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Ⅱ 養液栽培パッケージモデル 大規模タイプ

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Ⅱ 養液栽培パッケージモデル 大規模タイプ
Ⅱ
養液栽培パッケージモデル
30
大規模タイプ
1
想定する大規模タイプの特徴
大規模タイプは、道内においては実証事例、成功事例が少なく、北海道型のモデル
を構築するにはその途上にあるため、次の手順により検討を行った。
①
北海道での大規模タイプの成立要件等を明らかにするため、可能性のある大玉ト
マトで一定の栽培条件を設定。
②
設定条件検討のため、立地条件、施設及び被覆資材の種類、栽培方法については
作型や栽植方法の検討、また暖房方法の検討を行い、それぞれの現状と課題を整理。
③
スーパーホルトプロジェクト協議会から提案されている生産モデルをベースに、
温室暖房燃料消費試算ツールにより暖房経費を試算し、少雪地域の連棟タイプ、多
雪地域の単棟多棟タイプについて経営評価を行った。ただし、気象条件については
冬期の評価に限定した。
なお、このモデルは、前述のとおり実証されているものではないことから、新しい
知見を加えてよりよいモデルへと発展させる、スタートのモデルと位置づけるものと
する。
○
設定した条件の概要
※検討の経過は「【参考1】大規模タイプの検討経過」を参照。
(1)前提条件
ア 対象 農業法人又は企業等
イ 作物 トマト
ウ 施設規模 1ha
(2)地域
少雪地域と多雪地域に区分して考える。
ア 少雪地域では、生育環境の均一化、作業効率の増加、暖房コストの低
減等のメリットから連棟とする。ただし、降雪に備え屋根谷部の融雪装
置を装備。
イ 多雪地域では、屋根から落雪させることを前提に、除雪スペースを確
保した上で単棟複数とする。
(3)ハウス設計
ア スチールパイプによる低コスト耐候性ハウスとする。
イ 被覆資材はPO系またはフッ素系とする。
ウ 軒高は、暖房コストを考慮し、3.5mの中軒高とする。
(4)トマトの種類等
ア 大玉トマトとし、品種は作付けの多い桃太郎系を想定。
イ 単価は平均的な市場単価とする。
(5)栽培方法
ア 品種を桃太郎系としたことから、長期多段栽培より向くと考えられる
低段密植栽培とし、段数は3段とする。
イ 固形培地耕とする。
(6)収量
販売量ベースで、30t/10a程度を目標収量とする。
31
2
経営試算
スーパーホルトプロジェクト協議会から平成25年8月に提案されている生産モデル
をベースに、北海道での適用を想定して、温室暖房燃料消費試算ツールにより暖房経
費を試算し、少雪地域の連棟タイプ、多雪地域の単棟多棟タイプについて経営評価を
行った。ただし、気象条件については冬期の評価に限定した。また、暖房経費を中心
とした検討であり、季節ごとの収量性や最適な栽植密度等については未検討である。
※ ス ー パ ー ホ ル ト プ ロ ジ ェ ク ト 協 議 会 (以下 、SH P)
平 成 18年 に 施 設 園 芸 協 会 と 野 菜 茶 業 研 究 所 が中 心 と な り、 全 国 の 産 官学 に 参 加 を 呼び か け
た 組 織 で 、「 世 界 の 水 準 を 超 え る 新 し い 日 本 の 施 設 園 芸 を 目 指 す 」 こ と を 目 標 に 、 ま ず は ト
マ ト を 中 心 に 養 液 栽 培 に お け る 多 収 ・高収 益のモ デル 作り等 に取り 組んで きてい る。
な お 、 S H P モ デ ル は 暫 定 的 な も の で 、 S H P が 終了 す る 平 成26年 7月 ま で に 議 論さ れ て
仕上げられるものとされている。
32
(1)少雪地域(連棟・苫小牧市を想定)
ア 試算条件等
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設)
項目
内容
備考
経営概要
栽培方式
3段密植栽培(大玉)
地域
東海地方
海岸沿い地域
経営形態
農業法人
販売形態
量販店契約出荷
直売
栽培品種
大玉系
国産品種
平均出荷単価
300 円/kg
役員 人数
3人
報酬
18,000 千円/年
労働時間
3,600 時間/年
社員 人数
0人
給与
0 千円/年/人
労働時間
0 時間/年/人
パート人数
16 人
時給
800 円/時間
気象条件
年間日照時間
2,000 h/年 以上
北海道型試算(少雪地域・連棟)
内容
備考
3段密植栽培(大玉)
苫小牧
農業法人
量販店契約出荷
直売
大玉系
国産品種
331 円/kg
札幌市場5ヵ年平均(H20-24)
3人
11,000 千円/年
試算結果による
3,600 時間/年
0人
0 千円/年/人
0 時間/年/人
16 人
750 円/時間
1,700 h/年 以上
気象庁平年値(1981-2010):
1703.1h/年
年平均全天日射量
13 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
11 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
り)
り):年3.30kWh(鵡川)×
3.6MJ=11.88
最低外気温
-3 ℃
-21.3 ℃
過去最低値(1945. 1.18)
最深積雪
0 cm
47 cm
日最大降雪量、1968.2.20の値(屋
根融雪を前提に降雪量とした)
最大瞬間風速
45 m/s
38.6 m/s
過去最大値(1981. 8.23)
施設
経営規模
約1ha
約1ha
ハウス
新設
複数棟で栽培ブロックわけ
新設
栽培ブロックわけ
栽培装置
養液栽培装置
固形培地耕
養液栽培装置
固形培地耕
環境制御装置
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
付帯施設
選果場及び選果装置
選果場及び選果装置
その他
重油単価
90 円/L
92 円/L
ハウス
ハウス間口
8m
9m
ハウスタイプ
中軒高・丸屋根
中軒高
屋根形状
1屋根型
両屋根型
被覆資材
農PO
農PO
光線透過率
55%
トマト生長点付近で計測した場
55%
トマト生長点付近で計測した場合の
合の目標値
目標値
軒高
3.5 m
3.5 m
連棟数
9
15
奥行
30 m
80 m
ハウス面積
2,160 ㎡
10,800 ㎡
ハウス棟数
5
1
ハウス総面積
10,800 ㎡
10,800 ㎡
誘引・ベンチ 誘引線高さ
2m
2m
仕立て方
2条振り分け
2条振り分け
ベンチ固定
架台
架台
ベンチ高さ
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
栽培密度
ベッド数/間口
4本
5本
ベッド間隔(平均
2m
1.8 m
ベッド長
27 m
72 m
36mベッド×2、中央通路4m
株間
10 cm
12.5 cm
株間25cmで2本仕立てとし実質株間
12.5cm
株数
48,600 株
43,200 株
2,000株×2本仕立てによる実質株数
栽植密度
4,500 株/10a
栽培後半の側枝利用密植あり
4,000 株/10a
目標収量
収穫段数
3段
3段
平均果数
4 果/段
4 果/段
平均果重/段
175 g
目標収量に合わせ調整した値
175 g
作付回数
3.7 回
3.7 回
収量
35.0 t/10a
31.1 t/10a
可販果率
95%
長期多段栽培より可販果率を+5%
95%
と想定
出荷量
33.2 t/10a
29.5 t/10a
加温条件
夜間設定温度
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途必要
必要
最大暖房負荷
kw/棟
kw/棟
暖房機装置 種別
温風
温風
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
10 台/棟
総台数
10 台
10 台
ヒートポンプ 種別
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
10 台/棟
総台数
10 台
10 台
カーテン資材 1層
保温兼遮光
塩ビ
2層
無
アルミ
サイド
保温
保温
自然換気
種別
谷
谷
装置(屋根)開口率
※
※目標値として別途検討
※
※目標値として別途検討
制御
開度、感度
開度、感度
自然換気
種別
2段
2段
装置(サイド) 制御
自動
自動
送風装置
換気扇
有
有
循環扇
100W2台/間口
100W2台/間口
加湿装置
種別
加湿用
加湿用
噴霧量
5 ㍑/10a/h
5 ㍑/10a/h
ノズル粒径
30 μ
30 μ
CO2制御
開放時目標濃度 外気並みppm
外気並み ppm
密閉時目標濃度
800 ppm
800 ppm
施用装置原料
灯油
灯油
ゼロ濃度差制御 有
有
各種制御
有
時間帯、換気との連動等
有
時間帯、換気との連動等
※網掛けはSHPモデルからの変更点
33
イ 試算結果
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設)
北海道型試算(少雪地域・連棟)
項目
千円
千円
備考
千円
千円
備考
(総額) (/10a)
(総額) (/10a)
売上高
107,622
9,965 @300×33.2t/10a
105,457
9,765 @331×29.5t/10a
材料費 種苗費
9,464
876 @50 自家育苗経費 歩留
9,590
888 @120 購入苗として
まり95%として
肥料費
3,240
300 300千円/10aとして
3,240
300 300千円/10aとして
農薬衛生費
1,296
120 120千円/10aとして(IPM
1,296
120 120千円/10aとして(IPM
含まず)
含まず)
諸材料費
648
60 60千円/10aとして
648
60 60千円/10aとして
培地関連費
1,296
120 120千円/10aとして
1,296
120 120千円/10aとして
栽培費(CO2)
1,728
160 160千円/10aとして
1,728
160 160千円/10aとして
加工費
0
0 ジュース、ソース等加工
0
0 ジュース、ソース等加工
費
費
売
修繕費
2,160
200 200千円/10aとして
2,160
200 200千円/10aとして
上
出荷資材費
4,011
371 @100/kgとして
4,011
371 @100/kgとして
原
農具費
540
50 50千円/10aとして、はさ
540
50 50千円/10aとして、はさ
価
み、台車、コンテナ等
み、台車、コンテナ等
小計
24,383
2,258
24,509
2,269
労務費 賃金給与
19,200
1,778 @800、1,500h/年(16名
18,000
1,667 @750、1,500h/年(16名
として)
として)
光熱費 水道光熱費
0
0 井水利用として
0
0 井水利用として
燃料費
9,400
870 温風暖房・HP10台併用
18,765
1,738 下記設定により試算
(概算)
小計
9,400
870
18,765
1,738
売上原価合計
52,983
4,906
61,274
5,674
54,639
5,059
44,182
4,091
売上総利益
役員報酬
18,000
1,667 役員2名分の報酬として
11,000
1,019 役員2名分の報酬として
福利厚生費
1,600
148 一般例として
1,600
148 一般例として
減価償却費
12,224
1,132 総初期投資3.67億円、
12,224
1,132 総初期投資3.67億円、
1/2補助、15年定額償却
1/2補助、15年定額償却
として(ハウス・管理
として(ハウス・管理
棟・ハウス付帯設備:
棟・ハウス付帯設備:
271百万+統合環境制御
271百万+統合環境制御
装置:10百万+養液栽培
装置:10百万+養液栽培
設備一式66百万+育苗装
設備一式66百万+受電設
販
置15百万+受電設備5百
備5百万+α として
売
万 として(1次側工事
(1次側工事除く))
費
除く))
※全量購入苗のため育苗
及
装置なしとするが、府県
び
より暖房設備等高額にな
一
ることを想定し同額と仮
般
定
管
理
支払地代
1,620
150 @150千円/10a、全借地と
162
15 @15千円/10a、全借地と
費
して
して
リース料
0
0 リース利用なしとして
0
0 リース利用なしとして
運賃
2,657
246 @80/kgとして
2,360
219 @80/kgとして
出荷手数料
0
0 直売として
0
0 直売として
廃棄処理費
0
0 培地、残渣は自家処理と
0
0 培地、残渣は自家処理と
して
して
その他
3,300
306 一般例として
3,300
306 一般例として(除雪費用
見ず)
小計
39,401
3,648
30,646
2,838
営業利益
15,238
1,411
13,536
1,253
支払利息
1,834
170 補助残全額借入、利率
0 下記返済金の欄に支払利
営業外費用
1.0%として
息を含め試算
売上割引
0
0
0
0
経常利益
13,404
1,241
13,536
1,253
返済金
13,179
1,220 補助残全額借入、利率
1.0%、元利均等、15年償
還
経常利益-返済金
357
33
※網掛けはSHPモデルからの変更点
<燃料費の計算(北海道型)>
■野茶研ツール(苫小牧はないため室蘭にて計算)
最低15℃設定
PO系、2層(塩ビ+アルミ蒸着)、寒地+10℃、内張り一層
11/1~4/30加温、重油、92円/ℓ
→燃料費:24,593千円
34
■ヒートポンプ省エネルギー試算表
左記と同じ条件
暖房能力28.0kW(消費電力5.69kW)
冷房能力25.3kW(消費電力5.7kW)
ヒートポンプにより96.1KL×92円/ℓ
=燃料費8,841千円節減
燃料費:24,593-8,841=16,112千円
電気代:187.5MWh×14.15円/h・Wh=2,653千円
→16,112+2,653=18,765千円
(2)多雪地域(単棟多棟・旭川市を想定)
ア 試算条件等
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設)
項目
内容
備考
経営概要
栽培方式
3段密植栽培(大玉)
地域
東海地方
海岸沿い地域
経営形態
農業法人
販売形態
量販店契約出荷
直売
栽培品種
大玉系
国産品種
平均出荷単価
300 円/kg
役員 人数
3人
報酬
18,000 千円/年
労働時間
3,600 時間/年
社員 人数
0人
給与
0 千円/年/人
労働時間
0 時間/年/人
パート人数
16 人
時給
800 円/時間
気象条件
年間日照時間
2,000 h/年 以上
北海道型試算(多雪地域・単棟多棟)
内容
備考
3段密植栽培(大玉)
旭川
農業法人
量販店契約出荷
直売
大玉系
国産品種
331 円/kg
札幌市場5ヵ年平均(H20-24)
3人
千円/年
試算結果による
3,600 時間/年
0人
0 千円/年/人
0 時間/年/人
16 人
750 円/時間
1,500 h/年 以上
気象庁平年値(1981-2010):
1590.9h/年
年平均全天日射量
13 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
11 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
り)
り):年3.30kWh×3.6MJ=11.88
最低外気温
-3 ℃
-41 ℃
過去最低値(1902. 1.25)
最深積雪
0 cm
62 cm
日最大降雪量、1957.4.1の値(落雪
を前提に降雪量とした)
最大瞬間風速
45 m/s
34.1 m/s
過去最大値(2010. 3.21)
施設
経営規模
約1ha
約1ha
ハウス
新設
複数棟で栽培ブロックわけ
新設
複数棟で栽培ブロックわけ
栽培装置
養液栽培装置
固形培地耕
養液栽培装置
固形培地耕
環境制御装置
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
付帯施設
選果場及び選果装置
選果場及び選果装置
その他
重油単価
90 円/L
92 円/L
ハウス
ハウス間口
8m
9m
ハウスタイプ
中軒高・丸屋根
中軒高
屋根形状
1屋根型
丸屋根型
被覆資材
農PO
農PO
光線透過率
55%
トマト生長点付近で計測した場
55%
トマト生長点付近で計測した場合の
合の目標値
目標値
軒高
3.5 m
3.0 m
連棟数
9
1
奥行
30 m
80 m
ハウス面積
2,160 ㎡
720 ㎡
ハウス棟数
5
15
ハウス総面積
10,800 ㎡
10,800 ㎡
誘引・ベンチ誘引線高さ
2m
2m
仕立て方
2条振り分け
2条振り分け
ベンチ固定
架台
架台
ベンチ高さ
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
栽培密度
ベッド数/間口
4本
5本
ベッド間隔(平均
2m
1.8 m
ベッド長
27 m
72 m
36mベッド×2、中央通路4m
株間
10 cm
12.5 cm
株間25cmで2本仕立てとし実質株間
12.5cm
株数
48,600 株
43,200 株
2,000株×2本仕立てによる実質株数
栽植密度
4,500 株/10a
栽培後半の側枝利用密植あり
4,000 株/10a
目標収量
収穫段数
3段
3段
平均果数
4 果/段
4 果/段
平均果重/段
175 g
目標収量に合わせ調整した値
175 g
作付回数
3.7 回
3.7 回
収量
35.0 t/10a
31.1 t/10a
可販果率
95%
長期多段栽培より可販果率を+5%
95%
と想定
出荷量
33.2 t/10a
29.5 t/10a
加温条件
夜間設定温度
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途必要
必要
最大暖房負荷
kw/棟
kw/棟
暖房機装置 種別
温風
温風
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
1 台/棟
総台数
10 台
15 台
ヒートポンプ種別
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
1 台/棟
総台数
10 台
15 台
カーテン資材1層
保温兼遮光
塩ビ
2層
無
アルミ
サイド
保温
保温
自然換気
種別
谷
谷
装置(屋根)開口率
※
※目標値として別途検討
※
※目標値として別途検討
制御
開度、感度
開度、感度
自然換気
種別
2段
2段
装置(サイド制御
自動
自動
送風装置
換気扇
有
有
循環扇
100W2台/間口
100W2台/間口
加湿装置
種別
加湿用
加湿用
噴霧量
5 ㍑/10a/h
5 ㍑/10a/h
ノズル粒径
30 μ
30 μ
CO2制御
開放時目標濃度 外気並みppm
外気並み ppm
密閉時目標濃度
800 ppm
800 ppm
施用装置原料
灯油
灯油
ゼロ濃度差制御 有
有
各種制御
有
時間帯、換気との連動等
有
時間帯、換気との連動等
※網掛けはSHPモデルからの変更点
35
イ 試算結果
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設) 北海道型試算(多雪地域・単棟多棟)
項目
千円
千円
備考
千円
千円
備考
(総
(/10a
(総額) (/10a)
売上高
107,622
9,965 @300×33.2t/10a
105,457
9,765 @331×29.5t/10a
材料費 種苗費
9,464
876 @50 自家育苗経費 歩
9,590
888 @120 購入苗として
留まり95%として
肥料費
3,240
300 300千円/10aとして
3,240
300 300千円/10aとして
農薬衛生費
1,296
120 120千円/10aとして
1,296
120 120千円/10aとして(IPM含
(IPM含まず)
まず)
諸材料費
648
60 60千円/10aとして
648
60 60千円/10aとして
培地関連費
1,296
120 120千円/10aとして
1,296
120 120千円/10aとして
栽培費(CO2) 1,728
160 160千円/10aとして
1,728
160 160千円/10aとして
加工費
0
0 ジュース、ソース等加
0
0 ジュース、ソース等加工費
工費
売
修繕費
2,160
200 200千円/10aとして
2,160
200 200千円/10aとして
上
出荷資材費
4,011
371 @100/kgとして
4,011
371 @100/kgとして
原
農具費
540
50 50千円/10aとして、は
540
50 50千円/10aとして、はさ
価
さみ、台車、コンテナ
み、台車、コンテナ等
等
小計
24,383
2,258
24,509
2,269
労務費 賃金給与
19,200
1,778 @800、1,500h/年(16名 18,000
1,667 @750、1,500h/年(16名とし
として)
て)
光熱費 水道光熱費
0
0 井水利用として
0
0 井水利用として
燃料費
9,400
870 温風暖房・HP10台併用
40,362
3,737 下記設定により試算
(概算)
小計
9,400
870
40,362
3,737
売上原価合計
52,983
4,906
82,871
7,673
54,639
5,059
22,585
2,091
売上総利益
役員報酬
18,000
1,667 役員2名分の報酬として
0 役員2名分の報酬として
福利厚生費
1,600
148 一般例として
1,600
148 一般例として
減価償却費
12,224
1,132 総初期投資3.67億円、
10,600
981 SHPモデル「既設低軒高ハウ
1/2補助、15年定額償却
ス」を参考に算出
として(ハウス・管理
総初期投資3.18億円、1/2補
棟・ハウス付帯設備:
助、15年償却として(ハウ
271百万+統合環境制御
ス140百万、管理棟10百万
装置:10百万+養液栽
円、養液65百万、暖房機45
販
培設備一式66百万+育
百万、HP30百万、環境制御
売
苗装置15百万+受電設
装置10百万、加湿装置10百
費
備5百万 として(1次
万円、CO2発生装置3百万、
及
側工事除く))
受電設備5百万として(1次
び
側工事除く))
一
般
管
理
費
支払地代
1,620
リース料
運賃
出荷手数料
廃棄処理費
0
2,657
0
0
その他
3,300
小計
営業利益
支払利息
営業外費用
売上割引
経常利益
返済金
39,401
15,238
1,834
0
13,404
経常利益-返済金
150 @150千円/10a、全借地
として
0 リース利用なしとして
246 @80/kgとして
0 直売として
0 培地、残渣は自家処理
として
306 一般例として
162
0
2,360
0
0
15 @15千円/10a、全借地として
0
219
0
0
リース利用なしとして
@80/kgとして
直売として
培地、残渣は自家処理とし
て
3,300
306 一般例として(除雪費用見
ず)
3,648
18,022
1,669
1,411
4,563
423
170 補助残全額借入、利率
0 下記返済金の欄に支払利息
1.0%として
を含め試算
0
0
0
1,241
4,563
423
11,419
1,057 補助残全額借入、利率
1.0%、元利均等、15年償還
-6,856
-635
※網掛けはSHPモデルからの変更点
<燃料費の計算(北海道型)>
■野茶研ツール
最低15℃設定
PO系、2層(塩ビ+アルミ蒸着)、寒地+10℃、内張り一層
11/1~4/30加温、A重油、92円/ℓ
→燃料費:3,173千円/棟
3,173千円/棟×15棟=47,603千円
36
■ヒートポンプ省エネルギー試算表
同左条件
暖房能力28.0kW(消費電力5.69kW)
冷房能力25.3kW(消費電力5.7kW)
ヒートポンプにより7.6KL/棟×15棟×92円/ℓ
=燃料費10,488千円節減
燃料費:47,603-10,488=37,115千円
電気代:15.3MWh×15棟×14.15円/h・Wh=3,247千円
→37,115+3,247=40,362千円
【参考】 多雪地域での連棟(旭川市を想定・屋根谷部の融雪要検討)
ア 試算条件等
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設)
項目
内容
備考
経営概要
栽培方式
3段密植栽培(大玉)
地域
東海地方
海岸沿い地域
経営形態
農業法人
販売形態
量販店契約出荷
直売
栽培品種
大玉系
国産品種
平均出荷単価
300 円/kg
役員 人数
3人
報酬
18,000 千円/年
労働時間
3,600 時間/年
社員 人数
0人
給与
0 千円/年/人
労働時間
0 時間/年/人
パート人数
16 人
時給
800 円/時間
気象条件
年間日照時間
2,000 h/年 以上
北海道型試算(多雪地域・連棟)
内容
備考
3段密植栽培(大玉)
旭川
農業法人
量販店契約出荷
直売
大玉系
国産品種
331 円/kg
札幌市場5ヵ年平均(H20-24)
3人
1,500 千円/年
試算結果による
3,600 時間/年
0人
0 千円/年/人
0 時間/年/人
16 人
750 円/時間
1,500 h/年 以上
気象庁平年値(1981-2010):
1590.9h/年
年平均全天日射量
13 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
11 MJ/㎡/day以上 1981-2009年の平年値(NEDOよ
り)
り):年3.30kWh×3.6MJ=11.88
最低外気温
-3 ℃
-41 ℃
過去最低値(1902. 1.25)
最深積雪
0 cm
62 cm
日最大降雪量、1957.4.1の値(落雪
を前提に降雪量とした)
最大瞬間風速
45 m/s
34.1 m/s
過去最大値(2010. 3.21)
施設
経営規模
約1ha
約1ha
ハウス
新設
複数棟で栽培ブロックわけ
新設
栽培ブロックわけ
栽培装置
養液栽培装置
固形培地耕
養液栽培装置
固形培地耕
環境制御装置
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
統合環境制御装置
温湿度、CO2、給液の統合制御
付帯施設
選果場及び選果装置
選果場及び選果装置
その他
重油単価
90 円/L
92 円/L
ハウス
ハウス間口
8m
9m
ハウスタイプ
中軒高・丸屋根
中軒高
屋根形状
1屋根型
両屋根型
被覆資材
農PO
農PO
光線透過率
55%
トマト生長点付近で計測した場
55%
トマト生長点付近で計測した場合の
合の目標値
目標値
軒高
3.5 m
3.5 m
連棟数
9
15
奥行
30 m
80 m
ハウス面積
2,160 ㎡
10,800 ㎡
ハウス棟数
5
1
ハウス総面積
10,800 ㎡
10,800 ㎡
誘引・ベンチ誘引線高さ
2m
2m
仕立て方
2条振り分け
2条振り分け
ベンチ固定
架台
架台
ベンチ高さ
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
0.4 m
GL~スラブ下面(排液下流部)
栽培密度
ベッド数/間口
4本
5本
ベッド間隔(平均
2m
1.8 m
ベッド長
27 m
72 m
36mベッド×2、中央通路4m
株間
10 cm
12.5 cm
株間25cmで2本仕立てとし実質株間
12.5cm
株数
48,600 株
43,200 株
2,000株×2本仕立てによる実質株数
栽植密度
4,500 株/10a
栽培後半の側枝利用密植あり
4,000 株/10a
目標収量
収穫段数
3段
3段
平均果数
4 果/段
4 果/段
平均果重/段
175 g
目標収量に合わせ調整した値
175 g
作付回数
3.7 回
3.7 回
収量
35.0 t/10a
31.1 t/10a
可販果率
95%
長期多段栽培より可販果率を+5%
95%
と想定
出荷量
33.2 t/10a
29.5 t/10a
加温条件
夜間設定温度
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途
15 ℃
時間帯に応じ動的な設定が別途必要
必要
最大暖房負荷
kw/棟
kw/棟
暖房機装置 種別
温風
温風
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
10 台/棟
総台数
10 台
10 台
ヒートポンプ種別
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
空気/空気
ハイブリッド制御、除湿兼用
発熱量
kw
kw
台数
2 台/棟
10 台/棟
総台数
10 台
10 台
カーテン資材1層
保温兼遮光
塩ビ
2層
無
アルミ
サイド
保温
保温
自然換気
種別
谷
谷
装置(屋根)開口率
※
※目標値として別途検討
※
※目標値として別途検討
制御
開度、感度
開度、感度
自然換気
種別
2段
2段
装置(サイド制御
自動
自動
送風装置
換気扇
有
有
循環扇
100W2台/間口
100W2台/間口
加湿装置
種別
加湿用
加湿用
噴霧量
5 ㍑/10a/h
5 ㍑/10a/h
ノズル粒径
30 μ
30 μ
CO2制御
開放時目標濃度 外気並みppm
外気並み ppm
密閉時目標濃度
800 ppm
800 ppm
施用装置原料
灯油
灯油
ゼロ濃度差制御 有
有
各種制御
有
時間帯、換気との連動等
有
時間帯、換気との連動等
※網掛けはSHPモデルからの変更点
37
イ 試算結果
北海道型試算(多雪地域・連棟)
千円
千円
備考
千円
千円
備考
(総額) (/10a)
(総額) (/10a)
売上高
107,622
9,965 @300×33.2t/10a
105,457
9,765 @331×29.5t/10a
材料費 種苗費
9,464
876 @50 自家育苗経費 歩
9,590
888 @120 購入苗として
留まり95%として
肥料費
3,240
300 300千円/10aとして
3,240
300 300千円/10aとして
農薬衛生費
1,296
120 120千円/10aとして
1,296
120 120千円/10aとして(IPM
(IPM含まず)
含まず)
諸材料費
648
60 60千円/10aとして
648
60 60千円/10aとして
培地関連費
1,296
120 120千円/10aとして
1,296
120 120千円/10aとして
栽培費(CO2)
1,728
160 160千円/10aとして
1,728
160 160千円/10aとして
加工費
0
0 ジュース、ソース等加
0
0 ジュース、ソース等加工
工費
費
売
修繕費
2,160
200 200千円/10aとして
2,160
200 200千円/10aとして
上
出荷資材費
4,011
371 @100/kgとして
4,011
371 @100/kgとして
原
農具費
540
50 50千円/10aとして、は
540
50 50千円/10aとして、はさ
価
さみ、台車、コンテナ
み、台車、コンテナ等
小計
24,383
2,258
24,509
2,269
労務費 賃金給与
19,200
1,778 @800、1,500h/年(16名
18,000
1,667 @750、1,500h/年(16名と
として)
して)
光熱費 水道光熱費
0
0 井水利用として
0
0 井水利用として
燃料費
9,400
870 温風暖房・HP10台併用
28,575
2,646 下記設定により試算
(概算)
小計
9,400
870
28,575
2,646
売上原価合計
52,983
4,906
71,084
6,582
54,639
5,059
34,372
3,183
売上総利益
役員報酬
18,000
1,667 役員2名分の報酬として
1,500
139 役員2名分の報酬として
福利厚生費
1,600
148 一般例として
1,600
148 一般例として
減価償却費
12,224
1,132 総初期投資3.67億円、
12,224
1,132 総初期投資3.67億円、1/2
1/2補助、15年定額償却
補助、15年定額償却とし
として(ハウス・管理
て(ハウス・管理棟・ハ
棟・ハウス付帯設備:
ウス付帯設備:271百万+
271百万+統合環境制御
統合環境制御装置:10百
装置:10百万+養液栽
万+養液栽培設備一式66
販
培設備一式66百万+育
百万+受電設備5百万+α
売
苗装置15百万+受電設
として(1次側工事除
費
備5百万 として(1次
く))
及
側工事除く))
※全量購入苗のため育苗
び
装置なしとするが、府県
一
より暖房設備等高額にな
般
ることを想定し同額と仮
管
定
支払地代
1,620
150 @150千円/10a、全借地
162
15 @15千円/10a、全借地とし
理
として
て
費
リース料
0
0 リース利用なしとして
0
0 リース利用なしとして
運賃
2,657
246 @80/kgとして
2,360
219 @80/kgとして
出荷手数料
0
0 直売として
0
0 直売として
廃棄処理費
0
0 培地、残渣は自家処理
0
0 培地、残渣は自家処理と
として
して
その他
3,300
306 一般例として
3,300
306 一般例として(除雪費用
見ず)
小計
39,401
3,648
21,146
1,958
営業利益
15,238
1,411
13,226
1,225
支払利息
1,834
170 補助残全額借入、利率
0 下記返済金の欄に支払利
営業外費用
1.0%として
息を含め試算
売上割引
0
0
0
0
経常利益
13,404
1,241
13,226
1,225
返済金
13,179
1,220 補助残全額借入、利率
1.0%、元利均等、15年償
還
経常利益-返済金
47
4
※網掛けはSHPモデルからの変更点
<燃料費の計算(北海道型)>
スーパーホルトプロジェクトにおける生産モデル:低段密植栽培(新設)
項目
■野茶研ツール
最低15℃設定
PO系、2層(塩ビ+アルミ蒸着)、寒地+10℃、内張り一層
11/1~4/30加温、A重油、92円/ℓ
→燃料費:33,423千円
38
■ヒートポンプ省エネルギー試算表
同左条件
暖房能力28.0kW(消費電力5.69kW)
冷房能力25.3kW(消費電力5.7kW)
ヒートポンプにより76.4KL×92円/ℓ
=燃料費7,029千円節減
燃料費:33,423-7,029=26,394千円
電気代:154.1MWh×14.15円/h・Wh=2,181千円
→26,394+2,181=28,575千円
3
経営試算を踏まえた考察
(1)試算結果概要
○
SHPモデルでは夫婦2人の経営で1,800万円以上の農業所得確保を目指してい
るが、北海道では仮に同程度の収量が得られたとしても、暖房コストが高いため
同水準の農業所得確保は困難であった。
○
少雪地域・連棟タイプでは、初期投資に1/2補助を前提に、1,100万円の農業
所得の確保が可能と見込まれた。
○
多雪地域・単棟多棟タイプでは、初期投資に1/2補助を前提としても、暖房
経費が多額となるため、農業所得も得られず、補助残の返済もできないと見込ま
れた。
○
多雪地域で、仮に少雪地域と同じ連棟とした場合(屋根谷部の融雪が可能か不
明)、単棟複数より暖房効率が上がるため、収支は改善されるが、補助残の返済
を考慮すると十分な農業所得は得られないと見込まれた。
(2)所得確保の方策等
○
道内において、低段密植栽培により30t/10aレベルを実証した実績はないため、
前提として、安定的に収量を確保するためのハウス条件・環境制御技術の検証や、
生産技術の実証・確立が必要である。
○
冬期に暖房コストをかけて生産することは、その作期単独では赤字となること
も想定されるため、場合によってはその時期は作らないことも選択としてはあり
うる。
○
選果、出荷を自己で行うSHPモデルをベースとしているが、農協の選果場に
出荷することを前提とすれば、自己経営の雇用労賃や選果設備経費などの支出を
抑えることができる。一方、その場合は手数料等の支出が必要となる。
○
低段密植栽培であれば、単価の高い高糖度トマトに挑戦して収益性の向上を図
ることも可能となる。
4
再生可能エネルギー活用試算
○
将来の導入検討の目安として、燃油ボイラー以外の再生可能エネルギーを熱源と
する暖房機を組み合わせた場合の試算を行った。ただし、空気ヒートポンプについ
てはSHPモデルに含まれているため、2の経営試算でも含めている。
※
○
再生可能エネルギーの活用に係るメリット・デメリット等については、小中規模を参照。
少雪地域・連棟タイプをベースに試算した結果、タイヤボイラーや、地下水熱ヒ
ートポンプが有望と考えられた。
○
また、多雪地域・連棟タイプでの試算も行ったところ、地下水熱ヒートポンプの
導入によりある程度所得の確保が見込まれた。
39
■再生可能エネルギー活用試算
区分
項目
全て重油
重油+空
暖房、HP
気HP
無し
売上高
105,457
材料費 種苗費
9,590
肥料費
3 240
3,240
農薬衛生費
1,296
諸材料費
648
培地関連費
1,296
栽培費(CO2)
1,728
加工費
0
売
修繕費
2,160
上
出荷資材費
4,011
原
農具費
540
価
小計
24,509
労務費 賃金給与
18,000
光熱費 水道光熱費
0
燃料費
18,765
小計
18,765
売上原価合計
61,274
44,182
売上総利益
役員報酬
11,000
販
福利厚生費
1,600
売
減価償却費
12,224
費
支払地代
162
及
リース料
0
び
運賃
2,360
一
出荷手数料
0
般
廃棄処 費
廃棄処理費
0
管
その他
3,300
理
費
小計
30,646
営業利益
13,536
支払利息
営業外費用
売上割引
0
経常利益
13,536
返済金(支払利息込み)
13,179
経常利益-返済金
357
105,457
9,590
3 240
3,240
1,296
648
1,296
1,728
0
2,160
4,011
540
24,509
18,000
0
24,593
24,593
67,102
38,354
11,000
1,600
11,224
162
0
2,360
0
0
3,300
29,646
8,708
0
8,708
13,179
-4,471
少雪地域・連棟
チップボ ペレット
イラー6 ボイラー
割+重油 5割+重
4割、HP 油5割、
無し
HP無し
105,457 105,457
9,590
9,590
3 240
3,240
3 240
3,240
1,296
1,296
648
648
1,296
1,296
1,728
1,728
0
0
2,160
2,160
4,011
4,011
540
540
24,509
24,509
18,000
18,000
0
0
21,753
25,409
21,753
25,409
64,262
67,918
41,194
37,538
11,000
11,000
1,600
1,600
12,891
11,391
162
162
0
0
2,360
2,360
0
0
0
0
3,300
3,300
31,313
29,813
9,881
7,725
0
9,881
13,179
-3,298
0
7,725
13,179
-5,454
(千円)
多雪地域・連棟
廃タイヤ
ボイラー
重油+地 重油+空 重油+地
3割+重
下水熱HP 気HP
下水熱HP
油7割、
HP無し
105,457 105,457 105,457 105,457
9,590
9,590
9,590
9,590
3 240
3,240
3 240
3,240
3 240
3,240
3 240
3,240
1,296
1,296
1,296
1,296
648
648
648
648
1,296
1,296
1,296
1,296
1,728
1,728
1,728
1,728
0
0
0
0
2,160
2,160
2,160
2,160
4,011
4,011
4,011
4,011
540
540
540
540
24,509
24,509
24,509
24,509
18,000
18,000
18,000
18,000
0
0
0
0
17,343
13,768
28,575
24,169
17,343
13,768
28,575
24,169
59,852
56,277
71,084
66,678
45,604
49,179
34,372
38,778
11,000
11,000
1,500
4,500
1,600
1,600
1,600
1,600
11,491
13,557
12,224
13,557
162
162
162
162
0
0
0
0
2,360
2,360
2,360
2,360
0
0
0
0
0
0
0
0
3,300
3,300
3,300
3,300
29,913
31,979
21,146
25,479
15,691
17,200
13,226
13,299
0
15,691
13,179
2,512
0
17,200
13,179
4,021
<ペレットボイラー導入>
ペレットボイラー
580kW
20,000千円
20,000千円÷2÷15年=667千円
<チップボイラー導入>
チ プボイラ
チップボイラー
700kW
68,000千円
68,000千円÷2÷15年=2,267千円
導入時
重油暖房116kW×5台=580kW
重油暖房5台分減額
3,000千円×5台÷2÷15年=500千円
導入時
重油暖房116kW×4台=464kW
6台分減額
3,000千円×6台÷2÷15年=600千円
580kW(50%)+580kW(50%)=1,160kW
700kW(60.1%)+464kW(39.9%)=1,164kW
燃料費
(ペレット)
2,913,788kWh×50%=1,456,894kWh
4,300kcal/kg=5kWh/kg 45円/kgとして
13,112千円
(重油)
2,913,788kWh×50%=1,456,894kWh
10.9kWh/l 92円/lとして12,297千円
(計)
13,112+12,297=25,409千円
燃料費
(チップ)
2,913,788kWh×60.1%=1,751,187kWh
2.2kWh/kg 15円/kgとして11,940千円
(重油)
2,913,788kWh×39.9%=1,162,601kWh
10.9kWh/l 92円/lとして9,813千円
(計)
11,940+9,813=21,753千円
減価償却費
12,224千円-500千円(重油暖房減額)+
667千円(ペレットボイラー導入)―1,000
千円(HP減額)=11,391千円
減価償却費
12,224千円-600千円(重油暖房減額)+
2,267千円(チップボイラー導入)-1,000
千円(HP減額)=12,891千円
0
13,226
13,179
47
減価償却費は、SHP試算と同様に15
年定額償却とする
<空気ヒートポンプ>
暖房能力28.0kW(消費電力
5.69kW)
冷房能力25.3kW(消費電力
5.7kW)
1台3,000千円
3,000千円×10台=30,000千円
減価償却費:30,000千円÷2÷15
年=1,000千円
<重油暖房(温風)のみ>
重油暖房(温風)
1台3,000千円
116kW
3,000千円×10台=30,000千円
116kW×10台=1,160kW
燃料費
重油267.32KL=24,593千円
=2,913,788kWh
減価償却費
12,224千円-1,000千円(HP減
額)=11,224千円
0
13,299
13,179
120
<廃タイヤボイラー導入>
廃タイヤボイラー
17,000千円
50万kcalで7,250千円の暖房費節約(事例)
50万kcal=580kwで重油暖房5台分に相当するが、
暖房費を3割削減していることから重油暖房は3割
削減の7台とする
17,000千円÷2÷15年=567千円
重油暖房3台分減額
3,000千円×3台÷2÷15年=300千円
減価償却費
12,224千円-300千円(重油暖房減額)+567千円
(廃タイヤボイラー導入)-1,000千円(HP減
額)=11,491千円
<地下水熱ヒートポンプ導入>
地下水熱ヒートポンプ
暖房能力36.0kW(消費電力7.69kW)
冷房能力30.0kW(消費電力8.23kW)
1台3,500千円
3,500千円×20台=70,000千円
減価償却費:70,000千円÷2÷15年=2,333千円
少雪地域・連棟
ヒートポンプにより185.0KL×92円/l=燃料費
17,020節減
燃料費:24,593-17,020=7,573千円
電気代:437.8MWh×14.15円/h・Wh=6,195千円
→7,573+6,195=13,768千円
多雪地域・連棟
ヒートポンプにより162.3KL×92円/l=燃料費
14,932節減
燃料費:32,423-14,932=18,491千円
電気代:401.3MWh×14.15円/h・Wh=5,678千円
→18,491+5,678=24,169千円
40
5
今後の課題
○
本モデルは、日本の嗜好性に合った既存の国産大玉トマト品種を前提として検討
した。この場合、長期多段栽培で高収量を得ることは難しいと考えられたことから、
低段密植栽培とした。
○
しかし、道内において、低段密植栽培であっても高収量を実証した実績はないた
め、まずは、安定的に収量を確保するためのハウス条件・環境制御技術の検証や、
生産技術の実証・確立が必要である。
○
さらに高収量を目指すためには、高軒高化により立体的な空間利用のできる長期
多段栽培が必要と考えられる。そのためには、日本の嗜好性に合った長期多段栽培
に向く品種の開発が必要。
○
また、高軒高化に当たっては、より冬期における暖房コスト低減が必要。
○
今後は、品種開発の加速化を期待するとともに、暖房コスト低減に資する北海道
型施設の検討や生産技術の実証を進め、50t/10aといった高収量を目指していくこ
とが必要。
41
【参考1】大規模タイプの検討経過
1
立地条件
小中規模タイプの参考1を参照。
2
ハウス仕様の検討
1)ハウスの規模及び軒高
近年、我が国でも、オランダなどで普及しているような大規模で軒高の高い、連
棟化された園芸用ハウスの導入が進んでいるが、これらのメリットとしては次のよ
うなことがあげられている。
(1)大規模ハウスのメリット
・小規模のものに比べて施設建設コストの単価を引き下げることができる。
・施設を相対的に安く建設できることになる。
・大規模施設の広い内部は、コンピュータを利用することで、均一に、植物の生
育に好適な環境条件に維持でき、生産性も向上できる。
(2)高軒高ハウスのメリット
・内部は圧迫感がなく、作業の快適さが維持される(作業姿勢の改善)。
・換気性能が優れるために夏季でも比較的涼しいなど、作業環境がよい。
・屋根の骨材による影が分散して採光性がよい。
・室内通路や設備、装置、機器などを整然と配置できる。
・空間の容積の増大により、環境の急激な変化が緩和される。また、高温期の昇
温を緩和する効果がある。
・トマト等の果菜類では上方から誘引できるので光を利用できる空間が大きく確
保できる。
・保温カーテン、遮光カーテン、補光ランプなど、室内の上部空間に装備される
環境制御設備のためのスペースの確保が容易になる。
・トマトの長期栽培では、オランダ方式のハイワイヤー誘引が多収には有利。ハ
イワイヤー誘引を行うには4m以上を確保。
※ただし、軒高の高いハウスで施設の耐風強度を確保するためには、柱を太くし
て補強構造とする必要があり、設置コストが高くなる。
(3)連棟化のメリット
・単棟複数よりも内部の作業効率が増す。
・ドア資材、換気装置と内部カーテンの原動機や制御装置、暖房機、潅水制御装
置などの内部機材を、ある程度まとめることとなりコスト低減になる。
・単棟複数の場合のサイド部分が不要となりコスト低減になる。
2)北海道における大規模化の検討
大規模で連棟化された高軒高のハウスは、上記のようなメリットが期待されるが、
北海道の気象条件における検討が必要である。本州と北海道の気象条件で大きく異
なるのは冬季の低温及び積雪である。
42
(1)低温対策の検討
低温条件の下、作物生産を行うためには施設内の暖房が必要である。暖房を行
うためのエネルギーは、従来の化石燃料によるものの他、地熱やバイオマスなど
の新エネルギーの利用も期待されるところであるが、暖房コスト試算の基礎とし
て、農研機構野菜茶業研究所(2007)による温室暖房燃料消費試算ツールにより
比較検討した。
ア
単棟と連棟の比較
〇変動条件
単棟
間口24m×奥行105m=2,520㎡
軒高4.5m
(積雪地帯で連棟化が困難な場合の事例として間口24m(中柱あり)の記載が施設園芸ハンド
ブックにありこれを採用。軒高は検討上の仮定。)
連棟
間口8m×奥行84m×連棟数15=10,080㎡
軒高4.5m
〇一定条件
地点(旭川市)、設定温度(15℃)、被覆資材(ガラス)、内張り(2層(塩
ビ+アルミ))、地中伝熱(寒地+10℃)、隙間換気(内張り1層)、風速補
正(一般地・内張りあり)、暖房期間(11/1~4/30)、燃料種類(A重油)、
暖房機効率(0.82)、燃料単価(92円/㍑)
〇暖房コスト試算結果(1ha規模)
単棟
851万円/棟×4棟=3,404万円(10,080㎡)
連棟
2,859万円(10,080㎡)
→連棟化により暖房コストは低減する。
イ
高軒高化の検討
〇変動条件
軒高
4.5m、3.0m
〇一定条件
施設面積(間口8m×奥行84m×連棟数15=10,080㎡)、地点(旭川市)、
設定温度(15℃)、被覆資材(フッ素系)、内張り(2層(塩ビ+アルミ))、
地中伝熱(寒地+10℃)、隙間換気(内張り1層)、風速補正(一般地・内
張りあり)、暖房期間(11/1~4/30)、燃料種類(A重油)、暖房機効率(0.
82)、燃料単価(92円/㍑)
〇試算結果
軒高4.5m(3,396万円)>軒高3.0m(3,255万円)
→高軒高化により暖房コストは増加する。
(2)積雪対策の検討
積雪条件下における園芸ハウスの構造については、次のように整理されている
(施設園芸ハンドブック)。
〇豪雪に対する構造計画
①施設は、豪雪時速やかに屋根雪を排除する必要があるので、多雪地域の施設
の形状は、単棟で、奥行きの長さの短いものが望ましい。
43
②軒下に堆積した雪は、速やかに融雪させるか、除雪する。そのために十分な
隣棟間隔をとり、雪の捨て場を計画しておく。
③施設の構造形式は、積雪荷重に強い形式を選定する。スパンの大きい施設で
は、方杖・中柱付両屋根型が望ましい。
④屋根雪の滑落を容易にするため、多雪地域の施設の屋根勾配は、3/10~
5/10程度が望ましい。また軒高もできるだけ高くし、軒下の雪の処理を
しやすくする。
⑤屋根の被服資材の取り付け金具が、雪の滑落を阻害しないようにする。また、
軒部に屋根の葺き出しを作ると、寒冷地では夜間に凍結して氷堤が生じ、雪
の滑落を阻害するので葺き出しを作らないようにする。
⑥多雪地帯で連棟施設を計画する場合は、有効な融雪装置を設備しなければな
らない。
※融雪装置の例
①重油温水ボイラーにより加温した不凍液を降雪センサー制御により不凍液
を屋根部に設置された鋼管部に循環
②地下水を屋根谷部へ循環
③温風を屋根谷部内側から吹きつけ融雪(山形県)
モデル設定条件①
・多雪地域と少雪地域に区分して考える。
・多雪地域では、屋根から落雪させることを前提に、除雪スペースを確保した上で
単棟複数が現実的。ただし、暖房機等の設備は棟数分必要となることから、その
コストを考慮する必要がある。
・少雪地域では、連棟とすることで生育環境の均一化、作業効率の増加、暖房コス
トの低減等のメリットあり。ただし、降雪に備え屋根谷部の融雪装置が必要。
※どの程度の降雪量で多雪地域、少雪地域と見なすかの判断は今後検討が必要。
3)施設の種類及び被覆資材の検討
施設の種類及び被覆資材については、次のように整理されている(施設園芸ハン
ドブック)。
被覆資材の特徴を踏まえた施設の検討が必要。
(1)ガラス温室
・ガラスは破損しない限り長期に使用可。日射透過率の経年変化もほとんどなく、
被覆資材の交換が不要。
・プラスチック資材に比較して重いため、構造強度も高められ、施設の耐用年数も
長い。
①両屋根型
・最も一般的。積雪地帯などで連棟化が困難な場合には、単棟で間口が24mに達
するような温室もあり(中柱あり)。軒高は保温カーテン等の設備化や通風性
の向上を理由に増加の傾向。新しいものは3m前後。勾配は野菜では5/10が主
44
流。
・基礎は、温室周囲はコンクリートなどによる連続基礎であるが、連棟温室の谷
柱(中柱)には1本ごとに独立基礎が設けられる。
②フェンロー型
・オランダで開発。1棟の間口が狭い、屋根勾配が緩い(4/10)。構造部材が細
く光環境に優れる、建設費が安価、連棟数を無制限に増やすことが可能で大型
温室に適する。軒高は4.5mに達するものもあり。
・1棟の間口を3.2mとし、トラスを用いて2棟ごとに柱を入れるのが一般的。
・我が国では、被覆資材にフッ素フィルム等を用いた独自のフェンロー型温室も
開発。屋根勾配は5/10、基礎は連続基礎及び独立基礎。
(2)プラスチックハウス
・被覆資材は、下記硬質板またはプラスチックフィルム
①鉄骨ハウス
・両屋根型が主。構造はガラス温室に類似しているが、独立基礎を用いる点が異
なる点。
屋根勾配は4/10または5/10。
・被覆資材は、主に硬質プラスチック資材。
・構造部材は、合掌や柱にはH形鋼や角型鋼管、母屋には主にC形鋼が用いられ
る。
②鉄骨補強パイプハウス
・屋根に曲げパイプを用い、鉄骨と組み合わせて補強したハウス。連棟式が主。
コンクリート製の独立基礎。被覆資材は主に軟質フィルム。
・空気膜ハウスも導入されており、二重のポリエチレンフィルム間に空気を吹き
込み、一重被覆に対して33%の省エネルギー効果があるとされている。天窓
の設置が困難なため強制換気方式が採用される。
③地中押し込み式パイプハウス
・もっとも簡易なハウスで、基礎を用いず、肩部で曲げられたパイプを地中に挿
入し、棟部で2本のパイプを接続し、棟方向に配した母屋パイプで補強する構
造。
・多くが単棟であるが、連棟化も可能。強風地帯や積雪地帯では強度を高めるた
めに補強。積雪地帯では、中柱は積雪に対する強度を高め、屋根勾配の増加は
雪の落下を促進。
45
<被覆資材>
1 ガラス
温室用被覆資材の中では最も重い。耐久年数は20年とされているが、実際にはそれ以上で最も耐久性
がある。
1)普通板ガラス
通常のガラス温室では3mm厚が用いられるが、フェンロー型ガラス温室は骨材を少なくしてガラス
自体で強度を持たせており、肉厚の4mm厚を用いる。
2)熱吸収ガラス
高価格なため普及していない。
3)熱線反射ガラス
昇温抑制効果が高い。実験施設での利用。
4)その他特殊ガラス
2
硬質板
ガラスに比べると耐用年数で考えた1年当たりの経費は割高だが、施設構造の軽量化や独立基礎でよい
ことなどからトータルコストはガラス質よりも低額。
1)ガラス繊維強化アクリル樹脂板(FRA)
光の透過率は約90%、散乱光の割合は約23%、耐用年数は7~10年。紫外線をよく通し、アン
トシアニン色素の発現や昆虫受粉にも支障ない。
2)アクリル樹脂板(MMA)
単層板の透光率は92%、紫外線をよく通す。耐用年数は10~15年と長いがやや高価。衝撃強度
はFRAやPCより劣り、降雹の際破損することがある。
3)ポリカーボネート樹脂板(PC)
光透過率は85~91%。380nm以下の紫外線を通さないのでアントシアニン色素の発現や昆虫
受粉に支障。赤外線はほとんど透過しない。対衝撃強度は大きく降雹で割れることはまずない。耐用年
数は10~15年。
4)ガラス繊維強化ポリエステル樹脂板(FRP)
ガラス繊維により、日射を散乱させる効果がある。長期の使用ではガラス繊維の分離による白化が起
こる。
3
プラスチックフィルム
1)軟質フィルム
(1)塩化ビニル(PVC)フィルム【農ビ】
柔軟性・弾力性に富み、透明性高く、保温性がよく、防曇効果優れる。
資材が重い、べたつきあり、汚れの付着による光線透過率の低下が早い。
紫外線の透過特性が異なるいろいろな資材を選択できる。
PO系特殊フィルムへの転換が進んでいる。
(2)ポリオレフィン系フィルム
①農業用ポリエチレン(PE)フィルム【農ポリ】
マルチとしての利用が圧倒的に多い
②農業用エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)フィルム【農酢ビ】
ハウス内張やトンネルなどに利用
③農業用ポリオレフィン系特殊フィルム【PO系フィルム】
農ポリや農酢ビでは赤外線透過が大きいので保温性に問題あり、PEとEVAを多層構成して赤外
線吸収剤を配合したもの(農PO(ノッポ))
2)硬質フィルム
軟質フィルムに比べて機械的な強度が優れているので、ガラスや硬質板に替わる鉄骨ハウスの被覆資
材として急速に普及。
(1)ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)フィルム
・耐候処理によって4~5年、6~7年、8~10年の3つのグレード。
・紫外線除去の領域は380nm以下、350nm以下、315nm以下の3つのタイプ。
・赤外線透過率は一般農ビより小さく保温農ビと同等、防曇性は農ビと同等、無滴性の持続期間は1
0年程度、対薬品性に優れる、燃焼しても有害ガスが発生しない。
(2)農業用フッ素樹脂(FETE)フィルム
・透明性が高く、光透過率はほかの資材に比較して非常に高い、経年劣化が極めて少なく長期展張が
可能、耐用年数の目安は厚さ0.06mmで約10~15年、厚さ0.10mmで15~20年、
0.16mmのもので20年以上。耐薬品性に優れる。砂やほこりが雨で流れやすい。滑雪性が高
い。穴が開いたときに裂け目が簡単に広がることはない。
・紫外線領域の透過が大きく自然光に近い。赤外線の透過率も低いので保温性はよい。
※交配にマルハナバチを使用する場合は、紫外線カットフィルムは使用しない。
マルハナバチは温室内で自分の居所を知るために紫外線を必要とする。
マルハナバチはミツバチと比較すると紫外線カットフィルムの影響を受けにくいが、訪花活動を行う働
き蜂の数が減少したり、働き始めるまでに通常に比べ時間を要することがある。
(施設園芸ハンドブック)
46
4)建築関連法令等からの検討
ガラス温室の場合、北海道では通常、建築基準法上の取扱から、建築に当たって
は構造計算を行った上での建築確認が必要であり、相応の強度等が求められるため、
設置コストは高くなると見込まれる。また、この場合「減価償却資産の耐用年数等
に関する省令」上の建築物、固定資産税上も家屋として取り扱われると考えられる。
本州においては、建築確認不要としている県もあるが、北海道においては積雪等の
ことからそのように取り扱われていない。
現状では、建築確認の不要な、スチールパイプによる低コスト耐候性ハウスが取
り組みやすい。また、間口が広い(24mなど)ハウスの場合、H綱などの強度の高
い骨材を使用し、「スチールパイプ等の簡易なもの」として解釈が難しいことから、
道内においては建築確認が必要なものと扱われる可能性が高い。
なお、ガラス温室等の園芸用施設については、「園芸用施設安全構造基準」(社団
法人施設園芸協会)を満たすことで構造強度等を確保することができ、建設コスト
の削減等に資することから、建築基準法から除外し、本基準で運用されることが望
まれる。
建築確認や課税上の取り扱いについては、所管の自治体において判断されるもの
であるから、個別に確認が必要である。
道内で一般的と考えられる解釈
施設
区分
プラスチックハウス(硬質板を除く)
※国税庁ホームページ「ビニールハウスの耐用年数」参照
ガラス温室
項目
基礎
固定資産税
耐用年数
(減価償却
資産の耐用
年数等に関
する省令)
あり(主に連続基礎(布基礎))
家屋
31年
(解釈)
建物
金属造のもの(骨格材の肉厚が4
ミリメートルを超えるものに限
る。)
工場(作業場を含む。)用又は倉
庫用のもの
その他のもの
その他のもの
24年
(解釈)
建物
金属造のもの(骨格材の肉厚が3
ミリメートルを超え4ミリメート
ル以下のもの。)
工場(作業場を含む。)用又は倉
庫用のもの
その他のもの
17年
(解釈)
金属造のもの(骨格材の肉厚が3
ミリメートル以下のものに限る。)
工場(作業場を含む。)用又は倉
庫用のもの
その他のもの
47
鉄骨ハウス、鉄骨補強
パイプハウス
(低コスト耐候性ハウ
スを含む)
あり(主に独立基礎)
償却資産
14年
(解釈)
構築物
農林業用のもの
主として金属造り
のもの
地中押し込み式ハウス
なし
なし
10年
(解釈)
器具及び備品
前掲のもの以外のも
の
主として金属造り
のもの
道内において一般的と考えられる建築基準法上の取扱(日本建築行政会議の取扱い)
農業用ビニールハウスの取扱い
次に掲げる農業用ビニールハウスは建築物とは扱わないこととする。
1.育成・栽培のために限定して設置されたものであること。
2.施設の支保材は、スチールパイプ等の簡易なものであること。
3.施設を覆うビニールシート等は薄い材料で容易に取り外しができるものであること。
(参考)
農商工連携植物工場ワーキンググループ報告書(平成21年4月
農林水産省・経済産業省)
③ 建築基準法上の扱い
植物工場の立地を進める上で、建築基準法については、以下の点に十分に留意する必要がある。
(a)建築物に該当するため、建築確認が必要か否か
植物工場が、建築基準法上の建築物として建築確認を要する施設であるか否かは、建築基準法2
の規定に則り、都道府県ないし中核市以上の市役所の建築主事が判断することとなっている。中核
市以外の市町村であっても都道府県知事の同意があれば建築主事を置くことができる。このうち、
完全人工光型植物工場については、建築物と判断されるのが一般的である。
他方、太陽光利用型については、屋根が簡単に取り外し自由であるかどうか等を目安としており、
建築物として取り扱われない場合が多い。通常は、①内部で植物生産を行うため、光を取り入れる
構造である必要がある、②内部に入る人が限定され、また常時入っているわけではない、等の特徴
を踏まえて作成された「園芸用施設安全構造基準」(社団法人日本施設園芸協会)を満たすことに
より、構造強度や耐火・防火性能を確保している例が多い。屋根がガラス板等でできているものは
建築物として取り扱われる場合が多いが、自治体によっては柔軟な運用がなされている場合も複数
存在する。
一方、植物工場を巡る建築基準法の取扱・適用基準については、自治体によって、必ずしも明確
に整理されていない。そのため、新たに太陽光利用型施設を設置する場合、「工場」という名称で
あることもあり、既存の園芸用施設と比較して、厳しい運用となっている事例もあると指摘されて
いる。この点については、あくまで対象となる建築物の構造によって判断される。
48
(参考)国税庁ホームページより
5)暖房コストから見た被覆資材の検討
〇変動条件
被覆資材:ガラス、フッ素系、PO系、塩ビ
〇一定条件
施設規模(間口8m×奥行84m×連棟数15=10,080㎡、軒高:4.5m)、地点(旭
川市)、設定温度(15℃)、内張り(2層(塩ビ+アルミ))、地中伝熱(寒地+10
℃)、隙間換気(内張り1層)、風速補正(一般地・内張りあり)、暖房期間(11/
1~4/30)、燃料種類(A重油)、暖房機効率(0.82)、燃料単価(92円/㍑)
〇試算結果
フッ素系(3,396万円)>PO系(3,214万円)>塩ビ(3,123万円)>ガラス
(2,859万円)
→ガラスがもっとも暖房コストが低いが、次いで塩ビ、PO系、フッ素系の順。
モデル設定条件②
・建築確認の不要な、スチールパイプによる低コスト耐候性ハウスが取り組みやす
い。
・被覆資材はPO系またはフッ素系とする。
(ガラスは設置コストの点で除外。塩ビ(農ビ)は保温性高いものの、汚れの付
着による光線透過率の低下が早いことから除外。耐久性でフッ素系を選ぶか、暖
房効率でPO系を選ぶかの選択。)
49
6)品種、作型から見たハウス仕様の検討
(1)品種の検討
トマトには、大きく分けて大玉、中玉、ミニトマトがあるが、大玉とする。
品種選択は市場ニーズに直結するものであるとともに、作型や施設構造にも影
響する。
モデル設定に当たっては、販売上の安全性を考慮し、通常流通している、販売
が確保される品種とする。
(参考)
全道主要野菜品種別作付動向(平成23年産)
北海道農政部調べ(単位:ha)
トマト(大玉)
CF桃太郎ファイト
桃太郎8
桃太郎ギフト
481.8
72.1
52.8
51.6
トマト(中玉)
シンディースイート
なつのしゅん
ラウンドレッド
53.9
26.7
8.9
1.2
ミニトマト
キャロル10
キャロル7
SC6-008
192.2
69.0
35.9
31.3
モデル設定条件③
・大玉トマトとし、作付けの多い桃太郎系とする。
(2)作型の検討
トマトでは、本葉が6~12枚分化した後、花芽が分化し、この花芽が第1花房と
なる。その後は3葉に1花房の単位で成長を半永久的に続けるのが無限花序型のト
マトであり、施設栽培で用いられるもの。この花房の段数により、数種類の作型が
行われている。
ア
長期多段栽培(ハイワイヤー方式)
・施設園芸の先進国であるオランダでは、高軒高ハウス(近年では軒高5~6
m)による長期多段栽培で、1980年からの約30年間で約2倍の収量性向上を
果たし60t/10aの収量を実現しており、3.5本/㎡程度の高密植栽培が多収要因
の一つとなっている。高密植栽培では、栽植密度を高めても収量が低下しな
い品種特性が必要であり、我が国の品種と比べて①葉長が短い、②小葉が小
さい、③複葉が水平になる、④節間が長い、といった草姿のため、ハウス内
空間を効率的に活用できて光利用効率が高い。
・オランダの品種は100~150gの果実が果房に5~7果着果する房どり中玉ト
マトが主体であり、日本で主に流通している大玉トマトとは異なる。また、
日本では皮が薄く糖度が高いもの(糖度5~6)が好まれるが、オランダで
はさっぱりとした味のもの(糖度3~4)が好まれるなど、前提条件が異な
る。
・桃太郎系で道内でも多段栽培(土耕)では上のほうの茎の太さが細くなり生
50
産性が落ちてくる事例もある。
イ
8段程度
一般的に道内産地で作付けされている、土耕・パイプハウスによるハウス夏
秋どりの場合(5~6月定植→7~10月収穫)。
ウ
低段密植栽培
低段栽培は1段から4段程度の果房を収穫する場合をさし、長期多段栽培に
比べて2~5倍程度まで栽植密度を高めて栽培するため低段密植栽培と呼ばれ
る。トマト栽培に日の浅い人でも比較的取り組みやすく、厳寒期の作付・出荷
判断や病害虫発生などにも迅速に対応可能。。
ア)3段密植栽培
・NFTによる3段密植で周年栽培するモデル体系が作成されている。閉鎖型
育苗施設と2次育苗装置利用、年間約4作、施設を3ブロックに分け、ブロ
ックごとに約1ヶ月ずつずらして栽培。(兵庫県)
・秋季安定生産が可能な3段密植栽培が道内で確立(土耕)。2本仕立て、セ
ル成型苗直接定植。(花・野菜技術センター)
・道内では2.5~3回転程度が可能と考えられる。
・3段に限らず、5段×2回転などの方法もありうる(苗コストの低減)。
イ)1段密植
全農では、摘心・脇芽かき不要な心止まり性トマト「すずこま」や、低段
密植好適品種「賛美」を用いた1段密植により収量33~40t/10aの研究成果
を上げている。腋芽かき、葉かきの作業が不要となるが(養液栽培では土耕
に比較して過繁茂になりやすい)、苗供給のコスト、労力が大きくなる。
トマトの長期多段栽培と低段栽培におけるメリットとデメリット
長期多段栽培
低段栽培
メリット
・日常の管理が定型的
・技術を習得しやすい
・超多収化しやすい
・高糖度化の付加価値を付けやすい
・使用する種苗が少ない
・ウイルス病・機器トラブル発生時のリ
・定植前に病害虫をリセットできる
スクを分散できる
・周年栽培が可能
・施設等の初期投資を抑えられる
・日常的な管理や収穫作業などの作業性
に優れる
・数品種を使い分けることで季節に合っ
た品種を使える
・雇用労力を平準化できる
デメリット ・ウイルス病・機器トラブル発生時のリ ・種苗費が高い
スクが大きい
・作業が繁雑
・生育制御に経験が必要
・綿密な栽培計画が必要
・播種・育苗などの技術を習得しにくい ・育苗期間に無駄なスペースを生じる
・一定期間出荷できない時期を生じる
・閉鎖型苗生産システム等が必要
・軒の高い施設・高所作業台車などが必 ・栽培が途切れることがないため病害虫
要
を引き継ぐ可能性
・植物残渣が大量に発生
((独)農研機構「太陽光利用型植物工場におけるトマトの低段栽培と多段栽培」より)
51
モデル設定条件④
・品種を桃太郎系としたことから、作型は低段密植栽培とする。
・低段密植栽培でも、高温期の昇温緩和など高軒高のメリットは期待できるものの、
暖房コストを考慮し、3.5mの中軒高とする。
7)暖房計画
北海道における施設園芸は冬期の暖房コストが最大の課題であり、より効果的・
経済的な暖房方法が求められる。
(1)燃料の種類
ア
灯油
・36.7MJ/ℓ(資源エネルギー庁エネルギー別標準発熱量)
100.2円/ℓ(H25年4月~H26年2月平均、北海道環境生活部、税込み)
→366KJ/円
イ
重油
・39.1MJ/ℓ(資源エネルギー庁エネルギー別標準発熱量)
96.8円/ℓ(H25年平均、資源エネルギー庁、税抜き価格×1.05)
→404KJ/円
ウ
灯油より効率的
ガス
・石油に比べて不純物が少なく、完全燃焼しやすいため、掃除等のメンテナン
スが容易。
・石油と比べて、同じ熱量を得るために発生するCO2が少なく、大気汚染物質
の発生が少ない。
・燃料価格は立地条件等(ガス事業者によるパイプライン敷設等)にもよる。
エ
その他のエネルギー(再生可能エネルギー等)
52
再生可能エネルギー等の特徴と課題、施設園芸への活用状況
種
類
温泉熱
地熱
空 気 ヒ
ー ト ポ
ンプ
地 下 水
熱 利 用
ヒ ー ト
ポンプ
木 質 チ
ップ
木 質 ペ
レット
廃 タ イ
ヤ
地 中 熱
交 換 シ
ステム
畜 産 系
バ イ オ
マス
太陽熱
太陽光
特
徴
課
施設園芸への
活用状況等
・源泉に近いところは有利。・ 故障 など 不 測の 事態 への対 応が ・森町、壮瞥
・ランニングコストが安い。 必要。
町 、音 更 町 、
・ 温 泉 水 を そ の ま ま 使 う 方 ・ 温 泉 槽 、循 環 ポ ン プ 、熱 交 換 機 、
弟子屈町等
法と、熱交換して温風に
ファンコイルユニット等の整備
で活用。
する方法がある。
に費用がかかる。
・地熱の供給源が近くにあ ・調査から運転開始までの期間が ・ 森 町 で 活
るところは有利。
長く、井戸のボーリング、生産
用。
・ランニングコストが安い。 井 ・ 還 元 井 の 設 置 な ど 多 額 の 開
・道内では森町で施設園芸
発費用が必要。
に活用。
・毎年、定期点検が必要。
・候補地の多くが国立公園内のた
め開発が制限。
・ 灯 油 ボ イ ラ ー と の 併 用 又 ・ マ イ ナ ス 15℃ 以 下 で は 能 力 が 大 ・ 道 内 に 徐 々
はハイブリッド型が一般
きく落ちる。
に普及して
的。ヒートポンプ運転と ・メーカーにより、機種により機
いる。
灯油ボイラーが自動的に
能や性能、価格は様々。
切り替わり、安定した加
温効果が得られる。
・ 外 気 温 が - 20℃ で も 地 下 ・ 井 水 、 地 下 水 を 取 水 で き る こ と ・豊浦町で
水 温 度 が 15℃ 程 度 あ る の
が必須。
H25導 入 。
で 、 暖 房 能 力 は 100% 近 く ・ 国 内 で は シ ス テ ム 開 発 が あ ま り
運転が可能といわれてい
進んでいない。
る。
・農研機構が、地下水を利用する
・コスト削減効果が高い。
積雪寒冷地に適した水熱源ヒー
ト ポ ン プ シ ス テ ム を 開 発 ( H21~
23)。
・木質チップを安く入手で ・農業用ボイラーの市販品がなく ・芦別市で活
きれば燃油削減効果は高
高価。
用されてい
い。
・チップの保管庫やタンクが必要。 るほか、苫
・発電用の需要があるため、・細かな温度管理が難しい。
東の植物工
需給が逼迫している。
・灰は産業廃棄物扱いで適切な処
場が導入の
・連続運転が基本。
理が必要。
予定。
・灯油価格が高騰すれば灯 ・ボイラーの規模によっては大気
油よりも安価。
汚 染 防 止 法 、消 防 法 の 届 出 必 要 。
・木質ペレットを安く入手 ・農業用ボイラーの市販品がなく ・伊達市等で
できれば燃油削減効果は
高価。
活用。
高い。
・ペレットの保管庫やタンクが必
・断続運転が可能。
要。
・ 灯 油 価 格 が 高 騰 す れ ば 灯 ・細かな温度管理が難しい。
油よりも安価。
・灰は産業廃棄物扱いで適切な処
理が必要。
・ボイラーの規模によっては大気
汚 染 防 止 法 、消 防 法 の 届 出 必 要 。
・伊達市では活用促進のため製造
や輸送等に係る費用を補てん。
・ 燃 焼 熱 に よ り 温 め た 温 水 ・ボイラーが高価。
・東神楽町で
を配管を通して暖房。
・タイヤの保管場所が必要。
活用。
・冬タイヤを大量・安価に ・灰やワイヤーは産業廃棄物扱い
入手できれば暖房費の削
で適切な処理が必要。
減効果が高い。
・廃タイヤは産業廃棄物であるた
め、産業廃棄物の中間処理業者
の資格が必要。
・ボイラー規模によっては大気汚
染防止法、消防法の届出が必要
・ 地 中 熱 は 季 節 変 動 が 小 さ ・初期投資が高い。
・岩見沢市で
く安定。
・ 地 温 に 依 存 す る た め 、 冬 季 に 10
活用。
・構造が簡単で耐久性が高
℃ 以 上 、 夏 季 に 20℃ 以 下 に 温 度
く、ランニングコストが
設定できない。
安い。
・ヒートポンプとの併用が相性が
よい。
・ 近 く に バ イ オ マ ス 発 電 機 ・ バイ オガ ス は精 製圧 縮を行 い、 ・鹿追町で
があるところは有利。
メタン濃度を上げることでプロ
H26か ら 取
・発電の廃熱で暖めた温水
パンガスと同じ規格のガスを製
組開始。
を地上や地中の配管によ
造でき、プロパンガス用のガス
り引いて、ハウス内の配
機器が使用可能になる。
管を通して暖房。
・日照時間の長いところは ・太陽熱を集めて蓄積するシステ
有利。
ムは開発されていない。
・ 余 剰 電 力 は 4 0 円 / k w h ( 10 ・ 太 陽 光 発 電 は 発 電 出 力 が 変 動 し
kcal以 上 ) で 北 電 が 買 い
やすく、雪や風の影響を受ける
取り。
ため、蓄電池のコストが高い。
53
題
(2)暖房方法
暖房方式の種類と特徴(岡田(1980)に加筆)
方式名
方式概要 暖房効果
制御性
保守管理
温風暖房 空気を直接 停止時の保 余熱時間が 水を使わな
加熱する。 温性に欠け 短く立上り いので取扱
が早い。 いが容易で
る。
ある。
その他
配管や放熱管がな
いため、作業性に
優れている。燃焼
空気を室内から取
り込む場合には換
気が必要である。
温水暖房 60~80℃の 使用温度が 余熱時間が ボイラの取 配管・放熱 寒冷地では凍結の
湯を循環す 低いので温 長い。温水 扱いは蒸気 管を必要と 恐れがあり、水抜
る。温水を 和な加熱が 温度を変え に比べて容 し、割高で き保温対策に十分
な考慮をする必要
温風に変換 できる。余 て負荷変動 易である。 ある。
がある。
して室内に 熱が多く停 に対応でき 水質の悪い
所でも水質
吹き込む方 止後も保温 る。
処理が容易
式もある。 性が高い。
である。
蒸気暖房 100~110℃ 余熱が少な 余熱時間が ボイラ取扱 温水暖房に 土壌消毒が可能で
の蒸気を用 く停止時の 短い。自動 い資格を必 比べてやや ある。放熱管の適
いて暖房す 保温性に欠 制御がやや 要とする場 割高であ 正な配分がむずか
しい。局所的な高
むずかし 合がある。 る。
る。温水や ける。
温が生じやすい。
水質処理を
い。
温風に変換
厳重にしな
して用いる
いと配管が
方式もあ
腐食しやす
る。
い。
電熱暖房 電気温床線 停止時の保 余熱時間が 取扱いは最 最も安価で 実用規模の施設で
は経済的でない。
や電気温風 温性に欠け 短い。制御 も容易であ ある。
性が最もよ る。
ヒータで暖 る。
い。
房する。
ヒートポ ヒートポン 温水暖房と
ンプ暖房 プから50~ 同様。
60℃の温水
を水-空気
熱交換器ま
たは配管に
送り、熱交
換する。
温風吹出の 温風暖房と
ヒートポン 同様。
プもある。
設備費
温水暖房に
比べてかな
り安価であ
る。
温水暖房と 地下水利用 比較的高価
同様。
の場合はろ である。
過器の目づ
まりを定期
的に取除
く。
冷房や除湿にも利
用できる。運転経
費を安くするため
には、地下水利用
が必要である。
適用対策
温室全般
高級作物
の温室
大規模施
設
大規模集
団施設
小型温室
育苗温室
地中加熱
補助暖房
冷房・暖
房を必要
とする温
室
温風暖房と
同様。
(「施設園芸ハンドブック」より)
・温風暖房は設備費も安価であり取り組みやすいが、連棟の場合屋根谷部の融雪に
温水暖房が必要となるため、その点も考慮してハウス内の暖房計画を検討する必
要がある。
・大規模施設では、配管方法にもよるが温風暖房より温水暖房の方が温度ムラが少
ないようである。
・長期多段栽培の場合、高所作業台車が必要となる。台車のレールを兼ねて温水暖
房管を利用する例が多い(オランダ、国内)。
(3)省エネ技術
小中規模タイプの参考4を参照。
54
8)その他ハウス仕様の検討にあたり考慮すべき点
(1)光
・トマトの栽培に適する施設としては、第一は光透過率が高いこと。葉が数層に重
なり、群落上部(樹冠)から群落内、群落下部になるに従い利用できる光が減少
し、下位葉では光が不十分になるため。
・ハウスは構造上、屋根や柱の影ができるため外部と比べるとどうしても光量が減
少してしまうが、オランダでは光量が1%減少すると収量も1%減少するという
「1%理論」が提唱されているように、光環境は重要。
・①柱は細く②屋根の垂木も細く③ピッチは広く④屋根を支えるトラス構造なども
できるだけ細く、光を遮らない構造のハウスが望ましい。
・フィルムは透過率が高く汚れにくいフィルムを選択する。
・散乱光タイプのフィルムは1日を通してみると内部で植物が利用できる光量が増
加することもある。
・カーテンも畳んだときに影にならない構造のもの、循環扇、細霧冷房などの装置
を取り付ける場合も、なるべくトマトに影にならないよう注意する。暖房機やヒ
ートポンプなどの機器も北側に設置。
・作業場などをハウスに併設する場合は影にならない北側に設置する。
・フッ素系フィルムやPOフィルムはなるべく明るい透過率が高いものを選択し、
UVカットフィルムなど機能性フィルムはマルハナバチの受粉活動に影響を及ぼ
すので注意する。
(2)換気
・日本の夏は高温になるため、ハウスには天窓以外に側窓が必要。しかし、面積が
1ha以上と大きい場合は側窓からの換気はあまり意味がなくなるため、大規模
施設では側窓を設けないことも多い。
・夏に自然換気を行う場合は、天窓はなるべく大きい方が望ましいが、天窓の取り
付けは建設コスト上昇となるため、考慮が必要。
・黄化葉巻病対策には、0.4mm目合い以下の防虫網を張ることが必要(今のところ北
海道での発生なし)。
・セイヨウオオマルハナバチ利用の場合は4mm目合い以下の網を張り逃亡対策が必
要。
(3)ハウスの向き
・日本では冬の光を群落内に取り入れる必要があるため、畦を南北にすることが多
い。そのため、ハウスも南北に妻面が来る南北棟として建てることが多い。
・一方、夏の高温対策として換気率をよくするためには、ハウスの天窓から風が入
り抜けていく方向に建てることが必要。
・ハウスの設置向きは風向き、日当たり等優先順位を勘案して総合的に判断する。
・連棟型の大規模ハウスでは、棟の向きを決める決定的要因は受光量の最大化より
むしろ風向の最適化である。天窓だけによる自然換気だけのハウスであれば、作
期中の最も暑い季節を基準として、その時期に最も多く熱を排出できるように吹
き付ける風の向きに建てる。また、影になる部分とそうでない部分を1日の中で
55
均一化し、植物の生育を揃えることを考慮する。
<温室の方位>
・温室の構造には単棟と連棟があり、東西棟と南北棟がある
・太陽放射は直達放射と散乱放射からなる
・直達放射の温室への透過率
①緯度が低いほど連棟数や方位による影響は小さい
②冬には、東西棟が南北棟よりも高く、単棟が連棟よりも高い
③春から秋にかけては、逆に南北連棟が東西棟よりも高い
冬の光環境を重視すると、直達放射の透過については、東西棟が南北棟よりも優れている。しか
しながら、透過率の分布は、東西棟では部材の影や北側屋根の影響を受けやすく、南北棟よりも均
一性が劣る。
散乱放射の透過は、温室の構造や方位の影響を受けにくい。
直達放射と散乱放射を併せた太陽放射透過率の東西棟と南北棟における違いは、冬に曇天日が多く、
散乱放射の割合が大きい地方では小さくなる。
<畝の方位>
作物群落が実際に受ける太陽放射は、温室への透過率のほか、畝の方位によっても異なることが
知られている。トマト群落では、温室内に透過した直達放射のうち、群落に吸収される割合は、冬
には東西畝が高く、夏には南北畝が高いことが報告されている。
(「施設園芸ハンドブック」より)
3
収量目標レベル
低段密植栽培の収量目標レベル設定に参考となる事例を示す。
1)試算事例
スーパーホルトプロジェクトにおける低段密植栽培モデル(H25)
新設中軒高ハウス:丸屋根3.5m5棟
既設低軒高ハウス:丸屋根2.5m5棟
3段密植栽培、固形培地耕、温湿度・CO2・給液の統合制御、空気ヒートポンプ、
国産大玉品種
収
量:新設35.0t/10a、既設33.0t/10a
出荷量:新設33.2t/10a、既設31.3t/10a
2)研究事例
NFT栽培方式の3段密植栽培による周年栽培モデル(兵庫県立農林水産技術総合
センター)
・閉鎖型育苗装置と2次育苗装置を利用。
・施設を3ブロックに分け、ブロックごとに約1ヶ月ずらして栽培することで、3
年で11作(年間作付回数は3.6回)の周年栽培が可能。
・年間推定収量は30t/10a。
・栽植密度6,250株/10a
56
1
ブロック
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
○
△
□
■■■■
○
△□
1
○
△□
■■■■■
○
△□
2
○
■■■■
○
△□
△□
3
■■■■■■
○
△□
■■■■
○ △□
■■■■
○ △ □
■■■■■
■■■■■■■
○
△□
■■■■
○
△□
■■■■
■■■■■■■
注: ○は播種、△は2次育苗開始、□は定植、■は収穫期間
3)道内事例(低段密植に限らない)
ア
公社型養液栽培システム実証展示施設(由仁町)
ア)カネコ種苗スプレイポニック(噴霧耕)
軒高2.5m、二重被覆エアー型カーテン、内カーテン、温風暖房機、培地加温、
温水循環式ボイラー
品種:招福パワー
2月下旬定植、収穫5月上旬~11月末
収穫量23t/10a、販売量16t/10a、商品化率69.6%
イ)大塚化学簡易隔離ポット(不織布・らくらく鉢っこ)
軒高1.8m、ヤシ殻培地、二重被覆カーテン、内カーテン、温風暖房機
品種:桃太郎なつみ
3月中旬定植、収穫5月中旬~11月末
収穫量19t/10a、販売量16t/10a、商品化率83.1%
イ
道内現地事例(東神楽町)
ロックウール、3作型、廃タイヤボイラー
前期:12月は種、1月定植、3~7月収穫
中期:5月は種、6月定植、8~10月収穫
後期:6月は種、7月定植、9~12月収穫
10~11t/10a
ウ
道内試験成績参考事例(土耕)
秋季安定生産に向けたトマト3段密植栽培技術と経済性(道総研
センター
花・野菜技術
平成26年1月)
セル成型苗直接定植する3段密植栽培で、子葉上摘心による2本仕立て苗を
使用することで規格外果が減少し、慣行の6月ポット苗定植栽培に比べ9月収
量の増収や秀優品率の向上が可能。
○
9月以降良果収量(H24~25平均)
3段密植:5,322kg/10a(2,000株/10a、2本仕立て)
慣
行:3,398kg/10a(2,500株/10a、1本仕立て)
57
4)収量増加の可能性
(1)CO2施用
果菜類では平均的に見て20~30%の増収効果が確認されている。
施用方法には生ガスと燃焼によるものがある。
(2)冷房
開花直後に35℃以上の高温に遭遇すると、着果率の減少や小粒果が増加する。
また、高温期には裂果が発生するが、遮光によって裂果の発生は抑えられるもの
の収量が低下する。道内の土耕栽培でも、近年夏期の収量低下の事例が見られて
きている。よって、夏の収量低下を抑えるためには冷房が有効。
・細霧冷房
・パッドアンドファン
・ヒートポンプ
道内では冷房よりもむしろ冬期の暖房費軽減に効果が期待される。(後述)
モデル設定条件⑤
販売量ベースで、収量は30t/10a程度を当面の目標とする。
4
生産物の単価
高糖度トマト、高機能性トマトなど、高い技術や特異性、販売戦略により高い収益
を得ることに成功している事例も全国には存在するが、誰もが取り組めるものとも限
らないため、経営モデルについては、まずは一般的な大玉トマトの市場価格により試
算することとする。
モデル設定条件⑥
単価は一般的な市場価格とする。
5
栽培システム
養液栽培の方式については、小中規模タイプの参考3を参照。
1)病害対策と培地の選択
病害の蔓延性と対処方法からは、トマトの場合は水耕よりも固形培地耕にメリッ
トがあると考えられる。培地の種類は入手性、コスト、廃棄方法などから検討する。
また、養液の殺菌対策も必要。
58
栽培方式と病害発生
特徴
水 ・低段栽培に多い。
耕 ・培地のコストが低減
できる。
・培地の干渉能力が少
ないため根域環境が
変化させやすく精密
な肥培・温度管理が
できる反面、地下部
環境が外部環境の影
響を受けやすい(夏
期の高温、冬期の低
温)。
・肥料バランスが崩れ
やすい。
・停電などの機器トラ
ブルに脆弱。
固 ・長期多段栽培に多
形 い。
培 ・培地のコストがかか
地 る。
耕 ・培地による干渉能力
があるため、栽培が
安定しやすい。
病害発生から見た比較
・病原菌が循環する培
養液により急速に蔓
延
・トマトで特に発生頻
度の多い病害:根腐
病、灰色疫病
・病原菌が培地に蓄積
して被害を繰り返す
・蔓延速度は遅い
・培地を繰り返し使う
ことで年々被害が増
加→交換により対応
可
・トマトで特に発生頻
度の多い病害:青枯
病、萎凋病、モザイ
ク病
(「養液栽培のすべて」から整理)
59
培養液の殺菌・除菌方法
方法
概要
紫外線
殺菌装置の設置
オゾン
殺菌装置の設置
ろ過殺菌
①緩速ろ過
培養液を砂層を用いて
低流速でろ過
②抗菌ろ過装置
ろ材に抗菌資材を利用
し除菌
熱殺菌
根腐病菌や萎凋病菌、青
枯病菌等、培養液伝染す
る病原菌を培養液の加温
機を利用して50~60℃で
殺菌。
光触媒
酸化チタン、酸化タング
ステン等、光と照射する
と酸化反応などの触媒作
用を示すもの
金属銀剤
野菜類の根腐病に農薬登
録されている、培養液に
添加できる金属銀剤(オ
クトクロス)
亜リン酸
リンのオキソ酸でリン酸
同様の肥料成分とされて
肥料登録されているが根
腐病ほかに効果
(「養液栽培のすべて」から整理)
培地の種類と特徴
培地の種類 特徴
れき
・径5~15mm、水分保持率は8~10%と低く、給液回数を多くする必要がある反面、
水分コントロールしやすい。
・残根処理などの関係で面積減少しているが、高糖度トマトでの利用事例あり。
砂
・れきに比べて保水力は高いが、給液回数は粒径にもよる。
・塩類が集積しやすいという短所があり、マイクロチューブや点滴タイプの灌水チ
ューブによる灌水や毎作後の水洗いが必要。
パーライト
・原料となる岩石を粉砕し、焼成発泡させたもので、日本国内に十分産出する真珠
岩が原料。
・トマトではロックウールに劣らない培地とされている。
・ピートモス、ココピートなど他の培地と混合使用の例が多い。
ロックウール ・固形培地として最も普及している。
・固相率が約4%で、作物が必要とする空気と水分を好適な比率で保持できる。
・1作ごと交換もあるが、2~3年の連用可。
・バラなど多年生植物の場合は5~6年ごとの改植の際に交換。
・いちごなど粒状綿を用いた栽培では減少分補充により永年使用が多い。
・道内では今のところリサイクル不可であり、産廃処理が一般的。
・主成分はケイ酸とカルシウムであり、水田への鋤き込み処理も可能。
樹皮
・スギやヒノキの樹皮や材を細かく砕き、混合、加工した培地。
・農地にリサイクルできる固形培地として注目されている。
・スギ、ヒノキの樹皮には抗菌物質が含まれており、土壌伝染性病害を抑制する効
果もあるとされている。
ヤシ殻
・繊維が細かいダスト状のココピートと、ヤシ殻チップがある。
・バラの生産に優れるとの研究結果あり、いちごなどの培地として単独または他の
培地と混合して使用されている。
・保水性はロックウールやピートモスと同程度に高い。
ピートモス
・水苔やスゲ類などが一部分解した状態で堆積した土壌。
・未調整のピートモスはpHが4~5と低いが、調整済みのものが市販されている。
・砂やパーライトなど他の培地と混合して用いる場合が多く、パーライトを混合し
たものではバラ栽培で比較的良好。
・栽培が進むにつれて容積減少する欠点あり。
・ピートモス採集による環境問題により、使用を減らす動きもある。
もみがら
・生のもみがらをそのまま用いるもの。
・気層率が高く湿害は起こりにくい。
・使用初期には培養液から窒素を吸収して発酵するので定植苗は窒素欠乏症状を呈
することがある。
(「養液栽培のすべて」「施設園芸ハンドブック」から整理)
・近年では、固形培地耕でも少量の培地による方法が開発されている(ロックウール粒
状綿やヤシ殻等を利用)。
モデル設定条件⑦
・病害の蔓延性と対処方法からは、固形培地耕とする。
・培地は廃棄コストの低減から、少量の培地のものとする。
60
2)ベッド設置方法
低段密植栽培としたことから、作業性を考慮して架台に設置する方法とする。
暖房との関係
・養液を温めて循環させる方法がある。
・架台の場合、温湯管をベッド内に通して暖める方法がある。
モデル設定条件⑧
ベッド設置方法は架台に設置する方法とする。
6
温室環境の制御
環境要因として、光、温度、CO2、湿度、換気・気流、地下部環境(水、養分)を
トマトに適した条件にすることが重要。要因のどれか一つでも欠けるとそれが律速要
因となる。そのため、これらの環境を制御する施設や機器のレベルがある程度の範囲
でそろっていないと過剰投資となる。
1)温度
・適温(トマト)
昼気温:27~20℃、夜気温:13~8℃、養液温度:23~15℃
・トマトでは培養液温が10℃といった低温や35℃といった高温になると花芽分化が抑
制されたり、花房の着生節位が上昇したりする。さらには養分吸収のアンバランス
から生理障害の発生。
・トマトの水耕栽培では、温室内の最低気温が10℃を下回らない限り、培養液の加温
は必要ないが、最低気温が5℃程度まで下がる場合には、培養液を15℃程度まで加
温することで平均1果重が増加し、全収量が増加。
・花粉媒介昆虫最適活動温度
活動可能温度
活動適温
マルハナバチ
5~30℃
17~23℃
ミツバチ
15~30℃
23~25℃
(「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」より)
・天敵資材を活用する場合はその最適活動温度の考慮も必要(生物によるが15~26℃
の範囲)
・変温制御とする。
複数の温度設定が可能な多段サーモ装置を活用することで、作物の生理にあわせ
た一日の温度管理(変温管理)を行うことが可能となり、恒温管理(変温なし)に
比べて作物の生育促進と省エネルギー化が期待される。
61
(「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」より)
2)湿度
施設栽培の湿度には、灌水、蒸散、温度、換気などの要因が複雑に関係している
ので、これを厳密に制御するのは難しいが、飽差管理により収量が向上。
(前述の細霧冷房やパッドアンドファンなどと組み合わせた環境制御技術により実
現可能)
加湿
潅水(うね、通路、葉面散布)
加湿制御
潅水制御
水管理
マルチング(うね、通路)
被覆資材の利用
湿度調節
受動的調節
加湿制御
(資材利用)
(外張り内面の防曇財塗布
吸湿性・透湿性の内張り展張)
吸湿資材(稲わら、吸湿剤)
加湿器(蒸気式、遠心式、超音波式)
加湿
制御操作
(装置利用)
ミスト噴霧(細霧冷房)
換気(換気扇、換気窓、全熱交換機)
除湿
除湿機(専用除湿器、ヒートポンプ)
除湿的効果-暖房(温風、温水、ヒートポンプなど)
施設栽培における湿度調節法の分類(「施設園芸ハンドブック」より)
3)換気・気流
換気の最も大きな目的は、日中の過度の昇温の抑制。さらに、換気には、光合成
の原料である二酸化炭素の外気からの補給、湿度の調節、気流による作物群落内の
ガス交換の促進などの効果もある。
62
自然換気方式と強制換気方式の特徴および有利な温室の該当例
換気方式
特徴
有利な温室の該当例
・換気窓の面積や位置などを適 ・棟部と側壁部に開口面積の大きな換気窓のある温
切に選択すれば、比較的大量の 室
換気量が得られる。
・多連棟型温室で屋根部の開口面積が大きい温室
・温室内の気温分布が比較的均 (フェンロー型温室)
自然換気方式
一である。
・間口が15m程度以下で、側壁が全開でき、しかも、
・外部の気象条件(風向、風速 定常的な外風が期待できる温室
など)の影響を受けやすい。
・盛夏2ヶ月程度休閑する温室で、天窓を有するもの
・換気量は、換気扇の風量、台 ・強風地帯であることや構造上の問題から天窓を設
数、吸・排気口の面積や位置に 置できないような温室
依存する。
・高温期に風が弱い地帯
・吸気口から排気口にかけて温 ・大面積で天窓機能が不十分な温室で、谷部などに
強制換気方式 度勾配が生じる。
補助換気を必要とするもの
・換気扇が影となり、温室内光 ・特に室内の通風と低湿を好む植物を栽培する温室
環境が悪化する。
・蒸発冷却による冷房を行う温室
・換気扇の電気料、騒音、停電
時の問題がある。
注)日本農業気象学会(1977)と佐藤(1987)より作成
(「施設園芸ハンドブック」より)
・温室内空気の撹拌
密閉した温室では、強制的に温室内空気を動かさない限り、室内空気の動きはわ
ずかであり、気温・湿度・CO2濃度などの環境因子の分布が生じやすい。作物周囲
の気流速を増大させて、温室内環境の均一化を図ると同時に、作物と周囲環境との
エネルギー・水分・CO2などの交換を促進する。循環扇を設置することで実現可能。
4)CO2濃度
果菜類では平均的に見て20~30%の増収効果が確認されている(前述)。
施用基準は次の方法が示されている。
施設トマト・キュウリ栽培におけるCO2施用基準(野菜茶試、1977)
越冬栽培では保温開始期以降、促成栽培では定植後30日目頃からで、
施用時期
いずれも着果を見届けてから行う。育苗中は施用しない。
日の出後約30分後から、換気するまでの2~3時間。
施用時間
換気をしない場合でも、3~4時間で終了する。
晴天時 1,000~1,500ppm
施用濃度 曇天時 500~1,000ppm
雨天時 施用しない
温 昼温 CO2を施用しない場合と同じく、28~30℃で換気をする。
度
変温管理とし、転流促進時間帯(4~5時間)を設ける。晴天日はキュ
条 夜温 ウリ15℃、トマト13℃程度とし、曇天日はこれより下げる。呼吸抑制
件
温度はキュウリ10℃、トマト8℃とする。
CO2を施用するために、密閉時間を長くして、多湿にするようなことは
湿度条件
避ける。
施肥条件 特に多肥にするような必要はない。
灌水条件 やや控えめにし、CO2施用により茎葉が過繁茂になることを防ぐ。
堆肥が多く、土壌より多量のCO2が発生している施設では施用効果が少
備 考
ない。施用に先立ち、施設内のCO2濃度を測定する必要がある。
(「施設園芸ハンドブック」より)
63
・ゼロ濃度差CO2施用法
近年、施設内CO2濃度が施設外CO2濃度より低い場合、CO2を施用して施
設内CO2濃度を施設外CO2濃度と等しくなるまで上昇させる施用法が提唱さ
れている。CO2が施設の開口部から施設外に漏れるのは、理論的に、施設内濃
度が室外濃度より高い場合だけであることから、この方法ではCO2のほとんど
すべてが植物の光合成活用により吸収されることになり、CO2施用効率は100%
近くになるためCO2施用量が少なくて済むので運転コストが低くなる。
64
【参考2】トマト栽培方法のポイント(低段密植栽培)
(独)農研機構
植物工場つくば・久留米実証拠点東北研修会テキスト
「太陽光利用型植物工場におけるトマトの低段栽培と多段栽培」より引用
(一部加筆・改変)
1
育苗
購入苗を利用する生産者も増えているが、低段栽培では、長期多段栽培に比べ、苗台
の割合が相対的に増加するため、閉鎖型育苗装置による一次育苗が低コスト、安定生産
につながるとされている。
1)一次育苗
トマト低段栽培では、第1花房の着果節位の揃いが極めて重要となる。着果節位の
揃いが悪い場合には開花時期にずれを生じ、受粉作業が煩雑化するだけでなく、栽培
終了時期も揃わずに年間作付回数の低下を引き起こし、結果として年間収量の低下に
つながる。
一般的に閉鎖型育苗装置を用いた場合には、128穴セルでは播種18日程度、72穴セ
ルでは21日程度までであれば生育が揃いやすい。それ以上の日数になると、徒長や乾
燥による苗質の低下がしばしば起こる。特に、培地にロックウールを用いた場合には
乾燥しやすく、2週間目頃から水不足になることがあるので、灌水頻度には注意する。
2)二次育苗
閉鎖型育苗装置での育苗後、栽培面積を有効に利用するために、第1花房開花期前
後まで二次育苗を行うことがある。培地耕の場合はロックウールブロックや粒状綿な
ど本圃での培地と同じものが用いられる。
1段栽培では第1花房の分化が一次育苗で完全に終わっているため、初期の草勢が
強くても良いが、3段栽培では初期の草勢が強すぎると上位花房で乱形果等が発生し
下物果が増加する。そのため、第1花房開花期前後まで草勢を整えながら育苗を行う
ことが生産性向上のためには有効。
2
トマトの整枝
トマトは本来、ほ伏性の植物。整枝・誘引など仕立てを行わないと側枝は伸び放題
となり、茎葉は重なりあい、地面と接した茎からは不定根が発生し、畑全面を覆い尽
くす葉に生長する。心止まり性の加工用トマト栽培を除き、高品質の果実を数多く収
穫したい場合には、茎葉が重なりにくいように立体的に仕立てて空間を上手く利用し
て栽培する。
トマトの主茎には、8枚前後の葉が展開した後に第1花房が付き、その後3枚葉を
挟みながら花房が規則的かつ連続的に形成されてゆき、それぞれの葉や節からは側枝
(脇芽)が形成される。仕立て方は、主茎と側枝の生育をコントロールする整枝法、
栽植本数、誘引方法などの組み合わせにより決定する。
3
仕立て方
トマトの仕立て方は、環境条件、作型、栽培方法、品種、施設の形状、軒高、誘引
65
線の高さ、高所作業台車などの設備の有無、労働力など、すべての作業や環境に影響
するが、基本となるのは側枝を取り除き主茎のみを残していく1本仕立てである。
1本仕立てでも、低段栽培では1~3段に仕立てて短期作を繰り返す。
トマトの茎を支柱に8の字にしたひもで誘引していく主枝直立1本仕立ては短期物
では有効。
4
摘葉・摘果
摘葉すると株全体の光合成量は減るが、光があまり届かない下位葉を取り除く「玉
だし」は、病害虫防除に有効である。収穫を終えた果房より下の葉は、果実肥大に直
接関与しないとみなされ摘葉される。生育に必要な葉数は、季節や株の状態、地域に
よっても異なるため、栽培環境、場所、仕立て方法に合った摘葉を行うことが重要。
摘果して果実数を制限することは、総収量は減少をまねくが、果実の大きさや品質
を均一化するには効果的であり秀品率は向上する。冬期の場合、果実表面への日射を
高めた方が着色が早まるなどメリットがあるが、夏期には直射日光を遮った方が裂果
防止となるため、玉だし処理は時期により調節する必要がある。
5
基本的な養液管理
太陽光利用型植物工場における、基本的な地下部環境制御法としては、養液栽培が
基本となる。次表は代表的な養液栽培の組成。国内の様々な処方、オランダ等で使用
されている海外の処方においても、基本的に大きく変わるものではない。ただ、閉鎖
系管理を行う場合は、カルシウム及びマグネシウム、硫酸イオンが増加しやすいので、
あらかじめ減らしておく必要がある。
7.6
6.7
8.9
8
4
6
5.3
8.2
4.5
5.7
8
3
10
5.7
(me/L)
Mg
3.7
2.1
2.6
4
2
2
3
Normal※
10.7
3.4
5.9
Strong※
17.9
3.4
9.7
Extra※
20
3.4
11.5
トマトⅠ※※
16.5
4.5
5.0
トマトⅡ※※
13.5
4.5
9.0
トマトⅢ※※
15.0
3.8
8.7
キュウリⅠ※※
14.9
3.8
6.9
キュウリⅡ※※
18.9
3.8
8.8
キュウリⅢ※※
16.5
3.8
7.5
※グローダン(ロックウール栽培用、欧州)
※※Sonneveld & Straver tomato(Netherland,1992)
6
9
10
6.0
4.7
4.2
4.6
5.2
4.2
2.5
3.3
3.3
2.0
2.5
2.0
1.4
1.4
1.5
培養液処方例
大塚A処方
トマト処方(初期)
トマト処方(中期)
園芸試験場処方(各種)
山崎処方(トマト)
神奈川園試処方(トマト
多木化学(キュウリ)
N
18.5
11.2
13.9
16
7
10
13.1
P
K
5.1
3.2
3.9
4
2
4
4.4
Ca
閉鎖系管理における培養液処方例
閉鎖系
従来法
比
EC(dS/m)
1.6
2.6
0.62
mmol/L
NH4
1.0
1.2
0.83
K
6.5
9.5
0.68
Ca
2.8
5.4
0.51
Mg
1.0
2.4
0.42
NO3
10.8
16
0.67
SO4
1.5
4.4
0.34
H2PO4
1.3
1.5
0.83
μmol/L
Fe
10.0
15.0
0.67
Mn
10.0
10.0
1.00
Zn
4.0
5.0
0.80
B
20.0
30.0
0.67
Cu
0.8
0.8
1.00
Mo
0.5
0.5
1.00
同じECの培養液を用いても、定植時の生育ステージにより、その後の生育が大き
く異なる。草勢を強くしたい場合には若苗を、弱くしたい場合は開花期程度の苗を定
植する。また、培地容量、灌水頻度によっても生育が大きく異なるので注意する。特
にNFTでは低濃度のECで管理していても草勢が強くなりやすく、肥料の量的管理
66
や間断灌水などにより制御する。
低段栽培でも、1段栽培とそれ以上の低段栽培では生育初期の養液管理が大きく異
なる。1段栽培では生育初期からEC2.5程度の濃い培養液を与えても、育苗中に花芽
分化が終わっているため問題とならない。それ以上の2段、3段栽培の場合には、第
1花房の果実が肥大し始めるまでは生長を抑える。そのため閉鎖型育苗装置から出庫
後はEC0.5~1.0程度の薄めの培養液で管理する。
果実肥大の開始後はECを1.5程度まで高める。その後、第3花房開花期頃にEC2.
0程度まで上昇させる。着果負担が掛かり始めた後も低濃度で管理すると、上位花房が
肥大しないため、収量が減少する。蒸散量の多い夏期は、薄目の培養液を多量に、蒸
散量の少ない冬期はやや濃い目の培養液を与え生育を制御することが基本となる。
6
草勢管理
草勢とは、草の勢いを示す。
1)草勢と品種
草勢管理にまず必要なのは、栽培する品種の特性を理解することである。(草勢
に係る表示の例:強、中、弱、おとなしい、○○程度、旺盛、コントロール容易、
草姿を見てこまめに追肥・摘果する、草勢が衰えないようにする、栽培中期から後
期にかけて株が疲れ収穫量が低下する、強いが暴れることが少なく管理がしやすい
等)
日本の品種は、過繁茂になりやすい傾向がある。
2)草勢管理の意義
トマトは茎や葉が生長する栄養生長と、花を付け実がなる生殖生長を同時に連続
的に繰り返す作物である。トマトの草勢は栄養生長と生殖生長の適切なバランスに
よって保たれる。草勢が強すぎるトマト(いわゆる暴れた状態)は、栄養生長に傾
き、過繁茂になり果実の生長が進まない状態を示す。草勢が弱くなると、茎葉、果
実も含め全体的に株の生育が鈍くなる。栽培期間中に安定した収穫を進めるために
は、栄養生長と生殖生長がどちらにも偏ることなく生長が進むこと、つまり適切な
草勢管理が必要。
トマトを育てるときには特に第一果房をしっかりと着果させることが重要。そう
することで、草勢が落ち着きその後のバランスがとれるようになる。その後は、肥
培管理、環境制御などで適した草勢に持って行く。
3)栽培中の草勢の判断
草勢の判断は、トマト全体の草姿、すなわち、茎径、葉の大きさ、色、展開、繁
茂具合、実の着き、肥大、葉の数、大きさ、開花花房から生長点までの長さなどか
ら総合的に判断する。
67
トマトの草勢の判断
草勢
強すぎ
項目
開花花房から生長 場合により短くなったり心
点までの長さ
止まりになる
茎
異常茎が出現
葉
葉柄から茎葉発生
葉色
濃い
花
鬼花が発生
悪い、もしくは良すぎて乱
果実肥大
形果に
強
中
弱
適当
短い
太い
大きい
濃い
適当
細い
小さい
薄い
小さい
良好
悪い
尻腐れ果
多発
発生しやすく
なる
生育
草姿
心止まりが起こりやすい
過繁茂
良好
葉がやや多め
発生なし
ホウ素欠など養分
欠乏で発生する場
合がある
悪い
貧弱
4)生理生態と草勢
草姿は複雑な生理反応が積み重なった結果である。そして、作物生産にとって重
要な生理反応は、光合成、呼吸、蒸散、光合成産物の輸送、水と養分の吸収、分化、
生長などである。これらの反応は、栽培環境に大きく影響を受けるため、適切な栽
培環境を作り出すことが草勢維持に重要。
特に、①光合成と②転流(果実や生長点、茎葉、根への光合成産物の移動)が草
勢に大きく関わっている。①曇天続きで光が弱い、②土壌水分が少ない、③密植で
群落内のCO2濃度が低い、④ハウス内が乾きすぎ、⑤湿度が高すぎて気孔が開かな
い、といった状態ではトマトの光合成が低下して、草勢は弱くなる。一方、好適な
条件の場合は、光合成産物が果実に転流するように管理を行うことが重要。栄養生
長と生殖生長のバランスは炭素と窒素のバランス(C/N比)の影響を受け、肥料
分として窒素が多い場合(C/N比が小さい)、栄養生長に偏る方向になり茎葉が
繁茂する。暴れた状態は着果した果実を全て取り除くと簡単に再現できる。この場
合、果実へ転流できない光合成産物は茎葉や根に貯まり、茎は太く異常茎になり、
品種によっては葉柄や花柄から新芽が現れ、茎からは不定根が現れ、葉は巻き、悲
惨な状態となる。さらに植物体内のホルモンバランスが崩れ、心止まりを起こし、
生育自体に悪影響を及ぼす。よってトマトの草勢管理は、光合成産物が生長点・茎
葉・根などの栄養生長器官と花や果実などの生殖生長器官にバランス良く配分され
ることを基本に、弱すぎ、強過ぎにならないように行うことが肝要。
5)栽培管理による草勢管理技術
施設内の設備にもよるが、生産者によるコントロールとしては、①灌水、肥培管
理など地下部の管理、②摘葉、剪葉、摘心、側枝利用、摘果、苗の定植時期の調節、
接ぎ木など作物管理、③温湿度管理、遮光、CO2施用などの環境管理による方法が
ある。これらは複合的に行うべきことであり、一つの方法だけでは草勢を管理でき
ない。
68
トマトの草勢管理のポイント
項目
品種
肥料
かん水
摘葉・剪葉
側枝
摘果
茎数
LAI調節
整枝方法
接木苗
CO2施用
光
温湿度
ポイント
特性を理解し、時期や栽培システムにあう品種を選ぶ
強くするには多く与え、弱くするには少なく、速効性なら液肥で
弱くするには少なめで、乾燥による尻腐れ発生注意
強すぎる場合に行う
強すぎる場合は大きくして取り除く
弱い場合行い、草勢を強くする
強すぎる場合は増やす
栽培にあったLAIにする
栽培にあった方法を採用
耐病性、草勢を考えて選択
光合成量が増し草勢が強くなる
適切な管理を行う、多い方がよいが、場合によっては遮光も
適切な管理を行う、適温にする、過湿・乾燥を避ける
6)弱い草勢への対処
草勢が弱く生育が鈍る場合には、基本的な栽培環境を整える。例えば、葉色の薄
く明らかに肥料不足の場合には、液比を追肥するなど速やかな対策をとる。高温や
低温で、肥料の吸収が悪い場合には、地下部も含め施設内の環境を好適な範囲に制
御する。肥培管理や環境管理ではどうにもならない場合、例えば、梅雨や冬期に曇
天が何日も続き光量不足で光合成ができず生育しないような場合や、速やかな草勢
の回復が見込めない場合には、収量は減るが、摘果により着果負担を減らして、栄
養生長に振り向ける。夏秋トマトでは着果負担がかかったまま8月の高温期を迎え、
その後9月頃になると草勢が低下する傾向があるため、摘花房により草勢を調節す
る。長期作型においては、収穫段数が20段を超えるようになると徐々に草勢が衰え
るため、最初から接木苗を利用して草勢を維持することも行われる。
7)強い草勢への対処
草勢が強すぎ、暴れた状態になりそうな場合には、肥料を抑え、芽かきを遅くし
側枝を大きくして取り除くことで草姿を整える。養液栽培や養液土耕栽培の場合に
は、与える養液の濃度や、回数での調節も可能となる。土耕栽培の場合には、施肥
量や灌水量(回数)が重要になる。多くの元肥を入れて、定植後に灌水量を増やし
てしまうと初期に暴れる状態になることが多い。特に若苗定植は初期の暴れが生じ
やすいので注意する。茎葉が過繁茂した場合に、着果がうまくいかないとさらに栄
養生長に偏り、その結果、水分と一緒に運ばれるカルシウムが相対的に多く茎葉に
分配され、果実への分配が減少し尻腐れ果の発生につながる。尻腐れ果が多発した
ような場合には、果実肥大が悪くなり、さらに栄養生長に傾く悪循環に陥ってしま
う。こうなると、摘葉、剪葉を行い、茎葉部位の量を減らすか,側枝を伸ばして主
茎を摘心するなど、生育を制御して、草勢を整える必要がある。暴れた場合には、
収量低下は避けられないので、草勢が強すぎ暴れるような状態を未然に防ぐ葉に管
理することが肝要。栽培する品種の適正を理解し適切な草勢になるように、施設内
の環境や肥培管理が必要。
草勢は、トマトの齢にも関係。若いトマトは元気で、病気にもかかりにくい。一
方、数ヶ月経ったトマトは株として衰え始め、草勢維持が難しく病気にも弱くなる。
長期栽培のトマトは特に、負担の少ない、健やかな生長をさせるよう管理すること
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が重要。
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花粉交配
1)ホルモン処理
夏期の花粉稔性が低下する時期や厳寒期の交配用昆虫の活動の鈍る時期には、ホ
ルモン処理による着果が有効。
2)振動による方法
トマトは1つの花の中に雄蕊と雌蕊があり、花を振動させることで交配することか
ら、振動器具による交配が行われることがある。
3)マルハナバチによる方法
セイヨウオオマルハナバチの訪花により交配を行う方法が広く行われているが、
次の点に留意が必要。
<セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて>
農林水産省作成パンフレットより
セイヨウオオマルハナバチは、特定外来生物に指定されていることから本来は飼養等する
ことができないが、生業の維持の目的で花粉交配用のためにやむを得ず使用する場合にあっ
ても、外来生物法を遵守し、以下の事項をはじめ、法令に基づく手続き・措置を必ず実施する
必要があります。
①必ず、環境大臣の許可を取得して飼養すること。許可の有効期間は3年間です。それ以
降も飼養等を行いたい場合は、有効期間内に更新手続きをすること。
②必ず、施設開口部へネットを展張すること。
③必ず、施設の出入り口を二重にすること。
④必ず、飼養の開始後はハウス等飼養施設に、飼養等に係る許可証のコピーを掲出するこ
と。
⑤必ず、使用後は、確実に殺処分をすること。
※ 詳しくは、外来生物法ホームページ
(http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html)をご覧ください。
●なお、外来生物法では、
・上記①に違反し、環境大臣の許可を得ずにセイヨウオオマルハナバチを飼養した場合
(販売・頒布の目的で行った場合を除く)
→個人:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、法人:5千万円以下の罰金
・上記②~⑤を行わず、環境大臣からの飼養等の改善などの措置命令にも従わない場合
→個人:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人:1億円以下の罰金
等の厳しい罰則が設けられているほか、許可が取り消される場合もあります。
●今後、適切な管理が徹底されないと、セイヨウオオマルハナバチの飼
養ができなくなる可能性もあり、トマト産地が維持できなくなること
も心配されます。
●生産者の皆さんにあっては、適切な管理が求められています。
●また、訪花昆虫を必要としない単為結果性品種への転換も検討してく
ださい。
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特定外来生物
セイヨウオオマルハナバチ
【その他参考】
北海道農政部
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新規就農者におけるセイヨウオオマルハナバチの取扱い
セイヨウオオマルハナバチは平成18年9月1日から特定外来生物として規制されているが、「生業
の維持」の目的で花粉交配用のためにやむを得ず飼養する場合は、環境大臣の許可により飼養が可能。
「生業の維持」については、当該生物が特定外来生物に指定された際に、申請者が現に営んでいた
業活動を維持するために必要な場合のみ許可されており、平成18年9月1日以降に新規就農した農
業者には許可されない。ただし、離農者が次の世代に譲渡するような形は認められている。
2 クロマルハナバチの取扱い
クロマルハナバチは本州の在来種であり、セイヨウオオマルハナバチの代替として本州では利用が
進められているが、北海道はクロマルハナバチがもともと生息していない地域であり、北海道におい
てはセイヨウオオマルハナバチと同じく、外来種にあたる。このため、クロマルハナバチの導入によ
り生態系に係る被害が懸念されることから、道内での飼養はされていない状況(自主規制)にある。
3 エゾオオマルハナバチについて
北海道でも使用可能な種類として、エゾオオマルハナバチの研究が進められている。
4 単為結果性品種について
受精しなくても果実を形成する現象を単為結果(たんいけっか)という。近年は本州でトマトなどで
単為結果する品種(単為結果性品種)の導入を進める地域が出てきている。北海道における導入につ
いては、農業試験場で検討されている。
【単為結果性品種(トマト)の例】
・ルネッサンス((株)サカタのタネ)
・パルト((株)サカタのタネ)
・F1-82CR((株)テピアシード)
・F1-5((株)テピアシード)
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病害虫防除
防除は適時行う必要がある。周年栽培を行う場合、ハウス内にトマトがなくなる時
期がほとんどなくなるので、耕種的、物理的、生物的、化学的防除を組み合わせた総
合防除(IPM)が必要である。①温湿度管理による環境制御、②天敵利用、③微生
物剤、④物理的効果の薬剤などを利用し、なるべく病害虫が増えないように管理する。
農薬は、散布回数や収穫前日数を遵守し、マルハナバチを利用している場合には、マ
ルハナバチに影響のない薬剤を散布する。
9
収穫
果実が色づき始めたら収穫を行う。開花から果実が成熟するまでの期間は、品種ご
とに有効積算温度により推定できる。日本品種では1,200~1,400℃くらいであり、平
均気温から成熟までの日数を算出する。果実の色づきのステージは、①緑熟期、②催
色期、③ピンク期、④明赤期、⑤赤熟期、⑥過成熟期に分けられる。夏期は流通中に
色づきが進むので、①緑熟から②催色期の果実を収穫し、冬期には③ピンク期以降の
果実を収穫する。その後、選果施設に運んで、選果を行い、4キロ箱に詰めて出荷さ
れることが多い。
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トマトに発生する障害とその対応
1)生理障害と病害虫
トマトに発生する障害は、主に生理障害と病害虫による。障害の発生を抑制する
には、直接的な「外因」だけではなく、障害を助長する「誘因」や障害を受けやす
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い作物の状態である「内因」も考慮する。つまり、①適切な品種を選択し、②温度、
湿度、日射など適切な環境制御を行い、③養水分を適切に管理することにより、生
理障害や病害虫によって発生する障害を軽減することが可能となる。
外因
○主たる原因
・養水分
・病原菌、病害虫
誘因
○外因や内因を
助長する環境要因
障害
発生
内因
○障害を受けやすい
作物の状態
トマトの障害要因
障害発生は養水分と病害虫だけの問題ではない
2)生理障害とその対処法
トマト栽培において、障害果は商品にならない、品質が悪く等級が落ちるなど収
益が低下する。トマトの障害果としては、裂果、尻腐れ果、着色不良、チャック果、
乱形果、空洞果、裂皮(表面に細かい亀裂が入る果実)、でべそ果(へたの部位か
ら果肉がはみ出したような果実)、花落ち(先端の柱頭の部位がコルク化した果実)
などがある。葉については、不適切なホルモン処理によって生じる奇形葉、葉面散
布剤によって発生する薬害などがある。
(1)裂果
裂果は、果実へ流入する水と同化産物が多い場合、果実が肥大するスピードに、
表面のクチクラと表層細胞の伸張が間に合わず、表層に亀裂を生じることで発生
する。例えば養液栽培の場合に、養液のECが低く、植物が水を吸いやすい条件
では、果実へ水が流入し果実が大きくなり、発生しやすくなる。栽培管理では、
灌水の影響が大きい。
この他、発生要因として、①高温、湿度の差が大きいとき、②強日射などの環
境要因、③着果負担が低いとき(果実の着生数が少ないとき)、④低頻度・多量
の灌水、⑤低EC条件などの耕種的要因が関与する。実際の栽培現場では、いろ
いろな要因が重なり発生しているので、例えば、多発しているときには、施肥管
理や灌水方法を徹底して減らせるが、完全に防ぐことは難しい。
強日射を防ぐ遮光は裂果の発生を抑えることには有効だが、光合成を阻害する
ため果実の肥大、つまりは収量は減収する場合がある。果実の発達が悪く空洞果
が発生するような条件条件(曇天が続くような場合)では裂果発生は少なくなる。
ちなみに裂果が発生しにくい品種は、果実の表面が硬い品種が多い。裂果発生の
多い品種を用いた場合に裂果の発生を抑えるためには、環境制御、草勢管理、肥
培管理、灌水方法など総合的に判断し、ネックとなっている要因を改善し、総合
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的に有効な対策をとることが必要。
(2)尻腐れ果
尻腐れ果の発生は、高温、低カルシウム、低リン、高マグネシウム、高窒素、
高カリウム、高塩類濃度(高EC)、乾燥、湿害、強光などで起きる。このよう
なストレスによって生育のバランスが崩れたときに生じ、生じた果実は収穫でき
ず収量減の要因となる。
尻腐れ果はカルシウム不足が要因とされてきたが、一方で果実のカルシウムレ
ベルに差異が見られないことや、カルシウム以外のミネラル濃度を変えても起き
ること、環境ストレスによる尻腐れの場合のカルシウムの役割が不明瞭な点もあ
った。近年、カルシウムについての細胞内の役割が次第に明らかになりつつあり、
改めてカルシウムとの因果関係について再評価されている。そこでは、尻腐れは
急速に生長する部位での局所的なカルシウム不足が原因とされる。
実際の栽培管理における尻腐れ果予防のポイントとしては、①樹勢を乱さない
ように管理し、②急なしおれを生じないような管理をすることである。
(3)着色不良果
果実に強い光が当たる条件や、高温条件で、果実の表層のリコペンの発現が悪
く赤くならず緑色や黄色になることがある。春先から夏にかけての強日射、高温
条件で発生する。葉で果実を覆うように整枝すると良い。
(4)乱形果
一般に草勢が強いときに、花が鬼花となるが、鬼花が受精して果実になったと
きに、形が悪い乱形果となる。鬼花や乱形果は初期に取り去った方がよいが、草
勢に影響するような場合はわざと残しておき、しばらく草勢を観察してから摘果
する。
(5)ホルモン処理による葉の奇形
着果及び肥大を促進させるために、ホルモン剤の散布は一般的におこなわれる。
開花前3日~開花後3日位(1花房で3~5花位開花した時期)、1花房につき1
回だけ散布する。このとき、茎の生長点などにこのホルモンがかかってしまうと、
葉が奇形になることがある。奇形葉は生育の低下にもつながるため、適切な散布
を行う必要がある。
(6)葉面散布剤による葉の奇形
収量増加をもたらすための微量元素等を含む様々な葉面散布剤が開発されてい
る。日本で実績の少ない海外からの資材もあり、肥料であるので問題ないであろ
うとの判断から、他の葉面散布剤と混合して散布し、葉に障害が発生することが
ある。剤によっては、気象条件などにより思わぬ障害が発生することもあるので、
特に初めて使用する資材については、小規模で試して、障害が発生しないことを
確認することが必要。
3)病害虫とその対処法
養液栽培のハウスにおける病害虫防除は、①細菌、糸状菌、ウイルスといった病
原微生物とそれを媒介する昆虫、②茎葉などを加害する昆虫
が対象となる。これ
らの生物からトマトを保護するためには、耕種的、物理的、生物的、化学的防除を
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組み合わせた総合的な病害虫管理(IPM)を採用し、栽培期間を通じて実施する
必要がある。その第1段階は、十分な収量が期待できる抵抗性もしくは耐病性品種
を選択することである。第2段階は、生育に適した温湿度環境において生育させ、
栽培期間中は病害虫の発生を監視することである。
ハウスにおける病害防除には、湿度制御が最も重要。例えば、乾燥すると、うど
んこ病、アザミウマ、ハダニが発生しやすくなり、湿度が高いと灰色かび病、べと
病、葉かび病が発生しやすくなる。高湿度では葉が結露しやすく、病原菌の胞子が
発芽してすぐに発病する。他方、うどんこ病は相対湿度80%で最も良く発生し、湿
度の上昇に伴って発生は徐々に減り、相対湿度95%で発生量が最も少なくなる。
農薬による防除は、害虫の場合は発生量が一定のレベルを超えたときに実施し、
病害の場合は、初発生が確認され、予測される気象条件からさらに病害が拡大する
懸念がある場合に行うことをすすめる。一方、天敵のような生物農薬、フェロモン
剤、昆虫生長制御剤など環境に優しい農薬の場合は、害虫を発見したら直ちに散布
などを実施する。
すべての農薬は、ラベルに記載されている使用基準のとおりに使用する。1病害
虫に対し、タイプの異なる複数の農薬が使用できる場合には、ローテーション防除
により、害虫や病原菌が特定の薬剤に対する抵抗性を発達させる機会を減らすよう
心掛ける。
(1)黄化葉巻病
北海道では現在のところ発生は見られていない。
(2)サビダニ
下位葉の葉裏を摂食する。食害された葉の表面は銀色や黄化を呈し、最終的に
は壊疽状態となる。増加した個体群が植物の上部に移動すると、葉や葉柄は赤褐
色(サビ色)となり下位葉は乾燥して枯れ上がる。薬剤防除を行う。
(3)根腐病
ピシウム菌による根腐病は感染後細胞壁を分解する酵素が生成され、根の組織
が崩壊し、根が腐敗し吸水ができなくなりしおれる。初期には根の一部が褐変し、
その後、腐敗し始め、次第に根の全体があめ色に軟化腐敗する。根の腐敗が進む
と地上部がしおれ、下葉は黄化して、ついには枯死する。養液栽培で発生するが、
病原菌は土壌に生息しており、土壌の跳ね上がりや雨水などととともに培養装置
内に入るとされている。
防除法としては、通路やハウス周辺を被覆し、栽培終了後はハウス全体をハウ
ス密閉により高温にし太陽熱消毒するか塩素剤などで消毒する。パネルなどの資
材は熱水や蒸気で消毒する。培養液のpHをできるだけ下げ、培養液温度を25℃
程度までに下げることによっても、被害を軽減できる。薬剤(農薬)としては、
金属銀剤「オクトクロス」(養液栽培で培養液に添加できる農薬として2005年に
登録)のみである。このため、簡易・安価であり、かつ、安定的な効果を示す新
たな殺菌法の開発が求められている。
(4)葉かび病
主にハウス栽培の高湿度条件下で多発するが、露地栽培でも深刻な被害になる
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ことがある。
葉かび病は主に葉に発生するが、葉柄、花柄、茎、花、果実にも発生する。ま
ず、古い葉で最初に症状が現れ、その後に若い葉に症状が広がっていく。葉かび
病は湿度85%以下では発生しない。発病最適温度は22~24℃だが、4~30℃の温
度でも発生が見られる。夜温を外気温より高くし、誘因・摘心を適切に行い、風
通しを良くして葉の濡れ時間を最小限にすることで、葉かび病の発生を抑えるこ
とができる。
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