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金属材料の引張り試験における 測定の不確かさ評価

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金属材料の引張り試験における 測定の不確かさ評価
金属材料の引張り試験における
測定の不確かさ評価
財団法人 日本建築総合試験所
材料部中央試験室
大橋 正治
適用範囲
• JIS Z 2201 「
金属材料引張り試験片」に規
定する鋼製で円形断面または長方形断面
の試験体
• JIS Z 2241 「
金属材料引張り試験方法」に
定める引張り強さ,降伏点および破断伸び
2
JIS Z 2241
「金属材料引張り試験方法」
• 試験片;JIS Z 2201による(円形及び長方
形断面とする)
。標点をパンチ又はけがき
針で付す。
• 試験機;JIS B7721による等級1級以上。
• 力の加え方;力を加える速度は均一。降伏
点までは3∼30N/mm2・s,以後破断まで
は試験片の平行部のひずみ増加率20∼
50%/min。
• 試験温度;
10∼35℃。
3
対象としている鋼材の種類
・JIS A 5526 H形鋼ぐい
SHK 400 SHK 400M SHK 490M
・JIS G 3108 みがき棒鋼用一般鋼材
SDG A SDG B
・JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材
SS330 SS400 SS490 (SS540)
4
測定手順概要
試験片の寸法測定
引張り力の測定
破断後の伸びの測定
結果
5
破壊試験における測定の不確かさ
• 破壊試験なので,一つの試験体で繰り返
し性が評価できない。
• できる限り均質な試験体を製作し,ばらつ
きを評価する。
• この評価ではサンプルの性能のばらつき
を含む。
• 製品群の性能のばらつきに比べてサンプ
ルの性能のばらつきは小さい。
6
試験片
7
試験機
8
試験状況
9
試験片の原断面積,標点距離
• 標点間の両端部及び中央部の3ヶ所の断
面積の平均値。
• 円形断面の試験片では,現断面積の求め
るための直径は,互いに直交する2方向に
ついて測定した値の平均値。
• 測定器の精度;規定寸法の少なくとも0.5%
の数値まで測定する。
• 標点距離の精度;規定寸法の0.4%以下。
10
引 張 荷 重 F (kN)
最大荷重
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
5
10
15
20
伸 び ε(%)
25
鋼材の引張試験−SSカーブ
30
11
引 張 荷 重 F (kN)
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
降伏伸び
上降伏点
下降伏点
0
0.4
0.8
1.2
伸 び ε(%)
1.6
鋼材の引張試験−SSカーブ
2
12
測定の不確かさ評価手順(GUM)
1. 数式モデル
2. 不確かさ成分の評価
タイプA評価,タイプB評価
3. 合成標準不確かさ
感度係数,成分間の相関
4. 拡張不確かさ
包含係数
5. 不確かさの報告
13
数式モデル(1)
引張り強さ;
σB = Fmax / A0
σB:引張り強さ(N/mm2)
Fmax:最大引張り力(N)
A0:原断面積(mm2)
A0=π(d/2)2 or A0=b・t
d:
直径(mm),b:幅(mm),t:厚さ(mm)
14
数式モデル(2)
上降伏点;
σSU = FSU / A0
σSU:上降伏点(N/mm2)
FSU:降伏の力(N)
A0:原断面積(mm2)
A0=π(d/2)2 or A0=b・ t
d:
直径(mm),b:幅(mm),t:厚さ(mm)
15
数式モデル(3)
• 破断伸び;
δ=(L-L0)/L0×100
δ:破断伸び(%)
L:破断後の標点距離(mm)
L0:原標点距離(mm)
16
特性要因図
長さ測定 L, d, b, t
校正
温度
繰返し
読み
温度
校正
読み
人
力測定 F
繰返し
引張り強度σB
降伏点σSU
(破断伸びδ)
加力軸
加力速度
人
17
感度係数ci
引張り強さ
∂σ B
4
c(Fmax ) =
= 2
∂Fmax πd
∂σ B
8Fmax
c(d ) =
=−
3
∂d
πd
18
長さ測定の標準不確かさ(1)
• 長さ測定にノギスを使用した。
• 校正の不確かさ(読みの不確かさを含む)
u=U/k=0.014/2=0.0070mm
• 温度変化による不確かさ
試験の温度範囲を20±15℃(5∼35℃)とし,いず
れの温度でも同じ確率で生じるとする。試験体と
ノギスの熱膨張率の差が誤差として生じる。
(Δα・Δt・L)/√3≒0.00082mm
L=25mm
19
長さ測定の標準不確かさ(2)
• 試験片の寸法測定には,偶然効果の他に人の技能が関
係するので,同一試験片を複数人(6人)が2回ずつ測定
して,実験標準偏差を求める。
8
頻度
7
6
5
d = 25.00 mm
4
3
sd=0.0040mm
2
1
0
24.96
24.98
25.00
25.02
25.04
25.06
直径 (mm)
20
長さ測定の標準不確かさ(3)
成分
校正(
読みを含む)
温度変動
繰返し
u (d ) =
ui(mm)
0.0070
0.00082
0.0040
(0.0070) + (0.00082) + (0.0040)
2
2
2
= 0.0081mm
21
力測定の標準不確かさ(1)
• 校正の不確かさ(読みの不確かさを含む)
ucal=0.4%×F ,校正証明書による
• 温度変動による不確かさ
力試験機は油圧式であり,圧力に及ぼす温度の
影響は小さく無視できる。(粘性に関係し,載荷速
度の影響する)→載荷速度は一定に保たれる装
置を用いている。
• 繰返しの不確かさは,破壊試験では困難。できる
限り均質な試験体による実験標準偏差で求める。
加力軸,加力速度の影響も含まれる。
22
力測定の標準不確かさ(2)
• 繰返しの実験標準偏差
均質な試験片2本ずつを異なる6人で測定した結
果(教育訓練を兼ねた実験を利用)。
F = 217kN
6
5
頻度
4
sF=1.44kN
3
2
1
0
214
215
216
217
218
最大引張り力 (kN)
219
220
23
力測定の標準不確かさ(3)
成分
ui(kN)
校正(
読みを含む) 0.004×217=0.868
繰返し
1.44
u (F ) =
(0.868) + (1.44)
2
2
= 1.68kN
24
特性要因図(
内包する要因)
長さ測定 L, d, b, t
校正1
温度
繰返し
(読み)1
温度
校正2
(読み)2
(人)2
力測定 F
繰返し3
引張り強度σB
降伏点σSU
(破断伸びδ)
(加力軸)3
(加力速度)3
(人)3
25
包含係数と有効自由度
• 合成標準不確かさ
uc (σ B ) =
[c(F )u (F )]2 + [c(d )u(d )]2
• 包含係数
4
ν eff =
uc ( y )
∑
n
i =1
4
ui ( y )
νi
=
(3.44)4
(0.287 )4 + (3.43)4
11
= 11.3 ≈ 11
11
スチューデントの t 表から,95%信頼の水準で自由
度11に対応する値はk=2.20
26
引張り強度の不確かさバジェット
成分
d
Fmax
xi
25.00
(mm)
217
(kN)
u(xi)
0.0081
(mm)
1.68
(kN)
ci
-0.0354
(kN/mm3)
0.00204
(1/mm2)
ui(σB)
(N/mm2)
ν
0.287
11
3.43
11
uc 3.44 (N/mm2)
11
U(k=2.20) 7.57 (N/mm2)
11
27
結果の報告
• 引張り強度の測定値は,
σB=442MPa±7.6MPaであった。
その不確かさは,自由度11における包含
係数k=2.20を用いた約95%信頼の水準に
おける拡張不確かさで7.6MPaであった。
(1MPa=1N/mm2)
28
不確かさの概略の見積
• JISでは,力試験機は1等級であるから,
u(Fmax)/Fmax≦0.01 (;1%)
• 直径の測定精度は0.5%と決められている。
u(d)/d=0.005
• σB=4/π×Fmax・d -2
u (σ B )
u ( Fmax )
=
σB
Fmax
2
1.4%
1%
2
u (d )
+ 2
d
2
2×0.5%
29
相対標準不確かさ
u (σ B )
σB
u (Fmax )
Fmax
u (d )
2
d
JI
S条件
1.41 (%)
1 (%)
1 (%)
評価
0.77 (%)
0.77 (%)
0.06 (%)
•引張り強度の相対標準不確かさの評価値は力測定の不
確かさの寄与が大きい。長さ測定の精度が良いことによる。
30
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