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将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響

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将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
三宅 俊治
吉備国際大学
臨床心理相談研究所紀要
第5号,23−36,2008
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
−若年・中年・高齢者の比較−
Influence of growth promotion anxiety and
cognitive human relations on future prospects :
Comparisons among the young, the middle-age and the elderly
三宅 俊治*
Shunji MIYAKE
Abstract
The purpose of the present study was to determine the degree of influence of“growth
promotion anxiety”and“cognitive human relation”on“future prospect”, and to compare
standardized coefficients of these two paths in a multiple indicator model of the covariance
structure analysis among the young, the middle aged, and the elderly. The multiple
indicator model in this research consisted of two unobservable exogenous variables being
called“growth promotion anxiety”and“cognitive human relation”, and a latent endogenous
variable called“future prospect”. A hundred and seventy-nine young, 180 middle aged, and
160 elderly people were served as subjects. They were asked to give rating to 18 items of
Experiential Time Perspective Scale (Shirai, 1994) and additional 4 items. An exploratory
factor analysis of these responses revealed that 5 items had loading on one factor of
abstracted 4 factors, which was named “future prospect”
. Three items of 5, which had
higher value of factor loading more than .5 for each of 3 groups (the young, middle aged and
the elderly), were adopted as observable endogenous variables for a latent endogeneous
variable“future pospect”. Also all the subjects administered rating to 25 items of
Yamamoto's Anxiety Scale (Yamamoto, 1992). Through these responses, an exploratory
factor analysis showed that 9 items had loading on one factor of abstracted 2 factors, which
was named“growth promotion anxiety”
. Three items of 9, which had higher value of factor
loading more than .55 for 3 groups respectively, were adopted as observable endogeneous
variables for a latent exogenous variable“growth promotion anxiety”. Another
unobservable exogenous variable named“cognitive human relation”included three
observable endogenous variables. These three variables consisted of “bonds of family”,
“relation to friends”and“love feeling with a particular person”being judged by rating for
degree of adjustment of these relationship. Through a simultaneous analysis of multiple
population, the results showed that the standardized coefficients indicating degrees of
influence of“cognitive human relation”on “future prospect”were almost same as about .3
∼ .4 in all three groups (the young, middle age, and the elderly), while the standardized
coefficient of“growth promotion anxiety”on “future prospect”in the group of the young
was .405 and larger than that (.226) in the group of the elderly with statistical significance
approximately 5 % level. And also the standardized coefficient of“relation to friendship”on
“cognitive human relation”in the young might be larger than that in the middle aged, while
in the elderly the influence of“bonds of family”on“cognitive human relation”would be
*吉備国際大学 心理学部 〒716-8508 岡山県高梁市伊賀町8
Department of Clinical Psychology, School of Psychology, Kibi International University
8 Iga-machi, Takahashi, Okayama, Japan(716-8508)
23
24
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
higher level in comparison with the young. These results suggest that the much more
influence of“growth promotion anxiety”on “future prospect”in the young would be
associated with the establishment of ego identity in adolescence. The remarkable meaning
of“bonds of family”in“cognitive human relation”in the elderly would be interpreted into
great expectations of their succession of generations and their acceptance of supportive
relationship.
key words:future prospect, growth promotion anxiety,
young, the middle aged, the elderly
Ⅰ.はじめに
cognitive human relation, the
と考えられる。
心理学的な時間の基礎に、時間的展望がある。
ところで、将来展望が Nuttin(1964)5)の指
心理学的な場を時間的に構造化する概念として
摘するように目標への動機づけ機能を内包する
時間的展望を重視したゲシュタルト心理学者の
とすれば、そしてまた、人格統合などの人格機
Lewin(1951)によれば、時間的展望とは「あ
能と関連しているとすれば、将来展望の動機づ
る与えられた時に存在する心理学的未来及び心
け機能及び人格機能に影響しているのは一体何
理学的過去の見解の総体」 である。時間的展
であろうか。本研究では、ポジティヴな意味合
望の概念を最初に提出したFrank(1939)、そ
いをもつ不安、すなわち「成長志向不安」とい
れに続くFarber(1944)
、そしてLewin(1951)、
う構成概念をそれに当てる。成長(志向)不安
Nuttin(1964)といった時間的展望研究の系譜
とは、「個の自立に伴う困難や孤独などの苦
を遡れば、時間的展望は、過去の評価や反省を
悩・不安から逃避せず、逆にこれを克服すべく
1)
基礎とし、将来の目標設定や不安への対処に向
懸命に取り組むことで、真の人間的成長を獲得」
けて、個人が現実をいかに実在的に生きるかに
(山本,1992)6)していくことに関連した不安の
ついての説明概念となっている。それは、将来
もつポジティヴな側面である。山本(1992)6)
の目標への動機づけ機能、自己の再編成や人格
は、青年期の人格形成や自我の確立に際して不
統合などの人格機能、社会や集団の共有する課
安が関与していることを仮定した上で、その不
題に向けて個人間の行動調整及び共同化を促す
安には抑制不安と成長不安という二面性がある
共同化機能、を有すとされる(白井,1994a) 。
ことを尺度構成と測定を通して実証している。
このような3つの機能に関連づけて時間的展
成長(志向)不安については、青年期における自
望を分析しようとするとき、それは人生におけ
我発達との関連においてのみ喚起されるのでは
るこれから先の生き方や生きる意味との関わり
なく、高齢者の不安の因子構造にも見出せる
(三
の比重が大きいと思われるので、その未来的な
7)
宅,1994)
。
それは高齢者が一般に遭遇しがち
側面である将来展望についての研究が特に意義
な喪失体験(心身の健康、経済的利得、人間関
をもつものと考えられる。将来展望は、また、
係、社会的役割)をも克服して生きていること
これから「個人が何をしたいのかという欲求
を考えれば、高齢期においても想定可能である。
(感情)と、個人が何をどのようにできるのか
成長(志向)不安は、また、不安の動機づけ
という認知(認識)とが統一されたものであ
機能にも関連している。すなわち、一般に、目
る」
( Thomae,1981) と、その特徴について
標に到達しようとすれば、その経過や過程に遭
言及がなされてもいる(白井,1984b)4)。した
遇する困難や障壁が予測され種々の不安に侵襲
がって、将来展望の分析は、人生をいかに意義
される。しかしながら、この不安が、悲観や行
深く生きようとしているのかについて個人の全
動退避といった目標への到達を阻害するネガテ
体過程を把握できるという点でも意義あるもの
ィヴな意味合いのみで終始すれば、目標達成行
2)
3)
三宅 俊治
25
動は惹起されにくくなる。困難が予測される中
想定されうる。ただ、ライフサイクル全般にお
にも、不安を克服して行動を引き起こすものが
いてこれら2要因が「将来展望」に対して同じ
なければならないはずである。そのような不安
ように影響したり、規定しているか否かについ
のもつポジティヴな側面について、
Levitt(1967)
ては不明確である。
8)
は「不安は、ひとを、自分の向上に、(仕事の)
そこで、本研究では、これら「成長志向不安」
達成に、また、(他人との)競争に駆り立てる
と「対人関係の認知」を潜在変数として、それ
ことができる」(西川(1976)(訳)p.282-283)
らがライフサイクルにおいて「将来展望」にど
と述べ、不安の動機づけ機能をも示唆している。
のように影響しているのか、また、両者が「将
将来展望は、既述したように、社会や集団の
来展望」に影響を及ぼしている程度の異同を世
共有する課題に向けて個人間の行動調整及び共
代間で比較検討する。本研究で問題とする因果
同化を促す共同化機能を有すとされる。共同化
モデルはFig.1に示す逐次モデルであり、観測
機能を高めるのも低めるのも、その基礎には他
されない外生変数として、成長志向不安、対人
者に対する「対人関係の認知」があって、その
関係の認知、誤差変数(e1∼e9)、攪乱変数
影響を受けているのは言うまでもない。他者と
(d1)を、また観測されない内生変数として
の関係とは、概ね、どのようなライフサイクル
将来展望を、それぞれ設定した。本研究の目的
においても家族関係、友人関係がその重要な部
は、「成長志向不安」と「対人関係の認知」と
分を占めるであろう。これらの関係の肯定的認
を「将来展望」に及ぼす潜在変数と捉え、その
知は、緊張を解消したり不安を和らげたり、精
神の安寧を保証したりする。家族関係の特徴の
(15)
1つとして和田(1987)
は、永続性に基づく
関係を挙げている。将来展望という点では、家
族関係は法的かつ血縁的な永続性の認知が信頼
の拠り所となろう。また、友人関係に関して松
(13)
井(1990)
は、青年期には特にストレス発散
や心理的ゆとりを与え、自我を支える役割を果
たすとしている。それは、換言すれば、共通体
験を通して共に獲得される共感性や価値観の共
有であり、青年期だけの特徴というよりも、ラ
イフサイクル全般にわたるとも言える。将来展
望という点から言えば、友人関係は自我を支え、
自己強化を側面から助長するものである。さら
に、対人関係の中で特定の人との情愛的絆とし
ての「愛」の認知も、将来展望を規定する大き
な要因と考えられる。以上、将来展望における
共同化機能は、家族関係、友人関係、特定の個
人との「愛」情関係についての認知や評価が、
基本的に規定していると言えよう。
このように見てくると、「成長志向不安」と
「対人関係の認知」は、ライフサイクルを通し
て共に一貫して「将来展望」に影響する要因と
Fig. 1 Path diagram of the present multiple
indicator model showing influences of
growth promotion anxiety and cognitive
human relation on future prospect. The e1
∼e8 and d1 in the figure mean error
variables and a disurbance variable
respectively.
26
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
影響係数を共分散構造分析を通して比較するこ
応を、若年群、中年群、高齢群毎に因子数を4
とによって、将来展望に及ぼすこれら2者の影
に設定して探索的に因子分析(重みなし最小二
響の仕方を若年者、中年者、高齢者間で検討す
乗法、promax 回転)した。その結果、3群の
ることである。
いずれにおいても、4因子のうち1つの因子軸
についてのみ、時間的展望体験尺度の項目1,
Ⅱ.方法
6,10,12,14が .45以上の因子負荷量を示し
〔1〕調査手続き及び対象
た(他の3因子については、それらの因子軸と
大学の講義受講者(46名)に夏休みの課題と
時間的展望体験尺度項目の結びつきが3群間で
して、若年者(17-30歳)、中年者(40-64歳)、
必ずしも共通していなかった)。すなわち、項
高齢者(65歳以上)の3世代毎の男女2名ずつ
目番号1,6,10,12,14の項目内容から、3
計12名を任意に選び調査項目への回答に応じて
群間に共通するその因子を「将来展望」と命名
もらうよう、要請した。調査趣旨に了解の得ら
した。後の、共分散構造方程式の観測変数とし
れた人々に調査票を配布、後日回収した(実際
ては、3群のいずれにおいても因子負荷量
には、了解が得られなかったり、男女比や年齢
が .50を超えた項目1,10,12を用いた。因み
枠が若干、歪になったりしていた)。回収結果
に、これら3項目間の内的整合性を示すクロン
は、若年者187名(男子91、女子96)、中年者
バックのα係数は .725であった。
185名(男子89、女子96)、高齢者180名(男子
90、女子90)の計552名であった。若年者の
(2)成長志向不安の測定
山本の不安尺度 6)を用い、各項目に対して
64.2%は学生、中年者の74.1%が有職者、高齢者
「全然そうではない」∼「全くそのとおりだ」
の70.6 %は無職であった。調査対象者はいずれ
の6件法で回答を得た(資料2参照)。この尺
の群でも、岡山県内在住者の割合が全体の約2
度は、成長不安と抑制不安を測定するため青年
割、岡山県以外の中国地方在住者が約2割、近
を対象として尺度構成されたものなので、若年
畿・四国・九州地方在住者が約5割を占めた。
群、中年群、高齢群にも適用できるか否かを見
調査月日は2003年8月∼9月。記入漏れのあ
極める必要があった。そのため不安尺度25項目
った33名を除く519名を分析対象とした。内訳
の反応を因子数を2に設定して3群毎にそれぞ
は、若年群179名(男性86名、女性93名。年齢
れ探索的に因子分析(主因子法、varimax 回
範囲17-30歳、m=20.78, SD=2.59)、中年群180
転)した。その結果、3群いずれにおいても、
名(男性88名、女性92名。年齢範囲40-64歳、
それぞれの因子軸に対して因子負荷量基準値を
m=48.64, SD=5.16)、高齢群160名(男性82名、
.45以上と設定して整理したところ、第Ⅰ因子
女性78名。年齢範囲65-89歳、m=72.63,
は項目2,4,5,7,8,10,11,15,17,
SD=5.28)であった。高齢群は、介護なしに在
19,20,22,24が、また、第Ⅱ因子は項目1,
宅で日常生活を送っている方々から回答を得
3,6,9,13,16,18,21,23が、それぞれ
た。
高い負荷量を示した。それぞれの項目内容から、
〔2〕用いた調査項目
前者を抑制不安、後者を成長不安と命名した。
(1)将来展望の測定
本研究では、不安の克服を通した目標行動への
の項目を利用した。た
動機づけやパーソナリティの統合性を成長志向
だし、尺度項目の順序を変えた上で、新たに補
不安に関する潜在変数と見なすため、抑制不安
足的な4項目を加えた(資料1参照、各項目の
は扱わないで成長志向不安のみについて検討し
末尾の括弧の後の番号は、時間的展望体験尺度
た。潜在変数として設定した成長志向不安の観
における元来の項目順序)。これら22項目の反
測変数として、若年、中年、高齢の3群をプー
時間的展望体験尺度
9)
三宅 俊治
27
ルしたデータの因子負荷量が .65以上で、かつ
説が棄却されないという意味で採択されうる
若年、中年、高齢の各群それぞれにおいても因
(χ2(24)=30.985, p= .154, n.s.)。また、モデ
子負荷量が .55以上の高い値を示す項目を選択
ルの適合度については、適合度指標GFI
した。すなわち不安尺度項目13,16,18の3項
(Goodness of Fit Index)が .987を、修正適合
目が、共分散構造方程式における成長志向不安
度指標AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index)
の観測変数として用いられた。これら3項目の
が .975を、さらに残差平方平均平方根RMR
α係数は .746 であった。
(Root Mean square Residual)が .037をそれぞ
れ示しているので、モデルの説明力、データへ
(3)対人関係認知の測定
の当てはまりなどから、適合度が高いと言える。
ホリスティック(全人的)な健康観 、すな
次にモデルの部分評価に移る。Fig.2は、変
わち「自らに与えられた条件の中で、自己の価
数間の標準化パス係数を示している。潜在外生
値観に基づいて、自己の生をより良きものへと
変数と観測変数との関係では、「成長志向不安」
いかにコントロールしていくか」をライフスタ
と「不安尺度項目13(将来、夢や理想が実現で
イルの諸種の局面の中で自己との全関係性から
きるかどうか気がかりだが、とにかくやってい
把握する試みのうち、特に他者(家族、友人、
くしかない)」、「不安尺度項目16(将来、満足
特定の愛する人)との諸種の関係の認知を観測
のいく仕事ができるかどうか心配だが、とにか
変数として設定し、それらはその背後にある
く努力してみたい)」、「不安尺度項目18(自分
「対人関係の認知」という潜在変数に規定され
にもっと自信がもてるように、がんばらねばと
ると考えた。ここでいう「対人関係の認知」と
思っている)」の間のパス係数が、それぞれ
は、上記の種々の対人関係が相互交流的で、し
.618、.805、.690の高い値を示し、これらはす
10)
かもコニュニケーションを通した調整がどの程
度うまくいっているか、すなわち自らのコント
ロールがどのくらい利いた関係だと思っている
かの認知である。その「対人関係の認知」を推
量するため、観測変数として「家族関係」、「友
人関係」、「愛」それぞれについて、(5)とても
良い、(4)良い、(3)普通、(2)悪い、(1)とても
悪い、のいずれであるかを判断してもらい、選
択肢(5)∼(1)に応じて得点5点∼1点を与えた
(資料3参照)
。
〔3〕分析
分析には、統計ソフトSPSS(Ver. 12.0J)な
らびにAMOS(Ver. 5.0J)を用いた。
Ⅲ.結果
〔1〕被調査者全体から見たモデルの評価
ここでは、若年群179名、中年群180名、高齢
群160名の計519名について、Fig.1に示したモ
デルの妥当性を検討した。その結果、この逐次
的モデル全体は、Fig.1のパス図に示された仮
Fig. 2 Standardized coefficients in the path
diagram obtained from all the data of the
present study.
28
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
べて0.1% 水準で統計的に有意であった。また、
潜在外生変数の「対人関係認知」と観測変数の
「家族関係」、「友人関係」、「愛」の間のパス係
数はそれぞれ .546、.618、.521であり、これら
も0.1%水準で統計的に有意な値を示した。さら
に、潜在内生変数と観測変数の関係では、「将
来展望」と「時間的体験尺度項目1(私には、
だいたいの将来計画がある)」、「時間的体験尺
度項目10(自分の将来は自分できりひらく自信
がある)」、「時間的体験尺度項目12(私には将
来の目標がある)」の間のパス係数が、それぞ
れ .692、.578、.788と高く、これらもすべて
0.1%水準で統計的に有意であった。
潜在外生変数と潜在内生変数の関係について
は、「成長志向不安」から「将来展望」へのパ
ス係数が .374(検定統計量=6.207, p<.001)で
統計的に有意であった。また、
「対人関係認知」
から「将来展望」へのパス係数は、.387(検定
統計量=5.213, p<.001)で統計的に有意であっ
Fig. 3 Standardized coefficients in the path
diagram obtained from the data of the
young subjects.
た。
本研究における逐次モデルでは、潜在外生変
数である「成長志向不安」と「対人関係認知」
の相関関係を仮定したが、相関係数は .245であ
り統計的に有意であった(検定統計量=3.476,
p<.001)。
〔2〕多母集団(若年群・中年群・高齢群)の
同時分析
本研究の目的は、若年群、中年群、高齢群の
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知
の影響を、比較、検討することであった。そこ
で3群間の同時分析を行った。その結果、モデ
ルの妥当性に関しては、採択が可能な範囲にあ
った(χ2(72)=84.553, p= .148, n.s.)。モデルの
適合度については、適合度指標GFI(Goodness
of Fit Index)が .966を、修正適合度指標AGFI
(Adjusted Goodness of Fit Index)が .936を、
さらに残差平方平均平方根RMR(Root Mean
square Residual)が .071をそれぞれ示した。
そのため、モデルの説明力、データへの当ては
まりなど、適合度は一応の水準にあると言える。
Fig. 4 Standardized coefficients in the path
diagram obtained from the data of middle
aged subjects.
三宅 俊治
29
=4.114, p<.001)で統計的に有意であった。ま
た、「対人関係認知」から「将来展望」へのパ
ス係数は .274(検定統計量=2.607, p<.01)で統
計的に有意であった。
次に、中年群については(Fig.4参照)、
「成長
志向不安」と「不安尺度項目13」、「不安尺度項
目16」、「不安尺度項目18」の間のパス係数が、
それぞれ .655,.676,.580を示した。これらは
すべて0.1%水準で統計的に有意であった。また、
「対人関係認知」と「家族関係」、「友人関係」、
「愛」の間のパス係数はそれぞれ .668,.386,
.680であり、
「 家族関係」、
「 友人関係」及び「愛」
との間には0.1%水準の統計的有意性が見出せ
た。さらに、「将来展望」と「時間的体験尺度
項目1」、「時間的体験尺度項目10」、「時間的体
験尺度項目12」の間のパス係数は、順に .543,
.616,.716であり、これらはすべて0.1%水準で
Fig. 5 Standardized coefficients in the path
diagram obtained from the data of the
elderly subjects.
統計的に有意であった。潜在外生変数と潜在内
生変数の関係では「成長志向不安」から「将来
展望」へのパス係数が .262(検定統計量=2.261,
Fig.3、Fig.4、Fig.5は、順に若年群、中
p<.05)で統計的に有意であり、また、「対人関
年群、高齢群のパス図である。まず、若年群に
係認知」から「将来展望」へのパス係数は.412
関して(Fig.3参照)、潜在外生変数と観測変
(検定統計量=2.668, p< .01)で統計的に有意で
数の関係をみると、「成長志向不安」と「不安
あった。
尺度項目13」、「不安尺度項目16」
、「不安尺度項
高齢群に関しては(Fig.5参照)、「成長志向
目18」の間のパス係数は、それぞれ .780,.784,
不安」と「不安尺度項目13」、
「不安尺度項目16」
、
.645を示し、すべて0.1%水準で統計的に有意で
「不安尺度項目18」の間のパス係数は、順に
あった。また、潜在外生変数の「対人関係認知」
.523,.826,.665であり、すべて統計的に0.1%
と観測変数の「家族関係」、「友人関係」、「愛」
水準で有意であった。また、「対人関係認知」
の間のパス係数はそれぞれ .440,.823,.438で
と「家族関係」、「友人関係」、「愛」の間のパス
あり、「家族関係」、「友人関係」、「愛」との間
係数はそれぞれ .832,.513,.410であり、「家族
にはいずれも0.1%水準の統計的有意性を示し
関係」、「友人関係」、「愛」との間は0.1% 水準
た。さらに、潜在内生変数と観測変数の関係で
で統計的に有意であった。さらに、「将来展望」
は、「将来展望」と「時間的体験尺度項目1」、
と「時間的体験尺度項目1」、「時間的体験尺度
「時間的体験尺度項目10」、「時間的体験尺度項
項目10」、「時間的体験尺度項目12」の間のパス
目12」の間のパス係数が、それぞれ .753,.524,
係数は、順に .593,.524,.683であり、これら
.832を示し、これらはすべて0.1%水準で統計的
はすべて0.1%水準で統計的に有意であった。潜
に有意であった。潜在外生変数と潜在内生変数
在外生変数と潜在内生変数の関係では「成長志
の関係については、「成長志向不安」から「将
向不安」から「将来展望」へのパス係数は
来展望」へのパス係数が .405(検定統計量
.226(検定統計量=1.968, p<.05)で統計的5%水
30
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
準の有意性を示した。また、「対人関係認知」
間でもそれらの検定統計量に有意差は見出せな
から「将来展望」へのパス係数は .354(検定
かった。また、潜在外生変数の「成長志向不安」
統計量=2.569, p<.01)で1%水準で統計的に有
に対しても、その観測変数毎の影響係数を3群
意であった。
間で比べてみると、「不安項目13」については、
次に、潜在外生変数の「成長志向不安」と
若年群、中年群、高齢群の順に.780,.655,
「対人関係認知」が潜在内生変数の「将来展望」
.523,
「不安項目16」については順に.784,.676,
に及ぼすの影響を見るためのパス係数が若年
.826,そして「不安項目18」については順に
群、中年群、高齢群の3群間において異なるか
.645,.580,.665であった。これらの影響係数
否かを統計的に調べるために、パラメータ間の
を3群間で一対比較したところ、いずれの群間
差に関する検定統計量を一対比較した。その結
でもそれらの検定統計量に有意差は見出せなか
果、「成長志向不安」の「将来展望」に及ぼす
った。
影響に関しては、若年群のパス係数(.405)と
しかしながら、潜在外生変数の「対人関係認
中年群のパス係数(.262)の間の検定統計量が
知」に関しては、その観測変数である「家族関
1.209、中年群のパス係数(.262)と高齢群のそ
係」の影響係数が若年群、中年群、高齢群の順
れ(.226)の間の検定統計量が−.0571でいずれ
に .440,.668,.832であり、若年群と高齢群の
も両者の間の有意差は認められなかった。一方、
影響係数の差に関する検定統計量が1.634とな
若年群のパス係数(.405)と高齢群のそれ
り、10%の有意水準(検定統計量=1.645)には
(.226)との間の検定統計量は−1.942であった。
若干満たないものの両者間に差の傾向がありそ
この検定統計量の絶対値|−1.942|は、パラ
うなことが窺える。さらに、「対人関係認知」
メータ間の差検定において通常の有意水準
に及ぼす「友人関係」の影響係数は、若年群、
(5%)を示す統計検定量=1.960には若干満た
中年群、高齢群の順に .823,.386,.513であり、
ないものの、有意な傾向を示しているとは言え
若年群と中年群の影響係数の間に10%水準の有
る。一方、「対人関係認知」の「将来展望」に
意傾向が見出せた(検定統計量=1.680, p<.10)
。
及ぼす影響に関しては、若年群のパス係数
一方、「対人関係認知」に及ぼす「愛」の影響
(.274)と中年群(.412)のパス係数との間の差
係数は、若年群、中年群、高齢群の順に .438,
に関する検定統計量が .277、中年群のパス係数
.680,.410であり、3群のうちいずれの2群間
(.412)と高齢群のそれ(.354)との間の検定統
にも差は認められなかった。
計量が .755、若年群のパス係数(.274)と高齢
群のそれ(.354)との間の検定統計量が .561で
あった。そのため、いずれにおいても有意水準
には達しなかった。
次に、潜在内生変数の「将来展望」に対して、
Ⅳ.考察
本研究は、「将来展望」に及ぼす潜在的影響
変数として「成長志向不安」と「対人関係認知」
を仮定し、共分散構造分析による影響係数の比
その観測変数毎の影響係数を若年、中年、高齢
較を通して、「将来展望」に及ぼすこれら2者
の3群間で見てみると、「時間展望体験尺度項
の影響を吟味した。
目1」については、若年群、中年群、高齢群の
今回得られたデータにおいて、被調査者全体
順に .753,.543,.593、「時間展望体験尺度項目
から見ると「将来展望」に及ぼす「成長志向不
10」については順に .525,.616,.524,そして
安」のパス係数は .374,「対人関係認知」のパ
「時間展望体験尺度項目12」については順
ス係数は .387で共に有意であった。そのため被
に .832,.716,.683であった。これらの影響係
調査者の世代性を無視すれば、「将来展望」の
数を3群間で一対比較したところ、いずれの群
原因として「成長志向不安」と「対人関係認知」
三宅 俊治
31
の影響の仕方はほぼ同じ程度に意味あるものと
代間で影響係数が .274∼.412の範囲にはあって
考えられよう。また、これら影響変数二者間に
も、その影響係数相互間に有意差はないため、
は弱い相関( r =.245, p <.001)が認められた。
相対的にほぼ同じ程度であると言える。本研究
そのため、不安を感じた際に前向きにそれと対
では、「対人関係認知」という外生潜在変数を
処し、克服していこうとする過程や結果に付随
推測するために「家族関係」、
「友人関係」、
「愛」
する自我の成長・発達と、対人関係に関する内
という三種の観測変数が用いられた。ここで言
省や統制感の認知とは僅かとは言え相互に関連
う「対人関係認知」とは、諸種の対人関係をよ
があることが示唆された。「将来展望」に及ぼ
りよくコントロールできているか否かについて
す「成長志向不安」、
「対人関係認知」の影響は、
の自己統制感であり、与えられた社会的条件の
両者の相関なども含めると、重決定係数(R
中での自他関係についての内省でもある。若年、
2
=.361)が示すように約4割弱ではあるが、両者
中年、高齢の各世代間で、「対人関係認知」に
は「将来展望」の因果的推論を行う際、一応の
及ぼす「家族関係」の影響力を比較したところ、
有用な変数であることが明らかとなった。
高齢者の影響係数(.832)が若年者のそれ
次に、生涯発達心理学的な観点から「将来展
(.440)よりも高い比重を占めている傾向が窺
望」に及ぼす「成長志向不安」の影響と「対人
われた。他方、
「友人関係」が「対人関係認知」
関係認知」の影響を若年、中年、高齢の群間で
に及ぼす影響については、若年者の影響係数
比較してみた。まず、「成長志向不安」の「将
(.823)の方が中年のそれ(.386)よりも大きな
来展望」に及ぼす影響については、高齢者の係
意味合いを認めていることが窺われた。また、
数が .226であったのに対して若年者のそれは
「愛」については本研究のデータでは若年、中
.405であり、両群間の影響係数には統計的にほ
年、高齢者の3群間で特に差は認められなかっ
ぼ5% 水準に近似する有意差が見出せた。若年
た。
者では何故、「将来展望」に及ぼす「成長志向
これらのことから、若年者は、特に中年と比
不安」の影響力が高いのであろうか。青年期は
較して「対人関係認知」の中で「友人関係」の
自我同一性の確立時期である 。多くの若者が、
占める比重や意味が大きかった。それは、青年
生き方や価値観の醸成、自立に向け諸種の悩み
期の友人関係がストレス発散や心理的ゆとりを
や課題を抱え、不安に侵襲されながらもそれに
与え、青年の自我強化を側面から支える役割を
対峙し、将来を見据えて克服しようと努力する。
果たしているからであろう13)。同世代の者との
そのため、中年や高齢者、特に高齢者と比較し
コミュニケーションや社会的共通体験を通して
て自我が相対的に未だ確立過程にある青年は、
共感性や価値観の共有、そして独自性の分化が
自己と社会との関連づけを模索し苦悩するため
図られるものと思われる。また、中年期には家
成長不安の将来展望への影響は大きくなると考
庭にあっては配偶者の存在や家族関係がある程
えられる。高齢者は、若年者に比較して諸種の
度安定するのに対して友人関係は共存的という
困難に遭遇した経験を通して自我の確立、強化、
関係だけでなく競争的という面も生まれ、相対
そして社会性の獲得が既に増進しているので、
的に友人関係のコントロールや内省は減退する
ライフサイクルにおける抑制的な不安も低減
ことが推測される。
11)
し 、したがって、それが表裏一体となって将
一方、高齢者は若年者に比べて「対人関係認
来展望への成長志向不安の寄与も相対的に小さ
知」に及ぼす「家族関係」の影響の程度が相対
くなっていると考えられる。
的に大きい傾向が見出せた。高齢期には、自我
12)
それに対して、「将来展望」に及ぼす「対人
の統合過程が活性化され、「家族関係」に関す
関係認知」の影響は、若年、中年、高齢の各世
る内省や調整感が高まることが予測される。と
32
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
いうのは、高齢期の自我統合過程では、従来の
及ぼす「対人関係認知」のパス係数は3集団間
経験・体験や歩んできた生き様に対する内省、
でほぼ同じであった。それに対して、「将来展
それに自己の潜在的可能性の発掘、さらにパー
望」に及ぼす「成長志向不安」のパス係数は若
ソナリティの深化を目指した生き方などを目指
年者において高く、高齢者において低かった。
して、自己の外にある類似自己(血縁者)を見
また、「対人関係認知」では若年者は友人関係
据え取り込むことによって、また、長年同じ社
を、高齢者は家族関係を重視する傾向が見出せ
会と時代を通して生活を共にしてきた者(配偶
た。
者、子ども)とのコミュニケーションや関係評
これらの結果は、青年期の成長志向不安の比
価を通して、自己の内面の評価に対する再体制
重の増大が将来の見通しによる自我同一性確立
化を行おうとするからであり、自我統合がそれ
時に関連していること、また高齢者の対人認知
によって助長され易いからと考えられる。つま
において家族関係が大きいのは世代継続性や家
り高齢者の自我統合には、次世代以降の血縁者
族からの支援の期待を示唆しているものと考え
の中に見出せる自己に類似した内面の諸特性の
られる。
再評価、すなわち継続性14)と、比較的長期にわ
たって同じ境遇で時空を共に生きてきた人々と
の関わりに基づく融和、すなわち永続性
15)
が関
連しているからであろう。
文 献
1)
レヴィン K. 猪股佐都留(訳)社会科学にお
ける場の理論,誠信書房, p. 86, 1956
(Lewin, K.:Field theory in social science :
Ⅴ.まとめ
「将来展望」(潜在的な内生変数)に及ぼす
「成長志向不安」と「対人関係認知」(いずれも
潜在的な外生変数)のパス係数が若年、中年、
高齢の3群において、共分散構造分析を通して
比較された。179名の若年、180名の中年、160
Selected theoretical papers by D. Cartwright.
New York : Harper & Brothers. 1951)
2), 4)
白井利明(1994a ; b):時間的展望.
松
田文子 他(編)『心理的時間―その広くて深
いなぞ―』北大路書房,p. 383, p. 385
3)
Thomae, H.(1981)Future time perspective
名の高齢者が、白井(1994)の時間的展望体験
and the problem of cognition / motivation
尺度に対して5段階評定を、また山本(1992)
interaction. In G. d'Ydewalle, & W. Lense
の不安尺度に対して6段階評定を行うと同時
(Eds.), Cognition in human motivation and
に、本宮(1995)のホリスティックな健康観に
learning. pp. 261-274. Leuven Belgium :
おける家族関係、友人関係、愛に関する関係調
Leuven University Press ; Hillside, NJ :
整度をそれぞれ5段階評定した。不安尺度の反
応の因子分析を通して第二因子に負荷量の高か
った3項目が「成長志向不安」に対して、また、
ホリスティックな健康観における家族関係、友
人関係、愛に対する関係調整度が「対人関係認
知」に対して、それぞれ観測可能な内生変数と
して用いられた。さらに時間的展望体験尺度等
の評定値の因子分析を通して第一因子に負荷量
の高かった時間的展望尺度3項目を「将来展望」
に対する観測可能な内生変数として用いた。
多母集団の同時分析によれば「将来展望」に
Lawrence Erlbaum Associates.
5)
Nuttin, J.(1964)
The future time perspective
in human motivation and learning. Acta
Psychologica 23, 60-82.
6)
山本誠一(1992)青年期における不安の二
側面に関する実証的検討.心理学研究 63
(1), 8-15.
7)
三宅俊治(1994)高齢者の不安の分析. 吉
備国際大学研究紀要4,293-302.
8)
Levitt, E. E.(1967) The psychology of
anxiety. The Bobbs-Merril Company, New
三宅 俊治
12)
York.
レヴィット E.E.
中里克治・下仲順子(1989)成人前期から
西川好夫(訳)不安の心
理学 法政大学出版局,1976)
9)
白井利明(1994)『時間的展望の生涯発達心
理学』勁草書房.p. 257.
10)
本宮輝薫(1995)健康度のホリスティック
な把握と評価.園田恭一・川田智恵子(編)
『健康観の転換 ―新しい健康理論の展開
―』東京大学出版会,pp. 31-50,1995
11)
Erikson, E. H.(1959) Identity and life
cycle : Selected papers. In Psychological
issues. Vol. 1.
33
New York : International
老年期にいたる不安の年齢変化.教育心理
学研究 37(2),172-178.
13)
松井 豊(1990)友人関係の機能 斉藤耕
二・菊池章夫(編著)『社会化の心理学ハン
ドブック ―人間形成と社会と文化―』川
島書店, pp. 283-296.
14)
田畑 治・星野和美・佐藤朗子・坪井さと
み・橋本剛・遠藤英俊(1996)青年期にお
ける孫・祖父母関係関係評価尺度の作成.
心理学研究 67
(5),375-381.
15)
和田 実(1987)人間関係としての家族関係
University Press. 1959.
の特徴 長田雅喜(編)『家族関係の社会心
(エリクソン E, H. 小此木啓吾(訳)1973
理学』福村出版,pp. 12-17.
『自我同一性』誠信書房)
34
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
資料1.時間的的展望体験尺度
次の項目は、あなたが希望や充実感、過去受容をどのくらい持っているのか、お聞
きするためのものです。各項目ごとにあてはまる数字を下から選んで(
入れて下さい。
選択肢
1=あてはまらない
2=どちらかといえばあてはまらない
3=どちらともいえない
4=どちらかといえばあてはまる
5=あてはまる
1.私には、だいたいの将来計画がある
(
)1
2.私は過去の出来事にこだわっている
(
)18
3.将来のことはあまり考えたくない
(
)5
4.10年後、私はどうなっているのかよくわからない
(
)7
5.私は、過去を受け入れることができる
(
)15
6.私の将来には、希望がもてる
(
)6
7.今の自分は本当の自分ではないような気がする
(
)14
8.私には未来がないような気がする
(
)9
9.毎日がなんとなく過ぎていく
(
)13
10.自分の将来は自分できりひらく自信がある
(
)8
11.私の過去はつらいことばかりだった
(
)17
12.私には将来の目標がある
(
)3
13.今の生活に満足している
(
)11
14.将来のためを考えて今から準備していることがある
(
)2
15.過去のことはあまり思い出したくない
(
)16
16.毎日が同じことのくり返しで退屈だ
(
)12
17.私の将来は漠然としていてつかみどころがない
(
)4
18.毎日の生活が充実している
(
)10
19.過去とは、私にとってこころのささえである
(
)
20.今までと比べて、今は、時間が早く過ぎていく
(
)
21.今のことを考えたり、やりくりすることで精一杯だ
(
)
22.今がよければ、過去や未来は関係ない
(
)
)の中に
三宅 俊治
資料2. 被調査者に適用した不安尺度、計25項目(山本、1992)
(1)手のとどきそうでとどかないものをねらうのは、不安だが、やりがいのあるこ
とだ。
(2)何をしても失敗しそうで、いつも心配だ。
(3)なにか目標に向かって前進していないと、落ち着かない。
(4)将来、何か恐ろしいことが起きそうな気がしてたまらない。
(5)自分の考えを主張すると、人から嫌われてしまいそうで心配だ。
(6)将来やりたいことができるようになるためには、今のんびりしてはいられない。
(7)わけもなく不安になることが多い。
(8)つまらないことで、くよくよ悩んでしまう。
(9)逃げ出したくなるようなことでも、やるべきことはやらねばならない。
(10)不安でたまらず、何も手につかないことがよくある。
(11)何かやろうと思いたっても、できそうもない気がしてすぐにやめてしまう。
(12)一生、平均的な人間で終わってしまうのは、がまんできない。
(13)将来、夢や理想が実現できるかどうか気がかりだが、とにかくやっていくしか
ない。
(14)新しいことをするのは心配でたまらないから、できれば避けたい。
(15)いつも病気ではないかと心配ばかりしている。
(16)将来、満足のいく仕事ができるかどうか心配だが、とにかく努力してみたい。
(17)いつも緊張していてリラックスできない。
(18)自分にもっと自信がもてるように、がんばらねばと思っている。
(19)人と会うとき、自分が何か悪い印象を与えるのではないかと心配だ。
(20)不安にかられて、いてもたってもいられない。
(21)まだまだ努力が足りないのでは、と心配になる。
(22)自分の望むことは、なぜか実現しないような気がしてならない。
(23)友達やライバルに負けると思うと、くやしくてたまらない。
(24)時間がたつにつれて、何か恐ろしいことが起きそうでこわくなる。
(25)何か責任のある役割を任せられるのは、不安で逃げ出したくなってしまう。
35
36
将来展望に及ぼす成長志向不安と対人関係認知の影響
資料3.対人関係のコントロール度基準
次の事項それぞれについて、あなたはどのような状況だと思いますか。1(とても
悪い)∼5(とても良い)から1つ選んでその番号に○をつけて下さい。
(1)家族関係
5.とても良い:どんなことでもよく話し合い、心が通じている。優しさと愛
情を十分感じる。
4.良 い:コミュニケーションは完全とは言えないが、いろいろなこと
をよく話し合い、全体としてはうまくいっている。
3.普 通:部分的には理解しえないところもあるけれど、お互いに何と
なく分かりあっている。別にこれといった問題はないと思う。
2.悪 い:十分なコミュニケーションが得られない。ときどきすれ違い
を感じる。話し合えたとしても、十分な理解はなかなか得ら
れない。
1.とても悪い:家族とはもう何も話すことはない。まったくコミュニケーシ
ョンが得られない。お互い無視し合っているか、憎しみ合っ
ている。
(2)友人関係
5.とても良い:何でも腹を割って話し合える友人が何人かいる。気心も知れ、
とてもくつろげる。いざというときも頼りになる。
4.良 い:何でも相談にのってくれる気心の知れた友人は何人かいる。
けれどもいざとなると、ちょっと心もとない面もあるが、大
丈夫だろう。
3.普 通:友人は何人もおり、つきあいは広い。ただ、どんなことでも
本音で話せるかとなるとすこし考えてしまうが、それなりに
よい関係である。
2.悪 い:友人といえる人は数名いるが、それほど深い関係ではない。
腹を割って話せる関係ではない。つきあいは表面的。
1.とても悪い:友人は一人もいない。いたとしても表面だけ。でなければ、
いつもあつれきや不信がある。常に、裏切りや葛藤に苦しん
でいる。
(3)愛
5.とても良い:心の底から静かに深く愛すことのできる人がおり、喜びと幸
せを感じている。
4.良 い:深く愛することのできる人がいて、喜びや幸せを感じる日々
も多い。
3.普 通:愛といえるかどうか分からないが好意や信頼を寄せ合い、感
じながら暮らしている。
2.悪 い:人を愛することがうまくできず、なかなか深い人間関係を結
ぶことができない。
1.とても悪い:心が枯れて誰とも愛しあえる人間関係を結ぶことができない。
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