功し、2013年の国際会議開催件数で世界トップになるとともに、アジアからの観光客が増加 基調で、観光産業が急速に発展しています。 湾岸エリアの開発状況(マリーナベイ・サンズ) シンガポールへの主要地域別観光客(月次) (万人) 120 アジア その他 100 80 60 40 20 0 00/8 (出所)筆者撮影(シンガポール出張:2014年8月17~18日) 地 02/8 04/8 06/8 08/8 10/8 12/8 (出所)CEICのデータを基に三菱UFJ投信作成 14/8 (年/月) (出張トピックス②) 理的な優位性から取扱貨物が拡大 シンガポールはコンテナ取扱量で世界第2位(1位は中国・上海)で、湾岸エリアの沖合には多数の船舶が待機す るなど、取扱海上貨物はリーマン・ショック時を除くと、増加基調となっています。 アジアと中東やアフリカなどを繋ぐ重要な海上拠点であり、今後の貨物需要増に対応するための港湾拡張計画が 進展しており、物流のハブ機能が経済を下支えしていくとみています。 湾岸エリアの沖合い 35 取扱い海上貨物(月次) (百万トン) 30 一般貨物 ばら積貨物 25 20 15 10 5 00/9 (出所)筆者撮影(シンガポール出張:2014年8月17~18日) 02/9 04/9 06/9 (出所)CEICのデータを基に三菱UFJ投信作成 08/9 10/9 12/9 14/9 (年/月) 為 替:外貨準備高の増加に連動 過去10年間のシンガポールドル(対米ドル)は、リーマン ショックや欧州債務問題などにより一時的に調整する局面 があったものの、概ね外貨準備高の増加に連動して、堅調 に推移しています。 今後も、物流のハブ機能の優位性が不変であることや、金 融や観光などサービス業の拡大がけん引役となって、安定 的な経済成長が見込まれることなどから、シンガポールドル は堅調に推移していくと考えています。 シンガポールドル(対米ドル)と外貨準備高 (シンガポールドル・逆目盛) 1.10 (10億米ドル) 290 対米ドル(左軸) 外貨準備高(右軸) 1.20 260 1.30 230 1.40 200 1.50 170 1.60 140 シンガポールドル高 1.70 110 1.80 04/10/28 80 14/10/28 09/10/28 (注)シンガポールドルは日次、外貨準備高は月次(2014年9月分まで)ベース (出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 債 券利回り:3%前後と安定的に推移 10年国債利回りとCPI(消費者物価指数・前年比) シンガポールの10年国債利回りは、過去10年間、3%前後 8.0 で推移するなど概ね安定しています。これは、ファンダメンタ ルズ(経済の基礎的条件)が良好で格付会社(ムーディー 6.0 ズやS&Pなど)から最高位の格付けが付与されていることな どが背景にあり、今後も安定的に推移すると考えています。 また、インフレ(消費者物価指数・前年比)については、堅調 な経済を背景に、賃金などのコストが上昇傾向で、不動産 や食料品、サービス業などでインフレリスクを有するものの、 MAS(シンガポール金融管理局:中央銀行)の管理の下、 引き続き安定的に推移するとみています。 株 (%) 高下したものの、その後は名目GDPの着実な増加(≒経済 成長の継続)に伴い、上昇しています。 10年国債利回り CPI 4.0 2.0 0.0 -2.0 04/10/28 09/10/28 14/10/28 (注)債券利回りは日次、CPIは月次(2014年9月分まで)ベース (出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ投信作成 価:名目GDPに連動して上昇 シンガポールST株価指数は、リーマンショック時に大きく乱 (年/月/日) (年/月/日) シンガポールST株価指数と名目GDP (ポイント) 3,900 (10億シンガポールドル) 400 名目GDP(右軸) シンガポールST指数 3,400 350 同国の株式市場は、金融や不動産などサービス業の構成 比が高いという特徴を有するなか、今後、ASEAN経済の発 2,900 300 展に伴い同分野の成長が期待されることなどから、株価は 堅調に推移していくと考えています。 2,400 250 1,900 200 1,400 04/10/28 09/10/28 150 14/10/28 (注)株価は日次、名目GDPは年次(2014年はIMF(国際通貨基金)予想値)ベース (出所)Bloomberg、IMFのデータを基に三菱UFJ投信作成 (年/月/日) 当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定は お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の 連絡なしに変更されることがあります。投資信託は株式、公社債等値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動しま す。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とはなり ません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当社が 信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。