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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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Wood-based sandwich panel with low-density fiberboard for
use as structural insulated wall and floor( Abstract_要旨 )
Kawasaki, Tamami
Kyoto University (京都大学)
2006-01-23
http://hdl.handle.net/2433/144349
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【524】
かわ さき たま
氏
み 河 暗 珠 美
名
学位記番号
博 士(農 学)
農 博 第1535号
学位授与の日付
平成18年1月 23 日
学位授与の要件
学位規則第 4 条第1項該当
研究科・専攻
農学研究科森林科学専攻
学位(専攻分野)
学位論文題目
WOOD−BASED SANDWICH PANEL WITH LOW−DENSITY
FIBERBOARD FOR USE AS STRUCTURAL INSULATED
WALL AND FLOOR
(低密度ファイバーボードを用いた壁床構造用木質断熱サンドイッチパネル)
(主 査)
論文調査委員 数 授 川 井 秀 一 教 授 央 野 浩 之 教 授 小 松 幸 平
論 文 内 容 の 要 旨
本論文は,壁床構造用木質断熱サンドイッチパネルの開発を目指したものである。すなわち,断熱特性を持つ低密度ファ
イバーボードを芯材(コア)とし,表層材(フェイス)に単板,合板などを配したサンドイッチ構造により剛性を高めた木
質複合パネルの材質特性を明らかにした。さらに,構造用としてのコアの限界低密度を求めたのち,これらの成果を基に構
造用厚型サンドイッチパネルの製造を試み,その材質特性や最適設計条件を論じるなど,一連の木質複合サンドイッチパネ
ルの特性の解明に関する研究を全5章に取りまとめている。
その主な内容は以下の通りである。
緒言では,木質材料の住宅建築への利用の現状とこれまでの開発研究の進展を示した。従来の低密度ファイバーボード
(インシュレーションボード)の断熱材としての有用性と課題,並びにサンドイッチ構造材料の軽量高剛性と工業的利用に
ついて論じた。木質複合によるサンドイッチパネルの技術開発と住宅への利用は未だ十分確立されていないものの,これま
でのサンドイッチパネルのコア材の研究が発泡プラスチックや低密度パーティクルボードを用いて行われているため,低密
度ファイバーボードを用いた構造用木質断熱サンドイッチパネルの製造技術と材質解明および最適設計の意義,重要性につ
いて論じ,本研究の目的を明らかにした。
第1章では,低密度ファイバーボードの材質改良とその製造技術を検討した。すなわち断熱目的のため軽量化が重要であ
り,かつ構造利用にも耐えうる限界低密度を評価した。特に,軽量化に最適な熱庄技術・接着剤として蒸気噴射プレス法お
よびイソシアネート樹脂接着剤を適用し,製造条件を確立するとともに,従来のインシュレーションボードより軽量高剛性
化(製造限界低密度は50kg/m3,構造用限界低密度は350kg/m3)を実現し,かつ断熱性にも優れることを明らかにして,
低密度ファイバーボードの木質断熱コア材としての可能性を示した。
第2章では,第1章の成果を基に,低密度ファイバーボードをコアとするサンドイッチパネルの製造を試み,その適用性
を検討した。フェイス材に単板を用いて,蒸気噴射プレスにより効率よく熱圧するサンドイッチ複合技術を確立し,コア密
度やフェイス材の厚みが材質に及ぼす複合効果について論じた。さらに,木質サンドイッチパネルが構造用および断熱用と
して充分な材質を持つことを明らかにし,低密度ファイバーボードの木質断熱コア材としての実用性を示した。
第3章では,これまでの結果を基に,厚さ50∼100mm程度の木質サンドイッチパネルを試作し,その材質における複合
効果を調べた。フェイスに構造用面材料を用い,コアの低密度ファイバーボードに厚みを持たせ,特に壁床構造用の断熱パ
ネルとしての応用を目指して,その適用性を明らかにした。構造用合板や中密度ファイバーボード(MDF)をフェイスと
する木質サンドイッチパネルを成型し,フェイス材質,パネル厚さ,およびコア密度が材質に及ぼす影響を論じた。4点曲
げによる面外曲げ弾性係数を中心に,はく離強度,寸法安定性などの基礎材質を評価した。特に,壁床構造計算の基礎とな
る曲げ剛性について,最適コア・フェイス厚さを求める軽量剛性最適化解析法を木質複合材料に応用し,最適設計条件を明
らかにした。
−1235−
第4章では,第3章において,構造用断熱パネルとして最適構造と判断されたモデルについて,面内せん断試験を行い,
構造計算の基礎となるせん断弾性係数を評価した。サンドイッチパネルがそれ自体で壁床パネルとして機能するため,通常
の構造用パネルの試験法と異なり,壁床パネル用の試験法を応用した。複合効果と厚み効果によりサンドイッチパネルが構
造用として充分なせん断剛性を持つことを明らかにした。フェイス・コア単体,および複合体のせん断係数を計測した結果,
サンドイッチパネルが複雑なせん断挙動を示したため,弾性バネモデルによるせん断挙動解析法を考案し,複合理論を含め
て考察したところ,剛性の高いフェイスにより,コアのせん断変形がやや抑制される相互作用が確認された。
第5章では,最適構造のサンドイッチパネルについて総合的な断熱特性(熱伝導率,熱拡散率,および熱抵抗など)を論
じた。適度なパネル密度,厚さ,および木質複合効果によって,一般の断熱材より保温性能(非定常断熱)に優れ,一般の
木質材料より定常断熱性能に優れており,充分な熟抵抗も有することを明らかにした。
以上のように,本論文において,低密度ファイバーボードをコアとする一連の木質サンドイッチパネルを開発し,その材
質試験および設計解析を行った結果,特に構造用合板をフェイスに用いた場合,適度なコア密度,コア・フェイス厚さを設
計することにより,構造用並びに断熱用として最もバランスの取れた諸性能の発現が可能であることを明らかにし,住宅の
壁床構造用木質断熱サンドイッチパネルとしての有用性を示した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
温暖化・異常気象などの地球環境の激変に応じて,住宅における耐震性・断熱機能の付与および適切な材料の選択は,安
全性の確保,居住性の改善,省エネ化,並びに環境調和に向けて大変重要な課題となっている。現在汎用されている住宅の
断熱材がプラスチック系,鉱物繊維系のものであるため,より保温性に優れた木質ファイバーを利用した低密度ファイバー
ボードの木質断熱材としてのポテンシャルが,安全性や資源環境的な観点からも期待されている。断熱性を確保するために
は軽量化が必要であるが,木質ボードの軽量化は一般に力学的に不利であり,構造,断熱特性共に優れた木質材料の開発と
その利用技術は未だ充分確立されていない。
本論文は,低密度ファイバーボードを用いた住宅壁床構造用木質断熱サンドイッチパネルの開発を目指したものである。
すなわち,軽量・高剛性を持つサンドイッチ構造を適用することにより,力学的性能と軽量断熱性能を併せ持った木質サン
ドイッチパネルの製造技術の確立と材質解明,および複合材料の解析設計による最適化を論じたものである。
評価すべき主要な成果は,以下の5点である。
(1)従来のインシュレーションボードの問題点を克服した低密度ファイバーボードを開発し,力学的性質,断熱性などの諸
特性を明らかにした。
(2)低密度ファイバーボードをコアとしたサンドイッチパネルが構造用および断熱用として充分な材質を持つことを明らか
にし,新たな木質構造用断熱パネルとしての可能性を示した。
(3)構造用合板やMDFをフェイスとする木質サンドイッチパネルを成型し,フェイス材質,パネル厚さ,およびコア密度
が基礎材質に及ぼす影響を調べ,曲げ弾性係数を評価するとともに,軽量剛性最適化解析法を木質複合材料に応用し,最適
設計条件を明らかにした。
(4)最適設計の構造用木質断熱サンドイッチパネルの面内せん断弾性係数を評価するとともに,複合効果と厚み効果により
木質サンドイッチパネルが構造用として充分なせん断剛性を持つことを明らかにした。
(5)最適設計の木質サンドイッチパネルの総合的な断熱性能について検討した結果,適度な密度および厚さと複合効果によ
り,従来の断熱材より保温性に優れ,一般の木質材料より断熱性能にも優れており,さらに充分な熟抵抗を有することを明
らかにした。
以上のように,本論文は,低密度ファイバーボードを用いた木質サンドイッチパネルを開発し,最適設計条件を明らかに
したのち,その構造用断熱パネルとしての特性を論じるなど,一連の木質サンドイッチパネルの開発および特性解明に関す
る研究を取りまとめたものであり,木質複合材科学,木質構造機能学,並びに関連する木材工業の発展に寄与するところが
大きい。
よって,本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。
−1236−
なお,平成17年12月14日,論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果,博士(農学)の学位を授与される学力
が十分あるものと認めた。
一1237−
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