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医療・介護周辺サービス提供拠点

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医療・介護周辺サービス提供拠点
3.2.5 医療・介護周辺サービス提供拠点
「南相馬元気モール」構築運営事業
365
目次
3.2.5.1
事業概要 ................................................................................................................................. 367
3.2.5.1.1
全体目的.......................................................................................................................... 367
3.2.5.1.2
事業概要.......................................................................................................................... 368
3.2.5.2
実施事項の内容 ...................................................................................................................... 370
3.2.5.2.1
元気コミネッツの設立・運営 ......................................................................................... 370
3.2.5.2.2
サービス設計のための事前調査 ..................................................................................... 376
3.2.5.2.3
南相馬元気モール事業化にむけた調査 .......................................................................... 387
3.2.5.2.4
在宅ケアサービス事業化にむけた調査 .......................................................................... 400
3.2.5.2.5
告知活動.......................................................................................................................... 406
3.2.5.2.6
事業化に向けた課題対応策の調査.................................................................................. 409
3.2.5.3
結果分析 ................................................................................................................................. 418
3.2.5.3.1
元気モールサービス ....................................................................................................... 418
3.2.5.3.2
民間事業者による周辺サービス ..................................................................................... 428
3.2.5.3.3
在宅ケアサービス ........................................................................................................... 429
3.2.5.3.4
復興を見据えた中での被災地の実態 .............................................................................. 435
3.2.5.4
次年度以降の実施計画 ........................................................................................................... 439
3.2.5.4.1
元気モールサービス ....................................................................................................... 439
3.2.5.4.2
在宅ケアサービス ........................................................................................................... 442
366
3.2.5.1
事業概要
3.2.5.1.1
全体目的
南相馬市では、津波や地震により家屋が損壊してしまったほか、原発事故の影響によっても
仮設住宅やアパートなど仮住まいを強いられている市民が数多くおり、本市の市民のみならず、
近隣町村から避難をしてきた方々も多い。
また、震災により家族を失った方もいれば、就労の問題や、放射能の影響を恐れて子どもと
母親のみが遠く避難するなど、家族構成が大きく変わり、高齢者の単身世帯となってしまった
方も少なくない。
このように、家族やコミュニティの状況が大きく変わることで、外出をしなくなったり、話
し相手を失ったりした結果、心身の健康を害する高齢者等が増加することが懸念されている。
一方、地震や津波、原発の被害は医師や看護師も同様に受けており、本市から避難した医療
従事者も多い。心身に大きなストレスを抱える患者の増加は、さらに地元に残った医療従事者
の負荷を高める要因となっている。
このような中、本市に残る市民、特に高齢者には、次のような症状の発生の増加が懸念され
る。
①心の問題:震災のショックや不安、孤独の中で精神的な均衡が崩れ、うつ、PTSD、無気
力の発現
②体の問題:休まる場所のないことによる疲労、引きこもりによる運動不足・肥満の発現
③ケアの不足:・看護師不足による稼働病床数の制限
・比較的症状の軽い患者は自宅待機の状態
・在宅ケアの必要性の増加
④経済活動の低迷:上記の様な状況で本市からの他への移住者も増加しており、人が減少し
た事による経済規模の縮小だけでなく、
「他県は復興への希望があるが、
このエリアでは希望すら持てない」という住民もいるように、経済活動
に対する前向きな参加が困難な状況に陥っている
本事業は、以上のような背景を受け、原発最前線の南相馬周辺の人・まち・経済の元気を取
り戻すために、配食事業や移動支援事業などの医療・介護周辺サービス事業者が協力連携する
機会、及び住民が協力し合える場を創出することを目的として実施した。
367
事業概要
3.2.5.1.2
本事業では、高齢者や仮設住宅入居者が集うことのできる拠点「南相馬元気モール」を開設
し、看護師等を雇用した上で「お茶とおしゃべり」とかる~い筋トレといった運動教室などの
ほか、民間事業者の参画を得て、医療介護周辺サービスの紹介・案内を行うこととした。
また、在宅ケアの充実のため、潜在看護師を掘り起こした上で、保険外の在宅ケアサービス
の提供も試みることとした。
事業の全体概要を、図 3.2.5-1 に示す。
地域・ 家庭医療の
専門家・ 有識者
①地域・家庭医療学の
観点から助言・支援
( 地元大手ショッピ ング センター内に設置)
④サービス利用会員登録
(会費支払)
運動教室
健康講座
地域の
医療従事者
⑤サービス提供
情報提供
送迎サービ ス
②講座等の開催
地域住民への
サービス紹介
①家庭医療や介護、福祉の専門家が、来場
者の健康データや地域の状況をもとに、元気
モールのプログラム等に助言を行う
地域住民
南相馬元気モール
医療機関等
②歯科医師による口腔ケア講座や、医師に
よる健康講座などを実施したり、医院・病院
等で行っているサービスを紹介
地域住民
仮設住宅入居者
医療機関から の紹介者
③長年のボランティア活動の経験をもとに、
スタッフの教育を行う
④元気モールは登録会員制として、会員から
は会費を徴収する
情報提供サービ ス
相談サービ ス
③モール運営
スタッフ人材育成
⑦サービス対価
元気コ ミ ネッ ツ *
NPO法人
はら まち ク ラ ブ
⑩看護師による
在宅ケアサービス提供 ⑤元気モールでは様々なプログラムを提供し、
会員の相談にものり、必要に応じて適切な民
間サービスを紹介する。
⑪サービス対価
⑧在宅ケア
ニーズ調査
⑥地域住民と民間サービス事業者との
マッチングやコーディネート等の
サービス
民間サービ ス事業者
調査機関
地元民間事業者
株式会社
コ スモプラ ン
⑥地域住民のニーズにあわせて適度なサー
ビスを紹介、案内する
外部事業者
⑨情報共有
サービス設計
キャ ン ナス東北が
契約し た看護師
パシフ ィ ッ ク コ ン サ
ルタ ン ツ 株式会社
⑧在宅ケアのニーズを、南相馬市内の高齢
者にグループインタビューや個人ヒアリング
⑨在宅ケアサービスの事業化をはかるため
に情報を共有しサービス設計を行う
調査機関
*「元気コミュニティネットワーク」の略。
地域の高齢者のQOL向上のためのサー
ビス提供の企画、調整を図る連携組織。
⑦元気モールの相談サービスや情報提供
サービスを利用して顧客拡大を図る。その対
価を元気モールに支払う
地域の現状調査、
本調査事業の全体運営
⑩在宅ケアサービスは、看護師の新しい働き
方として展開
⑪在宅ケアサービスは有料事業として展開し、
地域住民は対価を支払う。
図 3.2.5-1 事業概要全体図
次のスケジュール、体制で実施した。
表 3.2.5-1:スケジュール
平成 24 年
4月
5月
6月
7月
作業項目①:
元気コミネッツの設立・運営
作業項目②
サービス設計事前調査
作業項目③
元気モール事業化調査
作業項目④
在宅ケアサービス事業化調査
作業項目⑤
告知活動
作業項目⑥
事業化に向けた課題検討等
作業項目⑦
調査事業とりまとめ
368
8月
平成 25 年
9月
10
11
12
月
月
月
1月
2月
コンソーシアム
代表団体
パシフィックコンサルタンツ株式会社
参加団体
NPO法人はらまちクラブ
参加団体
協力団体(在宅ケアに関する調査、サービス提供)
株式会社コスモプラン
(社)キャンナス東北
協力団体(調査への助言や情報提供、広報協力)
福島県立医科大学
葛西教授
南相馬市
一橋大学
井伊教授
南相馬市
(社福)
社会福祉協議会
南相馬福祉会
南相馬市
南相馬市
老人クラブ連合会
ボランティア協議会
協力団体(運動指導者の育成等)
NPO法人
日本ゆる協会
協力団体(健康講座、健康相談、通院者等へのサービスの紹介)
羽生歯科医師
おがた
ひぐち
メンタルクリニック
クリニック
図 3.2.5-2 事業実施体制図
369
3.2.5.2
実施事項の内容
3.2.5.2.1
元気コミネッツの設立・運営
3.2.5.2.1.1
(1)
事務局会議
目的
事業全体の実施に関する調整等を行うために、元気モールおよび元気コミュニティネットワーク
(以下、元気コミネッツ)の運営に関する検討を行う事務局会議を設置した。
(2)
実施内容・結果
(3)
メンバー
事務局会議は、以下のメンバーで構成した。
コンソーシアム構成団体:はらまちクラブ、コスモプラン、パシフィックコンサルタンツ
アドバイザー:医療、介護、およびその周辺サービス等に関する有識者
元気モールスタッフ:サービス開始後は、チーフスタッフも参加
表 3.2.5-2:会議メンバー
氏名
所属・役職
アドバイザー
スタッフ
葛西 龍樹
福島県立医大 地域・家庭医療学教授
渡辺 一成
ボランティア組織代表
大内 敏文
南相馬福祉会・福寿園施設長
田村 早人
南相馬市社会福祉協議会局長
木村 浩之
南相馬市商工労政課長
井伊 雅子
一橋大学大学院経済学研究科教授(医療経済学)
羽生 賢次
歯科医師
佐々木春水
元気モール チーフスタッフ
鎌田 博幸
元気モール チーフスタッフ
コンソ
はらまちクラブ
コンソーシアム構成団体
コスモプラン
〃
パシフィックコンサルタンツ
〃
370
(4)
実施状況
事務局会議は、全 18 回開催した。
アドバイザーも交えた会議を「GPM(Genki Project Meeting)
」とし 11 回開催、コンソーシアム
構成団体のみの会議を「コンソ会議」とし 7 回開催した。
GPM では、各種調査計画や経過を報告し、有識者からアドバイスを受けるとともに、これらの結
果をもとに、元気モールにおいてどのようなサービス提供を行っていくことが良いのか、継続のた
めの事業スキームのあり方などについて協議、検討を行った。
また、コンソ会議では、事業の進捗管理および、調査の詳細な方法やモール運営等の詳細につい
て検討した。
表 3.2.5-3:事務局会議実施状況
会議名
(5)
月日
開催場所
第 1 回 GPM
4/23
サンライフ南相馬
第 2 回 GPM
5/14
南相馬市労働福祉会館第一研修室
コンソ会議
6/25
東横イン 福島東口Ⅰ 会議室
第 3 回 GPM
6/26
サンライフ南相馬
第 4 回 GPM
7/10
サンライフ南相馬
第 5 回 GPM
8/7
サンライフ南相馬
コンソ会議
8/8
ジャスモール
コンソ会議
9/11
サンライフ南相馬
第 6 回 GPM
9/25
サンライフ南相馬
第 7 回 GPM
10/16
サンライフ南相馬
第 8 回 GPM
11/14
サンライフ南相馬
コンソ会議
12/7
パシフィックコンサルタンツ本社(東京)
第 9 回 GPM
12/11
サンライフ南相馬
コンソ会議
12/25
ジャスモール
コンソ会議
12/27
コスモプラン(東京)
第 10 回 GPM
1/15
ジャスモール
コンソ会議
1/23
ジャスモール
第 11 回 GPM
2/12
ジャスモール
実施結果
以上の会議の結果、本事業の評価として、アドバイザーから以下のような意見が出された。
①地域医療からみた評価
【福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座 主任教授 葛西龍樹】
元気モールは、
「健康づくりを医療者や介護者まかせにせず自分たちで元気になろう」
と、スタッフが、みずから被災者でありながら被災者を助けることを一生懸命楽しんで
いるからこそ、被災地で「一隅を照らす」暖かい灯火になっていると思われる。
被災地での地域医療の復興という視点から考えた時、「元気モール」の活動から、そ
371
こに住む地元の人たちの視点が最も重要であることに気づかされた。
外部からさまざまな医療支援がされていても、それが地域の人たちにはどう思われど
う役に立っているのか、インターネットなどを通して時に華々しく伝えられる成果と、
実際に地域の人たちがどう満足しているかとの間には大きな溝があることがわかった。
「健康づくりを医療者や介護者まかせにせず自分たちで元気になろう」という「元気
モール」設立の原点となった地域の人たちの差し迫った思いに、医療人は謙虚に自分た
ちの活動を振り返るべきと感じている。
「元気モール」の特長は、多くのサービスが提供されているが、さまざまな困難を乗
り越えてきた人たちが、一緒に集い、語らい、からだを動かし、笑顔になれるワン・ス
トップ・ステーションであることだと考えられる。
「元気モール」に行くたびに集まる
人たちが増え、多くの人たちに笑顔が見られるようになってきており、
「元気モール」
に通って元気をもらっているに違いない。
東日本大震災と原子力発電所事故という大災害が連続した福島の復興に生かしたい
と考え、公益財団法人二十一世紀文化学術財団の学術奨励金を用いて、マーシャル諸島
を訪問し「プライマリケアを軸とした地域包括ケアのシステム構築が、地域社会の崩壊
からの復興に実際どう役立ってきたか」を研究してきた、
。
この訪問で、米国が実施した核実験後 60 年の社会と人生がどのようなものであった
かを地域の人たちから傾聴し、
「母なる大地」が核実験のフォールアウトで穢された恥
辱(Stigma)と、生まれ故郷からの強制的退去(Displacement)が彼らと彼らの社会
に残した傷の深さを教えてもらった。福島でもマーシャル諸島の人々と同種の「Stigma」
と「Displacement」が人々を苦しめており、被災地のプライマリケアをどのように組織
するのか、帰還を待ち望む人たちの健康をどのように守るのか。福島の医療人に課せら
れた課題は大きく責任は重いと感じた。50 年、100 年の時間に耐えるプロジェクトが
必要であると同時に、計画ができても実践することはさらに困難だろうと考える。
こうした課題に取り組むために、「元気モール」と共に活動することで地域の人たち
の思いや期待を良く理解していきたい。平成 25 年度から、本学医学部学生の正規の地
域医療実習の舞台としても、
「元気モール」を活用させていただく予定であるが、
「元気
モール」での実習が、将来福島の医療を担う若い学生たちヘも有意義な「忘れられない」
経験となることを確信している。
この「一隅を照らす」活動が、今後も持続可能な財源を得て、さらに多くの地域の人
たちの生活を継続して支えていけるように願っている。
②医療経済面からみた評価
【一橋大学大学院経済学研究科 教授 井伊 雅子(医療経済学)】
日本の医療制度の課題の一つは、プライマリケアをどのように組織化するかというこ
とである。日本では病院だけでなくて開業医も、受診する患者を診るだけである。それ
以外の住民も含めて地域全体を診る訓練を受けたプライマリケアの専門家(家庭医)が
育っておらず、組織化もされていない。こうした状況の下、全国から医療支援のために
372
医師達が被災地にやってきたが、継続性にも乏しい支援は、患者だけでなくて、地元の
自治体にも負担を強いているようだ。
このような状況下において、本事業における取組みは、被災住民が医療を必要とする
状態に陥ることを未然に防ぐ効果のほかに、医師との連携等による家庭医育成の一助と
なることも期待できる、非常に有意義な取組みであると考える。
多くの自治体で、医療費の上位は高血圧症、糖尿病、脂質異常、うつ病などである。
超高齢化を迎える日本が取り組むべき医療問題は、糖尿病や生活習慣病の重症化、未治
療での放置、合併症の多発などを未然に防ぐことであり、こうした取組みによる医療費
や介護費の削減効果は多大なものがある。被災地においてはこの傾向がより顕著となる。
本事業の今後の課題は、いかに持続可能なシステムとして構築をしていくかであろう。
医療費が無料であるため、元気モールの事業化を妨げる要因となっている。しかし、無
料化の対象は自己負担の 3 割分であり、残りの 7 割は保険料や税金、多くは公債で賄わ
れており、国や地方自治体に借金を負わせている構造だ。無料の医療費が地域住民のた
めになっているのか再考が必要であろう。
本事業の特徴は、
「地域の人たちが地域の人たちのために地域の産業を振興しながら
進めるプロジェクト」であり、外部の人による震災復興プロジェクトとは一線を画して
いることである。今後は行政との連携などをすすめ、日本経済社会の構造変化を考えて
いく上でも一石を投じるような重要なプロジェクトに発展していくことを期待してい
る。
③市の経済振興面からみた評価
【南相馬市経済部商工労政課長 木村浩之】
元気モールサービスは、東日本大震災と原発事故の影響により大きな影響が生じた地
域課題のうち、高齢者や仮設住宅入居者のつどいの拠点を運用してサービスコーディネ
ートを行うものであり、地域独特の社会ニーズを掘り起こしながらこれに対応しようと
する社会課題対応型の創業事業としてモデル性が高いものであると感じている。
本事業の中でも元気コミネッツとして組織化を試みた地域事業者との連携について、
各事業者の事業の再興にあわせて強化することができれば、地域への定着と事業展開の
拡大が見込めると考えられ、継続的な活動が可能となるように取り組んでほしい。
④市内の高齢者介護・福祉の現状からみた評価
【南相馬福祉会 大内氏】
現在、市内では高齢者の介護施設は、入居待ちの方が 500 名~1,000 名と言われてお
り、圧倒的に施設が不足している。
親を施設に預けられないために、市に戻ってくることができないという避難世帯が少
なくないという話もきく。ヘルパーやデイケアのニーズも大変高いが、これも人手不足
で対応し切れていない。
このような現状は、施設や人手を必要とする状態になってしまうと、南相馬には住ん
373
でいられなくなることを意味しており、今、その手前にいる方がそのような状況になら
ないようにすることの重要性が、従前以上に高まっている。
この点から、元気モールの取り組みは、今後その重要性が益々高まってくるものと考
えられ、継続できるよう色々な工夫を講じることを期待する。
⑤ボランティア団体等の立場からみた評価
【ボランティア団体 代表
渡辺氏】
現状で、かなり公的な意味合いの強い活動となっていることは、この地域の現状を考
慮すると必然と言える。このような事業を民間主体だけで行っていくことは、かなり難
しいことではある。公設民営のようなスタイルを考えられると良い。介護予防施設のよ
うな捉え方として、今後、地域として考えていく必要があるのではないか。
先日、スペインの協同労働のことを取り上げているTV番組があったが、元気モール
に参加した高齢者が元気になり、社会参画する中で、このような場の運営・経営を、介
護保険制度等に頼るだけではなく、協同労働の形態で展開していくことも考えられるの
ではないかと感じている。
いずれにせよ、有意義な活動であり、継続的な運営を期待する。
374
3.2.5.2.1.2
元気コミネッツの設立
目的
(1)
元気コミネッツは、地域の高齢者の QOL 向上のためのサービス提供の企画、調整を図る連携組
織を構築し、元気モールにおけるワンストップサービス実現のための仕組みを整備することを目的
として設立した。
実施内容・結果
(2)
1)
参画事業者の募集
周辺サービスに関わる市内事業者 125 事業所に、説明会開催のダイレクトメールを送付するとと
もに、はらまちクラブの既存活動で関係のある事業所には電話による呼びかけを行った。
2)
説明会の開催
6 月 26 日、サンライフ南相馬にて説明会を開催し、10 事業所 11 名の出席を得た。
表 3.2.5-4:元気コミネッツ会議へ参画呼びかけ事業所及び説明会への参加状況
サービスの種類
資料送付数
配食サービス事業者
6件
2社3名
外出支援事業者
6件
2社2名
27 件
3社3名
3件
0社
在宅介護サービス事業者
56 件
3社3名
医療機関
27 件
0社
薬局
子育て支援事業者
3)
説明会出席事業者数
元気コミネッツの設立
元気コミネッツへの参加を募った結果、配食サービス事業者 1 社から応募があり、連携・協力を
図ることとなったが、その他の応募がなかったことから、元気コミネッツの設立は見送ることとし
た。
説明会に出席したがコミネッツへの参加を希望しなかった理由について、ヒアリング等により整
理すると次のようなものであった。
・ 様子を見に参加したが、事業を再開するかどうかまだ決心していない。
・ 支援物資がまだ供給されているような状況の中で、事業の再開には早い。
・ 従業員が避難したまま戻っていないので、連携して何かするには人手が足りな
い
・ このまま商売を続けるか、悩んでいる。
・ 除染作業(ビジネス)の話が聞こえてきており、そちらのほうが、事業性があ
元気コミネッツには関心があるものの、それぞれの事業の再開や継続に対して検討中の事業者が
多く、そのような中で、他の組織と連携して事業を拡大する方向には踏み出せないでいる事業者が
多い状況にあることが把握できた。
375
3.2.5.2.2
サービス設計のための事前調査
3.2.5.2.2.1
(1)
被災地の高齢者の現状と医療・介護周辺サービスに関する需要調査
目的
市内に居住する高齢者のニーズに即したサービス内容を確立するために、現状と医療・介護周辺
サービスに関する需要を把握するために事前調査を行った。
(2)
実施内容
ヒアリング調査先と主なヒアリング項目は、表に示すとおりである。
表 3.2.5-5 高齢者の現状と医療・介護周辺サービス需要調査実施状況
調査対象
行政担当者(市民生活部長寿福祉課)(4 名)
南相馬福祉会(1 名)
南相馬市社会福祉協議会(1 名)
地域包括支援センター(2 カ所)
民生委員(2 名)
市内病院・医師(心療内科、保健センター)(2 名)
地区や仮設住宅の区長・町内会長(3 名)
調査は、全て元気モールの準備検討段階において行う予定であったが、医療機関・医師および仮
設住宅の区長については、元気モール開始後の調査となった。
医療機関については、2012 年夏過ぎまでは、著しい人手不足(現在も十分充足しているという
わけではないが)にあり、多忙を極めることからヒアリングの時間を確保するのが困難であった。
また、仮設住宅の区長等についても、多忙で調査実施が困難であった。
したがって、医療従事者と区長については、大震災と原発事故から 1 年半以上が経過(本調査開
始からおよそ半年以上)した時点における高齢者の状況をヒアリングし、事業継続に関する検討に
資することとした。
(3)
実施結果
ヒアリング調査から見えてきた南相馬市における高齢者の現状と医療・介護周辺サービスに関す
るニーズの概要は以下のとおりである。
1)
元気モール(サロン)に関連する事項
① 集まる場への需要について
【元気モール開設前】
○南相馬市が実施する「自由参加型サロン事業」には、多くの高齢者が集まり好評であるが、各地
区月 1~2 回(2 時間程度/回)と実施回数が限られるため、毎日実施する「元気モール」とは、
競合しないと考えられる。
376
○地域ごとの開催も大切だが、人によっては近所の人と一緒の参加を拒む人もおり、地域を越えて
参加できる場の意義はある。
【元気モール開設後】
○集まって話したい・体を動かしたいという声は、既存自治会などで増加している。
○旧来の地域自治会単位でサロン活動を展開し始めている地域もあり参加者には好評である。
○身近な場所で開催されることで、参加しやすくなったと評価されている。
○一方で、仮設住宅のサロン活動では、参加者が減少しており、自治会長などは手間の割には、効
果が小さいと感じている。
○参加者同士がなじめなかったり、運動指導の質が低かったりすることなどが原因のようである。
○仮設住宅などの新しいコミュニティでは、従来のサロン活動の手法ではなく、参加者同士を交流
させていくノウハウを持つスタッフなどが必要とされる。
○元気モールでは、新しいコミュニティが上手く作れていると考えられ、この運営ノウハウは貴重
である
②
仮設住宅でコミュニティ形成の遅れ
【元気モール開設後】
○仮設住宅では、新たなコミュニティ形成を図っていく必要があるが、入居者には「仮の住まい」
の意識や、様々な支援により入居者が地域(自治)活動を行わなくても過ごしていける環境があ
ることで、地域の活動に顔を出さないでも暮らしていける。このため、近所づきあいをしない、
できない人も少なくない。
○地域には、もともと色々な方がいて、必ずしも全てが良好な関係にあったわけではないが、地域
で折り合いをつけながらコミュニティを形成し、暮らしを営んできている。
○ジクソーパズルのように複雑な組み合わせでできていた地域コミュニティを作りなおすには、日
常的な暮らしを送る環境が必要であり、仮設住宅では容易ではないものと推察される。
○元気モールにはテーマコミュニティができている。このようなコミュニティの創り方も仮設住宅
などで参考になるのではないか。
③
元気(身体も心も)を維持できる場の必要性について
【元気モール開設前】
○震災後、要介護認定を受ける人が増えている。特に、介護度の低い「要支援」の人が増えている。
○今まで、グレーゾーンにいた人が、家族・地域がバラバラになり、支えがなくなり申請に至るケ
ースが多いと考えられる。
○要支援者は、デイサービス(集まる場)やショートステイ(一時的に預かる場)の利用を希望す
る人が多い。
377
【元気モール開設後】
○震災から2年が経過する中、高齢者の健康維持、医療への不安は増大している。仮設住宅や借り
上げ住宅入居者では、体の不調をうったえる声が多くなっている。先が見えない状況により、精
神的にも、ますますきつくなっている。
○普通の人が元気(身体も心も)になれる場、維持できる場が必要だ。
○一時期よりは改善されたものの医療体制が十分ではないことには変わらない。
○現在、医療機関を受診していない人でも、心にストレスを抱えていたり、将来の健康維持には不
安を持っていたりする人がいる。
○震災対応が長期化する中では、いつ体調を崩しても不思議ではない。こういった人たちが元気に
なりアクティブになるきっかけがあると良い。
○介護予防運動のようにフィジカルな面での予防活動への取り組みはあるが、精神面での予防活動
の場は確立されていない。
○元気モールは、元気でい続けるために運動を続けたり、人と交わり精神的な安定を得ている場所
になっていると考えられる。
④
参加につなげるしくみの必要性について
【元気モール開設前】
○高齢者が「人と交流すること」
「話をすること」などを求めている
○一方で、前述の「自由参加型サロン」も送迎は行われていないため、交通手段を持たない人の参
加は難しい。
○特に閉じこもりがちな方に参加いただくためには、交通手段の確保も大切となってくる。タクシ
ー会社との連携があると良いが、現在は、人材不足で対応が困難な状況にある。
○高齢者宅に訪問相談に行くと、話はたくさんしてくださるが、集いの場などに誘っても「その気
にならない」という方が少なくない。
○集まれる場の内容の工夫も必要であるが、、誘い方にも工夫が必要である。天岩戸のように、こち
らから誘うというよりも、高齢者が行きたくなるようなしかけが必要だ。
【元気モール開設後】
○訪問型の心のケアだけではカバーができていない。
○医師と保健センタースタッフが仮設住宅等を巡回訪問し、健康相談を行っているが、最近では相
談を受ける人が減っている。状態が改善しているのではなく、仮設住宅の集会所等で行っても、
住民が顔を出さなくなっているようである。
○これまでのように医師がボランティアで地域を廻り続けるようなことは難しい。また、医師の相
談を受けに出てこない人もいる。
○緊急時でない中、仮設の集会所などで、医師に相談するということが、大袈裟に感じたり、体面
を気にしたりする人も少なくない。
○気軽に健康相談ができる機会があると良い。元気モールはそのような場所になっている。
○同じ被災者がスタッフとして運営しているので、被災者が参加しやすいのではないか
378
2)
①
周辺事業に関連する事項
緊急通報システム
○南相馬市長寿福祉課では、緊急通報システムを提供している。対象者の要件は、震災以前より緩
和しているが、携帯電話タイプは、携帯電話を乗り換えるなどの必要があり、想定していたほど
の利用の伸びがない。
②
移動の支援
○家まで(もしくは近くまで)迎えに来てくれる移動手段は、ニーズは高いと思われるが、タクシ
ー会社は人手が足りない。料金設定によって採算の問題もある。
※震災以前、小高地区においてオンデマンド型のタクシーが運行されていた。
③
配食サービス
○社会福祉協議会が実施している。
○市からの委託(食の自立支援事業)による対象者と、社協独自の対象者(市の対象外となる人)
に対し配食サービスを行っている。
○弁当づくりは障害者団体に委託し、配達はボランティアにお願いしている。
○ボランティアが配達を担っている関係で 1 日 1 食となっており、これ以上増やしていくのは難し
い面がある。
④
見まもり・相談
○仮設住宅は、目が行き届きやすいが、震災により若い世代が避難して、高齢者だけが残っている
世帯には、目が行き届いていない。
○震災後に、ひとり暮らし、高齢者のみになった方に対して、今後、地域包括支援センターと市の
保健師が連携した訪問活動を予定している。
⑤
メンタルケア
【元気モール開設前】
○地域の心療内科、保健センターの保健師、PSW(精神保健福祉士)などにより、
「心のケアチー
ム」がつくられている。
○地域包括支援センターでも、相談等を通じて心のケアが必要な人は、
「心のケアチーム」につない
でいる。
【元気モール開設後】
○外部からの支援のあり方も考えなければいけない
○仮設住宅の中には「心のケア支援お断り」の貼紙が出されていた場所もある
○様々な支援団体が市内で活動しているが、その対応も大変である。
○知らない人が入ってくることで、住民がストレスを感じている場合もある。
○被災者同士が励ましあい、語り合う場も求められているものと思われる。
379
○思いを共有しながら一緒に元気になろうという励ましあいの効果が期待できる。
○心の中に「イベント」をつくることがケアにつながる。
○「何かすること」
「気分転換となること」などがあると良い。
○「死にたい」と言っている人でも、
「明日も行かなくては」や「またやらなくては」という目標、
メリハリができてくると、
「死を考えていることを忘れる」ことにつながる。
○お祭りのようなイベントではなく、仮設住宅や郊外で寂しく一人暮らしをしているような方には、
..
自分の中の目標や目的となるちょっとしたことが芽生えると良い。
○元気モールで仲間ができることで、利用者にとってのイベントになっているかもしれない。
3)
全体に関わる課題
○若い世代なども含め市外に避難している人も多く、福祉施設なども、ぎりぎりの職員で事業を実
施している
○福祉サービスの需要があっても、それを回すための人材が不足していることに留意しておく必要
がある。
380
3.2.5.2.2.2
在宅ケアの需要に関する調査
(1) 目的
南相馬市の実態に即した在宅ケアサービスを確立するために、被災地での、医療・介護の状況お
よび介護保険外サービス利用状況やボランティアの支援状況、また、仮設住宅や借り上げ住宅の居
住者・独居者の生活の状況や見守り需要、介護保険外在宅ケアニーズを調べるために、ヒアリング・
グループインタビューを行う。
(2)
1)
実施内容
調査内容
避難した家族からの残留高齢者見まもりの需要、高齢者が生活していく上での不安や問題点など
を聞き出す。
2)
調査手法
ヒアリングおよびグループインタビュー形式による調査
3)
①
実施状況
当初予定の対象者
<ヒアリング>
仮設住宅に居住する高齢者(10 名程度)
郊外部に住む(独居、孤立住宅の)高齢者(10 名程度)
南相馬市市外に避難した家族(5 家族程度)
<グループインタビュー>
老人クラブ連合会 1 組、仮設住宅居住者 2 組、郊外居住者等 2 組程度
②
実際の対象者
ヒアリングにおいては、当初想定の対象から幅を広げ、社協職員やボランティアセンター職員、
ボランティア団体理事等、これまで被災地でのボランティア活動のとりまとめを行ってきており、
外部からの地域への支援の情報を広く持っていると思われる方々を対象に加え、より広範な意見を
収集すると同時に、そのネットワークを通じて、ヒアリング対象者の紹介を依頼した。
<ヒアリング>
仮設住宅に居住する高齢者(9 名)
郊外に住む(独居、孤立状態の)高齢者(5 名)
市外に避難している家族(3 名)
ボランティア関係者(8 名)
<グループインタビュー>
老人クラブ連合会 1 組
仮設住宅居住者 2 組
郊外居住者等 2 組
381
実施状況は以下の通りである。
なお、調査はキャンナス東北と連携して実施した。
表 3.2.5-6:ヒアリング、グループインタビュー実施状況
調査対象
仮設住宅居住者
郊外居住者
市外に
避難した家族
ボランティア関係者
グループ
インタビュー
(3)
実施日
7/12
7/13
8/8
7/25
8/8
8/17
8/28
8/1
件数
10/4
1件
11/25
1件
6/18
7/6
1件
1件
7/24
7/25
7/26
12/14
7/25
8/17
11/22
2件
1件
2件
1件
2件
2件
1件
3件
4件
2件
2件
1件
1件
1件
1件
調査結果
ヒアリング、グループインタビューから見えてきた南相馬市の状況、在宅ケアに関するニーズの
概要を以下 1)~4)の 4 つの観点から整理する。
1)
医療・介護サービスの現状
●医療・介護施設での受け入れ人数もマンパワーも圧倒的に不足している中、それをカバーする
事のできる在宅ケアサービスの必要性が高まっている。一方で、介護認定を受けにくい地域住
民の姿も見えてきた。
・津波による施設の倒壊や放射能漏れによる従事者の避難などで、医療・介護サービスはハード
とソフトの両面において大きな打撃を受けた。
・病院は、看護師の不足により全床で受け入れができる施設がほとんどなく、入院の受け入れが
満足にできない状態が続いている。緊急の患者の受け入れを優先するため、早めの退院を要請
せざるを得ない状況にあり、病院スタッフの精神的な負担が大きい。また、早期退院ゆえの家
族や本人の負担感も大きい。こうした状況で、看護師など専門スキルを持つスタッフが家庭内
で寄り添う事へのニーズは高く、病院からも退院後のケアをしてくれる人材は求められている。
382
・原発より 30 ㎞圏内は医療費が無料となっているが、病院では待ち時間が非常に長く、通院を
止めてしまった方もいる。また、送迎をしてくれる家族が避難してしまい、通院できない方も
いる。そうした方の在宅でのケアも今後必要になってくると予想される。
・介護施設は震災前から待機状態であったが、震災後に状況がよりひどくなり、各施設では数百
名待ちという状況になっている。震災前であれば待機状態も耐えられたが、現在では仮設住宅
で介護をしなければならない方や、それまで面倒を見ていたご家族が避難してしまっている方
もいて、待機者にはかなりの切迫感がある。
・この地域では、介護保険の認定を受けることを恥ずかしく思う風潮や、家庭内に家族以外の人
間が入ることを嫌う傾向がある。また、書類の作成も苦手なため申請をしていない家庭もある。
医師が介護認定を勧めても断り続け、介護をしている家族が先に倒れてしまった例もある。そ
うした方も、傾聴ボランティアなどは受け入れている例があるので、保険認定の必要のない保
険外のサービスであれば受け入れる可能性もある。一方で、介護保険を取得したとしても、デ
イサービスのサービス提供も十分でなく、介護施設の入所も、一年以上待ち続けなければなら
ないという状況でもある。
・退職看護師や保健師などは地域に残っている。彼らの中には、家庭の事情などでフルタイムで
勤務することはできないが、仕事すること自体が嫌なわけではなく、パートタイムなど条件が
合えば協力することができる方々もいる。にやぶさかではない方々も含まれている。
2)
市内居住者の現状
① 仮設住宅
●“人とのコミュニケーション”の復活が最大の望みとなっている。支援や見まもりはされている
が、体を動かす機会が少ないことと将来への不安などから体調を崩している高齢者も多い。狭
い仮設住宅で息を潜めるように暮らしている方もいる。
・仮設住宅は各種支援活動や見まもりなどがなされており、借り上げ住宅などに比べ比較的恵ま
れた環境ではあるが、それでも支援が十分とはいえない。狭い住環境の中で体を動かす場が少
ないことや将来に対する不安などから体調を崩す高齢者が多く、筋力低下や気力低下などいわ
ゆる廃用症候群の各種症状が確実に進行している状況にある。
・東京電力からの保証内容に関する地区間での不公平感が強く、同じ仮設住宅に違う地区の住民
が入居していることで、いがみ合いが生まれている。他地区の人に聞こえないように声を潜め
ながら会話をしていたり、あの地区の人が来るなら行きたくないなどと集会場に来る人が減っ
てきたりしている。
・女性に比べ、特に男性がひきこもりがちで、集会所の様々な活動に顔を出さない、隣近所との
付き合いも希薄といった状況が多く見受けられる。
・仮設に住む高齢者やその家族からは、話し相手、配食サービス、買い物代行や送迎サービス、
運動や農作業など活動メニューの拡充などが望まれており、買い物や通院など日常生活におけ
る“足の確保”と、崩壊してしまったコミュニティ、“人とのコミュニケーション”の復活が最大
の望みとなっている。
383
②
借り上げ住宅
●コミュニティが形成されていないため、役所の情報も十分届いておらず、支援物資の受け取り
もできていない。個人情報保護の理由から、支援者にも所在の情報が届いていないため、孤立
状態に近い入居者が多い。
※借り上げ住宅とは、自治体(主に県)などが、民間事業者のアパートやマンションなどの空き
部屋を借り上げた住宅で、避難者の為に提供しているもの。
・借り上げ住宅では、避難者以外のもともとの居住者もいる上に、避難者同士もかつて住んでい
た地域がバラバラのため、避難者のコミュニティ(自治会など)が形成されていない。そのた
め、行政とのパイプがなく情報が入って来にくく、民生委員や生活相談員の来訪もなく相談相
手もいない。行政への要望も自分で役所に足を運ばなければ届かないなどといった厳しい状況
の中での生活を余儀なくされている。
・個人情報保護の理由から、行政(市役所)から社会福祉協議会や民生委員などの生活支援者に
対しても、借り上げ住宅の所在情報は提供されていないということである。従って、入居者は
孤立状態に近い。独居高齢者などの孤独死が懸念されている。
・仮設よりも借り上げの方が住環境がよいと思い入居したが、この状況では仮設住宅にすれば良
かったという声も聞かれる。また、仮設居住者と同様、生活行動不活発による体重の増加や足
腰の痛み、将来に対する不安から睡眠障害、気力の低下などに悩んでいる。
・行政では借り上げ住宅居住者にはローラー作戦でケアしていくとのことだが、震災後一年半が
経過したが、一度も担当者が来たことがないとの居住者の発言もある。
③
市外への避難者(高齢者を抱える家族)
●両親の面倒を見てくれる人がいないので帰れない、避難先には仲間がいないために高齢者だけ
が自宅に戻るなどのケースが多く、高齢者を被災地においてきた親族は見まもりの必要性を強
く感じている。
・市外に親も連れて避難した方々からは、「市内では両親の面倒を見てくれる人がいないので戻
れない」
、
「親の入所施設が確保されれば戻りたい」といった声が聞かれた。
・親が地域に残った家族からは、「避難先にはコミュニティがないために生活になじめず、高齢
者だけが自宅に戻ったが、日常生活や健康状態が気がかりである」、
「実家に戻った親はまあ元
気で隣近所に知り合いがいるので日常生活は何とかなるが、一人暮らしなので病気になった時
のことを考えると心配でならない。」、「残っている親の安否確認、配食または食材宅配サービ
ス、送迎サービスがあればありがたい」など、見守りや生活支援を期待する声が多く聞かれた。
④
独居など郊外居住高齢者
●子供や孫は避難しているが、自分は住みなれた家に残るという例が多く、震災によって子ども
と離ればなれになり、将来への不安を抱える高齢者が増えている。行政からの支援活動もまだ
ら状態である。
384
・放射能の影響で子供夫婦や孫などが自宅を離れて各地に避難しているが、高齢者だけは住みな
れた家に残っているもしくは戻った例が多い。震災を期に子どもと別居状態になり、将来への
不安を抱えながら体調を崩し不自由な生活を送っている高齢者も多い。
・津波や放射能の影響でコミュニティは崩壊し、郊外の高齢者世帯は孤立状態にある。民生委員
すら避難しているため、行政からの支援活動もまだら状態で、毎月訪問を受けている家もあれ
ば、半年以上訪問がない家もある。
・NPO などの地元ボランティア団体も支援に乗り出してはいるが、基本的には本人たちも被災
者であり、人員不足やメンバーの高齢化も進んでいるため、一定の範囲以上は手が回らないの
が現状。また、前述のように個人情報保護の理由から、支援のために訪問確認すべき高齢者世
帯の情報が手に入らないという現実がある。
・独居あるいは老夫婦二人の高齢者世帯は交通弱者である場合が多く、そういう状況が高齢者の
孤立感を一層深めている。独居高齢者は話し相手に飢えており、電話を掛けても喜んでくれる。
しかし、そういった高齢者を外に連れ出すとなると、簡単にいかないのが現実である。
⑤
同居家族の状況
●介護疲れで、同居している家族が疲弊している。
・震災を境に受け入れ施設がなくなり、狭くて壁の薄い仮設住宅で要介護の親や障害を持つ家族
などと同居せざるを得なくなるなど、同居人が疲弊しきっているケースが増えている。社会福
祉協議会に寄せられた相談には、「このままでは耐えられない。お金ならいくらでも払うから
一日だけでも預かってほしい」など、レスパイトを求める切迫した内容のものもあるという。
・医療・介護施設が不足しているために、在宅で家族がケアをしている家庭が多いが、外部から
手を差しのべて、何らかのケアをしないと、共倒れの危険をはらんでいる。レスパイトの視点
からも在宅ケアサービスの拡充が欠かせない状況になっている。
3)
①
支援の状況
市内ボランティア(NPOなど)の状況
●地区によってボランティアの活動に偏りがあり、全域に及んではいない。
・借り上げ住宅や郊外の高齢世帯へは、地元のボランティア団体も支援しているが、もともと 3
市町が合併してできた市であるので、地区によって活動の活発さに大きな偏りがあり、市内全
域はカバーできていない。また、ボランティアのメンバーも高齢化が進み、活動を引き継ぐ若
年層がいないのが現状である。
・鹿島区はボランティア団体や老人会が活発に活動しており、相互支援の盛んな地域。それでも
震災を期に、活動を支えるメンバーは大幅に減少している。一方、原町区は震災と放射能被害
がより大きい上に、都市化が進んでいたためコミュニティの結束も鹿島に比べて弱く、見守り
支援体制も弱い。なお、小高区のコミュニティは壊滅している。
385
②
市内ボランティア(NPOなど)の状況市外からのボランティア支援状況・支援内容
●震災直後は多数来ていたボランティアもほとんどが引き上げてしまっている。また、ボランテ
ィアはがれき処理が中心で、生活支援はほとんど見られない。
・ボランティアの受け入れは鹿島地区のボランティアセンターが中心で行っていた。内容はがれ
き処理の受け入れが中心であった。生活支援のボランティアはもともとさほどなかったが、現
在は全くないといってもいい状況。
・医療系のボランティアも被災直後からは減ってきていて、病院の負担が大きくなっている。
③
行政の動き
●行政は、前例のない事態に、十分に機能しているとは言いがたい。
・行政も前例のない事態であるため、マンパワー不足や、情報不足も重なり、地元の医療・介護
機関や支援組織との連携もままならない状況が続いている。
・市民からは、震災後行政が何をしているのかわからないとの声も聞こえてくる。(ヒアリング
では、行政が機能していると回答した方は皆無であった)
・民生委員にも避難してしまっている方が多くいて、見回りが実施出来ていない地域が広範にわ
たっている。
・避難先から戻った市民の情報は掴みきれず、仮設住宅から出て行った人の情報も掴めていない
ために、気づいてみると仮設住宅が倉庫になっていて空家だったりする例もある。
●個人情報保護の壁があり、支援者に対して借り上げ住宅の情報が全く出てこない。
・個人情報保護法との絡みもあって、避難者の情報は支援組織に提供されていない。仮設住宅で
あれば設置場所がわかるので支援しようがあるが、借り上げ住宅の情報は行政からは出てこな
いため、支援しようとしてもできない状況。
・ボランティアや社協スタッフなどの支援者の間では、緊急時であるにもかかわらず個人情報が
提供されない状況では、孤独死や突然死の増加が懸念されるという風潮になっている。定期的
な見回りの必要性は高く、在宅ケア体制を充実・機能させるためにも何らかの情報取得は必要
である。広報誌は文字が小さく高齢者には読みにくいため、ほとんど読まれていない。広く支
援の情報を呼びかけるなんらかの仕組みが必要。
386
3.2.5.2.3
3.2.5.2.3.1
(1)
南相馬元気モール事業化にむけた調査
スタッフ募集および育成
実施内容・結果
スタッフの募集および研修の実施概況は下表のとおりである。
表 3.2.5-7:スタッフ募集および研修実施状況
月日
1)
項目
概要
7/3~
募集開始
ハローワーク求人票提出
7/3~17
募集期間
ハローワークとあわせ募集ポスター、募集チラシを作成
7/29,30
面接
応募者や推薦者について個人面談を実施
7/30
採用決定
全 8 名の採用を決定
8/1~8/7
研修の実施
南相馬元気モール運営に必要な研修を実施。
スタッフの確保
スタッフは、次の 8 名確保した。
スタッフ A 種:チーフ級 2 名
スタッフ A 種(看):看護師 1 名
スタッフ S 種:送迎運転可能な介護等経験者
1名
スタッフ B 種:運動指導等経験者 3 名(うち 2 名は 2 名で 1 名分)
スタッフ C 種:1 名
*A,B,C,Sは、賃金の単価区分を表す。
2)
研修
以下のとおり研修を行った。
表 3.2.5-8:スタッフ研修実施内容
分野
講師
内容
医
療
福島県立医大 葛西教授
地域医療・家庭医療・医療全体
介
護
南相馬福祉会 大内氏
南相馬の介護事業について
福
祉
南相馬市社会福祉協議会 田村氏
南相馬の福祉事業について
地
域
元南相馬市市長 渡辺氏
元気モールに期待するもの
ゆる体操正指導員
ゆる体操の指導について
運動指導
心得、組織、既往活動
ボランティア
接
客
安全管理
NPO 法人はらまちクラブ理事長
江本氏
モール運営
挨拶、観察、応対
応急対応
現地シミュレーション
なお、被災した住民の精神状態という特徴を踏まえた対応ができるよう、EAP(従業員支援プロ
グラム)に基づく被災者支援に実績のある有識者の支援等を受けることも検討したが、原発最前線
の南相馬においては、住民の精神状態は極めて複雑で敏感であること、それを最も感じ取れ、的確
に対応するためには現地の目線が何よりも重要であることから、江本氏による指導が適切であると
判断した。
387
3.2.5.2.3.2
(1)
開設場所・サービスの内容・提供プロセス等の確定
実施内容・結果
1)
開設場所の確定
①
候補地の比較
元気モール開設場所について、市内の 3 箇所の候補地について、使い勝手、快適さ、交通利便性、
コスト、波及効果など種々の要素を比較検討した。
表 3.2.5-9:元気モール候補地
住所
ジャスモール
南相馬市原町区大木戸字 日常的に買物客が集まる。
金場 77
マクドナルド店舗跡
特徴
大規模な仮設住宅から近い。
南相馬市原町区錦町 2 丁 駅や国道 6 号からも近い。
目 63-1
サンライフ南相馬
南 相 馬 市 原 町 区 小 川 町 NPO 法人はらまちクラブ指定管理
施設であり、事務局との連携は取り
322-1
やすい。
②
開設場所の決定
3 箇所の候補地から、ジャスモールに決定した。
駐車場の大きさと、空間レイアウトの自由度などが、主な選定理由となった。
表 3.2.5-10:元気モール開設地選考結果
選定
理由
駐車場に余裕がある。
ジャスモール
○
日常の買い物に便利であり、相乗効果が期待できる。
賃料は高いが、空間レイアウトの自由度が高い。
駅や国道からはもっとも近い。
マクドナルド店舗跡
-
店舗の再開可能性があり、現状の施設・設備を保存す
る必要があり、利用上の制約が大きい。
駐車場が周辺施設と共有で満杯になることがある。
サンライフ南相馬
-
賃料はかからないが、独立した部屋の確保が困難。
388
2)
参画事業者との調整
参画事業者は、弁当の配食サービス等を行っている「NPO ほっと悠」であるが、元気モールに隣
接してフードコートがあることや、衛生管理などを考慮し、元気モール内での弁当の提供はせずに、
情報提供を行うにとどめることとした。
3)
提供サービスの検討
事前のニーズ調査結果および、ジャスモール内で提供されている種々のサービス等をもとに、元
気モールで提供するサービスを以下のとおり検討した。
表 3.2.5-11:想定したサービス
種類
メニュー
休憩
お茶と休憩場所
対話
傾聴、話し相手、マッサージ
運動
貯筋運動、ゆる体操、正しいラジオ体操、みんなの体操、ストレ
ッチ、太極拳
健康管理
体力測定、健康測定、血圧測定、健康相談
文化・趣味活動
手話、囲碁、将棋、映画鑑賞、カラオケ、手芸等の教室
有識者による講演会
その他
4)
法務相談 等
医療機関との連携
市内の医院、歯科医院の医師に、健康講座を行っていただくほか、その際に、利用者の健康相談
に乗っていただくこととした。
また、元気モールスタッフである看護師が、これらの医師に、利用者への対応などについて逐次
相談することとした。
5)
提供プロセスの検討
表 3.2.5-11 に示したサービス要素をもとに、1 日の運営スケジュールや、週間・月間の運営スケ
ジュールを考慮しながら、サービスの提供時間や提供方法について検討した。決定したプログラム
については、月間予定表として配布するものとした。また、1週間のプログラムや、日ごとのプロ
グラムについては、モール内のボード等に掲示することで、利用者への情報提供に努めた。
389
3.2.5.2.3.3
サービス提供マニュアル・書類様式の作成
利用者に最適なサービスを提供できるようにするため、サービス提供プロセスに合わせ、主に下
記事項を定めた南相馬元気モールサービス提供マニュアルを作成した。
作成したマニュアルや書類様式は、以下のとおりである。
表 3.2.5-12:マニュアル・書類様式の作成状況
種類
概要
南相馬元気モールサービス提供
モール事業の運営方法・利用者対応やサービスの
マニュアル
流れ・医療・介護機関との連携方法や緊急時対応・
緊急連絡網・個人情報保護に係る対応
業務に必要な書類の様式
入会申込書・会員証・元気手帳
図 3.2.5-3:会員証
図 3.2.5-4:元気手帳
390
サービスの提供とモニタリング
3.2.5.2.3.4
実施内容
(1)
収益モデルとして「会員制」を想定した「これまでにない新たなサービス」とするため、高齢者
をはじめとしたあらゆる世代の住民にとっての「居場所」「集いの場」となるサロンサービスを提
供した。
事業化に向けた利用者の情報・意見を収集することを主眼として、会費は無料でサービス提供を
行い、モニタリングも行った。
無料ではあるが、次年度以降の会員制(会費有料)での事業化を見据える等の観点から、本調査
事業においても本年度限定の会員登録を行うものとし、利用者(入会者)に対しても、その意味を
明確に示すよう留意した。
実施結果
(2)
開設期間
1)
開設期間を 2012 年 8 月~2013 年 1 月末日まで(ただし年末年始を除く)とし、8 月 8 日~12
日を試験的なプレオープン期間とした。そして、当該プレオープン期間で得られた問題点等の改善
を図った上で、8 月 28 日から本オープンとした。
営業時間は、ジャスモール自体の営業時間等も考慮した上で、月曜から土曜日の 10 時~18 時と
した。
開設状況
2)
①
来場者数
来場者数は、累計 4,545 人、1 日平均 32.9 人となった。
8/28 の正式オープン以後は、少ない日で 14 名、多い日で 160 名を超えた。
ラジオの生中継が入った日が最も多くなった。
(人)
200
10/16☀
ラジオ生中継
180
161
10/15☀
南相馬市長講話
160
11/29☁
DMAT 小早川義貴さん講話
140
10/10☀
マジックショー
内覧会
8/8-12
120
100
80
12/14☂
浪江町長講話
10/31☁
通常メニュー
OPEN8/28
63
100
82
12/25☀
クリスマスパーティー
70
60
50
53
56
40
20
0
8/5
8/12
8/19
8/26
9/2
9/9
9/16
9/23
9/30
10/7
10/14 10/21 10/28 11/4
11/11 11/18 11/25 12/2
図 3.2.5-5:利用者数の変化
391
12/9
12/16 12/23 12/30
1/6
1/13
1/20
1/27
②
登録者数
1 月末で、会員登録は 925 人となった。
累積利用者数(人)
登録者数(人)
5,000
925
902
1/31
4,545
12/28
3,892
4,000
1,000
800
822
685
11/30
3,102
10/31
2,279
3,000
600
503
2,000
400
321
9/29
1,252
8/31
585
1,000
200
0
0
8/5
8/12
8/19
8/26
9/2
9/9
9/16
9/23
9/30
10/7
10/14
10/21
10/28
11/4
累積利用者
11/11
11/18
11/25
12/2
12/9
12/16
12/23
12/30
1/6
1/13
1/20
登録者
図 3.2.5-6:登録者数および累積利用者数
③
来場者属性
・性別
来場者を性別にみると、約 3 割が男性、7 割が女性となった。
被災地における高齢者向けのサロン活動などでは、男性は 1 割程度かそれ以下であることが多い
と思われることと比べると、男性の利用率が高くなった。
・年齢区分
年齢別にみると、60 代が最も多く約 3 割、次いで 70 代の 2 割となり、60 歳以上で半数以上を
占めた。
・居住地
利用者の居住地をみると、7 割が原町区となり、
次いで多かったのが鹿島区となった。
④
利用特性
41~50回
0.4%
31~40回
1.0%
51~100
回
1.1%
101回以
上
0.1%
21~30回
1.4%
・利用頻度
1 回だけの方が 2/3、1/3 の方が複数回の利用と
なった。
11~20回
3.9%
6~10回
5.8%
2~5回
25.1%
1回
61.2%
n=925
図 3.2.5-7:利用回数と割合
392
1/27
3)
提供サービスの内容
お茶とおしゃべりを楽しめる空間を常に提供し、貯筋運動や NHK みんなの体操、ラジオ体操
などの軽い運動は日替わりで実施した。
また健康測定機器を導入、常に個人で測定可能とし、看護師資格を持つスタッフによる健康相
談や血圧測定を提供の他、定期的に医師による健康相談日を設けた。
健康講座として地元医師による口腔ケア講習会を開催した。
提供したサービスの一覧は以下のとおりである。
表 3.2.5-13:サービスの提供内容一覧
提供サービス
休憩会
話
健康管
理
運動
お茶とおしゃべり
羽生先生口腔ケア講習
会
健康チェック・健康相
談
葛西医師の健康相談
ナースみっちゃんの真
面目な健康教室
体力測定会
貯筋運動
ストレッチ
NHK みんなの体操
正しいラジオ体操
太極拳
趣味文
化
活動
はるちゃんのちょっと
だけあみあみ
あみあみわーく広場
山さんのはじまめ専科
ぱっちわーく
手あそび
手話教室
輪投げ大会
輪投げど~ぞ
マジックショー
映画・DVD 観賞
久保ちゃんワールド
和田ちゃんのやさしく
め~る
実施頻
度
毎日
月2回
程度
実施日
―
9/13、9/27、10/4、10/25、
11/13、11/28、12/13、1/17
参加
人数
―
146
毎日
―
4回
9/25、11/14、12/11、1/15
101
1 月~概ね火曜日
28
9/19、9/21、9/24、9/26、
1/16、1/21
79
週1回
随時
ほぼ毎
日
ほぼ毎
日
週2回
週3回
月2回
程度
週1回
毎日
―
―
1,963
―
―
概ね火・木曜日
概ね月・水・金曜日
9/10、9/27、10/15、10/25、
11/12 、 11/22 、 12/10 、
12/27、1/7、1/24
349
309
10 月~水曜日
132
12 月~
121
―
週1回
10 月~木曜日
123
週1回
週1回
週1回
週1回
月2回
程度
全2回
週3回
9 月・10 月のみ金曜日
10 月~金曜日
土曜日
土曜日
9/21、10/1、10/24、11/8、
11/16、11/26、12/4、12/17
10/1、10/9
1 月~月・水・金曜日
39
135
70
69
1/17
24
1回
393
225
27
168
提供サービス
実施頻度
学習
ボラン
ティア
活動
他
週1回
9/18
紺野氏
10/15 南相馬市長
11/1
東雀ケ丘病院堀先
生
11/29 DMAT 小早川先生
12/14 浪江町馬場有町長
12/20 慶応大学大垣教授
12/25 鹿屋体育大学福永
学長
1/10 東 雀 ケ 丘 病 院 堀 先
生
1/11 NPO 法人チェルノ
ブイリ救援・中部 神谷理
事長
1/18 南相馬市長
1/23 お が た ク リ ニ ッ ク
院長
10 月~金曜日
週1回
10 月~火曜日
11/19~
全 10 回
11/19、11/21、11/22、11/26、
11/27,11/28、12/3、12/12、
12/19、
1 月~
月2回
程度
講話
鎌ちゃんのいいなぁ
~シリーズ
こわちゃんの介助知
ッ得
クリスマスプレゼン
ト サンタ肩もみ隊
による仮設住宅訪問
笑顔 肩もみ隊によ
る仮設住宅訪問
遊夢チアリーダー公
開練習
実施日
随時
随時
8/11、9/8、10/13、10/20、
11/10、11/17、
図 3.2.5-8:サービス提供の様子
394
参加
人数
401
71
100
73
17
71
4)
健康状態の調査(モニタリング)
元気モールでは、元気手帳を配布し、健康の自己管理を促すとともに、看護師による健康相談
や、各種測定機器を設置して数値管理が行えるようにした。
また、アンケートを実施して、会員の健康状態の把握に努めた。
表 3.2.5-14:健康状態のモニタリング実施状況
項目
対象者
頻度
元気手帳
会員全員
体力測定
モニター48
初期
身長、体重、胸囲、BMI 値、血圧、椅子座
名
終期
り立ち、握力、5m 最大速度歩行
会員 68 名
初期
元気モール以外で参加されている活動、
終期
元気モールに期待すること、
意識・意向
調査
来場時
内容
体重、体組成、血圧 等
精神状態、日常生活活動状況 等
①
元気手帳
会員登録者に、元気手帳を配布し、来場時および日々の健康状態の記録に活用した。
また、会員の同意のもと、健康記録についてスタッフが確認し、会員の健康状態の把握に活用し
た。
元気モールには、血圧計と高機能体重計、血液中酸素濃度計を配置し、来場時に会員が測定で
きるようにした。必要に応じて、看護師経験のあるスタッフが測定数値の説明や結果を元にした
健康相談に応じた。
②
体力測定
1.測定概要
会員からモニターを募り、貯筋運動等、運動プログラムの実施効果を把握するため、体力測定
を行った。
測定項目は、以下のとおりである。
表 3.2.5-15:体力測定項目
測定項目
実施内容および実施方法
身体測定
身長、体重、腹囲の計測
血圧
最高血圧、最低血圧の計測
椅子座り立ち(秒/10 回)
普通の椅子に、立った姿勢から連続して座り、立つ動作
を連続して 10 回行う。要した秒数を計測。
握力
左右の握力の計測
5m 最大速度歩行
前後に予備路 3m ずつプラス測定区間 5m の合計 11m の
直線距離をできるだけ速く歩いてもらい、測定区間 5m
を通過するのに要した時間を計測。
395
表 3.2.5-16:体力測定実施状況
実施日
モニター数(性別内訳)
初回
9/19~9/26
40 名(男性 12 名、女性 28 名)
2回
1/16、1/21
28 名(男性 8 名、女性 20 名)
2.結果
参加者の平均値は、椅子の座り立ちで 1 秒、5m 最大歩行で 0.11 秒短縮していた。顕著な体力
の向上は認められないが、維持されている状況と考えられる。
(秒/10回)
椅子の座り立ち
(秒)
3
40
29
27
2
20
0
14
13
6
初回
最大値
1
6
5m最大速度歩行
2.59
2.56
2.11
2.00
1.18
1.17
0
2回目
平均値
最小値
初回
最大値
2回目
平均値
最小値
図 3.2.5-9:体力測定結果
③
健康状態利用者アンケート
アドバイザーの協力の下、K6 なども踏まえアンケート項目の検討を行い聴き取り調査方式で実
施した。調査は、元気モール利用初期と、開設終期(1 月)の 2 回行い、その変化を観察した。
結果概要は次のとおりである。
1.健康状態(精神状態)
それぞれの質問に対し、次のとおりスコアをつけ
1:
「全くない」 / 0:
「たまにある」 / -1:「いつもある」
1 回目と 2 回目でどのように変化したかを計算し、
+2:改善した /
+1:少し改善した
0:変化なし
-1:少し悪化した / -2:悪化した
として整理した。
いずれの設問も、
「変化なし」が最も多かった。
「悪化+少し悪化」している、
「改善+少し改善」
しているともに 2 割弱程度みられた。特に「動きが遅い、頭の回転が遅い」は、両方(悪化、改
善)ともに、他の項目よりも高い割合を示した。
396
0%
20%
40%
60%
80%
100%
物事に興味がなくなった
気分が落ち込んでいる
寝つきが悪い
疲れがとれず、気力がでない
食欲がない
悪いのは自分のせいだ
新聞・TVがおもしろくない
動きが遅い、頭の回転が遅い
死んだ方がましだ
悪化
少し悪化
変化なし
少し改善
改善
図 3.2.5-10:心の健康チェック結果の変化
5)
送迎サービスの実施
送迎サービスを提供するため、8/28 から送迎専用車を用意したが、利用実績のないまま 10 月
にサービス提供を中止した。
ジャスモールには、買物タクシー乗り場が用意されていることから、この代替手段として無料
で利用されることがないよう、PR を控え、登録会員に送迎の必要が生じたときに運用すること
を想定していたが、開始から 2 ヶ月間で必要となる事態が生じなかったため、専用車の準備を中
止した。
6)
医療・介護機関と元気モールとの連携
看護師スタッフが会員の健康相談を受けており、会員の状況(会話、アンケート結果等から)
を踏まえ、緊急性が確認された場合、かかりつけ医に対して必要な情報提供を行った。
また、アドバイザーの葛西医師による健康相談や、葛西医師と看護師スタッフによる話し合い
などを行うことで連携を図った。
397
7)
事業化にむけた調査(モニタリング)
事業化にむけて、会員(利用者)の意識・意向調査を行った。実施概要は次のとおりである。
表 3.2.5-17:事業化検討のためのアンケート実施状況
種別
利用目的等に関
する意識調査
有料化に関する
意向調査
実施日
対象者
内容
来場手段、来場目的
11/26~
60 名
来場時立ち寄り先、帰宅時立ち寄り先
買い物先決定の際の影響
有料化後の利用意向
11/26~
59 名
利用料
会費に相当する提供サービス
① 利用目的等に関する意識調査結果
1.来場方法
元気モールまでの来場は、自分で車を運転してくる人が 6 割を超えた。家族知人の運転する車
とあわせて、およそ 8 割の人が自家用車で来場していることがわかった。
2.来場目的
元気モールに来ることが主目的とした方がおよそ 9 割と、ほとんどの人が元気モールを目的に
来場されていることがわかった。
3.立ち寄り先
元気モールにまっすぐ来た方が約 8 割となった。
一方、元気モールに寄った後、ジャスモールで買物をして帰る方が 5 割となり、まっすぐ帰る方
は 3 割程度であった。
4.買い物先決定の際の影響
元気モールの場所や元気モールに来訪することが、日常の買物先の決定に影響しているとした
方が 7 割となった。
②
有料化に関する意向調査結果
1.有料化後の利用意向
有料化しても利用するという方が 7 割を超えた。
2.利用料支払い方法
支払い方法では、月会費制度を望む方が 4 割、都度払いを望む方が約 5 割となった。
3.利用料
398
年払いでは 1 万円、月会費では 2,000 円程度を望む意見が多かった。都度払いでは、500 円
が約 7 割の方となった。
4.会費の価値
「私は会費を、**代だと思っています。
」の“**”を埋めていただく形で、会費の価値(=
利用者が感じている元気モールサービスの価値)を調査したところ、以下のとおり多様な回答
を得ることができた。
・ 「筋トレ・運動・運動を教えてくれる」代:9 名
・ 「癒され」代:7 名
・ 「健康・健康維持」代:5 名
・ 「お茶」代:5 名
・ 「おしゃべり」代:4 名
・ その他(
「人とのふれあい」代、
「ストレス解消」代、「会場」代 など)
3.2.5.2.3.5
(1)
参画事業者の有料サービスの情報提供と事業創出検討
目的
元気モールの付加価値向上をはかるため、元気コミネッツ参画事業者の有料サービスに関する
情報を南相馬元気モール内外において提供した。
また、次年度以降の事業化(収益力向上)のために、事業者の組織化や新サービスの創出につ
いて検討した。
(2)
1)
実施内容・結果
参画事業者の情報提供
モール内にスタンドラックを設置し、参画事業者にはチラシ等を設置頂き、利用者が自由に閲
覧・利用・問い合わせができる仕組みとした。
2)
事業創出検討
働き手の不足や、現状の環境の不安定さから、新たな事業創出の検討には至らなかった。
399
在宅ケアサービス事業化にむけた調査
3.2.5.2.4
3.2.5.2.4.1
(1)
潜在看護師等の掘り起こしと育成
目的
事業体制の強化を図るため、南相馬地域にてサービス提供可能な潜在看護師等を掘りおこした。
(2)
実施内容・結果
1)
看護師の掘りおこし
1.募集経緯
募集に際しては、以下の経緯で実施した。
・GPM 会議アドバイザーである渡辺氏に、看護資格者の紹介を依頼したところ、知人である看護
師を通じて、1 名の看護師 A から申し出があった。
・9 月 11 日に説明会(簡易なもの)を開催し、看護師 A に事業内容について説明したところ、
協力の了承を得た。
・その後、看護師 A を通じて元看護師たちが趣味で開催しているサークル活動内にて呼びかけを
行い、説明会への参加を依頼した。(説明用告知チラシ作成)
・12 月 14 日に 7 名の看護資格保有者の出席を得て説明会を開催したところ、3 名の方より協力
の申し出があった。
2.事業説明会
キャンナス東北の協力により事業説明会を以下のとおり開催した。
表 3.2.5-18:説明会開催日
説明会開催日時
場所
対象者
サンライフ南相馬
看護師 1 名
12/14
南相馬
看護師 7 名
14 時~15 時
市民情報交流センター
医師 1 名(南相馬市立総合病院)
9/11
16 時~17 時
2)
育成
後述のマニュアルを使用した講習を実施すると同時に、OJT を導入した。介護現場での経験が
ない看護師 A に対して、介護現場でのノウハウの取得を目的として、キャンナス東北事務所およ
びキャンナス東北の請け負う訪問看護先において、2 日間の OJT を実施した。病院での長期にわ
たる勤務経験があったことと、看護業務に対する意識が高かったこともあり、問題なく現場での
提供に入れるスキルであった。
400
3.2.5.2.4.2
(1)
サービス提供マニュアルの作成
目的
南相馬における高齢者介護やケアの現状、被災者を対象としたサービス提供方法時のポイント
やホスピタリティ、介護保険適用サービスと保険外サービスの区別など、通常と異なる状況にあ
る被災地でのサービス提供を念頭に、サービス提供マニュアルを作成する。
(2)
実施内容・結果
キャンナス東北との検討会議を実施し、アドバイスを受けながら、看護師 A も交えてマニュア
ルを作成した。今後も事業継続の中でさらに磨き上げていくものとする。
表 3.2.5-19 在宅ケアマニュアル構成
大項目
中項目
内容
はじめに
-
事業の主旨
在宅ケアサ
在宅ケアサービスとは
保険内サービスと保険外サービスの説明
ービス
在宅ケアサービスの内容
具体的なサービス内容
在宅ケアサービス提供者
在宅ケアに必要な資質について説明
に求められるもの
保険外在宅
サービスを提供する前に
ケアサービ
スの提供
本事業の目的と提供するサービスの具体
的内容
サービス提供までの流れ
受付から初回相談までの流れの説明
サービス提供に必要な備
準備品の一覧
品
報告
提供内容の報告と最終的なヒアリング実
施について説明
参考資料
-
・ボランティア実施報告書
・ヒアリング調査用紙(事前・事後)
401
在宅ケアサービスの有料提供
3.2.5.2.4.3
(1)
目的
需要調査結果を踏まえた上で、看護師等による利用者のニーズに対応した在宅ケアサービス
(保険外サービス)を有料で提供する。
(2)
1)
実施内容・結果
利用者の募集(プロモーション)
利用者の募集に関しては以下の方法により行った。現状ではサービス提供の体制が整ってい
ない事から、広く告知はせずにネットワークを経由して募集することとした。
①
南相馬市内のボランティア団体を通じた告知
鹿島地区のボランティア団体に協力を依頼し声がけをしていただき、6 名の希望者を獲得する
ことができた。
②
看護師のネットワークを通じた告知
看護師の在住地域で告知をしたところ、支援対象者のご家族より申し出があり、2 名の利用者
を獲得した。対象者は介護保険の認定を拒んでおり、保険が適応できないことから、介護サー
ビスを受けることができず、家族の介護の負担が大きいとのことであった。
③
南相馬市立総合病院への協力依頼
退院する患者の家庭での見まもりについて病院に協力を依頼したところ、ソーシャルワーカ
ーが院内での医師も交えた会議で提案してくれ、在宅でのケアが必要な方を紹介いただける事
になった。
2 名の紹介をいただき、在宅でのケアを実施した。
2)
告知ツール
募集チラシを作成。広く配布する予定であったが、サービス提供の体制が整っていない事か
ら一旦見送り、今期は直接手渡しできる範囲での配布にとどめた。(表 3.2.5-22 参照)
402
3)
サービスの提供状況
計 10 名に対してサービスを提供した。
表 3.2.5-20 在宅ケアサービス適用者一覧
対象
対象者の状況
認知症、介護認定は受けていない
(市内に住む息子さんが 2 日に一度おかず・日用品などを持っ
人暮らし、
て様子を見に来る、徒歩 5 分のところに姪もいる)
②74 歳男性、奥さ 身体障害者 5 級、腰部脊柱管狭窄症で手術後弱ってしまった、
心疾患、前立腺肥大症、介護認定無しだったが認定手続きを支
んと次男の三人
援し申請書を提出した
暮らし、
①91 歳女性 一
③79 歳女性、一人 緑内障、糖尿病で月 1 回通院中、介護認定は受けていない
暮らし、
④83 歳男性、夫婦 狭心症、脳梗塞、白内障で月 1 回通院、介護認定は受けていな
い
二人暮らし、
⑤88 歳女性、一人 変形性膝関節症、高血圧、骨粗鬆症、心臓疾患、膵炎、月 1
回通院中、介護認定は受けていない
暮らし、
⑥73 歳女性、一人 脳梗塞、網膜剥離を患い、月 1 回通院中、介護認定は受けてい
ない
暮らし
⑦71 歳女性、一人 高血圧で月 2 回通院中、介護認定は受けていない
暮らし
⑧80 歳女性、夫婦 胃が弱く月 1 回通院中、介護認定は受けていない
二人暮らし
⑨74 歳女性、一人 白内障、高コレステロールで月 1 回通院中、介護認定は受けて
いない
暮らし
⑩82 歳女性、孫と 高血圧、高脂血症で近所の内科に 3 週間に一度通院、介護認定
は受けていない
同居
※当初有料での提供を想定していたが、地域での医療費が無料であること、地域住民の介護保険
の対象になる事への抵抗感が強いこと、それと同様に保険外の新しいサービスについての理解
が進んでいないことに鑑み、本委託事業期間中は無料でのサービス提供とした。
サービス開始時に、本事業で行うヒアリングに協力いただくことで無料となっていること、
将来的には有料となる予定であることを説明し、理解・納得していただいた上で、サービスを
提供した。
403
提供サービスのモニタリング
3.2.5.2.4.4
(1)
目的
次年度以降の継続利用のために、必要な要件等を把握する。
(2)
実施内容
サービス開始前およびサービス終了後に、サービス利用者とその家族を対象としてヒアリン
グを行う。ヒアリングは、利用者宅において質問票に基づき行う。
(3)
1)
結果
対象
期間中、10 名の高齢者に対する在宅ケアサービスを実施した。この他に新たに 2 名の利用希
望者が出てきている。
10 名の対象者へのサービス頻度は、週 2 回が 1 名、週 1 回が 2 名、月 1 回が 7 名となっている。
サービス開始が多くは 1 月に入ってからとなったため、サービス提供後のヒアリング調査は
比較的利用期間の長い 5 名に対して実施した。
2)
結果
①利用者の満足度は極めて高く、利用者全員が継続して利用したいとしている。
在宅ケアサービス利用者の全員が、提供しているサービスに対して非常に満足しており、今
後とも利用し続けたいとしている。
手続きが簡単でかつ利用者の要望に添った柔軟なサービス提供が受けられるようなものはこ
れまでにはなかったサービスだとして、
「助かっている」、
「ありがたい」、
「安心した」、
「心強
い」などの声が聞かれると共に、看護師の気さくな対応から「話し相手になってくれる」、
「悩
み事を気軽に相談できる」
、「健康に関する的確なアドバイスをしてくれる」といった評価も
得ている。
また、本人もさることながら介護をしている家族の負担が軽減されたことに対する感謝の声
も聞かれる。
このような高い評価から、訪問頻度をもっと高めて欲しいという要望も出されている。(「可
能なら毎日 5 分でもいいので顔を出して欲しい」
「
、たまには 1 日に 2~3 回訪問してもらって、
その日だけは終日介護から解放されたい」など)
なお、初回訪問時の本人状況観察および家族からのヒアリングをベースに介護保険の認定を
受けるべき対象者と思われる場合には、その旨のアドバイスをしている。その結果、申請手
続きの支援を行い、申請にこぎ着けた利用者もいる。
②期待されているサービスは、
「健康チェック」、「健康・医療・介護の相談」、「見守り」、「話し
相手」
、
「外出時の付き添い」
期待したいサービスとしては、いずれもサービスメニューとしてあらかじめ用意したもので
はあるが、
「健康チェック」、
「健康・医療・介護の相談」、「見守り」、「話し相手」、「外出時の
404
付き添い」などが利用者から挙げられている。
利用者と相談しながら、利用者とその家族の状況に応じ、最も必要で有効と思われる支援内
容を説明し実施するよう努力しているが、利用者の増加に伴い新たなサービスメニューが必
要になる可能性がある。
③利用料金は、1 時間 1,000 円~2,000 円程度が妥当。
現時点では無料でのサービス提供となっているが、全員が有料サービスに移行しても利用す
るとしており、利用料金については 1 時間 1,000 円程度を望む声が多い。
具体的には、
「1 時間 1,000 円~2,000 円程度のお金は払いたいと思う」、
「1 時間 1,000 円程度
の料金は当然だと思うし、月に 5,000 円~8,000 円ぐらいならずっと利用させてもらいたい」、
「1 回 20~30 分で 500 円ぐらいが妥当ではないか。リハビリみたいなこともやって、1 時間
面倒をみるような場合には 1,000 円とか 1,500 円ぐらいかなと思う」、
「1 時間 1,500~2,000
円ぐらいは出してもいいと思う」、「月 2,000 円ぐらいなら健康のための安心料として出して
もいいと思う(月 1 回の利用者)」などとなっている。
405
告知活動
3.2.5.2.5
3.2.5.2.5.1
(1)
告知ツールの作成
目的
元気モール事業(モールの開設や、モールで提供する運動プログラムや健康講習会など)の告
知のためのチラシやポスターを作成した。
(2)
実施内容・結果
作成した告知ツールは、次のとおりである。
表 3.2.5-21:告知ツール一覧
告知ツール
概要
元気モールロゴ及びキャラクター
スタッフポロシャツ
のぼり
横断幕
うちわ
元気モールプレオープンチラシ A5
版
元気モールプレチラシ A4 版
元気モールオープンチラシ A5 版
元気モールオープンチラシ A4 版
元気モールオープンポスター
プログラムメニュープレート
スケジュール
本日のメニュー表
リーフレット
営業時間案内ポスター
利用案内ポスター
送迎車両用マグネットシート
会員証
元気手帳
ジャスモール全館館内放送
WEB サイト開設
元気モールスタッフブログ開設
406
元気モール事業にふさわしいイメージキャラ
クターを作成
イメージキャラクターおよびロゴを配したス
タッフの制服
イメージキャラクターおよびロゴ等を配した
のぼり
プレオープン用、入口掲示用
本オープン用、入口掲示用
イメージキャラクターおよびロゴ等を配した
のぼり
プレオープン時手配り用チラシ
プレオープン案内配布用チラシ
本格オープン時手配り用チラシ
本格オープン案内配布用チラシ
本格オープンポスター掲示用
提供サービス内容の一覧表
提供サービスの月間予定表
ブラックボードに当日のプログラム等を案内、
イーゼルを使い入口付近に設置
A3 三つ折リーフレット
第 2 版作成
入口掲示用
入口掲示用
イメージキャラクター及びロゴ等を配した送
迎車両貼付用マグネットシート
入会登録者カード
元気モール参加記録や個人の健康記録などが
つけられ、また健康や運動に関するコラムを掲
載された健康手帳
館内放送にてオープンの案内
モールの最新情報、スケジュール、プログラム
の紹介、利用者の声などを発信
http://genkimall.npoharamachiclub.jp/
お知らせや活動記録などモールスタッフが毎
日更新
http://genkimall.npoharamachiclub.jp/blog/
3.2.5.2.5.2
(1)
告知ツールの配布・掲示
目的
市内の自治会等の協力を得て配布、掲示を行う。
併せて看護師等による地域高齢者宅への戸別訪問を実施し、高齢者の見まもり等を行うととも
に、南相馬元気モールの紹介、在宅ケアニーズの掘り起こしを図る。
(2)
実施内容・結果
チラシ、うちわなど、元気モールのオープンや、イベントの実施にあわせてジャスモール内や、
市内公共機関等において配布・掲示した。
表 3.2.5-22:告知ツール配布・掲示状況
時期(月日)
告知ツール
7/28~
うちわ
8/1~8/12
元気モールプレオープ
ンチラシ A5 版
8/1~
元気モールプレオープ
ンチラシ A4 版
8/13~
元気モールオープンポ
スター
8/13~
元気モールオープンチ
ラシ A5 版
8/13~
元気モールオープンチ
ラシ A4 版
8/28~
リーフレット
8/1~
のぼり
8/1~
横断幕
配布・掲示状況
1,000 本
来場者、仮設住宅戸別訪問、7/28・29 の相
馬野馬追祭会場等
1,000 枚
通行人、ジャスモール店頭、仮設住宅戸別
訪問等
1,000 枚
サンライフ南相馬、主な公共・公益施設他
市内各所
1,000 枚
モール入口、サンライフ南相馬、主な公共・
公益施設他市内各所
1,000 枚
通行人、ジャスモール店頭、仮設住宅戸別
訪問等
1,000 枚
サンライフ南相馬、主な公共・公益施設他
市内各所
2,500 枚
来場者、仮設住宅戸別訪問、サンライフ南
相馬、主な公共・公益施設他市内各所
10 本
ジャスモール内通路に設置
プレオープン用、入口に掲示
本オープン用、入口に掲示
8/13~
407
3.2.5.2.5.3
(1)
地元メディアの活用
目的
新聞やラジオ、地域 FM 等のメディアの協力を得て広報活動を行った。
(2)
実施内容・結果
メディアでは、以下のとおり取り上げられた。
表 3.2.5-23:メディアによる広報状況
媒体
新聞
媒体先
福島民友新聞社
概要
記事
福島民報社
記事
河北新報社
記事
毎日新聞社
記事
読売新聞
記事
地 域 情 報 ポ ー タ 相双ビューロー:相 記事
http://yumesoso.jp/
ルサイト
双ゆたどさ
yutadosa/archives/
6251.html
「 南 相 馬 市 ふ る め ぐ り あ い 通 信 記事
さと元気応援団」 No.13
情報誌
TV
FCT 福島中央 TV
オープン当日中継
KFB 福島放送
ニュース
TVF 福島放送 TV
オープン当日中継
希望プロジェクト
取材(放送 10/31)
ラジオ
ひばり FM
中継
公共広報
RFC ラジオ福島
市役所広報課
408
中継
フォトレポ南相馬
月日
8/12、8/28、1019、
12/14、12/21、12/31
8/14、12/21
8/28
8/28
8/28
9/5、10/16
7/7
8/28
8/28
8/28
9/18
8/28、9/11、10/11、
11/15、12/13
10/12、10/16
8/28
事業化に向けた課題対応策の調査
3.2.5.2.6
事業化に向けた課題
3.2.5.2.6.1
サービス利用者・参画事業者等に対する事業化に向けた調査結果、南相馬元気モール登録会員
数や利用実績、確認された相談内容、健康データ、スタッフヒアリング結果、コスト実績等を整
理・分析・評価し、次年度以降の事業化に向けた課題の抽出を行った。
(1)
1)
元気モール
コスト
元気モールの運営コストは、賃料、スタッフ人件費、電話等回線使用料、宅配水、消耗品、
事務用品等からなる。 その構成割合は、1 ヶ月約 200 万円の運営費のうち、8 割弱が人件費、
15%が賃料と、人件費と賃料がコストのほとんどを占めている。
コスト縮減を考えた場合、人件費の圧縮が最も重要な課題となる。
2)
収益性
元気モールのサービスとしては、
・運動プログラム
・健康管理、健康相談
・休憩のできる空間の提供(お茶付き)
・話し相手(スタッフ)の提供
・その他の各種イベント、教室等の提供
などがあるが、これらのサービスの収益性を高めるとともに、高齢者が集まる場所としての
特性を活かした収益力の向上が課題である。
(2)
周辺サービス
配食サービスや移動支援サービスなどの医療・介護周辺サービス事業者と連携した事業展開
は、それぞれの事業分野において種々の課題(働き手の不足、顧客である市民の居住地が定ま
らないなど)を抱える現状では、困難と考える。
様々な混乱が続く本市では、中高齢者向けのサービスのワンストップ窓口があるのが理想で
はあるが、現実的に連携組織を事業化していくには、まだ困難な状況である。
(3)
1)
在宅ケアサービス
人材の確保
事業を担う看護人材が不足している点が挙げられる。現状では広く告知していないため、対
応できる程度のマンパワーが確保できているが、ニーズ調査により明らかになったように今後、
サービスが浸透するに従い、希望者の増加が予想される。その際に少しでも多く対応できるよ
う、更なる協力者の獲得が必要である。
また、現在サービス提供している看護師には、組織をマネジメントするためのノウハウがな
409
く、その点も課題となっている。有償ボランティアと訪問看護ステーションの経営を合わせて、
引き続きサポート体制を構築することが必要となっている。
2)
利用者の確保
①情報が到達しにくい環境
行政の広報すら読まれていない状況では、サービスを必要としている方々に情報が到達しな
いことが懸念される。また、自治会などのネットワークも途切れており、広く告知することが
難しい環境にある。
②地域住民の介護への意識
前章でも述べたように、介護サービスというものに対する屈辱感や、他人を家に入れたくな
いという意識が、サービス利用の妨げになるケースも予想される。
既存の介護サービスにさえ否定的な方が多く、本人が拒否する場合もあれば、本人は同意し
ていても家族が拒否する場合もある。地域内で介護保険や介護サービスに対する理解が進んで
いるとは言えない状況。
そうした中、ヒアリングなどで十分に説明した方は、サービス内容について理解してくれる
が、具体的な説明無しにサービスを理解してもらうのが難しい環境にある。
③移動距離
対象エリアが広いため、地域的に孤立している集落が多く、提供の際の移動距離が長く、稼
働効率が悪いことが想定される。
3)
サービスの提供内容・価格
原発より 30km 圏内では医療費が無料であるので、有料にしたときにサービス利用者がいる
かどうかの懸念がある。また、ボランティア=無料奉仕という意識も強いため、有料化の際に
どこまで理解を得られるかどうかわからず、全域にサービスが浸透するまで相当の期間を要す
ることが想定される。
410
3.2.5.2.6.2
(1)
1)
課題解決策に関する調査
元気モール
貯筋運動教室の収益力向上
元気モールで実施している運動プログラムの収益性を検討するため、全国各地で貯筋運動を
有料展開している事例について調査した。
週 1 回 1~1.5 時間の教室に参加するため、2,500~3,000 円/月の会費を支払う人が現実的に
いることがわかった。
・川崎市高津区
総合型地域スポーツクラブ高津 SELF は、区内 5 箇所(公民館や高齢者向けふれあ
い施設など)で、貯筋運動教室を実施している。会費は 2,500 円/月で、一会場あたり、
20 名前後の参加を得ている。
・さいたま市浦和区
総合型地域スポーツクラブ浦和スポーツクラブでは、市立中学校の余裕教室におい
て貯筋運動教室を実施している。会費は 3,000 円/月で、週 1 回、1.5 時間程度のプロ
グラムであるが、教室終了後も会員は教室に残り、おしゃべりを楽しんでいる。
1 教室、概ね 20 名弱の参加を得ている。
現在行っている貯筋運動プログラムについて、現在の「誰でも受けられる」運営方法から、
有料会員制へと移行していくことが考えられる。
2)
モニター提供事業による収益力向上
収益増加を目指して、介護用品や高齢者向け製品等のサンプリングやモニター調査のモール
内で実施し、協力金(協賛金)を得る仕組みについて検討した。
①企業ヒアリング
ア) 飲料メーカー大手 A 社
・ 新商品のモニターは、話題づくりを含めてイベント的に行うことがある。
・ 社内にマーケティングの部門を持ち、ここで全国各地の店舗を活用して各種モニタリング
を行っている。
・ 被災地のシニアを対象とした調査は、特殊な状況下にあるため、現時点では難しいと考え
る。
イ) シューズメーカーB 社
・ 製品開発には、モニター(数百名規模)に 1~複数年にわたりヒアリング~試作品の試用な
どを行ってもらっている。
411
・ 今後、被災地のシニアの方々にモニターになっていただく可能性はあるが、現在のところ
計画はない。
ウ) 衣料メーカーC 社
・ シニア向けの衣服の開発に際し、市場でアンケート等を行っても、なかなか高齢者は本音
を出してくれない。
・ シニアの条件が様々で、いただいた意見がどのような購買層の意見にあたるのかの整理を
しづらい。特定の条件のモニターの数をそろえるのに苦労することがある。
・ 東北の被災地は、地域によって置かれている条件が大きく異なっていると受け止めており、
南相馬にまとまってモニターをお願いするのが良いかどうかは、現時点では判断がつかな
い。
エ) 健康食品関連取り扱い会社 D 社
・ 特定の食品を一定期間試食して健康状態の推移などを測定させていただくモニターであれ
ば、1 例あたり数~十数万となることがある。
・ 健康状態の測定などが必要であるが、被災地は特殊条件下にあると受け止めており、そこ
だけに集中してモニターを必要とすることは、現時点では考えていない。
カ) 防災用品取り扱いの E 社
・ 防災グッズの評価などを行っている。
・ 現状では、個人のモニターをインターネット等で募り、行っている。
・ 謝礼は、グッズの提供としている。
・ 今後、南相馬で行うとすれば原発事故関連のことも考えられるが、現時点では案件がない。
キ)マーケティング会社 F 社
・ モニターは、WEB 登録で全国に数万人規模で登録してもらっている。
・ 高齢者は、WEB 利用などの頻度が低いために、ある程度母集団が揃うのであれば、商品に
よっては、依頼できるケースも出てくると思われる。
・ 謝礼は、商品やモニタリングの内容によって様々で一様ではない。
412
②モニタリング事業実施の可能性
これらの企業ヒアリング結果を整理すると次のように考えられる。
・ 商品開発のモニターを受ける可能性はある
・ ただし、現時点では、南相馬の状況について特殊な条件化にあると受け止め
られており、すぐに大きな(多くの)ニーズが発生するかどうかは不明。
・ 登録者の年齢等のデータをそろえておき、マーケティング会社等に伝えてお
くことで、適当な商品の話のときに紹介してもらえる。
・ モニタリング(商品)の種類により、求められる試験内容が異なるため、モ
ニターとなっていただく会員によって対応が分かれる可能性がある(健康食
品等では、血液検査等を行うこともあるので、人によって賛否がでる)。
3)
企業協賛による収益力向上
元気モールの社会的意義に対し、CSR としての企業協賛の可能性を検討するため、企業等に
ヒアリング調査を行った。
区分
回答・状況
大手
・現在、被災地の個別の活動への協賛は行っておらず、基金等に出
資している。
・個別の活動への出資は、説明が難しいと考えている。
・当社が縁のあった地域に支援している(A 社)
。
中小
・なんらかの支援をして、貢献したいと考えているが、どこに何を
するのが良いのか整理できていない。
・基金などにいれて名前が出るような規模では難しい。
・目に見える形で、従業員のやる気につながるようなものが良い。
商店街
・地域的な交流につながるような被災地の支援をしたいと考えてい
る。
・
(商店街の)会員に説明がつくように、何に対する支援なのだかわ
かりやすいものが良い。
・特定の団体への支援だと、しづらい。公的な活動として見える形
のものがよい。
東日本大震災を受け、日本国内でも企業からの支援は増えている。
大手企業では、「工場や事業所が立地していたなど、何かしらの縁があった地域の活動へ支
援を行っている」「いくつかの財団などが行っている基金(例 Save The Chirdlen )などに寄
付を行っている」といったケースが多いようであり、独自に特定の活動に支援を行うことは、
支援先の選定理由などの説明責任が生じるため避けているような状況にある。
また、中小の規模の企業では、何か行いたいが、具体的にどこに何をすればいいのか迷って
いるという意見があった。支援の規模は大きくできないので、基金への参加などでは情報・成
果が従業員や関係者に伝えづらく、士気にもつながらないということを懸念されている。
商店街では、中小企業と同様であるが、地域的な交流などにつながるものが良いという意見
も見られた。
413
また、「元気モール」については、「何に対して支援するのか」が定まりづらいという感想
の団体もあった。
4)
賃料の削減方策
賃料の削減方策について調査した。
①企業協賛
・さいたま市の事例
NPO 浦和スポーツクラブが運営する子どもを中心とした地域交流拠点「ふらっと広
場」は、地元企業の埼玉工業が、自ら経営する学生専用マンション「フラット常盤」の
1F セミナールーム(約 120 ㎡)を無償提供している(賃料 20 万円相当)。
埼玉工業では、学生マンションの経営が安定していることから、地域貢献の一環とし
て、子どもの居場所づくりの運営をすることを条件に、地元の NPO に無償で貸し出す
としている。
・北上市の事例
北上駅前のツインモールプラザ 1F では、NPO フォルダが、子どもからお年寄りまで
誰もが気軽に利用できる交流の場としてフォルダパークを運営している。
ツインモールプラザでは、集客力や地域貢献の側面を考慮し、賃料を 5 万円と格安で
貸し出している。
以上のような事例を受け、ショッピングセンター側に、元気モールの評価についてヒアリン
グを行った。
・ 今年度、ジャスモール全体として買物客数は対前年比で日平均 350 名増えている
が、この増加に、元気モールが貢献していると評価している。
・ 実際に元気モールの周辺の店舗の売り上げが、元気モール開設以来増加している。
・ 最も高く評価できるのは、様々なイベントを数多く実施されていることである。
また、これをいろいろなメディアが取り上げ、元気モールも自ら宣伝をしている。
・ ジャスモール側では経費をかけておらず、既存のテナントでは考えられない活動
である。
・ また、社会的に意義のある活動を行っている場所ということでの評価も得られる。
・ 大きなイベントでなくても、コンスタントに何かしらを実施してもらうのはあり
がたい。 客にとっては少しでも見所が増えることが来場要因になったり、滞留
時間の増加につながる。
・ 集客ということでは、仮設住宅にチラシを配布してくれたことも大きい効果があ
ったと推察される。イオンで食料品等を購入するだけであった人が、地元の専門
店街に足を運ぶきっかけとなっている。
414
②行政による予算措置
全国各地で、“高齢者サロン”の価値が認められ事業補助などが行われている。
・京都市
京都市では、高齢者が自由に交流できる「地域の居場所づくり」に向け、集会所や商
店街の空き店舗などを高齢者サロンとして開放する団体や住民に、開設経費や賃料を補
助する制度を設けている。
市内在住の 65 歳以上の高齢者が集えるサロンを 2 週間に 1 回以上、無料で開所する
住民や団体に対し、開所日数に応じて賃料や光熱水費を年間 7 万円まで補助している。
・名取市
名取市では、高齢者ふれあいサロンを設置し、ふれあい事業を行う市民団体に対し、
高齢者ふれあいサロン事業助成金を交付している。
土地又は家屋の賃借料、施設使用料に相当する額として、1 施設ごと月あたり 60,000
円を限度として交付。
光熱水費に相当する額として、1 施設ごとに月あたり 10,000 円を限度として交付。
運営費に相当する額として、1 施設ごと事業を行った 1 日当たり 2,000 円とし、1 月
あたり 10,000 円を限度とする。
以上の合計で、最大月 80,000 円が助成される。
・久留米市
共生型サービス事業費補助金として、高齢者と障害者、子どもとの共生型サービスの
整備について、地域住民・地域活動団体等と協力して取り組む事業者に対して、立ち上
げに要する費用として、補助限度額 300 万円、補助率 4 分の 3 の補助を行う。
5)
その他の収入確保方策
①クラウドファンディング
近年、資金調達の手法において、多数の個人から、広く薄く調達を図る「クラウドファンディ
ング」が注目されている。同手法の具体内容はプラットフォームの役割を担う企業等により異な
るが、一般的には、新規事業を行いたい主体が事業の魅力をインターネット上で PR し、それを
閲覧したユーザーが賛同すれば、当該主体が予め設定したメニューに従った寄付等の申込みを
WEB サイト上で行うという形となっている。
また、この寄付等の形態は、大きく「プロジェクト成功時に金銭が支払われる“投資型”」、「プ
ロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う“購入型”」そして「リタ
ーンのない“寄付型”」の 3 種類に大別される。
本手法の活用を図る事業の中には、被災地における事業も散見されているが、資金調達状況(目
標額達成率)を見ると、必ずしも多くの事業が円滑に進んでいるわけではない現状が伺える。ま
た、被災地以外の事業の中に埋もれてしまう危険性も少なくないことが見受けられる。
なお、本手法による資金調達の多くは、事業の初期投資費用に対する寄付等であり、その意味
では「一時点」における支援であるが、一部にはプラットフォーム企業を介さずに独自の WEB
サイトにおける「継続型の寄付プログラム」を導入している事例もあり、本事業においても非常
に参考にできるものと考える。
415
②消費者参加型応援金制度
・寄付金付ゴルフプレイフィー
栃木県栃木市のあさひヶ丘カントリークラブは、震災後、寄付金付プレイフィーを設定し、
通常のプレイフィーを 1 割値引きした上で(企業努力)、500 円の寄付金と 500 円分の商品引
き換え券を付けて販売。
商品引き換え券は、クラブハウスにおいて被災地の産品の販売コーナーを設け、そこで商品
を選べるようにしている。
この結果、寄付金の合計は、年間で 1 千万程度となった(約 2 万人の人がこれを選択)。
子ども達のために、目に見える形で役立てたい(会員への説明がしやすいように)とのこと
で、はらまちクラブに相談があり、線量計 150 台(6 万円程度のもの)と現金 100 万円を、南
相馬市に寄贈している。
以上のように、目的を明確化して商品代金に上乗せ(実際には、コスト削減などの努力をし
た分を利益にまわさず、CSR として供出している)する形で、消費者参加型の支援を展開する
方策がある。
(2)
1)
在宅ケアサービス
人材の確保
看護師など協力者の資格を限定せずに、ヘルパー資格者や理学療法士など協力者の範囲を広
げることで対応可能であると考える。対象者のニーズに応じて、適切な担当者を振り分けるこ
とで、より多くの人を受け入れられるようにしたい。
また、在宅でのケアだけでなく、出歩けるような状態の対象者であれば、元気モールや近隣
地域のサロンへの参加も促すなど、自立のための努力も勧めることで、全体の負担を低減化し
ていくことも必要であろう。
有償ボランティアと訪問看護ステーションの経営を合わせて、引き続きサポート体制を構築
することも必要となってくる。
マネジメントのノウハウ提供については、今後事業化後のサポートともに実施していく予定
である。
2)
利用者の確保
①情報が到達しにくい環境
地域内に広く告知できる媒体が限られている現状では、知人の紹介や人の集まる場所での説
明の機会を得ることが重要になる。いわゆる口コミの活用である。本事業では、ヒアリングを
通じて、多くの生活支援を行っている方々とのネットワークを構築することができた。そうし
た方々と連携を進め、広く告知できるような体制をつくることが必要となっている。
一方で、ニュースリリースの発行や、チラシなどの折り込みなど、メディアの協力を得て、
少しでも多くの方に情報が届くようにすることも重要であると考えている。
416
②地域住民の介護への意識
介護認定を避ける風潮については前述の通りであるが、逆の発想をするとそのような方々に
とっては、本事業で進めるような保険適用外のサービスであれば、
「認定」される必要がないた
め受け入れる余地があるということになる。実際に、本人が介護認定をされるのをいやがって
いても、家族は介護認定を望んでいるケースがあり、保険が適用されない有料でのサービスで
あっても提供してほしいという声も聞かれている。
また、今回モニターとなった家庭では、介護保険の手続きが煩雑だと思い込み、本人は介護
認定を渋っていたが、訪問した看護師が書類の作成方法や手続きについて説明すると、理解を
得ることができ、介護保険の認定手続きに入ることとなった事例もある。
介護サービスそのものへの意識改善においては、上記①のようにメディアからの発信を通じ
て信頼性を増すような手法や、今回築いたネットワークの方々と協力して、日帰りのサロンや
説明会を開催するなどの手法により、理解度を上げていく地道な活動が必要となると考えてい
る。
3)
サービスの提供内容・価格
提供内容や価格については、活動の核となる組織を小さくして、コストを抑えることで、ニ
ーズにあった金額に設定できると考えている。例えば一ヶ月で介護保険を限度いっぱいに使っ
たとすると、自己負担の金額は約 35,000 円前後となっている。これは、1 時間あたりの利用料
を 1,000 円に設定した場合に、一ヶ月毎日一時間のサービスを受けるのと同じ程度の出費であ
る。当然、利用者による状態の違いを考慮しなければならないので、これ以上の金額設定も想
定される。また、一ヶ月単位の会員料金設定なども検討が必要となる。
本調査のモニターからは、
「一時間 1,000 円以上支払ってもよい。毎日来てくれると助かる」
「血圧測定と声がけ程度であればワンコイン(500 円)が妥当であろう」などという声が聞か
れており、提供内容ごとに異なった価格設定は必要となるが有料化に対する抵抗感は感じられ
なかった。
3.2.5.2.6.3
事業化に向けたフィードバック
「元気モールサービス」「周辺サービス」「在宅ケアサービス」のいずれにおいても、前述
の課題をもとに、サービス提供内容を検討し、今後の事業活動に反映していく。また、サービ
ス内容やスキームについては、逐次検討し改善を加えていくことになっている。(詳細は 3 章
に示す)
417
3.2.5.3
結果分析
3.2.5.3.1
元気モールサービス
3.2.5.3.1.1
(1)
事業の成果とその成功要因
利用状況の視点から
【成果Ⅰ:存続を望む多くの声】
リピーターの来場者のみならず、自治会長、行政関係機関、さらには市内の医師からも、元
気モールの継続を望む多くの声が寄せられた。このことこそが、今年度の最大の成果であると
言える。
【成果Ⅱ:想定を上回る利用者数】
元気モールサービスは、オープニングイベントにおける「こういう場所が欲しかったんです
よ、私たちは!」という南相馬市老人クラブ連合会会長(来賓)からのお声とともにスタート
した。
約 6 ヶ月間の運営の結果、登録会員数は、当初 300 名想定に対し、その 3 倍以上の 925 名も
の会員登録、累積で 4,545 名もの利用を達成した。
また、2 回以上来場した「リピーター」は、359 名(全登録会員数の約 4 割)にも上り、当初
想定した登録会員数(300 名)の目標を上回った。
【成果Ⅲ:男性利用者の多さ】
震災後、仮設住宅団地等で行われる高齢者サロンや運動教室の参加者の性別をみると、男性
の参加者は少なく、定量的なデータではないが概ね 10~20 名に対し 1~2 名程度であることが
多いと聞く。実際、これらの運営者に対するヒアリングの結果、中高齢の男性の参加を促すこ
とが難しいという意見が得られた。
これに比べ、元気モール利用者の約 3 割(リピーター層でも 26%(94 名)
)が男性であった
ことも特筆される成果である。
【成果Ⅳ:元気モールコミュニティの創出】
運動プログラムの参加者の多くが、教室終了後にも会場に残り、スタッフを中心として会話
を楽しんだり、グループでレクリエーションに興じたりしている。クリスマスなどには、ミニ
パーティーに参加し、子どもに帰ったように仲間との会話やゲームを和気藹々と楽しんでいる
姿が見られた。スタッフとの良好な関係性だけでなく、利用者同士の仲間づくりが進んだこと
も成果である。
同時に、イベントや、各種教室の運営に携わるボランティア希望者が多かったことも、本事
業の成果といえる。
以上より、今年度事業で提供した「お茶とおしゃべり、軽い筋トレ」サービスに対するニー
ズが当初の想定以上に高かったこと、および、これらのサービスを提供する場におけるコミュ
ニティ形成に効果があったことが分かった。
以上の成果に関する成功要因としては、主に以下の 5 点が考えられる。
418
■成功要因Ⅰ:被災地域のニーズに合致した場の創出
多くの被災者が心壊れ、藁をも掴む思いで人と繋がる場を求めていた。今年度事業では、そ
のような被災地域のニーズに応えることができる場の創出、空間の演出ができたことが、成功
要因の一つとして考えられる。
■成功要因Ⅱ:利用しやすい・したくなる「立地」
「元気モール利用者の来場方法等に関するアンケート調査」で前述したとおり、
「自分で運転
する自動車」での来場者が全体の約 7 割である中で、駐車場容量が大きく駐車も容易な「ジャ
スモール」内でサービスを提供したことが成功要因として考えられる。
関連して、
「今日のお出かけの一番の目的」として 9 割以上の方が「元気モールに来ること」
と回答している一方、約 4 割の方が「元気モールの後、ジャスモールで買物をしていく」と回
答していることから、食料品を含めて日常の買回り品のあるジャスモール内という立地が、元
気モールの利用を日常生活の中により溶け込みやすくし、その魅力をさらに実感していただき
易くしたものとも考えられる。
■成功要因Ⅲ:
「第 3 の居場所・テーマコミュニティ」の効果
今年度事業では、運動プログラムとしての「ゆる体操」
「貯筋運動」などのほか、編み物など
のカルチャープログラム、介助講座などのセミナープログラム、口腔ケアなどといった多様な
テーマのプログラムを提供している。
従来からの「地域」という地理的な枠組みから構成される自治会などのコミュニティが崩壊
した被災地において、上記のような多様なテーマを気軽に利用できる環境に惹き付けられてで
きた「テーマコミュニティ」の形成もしくは再建の場となったことが、成功要因として考えら
れる。
この点は、
「元気モールを知ったきっかけ=サークル」とした利用者のリピート率が高いこと
からも、震災前からはらまちクラブやその他の運動やレクリエーションの団体(サークル)に
参加していた人が同様の場を求めた効果があらわれたものと考えられる。
特に、単なるお茶の場やおしゃべりの場だけでなく運動プログラムや、同性(男性)会員に
よる趣味の教室の時間などがあったことが、男性の参加率の高さに結びついたことも考えられ
る。
■成功要因Ⅳ:
「いつ来ても、いつ帰ってもいい来場型」のサービス提供
被災地では、仮設住宅などに出向いてサービス提供を図る、いわゆる「訪問型」の支援が少
なくないが、震災から間もなく 2 年が経過しようとする時期になり、このような「訪問型」の
支援を望まない住民も増えてきていると推察される。仮設住宅等の居住空間では、従来の暮ら
しのペースを取り戻し、
「普通に暮らしたい」
「静かに暮らしたい」という声が出ていると聞く。
住民の健康管理のための医療関係者による訪問型の事業においても「住民が顔を出してくれ
ない」という状況にあると聞く。
419
一方、今年度事業は「訪問型」ではなく、また特定の仮設住宅内でもない、日常の買い物等
に出かける場における「来場型」のサービス提供の形を採ったことで、被災住民の日常生活の
中で、自分の気の向いた時に参加(来場)できるものとして支持されたことが推察される。
震災から時間が経つにつれ、上記のような被災住民の感情は強くなり、本事業のような「来
場型」の場づくりが、成功しているものと考えられる。
■成功要因Ⅴ:スタッフのホスピタリティ
以上のように来場型のサービス提供の場で参加者が増加し、コミュニティが醸成されていく
のは、来訪者を迎え入れるスタッフのホスピタリティに負う部分が小さくないものと思われる。
地元の住民であり自らも被災者であるスタッフが話し相手になることで、安心感や共感を持
てたこと、信頼感を得られたことなどが、大きな成功要因と考えられる。
(2)
健康状態等の視点
【成果Ⅰ:心身の健康状態】
アンケート結果からは、多くの方に変化がなかった。
対照値をとっていないため一概には比べられないが、厚労省が被災地の宮城県石巻市雄勝、
牡鹿の両地区で行っている調査では、自分の健康状態を主観的に「とても良い」
「まあ良い」と
捉えている住民の割合は、調査を重ねるごとに低下傾向にあり、特に 75 歳以上の女性では、震
災から 3~5 ヵ月後に行った第 1 回調査では 75%であったのに対し、1 年 8~9 ヵ月後の第 4 回
調査では、62%にまで下がったと報告されている。特に原発事故の影響を強く受ける相双地区
では、避難先での暮らしの長期化や将来への不安から、当該調査結果以上に、健康状態が悪化
傾向にあると推察される。1000 年に一度という震災から近く 2 年が経過し、3 年目に入ろうと
いう現段階は、問題の長期化・将来への不安等の高まりもあり、非常に厳しい状況に入ってい
るものと考えられる。
このような中で、元気モール参加者においては、心の健康チェックの結果に大きな変化が
見られないことは、悪化の推進を食い止めていることを表しており、一定の成果をあげている
ものと評価できる。
【成果Ⅱ:体力、筋力の向上】
体力測定結果からは、ほとんどの方で筋力の低下はみられず、維持もしくはわずかに改善で
あった。
12/25 にご講演いただいた鹿屋体育大学福永学長によれば、通常の生活を送っているだけでは、
50 歳を過ぎると年に 1%程度、筋力の低下(脚部)が認められ、これを防ぐために、貯筋運動
等を毎日行うことが大切であるとのことであった。
元気モール半年間で筋力の維持が図られたことは、運動教室の効果があったものと考えられ
る。
他地域の貯筋運動教室等では、3~6 ヶ月の教室で筋力の向上が認められている。このような
教室では、教室に集まるのは週 1 回程度の頻度であるが、参加者には、毎日実施するように促
420
している。福永学長の講演でも、何もしないで寝たきりの日が1日あると、それだけで筋力は
0.5%低下するとの研究成果の紹介があった。
元気モールに来場した時には、貯筋運動などの運動に取り組んでいるが、来場しない日の過
ごし方などは指導しておらず、成果が出にくかったことも推察される。
■成功要因Ⅰ 運動教室
これまであまり日常的な運動習慣が無かった参加者に、貯筋運動やラジオ体操など各種の
健康運動への参加を促したことの成果であると考えられる。
運動教室の実施の際には、アイスブレークとなる軽い準備運動を入れるなど、初めての方
でも参加しやすい状態を、スタッフが作り出していたことも貢献しているものと考えられる。
■成功要因Ⅱ おしゃべりや各種イベントの時間
運動教室だけでなく、おしゃべりをする相手がいること、自分の特技を披露したり、他の
人に教えたりする活躍の場ができたことで、心にはりあいができ、心理状態を維持できている
ことが推察される。
3.2.5.3.1.2
(1)
1)
事業実施により明らかとなった課題とその原因と解決策
顧客ターゲットやニーズに関する点
医療・介護サービスの自己負担免除
【課題と原因】
現在、本市では医療・介護サービスの自己負担が免除されている方々がいる。
元気モールで提供するサービスは、本来、医療・介護サービスとはマーケットが異なるが、
医療・介護を始めとした様々な保健・福祉関連のサービスが自己負担無しで利用できる中で、
元気モールの有料化に際して、ある程度以上の金額になると心理的な抵抗が生じることが懸念
される。
【解決策】
医療・介護サービスの自己負担免除措置は、今後見直されていくものと思われる。
しかしそれを待たず、
「具合が悪くなったら病院に行けばいい」という考えから、「もっと
元気になろう」ということに、自己投資が必要であることについて意識啓発を図っていくこと
が大切と考える。
2)
居住地域(広域への対応)
【課題と原因】
会員登録情報に基づきリピーター層の居住エリアを分析すると、男女とも約7割の方が、元
気モールが立地する原町区の方であった。交通手段の 9 割弱が自家用車(自分で運転もしくは
家族や知人の運転)であるにも関わらず、近隣地区が多かったのは、日常的に出かける範囲の
中でのニーズが高いためであると推察される。
421
類似の被害を受けている市内および周辺地域の高齢者に本サービスを提供するためには、元
気モール一箇所ではなく、各地にこのようなサービス提供の場を展開することが必要となる。
【解決策】
本事業で得られたノウハウを参考として、各地で類似した取組みをサテライト的に展開して
いくことが解決策として考えられるが、人材と資金、場所の確保が課題となる。
3)
自動車を利用できない高齢者への対応
【課題と原因】
前述のとおり、利用者の 9 割近くが自動車を利用している。徒歩や自転車はそれぞれ 5%程度
であり、公共交通機関であるバスやタクシーはほとんど見られない。
震災以前から、公共交通の衰退が指摘される本地域であるが、震災によりさらにその状況は
悪化し、現在も回復していない。
本事業でも送迎サービスの提供を試みたが、関連事業者との調整や、買物が主目的の利用と
の整合、将来的な採算性などの観点からサービス提供を中止している。
【解決策】
市では、今年度からオンデマンドタクシーの運用に関する検討を開始したところであり、今
後、自動車(自家用車)を利用できない高齢者への対応においては、これらの市の取組みと連
携を図りながら、対応を図っていく必要がある。
また、ショッピングセンターとの連携した買物バスなどの運行も解決策の 1 つとなると考え
られる。
4)
独居高齢者
【課題と原因】
事前調査において指摘されている一般家屋の独居高齢者(震災の影響で独居になってしまっ
た方)で自動車の運転をあまりされない方の利用促進が課題として残されている(現在、該当
する方々がどれくらい地域にいるのか、実数は不明である)
。
元気モールの情報提供を行うほか、対象者のニーズ把握を進め、来場しやすい環境づくりを
進めることが必要である。
【解決策】
解決策としては民生委員や行政の訪問活動などと連携し、訪問型サービス提供と来場型サー
ビス提供のミックスした被災地オリジナルのサービス提供体制を構築することが考えられる。
5)
行政との連携
【課題と原因】
元気モールのようなサービス提供について地元自治体との連携がまだ十分に進んでいない原
因として、震災後の非常事態の中では、医療提供体制の回復、充実に注力せざるを得なかった
ことや、プライマリケアの重要性について国内ではまだ十分に広まっていないことが課題とし
て考えられる。
422
【解決策】
本年度の成果をもとに、医師会や市役所との協議を進め、心と体の介護予防事業としての役
割を明確にし、一部公的な予算措置について検討を進める。
6)
仮設住宅支援との連携
【課題と原因】
仮設住宅には、公的な活動のみならず、全国から様々なボランティア活動などが入り、充実
した支援活動が展開されたが、一方で仮設以外の借り上げ住宅や自宅に残された高齢者等への
支援が十分に行き届かなかったという指摘がある。
また、仮設住宅では、参加者が減少し支援の効率が低下しているという状況もおきている。
人が集まるところで支援活動をすることが効果的と考えられ、わかりやすい窓口が仮設住宅と
考えられたことによると推察される。
【解決策】
今回のような大規模な災害への対応は、初めての経験であり体制が整わなかったことはしか
たなかったことと思われる。
仮設住宅においても自治会組織などが設立されてきていることから、市内で活動する各種
NPO などと自治会が連携し、行政機関等も交えて協議する中で、仮設に偏らなないとともに、
仮設住宅においても効果的な支援が実施されるように調整していくことが今後の対応として必
要である。
(2)
1)
コストや収益性に関する点
コスト
【課題と原因】
人件費と賃料の削減が課題である。
【解決策】
解決策として、人件費は、ボランティアスタッフの拡充により削減を図ることが考えられる。
ただし、チーフ的役割のスタッフについては、品質を継続して維持していくために、常勤の有
給スタッフとすることが望まれる。
賃料については元気モールの社会的意義や、アンケート結果でも示されている買い物客の誘
客効果等をもとに、貸主に賃料の縮減を求めることが考えられる。
2)
収益性
【課題と原因】
「元気モールの継続に向けたアンケート調査」で前述したとおり、回答者のほぼ 3/4 の方が「有
料でも利用したい」との回答であった。さらに利用料の負担の仕方については「年会費」「月
会費」「都度払い」の 3 パターンそれぞれに希望する旨の回答が得られたが、参加者によって、
主な支払い価値を「運動プログラム」においている人や、「おしゃべりのできる場所」におい
ている人など、ニーズが分かれていることがわかった。
423
これらのサービスの収益性を、類似する既存サービスを参考に整理すると次表の通り考えら
れる。
元気モールのサービスを、既存のサービスで代替して整理すると、有料のものと無料のもの
が混在していることがわかる。従来行われてきた公共的サービスを含むことから、利用者が有
料化をイメージしにくい。利用者の元気モール利用の主な目的が、多岐に渡っていることから、
その目的によって有料・無料のイメージが異なっている。
フィットネスジムや喫茶店等と比較すると、専用スペースや美味しい飲み物があるわけでは
なく、パブリックな空間のイメージもあることから、個々のサービスごとに既存事業と比較を
すると、受益者負担による採算性の確保を求めることは難しいと考えられる。
一方で、社会的には、これらのサービスは分化しており、元気モールのように総合的に提供
される施設がないとも考えられ、市民からの期待は小さくないことが、利用者数等からも示さ
れている。
新しい複合サービス拠点として、利用料の徴集を検討するとともに、パブリックなサービス
部分を、利用者全体で支えるか、公共的な資金や企業 CSR などのほかの収益源を確保すること
が課題となる。
表 3.2.5-24:提供サービスと既存サービスの比較
元気モールのサービス
参考となる既存サービス
受益者負担の考え方
フィットネスジム
ジャスモール内のクイックネ
スフィットネス
月会費 4,000 円~程度
公民館等の教室
無料~数百円/回程度
病院等
現在無料
包括支援センター等
無料
喫茶店等
100~500 円程度
傾聴ボランティア
無料
運動プログラム
健康管理、健康相談
休憩のできる空間の
提供(お茶付き)
話し相手(スタッフ)
の提供
自主サークル
その他の各種イベント、
教室等の提供
カルチャーセンター
無料~数千円/月
数千円/月
【解決策】
「利用料収入(受益者負担)」について、今年度事業では実際の利用料を徴収していないが、
都度払いとして 1 回 500 円程度、月会費として 3,000 円程度とする可能性が感じられた。
特に、月 3,000 円の会費は、他地域の総合型地域スポーツクラブにおいて有料で貯筋運動教
室を実施している例に比べて同程度かやや高い水準となる。一方で、市内で展開しているトレ
ーニングマシンを有する簡易なフィットネスジムの会費 4,000~5,000 円/月と比べると低い水
準となる。
424
元気モールは、
「3.2.5.2.3.4.(2).7).②.4 会費の価値」において利用者目線からも一定確認できた
とおり、種々のサービスを複合化して提供することに特徴のある新しい形態の事業であるが、
このことを前提に、
・総合的なサービス提供に利用料金をいただくこととする。
・サービス提供時間帯によって利用できる会員に種別をつくる。
ことなどが方法として考えられる。
以上のような方法により、公的サービス部分について、企業や行政他からの支援・応援等を得
ながらも、一部は受益者負担を図っていくことで収益性を改善するものとする。
(3)
事業性確保等に関する点
【課題と原因】
上記の「3.2.5.3.1.2.(2)コストや収益性に関する点」を踏まえた上で、サービス提供の有料化
のみによる事業性の確保を考えることは、関連産業との連携による収入確保が困難な状況や、
リピーター数及び「元気モールの継続に向けたアンケート調査」の結果を勘案すると、残念な
がら厳しい見込みとなる。
関連産業の市場が回復していないこと、働き手が不足していること、医療・介護費等の本人
負担がゼロの中で、有料サービスへの心理的抵抗が大きいことなどがその原因である。
賃料
元気モール運営事業
モール内売上げ
人件費
支出
コミネッツ
情報提供事業
モール外売上げ
(
コミネッツ協力金)
雑費
労力
収入
南相馬市の
現状では、
事業展開は
時期尚早
ソーシャルビジネスの
利益で賄う
パブリックなサービス
傾聴
相談等
受益者負担で賄う
サービス
運動指導
お茶提供
健康管理
趣味時間
等
サービス
図 3.2.5-11:当初想定した事業収支と現状の課題
【解決策】
そこで、被災地の復興に向けた取り組みを、被災住民自らが行う本事業の意義等を踏まえ、
利用者以外の方々による「
(仮称)応援金(非受益者負担)」の活用や、公的サービスを支える
助成金・補助金を活用した事業性確保が考えられる。
425
雑費
応援金
賃料
元気モール運営事業
補助金
人件費
社会的資金により
賄う
パブリックなサービス
モール内
売上げ
受益者負担で賄う
サービス
労力
収入
傾聴
相談
健康管理
等
運動指導
お茶提供
趣味時間
等
サービス
図 3.2.5-12:当面の事業収支の考え方
1)
個人・団体参加型応援金
「応援金」の主たるターゲットとしては、以下のような方々を想定する。
○ 震災の記憶が風化することに不安感を抱いている方々
○ どこに使われるか不透明な募金には抵抗感がある方々
○ 自らの応援(支援)効果を実感し続けたい方々
(仮称)応援金募集方法の具体的な内容としては、継続型の寄付プログラムを、既存のプラ
ットフォーム企業上ではなく、本事業のホームページを活用した独自の WEB サイト募集の形に
よるクラウドファンディングにより、全国(引いては全世界)の人々から、被災地への継続的
な応援という意思と共に、資金を調達することが考えられる。
なお、当該資金調達に要する入金等の管理システムについては、主なオンライン寄付サイト
(ファンドレイジング・ツール提供サイト)における手数料が寄付金額の約 15%以上である中
で、相対的に低コストである主体のシステムを活用することが考えられる。
当該システム活用時のコスト負担割合について試算した結果を、参考までに以下に示す。
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
16.0%
13.8%
11.2%
16,740
14.0%
10.5% 10.2% 10.0%
23,535
30,540
37,335
9.9%
44,340
9.7%
51,135
9.7%
58,140
4,016
10,365
300
75,000 150,000 225,000 300,000 375,000 450,000 525,000 600,000
12.0%
10.0%
8.0%
6.0%
4.0%
(仮称)応援金(円/月)
(仮称)応援金管理費(円/月)
(仮称)応援金に占める管理費割合(%)
図 3.2.5-13:採用候補システムの管理費負担割合
また、募集方法については、WEB のほか、以下の取り組みも検討できる。
426
○ 「めぐりあい特派員※」による募集活動
○ SNS を活用した募集活動
○ 各種講演会の際の募集活動 など
※ NPO 法人はらまちクラブにおける震災後の独自の取り組みとして、全国各地に散らばっ
た南相馬市の方々へ、同法人が定期発行するおたより「めぐりあい」を届ける特派員が約 70 名
活動している。
2)
消費者参加型応援金制度
消費者参加型応援金制度への参加を、これまでの活動で縁のあった企業や商店に依頼する。
3)
補助金・助成金の積極的な活用
本事業の公益的特性から、特にコストの多くを占める人件費への補填という側面から雇用支
援関連の事項に着目しつつ、補助金・助成金の積極的な活用を図る。この点は、特に事業が軌
道に乗るまでの事業開始早期に必要な対応と考えられる。
(4)
体制面に関する点
上記の「3.2.5.3.1.2.(2)コストや収益性に関する点」における人件費に関する補足となるが、
現在の南相馬市においては、有効求人倍率が約 1.2 倍と求職者の確保が極めて難しい状況下にあ
り、今後、スタッフの増員等を検討する際の課題となることが想定される。原因としては、被
災に係る補償の問題や、現在も続く支援物資の支給などが考えられる。
この点については、元気モール利用者の中からボランティア希望者を募るなど、従来の人員
確保の枠組みに捉われない形での対応を講じることが、解決策として考えられる。
427
民間事業者による周辺サービス
3.2.5.3.2
3.2.5.3.2.1
事業の成果とその成功要因
今年度事業として、
「元気コミネッツ設立」を目的とした周辺サービスを担う民間事業者対象
の事業説明会を開催し、多様な業態の計 10 社の参加のもと、今年度事業の内容等について周知
する機会を得ることができた。
その上で、前述の求職者不足等を主な原因として、当該民間事業者におけるマンパワー不足
が極めて深刻な状況にある実態を把握することができた。
この実態は、経済の復興には、それに先立って住民の心の復興が重要であるという、今年度
事業の実施に際しての重要な仮説を実証するものでもある。
この成果が得られた成功要因としては、市内の関連しうる民間事業者に対して広く広報を行
った上で、全事業者が「車座」になり、今年度事業の説明をはじめ、各々の現状と心境を忌憚
なく意見し合える場を創出したことが考えられる。
3.2.5.3.2.2
事業の実施により明らかとなった課題とその原因と解決策
今年度は、民間事業者の深刻なマンパワー不足に加え、周辺サービス展開の核となる元気モ
ールサービス自体の実績もない状態であったことから、残念ながら具体的に民間事業者と連携
し、周辺サービスを提供するには至らなかった。
この点については、今年度実施した元気モールサービスの実績を示すことで民間事業者にと
っての不透明感を解消するほか、被災住民の元気を取り戻すことによる労働意欲の醸成、その
結果としての民間事業者のマンパワー不足の解消といった、ある程度長期的な目線からの解決
策を講じることが考えられる。
428
在宅ケアサービス
3.2.5.3.3
事業実施の成果とその成功要因
3.2.5.3.3.1
(1)
1)
成果
看護師の掘りおこしと受け入れ体制の確立
地域に看護師がいないとささやかれる中でのスタートであったが、スケジュール的には若干
の遅れがあったものの、1 名の看護師が名乗り出てくれたことで、順調なスタートが切れたと言
える。その看護師のネットワークから 3 名の協力者を得ることができ、利用者の受け入れ体制
が作れたことが最大の成果である。
また、最初に申し出てくれた看護師は、本事業の趣旨に触発され訪問看護ステーションを立
ち上げる事となった。これにより、保険認定を受けた方へのサービス提供と、保険適用外もし
くは介護保険の認定を受けていない方々へのサービス提供を両輪で進める事ができるため、事
業の継続性にも有益なものとなっている。
なお、協力者 3 名は、フルタイムでの勤務が難しいため、基本的にはボランティアスタッフ
として今後の協力を得ることとなっている。柔軟な雇用体系であれば、協力できる潜在看護師
がいるとわかったことも収穫である。
子育て中の看護師などは子育てが一段落し、復帰する際には看護師業務の空白期間があるた
め不安を持つケースがあるが、本事業でボランティアスタッフとして受け入れることで、社会
復帰のための橋渡しができる。これは、将来的な看護師の復職支援につながり、復興のための
一助になると考えている。
2)
地域内での協力体制の構築
ニーズ調査のヒアリングを通じて、地域でボランティア活動を続けている方々とのネットワ
ークを構築できたことが挙げられる。
ヒアリングで対象者を選定する際に、仮設住宅の自治会長やボランティア団体の代表者など、
コミュニティやネットワークの核となる人物を通じて依頼しているため、その方々とのネット
ワークが構築できている。ヒアリングを依頼する際に事業について説明し、趣旨を理解してい
ただいているので、今後の事業推進にあたっても、協力を依頼できる可能性が高い。『サービ
ス事業化に向けた調査』の際には、利用者の紹介を受けていることもあり、今後の連携をうま
くとっていくことが事業の継続にとって肝要である。
また、最初に申し出てくれた看護師がもともと南相馬市立総合病院に勤務していたため、病
院からは退院患者への在宅ケアを必要とする家庭の紹介も受けられることとなっている。
3)
調査により様々なニーズが確認できたこと
地域内での医療・介護サービスは疲弊しており、在宅でのケアの必要性が高いことを明らか
にすることができた。これは、当初より認識されていたことではあるが、一方で、介護保険認
定を受けたくない方のニーズなど、予想していなかったニーズも把握することができたことが、
本事業の収穫であると考えている。
在宅のケアにおいては、24 時間 365 日の対応が求められるとする意見もあるが、今回のヒア
429
リングでは、ほんの一時でもケアの手を必要とされている方々が多くいるという印象であった。
一時の安心を求める傾向は、津波や放射能によって引き起こされたコミュニティの崩壊や家族
の崩壊により、より顕著になっている印象を受ける。一方、津波や放射能の影響のない方から
も、必要なサービスであるという声があった。
なお、今回把握できたニーズは以下のようなものである。
①
退院時の在宅ケアニーズ
退院後の家族のケアは、どの家庭でも悩ましいものである。特に、現在の南相馬では受け入
れ病床数の不足により、入院患者の受け入れが厳しいために、震災前に比べて早期の退院を要
請されるケースがある。その際に自宅に出向いて家族の不安を取り除いたり、在宅でのケアの
ノウハウを伝えたりする役割が期待されている。
本事業内では実際に 3 名の紹介を受けている。
②
レスパイトを求める方々の在宅ケアニーズ
介護施設の入所待ちの家族を抱える家庭や、施設が被災したために障がいを持つ家族と同居
している家庭が増えている。また、放射能からの避難でそれまで家庭内で要介護者の面倒を見
てくれていた家族が避難してしまい、要介護者が一人で暮らしているという例もある。特に仮
設住宅では、狭い上に壁が薄いため、介護をしていることで、隣近所に迷惑をかけているとの
意識があり、精神的にも負担が大きい。こうした状況下では、介護疲れによる共倒れも懸念さ
れる状況にある。「たとえ一時であっても息抜きをしたい」という方々のニーズは強いと思わ
れる。
③
要介護認定拒否者の在宅ケアニーズ
介護認定を拒む方の話はいくつも聞かれた。この地域では、『人の世話になることを良しと
しない』、『介護認定されることが恥ずかしい』という風潮があり、家族にとっては大きな負
担となってのしかかっている。一方で、介護認定を受けずにケアできるのであれば、受け入れ
てくれる高齢者もいるため、そうした高齢者の面倒を見ている家族からのニーズは高いと推測
される。
④
通院が難しい状況にある方のニーズ
病院が混み合っており、朝受付を済ませても、受診できるのは夕方 4 時ぐらいになるのが通
常で、弁当を持って通院しているという話も聞かれた。通院自体が苦痛になりあきらめてしま
う方もいると予想されるが、そうした方の見まもりニーズもあると思われる。また、震災前ま
で通院の付き添いに来てくれていた家族が、放射能からの避難でいなくなってしまい、ひとり
でタクシーなどを使って通っている方もいた。こうした方のニーズもくみ取っていけると考え
ている。
⑤
高齢者の見まもり、傾聴ニーズ
家族や周辺の家が避難してしまい、高齢者の一人暮らしで、完全に孤立した生活している方
もいた。そうした方の家族からは、高齢者がひとりで暮らしていると心配であり、見まもり・
430
声がけや、話し相手になってくれると助かるといった声が聞かれた。小さな子どもがいたり仕
事の都合があったりして、市内に戻る事のできない家族からの高齢者見まもりニーズは高い。
⑥
市内に戻りたい家族のニーズ
市内の介護施設での受け入れが進まないために、市外に避難して、避難先で介護を受けてい
る方もいる。その方々は、市内で受け入れてくれる施設があれば、自宅に戻って暮らしたいと
いう希望がある。南相馬の復興のためにも、避難した人々が戻ってこられるような受け入れ体
制が期待されている。
(2)
1)
成功要因
看護師の掘りおこしと遊休時間の活用
一般に南相馬では看護師不足と言われているが、その実態がどのようなものなのかヒアリン
グから把握でき、募集方法に反映したことが、成功要因であると考えている。
①
看護師の状況把握
当初は、南相馬では看護師が不足しているという報道状況であったため、市内に看護師がい
ないと認識していたが、ヒアリングを続けるうちに、実際は定年を迎えた看護師や子育て中の
看護師が市内に留まっているという話を聞くことができた。それは、これらの方々が勤務でき
ないのは、病院では定年となる年齢であったり、育児や家族の介護でフルタイムでの勤務が難
しかったりする場合があり、条件が整えば協力してくれる方もいるのではないかという内容で
あった。
②
遊休時間の活用とコアとなる人材の獲得
本事業ではフルタイムの勤務を求めているものではないため、柔軟な雇用形態を準備するこ
とで、これら潜在看護師や保健師を掘り起こせる可能性が高いと判断した。一方、広く声がけ
をすることで、数名の看護師が集まることも予想されたが、知らない者同士が集まることで、
組織としてのまとまりに欠ける懸念があった。そこで、まずは信頼のおける方 1 名を選定する
方針とした。地域内の有識者に相談したところ、GPM 会議のアドバイザーから看護師をご紹介
いただけた(看護師 A)
。
その手順を踏んだ結果として、後日、看護師 A を中心に看護師仲間への声がけを行い、3 名
の協力者を得ることができたと考えている。
2)
意識の共有化
最初の 1 名の看護師(看護師 A)については、打ち合わせを繰り返し、本事業の意義を共有
した上で、事業の実施方法などを一緒に検討したことが、その後の事業のスムーズな展開につ
ながっている。
また、キャンナス東北代表の菅原氏を招き、これまで類似の事業を展開してきた当事者の目
から、在宅ケアの意義についてお話しをいただいたことも、看護師の意識を高め、協力を得る
431
上で重要な事であったと考えている。看護師 A が、訪問看護ステーションの開設に踏み切った
のは、菅原代表の話に感化されたことが大きな要因である。
3)
こまめなヒアリングによるニーズの掘り起こしと調査への協力要請
ヒアリング対象者の属性を当初計画より広くとり、地域内の有識者までを含めたことで、地
域の方々の置かれている状況を多方向から見ることができ、多様なニーズの把握につながった。
また、ヒアリング実施以降、地域の核となる方々とはこまめに連絡をとっているため、信頼関
係も構築できてきている。そうした事が、利用者の紹介につながり、モニター調査を順調に消
化できた要因となっている。
4)
リーダーの育成と低コストでサービス提供が可能な体制づくり
在宅ケアサービスは、施設も必要なく高額な医療機器がなくても提供できる、ソフト重視の
サービスである。そのため、低コストでのサービス提供が可能となる。
また、リーダーの育成に重点を置いたことで、地域に活動の核を作ることができた。これに
よって、1 名の核となる看護師と、空いた時間があれば協力してくれる数名の看護師という体制
を作ることができた。
数名で活動をスタートする場合には、リーダー以外のメンバーは給与をもらえるという意識
が強く働き、自主的に行動することができなくなりがちである。また、人件費などの固定費が
かさむことが懸念される。内部での軋轢も生まれやすく、活動が暗礁に乗り上げてしまうこと
もある。今回のように、リーダーが責任をもって一人でスタートすることで、固定費を抑える
ことができ、継続性・機動性に富んだサービスを提供することが可能になったと考えている。
3.2.5.3.3.2
(1)
1)
今年度明らかとなった課題とその原因と解決策
顧客 ターゲットやニーズに関する点
ターゲットへのアプローチ方法
本調査では被災地での在宅ケアニーズは明らかになったものの、孤立が懸念される住民にア
プローチする方法が確立されていない。これは、被災によって情報網が寸断され、地域コミュ
ニティが分断されている事の影響が大きい。
解決策としては、現状では地道な告知活動以外に想定できず、前述のように構築したネット
ワークを通じた告知や、ボランティア団体と協力してサロンを開催し告知するなどの方法が考
えられる。
また、メディアの力を借りて、チラシの折り込みや、記事化してもらうことによる PR を並行
して実施していくことも検討している。
2)
介護サービスに対する理解の浅さ
地域内での介護サービスへの理解の浅さが、サービス浸透の壁となることが予想される。介
護認定を受けることを良しとしない土地柄であり、また、介護認定手続きの煩雑さによって認
定を見送っている場合も見られた。
432
こちらも、短期的な解決策は見当たらないが、前述のように、サロンを開催したり説明会を
開催することや、口コミなどにより地道に活動を浸透させていく必要があると考えている。
(2)
1)
コストや収益性に関する点
小さな活動であるが故に大きなビジネスとはなりにくい
基本的には有償ボランティアであり、安価での提供が前提となる。そのため、多くの収益は
期待できない。訪問看護ステーションを開設したため、保険適用のサービスと両輪で提供する
ことで、潜在的利用者の掘り起こしを行い、全体の収益性を確保する事を検討している。
2)
保険適用外サービスに関する負担感
介護保険への理解が進んでいない状況は前述の通りであるため、当初はモニターを募集した
り一定期間無償で提供したりすることで、サービスへの理解を進める事が必要となってくると
思われる。
仮に、サービスへの理解を得ることができたとしても、保険が適用されないサービスへの負
担感は相応にあると考えられる。今回の調査では 1 時間 1,000 円~2,000 円程度が妥当なところ
であるとの意見が聞かれている。もっと高くても支払う価値があるとの声もあるが、長期的な
利用となると、負担が大きくなってくる。特に見まもりや傾聴などでは 1 回あたりの利用料設
定は難しいため、月会費や年会費などの設定を検討し利用しやすくすることも必要であろう。
(3)
事業性確保等に関する点
小さな母体で活動できるため、事業性および事業の継続性には大きな課題はないと考えてい
る。一方で以下の活動は継続的に続けて行くことが必要だと考えている。
1)
地域内でのネットワークのさらなる強化
これまで以上に地域内でのネットワークを強化することで、より多くの支援を必要としてい
る方々にサービスを提供できるようにしたい。特に、孤立した高齢者への対策は少しでも早く
しなければならず、地域の方々との一層の連携強化が望まれる。
2)
提供メニューの拡充
生活支援サービスだけでなく、利用者が新たな娯楽や趣味の世界を広げ、生きがいを発見で
きるようなカルチャープログラムなど、提供メニューの拡大を目指したい。
3)
地元事業者との連携
当初計画にあった地元事業者との連携は今年度内では実現しなかったが、在宅ケアサービス
が安定して提供できるようになると、各家庭のニーズに応じた商品の紹介をする機会が出てく
ると予想される。
(例えば、高血圧の方向けの弁当サービスなど)そうした機会を生かし、地域
経済の活性化につなげていきたい。
433
(4)
1)
体制面に関する点
人材の確保による更なる受け入れ体制の強化
現状の体制では、受け入れ可能な人数が限られてしまい、近い将来新規利用者の受け入れが
できなくなる可能性がある。今後は看護資格者だけに限らず、事業の意義に賛同してくれるヘ
ルパー資格者や理学療法士などの有資格者を受け入れ、強い体制づくりをしていくことが求め
られよう。
2)
マネジメント能力の強化
現在のスタッフは現場でのスキルには問題がないが、マネジメント能力が不足している。こ
れは、ずっと勤務看護師であったため経験がないことが原因であり、事業継続の点では大きな
課題となる。今後はマネジメントノウハウを付けるための研修なども実施しながら、強く継続
性のある組織としていきたい。
(5)
1)
その他
安全性に関する事柄
基本的に一人で動くことが多く、事故が発生した場合に責任をとれるのかどうかという懸念
がある。ケアにかかる負担があまりに大きい方からの利用は、事業の主旨を理解いただいた上
で、お断りすることも念頭に置いておく必要があるだろう。
434
3.2.5.3.4
復興を見据えた中での被災地の実態
一言に被災者と言っても、置かれた状況は実に様々であり、それゆえに現状をどのような実
態として捉えるかに関しても、多面的な立場に基づく視点があることに留意する必要がある。
その上で、復興の実現には被災者自らの足で立ち上がることが不可欠という視点に基づいた場
合、被災地の実態の一面について以下のように整理することができると考える。
(1)
行政における情報共有と連携の必要性
被災地では、国・県・市など各々の行政主体が所管となり、類似の取組みが別々に実施され、
内容的には重複しているケースも散見される。それぞれの窓口で違う考えを説明されたり、手
続きが重複していたりと、住民の迷いを生じさせたり効率性の悪さを感じる。
これは、被災者におけるサービスの選択を難しくすると共に各サービスへの信頼性を低下さ
せ、引いては貴重な復興予算・支援が効果的に活用されているのか、真に重要な事項への資源
投下がなされているのかという、不信感につながる。被災地住民は、復興のスピードがより早
まるよう、有限な資源が効果的に投入されることを切に願っており、現在の状態は憤懣やる方
ない気持ちであるとともに、ともすると住民が「行政に何を言っても無駄」という、あきらめ
の気持ちになっていってしまうこともあると思われる。
復興への想いが失われ、あきらめの気持ちが広がることは、実に危険な状態になるものと懸
念する。
(2)
心の分断を招いた支援のあり方
本市は、福島第一原発から 10km 圏内、20km 圏内、20km 圏外という単純な距離区分により
避難や居住制限の対応が異なり、地域が分断された。
さらに、被災の程度や各自がおかれた条件に関わらず、自宅の位置だけで支援の方法・内容
が画一的に分離されたことで、住民内で不公平感が生まれ、これが住民の心の分断も招いてし
まった。
これを解決する手段は、被災者の一人ひとりの状況に合わせたきめ細かなフォローを行って
いくほかないものと思われる。
(3)
経済復興の妨げとなりうる物資支援もある
元気コミネッツの構築を試みる中、関連する事業者から事業継続に向けた不安の声があがり、
実際に事業を中止してしまった方がいた。その声は、
「せっかく頑張ってお店を再開したが、支援物資がいつまでも無料で配られることで、売り
上げが伸びない」ということであった。
3.11 からまもなく 2 年が経とうとしているが、今でも本市の仮設住宅や各施設には、全国各
地から様々な支援物資が届けられる。その気持ちは被災者が全国の方々と繋がっていると感じ
る等と言った精神的な側面も含め、大変ありがたいものであるが、地域経済復興の妨げになっ
ている一面も生まれている。
このように、被災地の復興にマイナス影響を与える可能性をもった支援の原因としては、被
435
災地のニーズが正しく伝わっていない、支援側と被災地側での情報交流の不足が考えられる。
個々の団体や個人間の支援においては、情報の密な交流によりこれが解決するが、問題は通
常時の交流がない地域や団体、個人による支援に多いと考えられる。
今回のような大規模災害に直面することは、多くの国民にとって初めてのことである。今回
の経験を糧に、被災地支援のあり方について国民的理解の向上を図ることを、官および市民団
体等が中心となって進めていくことが必要であろう。
(4)
無料で提供され続ける各種サービス
現在、本市の市民には、医療費の本人負担がゼロである方々がいる。
セーフティネットとしてこの処置を真に必要としている被災者の方々も少なくないが、その
一方で、震災前でも全国で指摘がされていたような安易な受診、通院が増加している原因とも
なっている可能性がある。
元気モールや在宅ケアサービスで取り扱うサービスは、医療機関でのサービスとは異なるも
のであり、本来は比較対象とはならないものと考えられるが、市民の一般的感情から「医療機
関を受診すれば無料であるにも関わらず、なぜ本サービスは有料なのか」や、
「どうせなら医師
に相談しよう」
「医療機関で面倒みてもらおう」といった考え方となることが懸念される。
また、仮設住宅団地の集会室などでは、行政や各種団体から派遣された運動指導者が実施す
る運動教室などが、無料で開催されていることもしばしばある。このため「そのうち無料で参
加できる機会ができるだろう」という考え方に陥りがちになり、医療介護周辺サービスに対す
る受益者負担による利用の課題となる。
1) サービスの差別化
行政やボランティアグループの実施しているサロンや運動教室との差別化を図ると同時に、
元気モールの魅力・効果を再発信し集客につなげていくことが必要である。
2) 行政との連携向上
行政主催の事業にかけている予算や、ボランティアグループの有する資源を、元気モールに
集中し、元気モールにおいて事業を展開することが解決策として考えられる。
(5)
働き手の不足
元気モールスタッフの確保、および、元気コミネッツ参画事業者の確保が課題となった。
本市では、有効求人倍率約 1.2 倍の状況にあり、なかなか働き手が見つからないことが常態化
してきている。震災前、はらまちクラブが公共施設の運営管理業務のスタッフを募集した際に
は、短期間でも多くの応募者があったものの、今回の事業では、ハローワークにおける元気モ
ールスタッフ募集には、1 名のみの応募であった。
本市では、放射能の影響を懸念し市外に避難している子育て世代が少なくなく、働き盛りの
世代が大幅に減少していると言われている。
また、最近では、除染事業や震災復興関連の建設事業など、期間限定ではあるが多くの求人
436
が行われており、若手~中堅世代の働き手が不足している。
補償金の給付は、働く動機の減退に影響していたと推察される。現在は期間が終了している
が事業者への休業補償は、事業を再開し収入を上げた場合には補償が減額される仕組みであっ
たことから、補償金給付期間においては働く意欲を失っている事業者も少なくなかったといわ
れている。
市外避難による働き手の減少については、放射能影響が残る中では、有効な解決策は少ない
と思われる。避難せずに残った市民の働く意欲の向上については、補償金制度のあり方を、今
回の課題を踏まえて再構築することで解決することができると思われる。
(6)
復興への意欲の低下
地域の復興にむけて市民が一丸となって取り組む雰囲気になっていない。また、個人におい
ても、腰を据えて何かに取り組むというのではなく、
「とりあえず」という雰囲気がある。同じ
被災自治体でも、岩手や宮城などと大きく異なる点である。
この原因は、先の見えない原発問題に起因している。行政の対応を含めて様々な暮らしの環
境が、次々に変化する中、例えば住む場所を決めるに際しても「とりあえず」や「しばらくは」
という対応になり、定職や定住地を決める状況に至らないでいる。住民が前向きな気持ちにな
ることが、まずは必要である。住民同士のコミュニケーションの場を増やし、復興にむけて取
り組んでいくための、まずは目の前の目標ややりがいを創っていくことが大切である。
元気モールでは、利用者がボランティアとして講習会を実施するほか、イベントの手伝いの
実施などを奨励している。また、高齢者宅のお手伝いなどを通してコミュニティビジネスが生
まれ、やりがい、生きがい創出につながることも目指している。
単に元気モールの利用者として受身のままに終わらせることなく、気持ちが元気になった人
から、社会参加を果たしていく窓口として機能していくことを目指す。
(7)
にわかに激化した不動産市場
震災により建物が損壊したホテルでは、事業継続を断念する声もあったが、その後、復興関
連事業者の宿泊が増え、市内のホテル・旅館はどこも高い稼働率を示している。このことが示
すように、復興関連の事業者の事務所などのニーズも高くなっており、震災直後の状態と不動
産市場が大きく変化している。
今年度になり、原発の影響により避難生活を余儀なくされている浪江町など浜通りの市町村
の仮設住宅が、南相馬市内に大量に建設されることとなったことや、上記のような事業者のニ
ーズ、さらには、国の各種機関の立地も計画されることとなり、今年度(平成 24 年度)になり
突如土地や建物(借家等)の価格が高騰している。
(8)
忘れられがちな震災起因の独居高齢者
震災ストレスによる健康悪化や運動量の減少による体力低下など、高齢者の健康問題への懸
念が高まり、仮設住宅や地域の公共施設などにおいて、健康講座や運動教室なども数多く開催
437
されるようになった。
このように仮設住宅への各種支援は充実しているが、その一方で、特に市郊外部に居住する
独居高齢者などへの支援が薄くなりがちである。3S(寂しい・震災・シングル)の方々の存在
である。特に、2 世代や 3 世代同居をしていたような家庭で、子ども世帯が避難し、高齢者のみ
が残ったような世帯も出ているが、行政においても実態が把握できていない。このため、この
ような世帯に残る高齢者への支援は不十分となっている。
もともと密度が低い集落では、何人かの避難者が出ることで、日常のコミュニケーションが
喪失されてしまっていることが懸念される。
家族やご近所の構成が変わったことで孤立してしまった高齢者の情報を収集したり、高齢者
に情報を提供したりする手段としては、次のようなことが考えられる。
・郵便配達、新聞配達、宅配事業者等による声かけや情報収集
個人情報保護や、防犯などの点から情報収集の方法には慎重な検討が必要となるが、情報提
供はチラシの配布などで連携することで比較的容易に実践できる。
・店舗等との連携による情報伝達
食料品など日常品の買物の用はあると思われるため、このような店舗と協力し、元気モール
を始めとした交流の場への参加の呼びかけを行っていくことが考えられる。
・避難家族からの呼びかけ
避難家族から、高齢者に情報を提供してもらうことも 1 つの方法である。信頼性の高い情報
として、高齢者が受け止めてくれることが期待できる。
(9)
プライマリケア・家庭医の普及の必要性
被災住民からは、
「人生の幸せを考えたとき、ライフステージに応じて訪れる結婚等のイベン
ト的な中で感じるものはあくまで一時的なものであり、真の幸せは、日常生活の中にこそある」
という声を聞くことができた。そして、その幸せは、当然ながら命があってこそ感じられるも
のである。
一方、被災地では、震災関連死が多数見受けられる実態がある。
医療制度のベースにプライマリケア・家庭医が明確に位置づけられ、平時から多くの住民が
家庭医を持つことができていれば、個人情報の取扱いの制約等がある中でも、このような痛ま
しい例を明らかに減らすことができたのではないかと考えられる。
今回の未曾有の震災を教訓とし、今後に活かすためには、プライマリケア・家庭医の普及の
必要性はきわめて高いと考える。
438
3.2.5.4
次年度以降の実施計画
3.2.5.4.1
元気モールサービス
3.2.5.4.1.1
次年度以降の事業概要
次年度以降の事業概要は下図のとおりを想定している。
なお、
「民間事業による周辺サービス」については、前述したとおり中長期的な視点に立ち、
検討していくことが必要と判断されることから、括弧書きとしている。
医療機関等
地域・家庭医療の
専門家・有識者
地域住民
南相馬元気モール
①地域・家庭医療学の
観点から助言・支援
④サービス利用料
(会費・都度払い)
運動教室
健康講座
地域の
医療従事者
②講座等の開催
地域住民への
サービス紹介
その他多様なプログラム
⑤サービス提供
情報提供
情報提供サービス
⑥応援金の
継続的拠出
地域住民
仮設住宅入居者
医療機関からの紹介者
全国の応援者
相談サービス
⑫地域住民と民間サービス事業者との
マッチングやコーディネート等の
サービス
⑦状況報告等
③モール運営
⑬サービス対価
民間サービス事業者
NPO法人
はらまちクラブ
個人
団体
事業者(法人)
⑩看護師による
在宅ケアサービス
提供
⑧募集
地元民間事業者
外部事業者
キャンナス東北が
契約した看護師
⑨情報共有
⑪サービス対価
図 3.2.5-14:次年度以降の想定事業概要図
3.2.5.4.1.2
事業収支見込
事業収支見込について、平成 25 年度~27 年度の直近 3 年間における支出計画書を以下のと
おり示す。
(1)
支出計画書
表 3.2.5-25:平成 25 年度 支出計画書(元気モールサービス)
平成 25 年度
金額
根拠
総収入
¥22,000,000 -
総支出
¥21,600,000 -
(サービス 元気モー 収入計
¥22,000,000 -
別)
ル
サービス
利用料(元気料
金)収入
¥1,800,000
都度払:300 円×4 回/月×12 月×50 名
月会費:3,000 円/月×12 月×30 名
応援金(個人)
¥3,600,000
ワンコイン未満:300 円/月×12 月
×1,000 名
応援金(団体
等)
¥3,600,000 30,000 円/月×12 月×10 団体
緊急雇用創出基金、NPO 等の運営力
強化を通じた復興支援事業等を想定
人件費:200,000 円/月・名×12 月×7
名
¥21,600,000 賃料等:300,000 円/月×12 月(光熱
水費含む)
他経費:100,000 円/月×12 月
¥400,000 -
補助金・助成金 ¥13,000,000
支出
総利益
439
表 3.2.5-26:平成 26 年度 支出計画書(元気モールサービス)
平成 26 年度
金額
根拠
総収入
¥22,104,000 -
総支出
¥21,600,000 -
(サービス 元気モー 収入計
¥22,104,000 -
別)
ル
サービス
利用料(元気料
金)収入
¥2,304,000
都度払:300 円×4 回/月×12 月×60 名
月会費:3,000 円/月×12 月×40 名
応援金(個人)
¥5,400,000
ワンコイン未満:300 円/月×12 月
×1,500 名
応援金(団体
等)
補助金・助成金
支出
総利益
¥5,400,000 30,000 円/月×12 月×15 団体
緊急雇用創出基金、NPO 等の運営力
強化を通じた復興支援事業等を想定
人件費:200,000 円/月・名×12 月×7
名
¥21,600,000 賃料等:300,000 円/月×12 月(光熱
水費含む)
他経費:100,000 円/月×12 月
¥504,000 -
¥9,000,000
表 3.2.5-27:平成 27 年度 支出計画書(元気モールサービス)
平成 27 年度
金額
根拠
総支出
¥22,208,000 -
¥21,600,000 -
(サービス 元気モー 収入計
¥22,208,000 -
総収入
別)
ル
サービス
利用料(元気料
金)収入
¥2,808,000
都度払:300 円×4 回/月×12 月×70 名
月会費:3,000 円/月×12 月×50 名
応援金(個人)
¥7,200,000
ワンコイン未満:300 円/月×12 月
×2,000 名
応援金(団体
等)
補助金・助成金
支出
総利益
¥7,200,000 30,000 円/月×12 月×20 団体
緊急雇用創出基金、NPO 等の運営力
強化を通じた復興支援事業等を想定
人件費:200,000 円/月・名×12 月×7
名
¥21,600,000 賃料等:300,000 円/月×12 月(光熱
水費含む)
他経費:100,000 円/月×12 月
¥608,000 -
¥5,000,000
440
表 3.2.5-28:平成 25~27 年度 支出計画書(元気モールサービス)
平成 25~27 年度
平成 25 年度 平成 26 年度 平成 27 年度
累計
総収入
¥22,000,000 ¥22,104,000 ¥22,208,000 ¥66,312,000
総支出
¥21,600,000 ¥21,600,000 ¥21,600,000 ¥64,800,000
(サービ
元気モ
ス別)
ール
サービ
ス
収入計
利用料(元気
料金)収入
¥1,800,000
¥2,304,000
¥2,808,000
応援金(個人) ¥3,600,000
¥5,400,000
¥7,200,000 ¥16,200,000
¥3,600,000
¥5,400,000
¥7,200,000 ¥16,200,000
¥13,000,000
¥9,000,000
¥5,000,000 ¥27,000,000
応援金(団体
等)
補助金・助成
金
支出
総利益
(2)
¥22,000,000 ¥22,104,000 ¥22,208,000 ¥66,312,000
¥6,912,000
¥21,600,000 ¥21,600,000 ¥21,600,000 ¥64,800,000
¥400,000
¥504,000
¥608,000
¥1,512,000
支出計画書の説明
収入については、大きく受益者負担である「利用料収入」とその他の収入による構成を想定
する。その他収入については、個人と団体等のそれぞれを対象とした「(仮称)応援金」の募集
を行い、毎月収受する応援金収入を基本とする。
利用料収入については、
「元気モールの継続に関するアンケート調査」で支持された 3 パター
ンのうち、支持が少なかった年会費を除いた 2 パターン(月会費・都度払い)ごとに、今年度
事業におけるリピーター人数を勘案し設定した。
一方、
(仮称)応援金収入については、ハードルの低さを重視し、個人に対してはワンコイン
でおつりが来る「300 円/月」を設定することを想定した。また、団体等については、一律「3
万円/月」を想定した。
支出については、今年度事業実績を踏まえ、
「賃料等(光熱水費含む)
:30 万円/月」とし、そ
の他経費は上記応援金収入手数料も含め「10 万円/月」と想定した。また、人件費については、
今年度実績を踏まえ、スタッフ数(ボランティア除く)と給与を想定した。その上で、収支の
不足分については国・県等の補助金・助成金を確保することで対応することを想定した。
441
在宅ケアサービス
3.2.5.4.2
3.2.5.4.2.1
次年度以降の事業概要
本年度事業の活動である『南相馬ボランティアサービス』と副次的に開業した『訪問介護ス
テーション』で、保険適用・保険適用外のサービスの両方を提供することができる。これによ
って、介護保険を受けていない方の受け皿となれる他に、将来的な要介護者の受け入れも可能
になる。
事業の PR や告知を、南相馬元気モールや地域のボランティア組織と共同で行うことで、地域
内でのサービスの浸透を図る。サロン活動や講習会などの開催により、地域での元気づくりも
応援していきたいと考えている。また、地元事業者をサービス提供先で紹介することで、少し
でも地域経済の活性化につなげたいと考えている。
医療機関との連携については、現在、市立総合病院との連携はとれているが、その他の病院
とも連携を模索していきたい。
南相馬元気モール
地元民間事業者
利用者の紹介
など相互連携
介護認定を受けた方の
受け入れ
南相馬
ボランティア
サービス
訪問看護
ステーション
利用者の紹介
共同でのサロンや講習
会の開催による
PR活動・告知協力
在宅ケアサービス
紹介
ボランティア組織
など
受診が必要な
方の紹介
地域住民
サービス申し込み
と提供
医療機関
南相馬市立
総合病院など
図 3.2.5-15
25 年度以降の事業概要図
※ 次年度以降の事業概要は上図の通り。元気モールとは別に示した。
3.2.5.4.2.2
事業収支見込
事業収支見込について、平成 25 年度~27 年度の直近 3 年間における支出計画書を以下のと
おり示す。
442
(1)
支出計画書
支出計画書については以下のとおり。
表 3.2.5-29:平成 25 年度 支出計画書(在宅ケアサービス)
平成 25 年度
金額
根拠
総収入
¥3,404,000 -
総支出
¥2,181,600 -
①見まもりなど比較的負担の軽い対象
者のケア
5 名×12 ヵ月×3,000 円
②在宅での訪問ケア
¥2,000,000
3 名×5 日×52 週×1,000 円
③在宅での訪問ケア比較的手厚いケア
の必要な方
2 名×5 日×52 週×2,000 円
広告宣伝費 50,000 円×12 ヵ月
ガソリン代 300 円×5 日×52 週
¥918,000
消耗品・諸経費 10,000 円×12 ヵ月
通信費 10,000 円×12 ヵ月
3 名×3 時間×3 日×52 週×1,000 円
¥1,404,000 3 名が週に 3 日勤務可能として 1 日 3
名提供とする
(サービス
在宅ケア(代表者)
別)
収入
支出
在宅ケア(ボランテ
ィア)
収入
支出
総利益
¥1,263,600 スタッフ人件費 1,404 時間×900 円
¥1,222,400 -
表 3.2.5-30:平成 26 年度 支出計画書(在宅ケアサービス)
平成 26 年度
金額
根拠
総収入
¥4,860,000 -
総支出
¥2,784,000 -
①見まもりなど比較的負担の軽い対象
者のケア
5 名×12 ヵ月×3,000 円
②在宅での訪問ケア
¥2,520,000
3 名×5 日×52 週×1,000 円
③在宅での訪問ケア比較的手厚いケア
の必要な方
3 名×5 日×52 週×2,000 円
広告宣伝費 30,000 円×12 ヵ月
ガソリン代 300 円×5 日×52 週
¥678,000
消耗品・諸経費 10,000 円×12 ヵ月
通信費 10,000 円×12 ヵ月
5 名×3 時間×3 日×52 週×1,000 円
¥2,340,000 3 名が週に 3 日勤務可能として 1 日 3 名
提供とする
(サービス
在宅ケア(代表者)
別)
収入
支出
在宅ケア(ボランテ
ィア)
収入
支出
総利益
¥2,106,000 スタッフ人件費 2,340 時間×900 円
¥2,076,000 -
443
表 3.2.5-31:平成 27 年度 支出計画書(在宅ケアサービス)
平成 27 年度
金額
根拠
総収入
¥7,200,000 -
総支出
¥4,890,000 -
①見まもりなど比較的負担の軽い対象
者のケア
5 名×12 ヵ月×3,000 円
②在宅での訪問ケア
¥2,520,000
3 名×5 日×52 週×1,000 円
③在宅での訪問ケア比較的手厚いケア
の必要な方
3 名×5 日×52 週×2,000 円
広告宣伝費 30,000 円×12 ヵ月
ガソリン代 300 円×5 日×52 週
¥678,000
消耗品・諸経費 10,000 円×12 ヵ月
通信費 10,000 円×12 ヵ月
10 名×3 時間×3 日×52 週×1,000 円
¥4,680,000 10 名が週に 3 日勤務可能として 1 日 3
名提供とする
(サービス
在宅ケア(代表者)
別)
収入
支出
在宅ケア(ボランテ
ィア)
収入
支出
総利益
¥4,212,000 スタッフ人件費 4,680 時間×900 円
¥2,310,000 -
表 3.2.5-32:平成 25~27 年度 支出計画書(在宅ケアサービス)
平成 25~27 年度
平成 26 年
平成 27 年
度
度
度
累計
総収入
¥3,404,000 ¥4,860,000 ¥7,200,000 ¥15,464,000
総支出
¥2,181,600 ¥2,784,000 ¥4,890,000
¥9,855,600
¥2,000,000 ¥2,520,000 ¥2,520,000
¥7,040,000
(サービス 在宅ケア(代表者)
収入
別)
支出
¥918,000
¥678,000
¥678,000
¥2,274,000
在宅ケア(ボランテ
収入
¥1,404,000 ¥2,340,000 ¥4,680,000
¥8,424,000
ィア)
支出
¥1,263,600 ¥2,106,000 ¥4,212,000
¥7,581,600
¥1,222,400 ¥2,076,000 ¥2,310,000
¥5,608,400
総利益
(2)
平成 25 年
支出計画書の説明
基本的に、在宅ケア以外のサービスはないため、大きな成長は望めない。
収支の柱となるのが代表者個人の売上げとなっている。この中から広告宣伝費や諸雑費を支
出する。大きな支出が必要ないため、無理なく事業継続ができる計画となっている。
一方で、看護資格者の受け皿としての収支も計上しているが、こちらは設定料金と賃金の差
が小さく、事業体(南相馬ボランティアサービス)に入る金額は少額となっている。売上げに
こだわるよりは、看護師の社会復帰の橋渡しという社会的な意義を優先させたいと考えている。
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