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全体版(147号) [PDFファイル/455KB]

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全体版(147号) [PDFファイル/455KB]
かながわ女性センターだより Wave
2014年2月
【特集】
147号
(年2回掲載)
社会参画セミナー『江の島塾』を開催しました
【相談室から】
コラム‐夫がうつになって‐
【インタビュー】
みんなでつくる男女共同参画社会
かなが わ女 性セ ンタ ーとの 協働 によ り、 社会参 画活 動推 進事
業としてセミナー等を実施したグループにお話をうかがいます。
【図書館情報】
図書で知る、考える
女性の貧困の連鎖からくる問題点を考える/貧困に関する文献を探すヒント
【世界の女性たち】観光業で貧困削減と男女平等を
0
社会参画セミナー『江の島塾』を開催しました
平成 25 年6月から 11 月にかけて、社会参画セミナー『江の島塾』を開催しました。
『江の島塾』は女性の政策立案能力の向上を図るため、テーマに関する様々な分野の専門
家の話を聞き、意見交換やグループワーク、模擬議会等を通して、現状を変える手がかり
を考え、政策を企画・立案・発信する手法を学ぶ講座です。講座期間中には県議会見学や
ミ
ナ
イ
オ
ス
修了生のグループであるMINA-EOSが主催する交流会も行われ、社会に参画するた
めの学びや交流が盛んに行われています。『江の島塾』は、かながわ女性センターが主催
する様々な講座の中で最も歴史が長く、市町村議会、各種審議会や委員会、NPOの設立
や活動に数多く意欲的な女性を送り出してきました。
今年は「女性の貧困の連鎖からくる問題点を考える」をテーマに、以下のプログラムで
全 12 回の講座と、公開講座を開催しました。
●平成 25 年度社会参画セミナー「江の島塾」日程・内容
月日
6/1
1日目
6/15
2日目
内
女性の参画が社会を変える
容
講
実践と現状
女性と貧困、その見えにくさを考える
中央大学
教授
広岡 守穂氏
県立保健福祉大学
講師
ゼロから暮らしを考えよう
師
岩永 理恵氏
―最低限度の生活とは何か―
6/22
3日目
6/29
公開講座
7/6
4日目
7/20
5日目
若い女性の貧困支援の現場より見えること
女性の雇用と貧困を考える
男女共同参画フォーラム「人生 100 年時代の生活
設計―あなたの一生と働き方―」
単身女性のための更生施設
生活相談員 うてつ あきこ氏
昭和女子大学
教授
森 ます美氏
評論家・NPO法人高齢社会を
よくする女性の会
理事長
樋口 恵子氏
NPO法人しんぐるまざあず・
なぜシングルマザーは貧困なのか
ふぉーらむ
女性の貧困が子どもの貧困を招く
市民社会デビュー
理事長
―参加と政策づくり―
横浜国立大学大学院
准教授
政策提言グループワークⅠ
―“1人”の課題を“社会”の課題に―
1
赤石 千衣子氏
椛島 洋美氏
7/ 27
6日目
9/7
7日目
9/28
8日目
10/5
9日目
10/19
神奈川県のお財布をのぞいてみよう!
「陳情書・請願書を作ってみよう!」
政策提言グループワークⅡ
政策提言グループワークⅢ
11/9
12 日目
お茶の水女子大学
研究員
大海 篤子氏
准教授
椛島 洋美氏
横浜国立大学大学院
―みんなでトライ!政策案の作成②―
コミュニケーションスキルとプレゼンテーション
政策提言のプレゼンテーション
山野 良一氏
横浜国立大学大学院
―みんなでトライ!政策案の作成①―
11/2
11 日目
教授
自分らしく生きるために課題解決にチャレンジ!
―発信力を身につけよう!―
財政課職員
千葉明徳短期大学
子ども達の貧困をなくすために
10 日目
神奈川県
准教授
椛島 洋美氏
成蹊大学
非常勤講師
山口 容子氏
横浜国立大学大学院
―私たちの政策提言を発表しよう!―
模擬議会を体験しよう
准教授
椛島 洋美氏
お茶の水女子大学
―あなたも議員になって議論にトライ!―
研究員
大海 篤子氏
まず1日目は女性の社会参画の現状を学び、どんな問題意識を持って参加したのかを受
講生同士で共有し、講座がスタートしました。
テーマである「女性の貧困の連鎖からくる問題点」を、様々な分野の専門家の講義を通
して掘り下げ、そのためにはどんな政策が必要なのかを考えながら講座は進んでいきまし
た。
■なぜ女性は貧困に陥ってしまうのか?
2日目は、貧困の定義や女性の貧困の特徴など基本的なことから学び、最低限度の生活
とは何かについて検討しました。
3日目は、貧困状態にある若い女性の現状について講義がありました。貧困状態にある
若い女性は、仮にホームレスになると性暴力をはじめあらゆる暴力の危険があることから、
できるだけ「屋根のある状態」を確保しようとするため、DV(ドメスティックバイオレ
ンス:同居関係にある配偶者や内縁関係者の間で起こる家庭内暴力)のある家庭、居候、
性風俗産業で耐えていることも多く、その上自尊心が奪われている(関係性の貧困)状態
が共通して見られ、人間関係をつくるのが難しいということを学びました。
さらに、女性の雇用の現状は、数値や調査から、非正規雇用の7割を女性が占め、男女
間に賃金の格差があり、正規職員でも年収 220 万円未満の女性は 22.7%にまで達する
(男性は 4.9%)こと、それが女性の貧困を引き起こす原因として挙げられました。
4日目は就業が不安定であることに加え、子どもを抱えるシングルマザーは、子どもの
情況に自身の就労の継続が左右されることや、子どもの教育費負担が重くのしかかり、非
常に不安定な生活に陥り易いこと、シングルマザーは子育てに、金銭的・精神的に余裕が
なく、親の貧困は子どもの貧困にも繋がってしまうこと等、『女性』の貧困について、女
2
性ならではの課題や、歴史的経緯とこれから起こりうる問題について学んでいきました。
また、6月 29 日には、女性が抱える課題を現在も社会に提起し続けている評論家の樋
口恵子氏の講演会も、江の島塾の公開講座として行われ、高齢女性の貧困の視点からお話
していただきました。この日は男女共同参画週間※の最終日であり、男女共同参画フォー
ラムも兼ねて開催され、多くの方が聴講しました。
※男女共同参画週間:「男女共同参画社会基本法」の公布・施行日である平成 11 年 6 月 23 日
を踏まえ、国の男女共同参画推進本部が、毎年 6 月 23 日から 29 日までの 1 週間を「男女共
同参画週間」として定めたものです。様々な取組を通じ、男女共同参画社会基本法の目的や
基本理念について理解を深めることを目指しています。
■「女性の貧困からくる問題点」を解決するために∼グループワークの手法∼
講座の折返し地点が近づいた5日目、いよいよ「政策提言グループワークⅠ」が行われ、
講座後半で取り組む政策提言作りに向け、政策提言をする際のポイントを学び、その後受
講生は3つの班に分かれ、今感じている問題とそれをどう解決すれば良いのかを真剣に話
し合いました。
6日目は、県の財政について、実際に財政に携わる職員による講義があり、どの時期に
政策提案をするとよいかなどにも触れて学びました。午後には、子ども達の貧困の現状と
子ども達の貧困をなくすためにどうしたらよいかについて学びました。講義後には各班で
政策提言グループワークのテーマを絞る話合いを行いました。
■政策提言にトライ!
講座は後半戦へ。後半は、グループワークを中心に、
政策提言の具体的な手法や、プレゼンテーションの技法
など、自分たちの思いを政策として表現するにはどうし
たらよいのか、そして実際に自分たちでつくった政策を、
どのように人に伝えるか、に重点を置いた講義が続きま
した。
7日目、1ヶ月の夏休みを経て講座が再開しました。
7月までの講義のおさらいをしながら、実際に陳情書、
請願書の作成に取り組みました。陳情書は講師の添削を
グループワークでは活発に意見が飛び交いました。
受けて講義後のグループワークで修正し、最終日の模擬議会で取り上げました。
8日目「政策提言グループワークⅡ」は、自分たちが取り組みたい課題について、講師
から以下の5つの視点を示され具体的に検討をしました。
① 行政上の構造:所轄の問題、既存のシステム
② 既存の法制度との関係:法律の範囲でできることとできないこと
③ 予算:だれがお金を用意するのか、人のお金をあてにできない
④ 人員:動いてくれる人はいるのか
⑤ 成果:時間とお金と労力を使う以上、目に見える成果を必要とする
9日目「政策提言グループワークⅢ」は、午前中、担当講師のほか、ポーランドからい
らした研究員の先生もグループワークの指導に加わり、午後は各班自主作業でのグループ
3
ワークを行いました。
講師は、プレゼンテーションに向けて
(1)グループの提案
(2)提案するにあたり、着目した問題
(3)その問題の背景
をまず整理した上で、これらについて、なぜ問題と思ったのか、これまでの経緯、現在
のデータ、他の自治体や国での取組みなども含めると説得力が出ると示しました。また、
(4)提案の目的
(5)具体策の検討
にあたっては、誰が動く、動かすのか、何をするのか、予算の根拠と財源はどこにある
のか、どこで行うのか、いつやるか、人をどうやって集めるのか、といった項目を示し、
受講生は集めてきた資料や女性センターの図書館も利用して検討しました。
10 日目「コミュニケーションスキルとプレゼンテーション」では、元アナウンサーの
講師から、上手に発信することと印象的なプレゼンテーションについて、受講生同士の対
話実習や、プレゼンテーションの撮影実習を通じて学びました。
前半は呼吸法の実習に始まり、診断テストで自分のコミュニケーションパターンを知り、
言いにくいことをさらりと伝える練習(DESC法)、相手に気持ちよく話してもらう聞
き方の練習のあと、スピーチの準備をしました。
後半は、発声練習のあと、スピーチの練習を重ねながら、時間をオーバーしたら、何を
落とすか決め、余ってしまったらエピソードや感想、呼びかけを加えるという先生からの
アドバイスも踏まえ、『私の伝えたいこと』について各受講生が 1 分スピーチを練り上げ
ました。短く効果的に伝える方法(PREP法)を学び、結論→理由→具体例→結論の論
理構成と、“どう見せるか”“どんな声で話すか”“どう話すか”を確認し、一人ずつス
ピーチを撮影・収録しました。撮影後は一人一人のスピーチを再生し、先生からのアドバ
イスをいただきました。
スピーチを撮影し、再生し全員で振り返ることは予告されていたものの、緊張した受講
生も多かったようですが、実際に自分がどのように話しているのかを知り、それについて、
話し方について訓練を重ねたアナウンサーである講師からのアドバイスを受けることがで
きる講義は大変有意義であったようです。
■いよいよ、政策提言プレゼンテーション
コミュニケーション、話し方、プレゼンテーションの実技・実践を行った後、11 日目、
いよいよ、政策提言のプレゼンテーション当日を迎えました。
講師が見守る中、3班のプレゼンテーションが行われました。
A班は『広げよう!かながわのSSW』と題し、SSW(スクールソーシャルワーカー)
という、小中学校や教育委員会で働く福祉相談員を取り上げました。虐待や貧困などの家
庭課題は、家庭内だけでは解決できないものも多いため、子どもや保護者のSOSを受け
取り、アクションを起こせる専門家であるSSWの必要性が叫ばれていますが、認知度の
低さや人手不足、教員の負担が大きいなど、県内の支援体制には課題が多くあります。A
班は、学校と家庭だけでなく、地域にも、SSWの存在が認知されるような周知の徹底、
4
学校を取り巻く人々がSSWに繋がれる体制作りを訴えました。
B班は、『女性の就活しゃべり場カフェ+1(プラスワン)−仕事の楽しさを知ろう−』
という就労支援策を提案しました。
これは就業について悩んでいる女性が、自分の身近なところで気軽に、本音で相談でき
る場所としてカフェを設け、同じ境遇の経験者の話を聞けるイベントの開催等を通じて、
就職について情報を得ることのできる場づくりを目指したものです。まずは単発のイベン
トから始め、将来的には相談員が常駐するカフェとしての運営を計画しています。
C班は、『DV被害者生活再建支援センター』の設立を提言しました。DVの被害者が、
DVから逃げた後の精神的ケアを受けることができ、ホッとできる場所として、従来のシ
ェルター等とは違う、『DVについて勉強した、自治体から認定を受けたDV被害者サポ
ーターのいるセンター』が必要であると述べました。班員は実際に先進的な自治体の支援
体制を見学し、提言に盛り込みました。
■より一層の女性の社会参画を目指して
最終日の 12 日目は、7日目の講座で作成した陳情書を常任委員会(※)形式の模擬議会
で検討しました。
各班の陳情内容は次のとおりです。
A班「新成人の年金加入推進についての陳情」
(内容)新成人の年金加入を強く促すため、成人式に年金に加入する必要性をアピール
するコントなどを式典に盛り込む。
B班「元気な高齢者が働ける場の創出についての陳情」
(内容)元気な高齢者が働き続けることができるコミュニティビジネスの場をつくる。
C班「ファミリーサポートセンター利用料金助成についての陳情」
(内容)低所得者向けファミリーサポート利用料金を半額助成する。
※常任委員会とは?
国に設置されている国会や、県に設置されている県議会
などの議会は、限られた会期の中で、たくさんの議案や請
願・陳情などを審議します。そのため本会議の議決に先立
ち委員会を設け、専門的かつ詳細に審査します。そのうち
常設されているものを常任委員会といい、それぞれの所管
事項について調査、本会議から付託された議案や請願・陳
情を審査しています。
模擬議会では様々な立場で意見交換をしました。
模擬議会では常任委員会運営シナリオにしたがって、受講者が議長役・議員役・行政役
の立場を体験し意見交換することにより、陳情した事項が政策として実施するに適切なも
のであるかどうかを検討しました。陳情案を作成した班が行政役となり用意した資料から
回答しますが、他の班の陳情内容についても調べ、質問内容を考えて模擬議会に望んだ受
講生もいて、より深い学びにつながりました。
5
また、模擬議会終了後には、公助・共助・自助と社会における企業・団体の市場という
力、そのほかのNPOなどの団体の力について、社会的な貧困と年金制度、女性の低賃金、
女性の労働力率の上昇と子どもの預け先など各班の陳情に関する講師による補足講義が行
われ、みんなで力を合わせて問題解決に向けて頑張ろうと締め括り、講義が終了しました。
その後行われた修了式では、全講義の7割以上出席した受講生に女性センター館長から
修了証が手渡されました。
受講生は、
・自分の生活が政治政策と直結していることがわかり
ました。先生がおっしゃったように「行動につなげ
ないと社会は変わらない」ことを実感し、行動への
敷居が低くなりました。
・新しい情報、新しい視点を得ることができ、現実的
な課題を皆で話し合うことができる仲間もできたこ
とに感謝しています。
・講師の先生方からだけでなく、受講されている方か
らの学びも大きかったです。
一人一人に修了証が手渡されました。
・物事の見方が広がり、ニュースを観るのが楽しくな
り、政治や選挙に興味がわきました。
・修了証を頂けて達成感があります。
・仕事もしているので、続けられるだろうか不安でした。でも他の参加者の貴重な意見も
聞けたので、参加してよかったです。
といった感想を残し、5ヶ月に渡る、全 12 回の講座を終えました。
6
相談室から
コラム∼夫がうつになって∼
女性のための総合相談には、さまざまな悩みが寄せられますが、やはり多いのは夫婦・
家族間の悩みです。長い人生の間には様々な危機が訪れることがあります。こんな時、み
なさんならどうなさいますか?
「どうしたらよいのかわからなくて・・」
Aさんの声は元気なく、戸惑っている様子がうかがえました。
うつで休職中の夫との関係に悩んでいるとのことですが、何から話し出してよいかわから
ないような感じでしたので、面接相談にお誘いしました。
元々夫は几帳面で真面目な性格だったそうです。
おとなしいAさんとは仲のよい夫婦で小学生の長女と幼稚園の長男がおり、Aさんの両親
と同居しています。
まめな夫は以前から子どもたちの世話もよくしてくれてAさんより丁寧なくらいでした。
同居の両親ともうまくいっている方だと思っていました。
夫は、仕事もこつこつと真面目にやって成果を出し、上司からも一目置かれるような存
在でしたが、昇進したあたりから夫の様子が変わってきました。緊張しやすい夫は毎日遅
くまで仕事の準備や後片付けに追われ、予期せぬトラブルの後始末もしなくてはならなく
なりました。始発出勤、終電帰宅の生活が続くようになると責任感の強い夫は眠れなくな
り、とうとう半年たつ頃にうつと診断され、休職してしまいました。
Aさんは専業主婦で家にいることが多いのですが、昼間は寝てばかりの夫に配慮して子
どもたちにも静かに過ごすよう注意はするものの続くものではありません。
そのうち夫は些細なことで不機嫌な顔をするようになり、Aさんや両親とも口論になって
しまうことが増えてきました。すると夫は「死にたい」と家を飛び出し、心配したAさん
が心当たりを捜し歩く日々で気が休まらなくなりました。
また、夫が、静かにできない長男に手をあげることすらあります。
家の中は息がつまるようで、元気がなくなった長女のことも気にかかります。
近頃では心配症なAさん自身も眠れなくなり、両親と、夫のことについて相談するのも
億劫になってきました。
病気の夫のことは自分が支えてあげなくては、と思うのですが、気力がなくなり、そのこ
とでまた自責の念がわいてきます。
「いつまでこんな生活が続くのでしょうか。夫は本当に病気が治れば元に戻るのでしょう
か。」
7
Aさんの夫は通院していますが、Aさんご本人は、夫、子ども、両親の世話に明け暮れ、
ご自身の不調には何の対処もしてない様子でしたので、精神保健相談を勧めました。
精神保健相談を受け持つ医師に、これまでの状況、本人の不調等について聞いて貰い、
受診を勧められるとAさんは少しほっとされたようでした。
また、夫への対応についてもアドバイスを受け、何とかやっていこうと思えるようになり
ました。
Aさんはこれまでも大変努力をされて家族のために頑張ってきた方です。女性センター
の相談窓口では、Aさんをねぎらいつつ、ご本人自身の安全と健康について一緒に考え、
少しずつ問題を解決していけるよう寄り添う相談を心がけています。
当センターの「女性総合相談」では、皆様からの相談をお受けしています。相談は無料
で、相談者の秘密は厳守いたします。一人で悩まずにぜひご相談をお寄せください。
※ご紹介した相談は、特定の事例ではなく、相談室に寄せられる様々な相談を織り交ぜ
て構成したものです。
8
Interview
‐ みんなでつくる男女共同参画社会‐
かながわ女性センターとの協働により、社会参画活動推進事業※としてセミナー等を実
施したグループにお話をうかがいます。
※社会参画活動推進事業:男女共同参画社会の実現をめざし、地域の具体的課題の解決に役立つ事業企画を、
NPO等から募集し、かながわ女性センターとの協働により実施する事業。毎年3月に応募受付を始め、5
月の選考審査会で委託団体を決定する。1企画あたり10万円を限度に県が委託料を支払う。
今回のお客様は、「キャスナ」の田中正子さん、一戸法子さん、鈴木ちひささん、高橋陽子さんです。
「キャスナ」プロフィール
人々が安心して働き学ぶことのできる社会を築くために、セ
クハラ、パワハラの防止および解決に向けて、研修講座や啓発
事業などを行っているNPO法人。キャスナ(KaSNA)は、「神
奈川セクハラをなくす会」の頭文字をつなげたもの。
かながわ女性センターの社会参画活動推進事業として、平成
24 年度に、「企業・団体・個人のための講座―ハラスメント防
止とメンタルヘルス対策―心身ともに健康な明日へ!」、平成
25 年度に「男女共同参画推進リーダー養成講座―セクハラ・パ
ワハラのない社会を目指して―」を企画・実施した。
左から、鈴木さん、田中さん、一戸さん、高橋さん
Q
キャスナの設立経緯をお聞かせください。
2003年、神奈川県立かながわ女性センター主催の「男女共同参画推進リーダー講座」
を受講したことがきっかけとなりました。この講座は、セクハラの問題の解決に取り組むリ
ーダーを養成するための講座でした。
応募するには小作文の提出が求められたこともあり、参加者には、すでに男女共同参画の
推進に何らかの形で関わっている方が大勢いました。私たちも、心理相談の相談員だったり、
市役所の男女共同参画担当者だったり、女性問題に取り組む市民活動団体のメンバーだった
りとそれぞれの立ち位置があったのですが、それまでの取り組みの中で、男女共同参画社会
の推進には、セクハラ問題に向き合う必要があると感じていました。
そんな中、女性センターの講座企画担当者から、講座を受講するだけでなく、セクハラを
なくすために活動する団体を作ろうではではないかという熱心な働きかけあり、講座修了後、
賛同した受講生によりキャスナが発足しました。勉強しながら活動も同時にスタートしたと
いう感じでした。
Q
日本全国から講演やワークショップの依頼があると聞いています。どんなところで講演をさ
れているのでしょうか。また、それぞれのスキルアップはどのようにされているのですか?
企業、教育機関、学校PTAなど様々な分野からの依頼があります。対象も、企業の従業
員、高校生、教員、セクハラの被害者だったりといろいろです。
現在キャスナのメンバーは十数人で、講演依頼は年間20件ほど。依頼された日に時間が
9
取れるメンバーが二人一組で講師になります。だれもがいつでも講師を務められるよう、日
頃から一人一人が学び続けるのはもちろんのこと、毎月勉強会を開き、さらに年に1回合宿
をして各自が自分のテーマについて発表をしています。
また、講演依頼を受けた場合は必ず臨時の会合を開き、講師を務めることになった者が予
行練習をし、みんなで内容について議論をします。
お互い知り合いでもなかった普通の市民が講座で集まって、団体を作り、切磋琢磨しなが
らハラスメント問題の専門家になっていったのがこの会の特徴。振り返ってみると、成長で
きて楽しかったなあと思います。
Q
キャスナのセクハラ・パワハラ講座の特徴は何でしょうか?また、平成 25 年度の社会参画
活動推進事業で企画・実施した講座で発信したかったことは何でしょうか?
キャスナの講座では、お互いの考え方・感じ方を語り合い、自分の心の中にある“意識”
に気づいてもらうワークショップを、ふんだんに取り入れています。
なぜならセクハラやパワハラは、人々の心の根底にある「男らしさ・男らしい働き方」、
「女らしさ・女らしい働き方」、「固定的な性別役割」といった意識に起因していると考え
るからです。より多くの人が、根底にあるその意識に気づき、「なぜハラスメントが起こっ
たのか」を考える機会を持つことが、ハラスメントの防止には大切だと考えます。「こうい
うことを言ってはいけない」「ああいうことはしてはいけない」と訴えることでは、ハラス
メント問題の根本的な解決にならないと思うのです。
平成 25 年度の社会参画活動推進事業「男女共同参画推進リーダー養成講座」は、そういう視
点で講座ができる人材を育成することを目的に企画・実施しました。
Q
今の日本において、男女共同参画社会の実現はどれぐらい達成されていると思いますか?
また、かながわ女性センターに期待することを教えてください。
世界経済フォーラムが発表した「国際男女格差報告2013年」によると、日本は世界1
36か国中105位ですから、男女共同参画社会の実現にはほど遠いという印象です。
かながわ女性センターに期待することは、『202030』※ の目標を達成するために、
旗振り役になることです。行政機関だからできる市民への働きかけがあると思います。逆に、
行政機関だけでは難しいことは、団体や有識者、地
域とネットワークを作って、知恵を借りてください。
協働が大切だと思います。
※202030:平成15年度に男女共同参画推進
本部決定が決定した「社会のあらゆる分野におい
て 2020 年までに,指導的地位に女性が占める割
合が,少なくとも 30%程度になるようにする」
という目標。
〔キャスナが編集や発行した冊子〕
10
図書で知る、考える
◆
女性の貧困の連鎖からくる問題点を考える
◆
貧困に関する文献を探すヒント
今回は、女性センター図書館所蔵資料の中から、「女性の貧困」に関する資料を紹介します。
また、「貧困」に関する文献を探すヒントを紹介します。
◆⼥性の貧困の連鎖からくる問題点を考える
1.【グラミン銀行を知っていますか
貧困女性の開発と自立支援】
坪井ひろみ/著 東洋経済新報社 請求記号:F7-ツボ
……バングラデシュにあるグラミン銀行は、貧しい女性たちを社会開発・人間開発へと促すシステムを開
発してきました。貧しい女性のための無担保融資の仕組みをうまく活用しながらどのように生活の質を
高めてきたか、グラミン銀行の仕組みと女性たちのかかわり方をわかりやすく説明しています。
2.【貧困研究
Vol.6 】
貧困研究編集委員会/編
明石書店 請求記号:G8-ヒン
……家族・子どもの貧困などさまざまな貧困問題を研究している貧困研究編集委員会ですが、
6 号で貧
困研究の課題として「女性と貧困」を取り上げています。
3.【出会い系のシングルマザーたち
鈴木大介/著
欲望と貧困のはざまで】
朝日新聞出版 請求記号:G7.4-スズ
……「売春をするシングルマザーこそが、日本の貧困の最底辺ではないか。」という推論をもとに取材し
たルポ。著者は「本書をきっかけに、声をあげることもできない母親たちの
無念に、少しでも気づ
いてくれる人が増えることを願う。」と語っています。
◆貧困に関する文献を探すヒント
1.かながわ女性センター図書館のOPACを調べる(検索手順含む)。
※OPAC=Online. Public Access Catalog(オンライン上で図書館の所蔵資料を検索することができるシステム)
①まず、検索に役立ちそうなキーワードを考えます。
●「貧困」「格差」「不平等」「社会階層」「生活保護」「社会保障」「POVERTY」など。
インターネットで類似語を検索するのもひとつの方法です(Weblio類語辞典など使用)。
●Webcat
Plus(後述)の絞込欄の連想ワードも参考になります。
②OPACのタイトル欄や全項目欄にキーワードを入力します。
●全項目欄はタイトル、著者、キーワード(件名)欄などに「貧困」と言う言葉がある資料を全て検
索しますので、便利な反面、余計な情報も多くなります。
③絞り込みます(検索結果が多すぎる場合)。
●新たなキーワードや著者名、出版年の新しい順などで絞り込むと見やすくなります。
④請求記号をもとに書架に行って現物資料を探します。
●貧困と一口にいっても、貧困全般、子どもの貧困など、切り口によってさまざまな貧困問題の文献
11
があり、女性センター図書館では、配架されている書架が違います。例えば、貧困全般は社会病理
の観点からG(社会)の書架に、子どもの貧困は児童福祉の観点からH(社会福祉)の書架に配架
されています。女性センター図書館の職員にお気軽にお尋ねください。
2.入門的な図書や雑誌論文に掲載されている参考文献から関連する図書や論文を探す。
●参考文献が掲載されているページは、一般的に、図書の場合巻末や章末に、論文の場合文末にあり
ます。
3.インターネットで探す。
(1)日本の図書館・研究機関が所蔵する図書や論文、新聞記事を探す。
神奈川県立図書館OPAC:横断検索(図書)
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/opac/CrossServlet
●神奈川県にある公共図書館や一部の大学図書館の所蔵資料を一括検索できます。このサイトで検
索された貸出できる資料は無料で女性センター図書館に取り寄せることができます。
Webcat Plus(図書)
http://webcatplus.nii.ac.jp/
●文章を丸ごと質問文として検索できる連想検索がとても便利。探したいことが漠然としている時
に強みを発揮します。検索画面右端にある連想ワードはキーワードを探す時に役立ちます。
CiNii
Articles=サイニイアーティクル(論文)
http://ci.nii.ac.jp/
●大学の研究紀要や国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなどに収録されている学術論文を
検索できます。(一部の論文は全文を無料ダウンロードできます。)
アジア経済研究所OPAC(図書・論文)
http://webopac.ide.go.jp/webopac/catsrd.do
●日本語だけでなく、英語や中国語などの所蔵図書や雑誌記事が検索できます。
社会・労働関係論文データベース(論文)http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/kensaku/ronbun.html
●法政大学大原社会問題研究所・大原デジタルライブラリー内のデータベース。約20万件の論文が
探せます。大原デジタルライブラリーでは、大原社研刊行の『日本労働年鑑』選り抜き18巻分を
全文無料でダウンロードできます。
国立女性教育会館文献情報データベース(図書・論文・新聞記事)http://winet.nwec.jp/bunken/
●男女共同参画関係の所蔵資料を検索できます。特に無料で新聞記事を探せる点で有用な
データベースです。
(2)国際機関のホームページから文献を探す。
世界銀行 オープン・ナレッジ・リポジトリ(英語)https://openknowledge.worldbank.org/
●貧困からの解放を謳っている国際機関。ここでは調査研究と報告書等が無料公開されています。
世界銀行 eLibrary(英語)
http://elibrary.worldbank.org/
●世界銀行の出版物や雑誌論文の概要を無料で検索閲覧できます。(全文閲覧は有料です。)
国際労働機関 ILO Labordoc(英語)
http://labordoc.ilo.org/?ln=en&as=1
●1919年以降、ILOで刊行した8万以上の文献を検索できます。大半の文献が無料で全文閲覧できま
す。雑誌記事などの文献の形態や地域などで絞り込み検索をすることがで きる詳細検索画面が
オススメです。
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このコーナーでは、かながわ女性センターのホームページ
世界の女性たち
「海外女性時事情報(ニュース)」に掲載している記事の
一つを紹介します。「海外女性時事情報(ニュース)」
一つを紹介します。「海外女性時事情報(ニュース)」で
は、国連関係の記事を翻訳訳/抄訳し、外国の女性の状況
抄訳し、外国の女性の状況
をお伝えしています。
(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f70139
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f70139)
日本では“おもてなし”が話題になりましたが、世界では観光をどのようにとらえているでし
ょうか?
国際社会における観光の意識を高めるために、
国際社会における観光の意識を高めるために、1980
年に世界観光機関によって定められた“世
界観光の日”(9/27)に際し、ILO
ILO 高等観光専門官が貧困削減と男女平等実現における観光業の役
割について語った一部をご紹介します。
一部をご紹介します。
観光業で貧困削減と男女平等を
2013.9.25
ジュネーブ(ILO ニュース)
観光業は過去 10 年間で、世界各国において成長と雇用の主要因として貧困削減の主要な促進力
となってきましたが、今後 10 年間においても、この傾向は加速することが期待されます。(中略)
最新の ILO 資料によると、およそ 12 件の就職口のうち 1 件がこの部門であり(
件がこの部門であり(2 億 6 千万件以上)
世界総生産の約 9% に貢献しています。また、発展途上国および後発発展途上国*1 の女性、青年、
移民労働者、農村部住民にとっては、観光業が仕事の世界への第一歩として役立っており、実際
に観光業は、後発発展途上国の輸出額の 33%、島嶼(とうしょ)後発発展途上国
%、島嶼(とうしょ)後発発展途上国*2では 65%を占
めます。
観光業における女性 この産業では、女性が労働者数の 60%から 70%を占めますが、その
%を占めますが、その
労働条件は理想には程遠く、男性より賃金は低く、管理職は少ないのが現状です。
また女性は、ハウスキーピングや接客など、高い技術を必要としない賃金の低い仕事に偏
り、バーテンダー、ポーター、庭師、保守管理員などの男性向けの同レベルの仕事でも女性
より賃金は高い傾向がみられます。特に観光業の女性労働者は一般的に自営業で、小規模な
家族経営の観光業者も多く、女性への報酬の有無がはっきりせず、女性が収入に貢献してい
ても労働に見合った適切な報酬を得ていないことも多くあります。
今後 10 年間も、多くの国々や地域における人口統計、経済、技術の変化の推移を考える
と、ほぼ世界中で、女性がホテル業、外食業、観光業全般の労働力の主流となるでしょう。
と、ほぼ世界中で、女性がホテル業、外食業、観光業全般の労働力の主流となるでしょう。
(中略)人件費の占める割合が多い観光業では、地元で人手を調達すること、価値連鎖*3が
進むこと、持続可能な観光業の発展のために統合的に取り組むことなどから、貧困緩和に貢
献する将来性があります。また、直接的な雇用創出だけでなく、この部門を左右する多種多
様な零細企業が世界各国にあり、ホテル業、外食業、観光業には貧困削減に大きく貢献する
潜在的な可能性もあります。
しかしこれらを活用するには、この部門の将来的持続性、競争力、生産性を保証するよう、
観光業全体で“働きがいのある仕事”*4の促進を追求してゆく必要があります。
注*1 後発発展途上国: 国連が定めた、開発途上国の中で最も開発が遅れている国
*2
島嶼(とうしょ)後発発展途上国
島嶼(とうしょ)後発発展途上国:
島から成る後発発展途上国
*3
価値連鎖:製品やサービスが消費者に届くまでの付加価値を生み出す連続したプロセスのこと
*4
働きがいのある仕事:1999
1999 年に ILO が提唱した考え方で「働きがいのある人間らしい仕事」
※全文はこちらをご覧ください。
“世界観光の日
観光業で貧困削減と男女平等を”
2013/9/25
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f70139/p
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f70139/p727117.html
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