ETSI ワークショップ Standards, Open Standards and Interoperability II
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ETSI ワークショップ Standards, Open Standards and Interoperability II 出席報告 TTC IPR 委員会 副委員長 山根 一雄 (富士通株式会社) -Alcatel, [概要] 2005 年 9 月 20 日~21 日、ETSI にてワークショ ップ`Standards, open standards and Interoperability` が開催された。ワークショップ開催の背景には、 Ericsson, Lucent, Siemens, Nortel, Vodafone, Nokia, Motorola, -IBM, HP, Microsoft, Intel, SONY, Unisys, ITEMS International and etc. EC(欧州委員会)傘下の組織 IDABC が全欧電子 政 府 サ ー ビ ス 実 現 の た め の EIF ( European 4.議長: Interoperability Framework)を発行したこと、また ・ 全体:Mr. Karsten Meinhold, Siemens, Chairman その中で基本原則に「IPR は royalty-free ベース」 の open standard の使用を謳ったことが挙げられる。 本ワークショップの結果、ETSI としては PTCC (Protocol & testing competence centre)を中心に of ETSI General Assembly ・ Track 1(Interoperability): Mr. Hans van der Veer, Lucent, ETSI Board ・ Track 2(Open standards): Interoperability の実現推進を強化するとともに、 Mr. Jean Pierre Henninot, Ministere Delegue a open standard の定義については GSC 会合の決議 I`Industrie (royalty-free を含む RAND)を支持することで合 ・ Track 3(IPRs in standards): 意した。一方、ロイヤルティ累積など ITU-T IPR Mr. Markus Muenkler, Vodafone and Mr. Karl アドホック会合でも議論されている「複雑な特許 Heinz Rosenbrock, ETSI Director General 問題」を Vodafone などが多数提起したため、今後 はその解決に向け、IPR ポリシー・ガイドライン 5.背景 の見直しを中心に引き続き議論することとした。 5.1 ワークショップ計画に至る経緯 昨年末、欧州委員会の一組織である IDABC [詳細] (Interoperable Delivery of European eGovernment 1.開催日:2005 年(平成 17 年)9 月 20 日(火) Services to public Administrations, Businesses and ~21 日(水) Citizens, 注 1) が、全ヨーロッパを網羅する電子 政府サービスの実現に向けた取り組みを示す EIF 2.開催場所:ETSI (Sophia Antipolis, フランス) (European Interoperability Framework, 注 2)を発 行した。 3.出席者:95 名 本 EIF は、対象とする(各国)政府機関・企業・ (主な機関、団体、会社名を下記に示す。) 市民間の相互関係を論じた上で、Interoperability -European Commision, DTI, USTA, WIPO, ETSI, を organisational/semantic/technical の3次元に分解 TIA, CCSA, TTA, TTC, OMA, GSM Association, して、各々目標や指針、或いは要求項目を述べて -ISO/IEC, CEN, CENELEC, W3C, CompTIA, いる。また前提となる基本原則として、 Business Software Alliance, Accessibility, Multilingalism, Security 等とともに TTC Report 2006·March Vol.20/No.2 61 Use of Open Standards を掲げているが、特にその やライセンシング問題への所見に関して意見交 Open Standard の説明定義文中、IPR は royalty-free 換がなされた。特に IPR に関しては royalty-free ベ ベースで利用可能であるべきとしている。 ースの是非を巡って意見が分かれ、全てのケース 上記 EIF に対して、EICTA, BSA, CompTIA 等の を画一的に扱うのは困難と観測された。引き続き 商業連合は Interoperability や Open Standards に関 ①Interoperability の 目 標 や 実 現 方 策 を 詰 め る する White Paper を作成し各々の所見を示してい (ETSI としては Technical Interoperability に focus るが、その中で IPR に関しては ETSI や ITU を始 する)②すべての ICT player に支持される Open めとして多くの標準化団体が RAND(Reasonable Standard の定義を作成する③IPR 諸問題と ETSI and non-discriminatory terms)に基づく有償ライセ IPR ポリシー見直しについて議論することとした。 ンスを是認していることを例に挙げ、異論を唱え 第 2 回(10 月 20 日~21 日)に向けた事前準備 た。 (注 3)この IPR に関する議論は、ITU-T IPR Ad として、ETSI は 7 月に web forum(注 6)を開設 hoc 会合(本年 3 月)において Microsoft 社より紹 した。上記①~③に対応する Track1~3 を設定し、 介され、同グループとして Open Standard の定義 議論の進捗を図った。その結果、 を作成することを合意、その後 Intel 社がリードし ・ Track1:Dialogic NL 社 Dr.Bekkers 資料(前述) て案をまとめ、公開している。(注 4) 一方、ETSI としては、本年 4 月の General Assembly において、Dialogic NL 社より Technical の改版とモデレータの Lucent NL 社 Mr. Veer 資料(ETSI の technical interoperability に関す る SWOT 分析)がインプットされた。 Interoperability の重要性と ETSI の果たすべき役割 ・ Track2 : open standard の 定 義 を 含 む BSA, に 関 し て 提 案 が な さ れ 、 open standard や ECTIA 資料(前述)の再提示、コロラド大 interoperability に関する議論を開始することとし Krechmer 氏の`open`の持つ様々な意味を分析 た。広く意見を収集するため、workshop を計画し、 した論文、GSC 会合の Open Standards に関す グローバル企業や標準化団体、政府機関に参加を る Resolution、Open ePolicy Group 作成の Open 呼びかけた。(注 5) ICT Ecosystems に関する資料等がインプット 注 1:EC DG Enterprise and Industry, Unit I-5 European された。モデレータの仏産業省 Mr. Henninot が議論を先導していたが、最終的には GSC の eGovernment services 注 2:http://europa.eu.int/idabc/servlets/Doc?id=19529 Resolution をベースとするのが良いという意 注 3:http://www.etsi.org/SOS_Interoperability/ 見が出た。 ・ Track3:中国の WTO/TBT 委員会への提出資 BackgroundPapers.htm 注 4:http://www.itu.int/ITU-T/othergroups/ipr-adhoc/ openstandards.html 料(標準化における IPR 問題を指摘) 、モデレ ータの Vodafone 社 Mr. Muenkler 資料(ETSI 注 5:http://www.etsi.org/SOS_Interoperability/ standard に関係する IPR 諸問題を列挙)、GSC 会合の IPR Policies に関する Resolution、GTW 5.2 第 2 回ワークショップ開催までの状況 第 1 回(5 月 26 日)は EC DG, ETSI BOARD の 他 、 ANSI, EICTA, OpenForum, BSA, W3C, CompTIA, Ericsson, IBM, Sun Microsystems, Vodafone, Alcatel よりプレゼンテーションがなさ れ、発表者により各々力点は異なるが全体として、 Interoperability 実現に向けた多角的な分析、Open standard の定義、Standard における IPR ポリシー 62 TTC Report 2006·March Vol.20/No.2 Associates の SIIT 会議論文紹介(submarine 特 許問題、主要標準化機関の特許データ比較) 等がインプットされた。 注 6:http://sos-interop.org/ 6.主要議事と結果 6.1 オープニング 最初に ETSI GA chairman の Mr. Meinhold より、 環境や課題について所見を述べた。 (5)Intel views on IPRs in standards:Intel, Director of SIGs and Standard (Mr. Earl Nied) 開会並びに歓迎の挨拶がなされた後、ETSI DG の 標準化と特許の関係を論じた。多くの他の企 Mr. Rosenbrock より、本ワークショップの目的、 業と同様に、特許は防衛手段として考えており、 前回や 3 つの Track の状況、ETSI の位置づけなど ロイヤリティ収入が主目的ではない。イノベー について説明がなされた。 ション活性化のために、IP は尊重すべきであり、 標準化団体が過度な介入や規制を行うのは害 6.2 プレゼンテーション (1)EC DG ENTR standardization policy in progress がある。 (6)Intellectual property rights and royalties within EC DG Enterprise & Industry(Mr. David White) standards:GSM Association, Project Manager IPRs ICT 政策の説明。Software の重要度が高まっ (Mr. David O'Byrne) ている中、ETSI などの標準化を通じた相互運用 3GPP や OMA における IPR 問題を述べ、 性の実現に大いに期待しており、支持するとの GSMA としては業界のために標準化団体にお 弁。 ける IPR Policy 改善に向け、欧米の法規調査も (2)e-Government - from interoperability to collaboration:EC IDABC, Head of unit(Mr. Karel de Vriendt) IDABC の目指すところを説明。全欧電子政 行いながら検討していく所存であることを表 明した。 (7)At the end of the line, there’s always a user: INTUG, Chairman(Mr. Sergio Antocicco) 府サービスを実現する上で重要なポイントと INTUG(International Telecommunications Users な る 、 特 に Software の Interoperability と Group)の紹介の後、テレコムユーザの立場か Collaboration について、その理想形態を述べた。 ら見た interoperability を述べた。IPR に関して (私見としての発表。また専門家ではないとし は妥当な報酬があるべきだが、私的独占への利 て、Standard とか Open という言葉の使用は避 用禁止と利用量に伴う単位コスト低減が必要 けた。) とした。 (3)CCSA views on IPR matters:CCSA (Mr. Mengbin Wen (Huawei, IPR)) (8)OMA perspective:OMA, Board Chairman (Mr. Jari Alvinen) CCSA ( China Communications Standards OMA(Open Mobile Alliance)の紹介の後、 Association)の紹介と IPR ポリシーと patent OMA としては Interoperability やその testing に database の状況説明を行った。終わりに、CCSA は以前より注力していること、IPR は、昨年末 としては RAND の定義詳細化や特許宣言の促 に他の標準化組織と歩調を合わせたポリシー 進が必要と考える旨を、また Huawei としての に変更するとともに、引き続き改善検討を行っ open standard への見解(必ずしも全ての IPR が ている。 royalty-free であることを意味しない等)を述べ た。 (9)Postcards from the United States: ANSI, Senior VP, Mr. Dan Bart (4)Software Interoperability… Same game, same open standard の定義に関して、主要な機関や rules?:HP, CTO OpenCall (Mr. Dave Penkler) 団体の意見を整理した上で、ANSI の見解を述 膨大な Software の interoperability を実現する べた。標準への対価は reasonable fee もしくは ためには、service と protocol の両 interface 標 free がベストであり、多くの場合、RAND の IPR 準化とその適合試験が重要であるとし、現状 ポリシーは interoperability の障壁にはなってい TTC Report 2006·March Vol.20/No.2 63 ない。 や精査は今後の課題とした。終わりに、ETSI (10)WIPO perspective on IPR issues in standards は標準化関係の`IPR think tank`として問題解決 development : WIPO, Mr. Philippe Baechtold, の一端を担うことを再確認し、今回の議論を 11 Head Patent Law section & Mr. Richard Owens, 月の GA#46 で紹介、IPR working group(ETSI Director Copyright E-Commerce の IPR 体制検討を含む)の設置を提案すること 現状、著作権(DRM や OSS 関係含む)や特 を合意した。また、引き続き web forum におい 許(特に標準化関係)が抱える issue を分析し て、IPR 新体制への要求事項や問題解決策、パ た上で、標準化団体は patent policy を強化し、 イロットの可能性、新体制へ向けたステップな 未着手の課題に目を向け改善を図るべきとし どを議論することとした。 た。情報提供や議論など、WIPO ができること は協力する。 注 7:PTCC(PROTOCOL & TESTING COMPETENCE CENTRE) 6.3 トラック(ブレークアウトセッション) (1)Track 1(Interoperability):Technical 注 8:本ワークショップで列挙された、標準化 に関係する IPR 問題のうち、主なものを下 interoperability の定義や阻害要因を標準完成前 記に示す。 と後に分けて整理した。その上で標準化団体に ・ IPR 声明の遅延 要求される特性をまとめた。重要事項は早急に ・ (F) RAND の定義や詳細条件の明確化 フォローアップが必要であり、用語や定義、問 ・ 多数特許による累積ロイヤルティ 題領域(SDO 間の inter-working、interoperability ・ 多数のライセンス処理問題 testing の強化)を、モデレータ(ETSI Board の ・ IPR 管理の弱さ Mr. Veer)が white paper にまとめ、ETSI PTCC ・ 非会員保有特許への対処 (注 7)を中心に Interoperability の実現を推進 することとした。 6.4 クロージング (2)Track 2(Open standards):Open standard の定 ETSI GA chairman Mr. Meinhold により、各 Track 義につき、モデレータが web forum における議 の結果を中心に本ワークショップ全体の総括が 論を要約した上で、定義は minimum set of なされた。今回で Track1, Track2 はクローズし(継 characteristics とすること、及び GSC の 続議論があれば、全体の場で扱う)、今後は Track3 Resolution をベースとすることを提案し、合意 の IPRs in standards に focus して議論することが提 された。GSC の文書に対しては一部修正意見も 案され合意した。次回ワークショップ`Standards, 出たが、原文の解釈を詳細に議論した結果、原 Open Standards and Interoperability III`は、来年の 2 文のとおりで良いとした。 (IPR ポリシーに関し 月 20 日~21 日に同じ場所で開催される。最後に、 ては、オプションとしての royalty free を含んだ 参加者に対して謝辞が述べられ、閉会した。 RAND を条件とする。) :Background paper (3)Track 3(IPRs in standards) 64 7.所感 に追加された中国の WTO への提案(標準にお 非常に良く計画されたワークショップで、予想 ける IPR 問題提起と改善)の紹介の後、Vodafone, 以上に多方面から参加者が集まり、コンセンサス GSMA などから web forum に挙げられた資料 を見出すべく、Web Forum も含めて活発で有意義 や GSC の IPR ポリシーに関する Resolution をも な議論が行われている。IPR 問題に関しては、その とに、標準化の抱える IPR 諸問題を議論し issue 解決に向けて、 (ETSI としての)実際のアクショ リスト(注 8)を作成した。但しその優先付け ンをどうするか、今後の推移が大いに注目される。 TTC Report 2006·March Vol.20/No.2