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保険金受取人の指定について

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保険金受取人の指定について
保険金受取人の指定について
一妻・何某の場合、内線の妻の場合、婚約中の女性につき婚姻後の氏名の表示の場合−
「‘‘ ̄”−’’− ̄.−’’−” ̄一°.’− ̄−T ̄..,l’ ̄” ̄‖ ̄” ̄l’−・‘L”−T・一日一日一・・−”−・・−1・−・・−1・−・・−1._‥_”_.._”_”_‥_”_”_”_.._‖_.、_.__.
間1判例Iの事例において、保険金受取人につき「妻・何某」との指定の意味について、判旨
のような「表示の合理的かつ客観的な解釈」にもとづく判断のほかに、単に「妻」と指定され
ている場合、指定権を有する保険契約者の意思の合理的解釈、その他の諸要因を考慮して
判断することはどうか。
問2 判別Iの事例においては、保険金受取人を「相続人」と指定されている場合に、内縁の妻
Xは、相続人に含まれていないと判示されたが、単に「妻」と指定されていた場合に、内縁
の妻は保険金受取人となるか。
間3 判例mにおいて、Aの保険会社担当者Cへの言動、表示の客観的解釈及び合理的解釈等
につき考究のうえ、本件判旨につき検討して下さい。
(
判例l 最判昭鎚.9.8(民集37−7−918)
ときは、客観的にみて、右r妻」という表示は、前
記のように、単に氏名による保険金受取人の指定に
事実の概要
おけるその受取人の特定を補助する意味を有するに
すぎないと理解するのが合理的であり、それを超え
て、保険契約者が、将来における被保険者と保険金
受取人との離婚の可能性に備えて、あらかじめ妻の
身分を有するかぎりにおいてその者を保険金受取人
として指定する趣旨を表示したものと解しうるため
には、単に氏名のほかにその者が被保険者の妻であ
①昭和47年7月1日および昭和51年12月1日、
Yl、Y2保険会社との間で、被保険者A、保険
金受取人「妻Y3」とする団体定期保険契約を締
結し、以後毎年更新していた。
②Y。は、昭和53年5月23日、訴外Bとの不貞
行為を理由として、Aとの離婚を余儀なくされ
た。
③Aは、昭和55年1月20日、死亡した。
⑥Aの子XlおよびⅩ2は、Y.、Y2に対し保険金
の支払いを訴求し、Y3に対してはY。が保険金
請求権を有しないことを訴求した。
判旨
「生命保険契約において保険金受取人の指定につ
き単に被保険者のr妻・何某j と表示されているに
とどまる場合には、右指定は、当該氏名をもって特
定された者を保険金受取人として指定した趣旨であ
り、それに付加されている r妻』という表示は、そ
れだけでは、右の特定のほかに、その者が被保険者
の妾である限りにおいてこれを保険金受取人として
指定する意思を表示した者等の特段の趣旨を有する
者ではないと解するのが相当である。けだし、保険
金受取人の指定は保険契約者が保険者を相手方とし
てする意思表示であるから、これによって保険契約
者が何びとを保険金受取人として指定したかは、保
険契約者の保険者に対する表示を合理的かつ客観的
に解釈して定めるべきものであって、この見地に
立ってみるときは、保険契約者が契約の締結に際し
て右のような表示をもって保険金受取人を指定した
10
ることを表示しただけでは足りず、他に右の趣旨を
窺知させるに足りる特段の表示がされなければなら
ないと考えるのが相当だからである。」
判例日 大阪地判昭53.3.27(判時904−104)
事実の概要
①Aは、昭和50年6月21日、保険契約者・被保 (
険者として、保険金受取人を「相続人」とする保
険契約を締結した。
②Aは、昭和50年5月20日頃、Xと事実上婚姻
して同棲し、同年6月24日結婚披露宴を挙げ、
婚姻届を出すべく準備中であったが、同月25
日急死した。
③保険金は、Aの先々妻との間の3人の子に支払
われた。
⑥Xは、指定保険金受取人「相続人」の中に配偶者
たる自己も含まれるとして、保険金の三分の一
に相当する損害を被ったとして、これを訴求し
た。
判旨
「本件保険契約申込書及び告知書には被保険者A
に配偶者ありと記載されていることが明らかであり、
右配偶者とは右申込書及び告知書作成当時右Aと事
実上婚姻し同棲していたⅩを指称するものであると
ころ、右Aが本件保険契約申込にいたったのは事実
上の配偶者であるⅩ及び先々妻との子3人の将来を
おもんばかってのことと推察できるのである……保
険契約において保険金受取人をr相続人』と指定し
た場合においては、右相続人の範囲は民法の規定に
より定まるものであって、内縁の配偶者はこれに含
まれないものといわざるをえない。保険契約申込書
及び告知書に配偶者ありとの記載があっても、右配
偶者には内縁の配偶者も含まれるもので、右記載が
あるからといって保険金受取人を r相続人』と指定
した以上はⅩは保険金の受領権限ありといえない。
前示のように亡Aが本件保険契約の申込みをするに
、いたったのはⅩの将来をおもんばかって、Ⅹとの婚
姻届出後はⅩも右Aの相続人として当然保険金受取
人の1人となり得ると考えてのことと推察でき、右
AがⅩとの婚姻届出の準備をしている間不慮の急病
のために死亡し、右届出の手続きが果たせなかった
貞Ⅹに同情すべき事情があるが、Y会社が本件保険
金を右Aの相続人である先々妻Bとの子3人に全額
支払い、Xに支払わなかった点に過失があるという
ことはできない。
判例凧 東京地判昭61.12.25
東京高判昭62.4.27
最判昭62.10.30
(
事実の概要
①松村Aは、昭和58年4月1日、保険契約者・
被保険者として、保険金受取人を「松村B子」と
指定し、保険契約を締結した。
②Aは、同年5月15日、交通事故により死亡し
た。
③Ⅹ1およびⅩ2は、Aの両親であるが、「松村B
子」なる人物は実在せず、法定相続人として保
険金を訴求した。
④小高B子は、Aの婚約者であった。
判旨
①保険金受取人の指定は保険契約者が保険者を相
手方とする意思表示であるから、これによって
保険契約者が何びとを保険金受取人として指定
したかは、保険契約者の保険者に対する表示を
合理的かつ客観的に解釈して定めるべきもので
あるところ(昭和58年9月8日最高裁第一小法
廷判決)、保険金受取人欄については、本件保
険契約締結当時Aは小高B子と婚約中であった
こと、本件保険契約の申込書作成の際、AはY
保険会社担当者Cに対し近く入籍する予定だが、
そのときに氏名を変更するのが面倒であるから
「松村」の姓にしておく旨申し述べて、右申込書
の死亡保険金受取人欄に「松村B子」と記入した
ことが認められるから、Aの右表示を合理的か
つ客観的に解釈すると、Aは右小高B子を本件
保険契約の死亡保険金受取人として指定したと
みるのが相当である。
②本件保険金の指定受取人「松村B子」は、AがY
保険会社と保険契約を締結した当時同人と婚約
中であった実在の小高B子を指すものであるこ
とは、明らかであり、右以上に小高がAとの婚
姻し「松村」の姓を称する限りにおいて保険金受
取人とする旨の指定をしたものと解し得る特段
の表示がされたことは証拠上認められないから、
たとえ小高が保険事故発生時にAと婚姻し「松
村B子」という氏名になっていなくても、小高
が保険金受取人であることには変りはないもの
というべきであって、保険金受取人が不存在で
あるとは到底解しえないところである。
<検 討>
(判例I・IIについて)
設問に入る前に最高裁S40.2.2判決について述
べてみたい。事案としては、訴外AがY生命保険会
社との間で自己を被保険者とする養老保険契約を締
結し、保険金受取人を「保険期間満了の場合は被保
険者=A、被保険者死亡の場合は相続人」と指定し
た。Aは配偶者、直系卑属、直系尊属のいずれもな
くただ姉Bと弟Cがいるだけであったが、公正証書
により自己の所有財産の全部を包括名義でXに遺贈
する旨遺言し、死亡した。以上の経緯よりⅩはY生
命保険会社に対して「相続人」なる指定は包括受達者
たるXを指すものであること、本件保険金債権はA
の相続財産を構成するから、A死亡の場合において
は包括受達者たるXに帰属するものであること等を
主張して、保険金の支払を請求したものである。
最高裁は次のように判示してⅩの上告を棄却した。
(丑被保険者死亡の場合の受取人を特定人の氏名を
挙げることなく抽象的に指定している場合でも、崖
険契約者の意思を合理的に推測して、保険事故発生
の時において披指定者を特定し得る以上、右の如き
指定も有効であり、特段の事情のないかぎり、右措
定は、被保険者死亡の時における、すなわち保険金
請求権発生当時の相続人たるべき者個人を受取人と
して特に指定したいわゆる他人のための保険契約と
11
解するのが相当である。」(下線筆者)
「そして右の如く保険金受取人としてその請求権
発生当時の相続人たるべき者個人を特に指定した場
合には、右請求権は、保険契約の効力発生と同時に
右相続人の固有財産となり、被保険者(兼保険契約
者)の遺産より敵脱している。」と判示している。
保険金受取人の指定の方法としては
甲:「妻・何某」とある表示のうち「何某」には特
段の意味はなく、契約者の意思は「妻」を受取
人と指定するにあり、それに続く「何某」は単
に現に妻である者の氏名を念のために記載し
たにすぎず、特段の意味はない。
ア)受取人の指定が「何某」と具体的に氏名で指定
した場合
乙:「何某」の表示は文字どおり当該特定人を指
定したものとみるべきだが、その前に付され
イ)受取人の指定を「相続人」というように抽象的
に表示する方法の2通りが挙げられる。
ア)については氏名で具体的に指定した時点で受
取人は特定し、後に結婚・離婚等により改姓しても
ている「妻」との肩書にはそれなりの意味があ
るものと解すべきであり、その見地から考え
ると、当該「何某」が契約者の妻たる地位を有
する限りにおいて同人を受取人と指定すると
いうのが契約者の意思であると解釈するべき
である。
指定時に「何某」という姓名であった者が受取人であ
ることに変わりがない。
イ)については「相続人」という例でわかるように、
契約締結時から保険事故発生時までに、変動が生ず
る場合もある。この時誰に保険金を支払うべきかが
間者になる。先に掲げた最高裁S40.2.2判決によ
れば
①氏名を挙げずに受取人を抽象的に指定した場合
も有効である
②指定は保険金請求権発生時に具体的に特定すべ
きである
③保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に受
取人の国有財産となること
という見解であり、特に(む、②を導く根拠として
「保険契約者の意思を合理的に推測する」ことによる
ものとしている。(通説も支持しており、受取人指
定時から保険事故発生時までの受取人変更の手続を
とる面倒を避ける趣旨と解している。)
上記の考え方に従えば、「妻」という受取人指定は
保険事故発生時の妻を指定した事になる。そして、
夫が「妻」を保険金受取人に指定した後に離婚、再婚
し、その後死亡した場合には「妻」という抽象的指定
が保険事故発生とともにその時の妻という形で具体
化したと解されるのであって、−他人のためにす
る檜保険が離婚により一旦自己のためにする保険に
変り、再婚によってそれがまた他人のためにする保
険に変ったわけではない。(中村・竹内)
判例Iは、ア)、イ)の両指定方式を併用し、しか
も契約締結時の妻が保険事故発生時には存在しな
かったため誰を受取人にするかが間窟となったケー
スである。上述した考えでいけば、ア)(具体的に氏
名で特定)の場合では「Y3(元妻)」が保険金受取人と
なり、他方イ)(抽象的に「妻」と指定)の場合、「Y3」
が保険金受取人とならず、「Xl・Ⅹ2」が勝訴してい
たものと考えられる。
12
アトイ)の併用方式(「妻・何某」)の場合、次の3
つか考えられる。
丙:「妻・何某」とある表示は具体的に実在する
「何某」を指し、その上にある「妻」の表示は
「何某」という氏名の持主を更に特定する趣旨
で書かれたものか、又は単に「何某」を受取人
と指定した動機、理由を示しただけで、法的
には無意味な表示とみるべきである。
最高裁は丙説に立ち「保険契釣者の保険者に対す
(
る表示を合理的かつ客観的に解釈して定める」見地
より、保険金受取人の氏名に付加された妻という表
示は保険金受取人の特定を補助する意味を有するに
すぎない」と述べ、妻の身分を有する限りにおいて
その者を保険金受取人として指定する趣旨を含ませ
るためには、その趣旨を窺知させるに足りる特段の
表示を必要とする、とした。
他方、最高裁の判決に対して反対説もあり、例え
ば竹内教授は、基本的に乙説の立場に立ち、
1)「妻」との指定の場合には保険事故発生時の
妻であるのに、「妻・何某」の場合には、指定時 (
に「何某」と指定してしまうと解するのであるか
ら「妻」の語はあってもなくても同じであり、
「妻」の語の意味が全く異ることになってよいの
か。
2)「妻である限りにおいて」など特段の表示を
要求しているが、家庭に無用の波風を立てない
で、かつ明確な表示というのが、「妻・何某」で
はないか。
3)表示だけで機械的に処理すべきでなく、保
険加入者一般の意思を含めて慎重に合理的解釈
すべきである。(疑義を生じた場合に、附合契
約性等を強調すべきではない。)
4)「妻」の語も「相続人」の場合と同様にそれな
りの意味を持つ表示と解してもよいのではない
か。これも一つの合理的解釈であり、契約者の
平均的意思に合致する後味のよい解釈であると
思われる。
等を理由として最高裁の立場に反対している。
また山下孝之弁護士は
①「他人のためにする生命保険契約は「第三者のた
めにする契約」の一種であり、保険契約者(要約者)
と保険金受取人(受益者)間の「原因関係の有無」を重
視することが具体的な事案の円満な処理・紛争解決
に大きく寄与するものである。
②保険金受取人指定が保険契約者の一方的意思表
示で行われる一方、保険者としては保険金受取人が
誰であるかについてあまり利害関係がないことより、
できるだけ保険契約者の意思を尊重すべきであり、
それ故、受取人指定の意思解釈に際しては、その指
定に当たっての原因関係を考慮しなければいけない。
( と述べられ、最高裁の判決が世間に通用するかどう
かは疑問であるとされている。
の妻に限定されるのか、内縁の妻も含まれるのか、
等指走者の意思を合理的に解釈するにはさまざま
の事情を考えなければいけないと思われる。それ
に対して具体的に「何某」と指定することは、その
時点で受取人は特定する。抽象的表示が、指定時
から保険事故発生時までの変動に対してそのつど
受取人変更の手続きをする、という面倒を避ける
ためのものと考えるにしても、このような不明確
を措定をも併せて表示したことについて(具体的
に「何某」と一方で指定しているにもかかわらず)
一方的に保険会社側に「正しい保険金受取人を調
べて支払ってほしい」というのは実際問題として
保険会社側の負担は非常に大きいものである。抽
象的表示のみであれば、契約者の意志の合理的解
釈・その他要因を考慮して判断する必要はある、
と思われるが、具体的に氏名が特定されている以
上、②で述べているように現代の資本主義社会に
おける大量取引の安全性を円滑に運行できるよう
(
保
保
険
険
契
者
約
者
にするためにも「何某」に重点を置く判例の態度に
賛成するものである。
乙)説は、「何某」にも「妻」にも何らかの意味を
持たせようとする説であるが、「妻たる地位」に
ある限り、という条件をつけるならば、初めか
ら「被保険者の妻」と指定すれば、もっとすっき
りした解決になるのではなかろうか。また、保
険契約者と保険金受取人間の「原因関係」を考慮
する説についても、もし本件のように離婚して
受取人指定の「原因関係」が破壊されたことで、
Y3に保険金を払わない、と結論づけるならば、
受取人変更、撤回制度の必要性についても問題
が生じてくるのではなかろうか。
(
(保険金受取人)
判例Iのケースについては、「妻」という表示に重
点を置くのか、それとも「何某」という個人名に重点
を置くのか、という点で見解が分れるものである。
(甲・乙・丙説を参照)。そこで、私見として
①保険金受取人の措定は指定者が生命保険会社に対
して行う意思表示である。
②資本主義社会の要求する取引安全の思想(相手方
の期待や信頼の保護)に導かれて、近代法は意思
主義から表示主義への道を進んで来ていること
(むろん、一方的に固執はできないが)
③抽象的な表示「妻」と具体的に指定している「何某」
が並記されている場合、抽象的表示を解釈するに
は、いつの時点の「妻」なのか誰の「妻」なのか(契
約者の妻なのか、被保険者の妻なのか)、民法上
また、「原因関係」を考えるには、相当、当事
者間の内部関係を調べることになると思われ、
二重私を防ぐために締結時に内部関係を調べる
ことは、実際上無理があるのではなかろうか。
判例Ilについて一保険金受取人を「相続人」と指定し
た場合、内緑の妻は含まれるか。
「保険契約において保険金受取人をく相続人〉 と
指定した場合においては、右相続人の範囲は民法の
規定により定まるものであって、内縁の配偶者はこ
れに含まれないものと言わざるを得ない。」
大阪地判S53.3.27
0石田教授(判旨に反対)と青谷教授(判旨に賛
成)の対比
判旨
「Aが保険契約申込みにいたったのは‥‥‥・‥
Ⅹ及び先々妻との子3人の将来をおもんば
13
かってのことと推察できる。・・‥‥仲略)…‥・
イ)本件保険契約申込書及び告知書に配偶者が
ある、という記載がなされていること、そし
てこの配偶者とはXを指すものであった、と
いう事情。
及び
Aが本件保険契約の申込みをするにいたった
のはⅩの将来をおもんばかって、Xとの婚姻
届出後はXも右の相続人として当然保険金受
取人の一人となり得ると考えてのことと推察
できる」
石 田
①保 険金受 取 人 を 「
相 続 人」 と
指定 した場合 、 「
相 続 人」 の
範周 は 民法の 規定 に よ り定 まる
青 ロ)Aが本件保険契約を申し込ん
だのはⅩ及び先々妻との子三人
の将来を考えてのことであった、
という事情。
谷
①保 険 金受 取 人 を 「相続 人」 と
指 定 した場 合、相 続 人に 「Ⅹ」
を含む 旨の 明示の 意思 表示 が
と形 式的 に判 断す るの は疑 問 あ
ない 以上、 民法 の規定 に よ って
り。
定 まるべ き特定 人、す な わ ち、
保 険事故 発 生時 の相続 人 を指定
した もの と解すべ きであ る。
②保 険契約 法上 の受 取人指 定 の趣
②保 険 契約 法 上の受 取 人指定 の趣
旨 と解す るな らば 、相 続 人の範
旨が どこに存在 す るかわか らな
囲 いか んは民 法の 規定 に よって
定 まる もので は な く 「
相 続 人」
い。
∼保 険 契約 申込書 上 の 「保 険金
とい う指 定が 誰 を棺 して いるの
受 取 人指 定欄 」 には単 に 「相続
か 、 とい う観 点か ら判 断 され る
人」 と指 定 して あ るにす ぎな い。
べ きもので あ る。
③ 申込 書 ・告知 書 に 「配偶 者 あ
③ 保 険金受 取 人の指 定 は保 険 契約
り」 の記 載が あ る場 合 、保険 会
申込書 の 「
保 険金受 取 人指 定欄 」
社 は内妻 を保 険金受 取 人 とす る
にお いてす べ き もの であ る。
意思 の表 示 をな したか ど うか調
∼扱 者が 「配偶 者あ り」 と記載
査 すべ きで あ り、 これ を怠 った
した場 合 内線の配 偶者 も含 まれ
こ とに つい ては、保 険 会社 の過
るが、 これ は保険 の危 険選 択上
夫 も問 われ る余地 があ るの では
の必要 か ら配偶 者の有 無 を調べ
なかろ うか。
るた めに記 入報告 されて い るに
す ぎず、保 険者 は扱者 の報 告書
を見 て 「相 続人 」の指 定の 趣 旨
から、Aが「保険契約の当時」にお
いてXを確定的かつ無条件的に保
険金受取人として指定する意思ま
で持っていたかは疑問である。婚
姻の届出によりⅩも相続人の一人
になるのだからと考えて、保険金 (
受取人を「相続人」とする本件保険
契約を申し込んだのだが、婚姻の
届出をしないうちにAの死亡事故
が発生したとみるのが自然である。
この事は内縁自体にまつわる通常
の不利益であり、一般の場合と異
なる特別の事情かあったとは思わ
れない。
判旨に対する批判として、「保
険契約受取人を『相続人』と指定
した場合」、「相続人」の範囲を民
法の規定により定まるものとする
のは、形式的であるという見解が
あるが、通常一般人が「相続」とい
う言葉を指す場合、相続法を念頭
に置いていると考えるのが妥当で
あり、現行の相続法は、親族関係
の存否を基準にしていること、及 (
ぴ「相続人」は死亡した「被相続人」
の財産の法律上の移転に関与する
者であるにすぎず、被相続人の財
産を相続する事に対する対価的義
務を生前に負うものではない事より、「特別の事情」
がない限り民法の規定により通常は定まるものと解
釈せざるを得ないのではなかろうか。但し、保険金
を解釈 す る必要 は ない。
(私見)
○判旨に賛成
民法890条では
「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。」と
定めているが、内縁の妻は、同条にいう「配偶
者」に含まれないとするのが、判例・通説。
・上記の趣旨は通常の場合における意思解釈の結
論であり、本件の場合、「相続人」という表示の
中に内縁の妻を含めるべき特別の事情があれば、
それによるべきことになるが、
14
受取人を「妻」とした場合には、後で述べるように内
線の妻も含まれるものと思われる。(解答2参照)
(その他)
1.最高裁S40.2.2判決の趣旨に沿ったものと
して
「相続人」(受取人)が相続放棄した以上いまや
被相続人の債権者は相続人の国有財産である死
亡保険金請求権を差押え、転付を受けることが
し、契約者の財産からは分離されるが、「相
できない」ということになる。(宮崎地判S45.
9.25)∼保険金請求権は保険契約の効力発生と
同時に「相続人」の国有財産となり相続財産から
離脱している、という考えに基づく
「受取人が指定されている死亡保険金を特定
の相続人に遺贈する旨の遺言は無効である(東
続人」=保険事故発生当時の相続人に保険金
蘭求権が帰属するのは、保険事故発生によっ
て「相続人」が特定された時∼法律効果の発生
京高判S60.9.26)」も同様
2.保険金受取人が「相続人」と指定された場合の
保険金請求権を取得する時期について
′ヽ
a.「相続人の指定」があった時(判例では保険
契約の効力発生時と述べている)
∼判例・大森・中西・青谷・上田・西鳴
瀬受取人が特定するのは保険事故発生の時
(被保険者死亡の時)であり、その時以前は誰
が受取人となるか未確定の状況ではある、と
いう批判あり。(山下)
b.「相続人」との指定により、「相続人」が保険
金請求権を取得する、という法律効果が発生
と帰属を区別する。(山下・中村)
保険金受取人指定の撤国、変更について
◎民法5論集によれば契約者により指定された受
取人がひとたび保険金請求権を取得した以上、
契約当事者は「指定された受取人」の同意なしに
変更・権利を消滅させることができないはずだ
が、生命保険契約の長期性を考慮し、保険契約
者の一方的意思表示(単独行為)による変更を認
めてもさしつかえなく、意思表示の相手方は保
険者、新旧保険金受取人のいずれになしてもよ
い。(西鳴)
◎指定、変更権について商法と約款の比較
<設問について>
聞Iについて
「妻」という表示は身分
A.指定・変更権が留保されている場合
商法 675 条 1 項但書
「
別段の意思表示」をもって
約
款
保険契約者又はその承継人が被保
保険金受取 人を指定 ・変更する 険者の同意を得て保険金受取 人を
権利を留保することができる。
指定 し、または変更す ることがで
きると明示 しているケースが多い。
B.措定・変更権の一身専属性について
商 法 6 75 粂 2 項
約 款
保険 契約 者が 変更権 を行 使 しな
保 険契 約者 の死亡 後 もその承継 人
い ま まで 死亡 した と きは、保 険
が保 険 金受取 人の指定 ・変 更権 を
行使 で きる と定 め るのが通例 。
金受 取人 の権 利が確 定 す る。
∼保 険契約 の相 続 人は指 定 ・変
更権 を行 使 す るこ とが で きな
C.指定・変更権の対抗要件
商 法 6 77 条 1 項
の「妻」が保険金受取人で
ある、としても上述した
ように「妻」という言葉が
身分・続柄を表すだけで
具体的な個人を表さない
こと、及び生命保険契約
の長期性を考慮し、契約
締結時から保険事故発生
時までの諸事情の変化に
対応できるところに抽象
的表示の意義があること
い。
保 険 契 約 者 が 契 約 後 に保 険 金 受 取
・続柄を表す言葉であり、
特定の個人名による指定
とは異なり、指定時に受
取人が誰である、とまで
特定できない。通説・判
例に従い保険事故発生時
約 款
指 定 ま た は 変 更 は 保 険 会 社 に裏 書
人 を指 定 ま た は 変 更 した と きは 、
を受 け てか らでな ければ 会社 に対
保 険 者 に そ の 指 定 ま た は 変 更 を通
抗 す る こ とが で き な い 。
知 し な い と こ れ を も っ て保 険 者 に
(
商 法 よ り さ ら に 厳 し い)
対 抗 す る こ とが で き な い 。
∼保 険 会 社 の 大 量 事 務 処 理 の 迅 速
確 実 性 の 必 要 上 合 法 とす る。
より、「妻」と指定されて
いる場合、指定権を有す
る保険契約者の意思の合
理的解釈・その他の諸要
因を考慮して判断するべ
きであるとと考える。
間目について
①「妻」という表示は身
分・続柄を表すもので
あり、「相続人」の表示
15
とは異なり当事者間の生活関係をより具体的
に表している言葉である一民法752条は夫婦
の同居義務・協力義務・扶助義務を定めてい
る。
・AのCへの言動より、Aは「妻」・「相続
人」等の抽象的表示とは異なり、特定の
人物を指した上での氏名変更手続を略し
ている意図が窺われる。
② 内縁関係でも上記①同居・協力・扶助の義
務が認められている。そして財産に関する閉
篭においても婚姻に準じた取扱がなされてい
ること。
楽判旨:「小高がAと婚姻L r松村」の姓を称す
る限りにおいて、保険金受取人とする旨
の指定をしたものと解し得る特段の意思
表示がなされたことは証拠上認められな
③ 各種の社会立法に内縁を準婚姻として取
扱っていること。
などから、保険契約者の意思を合理的に解釈するこ
とや、その他の諸要因を考慮することにより、「相
続人」という受取人の指定の場合と異なり、内線の
妻も「妻」として保険金受取人となることができると
考える。
間目について
XlT妻芸者
い。」
⑪
・「松村」の表示は「相続人」・「妻」と異なり地位
・続柄を表すだけの意味を持っていないと判
断していると考えられる。
(私見として賛成)
・AのCへの言動について
∼告知受領権の間蔦と同様、保険金受取人の指
定も法律行為であるため、Aの受取人指定に
ついての意思表示をCは受領することができ
ない。しかし、「松村B子」という表示を合理
的に解釈するための判断材料として用いるこ
とはできると考える。
(受=松村B子)
松村A………小高B子
(契約者・被保険者)
「保険金受取人」=「松村B子」と特定の氏名に
て指定
1.保険契約締結時、Aは小高B子と婚約中
2.契約申込書作成の際、AはCに対し、近く入
籍する予定だが、氏名を変更するのが面倒で
あるため「松村」の姓にしておく旨を述べた。
(検 討)
・「妻」という抽象的な表示で受取人を指定した
のではなく、具体的に「松村B子」と氏名を表
示しての指定
−ア)受取人は「松村B子」で特定された「他人
のための生命保険契約」として成立してい
る。
イ)表示の客観的解釈
受取人は「松村B子」(保険事故発生時、
「松村B子」は存在しない。)
ウ)表示の合理的解釈
・小高B子はAの婚約者である。
以上、保険事故発生時に表示上「松村B子」は存在
しないものの、特定の氏名が表示されている以上、
受取人は特定されているので表示の客観的・合理的
解釈を行うために「松村B子」と指定された状況・事
情を考察する必要がある。
従って「小高B子」と「松村B子」は同一人物である
こと、及び上記ア)−ウ)による考察の結果、「松村
B子」の表示を合理的に解釈すれば、保険金受取人
は「小高B子」とする判旨に賛成である。
(参考文献)
・西鳴 梅治「保険法」
・生命保険判例百選
・(判例I・Il)
最高裁判所判例解説
(東京:H.1.1.19)
出題・講師:弁護士 松岡 浩氏
指導:河村弁護士、岡野谷弁護士
報告二三井生命 平野 明氏
編集・発行者 〒530人阪市北区中之島4TR3番43けPHONE:大阪(06)411−1465FAX.大阪(06)445−0250
財団法人 振佃1塵 大阪4−2989番/取引銀行 は友銀行中之烏麦り− 普通140133・二和銀行中之烏麦り− 普通334606
生命保険文化研究所 慄諒牒務所li=104東京都中央区八重洲21.F】8爵8〉;PHONE:束5抑)3)281L4621FAX:頼(03)281−4639
板目 ゆ かは」0582r)爵/取引銀行 _相鋏行甘橋支店 ゴ鋸酎9694
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