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握力向上を目指したフィットネスプログラムの試案 小島 瑞貴,渡辺 みどり,鈴木 王香,古屋 朝映子,長谷川 聖修,本谷 聡 筑波大学大学院,日本こどもフィットネス協会,國學院大學,川村学園女子大学,筑波大学体育系,筑波大学体育系 目的 文部科学省が発表した「平成26年度全国体力・ 運動能力,運動習慣等調査結果」によると,「上 体起こし」「20mシャトルラン」が小学生男女 で最高値を示したが,「握力」「ボール投げ」は 小・中学生男女すべてで最低基準となり,測定種 目による「二極化」が浮き彫りとなった(図1). 5.用具 協会オリジナルCC指定ボール(ギムニク社製ソ フトジム,φ26cm).ボールに名前を記して マイボールとし,各自が扱いやすい空気圧 に調整できるようにした(マイ圧). 過去最高の種目 19.0 (回) 3)運動習慣 (1)活動頻度…1週間の運動実施回数 (2)活動内容…エアロビクス,ヒップホップ, ブレイキン,体操 など 4.測定方法 約3ヶ月間,ソフトジムを用いたフィットネスプ ログラムを実施した.その前後で,左右の握力を 測定した. 上体起こし(小5女子) 18.5 18.0 17.5 17.0 1 2 過去最低の種目 30.5 (㌔) 3 4 5 6 握力(中2男子) 30.0 29.5 29.0 28.5 08年度 09 10 12 13 14 図1 体力測定の種目による二極化 生活やスポーツで重要な役割を果たす「握力」 の低下は,識者によって様々な分析がなされてい るが,その一つとして,ライフスタイルの変容が 挙げられる.全てが自動化された暮らしの中で, 重い荷物を持つ,木にぶら下がる,雑巾を絞るな ど,強く握りしめる動作体験が激減している.子 どもたちに豊かな身体運動の機会を積極的に提 供していく必要があると考えられる. こうした背景から,日本こどもフィットネス協 会では,「握力向上プロジェクト」を立ち上げ, ソフトジムを活用したプログラムを展開してき た.ソフトジムは,適度な弾力性のある小さな ボールで,フィットネスの現場で普及している用 具である.このソフトジムを握った状態で運動す ることで握力の向上が期待 できる. 競技性 そこで本研究では,子どもを 対象とし,ソフトジムを用い たフィットネスプログラム 日常性 の実施前後における握力を 遊戯性 比較するとともに,「競技 性」「遊戯性」「日常性」 の3つの観点からプログラム内容について考察し た.それにより,多様な観点からの運動プログラ ムの開発について基礎的な知見を得ることを目 的とした. 6.プログラム 1)競技性を重視した運動プログラム ソフトジムを握った状態で,音楽に合わせて行 う,約10分間のフィットネスプログラム.このプ ログラムは,全国こどもチャレン ジカップ(※)の規定種目「チャ レンジサーキット・アクティ ティ・ルーティン」として導入 された.審査においては,スキル だけでなく「元気」と「笑顔」 も重視された. ※アクティビティ,エアロビクス,ヒップホップのスキル(パフォーマン ス)を競い合う大会 2)遊戯性を重視した運動プログラム (1)持っているソフトジムを落とさないように 握るコーディネーションゲーム 2.調査日時 2014年6月~8月 リトル・ジュニア・ユース 3.調査項目 1)握力 2)年齢 結果 図2は,運動プログラム実施前後における握力(左 右・左・右の平均値)を比較したものである. 対象者446名全体の比較では,全ての項目で有意 に向上した(平均12.3kg→12.6kg,左11.9kg→ 12.2kg,右12.6kg→13.1kg). 年齢別に見ると,有意に向上したのは,リトルの 平均6.2kg→6.5kg, ジュニアの平均13.1kg→ 13.6kg,左12.6kg→13.2kg,右13.5kg→14.1kg であった. **p<0.01 全体 平均 左 右 リトル 平均 左 pre 右 post ジュニア 平均 左 右 ユース 平均 左 右 (2)ペアになってソフトジムを引っ張り合う コーディネーションゲーム 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0(kg) 図2 握力平均値の変化 考察 (3)ソフトジムを握った状態で行うコアトレー ニング 全体の握力が有意に向上した.中でも,ジュニア の向上が顕著であった.このジュニア期(8~11 歳)は,ゴールデンエイジとも呼ばれ,神経系の発 達がほぼ完成に近づき,多様な運動習得に最も適 した時期とされている.そのため,握りやすいソ フトジムの特性を活かして,多面的に展開された プログラムは,単に握力を向上させるだけでなく, 巧みな動きも高める可能性が期待された. 結論 (4)ソフトジムを握った状態で,音楽に合わせて 行うコーディネーショントレーニング 方法 1.調査対象 リトル(3~7歳) 160名 ジュニア(8~11歳) 179名 ユース(12~16歳) 97名 合計 436名 ソフトジムは,空気を抜くと小さく折りたたむ ことができる.また,簡単に空気を入れたり,抜い たりすることができるため, 日常生活の中で手軽 に使うことができる.この特性により,対象者は自 分用のソフトジムを持ち歩き,いつでも使うこと ができた. 本研究では,子どもを対象とし, ソフトジムを用 いたフィットネスプログラムを実施した結果,握 力の向上が明らかになった.このことから「競 技性」「遊戯性」「日常性」など、多面的な指 導方法の重要性が確認された. 今後の課題 3)日常性を重視したプログラム 「マイボール」制度の導入. 1.指導者への半構造化インタビュー調査 2.活動頻度や活動内容による握力平均値の変化 の比較・検討 3.対象群を設定し,ソフトジムを用いたことによ る効果の検証 4.対象者の握力や運動習慣に関する継続的な調 査