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設計手法,開発事例 MEMS の製造プロセス,設計手法

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設計手法,開発事例 MEMS の製造プロセス,設計手法
第2 章 MEMS の製造プロセス,設計手法,開発事例
第2 章
MEMS の製造プロセス,設計手法,開発事例
前田 利夫
ここでは,MEMS のうち,とくにシリコンをベースとするシ
し,外部(外界)とのインターフェース,とくにセンサなどは
リコン・マイクロマシンの製造プロセスと設計手法について解
外付け部品として実装されることが多く,システムの小型化,
説する.MEMS の開発ではたしかに既存の半導体製造装置
低価格化の障害となっています.シリコン・マイクロマシン部
を流用できるが,細かく見ていくと,製造工程や設計手法に
品を電子回路と同一のシリコン基板上に集積することにより,
ついて,LSI 開発の場合と異なるところがある.たとえば,
システムをさらに小型に,低価格にすることができます.
可動部分を備えるマイクロマシンでは,間隙を形成するため
これまでは研究段階にあったシリコン・マイクロマシンです
の犠牲層エッチングが必要になる.レイアウト設計時の検証
が,ここにきて急速に身近な技術になってきました.ガスや
では有限要素法による構造解析などが必要になる.また,最
液体の流量を計測する圧力センサ ,プロジェクタに利用さ
後に,MEMS 技術を使ったヒット商品であるシリコン振動子
れているディジタル・ミラー・デバイス や自動車用エア・バ
圧力センサの概要についても紹介する.
ックの加速度センサなど,従来の製品に比べて小型で,高性
(編集部)
1)
2)
能,高機能,低コストのシリコン・マイクロマシン応用製品
近年,新しい技術として注目をあびているマイクロマシン
が続々と市場に現れています.
(MEMS)の研究・開発には,大きくわけて二つのアプローチ
があります.一つは,マイクロ旋盤で微小部品を削り出し,
1.シリコン・マイクロマシンの加工技術 3)
これを組み立てていくような,従来の機械製造の延長線上に
あるアプローチです.もう一つは,すでに微細加工技術とし
シリコン・マイクロマシンは,フォトリソグラフィなどIC
て確立されているIC 製造技術を応用して,シリコン上に機械
の製造技術を利用して製造されます.しかし,エッチングの
システムを実現するアプローチです.後者の方法で製造した
工程については通常のIC の製造ではあまり使われることのな
マイクロマシンをシリコン・マイクロマシンと呼びます.この
章ではシリコン・マイクロマシンに焦点をあて,製造プロセ
酸化膜(SiO2)
ス,設計手法,開発事例について解説します.
●身近になるシリコン・マイクロマシン
シリコン基板
シリコン・マイクロマシンには従来の機械装置にはない三つ
の特徴があります.
(a)等方性エッチング
¸組み立て工程が不要
印刷の要領で部品加工が進むため,微細な部品を正しい位
置に置くことが容易です.したがって高精度の組み立て作業
が不要となり,小型の機械素子を実現できます.
(100)
面
酸化膜
(SiO2)
(111)
面
54.74゜
シリコン基板
¹大量生産が容易
IC と同じように,均質な製品を大量に作ることができ,製
品単価を下げることができます.
º機械素子と電子回路を同一基板上に集積可能
電子回路については,集積化が進み,システムが一つのチ
ップに集積されることが当たり前になってきています.しか
(b)異方性エッチング
〔図 1〕等方性エッチングと異方性エッチング
_の等方性エッチングでは,結晶面の方向によらず同一の速度でエッチングさ
れていく.したがって,明確な結晶面が出ることもなく,レジストの下部もオー
バ・エッチングされていく.
`の異方性エッチングでは,結晶面の方向によってエッチング速度が異なるた
め,結晶面に沿ったきわめて正確な角度をもった平滑面が現れる.
Design Wave Magazine 2000 May
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い工程も使用されています.ここではシリコン・マイクロマ
グの例を図 1 `に示します.
シンに頻繁に使われる異方性エッチング,犠牲層エッチング,
バルク・マイクロマシーニングについて説明します.
●可動部分の隙間を形成する犠牲層エッチング
マイクロマシンの部品は非常に小さいため,部品を加工し
●結晶面の方向で速度が変わる異方性エッチング
シリコン単結晶のエッチング速度はエッチング液の種類と
結晶面の方向に依存します.
た後で組み立てるという工程は現実的ではありません.各部
品を一括して加工し,組み立ても同時に行うために開発され
た方法が犠牲層エッチングです.
等方性エッチングと呼ばれているエッチングでは,エッチ
機械部品が機能するためには,各部品が機械的に分離して
ングが結晶面の方向と無関係に全方向に同じ速度で進みます.
いる必要があります.可動部分の隙間を確保する目的のため,
図 1 _に等方性エッチングの例を示します.
分離が必要な部分にあらかじめ薄膜を形成しておき,この上
これに対して異方性エッチングでは,結晶面の方向により
に必要な部品を生成します.その後,この薄膜をエッチング
エッチング速度が大きく異なります.したがって,エッチン
により取り除いて,部品間の分離を実現します.この薄膜を
グされた箇所は結晶面に沿った,きわめて正確な角度をもっ
犠牲層と呼び,この犠牲層を取り除いて隙間を形成すること
た平滑面として現れます.異方性エッチングでは,単結晶シ
を犠牲層エッチングと呼びます.
リコンをアルカリ系溶液やアンモニウム水酸化溶液でエッチ
ングする方法が一般的です.溶液としてKOH(水酸化カリウ
犠牲層エッチングを使って作られた立体構造の電子顕微鏡
写真を写真 1 に示します.
ム)やTMAH(ハイドロオキサイド)が使用されます.たとえ
ば,KOH で単結晶シリコンの(100)面をエッチングすると,
54.74 ゜の角度をもった(111)面が現れます.異方性エッチン
●基板を削るバルク・マイクロマシーニング
バルク・マイクロマシーニングとは,シリコン基板自体を
多量に取り除くプロセスのことです.バルク・マイクロマシ
ーニングは,可動部分の隙間を確保する目的だけではなく,
熱など基板からの干渉を低減したり,センサ部分を薄くして
感度を上げる目的で利用されます.シリコン・マイクロマシ
ンでは頻繁に用いられます.
図 2 に,バルク・マイクロマシーニングによってシリコン
基板の裏面をエッチングし,ダイアフラム化した圧力センサ
の断面図を示します.ダイアフラム式圧力センサでは,ダイ
アフラムにかかった圧力を抵抗器の抵抗値や振動子の振動
数の変化として検出し,圧力を計ります.ここでは異方性
〔写真 1〕犠牲層エッチングを使って作られた立体構造
犠牲層エッチングによって各部品の機械的分離を行い,中空構造を実現した
ヒンジである.各部品はポリシリコンでできており,各部品間のすきまは犠牲層
をエッチングによって取り除いたためにできたもの.
エッチングを利用したバルク・マイクロマシーニングが使わ
れています.
シリコン・マイクロマシンの製造工程
静電駆動モータを例にして,シリコン・マイクロマシンの
圧力
シリコン単結晶
4)
振動子
製造工程の一例を説明します .使用されているプロセスは,
米国 Cronos Integrated Microsystems 社が提供している
「マルチユーザMEMS プロセス(MUMPS)」です.このプロ
セスは4 インチn 型(100)基板を使用した3 層ポリシリコン・
エッチング加工
〔図 2〕バルク・マイクロマシーニングの例
バルク・マイクロマシーニングによってシリコン基板の裏面をエッチングし,
ダイアフラム化した圧力センサの断面図.異方性エッチングによって,正確な角
度をもった平滑面が現れる.
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プロセスです.機械素子はポリシリコンで作られ,犠牲層は
PSG(phosphosilicate glass)が使われています.図 3 _に
静電駆動モータのレイアウト図を示します.図 3 `に製造さ
れた静電駆動モータの電子顕微鏡写真を示します.
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