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5 野生生物の保護と管理

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5 野生生物の保護と管理
や建築物等における緑地空間の確保、社寺林や屋敷林の保全を推進し、良好な都市環境の形成、
緑豊かな生活環境の創出を図ります。
○ 地域の自然や文化に配慮しながら、うるおいのある道づくりを推進します。
○ 都市計画道路を中心に、街路樹の整備や沿道の緑化を推進し、都市公園や緑地、歴史的自然等
を結ぶ緑のネットワークの形成に努めます。
○ 道路整備にあたって周辺の自然環境に配慮し、在来種を使った法面保護などに取り組みます。
○ 良好な都市環境の形成に関する住民意識の向上に努めます。
【大分スポーツ公園の取組】
大分スポーツ公園では、真に里山に調和した緑
の再生を行うため、既存の森林を保全するととも
に、在来の樹木を活用した緑地の復元を行ってい
ます。また、森の中をすみかとするオオイタサン
ショウウオの生息環境を復元するため、公園内に
16箇所の保護池を整備しています。
これまでのモニタリング調査の結果、復元緑地
では、樹木が、現存の里山林に近い森林状態に生
育していることが確認されており、保護池では、
オオイタサンショウウオの自然産卵が毎年確認さ
れています。
5
オオイタサンショウウオ
野生生物の保護と管理
野生生物は、生物多様性の重要な構成要素であって、人間に食料や薬品の原料を供給するなど直接
的な利益をもたらすほか、精神的な癒しや潤いをも与え、我々が豊かな生活や文化を営むために欠く
ことのできないものです。
地域で普通に見られる種から希少な種まで、多様な野生生物が将来にわたって存続するためには、
人と野生生物との関わりを踏まえた適正な保護と管理の施策が必要です。
(1)絶滅のおそれのある種の保存
<現状と課題>
環境省は、全国的に絶滅のおそれのある野生生物の種を選定し、その生息・生育状況等を解説し
た「日本の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータブック)
」を1991年に作成し、以来、自然
環境と調和した開発計画の立案や自然保護施策の基礎資料として活用されてきました。
大分県においても、県内の希少な野生生物の生息・生育状況を総合的に調査・分析し広報するこ
とにより絶滅のおそれのある野生生物の保護を図るため、平成12年度に「レッドデータブックおお
いた」を発行しました。平成13年度にはその普及版を作成し小中学校などに配布し、県内の希少野
生生物の現状についての普及啓発を図りました。なお、平成18年度から5カ年計画でデータの見直
しに取り組み、平成22年度にその作業を完了しました。
「大分県希少野生動植物の保護に関する条例」を制定し、これまでに指
また、平成18年3月に、
定希少野生動植物(17種)や保護管理事業計画(5種)の指定・決定を実施しています。
48
<これからの主な取組>
保護にあたっては、県、市町村、県民等及び事業者等が一体となって取り組みます。
①捕獲、採取等の禁止
○ 大分県希少野生動植物の保護に関する条例に基づき、特に保護を図る必要があると認められ
る動植物を指定し、捕獲、採取等を禁止します。
②生息・生育地の適切な管理
○ 大分県希少野生動植物の保護に関する条例に基づき、希少野生動植物の保護管理計画を策定
します。保護するための施策の検討や実施にあたっては、自然保護団体等と協働して行いま
す。
○ 特定の環境のみで生息・生育している種の保護対策の充実を図るため、生息地等保護区やさ
らにその中に特別地域等を指定し、保護します。
○ 森林法に基づき貴重な動植物の保護に配慮すべき森林地域については、保健保安林の指定を
行います。保安林に指定されていない地域森林計画対象民有林の開発許可にあたっては、必要
に応じ、開発区域の変更等ミティゲーションにより貴重な動植物の保護に配慮します。
○ 大分県自然環境保全条例に基づく自然環境保全地域、鳥獣保護法に基づく鳥獣保護区、都市
緑地法に基づく特別緑地保全地区等の指定についても、必要に応じ行います。
③野生動植物の生息・生育の状況の定期的な調査
○ 野生動植物は、常に環境の変化にさらされているため、生息・生育状況、生息地・生育地の
状況等の定期的な調査を行い、レッドリスト・
「レッドデータブックおおいた」の改訂等を行
います。また、今後は海生生物についても調査を行い、その内容の拡充を図ります。それらの
結果に基づき指定希少野生動植物の指定等保護対策を実施します。
④違法捕獲・違法飼養の防止
○ 鳥獣の違法捕獲や違法飼養について、関係団体と連携して指導や取り締まりを行い、また県
民への普及啓発を行います。
⑤希少野生動植物保護推進員
○ 希少野生動植物の保護や啓発、調査、助言などをしてもらうために、ボランティアとして
「大分県希少野生動植物保護推進員」を委嘱します。
⑥市町村との連携
○ 県は、市町村が実施する取組について、助言や側面的な支援を行います。
表6
指定希少野生動植物及び保護管理計画策定状況一覧(H23.
2.
28現在)
分類群
種子植物
科名
ユリ科
イラクサ科
植
物
シダ植物
コケ植物
種名
RDB カテゴリー
大分県 環境省
指
定
年 月 日
保護管理
事業計画
タマボウキ
ⅠA
ⅠB
12.
26
H18.
H20.
3.
28
ヒメユリ
ⅠA
ⅠB
H18.
12.
26
H20.
3.
28
チョクザキミズ
ⅠA
ⅠB
H18.
12.
26
ニシキギ科
ナガバヒゼンマユミ
ⅠA
ⅠA
H18.
12.
26
ラン科
ナゴラン
ⅠA
ⅠB
H20.
3.
28
イワタバコ科
イワギリソウ
ⅠA
Ⅱ
H18.
12.
26
H22.
3.
31
キク科
ヒゴタイ
ⅠB
Ⅱ
H18.
12.
26
H20.
3.
28
イワギク
ⅠA
Ⅱ
H20.
3.
28
ナデシコ科
オグラセンノウ
ⅠA
ⅠB
H21.
3.
31
キキョウ科
ヤツシロソウ
ⅠA
ⅠB
H22.
3.
31
ホウライシダ科
ミズゴケ科
ホウライクジャク
ⅠA
ⅠB
H18.
12.
26
オトメクジャク
ⅠB
ⅠB
H21.
3.
31
準
準
H18.
12.
26
オオミズゴケ
49
分類群
動
物
科名
種名
RDB カテゴリー
大分県 環境省
指
定
年 月 日
保護管理
事業計画
H20.
3.
28
甲殻類
カブトガニ科
カブトガニ
ⅠA
Ⅰ
H18.
12.
26
昆虫類
タテハチョウ科
オオウラギンヒョウモン
ⅠB
Ⅰ
H18.
12.
26
シジミチョウ科
クロシジミ
ⅠB
Ⅰ
H18.
12.
26
ミズゴマツボ科
オンセンミズゴマツボ
ⅠA
Ⅰ
H22.
3.
31
陸・淡水産貝類
【生息・生育地の適切な管理のために∼ミティゲーション∼】
生息・生育地の適切な管理のために公共事業等における環境との調和への配慮は、ミティ
ゲーション5原則(環境配慮の5原則)に基づき行います。
ミティゲーションの原則5段階
1
回避
行為の全体又は一部を実行しないことにより影響を回避すること。
例:環境条件がよく、繁殖も行われているような生態系拠点は、現況のまま保全
2
最小化
行為の実施の程度又は規模を制限することにより影響を最小化すること。
例:自然石や自然木を利用した生態系に配慮した水路で影響を最小化
3
修正・修復
影響を受けた環境そのものを修復、再生又は回復することにより影響を修正するこ
と。
例:落差工により水路が分断されている状況を魚道の設置により修正
4
軽減
行為期間中、保護及び維持管理により時間を経て生じる影響を軽減または除去するこ
と。
例:環境の保全が困難な場合、一時的に生物を捕獲・移動し、影響を軽減
5
代償
代替の資源又は環境を置換あるいは提供することにより影響の代償措置を行うこと。
例:生物の生息地等を工事区域外に設置し同じ環境を確保
これらの段階は、その順に検討されることが望ましく、ビオトープ、移植を含む代償は、ミ
ティゲーションの諸段階の中でもっとも検討優先度の低い、いわば最後の手段です。
(2)野生鳥獣の保護管理
<現状と課題>
野生鳥獣の存在は、生物多様性の一部であり、生態系の中で重要な役割を果たしてきました。近
年、生息環境の変化により野生鳥獣が減少する一方、イノシシ、シカ、サル等増えすぎた野生鳥獣
による農林産物被害が増加し、一部では自然植生が失われるなどその対策が課題となっています。
このような現状から、本県における野生鳥獣の適
正な管理に資するため、
「鳥獣の保護及び狩猟の適
正化に関する法律」に基づき、有害鳥獣捕獲許可基
準等を盛り込んだ「第10次鳥獣保護事業計画(平成
19∼23年度)
」や「特定鳥獣保護管理計画」を策定
し、野生鳥獣の保護と農林水産業の健全な発展を目
指しています。
鳥獣の保護を図るため、鳥獣保護区及び特別保護
地区を指定するとともに、狩猟鳥獣の増加を図るた
め、休猟区を指定しています。鳥獣保護区は、平成
特別保護地区(大分市高島)
22年11月1日現在で、県下で66箇所、県土面積の約
5.
8%にあたる36,
951ha を指定しています。鳥獣保護区の内で、特に重要な鳥獣生息地10箇所につ
いては特別保護地区に指定しており、この中には天然記念物カラスバトの生息地として知られる佐
50
伯市蒲江の沖黒島や、ウミネコが営巣する大分市佐賀関の高島などが含まれています。
狩猟鳥獣については、毎年11月15日から翌年2月15日までを狩猟期間(イノシシ・シカについて
は11月1日から翌年3月15日まで)としており、鳥獣の種類、捕獲数を定めて狩猟を許可していま
す。
野鳥の生息実態を把握するため、毎年1月第2日曜日を中心に全国一斉に行われるガン・カモ科
鳥類生息調査や11月15日に行われるキジ・ヤマドリ出会い調査等を実施しています。
<これからの主な取組>
①鳥獣保護区の指定・管理
○ 鳥獣の生息状況、生息環境などを把握するとともに、関係団体や地域住民の理解を十分得た
うえで、鳥獣保護区の新規指定や存続期間の更新を行います。
○ 鳥獣保護区内で特に重要な鳥獣の生息地を特別保護地区に指定しその保護を図ります。
○ 野生鳥獣の行動域や繁殖地、渡り鳥の飛来地、水生生物が生息する水辺、自然植生の分布地
域やその周辺地域など、野生動植物の種の存続に重要な地域の保全に努めます。
②違法捕獲の取り締まり
○ 鳥獣保護員を委嘱し、違法捕獲や狩猟違反の取り締まりを行います。
③特定鳥獣保護管理計画
○ 農林水産業や生態系に甚大な被害を及ぼす種については、
「特定
鳥獣保護管理計画」等により、科学的かつ計画的な対策を実施しま
す。
○ 特定鳥獣保護管理計画を策定しているシカ、イノシシについて、
生息状況などのモニタリング調査を実施します。
④害獣等予防対策
○ 地域ぐるみで鳥獣から農作物を守る取組を促進するため、地域住
民と行政、専門家が協力して集落の環境診断、効果的な対策の導
入、効果判定を実施します。
○ 集落や農家に対して的確に鳥獣害対策を助言できるよう、鳥獣害
対策アドバイザーの育成を行います。
○ イノシシ等の加害獣を寄せ付けない環境を整備するため、耕作放棄地の解消、農地に接する
雑木林の整備等により、人と野生獣との緩衝帯づくりを進めます。
山林
農地
バッファーゾーン
農地と接する土地に草刈り等により見通しの良い部分(緩衝
帯:バッファーゾーン)を設け、本来警戒心の強い野生動物の
隠れ場所をなくすことによりその侵入を防ぎます。
出典:農林水産省 野生鳥獣害防止マニュアル
⑤野生鳥獣の救護体制
○ 県内で病気やケガ等により保護された野生鳥獣を治療し自然界に復帰させることを目的とし
て、鳥獣110番制度を設けています。また、油汚染事故により一時的に多数の油汚染された水
鳥が発生した場合など、迅速、適切な対応が可能となるよう体制整備を図ります。
51
⑥鳥獣保護思想の普及啓発
○ 鳥獣保護の理解と協力を得るため、愛鳥週間(毎年5月10日∼16日)を中心に、探鳥会や巣
箱作り、愛鳥週間用ポスター原画コンクールや自然観察や野鳥保護活動等を通じて情緒豊かな
人格形成の一助とすることを目的に、愛鳥モデル校の指定等を行います。モデル校指定時に
は、双眼鏡や野鳥図鑑の提供、野鳥教室の開催などを行います。
(3)外来種の防除
<現状と課題>
外来種への対策として、平成17年に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法
律」
(外来生物法)が施行され、平成22年2月現在97種類の特定外来生物(海外起源の外来種であっ
て、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるもの)が
指定され、輸入や飼養などの規制が行われています。国では、アライグマ、オオクチバスなどの防
除方法をとりまとめています。
本県には、オオキンケイギクなど外来植物が生育しており、近年では、オオフサモやブラジルチ
ドメグサなどの水生植物が河川に繁茂し大規模な防除が実施されています。
外来魚では、オオクチバスやブルーギルが県内のほぼ全域に分布し在来生物に悪影響を与えてお
り、県では、平成13年から内水面漁協を中心としてその駆除を実施してきました。また、本県は国
内有数の温泉地帯であるため亜熱帯・熱帯性の外来種(グッピーやナイルティラピア等)が一部で
定着し、生態系に大きな影響を与えています。
最近では、アライグマの生息も確認されており、地域に密着した防除体制を構築することが課題
です。
<これからの主な取組>
①生息・生育状況の把握及び防除
○ 自然公園の特別地域や、絶滅のおそれのある種への影響が懸念される地域について、外来種
の生息・生育状況等を把握するとともに、重点的な防除を実施します。
○ 河川においては、国土交通省の「河川における外来種対策の考え方とその事例(改訂版)H
20.
2」を参考に取り組みを強化します。
○ 温泉地等以外では繁殖しないため特定外来生物ではなく要注意外来生物(輸入や飼養などの
規制はない)に指定されるにとどまる種に関しては、県条例による規制を検討します。
○ オオクチバス等の繁殖が県内河川で顕在化していることから、内水面漁協による駆除の促進
を図ります。
○ 地域に生息・生育する外来生物について自治体や地域の団体等と一緒に防除の方法を検討し
ていきます。
○ 国内移入種を含む外来種による遺伝的かく乱を避けるため、環境修復・再生を行う際は、在
来種による復元を基本とします。
②大分県版外来種リストの作成
○ 県内の外来種の生息・生育状況などを整理してリスト化し、防除の必要性を広く周知しま
す。リスト化にあたっては、国が指定している特定外来生物や要注意外来生物のほか、本県や
隣接県で生態系などに影響を及ぼしている種についても対象とします。
③ホームページなどを活用した情報提供
○ 外来種防除対策に関する情報を県ホームページなどで広く県民に提供するほか、自然保護団
体などが実施している防除活動などについても情報提供を行います。
52
(4)動物愛護と適正な管理
<現状と課題>
飼養動物を生物多様性との関連で見ると、自然生態系へ侵入することによる生態系への影響など
の問題があり、飼養に際して適正に管理することが重要です。また、家畜化されていない野生由来
の動物の飼養については、動物の本能、習性及び生理・生態に即した適正な飼養の確保が一般的に
困難なことから、限定的であるべきです。さらに命ある動物を正当な理由なく殺し、傷つけ、苦し
めることを避けるだけでなく、その習性を考慮して適正に取り扱うことを基本とした動物愛護の考
え方は、人と動物の共生社会の実現に向け、生命尊重などの情操を育て、ひいては生物多様性の保
全に資するものです。
平成17年6月に「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、国が平成18年10月に策定した
「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本指針」に即して、県は「大分県
動物愛護管理推進計画」を平成20年4月に策定しました。
<これからの主な取組>
○ 飼養動物の遺棄又は逸走などに起因する外来種の野生化が問題になっていますが、外来種に限
らず全ての飼養動物について、県ホームページによる啓発、市町村・関係団体との連携、動物愛
護推進員の活動等を通じ、終生飼養や遺棄・虐待防止を図ります。
6
生物多様性を支える基盤づくり
私たちの生活が生物多様性の恵みに支えられていることについてあまり認識されていないことや、
生物に関する基本的な知識や認識の不足が生物多様性を脅かす大きな要因になっています。
将来の世代に豊かな生物多様性を引き継ぐことの必要性を一人ひとりが理解し、主体的に行動する
ことが大切であり、そのための普及啓発、広報活動、環境教育等を積極的に推進していく必要があり
ます。
また、生物多様性の保全のためには、まずその現状を把握し、その劣化をできるだけ早い段階でと
らえ、適切な保全対策の検討を行うことが重要です。
(1)普及啓発・広報活動
<現状と課題>
地球温暖化、オゾン層の破壊といった地球規模の問題や、家庭から出るごみや生活排水による環
境への影響といった身近な問題等、幅広い環境問題について県民は関心を持っており、また省資源
や省エネルギーの取組も実行しています。
その一方で、平成15年に実施した「大分県の環境に関する意識調査(県民意識調査)
」では、
「環
境についての講演、学習講座や活動場所に関すること」
「環境保全活動を行うサークルや団体に関
すること」
について知りたいと考える人は、それぞれ全体の5%にも満たず、多いとはいえません。
また、平成21年度に内閣府が行った世論調査では、
「生物多様性」という言葉を聞いたことがあ
る人が36.
4%で、
「生物多様性」ということばの認知度は依然として低い状況にあります。しかし、
平成22年は、国連の「国際生物多様性年」や生物多様性条約締約国会議(COP10)の国内開催等
により、
「生物多様性」に対する関心の高まりが見られました。自然の恵み豊かな県土を将来世代
に引き継いでいくためには、県民が暮らしの中で生物多様性について考え、意識することが必要で
す。
本県では、様々な啓発行事やパンフレット、ホームページ、案内板等により、普及啓発・広報を
行っています。
53
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