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日消外会誌 28(8):1883∼ 1888,1995年
卒後教育 セ ミナ ー 3
肝癌 の外科的治療法 の適応 と手技
―特 に microwave coagulation therapyに
ついて一
兵庫医科大学第 1外 科
山 中
若
樹
肝細胞癌 の治療 は肝 予備能,腫 瘍進展度,腫 瘍 の大 きさ,占 居部位,深 さ,腫 瘍血行動態,年 齢 な
どに よ り,切 除,肝 動脈塞栓 (TAE),ェ タノー ル 注入 (PEI)の いずれ か を選択 して きたが,最 近 で
は,結節型肝癌 に対 して これ らの他 にマ イ ク ロ波凝 固壊死療法 (MCT)を 適 用す るようにな った。MCT
の適応 は切 除 が 危険 であ る高度肝硬変 合併例,あ るいは,TAEま た は PEI施 行後 の不 完全壊死例 の う
ち肝被膜 下 に存在 す る結節型肝癌 であ る。 アプ ロー チは経皮,腹 腔鏡下,開 腹下 の 3者 が あ るが,後
2者 について は結節 の存在部位 と大 きさで 開腹 (開胸)下 か腹腔鏡下 の いずれか を選択 す る。 マ イク
ロ波針状電極 を用 いて100watts, 1分間 の照射 を腫瘍 の辺縁 か ら中心 に向 けて腫瘍 の大 きさに応 じた
長 さの電極 で反復照射 して い く.術 後 の肝機能 の変動 は軽微 であ り,早 期 の経 口開始 が 可能,在 院期
間 も短 い。腫瘍壊死効 果 は顕著 で,部 分切 除 に匹敵 す る治療効 果 が期待 しうる。術後 の QOLお よび治
療効果 の面 か らみて,ま た,医 療経済的 にみて,MCTは
並 び肝細胞癌治療 の有
切 除,TAE,PEIと
力 な治療選択肢 とな る。
Key words:
microwave coagulation therapy, hepatocellular carcinoma, laparoscopic surgery
は じめ に
肝細胞癌 治療法 の主流 は切 除療法,肝 動脈塞栓療法
タノー ル 注入療法 (PEI),の 3者 で あ る。
それ らは,腫 瘍径,腫 瘍個 数,門 脈侵襲度,腫 瘍 の局
(TAE),ェ
在,腫 瘍 の vasculaity,肝予備能 に応 じて選択 され て
い る。我 々 の施 設 において も,上 記 の治療 が初期 治療
も腫瘍濃染 は全 くな く,生 検所 見 で も線 維化 の変化 の
みで viableな癌細胞 は皆無 であった劾.
この経験 を契機 に,開 腹 下 にあ るい は腹腔鏡 下 に,
m i c r o w a v e c o a g u l o n e c r o t i c t h e r a p y ( M C 肝癌
T)を
3、
その有 用性 を
治療 のひ とつ として行 って きた ので
報告 す る。
あ るい は再発治療 の手術 として振 り分 け られて きた。
1992年 7月 ,左 内 側 区 域 に 占 居 す る腫 瘍 径7cmの
HCCに 対 して切除 を目的 に開腹 した ところ,左外側 区
対
象
1992年 7月 か ら1994年末 まで に肝 細 胞 癌 に対 して
行 った MCT症 例 は計 48例であ る。この 内,経皮的 ル ー
域 の肝表面 に小肝 内転移巣 が発見 され,肝 左葉切 除 が
トに よる もの25711,小開腹下 (7例 )あ るい は小 開胸
必要 とされたが,肝 予備能 か らみて肝左 葉切除 は不 可
MCT),腹
開腹 下 (8例 )に 行 った もの15例 (0‐
と評価 されたた め,切 除 を断念 した。 その代 わ りに,
MCT)で
下 に行 った もの 8例 (L‐
腔鏡
あ る。本研究 は後者
以 前, 肝 切 離 の 際 に 利 用 し て い た m i c r O w a v e
2者 の23例 を対 象 とした。年齢 は平均63±7.4歳で あ
monopolar electrode(MW針
る。組織学 的 に検 索 した肝硬変合併率 は91%,食 道静
)1)を用 い,100watts,
1分 間 の照射 を主腫瘍 に対 しエ コー ガイ ドに約 30回 反
脈瘤合併率 は48%で あった。術 前肝機能 を Table lに
復 した。肝 内転移巣 は核 出 した。術後 1か 月間発熱 を
示す。腫瘍径 は 0-MCTは
きた したが ,術 後約 3年 の現在,主 腫瘍 は1.5cmの 大
きさに縮小 した ままで経過 して い る。dynamic CTで
L‐
MCTで
*第 26回 ・肝細胞癌 の治療
<1995年 6月 14日受理>別 刷請求先 :山 中 若 樹
〒633 西 宮市武庫川町 1-1 兵
庫 医科大学第 1外
科
3.5±1.4cm(1,3∼ 6.5),
は2.9±0 5cm(2.0∼ 3.9)で あった。腫瘍
個数 は単発 が18例,2∼
3個 が 5例 で あった。L MCT
例 の 内 1例 は腹腔鏡下 ル ー トと経皮 ル ー トで計 2個 の
結節 を焼 灼 した症 例 で あ る。
門脈腫瘍栓 は 1例 に存在 した。腫瘍 の分化度 は焼灼
前 の腫瘍 生校 の結果 で は中分化 が20例,低 分化 が 3例
肝癌 の外科的治療法 の適応 と手技
124(1884)
7
l4days
Operating time
Blood loss
Mortality
3 1 ±1 1
GPT(U)
6 8 ±1 8
1 9 4 ±9 8
6 3 ±3 9
4 5 ±2 2
35± 05
32±02
31± 02
31± 03
13±06
19± 11
13± 11
11± 10
Albumin(g/dl)
T ‐b i l i r u b i n
(mg/dl)
Prothrombin
time(%)
Laparoscopic
Approach
3
ICGR15(%)
8号
Table 2 Safety
Table 1 Pre- and postoperative course of liver
functions
Pre
日消外会誌 28巻
145二
L36
189Eと
237
Morbidity
persisting fever
67%(1/15)
ascites
7 0 ±1 4
7 1 ±1 8
6 6 ±1 1
であ った。腫瘍 の 占居部位 は 0-MCTを
6 9 ±8 8
行 った 1結 節
を除 き全例肝被膜 直下 で ある。先行治療 は肝動脈塞栓
術 (TAE)が 6例 ,エ タノー ル 注入療 法 (PEI)が 2
67%(1/15)
28± 12
Jaundice(Smg/dl < )
Start of diet
4cmを 超 える肝癌 に対 して は 0‐MCTを 行 った。右葉
ドー ム 占居例 で は開胸 は第 7∼ 8肋 間 で行 い,横 隔膜
お よび 肋 骨 弓 を切 離 して 開 腹 した。焼 灼 手 順 は L‐
同 じで あ るが ,電 極 針 の最 大長 は9cmで あ る
例,食 道静脈瘤 内視鏡 的硬化 (結然 )療法 が 6例 で あっ
MCTと
た。
ので,よ り大型 の肝癌 の焼灼 が可能 で あった。照射時
間 は平均31± 15分 (9∼ 60)で あ った。
手術手技
L一MCT
成
l.体 位 :体 位 は腫瘍 の 占居部位 に よ り異 な るが腫
瘍 が S8あ るい は S7に 占居 して い る場 合 は,忠 者 を左
斜位 に固定後,手 術 台 の回転 によ り体位 を調節 した。
体外 よ り超音波 ガイ ド下 に腫場 に対 しマ イク ロ波電極
針 を最短距離 かつ垂 直 に,か つ経胸 ル ー トを避 けて刺
入 で きる皮膚穿刺部位 を決定 した。2.気 腹 :謄 部 よ り
気腹針 を挿入,最 大気腹圧 を13mmHgに 設定 した。3.
トラカー ルの挿入部位 :階 部 か ら刺入 した10mmの ト
ラカー ル を介 して腹腔鏡 (Kad Storz)を 挿入.次 に
上腹 部 正 中線 上 の トラカー ル を介 して超 音 波 探 触 子
(linear型,7.5KMz,A10ka)を
挿入,エ コー ガイ ド
下 に腫瘍 の位置 を同定 した。腫瘍 に対 し最短距離,か
績
1.手 術 時間,合 併症,経 口開始 時期
々平均 145分 ,168分
手術 時間 は 0-MCT,BMCT各
で あ り,術 中出血量 は無視 しえる程度 で あった。主 た
る術 後 合 併 症 は 0-MCTを
行 った 腫 瘍 径 6 5cmの 症
例 にみ られた術後 1か 月間 の発熱,臨 床病期 □ の高度
肝硬 変合併例 2例 に発現 した黄疸 ,腹 水 で あ る。 いず
れ も保存 的 に消退 した。
術 中 の合併症 として は気胸 で,
L‐MCTの
2例 に これ をみ とめた。 これ は第 7肋 間 の
横 隔膜 の折 り返 し部分 よ り刺入 した トラカー ル に よ り
生 じた もので,手 術終 了時 には ドレナ ー ジチ ュー プ を
挿入 し脱気 す る ことで対処 しえた。食事経 口摂取 は,
平均第 2∼ 3病 日まで に可能 となった (Table 2).
つ,垂 直 に電 極 針 を刺 入 で き る部 位 に10mmの トラ
ガ ー ル を刺入 した,腫 瘍 の 占居部位 が S8あ るい は S7
2.肝 機能検査値 の推移
総 ビ リル ビン,プ ロ トロ ンビン時間,ア ル ブ ミンの
の場 合 は,刺 入部位 は鎖骨 中線 か ら前腋筒線 の範 囲 内
変動 は軽微 で有意 の低下 は認 め られ なか った。逸脱酵
の第 7∼ 8肋 間 で あった。4.MW針
腔鏡下手術用 に開発 された MW針
に よる照射 :腹
状電極 (日本商事)
の長 さは,腫 瘍径 が2cmま での場 合 には3cm長 ,そ れ
を越 える場合 には4.5cm長 の もの を使 用 した。エ コー
素 (GPT)は
術後第 3病 日に有意 に上 昇 したが 1週 間
で術 前値 に戻 った (Table l).
画像診 断
症 例 の術 前 後 の画 像 を以 下 に示 す。術 前 の angio‐
ガ イ ド下 に腫瘍 の辺 縁 か らlcm離 れ た 部 位 か ら中心
CT(L‐ MCT症
に向 けて100watts, 1分 間 の照 射 を腫瘍 サイズ に応 じ
の円形 の濃 染像 がみ られ る.術 後 1か 月 の単純 CTで
例,ICGR15:32%)で
は S8に 径 3cm
て平均28±9。
6分 (10∼40)行 った。電極 針 の刺入間隔
は焼灼部 が台形様 の低 吸収域 に変化 し,内 部 には不整
はlcmと した。
形 の高吸収域 が み られ る.術 後 4か 月の dynamic CT
O‐WICT
で は濃 染像 はな く, 7か 月 も同様 の所見 が 得 られ,ま
た,低 吸収域 は縮 小 して い る (Fig.1).別 の症 例 の
腹腔鏡下 のアプ ロー チで対 処 で きな い症例,す なわ
ち,右 葉 の ドー ム に 占居 した肝癌 ,ま た,腹 腔鏡下用
DSA像
の電 極針 (最大長 4 5cm)で 焼灼 しきれ な い,腫 瘍径 が
失 し,そ れ を含 んで広範 囲 の領域 が無血管野 に変化 し
で あ るが ,術 後 2週 で は術 前 の腫 瘍濃染像 は消
125(1885)
1995年 8月
Fig, 1 CT scansof a patient before and after laparoscopicMCT
Upper left: Angio CT scan prior to MCT. The tumor stain is observedin the
segment 8.
Upper right: Plain CT scan I month after MCT demonstratesa high density area
surroundedby a low density area.
Lower left : A wedgeshapedlow density area is not enhancedon this dynamicCT
scan taken 4 months after MCT.
Lower right: The wedge shapedlow density area has been decreased7 months
after MCT.
Fig. 2 Angiogram before and after laparoscopicMCT.
Left: Preoperativeangiogram shows a round tumor stain.
Right: Angiogram 2 weeks after after MCT showsa wide avasculararea, which
is correspondingto the coagulatedarea.
126(1886)
肝癌 の外科的治療法の適応 と手技
Fig. 3
Upper:
CT scan before and after MCT
Dynamic CT scan after second lipiodol
transarterial embolization. A large part of lipiodol
has been washed out.
Lower: Wide low density area has developed after
open MCT.
日消外会誌 28巻
8号
て い る (Fig.2)。 こ の症 例 (ICGR15:52%)は
2度
にわた る lop10d01-TAE後
3)
の Dynamic CT(Fig。
であ る.濃 染像 はみ られ な いが,1lpiodolは大部分,流
出 して しまって い る。 AFP(Fig。 4)は TAE後 下 降 せ
ず上 昇 の一 途 で あった。超 音 波 で も境 界 が 不 明 瞭 で
0‐MCTを 行 った。その後 AFPは 急激 に下降 し現在正
常値 を保 ってい る。術後 の CT(Fig,4)で
は上 記 した
症例 と同様,腫 瘍 を取 り巻 い て大 きな低吸収域 が み ら
れ る.
4.長 期予後
最長観察期間 は36か 月 で あ り,長 期成績 を示 す こと
は出来 な いが,門 脈腫瘍栓 (十)例 で 6か 月で死亡 し
た 0‐MCT症 例 を除 き,そ の他 は全 例生存,か つ治療
部位 の再 発 を認 めていない。 ただ し,腫 瘍径5.5cmで
手 術 を拒 否 し TAEを
MCTを
行 い そ の 後 開 胸 開 腹 下 に O‐
行 った症 例 で は,穿 刺 に伴 う腫瘍散布 に よ り
腹腔 内再発 を きた した。 その後 ,再 手術 で再発巣 を摘
出 し,現 在 に至 ってい る.
考
察
MW針
状電極 は肝 切 離 予定 線 を予 め凝 固壊 死 せ し
め切 離 時 の 出血 を減 少 させ る目的 で 田伏 ら2)によ り開
発 された もので あ る。我 々 も1980年代 の初期 の頃 には
高度肝硬変合併肝癌 に対 し部分切 除 を行 う際,使 用 し
た こともあったが胆汁療 な どの合併症 のた め,そ の後
は MW針
の使 用 を控 えて い た。
冒頭 で述 べ た ように,径 6.5cmの 肝癌症例 に MCT
を試 みた ところ,腫 瘍生検 で も再発徴候 な く経過 して
い る症例 を経験 した。 この経験 か ら高度 肝硬 変 を合併
し部分切 除が危険 な症 例,あ るい は切 除 を拒否 した症
例 に対 して MCTを
Fig. 4
Time course of AFP
AFP, which elevated up despite of repeated embol.
izations, dropped down to the normal level after
帥価
open MCT.
HCC 65 years llale
我 々 は1991年 2月 の時 点 で 腹 腔 鏡 下 胆 摘 術 を導入
し,肝 臓外科領域 に腹腔鏡下手術 を応用 で きないのか
と考 え,肝 嚢胞 dome resectionを腹腔鏡下 に行 って き
た41そ の後,腹 腔鏡下 に10mmの トラカー ル よ り挿入
で きる MW電 極 が 開発 され た。の を機 会 に腹 腔 鏡 下
MCTを
300
も開始 した。最近 で は初 期 治療 としての みな
らず,TAE,PEI治
a
些2 0 0
治療選択肢 のひ とつ に加 えるよ う
にな った。
療後 の局所再発例 に も同法 を適 用
す るようにな った。
適応 は,腫 瘍 が肝被膜 直下 に存在 し,肝 内主要脈 管
に接 していない結節型肝癌 で あ る。深部 に存在 し腫瘍
100
0
m
60
77O 2/n
33O 37O .tOO
Days after admission
径 が2cm以 下 の肝癌 に対 して は,本 稿 で は触 れ ていな
いが経皮穿刺用 の針状 電極 を用 い,PEIと 同様 の要領
で治療 して い る。針状電極 の最大 の長 さが構造上,開
127(1887)
1995年8月
腹 用で は9cm,腹 腔鏡 用で は4.5cmで あ るので,腫 瘍
の 低 下 は,逸 脱 酵 素 の上 昇 の程 度 が や や 強 か った ほか
径 も前者で はお よそ7cmま で,後 者 で は4cmま で に制
は軽 微 に留 まって い る。 腫 瘍 内圧 が 高 まって い る大 型
限 してい る。腫瘍径 が2cmを 越 える と PEIで も局所 の
肝 癌 で は穿刺 部 位 よ り腫 瘍 細 胞 が 流 出 し,腹 腔 内散 布
完全壊死 は困難 とな る.腫 瘍 の 占居部位 に よって は,
を きた す危 険性 が あ る。低 分 化 型 は と くに生 着 しや す
超音波下 に穿刺不可能 な こ ともあ り,穿 刺針 の直進性
が 得 られ な い こともあ る。 エ タノー ルが結節外 に流 出
い の で注 意 を要 す る。 この よ うな症 例 を経 験 した 後 は
し,凝 国 が不十分 とな りやす い こと もあ る。TAEに 関
して は,vascularityが低 く栓塞効 果 の弱 い こ ともあ
穿刺 部 位 周 囲 を布 で 被 い散 布 を防 い で い る。
TAE,PEIと
も腫 瘍 結 節 が 完 全壊 死 に陥 る とは 限 ら
ず,局 所 治 療 を反復 せ ざ る を えな い の が 現 状 で あ る。
る。 高度肝硬変 で は非癌部 へ の影 響 を最小 限 に止 め る
この 点 ,MCTは
た め超選択 的栓塞 が必 要 な こともあ るが,血 管 の走行
に,照 射 領 域 は結 節 周 辺 も含 め て無 血 管 領 域 と化 す.
術 後 の血 管 造 影 所 見 に み られ る よ う
上 それが困難 な こ ともあ る。 また,腫 瘍 が複数 の亜 区
結 節 の 被 膜 外 にお い て た とえ門脈 血 行 に依 存 した 微 小
域枝 か ら栄養 されて い る こ ともあ る.つ ま り,切 除不
転 移 巣 が 存 在 して いた として も主 結 節 もろ と も壊 死 に
治療 が 困難 あ る い は不
陥 る。 つ ま り,部 分 切 除 に匹 敵 す る治療 効 果 を期 待 し
可能肝癌 の うち TAE,PEIで
十分 とな る症例 で上記 した条件 を満 たせ ば MCTが
適
応 とな る。
アプ ロー チ は,腫 瘍 の 占居部位 と大 きさで決定 して
い る。腹腔鏡下 あ るい は開腹下 のいずれのアプ ロー チ
を採択 して も,術 後 の肝機能 の推移 に差 はな く,た だ
ひ とつ食事経 口摂取 開始時期 が 後者 でやや遅れた にす
ぎなか った.腫 瘍 に対 し,垂 直 に電 極 を刺入で きるア
プ ロー チ を選択 す る ことが 最 も肝 要で あ る.腫 瘍 の焼
灼範 囲 が腫瘍 を完全 に包 容 して い るか どうか を,術 中
超音波 にモ ニ ター す る ことは困難 で あ る。照射 に よ り,
水蒸気 が発生 し,腫 瘍 の境界 の判然性 が失 われ る こ と
に よる。一 方, cryotherapy6)で は ice ballが形成 され
るため,超音波 で凍結範 囲 をモ ニ ター で きる。したが っ
て,MCTの
場合 は,腫 瘍 よ りlcm離 れた肝実質 か ら1
cm間 隔 で辺 縁 よ り中心 にか けて丹 念 に焼灼 して い く
ことが必要 で あ る。
合併症 は高度肝硬変 を対 象 としてい るだ けに,腹水,
黄疸 のみ られ る ことが あ るが,今 回の研究 で は総 ビ リ
ル ビンが3mg/dl未 満 まで,ICGR 15が 50%程 度 までで
あれ ば,MCTは
施行可能 と考 え られ る.術 後 の肝機能
うる.食 事 経 口摂 取 開 始 時 期 が 早 期 で あ り,在 院 期 間
も短 縮 で き,術 後 の QOL,医
療 経 済 的 にみ て も MCT
は有 用 な治 療 法 で あ る。保 険診 療 とな る 日が待 た れ る。
文 献
1)黒 田暢一 ,岡 本英三 ,山 中若樹 ほか :マ イク ロター
ゼ焼灼 によ り著効 を得た直径 6_5cmの 肝細胞癌 の
1例 。」MicrOWave Surg 12:91-97,1995
2)Tabuse K,Katsumi ttI,Kobayashi Y et ali
v ave surgery: IIepatectomy using a
ふ
江icro、
9:
vave tissue coagulatorVorid」Surg
ヽ
llicro、
136--143, 1985
3)山 中若樹,岡本英 三,日 中恒雄 ほか :腹 腔鏡 を用 い
た肝癌 の治療.消 外 17:1969-1974,1994
4)山 中若樹,岡本英三 ,神野浩樹 ほか :孤 立性肝嚢胞
旦・
に対 す る laparoscopic dome resection. 8T・
】
岸
幕 8:355-358,1992
5)才 津秀樹,吉田 正 ,大堂雅晴 ほか :5cm以 下 の肝
細胞癌 に対 す るマ イクロ波凝固壊死療法 (MCN)
について.臨 外 49:309-315,1994
6)Ravikumar TS,Kane R,Cady B ct al: A
5‐
year study of cryosurgery in the treatment of
liver tumOrs Arch Surg 126:1520-1524, 1991
128(1888)
肝癌 の外科的治療法の適応 と手技
日消外会誌 28巻
8号
Indication and Techniqueof Surgical Treatment for HepatocellularCarcinomawith
Special Reference to Microwave Coagulation Therapy
Naoki Yamanaka
First Department of Surgery, Hyogo College of Medicine
The presentstudy reports the usefulnessof microwave coagulation therapy (MCT) as a new option
in the treatment of hepatocellularcarcinoma.Twenty-threepatientswere treated using a microwave
monopolarelectrode(output 100watts),from July 1992to the end of 1994underopen(n=15) or laparos.
copic control (n=8). The tumors, superficially located and ranging from 1.3 to 6.5 cm in size, were
coagulatedfrom the tumor margin toward its center for a total radiation period of 28 + 9.6 minutes.
Postoperativecomplicationswere minimal, and the liver chemistries(leaking enzymes,bilirubin, albumin,
prothrombintime) returnedto the preoperativevalueswithin 7 days in most patients.Regulardiet was
started within a few postoperativedays.Follow-upimaging (dynamicCT scan,angiography)suggested
completenecrosis.In conclusion,the advantagesof MCT includenegligibleblood loss,technicalsafety,
early recovery, and strong necrotic effect. MCT can be a useful treatment option for hepatocellular
carcinoma with severeliver cirrhosis, together with hepatectomy,embolization and ethanol injection.
Reprint requests: Naoki Yamanaka First Department of Surgery, Hyogo College of Medicine
1-l Mukogawacho,Nishinomiya,633JAPAN
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