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E-10 インタラクティブメディア制作による論理的思考能力育成の実践

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E-10 インタラクティブメディア制作による論理的思考能力育成の実践
E-10 インタラクティブメディア制作による論理的思考能力育成の実践
○二口 聡・稲置学園情報基盤センター,
井上 清一・稲置学園情報基盤センター,
森 俊也・稲置学園情報基盤センター,
岡部 昌樹・金沢星稜大学人間科学部.
〒920-8620 石川県金沢市御所町丑 10-1,
TEL: 076-253-3927,FAX: 076-253-3996,
E-MAIL: [email protected]
URL: http://www.seiryo-u.ac.jp
1. はじめに
近年,学生の論理的思考能力の低下が問題視され
ている.論理的思考能力を育成する手法としてはプ
ログラム開発実習などがあげられる.しかし,プロ
グラム実習の前提として要求される基礎知識やコン
ピュータスキルが高く,文系大学における初期の学
習としての実践は困難である.本研究では,簡易な
ゲーム開発ツールソフトを用い,インタラクティブ
(双方向)性のある作品制作を通した教育が論理的
思考能力の育成に寄与するかを検証した.
2. 対象講義と現状の問題点
本研究の対象講義と現状の問題点について述べる.
本研究の教育実践は,金沢星稜大学(以下,本学)
の全学部(経済学部,人間科学部)共通科目,2 年
次生の選択科目である「プログラミング I」を対象
とした.
「プログラミング I」は情報系の基礎科目の
一つであり,3 年次生の選択科目である「プログラ
ミング II」と合わせて開講されている.同科目では,
現在,Micorosoft Visual Basic,Borland C/C++,
Java 言語を用いた実習が行われている.
本学あるいは同系統の私立文系大学においては,
これらのプログラミング言語を用いたプログラミン
グ実習の主目的が,実務能力の育成から学生の論理
的思考能力育成へとシフトしてきている.近年のコ
ンピュータ技術の発展,ソフトウェア規模の増大,
プログラミングの複雑化などの理由から,コンピュ
ータ上で動作するプログラムを個人や企業内で開発
することは難しくなってきている.同様に,文系大
学の教養科目としてのプログラム教育で,実務に耐
えうるプログラム開発能力を学生に備えさせること
も困難となっている.これらの理由から,プログラ
ミング教育では,プログラム内に記述される命令の
構文構造,アルゴリズムなどの学習を通して,どの
ようにプログラムの処理が完了するのか(あるいは
失敗するのか)を理解するという論理的な理解を高
めることを主な目的としている.
論理的な思考能力の育成をプログラミング教育の
目的とした場合,実際のプログラム作成に入るまで
社団法人 私立大学情報教育協会
平成22年度 教育改革ICT戦略大会
に学生に求められる基本的なコンピュータスキルが
比較的多いことが問題となる.例えば,Borland
C/C++の実習では,テキストエディタによるソースフ
ァイル作成,コマンドプロンプトの操作,コンパイ
ル,EXE ファイルの実行などの操作が円滑に行える
必要がある.これに対し,学生が習熟しているのは
ワードプロセッサソフトであり,GUI 操作である.
そのため,実際のプログラム実習に入る前に必要と
なる基本知識が多くなり,全受講者を本来のプログ
ラミング演習を遂行できる段階に揃えるまでに講義
回前半の多くを必要とするという問題が見られた.
加えて,基本的な操作上の間違いとプログラムのソ
ースファイル作成上の間違いを学生が区別できない,
プログラミング課題に入る前にモチベーションの低
下が見られる,といった問題も発生していた.
3. 実践内容
前節で述べた問題を改善するため,本研究では,
「プログラミング I」の講義回の一部にインタラク
ティブメディア制作実習として,ゲーム開発実習を
取り入れるという取り組みを実践した.具体的には,
Microsoft 社の家庭用ゲーム機「Xbox360」を用い,
同ゲーム機上で動作するインディーズソフトウェア
「KODU Game Lab」によるゲーム制作課題を行う[1,2].
ここで,Xbox360 と KODU Game Lab について説明
する.Xbox360 は日本国内の据置型ゲーム機では第 3
位のシェアを持つゲーム機である.HD 画質の高精細
な映像表現が可能な点やネットワークを介した通信
対戦機能に優れる点などから,20 代を中心に人気で
ある.同ゲーム機にはデータ記録用の HDD が内蔵さ
れており,ネットワークを介してゲームソフトウェ
アや追加データのダウンロード(有償/無償を含む)
が可能である.同じ Microsoft 社の Windows OS とも
互換性が高く,Windows 用に無償で提供されている
ゲームソフト開発ツール「XNA Game Studio」で作成
したゲームソフトウェアを実際のゲーム機上で実行
することが可能である[3].KODU Game Lab は,XNA
Game Studio を用いて開発されたインディーズゲー
ムである.KODU はプログラム初心者向けの簡易なゲ
ーム作成ツールを目標として作られており,Xbox360
のネットワークを通して,全世界に公開されている.
KODU でのゲーム制作画面を図 1 に,
,ゲーム制作の
ゲーム
流れを以降に示す.
グ講義を学ぶための初期教育が容易になることが予
初期教育が容易になることが予
想される.これまでのプログラミング課題とゲーム
までのプログラミング課題とゲーム
制作課題における学生の作業段階の
題における学生の作業段階の比較を表 1 に示
す.表 1 から分かるように,ゲーム制作課題は全て
GUI による操作であり,操作もコントローラーのみ
である.この操作ではソースファイルを記述するプ
この操作ではソースファイルを記述するプ
ログラミング課題と異なり,文法エラー等によるデ
バッグ操作が発生しない.そのため,なぜ動かない
かの原因が明確になる.また,操作がコントローラ
ーに限定されていることは,
ーに限定されていることは,ゲームの経験がある大
半の学生にとっては慣れた操作となり,プログラミ
にとっては慣れた操作となり,プログラミ
ングに取り組む初期段階での基礎知識不足という問
題を低減すると考えられる.
表 1.プログラミング課題と
プログラミング課題とゲーム制作課題の比較
段階
図 1.KODU を用いたゲーム制作の画面
を用いたゲーム制作の
① 地形,木,コインといった造形物を配置する.
コインといった造形物
② KODU と呼ばれる操作キャラクター
キャラクター及び他のキ
ャラクターを配置する.
③ ①②で配置したオブジェクトを選び,
オブジェクトを選び,動作の
起点となるアクション(コントローラが上に
入力された,Aボタンが押されたなど)を
入力された,Aボタンが押されたなど)をア
イコンメニュから選択する.
④ ③の後に,発生する動作(上に移動する,ジ
ャンプするなど)を別のアイコンメニューか
ら選択する.
⑤ ①~④の操作を繰り返す
今年度前期は,これらの機材の試験利用と商用ソ
これらの機材の試験利用と商用ソ
フトウェアにおける実装例研究,本学講義内での利
本学講義内での利
用を想定した教材資料やテキストの開発を行う
用を想定した教材資料やテキストの開発を行う.後
期には,講義回の 1~2 回にインタラクティブメディ
回にインタラクティ
ア制作を実習として取り入れる.学生の意識調査な
学生の意識調査な
どからその効果を検討する.
4. 成果と期待される効果
現在,著者らと講義担当教員による課題テキスト
および基本課題の作成が行われている.合わせて,
実際の講義実施計画を調整中である.これまでの課
際の講義実施計画を調整中である.これまでの課
題作成において,ほぼ制作が終了して
終了しているゲームに
規定の動作を組み込み,ゲームを完成させるという
ゲームを完成させるという
簡易な課題,既定のゲーム完了条件を提示し,それ
を実現するためのアクションと動作を検討し制作す
るという課題を準備した.上級課題として,ゲーム
の目的とルールを学生自身が検討して実装するとい
う課題も検討している.
これまで,基本的な情報知識やスキルを必要とし
ていたプログラミング教育において,本例に示す簡
易なツールを用いた実習を取り入れること
易なツールを用いた実習を取り入れることにより期
待される効果として,学生が本格的なプログラミン
学生が本格的なプログラミン
社団法人 私立大学情報教育協会
平成22年度 教育改革ICT戦略大会
ツール
習得
制作
実行
結果
プログラミング課題
(Boaland
Boaland C/C++
C/C++)
・ファイル操作
・テキストエディタ
テキストエディタ
・コマンドプロンプト
コマンドプロンプト
(CUI 操作)
・ソースファイル記述
ソースファイル記述
・コンパイル
・デバッグ
・実行ファイル呼出
実行ファイル呼出
・文字による表示
ゲーム制作課題
(KODU)
・コントローラー操作
・オブジェクトと動作
アイコンの選択
・実行メニュー選択
・ゲーム操作
もう一つの期待効果として,学生のモチベーショ
ン向上が予想される.自分自身で作成したゲームが,
実際の商用ゲーム機で動作する
ゲーム機で動作するという課題は学生の
興味を喚起すると考えられるからであ
すると考えられるからである.
初年度の実習実施結果から次年度以降の実習計画
を行い,教材の改善や実習回数の増加による実施規
教材の改善や実習回数の増加による実施規
模の拡大が期待される.
5. 今後の課題
今年度はインタラクティブメディア制作実習が
今年度はインタラクティブメディア制作実習が,
後期途中の実施となるが,
,次年度は前期の早い時期
に同実習を取り入れ,学生のプログラミングに対す
学生のプログラミングに対す
る初期の学習効果を検証する
効果を検証する.また,初年度は簡易
なインタラクティブメディア作品のプログラミング
ツールとして KODU ソフトウェアを主に利用
ソフトウェアを主に利用するが,
次年度以降は高度な開発ツールである XNA Game
Studio を「プログラミング II」に取り入れることを
試みる.
6. 参考
1)Xbox.com 日本ホーム
http://www.xbox.com/ja
http://www.xbox.com/ja-JP/
2)KODU Project
http://fuse.microsoft.com/projects
http://fuse.microsoft.com/projects-kodu.html
3)XNA Game Studio
http://msdn.microsoft.com/ja
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/xna/
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