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臨床心理的アセスメント(心理査定) 2ー1) 2ー1) パ−ソナリティとメンタル
「福祉臨床心理学(箕口)」 資料1-1 2ー1) 2ー1) 臨床心理的アセスメント(心理査定) ∼パ−ソナリ とメンタルヘルスのアセスメント パ−ソナリティ ティ とメンタルヘルスのアセスメント Ⅰ.パーソナリティとは? ◆パーソナリティ Personality 人格 語源:Persona ペルソナ(ラテン語) →仮面 →劇の中で演じる役割、俳優自身 →個性・ 特徴・ 性質全体 ◆オルポート AllportGW , . .の定義 「 パーソナリティとは、個人の内部に存在する精神身体システムをもった力動体制であり、その 人を特徴づけている行動や思考を決定するもの」 ◆パーソナリティの3つの側面 ①能力的側面→知能 ②情意的側面→性格 ③指向的側面→価値観・人生観・ 興味 ※ただし、「 人格」ということばにふくまれる道徳的・ 倫理的側面は含まれない ◆総合的定義 「 パーソナリティとは、知能や性格、さらに価値観や人生観興味など、人間の行動や思考を決定 する内的要因すべてを含む包括的概念である。」 ◆ character 性格 語源:ラテン語で「 刻み込まれた」「彫りつけられた」もの 定義:個人における感情および意志の比較的恒常的な反応総体をいう ※情意的・意志的側面の行動様式 ※知的側面はふくまない ◆ temperament 気質 定義: 個人の情動的反応の特徴 刺激に対する感受性/反応の強さ・ 早さ/その人に固有の根本気分 ◇「 知能」「個性」「人生観」もパーソナリティの下位概念 -1 - Ⅱ.パーソナリティの諸理論 ※パーソナリティをどのようにとらえるか? ↓ 古代ギリシア∼現代までさまざまな理論が展開 ↓ いずれも不十分 ↓ ★統一的なパーソナリティ理論はいまだ確立されていない 1)類型論−−分類・固定的 一見複雑なパ−ソナリティをいくつかの型(タイプ)に分類し、理解しようとする試み。 ①身体的特徴にもとづくもの クレッチマー(EKretshmer . ) 細長型−分裂気質/肥満型−そううつ気質/闘士型−てんかん(粘着)気質 ②心理学的特徴にもとづくもの ユング(CGJung . . ) ∼ 内向性−外向性 ③価値観にもとづくもの シュプランガー(ESpranger . ) ○複雑で多様なパ−ソナリティを統一的に、全体的に把握できる ●典型例のみが強調されやすく、その中間型や移行型が無視される傾向にある 2)特性論−−要素・ 網羅的 パ−ソナリティをいくつかの要素(特性)に分け、その程度を測定することによって、パ−ソナリ ティの全体像を記述し、説明しようとする試み。YG性格検査、MMPI などの質問紙によって、量 的に把握する。 ○類型論のように固定的ではなく、流動的、力動的にパ−ソナリティをとらえることができる。 ●得られるパ−ソナリティ像は、断片的かつ部分的で、個人の全体像、独自性を明らかにして いない。 3)その他の理論 ①精神分析理論−−力動的 ②アドラー心理学−−目的論的 ③人間学的心理学−−成長促進的 -2 - Ⅲ. パーソナリティの測定(アセスメント) 面接法 / 行動観察法 / 評定尺度法 1)質問紙法 questionnaire 特定のパーソナリティ特性、興味、態度をとらえるために用意された質問項目に対し、被検者が自 己を内省して回答(自己評定) する形式のテスト・・・向性検査/YG性格検査/MPI ・ MMPI など ・実施が簡単 ・短時間に多数に実施できる ・処理が客観的におこなえる ・自己評定であるため、回答に意図的な歪みが生じやすい 2)投影(映)法 projective technique 主として精神分析的な理論にもとづいた方法であり、被験者にあいまい( 多義的)な刺激を提供し、 自由に思い浮かぶことを述べさせることにより、被験者自身も明確に意識していない深層面もとらえ ようとする方法・ ・ ・ ロールシャッハ・ テスト/TAT/PFスタディ・SCT・描画法 など ・被験者が意図的に回答を歪ませることができにくい ・パーソナリティの全体的・力動的な姿をとらえることができる ・分析・解釈に熟練を要する 3)作業検査法 performancetest 被験者に一定の作業を課し、その反応の性質から、とくに意志力を中心としたパーソナリティの特 徴を知るための検査。 ・意図的に回答を歪めることがむずかしい ・パーソナリティの限定された側面しか測定できない Ⅳ. パーソナリティの形成 遺伝 か 環境 か? 「 カエルの子はカエル」 「 氏より育ち」 ↓ 輻輳説 シュテルン(ドイツ) どちらも独立して加算的に関係する/遺伝( ○%)+環境(△%) ↓ 相互作用説 遺伝と環境は互いに作用しながらパーソナリティの形成に寄与する 遺伝も環境も -3 - ◆ パーソナリティを形成する要因 1遺伝的要因 パーソナリティの形成における遺伝の影響を調べる方法 ①家系研究法∼ 知能・特殊才能・ 精神病・犯罪など 正確な資料が得にくい、環境要因の影響を区別しにくい ②双生児法∼ 一卵性双生児と二卵性双生児の比較<対差> 身体・知能に比べてパーソナリティの側面は遺伝の影響が少ない 2身体的要因 ①生理・神経学的機能 内分泌系: 興奮しやすい−思考力減退 自律神経系:情緒不安定・ 神経質・うつ ②体格 クレッチマーの類型論( 体格と性格) ③容貌・健康状態 身体的ハンディキャップや虚弱体質⇒劣等感と補償 3環境的要因 ①家族・家庭的要因 1)きょうだいの影響∼誕生順位( 長子−中間子−末子) 2)両親の影響∼家族価値・雰囲気/親の養育態度 ②文化・社会的要因 1)家庭の社会・ 経済的地位、教育水準 2)友人集団と友人関係 3)居住地域 4)学校・職場環境 5)文化の型∼言語 · 生活 · 思考様式/価値観/民族 · 国民 · 県民性、宗教、教育など 4主体(認知)的要因 ①自己のライフスタイルの決断 人生目標の主体的選択 ②自己実現と自己成長力 自己理想に向かって自身のパーソナリティを変える ↓ カウンセリング・ 心理療法・ 勇気づけ -4 - Ⅵ.パ−ソナリティ診断とメンタルヘルス上の問題 1) 多重人格(障害) DSM−Ⅳ( 米・ 精神障害の分類と診断の手引き) →解離性障害 と分類 正常に統合されている自己の同一性や記憶、意識 などの機能が障害/変化する心の病気 ◆解離性同一障害( 多重人格障害) ◆解離性健忘(記憶の障害) ◆解離性とん走(日常生活からの逃避) 何らかの心的外傷体験(trauma ) が原因とされている ↓ ■被虐待体験 ■犯罪被害 ■事故・事件・災害 2)心的外傷後ストレス障害 (PostTraumaic StressDisorder ) 事故・ 事件・ 犯罪・ 災害・ 被虐待体験などの重大な心的外傷を受けた人が、長期にわたって、精 神的な症状を呈する状態 ◆出来事の再体験( 強迫的想起・再燃) ◆関連刺激からの回避/無感覚・ 感情鈍麻 ◆心理的な過覚醒 ↓ ■大震災などの被災者・ 救援者 ■ベトナム戦争兵士 ■被虐待児 3)人格障害 DSM Ⅳ(米・精神障害の分類と診断の手引き) A群(行動が奇妙で風変わり) B群( 演技的・感情的・移り気) C群(不安・恐怖) ◆妄想型人格障害 ◆反社会性人格障害 ◆回避性人格障害 ◆分裂病質人格障害 ◆演技性人格障害 ◆依存性人格障害 ◆分裂病型人格障害 ◆自己愛性人格障害 ◆強迫性人格障害 ↓ ◆境界性パーソナリティ障害 ①きわめて不安定な対人関係 ④否定的感情 ②操縦的な自殺企図 ⑤自我−異質的な精神病体験 ③不安定な自己感 ⑥衝動性 ⑦低い達成能力 ↓ <スタッフに葛藤や分裂をもたらす2つの要因> 1)異なったスタッフに対して異なった感情や情報を示す 2)投影的同一視の機制:本人が抱いているある感情( 怒りなど) を、スタッフの誰かに投 影し、その投影の確証となるような反応( 怒り、回避など)を引き出すように振る舞う ↓ スタッフ自身が抱いている逆転移感情を分析する/スタッフ間のコミュニケーションを図る -5 - -6 -