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バイオマスエネルギー『木質ブリケット』 による循環型社会への貢献

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バイオマスエネルギー『木質ブリケット』 による循環型社会への貢献
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バイオマスエネルギー『木質ブリケット』
による循環型社会への貢献
宮津支部常任幹事 大村利和
「バイオマス」という言葉を聞いて何を連想するでしょう
た状況です。
か?ほんの2∼3年前はバイオマスという言葉すら殆どの人が知
しかしながら、建築に関わる者にとってはやはり建築廃材の
らなかったのではないでしょうか。しかしながら最近になり
リサイクルという環境的な視点からもバイオマス燃料を考える
「循環型社会」や「再生可能なエネルギー」という言葉が社会
必要があると思います。現在、日本における発生木材は年間
に浸透し、
「ロハス」という21世紀型のライフスタイルが提唱
900万m3に達し、そのうち4割程度しか再資源化されておらず、
されるようになり、急速に自然エネルギーの活用が求められる
残りの木材が産業廃棄物として処理されています。その廃棄物
ようになってきたように思います。
の処理方法もチップ化し土木工事に利用したり化石燃料を使用
具体的にバイオマスエネルギーとは一体何か、一言で言うな
しての焼却処分などけっして地球環境に優しい処分方法とは言
ら、森林資源を代表とする植物を利用した自然エネルギーです。
えないのが現状です。しかし建築廃材をブリケットという木質
つまり、光合成によって太陽エネルギーを蓄えた植物をエネル
バイオマス燃料に加工し、家庭用の暖房燃料やボイラーシステ
ギーとして利用するもので、森林資源から得られるペレットや
ムの燃料、又、発電エネルギーとして使用するという流通シス
ブリケット、薪、木炭などの固体燃料をバイオマスエネルギー
テムを構築することで廃材の有効活用と化石エネルギーの使用
といいます。バイオマスを燃焼させてエネルギーとして利用し
削減が同時にできるのです。しかも、現在高騰が続く灯油の
ても、もともとは大気中の二酸化炭素が固定されたものを使っ
50%∼70%程度のランニングコストで済み、廃棄物処分プラン
ているため、利用と同時にバイオマス(植物)を育てれば、そ
トの掛かる行政コストが削減でき、ボイラーなどの需要に伴う
のバランスをこわしません。バランスに気をつけて大切に使え
新産業創出という経済的なメリットも期待できるのです。又、
ば、なくなることのない再生可能エネルギーであり、燃焼させ
世界的に見ても北欧などの環境先進国では木質バイオマス燃料
てエネルギーとして利用しても、化石燃料(石油など)よりは
は暖房用エネルギーとして一般家庭に普及し、南米などではサ
るかにクリーンで、また森林を再生させれば、再びCO2の固定
トウキビの搾粕(バカス)を原料とするバカスブリケットで発
をはかることができるのです。
電し、工業用エネルギーとして使用するなど廃材をエネルギー
このようなバイオマスエネルギーの中でも従来から利用され
に変えることはもう常識となっているのです。環境に良くて安
ている薪や木炭などは森林資源をそのまま、あるいは炭化させ
くて、現在の建築廃材問題とエネルギー問題の同時解決につな
て使用するのに対し、ペレットやブリケットは主にリサイクル
がり、新たな地域産業の創出にもつながるというこの木質ブリ
という工程を経て製造されています。例えばペレットは間伐材
ケットが普及できない日本という国の経済システムは一体どう
や製材時に発生するバークや端材などをチップ化し乾燥させて
なっているのかと思う今日この頃です。
粉末状にし、加圧する事により直径約10mm程度、長さ約
今年3月末に北海道美唄市に日本で初めてのブリケットボイ
20mm程度の小粒のペレット状に加工します。それに対しブリ
ラーによる集中暖房システムを導入したマンションが完成しま
ケットは建築現場から発生する建築廃材や製材時の鉋屑、端材、
した。それから2ヶ月経たないうちに行政や団体の視察が相次
また木造家屋の解体材などを原料とし、チップ化、粉末化させ
ぎ、北海道新聞に取り上げられ急速に注目され始めています。
た後加圧して直径約70mm程度、長さ80∼300mm程度の大型の
木質バイオマスとして先行している感のあるペレットは、森
薪状に成型します。又、ペレットはバージンウッドを主な原料
林資源が豊富であり自然との共生を大切にし、自給自足の理念
としているため乾燥工程が必要であるのに対し、ブリケットは
を有する北欧を中心として世界に広がりつつあります。これに
既に乾燥している建築廃材や加工発生材を原料としているため
対し日本という国は、森林は荒れ、自然保護より経済至上主義
乾燥工程が不要であるという特徴を持っており製造コストがペ
に偏り、自給自足よりも輸入輸出を良しとし、環境に対する危
レットに比して安くできるというメリットがあります。又、一
機感と日々の行動が矛盾している国民がまだまだ多いのが現状
方でペレットは小粒で小形ストーブなどの燃料自動供給が簡単
です。しかしながら皮肉にも全国均等に建築廃材というエネル
である為、電気的な制御機能を有した家庭用の専用ストーブな
ギー資源は大量に貯蔵されています。しかも、発生から流通、
どで普及しているのに対し、ブリケットは従来の薪ストーブの
貯蔵に至るまでシステム管理されているのです。こんな国は世
燃料、つまり薪の代わりとして使用されています。現在の住宅
界広しといえども日本くらいでしょう。この負の資源である廃
においての使用状況としてはタイマーや温度調整など利便性を
材を180度転換させ、地球を救うエネルギーとして21世紀の表
重視する暖房としてペレットストーブが、スローライフ的にゆ
舞台に引っ張り上げるのはやはり建築士である我々の使命の一
ったりと暖をとるといったライフスタイル重視の暖房としてブ
つであるといえば少し大げさなのでしょうか?
リケットを燃料とする薪ストーブがそれぞれ適しているといっ
August 2006 Kyoto Dayori
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