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その10 構造ガスケットの屋外暴露試験結果の検討
1044 日本建築学会大会学術講演梗概集 (東北) 2009年 8 月 建築用ガスケットの耐久寿命推定手法に関する研究 その 10 構造ガスケットの屋外暴露試験結果の検討 構造ガスケット リップシール圧 クロロプレンゴム 水密性能 正会員 同 同 同 会員外 同 屋外暴露試験 1.はじめに 昨年構造ガスケットの 5 年間の屋外暴露における保 持力・リップシール圧の経年変化ならびに保持力とリ ップシール圧の経年変化の相関関係について報告した。 その結果、屋外暴露 2 年目より経年的にリップシール 圧の低下傾向が見られた。リップシール圧の低下は構 造ガスケットの製品性能に重大な影響を及ぼす懸念が ある。本報告はリップシール圧の低下が水密性に及ぼ す影響について検討した結果を報告する。 2.押出成形板(CR)の物性値の経年変化 リップシール圧の経年変化の原因を探る一環として構 造ガスケットと同じ配合組成で幅 50 ㎜長さ 130 ㎜厚さ 10 ㎜の長方形の押出成形板を作製し構造ガスケット製品と 同時に屋外暴露試験を行った。各種物性値の経年変化を 図 1 に示す。これらの図には、押出成形板の暴露表面か ら厚さ 2mmをスライスした試験体(表面)と、暴露表面よ り 2mm 以上内部側から厚さ 2mmをスライスした試験体 (内部)の各種物性値の経年変化を示した。その結果、5 年 間の暴露では物性値の顕著な経年変化は見られないこと、 表面と内部の変化に差がないことなどが分かった。以上 の結果、昨年報告した製品のリップシール圧の経年変化 は素材の経年変化が原因でないことが示唆された。その 原因は JIS A 5756 建築用ガスケットのリップシール圧試験 方法が構造ガスケットを取り付け状態にしてガラス用溝 を所定の寸法に広げたときの力を測定する方法を採って いることによる。リップシール圧に影響を及ぼす原因は、 リップ寸法のみではなく構造ガスケットにジッパーを挿 入し、ガラスを装着しないときのガラスシーリングリッ プの隙間(目開き寸法)も大きな要素であると考えられ、そ れは構造ガスケット本体の断面形状のみならずジッパー を含めた全体の断面形状による影響が大きいと考えられ る。 3.構造ガスケットの断面形状の経年変化 Y 型構造ガスケットのリグレットなしとリグレットあ りの断面形状の経年変化をそれぞれ図 2・図.3 に、H 型構 造ガスケットの断面形状の経年変化を図 4 に示す。各々 の取り付け状態の断面図を図 5・図 6、及び図 7 に示す。 これらの断面図をみると、リップ寸法は経年的に減少し ているが、ジッパーを挿入することにより目開き寸法が Study on Estimate Methods of Durability for Building Gaskets Part 10: Examination of Results of Outdoor Exposure Tests of Structural Gaskets MPa ○二瓶 修和*1 棚原 守*2 *3 寺内 伸 冨田 国男*3 冨塚 操*4 *5 福島 益雄 TS 25 20 表面 内部 15 10 年 0 1 2 % 3 4 5 Eb 300 280 260 240 表面 内部 220 200 年 0 1 2 4 5 M 100 MPa 8 3 7 表面 内部 6 5 年 0 1 2 度 3 4 5 HA 90 85 表面 内部 80 75 70 年 0 1 2 3 4 5 図 1 屋外暴露試験後の物性変化(押出成形板) ガラス厚に比較し十分小さいことがわかる。その結果、 構造ガスケットの保持力と水密性能の効果はリップ寸法 のみに影響されるのではなく、ジッパーを挿入しリグレ ットやフレームに取り付けた際に起こる製品全体が変形 した断面形状による影響が大きいことが推測できる。 以上により、リップシール圧の低下が実際の使用にお いて水密性能の低下に繋がることは考えにくい。また、6 NIHEI Nobukazu , TANAHARA Mamoru , TERAUCHI Shin TOMITA Kunio , TOMIZUKA Misao , FUKUSHIMA Masuo ―87― 年間実際に建物に使用されたガスケットの水密試験結果 の事例をみると、最大加圧ステップ 2940±735Pa(300± 75kgf/m2)、脈動最大圧 3675 Pa(375kgf/m2)で漏水は認め られていない。 5mm 図 5 屋外暴露後の断面形状(ジッパー取付状態) (Y 型 リグレット無し) 5mm 図 2 屋外暴露による断面形状の変化 (Y 型 リグレット無し) 5mm 図 6 屋外暴露後の断面形状(ジッパー取付状態) (Y 型 リグレットあり) 5mm 5mm 図 3 屋外暴露による断面形状の変化 (Y 型 リグレットあり) 図 7 屋外暴露後の断面形状 (H 型 ジッパー取付状態) 4.まとめ 昨年報告の屋外暴露によるリップシール圧の経年的な 低下傾向について検討を行った。 ①リップシール圧はリップ寸法のみではなく、ガラスシ ーリングリップの隙間(目開き寸法)の影響も大きく、ジ 5mm ッパーを含めた構造ガスケット全体の断面形状の変化 による影響が大きいと考えられる。 図 4 屋外暴露による断面形状の変化 (H 型) ②6 年間実際に建物に使用されたガスケットの水密試験結 果の事例では漏水は認められていない。 などにより、既報の屋外暴露によるリップシール圧の低 下傾向が、水密性能に与える影響は少ないと推定された。 *1 *2 *3 *4 *5 富双ゴム工業㈱ イワキ化成㈱ 建築ガスケット工業会 大同化成㈱ 北星ゴム工業㈱ FUSO RUBBER INDUSTRY Co. ,Ltd. IWAKI KASEI Co. ,Ltd. MANUFACTURERS ASSOCIATION OF BUILDING GASKET DaidoKasei Corp. Hokusei Rubber Industry Co.,Ltd. ―88―