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応力緩和
K5-46 カテーテルの変形挙動と強度に関する研究 応力緩和現象と座屈荷重に及ぼす初期捩りの影響について Study on Deformational Behavior and Strength of Catheter Phenomena of stress relaxation and the effects on initial torsion to the buckling load ○田中 博也1, 安藤 賢弥1, 三笠 しおり1, 加藤 保之2 Hiroya TANAKA1, Kenya ANDOU1, Shiori MIKASA1, Yasuyuki KATO 2 Abstract: The purpose of this study is to investigate physical property of the catheter, which made of soft nylon resin and is reinforced with thin stainless wires called braid. In our previous report, applying the step strain for bending and torsion to specimens, the phenomena of stress relaxation are investigated by changing the order of bending and torsion. In this report, the buckling tests are carried out and the relation between the testing speeds and the buckling load is investigated. Moreover, the effect of initial torsion to the buckling behavior is revealed in this paper. 1.緒 言 Dm Di Do 本研究では,ナイロン樹脂からなる柔らかい母材に 金属(ステンレス)製の細いワイヤーを管状に織った所 謂ブレードで補強した異種材料から成るカテーテルを R 研究対象とし,その力学的特性を調べることにより, ψn y n = R sinψ n ブレードの補強効果や応答性に及ぼす影響を解明する ことを目的としている.前報の研究では,圧縮荷重を 加える際の変形速度を種々に変えて座屈現象が起こり ψn = ( n −1 ) do 始める荷重の大きさを調べ,応力緩和現象と臨界座屈 θo 荷重の関係を明らかにしてきた. 本報では,更に試験片に初期捩りを与えて,圧縮と R= (a)Configuration π 8 Do + Di 4 (b)Cross section 捩りが連成する多軸負荷状態について座屈挙動と応力 Fig.1 Schematic diagram of catheter 緩和現象の関係を調べ,応力緩和現象と座屈荷重に及 し,ブレード部及び母材部の曲げモーメントは,以下のよ ぼすブレードの効果を検討する. うにそれぞれ式(2),式(3)で表される. M b = Eb I b ρ = Eb 2.カテーテルの断面形状と臨界座屈荷重 ∑ (y 16 2 n An + I y ) ρ n n =1 2-1.カテーテルの断面形状 本研究のカテーテルは緒言で述べたように,ナイロン 樹脂からなる母材(外径 Do ,内径 Di ,平均径 Dm )にステ ンレス製の細いワイヤーを管状に織り込んだブレード(外 径 do ,初期織り込み角θ 0 )で構成されている.なお,ブ レード部は左右8本ずつ合計16本から構成されている. Fig.1(b)はカテーテルの断面形状の拡大図を表しており, yn は中立軸からn番目のブレードまでの距離,ψ n は基定面 からの各ブレードまでの角度,Rは平均半径である. 次に,カテーテルの曲げ剛性について説明する.カテ ⎡ π do 4 ⎛ 1 1 ⎞⎤ = Eb ⎢8R 2 A + + 3 ⎟⎥ ρ ⎜ 8 ⎝ sinθ o sin θ o ⎠⎦ ⎣ 16 ⎡ ⎤ M m = Em I m ρ = Em ⎢ I − ( yn2 An + I y ) ⎥ ρ n =1 ⎣ ⎦ ∑ (2) n ⎧⎪ π ⎡ π do4 ⎛ 1 1 ⎞⎤ ⎫⎪ = Em ⎨ (Do4 − Di4 ) − ⎢8R2 A + + 3 ⎟⎥ ⎬ρ ⎜ 8 ⎝ sinθo sin θo ⎠⎦ ⎪⎭ ⎪⎩64 ⎣ (3) 2-2.臨界座屈荷重Pcr この理論上の Ec Ic の値が,各試験片の実験値と一致 することを確認した上で,両端固定支持の標点間距離 ーテルの曲げモーメントはブレード部と母材部のモー L の試験片に対する臨界座屈荷重の式(4)に代入して決 メントの合計であり,式(1)のように表すことができる. (1) M = Mb + M m = (Eb Ib + Em Im ) ρ = Ec Ic ρ 定できる. ここで,式中の Ec Ic は複合材としての曲げ剛性を意味 1: 日大理工・学部・機械, 2: 日大理工・教員・機械 912 Pcr = 4π 2 Ec I c L2 (4) 4−2 初期捩り角の影響 3.実験装置と実験方法 Fig.4 は,試験片 No.2 に対し,変形速度を 10[mm/min] 実験で用いた複合負荷試 験機を Fig.2 に示す.この試 に設定して,初期捩り角度を種々(0[deg],1.33[deg], 験機は島津卓上試験機(オー 2.66[deg])に変えて得られる荷重−変位の関係を示し トグラフ AGS-J)に捩り試験 たものである.捩り角が大きいほど,座屈荷重に達す 機を装着することで,圧縮と るまでの変位は大きく,逆に座屈荷重は小さくなる傾 捩りを同時に加えることが 向を示す. できる機構となっている.内 次に Fig.5 は,初期捩り角が異なる場合に対し,更 Fig.2 Testing machine 外径の異なる 3 種類の試験 にそれぞれの座屈荷重で荷重を除して無次元化したも 片(Table 1 を参照)をこの実 のである.この図から,捩り角度を大きくする程,応 験装置に取り付けて圧縮荷重を加えて座屈実験を行う. 力緩和は小さくなることがわかる.この現象は,捩り なお,表中のα は,全断面積に占める母材面積比を表 が連成することにより,応力主軸の方位とブレードの している.また,3 種類の試験片の標点間距離 L は全 織り込み角の相対角度が小さくなるため応力緩和現象 て 30[mm]である. が小さく,一方で,捩りが連成しない相対角度が大き な場合には応力緩和現象が大きくなることに起因する Table 1 Diameter and ratio of area Outsides diameter Inside diameter Diameter of Ratio of matrixbraid d o [mm] Do [mm] Di [mm] area α [-] Contain braid No.1 1.37 1.07 0.0508 0.921 Contain braid No.2 1.67 1.14 0.0635 0.938 Contain braid No.3 2.01 1.40 0.0635 0.962 Types of test pieces と考えられる.なお,内外径の異なる他の試験片につ いても全く同様の結果が得られた. 14 0 12 初期捩り角(0[deg.]1.33[deg.],2.66[deg.])を与えた状態 10 で , 変 形 速 度 を 種 々 (5[mm/min] , 10[mm/min] , [deg] 1.33[deg] Load P [N] 2.66[deg] 30[mm/min],50[mm/min])に変えて圧縮荷重と変位の測 定を行った. 8 6 4 4.実験結果と考察 2 4−1 変形速度と座屈荷重の関係 0 Fig.3 は, 試験片No.2 に対し, 初期捩り角2.66[deg.] を 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 Displacement u [mm] 与えた場合に対して,種々の変形速度下で得られる荷 Fig.4 Buckling load for each torsional angle 重−変位の関係を示したものである.この図から変形 速度が速いほど,座屈荷重と座屈荷重に達するまでの 1.2 変位は大きく,逆に変形速度が遅い場合には座屈荷重 0 1 は小さくなる傾向を示す.これは,時間の経過に伴い, 0.8 P/P* [‐] 見かけのヤング率 E (緩和弾性率)が減少するためであ ると考えられる. [deg] 1.33[deg] 2.66[deg] 0.6 0.4 20 18 14 L o ad P [N ] 0.2 50[mm/min] 30[mm/min] 10[mm/min] 5[mm/min] 16 12 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 Displacement u [mm] 10 Fig.5. Stress relaxation under each torsional angle 8 6 5.結 言 4 試験片に初期捩りを与えて,捩りと圧縮が連成する 2 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 多軸負荷状態で座屈発生時の荷重や変位ならびに座屈 3 Displacement u [mm] 後の応力緩和現象を明らかにした.今後は捩り速度の 影響についても更に検討する予定である. Fig.3 Buckling behavior under various deformation rates 913 3