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Title 多国籍企業と内部化理論 - Kyoto University Research
Title Author(s) Citation Issue Date URL 多国籍企業と内部化理論 - S.ハイマーから折衷理論にい たる理論的系譜とその検討(上) - 板木, 雅彦 經濟論叢 (1985), 136(2): 153-174 1985-08 https://doi.org/10.14989/134090 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University zuzHPV ﹄、ヲゴエヨ国首安置寺刻家略構障策-↓九九号 ・ 司号必h 面河 第 1 3 6巻 第 2号 1 8 世紀におけるバノレノレマンと主権 ( 3・完〕・・…木 L 腎 喜代治 多国籍企業と内部化理論(上〉…・・ 現代における農家経済構造と負債問題(下〕・ 旅客輸送の時系列分析……・・・ 1 9世紀前半期イギリ λ ・ ・ 板 木 ・大 塚 ・・…ー・張 雅 1 彦 25 茂 47 風 波 64 隆 雄 82 のプァーニ月における 土地寡頭制と鉄鉱山業 -阿知羅 昭 和 60年 8月 東郡穴号紘務事審 ( 1 5 3 )2 5 多国籍企業と内部化理論 一一一S ハイマーから折衷理論にいたる理論的系譜とその検討(上〕一一 板 木 雅 彦 はじめに 多国籍企業をめぐる内外の諾研究は,いまや,伝統的な資本移動論の範囲を 越えて,貿易論,国際金融論はおろか,経済発展論,国際経営論,いわゆる商 北問題,さらには同家論,地域経済論にまで及んでいる o このことは,とりも なおさず,多国籍企業の世界的展開が個別資本の経営構造,地域経済,国民経 済の各々にはかりしれない影響力を及ぼしつつある時代のなかでわれわれの経 済生活が蛍まれていることを示している。これに対応して,現在までに積み重 ねられてきた諸研究が,理論,実証の別を問わず,実に様々の命題一ーそのい くつかは矛盾し,他のいくつかは重複しているーーを披湿してきたことは,改 めていうまでもない,イギリスの経済学者ラノレ ( 5 .L a l l ) によれば,これらは 以下のように大別されるという。 ( 1 ) 対外投資擁護派 1 ビジネス・スクーノレ的アプローチ おもに経営テクニツクの側面か ら効率性を追求するもの 2. 伝統的経済学派的アプローナ 新古典派の前提の上で議論を展開す るもの 3 新伝統派的アプローチ 市場の不完全性,多国籍企業の独占的ない しは寡占的性格を前提にして議論するもの ( 2 ) 対外投資批判派 1. I ナシヨナリスト J的アプローチ 多国籍企業に対する国家の厳格 占 も の る す 張 仰な 主 を 制 。規 お 第1 361 , " 第 2号 4 2 従属論的アプローチ 新従属学派の議論を基礎とするもの 3. マノレグス主義的アプローチ 階級闘争の視点から多国籍企業をとら えるもの。 しかしながら,このような,いわば研究の多様化と分散化の中で,従来の議 論を整理し,統一的な多:E籍企業理論としてまとめあげようとする動吉がなか ったわけではない。その一つの試みとして,本稿では, ラノレのいう対外投資擁 護派のなかの新伝統派的アプローチに分類される内部化理論をとりあげ,ハイ マ ,キ γ ドノレバ 以降の欧米の多国籍企業理論の展開の中に位置づける ガ ことによって,その有効性と限界とを明らかにしてきたし伊。なお,構成は以 下の通りである。 I 内部化理論にいたる理論潮流 L ハイマーと優位性の命題 2 優位性を求めて 内部化理論の展開 E 1.新たな問題 直接投資と輸出,技術提携の選択 2 . 新たな企業像と問題の深化一一司内部化理論の展開へ向けて 3. 内部化理論の展開 E 内部化理論の検討(以下,次号〕 1 内部化理論の意義と問題点 2. 取引費用の検討 w 諸理論の位置づけ一一むすびにかえて 1 ) L a l l( 2 3 ) 2 ) 内部化の視角からする従来の議論。整理は, Buckley (2J,Rugman ( 2 8 ),折衷理論の視角か 12 J,ま九邦文献としては,入江猪士郎 ( 1 9 ) . 江夏億一 ( 1 5 )等を参照。 らは. Dunning ( ( 1 5 5 ) 2 7 多国籍企業と内部化理論 I 内部化理論にいたる理論潮流 1.ハイマーと優位性の命題 まず第一に取り上げなければならないものは, 1960 年にマサチュ 科大学に提出された a t問 Z i . セッツ工 S .ハイマーの博士号請求論文, TheI叫 ernationalOper~ of N a t i o n a lFirms:A Studyo[ D i r e c t Foreign Investment,であ る。彼の労作の公刊は 1976 年を待たねばならないが(18 ), 当 時 す 亡 に キ γ ド ノレバーガー [22J 等士通じてその存在が知られており,それ以来,四半世紀を へて今なおこり分野田研究者に多大の影響を与え続けている。 ハイマ は,証券投資の理論によヮては直接投資にかかわる諸現象が説明不 可能であることを主張L.,これを裏づけるべ〈五つの統計的事実をとりあげる o 第一に,アメリカ企業の現地借り入れ,第三に,一方におけるアメリカへの証 券投資の流入と他方におけるアメリカからの直接投資の流出,第三に,非金融 会社による直接投資,第四に,特定産業と結びつレた直接投資の分布,第五に, 同一産業内部での直接投資の相互交流830 ここからハイマーは,利子取得をめ ざす証券投資とは異なった,外国企業の支配をめざす直接投資を改めて対外事 業活動 I n t e r n a t i o n a lOperationsと規定し,このための必要条件にかんする画 期的な「優位性 advantageの命題」を引き出した。 このハイマー命題(あるいはハイマ レ =キンドルバーガー命題)は,ハック によれば,一見「人を欺く単純さ」をもって,次のように定式化できる。 「外国進出企業は,進出先の現地企業と競争しうるためには,その不利を補 うためになにがしかの優位性 advantage を持っていなければならな L、。とい うのも,現地企業が,固有の強み 件にかんする知識 例えば,現地の環境,市場,事業の諸条 を持っているからである。 ζ り命題は,一撃のもとに, 対外直接投資の問題士資本移動論から奪い去り,産業組織論の中に引き入れる こととなコた。何故なら,完全市場においては現地企業がつねに外国企業を打 3 ) Hymer[ 1 8 J,pp. 10-23,宮崎訳> 1 0 1 9ページ。 2 8 ( 1 5 6 ) 第1 3 6巻 第 2号 ち負かすことができるだろうから,対外直接投資は存在しょうがないのであ る。」“ また,ラグマ γ も同様の解釈を示している。 「後に,多大な影響を与えたノ、イマーの 1 9 6日年の論文の核心は,あれやこれ やの市場の不完全性に応じて開発される企業国有の優位性 a 五rm specificad vantage を多国籍企業が持っているという点にある。」幻 ノ、イ寸ーは,乙の優位性を次のように説明している。 「生産物の生産過程と販売過程においては,多種多様の機能が見られるよう に,その数と同じだけ多種類の優位性が存在する。企業の優位性というのは, 企業が他の企業より低コストで生産要素を手に入れることができるか,または, より効率的な生産関数に関する知識ないし支配を保持しているか,あるいは, その企業が統遇面の能力において優れているか,生産物差別をもっているかの " いずれかのことである。 J 世界市場の不完全性とそれに応じて企業が保有する優位性,そしてこの優位 性から最大限の利潤を引き出すための手段としての直接投資一一このような直 接投資をめぐる基本的な三つの契機を発見した点に,バックレーとヲグマンは, 、イマーの最大の理論的貢献を見いだしている。実は,このような両者の理解 J は,ハイマー理論の綾小化とある点での誤解を含んでいる。しかし,そのいか んにかかわらず,ハイ 7 一命題が資本輸出論をひとまず証券投資論と直接投資 論に分離する上で決定的投割をはたしたことは,確かである。 こうして, I 何故,対外直接投資が可能となるか」という問いかけに対する 回答を彼によって与えられた緋究者達は,このハイマ一命題を道しるべに,よ れ以降,大挙して新たな課題 すなわち Iい か な る 優 位 佳 が ア メ リ カ の くとりわけ対製造業〉直接投資を設もうまく説明しうるか」 4 ) Huckley(2J .p .71 . .3 6 7 5 ) Rugman ( 2 8 ),p 6 ) Hymer [ 18 J .p p .4 1 4 2 .宮崎訳. 35 ,3 7へーづ。 へと研究を押 多国籍企業と内部化理論 ( 15 7 ) 2 9 し進めていった。 2. 優位性を求めて 彼等が実証的に明らかにし,さらに優位性を特定する理論化の作業に進むに 際 Lて念頭においていた表象は 3 ほぼ以下の三点に要約されよう"。第ーに, アメリカの直接投資と多国籍企業の活動は,製造業では技術集約的な産業や高 所得者向けの差別化された消費財を生産する産業に主に向けられており,他 } j , 大然資源、に基礎をおく産業では資本と技術のいずれか,ないしはそのい Fれも が集約的で,製品を有利な条件で市場に供給しうる産業に向けられている。第 二に,これらの産業部門では,アメリカ多国籍企業が貿易と海外生産のいずれ にも関与する傾向がきわめて強い。第三に,このような多国籍企業は,受け入 れ国の当該産業において最大の生産シェアを占める傾向がある。以上の諸事実 を十分説明しうるだけの優位性を定式化すべく,様々な変数が回帰分析の対象 とされ,さらにその諸成果が理論的に抽象された結果,い〈つかの重要な優位 性が発見された。これらは,企業に特殊な優位性む rn-speci五cadvantages,な いし所有優位性 ownership advantages,と呼ばれたり,あるいはラノレ [23J の場合のように種々の独占とのかかわりを重視して,独占的優位性 monopo l i s t i cadvantages と呼ばれている o ダニングは,これらを整理して第 1表のよ うにまとめている。同表によってわれわれは,多国籍企業のもつ優位性の種々 のタイプを包括的に知ることができるが,また同時に一一後にも述べるよう に,彼が自らの理論を「折衷理論」と命名していることによく示されているよ うに一一いくつか概念上,未整理な点を残している。例えば,企業に特殊な優 位性とは r 何故,直接投資が行われるか」と L、う多国籍企業の存在条件を市 すものにほかならないが,その条件の中に,逆に多国籍企業であることから発 生する優位性 b, cが含まれ亡いる。確かに,現実の優位性と多国籍化現象と 7 ) D u n n i n g( 1 2 J( [ 1 4 J,p .7 3 ふなお,〆エングは,代表的研究として J o h n s o n( 2 1 ) .C a v e s {7J (8] ( 9 J .H i r s c h( 1 6 J .W o l f( 3 4 J .Ozawa [ 2 6 J,L a l l( 2 3 J .帯を羊げてかる。 3日(15 8 ) 第1 3 6巻 第 2号 第 1表企業に特殊な優位性(ある園田企業またはその企業の関係会社 a印刷田が, 他の国の企業に対 t てもつ優位性〕 a 多国籍企業であ畠なしにかかわらず発生するもり -規模と確立された地位,製品または製造工程の多様化,分業と特化をうまく 利用する能力に主として基づ〈もの すなわち,独占力,企業資源のより高い能 力とよりよい使用 ・所有権として特許やその他の法律によコて保護されている技術,商標 ・生産管理・組織・マーケティングのシステム, R & D能力, 人的資本と経験の 「銀行」 -労働,天然資源入金融,情報などの投入財に対す品排他的または有利なアクセス ・規模や買い手独占的な影響力などのために,有利な条件で投入財を入手できる能力 .製品市場への担他的または有利なアクセス ・市場参入の統制などの政府保護 b 既存企業の子会社プラントが新規企業に対してもつもの ・親会社の能力(管理,経首. R &D,マーケティング等の能力〕に対する有利な価 格でのアクセス ・生産だけでなく,購入,マーケティング,金融等の上での結合供給の経済性 C. 多国籍企業であることによって特に発生するもの ・多国籍企業であることによってより広い機会が与えられて強化される土記心優位仕 ・情報,投入財,市場へのより有利なアクセス,および/または,よりすぐれた知識 ・要素賦存の国際的な相違をうまく利用する能力,様々の通貨圏でのりスク等を分散 したり,資木化事の相違を利用できる能力 (出所) D u n n i n g[ 14 J .p .8 0 . は相互作用の関係にあるが,多国籍化の起動因としての優位性と多国籍化の結 果としての優位性とは,理論的に明確に区別きれなければならない。 そ こ で , 多 国 籍 企 業 で あ る こ と ( 多 国 籍 性 multinationality) を 一 つ の 基 準 とするダニ γ グ の 分 類 と は や や 異 な る 優 位 性 の 分 類 を 試 み て い る フ ッ ド コ ヤ ン グ(17]の見解も,ここで取り上げて検討を加えておくことにしようヘ彼等 は,多国籍企業にとっ亡の優位性白源泉を大きく四つに分類する。第ーに,技 術的優位性。これは,技術,情報,知識,無形資本,ノウ・ハウ等の名称りも とに種々の論者によって従来から強調されてきたものだが,注意を要すること 8 ) Hood, Young [ 1 7 ), p p .~8~54. 参照。 多国籍企業と内部化理論 ( 15 9 ) 3 1 は,これが製品や生産工程にかかわる技術草新だけでなく,流通過程,経営管 理全般にわたる「技術』を意味している点であろう。すなわち,ここにはマー ケティ Y グ技術が含まれ,生産技術の標準化に従って,機能上,性能上はほと んど取るに足りない差異をつけたり,ブランド・ネームを定着させたりする製 品差別化の能力が大きな位置を占めることになる。ケロッグ, n コカ・コーラ, インツ,プロクター&ギャンプノレ等のアメリカ多国籍企業の成長を特徴づ けるものは,何よりも 位性は,同 ζ のマークティング技術であろう。 ζ のような技術的優 企業の内部であれば,たとえ国境をまたとうとも,ほとんど追加 的費用なしに移転しうる。他方,国籍のいかんにかかわらず,異なョた企業問 では,この移転はきわめて困難である。 第てに,産業組織から発生する優位性。技術的優位性が多くの場合,独占的 または寡占的市場構造の存在によって支えられ,強化されており.さらに両者 が相互作用の関係にあることが,ハイマーニキンドルバーガー以来,伝統的に 強調されている。例えば,特許権の設定は,その企業に一定期間にわたる技 術・情報独占を許すことになるが,これを支える先端的な研究・開発に莫大な 資本と研究者,技術者の投入を要する昨今の状況をみれば,このことは十分首 肯されうる。また,天然資源への有刺なアクセスが高い生産力を生み出してい る場合にも,このことは明瞭である。ところで,市場支配力の有力な源泉にな りうるという意味で,産業組織に密接にかかわる優位性のーっとして,規模の 経済性があげられる。この場合,二つのタイプとして,プラ Y ト規模の経済性 と企業規模の経済性を区別することが有効であろう。前者が直接的生産過程を 問題とするのに対して,後者はフラント相互間,プラント・事業部問, 事業 部・本社機構間,等の経済性を問題とする。一般的には,生産と資本白集積・ 集中に伴って生産技術と協業・分業の効率性を維持するために,プラント規模 の拡大が一定の水準で限界を画されるりに対して,企業規模の方は, マーケィ Y R & D, グ,金融,経営管理,その他諸機能の集積・集中によるメリットと より効率的な国際的企業内分業を求めて,一つ一つのプヲ y トを生産単位にし 3 2 ( 16 0 ) 第1 3 6巻 第 2号 ながら,いわばマニュファグチュアの倍数法則的と似かよった形で拡大してゆ 〈。しかしながら,プラント規模の経済性は一地点への生産活動の集中と協業 を 組 織 す る こ と に よ っ て は じ め て 実 現 さ れ る か ら , 直 接 投 資 よ り も む Lろ , 本 国への生産活動の集中と輸出を通ずる海外市場への供給に有利に作用する。し たがって,プラント規模の経済性がそれ自体として多国籍化を促進するのでは な く , 海 外 市 場 で の 輸 出 障 壁 , 規 模 。 経 済 性 の 洞 渇 , 本 国 て の 反 ト チ λ ト規制 等,なんらかD阻止要因が直接投資を導きだすことになる。ただし,企業規模 の経済性の場合には,必ずしも地域的集中を必要としないから,直接,多国籍 化を促進する優位性として作用しうることになる山。 第三に,経蛍能力,企業家能力の優位佐。高い教育と適切な宮嚇を受け,十 分な経験を積んだ経営者の存在は,多国籍企業に,現地企業に対する優位性を 付与する。ヒノレトン,インターコンチネ γ タ ノ レ , ノレ・チェー シェヲトン等の国際的なホテ γ がこの例として挙げられる。 第四に,原料への有利なアクセス。天然資源の世界的な偏在は,本来,それ o c a t i o n 叩 e c i f i cadvantages として らが賦存している立地点に特殊な優位性 l 国際貿易を促すが,一旦これら原料に対する特定企業の特権的なアクセ只が確 立されると,その企業に特殊な優位性に転化し,直接投資を導く要因となる。 これらの特権的なアクセスは,例えば,鉱業やプランテ ション農業にみられ 9 ) Iたとえば,ある活淳マニュフアグチュプで鋳字工 l人では 1時澗に 2 0 0 0個の活字を鋳造し, 分切工 l人では 4 0 0 0個士分切L-,磨き工 1人では 8 0 0 0 個を磨〈とすれば,このマユュファクチ z アでは磨き工 1人に勺いて蒔字了 4人と分割ごc2人が充用されなければならなし、。ー ・だから, マニ品ファクチュア的分業はそれぞれの寺砕機能を行う労働者の相対数または労働者群の 相封的な大きさの,数学的に確定された割合を込つ〈りだすのである。マエ z ファグチュア酌分 業は,社会的労働過程り質的な編成とともにその量的な規準と均衡をも発展させるのである。い ろいろな部分労働者群の最も適当な比例数が一定の生産規模について経験的に確定されているな らば,この規模はただそれぞれの特昧な苦働者群の倍数を使用することによってのみ拡大するこ J(マルクス [ 2 5 ) .4 5 4ベーシ J とができる . ただし,マエュファクチュア問分業が工場内分業である 0 に対して,国際的な企業内世業は社 会的分業7)範鴨に含められる。 1 0 ) フν ドロヤングは.二つのタイプがともに輸出に有利に,直接投資に不利に作用すると論じて いるがく H o o , dY o u n g( 1 7 ),pp.4 9 5 0 . ) , ここで述ベたように,両者は区別して論ずべきであ ろう。 多国籍企業と内部化理論 ( 1 6 1 ) 3 3 るような生産段階の支配,あるいほ垂直的に統合された鉱物・食品加工のよう な加工段階の支配,または最終市場やそこにいたる輸送段階の支配から発生す るが,これら各段階での支配そのものは,特定企業がもっている技術,マーケ ティ γ 7, 金 融 上 の 優 位 性 と 結 び つ い て い る 。 そ し て , い う ま で も な く , 特 権 的アクセ九を得た多国籍企業は,内外の市場を同わず強力な独占的,寡占的地 位を確立することができる。ただ,原料への有利なアクセスが直接投資を促す のと同時に,あるいはそれ以上に,この有利なアクセZ を求めて直接投資が展 開 さ れ る と い う 原 因 と 結 果 の 相 互 作 用 が 典 型 的 に 現 れ る 点 に 注 意 Lな け れ ば な らない。 以上,ダニング,フヅドニヤン グによわながら 1 ¥、 か な る 優 位 性 が ア メ リ カの(とりわけ対製造業)直接投資を最もうまく説明しうるか」という聞いに 対して,従来,様々の論者が与えてきた回答を整理してきたu)山。ところで, 1 1 ) フッド=ヤングによれば,上に掲げた凶つり優位性以外に,金融上,貨幣上の優位性を強調甘 る理論潮流がある。 (Hood,Young ( 1 7 ),p p .5 1 5 3 . ) 例え::t,他の通宜に対してアメリカ, ドルに与えられる国際通貨と Lてのプレミアムからアメりカ直接投資を説明しようとするもの (A 1 ib" [l)),多国籍企業が現地企業よりも有利に資金調達できることに優位性を求めるもの, 国際的な証者投資の多様化戦略に原因を求めるもの (Rugman( 2 7 ) ),等々。しかしながら,こ れら諾貝解はハイマ によってすでに批判ずみであって,ととでは改めて取り上げなかったい ハ イマーは,前二者に対して,利子率理論とのかかわりで次0 ようにのべている o 「利了率理論の重要な理論的欠陥は,それが支配 c o n t r o lを説明していないということである もしも,園内よりも国外 I tおいて利子率が高い場合,投資は,国外に資金を貸付ければよいので r( 1 8 J,p . 23 , あって,責付けた企業を土配しなければならない論理的必然性はない. J (HYlIle 宮崎乱 1 9 ベーヰノ.) また,証券投資自多様化についても次のように批判している。 r(両生産活動における利潤の聞に〉負の相関が高いという事実は, アルミニウム生産設情と 電力供給との双方に投資する投資家は,その投資自危険を大幅に縮小させうることを意味してい る。三白、之が,なぜ企業が同時に二つの牛産活動に従事するかについての一つの理由であろう。 しかし,この企業が,必ず Lも他の企業経官の支配を必要としないという点を強調することは重 要であり,事実,この企業は必ずしも他D 企業と何の関係をもっ必要もない。その企業の株主は, もしもかれらが望むならば,それぞれ一つだけの生産活動に別々に世事している二つ司会社の株 (出凶 p.40.同上, 式を買うよとによってかれらの利潤を責定化することもできたはずである。 J 5ベージ。〉 3企 3 1 2 ) r 何故 J r いかなる」と L寸誠に簡明な聞いかげで詰世論を整理する方法はダニング白もりで どこへ直接投資は向けつれるのかよいいかえれば「ど ζ あるが,担によれば,これに加えて, r t優位性が利用されるりか」が独自に問題にされなければならない。この回答は立地論によって 与えら hることになるが,ダニングは枕衰のよろにとの内容を整理している。 ノ w 3 4 ( 1 6 2 ) 第1 3 6巻 第 2号 種々の優位性の摘出が ζ のように包括的になればなる程,他方で,これらを統 一的な理論に編成しなお そ ろ と す る 勤 き が 出 て く る こ とも,また当然といわね 9 7 0 年代の後半に登場した内部化理論は,こりような理論潮流を ばならない。 1 代表するものであった。 I I 内部化理論の展開 1 新たな問題一一直接投資と輸出,技術提携の選択 第一節で検討してきた多国籍企業のもつ様々な優位性がその内容のいかんに かかわらず,直接投資の選択にとって,いわば必要条件にすぎない ζ とに留意 しなければならない。というのも,この優位性を直接投資ではなく輸出や技術 提携によって活用することによっても,同程度の,あるいはそれ以上の特別利 潤を獲得する可能性が残 さ れ て い る か ら で あ る 。 で は ,一体何故,輸出でもな し 技 術 提 携 ( ラ イ セ ン シ γ グ)でもなく,対外活動として直接投資が選択さ れるのであろうか。これが,内部化論者の提起した新たな問題設定であった。 しかし,ある意味では,とうの昔に注目を集めてしかるべきであったともい えるこの問題が,まずハーシュ [ 1 6 J によって輸出と直接投資の選択問題とし て取り上げられ,さらにパックレー=カッツンによって輸出,直接投資,そし 、 、 立地点に特殊な優位性 l o c a t i o n s p e c i f i ca d v a n t a g e s 投入財と市場 D 空間的分布 -労働エネルギヘ原料,部品半製品などの投入財の価格,品質およむ生産性 ・輸送費,通信費 ・政府介入 ・輸入統制(関税障壁を含む),税串,イシセンティプ,投資環境,政治的安定,等 〈商業 法律,輸送上町〉インフヲストラクチ a ア 回心理的距離(言語,文ι ビジネス,慣習,等の相違〉 R & 0,生産, マ ケティン〆の経済性〈例えば, 規模の睦揖性が生産主の集中に有利に働く 1 程度〉 (出所)Dun即 時 [ 1 2 J( [ 1 4 J, p .81 . ) また,ダニングは,バ ノン (32J,ウェルズ j, . (33J のプ μ ダクト・サイクル理論色「何 故J r どこへ」という問題とともに「よろ直接投資が行われるか」を明らかに Lょうとした動態 理論として位置づけてし唱。なお.ラグマン [28J は,立地論,プロダクト・サイクル理論等, 従来D あらゆる理論が,次に述べる一般理論としての内部化理論に包摂されると考えているロ ( 16 3 ) 3 5 多国籍企業と内部イヒ理論 てライセンシ γ グの選択問題としてより一般的に取り上げられたのは,ょうや く1976年にいたってからであった。しかし実を言えば, 1960年の時点ですでに ハイマーが「技術提携の可能性」としてこの課題に取り組んでいたにもかかわ らず,ながら〈等閑祝されていたのである'"。 ζ こでもまた,後の研究者達は, 彼の隠された着眼点を一つ一つ発掘していく作業に従事していたと言いうるの かもしれない。 2. 新たな企業像と問題の深化一一内部化理論の展開へ向けて 優位性を輸出や技術提携ではなく直接投資を通じて利用するということは, 企業がその優位性を独占し,支配を伴う対外事業活動を国際的に展開するとい うことにほかならな, " と こ ろ C,現代の企業は,財やサ に携わるだけでなく. R & D,マ ピスの生産,供給 ケティ γ 7,労働者トレーニ:/Y,経営チ ームの編成,資金調達と金融資産申運用,等々実に様々の活動に従事している。 そして,生産を含めたこれら諸活動が,多国籍企業の手足として水平的,垂直 的に統合されながら世界的に展開きれてい呂わけである。われわれは,この事 実の中から現代企業の五つの側面を区別しうるだろう。第一に,物的生産活動 と非物的生産活動の結合,第二に,生産諸活動の垂直的結合,第三に,多工場 ( m u l t i p l a n t ),第四に,多事業部 ( m u l t i d iv i s i o n ),第五に, n a t i o n a l i t y )。いずれにしても, 多国籍 ( m u l t i これら現代企業を特徴つける諸側面は,物的 生産活動の経済性の観点からする伝統的な企業理論の射程を大き〈越えるもの であり,したがってまた,ー工場=一企業時代の直接的生産過程を念頭におく 『資本論』の企業理論l心を越えるものでもある。つまり,国際的な企業内分業 の内部で,生産, R & D,マーケティング,金融,経営管理,その他諸機能の 効率性をぎわぎり限界点まで追求 Lょうとする運動が,何故,ー企業ニー資本 の支配と所有の拡大と,←ー各機能ごとの専「切じではなく一一諸機能全般にわ 1 3 ) H y m e r( 1 8 J .p .2 6 .p p .46-64.宮崎訳, 2 1ヘジ, 3 9 5 1 ページ。 1 4 ) 坂本 [ 3 1 J .6 1 2ペジ。 3 6( 16 4 ) 第1 3 6巻 第 2号 たる世界的な集積と集中山といラ形態をとらねばならないのか,あるいは,そ のための条件は何か 内部化理論が提起した問題を,われわれ自身の観点か らこのような形に組み替えることが可能ではなかろうか。バッグ νー=カッツ ンにしたがってこれを図示すれば,第 1図のようになる。 第 1図 企 業 諸 活 動 目 相 互 依 存 性 次源泉 附 j 事i J 文科7 ~tI主にかん j るi 王月? 目 U 5 ' eにかんする 経験 改百された l 日1 f t W j i ' "l . f 生産の諸段階は,半加工製品。流れによって結ばれてい 60 製品とマーケティングは,販売のための最終製品。流れによ って結ぼれている。生産,マーケティ γ クと R & D とは, 情報と専門技怖の二方向の疏れによって結ぼれている。 (出所) B u c k l e y ,C a S S Q n( 4 )p .3 4 (社〉 1 5 ) r 資本と生産との世界的集積J(Vーニ:/ [ 2 4 ),1 1 2 ベ}ジ.) 多国籍企業と内部化理論 ( 16 5 ) 3 7 こうしてどのように,優位性を利用するか」という対外諸活動間の選択 問題として提起された課題は,深化され,多国籍企業の企業としての存在根拠 を改めて問うこととなる。では, ζ の内部化の視角からする多国籍企業研究り 鴨矢となった 1 9 7 6 年のパック V一二カッソン〔会〕を中心にすえて,以下,検 討していくことにしよう 16)0 3 内部化理論の艮開 バッグレー E カッフ νをは己め多くの論者達が企業理論を新たに展開するに あたって依拠したものは, ヨース[10 ) の「取引費用 t r a n s a c t i o nc o s 臼」と 「内部化 i n t e r n a l i z a t i o nIの概念であった。彼等は, C4J の「まえがき」で 次のように語っている。 t f (多国籍企業の)諸特徴は,内{$イ の概念によって説明することができる。 0年前にロナルド・コースによって導入された。しかし,その重要 この概念は 4 性が十分認識されたのは,ょうやく最近になってからである。この概念が,市 場の経済理論と,組織と支配の経営理論とを結びつける環を提供している。 〔本書では〉多国籍企業の成長が基本的に市場を内部化する費用と便益によっ 1'V て決まるこ邑が主張芭れている。 J 市場に媒介主れる交換経済の中に.何故,この市場の価格メカニズムを排除 する「企業」が出現するのか,そして,この企業の均衡規模は何によっ亡決定 されるのか一ーーこれがコースの提起した問題であった。自らこの聞いに答えて 彼は,生産の「組織』にあたって価格メカ ι ズ ム を 利 用 す る に は 取 引 費 用 t r a n s a c t i o nc o s t sがかかると主張し,これを四つに分類している。第一に,妥 当な価格を発見するための費用と,個々の取引契約の交渉と締結のための費用。 第二に,短期契約では両当事者のはたすべき義務の内容が明瞭に特定できない ことからくる費用(したがって,ある種の財やサービスの場合には長期契約が 1 6 ) 以下,内部化理論。内容 I~ , 主 に (4)第 2章「多国籍企業の長期理論J , 第 5章「予想と政 策上の合意j に依っている。 B u a l e y .C a s s血 [4J.p .i x 1 7 ) 第 136巻 第 2号 38 ( 166) 好まれる〕。第三に, 巾場を利用することからくるノド確実性。第四に,市場取 引に対する課税,割当,価格統制。価格メカニズムに基づく巾場取引を排除し て企業組織に内部化 internalize することによって,企業は取引費用を免れて 利益を得ることになるが,他方, ζ の内部化も,企業規模の拡次に伴って種々 の費用を発生させる O ヨースは,この費用を主に企業家の経営能力の収益逓減 に帰している。結局,企業の均衡規模は,追加的な取引を企業に内部化する費 用が同じ取引を市場でおこたった場合の費用に一致するか,あるいは他の企業 に内部化される場合の費用に一致する点に決まる。内部化費用が前者を越えれ ば市場取引に再び置き換えられ,後者を越えれば他企業に吸収合併される問。 コー λ の命題は, もともと一国規模の多工場企業宇多商品企業の生産拒動を念 頭においたものであったが,バックレーニカ y ソ γ は,多国籍企業を多工場企 業のー形態とおさえた上で,取引費用の考え方を生産活動以外の R & D,マ ケティング活動にまで押し拡げることによって,コ一見命題の展開を図った o その概要は,次のようにまとめる ζ とができる。 従来,伝統的な企業理論では,利潤極大化と完全競争が二大前提とされ,後 者の完全競争についていえば,各々の商品が多数の小規模な販売者と購買者の 聞で,価格にかんする知識が完全な布場において取引される ζ とが前提されて きた o しかし,彼等の内部化理論では,利潤極大化の前提は採用されるが,完 全競争は棄却主れる。ただし,内部化理論は,市場を組織化する費用から生ず る不完全競争一般を強調し,最終財市場よりもむ L ろ中間財市場における不完 全性に着目する。この中間尉には,もちろん加工中の半製品が含まれるが,第 1図に示されているように特許や人的資本等に体化されている知識や専門技術 も含まれると正に注意しなければならなか。つま 0,ある種の中間財はその売 買のための園内,国際の外部市場を組織することがきわめて困難で,これを克 服す毛ためには多大の取引費用がかかる。そこで, めに中間財取引を内部化してーーすなわち 1 8 )C o a s e( 1町 , p p .39C 同9 5 . ζ の取引費用を回避するた i 市場によって結びつけられてい 多国籍企業と内部化理論 る諸活動を共通の所有と支配のもとにおく」山 換え,比較優位,貿易障壁,政策上のイ Y セ ( 16 7 ) 3 9 企業の「内部市場」に置き y ティブ等を勘案しながら全世界 的に組織したものが多国籍企業にほかならない。 では,内部化の利益を生み出す市場の不完全性の五つのタイプを挙げること にしよう o 第一に,相互に関連しあう諸活動の聞の重大なタイム・ラグ。この 場合,短期的な生産計画の調整のためなら直物市場で十分だが,長期的な投資 計画を効呆的に立案するには元'全な先物巾場がすべて揃っていな阿ればならな い。もしこれらが欠け亡いれば,関連する諸活動士内部化し,自ら内部的な先 物市場を創山しようとする強い誘因が働く。第二に,中間財に対する市場支配 力士持っているために,内部化することによって外部市場では不可能な類の差 別的価格設定が可能となt>,その市場支配力を効率的に活用できることの買い 手独占は後方統合 backwardintegration,売り手独占は前方統合 forward in~ t e g r a t i o n,の誘因をもっ。第三に,市場支配力の双方独占による不確定性や不 安定性。これらは,当事者双方を拘束する長期契約によるか,合併,買収によ るかして回避することができる。第四に,製品の品質や価値の点で売り手と買 い手の間にある知識の不均等。もし,中間財の売り手が買い手よりも多くの知 識をもっているのだが,自分が要求している価格が妥当なものであることをな んらかの理由で買い手に納得させられない場合,買い手を買収するか子会社を 設立するかして買い手のリ λ クを自ら担おうとする誘因が生まれる。したがっ て , r 買い手の不確実性」が前方統合を促す ζ とになる。第五に,各国政府に よる国内,国際市場への介入。これは国際市場に特殊な不完全性であって,例 えば,従価関税,資本移動規制,所得税・法人税率 0)国別格差などが挙げられ る旬〉 。 以上,布場の不完全性は,そのどの場合をとってみても,種々のタイプり知 識・情報市場に最もあてはまりやすい。まず, R & D を通ずる新知識の生産 1 9 ) B u c k l e 日 y ,C a s s o n(4).p.3 3 2 0 ) ラ グ マ ン は , 政1 府介入による市場の不完全性を人為的という意味で「非自然的不完全姓ム れ以外を「自然的不完主性」と呼んでい乙。 ( Rugm阻 ( 2 8 ) .p .1 2 占 そ 4 0 ( 1 6 8 ) 第1 3 6巻 第 2号 と新製品,新製造工程への適用は,時としてきわめて長期にわたり,重大なタ イム・ラグを含むことがみる。また,知識は典型的な独占の対象であり,ある 種の差別的な価格設定によって最もよ〈利益をあげうるが,他方,その購入者 の側もしばしば独占体 Eあって,双方独白に陥りやすい。さ bに,特許申請や 登録のお ζ なわれていない知識(ノウ・ハウ〉の場合は,ほとんど不可避的に 買レ手の不確実性を発生させる。最後に,知識は,価格評価がきわめて困難な ために振替価格の芸礎になりやすく,しばしば政府規制の対象になる。 しかし五つの種類の市場の不完全性とそれに伴う取引費用を内部化で回避 するよとに伴って,内部化は,様々の追加的な内部化費用を課すととにもなる。 第一に,単一の外部市場をいくつかの個別Ij I 内部市場」に分割するために,諸 活動間で規模の経済性を実現するのに必要な最小単位が不揃いなことから生ま れる非効率。ただし,この費用は,市場を部分的にのみ内部化することによっ てかなりの程度解決できる。第二に,以下の理由から, I内部市場」は通信費 用がかなり高〈つ〈。すなわち,諸組織間で会計・制御情報を流さなければな らず, しかも,その信頼性の確立のためには独自の情報シ旦テムを持たなけれ ばならないので,そのための共通費用がより高価になる。また,情報の正確さ と他の関連する情報が隠蔽されていないかどうかをチェックする費用も必要に なる。したがって,通信費用は,諸機関の立地点問の距離と言語的,社会的, 経済的な非類似性に伴って上昇する。第三に,政府の現地企業優遇策や外国企 業の接収の脅迫といった差別措置のための費用。つまり,本国と受け入れ困の 聞の政治関係が良好で安定している程,そして,受け入れ国政府が現地の産業 に戦略的な価値を与えていない程,この費用は安〈っく。第四に, I内部市場」 を組織し,多工場,多通貨にわたる企業会計上司諸問題を解決するための管理 費用。とれが経営能力の良し悪しに大き〈左右されることは言うまでもな L、 ' " 。 2 1 ) 内部化の利益と費用は,特珠性という観完からみた場合, I えのように整理することもできる。 (Buckley ,C. a s s o n [4],p .4 5 . ) , , ) 産業に特殊な要因 i n d u s t r y s p e c凶巴 f a c t o r s (製品。自然的特性,外部市場の構造,諸活 ノ 動。最適規模り聞の関悟〉 多国鰐企業と内部化理論 ( 16 9 ) 4 1 こうして,多国籍企業の最適規模は追加的な内部化の費用と利益が等し 2 2 ) くなる限界点に決まる。 J 以上,パックレー=カッソンに依りながら内部化理論の概略を述べてきたが, カッソンは,その後 1 9 7 9'年の [5J で内部化の利益と費用の内容を最も包括的 に整理している。そこで,最後に,その内谷を第 2表,第 3表に掲げてお ζ 〈以下,次号〉 、 加)地域に特殊な要因 r e g i o n s p e c i f i cf a c t o r s(立地点聞の地理的社会的」な距離〕 凶国に特殊な要因 n a t i o n s p e c i f i cf a c t o I s(本国,受け入れ国間白政治的,財政的関係) i r m s p e c i f i cf a c t o r s(経宮町専門性の程度〉 刷企業に特殊な要因 f 2 2 ) Bロc k l e y ,C a s s o n (4J .p .3 7 う 。 内部化の誘因を生み 出す問題 明I 戦れ 渉ら 交い に用用 合て費 場しの のと為 占部行 独一裁 方の制 双術る 1 .2 ""渉の必要 外部市場での解決方法 な L t~ し 内部市場での解決方法 匝l 格的な計画を l 産業に特殊的 集権的で非f 用いる 調停者の命令によって交渉│産業に特殊的 をおきかえる n 変動する市場において同│長期契約を用いる(しか L 同 な L 同 上 産業に特殊的 な L 同 上 産業に特殊的 な し 避 m 保留価格を決定する際の 「便乗者」の問題 2. 契約上の費用 2 .1債務不履行 i借 手 が 破 産 し た り , 有 限 責任を求める 債務不履行を促 F誘因はな 一 般 的 し 、 ' 由 戸マ Z 行理 履の 不外 受以 のーの 約 2も 契しる 物だよ ー ー 先たに 契約に違約金の規定を入れ る 同 上 産業に特殊的 部 EO蹴油国ー叩 M 殊 L S T 業 産 すに利 わ界分 な限用 一用費 i i政府の競争政策への対応 と,友好関係り喪失の回 産業に特殊的 一者の 製品差別化を行ない,用途 の転換を行なえないように する 嶋崎臨 再販売の阻止 不て共る はべ'す 化すと求 別'用請 差ち費を 1 上 -ロ ーの個人と断続的に短期 1 2 . 1 iを見よ〉 契約の交渉を行なう時間 的費用 1 .3価格差別の実施 │問題の特殊性 品目(戸叫。) 内部化の利益田分類 z 約分'古 に 、 ぇdx 例を す(用 制る信 強め易 を求貿 払をに 主裁方﹀ の制手る 金な相せ 島単 い l d命 ふJ F 同 上 産業に特殊的 山数量,品質にかんする虚│売り手と買い手がともに計│虚偽の申告を促す誘困はな│一般的 偽の申告 i 畳 L品 質 を チ ェ ッ ク す る I" , す な わ ち 重 複 し た 作 業 が不必要 │を投入する 'AV bf ィ 中 ﹂ 民 性 密 機 移転は不必要 産業に特殊的 産業に特殊的 4 介入から生ずる費 用 4.1価 格 統 制 法令によョて固定きれた中 名目上の価格で送り状を性│名目上の価格で送り状を作 監業に特殊的 間財価格 4 . 2関 税 輸入に対する従価関税や輸 出に対する従価税 4.3税率の国際的な│諸国聞の法人税率の相違 相違 る割当 〈出所〉 C a s s o n j(5 , )pp .56-59 成するが,架空の取引を通│成するが,再配分は不必要 じて所得を再配分する〈し か し 2.1i.2.2を見よ〉 同 上 同 上 調税境界線に 梓殊的 上 と 同様 上 と 同様 財政境界線に 特殊的 上 と 同様 」ι と 同様 通貨境界線に 特殊的 (ド4H︺ 込 町 出 4.4資本移動に対す│資本涜./:HI V制 限 出事国論陣淋 げ苫昌吉岡部 すけ し町役 L にか ま険 い保る あに出 な じらl1している は手 L 様い申 仕買を の'と 品がこ 不持不 商るる が保のる 有密いき 権を手せ 所秘属生 るに﹁発 すめがを 対たと﹂ になこ性 品定る実 商安す確 るる わず か生 にか から 権性 ・不費 有分 所十周 qd 1 1所 有 権 の 啓 転 が 法 的 に 禁 誘因はない - カパーできていない t 。 占 保 2.2契約上の抜け穴!なんらかの偶然性を契約が│契約する際,追加的な努力 投 け 穴 を 活 用 Lょうとする 産 業 に 特 殊 的 J A M O ハH日 ︺ 性一 殊一 の一的 特一 同 題一般 間一一 一受 法 72 町一強 で一は 場一渚 分割されていない 11J 閉聞 放 を ﹁ 市 場 一般的 上 L 工場や設備は外国で所有さ れていない 政治的境界線 に特殊的 鞘 N咽 な 鞘 Hωφ晴 情報の獲得は不必要 会境的 社的殊 '語特 し 的言に な 産業に特殊的 理'線 地面界 〈出所) C a s S O D [5),p .6 0 向 日 A 様の 々り 種れ ' そ はと 受け入れ閏が工場や設備の 所有権を尊重しない 部 率て 効れ りわ 4な 4. 収 用 さ れ る 危 険 成得 編獲 得るための費用 最行 がで 動下 3. 種 々 様 々 の 情 報 官 L な 。 ヲす のさ 済用 決利 場小 市過 なが 能源 ののう 可資る 活以 不りい の模 場動伴 割めて 々規る 市活宮 分たれ 個的い 部 の 営 内々運 2 市 場 分 割 D費 用 一取け 励 奨 i μ一加る 士 部一一彦い 件二引て 「ー十五「 」内 部 市 場 で の 解 決 方 法 1 経営上の刺激の喪 醍開錯聖書岩吉野 l F 著 書 干 時 督 , 失 費用の種類 問問 内部化費用の分類 ! 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