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ファプレス化の進行における人的資本と企業価値

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ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
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ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
一一日本の製造業に基づくパネルデータ分析一一
HumanCapitalandFirmValuei
ntheProgressiono
fFabless:
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王
正国
ZhengguoWang
1.はじめに
経済学の分野では,人的資本 (HumanC
a
p
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I)と経済成長との関係について,長い期聞に
渡って議論がなされてきた。例えば, B
e
c
k
e
r(
19
6
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) は,人的資本の生産性に対する著しい貢
献を指摘した。
企業の生産性及び企業価値を分析する際に,企業の無形資産に含まれる人的資本の役割も重視
ta
.
l(
2
0
0
5
) では,アメリカ企業の財務データを用い,人的資本を定量
されてきた。 Abowde
化し,その分析結果として人的資本は企業価値とプラスの相闘があると指摘した。
Miyagawa
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akizawaandEdamura (
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)は
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ta
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2
0
0
5
) に倣い, 日本政策
0
0
0年から 2
0
0
9年までの期間における企業の
投資銀行データパンクの個別企業データを使い, 2
無形資産ストック(ソフトウェア,研究開発,広告宣伝,人的資本など)を構築し,企業サンプ
ルを, I
T産業と非 IT産業に分割し,操作変数法で無形資産と企業価値との関係を分析した。そ
T産業においては,非 IT産業より高
の結果,人的資本を含む無形資産の企業価値への貢献が, I
いことを明らかにした。
本稿では,最近になって機械系産業に顕著に見られるファプレス化の進行が,人的資本と企業
価値との関係に L、かなる影響をもたらすのかについて実証分析を通じて明らかにする。本稿で扱
う人的資本は本社人件費と役員報酬の合計から計算される。そして先行研究と区別するために,
日本の製造業で起きているファプレス化現象 ω に注目し,ファプレス化企業の特性を織り込ん
だ企業価値モデルに基づいて分析を展開する。先行研究として,ファプレス化が注目される以前
に,ホワイトカラーの生産性に関する文献が少なからず存在することが知られているが,本格的
(1) ファプレス化現象は,つまり企業が製品の企画設計や開発を行い,製品製造はアウトソーシングする
ため,自社では大規模な設備投資を行わずに最小限の製造規模(或いは全く製造を行わない〕にとどめ
る現象のことである。
8
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『明大商学論叢」第 9
7巻第 4号
(
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3
6)
な実証分析として,電気機械産業を対象に,ホワイトカラー部門の生産性を TFPにより計測し
た,中島・前田・靖国(19
9
8
) を挙げることができる{九本稿は,これらの先行研究とは異なり,
近年の機械系産業のファプレス化に注目し,かつ企業価値モデルの利用により,人的資本の蓄積
が企業価値の増加につながることが,さらには,ファプレス化が進捗している企業では,その効
果が一層顕著に見られることを明らかにしようとするものである。
第 2節では, 日本の製造業におけるファプレス化現象を説明し,人的資本との関係に結びつけ
る。第 3節において,企業価値の最大化問題を説明し,モデルの展開を紹介する。また第 4節は,
人的資本が企業価値にどのような影響を与えるのかを考察し,その実証分析結果を提示する。第
5節において結論をまとめる。そして最後に実証分析に利用されたデータの説明を補足する。
2
. 人的資本から見るファプレス化
近年, 日本の製造業(特に電気機器, 自動車〉では,ファブライトやファプレス現象が起きて
いる。ファブライトとは,自社では大規模な設備投資を行わずに,最小限の製造規模にとどめ,
生産の大部分を外部企業に委託することである。同様に,ファプレスは自社が製品の企画設計や
開発のみを行い,すべての製造はアウトソーシングすることを指す。これらの企業の特性として,
製品の研究開発や製品の販売に多額な人件費がかかっており,それに対する製造規模が小さいた
め,自社工場の労務費が少ないと考えられる。
表 1は,本稿に利用される機械系産業の財務データで計算された,本社人件費/労務費の比率
と労務費/売上高の比率を示したものである。
表 lをみると,企業のファプレス化を反映する本社人件費/労務費の時系列推移は, 1
9
9
0年か
0
0
7年まで全体的に上昇する傾向が見られた。そして 2
0
0
8年に入っ
らリーマンショック直前の 2
0年代初期より高い値となっていることが分か
てから上下的な動きがあったが,平均的に見て 9
る。この傾向は,後述の電気機械産業ではより顕著なものとなっている。また,労務費/売上高
0年代半ばの 14%前後から 2
0
0
8年には 10%までに低下している。従って,
の比率は, 9
日本の
機械系産業は従来,開発設計から製造まで一貫して行ってきたが,設備投資の巨額化や国際的な
価格競争の影響で,ファプレス化の進行が見られた。
アメリカのアップル社とナイキ社や韓国のサムスン社は有名なファプレス化の企業例として挙
げられるが, 日本において,ゲーム機器を設計する任天堂社は有名なファプレス化企業として知
られている。そして,車の電子部品を設計するキーエンス社もファプレス化企業を代表する会社
である。表 2は,代表的なファプレス化企業と,大企業でファプレス化に熱心といわれている企
R
/
S
)の時系列推移である。
業における本社人件費/労務費 (W/R)と労務費/売上高 (
W/R)の水準は
表 2において,同じ機械系製造業に属する企業聞でも,本社人件費/労務費 (
(2) それ以前の先行研究については,同文献に詳しく紹介されている。
(
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3
7)
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
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表 1 機械系製造業における本社人件費/労務費と
労務費/売上高の時系列推移
本社人件費/労務費
W/R
年
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機械系製造業
労務費/売上高
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.
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0
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7社各年度の平均値
まちまちであるが,共通していることは本社人件費/労務費 (W/R)の比率が時系列的に上昇す
る傾向が見られる点である。それに対して労務費/売上高 (R/S) の比率は非常に低い水準に維
0以上を越えている
持されてきた。特にキーエンス社の本社人件費/労務費 (W/R) の比率が 1
ことが注目を集める O またこれら数社におけるてつ比率の動き傾向は表 Iの機械系製造業全体と
同じように見える。年に伴い,本社人件費/労務費 (W/R) の比率は増加する一方,労務費/売
上高 (R/S)の比率は逆に減少(又は低い水準に維持)していることが分かる。
3
. 企業価値の最大化問題
企業は物理的資本と人的資本への投資を意思決定して,回当付きの企業価値を最大にする。こ
期から
こで,t
t
+1期までの確率的割引ファクター C
s
t
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c
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s
t
i
cd
i
s
c
o
u
n
tf
a
c
t
o
r
) を Mt+l と表
すと,企業価値の最大化問題は(1)式のように書ける ω。
(3) 以下の説明は, V
i
t
o
r
i
n
o(
2
0
1
3
) の動学的投資モデル解説部分を一部変更して要約した。
E4
什
唱
E
t
l
L M sDit+sI
L
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τ。 」
、3ノ
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H山 + ! o bU+S+I
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〆,‘、
v
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『明大商学論叢」第 9
7巻第 4号
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表 2 日本企業におけるフ 7 プレス化の進展
任天堂
年
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一
ここで,
キーエンス
オムロン
東芝
富士通
W/R
R/S
W/R
R/S
W/R
R/S
W/R
R/S
W/R
R/S
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0
.
10
4
0
.
10
6
0
.
10
8
0
.
12
1
.
12
0
0
.
10
7
0
0
.
0
9
0
0
.
0
8
9
0
.
0
9
1
0
.
0
8
7
0
.
0
8
5
0
.
0
6
9
0
.
0
6
1
0
.
0
5
8
0
.
0
5
5
0
.
0
6
2
0
.
0
6
7
0
.
0
5
9
0
.
0
5
1
0
.
0
5
3
0
.
0
5
3
0
.
0
5
5
t
.
を 期の税率とすると ,D
i
tは企業の減価償却前売上総利益(りから役員報酬を含む
t
本社人件費(町),設備投資費用 (
J
t
),人的資本ストック(高)と物理的資本ストック (K
)の
t
蓄積に要する調整費用 (
θ
t
),減価償却と税金等を引いた企業 iの t期のぺイアウトである。企業
iの t期のペイアウトは次の式のように与えられる。なお,ストック変数は期首,フロー変数は
期中での計測値となる。
Di
I=
=(
1
一τ
)[Y(ん H
i
t
.X
ρ -p~W;t-õ: Ki/P
t
D
t
]-p:lit+P~Õ~Kit 7:t+bit+l
一何回~bit+ τt( r;:-l) b it
(
2
)
となる。ここで, ρ
5は消費者物価, ρ
tは産出価格,p~ は投資財価格 , p:ô~Kit.t は減価償却に
よる節税効果,b
t
iは負債の資本コスト,
dはクゃロスの負債コストである。
(1)式の制約条件は,物理的資本の蓄積 (3)式と人的資本ストックの蓄積 (4)式である。物理
的資本ストックは (3)式のように蓄積される。
K
lo:)K
t
i
1ニ ん 十 (
t
i
+
ここで1;/は物理的資本投資であり,そして
(3)
δ
fは物理的資本の減価償却率である。
人的資本ストックは (4)式のように蓄積される。
= 同 +(
o:)H
1H
i
i
/
t
+l
(4)
(639)
P
t
i三
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
V
i
t-Duを阻当落ち企業価値, b
+1を負債発行額として,制約式 (3)式,
t
i
るラグランジュ乗数(物理的資本と人的資本のシャドー・プライス)をそれぞれ,
8
7
(4)式に関す
Q
f及び Q
f
f
と定義すると,企業価値最大化問題から, (5)式が得られる(九
,
.
;
P+bt
+1= QffKit+1+QffH
十l
i
t
i
(5)
(5)式において , Q
t
!
(K
+1は物理的資本の価値を表す。同じように , Q
f
f
H
;
t
+lは人的資本の価
t
i
値を表す。
企業が投資する際には調桜費用が生じる。この調整費用問数を以下のような:三次関数で具体的
に表現する。
1 (I
2
t
i¥
1 (H
t
i
tV
t
θ言。(1,山ん町t,Hi,
)= τ叫E7jktt+ταHは~)Hit
T T
,
(6)
具体的な調整費用関数 (
6)式を利用すると,物理的資本と人的資本への投資に関する 1階条件
より,両者のシャドー・プライスを具体的に書くことができる。すなわち,
Q(
t
!=
=P~+ (I
石川
c
1
刈d叫吾)
Q
f
f=
=
(7)
(8)
が得られる O
一方, (7)式と (8)式で表現された物理的資本と人的資本に関するシャドー・プライスを利用
して (5)式を変形すると,
(
I
叫
Q
i
t
{1
+
が得られる。 (9)式によって,企業の市場価値を企業特性の関数として説明することができるヘ
4
. 実証分析
本節では
2節で説明したファプレス化企業の特性を, 3節で導出された(9)式を筒略化した
モデルを利用して分析する。最初に,モデルで扱う各変数の記述統計量を示し,ついで各産業に
(4) 導出の詳細は, V
i
t
o
r
i
n
o(
2
0
1
2
) を参照のこと。 (5)式については,ファイナンスの文献とは独立
19
8
4
)
)。
に,経済学の分野では既に multipleq関連の文献では良く知られた関係式である (Wildasin(
(5) (9)式において,平均 qを右辺の第 l項で説明す.Q試みは既に, B
e
l
o,XueandZhang(
2
0
1
3
)や
SuzukiandChida(
2
0
1
3
) によりなされている。彼らは, GMMを利用したモデルの特定化に関する
検定を行っている。
「明大商学論叢』第 9
7巻第 4号
8
8
(
6
4
0)
対する実証分析の結果を示す。すなわち,
︺
S
EA
唱
(
1ノ
、
、
〆ft
nU
α
1
(
去)刊号)吋
Qit=
(
10
)式右辺の αl'α2とαaはそれぞれ,設備投資,人的資本投資とファプレス化がそれぞれ企
業価値に及ぼす影響を表す係数である。
4
.
1 業種別各変数の時系列推移
この節において,企業別財務データから推計した業種別各変数の時系列推移を示す。表 3から
表 9まではその結果を表している。
すべての業種において,資本の再調達価格を利用した Q2 (時価平均 q
) は,簿価総資産を利
用した Q1 (簿価平均 q) より大きく計測され,そして平均的に 1前後に分布し,より経済理論
と整合的な値となっている。また, Q2の変動幅は Q1より大きいことも見られる。その理由と
して, Q1は簿価総資産で計算され, Q2は景気変動に大きく影響される資本の再調達価格で計算
したことによると考えられる。この傾向は,特に土地資産について顕著にみられる。
.4前後に分布していることに対して,設備投資率 (
I
/K)
また,人的資本投資率 (W/H)が 0
は0
.1前後と長期低迷の状態に陥っていることが分かる。
本社人件費/労務費の比率 (W/R) について,殆どの業種は 1
9
9
0年からリーマンショック直
前の 2
0
0
7年まで増加する傾向があった。その中,特に電気機器の本社人件費/労務費の比率は
2
0
0
5年まで約 27%増えてきた。 2
0
0
6年以後若干減少したにもかかわらず, 9
0年の始まりより
20%以上の増加を維持している。その理由として,ファプレス化の進行が大きいと見られる半導
体産業の多数は電気機器産業に含まれているからと考えられる。また,化学と食料品における本
社人件費/労務費の比率 (W/R)が高い理由は,化学は医薬品等で研究開発部門の比重が大きく,
食料品はもともとファプレス化の傾向が強いため,本社の人件費も高いと考えられる。
なお,機械系産業と比較して製造業全体の本社人件費/労務費の比率が高いのは,化学,食料
品に加えて,任天堂等が含まれるその他製造業での同比率が高いことによる。そうした業種によ
る偏りもあるので,以下の業種別分析では,開業でも本社人件費/労務費の比率が高い企業とそ
うでない企業とで,企業価値に人的資本投資率 (W/H)が及ぼす影響力が有意に異なるかを検
証していくことになる。
w
,
.
w
,
.
(6) (9)式に忠実に従うなら, ファプレス化の経済効果を示す変数と変数との交差項に,
H"
-~- R
"
l
t
"
'
'
'
Z
l
l 変数や相対価格が乗じられることになる。しかし,本稿では,ファプレス化の効果を直裁的に捉
与
~l. it+l
えるために, (9)式を簡略化したモデルを利用して分析する。
(
6
4
1)
8
9
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
表 a製造業全体ー各変数の時系列推移
Year
Q1
Q2
I/K
W/H
W/R
R/S
会社数
1
9
9
0
1
9
9
1
1
9
9
2
1
9
9
3
1
9
9
4
1
9
9
5
1
9
9
6
1
9
9
7
1
9
9
8
1
9
9
9
2
0
0
0
2
0
0
1
2
0
0
2
2
0
0
3
2
0
0
4
2
0
0
5
2
0
0
6
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
2
0
1
2
1
.0
7
5
0
.
8
3
0
0
.
5
7
2
0
.
7
0
4
0
.
7
2
5
0
.
6
2
7
0
.
6
7
3
.
47
3
0
0
.
3
6
4
0
.
42
2
0
.
3
9
1
0
.
3
3
4
0
.
2
9
7
0
.
3
7
2
.
45
3
0
0
.
5
9
3
0
.
6
1
9
0
.
5
1
8
0
.
3
0
3
0
.
3
2
5
0
.
3
1
0
0
.
2
6
8
0
.
2
4
9
4
.
12
3
2
.
6
2
5
1
.
11
1
1
.6
4
0
1
.7
7
7
1
.5
4
8
1
.9
0
7
1
.2
7
9
0
.
8
7
3
1
.0
3
3
1
.0
4
7
0
.
9
0
7
0
.
7
7
9
1
.0
0
4
1
.3
5
8
1
.9
7
8
.
16
5
2
1
.8
2
2
0
.
9
2
9
0
.
7
9
5
0
.
8
1
4
0
.
7
2
5
0
.
6
9
6
0
.
18
1
0
.
19
3
0
.
17
9
0
.
13
8
0
.
10
6
0
.
0
9
8
0
.
0
9
9
0
.
10
7
.
11
4
0
0
.
0
9
6
0
.
0
9
7
.
10
1
0
0
.
0
9
1
0
.
0
7
1
0
.
0
6
7
0
.
0
9
0
0
.
10
5
0
.
11
3
.
10
5
0
0
.
0
9
0
0
.
0
8
0
0
.
0
6
8
0
.
0
8
0
0
.
42
5
0
.
43
3
0
.
4
3
3
.
42
3
0
.
41
4
0
0
.
40
8
0
.
40
8
0
.
40
2
0
.
40
3
0
.
3
9
5
0
.
3
8
3
0
.
3
9
1
0
.
3
9
2
0
.
3
8
6
0
.
3
9
0
0
.
3
9
1
0
.
3
9
4
0
.
3
9
6
0
.
3
6
8
0
.
3
7
0
0
.
3
6
8
0
.
3
8
5
0
.
3
9
4
0
.
8
8
8
0
.
9
1
4
0
.
9
4
6
0
.
9
7
7
0
.
9
7
4
0
.
9
8
5
0
.
9
9
4
1
.0
1
1
1
.0
2
3
1
.0
2
4
1
.0
1
2
1
.0
0
9
1
.0
5
3
1
.0
8
6
1
.0
9
5
1
.0
9
9
1
.0
9
8
1
.
11
5
1
.0
1
4
0
.
9
9
0
0
.
9
9
4
1
.0
0
8
1
.0
1
0
0
.
10
3
0
.
10
2
.
10
6
0
.
11
2
0
0
.
11
7
.
11
4
0
.
11
2
0
0
.
10
8
.
10
8
0
0
.
11
3
.
10
9
0
.
10
4
0
0
.
10
8
.
10
2
0
0
.
0
9
8
0
.
0
9
2
0
.
0
8
9
0
.
0
8
7
0
.
0
8
4
0
.
0
9
1
0
.
0
9
7
0
.
0
9
2
0
.
0
9
2
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
5
8
4
表 4 機械系製造業一各変数の時系列推移
Year
Q1
Q2
I/K
W/H
W/R
R/S
会杜数
1
9
9
0
1
9
9
1
1
9
9
2
1
9
9
3
1
9
9
4
1
9
9
5
1
9
9
6
1
9
9
7
1
9
9
8
1
9
9
9
2
0
0
0
2
0
0
1
2
0
0
2
2
0
0
3
2
0
0
4
2
0
0
5
2
0
0
6
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
2
0
1
2
1
.0
6
0
0
.
7
9
2
0
.
5
0
7
0
.
6
5
5
0
.
7
1
0
0
.
6
2
3
0
.
6
7
5
.
48
5
0
0
.
3
6
1
.
46
8
0
.
43
3
0
0
.
3
1
7
0
.
2
8
1
0
.
3
7
0
.
45
2
0
0
.
6
1
3
0
.
6
2
5
0
.
5
3
7
0
.
2
6
4
0
.
3
0
3
0
.
3
0
8
0
.
2
5
8
0
.
2
2
7
4
.
5
5
8
2
.
9
7
6
1
.2
4
5
1
.7
6
3
1
.9
3
9
1
.7
2
9
2
.
15
5
1
.4
7
6
0
.
9
6
8
1
.2
3
4
1
.2
3
4
0
.
9
0
8
0
.
7
2
9
1
.0
0
5
1
.4
1
6
2
.
18
9
.
40
8
2
2
.
0
1
3
0
.
8
1
9
0
.
7
1
4
0
.
7
6
8
0
.
6
5
9
0
.
6
1
2
0
.
18
3
0
.
19
6
0
.
18
9
0
.
13
6
0
.
0
9
5
0
.
0
8
7
0
.
10
3
0
.
1
0
9
.
12
0
0
0
.
10
0
0
.
0
9
8
.
11
2
0
0
.
0
9
7
0
.
0
6
9
0
.
0
6
5
0
.
0
9
8
0
.
12
3
.
12
8
0
0
.
11
1
0
.
0
9
7
0
.
0
7
4
0
.
0
6
5
0
.
0
7
9
0
.
42
8
0
.
43
6
0
.
43
8
.
42
4
0
.
41
0
0
0
.
40
6
0
.
40
9
0
.
40
5
0
.
41
0
0
.
3
9
8
0
.
3
8
6
0
.
3
9
7
0
.
3
9
8
0
.
3
8
7
0
.
3
9
4
0
.
3
9
5
0
.
3
9
9
0
.
40
4
0
.
3
7
7
0
.
3
7
3
0
.
3
6
7
0
.
3
8
9
0
.
3
9
7
0
.
5
9
8
0
.
6
1
5
0
.
6
2
9
0
.
6
5
5
0
.
6
7
6
0
.
6
9
0
0
.
6
9
8
0
.
7
2
1
0
.
7
1
9
0
.
7
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2
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7
(
6
4
2)
『明大商学論叢」第 9
7巻第 4号
9
0
表 5 電気機器ー各変数の時系列推移
Year
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表 6 一般機械ー各変数の時系列推移
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0
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5
8
5
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8
5
8
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5
(
6
4
3)
9
1
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
表 7 輸送用機械一各変数の時系列推移
Year
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Q2
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1
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5
1
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1
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1
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1
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1
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.
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3
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5
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1
.7
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。
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。
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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4
5
4
5
4
5
4
5
4
5
4
5
4
5
4
表 8 化学一各変数の時系列推移
Year
Ql
Q2
I/K
W/H
W/R
R/S
会社数
1
9
9
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9
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1
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0
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.
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.
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.
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.
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1
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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.
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1
0
0
.
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5
1
0
.
5
4
:
1
.
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6
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.8
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.
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1
.2
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.4
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.2
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.2
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0
.
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5
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0
.
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4
0
.
9
3
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0
.
8
1
4
0
.
7
4
1
明
。9
5
6
1
.2
0
1
1
.5
5
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1
.5
8
8
1
.3
2
6
0
.
7
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4
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.
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3
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.
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.
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2
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.
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.
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.
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.
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2
“
。3
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.
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.
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.
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.
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.
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1
.
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.
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.
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.
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1
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1
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1
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1
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.
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4
4)
『明大商学論叢』第 9
7巻第 4号
表 9 食料品ー各変数の時系列推移
Year
1
9
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0
1
9
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1
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.
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5
W/R
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1
.5
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1
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.5
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.4
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.4
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1
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.4
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1
.5
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.5
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1
.5
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1
.6
0
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.6
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.6
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4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4
7
4.2 実証分析の結果
との節では,作成した各変数の時系列データを用いて, (
10
)式で表される企業価値に対する人
的資本の経済効果について,ファプレス化の影響力を考慮しながら回帰分析を行う。推定を行う
9
9
0年代以後バブルの崩壊によって企業の設備投資,無形資産投資の流れに大
にあたっては, 1
きな変化があったと判断し,推計期聞を 1990-2012年度とした。また,推定は,製造業全体,
機械系製造業(電気機器,一般機械,輸送用機械),化学,食料品に対して,企業ダミーとタイ
ムダミーを含む固定効果モデルのパネル分析を行うことにする。表 10-表 1
6では,行った実証
0は製造業全体の実証分析結果となる。
分析の結果をまとめたものである。まず,表 1
0をみると,製造業全体において,設備投資率のパラメータ (
α
1
)は
, Q1 (簿価平均 q
)
表1
と Q2 (時価平均 q
) の二つの場合において,すべて 1%水準で有意な結果となった。従って従
来の設備資本の説明力がこのモデルにおいても成立すると言える。また,人的資本投資率のパラ
α
2
) について, Q1の場合は 5%水準で有意な結果となり, Q2の場合はさらに 1%水準
メータ (
で有意な結果が得られた。これによって,本稿で議論されてきた人的資本が企業価値と正の相閣
を持つことが明らかとなった。そして,ファプレス化のパラメータ (
α
3
) についても,すべて 1
%水準で有意な結果となった。従って,製造業におけるファプレス化の進行によって,企業価値
は増加する傾向があると考えられる。時価で計算された Q2は大きいため,その影響を受け, Q2
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
(
6
4
5)
9
3
表1
0 製造業全体の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
3
R2
S
.
E
.
R
0
.
1
3
3
)
(
2
.
1
61
0
.
0
0
7判 *
(
2
.
6
6
8
)
0
.
6
0
9
0
.
2
3
9
0
.
8
3
3
(
3
.
0
2
6
)
0
.
0
5
9ホホ*
(
4
.
9
3
3
)
0
.
5
7
2
1
.0
6
6
α
2
α
l
0
.
11
2
(
5
.
7
9
2
)
削機
Q
l
Q2
2
.
5
4
4常事*
(
1
8
.
9
8
9
)
叫
彬称織
o
b
s
.
1
3
4
3
2
1
3
4
3
2
注:定数項と年ダミーの推定結果は省略する。推定値の l行下の()内は t値 ,R2は自由度
修正済み決定係数, S
.
E
.
Rは 回 帰 の 標 準 誤 差 で あ る 。 “ ヘ 噌 は そ れ ぞ れ 有 意 水 準
1%,5%, 1
0
%で帰無仮説の棄却を示す。
の場合のパラメータの大きさは Q1の場合より遥かに大きいことが分かる。
表1
1の機械系製造業の推定結果をみると,製造業と同じような結果が得られていることが分
かる。 Q1における人的資本投資率のパラメータが 5%水準で有意な結果が得られた以外に,す
べてのパラメータの推定は 1%
水準で有意となった。そして,機械系製造業に推定されたすべて
のパラメータは製造業全体の推定結果より大きいであることから,機械系製造業における人的資
本が企業価値に与えるポジティプな影響は製造業全体の場合より大きい,さらにファプレス化の
進行によって,企業価値を増加させる効果も製造業全体より大きいと考えられる。
表1
1 機械系製造業の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年 度
Q
l
Q2
α
l
α
2
0
.
14
7事
術
事
0
.
16
3事*
(
2
.
5
5
9
)
1
.
4
5
5
(
2
.
9
1
7
)
(
4
.
7
2
2
)
3
.
0
9
6常
事
帰
(
12
.
3
5
2
)
帥噂
R2
S
.
E
.
R
0
.
0
5
2
(
2
.
5
7
0
)
0
.
5
8
5
0
.
2
5
9
0
.
2
7
3
*
(
2
.
7
7
6
)
0
.
5
6
1
1
.2
3
2
α
3
車市場
市場
o
b
s
.
5
6
8
1
5
6
8
1
注:定数項と生存ダミーの推定結果は省略する。推定傭の l行下の()内は t傭 , が は 自 由 度
.
E
.
Rは回帰の標準誤差である。 H ヘ 帥 , 事 は そ れ ぞ れ 有 意 水 準
修正済み決定係数, S
1%,5%, 1
0
%で帰無仮説の棄却を示す。
表 12-14は機械系製造業に含まれる電気機器,一般機械と輸送用機械それぞれの産業の推定結
果を表している。 Qlの場合は電気機器のみ,モデルのパフォーマンスが良い。 Q2の場合につい
て,三つの業種におけるパラメータの推定はすべてプラスで有意な結果が得られた。特に輸送用
機械のファプレス化のパラメータ〈 α3) は 2
.
2
6
5と大きな値が推測された。この値は推定された
設備投資率のパラメータ (α1)及び人的資本投資率のパラメータ (α2) よりも大きいことが分か
る。しかし,前節で計測された輸送用機械の時系列推移(表 7
) をみると,本社人件費/労務費
の比率が産業平均より低いし,そして時系列的に増加する傾向も弱いことから,輸送用機械にお
いては,ファプレス化が進行している企業は少ないが,行っている企業におけるファプレス化の
効果が非常に大きいと考えられる。
9
4
(646)
『明大商学論叢」第 9
7巻第 4号
表1
2 電気機器の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
1
Q
j
Q2
α
2
α3
0
.
2
2
1
0
.
2
6
7
0
.
0
6
7
必2
)
(
4
(
l
.9
8
0
)
(
2
.
0
7
3
)
3
.
7
4
5
'
*
*
(
8
.
9
6
7
)
l
.769*"
(
2
.
2
4
5
)
(
1
.9
4
6
)
指継指
本木
本*
0
.
2
2
3判
R
S.E.R
0
.
5
8
5
0
.
2
5
9
0
.
5
0
8
l
.245
2
o
b
s
.
2
4
8
4
2
4
8
4
注:定数項と年ダミーの推定結果は省略する。推定値の 1行下の()内は t値,がは自由度
修正済み決定係数. S
.
E
.
Rは回帰の標準誤差である o 日 牢 は そ れ ぞ れ 有 ぷ ; ) z 準
1
%
. 5~首. 1
0
9
首で帰無仮説の棄却を示す。
表1
3 一般機械の推定結呆
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
l
Q
j
Q2
α
2
α3
0
.
0
3
3
(
1
.
19
6
)
0
.
0
3
5
(
0
.
2
4
0
)
(
1
.2
3
3
)
2
.
5
5
4
2
.
0
7
9
0
.
3
5
0帥
44
2
)
(
6.
(
2
.
5
6
8
)
(
2
.
3
2
0
)
0
.
0
5
6
川市
判
R
S
.E
.R
0
.
6
6
2
0
.
2
2
2
0
.
6
2
7
1
.
226
2
o
b
s
.
1
9
5
5
1
9
5
5
注:定数項と年ダミーの推定結果は省略する。推定値の l行下の()内は t値,がは自由度
修正済み決定係数. S
.
E
.
Rは 回 帰 の 標 準 誤 差 で あ る 。 吋 ヘ は そ れ ぞ れ 有 必 : 水 準
1
%
. 5%. 10%で帰無仮説の棄却を示す。
表1
4 輸送用機械の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
l
Q
j
Q2
ー十
唱
。0
4
0
(
1
.5
4
8
)
2
.
0
9
0叫 *
(
5
.
6
7
2
)
α
2
0.
448***
(
3
.
8
61
)
l
.3
6
1*
(
1.
7
0
5
)
α
3
0
.
0
9
4
(
0
.
7
0
4
)
2
.
2
6
5ネ ホ *
R2
S.E.R
0
.
7
4
9
18
1
0.
0
.
6
0
4
0
.
8
3
4
)
(
3
.
5
01
o
b
s
.
1
2
4
2
1
2
4
2
注・定数 f
J
1と年ダミーの推定結果は省略する υ 指定値の l行下の()内は t
1
1
直,がは白山皮
修正済み決定係数. S
.
E
.
Rは 回 帰 の 標 準 誤 差 で あ る 。 判 ぺ 日 は そ れ そ ー れ 有 意 水 準
1
%
. 5%. 10%で帰無仮説の棄却を示す。
表 15の化学について, Q1 と Q2二つの場合において,すべてのパラメータが 1%無いし 5 %
水準で有意な結果となった。化学のファブレス化のパラメータ (α3) が有意となった原因は,研
究開発に伴う高い本社人件費を持つ医薬品企業が化学産業に所属しているためど考えられる。ま
に 食 料 品 の 推 測 結 果 は 表 16で表している。 Q1の場合は有意な結果が得られなかったが, Q2
の場合における三つのパラメータがすべて 1%水準で有意となった。
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
(
6
4
7)
9
5
表1
5 化学の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
l
α
2
α
3
R
'
S
.
E
.
R
Q
l
0
.
0
8
0
'
(
2
.
2
5
8
)
0
.
0
5
3
(
2
.
8
2
3
)
0
.
5
5
1
0
.
2
2
7
(
1
.9
8
1
)
Q
2
1
.8
7
6
)
(
9
.
4
41
1
.0
3
5
(
2
.
8
3
3
)
0
.
13
9
45
9
)
(
2.
0
.
5
2
4
0
.
8
0
3
事
学付
0
.
2
0
4
帯構
判事
事.,
事..
o
b
s
.
2
3
9
2
2
3
9
2
注:定数項と年ダミーの推定結果は省略する。推定値の 1行下の()内は t値.R
'は自由度
.
E
.
Rは 回 帰 の 標 準 誤 差 で あ る ‘ は そ れ ぞ れ 有 意 水 準
修正済み決定係数. S
1
%
.5
%
.1
0
%で帰無仮説の棄却を示す。
表1
6 食料品の推定結果
推計期間:1
9
9
0
2
0
1
2年度
α
1
α
2
α
3
R2
S
.
E
.
R
Q
l
0
.
0
5
3
(
2
.
9
6
2
)
0
.
0
3
8
(
0
.
2
1
4
)
0
.
0
0
3
14
0
)
(
0.
0
.
6
8
5
0
.
18
4
Q2
2
.
3
6
6
(
6
.
5
1
5
)
2
.
3
7
8
(
2
.
6
6
4
)
0
.
3
6
9
'
11
7
)
(
3.
0
.
6
5
5
0
.
9
3
4
判事
判事
事*
o
b
s
.
1
0
8
1
1
0
8
1
注:定数項と年ダミーの推定結果は省略する。推定値の l行下の()内は t値,がは自由度
修正済み決定係数. S
.
E
.
Rは 回 帰 の 標 準 誤 差 で あ る 。 “ ぺ 期 は そ れ そeれ有意水準
1
%
.5
%
.1
0
%で帰無仮説の棄却を示す。
5
.終 わ り に
本稿では, 1
9
9
0年代初頭のバブル崩壊以降, 2
0
1
2年までの,日本の製造業全体,機械系製造
業(電気機器,一般機械,輸送用機械),化学そして食料品を分析対象に,上場企業のバランス
ト・パネルデータを利用し, Tobinの q理論を用いることによって,本社人件費及び役員報酬
から蓄積された人的資本は企業価値にどのような影響を与えたかについて分析した。さらに,ファ
プレス化の考えを qモデルに取入れて,ファプレス化の進行が企業価値に及ぼす効果について
も分析した。
実証分析の結果をまとめると,製造業全体と機械系製造業において,簿価平均 q (Ql)と時
価平均 q (
Q
2
) 二つの場合において,設備投資率のパラメータ (α1)' 人的資本投資率のパラメー
タ (α2) とファプレス化のパラメータ (α3) はすべてプラスで有意な結果が得られた。そして,
機械系製造業における人的資本が企業価値に与えるプラスな影響は製造業全体の場合より大きい,
さらにファプレス化の進行によって,企業価値を増加させる効果も製造業全体より大きいことが
分かった。また,簿価平均 q (Ql)の場合,電気機器,→般機械,輸送用機械,化学,食品の
中で,電気機器と化学のみ,推定された三つのパラメータはプラスで有意な結果となった。時価
平均 q (
Q
2
) の場合,これらすべての業種において,三つのパラメータとも有意な結果が得ら
9
6
(
6
4
8)
『明大商学論叢」第 9
7巻第 4号
れた。
以上より,人的資本の蓄積が企業価値の増加につながることが,さらには,ファプレス化が進
捗している企業では,その効果が一層顕著に見られると結論付けられる。
補論.データの構築
本稿では日本経済新聞社の NEEDS-COMP
ANYに収録されている企業別データを用いて企業
のパネルデータを構築し推計を行う。まず,収録されている東京証券取引所第 l部および第 2部
9
9
0年度から 2
0
1
2年度まで存続していた製造業(ゴム,紙・パルプ,石油・
上場の企業のうち, 1
石炭,ガラス・土石,非鉄金属,金属製品,精密機器,化学,鉄鋼,一般機械,電気機器,輸送
8
4社を抽出した。
用機械,食料品,繊維,その他製造)の企業 5
①
Tobinの q
比較するため,本稿で実証分析する際に利用する T
obinの qは算出方法によって二つに分別
される。まず Q1とは,次の式で計算される。
Q,一市場価値+負債一流動資産一土地資産
一
一
l
総資産
(Al
)
(Al)式は簿価総資産を利用した平均 q の算出方法である。それに対して,本稿では,土地資
産を含まない企業の有形固定資産を時価評価したものを分母に置いて,資本の再調達価格を利用
した平均 q (Q2) を次の式によって算出するの。
Q?=vi+LIBt一 CUR t 一 ρ ~Lト
一
一
(A2)
(
ο
1一δ
的)
ρfK
←
H
,l
IB
ここで,記号の意味は以下のようになる。町:企業市場価値, L
t:負債総額, CURt:流動
期末の実質土地ストック,
資産, Lt:t
⑧
p
f
:t 期の投資財価格,
ρ~ :
t
期の地価。
I
.
設備投資額(叫
u
以下の算式で当期名目設備投資額を算出した。
当期名目設備投資額=当期末有形固定資産(簿価)ー前期末有形固定資産(簿価)
+当期減価償却費
(7) この式は小川・北坂
(
1
9
9
8
)の平均 qの計算を参照した。なお,それぞれの項目の計算方法は原論
文に詳しく書かれている。
(
6
4
9)
ファプレス化の進行における人的資本と企業価値
9
7
さらに,算出した名目設備投資額を上記の投資財価格で割ると,設備投資額の実質値(ん)が
求まる。
③
資本ストック
)
(K
t
資本ストックに関しては,恒久棚卸法 (
P
e
r
p
e
t
u
a
lInventoryMethod) に基づき物的資本ス
9
8
5年年度末の値であり,元の
トックの系列を作成した。ベンチマークとなる資本ストックは 1
データは簿価で与えられているので,簿価を実質値に変換する必要がある。従って, 1
9
8
5年の
企業毎の償却対象となる有形固定資産を上記の平均経過年数をさかのぼった時点の投資財価格で
割って,ベンチマークの実質値
(K
) を求める。資本ストックの物理的減耗率 (δ) について
t
一1
19
91)で計算された各資産の減耗率を「国富調査」における各資産の
は
, HayashiandInoue (
ウエイトで加重平均すれば,各産業ごとの加重平均した減耗率が得られる。
④ 人的資本 (H
)
t
T
X
l
人的資本のベンチマークは司=ー土.
1
1で計算し,司 +1
g十 iY
問+(1一 δH
)高によって蓄積され
る
。 Corradoe
tal
.(
2
0
0
5
) に従い,人的資本の減耗率 (
δH
)は年間 40%と仮定する。本社人件
費の平均成長率 (
g
)は全産業に通して年間 5%と算出された。
参考文献
Abowd,
J
o
h
nM.,
e
ta
.
l(
2
0
0
5
)
“
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6
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L
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1
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7
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1
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5
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1
6
9
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資産市場と景気変動一一現代日本経済の実証分析」日本経済新聞社
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