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332号 - 結核予防会
第61回結核予防全国大会 開催要領 期 日 平成22年3月18日(木)・19日(金) 場 所 ホテルニューオータニ鳥取 〒680-0822 鳥取市今町2丁目153 TEL0857-23-1111 とりぎん文化会館 〒680-0017 鳥取市尚徳町101番地5 TEL0857-21-8700 主 催 鳥取県,財団法人結核予防会 後 援 厚生労働省,外務省,社団法人日本医師会,社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会,財団法人健康・体力づくり事業財団,特定非営 利活動法人ストップ結核パートナーシップ日本,ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟,鳥取県教育委員会,鳥取市,鳥取市教育 委員会,鳥取県市長会,鳥取県町村会,社団法人鳥取県医師会,社団法人鳥取県歯科医師会,社団法人鳥取県薬剤師会,日本赤十字社鳥 取県支部,社団法人鳥取県看護協会,社団法人鳥取県放射線技師会,社団法人鳥取県臨床検査技師会,社団法人鳥取県栄養士会,鳥取 県健康を守る婦人の会,鳥取県食生活改善推進員連絡協議会,鳥取市民健康づくり地区推進員連絡協議会,社会福祉法人鳥取県社会福 祉協議会,社団法人鳥取県老人クラブ連合会,財団法人とっとりコンベンションビューロー,新日本海新聞社,山陰中央新報社,朝日新 聞鳥取総局,読売新聞鳥取支局,毎日新聞鳥取支局,産経新聞鳥取支局,日本経済新聞鳥取支局, NHK鳥取放送局,日本海テレビ,山陰 中央テレビ, BSS山陰放送,中国新聞鳥取支局,時事通信社鳥取支局,共同通信社鳥取支局,テレビ朝日鳥取支局,日本海ケーブル ネットワーク,いなばぴょんぴょんネット,鳥取中央有線放送株式会社,株式会社中海テレビ放送,伯耆町有線テレビジョン放送,エフ エム山陰, FM鳥取 【第1日】3月18日(木) (1)結核予防会全国支部長会議 10:00 ∼ 11:30 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・東) (2)全国結核予防婦人団体連絡協議会理事会 10:00 ∼ 10:30 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・中) (3)全国結核予防婦人団体連絡協議会総会 10:40 ∼ 11:40 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・西) (4)全国結核予防婦人団体連絡協議会昼食会 12:00 ∼ 12:50 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・西) (5)全国支部長会議出席者昼食会 11:40 ∼ 12:30 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・東) (6)オープニング 13:30 ∼ 13:40 「因幡の傘踊り」 国府町因幡の傘踊り保存会 場 所:とりぎん文化会館(梨花ホール) (7)研鑽集会 13:45 ∼ 16:00 場 所:とりぎん文化会館(梨花ホール) 1)シンポジウム 「どうなる!? これからの結核医療」 (13:45 ー 15:20) 座 長:財団法人結核予防会結核研究所 副所長 加藤 誠也 シンポジスト: <今後の結核スクリーニング> 財団法人結核予防会第一健康相談所長 岡山 明 <治療現場からの報告> 鳥取県立中央病院内科部長 杉本 勇二 <DOTSの取り組み・地域連携> 鳥取県西部総合事務所福祉保健局健康支援課感染症 ・疾病対策係保健師 岡田 桂子 <結核の医療提供体制> 愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長 櫃本 真聿 全 体 討 議 特 別 発 言: 厚生労働省健康局結核感染症課長 福島 靖正 座長まとめ 2)青谷上寺地遺跡から発見された日本最古の結核症例 (15:23 ー 15:33) 鳥取大学医学部教授(医学部長) 井上 貴央 3)人 形 劇 「鈴木家結核顛末記」 (15:33 ー 15:57) 鳥取県健康を守る婦人の会大山町中山支部の皆さん 4)研鑚集会まとめ 財団法人結核予防会結核研究所長 石川 信克 (8)アトラクション 16:00 ∼ 16:20 場 所:とりぎん文化会館(梨花ホール) 「童謡・唱歌」 岡野貞一記念合唱団 (9)全国結核予防婦人団体連絡協議会懇談会 16:50 ∼ 17:40 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鳳凰) (10)大会決議・宣言起草委員会 場 所:とりぎん文化会館(第3会議室)16:45 ∼ 17:45 (11)大会歓迎レセプション 18:30 ∼ 20:00 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間) 【第2日】3月19日(金) 大会式典 場 所:とりぎん文化会館(梨花ホール)10:00 ∼ 12:30 式次第 (1)開会のことば 財団法人結核予防会鳥取県支部長 岡本 公男 (2)大会運営委員長あいさつ 鳥取県知事 平井 伸治 (3)結核予防会総裁おことば 財団法人結核予防会総裁 (4)結核予防会会長あいさつ 財団法人結核予防会会長 青木 正和 (5)秩父宮妃記念結核予防功労賞第13回受賞者表彰 (6)来賓祝辞 厚生労働大臣 社団法人日本医師会会長 鳥取県議会議長 鳥取市長 社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会会長 パネル展示 (とりぎん文化会館 フリースペース) 世界の結核と国際協力コーナー,結核を知るコーナー (7)議 事 ・議長および副議長選出 ・全国支部長会議概要および研鑚集会報告 ・決議および宣言 ・次期開催地について (8)特別講演 (11:40 ∼ 12:30) 「人類と感染症 ∼新型インフルエンザを中心として∼」 演 者:WHO執行理事 日本政府インフルエンザ対策専門家諮問委員会委員長 自治医科大学 教授 財団法人結核予防会 顧問 尾身 茂 (9)閉 会 支部長午餐会 13:05 ∼ 14:00 場 所:ホテルニューオータニ鳥取(鶴の間・東) Message 第61回結核予防 全国大会を迎えて 鳥取県知事 平井 伸治(ひらい しんじ) 第61回結核予防全国大会が平成22年3月18日,19 日の両日,結核予防会総裁秋篠宮妃殿下の御臨席の 下,鳥取県で盛大に開催されることとなりました。 地元として誠に光栄であり,全国各地からお集まり いただきます皆様を,心から歓迎申し上げたいと存 じます。 あおや さて,本県は弥生時代の遺跡の宝庫ですが, 「青谷 かみじち 上寺地遺跡」からは弥生人の「脊椎カリエス」の骨が 発掘され,日本最古の結核症例として注目を集めま した。日本人が古代から結核と闘ってきた歴史の証 しであり,医学の発達した今日もなおその闘いは続 いています。青谷から程近い会場で,予防など結核 対策について誓いを新たにする全国大会は大変意義 深いものとなりましょう。 不治の病と恐れられていた結核は,医学の進歩や 公衆衛生対策の向上により,現在では完治可能な病 気となりました。しかしながら,我が国においても 4人に1人が感染しているといわれるなど,結核は 決して過去の病気ではなく,現在も重要な感染症で あることに変わりありません。特に,高齢結核患者 やグローバル化の進展に伴う外国人患者の増加,大 都市での患者集中,薬剤耐性結核菌の出現など,結 核を取り巻く状況は複雑化しており,地域特性に配 慮したきめ細かな対策が必要となってきております。 今大会は「ストップ結核・とっとり大会」として開 催することにいたしました。結核対策の現状と課題 について,活発な発表や討論を通じて1人でも多く の方に認識していただき,結核のない社会に向けて, 鳥取県から広く全国そして世界に,力強い運動の輪 を広げていくことができれば幸いです。 結びに,第61回結核予防全国大会の開催に当たり 御支援,御協力いただいた皆様に厚くお礼申し上げ ますとともに,本大会が大きな成果を収めますこと を心から祈念申し上げます。 ■メッセージ ■第31回(平成21年度)結核予防会事務職員セミナー参加報告 Contents 第61回結核予防全国大会を迎えて 平井伸治……1 体験を財産に ●第61回結核予防全国大会支部長会議 ……2 ●第61回結核予防全国大会研鑽集会 小林典子……3 ●秩父宮妃記念結核予防功労賞第13回受賞者 ……4 イノベーションで結核対策を加速しよう! ○ハイチ震災者支援について ■結核予防会支部紹介の頁 愛媛県支部 ■結核予防会宮城県支部と国際交流 ……10 加藤誠也……11 田中慶司……26 「顧客満足度と精度管理の向上を目指して」 ……27 ■「連載企画」∼結核に縁(ゆかり)の地歴訪∼ 第2回「大分県竹田市」 ―結核で夭逝した瀧廉太郎の足跡を訪ねて― 竹下隆夫……28 ■ワクチンシリーズ 6)BCGワクチン ……24 ■ストップ結核パートナーシップ日本だより№10 鳥取県東部総合事務所福祉保健局(鳥取保健所)におけるDO TSの現状と課題 ○馬渕伊津美 花田幸子 田中洋子……8 辻本貴則……23 ■世界結核デーテーマ解説 ■シリーズDOTS ■結核活動性分類の改正 佐々木浩孝……22 結核予防会職員としてさらなる意識改革を ■結核予防全国大会 戸井田一郎……14 ■シリーズ 新しくなった結核研究所(6) ■平成22年度厚生労働省予算案 (結核感染症課・生活習慣病対策室) ……31 ▽予防会だより ……35 優先的プロジェクト(4): 「疫学調査技術支援プロジェクト」−結核の罹患状況を明らか にする方法論と応用− 山田 紀男……16 ○切手にみる結核 15.さまざまなキャンペーンの切手たち ■結核対策指導者養成研修卒業生による全国会議報告 星野斉之……18 ■乳がん検診の受診率向上へ向けた取り組み 〔表 紙〕第61回結核予防全国大会チラシより 〔カット〕佐藤奈津江 ―平成22年度マンモグラフィ講習会開催案内― 星野 豊……20 ■平成21年度胸部画像精度管理研究会に参加して 入江 肇……21 3/2010 複十字 No.332 1 第61回結核予防全国大会 支部長会議 平成22年3月18日(木曜日) 10:00∼11:30,ホテルニューオータニ鳥取 鶴の間(東)において,標記 会議が開催されます。全国の支部長の皆様にお集まりいただき,本大会で検討される様々な議題(結核やその他の 事業)について話し合われます。 あいさつ 財団法人結核予防会理事長 長田 功 財団法人結核予防会鳥取県支部長 岡本 公男 厚生労働省健康局結核感染症課長 福島 靖正 財団法人結核予防会鳥取県支部長 岡本 公男 議長選出 協 議 結核問題と本会事業 1)講演 「我が国の結核対策の現状について」 厚生労働省健康局結核感染症課長 福島 靖正 2)講演 「公益法人制度改革への対応について」 財団法人結核予防会総務部長 竹下 隆夫 3)講演 「結核低まん延国時代に備えて」 財団法人結核予防会結核研究所長 石川 信克 4)講演 「COPD共同研究事業について」 財団法人結核予防会複十字病院長 工藤 翔二 5)講演 「結核予防会における特定健診・保健指導の今後の進め方」 財団法人結核予防会第一健康相談所長 岡山 明 その他 今回の支部長会議は,議長を全国大会の開催県である鳥取県支部岡本支部長にお願いして進められます。 まず,厚生労働省結核感染症課福島課長より,「我が国の結核対策の現状について」と題し,日本の結核対策に ついてお話いただきます。続いて,本会の4つの基本方針である,「結核」「国際協力」「呼吸器疾患」「生活習 慣病」,および結核予防会本部でも昨年12月に認定申請を行った,公益法人制度について,結核予防会本部およ び各事業所長から,上記テーマを掲げて,解説をしていきます。 (文責:編集部) 2 3/2010 複十字 No.332 第61回結核予防全国大会 (鳥取) 研鑽集会 結核研究所 対策支援部長 小林 典子 2008年の1年間に約2万5千人が新しく結核を発症し ④櫃本真聿氏(愛媛大学医学部附属病院 医療福祉支 ました。そのうちの約半分を高齢者が占めています。 援センター長)には,「結核の医療提供体制」と題し 高齢の結核患者の多くは若いころに感染したと考え て,「指導者養成研修修了生による全国会議」での議 られ,半数以上が既に結核に感染しているこの世代か 論を踏まえ,低まん延状況に向けた我が国の結核医療 らは今後も発病者が出続けるでしょう。一方,20∼30 提供体制について,それぞれご発表をいただきます。 歳からの発症も全体の16%あり,若い世代の結核も無 また,全体討議では特別発言として,厚生労働省健康 視できません。昨年4月の若い芸能人の結核発症は, 局結核感染症課長福島靖正氏に助言をいただくことに マスコミに取り上げられ「まだある結核」を世に知ら なっています。 せる結果になりました。また,ストップ結核大使を務 2.講 演「青谷上寺地遺跡から発見された日本最古 めるビートたけしさんが出演するテレビやポスターは あ お や か み じ ち い せ き の結核症例」 大いに世間の関心を集めています。当所の結核研修に 鳥取県の青谷上寺地遺跡は弥生時代に栄えた遺跡で 参加した方々から「久々に県議会で結核の質問がでま す。出土した遺物の中に,日本で最も古い結核症例を した」「テレビをみて受診した患者がいますよ」など 示す骨があります。今回,鳥取大学医学部長井上貴央 の情報をいただくことが多くなりました。 先生にその症例をご紹介いただくことになりました。 このような中で行われる今回の研鑽集会では,さら 貴重なお話が聞けるものと大変楽しみにしています。 に皆様の結核への関心を高める内容にしようと協議を この機会に,青谷上寺地遺跡展示館を訪ね,弥生時代 重ね,シンポジウム・講演・人形劇の3本の柱をたて の人々の暮らしと,さまざまな技術に触れてみてはい ることにいたしました。 かがでしょう。 1.シンポジウム「どうなる!?これからの結核医療」 3.人形劇 「鈴木家結核顛末記」 平成17年の結核予防法改正以降,結核対策は様々な 一家の主が結核を発病して入院,その間に孫が誕 変化を遂げてきました。労働安全衛生法の下で事業所 生・・・エ−ッ! どうする? 突然の出来事に戸惑う 健診が見直され,今後,低まん延状況に向けての医療 鈴木家の顛末を人形たちが演じます。昨年の全国大会 供給体制の検討も予定されています。そこで,患者発 の人形劇をぜひ地元でと,熱いコールをいただき実現 見・治療・患者支援の立場から4人の方々にご発言い しました。人形を操っていただくのは,鳥取県健康を ただき,これからの結核医療の方向性・あり方につい 守る婦人の会大山町中山支部の皆さん方です。脚本 て議論を深めたいと思います。座長は,加藤誠也結核 は,結核研究所対策支援部星野斉之企画・医学科長が 予防会結核研究所副所長が務めます。 新しく書き下ろしました。楽しく学んでいただける内 ①岡山明氏(結核予防会第一健康相談所長)には, 容となっています。人形たちと婦人会の皆様の熱演を 「今後の結核スクリーニング」と題して,「結核予防 ご期待ください。 会における健診の進め方を検討する会議」を踏まえ て,これからの健診のあり方について, 最後に結核予防会結核研究所石川信克所長がまとめ ②杉本勇二氏(鳥取県立中央病院内科部長)には, をいたします。盛りだくさんの研鑽集会になります 「治療現場からの報告」と題して,高齢者結核および が,結核の知識・技術を楽しく学ぶ機会になれば幸い 結核治療の現状について, です。また,結核予防婦人会をはじめ,保健所,医療 ③岡田桂子氏(鳥取県西部総合事務所福祉保健局健康 機関,教育機関等結核に関わる分野から参加される皆 支援課感染症・疾病対策係保健師)には,「DOTS 様方の力が結集され,結核制圧への新たなうねりが生 の取り組み・地域連携」と題して,保健所のDOTS事 まれる集会になることを期待しております。 業および患者支援について, 3/2010 複十字 No.332 3 秩父宮妃記念結核予防功労賞第13回受賞者 秩父宮妃記念結核予防功労賞は,平成7年8月25日逝去されました秩父宮妃殿下のご遺言に基づき,財団法 人結核予防会に賜りましたご遺贈金を原資として,結核予防に大きな功績のあった方々,あるいは団体を顕 彰し,もって結核予防の一層の推進を図るとともに,半世紀以上にわたり結核予防会総裁をつとめられた妃 殿下のご遺志にお応えし,その御名を永く留めようとするものです。 本会では昭和24年の第1回から第48回まで,結核予防全国大会式典の際に165人,24団体を「結核予防功労 者」として表彰してまいりました。この秩父宮妃記念結核予防功労賞は,この結核予防功労者の制度をさら に発展させ,スケールを大きくしたもので,賞の種類も増やし,授賞対象も世界にまで広げております。 本賞は,毎年,結核予防全国大会式典の席上で,総裁秋篠宮妃殿下から表彰していただく予定です。ただ し結核予防世界賞(今年度,選考中)については,国際結核肺疾患予防連合(IUATLD:世界各国の結核予 防会の連合組織)の世界大会が開催される年には,本賞を世界にアピールする意味をこめて,その席上,総 裁の名代として本会会長から表彰することとしております。 今回の受賞者は,国際協力功労賞1団体,事業功労賞1団体9名,保健看護功労賞3名,の計12名2団体で,大 会式典の中で総裁秋篠宮妃殿下より表彰が行われます。 国際協力功労賞 事業功労賞(団体) けっかくよぼうかいみやぎけんしぶ とっとりけんけんこうをまもるふじんのかい 結核予防会宮城県支部 鳥取県健康を守る婦人の会 結核予防会宮城県支部支部長 鳥取県健康を守る婦人の会会長 たなか もとなお 田中 元直 医師 いかつ みちこ 井勝 道子 団体役員 鳥取県鳥取市 宮城県支部は,中国で開催された国際学会で東北大 学教授と中国瀋陽市の医師が会談した際に交流のこと が話題となり,教授が当支部の理事であったことから 宮城県支部と瀋陽市との交流が検討され,その結果相 互に情報を交換し,日中両国の結核及び胸部疾病の予 防と診療の向上に貢献することを目的とし,1991年 (平成3年)中国瀋陽市防癆協会・瀋陽市胸科医院から 医学友好交流団を迎え,『第1回結核予防及び胸部疾 病日中友好交流会議』を開催した。その後,毎年日本 と中国の地で交互に交流会議と胸部疾病関連病院・施 設等を訪問研修し,両国の結核・胸部疾病に関しての 多くの研究発表と討論を行ってきた。 そのなかで日本における結核の集団検診制度に強い 興味を持ち,中国でもぜひ実施したいということに なったので,1993年(平成5年)に宮城県支部からX線 自動車1台を寄贈し瀋陽市の学生の集団検診に活用さ れ多くの患者発見に貢献した。 2003年(平成7年)の第12回目からは長春市防癆協 会・長春市伝染病医院が加わって交流の輪が広がり, 今年度は宮城県側から瀋陽市及び長春市を訪問し,相 互の最新医学情報を発表するなど友好交流に努めた。 感染症に国境はなく共通の研究課題を持って取り組 み,これまで18回の開催を数え,これまで参加した多 くの医学友好交流団員は仙台市での研修はもとより, 結核予防会本部・結核研究所でも研修を重ね,帰国後 はその研鑽したことを日常業務に生かし,第一線で活 躍している。 4 3/2010 複十字 No.332 当会は,昭和60年4月に結核予防の普及・啓発,住 民検診への協力等公衆衛生の向上を図り,健康で明る い社会の実現を目指すことを目的に鳥取県食生活改善 推進員連絡協議会を母体として結成された。毎年,全 体研修会を開催し結核予防全国大会,結核予防関係婦 人団体中央講習会等の伝達講習や各種がん検診及び特 定健康診査・特定保健指導の生活習慣病予防等につい て研修を行い地域住民の検診受診率向上に寄与してい る。平成13年度から全国一斉複十字シール運動キャン ペーンを県内3ケ所において支部とともに実施し,結 核は現代の病気,結核対策の大切さや県内の状況を説 明し,街頭募金の協力について呼びかけを行っている。 また,知事表敬も行いキャンペーンには知事も参加し ていただくなど県の協力を得て活発に啓発活動を実施 している。 事業功労賞(個人) たかはし ひさえ 髙橋 寿枝 団体役員 北海道北広島市 昭和41年,結核の撲滅・予防を目的として設立され た札幌市健康をまもる婦人のつどいに,北海道支部の 職務の傍ら会員として参加し,結核予防思想の普及・ 啓発に力を注ぐとともに,街頭募金活動など複十字 シール運動に積極的に取り組んだ。 全道組織である北海道健康をまもる地域団体連合会 には,昭和52年の設立当時から運営に関わり,昭和57 年には理事に就任,また昭和61年からは北海道家族の 健康をまもる講習会に事務局として参加し,広く道民 の結核予防思想の普及・啓発,生活習慣病予防に多大 な貢献をした。さらに,平成4年には結核予防会本 部・結核研究所のご協力により他の会員と共にタイ王 国を訪問,農村婦人との交流等を通してタイの結核事 情を学んだ。 看護科長を最後に支部勇退後は,会の運営に尽力し, また縁の下の力持ちとして会長,副会長を補佐し,結 核予防に関わる婦人団体会員の良き手本となっている。 あきた きみ 秋田 喜美 医師 群馬県高崎市 元群馬県衛生環境部参事 結核予防法制定前の昭和26年に群馬県に入職した当 時から結核医療・結核対策に取り組み,現在県内で実 施している保健システムの基盤づくりに力を注いだ。 また,昭和37年からは安中保健所長として安中公害訴 訟事件(S12∼S61)の原因解明に尽力し,原因物質で あるとされたカドミウムとの因果関係の解明に中心的 役割を果たした。県退職後昭和62年からは22年間にわ たり,群馬県支部の結核検診読影医として活躍し,県 内結核検診に携わる関係者に必要な助言や指導を行い, 臨床研修医の指導育成にも熱心に取り組んだ。 現在は後進に道を譲られているが,これまでの結核 対策の取り組みはまさに「群馬県の結核対策」の歴史 そのものといっても過言ではなく,その功績は多大な ものがある。 対策検討委員会会長に就任し,児童生徒の結核対策の 要として現在に至るまでその重責を担っている。さら に,越谷市医師会においては肺癌・結核検診委員会の 委員長を歴任し,平成19年度から新たに始まった肺が ん・結核健診(施設検診)の読影担当専門医として, 医師会員の読影指導など結核検診に対する精度管理の 向上に努めるとともに,後進の育成にも尽力しており, その功績は顕著である。 まつもと 松本 博雄 医師 千葉県千葉市 財団法人ちば県民保健予防 財団元理事/医療法人社団 緑佑会梅香苑施設長 昭和34年千葉大学医学部卒業後,同大学医学部第一 外科,長野県立須坂病院外科,千葉大学肺がん研究施 設を経て,昭和45年から平成11年まで県立鶴舞病院 (現千葉県循環器病センター)に勤務された。昭和45 年7月から翌46年9月までベルリン市立胸部疾患病院に 留学,帰国後は心臓外科チームに参加し循環器疾患及 び呼吸器疾患の診療に従事された。昭和63年以降は結 核病棟にて結核患者の治療や生活指導等にも尽力され た。また県立鶴舞看護専門学校の校長を兼任され,看 護師の育成にも熱心に取り組まれた。平成11年より (財)千葉県予防衛生協会(現ちば県民保健予防財 団)理事兼港湾診療所長として,県内事業者の定期健 診にて肺結核・肺がん等呼吸器疾患の診断や成人病予 防に従事された。 昭和63年から現在までの21年間,千葉県茂原保健所 (現長生健康福祉センター)結核診査協議会委員及び 委員長として地域結核医療について指導している。 とみどころ まつむら きみと 松村 公人 ひろお ふみこ 冨所 文子 保健師 新潟県燕市 医師 埼玉県越谷市 なつクリニック院長 昭和42年3月千葉大学医学部を卒業し,千葉大学医 学部付属病院インターン,千葉県がんセンター呼吸器 科医長を経て,平成4年11月より,なつクリニックを 開設し現在に至る。 呼吸器の専門医として,平成7年11月より埼玉県越 谷保健所結核診査協議会委員に就任し,平成11年9月 より当該診査協議会委員長として現在まで14年間に渡 り診査会業務の中心的医師として職務を遂行している。 また,平成15年4月に発足した越谷市立小中学校結核 昭和32年4月旧分水町役場(現在は燕市)に保健師 として採用され,当初から結核感染症対策,結核患者 の訪問指導に尽力された。DOTSについても訪問時に 確実に服薬確認をして,治療の完遂を支援した。訪問 指導だけでなく一般住民の結核検診・BCG接種にも力 を注ぎ,受診率・接種率の向上に努め,定期検診未受 診者には個別通知により受診勧奨を行い,長期未受診 者等の解消に努めた。その結果,分水町は在職中の昭 和54年度及び,退職後の平成10年度に結核対策優良市 町村表彰を受賞している。 3/2010 複十字 No.332 5 分水町は,昭和59年度に財団法人結核予防会が WHOから委託を受けて実施している。開発途上国医 師の国際研修の現地視察を受け入れ,氏は視察団に結 核検診に基本健康診査を併せた総合健診の状況を説明 した。以降も視察団の日程と健診日が合った年は分水 町が視察場所に選ばれ,退職まで研修団を受け入れて 開発途上国の結核対策に多大な貢献を果たした。 ながい よしゆき 永井 好之 医師 岐阜県各務原市 永井医院院長 高齢者等の結核検診で早期発見に寄与するなど結核対 策へ多大な貢献をされた。 ながお けいいち 長尾 啓一 医師 千葉県千葉市 千葉大学総合安全衛生管理 機構 教授・機構長 昭和47年に千葉大学医学部を卒業,昭和50年より千 葉大学呼吸器内科に勤務,結核をはじめ呼吸器疾患の 研究と臨床に取り組まれ,平成5年より千葉大学保健 管理センター教授・所長,平成16年より現職。その間, 地域,全国,国外にわたり結核予防に貢献された。昭 昭和26年に名古屋大学医学部を卒業後,国立名古屋 病院,名古屋大学医学部附属病院,小松島赤十字病院, 安城市厚生病院等で,主に内科診療に尽力する。結核 が国民病と言われていたこの時期は,多くの結核罹患 者の診療に従事する。昭和35年からは医院を開設し, 現在まで延べ58年余りの永きにわたり地域医療に尽力 する。医院開設後は,各務原市休日急病診療所の嘱託 医として地域の救急医療を支える他,各務原市医師会 の理事や監事を務める等多方面で活躍している。 学校や施設等の嘱託医を勤めるだけでなく,平成12 年からは岐阜県岐阜保健所の嘱託医として,その適切 な助言や指導は結核行政の貴重な指針となっている。 このような地域医療への貢献や医師会活動,行政機関 への協力などの幅広く献身的な活動は,地域の保健医 療の向上に大きく貢献している。 和50年より住民検診の胸部X線読影に従事し,千葉県 胸部読影センターの設立に尽力され,平成6年よりX 線読影講習会を開き,読影医の育成を図っている。平 成14年から千葉市結核(現感染症)診査協議会委員と して,適正な結核診査に寄与されている。胸部CT検 診についても研究し,結核を含む検診の精度向上に尽 力されている。平成元年以降日本結核病学会評議員, 編集担当理事,総務担当理事を務め,結核の研究,診 療,予防について側面から支援をされている。平成12 年より国際協力事業団「カンボジアのエイズ・結核対 策プロジェクト」の短期専門家として国際的にも貢献 されてきた。 あかまつ あきら 赤松 曉 なかち しずえ 名嘉地 静枝 保健師 沖縄県豊見城市 診療放射線技師 兵庫県加古川市 元兵庫県健康財団 昭和40年5月から平成20年3月まで結核予防会兵庫県 支部に在籍し,兵庫県の北部但馬地方から南は淡路島 6 昭和41年八重山保健所大富駐在を皮切りに離島僻地 までの地域住民検診を行うとともに学校教職員・学童 等で約10年間,駐在保健師として結核在宅患者の治療 の結核検診,事業所の結核検診に従事した。昭和47年 や患者家族の二次感染予防指導をはじめ住民の結核検 から昭和53年までの7年間は,神戸市内で街頭の無料 診,家族検診等献身的な実践で受診率向上等結核対策 結核検診を兵庫県放射線技師会と共同で実施し,結核 に尽力した。保健所所内においては結核患者の中央管 根絶の普及活動を通じて県民の健康を守ってきた。昭 理に携わり,結核患者マニュアルを作成,ビジブル 和58年から平成15年の間,検診の胸部X線写真の精度 カードの活用を工夫し,適正な薬剤管理に役立てたり, 向上に向けた講習会を毎年1回開催し,その講習会で リファンプシン等短期療法事業推進に力を注ぐと共に 講師を務めるなど県下の検診施設全般の技術向上に努 各地区駐在保健師と連携,きめ細かな患者管理に努め めた。平成7年1月,阪神,淡路大震災の時には,避難 治療効果を挙げた。昭和42年石垣駐在勤務においては, 所無料巡回健康診断に従事し,避難住民の健康を守る 結核予防婦人会を結成,結核集団検診や乳幼児健診の ために長田区を中心に総数198名の巡回X線撮影を行 受診率向上を図り,その後名護市と連携キャンペーン い,被災者の健康管理に貢献した。昭和50年より,結 協議会を発足,結核撲滅大キャンペーンを展開,普 核予防会胸部検診対策委員会精度管理部会の一員とし 及・啓発に大きく寄与した。結核サーベイランス事業 て,結核はもちろん肺がん検診の精度向上に向けた事 推進,学校検診の効率化,BCG接種の技術指導,施設 業,結核予防会全国都道府県支部で撮影された胸部画 3/2010 複十字 No.332 像の評価を毎年実施し全国の結核検診,肺がん検診の 昭和60年に在宅酸素療法が保険適応となるにあたり, 精度向上に努め,現在も継続している。特に近畿地方 酸素器具取り扱い手順等の療養指導パンフレット作成 において,近畿集団検診連絡協議会のフィルム評価を に取り組んだ。国立病院機構刀根山病院では,結核患 長年行い,近畿の検診機関の精度向上に取り組んでい 者の看護と療養指導はもとより,結核患者のQOL向上 る。こうした診療放射線技師としての活躍の一方,社 と医療費節減のため,退院基準の見直しによる入院日 団法人兵庫県放射線技師会理事,監事の要職を歴任し, 現在も継続して厚生委員を努めるなど,兵庫県におけ る診療放射線技師の資質を高め,同会の社会活動を通 じて県民の医療に多大なる貢献を現在も続けている。 保健看護功労賞 おのでら 小野寺 みどり 保健師 北海道檜山郡江差町 北海道檜山保健福祉事務 所保健推進係長 小野寺氏は,所管する奥尻町が平成5年に北海道南 西沖地震で被災した時に,北海道江差保健所の保健師 として,避難所の管理や被災者の健康管理を目的とし た住民健診,健康相談の実施に従事するとともに,復 興へ向け関係者と連携してメンタルヘルスの支援を 数短縮が図られていることに対応した。治療完遂に最 低6カ月に亘る結核薬内服が必要で,退院後のDOTS も重要とされているため,氏は肺結核クリニカルパス の作成や患者向け「療養のしおり」「退院のしおり」 を作成した。また,患者・保健師を交えたDOTSカン ファレンスの導入を行うなど,熱意をもって取り組み, 入院日数短縮と治療完遂率の向上に尽力している。ま た,日本結核病学会保健看護委員会委員の委嘱,近畿 地区結核研修会の企画・開催,日本結核病学会の座長 を務めるとともに多くの発表を行う等,結核医療の推 進・啓発にも尽力している。 くどう けいこ 工藤 恵子 保健師 東京都東村山市 武蔵野大学看護学部准教授 行った。平成11年には,管内の小・中学生のツベルク リン反応検査陽転率が全道より低いことをうけ,幼児 の針跡数調査の結果をもとに正確なBCG接種の手技向 上のため,結核予防会の協力を得て,各地域にて研修 会を継続開催し,その後の効果を確認した。平成12年 からは,老人福祉施設で毎年結核患者の新発生がみら れたため,高齢者や入院患者等のハイリスク層をケア する医療従事者・福祉施設職員等に対し,施設に出向 き,結核の知識や予防についての健康教育を実施した。 平成14年には,南檜山地域看護管理者連携会議におい て,医療機関・介護福祉施設における感染症対策が未 整備との共通課題が出されたため,職員への研修や感 染症対策マニュアルの作成について協議を行った結果, 各機関で感染症対策の推進が図られた。 昭和63年,結核登録患者の多い東京都清瀬保健相談 所に配属されて以来,多数の結核患者の家庭訪問を行 い,地区活動の一環として結核対策に取り組んできた。 平成17年から感染症対策係長として勤務した多摩小平 保健所では,日本版21世紀型DOTS戦略を元に,保健 所におけるDOTSカンファレンスやコホート検討会, 保健所への来所DOTS,薬局DOTS等,地域における 結核患者支援体制の強化を図った。医療政策部医療安 全課で医療監視員として勤務した折には,院内感染予 防対策マニュアルの作成やチェックリストによる新方 式の立入検査に携わり,東京都職員表彰(成績顕著分 野)を受賞した。 平成19年からは武蔵野大学看護学部の准教授として 結核対策に関する教育を担うとともに,結核患者に対 よしだ やよい 吉田 ヤヨイ 看護師 大阪府河内長野市 する保健師の服薬支援,地域の医療連携,結核患者の プライマリヘルスケア等をテーマに研究に取り組んで いる。また,学識経験者として東京都結核医療体制検 討会,東京都多摩府中保健所課題別地域保健利用推進 吉田氏は,34年の永きに亘り,国立病院・国立病院 機構において看護業務の大半を結核の患者看護並びに プラン検討委員会にメンバーとして関わるなど,現場 を熟知した研究者として一層の活躍が期待されている。 予防活動に尽力した。国立療養所近畿中央病院では, 結核病棟の看護師長として,肺結核の後遺症による低 肺機能で在宅酸素療法が必要な患者及び家族に対して 3/2010 複十字 No.332 7 Use DOTS More Widely 鳥取県東部総合事務所福祉保健局 (鳥取保健所) におけるDOTSの現状と課題 鳥取県東部総合事務所福祉保健局(鳥取保健所) 健康支援課 医薬・疾病対策班 ○馬渕伊津美 花田幸子 田中洋子 ○概 要 ○ 地域で取り組む結核患者服薬支援事業の取組経緯 鳥取県の東部に位置し,鳥取市,岩美町,八頭町, 平成16年度から「服薬を最後まで見守ることによ 若桜町,智頭町の1市4町を管轄しており,北は日本 り,結核の治療の成功率を向上させ,慢性排菌患者の 海に面し砂丘と海岸美 発生を防ぐ」ことを目的に開始され,現在は県内全保 に恵まれ,南は急峻な 健所で取組をすすめている。 中国山地を控えた,豊 ○結核患者服薬支援事業の概要 かな自然や歴史・文化 結核患者服薬支援事業の概要 に恵まれた地域である。 結核患者の届出・登録 (写真は砂像) 地域DOTS検討会 医療機関(主治医連絡) <情報交換> 院内DOTSカンファレンス への参加 <構成員>保健所長 、課長、 結核担当者 検討内容 ・服薬継続のリスク評価 ・服薬支援計画作成 ・服薬支援の進行管理 支援内容の変更等、急な検討が必要な場合 臨時の検討会を開催する 必要に応じ、関係機関の服薬支援へ協力依頼 服薬支援の実施 <支援者>保健師、訪問看護師(福祉機関職員) 調剤薬局薬剤師など 服 薬 支 援 者 研 修 会 管内人口は約24万人で,65歳以上の人口が2 新登録患者すべてに対して,担当保健師が治療中断 4%を占めている。 平成20年の結核発生状況をみると新登録結核患者 リスク評価表を用い,治療中断に対する評価を点数化 数は30人で,うち喀痰塗抹陽性者数は14人,罹患 し,所内で服薬支援の具体的方法を検討している。 率は12.4である。 また,手作りの健康ノートを作成し,毎日の服薬 チェックと体調管理ができるよう長期服薬継続に対す 平成20年新登録患者の年齢構成 0-19 20-39 40-59 60-69 70以上 る支援を行っている。 平成19年度には,独居で認知症もあり,退院後の 東部管内(30人) 服薬継続に不安のあったケースに対して,保健所保健 鳥取県(82人) 師の訪問だけでなく,訪問看護師の協力を得ながら2 全国(24,760人) 100% 回/週の訪問を実施した。訪問看護師及び保健所保健 新登録患者を年齢構成割合で見ると,70歳以上の 師の見守りにより,本人の治療意欲が持続し6ヶ月間 割合が56.7%と半数以上を占めている。 の服薬継続が実施できた。 0% 8 1 訪問等服薬支援について 3/2010 複十字 No.332 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 平成20年度までは管内に2カ所ある結核病床を有 2 服薬支援者研修会について する病院のうち,A病院のみの実施であった退院DO 平成19年度は訪問看護ステーション看護師や老人 TSカンファレンスが,今年度からはB病院でも開催 福祉施設職員に服薬支援者としての理解と協力を求め ができるようになった。それにより退院後の地域DO るため研修会を実施した。 平成21年度は,結核治 TSの方針について,患者及び家族を中心とした関係 療を行う患者にとって身近な存在である薬局薬剤師の 者での情報の共有と患者にあった支援のポイントを検 理解と協力を求めることは,今後の地域DOTSにお 討できるようになった。診断の不信感から治療拒否で いてとても重要であると考え,鳥取県薬剤師会東部支 あった事例を紹介する。 部の協力のもと研修会を開催した。 ○ 今後の課題 <事例紹介> 結核患者の発生状況は70歳以上の高齢者に多い状 78歳女性:結核性胸膜炎の診断で治療開始 況にあり,介護サービスの利用をしているケースも多数 となる。検査で結核菌が出ていないという ある。また,これらの高齢者は複数の疾患を有しており, ことから,主治医に対して不信感をもち, 抗結核薬だけでなく,他疾患の治療薬も併せて内服して 内服量を自分の判断で決めて,飲んだり飲 いる場合がほとんどである。 また,20∼30代の患者 まなかったりを繰り返していた。 の発生も14.6%あり,就業している患者に対し,保 状況:治療開始当初から服薬について拒否 健所保健師だけでは支援が難しいケースもある。 的。保健師の訪問も拒否され対応が難しい 今後も継続して訪問看護ステーション看護師や老人福 状況であった。 祉施設職員及び地域の中での服薬支援者を対象とした 家族:夫と子どもの3人暮らし。 支援:治療途中に担当のケアマネジャーか ら相談の連絡を受け,保健所保健師が中心 となり,関係者(主治医・ケアマネ ジャー・訪問看護師)との連絡調整を行っ 研修会を開催するとともに,新たな地域DOTSの取組 として個々の事例をとおして,薬局DOTSが推進でき るよう,薬剤師会との連携をすすめていけるよう検討し ていきたい。 た。確実な内服の必要性を説明し,また訪 問看護師が1回分ずつ紙コップに分けて内 服しやすいよう支援することにより,確実 な服薬につながり6ヶ月間の服薬継続が実施 できた。 3/2010 複十字 No.332 9 この度, 「第13回秩父宮妃記念結核予防功労賞(国際協力功労賞)」を受賞される,結核予防会宮城県支部では, これまで中国瀋陽市との間で交互に国際交流を目的とした会議を開催し,胸部疾患の諸問題の解決に取り組ん でこられました。本年も10月に開催予定であり今回で第19回を数えます。下記にこれまでの経緯を掲載いたし ます。 (文責:編集部) 結核予防会宮城県支部と国際交流 ○目 的 び遼寧省防癆協会,防冶所との交流に始まり,2003年 この会議については,1991年(平成3年)11月より毎 (平成15年)の第12回から,中国吉林省長春市感染症セ 年交互に中国瀋陽市と宮城県仙台市において相互に情 ンター,結核医院,防癆協会が加わり,更に中国の結 報を交換し,日中両国の結核を中心とした胸部疾患の 核事情を知ることが出来るようになった。 予防と診療の向上に役立たせるための医学交流とし 1993年(平成5年)に,結核予防会宮城県支部で瀋陽 て,結核予防会宮城県支部と瀋陽市防癆協会及び瀋陽 市に寄贈したX線検診車は,8年間使用され,その状況 市胸科医院を中心に「結核予防及び胸部疾病日中友好 が報告された。もともと日本のように胸部の集団検診 交流会議」 (以下「交流会議」という)を開催し,今日ま 方式等ないので,どんな使い方をするのか非常に興味 でに多くの成果をあげてきた。 ある事業なので関心を持っていたが,その使用方法は 瀋陽市の大学生を中心に検診車を有効活用され,その 10 ○交流経緯 実績報告から,実働7年間で受診者数14万4,606人,発 この交流会議は,1991年東北大学名誉教授新津泰孝 見率は141.1 / 10万と驚くほどの数値であった。 医師(財団法人結核予防会宮城県支部理事)が中国の北 また,2000年(平成12年)瀋陽市で開催の第10回交流 京で胸部疾病の学会に出席した際,中国での旧友の曲 会議では,中国側から世界銀行からの借款や日本政府 声華医師と偶然巡り合ったのがきっかけで学術交流の からの援助により,結核対策の成功とBCG接種事業の 発案があり,検討の結果実施することになり,1991年 成功が報告されており,これらの発表事例は瀋陽市胸 に第1回目を開催し,今日まで脈々と続き,今年で第 科医院の内部資料として発行された防癆通信に掲載さ 18回目を迎える。 れ,多くの医療従事者に紹介された。 1991年11月25日 か ら12月5日 ま で,日 中 結 核 予 防・ 我が国の結核は今後更に減少を辿り,結核予防会の 胸部疾患に関する医学友好交流のため,瀋陽市結核病 役割も,このような状況の変化に応じながら,事業の 防治所関係の医師団(団長宋若男中国防癆協会瀋陽分 転換を図らねばならない。一方,世界の結核問題は, 会理事長・瀋陽市衛生事業管理局副局長)始め4名の医 ますます深刻化している状況であり,貧富の差の拡 師を宮城県仙台市に招聘し,第1回交流会議を開催し 大,治安の悪化等で,結核は増加につながる可能性を た。翌年中国側からの招聘を受け1992年(平成4年)5月 秘めており,グローバル化が急速に進む世界にあっ 5日から5月14日の日程で第2回交流会議(団長新津泰孝 て,日本だけ結核が減少すれば良い,というのは成り 他4名)を瀋陽市で開催した。 立たない実状である。海外からの人の流入の増加によ その後,毎年中国瀋陽市と仙台市の地で交互に交流 り,海外の結核問題を対岸の火事と眺めているわけに 会議と胸部疾病関連病院,施設等を研修訪問し,両国 はいかなく,結核が蔓延している国々からやってくる の結核病胸部疾病に関しての今日まで多くの講演発表 状況も踏まえ,世界の結核問題と取り組み続ける大き と討論を行ってきた。 な視野が必要と感じざるを得ない。 日本と中国双方の思いは,結核の学術交流を通じ 感染症は,今や中国抜きには語れない状況で,同じ て,人々を結核から守る使命と,最高水準の治療を行 医療の立場から,更なる信頼関係を築き,感染症に国 うべく手を携えて,今日まで多くの研究発表を重ねて 境はなく共通の研究課題を持って取り組む意義は大き きた。最近では,新型肺炎SARSのような,未知の病気 いのではないか。 についても意見交換をした。このことはNHK仙台放 国際交流事業は,産業界からの寄付金等により学術 送局でも大きく報道されている。 の振興に大きな役割を果たしているが,当支 部 は, 仙台での研修はもとより,結核予防会本部・結核研 シール運動による浄財の一部を充てさせて頂いて,今 究所においても,当初から一貫して,世界の結核・日 日まで日中両国の医学交流事業を18回も続けることが 本の結核事情について,これまで多くの中国の先生方 出来,中国遼寧省並びに吉林省の医療関係者の学術振 が講義を受け,帰国後はその研鑽されたことについ 興に多大なる貢献をいたしたものと自負いたしてい て,日常業務にも生かし,第一線でご活躍されている。 る。それゆえに,胸部疾病の専門領域での学術交流は, この交流の輪は,財団法人結核予防会宮城県支部 中国はもとより日本の結核予防のあり方として,各県 と,中国瀋陽市の衛生局,胸科医院,第十人民医院及 支部の事業としても広める価値があると思っている。 3/2010 複十字 No.332 結核活動性分類の改正 結核研究所副所長 加藤 活動性分類とは 誠也 核の再発のおそれが著しいと認められるものと規定さ 結核の活動性分類は感染症法53条の12に基づく保健 れているため,その期間の経過観察が必要であった。 所における患者登録,患者管理,定期報告などの基本 2008年に結核療法研究協議会が行った再発に関する 分類として用いられてきた。これまでも治療の進歩に 研究3)では2005年に治療を開始したイソニアジド,リ 伴う管理方法の変化,世界の分類の方法との整合性な ファンピシン感受性症例839例のうち3% (27/839) に再 どに対応するために改正を繰り返してきた。今回は以 発が認められ,その89% (24/27)が1年以内の再排菌で 下に示すように届出基準に潜在性結核感染症が加えら あった。また,再発症例に関する文献的な検討結果を れたこと及び治療方法の進歩及び保健所における結核 勘案してみると,年数を経てからの再発も少なくない 回復者の経過観察を実施する環境の変化等を踏まえて, が,何年も経ているということは母数が多すぎ,すべ 公衆衛生審議会感染症分科会結核部会で審議された結 て追跡するということは現実的ではないと考えられた。 果を受けて,平成22年1月28日改正が公示され,即日 潜在性感染症治療終了後の発病については,「1年 実施となり,これに伴う通知が発せられた1)。 以内が多いが,以降の発病の危険はほぼ同じであ 潜在性結核感染症 る。」との観察があり,結核症として発病した患者と 平成19年の届出基準改正2)によって新たな疾患概念 同様の経過観察が必要と考えられた4)。 である潜在性結核感染症が加わった。症状や胸部X線 これらのことから,今後は登録削除までの期間を2 所見や菌検査所見など臨床所見の異常がなくても,結 年とすることとされた。これに伴って感染症法施行規 核菌に感染していること自体が潜在的な疾患であると 則第27条の7が改正された。 いう考え方で,従来の初感染結核に加えて,過去の感 また,再発のおそれが著しいと認められる者として, 染であっても免疫抑制剤の使用のために発病リスクが 再発のあった者,受療状況が不規則であった者,薬剤 高くなると考えられる者に対してINHによる治療を行 耐性があった者,糖尿病・塵肺・人工透析患者,副腎 う場合も含まれる。 皮質ホルモン使用患者,その他免疫抑制要因を持った 潜在性結核感染症治療は上述のように症状も臨床所 者,その他保健所長が必要と認める者が通知に記載さ 見もなく,脱落が多いことが知られていることから, れた。これらについては,必要な経過観察(削除ま 服薬支援の対象にすることが望ましい。また,治療を で)の期間を明確に示すデータはないが,通常よりも 行っても発病がある。従来の初感染結核は29才以下を 長期の経過観察が望ましいと考えられる。 対象に主にツベルクリン反応による感染診断であった 「活動性不明」の期間 ために,過剰診断をしていた可能性があるが,近年広 活動性分類では登録者(患者あるいは回復者)で病 く使われるようになったQFTは特異性が高く,疑陽 状に関する診断結果が得られない者は「活動性不明」 性はほとんどないと考えられるため,治療対象者から に分類変更されるが,その期間が1年となっていた。 の発病はより目立つようになるものと推定される。 従って,治療終了後の患者が医療機関における管理か 従って,治療終了後の必要に応じて発病の有無を ら脱落した場合であっても,1年を経過しなければ チェックするための経過観察と,発病を疑わせる症状 「活動性不明」とならないため,その間対応が取られ がある場合には受診することを指導する必要がより重 ない可能性があった。 要になるものと考えられる。 保健所は感染症法53条の13に基づく精密検診(管理 治療終了後の経過観察 健診)を年1回実施するか医療機関への書面(定期病 従来,保健所では感染症法施行規則第27条の7に 状報告書)による照会で確認してきた。医療機関では よって「結核回復者」は治療終了後3年以内その他結 治療終了後の再発をチェックするための経過観察は少 3/2010 複十字 No.332 11 なくとも6ヶ月に1回以上行われる場合が多い。 で定める結核回復者は,結核医療を必要としないと認 また,結核患者の減少に伴って, X線検査や結核菌 められてから の者その他結核再発のおそれが 二年以内 検査の業務を廃止し,管理検診を委託する保健所が増 著しいと認められる者とする。 えてきた。このため,医療機関で行われる場合が増え ており,前述のように6ヶ月に1回程度行われる胸部 活動性分類 X線検査の中で年1回が管理検診として行われる例も 第1 分類の原則 多くなってきた。 活動性分類は,結核登録票に登録されている者の管 このような状況を鑑みて,「活動性不明」に分類変 理区分を示す分類であり,最新の医師の診断(肺結核 更を最近6月以内の病状に関する診断結果が得られな にあっては結核菌検査及び胸部エックス線検査に基づ い者と改正することになった。 く診断,肺外結核にあっては臨床・理学的検査に基づ 医療機関では経過観察の受診を行わない患者に対す く診断)による指示及びその診断の時期からの経過期 る働きかけは限られていることから,治療終了後の病 間に基づき次のいずれかに区分されること。 状が不明になるようなケースに対しては,保健所が家 1.活動性 庭訪問などによって必要な経過観察を積極的に確保す 結核の治療を要する者 ることが望まれる。 2.不活動性 病状の把握について 治療を要しないが経過観察を要する者 今回の活動性分類の改正に伴って,病状の把握につ 3.活動性不明 いて結核感染症課長通知が発出されている5)。 病状に関する診断結果が得られない者 病状の把握は上述のように法律に基づく管理検診に 第2 活動性分類の区分 よって行われることとなっているが,回復者にとって, 登録時の活動性分類は,第3に定める登録時の結核 管理検診を経過観察されている医療機関における胸部 症の主な罹患臓器,菌所見及び治療の既往を勘案し, X線検査とは別に保健所や委託医療機関で検査を受け 次のいずれかに区分すること。 なければならないことは負担になる場合もあることか 1.肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・初回治療 ら,医療機関と保健所の連携によって,効率的に行わ 2.肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・再治療 れることが望ましい。全国的にDOTSが広く普及され 3.肺結核活動性・その他結核菌陽性 たことにより保健所と医療機関の連携が強化されてい 4.肺結核活動性・菌陰性・不明 る。このことも,経過観察を医療機関にしやすい環境 5.肺外結核活動性 になったと考えられる。 6.潜在性結核感染症 また,職場,学校等における健康診断等管理検診以 第3 登録時の活動性分類 外の方法によって病状に関する診断結果を把握できる 第2に定める登録時の活動性分類は,次に定めると 場合にはこれらとの連携によって,重複して管理検診 ころによること。 を実施することがないように注意が求められている。 1 結核症の主な罹患臓器 上述の医療機関等へ病状に関する診断結果に関する 結核菌が罹患した臓器により次のように分類するこ 書類等の提出を求める場合には,その趣旨を説明して 協力が得られるようにするとともに,登録者(患者あ と。 ただし,肺結核と肺外結核を合併する者は,肺結 核に分類すること。 るいは回復者)本人またはその保護者から同意書を取 (1) 肺結核 るなどして協力を得ることが求められている。 肺又は気管支を主要罹患臓器とする結核症。ただ し,結核性胸膜炎,膿胸,肺門リンパ節結核及び粟粒 以上のようなことから,活動性分類は次のように改 斜字下線 正されることとなった。(改正点を で示す) 3/2010 複十字 No.332 (2) 肺外結核 施行規則第27条の7 肺及び気管支以外の臓器を主要罹患臓器とする結 (結核回復者の範囲) 核症及び粟粒結核。 法第五十三条の十二第一項に規定する厚生労働省令 12 結核は,肺外結核に分類すること。 2 菌所見 肺結核については,診断時の結核菌検査所見により 次に掲げる者をいう。 次のように分類すること。 (1) 再発のあった者 (1) 喀痰塗抹陽性 (2) 受療状況が不規則であった者 結核菌喀痰塗抹陽性の者 (3) 抗結核薬に耐性のあった者 (2) その他結核菌陽性 (4) 糖尿病・塵肺・人工透析患者,副腎皮質ホルモ 喀痰塗抹以外の検体・検査法を用いた検査で結核菌 ン剤使用患者,その他の免疫抑制要因を持った者 陽性の者(喀痰塗抹陰性で培養陽性の者,気管支内視鏡 (5) その他保健所長が必要と認める者 検査で塗抹陽性の者,核酸診断検査で陽性の者等) 3 結核患者の診断に係る疾患の原因となっている病 (3) 菌陰性・不明 原体等が 非結核性抗酸菌(非定型抗酸菌)その他の非 結核菌陰性の者及び検査を行わなかった者 結核性のものであることが判明した場合は, 感染症の 3 治療の既往 予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 の適 既往の結核に対する化学療法の実施状況により次の 用はなく,登録は無効であること。当初から1のいず ように分類すること。 れにも該当しないことが事後に判明した場合も,同様 (1) 初回治療 とすること。 (2)以外の者 (2) 再治療 【参考資料】 結核に対する化学療法を過去に1月以上受け,か 1) 厚生労働省健康局結核感染症課長通知.活動性分類 つ,その治療終了後2月以上経過している者 第4 区分の変更等 等について (健感発0128第1号) 平成22年1月28日 2) 厚生労働省健康局結核感染症課長通知.感染症の予 分類の変更等については,次の基準によること。 防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 1 不活動性 12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等 治療を終了した者は,不活動性に分類を変更するこ と。 2 活動性不明 最近6月以内の病状に関する診断結果が得られない 者は,活動性不明に分類を変更すること。 3 菌所見 の一部改正について (健感発第0607001号) 平成19年 6月7日 3) 結核療法研究協議会内科会.ピラジナミドを含む標 準治療の再発率.結核2009; 84: 617-625 4) 第15回厚生科学審議会感染症分科会結核部会資料. http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1029-1 0d.pdf 治療開始後6月以内に第3の2の(2)に定めるその他結 5) 厚生労働省健康局結核感染症課長通知.結核登録票 核菌陽性又は同2の(3)に定める菌陰性・不明の者でよ に登録されている者の病状把握の適正な実施につ り若い番号の所見が得られた場合には,これに変更す いて (健感発0128第2号) 平成22年1月28日 ること。 第5 登録の削除 1 結核登録票に登録されている者が次のいずれにも 該当しない場合は,職権により登録を取り消す(講学 上の撤回)こと。 (1) 結核患者 (2) 結核医療を必要としないと認められてから2年以 内 の者 (3) 結核再発のおそれが著しいと認められる者 2 結核再発のおそれが著しいと認められる者につい ては,保健所長が経過観察を必要としないと判断した 場合に登録を取り消す(講学上の撤回)こと。 「結核再発のおそれが著しいと認められる者」とは, 3/2010 複十字 No.332 13 教育の頁 ワクチンシリーズ BCGワクチン 元日本BCG研究所 所長 14 戸井田 一郎 BCG(ビーシージー)は結核を予防するためのワク ろいろ工夫されました。現在わが国で行われている9 チンです。 本針の管針を使う方式は最も洗練された経皮接種法で フランスの細菌学者カルメットとゲランは,人間の す。 結核の原因菌であるヒト型結核菌と近縁のウシ型結核 お父さん,お母さんたちの時代は,赤ちゃんの時 菌を何十年にもわたって特殊な培地に繰り返し植え継 (出生から4歳の誕生日まで)に1回と小学校,中学校 いで完全に無毒化し,安全で結核の予防に有効なワク でそれぞれ1回,ツベルクリン反応検査をし,その結 チンの開発に成功し,フランス語で桿菌を意味する 果が陰性であればBCG接種を受けるように法律で義務 Bacilleのあとに自分たちの名前をつけてBacille づけられていました。現在では法律が改正され,BCG Calmette-Guérin(カルメットとゲランの桿菌)と命 も含めポリオ,麻しん,風しん,百日ぜき,ジフテリ 名しました。通常,頭文字を並べてBCGという名前で ア,破傷風,日本脳炎などすべての予防接種について 呼ばれています。1921年に重症結核で死亡した母親の 罰則を伴う法律上の義務はなくなりましたが,子供の 赤ちゃんに投与してこの赤ちゃんを結核から守って以 健康を守る上で特に重要なこれらの予防接種について 来,BCGは世界中で広く用いられるようになりました。 国は,「予防接種法」のなかで,「接種を受けるよう 世界保健機関(WHO)は全世界の子供にBCGの接種 国民に強く勧奨し,接種を受ける条件を整える義務」 を受けるよう勧告し,世界の子供の85%以上がBCGの があり,一方,国民は「予防接種を受けるように努め 接種を受けています。 る義務」があると規定しています。 死んだ菌や菌から採った成分を注射しても結核に対 現在,BCG接種は出生から生後6ヵ月までの間に受 する免疫はできず,生きている菌だけが結核に対する けるように政令で定められていますが,小児科や結核 免疫を作り出すので,BCGは生きている菌でなければ の専門家は,生後3ヵ月までは先天的な免疫異常の診 なりません。第二次世界大戦後まもなくに開発された 断が困難で,もしこのような免疫異常があればBCG接 凍結乾燥の技術によって,生きたままの菌を長期間保 種によって重大な副作用が起こるので,生後3ヵ月ま 存できるようになり,BCGワクチンは凍結乾燥生菌ワ での接種を避け,3ヵ月から6ヵ月の間にBCG接種を受 クチンとして製造され,製造所の自家検定と国立感染 けるように勧めています。医学的には生後6ヵ月を過 症研究所による国家検定によって効果と安全性を十分 ぎたどの年齢でもBCG接種の効果と安全性は確かめら に確かめたうえで実地に使用されます。 れていますが,このような場合は,国が予防接種法で カルメットらは,最初BCGを新生児に口から飲ませ 「勧奨」している予防接種としては扱えないというこ ていました(経口投与)。しかし,この投与法では効 とになり,接種費用は自己負担で(地方自治体によっ 果がいまひとつ不確実だったので,皮下注射が試みら ては生後1歳まで接種費用を負担してくれます),万 れましたが注射局所に潰瘍や膿瘍ができやすく,まも が一副作用が起こった場合の保障も不利になるので, なくもっと浅く注射する皮内注射に替わりました。そ 3ヵ月∼6ヵ月の間にBCG接種を受けて下さい。公費で れでも,皮内注射は技術的に難しく,しばしば誤って BCG接種が受けられる唯一の機会になりましたので, 皮下注射になってしまって潰瘍や膿瘍ができたり,正 チャンスを逃さないようにしてください。 確に皮内に注射が行われた場合でも注射局所に直径数 もう一つお父さん,お母さん方の頃と違った点は, ミリのかなり目立つ瘢痕が残るので,もっと安全で醜 BCG接種に先だってツベルクリン反応検査をせず,い い痕を残さない接種方法として経皮接種が世界中でい きなりBCGを接種するようになったことです。BCG接 3/2010 複十字 No.332 種の前にツベルクリン反応検査をしていたのは,ツベ 頃が反応のピークです。かさぶたをかきむしったりし ルクリン反応検査によって既に結核菌に感染している ないように注意してください。接種後1ヵ月ほど経っ かどうかを調べ,まだ感染を受けていない人だけに ても局所がジュクジュクしていたり,針痕が互いに融 BCGを接種するためだったのですが,生後6ヵ月まで 合して大きい潰瘍になったりしたら医師の診察を受け の赤ちゃんが結核菌の感染を受けている可能性はごく て下さい。接種局所の皮膚以外の副作用としては,脇 ごく僅かですから,BCG接種前のツベルクリンは省略 の下のリンパ節(腋窩リンパ節)の腫脹があります。 しても構わないし,そのほうが赤ちゃんに余計な痛い 米粒や小豆粒大の腫脹はBCGに対する正常の反応です 思いをさせなくて済むという理由で,事前のツベルク が,直径2∼3cmを超えて腫れたような場合は医師の リン反応検査なしに,直接のBCG接種になりました。 診察を受けて下さい。通常は特別の治療を必要とせず, 既に結核菌に感染していたごくごく少数の赤ちゃんは, 経過観察だけで2∼3ヵ月以内に消失しますが,1万人 BCG接種後2∼3日経つとあとで説明するコッホ現象を に1人位は治療が必要になります。もっと重い副作用 示し,このような場合には医師と相談して結核菌感染 としては骨の炎症(骨炎,骨髄炎)があります。BCG に対する適切な対応をとることができます。 接種後2∼3ヵ月頃から赤ちゃんが足を引きずったり, 接種にあたっては,接種を担当する医師が健康状態 手足の屈伸で痛がるようなことがあればかかりつけの を診察をして接種が適切かどうかを判断し,保護者の 小児科の先生と相談して整形外科を受診して下さい。 同意を得て(同意書にサイン)接種します。凍結乾燥 100万人に1.3人以下の頻度で滅多に起こりませんが, したBCGワクチンを生理食塩液に均一に懸濁し(“溶 BCGと骨の副作用とはなかなか結びつかずに気づくの かし”),その1滴をアルコール綿などで消毒した上 が遅れますので,一応頭に入れておいてください。適 腕外側に滴下します。肩に接種するとケロイドになり 切な治療で後遺症を残さず治癒します。万が一これら やすいので,肩は避けてやや下の部位を選びます。 の副作用が起こった場合は,「予防接種による健康被 BCG液を管針のツバで軽く塗り拡げ,BCG液の層の上 害者の救済制度」によって医療費をはじめいろいろな に管針(9本の針を植え付けた直径2cmの円筒)を管 保障が受けられるのでかかりつけの小児科の先生に相 針のツバが皮膚面に接触する位に強く押しつけます。 談してください。 最初に押した部位に接して,もう一回同じように強く BCGは安全性の高いワクチンであり,また,世界中 押します。僅かに血液がにじみでることがありますが, のBCGワクチンのなかで日本のBCGワクチンは安全性 消毒綿で拭いたりしないで,自然に乾くのを待ってく が高く,副作用が少ない優秀なワクチンとして定評が ださい。 あります。接種担当医が診察して接種適格と判断した 接種後すぐには管針の圧迫痕のほかには局所になに ならば,安心して接種を受けて下さい。 も変化が見られないのが正常です。まれに2∼3日以内 今では,結核は昔と比べると非常に少なくなりまし に接種部位が腫れたり発赤を示すことがありますが, た。お父さん,お母さんの時代と比べてBCG接種の回 これは,BCG接種より以前に既に結核菌に感染してい 数を減らすようになったのも結核が減少したからです。 たために反応が強く速く出てきたという可能性があり しかし残念ながら日本は結核に関しては先進国ではな ます。上述したコッホ現象です。この場合は接種担当 く,やっと中進国の仲間入りしたという現状です。結 の医師に相談してください。コッホ現象と診断されれ 核には優れた薬があって成人の結核は命を脅かす病気 ば,結核菌感染に対する適切な検査が行われます。 ではなくなりました。しかし,小さい子供さんの結核 通常はBCG接種後2∼3週間経つと針痕に一致して小 は別です。進行が速く,全身に拡がって髄膜炎や粟粒 さい発赤・硬結(最大で18個)が現れ,ついで膿瘍に 結核になって薬剤治療が間に合わず,死亡したり後遺 なり,やがて痂皮(かさぶた)ができ,自然に治癒し 症を残すことがしばしばあります。BCGワクチン接種 て目立たない針痕が残るだけになります。大体5∼6週 によってこのような悲劇を確実に予防してください。 3/2010 複十字 No.332 15 シリーズ 新しくなった結核研究所 (6) 優先的プロジェクト(4): 「疫学調査技術支援プロジェクト」 −結核の罹患状況を明らかにする方法論と応用− 国際協力部長 山田 紀男 結核の実態をいかに把握するか 1953年(昭和28年)に第1回,その後5年毎に4回にわ 有効な結核対策を実施していくためには,結核の疫 たって実施されました。また途上国でも1960年代に一 学状況のより正しい把握が必要です。多くの国,特に 部の国で実施されましたが,調査には大きな資金と労 途上国では,結核の状況を正確に知ることが困難です。 力が必要なため,途上国で一般的には実施できないで 日本や多くの先進国では,結核と診断されると,公 きました。代替法として,Styblo博士らによるツベル 的・私的医療施設の区別無く,保健所に報告され,結 クリン調査を用いた簡便な感染危険率の推定,それに 核登録者情報システムを通じて,結核問題の推移を知 基づく罹患率の推定等が用いられてきました。しかし ることが出来ます。しかし,途上国では,先進国と異 近年様々な国の実態の中で,この方式があまり有効で なり医療サービスが行き渡っていないため,結核患者 ないことも分かってきました。そこでまた有病率調査 の大部分が見つかっているとは言えず,また診断治療 の必要が再認識されるようになってきました。 されても全て報告されるとは限りません。現在,途上 その流れを大きく変えた一つが,2002年(平成14 国でも私的医療機関(私立病院や開業医)との連携を 年)に実施されたカンボジアでの有病率調査です。カ 強める活動(PPM)が推進されていますが,まだ広 ンボジアは典型的な途上国であり,保健サービスが未 く行われてはいません。その結果,実際に存在してい 発達で,保健所のネットワークがようやく形成され始 る結核患者の一部のみが,行政的に把握されているの めるという時期にJICAプロジェクト,世界銀行,結 が現状です。この状況を示したのが,図で,玉葱のよ 核研究所,WHO等の協力で有病率調査が実施されま うに見えるので,Onion Modelとも呼ばれています。 した。結核研究所ではこの調査のための技術支援委員 会を設置しJICAプロジェクトを通じて技術支援を実 結核の疫学指標と有病率調査 施いたしました。この調査は,電気も医療施設もない 結核の主な疫学指標には,結核罹患率(単位人口当 村の検診会場(集会場や一般民家)に小型発電機を持 たり年間何人が結核に罹るか。通常人口10万人対率が ち込みレントゲン検査実施後その場でレントゲンフィ 使われる),結核有病率(単位人口当たり何人の結核 ルムを現像し読影し,結核疑いを見つけて喀痰採取を 患者が存在するか),結核死亡率(単位人口当たり年 するという画期的なものでした。この調査で,途上国 間何人が結核で死亡するか)があります。途上国では, でもレントゲン検診による有病率調査が可能であるこ 上述したように診断・報告・登録システムが未発達の とを示したとともに,菌陽性結核であっても結核疑い ため,正確な罹患率と死亡率を把握することは困難で 症状を呈しない患者が多数有り,レントゲン検査の必 す。このような状況に対して,有病率調査を実施する 要性が確認されました。また,菌陽性結核で塗抹は陰 ことがWHOにより推奨されるようになりました。有 性でも培養陽性の患者の割合が有病率調査では多く見 病率調査というのは,無作為に選んだ住民を対象に結 られる傾向があり,結核疫学状況を正確に把握するた 核検診を行い,結核患者が実際に何人いるかを調べる めには,塗抹検査だけではなく培養検査も行うことが 疫学調査です。具体的には,全国から代表性のあるサ 必要であることが示されました。このカンボジア有病 ンプルを選び,対象者から結核疑いを見つけ,菌検査 率調査の経験は,結核研究所も参加して作成された を実施するという調査です。 WHOのガイドラインに反映されました。WHOでは疫 学状況と対策効果の把握を支援するタスクフォースが 16 有病率調査の再認識 設立され,その下に3つの作業部会がありそのうちの 有病率調査は,戦後日本で結核問題が大きかった 一つが有病率調査部会(委員長:WHO小野崎元結核 3/2010 複十字 No.332 研究所国際協力部長)です。WHOは,アジア・アフ 研究的側面 リカ21カ国で有病率調査を実施することを提言し,有 本プロジェクトは,技術支援的側面と,調査の方法や 病率作業部会は,結核,米国CDC,KNCV,ロンドン 結核分析など,研究的側面とがあります。これまで, 熱帯医学校等が参加し技術支援を実施しております。 2002年に行われたカンボジアの調査データを活用し, DOTSが家族内感染の減少に与える影響の分析,途上 有病率調査に必要な技術支援 国における家族内検診の有効性の検討など,結核対策 このように世界的に有病率調査が推進されています のインパクト効果評価・推定を行っています。3月に が,課題の一つは技術支援の必要性です。有病率調査 は,WHOで有病率調査の実施指針の改訂作業委員会 では,まず正しい結果を得るために適切な調査方法を が予定されており,結核研究所も参加します。また, 決める必要があり,この分野の技術支援には疫学・統 現在世界の結核疫学状況の推定作業にも,本プロジェ 計の専門家が必要です。それには、質の高いレントゲ クトの活動の一環として参画しています。 ン検査と結核菌検査の技術支援が必要となります。多 これらの活動は,日本の経験が活きる得意分野で, くの途上国ではまだ質の高いレントゲン検査や結核菌 結核対策に関する研究や対策支援に包括的に取り組む 検査が実施されているとは限らず,開始前に質が保証 結核研究所が世界に貢献できる分野と考えられます。 された調査のための検査体制を作る必要があります。 そのやり方も重要です。このような技術支援のニーズ にこたえることを目的として,疫学調査支援プロジェ 図:実際の結核患者数と報告される結核患者数の隔たり (WHO資料) クトが作られました。多岐にわたるため,本プロジェ クトは,国際協力部,臨床疫学部,結核リファレンス センターの共同体制で,国際協力部が調整の役割を 担っております。現在,ミャンマー全国調査(実施 中),カンボジア有病率調査(2010年10月実施を目指 して準備中)に対し,JICAプロジェクトを通じ,ま た結核研究所でも独自に疫学・統計,レントゲン検査, 菌検査の諸分野の技術支援を実施しております。各調 査計画書(プロトコール)は,主要団体のほかに,他 の組織の専門家が内容を検討する方式(いわゆるピア レビュー)が取られており,これまでザンビア,ウガ ンダ等で実施されました。 カンボジアでの有病率調査の様子(2002年)村でレントゲン撮影をし,その場で現像して(写真左,黒い小暗室), 結核疑い患者を発見する(小野崎郁史氏提供) 3/2010 複十字 No.332 17 結核対策指導者養成研修卒業生による全国会議報告 結核研究所 対策支援部 企画・医学科 科長 星野 昨年12月18日,19日の2日間にわたり結核研究所に 斉之 染)の鑑別方法が確立されれば,BCG接種後の対応 おいて,厚生労働省の支援のもと結核対策指導者養成 を適切かつ効率的に行うことができると期待されます。 研修卒業生による全国会議が行われました。北は北海 最後に結核研究所加藤副所長より,「結核対策の動 道から南は沖縄までの全国各地から,計48名が参加し 向」と題して,今後の結核対策関係の法改正(労働安 ました。以下にその概要を報告致します。 全衛生法による被雇用者の結核健康診断の見直し)の 初日は,最新の情報や知見の共有を目的として,4 つの講義が行われました。 動向,結核医療供給体制の現状の課題や今後の展望, 2006∼2008年におけるコッホ現象の発生状況,2003∼ まず結核研究所の抗酸菌リファレンス部の原田部長 2008年における小中学生の結核発生状況に関する調査 より「QFT-3G」と題して,QFT-2Gに第3の抗原で の中間報告,そしてNJ NYC study tour 2009で得られ あるTB7.7を追加したQFT-3Gにおける感度の向上と たNew JerseyとNew Yorkにおける結核対策の最新情 検査方法の簡便さなどが紹介されました。また,陰性 報が提供されました。どの講義も中まん延から低まん コントロールの上昇の原因として,高温保存された検 延にさしかかった日本の結核対策の今後の方向性を検 体の過度の撹拌による分離剤の血液への混入が報告さ 討する上で,示唆に富む内容でした。 れ,培養時の保存温度と撹拌法に細心の注意を払う必 要性が示されました。 次に同部の御手洗副部長より「抗酸菌検査の進歩」 と題して,新しい核酸増幅法や耐性遺伝子検査が紹介 されました。Loop Mediated Isothermal Amplification (LAMP)法(新しい核酸増幅法:増幅反応を等温で行 うこと,高い増幅効果と特異性,短い増幅時間などの 利点がある)やMicroscopic Observation Drug Susceptibility Testing(MODS)法(マイクロプレート に少量の液体培地を入れ,分離した結核菌か雑菌処理 した検査材料を接種し,薬剤感受性検査を行う方法。 18 従来の液体培地の方法に比して検査結果が迅速でコス 翌2日目には「結核医療の供給体制」と題して講義 トも低い。主要薬剤の感度・特異度も88.2∼100%と高 とワークショップが行われました。現状の結核医療体 い)(詳細はhttp://www.tbevidence.org/をご覧下さ 制は,結核患者の様々なニーズ(合併症の適切な治療, い)など,新しい方法の開発がポイント・オブ・ケア 外来治療へのアクセス,質の良いDOTS,都市部の 検査を目指して進められており,数年後には抗酸菌検 結核病床)に応えることができているかが疑問視され 査の現場は大きく進歩すると思われました。次に大阪 ています。また,結核医療の不採算性も病院運営上の 府豊中保健所長の永井先生より「BCG接種における 課題として結核病学会等で指摘されています。本ワー コッホ現象への対応」と題して,コッホ現象のグレー クショップでは,まず,和歌山病院の駿田副院長より ド分けの案を紹介して頂きました。これは,コッホ現 「和歌山県における結核の地域連携」と題して,同県 象を,局所の炎症反応の強さ(発赤,硬結,化膿疹, に於ける結核医療の地域連携について講義がありまし 浸出液漏出,痂皮)により5つにグレード分けすると た。和歌山病院は,県版DOTSマニュアルの作成と ともに,生じた局所反応を時間的な経過により直後型 普及,DOTSカンファレンスの実施,院内クリティ と非直後型に分ける方法である。結核感染を疑ってツ カルパスの導入,地域基幹病院との連携(退院後の地 ベルクリン反応検査を行う対象は,硬結以上の反応が 域医療機関における外来結核診療と和歌山病院の診療 BCG接種後一週間以内に生じかつその後に軽減しな 支援体制),医療機関や福祉関係施設への出張型の啓 い場合である。この分類を用いることにより,真の 蒙活動など様々な取り組みを実施して成果をあげてい コッホ現象(結核感染)と偽のコッホ現象(結核未感 ました。 3/2010 複十字 No.332 次に厚生労働省の水野専門官より,「結核医療の提 められました。全体討議では各班の検討結果を発表し, 供体制 論点」と題して,現状の体制と施設基準,今 情報共有とまとめの討議を行いました。ブロック共通 後の病床の役割分担と連携等について,結核部会で出 の課題として,結核医療の採算性の低さが,地方にお た意見を混じえながら論点を整理され,結核医療提供 ける課題としては,結核を診療できる医療機関数の減 体制に関するモデル構築の必要性を訴えられました。 少・集中と結核患者にとっての利便性の低下,透析や これらの講義を受けて,ワークショップ(グループ討 精神疾患などの合併症のある患者への対応の難しさな 議と全体討議)が行われました。グループ討議は,ブ どが示されました。また,モデル病床の活用の難しさ, ロック(北海道,東北,関東甲信越,東海,近畿・四 感染症病棟活用のための法整備の必要性,今後の入院 国,九州)に分かれて討議(現状と課題,あるべき結 期間短縮化への対応,外来治療における地域の病院と 核医療供給体制,そして体制実現のために必要な資源, の連携の必要性などが話題となりました。なお,いく 実施すべき時期)を行いました。どのグループも臨床 つかの府県が結核医療のモデルとして,厚生労働省に 医と公衆衛生医が参加しているので,結核患者の診療 事例紹介されることになりました。本会議の成果が, を担う医療機関と,DOTSや地域医療計画に関わる 日本の結核医療供給体制の改善に寄与することを願い 保健所間の役割分担の整理や調整方法の検討などが進 ます。 参加者全員で記念撮影(筆者2列目右端) *結核対策指導者養成研修:全国各地の結核対策の核となる結核専門家を養成することを目的とした研修で,国の 委託を受けて1992年から開催しています。対象者は結核対策および診療の分野で相当の経験を有し,将来地域の結 核対策指導者としての活動が期待される医師であり,地方自治体および医療機関から推薦を受けて招聘しています。 研修期間は計15日間で,研修内容は,日本と世界の結核対策の動向,新しい検査方法,HIVと結核,多剤耐性結 核や非結核性抗酸菌症の治療,DOTS戦略等に関する講義及び討論です。また,先進的な取り組みをしている地域 ないしは施設の見学を行い,最後に結核対策の行動計画の作成発表を行います。平成21年度までの本研修修了者は, 計103名です。 3/2010 複十字 No.332 19 乳がん検診の受診率向上へ向けた取り組み ∼ 平成22年度マンモグラフィ講習会開催案内 ∼ 乳がんの特徴 の視触診だけでの検診には限界があるのです。 マンモグラフィ検診の課題 乳がんは1996年より女性のがん疾患の第1位となっ ていて,その罹患数は年間5万人,死亡数は1.1万人と 乳がん検診では,マンモグラフィ併用検診により, 年々増加を続けています。この原因には生活環境の変 乳がんをより早期で発見できることが知られてきまし 化に伴う食生活の欧米化が考えられますが,現在,発 た。また,同じマンモグラフィでもデジタル・マンモ 症を予防する効果的な方法はありません。 グラフィが急速なスピードで普及し,検診の多くがデ 2007年に施行された「がん対策基本法」では,がん ジタル撮影で行われるようになっています。 の予防および早期発見,研究の推進,検診受診率の向 しかし,デジタル・マンモグラフィも良いことばか 上,専門医の育成等が今後の課題として挙げられてい りではありません。マンモグラフィでは石灰化を見逃 ますが,これらの中でも乳がんにおける最大の課題が さないように非常に微細な画像が求められますが,画 「検診受診率の向上」です。受診率を現在の20%から 像の読影には500万画素というとても精度が高く高価 欧米のように50%以上にまで上げることが,乳がん死 なモニタが必要なのです。また,これまでのフィルム を減らすための目標なのです。 での撮影とは画像を作り出す過程が異なるため,新し 受診率の向上に向けて い精度管理の普及啓発が求められています。 マンモグラフィ講習会開催案内 複十字誌読者の皆さんは,なぜ乳がん検診を受けな いのでしょうか? そもそも自分は乳がんにならない, マンモグラフィ検診を精度良く行うためには,管理 検診にはお金がかかるから,裸になるのが恥ずかしい, された撮影装置,読影技術を持った医師,撮影技術や 痛いと聞いている・・・等々,様々な方がおられるで 画像管理技術に長けた診療放射線技師の3点が揃って しょう。痛さは検診時期を選ぶことにより,ある程度 いなければなりません。そこで当会では平成16年度事 回避できますし,診療放射線技師の技量による部分も 業から技術者を育成する講習会を開催し,これまでに 非常に大きいのです。いずれにしても,自分の身体は 1,100名以上の受講生を輩出してきました。平成22年 自分で守るという意識を持つことや,早期発見・早期 度も表に示した3回の講習会を開催すると共に,デジ 治療への理解がとても重要です。 タル・マンモグラフィの普及に必要な内容を取り入れ また,国の施策である検診の運営にも更なる向上が ていきます。また,超音波併用検診の拡大に向け,乳 望まれます。検診自体を無料化したり,検診受診者の 房超音波講習会も続けていきたいと考えています。 医療費を割引きするなど,より実効的な受診率の向上 多くの技術者がこの講習会を修了することにより乳 を図るため検診のあり方を考えていく必要があるで がん検診の精度向上が進み,さらに検診受診率が目標 しょう。さらに,乳腺の発達した40歳代の方々に適し である50%を超え,欧米のように乳がん死の減少が現 ていると言われている超音波(エコー)併用検診につ 実となることを願っています。 いても,有効性の検証が続けられています。これまで 表 名 称 日 程 乳房超音波検査講習会 平成22年 2月 20日∼ 21日 (終了) 第24回マンモグラフィ講習会 平成22年 6月 18日∼ 20日 第25回マンモグラフィ講習会 平成22年 11月 第26回マンモグラフィ講習会 平成23年 1月頃予定 5日∼ 7日 結核研究所対策支援部放射線学科 科長 星野 豊 (結核予防会マンモグラフィ講習会事務局) 20 3/2010 複十字 No.332 平成21年度胸部画像精度 管理研究会に参加して 第一健康相談所総合健診センター 放射線科科長 入江 肇 ■はじめに 1985年から24年間開催されてきた「フィルム評価 会」が,医療のデジタル化の普及に伴いフィルム診断 からモニタ診断へと流れが変わってきました。そのこ とにより「フィルム評価会」の名称を今回より「胸部 画像精度管理研究会」に改めて取り組んでいくことに なりました。 ■進行と評価方法 平成21年度・胸部画像精度管理研究会が12月10日・ 11日の2日間にわたり,結核予防会結核研究所におい て,全国約40支部から医師13名,診療放射線技師52名, フイルムメーカーから5名,モニタメーカーから5名の 技術者の参加のもと開催されました。 初日に,胸部検診対策委員会精度管理部会長の複十 字病院尾形副院長より本評価会の名称変更の説明と挨 拶がありました。次に東京特殊電線(株)の石倉氏と (株)東陽テクニカの小林氏から「液晶モニタ精度管 理」・「画像保存送信」(PACS)・「医用画像表示 用モニタの品質管理に関するガイドライン」について の講義があり,続いて結核研究所対策支援部放射線学 科の星野科長より「フィルム評価法のポイント」につ いての説明があり直接撮影とデジタル画像フィルムの 評価がなされました。 2日目は間接撮影フィルムの評価をし,最後に技術 検討会を行い無事閉会となりました。閉会後,協議会 役員と一部の参加者に手伝っていただき研究会に使用 したフィルムを支部ごとに仕分けをして終了しました。 評価法は参加者が6班に分かれ,班長の医師と副班 長の放射線技師が進行役となり,班員全員が合議の上 で総合判定をしました。初めに班ごとの偏りをなくす るため,同じフィルムを班ごとで評価し,そのフィル ムを全体討議でもう一度評価して基準を設定する (『目あわせ』という)方法がとられました。 その上で、間接フィルムは写真濃度・コントラスト・ 鮮鋭度を中心に10項目,直接フィルム・デジタル画像 フィルムについては9項目について,それぞれ良否を 解析して最終的に読影価値から見た総合判定をしまし た。A評価は「読影価値の極めて優れたフィルム」,B評 価は「優れたフィルムでAに近いもの」,C上・C中評価 は「読影可能でB評価に近いもの」,C下評価は「Dに極 めて近いもの」,D評価は「読影に極めて困難」,E評価 は「読影不能」の7段階評価で行われました。 ■評価結果 ① 間接フィルム A評価は101本中8本(7.9%), B評価は101本中29本 (28.7%),C上評価は101本中60本(59.4%),A+B評価 は101本中37本(36.6%) ② 直接フィルム A評 価 は93本 中13本(14%), B評 価 は93本 中37本 (39.4%),C上評価は93本中40本(43.0%),A+B評価は 93本中50本(53.8%) ③ デジタルフィルム A評価は85本中12本(14.1%), B評価は85本中29本 (34.1%),C上評価は85本中36本(42.4%),A+B評価は 85本中41本(48.2%) アナログフィルム評価の合格基準である「A,B, C上」は間接撮影で96%,直接撮影で96.8%,および デジタル撮影で90.6%を占めており結核予防会のフィ ルムは読影価値が高く,精度管理も行き届いていると 思われます。 デジタル画像フィルムとモニタ画像診断の評価方法 については,今後DICOM規格を取り入れた新しい評 価基準を設定して精度管理をすることが必要になると 思います。 ■おわりに 今後デジタル化が進む中,胸部画像精度管理研究会 は,「フィルム評価会」で培ってきたアナログフィル ム評価基準のノウハウを生かして,新たにデジタル画 像評価基準を模索して行かなければなりません。それ には読影医・診療放射線技師・メーカー技術者が精度 管理に参加評価して,「フィルム評価会」のアナログ フィルム「A判定写真」を基準にしたデジタル画像の 評価ポイントをまとめたパラメータなどの検討をして 行く必要があると思います。 この度,本研究会に参加し,また名称も改まったこ とからこれまで以上に結核予防会の胸部X線写真の精 度管理を追求し技術向上をしていくよう努力したいと 思います。 3/2010 複十字 No.332 21 第31回(平成21年度)結核予防会事務職員セミナー 参加報告 「体験を財産に」 結核予防会秋田県支部 (秋田県総合保健事業団 県南健診センター事業推進課) 技師 佐々木浩孝 22 冒頭に結核予防会長田理事長より,創立70周年を迎 か。幾度もその言葉をお聞きしました。膝を突き合わ え今後も結核制圧に向け公衆衛生学的な社会的活動が せて語り合い,もっと頑張ろうという気持ちが湧いて 重要であることについてお話いただきました。橋本専 きました。話は尽きることなく有意義な時間はあっと 務理事からは刻々と変わる情勢に対応できる能力を養 いう間に過ぎてしまいましたが,忘れられないものと い,より良いサービスを提供できる職員になれるよう なりました。私にとって,これからの生活でもう一歩 励ましの言葉をいただきました。結核予防会は47都道 前へ踏み出すきっかけをいただけた気がします。 府県全てに支部がある全国規模の組織です。結核対策 二日目のワークショップでは「組織が求める事務職 はもちろん結核撲滅のための国際協力,呼吸器疾患対 員像とは」と題して,班ごとに討論をしました。緊張せ 策,さらに生活習慣病対策など,結核予防会の活動を ず活発な議論を交わせました。懇親会で打ち解けあえ 詳しく知ることができました。私も予防会の一員とし たからだと思います。参加者同士,業務に関して重な て,携わっている健診業務についてお客様の健康のた る部分は多く,それに伴う悩みや問題についても共感 めに働いているという思いを忘れず,誇りを持って業 を覚えました。その中で懸命に取り組んでいることに 務に励まなければいけないと思いました。 触れ勇気をもらいました。班ごとの発表では,業務に 一日目は,広報・危機対応コンサルタント,山見イ 対して広く深い知識を持ち合わせていることはもちろ ンテグレータ(株)の山見博康先生から広報と危機対応 ん,周りへの気配りを忘れず相手の立場で行動できる について,組織を人体に例えて解りやすくご講義いた ことが理想であろうと意見が出されました。理想の職 だきました。手足である部下は,組織のトップが思う 員に近づくためにも,講師の埼玉県支部塚越先生,群 ように行動できなければいけません。そのためには報 馬県支部高山先生からお教えいただいた,報告,連絡, 告,連絡,相談が円滑に行われていることが不可欠で 相談,コミュニケーション能力の改善を心掛けていき す。トラブルや事故が生じた場合,起きた状況をいち たいです。 早く把握し,事実を正確に上司に報告します。伝える もう一つ心に残ったことがあります。三日目の結核 べき情報をわかりやすくまとめて,関係各位にタイミ 研究所石川所長の講義の中での「路上健診」と「無料通 ングを誤ることなく伝えます。広報と同時に危機に対 所治療」です。路上生活者を訪問し結核健診を実施し 応でき,企業の損失を抑えることができます。状況へ 生活に困っている方に手を差し伸べ,無料で投薬の通 の危機対応こそ大切である,と先生からお聞きし納得 所治療を行いその方の人生をも豊かなものにできるこ いたしました。危機対応は問題が起きる前からできて とに感動しました。人のために働くとはこのことで, いなければならないことも教わりました。私が所属す とても素晴らしくまさに理想であると思いました。 る秋田県支部の秋田県総合保健事業団は健診機関でも 今後は,結核をなくすため,誇りを持ち,行動して あります。講義の中で先生は,受診者の僅かな反応を いきたいと思います。複十字シール募金の活動から始 見過ごすことなく対応することが一流だとお話されま められればと思います。セミナーでの体験が財産とな した。苦情をいただいて初めて対応するのは三流であ るよう,組織の輪を大切にし,明るく前向きにコミュ るとの言葉に,襟を正さなければならないと思いまし ニケーションを図り,報告,連絡,相談を密にしてい た。先生の講演の内容と疾風のごとき速さが強く心に きます。さらに,困難に立ち向かう強い心と思いやり 残りました。これからは,相手の身になり細やかな心 の心を忘れず業務に精進していきます。そして,出 配りを忘れず,受診された方に喜んでもらえるよう努 会った方と過ごした有意義な時間を大切にしていきた めていきたいです。 いと思います。ぜひ,このような会が続いていくこと 一日目には懇親会も行われました。私たちを思い, を願ってやみません。 前日から駆けつけてくださった講師の大先輩の優しさ 最後に当セミナーの運営にご尽力くださった本部のみ に感謝申し上げます。結核予防会の先輩方から存分に なさま,お心遣い本当にありがとうございました。ご 親交を深めてほしい,という思いが伝わりました。そ 一緒できた支部のみなさん,またいつかお会いできる の思いは参加者よりも強かったのではないでしょう のを楽しみにしています。 3/2010 複十字 No.332 「結核予防会職員としてさらなる意識改革を」 結核予防会大阪府支部 相談診療所 ヘルスケアプランニング課 辻本 貴則 昨年12月14日から16日まで3日間,東京都清瀬市に ましたが,これを正確にかつ迅速に実行できているか ある結核研究所で開催された事務職員セミナーに参 再度自問自答する機会を得ることができました。最も 加いたしました。 簡単で,当たり前なことを目の前の業務に追われ忘れ 山見インテグレーター (株)の山見講師の講義では, がちになっている現状を認識し,今一度初心に帰り, 広報と危機管理の説明があり,その中でもクレームに この『ほうれんそう』を意識し,徹底していこうと改め ついての内容には強い衝撃を受けました。クレームに て思いました。 は『不満』 (お客様の願望,こうあってほしい), 『不平』 「組織が求める事務職員像」という課題でのワーク (要 望,こ う し て ほ し い), 『苦 情』 (要 求,こ う し て く ショップでは,各支部の方との実体験を元にした意見 れ!)の三つの段階があるということの説明があり, を多く聞くことができ,また自らも意見を述べる良い 特に私が実際に業務を行う上で感じていたのは最後 機会をいただけたと思います。色々な意見をまとめた の『苦情』というもので,言わば最終段階で,これをク 結果,私が所属していた班では『自分のことを管理で レームと考えていてはその組織は改善されないとい きる,業務の内容や部下の状況などを把握し管理でき うことでした。私は昨年7月に現在の部署に配属され る人』ということで『組織が求める事務職員像とは管 るまでの6年間,結果処理の業務を担当しており,受 理できる人である』という結論になりました。司会進 診者様との対応で「結果がまだ手元に届かない」 「結果 行役をさせていただいた私としては,皆さんの意見を 内容が間違っているように思う」などの『苦情』があっ 無事まとめることができ,良い経験をさせていただい たとき,その電話がクレームであると認識していまし たと大変満足しております。 たが,受診者様の声には「これが欲しい」 「こうしてほ このワークショップでの討論のバックボーンとし しかった」などがあり,これは受診者様の『お願い』と て,今回出席の各支部の方は所属している支部の現状 捉えて,ご希望に添えるよう対応はしますが, 『不平』 や自分が携わっていない業務の内容,規模などを下準 とは思っていませんでした。これは口に出してのお声 備として把握してこられたと思います。これはこの事 である以上『不平』と捉えるべきで,さらに『不満』と 務職員セミナーに参加する者が今必要であると自ら は,例えば受診時に,施設内で受診者様が健診順路で が感じ,知ろうとし,自分が所属する支部のことを学 迷っているような状態など,こちらが注意していない ぼうとしたからであり,この学ぼうとする意識を芽生 と見過ごすような仕草ですが,これもクレームとして えさせるためにも大変意義のあるセミナーだと感じ 捉えるようになって初めて組織は改善されていくと ました。 いうことでした。クレームとは受診者様の願いであ 3日間の講義,ワークショップで,私は個々の意識 り,無料のアドバイスである,クレームが無いことを の重要性について再認識すると共に,私達で導き出し 恐れる意識が大切であることを教わりました。私の中 た『管理できる人』になれるよう,努力していこうと思 でクレームに対しての認識,意識の仕方を変える大変 います。大変有意義な3日間を経験させていただき, 貴重なお話であったと思います。 ありがとうございました。 また,埼玉県支部の塚越氏からは『報告』 『連絡』 『相 談』いわゆる『ほうれんそう』の重要性についてご講義 いただきました。以前より言葉としては理解しており 3/2010 複十字 No.332 23 世界結核デーのテーマ解説 3月24日 世界結核デー イノベーションで結核対策を加速しよう ! 結核予防会国際部 24 3月24日は,世界結核デーです。 メッセージ ・・・・・・・・・ 世界では,アジアとアフリカの途上国を中心に,年 あらゆる分野のイノベーション(革新)を 間940万人が新たに結核を発病し,180万人(50万人の より優れた治療薬・診断法・ワクチンなどの医療技 HIV感染者を含む)が死亡しています(WHO 2008年推 術はもとより,より多くの患者を最後まで治療するこ 定)。世界の結核患者の3人に1人は,十分な結核の診 と,結核制圧を目指すパートナーの連携,研究や対策 断と治療を受けることが出来ていないと推測されて のための資金確保など,あらゆる分野において,革新 います。 的な技術,方法,アイデアを生み出そうというメッ 世界結核デーは, 「結核のない世界」のために,世界 セージが込められています。 の人々が共に,対策を考え,実行を呼びかけていく日 革新とは・・・・・・・・・・ です。 例えば,医療技術の開発を取り上げてみましょう。 コンセプト・・・・・・・・ 結核には治療法が確立されていますが,現実には多 世界計画達成に向け、飛躍的な推進を くの課題を抱えています。 2010年 の ス ロ ー ガ ン は, 「ON THE MOVE 結核患者は症状がたとえ改善しても,6 ヶ月と長期 AGAINST TUBERCULOSIS /Innovate to に渡り薬を飲み続けなければならないため,治療中断 accelerate action(イノベーションで結核対策を加速 や脱落が起こりやすくなります。中途半端な治療は薬 しよう)」です。 が効きにくい結核(多剤耐性結核)を生み出す可能性も WHOのグローバルパートナーシップであるストッ 高くなり,多剤耐性結核の治療はより難しくなりま プ結核パートナーシップは,世界の結核対策を導くた す。検査の質が診断を左右するため,結核菌検査には, め, 「結核のない世界」をビジョンとした「ストップ結 検査技師の教育を含め精度管理が欠かせません。 核世界計画(2006-2015年)」を策定しています。2010年 治療期間が短く,副作用も少なく,多剤耐性菌にも は,この計画の中間点にあたります。 効果がある治療薬。より迅速,簡便,安価で正確な診 世界の結核の状況は徐々に改善されていますが, 断法。一生効果が続くワクチンなどが開発されれば, WHOはこの計画の目標が達成できる可能性が低いと 多くの患者が救われ,DOTSによって推進されている 報告しています。そのため,スローガンの背景には, 現在の結核対策に大きな変革をもたらすことになるで 今までにない革新的なアプローチで,世界の結核対策 しょう。 を飛躍的に進めていかなればならないという強い思 現在,世界では,関係者が連携して,医療技術の開 いが表れています。 発に力を入れており,その成果が期待されています。 3/2010 複十字 No.332 結核罹患率 (人口10万人対) 2008年 アジアとアフリカに集中 1990年の 半減数値 1990年からの推移 WHOアフリカ地域 (HIV感 染率が低い国々) では、結核 罹患率、結核有病率、結核死 亡率 (グラフ上から) ともに 上昇しており、有病率と死 亡率は半減にはほど遠い。 1990 1995 2000 新発生結核患者数 (2008年推定) 1.インド 160 ∼ 240万人 2.中国 100 ∼ 160万人 3.南アフリカ 38 ∼ 57万人 4.ナイジェリア 37 ∼ 55万人 5.インドネシア 34 ∼ 52万人 2005 「イノベーション」をテーマに,様々な分野における 結核への取り組みの中に,このような革新的な開発の ヒントを発掘し,対策に生かせるよう支援していきま しょう。 参照資料:ストップ結核パートナーシップ http://www.stoptb.org/events/world_tb_day/2010/ 1 15-49歳の国民のHIV感染率が4%未満であると (国連エイズ予 防計画推定)される国々 参 照 資 料(上 記 図 表、数 値 と も) :WHO Global Tuberculosis Control- A short update to the 2009 report ストップ結核世界計画の達成予測 アフリカが課題 WHOの推定によれば全世界の結核罹患率 (人口10万 人あたり1年間に新たに発生した結核患者数) は2004年 に143でピークを迎えたと見られます。WHOの定める6 地域のうちWHOアフリカ地域でHIV感染率が低い1 国々及びWHO東南アジア地域を除く全地域で罹患率 は低下しており,このままいけば, 「2015年までに結核 の罹患率の上昇を止め,減少に転じる」 という同計画の 目標は,2015年を待たずに達成できると見込まれます。 もう一つの目標である「2015年間までに,結核の死 亡率(人口10万人あたり1年間に死亡する結核患者数) と有病率(人口10万人あたりの結核患者数)を1990年の 数値から半減させる」ことは,困難と見込まれていま す。これは有病率,死亡率のいずれもアフリカ地域全 てで達成不可能と見込まれることが大きな理由です。 結核デーには、世界中でキャンペーンが行われる (写真 フィリピン) 3/2010 複十字 No.332 25 ハイチ震災者支援について ストップ結核パートナーシップ日本 外務省によれば,2010年1月12日に起きたハイチの震災に よる死亡者数は20万人以上とされている。多くの人々が住 居をなくし,路上等での生活,悪い衛生環境の中での生活 を余儀なくさせられている。 また,病院施設の崩壊により,適切そして十分な治療を受けられない多くの結核の被災 者たちがいる。この被災者たちは,結核治療の中断で耐性結核などの脅威にもさらされる 危険性があり,早急な支援と対応が取られる必要がある。 もともとハイチは,社会経済的な混乱から結核やエイズに悩まされ,取り組みが遅れて いた地域である。ハイチの結核の罹患率は,日本の戦後の状況で,罹患率は10万対300程度 で日本の15倍,新患者数は日本より多く,3万人と推定される。亡くなる人も少なくなく, 10万対50程度といわれているので,おおよそ5,000人と推定される。ちなみにエイズ(HIV 感染)陽性のものは,妊婦で2∼3%とされている。 このような状況に対して,ストップ結核パートナーシップ,ならびに日本リザルツは, 直ちに,以下のような要請をまとめ,関係各方面に働きかけを行った。 1. 震災時点で登録・治療中だった患者の治療が中断され,今後一ヶ月くらいから病状の悪 化,薬剤耐性菌の出現が懸念される。よって,行政機能が回復した時点で,登録患者の 追跡と治療再開を図ること。また,このための行政支援,具体的には情報システム支援 (電算機システム),十分な数の結核対策要員の確保と訓練,検査室機能の早期回復支 援(設備拡充)を行うこと。 2. 震災による身体的・精神的影響,更に,患者の病状悪化に伴う新たな感染によって,結 核発病の増加が,今後,一∼二ヶ月の間に顕在化するものと考えられる。このような新 規患者の早期発見と確実な治療体制を確保するために,前項の行政支援を行うこと。 3. 既存の感染コントロール機能を持った結核病室は,既に破壊されているか,もしくは機 能不全に陥っていると考えられるので,独立空調,出入制限等,必要最小限の機能を 持った簡易な設備を用意すること。 4. 日本人の援助要員には,現地入り後および帰国後二ヶ月後にクォンティフェロン検査を 受けて頂き,結核感染の有無を調べること。 〔お詫び〕 前331号6ページ「ストップ結核パートナーシップ日本 理事会・総会報告」記事中誤りがございました。 お詫びし訂正いたします。 右段2行目:昭和15年に世界で初めて開発されたレントゲン車→昭和15年に日本で初めて開発されたレントゲン車 タイトル:俳人尾崎放哉の「咳をしても一人(Coughing even; alone)」から。咳をしても1人じゃないぞ! 26 3/2010 複十字 No.332 ストップ結核パートナーシップ日本だより われわれの具体的な活動を紹介すると,まず,2月2日に,世界結核デー(3月24日)の キャンペーンを中心テーマに,厚生労働省の記者クラブで,ブリーフィングの予定であっ たが,急遽ハイチ被災者支援のアピールも行った。実を言うと,結核予防会の国際シンポ ジウムなど,ぜひ紹介したいことがあったのであるが,記者の関心はハイチ問題のほうへ 向けられがちで,事務局としては複雑な心境であった。さらに,2月4日に,ストップ結核 推進議員連盟の会合が開かれ,ここでも,ハイチ被災者支援の議題が大きく取り上げられ ることとなった。帰国早々の長崎大学医学部教授の山本太郎さんの現地報告もあって,会 合は盛り上がった。これを受け,議員連盟は2月10日に,梅村聡副会長,浜四津敏子副会長, 浜田昌良事務局長により,外務省,西村智奈美政務官に陳情を行った。 また,2月1日と12日の昼時間には,結核予防会本部のある水道橋ビルの前で,ボラン ティア(STBJ・日本リザルツ・結核予防会)による募金活動が行われた(上記写真)。両 日ともに,非常に寒い風の吹く天候であったが,10人近いものが「ハイチ被災者の結核対 策に寄付を」と呼びかけた。予防会本部ビルの前であったので,本会関係者の篤志も多 かったが,土地柄から,大学生など反応する人々も多く,頼もしく感じた。両日で,募金 箱に立ち寄り応じてくれた人数は,100人近くに上り,金額も4万円ほどであった。 街頭での呼びかけの目的は,あくまでお金の額で評価されるべきでなく,メッセージを 伝えることにある。2日目には,ストップ結核パートナーシップ推進議員連盟事務局長に もご参加いただき,NHKテレビ・ラジオ・新聞等の取材,報道もあり,より効果的なもの となったと考えられる。 今後の課題は,ハイチの結核対策に直接貢献することであり,そのためにまず,寄付を お願いしたいと存じます。よろしくご協力お願いいたします。寄付金は,現地の結核患者 支援に役立てるように,当地の事情を十分調査して送り先を決めていきたいと考えていま す。結果はSTBJホームページwww.stoptb.jpに報告いたします。 Coughing even; not alone 田中慶司 事務局長 No. 10 結核予防会支部紹介のページ 愛 媛 県 支 部 顧客満足度と精度管理の 向上を目指して はじめに(沿革) 当支部は,昭和15年に設立されました。その後, 総合健診の実施による県民の利便性向上と経営の 効率化を企図して,平成10年4月に設立された (財)愛媛県総合保健協会に,(財)愛媛県がん 予防協会,(財)愛媛県予防医学協会と共に事業 が継承され,今日に至っています。 平成15年には新ビルを建設して分散していた各 部署を集約し,また,人間ドック事業の開始など, 施設健診の充実にも取り組んで参りました。 平成21年に導入された胸部デジタル検診車 愛媛県総合保健協会 事業概要 当支部は,健診事業(地域健診,職域健診,学校 健診)と環境検査事業を実施しています。健診(検診) 事業は巡回のほか支部施設内でも実施し,受診の機 会を増やすなど,がん検診や特定健診の受診率向上 にも力を入れています。また,病理細胞診センター を設置して子宮がん検診全般の機能強化を図ってい ます。事業規模としては,全体で約25億円です。 事業所は,松山市に本部,新居浜市に東予出張 所,宇和島市に南予支所を置き,県下全域で健診 と環境検査の事業を展開しています。 当支部が健診,検査事業を行う上で最も重視し ているのは,顧客満足度の向上と精度管理です。 このため,ISO9001認証のもと職員のスキルアップ に努めると共に,ハード面ではマンモグラフィ検 診車(4台)を今年6月までに,胸部検診車(現在11 台)を今後2年を目処に,それぞれデジタル化する など,精度管理の向上に向けた機器整備にも注力 しています。 普及啓発では,毎年,愛媛病院(旧結核療養所)と 共催で結核フォーラムを開催すると共に,結核予 防週間には繁華街での街頭募金や結核予防パネル 連合婦人会のご協力をいただき街頭募金を実施 の展示などを連合婦人会の皆さんと協力して実施 し,結核予防に関する啓発活動に努めています。 また,昨年度,愛媛県において「ピンクリボン えひめ協議会」が設立され,当支部が事務局と なって乳がんを始めとする「がん検診」の普及啓 発にも積極的に取り組んでいます。 おわりに 愛媛県は人口144万人,全国で26番目の人口県で, 瀬戸内海の南に位置しており,特に最近ではNHKの 大河ドラマ「坂の上の雲」で秋山兄弟や正岡子規ら の故郷として有名(?)になりました。 この愛媛でも,医療制度改革,デフレ不況など, 昨今の社会状況の変動による影響が見受けられ,当 支部も健診の価格競争などと無縁ではありません。 このような中,結核予防会愛媛県支部としての使命 と誇りを念頭に,役職員一同,明るく真面目に,県 民の健康と福祉の向上に努めて参りたいと思ってお ります。 3/2010 複十字 No.332 27 「連載企画」∼結核に縁(ゆかり)の地歴訪∼ 第2回「大分県竹田市」 ―結核で夭逝した瀧廉太郎の足跡を訪ねて― 竹下 隆夫 結核予防会総務部長 大分県の熊本県境に位置する豊後竹田は,瀧廉太郎 からドイツ留学までの5年余で,図抜けた才能が開花 が13歳から15歳までの約2年半,多感な少年期を過ご していく時期である。そして,第三期は異国の地で結 した山紫水明の地であった。竹田の人々はこの東西5 核を発病し,思いを遂げることなく帰国して病床で最 条,南北5条の碁盤の目の城下町を自ら「九州の小京 後の曲を書いた時期である。 都」と称し,北の稲葉川を京都の加茂川に,南の白滝 瀧廉太郎は,明治12(1879)年8月24日,東京府芝 川を桂川に比している。そして,高台にそびえる岡城 区南佐久間町(現:東京都港区西新橋)に生まれた。 址(国指定史跡)は,石垣に残された佇まいも,城址 瀧家は江戸時代,日出藩の家老職をつとめた上級武士 からの四周の眺めも絶景であり,いかにも「荒城の の家柄で,父・吉弘は大蔵省から内務省に転じ,大久 月」(作詞:土井晩翠)を彷彿とさせる風情であった。 保利通や伊藤博文らのもとで内務官僚として勤めた後, 竹田市立図書館長北村清士はその著『瀧廉太郎を偲 地方官として横浜や富山を経て大分,次いでこの竹田 ぶ』で,「荒城の月」が人々の心に残るのは,「彼の に移り住んだ。明治24(1891)年末のことで,翌年1 霊感が岡城址の印象から生れ出たメロディ」で,「そ 月,直入群高等小学校第2学年に転入する。 の幽婉で糸のような調べは,日本の民族的なもので あって,かつて,寝ても覚めても忘れなかった,岡城 址からの印象の所産である」と記している。岡城の歴 史は古く,文治元(1185)年に源義経を迎えるため緒 方三郎惟栄が築城したと伝えられているが,現在残さ れている城郭は文禄3年(1594年)に岡藩を統治した 中川秀成が築城したものという。 瀧廉太郎の銅像(岡城址) 当時住んだ官舎は由緒ある侍屋敷で,現在は「瀧廉 太郎記念館」として公開されている。屋敷の裏には立 派な蔵があり,彼が使ったオルガンやヴァイオリンが 残され展示されている。ヴァイオリンもさることなが ら,彼の弾くオルガンは特に優れた腕前で,その軽妙 桜の季節の岡城址(パンフレットより) 28 さは神業に近いと高等小学校の先生方も一目置いてい たという。 明治期を代表する作曲家瀧廉太郎は,留学先のドイ 話は逸れるが,この記念館の名誉館長は故人となっ ツで結核を発病し,23歳10か月で無念の生涯を閉じた。 たジャーナリストの筑紫哲也で、瀧廉太郎の妹・トミ 彼の生涯の足跡を辿ると,大きく三つの時期に分けら が筑紫の祖母に当たる縁という。 れる。第一期は竹田で過ごした少年期で,ここで音楽 瀧廉太郎はまた,独楽回しの曲芸に秀でていたり, の才が芽生え育まれた。第二期は15歳という最年少で 強い近視眼ではあったが3年生の代表として出品した 東京音楽学校(現:東京藝術大学)の予科に入学して 馬の絵の鉛筆画で大分県主催の共進会(博覧会)で最 3/2010 複十字 No.332 高の特別賞を受賞したというから,彼の才能の萌芽は また,単純平明だが実に気品ただよう「花」「納 実に多岐にわたるものであった。これが第一期である。 涼」「月」「雪」は,明治33年に作曲された組曲『四 季』であるが,メンデルスゾーンやシューマンの影響 を受けて日本的情緒を西洋式形式の作品にした最初の 試みとも言われている。そして,彼の代表作である 「荒城の月」が「箱根八里」等とともに文部省編纂の 「中学唱歌」に掲載されたのは明治34年である。 なお「荒城の月」はベルギーで讃美歌になっていた というが,実は彼は明治33年に麹町の博愛教会で洗礼 を受けたクリスチャンであった。 また,毎年暑中休暇には竹田町に帰省し,高等小学 校の同窓会に出席,友人たちとの旧交を温めていたと 瀧廉太郎記念館の正門(竹田の旧居) 瀧廉太郎が「東京に行って音楽学校に入学したい」 いうから,やはり竹田は彼にとって大切な郷里であっ たにちがいない。これが第二期である。 と音楽の道を熱望したのは,卒業を翌年に控えた4年 生の頃というが,彼を大学に入学させ能吏にしたかっ た父の反対にあう。しかし,彼の熱い思いは父の気持 を溶解し,高等小学校を卒業した翌明治27年の5月に 上京を果たす。上京後は麹町の従兄瀧大吉の許に世話 になり,同年9月に最年少の15歳で東京音楽学校の予 科に入学,翌年本科(専修部)に進学,明治31年7月 本科を首席で卒業,19歳で研究科に入学,研究科2年 生になると20歳の若さで音楽学校のピアノ授業嘱託と 授業補助を拝命している(有給)。 彼のピアノの腕前は抜群で,毎年の学友会音楽会で ピアノ独奏を披露しているが,明治32年4月の記念音 楽演奏会では皇后陛下(昭憲皇太后)の前で御前弾奏 を行ったという。 彼の作詞,作曲は明治30年,17歳の時に始まる。作 瀧廉太郎記念館に保存されているオルガン 詞の処女作は「砧」,同作曲は「日本男児」で,その 明治33年6月,瀧廉太郎にピアノ及び作曲研究のた 後数多くの作曲を手がける。明治時代の前半には多く め満3か年ドイツ留学の命が下る。この時,ドイツの の翻訳唱歌ができていたが,日本語訳の歌詞が難しく, ライプツィヒ音楽院(メンデルスゾーン設立)には既 幼稚園や小学校低学年の児童はその意味を理解できな に2年先輩のヴァイオリニスト幸田幸が留学しており, いで歌っていた。こうした状況に対し,彼は「あへて 彼は2番目の音楽部門の文部省外国留学生となった。 その欠を補ふの任に当る」(『四季』序文)として, 因みに,幸田幸は幸田露伴の末の妹で,姉に東京音楽 子供の情操教育の観点から子供の生活に即した,歌っ 学校教授の幸田延がおり,彼はこの二人から東京でも てすぐ理解できる,純真さを大切にした歌を作ること 様々な指導を受けていた。 を自らの使命とした。 明治34年4月,横浜港から1か月半の船旅でドイツの 作詞で名コンビ役を果たしたのは,東京音楽学校の ハンブルグに到着,約4か月の入学準備を積んで,10 2級上にいた東くめで,日本生まれの最も古い童謡作 月1日に憧れの音楽院に入学する。ピアノ教師タイヒ 品として知られる「お正月」「鳩ぽっぽ」「雪やこん ミュルラーは彼が弾奏した「荒城の月」を聞いて,驚 こ」などは東くめ作詞,瀧廉太郎作曲の幼稚園唱歌 異の眼差しで「君のこの作曲は音楽日本の誇りだ」と (明治33年編纂)に収められている。 褒め称えたという(『瀧廉太郎を偲ぶ』)。 3/2010 複十字 No.332 29 しかし,悲劇は突然訪れる。入学からわずか2か月 なごりおしむ ことの葉も 後の11月末,彼は歌劇「カルメン」鑑賞の帰路に発熱 いまは述べ得で ただつらし し肺結核を発病する。入院先はライプツィヒ大学附属 あすはうつつ けふは夢 病院であった。彼はドイツ滞在中親交をもっていた在 残る思いを いかにせむ 留日本人達から代わる代わる見舞いを受け、励まされ ああいかにせむ る。微笑ましいエピソードが一つある。異郷の空で病 帰国後,彼は大分の両親のもとに帰って静養するが, む彼がしきりに食べたがった福神漬を幸田幸がベルリ 明治36(1903)年6月29日,23歳10か月のあまりにも ンで入手して送り,励ましたというものである。 短い生涯は閉じられた。戒名は直心正廉居士,大分市 しかし,彼の容態は優れず,滞在1年で帰国を余儀 の万寿寺に葬られている。彼の最後の作曲は,死の4 なくされる。帰路,船がロンドンに停泊したとき,彼 か月前,明治36年2月14日,結核という病が希望を閉 はイギリス留学中であった「荒城の月」の作詞者土井 ざした病床で,最後の力を振り絞って仕上げたピアノ 晩翠の訪問を受ける。実は二人が会うのはこれが最初 曲「憾(うらみ)」であったことは,彼の生涯を象徴 で最後で,日本での再会を約したことはかなわぬこと して余りある。 となったが,土井晩翠は後年この約束を果たすため岡 瀧廉太郎同様,結核によって無念の最期を歴史に刻 城址での瀧廉太郎の慰霊祭に仙台から駆けつけている。 まざるを得なかった明治・大正時代の代表的な文豪や 岡城址に土井晩翠の筆跡による「荒城の月」の石碑が 詩人,画家は数多い。二葉亭四迷,正岡子規,国木田 建てられているのはこのためである。 独歩,樋口一葉,長塚節,青木繁,高村光太郎,竹久 おそらく無念の思いが募るばかりであったことは想 夢二,石川啄木等々,枚挙に暇がない。結核予防会発 像に難くない。瀧廉太郎が帰国の船上でひとり書いた 行の青木正和著『結核を病んだ人たち―その生と死 「別れの歌」は実に切ない詞と曲である。 ―』に詳しいので改めてご一読を勧めたい。 「結核予防切手の変遷」をご寄贈下さった小林佑吉様に感謝,厚く御礼申し上げます 結核予防会TBアーカイヴ推進・運営委員会では,本誌を通じて「結核の社会文化史的資料」のご提供を お願いいたしておりますが,本年1月12日に,埼玉県八潮市で内科医院を経営されている小林佑吉様から, 社会史的観点からする「結核予防切手の変遷」と題する,極めて貴重な2冊のファイルにまとめられた資料 をご寄贈していただきました。小林様に深く御礼を申し上げるとともに,ここにご報告させていただきます。 ご寄贈いただきました資料は,1897年を嚆矢とする世界の結核予防切手を収集,整理し,解説も付した貴 重な学術的資料で,1991年の世界切手展に出品され入賞を果たした丹精 を込めた“作品”です。 本資料で整理された結核予防切手の変遷は,次の4つの時期に区分さ れています。 1.第1期(1897∼1925年)慈善の色彩の強い結核予防切手の黎明期 2.第2期(1925∼1940年)ベルギーなど西欧諸国を中心に発行をみ た発展期 3.第3期(1940∼1950年)西欧諸国と共にラテンアメリカ,アジア の一部諸国から発行がはじまった最盛期 4.第4期(1950年以降)結核予防切手の発行の中心が西欧諸国から アジア,アフリカなどの発展途上国に移った転換期 大変興味深い変遷で,次号では小林様ご本人から結核予防切手収 集の意図や趣旨等について本誌にご寄稿をいただく予定でおり,ま た,その後の号では順次この変遷の具体について解説付きで掲載し ていく所存でおります。ご注目ください。 30 3/2010 複十字 No.332 1897 年にニュー・サウス・ウエルズ で最初に発行された結核予防切手。 ビクトリア女王治世 60 年を記念し て、患者をいたわる天使の像が画か れ、寄付金の使途が結核ホームのた めと記されている 平成22年度厚生労働省予算(案) 平成22年度結核感染症課予算(案)の概要 事 項 感染症対策 平成21年度 平成22年度 差 引 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 千円 千円 平成21年12月 (単位:千円) 主 な 内 容 千円 [22,528,896] [18,956,406] [△ 3,572,490] <対前年度伸率 △15.9%> (2,882,799) <対前年度伸率 +32.1%> △ 505,877 <対前年度伸率 △5.7%> (8,984,368) (11,867,167) 8,937,649 8,431,772 [ 10,804,881 ] [ 4,259,331 ] ( 2,008,929 ) ( 1,887,855 ) 1 感染症の発生・拡大に備えた事前対応型行政の構築 2,008,929 → 1,879,700 ・感染症対策特別促進事業費【補助金】 455,292 うち、結核対策特別促進事業 (DOTS 等 ) 403,000 36,584 うち、新型インフルエンザ対策事業 ( 協議会設置、診療従事者訓練・研修、説明会) ・新型インフルエンザ対策事業費 ( 正しい情報の共有 ) 27,894 ・新型インフルエンザ対策費 ( 抗インフルエンザウイルス薬等の保管 ) 150,284 ・病原体等管理体制整備事業 77,465 ・感染症発生動向調査事業費 870,995 ・麻しん排除対策推進費 3,471 ・予防接種導入効果等検証推進費 5,300 [ 4,514,756 ] [ 7,662,017 ] ( 4,514,756 ) ( 7,662,017 ) 4,514,756 → 4,269,520 703,738 3,536,984 2 良質かつ適切な医療の提供体制の整備 ・感染症指定医療機関運営費【補助金】 ・結核医療費【負担金・補助金】 ・保健衛生施設等設備整備費補助金 ・保健衛生施設等施設整備費補助金 2,898,497 494,000 *平成21年度補正予算において ①国産ワクチン生産能力強化(医薬食品局) 950億円 ②新型インフルエンザワクチン接種費用助成 207億円 ③新型インフルエンザ患者を受け入れる医療機関において 必要な設備(人工呼吸器等)の整備 16億円 [ 1,108,467 ] [ 1,231,178 ] 708,980 → 676,371 600,000 3 感染症の発生予防・防止措置の充実 ・感染症予防事業費【負担金】 [ 3,543,283 ] [ 3,702,344 ] 484,510 → 479,734 456,884 4 調査研究体制の強化 ・結核研究所補助【補助金】 〈厚生労働科学研究費〉 ・新興・再興感染症研究【補助金】 2,889,085 5 人材育成の充実及び国際協力の強化 ・新型インフルエンザ対策事業費 ( 診療従事者研修 ) ・政府開発援助結核研究所補助【補助金】 [ 1,308,697 ] ( 88,914 ) 42,195 → [ 171,167 ] 152,836 → 6 動物由来感染症対策 ・動物由来感染症対策費 [ 994,155 ] ( 69,374 ) 34,631 10,552 16,496 [ 49,198 ] 33,633 29,918 [ 1,077,645 ] [ 1,058,183 ] ( 1,025,443 ) ( 1,058,183 ) 7 その他 ・新型インフルエンザ予防接種健康被害給付金 ・予防接種事故救済給付費【負担金】 新型インフル エンザ対策 千円 千円 千円 [ 14,445,277] [ 11,621,473][ △ 2,823,804] ( 2,968,808) ( 6,134,906) ( 3,166,098) 2,922,089 2,699,511 △ 222,578 <対前年度伸率 <対前年度伸率 <対前年度伸率 1,052,671 → 1,025,443 32,740 1,015,682 △ 19,5%> +106.6%> △ 7.6%> [ 10,334,087 ] [ 4,460,678 ] 1 医薬品の備蓄と研究開発の推進等 311,306 → 150,284 ・新型インフルエンザ対策費 ( 抗インフルエンザウイルス薬等の保管 ) 150,284 感染症対策の内数 〈厚生労働科学研究費〉 ・新興・再興感染症研究【補助金】 〈重要医薬品供給確保費〉 ・新型インフルエンザワクチン備蓄経費 *平成21年度補正予算において ①国産ワクチン生産能力強化(医薬食品局) 2,889,085 1,000,000 950億円 3/2010 複十字 No.332 31 平成22年度厚生労働省予算(案) 事 項 平成21年度 平成22年度 差 引 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 主 な 内 容 [ 816,766 ] [ 4,212,929 ] ( 781,287 ) ( 4,191,906 ) 781,287 → 799,409 2 地域の医療体制等の確立 ・感染症対策特別促進事業費【補助金】 52,292 うち、新型インフルエンザ対策事業 ( 協議会設置,診療従事者訓練・研修,説明会) 36,584 ・感染症指定医療機関運営費【補助金】 703,738 〈保健衛生施設等設備整備費補助金〉 2,898,497 ・感染症外来協力医療機関設備(HEPA フィルター付パーティション・空気清浄機の補助) ・新型インフルエンザ患者入院医療機関設備(人工呼吸器、PPE、簡易陰圧装置の補助) 494,000 ・新型インフルエンザ患者入院医療機関施設 *平成21年度補正予算において ①新型インフルエンザ患者を受け入れる医療機関において 必要な設備(人工呼吸器等)の整備 16億円 3 国民各界各層に対する取組の要請 [ 50,648 ] ( 28,978 ) 28,978 → ・新型インフルエンザ対策事業費 ( 正しい情報の共有 ) 4 国・地方公共団体等の体制整備 [ 41,136 ] ( 36,836 ) 28,681 27,894 [ 2,287,390 ] [ 1,864,086 ] ( 1,698,121 ) ( 1,725,962 ) 1,651,402 → 1,691,219 ・感染症予防事業費【負担金】 600,000 ・感染症発生動向調査事業費【負担金】 870,995 ・感染症発生動向調査システム費 97,974 ・インフルエンザ薬耐性株サーベイランス事業費 41,070 [ 588,943 ] 149,116 → 5 水際対策の強化等 ・動物由来感染症対策費 [ 625,003 ] 29,918 29,918 [ 367,443 ] 6 国際協力 [ 417,641 ] 〈世界保健機関等拠出金〉 ・感染症対策事業【拠出金】 410,073 *その他 平成21年度補正予算において ②新型インフルエンザワクチン接種費用助成 予 防 接 種 対 策 千円 1,165,485 千円 1,167,698 千円 <対前年度伸率 2,213 1 健康被害救済給付費【負担金】 (1) 一類疾病に係る救済給付費 感染症対策の内数 207億円 +0.2%> 1,015,682 → 1,015,682 1,007,446 (単価改正) ・医療手当 入院8日・通院3日以上 35,800円/月 入院8日・通院3日未満 33,800円/月 ・障害児養育年金 1級 1,531,200円/年 2級 1,225,200円/年 ・障害年金 1級 4,897,200円/年 2級 3,915,600円/年 3級 ・死亡一時金 ・葬祭料 2,937,600円/年 42,800,000円 199,000円 ・介護加算 1級 839,500円/年 2級 559,700円/年 (2) 二類疾病に係る救済給付費 8,236 (単価改正) ・医療手当 入院8日・通院3日以上 35,800円/月 入院8日・通院3日未満 33,800円/月 ・障害年金 32 3/2010 複十字 No.332 1級 2,720,400円/年 2級 2,175,600円/年 事 項 平成21年度 平成22年度 差 引 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 主 な 内 容 ・遺族年金 2,378,400円/年 ・遺族一時金 7,135,200円 ・葬祭料 199,000円 2 保健福祉相談事業【補助金】 74,559 → 40,350 (1) 保健福祉相談事業 32,711 (2) 研修事業費 1,726 (3) 啓発普及事業 5,913 3 予防接種後副反応等調査事業 24,161 → 23,998 (1) 予防接種後副反応・健康状況調査 22,850 (2) 予防接種副反応検討費 1,206 4 予防接種従事者研修事業 5 予防接種センター機能推進事業【補助金】 6,654 → 3,554 18,340 → 18,340 ※予防接種センター事業実施ヵ所数 ・予防接種要注意者への予防接種等の実施 20ヵ所 ・休日・時間外の予防接種実施 5ヵ所 6 ポリオ生ワクチン2次感染者対策費【補助金】 9,761 → 9,761 3,484 → 3,471 0 → 5,300 ・予防接種事故救済給付費の二類疾病と同等の救済給付の実施 7 麻しん排除対策推進費 8 予防接種導入効果等検証推進費 (1)検証準備機関設置経費 2,797 (2)検証情報提供経費 2,503 9 その他 12,844 → 47,242 (1) 予防接種調査等事業費 11,905 (2) 予防接種事故発生調査費【補助金】 2,597 (3) 新型インフルエンザ予防接種健康被害給付金 32,740 ※1.[ ]内の数字は厚生労働省計上分 ※2.( )内の数字は健康局計上分 ※3. で囲んだ事項は他課計上分 ※4. で囲んだ事項は平成21年度第2次補正予算計上分 平成22年度予算(案)の概要〈生活習慣病対策室〉 事 項 引 平成21年度 平成22年度 差 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 (B) (B)−(A) (A) (項)健康増進対策費 3,606,219 2,472,117 ▲ 1,134,102 (大)健康増進対策に必要な経費 2,756,085 2,154,589 ▲ 601,496 2,406,061 2,029,653 ▲ 376,408 生活習慣病等予防対策事業費 2,406,061 2,129,241 ▲ 276,820 疾病予防事業費等補助金 2,406,061 2,129,241 ▲ 276,820 健康増進事業費補助金 2,257,331 1,841,887 ▲ 415,444 148,730 88,178 ▲ 60,552 たばこ対策促進事業費 53,510 50,972 ▲ 2,538 メタボリックシンドローム予防戦略事業 95,220 37,206 ▲ 58,014 0 99,588 99,588 0 99,588 99,588 地域健康づくり推進対策費 224,399 0 ▲ 224,399 (目)国民健康づくり運動推進事業費補助金 224,399 0 ▲ 224,399 地域健康づくり推進対策費補助金 35,142 0 ▲ 35,142 健康日本21推進事業費 35,142 0 ▲ 35,142 婦人の健康づくり推進等事業費 189,257 0 ▲ 189,257 食生活改善地区組織活動強化費 189,257 0 ▲ 189,257 125,625 124,936 ▲ 689 (目)国民健康・栄養調査委託費 125,625 124,936 ▲ 689 (大)健康増進に必要な経費 850,134 317,528 ▲ 532,606 3,165 2,922 ▲ 243 (目)疾病予防対策事業費等補助金 健康的な生活習慣づくり重点化事業 (目)国民健康づくり運動推進事業費補助金 健康増進重点プロジェクト事業 国民健康・栄養調査委託費 健康増進行政経費 平成21年12月 (単位:千円) 備 考 補助先:都道府県、指定都市 補助先:都道府県、保健所設置市、特別区 補助先:(財)日本食生活協会 廃止 廃止 補助先:都道府県、保健所設置市、特別区 3/2010 複十字 No.332 33 (単位:千円) 事 項 健康栄養対策費 健康増進情報化経費 引 平成21年度 平成22年度 差 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 (B) (B)−(A) (A) 3,165 2,922 ▲ 243 800,734 268,664 ▲ 532,070 5,012 0 ▲ 5,012 生活習慣病対策推進費 686,699 167,762 ▲ 518,937 生活習慣病予防対策推進費 循環器病診療施設情報ネットワーク事業費 457,868 74,767 ▲ 383,101 生活習慣病予防対策費 6,779 6,373 ▲ 406 健康日本21推進費 14,270 17,312 3,042 健やか生活習慣国民運動推進事業費 90,000 50,625 ▲ 39,375 499 457 ▲ 42 346,320 0 ▲ 346,320 栄養対策総合推進費 64,632 52,764 ▲ 11,868 食事摂取基準策定費 19,335 15,492 ▲ 3,843 5,044 2,841 ▲ 2,203 国民健康・栄養調査経費 13,127 13,019 ▲ 108 保健指導・食育活動支援事業費 27,126 21,412 ▲ 5,714 9,680 10,159 479 生活習慣病予防対策海外実態調査費 女性の健康支援対策事業委託費 栄養・食生活改善及び食育支援対策費 たばこ・アルコール対策推進費 6,593 1,193 ▲ 5,400 糖尿病等の生活習慣病対策推進費 147,926 28,879 ▲ 119,047 糖尿病等対策事業費 116,811 284 ▲ 116,527 30,703 25,803 ▲ 4,900 脳卒中等対策推進費 健診・保健指導データ収集、評価、分析事業費 412 2,792 2,380 109,023 100,902 ▲ 8,121 医師等国家試験費 46,235 45,942 ▲ 293 管理栄養士国家試験費 46,235 45,942 ▲ 293 中核機関の連絡調整会議費 健康増進総合支援システム事業費 事 項 90,754 82,824 ▲ 7,930 (大)国際分担金等の支払に必要な経費 90,754 82,824 ▲ 7,930 国際会議等経費 90,754 82,824 ▲ 7,930 国際分担金 90,754 82,824 ▲ 7,930 90,754 82,824 ▲ 7,930 90,754 82,824 ▲ 7,930 − − − 3,696,973 2,554,941 ▲ 1,142,032 たばこ規制枠組条約締約国会議事務局分担金 NC運営費交付金化 廃止 委託先:(社)日本栄養士会 NC運営費交付金化 NC運営費交付金化 引 平成21年度 平成22年度 差 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 (B) (B)−(A) (A) (項)国際機関活動推進費 (目)国際がん研究機関等分担金 備 考 備 考 (項)保健衛生施設等施設整備費 (大)保健衛生施設等施設整備に必要な経費 (メニュー) 保健衛生施設等施設整備費補助 (目)保健衛生施設等施設整備費補助金 計 事 項 引 平成21年度 平成22年度 差 予 算 額 予 算 (案) 増 △ 減 額 (B) (B)−(A) (A) 農村検診センターの整備 備 考 <厚生科学課計上分> (項)厚生労働科学研究費 「循環器疾患等生活習慣病対策総合経費」 (目)厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究経費 2,020,800 1,572,311 ▲ 448,489 と「糖尿病戦略等研究経費」を「循環器疾 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究経費 1,970,989 1,532,462 ▲ 438,527 患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究経費 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究推進事業費 49,811 39,849 ▲ 9,962 2,020,800 1,572,311 ▲ 448,489 計 34 3/2010 複十字 No.332 (仮称)」として統合 予防会だより 多額のご寄付をくださった方々 学園,ナンシン,日栄動力工業, <指定寄付者>近藤久子,田中誠 日本ペイント工業用コーティング, 一,協和発酵キリン株式会社西東 能美防災安全衛生推進室,濱屋ガ 京支店,富岡和子,水島康子(複 ラス,ビズ,富士精密,ユタカ, 十字病院),奥原喜三郎(新山手 ライセンスアカデミー,リューベ, 病院),児玉敦朗(保生の森), リンベル,レクトン,渡辺電機工 協和発酵キリン株式会社西東京支 業,金子洋,下拂健亮,島尾忠男, 店,森亨(本部) 髙雄伊左,あいおい損害保険,あ <複十字シール募金>(敬称略) いおい損害保険ゆにぞん募金,北 東京都―帝京中学校・高等学校, 川彌生,熊谷弘美,ジンタナ,和 東京都交友会,東京都保健福祉局 田睦子,城南高等学校,門伸行, 職員一同,宝仙学園小学校,江戸 日本 紙 通商, ビュ ファ ・コ ンク 川区さくらんぼ倶楽部,東京都地 リートプロテクシーヨン・ジャパ 域婦人団体連盟,本田昭夫,カツ ン,和田工業,村井金属,朝明商 ミ医療器,小池守人 事,立体映像,上島工業所,チャ 新潟県―新宣,須田医院,貝谷伸 ンス・ツー,日本インターグラフ, 一,カトリック新潟教会,森平医 ニッ ポ ンイン ダス トリ ーズ ,オ 院,こんの脳神経クリニック,新 フィスパレット,柿崎鋲螺工業, 潟県民共済 リーグルジャパン,ゼベックスイ 大阪府―全国公益法人協会関西事 ンターナショナル,森川金属,浜 務局,下出喜久子,村田清三,水 商,山崎商店,日栄国際特許事務 野正彦,木下明之,新宮良介,松 所,スチールエンジ,菊弥,西川, 下雅夫,ふくもと歯科,東田純一, 日本医師会,関プラスチック工芸, 下岡良藏,井上紀代子,山野新, 北澤商事,伊東春海,ボイラ・ク 露口泉夫,高松勇,山名和枝,楠 レーン安全協会,JMA・アソシ 康昭,小出治光,近藤吉輝,山口 エイツ,ワイ・エス・コーポレー 裕久,多田晶彦,キムラリバーサ ショ ン ,サン キュ ー建 設, カワ イドデンタルクリニック,田中秦, ノ・クォーク,多摩機電,熊谷明 佐藤存,宮田悦津子,土田元浩, 美,山寺幸子,西向敦,朝木信晶, 折井宏,松下昭,磯田勝信,森垣 桜井節子,山本秩永美,吉田三千 友二郎,新井道煥,新いずもや, 代,佐藤吉信,神鳥満子,聖翔会 月岡榮子,宇賀一郎,菅沼孝之 山口康弘,杉田稔,島崎佐智代, 愛媛県―森不二子,池田築,長野 髙橋守,安藤恵美,石油連盟総務 産婦人科,ボイラー総合管理セン 青山,北村佶正商店,神尾記念病 ター,愛媛新聞社,アサヒジム, 院,ニナファームジャポン,戸田 伊予鉄道,伊予鉄髙島屋,セキ, 総合法律事務所,労働医学研究会, 愛媛県国民健康保険団体連合会, 愛和,国際テレホンサービス,ク 愛媛県漁業協同組合連合会 リナップテクノサービス,ナプラ, 本部―シノダ,赤光会,昭和女子 片岡製作所,東京クレンジング, 大学中高部保健部及川,新興化学, 正力運輸,三村製作所,南雲商事, 新新会,聖明福祉協会,大正オー 多賀電気,大正建機,テック・エ デ ィ ッ ト , 千 代 田 清 瀬 営 業 所 , アサービス,菱秀会,和田実学園, ティ・オーオー,東海商事,桐朋 中村診療所,冨士計測器製作所, 日進電子工業,サンタエンタテイ メント,谷地運送,知鉦 代表取 締 杉山鉦平,三和薬品,星川商 店,篠原工業,ティーエヌケー, 佑樹会,フカノ,イービーエムズ, 八代管理サービス,熊谷整形外科, 木村産業,三浦運送,アワーズ, メセナ・ネットコム,方祥,開南 建設,光運社,福祉移送サービス, 日本薬剤師会,山田八興堂,パブ リシティ・アドベンチャーズ,叡 宥会安田病院,天誠会,日本心臓 血圧研究振興会,手塚組,清野運 送,石館敬三,岡山明,山田紀男, 今井弘行,髙島晶,小池くに,土 井直治,杉山達朗,村上邦仁子, 今城務,鈴木洋子,田隝靖宏,近 畿労働金庫有田支店,高野由佐, 賀澤迪子,髙木節子,野村ひとみ, 成毛ミチ子,新企画出版中澤みづ ほ,市島博司,小嶋知宏,Bor derless,関政弘,山本柱, 久保房子,池田泰章,ベガテクノ ロジ ー ,井 上商 事, カレル チャ ペック,ミネベン織物,タムラ, 中野宰至,エジック,城戸鍍金工 業所,野口成功堂,日本工業,五 葉建設,台東包装資材店,東洋興 業,キャンディー,エスタ,玄林 堂,ホワイトペン,日本海外サー ビス,山栄管財,トライアングル, 大津興業,ユニコム,デザイン倶 楽部,浅野製作所,石川精米店, 七洋 商 会, グロ ース コーポ レー ション,トラヤビル,エコ設備, 神戸商店,アマゾンフード,オー ルスターオフィス,野口ビル,斉 藤商事,マツモト,宗和メディカ ルオフィス,東亜楽器,ランスモ ア,DropWave,ノブレス, アイ・バーグマン,A.T.Ne twork 結核予防会役員人事<敬称略> 《支部》 発 令 日 支 部 名 氏 名 平成21年 12月 24 日 広 島 県 湯 﨑 英 彦 支部長を委嘱する 平成21年 12月 24 日 広 島 県 藤 田 雄 山 支部長の委嘱を解く 平成21年 12月 24 日 広 島 県 佐々木 昌 弘 副支部長を委嘱する 平成21年 12月 24 日 広 島 県 迫 井 正 発 令 内 容 深 副支部長の委嘱を解く 3/2010 複十字 No.332 35 切手解説 今回は,さまざまなキャンペーンのロゴが入ったものを紹介します。 ①と②のリベリアの切手には,「今日の研究・明日の健康」の文字に顕微鏡をのぞく研究者のイラスト(上)があ り,「病気を治し・国家繁栄」の文字にベッドに横たわる患者を診察する医師と看護師のイラストとWHOの蛇 と剣のマーク(下)が掲載されています。 ③ アメリカの切手は,車いすに乗った人がプレス機を押して作業するイラストが掲載されていますが,障害者雇 用のキャンペーンの切手です。 ④ 東ドイツの切手では,ビール一杯でバイクの運転をすると,救急車のお世話になるということを警告したイラ ストです。運転するときには,一口でもいけませんよね。 ⑤ 中央アフリカの切手は,予防接種キャンペーンの切手です。順番にならんでいる子どもたちは,予防接種をあ まり怖がっていません。 ⑥と⑦の切手は,ケニアとウガンダとタンザニアが第一次東アフリカ共同体を形成し,共通通貨を使っていた時代 に発行されたものです。WHO創立20周年の記念切手で,マラリアの予防接種を思わせるイラストには,疾病予 防の文字(上)が入っています。また,看護師さんが本を読んでいるイラストには医学教育の文字(下)が書 かれています。 ⑧ コートジヴォアールの切手は,牛疫に対する共同キャンペーンの切手です。牛が予防接種を受ける様子が描か れていますが,手前の医師が持っている注射器は本当に大きいので,さぞかし牛も痛かったことでしょう。 東京駅構内にACジャパンのポスター掲示されました JR東京駅の構内(八重洲中央口から東海道・山陽新幹線,東北・秋田・山形・上越・長野新幹線南乗換口)に 特大サイズのポスターが「線路はつづくよどこまでも(作詞:佐久敏,アメリカ民謡)」のフレーズで“ポス ターは続くよ∼,ど∼こまでも♪”と口ずさめるほど掲示されていましたので,思わずシャッターを押してみま した。撮影時間は午後7時半をすぎていましたが,通行客を避けて写真を撮るのに,15分くらいねばってみまし た。ラッシュ時間にはもっと多くの人がここを行き交うことでしょう。 東京に来られる方,東京から地元に戻られる方,そして東京駅を通勤で利用される方など多くの方に目に止ま るように配置され,ストップ結核大使のビートたけしさんが,駅を利用する多くの人に「他人ごととは思えない ね,結核は現代の病気だ」とポスターからしっかりアピールしてくださいました。 平成22年3月15日 発行 複十字 2010年332号 編集兼発行人 藤木 武義 発行所 財団法人結核予防会 〒101- 0061 東京都千代田区三崎町1-3-12 電話 03(3292)9211(代) 印刷所 日本印刷株式会社 東京都千代田区外神田6-3-3 電話 03(3833)6971 結核予防会ホームページ URL http://www.jatahq.org 36 3/2010 複十字 No.332 本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。 複十字シール運動 平成22年度複十字シール図案 安野光雅氏の楽しい世界 第9回 みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会 子ども 昨年に引き続き,平成22年度も安野光雅先生のすばらしい作品を お届けします。子どもたちがいろいろな遊びに興じる様子に,幼い 日を思い出される方もおられるでしょう。作品全体のほかに,部分 をピックアップしたものもご用意しました。まったく違う雰囲気を お楽しみください。 22年度も皆さんのご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。 事業部資金課 (原画) ● 切手にみる結核 15.さまざまなキャンペーンの切手たち 岡西雅子様からいただいた貴重な切手のご紹介も最終回の15回目となりました。今回はさまざま なキャンペーンのロゴが入っているものを集めてみました。 ①②リベリア・1956年 ③アメリカ・1960年 ④東ドイツ・1966年 ⑤中央アフリカ・1967年 ⑥⑦ケニア・ウガンダ・タンザニア・1968年 ⑧コートジヴォアール・1968年 *切手の下には,発行地域と発行年を記載しています 東海道・山陽新幹線改札に向かって 東北新幹線改札(柱の両側に貼ってあります) 八重洲中央改札に向かって(柱全部にポスター) 改札を入るとポスターがお出迎え 3月24日は世界結核デーです。 2010 イノベーションで結核対策を加速しよう! 世界では、アジアとアフリカの発展途上国を中心に、年間 900 万人以上が新たに結核を発病し、 200 万人近くが死亡しています。世界の結核患者の 3 人に 1 人は、十分な結核の診断と治療を 受けることが出来ていません。 結核のない世界へ向けて、革新的なアプローチで、結核対策を飛躍的に進めていきましょう。