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M2M最前線 - Nomura Research Institute

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M2M最前線 - Nomura Research Institute
ITロードマップセミナーSPRING 2012
M2M最前線
~マシンデータがビジネスを変える~
2012年5月29日
野村総合研究所 情報技術本部
イノベーション開発部
主任研究員 武居 輝好
本日の論点
M2Mとは何か?
M2Mを実現するための技術は?
マシンデータの活用の仕方は?
Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
本日の講演内容
1.M2Mとは
2.M2Mを実現するための技術
3.マシンデータの活用の仕方
4.まとめ
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2
1.M2Mとは
2.M2Mを実現するための技術
3.マシンデータの活用の仕方
4.まとめ
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3
M2M(Machine to Machine)とは
M2Mとは、機械や電気機器等の間で自動でデータ(マシンデータ)のやり取りをしたり
計測するためのシステム。
広義には、機械同士がP2P(ピアツーピア)で接続されるシステムも含むが、ここでは
サーバを介してデバイスからの情報を活用するシステムに限定する。
対象デバイスは、PC、サーバ、工作機械、自販機、監視カメラ、家電、カーナビ、
スマートデバイス等様々。
デバイス
ネットワーク
機器から
得られるデータ
(マシンデータ)
機械
自販機
各種センサ
RFID
活用アプリケーション
サーバ
可視化
センシ
ング
データ
機器
ステー
タス
データを集約し、蓄積
カーナビ
分析
スマートメーター
機器の制御
取得したデータを元に、機器を制御
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4
企業が活用するデータは、マシンデータにまで拡大
従来、企業が利用できるデータは、企業情報システムから取れる情報が中心だった
が、インターネット上の情報に加え、マシンデータの活用が始まっている。
マシンデータを利用することで、地域毎の景気状況や製品購入後の顧客の利用の
仕方等、より実世界の状況を把握することが可能に。
企業が利用可能な情報の広がり
マシンデータ
(自社製品、店舗設備、機械等)
⇒実世界における状況の変化(顧客、景気など)
インターネット上の情報
(ソーシャルサイト等)
⇒Web上における顧客の行動や意見
企業情報システム
(ERP、CRM、SCM等)
⇒企業内に閉じた情報
売上実績、生産実績など
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5
幅広い分野で適用が始まるM2Mアプリケーション
分野
M2Mアプリケーションの例
・積荷管理最適化
交通
・個人個人の運転スキル判断と改善
・店舗設備の稼働状況や店員の動作にもとづく店舗オペレーションの無駄の発見
流通
・購買前情報にもとづくマーケティング最適化(棚割変更、プロモーション)
・モバイル決済
金融
・自動車保険(Pay As You Drive)
・設備や機械の故障予兆の把握、保守計画自動化
製造
・設備や機械の稼働実績による経営判断への活用
エネルギー
・宅内電力消貹量にもとづくレコメンデーション
・スマートグリッド/スマートハウス(見える化、自動検針、需要応答)
ヘルスケア
・健康機器データにもとづく患者、高齢者の容態の可視化
社会
インフラ
・公共物(橋梁、構造物、道路等)の異常監視
・危機管理(災害、人災、事件等)支援
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6
契約企業の電力消貹量を収集分析することで電力消貹量を削減
EnerNOC デマンドレスポンスサービス
EnerNOCは、電力会社からの要請により、工場やビル、公共施設等の契約企業の
電力消貹量を削減するデマンドレスポンスサービスを実施。
契約企業から伝送されるリアルタイムな電力消貹量を分析することで、もっとも
節電効果が高くなるよう、電力消貹削減要請のスケジュールを作成。
これにもとづき、契約企業に電力消貹削減を要請している。
現在、契約企業は5000社以上(建物:1万2千件以上)。
EnerNOC
電力会社
電力消貹
削減要請
・電力需要がしきい値を超えそ
うな場合、消貹電力削減要
請をEnerNOCへ発行
⇒需要が電力供給量
を超えるのを回避
契約企業の
リアルタイムな
電力消貹量を分析
電力消貹削減要請
のスケジュール
契約企業
リアルタイムな
電力消貹量
データ
電力消貹
削減要請
・EnerNOCと取り決めた停止
手順に従い、対象機器の
動作を停止
・リアルタイムな電力消貹量の変化
をCEPで分析し、電力消貹削減要請の
スケジュールを決定
・スケジュールに従い、契約企業へ電力
消貹削減を要請
注)CEP(Complex Event Processing:複合イベント処理):ネットワークに流れるデータをそのまま取り込みリアルタイムに分析するための技術
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7
経営戦略や事業戦略にも活用されるマシンデータ
マシンデータからは、景気状況や市場概況、顧客情報など戦略検討に有効な情報
も得ることができる。そのため、オペレーションへの活用だけでなく、企業の経営戦
略や事業戦略にも活用されている。
企業の各階層で利用されるマシンデータ
■経営判断指標としての活用
・マクロな環境変化(景気動向、ニーズ変化) など
経営戦略・
事業戦略
■事業環境分析への活用
・市場概況、顧客動向 など
■新規事業開発への活用
・マシンデータを活用した事業の開発 など
■マシンデータの業務プロセスや自社製品/サービスへの利用
オペレーション
・業務オペレーション改善
・マーケティング
・機器設備監視 など
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経営判断に活用されるマシンデータ
小松製作所「KOMTRAX」 建機稼働情報を経営判断に利用
 小松製作所は、全世界の自社製建設機械をネットワーク化し、稼働情報を収集。
 建設機械のリアルタイムな稼働情報をもとに、地域毎の建設作業の実態を可視化し、経営
判断に利用。
例:2004年の中国政府による金融引き締めの際、中国の建機稼働が順次ストップしていったことから
工場のラインをすぐに止め、丌良在庫を抑えることに成功。
一方、リーマンショックの際には、建機稼働率が落ちなかったため、中国の経済状況は金融引き締め
のときほど悪化しないと判断。
KOMTRAXの活用
従来
・企業情報システムから得られる各種実績
情報を元に現地の状況を推測
企業情報システム
販売
実績
受注
実績
クレーム
情報
支払
実績
・・・
・建機稼働情報をもとに現地の建設作業の実態
を可視化し、経営判断に利用
建機稼働情報
現在位置
稼働時間
稼働状況
燃料の残量
・現地の状況はわからない。
⇒各種実績データをもとに
推測
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・現地の建設作業の実態
把握
⇒高精度な予測にもとづき、
即時判断が可能に
9
1.M2Mとは
2.M2Mを実現するための技術
3.マシンデータの活用の仕方
4.まとめ
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10
構築しやすくなってきたM2Mシステム
M2Mシステム構築を支援するための技術が出揃う
2003~5年頃のRFIDシステムやセンサネットワークと比較し、デバイスの種類増加や
M2Mクラウドの登場等M2Mシステム構築を支援する材料が出揃ってきた。
① センサデバイスのモジュール化やスマートデバイスの活用
② ネットワーク大規模化/リアルタイム化サポート技術の登場
③ M2Mクラウドへのマシンデータの集約
④ 収集したマシンデータの分析の高度化
②ネットワーク大規模化/リアルタイム化サポート技術
デバイス
ネットワーク
④収集したマシンデータの分析の高度化
サーバ
アプリケーション
機械
ロ
スマートメータ- ー
カ
ル
カメラ
処
理
医療機器
ATM、POS
自販機
/
デジタル
サイネージ
セ
ン
シ
ン
グ
RFID
通
信
スマートデバイス モ
ジ
ュ
ー
ル
スマート家電
有線
アクセス
網
独自
プロトコル
オンプレミス
需要予測
マーケティング
基幹網
無線
アクセス
網
①センサデバイスのモジュール化やスマートデバイスの活用
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M2Mクラウド
行動履歴の分析
環境状況可視化
リモートメンテ
リモート監視
③M2Mクラウドへのマシンデータの集約
11
①センサデバイスのモジュール化やスマートデバイスの活用
今まで取得できなかった機器からの情報取得が可能に
従来は、M2Mシステムの実現には大がかりなハードウェア開発が必要であった。
センシング/通信機能のモジュール化により、マシンデータ取得環境の構築が容易に。
カメラや加速度センサなど多様なセンシング機能を搭載したスマートデバイスの登場により、
人の動きに関する情報の取得が容易に。
M2Mデバイスの課題
デバイスを取り巻く変化
1.センシング/通信機能のモジュール化
・通信機能やセンシング機能を
組み込んだハードウェアを自前で
開発する必要がある。
⇒専用機器の開発が必要なため、
開発コストを圧迫
・組み込みが容易で安価なセンシングモジュール、
通信モジュールの登場
・一部モジュールでは,M2Mクラウドなどとの連携
をサポート
⇒従来ネットワーク接続されなかった機器
のネットワーク化が進む
2.スマートデバイスのセンシングデバイス化
・スマートフォン、タブレット端末等にセンシング
機能が搭載
情報が取得可能な機器は、
大規模な設備等に限定
⇒人の動きに関する情報をスマートデバイス
から取得し、活用可能に
今まで取得が困難だった情報の
取得が可能に
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低価格化が進む無線通信モジュール
通信モジュールの価格は、契約者数増加とともに低価格化が進む。
2008年から2010年で三分の一以下にまで下がっている。
通信モジュールの価格は、
約1/3以下に
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出所) 総務省 「携帯電話の電話番号数の拡大に向けた電気通信番号に係る制度等の在り方(説明資料)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000117351.pdf
13
①-1.センシング/通信機能のモジュール化事例
Nestle Nespresso SA モジュールを利用することでネットワーク部分の開発が最小限に
Nestle Nespresso SAは、自社の業務用コーヒーマシンをネットワークに接続。稼働状況を
収集し、遠隔から機器を調整したり、異常発生時にサービスマンへアラートを発行。常に
理想的な状態での稼働を実現。
Sierra Wireless社のGSM無線モジュール、およびM2Mクラウド(Air Vantage)を利用するこ
とで、Nestle Nespresso SAは、通信部分の開発を最小限にとどめることが可能に。
業務用
コーヒーマシン
・稼働データ、
温度、圧力等
・ビジネスデータ
M2Mクラウド(Air Vantage)
GSM携帯電話通信網
無線モジュール
(Sierra Wireless社)
遠隔より設定調整
・RS-232C経由で機器から
情報を取得し、GSMでM2M
クラウドへデータを伝送
アラート
・取得した情報を判断
・必要に応じてアラート発行
カスタマーセンター
サービスマン
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注)GSM:第2世代携帯電話通信規格
14
①-2.スマートデバイスのセンシング機能の活用事例
三井住友海上火災 スマートフォンの情報による運転スキル診断サービスの提供
三井住友海上火災は、2012年8月にスマートフォンの加速度センサやカメラ、GPS情報を
もとにした運転傾向の分析サービス「スマ保」を提供開始。
三井住友海上火災では、ドライブレコーダーを利用した運転スキル診断サービス「運転ドック」
を提供していたが、利用者との間でドライブレコーダーの貸し出し処理が必要であった。
スマートフォンのセンシング機能を利用することで、ドライブレコーダーなどのハードウェアの
やり取りなしに同様のサービス提供が可能に。
「スマ保」
三井住友海上
スマートフォン内蔵のカメラ、GPS、加速度センサからの
情報を利用し、以下のサービスを実施
緊急時ナビ
ログアウト
契約確認・
変更
緊急時
ナビ
運転力
診断
安全運転
チェッカー
・故障、トラブル時に、コールセンターへ位置情報を送信
・事故の衝撃感知時に連絡先や必要な対応等を表示
現在位置
情報
運転力診断
・加速度センサの情報をもとに、運転傾向を分析、診断
・事故の衝撃を検知するとその前後のカメラ画像を保存
運転スキル
77点
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15
②ネットワークの大規模化およびリアルタイム化をサポートする技術の登場
端末側処理の高度化、プロトコルの改善によりデータロスト対策が容易に
ネットワーク接続可能なデバイスの増加とともに、M2Mネットワークの規模も大規模化。
M2Mでは、1度のトランザクションにおける伝送データ量は尐ないものの、大量のノードから
データが伝送されるため、データロスト等のトラブルが発生しやすくなる。
⇒自前でネットワークを構築する場合、細い帯域内でのデータ伝送制御やデータロストへの
対策が必要。
一方、安定しているキャリア網のみを利用する場合、通信コストが課題に。
M2Mネットワークの大規模化による課題
ネットワークに
対する要求
・大量に接続されたデバ
イスからのトランザク
ションの増大
⇒データロストの増大
低価格センサ用
ネットワークの限界
・細い帯域幅
・簡易な品質担保の
しくみ
データロストを回避するための対策が必要
-高コストな携帯電話網の採用
-冗長化やアクセスポイントへの対策
⇒コスト高の要因に
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解決の方向性
1.端末側での対策
・端末側とサーバ側で処理を分担すること
で、伝送データ量を削減
・データ処理の一部を端末内で完結し、即
時フィードバック
2.通信プロトコルの改善
・やり取りの簡素化やヘッダのスリム化など
伝送データ量を削減
・アプリケーションにあわせてサービス品質
を柔軟に変更
16
②-1.端末側での対策
組み込みCEPによるデバイス側でのデータ処理
組み込みCEPとは、通常サーバ側で行われるCEP処理をデバイス側で実現するための分析
技術。
従来、M2Mシステムの多くは、マシンデータを一度サーバに集約し、分析活用していた。この
場合、ネットワークへの負荷が大きくなるとともに、リアルタイム性が失われるため、即時制御
が困難であった。
組み込みCEPを用いてデバイス側でデータ処理することで、データ通信帯域削減や即時制御
が可能になる。
サーバ側での分析
・取得したデータをすべて伝送
⇒帯域増による回線コストの増大
・サーバで分析した後、デバイスへ制御データを送信
⇒制御に対する遅延
組み込みCEPによる分析
・データ発生都度、デバイス側で分析
⇒サーバ側へは、サマリデータのみ送信
⇒データ発生後即時分析
デバイス
デバイス
サーバ
サーバ
CEP
CEP
取得したデータ
すべてを伝送
分析結果を元に制御
CEP
サマリデータ
のみ送信
デバイス側で
分析制御
注)CEP(Complex Event Processing:複合イベント処理):ネットワークに流れるデータをそのまま取り込みリアルタイムに分析するための技術
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組み込みCEP事例:各設備からのデータをアプライアンス側でフィルタリング
EMERSON 「trellis」プラットフォーム
データセンター内の電源状況や空調等ファシリティインフラに関する情報を収集し、管理する
ためのゲートウェイアプライアンス。
UPS、ビル管理システム、電源、空調等から1分間に数百万点のデータがゲートウェイアプライ
アンスに上がってくるが、組み込みCEPで処理することで、イベントのみを上位のソフトウェア
製品へ発行、ネットワーク帯域を押さえている。
組み込みCEPによる処理
・フィルタリング
・アラート
・データのアグリゲーション
(例:電流値、電圧値から
消貹電力を算出)
UPS、ビル管理システム、電源、空調から
1分間に数百万点のデータを収集
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出所)日本エマソン 製品紹介資料より抜粋18
②-2.通信プロトコルの改善
M2Mに最適化された通信プロトコルの利用 MQTT(MQ Telemetry Transport)
MQTTは、狭い帯域幅、信頼性が低い環境での動作を目的としたメッセージングミドルウェア。
2010年にロイヤルティフリーとして公開。
インストールスペース50KB、メモリ150KB未満で動作。
用途に合わせてサービス品質レベルを3段階(最高1回、最低1回、正確に1回)に設定可能。
トランスポートのオーバーヘッドが小さく、プロトコル交換を最低限に抑えている。
異常切断時の通知メカニズムをもつ。
MQTTを利用したアプリケーションの例:IBM研究所(ダブリン) 車両速度予測
・バスからの位置情報をMQTTを利用して伝送
・伝送されたリアルタイムな位置情報と蓄積された過去の情報を元に、走行車両の速度を予測
出所)IBMヒアリング資料
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注)MQ:IBMが開発したメッセージングミドルウェア 19
③M2Mクラウドへのマシンデータの集約
M2Mクラウドの登場
デバイスで取得したデータを管理するために必要な機能をクラウド上に構築したM2Mクラウド
製品が登場。
データを管理するためのデータベースだけでなく、データとデバイスをひも付けるためのデバイス
管理機能や取得したデータの評価、分析機能等を備える製品もある。
アプリケーション
M2Mクラウド
データの分析活用支援
API(WebAPI)
データ処理
機能
ルール
エンジン
取得データ
評価
CEP
データ
校正
異常
検出
DB
(Hadoop,
RDBなど)
デバイス
管理
セキュリティ
インベントリ
管理
デバイス
認証
ネットワーク
接続管理
データ
保護
データを取得するため
のデバイスの管理
デバイスゲートウェイ
ネットワーク(VPN、インターネット、専用線、携帯電話網等)
デバイス
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エージェント
通信モジュール
20
既存のM2Mシステムの課題とM2Mクラウドを利用することで得られる価値
従来、M2Mシステムは個別開発が一般的だったため、その適用は産業用途等一部に限られ
ていた。
ユーザー企業は、M2Mクラウドを利用することで、基盤開発コストが削減可能になるとともに、
アプリケーション間でのデータの相互利用がしやすくなる。
従来のM2Mシステムの課題
マシンデータを蓄積管理する
ための基盤構築コストの増大
M2Mクラウドの利用で得られる価値
1.M2Mシステム構築初期コストの削減
・共通基盤活用によるコスト削減
・基盤運用コスト削減
独自の
データフォーマットや形式
収集したデータ間での
フォーマットの相違
・構築コストの増大
・データの相互利用に対する
柔軟性が欠如
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2.収集したマシンデータの複合利用
・異なるマシンデータを複合的に分析
3.収集した情報の流通・活用
・収集した情報を複数のアプリケーションから活用
・パートナー企業間での情報連携
21
M2Mクラウド活用事例:M2Mクラウドを利用することで自社開発を最小限に抑える
Axeda, Walsh Vision 「Fleet Vantage」
Walsh Visionが開発したPay As You Drive型自動車保険のためのフリート管理
サービス。保険会社にASPサービスとして提供。
データの集約管理はAxedaのM2Mクラウドが担当、Walsh Visionはアプリケーション
開発のみを担当することで、最小限の開発でサービス提供が可能に。
Walsh Visionのサービス提供モデル
「FleetVantage」
顧客:保険会社
ASPサービス
Walsh
Vision
アプリケーション
+
Axeda
M2Mクラウド
Sprint
ネットワーク
パートナー
HWベンダー
デバイス
(セルラーモデム)
提サ
供ー
ビ
ス
・本サービスを利用することで、
インフラ投資をすることなく、
Pay As You Drive型自動車保険
を開発可能
(Danlaw,Applus,CalAmp)
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注)Pay As You Drive型自動車保険:乗った距離に応じて保険料が決定するタイプの自動車保険
フリート管理サービス:自動車の運行状況を管理するためのサービス
22
M2M参入ベンダーの多くが、M2Mクラウドを手掛ける
ただし、M2Mクラウドは自社製品の付加価値向上手段のひとつ
デバイス、ネットワーク、ソフトウェアなどM2M参入ベンダーの多くが、自社製品/
サービスに加え、M2Mクラウドサービスを提供。
自分のコアビジネスにM2Mクラウドを組み合わせることによるコアビジネスの付加
価値向上が狙い。
デバイス
ネットワーク
サーバ
アプリケーション
機械
スマートメータ- ロ
ー
カ
カメラ
ル
処
医療機器 理
/
・デバイス管理機能
ATM、POS
をセットにすることで、
セ
自販機
導入のしやすさ
ン
シ
デジタル ン
を優位性に
サイネージ グ
通
有線
アクセス
網
・自社通信網の
プラットフォーム化に
よるDam-Pipe化
基幹網
からの脱却
無線
アクセス
網
オンプレミス
M2M
クラウド
RFID
スマートデバイス 信
スマート家電
モ
ジ
ュ
ー
ル
・Digi International
・ルートレック・ネットワークス
・サン電子
・CSC
・日立
需要予測
マーケティング
渋滞回避
・自社のクラウド基盤
行動履歴把握
への顧客囲い込み
環境状況把握
・ビッグデータ
ソリューションの拡販
リモートメンテ
リモート監視
・AT&T
・KDDI
・NTTDocomo
・CSC
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Axeda
・NEC
・富士通
・NTTデータ
・MWA Intelligence
・オムロンソフトウェア
・日新システムズ
23
各社M2Mクラウド製品機能比較
SIer(NEC、NTTData 、富士通)は、ビッグデータ分析技術が充実⇒SI案件受託が目的
デバイス系ベンダー(ルートレック、Digi)は、デバイス管理が充実⇒自社製デバイスの付加価
値向上
ソフトウェア
デバイス
SIer
CONNEXIV
Xrosscloud
(NEC)
(NTTData)
・NECによるSI対応
アプリケーション
・外部API:SOAP、
API
REST、JASON
デ
ー
タ
処
理
機
能
・NTTDataによる
SI対応
ルール
エンジン
○
?
CEP
○
(別製品:SCTXPF)
○
その他
・ワークフロー
コントローラー
分析手法「BICLAVIS」
RDB/KVS
Hadoop
データ
ベース
取得データ
評価
デバイス管理/
セキュリティ
デバイス
ゲートウェイ
・シナリオに基づく
コンバージェンス
プラットフォーム
(富士通)
ServiceLink
ZeRo
iDigi
(Axeda)
(ルートレック・ネットワークス)
(Digi International)
・SDK実装
・富士通によるSI対応 ・外部API:SOAP、
REST、HTTPS
×
(連携機能のみ)
・外部API:HTTPS、
XML、JSON
・外部API:HTTP、
REST
○
×
×
○
○
×
×
・並列分散処理
ー
ー
ー
Hadoop
RDB
RDB
RDB
×
×
○
○
あ
上位の分析、アプリケーションを充実
○
ルールエンジンに含む
×
×
△
×
△
×
△
認証、デバイス
エージェントの管理
△
デバイスエージェント
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○
ルールエンジンに含む
○
機器情報管理
認証、機器情報管理 認証、機器情報管理
△
○
○
デバイスエージェント
汎用デバイスを用意
汎用デバイスを用意
自社製デバイスの管理機能を充実
24
④収集したマシンデータの分析の高度化
可視化から予測を経て自動最適化へ
収集・蓄積したマシンデータの分析は、可視化、予測を経て自動化/最適化へと
高度化していく。
分析の高度化により、他社との差別化や新たなサービス開発など提供される価値
は高まっていく。
分析の高度化により得られる価値
提供価値
予測
可視化
の精度
向上
自動化
最適化
⇒状態変化のトレンドおよび
複数の情報にもとづく予測
可視化から
予測を経て
自動化へ
⇒分析結果にもとづく最適制御
例:設備機械の故障の予兆にもとづく
メンテナンス計画の自動化等
例:設備機械の故障の予兆の提示等
⇒個々の単位での状態の把握、集約によるマスな状態の把握
例:設備機械のステータス等
情報の
可視化
・静的な状況の可視化
マシンデータ分析の出発点
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分析の
高度化
25
最適化事例:店内の顧客の行動分析結果をもとに、棚割を最適化
Family Dollar Store
Family Dollar Storeは、米国の44の州に7000店舗を構えるスーパーマーケットチェーン。
センサつきの棚であるデジタルプッシャーからの情報とカメラからの画像を組み合わせることで
顧客の振る舞いと売上の相関を詳細に分析。分析結果をもとに、棚割を最適化し、収益を
向上。
Family Dollar Storeは、2010年にシステムを導入し、2011年には収集したデータを分析する
ラボを設立。
カメラ画像
・滞留時間やトラフィック、
2つのデータを組み
ディスプレイや棚に対する
合わせて分析
顧客の振る舞いを記録
デジタルプッシャー
■分析結果レポート
・通路の数と滞留時間は比例
・棚のメッセージにより滞留時間が増加
・ディスプレイ前で止まった顧客の半数が
購入ブランドを変更 など
■分析により実施した施策と効果
センサ
・センサつきの棚
・いつどの商品が棚から取り出されたか
センサで検知し記録
Copyright(C) 2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
・ブランドへの興味を引き付けることで滞留時間を180%増加
・細い通路内に定番商品をおくことで売り上げ17%増
・棚のメッセージ変更によりヘルシーシリアルの売り上げ
26%増
・ブランドロイヤルカスタマへの明確な販売促進により、
滞留時間は減ったが購入率増加
26
1.M2Mとは
2.M2Mを実現するための技術
3.マシンデータの活用の仕方
4.まとめ
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27
拡大するマシンデータの活用範囲
情報取得機器のひろがりとともに、利用エリアは都市レベルへと拡大していく。
データ処理の仕方もよりリアルタイムに近づいていく。
広域
交通
交通
・渋滞解消
・渋滞可視化
エネルギー
・スマートグリッド
マシンデータの活用は、
都市レベルへ拡大
都市レベル
コンシューマ
サービス
利用エリア
・個人向けセキュリティ、アラート
拠点間、店舗網
セキュリティ
・盗難/不正侵入監視
金融・流通 金融・流通
・ATM、POS監視
・保守
単一拠点
製造
局所
バッチ
・One2Oneマーケティング
・モバイルPOS/リーダー
コンシューマ
サービス
・資産管理
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製造
・SCM
・カーゴ遠隔監視
ヘルスケア
・スマート家電
データ処理
今後拡大
・遠隔診療
既に実現・普及
リアルタイム
28
変わる企業の情報活用
企業情報活用の対象は、DB内のデータからマシンデータへ拡大
今後、企業が分析活用するデータは、DB内のデータからマシンデータへと拡大
まずは、自社でどのようなマシンデータが取得可能か確認し、どのような活用が考えられる
か検討。
自社で取得可能なマシンデータがない場合、社外に存在するマシンデータの活用を検討。
自社内
(非 マ
シ
定ン
型デ
デー
ータ
デ タ
ー )
タ
の
種 ( デ
類 定ー
型タ
デベ
ーー
タス
)
データの所在
①自社で取得
可能なマシンデータの活用
・自社製品/設備機械等
・自社製品、設備、スマートデバイス
等からのマシンデータ取得を検討
社外
②社外のマシンデータの活用
・パートナー企業等外部から取得
可能な情報
・社外にあるマシンデータで活用
できるものがないか検討
従来の情報活用の対象領域
企業情報システムから
得られるデータ
外部データベースなど
・CRM、ERP、POS等
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29
①自社で取得可能なマシンデータの活用
どのようなマシンデータが収集、活用可能か検討
マシンデータ活用の第一歩は、データの収集と蓄積。まずは、どのようなマシンデータが自社
で収集可能か検討を行う。
収集可能なマシンデータに対し、活用できるところから活用していく。
用途に合わせて、尐しづつ高度な活用を目指していく。
マシンデータ活用のステップ
収集したマシンデータ
の活用
マシンデータの収集
・自社製品や設備等からどのようなデータが
収集可能か検討。
・収集したマシンデータは、活用できるところ
から活用していく。
分析の高度化
データ取得対象機器
工場設備
店舗設備
顧客へ納入
する製品
オフィス機器
スマート
デバイス
・・・
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収集した
情報
の可視化
予測
・個々の機器
・マスとしての変化
・予兆発見
・将来予測
自動化
最適化
・機器の自動
制御
・最適計画
30
事例:膨大な無人駐車場積算機のデータを多様な用途に活用
パーク24
パーク24は、Timesなど無人駐車場事業を展開。2005年に駐車場の無人化システムTONIC
を構築。対象となる駐車場は、現在1万4千拠点。
蓄積された積算機データを、新サービスの開発や意思決定支援、業務オペレーションの改善に
活用。
⇒データを収集するためのインフラが構築されたことで、自由に使えるデータがあったからこそ、
幅広い用途でのデータの活用を検討することが可能に。
システム導入以来、営業利益はほぼ毎年5%以上上昇。
【新サービスの開発】
満車空車情報通知サービス
【意思決定支援】
駐車場物件開発可否判断
・地図情報と組み合わせ、
潜在需要判断
地図
連携
駐車場積算機データ
積算機データ
物件名: ○○
売上: ○○
台数:○○
【新サービスの開発】
パークアンドライドサービス
・交通系ICカードと組み合わせ、
パークアンドライドサービスを提供
スマホ
連携
・スマートフォン上で駐車場の
満車空車情報を表示
・日時
・入出庫時間
・入出庫台数
・売上金額
・・・
ICカード
連携
・約1万4千拠点における
稼働実績データ
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会員
データ
連携
【業務オペレーション改善】
DMにより、物件利用を平準化
・会員に対し、DMやキャンペーンを打つことで、
近場ですいている駐車場へ会員を誘導
31
②社外のマシンデータの活用
社外のマシンデータを利用することで新たなビジネスを展開
GMなどパートナ―企業や第三者に自社のマシンデータへアクセスするためのAPIを公開する
企業が登場、これらのAPIを使った新しいサービスが萌芽し始めている。
GMのテレマティクスサービスOnStarを利用したサービス 「RelayRides P2Pカーシェアリングサービス」
・RelayRidesは、GMがパートナー企業向けに公開したテレマティクスサービスOnStarのAPIを利用すること
で、P2Pのカーシェアリングサービスを展開。
・RelayRidesは、GMのOnStarAPIと連携することで、貸し出す車の位置情報の表示や貸し出す際のドア
のアンロック等を行っている。
RelayRidesサービス
GM
・OnStarの情報を利用し、カーシェアリングサービスを展開
・OnStarから得られる位置情報を表示
・ドアの遠隔ロック
・エンジン作動制御
×
RelayRides
date
OnStar
time
WebAPIを通じて Cars for rent near サンノゼ カリフォルニア
パートナ―企業に A
Carl’s Chevrlet
$7.00/hour
2011 Chevrolet SONIC $35.00/day
情報を公開
・位置情報
・速度情報
・セキュリティ状態
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B
Jeral’s Cadillac
2010 Cadillac CTS
$20.00/hour
$100.00/day
・・
・
32
自社のもつマシンデータを公開することで、マシンデータを中心とした
エコシステムが構築されていく
自社で蓄積・収集したマシンデータを第三者に公開することで、自社製品・サービスを中心と
したエコシステムが生まれる。
パートナー企業や第三者には、新たなビジネス機会が提供される。また、自社製品の周辺
サービスが充実することで、情報提供側は、自社製品の差別化へと結び付けることができる。
例:車両位置情報/動作状況、設備機器のパラメータ/稼働状況等
自社のもつマシンデータ公開による新たなエコシステム
パートナ―企業、第三者
・新たなサービスの開発
追加機能
新たなビジネス
機会の提供
情報提供
メンテナンス
・・・
自社製品周辺サービス
の充実
⇒製品の差別化へ
情報を開示、提供
自社
自社製品・サービスから得られたマシンデータ
自社製品・
サービス
自社製品・
サービス
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自社製品・
サービス
自社製品・
サービス
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1.M2Mとは
2.M2Mを実現するための技術
3.マシンデータの活用の仕方
4.まとめ
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ロードマップ
情報取得範囲の拡大とともに、収集したマシンデータの分析は高度化へと向かう。
社内外のマシンデータの複合的な活用が進むとともに、マシンデータを中心としたエコシステム
が形成されていく。
~2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度~
マシンデータの戦略的な利用
マシンデータ
活用の方向性
▲OnStarAPIの公開
一部で社外のマシンデータとの連携が始まる
マシンデータを中心と
したエコシステム形成へ
スマートデバイスの利用が進む
デバイス
☆スマートフォンにNFCリーダ/ライタ機能搭載
★スマートフォンのセンシング ☆スマートフォンに近距離無線搭載
機能の活用
情報取得機器の拡大
★センシング/通信機能のモジュール化が進む
ネットワーク
M2Mクラウド
ネットワークの大規模化が進む
▲MQTT
☆M2Mに最適化されたプロトコルの利用
☆組み込みCEPによる端末側でのデータ処理
M2Mクラウドによる
センシングデータの管理
M2Mクラウドに蓄積した
情報の複合的活用
★日本のSIer各社よりM2Mクラウド発表
マシンデータ
分析の高度化
収集したマシンデータの可視化
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可視化の精度向上
収集したマシンデータにもとづく予測
自動最適化
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まとめ
M2Mを実現するための技術の変化
⇒M2Mシステム構築を支援する材料がそろいつつある。
センサデバイスのモジュール化やスマートデバイスの活用
ネットワーク大規模化/リアルタイム化をサポートする技術
M2Mクラウドへのマシンデータの集約
収集したマシンデータの分析の高度化
マシンデータの活用の仕方
自社で取得可能なマシンデータの活用
社内でどのような情報が取れるのか確認し、できるところから活用を始める。
用途にあわせて、すこしづつ高度な活用を目指していく。
社外のマシンデータの活用
社外のどのような情報が調達できるか検討し、社内の情報と組み合わせて活用。
自社のもつマシンデータで公開できるものはパートナー企業やアプリケーション
ベンダーに公開していく。
⇒マシンデータの公開を通じて、エコシステムが構築されていく。
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